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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】流体圧制御弁装置及び流体圧システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240902BHJP
   F16K 3/24 20060101ALI20240902BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F16K27/00 B
F16K3/24 D
E02F9/22 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020076877
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021173323
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 正幸
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-169230(JP,A)
【文献】特開2010-169163(JP,A)
【文献】特公昭47-5167(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335057(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107816570(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00- 3/36
F16K 11/00-11/24
F16K 27/00-27/12
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、
第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれるネジ穴が形成された第2ブロックとを備える流体圧制御弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧制御弁装置であって、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は前記第1ブロック及び前記第2ブロックのうち、前記第1スプール孔の内部及び前記第2スプール孔の内部の圧力が低い領域に少なくとも1つ以上成されている流体圧制御弁装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体圧制御弁装置であって、
前記第1貫通孔を塞ぐ凸部を有するキャップを備える流体圧制御弁装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の流体圧制御弁装置であって、
前記第1貫通孔は前記第1スプール弁に接続されたアクチュエータの作動油の通路に形成されている流体圧制御弁装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の流体圧制御弁装置であって、
前記第1貫通孔は、前記第1スプール弁に接続されたリリーフ弁の作動油の通路に形成されている流体圧制御弁装置。
【請求項6】
第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する少なくとも1つ以上の第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、
第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれる少なくとも1つ以上のネジ穴が形成された第2ブロックと、
前記第1貫通孔を塞ぐ凸部を有するキャップとを備え、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックのうち、前記第1スプール孔の内部及び前記第2スプール孔の内部の圧力が低い領域に形成されている流体圧制御弁装置。
【請求項7】
第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する少なくとも1つ以上の第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、
第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれる少なくとも1つ以上のネジ穴が形成された第2ブロックとを備え、
前記第1貫通孔は前記第1スプール弁に接続されたアクチュエータの作動油の通路に形成され、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックのうち、前記第1スプール孔の内部及び前記第2スプール孔の内部の圧力が低い領域に形成されている流体圧制御弁装置。
【請求項8】
第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する少なくとも1つ以上の第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、
第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれる少なくとも1つ以上のネジ穴が形成された第2ブロックとを備え、
前記第1貫通孔は、前記第1スプール弁に接続されたリリーフ弁の作動油の通路に形成され、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックのうち、前記第1スプール孔の内部及び前記第2スプール孔の内部の圧力が低い領域に形成されている流体圧制御弁装置。
【請求項9】
作動流体により流体圧を発生させる流体圧ポンプと、
前記作動流体の出力先を切替える流体圧バルブ装置と、
前記流体圧バルブ装置から供給される前記作動流体により駆動されるアクチュエータと、
第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれるネジ穴が形成された第2ブロックとを備える流体圧制御弁装置と、を備える流体圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスプール弁を備える流体圧制御弁装置及び流体圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルの油圧を制御する油圧制御弁装置のケーシングは、複数のブロックを連結して構成される。ブロックには、作動油の方向を切替える複数のスプール弁(方向切替弁)が設けられている。このブロックを多連に組み合わせて油圧制御弁装置が構成される。複数のスプール弁が設けられたブロック同士は、例えば、互いに複数のボルトにより締結される。複数のボルトは、複数のブロックを連結したケーシングの端面の外周に沿って配置される。
【0003】
ケーシングにおいてブロック同士の合わせ面には、互いのブロックに作動油を流通させるための油圧回路用の通路が形成される場合がある。近年、油圧の高圧化に伴い、合わせ面に形成された通路の密閉性を高めるために、合わせ面の密着力も高める必要が生じている。密着力を高めるためは、ブロック同士を締結するボルトの本数を増加させることが考えられる。ケーシングの外周に複数のボルトを配置する構成において、ブロック同士の密着力を高めようとすると、ボルトのスペースを確保するためにケーシングが大型化する。また、合わせ面においてケーシングの周囲から内方に向かった領域の密着度が低下するため、この領域にもボルトのスペースを設ける必要がある。
【0004】
特許文献1には、複数のブロック同士を複数のボルトを用いて締結したケーシングが記載されている。このケーシングを構成するブロックには、複数のスプール弁が設けられている。ブロックには、スプール弁を挿入するための複数のスプール孔が形成されている。孔は、ブロックの合わせ面の方向に形成されている。複数のブロックは、合わせ面に直交する方向に設けられた複数の締結用のボルトにより締結され、ケーシングが構成される。複数のボルトは、ケーシングの両端面の周囲に沿って設けられている。ボルトは、両端面において複数のスプール孔の間の位置にも設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-112123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたケーシングにおいて、ブロックの合わせ面の密着力を高めるためにボルトの締め付け力を増加させると、ブロックがボルトにより圧縮されてスプール孔に歪が生じる虞がある。そのため、このケーシングにおいてボルトの締め付け力を増加させる場合、スプール孔をスプール弁とのクリアランスを増加させるように大きめに形成することが必要となる。
【0007】
本発明は、スプール孔の形状を歪ませることなくブロック同士の密着度を高めることができるケーシングを備えた油圧制御弁装置及び建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る流体圧制御弁装置は、第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が前記第1貫通孔と同心に形成された第1ブロックと、第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれるネジ穴が形成された第2ブロックと、を備える。
【0009】
このように構成することで、第2貫通孔とネジ穴が第1スプール孔及び第2スプール孔に比して合わせ面側に形成されているため、ボルトを第2貫通孔に形成されたボルト穴を通じてネジ穴に締め込んで第1ブロックと第2ブロックとを連結させた場合、第1スプール孔及び第2スプール孔が歪むことが無い。第2貫通孔とは第1スプール孔に貫通して形成されているため、ボルトを締め込んだ際に合わせ面の密着性を高めることができる。
【0010】
上記構成であって、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックの内部において圧力が低い領域に少なくとも1つ以上に形成されていてもよい。
【0011】
上記構成であって、前記第1貫通孔を塞ぐ凸部を有するキャップを備えていてもよい。
【0012】
上記構成であって、前記第1貫通孔は、前記第1スプール弁に接続されたアクチュエータの作動油の通路に形成されていてもよい。
【0013】
上記構成であって、前記第1貫通孔は、前記第1スプール弁に接続されたリリーフ弁の作動油の通路に形成されていてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る流体圧制御弁装置は、第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する少なくとも1つ以上の第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が前記第1貫通孔と同心に形成された第1ブロックと、第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれる少なくとも1つ以上のネジ穴が形成された第2ブロックと、前記第1貫通孔を塞ぐ凸部を有するキャップと、を備え、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックの内部において圧力が低い領域に形成されている。
【0015】
本発明の一態様に係る流体圧制御弁装置は、第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する少なくとも1つ以上の第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれる少なくとも1つ以上のネジ穴が形成された第2ブロックとを備え、前記第1貫通孔は前記第1スプール弁に接続されたアクチュエータの作動油の通路に形成され、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックの内部において圧力が低い領域に形成されている。
【0016】
本発明の一態様に係る流体圧制御弁装置は、第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する少なくとも1つ以上の第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれる少なくとも1つ以上のネジ穴が形成された第2ブロックとを備え、前記第1貫通孔は、前記第1スプール弁に接続されたリリーフ弁の作動油の通路に形成され、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記ネジ穴は、前記第1ブロック及び前記第2ブロックの内部において圧力が低い領域に形成されている。
【0017】
本発明の一態様に係る流体圧システムは、作動流体により流体圧を発生させる流体圧ポンプと、前記作動流体の出力先を切替える流体圧バルブ装置と、前記流体圧バルブ装置から供給される前記作動流体により駆動されるアクチュエータと、第1端面と第1合わせ面との間に第1スプール弁を収容する第1スプール孔が形成され前記第1端面側に前記第1スプール孔に締結用のボルトが通過する第1貫通孔が形成され前記第1合わせ面側に前記第1貫通孔と同心に前記第1スプール孔に前記ボルトの座面が形成されたボルト穴用の第2貫通孔が形成された第1ブロックと、第2端面と第2合わせ面との間に第2スプール弁を収容する第2スプール孔が形成され前記第2合わせ面側に前記第1貫通孔に対応する位置に前記ボルトが締め込まれるネジ穴が形成された第2ブロックとを備える流体圧制御弁装置と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スプール孔の形状を歪ませることなくブロック同士の密着度を高めることができるケーシングを備えた流体圧制御弁装置及び流体圧システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における建設機械の概略構成図。
図2】本発明の実施形態における油圧システムの構成図。
図3】本発明の実施形態における油圧制御弁装置の油圧回路を示す図。
図4】本発明の実施形態における油圧制御弁装置の構成を示す断面図。
図5】本発明の実施形態における油圧制御弁装置の構成を示す平面図。
図6】本発明の実施形態における変形例に係る油圧制御弁装置の構成を示す図。
図7】本発明の実施形態における他の変形例に係る油圧制御弁装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(建設機械)
図1に示されるように、建設機械100は、例えば油圧ショベルである。建設機械100は、旋回体101と、走行体102とを備えている。旋回体101は、走行体102の上に旋回可能に設けられている。旋回体101には、油圧システム1が設けられている。
【0022】
旋回体101は、操作者が搭乗可能なキャブ103と、キャブ103に一端が揺動自在に連結されているブーム104と、ブーム104のキャブ103とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されているアーム105と、アーム105のブーム104とは反対側の他端(先端)に揺動自在に連結されているバケット106と、を備えている。また、キャブ103内には、油圧システム1が設けられている。この油圧システム1から供給される作動油によって、キャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106が駆動される。
【0023】
(油圧システム)
図2に示されるように、油圧システム1(流体圧システム)は、駆動源となるエンジン120と、エンジン120に駆動される油圧ポンプ130(流体圧ポンプ)と、建設機械100の各部を動作させる複数のアクチュエータ140と、複数のアクチュエータ140の動作を切替える油圧制御弁装置150(流体圧バルブ装置)と、作動油を貯蔵するタンク160と、圧力調整のためのリリーフ弁300とを備える。本実施形態では、流体圧の1例として油圧を例示するが、作動流体は、作動油だけでなく他の流体であってもよい。流体圧システムは、建設機械だけでなく複数のアクチュエータを制御する他の装置に適用してもよい。
【0024】
エンジン120は、ガソリンやディーゼル燃料を用いた内燃機関である。エンジン120は、出力軸121を備え、出力軸121は、油圧ポンプ130に連結されている。油圧ポンプ130には、通路Qが接続されている。油圧ポンプ130は、作動流体により流体圧を発生させる。油圧ポンプ130は、出力軸121に駆動されて通路Qに作動油を流通させる。通路Qに供給された作動油は、タンク通路Uを流通してタンク160に戻る。通路Qには油圧制御弁装置150が接続されている。
【0025】
油圧制御弁装置150は、作動流体の出力先を切替える。油圧制御弁装置150には、複数のアクチュエータ140が分岐した通路Qを介して接続されている。図2においては、1つのアクチュエータ140が記載されている。油圧制御弁装置150は、複数個設けられており、通路Qに流通する作動油の油圧を複数のバルブで切り替えて複数のアクチュエータ140に作動油を供給する。複数のアクチュエータ140は、キャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106等を駆動する。リリーフ弁300は、油圧システム1の油圧回路内において流路の圧力が予め設定された所定値以上となった場合に圧力を開放する。
【0026】
(油圧制御弁装置)
図3に示されるように、油圧制御弁装置150(流体圧制御弁装置)は、複数のブロックが連結されたケーシング151を備える。本実施形態において、ケーシング151は、2連のブロックを備えたものを例示する。第1ブロックAと第2ブロックBとの間の接触面には、合わせ面(一面A1,一面B1)が形成されている。
【0027】
第1ブロックAは、複数のスプール弁Sを備える。複数のスプール弁Sには、油圧ポンプ130から通路Qが接続され、タンク160にタンク通路Uが接続されている。第2ブロックBは、複数のスプール弁Tを備える。複数のスプール弁Tには、油圧ポンプ130から通路Qが接続され、タンク160にタンク通路Uが接続されている。
【0028】
図4及び図5に示されるように、ケーシング151は、略直方体状に形成された第1ブロックAと、略直方体状に形成された第2ブロックBとを備える。以下、図において、-z方向に見ることを平面視するという。
【0029】
第1ブロックAと第2ブロックBとは、複数のボルトMにより連結されている。複数のボルトMは、平面視して第1ブロックAの周囲に沿って形成された複数のボルト孔(不図示)に挿入され、第2ブロックBの周囲に沿って複数のボルト孔に対応する位置に形成されたネジ穴(不図示)に螺合し固定される。ボルトMは、例えば、六角穴付きボルトである。ボルトMは、他の種類のものであってもよい。第1ブロックAにおいて、ボルトMの座面は、他面A2から合わせ面となる一面A1に近づくように段差状に外部に露出して形成されている。第1ブロックAと第2ブロックBとは、後述のように、更に複数のボルトCにより連結されている。
【0030】
第1ブロックAは、一面A1側に平坦な第1合わせ面が形成されている。第1ブロックAは、他面A2がケーシング151の第1端面に形成されている。第2ブロックBは、一面B1側に平坦な第2合わせ面が形成されている。第2ブロックBは、他面B2がケーシング151の第2端面に形成されている。第1ブロックAと第2ブロックBとは、第1合わせ面(一面A1)と第2合わせ面(一面B1)とが接触した状態で連結される。
【0031】
第1ブロックAは、少なくとも1つ以上の複数のスプール弁S(第1スプール弁)を備える。スプール弁Sは、長手方向が一面A1の面方向に沿うように配置されている。複数のスプール弁Sは、長手方向が一面A1の面方向に沿うように並置され、スプール弁群(第1スプール弁群)を構成している。
【0032】
スプール弁Sは、移動自在なスプールS1と、スプールS1の移動を制御する油圧室S6とを備える。スプールS1は、略円柱状に形成されている。スプールS1には、作動油の通路となる複数の溝S2~S5が周方向に形成されている。油圧室S6には、スプリングS7を備え、油圧室S6の圧力によりスプリングS7の力に抗して、スプールS1の長手方向への移動を制御する。
【0033】
第1ブロックAには、複数のスプール弁Sを固定するための複数のスプール孔H(第1スプール孔)が隣接して形成されている。スプール孔Hは、円形断面に形成されている。スプール孔Hには、スプールS1が挿入される。スプール孔Hは、スプールS1を移動自在に収容する。スプール孔Hは、長手方向が一面A1の面方向に沿うように配置されている。
【0034】
複数のスプール孔Hは、長手方向が一面A1の面方向に沿うように並置され、スプール孔群(第1スプール孔群)を構成している。スプール孔Hには、スプールS1により切り替えられる作動油の複数の通路H1~H7が接続されている。通路H1,H7は、例えば、アクチュエータのポートである。
【0035】
第1ブロックAは、平面視して他面A2側と一面A1側とを貫通する複数の貫通孔Kが形成されている。貫通孔Kは、平面視して第1ブロックAの輪郭内の領域に形成されている。貫通孔Kは、円形断面に形成されている。貫通孔Kは、一面A1に沿った方向から見てスプール孔Hの直交方向に貫通して形成されている。貫通孔Kは、スプール孔Hの直交方向だけでなく一面A1に沿った方向から見て傾斜して形成されていてもよい。
【0036】
貫通孔Kは、他面A2からスプール孔Hまでスプール孔Hに直交する方向に貫通する第1貫通孔K1と、スプール孔Hから一面A1側にスプール孔Hに直交する方向に貫通する第2貫通孔K2とが形成されている。平面視して、第1貫通孔K1と第2貫通孔K2とは同心に形成されている。
【0037】
第1貫通孔K1は、他面A2からスプール孔Hまで形成されている。第2貫通孔K2は、スプール孔Hから1面A1側まで形成されている。第1貫通孔K1の径は、ボルトCが通過する大きさに形成されている。第1貫通孔K1には、他面A2にキャップPが取り付けられ、塞がれる。キャップPは、第1貫通孔K1の開口を塞ぐ凸部P1を有する。キャップPは、P1がねじ込み式に形成されていてもよいし、嵌め込み式に形成されていてもよい。第1貫通孔K1からボルトCが挿入される。ボルトCは、第1貫通孔K1を通過して第2貫通孔K2に到達する。
【0038】
第2貫通孔K2は、第1ブロックAの内部に形成されている。第2貫通孔K2は、大径の孔と小径の孔を有する。大径の孔は、第1貫通孔K1と同じ径に形成されている。小径の孔は、ボルトCのネジ穴の径に形成されている。大径の孔と小径の孔とが接続する部分には段差状の座面K3が形成されている。段差状の座面K3は、スプール孔H側に径が拡大して形成されている。座面K3は、連結用のボルトCの頭部C2を支持する。座面K3は、スプール孔Hよりも一面A1側に、設けられている。スプール孔Hの一部を、ボルトCを通す貫通孔とすることで、スプール孔Hの形状を歪ませることなく第1ブロックAと第2ブロックBとの密着度を高めることができる。ボルトCは、例えば、頭部C2に六角の穴が形成された六角穴付ボルト(キャップスクリュー)である。
【0039】
第1ブロックAにおいて、座面K3は、第2貫通孔K2においてスプール孔Hから一面A1との間に段差状に形成されている。ボルトCは、頭部の当接面がテーパ状に形成されたテーパボルトであってもよい。座面K3は、段差状に形成されているだけでなく、テーパボルトに対応してテーパ状に形成されていてもよい。
【0040】
第2貫通孔K2は、後述のように、ボルトCのネジ部C1の径に比して若干大きい径に形成されている。座面K3は、ボルトCのボルトの頭部C2の径に比して大きい径に形成されている。第1ブロックAの内部において、座面K3と一面A1との間距離は、スプール孔Hと一面A1との間の距離に比して短くなるように形成されている。即ち、座面K3は、スプール孔Hに比して一面A1に近くなるように形成されている。
【0041】
第2貫通孔K2には、第1貫通孔K1から挿入されたボルトCが挿入される。ボルトCは、第2ブロックBに形成された後述のボルト穴Dに螺入される。ボルトCを締め込むとボルトCの頭部C2は、座面K3に当接する。
【0042】
第2ブロックBは、少なくとも1つ以上の複数のスプール弁T(第2スプール弁)を備える。スプール弁Tは、長手方向が一面B1の面方向に沿うように配置されている。複数のスプール弁Tは、長手方向が一面B1の面方向に沿うように並置され、スプール弁群(第2スプール弁群)を構成している。
【0043】
スプール弁Tは、移動自在なスプールT1と、スプールT1の移動を制御する油圧室T6とを備える。スプールT1は、略円柱状に形成されている。スプールT1には、作動油の通路となる複数の溝T2~T5が周方向に形成されている。油圧室T6には、スプリングT7を備え、油圧室T6の圧力によりスプリングT7の力に抗して、スプールT1の長手方向への移動を制御する。
【0044】
第2ブロックBには、複数のスプール弁Tを固定するための複数のスプール孔I(第2スプール孔)が隣接して形成されている。スプール孔Iは、円形断面に形成されている。スプール孔Iには、スプールT1が挿入される。スプール孔Iは、スプールT1を移動自在に収容する。スプール孔Iは、長手方向が一面B1の面方向に沿うように配置されている。
【0045】
複数のスプール孔Iは、長手方向が一面B1の面方向に沿うように並置され、スプール孔群(第2スプール孔群)を構成している。スプール孔Iには、スプールT1により切り替えられる作動油の複数の通路I1~I6が接続されている。通路I1,I6は、例えば、アクチュエータのポートである。
【0046】
第2ブロックBは、平面視して一面B1側にボルト穴Dが形成されている。ボルト穴Dは、平面視して第2ブロックBの周囲から内方に向かった領域に形成されている。ボルト穴Dは、円形断面に形成されている。ボルト穴Dは、ボルトCのネジ部C1と螺合する雌ねじに形成されている。ボルト穴Dは、一面B1に沿った方向から見てスプール孔Iの直交方向に形成されている。ボルト穴Dは、スプール孔Iの直交方向だけでなく一面B1に沿った方向から見て傾斜して形成されていてもよい。ボルト穴Dは、スプール孔Iに貫通していない。ボルト穴Dは、一面B1において一面A1に形成された第2貫通孔K2に対応する位置に形成されている。平面視して、ボルト穴Dと第2貫通孔K2とは同心に形成されている。
【0047】
第2ブロックBの内部において、ボルト穴Dと一面B1との間距離は、スプール孔Iと一面B1との間の距離に比して短くなるように形成されている。即ち、ボルト穴Dは、スプール孔Iに比して一面B1に近くなるように形成されている。一面B1において、ボルト穴Dの周囲には、円環状の溝D1が形成されている。D1には、油漏れを防止し密閉性を高めるためのOリング等の弾性部材Gが取り付けられる。上記構成により、第2貫通孔K2及び第1貫通孔K1が連通し、ボルト穴Dに到達する。
【0048】
上記構成により、第1ブロックAと第2ブロックBとを連結する場合、スプール孔H,Iには、スプール弁S,Tが挿入されていない状態で行われる。スプール孔Iには、スプールがあってもよい。第1ブロックAの他面A2が上面となるように第1ブロックAと第2ブロックBとが重ねられた状態で設置される。ボルトCは、第1ブロックAの他面A2側に形成された第1貫通孔K1の開口から挿入される。ボルトCは、第1貫通孔K1を落下し、ネジ部C1が第2貫通孔K2に挿入される。ネジ部C1の下端は、第2ブロックBのボルト穴Dの開口に当接する。第1貫通孔K1から六角レンチ等を用いてボルトCの頭部C2に形成された六角の穴に係合させる。
【0049】
六角レンチを回転させると、ボルトCのネジ部C1は、ボルト穴Dに螺入される。ボルトCの螺入が進み、頭部C2の下端が座面K3に当接すると、ボルトCを規定トルクで締め付ける。これにより、一面A1と一面B1とが密着する。一面B1においてボルト穴Dの周囲に配置された弾性部材Gが変形して密着し、ボルトCの周囲の密閉性が高められる。この状態において、ボルトCは、第1ブロックAと第2ブロックBとを合わせ面(一面A1,一面B1)を挟んで密着する方向に力を与える。
【0050】
この状態において、ボルトCは、第1ブロックAに形成されたスプール孔Hと第2ブロックBに形成されたスプール孔との間に配置されるため、ボルトCの締め付けに起因する歪が生じにくくなる。貫通孔K、ボルト穴Dは、例えば、ケーシング151の内部において圧力が低いタンク通路U(図2及び3参照)の近傍等の領域に設けられている。ボルトCは、ケーシング151の内部において第1ブロックAと第2ブロックBとを締結している。
【0051】
貫通孔K、ボルト穴Dは、上記の位置に限らず他の位置に形成されていてもよい。貫通孔K、ボルト穴Dは、第1ブロックAと第2ブロックBとの間の乖離力が高く、油漏れが生じる虞がある領域に設けられていてもよい。ボルトCを締め付けた後、第2貫通孔K2の開口がキャップPにより塞がれる。
【0052】
[変形例]
以下、油圧制御弁装置150の変形例について説明する。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。上記実施形態では、第1ブロックAに形成された第1貫通孔K1は、キャップPにより塞がれていた。第1貫通孔K1は、他の用途に利用されるものであってもよい。
【0053】
図6に示されるように、第1貫通孔K1は、作動油が流通する通路として利用されてもよい。第1貫通孔K1は、例えば、アクチュエータを作動させるための通路の接続ポートとして利用されてもよい第1貫通孔K1は、例えば、スプール弁Sが有するスプール(不図示)によって切り替えられるアクチュエータ用の作動油の通路として利用される。他面A2に形成された第1貫通孔K1の開口には、通路の接続部材Fが取り付けられている。
【0054】
図7に示されるように、第1貫通孔K1は、作動油の圧力を調整するリリーフ弁を動作させる作動油の通路として利用されてもよい。他面A2に形成された第1貫通孔K1の開口には、リリーフ弁300が取り付けられている。第1貫通孔K1には、リリーフ弁300から開放される作動油の通路K4が形成されている。
【0055】
上述したように油圧制御弁装置150によれば、第1ブロックAと第2ブロックBとを接続するためのボルトCの座面及びボルト穴Dが、第1ブロックA及び第2ブロックBの内部に形成されているため、ボルトCの座面を第1ブロックAの端面の周囲に増加させるためのスペースを確保する必要が無く、装置構成を小型化できる。
【0056】
ボルトCの座面及びボルト穴Dは、第1ブロックAに形成されたスプール孔Hと第2ブロックBに形成されたスプール孔Iとの間に形成されているため、ボルトCを締め込んでもスプール孔H,Iが歪むことが無く、第1ブロックAと第2ブロックBとを密着させることができる。
【0057】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、油圧制御弁装置は、2個以上の複数のブロックが連結されて構成されていてもよい。油圧制御弁装置は、ボルトCの代わりにスタッドボルトとナットが用いられていてもよい。また、油圧システム1は、建設機械だけでなく油圧プレス等の作動流体を用いる他の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…油圧システム、100…建設機械、101…旋回体、102…走行体、103…キャブ、104…ブーム、105…アーム、106…バケット、120…エンジン、121…出力軸、130…油圧ポンプ、140…アクチュエータ、150…油圧制御弁装置、151…ケーシング、160…タンク、300…リリーフ弁、A…第1ブロック、A1…一面、A2…他面、B…第2ブロック、B1…一面、B2…他面、C…ボルト、C1…ネジ部、C2…頭部、D…ボルト穴、D1…溝、F…接続部材、G…弾性部材、H…スプール孔、H1~H7…通路、I…スプール孔、I1~I6…通路、K…貫通孔、K1…第1貫通孔、K2…第2貫通孔、K3…座面、K4…通路、M…ボルト、P…キャップ、P1…凸部、Q…通路、S…スプール弁、S1…スプール、S2~S5…溝、S7…スプリング、T…スプール弁、T1…スプール、T2~T5…溝、T6…ソレノイド、T7…スプリング、U…タンク通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7