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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】自己拡張型血管内医療用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20240902BHJP
   A61F 2/01 20060101ALI20240902BHJP
   A61F 2/852 20130101ALI20240902BHJP
   A61F 2/91 20130101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B17/22
A61F2/01
A61F2/852
A61F2/91
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020118290
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2021013742
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】16/508,029
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・ケーシー
(72)【発明者】
【氏名】エイダン・ダフィー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・オマリー
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0071614(US,A1)
【文献】特表2017-535352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035628(US,A1)
【文献】国際公開第2019/079296(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01225949(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61F 2/852
A61F 2/91
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張型血管内医療用装置であって、
多構成要素アセンブリであって、
複数の支柱を備える自己拡張型外側ケージ構成要素と、
直線状に延在するチャネルを内部に形成し、前記自己拡張型外側ケージ構成要素内に配設された、波形構成要素であって、前記波形構成要素は、複数のセルを画定する単一構成要素であり、前記波形構成要素の近位端が、近位接合部で前記自己拡張型外側ケージ構成要素に接続されている、波形構成要素と、を備える、多構成要素アセンブリ、を備え
前記複数のセル間の接続点は、前記波形構成要素が形成する波形の各波のピーク及び谷に位置付けられる、自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項2】
前記自己拡張型外側ケージ構成要素が、複数の非対称に配置された前記支柱によって形成されている、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項3】
前記複数のセルは、互いに寸法が異なり、前記波形構成要素は、振幅が変化する前記波形を形成する、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項4】
前記複数のセルは、互いに寸法が均一であり、前記波形構成要素は、振幅が変化する前記波形を形成する、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項5】
前記波形構成要素内の前記複数のセルは各々、複数の隣接する支柱によって画定されるか、形成されるか、若しくは包囲される空間、又は領域である、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項6】
前記自己拡張型外側ケージ構成要素及び前記波形構成要素の各々は、単一の切断管から形成可能であり、前記自己拡張型外側ケージ構成要素を形成するための前記単一の切断管と前記波形構成要素を形成するための前記単一の切断管とは、互いに直径が異なり、前記自己拡張型外側ケージ構成要素を形成するための前記単一の切断管が、前記自己拡張型外側ケージ構成要素の前記支柱を形成するように、一次直径に拡張可能であり、一方、前記波形構成要素を形成するための前記単一の切断管が、前記波形構成要素内の前記支柱を形成するように、前記一次直径よりも小さい二次直径に拡張可能である、請求項5に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項7】
前記自己拡張型外側ケージ構成要素が、前記自己拡張型外側ケージ構成要素の遠位端上に配設された遠位破片保護部材を有する、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項8】
前記遠位破片保護部材が、複数の相互接続された支柱又は相互に絡み合ったストランドの塊を備えるメッシュである、請求項7に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項9】
前記自己拡張型外側ケージ構成要素の前記遠位端が、前記遠位破片保護部材に取り付けられており、一方、前記波形構成要素の遠位端が、前記遠位破片保護部材に接続されていない、請求項7に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項10】
前記波形構成要素の遠位端が、前記遠位破片保護部材に取り付けられており、一方で、前記自己拡張型外側ケージ構成要素の前記遠位端が、前記遠位破片保護部材に接続されていない、請求項7に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項11】
前記波形構成要素が、前記波形構成要素を通って長手方向に延在する中心軸を中心にねじれたパターンを形成する、請求項7に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項12】
前記複数のセルは、直接接続された一連のセルを構成しており、前記一連のセルは各々、2つの交点で相互接続された2本の支柱によって画定されている、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項13】
前記複数のセルは、前記接続点でのみ互いに接続されている、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項14】
前記複数のセルは、第1のセル、第2のセル、および第3のセルを含み、前記第1のセルの近位端に前記第2のセルの遠位端が接続されて前記ピークに位置付けられた前記接続点を形成し、前記第1のセルの遠位端に前記第3のセルの近位端が接続されて前記谷に位置付けられた前記接続点を形成している、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【請求項15】
前記複数のセルは、第1のセルおよび第2のセルを含み、前記第1のセルの近位端に前記第2のセルの遠位端が接続されており、前記チャネルは、長手方向に延在する中心軸を画定し、前記中心軸は、前記第1のセルと前記第2のセルとを貫通して延在する、請求項1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己拡張型血管内医療用装置に関する。具体的には、本発明は、血塊内への埋め込み、血塊のカテーテル内への完全な回収、血塊の破砕の最小化及び医療用装置の全体的な良好な性能に対する他の改善を促進する機械的血栓除去装置などの自己拡張型血管内医療用装置を目的とする。
【背景技術】
【0002】
急性虚血性脳卒中は、脳への血液の流れを妨害する脳動脈内の血栓性又は塞栓性の閉塞物(例えば、妨害物)によって引き起こされる。閉塞は、典型的には、血管を通って移動し、脳の脳動脈内に最終的に詰まった、身体の別の部分から遊離される血液血塊によって引き起こされる。
【0003】
このような状態で血流を回復させるために使用される1つの処置は、血塊を溶解するか、又は破壊するのに役立つ薬物(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))の投与である。しかしながら、このような薬物のみを使用して血流を回復させることの成功には、比較的短い期間で薬剤を投与する必要があり、比較的小さい血塊寸法にのみ好適である。したがって、薬物治療は、全ての虚血性脳卒中症例において実行可能な選択肢であるわけではない。
【0004】
このような他の状況では、機械的装置は、血管を通る血流を回復し、その後、開放手術よりも侵襲的に血栓、血塊、閉塞物、又は妨害物を受容カテーテルに物理的に除去するために、血栓除去処置中に血管内に一般的に展開される。このような機械的装置は、単独で、又は血塊溶解/破裂薬と組み合わせて使用されてもよい。典型的には、血塊を捕集するために使用される機械的装置は、カテーテルを通って所望の標的場所に展開されるワイヤに取り付けられた自己拡張型メッシュスキャフォールド、骨格、ケージ、又は管(例えば、ステント回収機又はステントリバ)である。
【0005】
血栓除去治療又は処置は、典型的には、脳卒中後の比較的短い期間(例えば、脳卒中の発症後約48時間未満)内の患者に対して実施され、典型的には約1.0mm超の直径を有する大型血管閉塞物に最適である。非侵襲的撮像、例えば、MR及び非造影CTを典型的には使用して、血栓除去治療がその特定の患者に好適であるかどうかを判定するために虚血性変化を判定する。
【0006】
血栓除去処置若しくは治療の間、医師若しくは介入医は、典型的には鼠径部又は腕に位置する動脈内に、又は頸動脈を通る直接アクセスによって、脈管構造を通してガイドワイヤを血管内導入する。ガイドワイヤは、脈管構造を通って血塊、妨害物、又は閉塞物の標的位置へと進められる。ガイドワイヤが適切に位置付けられると、典型的には約1.0mm未満の外径を有するマイクロカテーテルは、マイクロカテーテルを通して軸方向に画定された管腔を通過するガイドワイヤの上をたどる。ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルは、標準的なインターベンション技術を用いて血塊又は閉塞物を横断するように使用される。圧縮状態にあるステント又は機械的血栓除去装置を、マイクロカテーテルの管腔を通して標的部位へと誘導し得る。ステントリバ又は機械的血栓除去装置は、マイクロカテーテルから展開されると自動的に拡張し、その本来の拡大状態となる。ステントリバ又は機械的血栓除去装置は、典型的には、ステンレス鋼、ニッケル-チタン、又はタンタルなどの生体適合性材料で作製される。
【0007】
(i)血塊脱落及び保持のための血塊内へのステントの埋め込みの最適化、(ii)血塊圧縮の最小化、(iii)血塊破砕の最小化、(iii)血流の回復、(iv)回収中のステント内の血塊の安定化、並びに、(v)カテーテルへの回収中に血塊に加えられる剪断力の低減、などの1つ以上の要因に基づく、向上した血栓除去性能を有する、改善された血栓除去装置を開発することが望ましい。このような要因のうちの1つ以上を考慮する機械的血栓除去装置を設計することに加えて、改善された機械的血栓除去装置をより小型のカテーテルと共に使用するのに好適であるように設計することも有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上述した要因のうちの1つ以上に基づいて向上した性能を有する改善された機械的血栓除去装置を目的とする。
【0009】
本発明の別の態様は、自己拡張型血管内医療用装置であって、多構成要素アセンブリであって、複数の支柱を備える自己拡張型外側ケージ構成要素と、内部にチャネルを形成する前記自己拡張型外側ケージ構成要素内に配設された単一セル波形構成要素と、を備える、多構成要素アセンブリ、を備える、自己拡張型血管内医療用装置に関する。単一セル波形構成要素の近位端は、近位接合部で自己拡張型外側ケージ構成要素に接続されている。
【0010】
本発明の更に別の態様は、自己拡張型血管内医療用装置であって、多構成要素アセンブリであって、複数の支柱を備える、自己拡張型外側ケージ構成要素と、内部に円筒形チャネルを形成する自己拡張型外側ケージ構成要素内に配置された内側構成要素であって、内部構成要素の近位端が、近位接合部において自己拡張型外側ケージ構成要素に接続されている、内側構成要素と、を備える、多構成要素アセンブリを有する、自己拡張型血管内医療用装置を目的とする。自己拡張型外側ケージ構成要素の各々及び内側構成要素によって形成された円筒形チャネルの円形断面は、直径が異なり、単一の切断管又は切断パターンから形成可能であり、単一の切断管又は切断パターンが、自己拡張型外側ケージ構成要素を形成する一次支柱の拡張可能な直径に等しい一次直径を有し、一方、単一の切断管又は切断パターンは、一次直径よりも小さい二次直径にヒートセット可能であり、内側構成要素によって形成された円筒形チャネルの円形断面を形成する。
【0011】
本発明の更に別の態様は、自己拡張型血管内医療用装置であって、多構成要素アセンブリであって、(i)複数の支柱を備える、自己拡張型外側ケージ構成要素と、(ii)自己拡張型外側ケージ構成要素内に配設された波形構成要素と、(iii)拡張された遠位閉鎖端メッシュセクションと、を備える、多構成要素アセンブリを含む、自己拡張型血管内医療用装置に関する。拡張された遠位閉鎖端メッシュセクションは、波形構成要素に直接取り付けられている。拡張された遠位閉鎖端メッシュセクションと自己拡張型外側ケージ構成要素との間に直接的な物理的接続は存在しない。
【0012】
本発明の更に別の態様は、複数の支柱を備える、自己拡張型外側ケージ構成要素を含む、自己拡張型血管内医療用装置を目的とする。複数の支柱の各々は、拡張可能な外側ケージの外径の一部を形成する湾曲した外側表面及び自己拡張可能な外側ケージの内径の一部を形成する湾曲内側表面を有する楔形径方向断面を有し、湾曲した外側表面の一部分は、除去されている。
【0013】
本発明の更に別の態様は、複数の支柱を備える、所望のパターンに切断された、反転された凹状シート又はプレートから作製された自己拡張型血管内医療用装置に関する。反転された切断管の複数の支柱の各々は、凹状の内側径方向表面で最も広く、かつ凹状の外側径方向表面に達するまでテーパ状に小さくなる、楔形径方向断面を有する。
【0014】
本発明の更に別の態様は、自己拡張型血管内医療用装置の自己拡張型外側ケージ構成要素を製造するための方法を目的とする。凹状シート又はプレートに所望のパターンが切断される。次いで、切断された凹状シート又はプレートを反転させる。その後、反転された切断された凹状シート又はプレートは、反転された切断された凹状シート又はプレートの対向する自由縁部を互いに向かって引き寄せて、所定の直径のマンドレルの周囲に形状設定され、複数の支柱を備える径方向ステントを形成する。複数の支柱の各々は、凹状の内側径方向表面で最も広く、凹状の外側径方向表面に達するまでテーパ状に小さくなる楔形径方向断面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記の特徴及び他の特徴は、本発明の実例となる実施形態の以下の詳細な説明及び図面より容易に明らかとなるであろう。ただし、複数の図面を通じて同様の参照符合は同様の要素を示すものとする。
図1A】機械的血栓除去装置の2セル外側ケージの平面図である。
図1B図1Aの例示的な2セル外側ケージの端面図である。
図1C図1Aの例示的な2セル外側ケージの側面図である。
図2A】本発明による機械的血栓除去装置の単一セル波形構成要素の平面図である。
図2B図2Aの単一セル波形構成要素の端面図である。
図2C図2Aの単一セル波形構成要素の側面図である。
図2D図2Aの単一セル波形構成要素の等角図である。
図2E】単一セル波形構成要素がレーザ切断される原材料管か、又は代替的に、単一セル波形構成要素によって形成された管状チャネルのいずれかを表す等角図である。
図2F図2Dのレーザ切断された単一セル波形構成要素の等角図における破線円形領域2Fの拡大図である。
図2G】セルパターンが構成要素を通って長手方向に延在する中心軸を中心にねじれるか、又は回転する、代替的な単一セル波形構成要素の等角図である。
図2H図2Gの単一セル波形構成要素の側面図である。
図3A図1A~1Cの2セル外側ケージ及び、その中に配設された図2A図2Dの単一セル波形構成要素を含み、波形構成要素の遠位端が、外側ケージに取り付けられている、本発明による二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置の等角図である。
図3B図3Aの二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置の端面図である。
図3C図3Aの二重構造アセンブリの機械的血栓除去装置の側面図である。
図3D図1A~1Cの2セル外側ケージ及び、その中に配設された図2A図2Dの単一セル波形構成要素を含み、外側ケージの遠位端に接続された遠位メッシュが、遠位破片保護を提供し、波形構成要素が、外側ケージに対して浮遊しているか、又は自由である、本発明による代替的な二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置の等角図である。
図3E】波形構成要素を有しない図3Dの外側ケージの等角図である。
図3F】外側ケージの遠位端が遠位メッシュに対して浮遊したままである間に波形構成要素の遠位端に接続された遠位メッシュによって提供される破片保護の等角図である。
図3G】波形構成要素が取り除かれており、遠位メッシュが近位シャフトのワイヤ又は延在部を介して接続されている、遠位メッシュによって提供される遠位破片保護の等角図である。
図3H】ボールが波形構成要素の遠位端に接続され、外側ケージの遠位端が遠位メッシュに対して浮遊したままである、繊維又はワイヤの塊又はボールによって提供される遠位破片保護の等角図である。
図4】外側ケージを形成する一次支柱のうちの1つが(破線で示されるように)除去されている、本発明による機械的血栓除去装置の代替的な2セル外側ケージ構成の等角図である。
図5】2つの支柱が除去されている、別の例示的な2セル外側ケージの機械的血栓除去装置の広げられた平らな状態にある平面図である。
図6A】波形は構成要素の長さに沿って高さが変化する、本発明による機械的血栓除去装置の単一セル波形構成要素の波形の側面図である。
図6B】振幅(高さ)及び対応するセル寸法の両方が、構成要素の長さに沿って変化する、本発明による機械的血栓除去装置の単一セル波形構成要素の1つの構成の等角図である。
図6C】各セル寸法が実質的に同じであるが、実質的に均一な切断セルが所望の形状にヒートセットされ、構成要素の長さに沿って変化する波振幅(高さ)を生成する、本発明による機械的血栓除去装置の単一セル波形構成要素の別の代替的な構成の等角図である。
図7A】外側ケージ及び内側構成要素が、単一の切断管又は切断パターンから製造される、本発明による二重構造体アセンブリの機械的血栓除去装置の広げられた平らな状態の平面図である。
図7B図7Aの二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置の拡張状態にある間の等角図である。
図7C】線VIIC-VIICに沿った、図7Bの二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置の径方向断面図である。
図8A】カテーテル内に圧縮されるか、又は装填されたときの直径が減少している、本発明による機械的血栓除去装置の例示的な二重構造アセンブリの分解図である。
図8B図8Aの機械的血栓除去装置の例示的な二重構造アセンブリの組立図である。
図8C】接続支柱が外側ケージの第1のセル/セグメントと遠位の第2のセル/セグメントとの間の接続支柱が特定され、この接続支柱が遠位の第2のセクションにおいて取り除かれて、隣接する支柱幅を最大化してもよい、図8Aの近位の第1のセル/セグメント外側ケージの径方向セクションの平らな広げられた図である。
図9A】ニチノール管から切断されたステントレーザを備える単一楔形支柱の先行技術の支柱断面形状である。
図9B】ニチノール凹状シートから切断された、本発明によるステントの単一楔形支柱の支柱断面形状である。
図10】各支柱が図9Bに示される断面形状を有する、マンドレルの周りで変形され、かつヒートセットされた、反転されたレーザ切断された凹状シート又はプレートの長手方向スリット又は開放シームを示す径方向断面図である。
図11A】ハトメを有する接続支柱に沿った本体セグメント内のシームを示す、マンドレルの周りに巻かれたニチノール凹状シートからレーザ切断された、本発明の装置の部分縦断面図である。
図11B】ハトメなしの接続支柱に沿った本体セグメント内のシームを示す、マンドレルの周りに巻かれたニチノール凹状シートからレーザ切断された、本発明の装置の部分縦断面図である。
図12A】ノッチ、溝、又はチャネルが支柱の外径方向表面に切断されるか、又は支柱の外径方向表面から除去され、それによって支柱の外側表面接触面積を低減させる、ニチノール管から切断された支柱の斜視図である。
図12B図12Aのステントの端面図である。
図13A】支柱の外側表面(外径)の角部に面取りされた切断部を有するニチノール管からレーザ切断され、それによって、支柱の外側表面接触面積を低減させる、支柱の別の構成の斜視図である。
図13B図13Aのステントの端面図である。
図13C】除去された角部を破線で示す、図13Aの支柱の端面図である。
図14】支柱長さ、幅、及び厚さの測定値を画定するための、機械的血栓除去装置の例示的な支柱の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「遠位」又は「近位」という用語は、以下の説明において、治療医師若しくは医療介入医に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」は、医師若しくは介入医から離れた位置又は離れる方向である。「近位」又は「近位に」又は「近接した」は、医師若しくは医療介入医に近い位置又は向かう方向である。「閉塞物」、「血塊」、又は「妨害物」という用語は、区別なく使用される。更に、用語「セル」は、複数の隣接する支柱(例えば、4つの支柱)によって画定されるか、形成されるか、又は包囲される空間、領域、又は領域であり、「セグメント」は、接続支柱によって接続された多数のセルを備えるセクションを表す。
【0017】
本明細書に開示される本発明の機械的血栓除去装置(ステントリバ)の自己拡張型フレームワーク、ケージ、骨格又はスキャフォールディング設計は、高度に歪んだ送達構成から解放されると自動的にその形状を回復することができる材料から作製される。ニチノール又は同様の特性を有する合金などの整体適合性の超弾性材料が特に好適である。材料は、ワイヤ、ストリップ、プレート、シート、又は管などの多くの形態であってもよい。特に好適な製造プロセスは、ニチノール管をレーザ切断し、次いで、結果として生じた構造体をヒートセットさせ、かつ電解研磨して、支柱及び接続要を備える、拡張可能なフレームワーク、ケージ、骨格、又はスキャフォールディングを作製することである。このフレームワークは、本明細書に開示されているように多種多様な形状のいずれかであってもよく、また、合金元素(例えば、白金など)の添加によって、又は様々な他のコーティング若しくはマーカーバンドによって、X線透視法の下で可視化されてもよい。
【0018】
現在の自己拡張型機械的ステント装置、特に、急性虚血性脳卒中の医学的処置などのための血管内医療処置中に使用するための機械的血栓除去装置(例えば、ステントリエバー)は、標的血塊、閉塞物又は妨害物を係合し、脱落させ、その後、吸引下で血塊を中間カテーテル、ガイドカテーテル、又はシース内に完全に回収しようとする場合に、いくつかの困難又は問題に直面する。本明細書で詳述される本発明の機械的血栓除去装置の特徴は、従来の機械的血栓除去装置に関連するこのような課題を克服する。
【0019】
本発明によって対処される1つの問題は、アクセス又は中間カテーテルの直径が、典型的には、標的血塊、閉塞物又は妨害物の直径よりも小さいため、それを通じた血塊後退に対する抵抗が存在し、剪断力により回収中に血塊の破砕が引き起こされるリスクがあることである。これは、全ての機械的血栓除去装置及び血塊、閉塞物又は妨害物に対する剪断力が、中間カテーテルの直径が減少するにつれて増大するという問題である。いくつかの血塊、閉塞物、又は妨害物は、破砕を起こしやすいもろい血塊、及び自発的な血塊より圧縮性が低い組織化フィブリンリッチ血塊などの、中間又はアクセスカテーテルへの完全な回収へのより大きな課題を提起する。
【0020】
機械的血栓除去装置の切断パターンが、血塊埋め込みに影響を及ぼし、装置が、中間カテーテル、ガイドカテーテル、又はシース内に完全に血塊を脱落させ、かつ回収する能力に影響を及ぼすことが、実験試験を通して発見された。本発明の一実施形態では、機械的血栓除去装置は、二重構造体アセンブリ構成を有する。図1Aに示される例示的な平面図に示されるように、機械的血栓除去装置の拡張可能な外側ケージ100は、2セル(又は2セグメント)パターンを有するが、2~6個のセルの範囲を含んでもよく、外側ケージ内に存在するセルの数は、円周方向に測定される。図1Aの外側ケージ100を形成する切断パターンは、セル面積を最大化するために最小数のニチノール支柱を備える開放支柱構成を有し、好ましくは、展開上の血塊係合を最適化し、カテーテル内への保持性能及び回収を改善するためのU字形のクラウン/サドル点110を含む。この開放支柱構成は、展開時の血塊圧縮を最小限に抑え、それによって血塊と血管壁の内部表面との間の摩擦を最小限に抑える。相対的に大きい受容空間105(例えば、大きなセル寸法又は面積)は、血塊の剪断を最小限に抑えながら、血塊、閉塞物、又は妨害物を内部に深く埋め込み、アクセス又は中間カテーテルへの後退を補助することを可能にする。クラウン110はまた、中間カテーテル又はガイドカテーテルの先端に血塊を回収するのに役立つ。遠位放射線不透過性コイル又はマーカーは、撮像中の装置の視認性(例えば、X線透視法)を改善するために、外側ケージに取り付けられてもよい。
【0021】
外側ケージの2セル構成は、径方向に圧縮されたときに最大外径が減少し、それによって、装置が約0.021インチ以下、好ましくは約0.017”.以下の内径を有する比較的小さい寸法のマイクロカテーテルを通して装填され、かつ送達されることを可能にするラッピング効率を向上させる。マイクロカテーテル内に装填されると、2セル外側ケージ構成は、円周方向に並んで位置合わせされた8つの支柱を有する典型的な4セル機械的血栓除去装置と比較して、円周方向に並んで位置合わせされた最大4つの支柱を確実にする。
【0022】
二重構造の機械的血栓除去装置の2セル外側ケージ100内には、単一セル波形構成要素310が配設されており、単一セル構成は、図2Aの平面図及び図2Dの等角図に明確に示されている。波形構成要素310は、原材料330の管(図2E)からレーザ切断されて、波形構成要素を形成してもよい(図2F)。代替的に、波形構成要素は、より小さい直径の管から切断され、所望の外径に拡張されてもよい。単一セル波形構成要素310’の異なる構成は、図2G及び図2Hにそれぞれ提供される等角図及び側面図に示されており、セルパターンは、構成要素を通って長手方向に延在する中心軸(A)を中心にねじれるか、又は回転する。
【0023】
展開すると、波形構成要素310は、血塊を通るチャネルを開き、血塊を通る血液の部分的な流れの即時回復を容易にする。このチャネルは、図2Bに示されるように、端部から見たときに明らかであり、典型的には、自由に拡張されたときに円形である。波形構成要素の波形プロファイルは、図2Cの側面図に示されるように、血塊の脱落に対する、かつ、カテーテルへの保持中の係合を促進する。波形構成要素はまた、回収中に外側ケージ100の完全に又は部分的に内側に移動する、比較的小さく、かつ、もろい血塊を安定化する。波形構成要素は、血栓除去装置の遠位端への移動を最小限に抑える血塊を安定化させ、破片は、破片保護領域内で失われるか、又は捕捉されてもよい。加えて、波形構成要素はまた、血塊が中間ガイドカテーテル内に引き込まれるときに、側面に偏向可能である。結果として、波形構成要素は、装置が局所吸引又は中間カテーテルに血塊を回収する能力を阻害することなく、性能を向上させる。
【0024】
本発明の機械的血栓除去装置の外側ケージ内のセル面積又は血塊受容空間を最大化し、それによって、内部への血塊の埋め込みを改善するために、1つ以上の支柱を除去してもよい。図4の等角図に示される拡張状態の外側ケージ400の例示的な図では、点線又は破線は、外側ケージから除去された単一の支柱を表す。1つ以上の支柱を除去すると、外側ケージ管のレーザ切断パターンは、対称ではなく、すなわち非対称であるか、又は対称性がない。1つ以上の支柱の除去は、血塊を外側ケージに埋め込むためのセル面積及び潜在的な受容空間を拡大する。このような空間の拡大は、血塊がより深く埋め込まれることを可能にし、結果として、脱落の可能性を最小限に抑え、したがって、中間カテーテルへの完全又は全体の血塊回収の確率が増加する。しかしながら、レーザ切断パターンは、血塊が側枝に失われることを防止するために、又は血管内の困難な屈曲の周囲での回収中に、血塊との十分な接触を保持する。図5は、内部に血塊が埋め込まれてもよい2つの拡大セル又は受容空間を作製する2つの支柱(505、505’)が除去された外側ケージ500の広げられた状態の(レーザ切断されたパターンの)別の例示的な実施形態を示す。外側ケージから1つ以上の任意の数の支柱を除去することが想到され、かつ、本発明の意図する範囲内にある。
【0025】
図3A~3Cは、それぞれ、図1A図1C及び図2A図2Dにそれぞれ示される、2セル外側ケージ及び単一セル波形構成要素の二重構造アセンブリの等角図、端面図、及び側面図をそれぞれ示す。外側ケージ305の内側に配設された波形構成要素310は、近位側接合部320.においてシャフト315に接続される。反対側の遠位端325において、2つの構成要素(305、310)は互いに接続されているが、別の方法で互いに対して自由であるか、又は浮遊してもよい。
【0026】
遠位破片保護部材は、遠位破片保護ゾーンを提供するために、本発明の機械的血栓除去装置に含まれてもよい。図3Dを参照すると、テーパ状の遠位端を有し、外側ケージ305の遠位端に取り付けられるような形状にヒートセットされた複数の支柱を備える遠位メッシュセクション335は、遠位の破片保護を提供する。外側ケージ305内に、遠位端325が外側ケージ及び遠位メッシュセクションの両方に対して浮遊している(例えば、取り付けられていない、解放されている、固定されていない、接続されていない)波形構成要素310が配設される。図3Eは、波形構成要素を有しない図3Dの外側ケージ及び遠位メッシュセクションの等角図である。図3Fに例示される更に別の変形例では、遠位の破片保護が波形構成要素310の遠位端に接続された遠位メッシュセクション335によって提供される一方で、外側ケージ305の遠位端は遠位メッシュセクション335に対して浮遊しているか、自由であるか、又は接続されていない。図3Gでは、波形構成要素が取り除かれているため、遠位メッシュセクション335は、近位シャフト315のワイヤ又は延長部を介して接続される。複数の支柱を有する拡張された骨格である遠位メッシュ部分ではなく、遠位の破片保護は、図3Hに示されるように、相互に絡み合ったストランド(例えば、ニチノールワイヤなどの生体適合性繊維又はワイヤ)の遠位塊、ボール又は球体335’によって提供されてもよい。塊335’を形成する相互に絡み合ったストランドは、必ずしもボール又は球体の形状である必要はないが、任意に不定形であるか、又は幾何学的形状を採ってもよい。相互に絡み合ったストランド335’の遠位塊は波形構成要素310の遠位端に接続され、一方、外側ケージ305の遠位端は遠位塊335’に対して浮遊しているか、自由であるか、又は接続されていない。
【0027】
波形構成要素310の波形パターンは、いくつかの異なる方法で変化させることができる。図6Bの等角図に示される第1の構成では、管は、異なる寸法のセルにレーザ切断されてもよく、次いで、その振幅(高さ)が構成要素の長さに沿って変化する可変波形にヒートセットすることができる。図6Aの側面図を参照すると、振幅(高さ)「B」は、波形状の振幅(高さ)「A」よも大きい。波形が振幅(高さ)及び対応するセル寸法又は長さの両方において変化するこの構成では、セル間の接続点におけるクラウンは、各波のピーク及び谷に位置付けられる。波形状の別の可能な構成が図6Cに示されており、管は、実質的に均一な寸法のセルに切断され、次いでヒートセットされて、波形構成要素の長さに沿って様々な波振幅(高さ)を生成する。図6Bの実施形態とは異なり、図6Cの波形構成要素構造内のセル間の接続点におけるクラウンは、必ずしも各波のピーク又は谷に位置付けられていない。より多くの接続点及び、したがってより多くのクラウンが、血塊との係合を促進する図6Cの構成に存在する。波形構成要素の単一セルの振幅及び/又は長さの変動は、血塊の破砕に対する更なる保護を提供し、外側ケージ内で組み立てられたときに、血塊安定化性能を最適化する。
【0028】
図3A~3Cに示されるように、外側ケージ305及び波形構成要素310はそれぞれ、2つの別々に切断管又は異なる直径の切断パターンから製造され、その後、一緒に組み立てられて二重構造アセンブリを形成する。代替的に、本発明は、2つの別々に切断管又は切断パターンではなく、単一の切断管又は切断パターンから形成されるか、又は製造されている外側ケージ及び内側構成要素を企図する。本発明による一次支柱及び二次支柱の両方を形成するために使用される単一の切断管又は切断パターンは、二重構造体アセンブリ(例えば、外側ケージ及び内側構成要素)に関連する利益を維持しながら、製造の全体的なコストを低減する。具体的には、単一の切断管又は切断パターンはそれぞれ、内側構成要素及び外側ケージにそれぞれ変形され、かつヒートセットされ、次いで、2つの別々に切断管又は切断パターンに関して上述したのと同じ利益及び利点を有する。図7Aは、広げられた(平坦な)状態にある、単一の切断管又は切断パターンの一部を示す。単一の切断管又は切断パターンから製造された二重構造アセンブリのこの新規な構成は、外側ケージ構成要素を形成する一次支柱700によって達成され、一次支柱700は拡張されて、約3.0mm~約6.0mm(好ましくは、約5.0mm)にヒートセットされ、一方内側構成要素を備える二次支柱705は、それぞれの拡張工程中に、拡張され、約1.0mm~約3.0mm(好ましくは約1.25mm)のより小さい二次直径を有する円形チャネルを形成する。図7Bは、巻かれた拡張状態にある間に単一の切断管又は切断パターンから形成された二重構造アセンブリの等角図であり、アセンブリは、外側ケージを画定する形成された一次支柱700及び円筒形チャネルを画定する内側構成要素を備える、内側径方向に変形した二次支柱705を含む。線VIIC-VIICに沿った図7Bの二重構造アセンブリの径方向断面図が、図7Cに示されている。
【0029】
代替的に、単一の切断管又は切断パターンは、外側ケージ(例えば、約5.0mm)を形成する一次支柱700の好ましい拡張直径に等しい直径を有してもよく、単一の切断管又は切断パターンの直径(例えば、約1.25mm)を減少させて内側構成要素の二次支柱705を形成するために適用されるヒートセットプロセスを有してもよい。したがって、外側ケージの一次支柱を形成するために、単一の切断管又は切断パターンの直径の拡張も縮小も必要ではない。したがって、単一の原材料切断管又は切断パターン(例えば、ニチノール)を、任意の所望の優先的な一次及び二次直径にそれぞれ変更して、二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置の外側ケージ及び内側構成要素を形成することができる。
【0030】
二重構造アセンブリ機械的血栓除去装置は、より小さい寸法(例えば、約0.017インチ)のマイクロカテーテル内で受容可能であるように、十分に小さい直径に、折りたたまれ/減少し/巻かれることが更に望ましい。しかしながら、より小さい直径寸法に折りたたまれる機械的血栓除去装置は、いくつかの課題に直面している。二重構造の機械的血栓除去装置の近位結合の構築を可能にし、適切な装置横断プロファイル(すなわち、断面積)(0.017”のマイクロカテーテルと適合するために、好ましくはと約0.0165”未満)を確実にするために、より小さい直径のニチノールカット管原材料が好ましい。より小さい直径の切断管原材料を利用するときに、本発明によって解決されるか又は克服される固有の問題は、血管内の血塊と係合して血流を回復させ、血塊除去を促進するときに十分な径方向力を発揮するための、十分な支柱幅及び厚さの調節である。支柱長さ、幅、及び厚さの測定は、図14の説明によって定義される。
【0031】
したがって、より小さい寸法のマイクロカテーテル(例えば、0.017”のマイクロカテーテル)内で受容可能であるように、効率的に巻いて直径を減少させるように外側ケージを同時に構成しながら、十分な径方向力を発揮するように支柱幅を最大化することが望ましい。これらの目的を達成するために、本発明の機械的血栓除去装置は、外側ケージ805、(図2A~2Dに示されるものと同様の)波形構成要素810、及び、拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクション815を含む、(分解図及び組立図をそれぞれ示す、図8A及び図8Bに見られるような)多構成要素アセンブリ800を有する。図8Aに示される例示的な実施例では、外側ケージ805は、好ましくは、2セグメントの設計又は構成(すなわち、接続支柱895によって第2のセグメント890’に接続された第1のセグメント890を備える2セグメント外側ケージ805)であるが、他の構成も考えられ、本発明の意図する範囲に含まれるものである。外側ケージ805は、適切な支柱形状を提供するために、約0.36mm~約2.0mmの直径を有する原材料(例えば、ニチノール)カット管から製造されてもよい。波形構成要素810は、マイクロカテーテル内への装填中の装置の効率的なラッピングを容易にするために、より小さい直径(約0.15mm)の原材料(例えば、ニチノール)カット管から製造されてもよく、近位接合部のアセンブリは、0.017”のマイクロカテーテルと適合するプロファイルを有する。具体的には、図8A及び8Bの多構成要素構成における外側ケージ805の支柱幅の最大化は、波形構成要素810が、遠位破片保護部材を含む遠位セクション(例えば、拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクション815)内へと軸方向に拡張するか、又は延在する(2A~2Dに示すものと同様の)波パターンを形成することによって実現される。加えて、外側ケージ805の第2のセグメント890’を(図8Cに示すように)拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクション815に接続する接続支柱895は取り除かれ、波形構成要素810によって置き換えられている。また、接続支柱を取り除いたことで、より小さい寸法のマイクロカテーテル(例えば、0.017”のマイクロカテーテル)内で受容可能である外側ケージのラップダウンの効率も最適化される。拡張された遠位テーパ状端部メッシュが、外側ケージ805ではなく、遠位破片保護ゾーンを提供し、また、処置中に中間カテーテル支持のための遠位アンカーとしても機能する波形構成要素810に直接取り付けられているため、外側ケージ805の第2のセグメント890’を遠位メッシュセクション815に接続する支柱895は、本発明の構成において取り除くことができる。外側ケージ及び波形構成要素によって提供される機能性については、上で詳細に論じられている。拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクション815は、回収中に血塊を、破砕しないように定位置に維持する。好ましくは、拡大された遠位テーパ状端部メッシュセクションを形成するレーザ切断管は、その閉鎖遠位端820に固定するのを補助するために、直径が減少している。
【0032】
従来の機械的血栓除去装置の製造中、所望の管パターンを切断するために使用されるレーザビームは静止したままであり、一方、ステントを形成する原材料(例えば、ニチノール)カット管が回転する。図9Aは、原材料管(例えば、ニチノール管)からレーザ切断したときの標準的な、又は従来の支柱断面形状を表す。回転は、所望のレーザ切断された平坦なパターンによって誘導されるか、又は指示される。
【0033】
図9Aから明確にわかるように、従来の楔形支柱の径方向断面は、その外側表面(例えば、外径)に沿って最も広く、その内側表面(例えば、内径)に達するまでテーパ状に小さくなる。すなわち、従来の楔形支柱は、内側表面(管の内径を形成する内側弧)に沿って「IA」として示される最小弧長(すなわち、内側弧を構成する曲線に沿った距離の測定)、及び、断面の外側表面(管の外径を形成する外側弧)に沿って「OA」として示される最大弧長(すなわち、外側弧を構成する曲線に沿った距離の測定)を有する。換言すれば、弧長は、内側表面(管の内径)から外側表面(管の外径)まで増大する。したがって、弧長は、従来の支柱の径方向断面の外側表面(OA)に沿って最も長く(最大の接触表面積)、弧長は、従来の支柱の断面の内側表面(IA)に沿って最短(最小接触表面積)である。このような従来の設計により、ステントの外径方向力は、より大きな表面積にわたって適用されるため、支柱表面積当たりの外径方向圧力及び血塊埋め込みを低減する。機械的血栓除去装置における血塊の向上された、又は改善された埋め込みは、外側ケージの支柱形状を修正すること、具体的には外側表面(OA)の接触表面積を低減することによって、本発明によって実現されてもよい。
【0034】
図9Aに示される従来の支柱断面と同様に、ニチノール管から切断されるのではなく、本発明によれば、凹状シートの回転がX-Y平面内で制御されている間に、ステントの所望のパターンは、凹状のニチノールシート又はプレート上でレーザ切断されてもよい。図9Bは、反転された凹状ニチノールシートのレーザ切断された単一の支柱の本発明の径方向断面形状を示す。この形状を達成するために、所望のパターンは、凹状のニチノールシート又はプレートでレーザ切断される。その後、レーザ切断された凹状のニチノールシート又はプレートは、反転され(裏返され)、自由縁部を互いに向かって引き寄せて所望の直径のマンドレルの周りに形成され、径方向ステントを形成し、この形状を維持するためにヒートセットされる。図10は、反転されたレーザ切断された凹状のニチノールシート又はプレートがマンドレルの周りに巻かれた後の、構成されたステントの径方向断面図を示し、その対向する長手方向縁部1000、1000’は互いに向かって引き寄せられ、ステントが巻かれ/直径が減少したときに重なり合うことを可能にする長手方向スリット又は開放シーム1110を画定する。代替的に、対向する長手方向縁部は、一緒に接合されてもよく、例えば、レーザ溶接、はんだ付け、又は同様の機械的接合プロセスで接合することができる。
【0035】
ニチノール管から切断された従来の断面楔形支柱レーザ(図9A)とは対照的に、本発明のレーザ切断された凹状ニチノールシートは、図9Bに見られるように、その内側表面(内径)に沿って最も広く、その外側表面(外径)に達するまでより小さい楔形支柱を形成する。すなわち、本発明の楔形支柱は、内側表面(管の内径を形成する内側弧)に沿って(IA’)として示される最大弧長(すなわち、外側弧を構成する曲線に沿った距離の測定)、及び、断面の外側表面(管の外径を形成する外側弧)に沿って(OA’)として示される最小弧長(すなわち、外側弧を構成する曲線に沿った距離の測定)を有する。したがって、弧長は、内側表面(IA’)から外側表面(OA’)まで減少する。したがって、弧長は、本発明の支柱の断面の外側表面(OA’)に沿って最も短く(最小接触表面積)、弧長は、本発明の支柱の断面の内側表面(IA’)に沿って最長(最大接触表面積)である。このような新規支柱設計は、図9Aに示される従来の支柱の外側表面(OA)の接触表面積よりも、血塊と接触している外側表面(OA’)の接触表面積の外側表面(OA’)の接触表面積が小さくなるか、又は低減された接触表面積にわたって適用されるステントの外向き径方向力を維持することになる。
【0036】
図11Aは、装置の中心線に沿って接続支柱と位置合わせされた本体セグメント内のレーザ溶接シームを示すマンドレルの周りに巻かれた、ハトメを有するステントの本発明のレーザ切断ニチノール凹状シートの部分縦断面図である。図11Bは、ハトメを有しないステントの本発明のレーザ切断ニチノール凹状シートの同様の図である。シームは、反転されたレーザ切断された凹状シートから円筒形装置を形成するために溶接されるか、又ははんだ付けされてもよい。ハトメがステントの本体セグメント/セルに含まれる場合(図11A)、ハトメは、シームを一緒にレーザ溶接することによって閉じられてもよい。
【0037】
ステントの外側表面(外径)に沿って支柱接触表面積を減少させる前述の目標を実現するための別の新規な方法は、外側表面(外径)の一部を切断管から除去することである。図12A及び12Bでは、ノッチ、溝、又はチャネルが、ニチノール管支柱の外径方向表面に切断されるか、又は別の方法で除去される(例えば、研削される)ことにより、その外側表面(外径)に沿った接触表面積が、血塊の外側表面(外径)と共に減少する。ノッチ、溝、又はチャネルは、既定の半径、V字形、U字形、又は任意の他の所望の形状であってもよい。支柱の外側表面(外径)の一部分を除去しても、所望であれば、支柱の全体的な断面積を維持するために支柱厚さを増大させることができる。ノッチ、溝、又はチャネルのいずれかの側に、外側表面又はプロファイルに沿って形成された2つのより薄い支柱は、(ノッチ、溝、又はチャネルを有しない外側表面積と比較して)より小さい接触表面積を有し、血塊をより容易に埋め込むように促進する。代替的に、又はそれと組み合わせて、図13A~13Cに示されるように、面取り縁部又は二次軸外切断部は、図13A~13Cに示されるように、再び支柱の外側表面接触面積を低減する共有目的で、ニチノール管支柱の外側表面(外径)の各角部に作製することができる。図13Cのニチノール管形成支柱の端面図を参照すると、(破線で示される)角部の除去により、外側表面(外径)に沿った全体的な接触表面積の弧長が、従来の先行技術の幅L(二次切断部の作製前)から、本発明の減少した弧長L(二次切断部の作製後)に減少する。その結果、図13A及び13Bにそれぞれ示される端面図及び斜視図に、支柱の外面(外径)に沿って接触表面積が低減されて示されている。
【0038】
本発明の形状支柱構成の各々は、血栓除去装置内への血塊の埋め込みを改善することによって、血塊除去性能を改善するために、独立して、又はそれらの任意の組み合わせで使用されてもよい。また、本発明の機械的血栓除去装置のいくつかの態様に関連する特徴は、比較的小さい直径を有するものであっても、広範囲の異なる寸法のカテーテルで使用するために適用可能である。
【0039】
本発明の装置は、機械的血栓除去術で使用するために例示され、かつ記載されているが、自己拡張型メッシュ、ケージ、スキャフォールド、又は骨格が利用される他の血管内医療処置での使用に適用可能である。
【0040】
以上、好適な実施形態に適用されるときの本発明の基本的な新規な特徴を図示し、説明し、かつ指摘したが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示された装置の形態及び詳細及び動作について様々な省略、置換、及び変更を実施し得る点は理解されよう。例えば、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行して同じ結果を達成する要素及び/又は工程の組み合わせは全て、本発明の範囲内に包含されるように明らかに意図される。また、上述のある実施形態から別の実施形態への要素の置き換えも、完全に意図及び想定の範囲内である。また、図面は必ずしも一定の比例尺で描かれておらず、あくまでも概念的なものにすぎない点も理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲に示される内容によってのみ限定されるものとする。
【0041】
本明細書に引用された全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は他の参照文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に各々援用されている。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 自己拡張型血管内医療用装置であって、
多構成要素アセンブリであって、
複数の支柱を備える自己拡張型外側ケージ構成要素と、
内部にチャネルを形成する前記自己拡張型外側ケージ構成要素内に配設された単一セル波形構成要素であって、前記単一セル波形構成要素の近位端が、近位接合部で前記自己拡張型外側ケージ構成要素に接続されている、単一セル波形構成要素と、を備える、多構成要素アセンブリ、を備える、自己拡張型血管内医療用装置。
(2) 前記自己拡張型外側ケージ構成要素が、複数の非対称に配置された支柱によって形成されている、実施態様1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(3) 前記単一セル波形構成要素が、複数の接続されたセルを形成するメッシュであり、前記複数の接続されたセルは、寸法が異なり、振幅が変化する波形を形成する、実施態様1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(4) 前記単一セル波形構成要素は、寸法が均一であり、振幅が変化する波形を形成する複数の接続されたセルを形成するメッシュである、実施態様1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(5) 前記自己拡張型外側ケージ構成要素及び単一セル波形構成要素の各々は、直径が異なり、単一の切断管又は切断パターンから形成可能であり、前記単一の切断管又は切断パターンが、前記自己拡張型外側ケージ構成要素の一次支柱を形成するように、一次直径に拡張可能であり、一方、前記単一の切断管又は切断パターンが、前記単一セル波形構成要素の二次支柱を形成するように、前記一次直径よりも小さい二次直径に拡張可能である、実施態様1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【0043】
(6) 前記自己拡張型外側ケージ構成要素が、前記自己拡張型外側ケージ構成要素の遠位端上に配設された遠位破片保護部材を有する、実施態様1に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(7) 前記遠位破片保護部材が、複数の相互接続された支柱又は相互に絡み合ったストランドの塊を備えるメッシュである、実施態様6に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(8) 前記自己拡張可能な外側ケージの前記遠位端が、前記遠位破片保護部材に取り付けられており、一方、前記単一セル波形構成要素の前記遠位端が、前記遠位破片保護部材に接続されていない、実施態様6に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(9) 前記単一セル波形構成要素の前記遠位端が、前記遠位破片保護部材に取り付けられており、一方で、前記自己拡張可能な外側ケージの前記遠位端が、前記遠位破片保護部材に接続されていない、実施態様6に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(10) 前記単一セル波形構成要素が、前記単一セル波形構成要素を通って長手方向に延在する中心軸を中心にねじれたパターンで複数の接続されたセルを形成するメッシュである、実施態様6に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
【0044】
(11) 自己拡張型血管内医療用装置であって、
多構成要素アセンブリであって、
複数の支柱を備える、自己拡張型外側ケージ構成要素と、
内部に円筒形チャネルを形成する前記自己拡張型外側ケージ構成要素内に配設された内側構成要素であって、前記内側構成要素の近位端が、近位接合部で前記自己拡張型外側ケージ構成要素に接続されている、内側構成要素と、を備える、多構成要素アセンブリを備え、
前記自己拡張型外側ケージ構成要素及び前記内側構成要素によって形成される前記円筒形チャネルの円形断面の各々は、直径が異なり、単一の切断管又は切断パターンから形成可能であり、前記単一の切断管又は切断パターンが、前記自己拡張型外側ケージ構成要素を形成する一次支柱の拡張可能な直径に等しい一次直径を有し、一方、前記単一の切断管又は切断パターンが、前記内側構成要素によって形成された前記円筒形チャネルの前記円形断面を形成するように、前記一次直径よりも小さい二次直径にヒートセット可能である、自己拡張型血管内医療用装置。
(12) 自己拡張型血管内医療用装置であって、
多構成要素アセンブリであって、
複数の支柱を備える、自己拡張型外側ケージ構成要素と、
前記自己拡張型外側ケージ構成要素内に配設された波形構成要素と、
拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクションと、を備える、多構成要素アセンブリを備え、
前記拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクションが、前記波形構成要素に直接取り付けられており、前記拡張された遠位テーパ状端部メッシュセクションと前記自己拡張型外側ケージ構成要素との間に直接的な物理的接続がない、自己拡張型血管内医療用装置。
(13) 前記自己拡張型外側ケージ構成要素が、一次直径を有し、前記波形構成要素が、前記一次直径よりも小さい二次直径を有する円形断面の波形を形成する、実施態様12に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(14) 前記一次直径が、約0.36mm~約2.0mmであり、前記二次直径が、約0.15mmである、実施態様13に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(15) 自己拡張型血管内医療用装置であって、
複数の支柱を備える、自己拡張型外側ケージ構成要素を備え、前記複数の支柱の各々が、前記拡張可能な外側ケージの外径の一部を形成する湾曲した外側表面と、前記自己拡張型外側ケージの内径の一部を形成する湾曲した内側表面と、を有する、楔形径方向断面を有し、前記湾曲した外側表面の一部分が、除去されている、自己拡張型血管内医療用装置。
【0045】
(16) 前記湾曲した外側表面の除去された前記一部分が、前記自己拡張型外側ケージ構成要素の軸方向に対応する、前記湾曲した外側表面内部に長手方向に画定されたチャネルである、実施態様15に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(17) 前記湾曲した外側表面の除去された前記一部分が、少なくとも1つの角度付けられた角部面取り切断部である、実施態様15に記載の自己拡張型血管内医療用装置。
(18) 自己拡張型血管内医療用装置であって、
複数の支柱を備える、所望のパターンに切断された、反転した凹状シート又はプレートを備え、前記反転した切断管の前記複数の支柱の各々が、凹状の内側径方向表面で最も広く、かつ凹状の外側径方向表面に達するまでテーパ状に小さくなる、楔形径方向断面を有する、自己拡張型血管内医療用装置。
(19) 自己拡張型血管内医療用装置の自己拡張型外側ケージ構成要素を製造するための方法であって、
凹状シート又はプレートに所望のパターンを切断する工程と、
切断された前記凹状シート又はプレートを反転させる工程と、
反転された前記切断された凹状シート又はプレートを、前記反転された切断された凹状シート又はプレートの対向する自由縁部を互いに向かって引き寄せて、所定の直径のマンドレルの周囲に形状設定して、複数の支柱を備える径方向ステントを形成する工程と、を含み、前記複数の支柱の各々が、凹状の内側径方向表面で最も広く、凹状の外側径方向表面に達するまでテーパ状に小さくなる楔形径方向断面を有する、方法。
(20) 前記複数の支柱の各々の前記楔形径方向断面が、前記楔形径方向断面の前記凹状の内側径方向表面における内径に沿った曲線の第1の測定された長さを表す最長弧長と、前記楔形径方向断面の前記凹状の外側径方向表面における外径に沿った、別の曲線の第2の測定された長さを表す最短弧長と、を有する、実施態様19に記載の方法。
【0046】
(21) 弧長が、内径に沿った前記楔形径方向断面の前記凹状の内側径方向表面から、外径に沿った前記楔形径方向断面の前記凹状の外側径方向表面まで減少する、実施態様19に記載の方法。
(22) 弧長が、(i)外径に沿った前記楔形径方向断面の前記凹状の外側径方向表面に沿った最小接触表面積と、(ii)内径に沿った前記楔形径方向断面の前記凹状の内側径方向表面に沿った最大接触表面積と、を有する、実施態様19に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14