(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】環境エネルギーを利用した電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240902BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240902BHJP
H01M 8/16 20060101ALI20240902BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240902BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20240902BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240902BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240902BHJP
H02S 10/10 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
H02M3/28 Z
H02J7/00 303C
H02J7/00 302C
H01M8/16
H01M8/00 A
H01M8/04 Z
H01M8/04858
H01M12/06 Z
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02S10/10
(21)【出願番号】P 2020104271
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】中原 康希
(72)【発明者】
【氏名】石渡 洋志
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亘
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212580(JP,A)
【文献】特表2012-533146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02J 7/00
H01M 8/16
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/04858
H01M 12/06
H01M 10/44
H01M 10/48
H02S 10/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境エネルギーを利用した電源システムであって、
自然界の環境エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する複数の一次電池と、
入力部と出力部が絶縁された複数の絶縁型コンバータと、
前記複数の絶縁型コンバータの各出力部が直列接続された両端部からの出力電圧を一定電圧に制御して出力する定電圧回路と、
複数の前記絶縁型コンバータと前記定電圧回路と複数の前記絶縁型コンバータ及び前記定電圧回路の動作を制御する制御部とを有する昇圧制御部と、
電気エネルギーを蓄電する蓄電池と、
前記蓄電池と前記昇圧制御部と負荷の相互間の接続状態を切り替える切替制御部と、
前記蓄電池への充電方向と前記蓄電池からの電気エネルギー供給方向を制御する双方向制御部と、を備え、
前記複数の絶縁型コンバータの各入力部が前記複数の一次電池のそれぞれに接続され、前記複数の絶縁型コンバータの各出力部が直列接続されていること、を特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記双方向制御部は電圧変換機能を備え、前記蓄電池への充電時は、前記蓄電池の定格電圧に電圧変換し、前記蓄電池からの電気エネルギー供給時は、負荷に必要な負荷電圧に電圧変換すること、を特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記蓄電池は、前記双方向制御部及び前記切替制御部を介して前記負荷に接続されており、また、前記双方向制御部、前記切替制御部及び前記昇圧制御部を介して前記複数の一次電池に接続されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電源システムは、さらに、
前記絶縁型コンバータの駆動を停止し、前記切替制御部により前記昇圧制御部と前記負荷を前記蓄電池から切り離した状態で、前記蓄電池からの電圧を各一次電池に逆極性で印加する逆バイアス制御部を備えること、を特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項5】
前記逆バイアス制御部は、前記一次電池に逆極性で印加する逆バイアス電圧の電圧を調整可能なこと、を特徴とする請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記一次電池は、微生物燃料電池であること、を特徴とする
請求項4又は5に記載の電源システム。
【請求項7】
前記一次電池は、振動発電電池、光発電電池、温度差発電電池、金属空気電池、燃料電池及び微生物燃料電池のいずれか1つ又は2つ以上を含む一次電池であること、を特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項8】
前記絶縁型コンバータは、入力側にスイッチング素子によりパルス幅変調、周波数変調又は位相変調を行う駆動部を備えていること、を特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項9】
前記昇圧制御部は、前記定電圧回路の出力側又は入力側に電圧を合算して検出する合算電圧検出部と電流を検出する合算電流検出部とをさらに有し、
前記電源システムは、さらに、前記蓄電池の電圧を検出する蓄電池電圧検出部と、前記蓄電池の電圧が、前記双方向制御部により電圧変換された後の電圧と電流を検出する蓄電池出力電圧検出部と蓄電池出力電流検出部とを備えるとともに、前記負荷の電圧を検出する負荷電圧検出部と前記負荷に流れる電流を検出する負荷電流検出部とを備えていること、を特徴とする
請求項8に記載の電源システム。
【請求項10】
前記一次電池の電気エネルギーを前記負荷に供給する場合に、前記切替制御部で前記昇圧制御部と前記負荷とを接続するとともに前記双方向制御部を切り離し、前記負荷に必要な負荷電圧と、前記合算電圧検出部で検出された電圧が一致するように、前記複数の前記絶縁型コンバータの前記駆動部及び定電圧回路を制御すること、を特徴とする請求項9に記載の電源システム。
【請求項11】
前記一次電池の電気エネルギー及び前記蓄電池の電気エネルギーを前記負荷に供給する場合には、前記切替制御部は、前記昇圧制御部と前記双方向制御部を前記負荷に接続することで、前記一次電池から前記負荷への電気エネルギーの供給と前記蓄電池から前記負荷への電気エネルギーの供給とを可能とし、前記双方向制御部は、前記蓄電池から前記負荷へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替えるととともに、前記負荷に必要な負荷電圧に電圧変換すること、を特徴とする請求項9に記載の電源システム。
【請求項12】
前記負荷に必要な負荷電圧よりも前記合算電圧検出部で検出された電圧が低くなった場合に、前記切替制御部は、前記昇圧制御部を切り離すことで、前記蓄電池から前記負荷への電気エネルギー供給のみにすること、を特徴とする請求項11に記載の電源システム。
【請求項13】
前記電源システムは、前記蓄電池の電圧を検出する蓄電電圧検出部をさらに備え、
前記蓄電電圧検出部で検出された電圧が定格電圧以下で、前記負荷電流検出部で検出された電流がゼロの場合には、前記切替制御部は、前記昇圧制御部と前記双方向制御部を接続するとともに前記負荷を切り離すことで、前記昇圧制御部から前記蓄電池への電気エネルギー供給に切り替え、前記双方向制御部は、前記昇圧制御部から前記蓄電池へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替えるとともに、前記蓄電池の定格電圧に電圧変換して、前記蓄電池を充電する制御をすること、を特徴とする請求項9に記載の電源システム。
【請求項14】
前記蓄電池への充電中に前記蓄電電圧検出部で検出された電圧が定格電圧に達した場合には、前記切替制御部は前記双方向制御部を切り離すことで
前記蓄電池を切り離し、前記蓄電池への充電を中止する制御をすること、を特徴とする請求項13に記載の電源システム。
【請求項15】
前記電源システムは、さらに、前記絶縁型コンバータの駆動を停止し、前記切替制御部により前記昇圧制御部と前記負荷を前記蓄電池から切り離した状態で、前記蓄電池からの電圧を各一次電池に逆極性で印加する逆バイアス制御部を備え、
前記一次電池の再生動作を行う場合には、前記切替制御部により前記昇圧制御部と前記負荷を切り離した状態で、前記逆バイアス制御部が前記蓄電池からの逆バイアス電圧を前記一次電池のそれぞれに印加すること、を特徴とする請求項9に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然界の環境エネルギーを利用した電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然界の環境エネルギーを利用した一次電池は、太陽光による太陽電池(光発電電池)、空気と水又は海水等を利用した金属空気電池、温度差を利用した温度差発電電池、土壌の有機物や植物の光合成による土壌の有機物を利用した微生物燃料電池等がある。これらの一次電池は、環境エネルギーを利用しているため、二酸化炭素の排出が無くクリーンなエネルギーであるが、取り出せる出力電圧が0.5~1.5V程度と低く、直列接続や昇圧回路により高電圧化する必要がある。太陽光を利用した太陽電池は、直列接続が可能であるが、太陽が照射している時にしか発電できず、照射強度にも依存しているため、出力が不安定である。
【0003】
微生物燃料電池は、微生物の異化代謝能を利用して有機物から電気エネルギーを生産するシステムであり、土壌中の有機物や植物の光合成から生成される糖を利用している。糖は、根から放出され、土壌中に存在するバクテリア(シュワネラ菌)により分解され、水素イオン(H+)と電子を作る。このため、電極は土壌に設置する必要があり、直列絶続するためには技術的工夫が必要となる。
【0004】
特許文献1には、ヘドロを利用した微生物燃料電池が開示されている。絶縁性の材料からなる筒状の保持体と、内部を満たす水層及びヘドロ層から構成されている。保持体102における内壁面の下部に貼り付けられたアノード電極及び内壁面の上部に貼り付けられたカソード電極を有し、アノード電極は、ヘドロ層中に配置され、カソード電極は水層中に配置されている。この場合、下端部におけるヘドロの含水比が、少なくとも80%未満であれば、個々の微生物燃料電池を独立させ、直列接続することが可能なことが開示されている。
【0005】
特許文献2には、植物を利用した2層型の微生物燃料電池が開示されている。容器は、アノード区画とカソード区画を備え、イオン交換膜によってお互いが分離されている。個別容器での微生物燃料電池は、直列接続することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-084541号公報
【文献】米国特許出願公開第2010/0190039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微生物燃料電池は、取り出せる出力電圧が低く、直列接続や昇圧回路により高電圧化する必要がある。独立した個別の容器で微生物燃料電池を構成した場合は、直列接続可能であるが、原野やヘドロ等の土壌に電極を設置する場合は、直列接続は難しく、絶縁容器で囲う必要があった。また、微生物燃料電池は、植物の生育状態や土壌の状態により出力電圧が不安定となりやすい。太陽光を利用した太陽電池も、太陽の照射時しか発電せず、照射のバラツキもあり出力電圧が不安定となる。
【0008】
しかしながら、例えば、太陽電池の効率の良さや、微生物燃料電池の天候に左右されず常に発電しているといった特徴があり、これら特徴を生かして、安定に高出力電圧を取り出せる電源システムが望まれている。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、例えば微生物燃料電池のような直列接続できない一次電池を電気回路で直列接続可能として、安定に高出力電圧を取り出せる電源システムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の電源システムは、環境エネルギーを利用した電源システムであって、自然界の環境エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する複数の一次電池と、入力部と出力部が絶縁された複数の絶縁型コンバータと、を備え、前記複数の絶縁型コンバータの各入力部が前記複数の一次電池のそれぞれに接続され、前記複数の絶縁型コンバータの各出力部が直列接続されていること、を特徴とする。
【0011】
このように、本発明の電源システムは、絶縁型コンバータの各入力部(一次側)が一次電池のそれぞれに接続され、絶縁された各出力部(二次側)が直列接続されている。したがって、本発明の電源システムは、例えば微生物燃料電池のような直列接続できない一次電池を電気回路で直列接続可能として、安定に高出力電圧を取り出せる電源システムとなる。この場合、微生物燃料電池の複数のカソード電極とアノード電極を土壌に埋め、各電極をそれぞれ絶縁型コンバータの各入力部に接続し、複数の絶縁型コンバータの各出力部を直列接続することで、高電圧化が可能である。
【0012】
[2]本発明の電源システムにおいて、前記一次電池は、振動発電電池、光発電電池、温度差発電電池、金属空気電池、燃料電池及び微生物燃料電池のいずれか1つ又は2つ以上を含む一次電池であることが好ましい。
【0013】
このように、本発明の電源システムは、自然界の環境エネルギーを利用した様々な原理の一次電池に適用可能であり、例えば、振動発電電池、光発電電池(太陽電池)、温度差発電電池、金属空気電池、微生物燃料電池、またはこれらを組み合わせたものにより、それぞれの特徴を生かしたエネルギー効率の良い電源システムを構築することが可能になる。
【0014】
また、本発明の電源システムにおいて、特に一次電池として微生物燃料電池を用いた場合、微生物燃料電池が天候に左右されず常に発電可能であるという特徴を活かして、負荷に電流を流さないときに蓄電池に充電することで、エネルギー効率の良い電源システムを構築することが可能になる。
【0015】
また、本発明の電源システム60において、微生物燃料電池を用いているため、安定な出力電圧が得られると同時に、常時発電という特徴を生かした蓄電システムとしても利用可能である。
【0016】
[3]本発明の電源システムにおいて、前記電源システムは、さらに、前記複数の絶縁型コンバータ4の各出力部が直列接続された両端部からの出力電圧を一定電圧に制御して出力する定電圧回路を備えることが好ましい。
【0017】
このように、本発明の電源システムによれば、直列接続した絶縁型コンバータの出力側に定電圧回路を設けることにより安定な出力電圧が得られる。
【0018】
[4]本発明の電源システムにおいて、前記電源システムは、さらに、複数の前記絶縁型コンバータと前記定電圧回路と複数の前記絶縁型コンバータ及び前記定電圧回路の動作を制御する制御部とを有する昇圧制御部と、電気エネルギーを蓄電する蓄電池と、前記蓄電池と前記昇圧制御部と負荷の相互間の接続状態を切り替える切替制御部と、前記蓄電池への充電方向と前記蓄電池からの電気エネルギー供給方向を制御する双方向制御部とを備えることが好ましい。
【0019】
このような構成により、本発明の電源システムによれば、一次電池の出力が不足する場合であっても、蓄電池の併用により、負荷への安定なエネルギー供給が可能である。
【0020】
[5]本発明の電源システムにおいて、前記双方向制御部は電圧変換機能を備え、前記蓄電池への充電時は、前記蓄電池の定格電圧に電圧変換し、前記蓄電池からの電気エネルギー供給時は、負荷に必要な負荷電圧に電圧変換することが好ましい。
【0021】
双方向制御部が電圧変換機能を備えることにより、一次電池と蓄電池の双方から負荷への適正な電圧で電気エネルギー供給が可能となり、また、一次電池から蓄電池への充電も蓄電池の定格電圧で可能となる。
【0022】
[6]本発明の電源システムにおいて、前記蓄電池は、前記双方向制御部及び前記切替制御部を介して前記負荷に接続されており、また、前記双方向制御部、前記切替制御部及び前記昇圧制御部を介して前記複数の一次電池に接続されていることが好ましい。
【0023】
このように、本発明の電源システムによれば、前記双方向制御部及び前記切替制御部により、蓄電池の電気エネルギーを負荷に供給することもできるし、一次電池の電気エネルギーを蓄電池に充電することもできる。
【0024】
[7」本発明の電源システムにおいて、前記電源システムは、さらに、前記切替制御部により前記昇圧制御部56と前記負荷を前記蓄電池から切り離した状態で、前記蓄電池からの電圧を各一次電池に逆極性で印加する逆バイアス制御部を備えることが好ましい。
【0025】
このように、本発明の電源システムによれば、蓄電池の電気エネルギーを微生物燃料電池の再生のために用いることもできる。すなわち、アノード電極の劣化を防止するとともに、電子をアノード電極に集めることができ発電効率の低下を防止することもできる。
【0026】
[8」本発明の電源システムにおいて、前記逆バイアス制御部は、前記一次電池に逆極性で印加する逆バイアス電圧の電圧を調整可能なことが好ましい。
【0027】
このように、本発明の電源システムによれば逆バイアス電圧が任意に調整でき、最適な逆バイアス電圧を印加することができる。
【0028】
[9」本発明の電源システムによれば、前記一次電池は微生物燃料電池であることが好ましい。
【0029】
一次電池を微生物燃料電池とすることにより、天候に関係なく常時発電しているため、電気エネルギーを効果的に使用、蓄電できる。
【0030】
[10」本発明の電源システムにおいては、前記絶縁型コンバータは、入力側にスイッチング素子によりパルス幅変調、周波数変調又は位相変調を行う駆動部を備えていることが好ましい。
【0031】
このように、本発明の電源システムによれば、絶縁型コンバータをパルス幅変調、周波数変調又は位相変調することにより、それぞれの一次電池の状態により絶縁型コンバータの出力電圧が調整可能となる。
【0032】
[11」本発明の電源システムにおいて、前記昇圧制御部は、前記定電圧回路の出力側又は入力側に電圧を合算して検出する合算電圧検出部と電流を検出する合算電流検出部とをさらに有し、前記電源システムは、さらに前記蓄電池の電圧を検出する蓄電池電圧検出部と、前記蓄電池の電圧が、前記双方向制御部により電圧変換された後の電圧と電流を検出する蓄電池出力電圧検出部と蓄電池出力電流検出部とを備えるとともに、負荷の電圧を検出する負荷電圧検出部と負荷に流れる電流を検出する負荷電流検出部とを備えていることが好ましい。
【0033】
このような構成により、本発明の電源システムによれば、定電圧回路、蓄電池及び双方向制御部の電圧と電流を監視することができ、コンピュータによる制御が可能となる。これにより、一次電池の電気エネルギーを負荷に供給する通常動作、一次電池の電気エネルギー及び蓄電池の電気エネルギーを負荷に供給する分担動作、一次電池の電気エネルギーで蓄電池を充電する充電動作、及び、蓄電池の電気エネルギーで一次電池を再生する再生動作のいずれかを状況に応じて行える。
【0034】
[12]本発明の電源システムにおいて、前記一次電池の電気エネルギーを前記負荷に供給する場合には、前記切替制御部が前記昇圧制御部と前記負荷とを接続するとともに前記双方向制御部を切り離した状態で、前記負荷に必要な負荷電圧と、前記合算電圧検出部で検出された電圧が一致するように、前記複数の前記絶縁型コンバータの前記駆動部及び定電圧回路を制御することが好ましい。
【0035】
このように、本発明の電源システムによれば、一次電池の電気エネルギーを負荷に供給する通常動作が可能になる。
【0036】
[13]本発明の電源システムにおいて、例えば、過負荷により一次電池の発電容量が不足しているような場合(この場合、微生物燃料電池電圧検出部で検出された出力電圧が一定値以下であり、蓄電電圧検出部で検出された蓄電電圧が定格値以上となる場合)において、前記一次電池の電気エネルギー及び前記蓄電池の電気エネルギーを前記負荷に供給する場合には、前記切替制御部は、前記昇圧制御部と前記双方向制御部を前記負荷に接続することで、前記一次電池から前記負荷への電気エネルギーの供給と前記蓄電池から前記負荷への電気エネルギーの供給とを可能とし、前記双方向制御部は、前記蓄電池から前記負荷へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替えるとともに、前記負荷に必要な負荷電圧に電圧変換することが好ましい。
【0037】
本発明の電源システムによれば、例えば、過負荷により一次電池の発電容量が不足しているような場合において、一次電池の電気エネルギー及び蓄電池の電気エネルギーの両方を負荷に供給する分担動作を行うことが可能になる。
【0038】
[14]本発明の電源システムにおいて、前記負荷に必要な負荷電圧よりも前記合算電圧検出部で検出された電圧が低くなった場合(この場合、昇圧制御部の出力電圧が不足するようになる)には、前記切替制御部は、前記昇圧制御部を切り離すことで、前記蓄電池から前記負荷への電気エネルギー供給のみにすることが好ましい。
【0039】
このように、本発明の電源システムによれば、一次電池の出力が不足するようになった場合、蓄電池の電気エネルギーのみを負荷に供給することが可能になる。
【0040】
[15]本発明の電源システム60において、前記蓄電電圧検出部で検出された電圧が定格電圧以下で、前記負荷電流検出部で検出された電流がゼロの場合(すなわち負荷が動作していないか接続されていない状態)には、前記切替制御部は、前記昇圧制御部と前記双方向制御部を接続するとともに前記負荷を切り離すことで、前記昇圧制御部から前記蓄電池への電気エネルギー供給に切り替えるとともに、前記双方向制御部は、前記昇圧制御部から前記蓄電池へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替えるとともに、前記蓄電池の定格電圧に電圧変換して、前記蓄電池を充電する制御をすることが好ましい。
【0041】
このように、本発明の電源システムによれば、一次電池の電気エネルギーで蓄電池を充電する充電動作を行うことが可能になる。
【0042】
[16]本発明の電源システムにおいて、前記蓄電池への充電中に前記蓄電池電圧検出部で検出された電圧が定格電圧に達した場合(すなわち充電が終了した場合)には、前記切替制御部は前記双方向制御部を切り離すことで前記蓄電池を切り離し、前記蓄電池への充電を中止する制御をすることが好ましい。
【0043】
このように、本発明の電源システムによれば、蓄電池に十分な電力が充電された場合に充電動作を中止し、一次電池から切り離すことにより、一次電池の変動に対しても安定した蓄電電圧を維持することが可能になる。
【0044】
[17]本発明の電源システムにおいて、前記一次電池の再生動作を行う場合には、前記切替制御部により前記昇圧制御部と前記負荷を切り離した状態で、前記逆バイアス制御部が前記蓄電池からの逆バイアス電圧を前記一次電池のそれぞれに印加することが好ましい。
【0045】
本発明の電源システムによれば、蓄電池の電気エネルギーで一次電池、特に、微生物燃料電池を再生する再生動作に効果がある。
【発明の効果】
【0046】
本発明の電源システムは、絶縁型コンバータの各入力部(一次側)が一次電池のそれぞれに接続され、絶縁された各出力部(二次側)が直列接続されている。したがって、本発明の電源システムは、例えば微生物燃料電池のような直列接続できない一次電池を電気回路で直列接続可能として、安定に高出力電圧を取り出せる電源システムとなる。この場合、微生物燃料電池の複数のカソード電極とアノード電極を土壌に埋め、各電極をそれぞれ絶縁型コンバータの各入力部に接続し、複数の絶縁型コンバータの各出力部を直列接続することで、高電圧化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の電源システム60の概略機能ブロック図である。
【
図2】一次電池の一種である微生物燃料電池の概略図である。
【
図4】フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータの一例(フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA51)を示す図である。
【
図5】フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータの他の例(フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータB52)を示す図である。
【
図6】直列接続した複数の微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nと昇圧制御部56を示す図である。
【
図7】直列接続する一次電池を微生物燃料電池B30-1、30-2と太陽電池28にした例を示す図である。
【
図8】微生物燃料電池部32を利用した電源システム60の概略を示すプロック図である。
【
図9】微生物燃料電池部32から負荷62へ電気エネルギーを供給する通常動作状態での構成を示すプロック図である。
【
図10】微生物燃料電池部32及び蓄電池66から負荷62へ電気エネルギーを供給する分担動作状態での構成を示すプロック図である。
【
図11】微生物燃料電池部32から蓄電池66へ電気エネルギーを供給する充電動作状態での構成を示すプロック図である。
【
図12】蓄電池66から微生物燃料電池部32に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス印加動作状態での構成を示すブロック図である。
【
図13】蓄電池66から微生物燃料電池部32に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス制御部67での切り替え状態を示す図である。
【
図14】土壌から電気エネルギーを取り出す実施形態を示す図である。
【
図15】電源システム60の実施態様を示す図である。
【
図16】マイクロコンピュータ96による電源システムの制御を説明する図である。
【
図17】微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの電気エネルギーを負荷62に供給する通常動作の実施態様を示す図である。
【
図18】微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nと蓄電池66の電気エネルギーを負荷62に供給する分担動作の実施態様を示す図である。
【
図19】微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの電気エネルギーを蓄電池66に充電する充電動作の実施態様を示す図である。
【
図20】蓄電池66から微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへ逆バイアスを印加する逆バイアス動作の実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
<本発明の電源システム>
図1は、本発明の電源システム60の概略機能ブロック図である。本発明の電源システム60は、環境エネルギーを利用した電源システムであって、
図1に示すように、自然界の環境エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する複数の一次電池2と、入力側と出力側が絶縁された複数の絶縁型コンバータ4と、を備える。そして、複数の絶縁型コンバータ4の各入力側が複数の一次電池2のそれぞれに接続され、複数の絶縁型コンバータ4の各出力側が直列接続されている。
【0049】
一次電池2は、環境エネルギーを利用して発電する電池であり、振動発電電池、光発電電池(太陽電池)、温度差発電電池、金属空気電池、燃料電池及び微生物燃料電池のいずれか1つ又は2つ以上のものを含む一次電池である。
【0050】
電源システム60は、
図1に示すように、さらに、複数の絶縁型コンバータ4の各出力部が直列接続された両端部からの出力電圧を一定電圧に制御して出力する定電圧回路54を備える。
【0051】
電源システム60は、
図1に示すように、さらに、複数の前記絶縁型コンバータ4と定電圧回路54と複数の絶縁型コンバータ4及び定電圧回路54の動作を制御する制御部とを有する昇圧制御部56と、電気エネルギーを蓄電する蓄電池66と、蓄電池66と昇圧制御部56と負荷62の相互間の接続状態を切り替える切替制御部58と、蓄電池66への充電方向と蓄電池66からの電気エネルギー供給方向を制御する双方向制御部64と、を備える。
【0052】
双方向制御部64は電圧変換機能を備え、蓄電池66への充電時は、蓄電池66の定格電圧に電圧変換し、蓄電池66からの電気エネルギー供給時は、負荷に必要な負荷電圧に電圧変換する。
【0053】
蓄電池66は、
図1に示すように、双方向制御部64及び切替制御部58を介して負荷62に接続されており、また、双方向制御部64、切替制御部58及び昇圧制御部56を介して一次電池2に接続されている。
【0054】
電源システム60は、さらに、絶縁コンバータの駆動を停止し、切替制御部58により昇圧制御部56と62負荷を蓄電池66から切り離した状態で、蓄電池66からの電圧を各一次電池2に逆極性で印加する逆バイアス制御部67を備える。この場合、逆バイアス制御部67は、一次電池2に逆極性で印加する逆バイアス電圧の電圧を調整可能であることが好ましい。特に、一次電池2が微生物燃料電池である場合に効果がある。
【0055】
各絶縁型コンバータ4は入力側にスイッチング素子(後述する
図3~
図5参照。)によりパルス幅変調、位相変調又は周波数変調を行う駆動部(後述する
図15参照。)を備えている。昇圧制御部56は、定電圧回路54の出力側又は入力側に電圧を合算して検出する合算電圧検出部88と電流を検出する合算電流検出部90とをさらに有し、電源システム60は、さらに蓄電池66の電圧を検出する蓄電池電圧検出部82と、蓄電池66の電圧が双方向制御部64により電圧変換された後の電圧と電流を検出する蓄電池出力電圧検出部84と蓄電池出力電流検出部86とを備えるとともに、負荷の電圧を検出する負荷電圧検出部92と負荷に流れる電流を検出する負荷電流検出部94とを備えている。
【0056】
なお、
図1に示す構成例では、合算電圧検出部88と合算電流検出部90とを定電圧回路54の出力側に接続しているが、合算電圧検出部88と合算電流検出部90とを定電圧回路54の入力側に接続して構成してもよい。この場合は、絶縁型コンバータで直列接続された一次電池の絶縁型コンバータ出力の電圧と電流が検出できる。
【0057】
ここで、自然界の環境エネルギーを利用した一次電池は、二酸化炭素の排出が無くクリーンなエネルギーであるが、取り出せる出力電圧が0.5~1.5V程度と低く、直列接続や昇圧回路により高電圧化する必要がある。例えば、光発電電池(太陽電池)は、単位セルでは0.5V程度である。金属空気電池は、マグネシウム電池やニッケル電池があり、マグネシウム電池では1.5V程度、ニッケル電池は1V程度である。これらの一次電池は、直列接続して高電圧化することが可能であるが、微生物燃料電池は、土壌に電極を設置するため、直接的に直列接続することはできない。
【0058】
微生物燃料電池は、微生物の異化代謝能を利用して有機物から電気エネルギーを生産する電池であり、電極にカーボンを使用し、0.5V程度の出力が得られる。微生物燃料電池は、燃料として汚泥、生ごみ等のバイオマスを使用できることから、持続可能な発電システムでもある。微生物自体が有機物から電子を取り出す生体触媒として機能するため、低コストである利点もある。
【0059】
<微生物燃料電池>
図2は、一次電池の一種である微生物燃料電池の概略図である。このうち
図2(A)は、微生物燃料電池の一例(微生物燃料電池A10)を示した概略図である。微生物燃料電池A10は、土壌12から成る土壌層と水14から成る水層に、植物24が生育している。例えば微生物燃料電池A10は、水田や池を利用している。アノード電極16は、土壌12に埋め込まれている。カソード電極20は、水14と空気に接する境界の水層に配置され、空気中の酸素を取り入れるエアカソード構造となっている。
【0060】
土壌12には、電流生成菌として、ジオバクター菌やシュワネラ菌などが生息している。ジオバクター菌やシュワネラ菌などは、空気中の酸素を嫌い、地中や海底、沼底など、酸素のほとんどない環境で生息している。植物24の光合成により生成された糖(C6H12O6)が、根26から一部が放出され、土壌12中の電流発生菌により分解され、水素イオン(H+)と電子(e-)を生成する。電子はアノード電極16側に移動し、水素イオンはカソード電極20側に移動する。このため、アノード端子18からカソード端子22へ電子を流すことにより、電気エネルギーを取り出すことができる。アノード電極16とカソード電極20は、カーボンフェルト等の炭素系の材料が使用されている。
【0061】
図2(B)は、微生物燃料電池の他の例(微生物燃料電池B30)を示した概略図である。微生物燃料電池B30は、植物24が生育している原野や山林を利用している。アノード電極16とカソード電極20は、イオン化傾向の異なる材料を使用している。アノード電極16は、イオン化傾向がマイナス、即ち、標準酸化還元電位がマイナスの金属である。カソード電極20は、カーボンを成分に含む電子導電体又は、イオン化傾向がプラス、即ち、標準酸化還元電位がプラスの金属である。
【0062】
水素イオンと電子の発生を有機物と電流生成菌で行い、イオン化傾向の差を利用して電子をアノード電極16からカソード電極20に流す。標準酸化還元電位がマイナスである金属は、例えば、マグネシウム(標準酸化還元電位:-2.36V)やアルミニウム(標準酸化還元電位:-1.68V)等がある。標準酸化還元電位がプラスである金属は、例えば、白金(標準酸化還元電位:1.19V)、金(標準酸化還元電位:1.52V)等がある。カーボンを成分に含む電子導電体は、グラファイト(黒鉛)や炭(活性炭、木炭)、カーボンブラック、カーボンフェルト、カーボンナノチューブ等がある。
【0063】
アノード電極16に標準酸化還元電位がマイナスである金属を使用すると、土壌12中で電子を放出して酸化され、カソード電極20はその電子を受け取って水酸化イオンとなり還元される。この化学反応が起きるため、イオン化傾向に依存して取り出せる電圧が高くなる。この現象は、
図2(A)に示した微生物燃料電池A10の場合も同様であり、アノード電極16に標準酸化還元電位がマイナスである金属を使用して、出力電圧を高くすることができる。
【0064】
以上、微生物燃料電池の概略を説明したが、微生物燃料電池A10又は微生物燃料電池B30は、構造的に電気的な直列接続ができない。微生物燃料電池A10を2つ並べた場合は、土壌12にアノード電極20が共通に存在し、水14と空気の境界にカソード電極16が共通に存在するからである。また、微生物燃料電池B30を2つ並べた場合は、土壌12にアノード電極16とカソード電極20が共通に存在するからである。
【0065】
このため、微生物燃料電池A10又は微生物燃料電池B30は、これらを並列接続する場合は、各電極の面積が増大することにより、電流容量の増加となるから、アノード電極16とカソード電極20は、複数の電極材から構成されていてもよい。
【0066】
しかしながら微生物燃料電池A10又は微生物燃料電池B30は、これらを直列接続する場合は、短絡状態となり電圧が加算されることはない。従って、絶縁機能を備えた絶縁型コンバータを使用して直列接続により高電圧化する本発明においては、一次電池は微生物燃料電池であることが好ましい。
【0067】
<絶縁型コンバータ>
図3は、絶縁型コンバータの一例を示す図である。
図3(A)で示した絶縁型コンバータは、フライバック方式の絶縁型昇圧コンバータA40である。絶縁型昇圧コンバータA40は、直流の入力電圧Viを絶縁トランス42の一次側に接続し、スイッチング素子44でオン・オフを繰り返す。スイッチング素子44をオンすると、絶縁トランス42の一次巻線から磁束が発生するが、このとき磁束の増加を妨げるように逆起電気エネルギーが生まれる。発生する磁束によりコアが磁化され、エネルギーが蓄積される。ダイオード46の向きが電流の向きと逆なので、二次巻線には誘導電流が流れない。
【0068】
スイッチング素子44がオフのときは、絶縁トランス42のコアに蓄積されたエネルギーが開放されて、ダイオード46を通じて電流が流れる。絶縁トランス42のコイルがチョークコイルの役割を果たしていると考えることができる。ダイオード46を通じて流れた電流は平滑コンデンサ48に充電され、平滑化された直流の出力電圧Voが得られる。出力電圧Voは、入力電圧Viと、絶縁トランス42の一次側と二次側のコイルの巻き数比及びスイッチング素子44のオン・オフ時間の制御により決まる。
【0069】
図3(B)で示した絶縁型コンバータは、シングルフォワード方式の絶縁型昇圧コンバータB50である。スイッチング素子44がオンのときは、絶縁トランス42の一次側と二次側に起電力(逆起電力、誘導起電力)が発生して、ダイオード46-1を通じて電流が流れ、平滑コンデンサ48を充電する。このとき、チョークコイル49にはエネルギーが蓄えられる。
【0070】
スイッチング素子44をオフにすると、電流変化を妨げるようにチョークコイル49に起電力が生まれ、蓄えられたエネルギーが放出されて、ダイオード46-2を通じて電流が流れ、平滑コンデンサ48を充電する。平滑コンデンサ48により平滑化された電圧は、直流の出力電圧Voとなる。出力電圧Voは、絶縁型昇圧コンバータA40と同様に、入力電圧Viと、絶縁トランス42の一次側と二次側のコイルの巻数比、及び、スイッチング素子44のオン・オフ時間の制御により決まる。
【0071】
図4は、フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータの一例(フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA51)を示す図である。
図4(A)は、フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA51の回路構成を示す図である。絶縁トランス42の一次側(入力側)は、4個のスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4でブリッジ回路が構成されている。絶縁トランス42の二次側(出力側)は、直列にチョークコイル49が接続され、さらに並列に平滑コンデンサ48が接続されている。
【0072】
フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータAは、位相変調が可能であり、この場合においては、左右アーム間の位相の制御を行う。
図4(B)は、位相シフト制御のタイムチャートを示す図である。全てのスイッチングQ1、Q2、Q3、Q4のオン時間Tonは、1周期Tの1/2である。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2は交互にオン・オフを繰り返す。イッチング素子Q1がオンの時、スイッチング素子Q2はオフであり、イッチング素子Q1がオフの時スイッチング素子Q2はオンである。同様に、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4も交互にオン・オフを繰り返す。出力電圧Voの制御は、スイッチ素子Q1、Q2グループとスイッチング素子Q3、Q4グループのオン・オフの位相差θを変化させる。則ち、位相をシフトさせることにより制御が行われる。
【0073】
図4(B)に示すように、タイムチャートにおける各動作モードの継続時間をT1、T2、T3、T4とする。T1のときは、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q4がオンであり、T2のときは、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q4がオンであり、T3のときは、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3がオンであり、T4のときは、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q3がオンである。T1とT3、及び、T2とT4は等しく、T1とT2とT3とT4の合計が一周期Tとなる。
【0074】
出力電圧Voは、入力電圧Viと、1周期TのうちT1の占める割合と、絶縁トランス42の巻き数比で決まる。即ち、絶縁トランス42の一次側巻き数をn1、絶縁トランス42の二次側巻き数n2とすると、出力電圧Voは、Vo=2(T1/T)・(n2/n1)・Viで表される。
【0075】
図5は、フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータの他の例(フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータB52)を示す図である。
図5(A)は、絶縁トランス42の一次側(入力側)と二次側(出力側)にフルブリッジ回路が接続されているフルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータB52の回路構成を示す図である。絶縁トランス42の一次側は、チョークコイル49を介して、4個のスイッチング素子Q11、Q12、Q13、Q14でブリッジ回路が構成されている。絶縁トランス42の二次側は、4個のスイッチング素子Q21、Q22、Q23、Q24でブリッジ回路が構成され、並列に平滑コンデンサ48が接続されている。
【0076】
フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータB52もフルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA51と同様に、位相変調が可能であるこの場合においては、一次側と二次側のフルブリッジ回路間の位相の制御を行う。
図5(B)は、位相シフト制御のタイムチャートを示す図である。全てのスイッチング素子Q11、Q12、Q13、Q14、Q21、Q22、Q23、Q24のオン時間Tonは、1周期Tの1/2である。スイッチング素子Q11とスイッチング素子Q14、スイッチング素子Q12とスイッチング素子Q13、スイッチング素子Q22とスイッチング素子Q23、スイッチング素子Q21とスイッチング素子Q24は、ペアとなって同期してオン・オフ動作を行う。出力電圧Voの制御は、一次側フルブリッジ回路45と二次側フルブリッジ回路47のオン・オフの位相差θを変化させる。則ち、位相をシフトさせることにより制御が行われる。
【0077】
出力電圧Voは、フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA51の場合と同様に、入力電圧Viと、1周期TのうちT1の占める割合と絶縁トランス42の巻き数比で決まる。即ち、絶縁トランス42の一次側巻き数をn1、絶縁トランス42の二次側巻き数n2とすると、出力電圧Voは、Vo=2(T1/T)・(n2/n1)・Viで表される。
【0078】
絶縁型コンバータは、上述したフライバック方式、シングルフォワード方式やフルブリッジ方式に限定されることはなく、自励式フライバックコンバータ、ハーフブリッジ方式やプッシュプル方式であってもよい。また、絶縁型コンバータは、上述した絶縁型昇圧コンバータの他、降圧型のコンバータ又は昇降圧型のコンバータのいずれかであってもよく、また、これらを組み合わせた構成としてもよい。
【0079】
<直列接続した複数の微生物燃料電池と昇圧制御部>
図6は、直列接続した複数の微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nと昇圧制御部56を示す図である。電源システム60は、
図6に示すように、複数の微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-n(
図1に示す一次電池部3参照。)と、昇圧制御部56とを備える。昇圧制御部56は、複数の絶縁型昇圧コンバータA40-1、40-2、・・、40-n(
図1に示す複数の絶縁型昇圧コンバータ4参照。)と定電圧回路54から構成されている。複数の絶縁型コンバータA40-1、40-2、・・、40-nの各出力側が直列接続され、両端部は定電圧回路に接続され、定電圧回路54により一定電圧に制御して出力する。複数の絶縁型コンバータA40-1、40-2、・・、40-nの各入力側は複数の微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nのそれぞれに接続されている。なお、nは自然数であり、n個の同等の構成要素があることを意味する。以下同様である。
【0080】
微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nは、植物24-1、24-2、・・、24-nが生育し、水分と、有機物又は光合成により生成された糖と、有機物又は糖を分解して水素イオンと電子を生成する電流発生菌とを含む土壌と、アノード電極16-1、16-2、・・、16-n、と、カソード電極20-1、20-2、・・、20-nとから構成されている。
【0081】
微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nのアノード端子18-1、18-2、・・、18-nとカソード端子22-1、22-2、・・、22-nは、絶縁型昇圧コンバータA40-1、40-2、・・、40-nの入力側に接続され、昇圧された電圧を出力側から出力側から出力する。絶縁型昇圧コンバータA40-1、40-2、・・、40-nの入力側と出力側は、絶縁トランスにより絶縁されている。複数の微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nが接続された絶縁型昇圧コンバータA40-1、40-2、・・、40-nの出力側は、直列接続されている。これにより、絶縁型昇圧コンバータA40-1、40-2、・・、40-nからの出力電圧V1、V2、・・、Vnが加算されて高電圧化が可能となる。
【0082】
絶縁型昇圧コンバータA40-1、40-2、・・、40-nが直列接続された出力側には、定電圧回路54が接続されて、安定な電圧を供給することができる。さらに、電気エネルギーを蓄電する蓄電池66を備えることにより、有効利用が可能となる。
【0083】
以上説明したように、本発明の電源システム60は、絶縁型コンバータの各入力側が一次電池のそれぞれに接続され、絶縁された各出力側が直列接続されている。したがって、本発明の電源システム60は、例えば微生物燃料電池のような直列接続できない一次電池を電気回路で直列接続可能として、安定に高出力電圧を取り出せる電源システムとなる。
【0084】
本発明の電源システム60は、自然界の環境エネルギーを利用した様々な原理の一次電池に適用可能であり、例えば、振動発電電池、光発電電池(太陽電池)、温度差発電電池、金属空気電池、微生物燃料電池、またはこれらを組み合わせたものにより、それぞれの特徴を生かしたエネルギー効率の良い電源システムを構築することが可能になる。
【0085】
また、本発明の電源システム60において、特に一次電池として微生物燃料電池を用いた場合、微生物燃料電池が天候に左右されず常に発電可能であるという特徴を活かして、負荷に電流を流さないときに蓄電池に充電することで、エネルギー効率の良い電源システムを構築することが可能になる。微生物燃料電池を用いているため、安定な出力電圧が得られると同時に、常時発電という特徴を生かした蓄電システムとしても利用可能である。
【0086】
また、本発明の電源システム60によれば、直列接続した絶縁型コンバータの出力側に定電圧回路を設けることにより安定な出力電圧が得られる。
【0087】
また、本発明の電源システム60において、特に一次電池として微生物燃料電池を用いた場合、微生物燃料電池が天候に左右されず常に発電可能であるという特徴を活かして、負荷に電流を流さないときに蓄電池に充電することで、エネルギー効率の良い電源システムを構築することが可能になる。
【0088】
<太陽電池を併用した例>
図7は、直列接続する一次電池を微生物燃料電池B30-1、30-2と太陽電池28にした例を示す図である。本実施形態は、微生物燃料電池B30-1、30-2に加え、太陽電池28を直列に接続した実施形態である。直列接続する一次電池は一種類に限定されることは無く、振動発電電池、光発電電池(太陽電池)、温度差発電電池、金属空気電池、燃料電池及び微生物燃料電池のいずれか1つ又は2つ以上の一次電池で構成することが可能である。以下、一次電池として微生物燃料電池を用いた例を用いて本発明を説明する。
【0089】
<微生物燃料電池を用いた電源システム>
図8は、微生物燃料電池部32を利用した電源システム60の概略を示すプロック図である。なお、
図8中、矢印は電流(又は電気エネルギー)の流れる方向を示している。後述する
図9~
図12においても同様である。
【0090】
電源システム60は、
図8に示すように、複数の微生物燃料電池で構成されている微生物燃料電池部32に加えて、昇圧制御部56と、電気エネルギーを充電する蓄電池66を備えている。蓄電池66には、双方向制御部64が接続され、蓄電池66への充電と蓄電池66からのエネルギー供給で電流の方向が切り替えられる。双方向制御部64はさらに電圧変換機能を備え、蓄電池66への充電と蓄電池66からのエネルギー供給の時に電圧を制御することができる。切替制御部58は、昇圧制御部56及び双方向制御部64からの電気エネルギーを負荷62に供給したり、昇圧制御部56から双方向制御部64を介して蓄電池66へ電気エネルギーを供給したりすることができる。また、双方向制御部64から逆バイアス制御部67へ電気エネルギーを供給することもできる。
【0091】
微生物燃料電池部32からの電流は、昇圧制御部56及び切替制御部58を介して負荷62に流れる。蓄電池66からも負荷62へ電気エネルギーを供給する場合は、蓄電池66からの電流を、双方向制御部64で切替制御部58の方向に流すように制御され、切替制御部58は、昇圧制御部56及び蓄電池66からの電流が流れるように制御される。切替制御部58では、微生物燃料電池部32からの電流または蓄電池66からの電流のいずれか一方の電流を流す制御でもよい。
【0092】
微生物燃料電池部32からの電気エネルギーを蓄電池66に充電する場合は、昇圧制御部56、切替制御部58と双方向制御部64の制御により、微生物燃料電池部32からの電流が蓄電池66に流れる。
【0093】
微生物燃料電池部32に逆バイアスを印加する場合には、切替制御部58は、負荷62を双方向制御部64から切り離し、双方向制御部64は、蓄電池66から逆バイアス制御部67を介して微生物燃料電池部32へ逆バイアスを印加するように制御される。逆バイアス制御部67は、微生物燃料電池部32のアノード電極20とカソード電極16に、蓄電池66の電圧を逆極性で印加するように制御される。微生物燃料電池部32へ逆バイアスを印加する場合は、昇圧制御部56からの電流は遮断され、電流は、蓄電池66から逆バイアス制御部67を介して、微生物燃料電池部32へ流される。
【0094】
なお、微生物燃料電池部32は、
図2(A)に示した複数の微生物燃料電池A10であっても
図2(B)に示した複数の微生物燃料電池B30であってもよく、限定されない。また、微生物燃料電池部32における電流容量は、微生物燃料電池の電極の大きさ及び数に依存している。電源システム60で必要とされる電流容量は、電極の大きさ及び数を適宜設定することで得ることができる。
【0095】
電源システム60において、各絶縁型コンバータ4は、入力側にスイッチング素子によりパルス幅変調、位相変調又は周波数変調を行う駆動部を備えている(後述する
図15の駆動部80-1~80-n参照。)。
【0096】
昇圧制御部56は、定電圧回路54の出力側に電圧を合算して検出する合算電圧検出部88と電流を検出する合算電流検出部90とをさらに有し(
図1参照。)、電源システム60は、蓄電池66の出力電圧を検出する蓄電池出力電圧検出部84と、前記蓄電池66の電圧が、双方向制御部64により電圧変換された後の電圧と電流を検出する蓄電池出力電圧検出部84と蓄電池出力電流検出部86とを備えるとともに、負荷62の電圧を検出する負荷電圧検出部92と、負荷62に流れる電流を検出する負荷電流検出部94とを備える(
図1参照。)。電源システム60は、微生物燃料電池部32を構成する各微生物燃料電池の各出力電圧を検出する微生物燃料電池電圧検出部70と、蓄電池66の電圧を検出する蓄電電圧検出部82を備える(
図8参照。)。微生物燃料電池の出力電圧は、絶縁型昇圧コンバータ4の入力電圧となるため、微生物燃料電池電圧検出部70は、絶縁型昇圧コンバータ4の入力電圧検出部ともなる(
図1参照。)。昇圧制御部56は、
図1に示すように、複数の絶縁型昇圧コンバータ4と、定電圧回路54と、昇圧を制御する制御部(図示せず。)を備える。
【0097】
このような構成により、本発明の電源システム60によれば、一次電池の出力が不足する場合であっても、蓄電池の併用により、安定なエネルギー供給が可能である。
【0098】
また、本発明の電源システム60によれば、蓄電池の電気エネルギーを負荷に供給することもできるし、一次電池の電気エネルギーを蓄電池に充電することもできる。
【0099】
また、本発明の電源システム60によれば、蓄電池の電気エネルギーを微生物燃料電池の再生のために用いることもできる。すなわち、アノード電極の劣化を防止するとともに、電子をアノード電極に集めることができ発電効率の低下を防止することもできる。
【0100】
また、本発明の電源システム60によれば、微生物燃料電池部へ印加する逆バイアス電圧が任意に調整でき、最適な逆バイアス電圧を印加することができる。
【0101】
本発明の電源システム60によれば、定電圧回路、蓄電池及び双方向制御部の電圧と電流を監視することができ、コンピュータによる制御が可能となる。これにより、一次電池の電気エネルギーを負荷に供給する通常動作、一次電池の電気エネルギー及び蓄電池の電気エネルギーを負荷に供給する分担動作、一次電池の電気エネルギーで蓄電池を充電する充電動作、及び、蓄電池の電気エネルギーで一次電池を再生する再生動作のいずれかを行うことが可能になる。
【0102】
<通常動作>
図9は、微生物燃料電池部32から負荷62へ電気エネルギーを供給する通常動作状態での構成を示すプロック図である。電源システム60は、通常動作状態においては、
図9に示すように、微生物電池部32の電気エネルギーを昇圧制御部56及び切替制御部58を介して負荷62に供給する。微生物燃料電池部32は、微生物燃料電池電圧検出部70で出力電圧が検知されている。微生物燃料電池部32からの出力電圧は、昇圧制御部56で負荷に適する電圧に昇圧され、切替制御部58を介して負荷62に供給される。このとき、切替制御部58は、蓄電池66、双方向制御部64、逆バイアス制御部67との接続を遮断し、微生物燃料電池部32のみから負荷62へ電気エネルギーの供給をしている。微生物燃料電池部32からの電流は、昇圧制御部56及び切替制御部58を介して負荷62に流されている。
【0103】
このように、本発明の電源システム60によれば、微生物燃料電池部32の電気エネルギーを負荷62に供給する通常動作を行うことができる。
【0104】
<分担動作>
図10は、微生物燃料電池部32及び蓄電池66から負荷62へ電気エネルギーを供給する分担動作状態での構成を示すプロック図である。本発明の電源システム60において、例えば、過負荷により微生物燃料電池部32の発電容量が不足しているような場合、即ち、昇圧制御部56での昇圧が負荷に必要な電圧に達せず、微生物燃料電池電圧検出部70で検出された出力電圧が一定値以下であり、蓄電電圧検出部82で検出された蓄電電圧が定格値である場合においては、一次電池2の電気エネルギー及び蓄電池66の電気エネルギーを負荷62に供給する分担動作を行う。
【0105】
このような場合には、
図10に示すように、切替制御部58は、昇圧制御部56と双方向制御部56を負荷62に接続することで、微生物燃料電池部32から負荷62への電気エネルギーの供給と、蓄電池66から負荷62への電気エネルギーの供給とを可能とする。双方向制御部64は、逆バイアス制御部67との接続を遮断するとともに、蓄電池66から負荷62へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替え、負荷に必要な電圧に変換するように制御される。微生物燃料電池部32及び蓄電池66からの電流は、切替制御部58を介して負荷62に流れる。双方向制御部64は、蓄電池66からの電流を切替制御部58に流す方向に制御されている。
【0106】
このように、本発明の電源システム60によれば、例えば、過負荷により微生物燃料電池部32の発電容量が不足しているような場合において、微生物燃料電池部32の電気エネルギー及び蓄電池66の電気エネルギーの両方を負荷62に供給する分担動作を行うことができる。
【0107】
<微生物燃料電池切り離し>
本発明の電源システム60において、負荷62に必要な負荷電圧よりも合算電圧検出部88で検出された電圧が低くなった場合には、切替制御部58は、昇圧制御部56を切り離し、蓄電池66のみから負荷62への電気エネルギー供給とする制御を行ってもよい。
【0108】
このように、本発明の電源システム60によれば、微生物燃料電池部32の出力が低下し発電能力が不足するようになった場合、蓄電池66の電気エネルギーのみを負荷に供給することができる。
【0109】
<充電動作>
図11は、微生物燃料電池部32から蓄電池66へ電気エネルギーを供給する充電動作状態での構成を示すプロック図である。電源システム60は、蓄電電圧検出部82で検出された電圧が定格値以下で、負荷電流検出部94で検出された電流がゼロの場合、即ち負荷62を切り離した状態、或は負荷が接続されていない状態においては、
図11に示すように、切替制御部58が負荷62を切り離した状態で、微生物燃料電池部32の電気エネルギーを、昇圧制御部56、切替制御部58及び双方向制御部64を介して蓄電池66に供給して蓄電池66を充電する。
【0110】
双方向制御部64は、昇圧制御部56から蓄電池66へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替えて、蓄電池66の定格電圧となるように電圧変換して蓄電池66を充電する制御をする。この場合、逆バイアス制御部67は遮断されている。微生物燃料電池部32からの電流は、双方向制御部64を介して蓄電池66へ流され、蓄電池66を充電する。
【0111】
このように、本発明の電源システム60によれば、一次電池の電気エネルギーで蓄電池を充電する充電動作を行うことが可能になる。
【0112】
<充電終了>
電源システム60において、蓄電池66への充電中に蓄電池出力電圧検出部84で検出された電圧が定格値に達した場合、即ち充電が終了した場合には、切替制御部58は双方向制御部64を切り離すことで昇圧制御部56と蓄電池66を切り離し、微生物燃料電池部32から蓄電池66への充電を中止する制御をする。
【0113】
このように、本発明の電源システム60によれば、蓄電池に十分な電力が充電された場合に充電動作を中止することが可能となる。また、蓄電池66を昇圧制御部56から切り離すことで、微生物燃料電池部32の発電不足等の場合の漏れを防止し定格電圧での蓄電状態を保持することができる。
【0114】
<再生動作>
図12は、蓄電池66から微生物燃料電池部32に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス印加動作状態での構成を示すブロック図である。電源システム60において、微生物燃料電池部32の再生動作を行う場合には、切替制御部58は、昇圧制御部56からの電気エネルギー供給と負荷62への電気エネルギー供給を遮断し、双方向制御部64は、蓄電池66の電気エネルギーを逆バイアス制御部67に供給する。逆バイアス制御部67は、蓄電池66の電圧を逆極性に変換するとともに、微生物燃料電池部32の電極を昇圧制御部から切り離し、蓄電池66から微生物燃料電池部32へ逆極性の電圧が印加されるように微生物燃料電池部32の電極接続を切り替える。微生物燃料電池部32へ逆バイアス電圧を印加する場合の電流は、蓄電池66から双方向制御部64及び逆バイアス制御部67を介して微生物燃料電池部32へ流される。
【0115】
図13は、蓄電池66から微生物燃料電池部32に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス制御部67での切り替え状態を示す図である。逆バイアス制御部67は、
図13に示すように、微生物燃料電池部32を構成する微生物燃料電池B30-1、30-2、・・、30-nのカソード電極20-1、20-2、・・、20-nに、蓄電池66の電圧を逆極性で印加するように逆バイアス切替回路69-1、69-2、・・、69-nによって切り替えられる。アノード電極16-1、16-2、・・、16-nは、アノード端子18-1、18-2、・・、18-nを接地して共通電極としている。以下、アノード電極16-1、16-2、・・、16-nをアノード電極16、カソード電極20-1、20-2、・・、20-nをカソード電極20という場合がある。
【0116】
微生物燃料電池部32への逆バイアス電圧の印加は、微生物燃料電池部32のアノード電極16とカソード電極20に、蓄電池66の電圧を逆極性で印加することである。このとき、切替制御部58は、昇圧制御部56からの電気エネルギー供給と負荷62への電気エネルギー供給を遮断し、双方向制御部64は、蓄電池66の電気エネルギーを逆バイアス制御部67に供給する。逆バイアス制御部67は、逆バイアス切替回路69-1、69-2、・・、69-nと逆バイアス制御回路(図示せず。)で構成されている。
【0117】
逆極性に変換された蓄電池66の電圧は、逆バイア印加端子23-1、23-2、・・、23-nに接続されている。逆バイアス制御部67における逆バイアス制御回路は、微生物燃料電池B30、30-1、30-2、・・、30-nのカソード端子22-1、22-2、・・、22-nを逆バイア印加端子23、23-1、23-2、・・、23-nに接続を切り替える制御をし、微生物燃料電池B30、30-1、30-2、・・、30-nに最適な逆バイアス電圧に調整することができる。
【0118】
このように、電源システム60によれば、蓄電池の電気エネルギーで一次電池を再生する再生動作を行うことができる。
【0119】
微生物燃料電池部32へ逆バイアス電圧を印加するのは、アノード電極16に金属電極を使用した場合の再生動作を行わせるためである。例えば、アノード電極16にマグネシウムを使用した場合、マグネシウムは、電子を放出してマグネシウムイオンとなり、土壌12の中で溶解する。
【0120】
一方、アノード電極16では酸素と水が電子を受け取り、水酸化イオンとなる。これにより、マグネシウムと酸素、水から水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が生成する。マグネシウムが溶解すると同時に、発生した電子と水素イオンが反応して水素を生成するため、電子が正極に移動せず電流が流れない自己放電現象が生じる。さらに、熱の発生もある。また、マグネシウムに含まれる不純物による残渣が電極表面に付着している。このため、発電能力の低下を引き起こす。
【0121】
アノード電極16にアルミニウムを使用した場合も、同様の現象が生じる。アルミニウムと酸素、水から水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を生成する。アルミニウムが溶解すると同時に、発生した電子と水素イオンが反応して水素を生成するため、電子が正極に移動せず電流が流れない自己放電現象も同様に生じ、アルミニウムに含まれる不純物による残渣も電極表面に付着することにより発電能力が低下する。
【0122】
微生物燃料電池部32への逆バイアス電圧の印加は、アノード電極16に使用している金属の溶解により発生する水素を、電子と水素イオンに分解したり拡散したりすることにより、自己放電現象を抑制する効果が生じる。電極表面に付着した不純物による残渣も微細化して、発電への影響を抑えることもできる。この、自己放電現象の抑制と残渣の微細化が、逆バイアス電圧印加による微生物燃料電池部32の再生動作である。
【0123】
なお、上記において、双方向制御部64は、蓄電池66から負荷62へ電流を流す場合には、蓄電池66から負荷62の方向へ電流を流すように制御され、逆バイアス制御部67への電流は遮断される。また、微生物燃料電池部32へ逆バイアス電圧を印加する場合には、昇圧制御部56からの電流は遮断され、電流は、蓄電池66から双方向制御部64及び逆バイアス制御部67を介して、微生物燃料電池部32へ流される。
【0124】
(実施例1)
図14は、土壌から電気エネルギーを取り出す実施形態を示す図である。
図2(B)に示した微生物燃料電池B30の例を実施した形態である。植物の生育している土壌12に、アノード電極20としてアルミニウム板を、カソード電極16としてカーボンフェルトを埋入させている。このときの出力電圧は、1.131Vであった。アノード電極16としてマグネシウム板を使用した場合は、1.5~1.8Vの出力電圧が得られている。
【0125】
(実施例2)
図15は、電源システム60の実施態様を示す図である。
図8に示した電源システム60の回路構成を示している。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nには、それぞれ絶縁型コンバータ40-1、40-2、・・、40-nが接続されている。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nは、微生物燃料電池A10でも微生物燃料電池B30でもよい。
図15では、絶縁型昇圧コンバータをフライバック方式絶縁型昇圧コンバータA40(以下絶縁型昇圧コンバータ40とする。)として示しているが、シングルフォワード方式絶縁型昇圧コンバータB50、フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA51、フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータB52を用いることもできる。
【0126】
微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの出力電圧は、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの一次側(入力側)への入力電圧となり、入力電圧検出部74-1、74-2、・・、74-nで検出される。入力電圧検出部74-1、74-2、・・、74-nは、
図8における微生物燃料電池電圧検出部70に相当する。
【0127】
絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nは、一次側(入力側)に駆動部80-1、80-2、・・、80-nを備え、スイッチング素子44によりパルス幅変調又は周波数変調を行う制御部(図示せず。)を備える。二次側(出力側)には、出力電圧検出部76-1、76-2、・・、76-nと出力電流検出部78-1、78-2、・・、78-nを備える。
【0128】
絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの二次側は直列に接続されて、両端部は定電圧回路54の入力側に接続される。定電圧回路54は、DC/DCコンバータ回路で構成されており、直列に接続された絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの電圧が昇圧され、所定の定電圧、即ち負荷に必要な電圧となるようにコンピュータで制御される。定電圧回路54の出力側には、定電圧回路54で昇圧された出力電圧・出力電流を検出する合算電圧検出部88と合算電流検出部90を備える。絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nと、定電圧回路54と、合算電圧検出部88と、合算電流検出部90とは、昇圧制御部56を構成している。
【0129】
定電圧回路54の出力側は、切替制御部58を介して負荷62に接続されている。切替制御部58の負荷側には、負荷62の電圧を検出する負荷電圧検出部92と負荷62の電流を検出する負荷電流検出部94が設けられている。
【0130】
蓄電池66は、電気エネルギーを蓄電する。蓄電池66には蓄電電圧検出部82が接続され、蓄電池66の電圧が検出される。双方向制御部64は、蓄電池66への入力方向と、蓄電池66からの出力方向の切り替え機能の他、DC/DCコンバータによる電圧変換機能を備えた蓄電池双方向変換回路98で構成されている。蓄電池66には蓄電池双方向変換回路98が接続され、蓄電池双方向変換回路98には、蓄電池双方向変換回路98で電圧変換された蓄電池66の出力電圧を検出する蓄電池出力電圧検出部84と出力電流を検出する蓄電池出力電流検出部86が接続されている。
【0131】
蓄電池双方向変換回路98は、充電時には切替制御部58を介して定電圧回路54から蓄電池66の方向に電流が流れるようにマイクロコンピュータ96によって制御され、さらに、定電圧回路54の電圧をDC/DCコンバータによる電圧変換機能により蓄電池66の定格電圧となるようにマイクロコンピュータ96によって制御される。蓄電池66から負荷62への分担動作時及び蓄電池81から微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへの逆バイアス電圧印加時には、マイクロコンピュータ96は、蓄電池66からの電流が負荷62及び微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへ流れる方向に制御する。
【0132】
逆バイアス制御部67は、逆バイアス切替回路69、69-1、69-2、・・、69-nと逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nで構成される。逆バイアス切替回路69、69-1、69-2、・・、69-nは、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの接続を、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nから逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nに切り替えるスイッチ動作を行う。また、逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nは、蓄電池66からの電圧を逆極性に変換するとともに、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへ最適な逆バイアス電圧に調整して印加する機能を備え、逆バイアス切替回路69、69-1、69-2、・・、69-nを逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nへ接続する制御を行う。
【0133】
マイクロコンピュータ96は、再生動作時に逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nを駆動し、蓄電池66から蓄電池双方向変換回路98を介して逆バイアス電圧を印加するように切り替えるとともに、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nのそれぞれに対して最適な電圧となるように制御する。
【0134】
切替制御部58は、通常動作時には定電圧回路54のみを負荷62に接続し、分担動作時には定電圧回路54と蓄電池双方向変換回路98を介した蓄電池66を負荷に接続する。また、切替制御部58は、充電動作時には負荷62を切り離し、定電圧回路54を蓄電池双方向変換回路98を介して蓄電池66に接続し、再生動作時には定電圧回路54と負荷62を切り離す。
【0135】
図16は、マイクロコンピュータによる電源システムの制御を説明する図である。マイクロコンピュータ96には、各検出部で検出された電圧及び電流が入力され、マイクロコンピュータ96により適切は電圧を出力するように制御される。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの出力電圧は、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの入力電圧として入力電圧検出部74で検出され、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの出力電圧と出力電流は、出力電圧検出部76と出力電流検出部78で検出される。マイクロコンピュータ96は、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nにおける駆動部80-1、80-2、・・、80-nのパルス幅又はスイッチング周波数を変調して、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの出力電圧を制御する。
【0136】
合算電圧検出部88と合算電流検出部90は、定電圧回路54から出力される電圧と電流を検出してマイクロコンピュータ96に入力し、マイクロコンピュータ96により所定の電圧となるように、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-n及び/又は定電圧回路54が制御される。この制御においては、合算電圧検出部88と合算電流検出部90が検出した情報に基づいて、例えば、駆動部80-1、80-2、・・、80-nの制御は、パルス幅変調の場合に絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nのスイッチングパルス幅の制御を行い、周波数変調の場合に絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nのスイッチング周波数を制御し、昇圧制御部の昇圧動作を最適にするとともに、電力変換効率の良い制御を行う。
【0137】
なお、
図1及び
図15の例では、合算電圧検出部88と合算電流検出部90を定電圧回路54の出力側に設ける構成としているが、合算電圧検出部88と合算電流検出部90を定電圧回路54と絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの間に設ける構成としてもよく、そのような構成としても、合算電圧検出部88と合算電流検出部90による電圧と電流の検出情報に基づいて同様の制御を行うことができる。その場合は、定電圧回路54による定電圧制御されていない位置で電圧と電流を検出するため、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの出力変化を直接検知でき、
図1及び
図15の構成例に比べ、より応答速度の高い制御が可能となる。
【0138】
さらに、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nがフルブリッジ方式であれば、位相変調が可能であり、この場合においては、左右アーム間の位相の制御を行う。また、1次-2次のそれぞれがフルブリッジ方式で構成されている絶縁型コンバータであれば、この場合も位相変調が可能であり、この場合においては、1次-2次間の位相の制御を行う。
【0139】
負荷62の電圧と電流は負荷電圧検出部92と負荷電流検出部94で検出され、マイクロコンピュータ96で監視すると同時に、マイクロコンピュータ96は、負荷62の有無を検出することができる。負荷電流がゼロの場合は、負荷62が接続されていない状態又は負荷が接続されていても電力を消費していない状態である。
【0140】
畜電電圧検出部82は、蓄電池66の電圧を検出し、マイクロコンピュータ96により、蓄電池66の定格電圧となるように定電圧回路54及び/又は蓄電池双方向変換回路98で電圧を制御する。蓄電池双方向変換回路98を介した蓄電池66からの出力電圧と出力電流は、畜電池出力電圧検出部84と畜電池出力電流検出部86で検出され、蓄電池66の状態がマイクロコンピュータ96で監視される。負荷62の電圧と電流は、負荷電圧検出部92と負荷電流検出部94で検出され、負荷に必要な電圧となるように定電圧回路54及び蓄電池双方向変換回路98がマイクロコンピュータ96で制御される。
【0141】
蓄電池双方向変換回路98は、マイクロコンピュータ96によって、通常動作時、分担動作時及び再生動作時には、蓄電池66から負荷62及び微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへの出力方向に、充電動作時には、定電圧回路54から蓄電池66への入力方向に制御される。
【0142】
逆バイアス制御回路68は、再生動作時にマイクロコンピュータ96によって駆動するように制御される。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nを逆バイアス制御回路68に接続するとともに、蓄電池66から微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへの接続を逆バイアスとなるように切り替え、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに依存する適正な電圧値となるように、マイクロコンピュータ96により制御される。
【0143】
<通常動作>
図17は、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの電気エネルギーを負荷62に供給する通常動作の実施態様を示す図である。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-n(一次電池)の電気エネルギーを負荷62に供給する場合には、切替制御部58が昇圧制御部56と負荷62とを接続するとともに、双方向制御部64である蓄電池双方向変換回路98を切替制御部58で切り離した状態にして、負荷に必要な負荷電圧と、合算電圧検出部88で検出された電圧が一致するように、複数の絶縁型コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの駆動部が制御される。昇圧制御部56は、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nと、定電圧回路54と、合算電圧検出部88と、合算電流検出部90とで構成されているが、負荷62に必要な負荷電圧と、合算電圧検出部88で検出された電圧が、合算電圧検出部で88検出された電圧と一致するように、マイクロコンピュータ96により制御される。
【0144】
逆バイアス切替回路69-1、69-2、・・、69-nは、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nを絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nへの接続状態となっており、逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nは駆動を停止し、蓄電池66と蓄電池双方向変換回路98は、切替制御部58で切り離されている。
【0145】
微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの電気エネルギーを負荷62に供給する通常動作は、複数の絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nにおける駆動部80-1、80-2、・・、80-nのスイッチング素子44によるパルス幅変調、位相変調又は周波数変調、及び、定電圧回路54が、マイクロコンピュータ96により負荷に必要な電圧に制御される電圧駆動型電圧制御である。電圧駆動型電圧制御ができない場合は、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nからの電気エネルギー供給が不足している状態であり、不足分は蓄電池81の電気エネルギーが分担することになる。
【0146】
このように、本発明の電源システム60によれば、一次電池の電気エネルギーを負荷に供給する通常動作を行うことが可能になる。
【0147】
<分担動作>
図18は、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの電気エネルギーと蓄電池66の電気エネルギーを負荷62に供給する分担動作の実施態様を示す図である。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-n(一次電池)の電気エネルギーに加えて蓄電池66の電気エネルギーを負荷62に供給する場合には、切替制御部58は、昇圧制御部56と蓄電池双方向変換回路98と負荷62とを接続することで、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nから負荷62への電気エネルギーの供給との蓄電池66から負荷62への電気エネルギーの供給とを可能とする。蓄電池双方向変換回路98は、蓄電池66から負荷62へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替える制御をすると。
【0148】
蓄電池66から負荷62へ電気エネルギーを供給する場合、蓄電池双方向変換回路98は、蓄電池66の電圧を負荷62に必要な負荷電圧となるようにコンピュータにより制御される。この時、蓄電池66の電圧は蓄電電圧検出部82で検出され、変換後の出力電圧及び出力電流は、蓄電池出力電圧検出部84及び蓄電池出力電流検出部86で検出される。
【0149】
逆バイアス切替回路69-1、69-2、・・、69-nは、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nから絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nへの接続状態になっており、マイクロコンピュータ96により逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nの動作が停止されている。
【0150】
負荷62に必要な負荷電圧に対して、合算電圧検出部88で検出された電圧が低い場合には、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに接続されている絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nにおける駆動部80-1、80-2、・・、80-nの周波数又はパルス幅をマイクロコンピュータ96により制御して、定電圧回路54の出力電圧が一定となるようにする。マイクロコンピュータ96は、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの入力となる入力電圧検出部74-1、74-2、・・、74-nで検出された電圧値から、それぞれの微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの出力が効率的に取り出せるように制御する。
【0151】
微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの出力は個々にバラツキがあるが、合算電圧検出部88で検出される電圧が一定電圧となるように、各絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nを独立してマイクロコンピュータ96により制御することができる。この場合、入力電圧検出部74-1、74-2、・・、74-nで検出された電圧値に対応して、マイクロコンピュータ96により駆動部80-1、80-2、・・、80-nの周波数変調又はパルス幅変調により、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nからの出力電圧が制御される。
【0152】
また、負荷62に必要な負荷電圧に対して、合算電圧検出部88で検出された電圧が低い場合には、定電圧回路54の出力電圧をマイクロコンピュータ96により制御してもよい。定電圧回路54の制御と絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの制御とを併行して行ってもよい。
【0153】
マイクロコンピュータ96による絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの駆動部80-1、80-2、・・、80-nの制御及び定電圧回路54の制御でも定電圧回路54の出力電圧が一定電圧とならない場合は、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nからの電気エネルギー供給が不足している状態であり、切替制御部58は、定電圧回路54の接続を切り離し、蓄電池66のみから負荷62へ電気エネルギーを供給するように、マイクロコンピュータ96により制御される。これにより、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nからの電気エネルギーの不足分が蓄電池66から供給される。
【0154】
逆バイアス切替回路69-1、69-2、・・、69-nは、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nから絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nへの接続状態になっており、マイクロコンピュータ96により逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nの動作が停止されている。
【0155】
このように、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの駆動部80-1、80-2、・・、80-n及び定電圧回路54を制御しても負荷62に必要な負荷電圧よりも合算電圧検出部88で検出された電圧が低くなった場合は、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nからの電気エネルギー供給能力を超えているため、切替制御部58で、定電圧回路54を切り離すことで、蓄電池66から負荷62への電気エネルギー供給のみを可能としている。
【0156】
本発明の電源システム60によれば、例えば、過負荷により一次電池2の発電容量が不足しているような場合において、一次電池2の電気エネルギー及び蓄電池66の電気エネルギーの両方を負荷に供給する分担動作を行うことが可能になる。また、本発明の電源システム60によれば、一次電池2の出力が不足するようになった場合、蓄電池66の電気エネルギーのみを負荷62に供給することも可能になる。
【0157】
<充電動作>
図19は、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの電気エネルギーを蓄電池66に充電する充電動作の実施態様を示す図である。蓄電電圧検出部82で検出された電圧が蓄電池66の定格値以下の場合には、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nからの電気エネルギーを蓄電池66へ充電する。このとき、切替制御部58は、定電圧回路54と蓄電池双方向変換回路98を接続するとともに負荷62を切り離す。また、逆バイアス切替回路69-1、69-2、・・、69-nは、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nから絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nへの接続状態になっており、マイクロコンピュータ96により逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nの動作が停止されている。
【0158】
これにより、昇圧制御部56の定電圧回路54から蓄電池66への電気エネルギー供給が可能となる。蓄電池双方向変換回路98は、定電圧回路54からから蓄電池66へ電気エネルギーを供給する方向に電流を切り替える。定電圧回路54からの出力電圧を蓄電池出力電圧検出部84で検出し、蓄電池双方向変換回路98で蓄電池66の定格値に電圧変換する。この場合においては、蓄電池出力電圧検出部84は、定電圧回路54の出力電圧、即ち、蓄電池双方向変換回路98への入力電圧を検出し、蓄電池出力電流検出部86は、蓄電池双方向変換回路98への入力電流を検出している。
【0159】
<充電中止>
蓄電池66への充電は、マイクロコンピュータ92による制御により行われる。蓄電池66への充電中に蓄電電圧検出部82で検出された電圧が定格値に達した場合(或は、蓄電池出力電流検出部86がゼロとなった場合でもよい。)、切替制御部58は、蓄電池双方向変換回路98を定電圧回路54から切り離すことで蓄電池66を切り離し、蓄電池66への充電を中止する制御をする。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの出力電圧は不安定なため、継続して充電状態にしておくと、出力電圧が低い場合は、充電した電気エネルギーが消費され減少してしまう場合もあるからである。
【0160】
このように、本発明の電源システム60によれば、一次電池の電気エネルギーで蓄電池を充電する充電動作を行うことが可能になる。また、本発明の電源システム60によれば、充電部に十分な電力が充電された場合や、充電に必要な電気エネルギーが不足している場合には充電動作を中止することが可能になる。
【0161】
<再生動作>
図20は、蓄電池66から微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへ逆バイアス電圧を印加する逆バイアス動作の実施態様を示す図である。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-n(一次電池)の再生動作を行う場合には、切替制御部58により定電圧回路54と負荷62を切り離した状態で、逆バイアス制御部67は逆バイアス切替回路69、69-1、69-2、・・、69-nで微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nのカソード電極を、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nから逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nへの接続に切り替える。これにより、蓄電池66からの逆バイアス電圧を各微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに印加することができる。
【0162】
逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nはマイクロコンピュータ96により制御され、蓄電池66の電圧を逆極性に変換し、逆バイアス切替回路69、69-1、69-2、・・、69-nにより微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nのカソード端子22-1、22-2、・・、22-nが、逆バイア印加端子23-1、23-2、・・、23-n接続するように制御される。これにより、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nには、逆バイアス電圧が印加される。微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nのアノード端子18-1、18-2、・・、18-nは接地されており、微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの共通電極となっている。
【0163】
切替制御部58は、定電圧回路54からの電気エネルギー供給と負荷62への電気エネルギー供給を遮断する。このとき、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの駆動部80-1、80-2、・・、80-nをオフとして、絶縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの駆動を停止し、負荷62も切替制御部58により切り離される。これらの制御は、マイクロコンピュータ96により行われる。
【0164】
さらに、マイクロコンピュータ96により、逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nが制御され、蓄電池双方向変換回路98で変換された逆バイアス電圧をそれぞれの微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに適した電圧に調整する。それぞれの微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの出力電圧は、縁型昇圧コンバータ40-1、40-2、・・、40-nの入力電圧検出部74-1,74-2、・・、74-nで検出できるため、再生動作をする前に、入力電圧検出部74-1,74-2、・・、74-nで検出された電圧値をマイクロコンピュータ96で記憶しておき、この電圧値に基づいて、それぞれの微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nへ印加する逆バイアス電圧を調整することができる。
【0165】
蓄電池66の電圧は蓄電電圧検出部82で検出され、蓄電池双方向変換部98で変換された電圧は蓄電池出力電圧検出部84で検出され、電流は蓄電池出力電流検出部86で検出される。蓄電池出力電圧検出部84で検出された電圧値は、逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nで、それぞれの微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに逆電圧として印加される。逆バイアス電圧は、それぞれ微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに適した電圧値に調整することができる。
【0166】
例えば、発電電圧の低下が大きい微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに対しては逆バイアス電圧を高くし、発電電圧に低下が少ない微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに対しては逆バイアス電圧を低くする等である。また、発電電圧に低下が少ない微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nであっても、電流容量が低下している場合もあり、一律に逆バイアス電圧を高くして微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに印加してもよい。
【0167】
逆バイアス電圧の印加は、自己放電現象の抑制と残渣の微細化による微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nの再生である。逆バイアス制御回路68-1、68-2、・・、68-nでは、マイクロコンピュータ96により、再生に適した微生物燃料電池33-1、33-2、・・、33-nに依存する逆バイアス電圧が印加できるよう制御される。
【0168】
このように、本発明の電源システム60によれば、蓄電池66の電気エネルギーで一次電池2を再生する再生動作を行うことが可能になる。
【0169】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0170】
2 一次電池
3 一次電池部
4 絶縁型コンバータ
10 微生物燃料電池A
12 土壌
14 水
16、16-1、16-2、・・、16-n アノード電極
18、18-1、18-2、・・、18-n アノード端子
20、20-1、20-2、・・、20-n カソード電極
22、22-1、22-2、・・、22-n カソード端子
23、23-1、23-2、・・、23-n 逆バイア印加端子
24、24-1、24-2、・・、24-n 植物
26 根
28 太陽電池
30、30-1、30-2、・・、30-n 微生物燃料電池B
32 微生物燃料電池部
33-1、33-2、・・、33-n 微生物燃料電池
40、40-1、40-2、・・、40-n 絶縁型昇圧コンバータ
42 絶縁トランス
44 スイッチング素子
45 一次側フルブリッジ回路
46、46-1、46-2 ダイオード
47 二次側フルブリッジ回路
48 平滑コンデンサ
49 チョークコイル
50 絶縁型昇圧コンバータB
51 フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータA
52 フルブリッジ方式絶縁型昇圧コンバータB
54 定電圧回路
56 昇圧制御部
58 切替制御部
60 電源システム
62 負荷
64 双方向制御部
66 蓄電池
67 逆バイアス制御部
68、68-1、68-2、・・、68-n 逆バイアス制御回路
69、69-1、69-2、・・、69-n 逆バイアス切替回路
70 微生物燃料電池電圧検出部
74、74-1、74-2、・・、74-n 入力電圧検出部
76、76-1、76-2、・・、76-n 出力電圧検出部
78、78-1、78-2、・・、78-n 出力電流検出部
80、80-1、80-2、・・、80-n 駆動部
82 畜電電圧検出部
84 畜電池出力電圧検出部
86 畜電池出力電流検出部
88 合算電圧検出部
90 合算電流検出部
92 負荷電圧検出部
94 負荷電流検出部
96 マイクロコンピュータ
98 蓄電池双方向変換回路