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特許7547086接着剤組成物、光学部品、電子部品、及び、電子モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】接着剤組成物、光学部品、電子部品、及び、電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240902BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240902BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020093280
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2020196881
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019102629
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-002978(JP,A)
【文献】特開2004-107602(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047598(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/035791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル捕捉剤とを含有し、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリル化合物と、ビニル基を有する環状アミド化合物とを含み、
前記ビニル基を有する環状アミド化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル化合物100重量部に対して、20重量部以上150重量部以下である
ことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記重合性化合物は、更に、熱硬化性化合物を含有する請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物は、光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物を含有する請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
光学部品又は電子部品の固定に用いられる請求項1、2又は3記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の接着剤組成物の硬化物を有する光学部品。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の接着剤組成物の硬化物を有する電子部品。
【請求項7】
請求項5記載の光学部品又は請求項6記載の電子部品を有する電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化収縮を抑制することができ、かつ、保存安定性及び深部硬化性に優れる接着剤組成物に関する。また、本発明は、該接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)等を撮像素子としたカメラモジュール等における可動部品の固定には、光照射及び/又は加熱により硬化する接着剤組成物が用いられている。
このような接着剤組成物として、例えば、特許文献1には、特定のシリコーン系化合物を組み合わせたシリコーン組成物が開示されており、特許文献2には、アミノグリシジルエーテル、アルケニル基を有するフェノール系硬化剤及びトリアジン骨格を有するチオール化合物を組み合わせた液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、従来の接着剤組成物は、衝撃や振動等により剥離し易かったり、可動部品の位置ずれを生じさせたりすることがあるという問題があった。特に、ラジカル重合性化合物を用いた接着剤組成物では、硬化収縮により被着体の反りや接着部分の剥離が生じやすかったり、可動部品の位置ずれを生じやすかったり、保存安定性に劣ったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-057755号公報
【文献】特開2014-031461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、硬化収縮を抑制することができ、かつ、保存安定性及び深部硬化性に優れる接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル捕捉剤とを含有し、上記重合性化合物は、(メタ)アクリル化合物と、ビニル基を有する環状アミド化合物とを含み、上記ビニル基を有する環状アミド化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル化合物100重量部に対して、20重量部以上150重量部以下である接着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者らは、接着剤組成物の硬化収縮を抑制し、かつ、保存安定性を向上させるため、ラジカル捕捉剤を用いることを検討した。しかしながら、ラジカル捕捉剤を用いた場合、得られる接着剤組成物が深部硬化性に劣るものとなることがあった。そこで本発明者らは、更に、重合性化合物として(メタ)アクリル化合物とビニル基を有する環状アミド化合物とを、特定の含有割合となるようにして用いることにより、硬化収縮を抑制することができ、かつ、保存安定性及び深部硬化性に優れる接着剤組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0007】
本発明の接着剤組成物は、重合性化合物を含有する。
上記重合性化合物は、(メタ)アクリル化合物とビニル基を有する環状アミド化合物とを含む。上記(メタ)アクリル化合物と上記ビニル基を有する環状アミド化合物とを、後述する含有割合となるようにして用いることにより、本発明の接着剤組成物は、後述するラジカル捕捉剤を含みながらも深部硬化性に優れるものとなる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
また、(メタ)アクリロイル基と環状構造とを有するアミド化合物については、上記ビニル基を有する環状アミド化合物ではなく、上記(メタ)アクリル化合物として扱う。
【0008】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0009】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(((ブチルアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、(3-プロピルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-ブチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)エチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)プロピル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ブチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ペンチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ヘキシル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等が挙げられる。
【0010】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0011】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールE型エポキシ(メタ)アクリレート、及び、これらのカプロラクトン変性体等が挙げられる。
【0013】
上記(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0014】
また、上記(メタ)アクリル化合物は、後述する光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物であってもよい。上記光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物である上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物」は、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる、1分子中に1以上のエポキシ基と1以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を意味する。
【0015】
上記グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0016】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物としては、例えば、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールF型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールE型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0017】
上記重合性化合物100重量部中における上記(メタ)アクリル化合物の含有量の好ましい下限は15重量部、好ましい上限は70重量部である。上記(メタ)アクリル化合物の含有量が15重量部以上であることにより、得られる接着剤組成物が光硬化性により優れるものとなる。上記(メタ)アクリル化合物の含有量が70重量部以下であることにより、得られる接着剤組成物が硬化収縮を抑制する効果により優れるものとなる。上記(メタ)アクリル化合物の含有量のより好ましい下限は25重量部、より好ましい上限は45重量部である。
【0018】
上記ビニル基を有する環状アミド化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)中、nは、2~6の整数を表す。
【0021】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。なかでも、N-ビニル-ε-カプロラクタムが好ましい。
【0022】
上記ビニル基を有する環状アミド化合物の含有量は、上記(メタ)アクリル化合物100重量部に対して、下限が20重量部、上限が150重量部である。上記(メタ)アクリル化合物100重量部に対する上記ビニル基を有する環状アミド化合物の含有量が20重量部以上であることにより、得られる接着剤組成物が深部硬化性に優れるものとなる。上記(メタ)アクリル化合物100重量部に対する上記ビニル基を有する環状アミド化合物の含有量が150重量部以下であることにより、得られる接着剤組成物が保存安定性に優れるものとなる。上記(メタ)アクリル化合物100重量部に対する上記ビニル基を有する環状アミド化合物の含有量の好ましい下限は35重量部、好ましい上限は125重量部、より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0023】
上記重合性化合物は、光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物を含有することが好ましい。上記光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物を含有することにより、本発明の接着剤組成物は、光が届かない部分がある場合でも加熱により硬化させることができるものとなる。
【0024】
上記光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0025】
上記熱重合性官能基としては、例えば、環状エーテル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。なかでも、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
【0026】
上記重合性化合物100重量部中における上記光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は150重量部である。上記光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる接着剤組成物が光照射と加熱によって、より容易に硬化させることができるものとなる。上記光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0027】
上記重合性化合物は、更に、熱硬化性化合物を含有することが好ましい。
上記熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物等が挙げられる。
【0028】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールO型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0029】
上記重合性化合物100重量部中における上記熱硬化性化合物の含有量の好ましい下限は15重量部、好ましい上限は70重量部である。上記熱硬化性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる接着剤組成物が光照射と加熱によって、より容易に硬化させることができるものとなる。上記熱硬化性化合物の含有量のより好ましい下限は25重量部、より好ましい上限は45重量部である。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
【0031】
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(モルホリノ)フェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記光重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる接着剤組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、光硬化性により優れるものとなる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0033】
本発明の接着剤組成物は、熱ラジカル重合開始剤を含有してもよい。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
上記アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
【0034】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0035】
上記熱ラジカル重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が7重量部である。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる接着剤組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0036】
本発明の接着剤組成物は、ラジカル捕捉剤を含有する。
上記ラジカル捕捉剤を含有することにより、本発明の接着剤組成物は、硬化収縮を抑制することができ、かつ、保存安定性に優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「ラジカル捕捉剤」は、ラジカルの生成や反応を停止させたり、ラジカルを安定化させたりする化合物を意味する。
【0037】
上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン化合物、フェノール化合物、ポリカーボネート化合物等が挙げられる。なかでも、イミダゾール化合物が好ましい。
【0038】
上記イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0039】
上記アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4.0)-ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3.0)-ノネン-5等が挙げられる。
【0040】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(2-1)で表されるアセタール基を有する構成単位、下記式(2-2)で表される水酸基を有する構成単位、及び、下記式(2-3)で表されるアセチル基を有する構成単位を有する。
【0041】
【化2】
【0042】
上記式(2-1)中、Rは水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0043】
上記炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂は、式(2-1)中のRがプロピル基である構成単位を有するポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0044】
上記ウレタン化合物としては、例えば、湿気硬化型ウレタン樹脂等が挙げられる。
上記湿気硬化型ウレタン樹脂は、ウレタン結合とイソシアネート基とを有し、分子内のイソシアネート基が水分と反応して硬化する。イソシアネート基は、分子の末端に有することが好ましい。
上記湿気硬化型ウレタン樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得ることができる。
なかでも、ポリカーボネート系ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0045】
上記フェノール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、ヒンダートフェノール系化合物、ビスフェノールF系化合物、ビスフェノールE系化合物、ビスフェノールA系化合物、また、それらの重合物等が挙げられる。
【0046】
上記ラジカル捕捉剤のうち、イミダゾール化合物及びアミン化合物は、後述する熱硬化剤としても用いることができる。
【0047】
上記ラジカル捕捉剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が160重量部である。上記ラジカル捕捉剤の含有量が0.1重量部以上であることにより、得られる接着剤組成物が硬化収縮を抑制する効果及び保存安定性により優れるものとなる。上記ラジカル捕捉剤の含有量が160重量部以下であることにより、得られる接着剤組成物が深部硬化性により優れるものとなる。上記ラジカル捕捉剤の含有量のより好ましい下限は0.4重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0048】
上記重合性化合物として上記光重合性官能基と熱重合性官能基とを有する化合物や上記熱硬化性化合物を含有する場合、本発明の接着剤組成物は、熱硬化剤を含有することが好ましい。
上記熱硬化剤は、融点が100℃以下であることが好ましい。上記熱硬化剤の融点が100℃以下であることにより、本発明の接着剤組成物は、低温での加熱による硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の融点は、80℃以下であることがより好ましい。
【0049】
上記熱硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤等が挙げられる。
【0050】
上記イミダゾール系硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0051】
上記アミン系硬化剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4.0)-ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3.0)-ノネン-5等が挙げられる。
【0052】
上記熱硬化剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が7重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる接着剤組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0053】
本発明の接着剤組成物は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の更なる向上、線膨張率の改善等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0054】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
【0055】
本発明の接着剤組成物100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、接着性の向上等の効果をより発揮することができる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は5.0重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0056】
本発明の接着剤組成物は、接着性を更に向上させること等を目的として、シランカップリング剤を含有してもよい。
【0057】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0058】
本発明の接着剤組成物100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5.0重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、ブリードアウト等を抑制しつつ、接着性を向上させる効果をより発揮することができる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0059】
本発明の接着剤組成物は、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の目的で粘度調整剤を含有してもよい。
上記粘度調整剤としては、例えば、ヒュームドシリカや層状ケイ酸塩等が挙げられる。
上記粘度調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0060】
本発明の接着剤組成物100重量部中における上記粘度調整剤の含有量の好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は20重量部である。上記粘度調整剤の含有量がこの範囲であることにより、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の効果により優れるものとなる。上記粘度調整剤の含有量のより好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0061】
本発明の接着剤組成物は、導電性粒子を含有することが好ましい。上記導電性粒子を含有することにより、本発明の接着剤組成物は、導電ペースト等に好適に用いることができる。
【0062】
上記導電性粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0063】
本発明の接着剤組成物100重量部中における上記導電性粒子の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記導電性粒子の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、導電性の向上等の効果をより発揮することができる。上記導電性粒子の含有量のより好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は15.0重量部である。
【0064】
本発明の接着剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に、架橋剤、有機溶剤、可塑剤、分散剤、顔料等を含んでいてもよい。
【0065】
上記架橋剤としては、例えば、ハロヒドリン化合物、ハロゲン化合物、イソシアネート化合物、ビスアクリルアミド化合物、尿素化合物、グアニジン化合物、ジカルボン酸化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
上記ハロヒドリン化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。
上記ハロゲン化合物としては、例えば、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジクロロプロパン等が挙げられる。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記ビスアクリルアミド化合物としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
上記尿素化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素等が挙げられる。
上記グアニジン化合物としては、例えば、グアニジン、ジグアニド等が挙げられる。
上記ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸等が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸エステル化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、グリオキサール、グルタルアルデヒド、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、アジピンアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。また、これらの架橋剤は、必要であれば、水やアルコールなどの有機溶媒に溶かして使用することもできる。
【0066】
上記有機溶剤としては、例えば、ケトン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、エステル類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等が挙げられる。
上記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記エステル類としては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0067】
本発明の接着剤組成物は上記有機溶剤を含有しないことが好ましいが、上記有機溶剤を含有する場合、上記有機溶剤の含有量の好ましい上限は10.0重量%である。上記有機溶剤の含有量が10.0重量%以下であることにより、硬化阻害を起こし難くすることができる。
【0068】
本発明の接着剤組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル捕捉剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0069】
本発明の接着剤組成物は、硬化収縮率が3%未満であることが好ましい。上記硬化収縮率が3%未満であることにより、本発明の接着剤組成物は、被着体の反りや接着部分の剥離を抑制する効果に優れるものとなり、可動部品の固定に好適に用いられるものとなる。上記硬化収縮率は、2.7%未満であることがより好ましい。
また、上記硬化収縮率の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は1%である。
なお、本明細書において上記「硬化収縮率」は、硬化前の接着剤組成物の25℃における比重をG、接着剤組成物の硬化物の25℃における比重をGとしたとき、下記式により算出される値である。
硬化収縮率(%)=((G-G)/G)×100
また、上記比重の測定に用いる硬化物は、接着剤組成物に波長365nmの紫外線を1000mJ/cm照射した後、80℃で90分間加熱することにより得ることができる。
【0070】
本発明の接着剤組成物は、可動部品の固定に好適に用いられ、可動部品の金属部の固定に用いられてもよいし、可動部品の非金属部の固定に用いられてもよい。
上記金属部を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル等が挙げられる。
上記非金属部を構成する非金属としては、例えば、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリカーボネート、LCP(液晶ポリマー)、セラミックス等が挙げられる。
【0071】
また、本発明の接着剤組成物の硬化物を有する光学部品、及び、本発明の接着剤組成物の硬化物を有する電子部品もまた、それぞれ本発明の1つである。
更に、本発明の光学部品又は本発明の電子部品を有する電子モジュールもまた、本発明の1つである。
【0072】
本発明の電子モジュールとしては、カメラモジュールや表示モジュール等が挙げられる。なかでも、カメラモジュールが好適である。即ち、本発明の接着剤組成物は、カメラモジュール用接着剤として好適に用いられる。
上記カメラモジュールとしては、具体的には例えば、基板とCCDやCMOS等の撮像素子との間や、基板とカットフィルターとの間や、基板と筐体との間や、カットフィルターと筐体との間や、筐体とレンズユニットとの間等に本発明の接着剤組成物の硬化物を有するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、硬化収縮を抑制することができ、かつ、保存安定性及び深部硬化性に優れる接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1~15、比較例1~5)
表1~3に記載された配合比に従い、各材料を、混合機にて混合して実施例1~15、比較例1~5の接着剤組成物を得た。混合機としては、ARE-310(シンキー社製)を用いた。
なお、表1~3中、「UVACURE 1561」は、部分アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を約50重量%、ビスフェノールA型エポキシアクリレートを約25重量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を約25重量%含有する混合物(アクリル化合物の含有割合約75重量%)である。
【0076】
<評価>
実施例及び比較例で得られた接着剤組成物について以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0077】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた各接着剤組成物をシリンジ内に充填し、25℃の恒温室内で保管した。製造直後、24時間保管した後、48時間保管した後、1週間保管した後に粘度を測定し、(各時間保管した後の粘度)/(製造直後の初期粘度)を粘度変化率として導出した。
1週間後の粘度変化率が1.2未満であった場合を「◎」、48時間後の粘度変化率が1.2未満、1週間後の粘度変化率が1.2以上であった場合を「○」、24時間後の粘度変化率が1.2未満、48時間後の粘度変化率が1.2以上であった場合を「△」、24時間後の粘度変化率が1.2以上であった場合を「×」として、保存安定性を評価した。
なお、接着剤組成物の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV-III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0078】
(深部硬化性)
実施例及び比較例で得られた各接着剤組成物を、直径3mmの穴を有する黒色のポリカーボネート製の容器に充填した後、穴の方向に1000mJ/cmの紫外線(波長365nm)を照射した。接着剤組成物の表面からの硬化深度を、ノギスを用いて測定した。
硬化深度が2mm以上であった場合を「◎」、1mm以上2mm未満であった場合を「○」、300μm以上1mm未満であった場合を「△」、300μm未満であった場合を「×」として、深部硬化性を評価した。
【0079】
(低硬化収縮性)
実施例及び比較例で得られた各接着剤組成物について、1000mJ/cmの紫外線(波長365nm)を照射した後、80℃で90分間加熱することにより、長さ15mm、幅15mm、厚さ2mmの硬化物を得た。硬化前の接着剤組成物の25℃における比重、及び、接着剤組成物の硬化物の25℃における比重を測定し、上述した式により硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率が2.7%未満であった場合を「◎」、2.7%以上3.0%未満であった場合を「○」、3.0%以上5.0%未満であった場合を「△」、5.0%以上であった場合を「×」として、低硬化収縮性を評価した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、硬化収縮を抑制することができ、かつ、保存安定性及び深部硬化性に優れる接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールを提供することができる。