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  • 特許-ポリイミドフィルムおよび金属張積層板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルムおよび金属張積層板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240902BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20240902BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240902BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B15/088
C08G73/10
H05K1/03 610N
H05K1/03 630H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020100049
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021195379
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】三島 慧
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-133349(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109337072(CN,A)
【文献】特開2015-193117(JP,A)
【文献】特開2005-314630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B 15/088
C08G 73/10
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン成分と酸二無水物成分との反応生成物である、ポリイミドフィルムであって、
前記ジアミン成分は、p-フェニレンジアミンと、4,4’-オキシジアニリンと、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエートとを含有し、
前記ポリイミドフィルムにおいて、水に25℃で24時間浸漬した後の誘電正接が、0.010未満であることを特徴とする、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
25℃における吸湿膨張係数が、14.0ppm/RH%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
熱膨張係数が40.0ppm/K以下であり、
250℃以上、350℃以下の領域においてガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと、
前記ポリイミドフィルムの厚み方向一方面に配置される金属箔とを備えることを特徴とする、金属張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、銅箔と、その表面に配置されるポリイミドフィルムとを備える銅張積層板は、種々の分野に用いられることが知られている。銅張積層板における銅箔から銅パターンを形成した回路基板では、吸湿しても電気特性(具体的には、誘電性)の低下を抑制することが求められる。そのため、ポリイミドフィルムには、吸湿時の誘電性の低下が抑制されること、つまり、低吸湿誘電性が求められる。
【0002】
例えば、4,4-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)5モル部および4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート(APAB)95モル部と、p-メチルフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)100モル部とを反応させたポリイミドフィルムが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-299009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のポリイミドフィルムで、低吸湿誘電性を向上するには、限界がある。
【0005】
本発明は、低吸湿誘電性に優れるポリイミドフィルムと金属張積層板とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、水に25℃で24時間浸漬した後の誘電正接が、0.010未満である、ポリイミドフィルムを含む。
【0007】
本発明(2)は、25℃における吸湿膨張係数が、14.0ppm/RH%以下である、(1)に記載のポリイミドフィルムを含む。
【0008】
本発明(3)は、熱膨張係数が40.0ppm/K以下であり、250℃以上、350℃以下の領域においてガラス転移温度を有する、(1)または(2)に記載のポリイミドフィルムを含む。
【0009】
本発明(4)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの厚み方向一方面に配置される金属箔とを備える、金属張積層板を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリイミドフィルムおよび金属張積層板は、低吸湿誘電性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の金属張積層板の一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ポリイミドフィルム>
ポリイミドフィルムは、所定厚みを有し、厚み方向に直交する面方向に延びる。ポリイミドフィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0013】
<ポリイミドフィルムの物性>
このポリイミドフィルムの物性を説明する。
【0014】
<水浸漬後のポリイミドフィルムの誘電正接>
水に25℃で24時間浸漬した後のポリイミドフィルムの誘電正接(tanδ)は、0.010未満である。水浸漬後のポリイミドフィルムの誘電正接が上記した0.010以上であれば、ポリイミドフィルムを備える回路基板が、吸湿したときに、回路基板の電気特性の低下を抑制できない。回路基板は、ポリイミドフィルムを備える金属張積層板(後述、図1参照)における金属箔をパターンニングして得られる。水浸漬後のポリイミドフィルムの誘電正接の測定方法は、後の実施例で詳述する。
【0015】
水浸漬後のポリイミドフィルムの誘電正接は、好ましくは、0.0090以下、より好ましくは、0.0085以下、さらに好ましくは、0.0080以下、とりわけ好ましくは、0.0075以下であり、また、例えば、0.0001以上である。
【0016】
<ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数(CHE)>
25℃におけるポリイミドフィルムの吸湿膨張係数(Coefficient of Humidity Expansion)は、例えば、22.0ppm/RH%以下、好ましくは、15.0ppm/RH%以下、より好ましくは、14.0ppm/RH%以下である。ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数が上記した上限以下であれば、ポリイミドフィルムは、低吸湿誘電性に優れる。そのため、このポリイミドフィルムを備える金属張積層板が吸湿したときの反りを抑制できる。ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数は、例えば、1.0ppm/RH%以上である。ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数の測定方法は、後の実施例で詳述する。
【0017】
<ポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)>
ポリイミドフィルムの熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion)は、例えば、50.0ppm/K以下、好ましくは、45.0ppm/K以下、より好ましくは、40.0ppm/K以下、さらに好ましくは、35.0ppm/K以下、とりわけ好ましくは、30.0ppm/K以下である。ポリイミドフィルムの熱膨張係数が上記した上限以下であれば、ポリイミドフィルムは、加熱時の膨張が抑制され、つまり、低熱膨張性に優れる。そのため、このポリイミドフィルムを備える金属張積層板が加熱されたときの反りを抑制できる。ポリイミドフィルムの熱膨張係数は、例えば、1.0ppm/K以上である。ポリイミドフィルムの熱膨張係数の測定方法は、後の実施例で詳述する。
【0018】
<ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)>
ポリイミドフィルムは、例えば、250℃~350℃の領域においてガラス転移温度(glass transition temperature)を有する。ポリイミドフィルムが上記した領域でガラス転移温度を有すれば、加熱時のポリイミドフィルムの非晶性が高くなることに起因して、ポリイミドの分子が配向しにくい。そのため、加熱時に応力がかかる方向で偏らない。その結果、ポリイミドフィルムを備える金属張積層板の反りを抑制できる。具体的には、ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、例えば、250℃以上、好ましくは、270℃以上であり、また、例えば、350℃以下好ましくは、290℃以下、より好ましくは、280℃以下である。ポリイミドフィルムのガラス転移温度の測定方法は、後の実施例で詳述する。
【0019】
<ポリイミドフィルムの処方>
ポリイミドフィルムの処方は、特に限定されず、例えば、ジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物である。詳しくは、ポリイミドフィルムは、ジアミン成分と、酸二無水物成分との縮合重合物である。
【0020】
<ジアミン成分>
ジアミン成分の一例は、例えば、p-フェニレンジアミンと、第1の芳香族ジアミンと、第2の芳香族ジアミンとを含有する。
【0021】
p-フェニレンジアミンは、PDAと略称される場合がある。ジアミン成分におけるPDAのモル分率は、後述する。
【0022】
第1の芳香族ジアミンと第2の芳香族ジアミンとは、それらの化学構造式が互いに異なる。一方、第1の芳香族ジアミンと第2の芳香族ジアミンとは、ともに下記式(1)で示される。
【0023】
【化1】
【0024】
(式中、Yは、単結合、-O-、-COO-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-NH-および-NHCO-からなる群から選択される少なくとも1つを示す。)
アミノ基(-NH)は、芳香環において、Yに結合する炭素原子に対してパラ位に位置する炭素原子に結合する。
【0025】
具体的には、第1の芳香族ジアミンと第2の芳香族ジアミンとして、式(1)中のYが-O-である4,4’-オキシジアニリン、式(1)中のYが-COO-である4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、式(1)中のYが-CH-である4,4’-メチレンジアニリン、式(1)中のYが-SO-であるビス(4-アミノフェニル)スルホンが挙げられる。
【0026】
好ましくは、第1の芳香族ジアミンは、4,4’-オキシジアニリンであり、第2の芳香族ジアミンは、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエートである。4,4’-オキシジアニリンは、ODAと略称される場合がある。4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエートは、APABと略称される場合がある。
<各ジアミンのモル分率>
ジアミン成分におけるPDAのモル分率と、第1の芳香族ジアミンのモル分率と、第2の芳香族ジアミンのモル分率とのそれぞれは、例えば、10モル%以上、例えば、70%以下である。PDA、第1および第2の芳香族ジアミンのそれぞれのモル分率が、上記した範囲内であれば、ポリイミドフィルムの低吸湿誘電性を向上できる。
【0027】
ジアミン成分におけるPDAのモル分率は、好ましくは、15モル%以上、より好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、25モル%以上、とりわけ好ましくは、30モル%以上、最も好ましくは、40モル%以上である。PDAのモル分率が上記した下限以上であれば、ポリイミドフィルムの熱膨張係数を低くできる。ジアミン成分におけるPDAのモル分率は、好ましくは、65モル%以下、より好ましくは、60モル%以下である。PDAのモル分率が上記した上限以下であれば、ポリイミドフィルムの吸湿誘電性を向上できる。
【0028】
ジアミン成分における第1の芳香族ジアミンまたは第2の芳香族ジアミンのモル分率は、好ましくは、25モル%以上であり、また、好ましくは、55モル%以下、より好ましくは、50モル%以下である。ジアミン成分における第1の芳香族ジアミンまたは第2の芳香族ジアミンのモル分率が上記した下限以上、上限以下であれば、低熱膨張性に優れ、さらには、低吸湿膨張性に優れる(吸湿時の膨張性が抑制される)。そのため、このポリイミドフィルムが金属箔に積層された金属張積層板は、反りを低減できる。
【0029】
第1の芳香族ジアミンがODAであり、第2の芳香族ジアミンがAPABである場合には、ジアミン成分における第1の芳香族ジアミンのモル分率が、好ましくは、25モル%以上であり、また、好ましくは、55モル%以下、より好ましくは、50モル%以下であり、ジアミン成分における第2の芳香族ジアミンのモル分率が、好ましくは、25モル%以上であり、また、好ましくは、45モル%以下、より好ましくは、40モル%以下である。第1および第2の芳香族ジアミンのモル分率が上記した範囲にあれば、ポリイミドフィルムは、低熱膨張性に優れ、さらには、低吸湿膨張性に優れる。
【0030】
ジアミン成分における第1の芳香族ジアミンおよび第2の芳香族ジアミンの合計のモル分率は、ジアミン成分がPDA、第1および第2の芳香族ジアミンのみを含む場合には、ジアミン成分におけるPDAのモル分率の残部であって、具体的には、例えば、30モル%以上、好ましくは、35モル%以上、より好ましくは、40モル%以上であり、また、例えば、90モル%以下、好ましくは、85モル%以下、より好ましくは、80モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以下、とりわけ好ましくは、60モル%以下である。
【0031】
また、PDA100モル部に対する第1の芳香族ジアミンおよび第2の芳香族ジアミンの合計のモル部は、例えば、10モル部以上、好ましくは、25モル部以上、より好ましくは、50モル部以上であり、また、例えば、1000モル部以下、好ましくは、500モル部以下、より好ましくは、200モル部以下、さらに好ましくは、100モル部以下である。
【0032】
第1の芳香族ジアミンがODAであり、第2の芳香族ジアミンがAPABである場合には、第1の芳香族ジアミン100モル部に対する第2の芳香族ジアミンのモル部数が、例えば、25モル部以上、好ましくは、50モル部以上、より好ましくは、75モル部以上であり、また、例えば、300モル部以下、好ましくは、200モル部以下、より好ましくは、150モル部以下である。
【0033】
なお、ジアミン成分は、上記したPDA、第1および第2の芳香族ジアミン以外の他のジアミンとして、例えば、脂肪族アミン(例えば、特開2015-193117号公報に記載されるダイマー酸型ジアミンを含む)などを含むことができる。
【0034】
好ましくは、ジアミン成分は、他のジアミン(とりわけ、ダイマー酸型ジアミン)を含まず、上記したPDA、第1および第2の芳香族ジアミンのみを含む。
【0035】
以下、ジアミン成分が、ダイマー酸型ジアミンを含まず、PDA、第1および第2の芳香族ジアミンを含むことの好適な理由を記載する。ジアミン成分がダイマー酸型ジアミンを含むポリイミドフィルムが吸湿すると、ダイマー酸型ジアミン残基骨格に含まれる長鎖アルキルは、運動性が高い。そのため、ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数が高くなる。他方、ジアミン成分がダイマー酸型ジアミンを含まず、PDA、第1および第2の芳香族ジアミンを含むポリイミドフィルムでは、PDA、第1および第2の芳香族ジアミンにおける芳香環による強い分子間相互作用と、芳香環に基づく剛直な構造とによって、運動性が低い。そのため、ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数が低くなる。
【0036】
また、ダイマー酸型ジアミン残基骨格に含まれる長鎖アルキルは、自由度が高い。自由度は、ダイマー酸型ジアミン残基骨格が回転および振動できる実質的な体積範囲を意味する。そのため、加熱によって長鎖アルキルの運動性が高くなり易く、ポリイミドフィルムの熱膨張係数が高くなる。他方、ジアミン成分がダイマー酸型ジアミンを含まず、PDA、第1および第2の芳香族ジアミンを含むポリイミドフィルムでは、PDA、第1および第2の芳香族ジアミンにおける芳香環による強い分子間相互作用と、芳香環に基づく剛直な構造とによって、自由度が低い。そのため、ポリイミドフィルムが加熱されても、ポリイミドフィルムの熱膨張係数が低くなる。
【0037】
<ジアミン成分の他例>
ジアミン成分は、上記した一例に限定されず、例えば、ジアミン成分の他例として、上記したPDAを含有せず、上記した第1の芳香族ジアミンと上記した第2の芳香族ジアミンとを含有するジアミン成分が挙げられる。ジアミン成分の他例は、好ましくは、ジアミン成分は、上記したPDAを含有せず、第1の芳香族ジアミンと第2の芳香族ジアミンとのみを含有する。
【0038】
第1の芳香族ジアミンがODAであり、第2の芳香族ジアミンがAPABである場合には、ジアミン成分における第1の芳香族ジアミンのモル分率が、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、より好ましくは、30モル%以上、さらに好ましくは、50モル%超過であり、また、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下、より好ましくは、70モル%以下である。ジアミン成分における第2の芳香族ジアミンのモル分率が、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、より好ましくは、30モル%以上であり、また、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下、より好ましくは、70モル%以下、さらに好ましくは、50モル%未満である。第1の芳香族ジアミンがODAであり、第2の芳香族ジアミンがAPABである場合には、第1の芳香族ジアミン100モル部に対する第2の芳香族ジアミンのモル分率が、例えば、10モル部以上、好ましくは、25モル部以上、より好ましくは、50モル部以上、さらに好ましくは、60モル部以上であり、また、例えば、1500モル部以下、好ましくは、1000モル部以下、より好ましくは、200モル部以下、さらに好ましくは、100モル部未満、とりわけ好ましくは、80モル部以下である。第1および第2の芳香族ジアミンの割合が上記範囲にあれば、水浸漬後のポリイミドフィルムの誘電正接を低くでき、さらには、ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数および熱膨張係数を低くできる。
【0039】
<酸二無水物成分>
酸二無水物成分は、例えば、芳香環を含む酸二無水物を含有する。芳香環を含む酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物(別称:ピロメロット酸二無水物)、例えば、3、3’-4、4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などのベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、例えば、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2、2’-3、3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2、3、3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3、3’、4、4’-ジフェニルエ-テルテトラカルボン酸二無水物などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、例えば、3、3’、4、4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などのジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、例えば、2、3、6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1、2、5、6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1、2、4、5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1、4、5、8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などのナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。好ましくは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、より好ましくは、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0040】
なお、酸二無水物成分は、芳香環を含む酸二無水物以外の他の酸二無水物を含むことができる。好ましくは、酸二無水物成分は、他の酸二無水物を含まず、芳香環を含む酸二無水物のみを含む。
【0041】
ジアミン成分と酸二無水物成分との割合は、ジアミン成分のアミノ基(-NH)のモル量と、酸無水物成分の酸無水物基(-CO-O-CO-)のモル量が、例えば、等量となるように、調整される。
<製造方法>
このポリイミドフィルムは、上記したジアミン成分(一例および他例を含む)と、上記した酸二無水物成分とを反応させて得られる。この反応は、限定されないが、重縮合であり、その方法として、例えば、ポリアミド酸を経由する2段法が挙げられる。
【0042】
例えば、ジアミン成分と有機溶媒とを配合して、ジアミン成分溶液を調製する。有機溶媒は、特に限定されず、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン溶媒、例えば、エーテル溶媒、エステル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。好ましくは、極性非プロトン溶媒が挙げられる。ジアミン成分100質量部に対する有機溶媒の質量部数は、例えば、100質量部以上であり、また、例えば、1,000質量部以下である。ジアミン成分溶液におけるジアミン成分の百分率が、例えば、1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下である。
【0043】
次いで、ジアミン成分溶液と酸二無水物成分とを配合して、混合物を調製する。この際、必要により、有機溶媒を混合物に適宜の量で追加できる。
【0044】
その後、この混合物を加熱する。これによって、ジアミン成分と酸二無水物成分との開環重付加反応により、ポリアミド酸溶液が調製される。加熱温度は、例えば、50℃以上、100℃以下である。
【0045】
その後、ポリアミド酸溶液を基材に塗布して、その後、有機溶媒を除去し、その後、加熱する。これによって、ポリアミド酸の脱水環化反応により、ポリアミド酸がアミド化される。
【0046】
基材は、厚み方向に直交する方向に延びるシート形状を有する。基材としては、金属箔、樹脂シートなどが挙げられる。
【0047】
有機溶媒を除去するには、ポリアミド酸溶液を、例えば、100℃以上、150℃以下で加熱する。ポリアミド酸をアミド化するには、ポリアミド酸を、例えば、真空下で、例えば、300℃以上、450℃以下で、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上加熱する。
【0048】
これによって、基材の厚み方向一方面に配置されるポリイミドフィルムが得られる。
【0049】
その後、基材を除去する。
【0050】
これによって、ポリイミドフィルムが得られる。
【0051】
<金属張積層板>
次に、ポリイミドフィルムを備える金属張積層板を、図1を参照して説明する。
【0052】
金属張積層板1は、ポリイミドフィルム2と、ポリイミドフィルム2の厚み方向一方面に配置される金属箔3とを備える。
【0053】
ポリイミドフィルム2は、金属張積層板1の厚み方向他方面を形成する。
【0054】
金属箔3は、金属張積層板1の厚み方向一方面を形成する。金属箔3は、ポリイミドフィルム2の厚み方向一方面の全部に接触する。金属箔の材料としては、例えば、銅、鉄、ステンレスなどが挙げられ、好ましくは、銅が挙げられる。金属箔3の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0055】
上記したポリイミドフィルムの製造方法において、基材としての金属箔3を除去せず、残す。これによって、ポリイミドフィルム2と、金属箔3とを厚み方向一方側に順に備える金属張積層板1が得られる。
【0056】
金属張積層板1の厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2,000μm以下、好ましくは、1,000μm以下である。
【0057】
<作用効果>
そして、ポリイミドフィルムでは、水に25℃で24時間浸漬した後の誘電正接が0.010未満であるので、低吸湿誘電性に優れる。
【0058】
そのため、金属張積層板1における金属箔3から金属パターン(図示せず)を形成した回路基板(図示せず)では、吸湿しても、誘電性の低下を抑制できる。
【0059】
さらに、25℃におけるポリイミドフィルムの吸湿膨張係数が、14.0ppm/RH%以下であれば、ポリイミドフィルムは、低吸湿膨張性に優れる。そのため、金属張積層板1が吸湿したときの反りを抑制できる。
【0060】
また、ポリイミドフィルムは、熱膨張係数が40.0ppm/K以下であり、250℃以上、350℃以下の領域においてガラス転移温度を有すれば、金属張積層板1が加熱された後の反りを抑制できる。
【0061】
<変形例>
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0062】
図1の仮想線で示すように、金属張積層板1は、さらに、ポリイミドフィルム2の厚み方向他方面に配置される第2金属箔4を備えることもできる。第2金属箔4は、上記した金属箔3と同様の構成を有する。この金属張積層板1では、第2金属箔4と、ポリイミドフィルム2と、金属箔3とが、厚み方向一方側に向かって順に配置される。
【0063】
酸二水物成分と有機溶媒とを配合して酸二無水物成分溶液をまず調製し、その後、ジアミン成分を酸二無水物成分溶液に配合することもできる。
【実施例
【0064】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替できる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0065】
<比較例1>
3000mLのセパラブルフラスコに、PDA129.77gと、ODA60.07gと、NMP2943mLとを加え、25℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物441.33gを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0066】
<比較例2>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、ODA12.01gと、脱水NMP140mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物17.65gと、脱水NMP10mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0067】
<比較例3>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、APAB10.27gと、脱水NMP100mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物13.24gと、脱水NMP18mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0068】
<比較例4>
300mLのセパラブルフラスコに、ODA0.50gと、APAB10.84gと、脱水NMP120mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71gと、脱水NMP10mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸絵溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0069】
参考例1>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、ODA5.42gと、APAB4.11gと、脱水NMP100mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物13.24gと、脱水NMP14mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0070】
<実施例2>
窒素気流下、1000mLのセパラブルフラスコに、PDA14.27gと、ODA8.81gと、APAB10.04gと、NMP470mLとを加え、40℃で20分間攪拌して、ジアミン溶液を調製した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物64.73gと、脱水NMP21mLとをさらに加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を得た。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)へ塗布し、送風乾燥機で80℃,15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0071】
<実施例3>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、PDA2.16gと、ODA2.00gと、APAB4.57gと、脱水NMP105mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71gと、脱水NMP13mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0072】
<実施例4>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、PDA0.97gと、ODA3.60gと、APAB4.11gと、脱水NMP100mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物13.24gと、脱水NMP10mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0073】
<実施例5>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、PDA1.08gと、ODA6.01gと、APAB2.28gと、脱水NMP100mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71gと、脱水NMP21mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0074】
<実施例6>
窒素気流下、300mLのセパラブルフラスコに、PDA2.70gと、ODA3.00gと、APAB2.28gと、脱水NMP100mLとを加え、40℃で20分間攪拌した。続いて、3、3’-4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71gと、脱水NMP15mLとを加え、80℃で攪拌した。攪拌を止め、放冷し、褐色のポリアミック酸溶液を調製した。ポリアミック酸溶液をアプリケーター(テスター産業社製SA-201)で厚み12μmの銅箔(JX金属社製BHY-82F-HA-V2)に塗布し、送風乾燥機で80℃、15分間続いて120℃25分間乾燥し、さらに真空加熱炉で390℃、185分間加熱し、イミド化した。これにより、ポリイミドフィルム2と、銅箔3とを順に備える銅張積層板1を得た。その後、銅箔3をFeCl溶液を用いて溶解することによって、ポリイミドフィルム2を得た。
【0075】
各実施例および各比較例におけるジアミン成分のモル分率を表1に整理して記載する。
【0076】
<ポリイミドフィルムの評価>
各実施例および各比較例のポリイミドフィルム2について、下記の項目を評価した。結果を表1に記載する。
【0077】
<水浸漬後のポリイミドフィルムの誘電正接(tanδ)>
ポリイミドフィルム2を純水に25℃で24時間浸漬した。その後、ポリイミドフィルム2を純水から取り出し、ポリイミドフィルム2の表面の水滴をふき取り、即座にSPDR誘電体共振器(アジレント・テクノロジー社製)により、ポリイミドフィルム2の誘電正接(tanδ)を測定した。
【0078】
<ポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)>
ポリイミドフィルム2を、幅4mm、長さ40mmの大きさに外形加工してサンプルを作製した。サンプルを熱機械的分析装置(TA Instruments社製 TMAQ400 )に設置し、0.01Nの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で0℃から200℃まで昇温させた。次いで、サンプルを、降温速度20℃/分で200℃から0℃まで冷却した。その後、サンプルを、再度、昇温速度2℃/分で0℃から200℃まで昇温させ、100℃から200℃の平均熱膨張係数を熱膨張係数として求めた。
【0079】
<ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)>
ポリイミドフィルム2を、幅5mm、長さ40mmの大きさに外形加工してサンプルを作製した。サンプルを動的粘弾性装置(TA Instruments社製 RSA-2G )にセットした。窒素気流中、周波数1Hzでサンプルに歪みを与えながら、0℃から450℃まで昇温させ、引張貯蔵弾性率E’および引張損失弾性率E’’を測定し、損失正接(tanδ=E''/E')を取得した。損失正接のピークトップをポリイミドフィルム2のガラス転移温度(Tg)として求めた。
【0080】
<ポリイミドフィルムの吸湿熱膨張係数(CHE)>
ポリイミドフィルム2を、幅4mm、長さ20mmの大きさに外形加工してサンプルを作製した。サンプルを湿度制御型TMA(Bruker AXS製 HC-TMA400SA)のチャックに装着した。25℃の定温条件にて2gの荷重をかける引張法にて湿度4%RHから85%RHまで4%RH/minで加湿し、85%RHに到達後、伸張が1μm/hとなったところを最大伸長点として、ポリイミドフィルム2の湿度膨張係数(CHE)を求めた。
【0081】
<銅張積層板の評価>
各実施例および各比較例における製造途中の銅張積層板1、つまり、銅箔3を除去する前の銅張積層板1について、下記の項目を評価した。結果を表1に記載する。
【0082】
<吸湿後の銅張積層板の反り>
銅張積層板1を、幅4mm、長さ50mmの大きさに外形加工してサンプルを作製した。別途、80℃の水2000mLを容器に入れ、さらに前記容器内に、上面および下面がメッシュ状になっているステンレス製の試験官立て(96mm×188mm×85mm:三和化研工業製)を入れた。前記容器内の水面から鉛直方向7cmの位置に、前記試験官立ての上面が位置していた。その後、サンプルを1cm間隔で、前記試験官立ての上面上に配置した。続いて、容器を密閉した。密閉された容器を外気温度25℃で、72時間放置した。放置中は、水の蒸発に基づいて、サンプルのポリイミドフィルム2が吸湿した。その後、長手方向一端部を平板の一方面に固定し、長手方向他端部が、一方面からどれほど離れたか(距離)を測定した。
【0083】
下記の基準に従って、反りを評価した。
○:他端部と平板との距離が、15mm未満であった。
×:他端部と平板との距離が、15mm以上であった。
【0084】
<加熱後の銅張積層板の反り>
銅張積層板1を、幅4mm、長さ50mmの大きさに外形加工してサンプルを作製した。サンプルを200℃のオーブンで15時間加熱し、その後、放冷した。長手方向一端部を平板の一方面に固定し、長手方向他端部が、一方面からどれほど離れたか(距離)を測定した。
【0085】
下記の基準に従って、反りを評価した。
○:他端部と平板との距離が、13mm未満であった。
×:他端部と平板との距離が、13mm以上であった。
【0086】
【表1】
【符号の説明】
【0087】
1 金属張積層板
2 ポリイミドフィルム
3 金属箔(銅箔)
図1