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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】弁開度検知装置及び弁開度検知方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F16K37/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020134513
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030455
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】代田 孝広
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小島 信夫
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-31401(JP,A)
【文献】特開2015-40628(JP,A)
【文献】特開2004-49989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0200285(US,A1)
【文献】特開2015-14334(JP,A)
【文献】特開2020-200930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場に設置された弁に取り付けられた弁開閉装置へ流体供給源から配管を介して流体を供給させて、前記弁開閉装置により前記弁の弁軸を回転させることで前記弁を開弁または閉弁させると共に、前記弁の弁開度を検知する弁開度検知装置であって、
前記流体供給源から前記弁開閉装置へ開操作により前記流体を供給し、閉操作により前記流体の供給を遮断する開閉手段と、
前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の流量を計測する流量計測手段と、
前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の圧力を計測する圧力計側手段と、
前記開閉手段の開閉操作信号、前記流量計測手段からの流量信号、及び前記圧力計側手段からの圧力信号に基づき前記弁開閉装置の動作状況を判断して、前記弁の弁開度を演算する弁開度演算手段と、
前記開閉手段の前記開閉操作信号、前記流量計測手段からの前記流量信号、前記圧力計側手段からの前記圧力信号、及び設定された各種パラメータに基づいて、前記弁開度演算手段が演算した前記弁開度を補正する弁開度補正処理手段と、を有し、
前記弁開度補正処理手段は、前記弁開閉装置内、及びこの弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の流体が周囲温度の影響で熱膨張して圧力が上昇したときに前記弁開閉装置の流体消費量が増加することを考慮して、前記弁開度演算手段で弁開度演算に用いた流体消費量を増加して変更し、この変更した流体消費量に基づき弁開度を補正するよう構成されたことを特徴とする弁開度検知装置。
【請求項2】
前記弁開度演算手段及び前記弁開度補正処理手段により求められる弁開度を表示すると共に、各種パラメータの入力と、前記弁開度補正処理手段による補正処理の有効無効を含む設定の切替とを実施可能な入出力手段を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の弁開度検知装置。
【請求項3】
前記弁開度補正処理手段は、弁開閉装置内、及びこの弁開閉装置と流体供給源を接続する配管内の流体が前記弁開閉装置を動作させるに必要な圧力に到達するための流体量を考慮して、弁開度演算手段で弁開度演算に用いた総流体量に前記流体量を加算して変更し、この変更した総流体量に基づき弁開度を補正するよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の弁開度検知装置。
【請求項4】
前記弁開度補正処理手段は、開弁または閉弁動作開始時に通常の開弁または閉弁動作時よりも多くのトルクが必要になって弁開閉装置の流体消費量が増加することを考慮し、弁開度演算手段で弁開度演算に用いた流体消費量から上述の増加分を差し引いて流体消費量を変更し、この変更した流体消費量に基づき弁開度を補正するよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の弁開度検知装置。
【請求項5】
前記弁開度補正処理手段は、弁の全開または全閉時に弁開閉装置が自動停止することを考慮し、この自動停止時に弁開度演算手段が演算した弁開度と全開または全閉との差が所定範囲内にあるときに前記弁が全開または全閉になったとみなして、前記弁開度演算手段にて演算された前記弁開度を補正するよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の弁開度検知装置。
【請求項6】
前記弁開度補正処理手段は、弁開閉装置と流体供給源を接続する配管で生ずる圧力損失により前記弁開閉装置に到達する流体の圧力が低下するので、この流体圧力を確保するために前記流体供給源での流体供給圧力を増大させると、流量計測手段により計測される前記流体の流量が増加することを考慮し、弁開度演算手段で弁開度演算に用いた流体消費量から上述の増加分を差し引いて流体消費量を変更し、この変更した流体消費量に基づき弁開度を補正するよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の弁開度検知装置。
【請求項7】
現場に設置された弁に取り付けられた弁開閉装置へ流体供給源から配管を介して流体を供給させて、前記弁開閉装置により前記弁の弁軸を回転させることで前記弁を開弁または閉弁させると共に、前記弁の弁開度を検知する弁開度検知方法であって、
前記流体供給源から前記弁開閉装置へ開操作により前記流体を供給し、閉操作により前記流体の供給を遮断する開閉手段を準備し、
前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の流量を計測する流量計測ステップと、
前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の圧力を計測する圧力計側ステップと、
前記開閉手段の開閉操作信号、前記流量計測ステップにより計測された流量信号、及び前記圧力計側ステップにより計測された圧力信号に基づき前記弁開閉装置の動作状況を判断して、前記弁の弁開度を演算する弁開度演算ステップと、
前記開閉手段の前記開閉操作信号、前記流量計測ステップにより計測された前記流量信号、前記圧力計側ステップにより計測された前記圧力信号、及び設定された各種パラメータに基づいて、前記弁開度演算ステップにて演算された前記弁開度を補正する弁開度補正処理ステップと、を有し、
前記弁開度補正処理ステップでは、前記弁開閉装置内、及びこの弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の流体が周囲温度の影響で熱膨張して圧力が上昇したときに前記弁開閉装置の流体消費量が増加することを考慮して、前記弁開度演算ステップで弁開度演算に用いた流体消費量を増加して変更し、この変更した流体消費量に基づき弁開度を補正することを特徴とする弁開度検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、現場に設置された弁の弁開度検知装置及び弁開度検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所において重大事故等が発生した際には被害の拡大を防ぐために現場に設置された弁の開閉操作が行われるが、所内の電源を喪失してしまった場合には、弁の開閉操作を手動で行う必要がある。特に、過酷環境のため作業員が近付けないエリアの弁を操作するために、現状では遠隔弁開閉システムが採用されることが多い。ところが、この遠隔弁開閉システムは、現場の弁から数十メートル程度離れて操作することしかできず、しかも、原理的に開閉操作に時間を要するため、作業員には、温度や放射線量が比較的高い場所での長時間の作業が強いられる。そのため、上述の遠隔弁開閉システムよりも更に離れた場所から弁の開閉操作を可能として作業員の負担を軽減すると共に、確実に弁開閉操作が可能なシステムが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-14334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の弁駆動装置は、上述の事情に答えるべく、弁駆動装置を簡単且つ安価に構成することを目的とし、空気や窒素を動力として弁開閉装置を動作させ、開度検知部に電気信号を使用するリミットスイッチを用いて、軸の上下限で弁開度を検知している。しかしながら、例えば放射線などのノイズが発生するような現場においては、電気信号にノイズがのって誤検出が発生してしまい、弁開度を安定して検知できないため弁開閉操作を適切に行うことができないことが想定される。このような放射線等からのノイズなどの影響を受けずに、離れた現場に設置された弁の弁開度を確実に検知する必要がある。
【0005】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、現場に設置された弁を確実に遠隔操作できると共に、その弁の弁開度を正確且つ確実に検知できる弁開度検知装置及び弁開度検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態における弁開度検知装置は、現場に設置された弁に取り付けられた弁開閉装置へ流体供給源から配管を介して流体を供給させて、前記弁開閉装置により前記弁の弁軸を回転させることで前記弁を開弁または閉弁させると共に、前記弁の弁開度を検知する弁開度検知装置であって、前記流体供給源から前記弁開閉装置へ開操作により前記流体を供給し、閉操作により前記流体の供給を遮断する開閉手段と、前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の流量を計測する流量計測手段と、前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の圧力を計測する圧力計側手段と、前記開閉手段の開閉操作信号、前記流量計測手段からの流量信号、及び前記圧力計側手段からの圧力信号に基づき前記弁開閉装置の動作状況を判断して、前記弁の弁開度を演算する弁開度演算手段と、前記開閉手段の前記開閉操作信号、前記流量計測手段からの前記流量信号、前記圧力計側手段からの前記圧力信号、及び設定された各種パラメータに基づいて、前記弁開度演算手段が演算した前記弁開度を補正する弁開度補正処理手段と、を有し、前記弁開度補正処理手段は、前記弁開閉装置内、及びこの弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の流体が周囲温度の影響で熱膨張して圧力が上昇したときに前記弁開閉装置の流体消費量が増加することを考慮して、前記弁開度演算手段で弁開度演算に用いた流体消費量を増加して変更し、この変更した流体消費量に基づき弁開度を補正するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の実施形態における弁開度検知方法は、現場に設置された弁に取り付けられた弁開閉装置へ流体供給源から配管を介して流体を供給させて、前記弁開閉装置により前記弁の弁軸を回転させることで前記弁を開弁または閉弁させると共に、前記弁の弁開度を検知する弁開度検知方法であって、前記流体供給源から前記弁開閉装置へ開操作により前記流体を供給し、閉操作により前記流体の供給を遮断する開閉手段を準備し、前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の流量を計測する流量計測ステップと、前記弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の前記流体の圧力を計測する圧力計側ステップと、前記開閉手段の開閉操作信号、前記流量計測ステップにより計測された流量信号、及び前記圧力計側ステップにより計測された圧力信号に基づき前記弁開閉装置の動作状況を判断して、前記弁の弁開度を演算する弁開度演算ステップと、前記開閉手段の前記開閉操作信号、前記流量計測ステップにより計測された前記流量信号、前記圧力計側ステップにより計測された前記圧力信号、及び設定された各種パラメータに基づいて、前記弁開度演算ステップにて演算された前記弁開度を補正する弁開度補正処理ステップと、を有し、前記弁開度補正処理ステップでは、前記弁開閉装置内、及びこの弁開閉装置と前記流体供給源を接続する前記配管内の流体が周囲温度の影響で熱膨張して圧力が上昇したときに前記弁開閉装置の流体消費量が増加することを考慮して、前記弁開度演算ステップで弁開度演算に用いた流体消費量を増加して変更し、この変更した流体消費量に基づき弁開度を補正することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、現場に設置された弁を確実に遠隔操作できると共に、その弁の弁開度を正確且つ確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る弁開度検知装置の構成を示すブロック図。
図2図1の弁開閉装置が現場に設置された弁に取り付けられた状態を示す側面図。
図3図2の弁の開閉状況と弁開度との関係を示すグラフ。
図4図1の弁開度検知装置における弁開度の演算及び補正の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る弁開度検知装置の構成を示すブロック図であり、図2は、図1の弁開閉装置が現場に設置された弁に取り付けられた状態を示す側面図である。これらの図1及び図2に示すように、本実施形態の弁開度検知装置10は、例えばプラントの現場に設置された弁11に取り付けられた弁開閉装置12へ、流体供給源としての第1気体供給源13から、配管14を介して流体としての動力用気体Aを供給させて、弁開閉装置12により弁11の弁軸11Aを回転させることで弁11を開弁または閉弁動作させると共に、弁11の弁開度を検知するものである。
【0011】
この弁開度検知装置10は、図1に示すように上述の配管14のほか、第1圧力調整器15、開閉手段としての開閉器16、流量計測手段としての流量計測器17、圧力計測手段としての圧力計測器18、信号変換部19、弁開度演算手段としての弁開度演算部20、弁開度補正処理手段としての弁開度補正処理部21、入出力手段としての入出力部22、開閉動作切替制御機構23、及び電源供給部24を有して構成される。
【0012】
ここで、図2に示す弁11は、通常時には、弁軸11Aをハンドル25を用いて手動回転させるか、図示しないモータを用いて電動回転させることで開弁または閉弁動作して、流動体が流れる管路26を開放または閉止する。また、弁11は、緊急時には弁開閉装置12に動力用気体Aが供給されて、この動力用気体Aにより弁軸11Aが回転されることで開弁または閉弁動作して、管路26を開放または閉止する。
【0013】
弁開閉装置12は、弁11の弁軸11Aが空回りしないように、この弁軸11Aを内側に貫通させると共に外周に歯が形成された歯車(不図示)と、動力用気体Aの供給により往復直線運動するピストン(不図示)と、このピストンの先端を上記歯車の歯に作用させて、往復直線運動を回転運動に変換して弁軸11Aを回転させる回転送り機構(不図示)と、を有して構成される。更に弁開閉装置12は、開弁用入力ポート27及び閉弁用入力ポート28を備え、これらの入力ポート27、28に切替用気体Bが択一に供給されることで、弁11に開弁動作を行わせるべく弁軸11Aを回転させる開弁用シリンダ(不図示)と、弁11に閉弁動作を行わせるべく弁軸11Aを回転させる閉弁用シリンダ(不図示)と、を有する。
【0014】
図1に示すように、第1気体供給源13は、空気や窒素などの気体(動力用気体A)を充填した例えばボンベである。この第1気体供給源13に充填された動力用気体Aの一次側圧力は、一般的には14.7MPaである。この第1気体供給源13と弁開閉装置12とが配管14にて接続され、この配管14に第1気体供給源13の側から第1圧力調整器15、開閉器16、流量計測器17及び圧力計測器18が順次配設されている。また、第1圧力調整器15は、第1気体供給源13内の動力用気体Aの一次側圧力を減圧して、弁開閉装置12等に対し許容される適正値の二次側圧力に調整する。
【0015】
開閉器16は、開閉操作が手動または自動で行われ、開操作されることで、第1圧力調整器15により圧力調整された第1気体供給源13からの動力用気体Aを、流量計測器17及び圧力計測器18を経て弁開閉装置12へ供給する。また、開閉器16が閉操作されることで、第1圧力調整器15により圧力調整された第1気体供給源13からの動力用気体Aの弁開閉装置12への供給が遮断される。この開閉器16は、第1圧力調整器15を閉めて第1気体供給源13から弁開閉装置12への動力用気体Aの供給を一時的に遮断しようとすると、第1圧力調整器15を開けたときに再度圧力調整が必要になるので、第1圧力調整器15の下流側に設けられたものである。
【0016】
なお、第1気体供給源13、第1圧力調整器15及び開閉器16は、弁開閉装置12に適切な圧力の動力用気体Aを供給するためのものであるから、この条件を満たすことが可能であれば、エアコンプレッサなどに置き換えてもよい。
【0017】
流量計測器17は、第1圧力調整器15にて圧力調整された第1気体供給源13からの動力用気体Aが、弁開閉装置12へ向かって配管14内を流れる際の動力用気体Aの流量を計測するものである。弁11の弁軸11Aを回転させるために必要な弁開閉装置12の気体消費量は、弁11及び弁開閉装置12の仕様によって決定される。そのため、流量計測器17は、配管14内を流れる動力用気体Aの流量をリアルタイムで計測する。この計測値(流量信号)は、信号変換部19によりデジタル信号に変換されて弁開度演算部20及び弁開度補正処理部21に入力される。
【0018】
圧力計測器18は、第1圧力調整器15にて圧力調整された第1気体供給源13からの動力用気体Aが、弁開閉装置12へ向かって配管14内を流れる際の動力用気体Aの圧力を計測するものである。配管14内の圧力は、弁開閉装置12が適切に動作していれば一定値になるが、何らかの理由で弁開閉装置12が動作していない場合には事前に把握している平常値よりも高くなる。配管14内の圧力が平常値よりも高くなったときには、この配管14内の動力用気体Aの流量が増加していても弁11が開弁または閉弁動作をしていないことになるため、その判定のために圧力計測器18が配管14内の圧力を計測する。この圧力計測器18により計測された計測値(圧力信号)は、信号変換部19によりデジタル信号に変換されて弁開度演算部20及び弁開度補正処理部21に入力される。
【0019】
ところで、現場に設置された弁11には、全開から全閉へ向かって閉弁方向に動作したり、全閉から全開へ向かって開弁方向に動作したりする一方向の開閉弁動作を行うもののほか、全開または全閉の手前の中間の弁開度で一旦停止した後に同一方向または反対方向に開閉弁動作を切り替えて行うものがある。弁11に対し開閉弁動作を切り替えて行わせるために弁開閉装置12を制御するものが開閉動作切替制御機構23であり、この開閉動作切替制御機構23は、第2気体供給源30、第2圧力調整器32及び切替バルブ31を有して構成される。
【0020】
第2気体供給源30は、空気や窒素などの気体(切替用気体B)を充填した例えばボンベである。また、第2圧力調整器32は、第2気体供給源30内の切替用気体Bの一次側圧力を減圧して、弁開閉装置12の開弁用シリンダ及び閉弁用シリンダ(共に図示せず)に対し許容される適正値の二次側圧力に調整するものである。
【0021】
切替バルブ31は、開弁用出力ポート33と閉弁用出力ポート34と遮断ポート35とが切替レバー36により選択されるものである。第2圧力調整器32により圧力調整された第2気体供給源30からの切替用気体Bは、切替レバー36により開弁用出力ポート33が選択されたときに、弁開閉装置12の開弁用入力ポート27を経て弁開閉装置12の開弁用シリンダ(不図示)へ供給され、これにより弁開閉装置12が弁11を開弁動作させる。
【0022】
第2圧力調整器32により圧力調整された第2気体供給源30からの切替用気体Bは、切替レバー36により閉弁用出力ポート34に選択されたときに、弁開閉装置12の閉弁用入力ポート28を経て弁開閉装置12の閉弁用シリンダ(不図示)へ供給され、これにより、弁開閉装置12が弁11を閉弁動作させる。また、切替レバー36により遮断ポート35が選択されたときには、第2圧力調整器32により圧力調整された第2気体供給源30からの切替用気体Bは、この切替バルブ31により堰き止められる。
【0023】
切替バルブ31における切替レバー36の操作は、手動により直接、または入出力部22を用いて操作される。切替レバー36により開弁用出力ポート33が選択されたときに開弁用信号が、切替レバー36により閉弁用出力ポート34が選択されたときに閉弁用信号が、切替レバー36により遮断ポート35が選択されたときに遮断信号がそれぞれ切替バルブ31から出力される。これらの開弁用信号、閉弁用信号及び遮断信号のそれぞれは、信号変換部19によりデジタル信号に変換されて、弁開度演算部20及び弁開度補正処理部21に入力される。
【0024】
弁開度演算部20は、開閉器16からの開閉操作信号、流量計測器17からの流量信号、及び圧力計測器18からの圧力信号に基づき、弁開閉装置12が動作いるか否かやその動作回数などの弁開閉装置12の動作状況を判断して、弁11の弁開度を演算する。
【0025】
つまり、弁開閉装置12は、この弁開閉装置12に供給される動力用気体Aの流量及び圧力で動作回数が決定される。また、弁11が全開から全閉または全閉から全開に動作するために必要な弁軸11Aの回転数は弁11毎に決定されており、その弁11を全開から全閉または全閉から全開にそれぞれ動作させるために必要な弁開閉装置12の動作回数も決定されている。このため、弁開度演算部20は、流量計測器17からの流量計測値及び圧力計測器18からの圧力計測値に基づいて弁開閉装置12の動作回数を演算し判断することで、例えば弁開閉装置12からの電気信号を用いることなく、現場に設置された弁11の弁開度を求めることが可能になる。
【0026】
具体的には、弁開度演算部20は、開閉器16からの開閉操作信号、流量計測器17からの流量信号及び圧力計測器18からの圧力信号を用いて、まず、対象とする弁11を全開から全閉または全閉から全開に動作させるために弁開閉装置12において必要な総気体量を算出する。次に、弁開度演算部20は、開閉器16が開閉操作した時点から流量計測器17が計測した流量を積算して、積算流量(つまり弁開閉装置12の気体消費量)を算出する。その後、弁開度演算部20は、この気体消費量を上記総気体量で除して弁11の弁開度を演算する。弁開度演算部20は、流量計測器17から流量信号が入力される度に上述の弁開度演算を実施して、弁11の現時点での弁開度を求める。
【0027】
但し、弁開閉装置12が開閉動作切替制御機構23により弁11の開弁動作と閉弁動作を切り替える場合には、弁11は、開弁または閉弁動作中に停止し、その後、開弁または閉弁のいずれかの動作方向に動作する。この場合、弁開度演算部20は、弁開閉装置12が弁11を開弁方向または閉弁方向に動作させる動作方向のうち、弁11の特性により一方を順動作方向とし、他方を逆動作方向とする。
【0028】
そして、弁開度演算部20は、切替バルブ31から入力した開弁用信号または閉弁用信号が順動作方向の信号であると判断したときには、停止前までの積算流量値に、停止後に流量計測器17にて計測された流量を加算して積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新する。また、弁開度演算部20は、切替バルブ31から入力した開弁用信号または閉弁用信号が逆動作方向の信号であると判断したときには、停止前までの積算流量値から、停止後に流量計測器17にて計測された流量を減算して積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新する。弁開度演算部20は、このようにして更新された気体消費量に基づいて弁11の弁開度を演算する。
【0029】
例えば、図3に示すように、弁開閉装置12による弁11の開弁動作中に開閉器16が閉操作して(時点t1)弁11が停止し、次に、切替バルブ31が開弁用信号を出力している状態で開閉器16が開操作した(時点t2)とき、弁開度演算部20は、弁11が実線Pに示すように、継続して開弁動作していると判断すると共に、この開弁動作の方向が順動作方向であると判断する。そして、弁開度演算部20は、弁11の停止(開閉器16の閉操作)時点t1までの積算流量値に、開閉器16が開操作した時点t2から流量計測器17にて計測された流量を加算して積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新し、この更新した気体消費量に基づき弁11の弁開度を演算する。
【0030】
また、上述の如く弁開閉装置12による弁11の開動作中に開閉器16が時点t1で閉操作して弁11が停止し、次に切替バルブ31が、出力する信号を閉弁用信号に変更した状態で開閉器16が時点t2で開操作したときには、弁開度演算部20は、破線Qに示すように、弁11が開弁動作から逆動作方向の閉弁動作に切り替わったと判断する。そして、弁開度演算部20は、弁11の停止(開閉器16の閉操作)時点t1までの積算流量値から、開閉器16が開操作した時点t2から流量計測器17にて計測された流量を減算して積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新し、この更新した気体消費量に基づき弁11の弁開度を演算する。
【0031】
更に、弁11の全開状態からの弁開閉装置12による閉弁動作時に開閉器16が閉操作して弁開閉装置12が弁11を停止し、次に切替バルブ31が閉弁用信号を出力している状態で開閉器16が開操作したとき、弁開度演算部20は、弁11が継続して閉弁動作していると判断すると共に、この閉弁動作の方向を順動作方向であると判断する。そして、弁開度演算部20は、弁11の停止前までの積算流量値に、弁11の停止後の閉弁動作中に流量計測器17にて計測された流量を加算して積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新し、この更新した気体消費量に基づいて弁11の弁開度を演算する。
【0032】
また、上述の如く弁11の全開状態からの弁開閉装置12による閉弁動作時に開閉器16が閉操作して弁開閉装置12が弁11を停止した後、切替バルブ31が開弁用信号を出力している状態で開閉器16が開操作したとき、弁開度演算部20は、弁11が閉弁動作から逆動作方向の開弁動作に切り替わったと判断する。そして、弁開度演算部20は、弁11の停止前までの積算流量値から、弁11の停止後の開弁動作中に流量計測器17にて計測された流量を減算して積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新し、この更新した気体消費量に基づいて弁11の弁開度を演算する。
【0033】
さて、弁開度補正処理部21は、開閉器16の開閉操作信号、流量計測器17からの流量信号、圧力計測器18からの圧力信号、及び設定された各種パラメータに基づいて、弁開度演算部20が演算した弁11の弁開度を補正するものである。
【0034】
つまり、弁開度演算部20が演算した弁開度は、例えば弁開度検知装置10の周囲環境等の影響により、弁11及び弁開閉装置12の特性が変化することを考慮していない場合がある。このため、弁開度補正処理部21は、各種パラメータに応じて、弁開度演算部20が弁開度演算に用いた気体消費量または総気体量等を変更することで、弁開度演算部20により演算された弁11の弁開度を補正して、安定した正確な弁開度を出力する。ここで、上記パラメータは、例えば、弁11、弁開閉装置12及び配管14の周囲温度、配管14の長さ及び直径を含む弁11、弁開閉装置12及び配管14の設置状況、弁11の開閉動作開始時に必要な気体量などである。
【0035】
この弁開度補正処理部21による補正処理としては、温度補正、配管内気体量補正、弁開閉動作開始時補正、全開・全閉時誤差補正、配管内圧力損失補正などである。これらの補正処理については後に詳説する。
【0036】
入出力部22は、弁開度演算部20及び弁開度補正処理部21によりそれぞれ演算された弁11の弁開度を表示すると共に、弁11を全開から全閉または全閉から全開させるために弁開閉装置12が必要とする総気体量の入力、弁開度補正処理部21で用いられる各種パラメータの入力、弁開度補正処理部21による弁開度補正の有効無効の設定の切替、切替バルブ31の切替レバー36の操作、及び開閉器16の開閉操作などを実施可能とする。
【0037】
電源供給部24は、開閉器16、流量計測器17、圧力計測器18、弁開度演算部20、弁開度補正処理部21及び切替バルブ31へ電力を供給する。この電源供給部24は、弁11が現場に設置されたプラントの内部電源から独立した電源であり、バッテリなどの二次電源または小型発電機などが用いられる。
【0038】
次に、前述した弁開度補正処理部21の各補正処理について詳説する。
(温度補正)
弁開度補正処理部21は、弁開閉装置12内、及び弁開閉装置12と第1気体供給源13とを接続する配管14内の動力用気体Aが周囲温度の影響で熱膨張して圧力が上昇したときに弁開閉装置12の気体消費量が増加することを考慮して、弁開度演算部20で弁開度演算に用いられた気体消費量を増加して変更し、この変更した気体消費量に基づき、弁開度演算部20により演算された弁11の弁開度を補正する。
【0039】
つまり、温度補正は、弁開閉装置12内及び配管14内の動力用気体Aが所定温度以上の周囲温度の影響を受けて圧力が上昇することで、弁開閉装置12の気体消費量が増加するため、弁開度補正処理部21が、弁開閉装置12の気体消費量を、上述の動力用気体Aの圧力上昇を踏まえた気体消費量に変更して弁開度演算を行うものである。弁開閉装置12は、動力用気体Aの圧力を動力としてピストン(不図示)を押すことで回転運動を発生させるものであり、気体圧力が上昇するとピストンを押す力が増大するため、発生するトルクが大きくなって気体消費量が増加する。ここで、任意の圧力の動力用気体Aを弁開閉装置12に与えた場合のトルクと気体消費量との関係は、弁開閉装置12の構造に何らかの変化が発生しない限り、一意に決まるものである。
【0040】
例えば、原子力発電所において重大事故等が発生した場合、弁開閉装置12の周囲温度は所定温度以上の、例えば約200℃になることが予想される。周囲温度がこれほどの高温になった場合には、弁開閉装置12内及び配管14内に溜まっている動力用気体A、及びこれらの配管14等内これから供給されてくる動力用気体Aは温度が上昇することになる。この動力用気体Aの温度上昇により気体圧力がどのくらいまで上昇するのかは、例えばシャルルの法則により求めることが可能である。弁開度補正処理部21は、このような気体圧力と弁開閉装置12の特性(動力用気体Aの圧力上昇に伴う気体消費量の増加)を踏まえて、弁開度演算部20が弁開度演算に用いた気体消費量を増加して変更することで弁開度を補正する。
【0041】
但し、弁開閉装置12及び配管14に断熱材を巻いたり、熱伝導率の低い素材を用いたりするなどの温度上昇抑制対策を施した場合には、弁開閉装置12及び配管14が周囲温度から受ける影響が低減される。そのため、このようなケースでは、弁開閉装置12及び配管14における周囲温度と動力用気体Aの圧力に関する実験値などに基づき、動力用気体Aの圧力上昇分を設定して気体消費量の増加量(変更量)を求め、弁開度を補正するものとする。
【0042】
(配管内気体量補正)
弁開度補正処理部21は、弁開閉装置12内、及び弁開閉装置12と第1気体供給源13とを接続する配管14内の動力用気体Aが弁開閉装置12を動作させるに必要な圧力に到達するための気体量を考慮して、弁開度演算部20で弁開度演算に用いられた総気体量に上記気体量を加算して総気体量を変更し、この変更した総気体量に基づき、弁開度演算部20により演算された弁11の弁開度を補正する。
【0043】
つまり、配管内気体量補正は、弁開閉装置12内及び配管14内に溜まっている動力用気体Aが、弁開閉装置12を適正トルクで動作させるに必要な気体圧力に到達するための気体量を考慮して、弁開度補正処理部21が、弁開度演算部20で弁開度演算で用いられた総気体量を変更して弁開度演算を行うものである。
【0044】
弁開閉装置12は、動作するために必要な動力用気体Aの圧力が決まっており、その気体圧力に達するまでは弁11の開閉動作は開始されない。弁開閉装置12が動作し始めるまでは、弁開閉装置12内及び配管14内の動力用気体Aの圧力は外気圧と等しくなっている。更に、小径の配管14であっても配管長は数十メートルになるため、この配管14内に溜まっている動力用気体Aの気体量は十数リットルなどになる場合もある。そのため、第1気体供給源13から所定圧力で動力用気体Aを供給しても、弁開閉装置12が直ちに動作するわけではない。
【0045】
そこで、弁開度補正処理部21は、弁開閉装置12内及び配管14内の容積を満たす気体量分だけ第1気体供給源13から所定圧力の動力用気体Aが供給されるまでは、弁開度演算部20が弁開度演算を実施しないようにするために総気体量を増加して変更することで、弁11の弁開度を補正する。なお、弁開閉装置12を連続して動作させて弁11の弁開閉動作を行う場合には、弁開閉装置12内及び配管14内には残圧が存在する。このため、配管14内の圧力(残圧)を圧力計測器18で計測し、配管14内に残圧が存在する場合には配管内気体量補正を無効とする。
【0046】
(弁開閉動作開始時補正)
弁開度補正処理部21は、開弁または閉弁動作開始時に通常の開弁または閉弁動作時よりもトルクが必要になって弁開閉装置12の気体消費量が増加することを考慮し、弁開度演算部20にて弁開度演算に用いられた気体消費量から上述の増加分を差し引いて気体消費量を減少して変更し、この変更した気体消費量に基づき、弁開度演算部20が演算した弁11の弁開度を補正する。
【0047】
つまり、弁開閉動作開始時補正は、弁11の弁構造が要因となって、弁11の開動作開始時または閉動作開始時に通常の開閉動作時よりも多くのトルクが必要となる特徴を踏まえ、弁開度補正処理部21が、弁開度演算部20での弁開度演算に用いた気体消費量を、多くなったトルクに相当する気体消費量分だけ差し引いて変更して弁開度演算を行うものである。現場で使用されるような弁11では、例えば前回の全開または全閉動作終了時に弁11をねじ込むため、次に弁11を動作させるときに回し始めに通常よりも多くのトルクが必要になる。
【0048】
そのため、弁開度補正処理部21は、弁開度演算部20での弁開度演算結果が任意に設定した弁開度の範囲(例えば、全閉からの開弁時には0%~20%、全開からの閉弁時には100%~80%)にある場合に、弁開度演算部20で弁開度演算に用いた気体消費量を、多くなったトルクに相当する気体消費量分だけ差し引いて変更して、弁11の弁開度を補正する。
【0049】
(全開・全閉時誤差補正)
弁開度補正処理部21は、弁11の全開または全閉時に弁開閉装置12が自動停止することを考慮し、この自動停止時に弁開度演算部20が演算した弁11の弁開度と全開(弁開度100%)または全閉(弁開度0%)との差が所定範囲内にあるときに弁11が全開または全閉になったとみなして、弁開度演算部20にて演算された弁開度を補正する。ここで、上記所定範囲は、全開時自動停止の場合が例えば95%以上100%未満であり、全閉時自動停止の場合が例えば0%を超え5%以下である。
【0050】
つまり、全開・全閉時誤差補正は、弁11が全開または全閉になったときに弁開閉装置12が自動停止する特徴を踏まえ、この自動停止時に弁開度演算部20が演算した弁開度と、全開(弁開度100%)または全閉(弁開度0%)との差が任意に設定した所定範囲内であった場合に、弁11が全開または全閉になったものとみなして、弁開度補正処理部21が弁開度演算部20にて演算された弁開度を、全開または全閉の弁開度に変更するものである。
【0051】
弁開閉装置12は、弁11を回転させる際に第1気体供給源13から供給された動力用気体Aを装置外に放出するが、全開または全閉になったときには、弁開閉装置12が弁11をそれ以上回転させることができないため自動停止し、供給された動力用気体Aは弁開閉装置12内に留まって流量がゼロになる。このため、弁開閉装置12の弁軸回転部(例えば回転送り機構)に異物が挟まって回転が停止する場合以外は、全開または全閉になったことが検出可能になる。
【0052】
弁開度演算部20が弁開度演算を行う際には、第1気体供給源13から供給される動力用気体Aの流量が流量計測器17にて計測されるが、この流量計測器17に誤差があると弁開閉装置12が自動停止したにも拘らず、弁開度演算部20による弁開度演算で弁開度が、全開動作時に100%または全閉動作時に0%にならないことが考えられる。この誤差を残しておくと、次に開弁または閉弁動作を行った際に更に誤差が蓄積してしまう。
【0053】
このため、弁開度補正処理部21は、例えば開弁動作時において、弁開度演算部20による弁開度演算値が95%以上100%未満になっていて弁開閉装置12が自動停止した場合には弁開度を100%に、閉弁動作時において、弁開度演算部20による弁開度が0%を超え5%以下になっていて弁開閉装置12が自動停止した場合には弁開度を0%に、それぞれ変更して補正する。なお、弁開閉装置12が自動停止したことは、開閉器16が開操作状態にあり、流量計測器17により計測された流量値がゼロ且つかつ圧力計測器18により計測された圧力値が所定の値になっていることで判定する。
【0054】
(配管内圧力損失補正)
弁開度補正処理部21は、弁開閉装置12と第1気体供給源13とを接続する配管14内で生ずる圧力損失により弁開閉装置12に到達する動力用気体Aの圧力が低下するので、この気体圧力を確保するために第1気体供給源13で動力用気体Aの供給圧力を増大させると、流量計測器17により計測される動力用気体Aの流量が増加することを考慮し、弁開度演算部20で弁11の弁開度演算に用いられた気体消費量から上述の増加分の流量を差し引いて気体消費量を変更し、この変更した気体消費量に基づき、弁開度演算部20にて演算された弁11の弁開度を補正する。
【0055】
つまり、配管内圧力損失補正は、弁開閉装置12と第1気体供給源13を接続する配管14において発生する圧力損失によって、弁開閉装置12に到達する動力用気体Aの圧力が第1気体供給源13からの吐出圧力よりも低下するので、この吐出圧力を上昇させて弁開閉装置12を動作させることを踏まえ、弁開度補正処理部21が、この吐出圧力の上昇により増加した動力用気体Aの流量増加分を、弁開度演算部20での弁開度演算で用いた気体消費量から差し引いて変更して、この変更した気体消費量に基づき弁開度演算を行うものである。
【0056】
弁開閉装置12と第1気体供給源13とは数十メートル以上離れた場所に設置することを想定しており、更にそれらを接続する配管14は小径になるため、この配管14内で圧力損失が発生しやすい状況になる。圧力損失が発生すると、第1気体供給源13の吐出圧力を適正値にしても、弁開閉装置12に到達する際には弁11の開閉動作が行えないほどに動力用気体Aの圧力が低下してしまうことが考えられる。そのため、弁開度補正処理部21は、配管14での圧力損失を考慮して、弁開閉装置12における動力用気体Aの圧力が適正値になるための第1気体供給源13の吐出圧力を演算し、この吐出圧力としたときに流量計測器17で計測される流量の増加分を、弁開度演算部20で弁開度演算に用いた気体消費量から差し引いて気体消費量を変更し、この気体消費量に基づいて弁11の弁開度を補正する。
【0057】
なお、配管14で発生する圧力損失は、配管14におけるエルボ部の曲率なども影響するため、配管14に複雑な曲りがある場合には、弁開閉装置12と第1気体供給源13との距離だけで単純に把握することができない。このため、弁開度補正処理部21は、配管敷設の設計時に見積もられた圧力損失の値を踏まえて、第1気体供給源13から供給される動力用気体Aの吐出圧力と弁開閉装置12に到達する動力用気体Aの圧力との関係を把握して第1気体供給源13の吐出圧力を変更し、このときの流量計測器17による流量計測値を減算して弁開閉装置12の気体消費量を変更し、弁11の弁開度を補正するものとする。
【0058】
次に、上述のようにして構成された弁開度検知装置10による弁開度演算及び補正の手順を、主に図4を用いて説明する。
まず、第1気体供給源13から供給される動力用気体Aの供給圧力を、作業員が第1圧力調整器15を用いて調整する(S11)。次に、作業員が開閉器16を開操作することで、この開閉器16からの開操作信号が信号変換部19を経て弁開度演算部20に入力される(S12)。
【0059】
次に、弁開度演算部20は、流量計測器17による流量計測ステップからの流量計測値と、圧力計測器17による圧力計測ステップからの圧力計測値とを、それぞれ信号変換部19を経て入力する(S13)。更に、弁開度演算部20は、切替バルブ31から開弁用信号または閉弁用信号を入力する(S14)。
【0060】
切替バルブ31からの開弁用信号または閉弁用信号が順動作方向の信号である場合には、弁開度演算部20は、前回の積算流量値に、ステップS13にて入力された流量計測値を加算して(S15)、積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新する(S17)。また、切替バルブ31からの開弁用信号または閉弁用信号が逆動作方向の信号である場合には、弁開度演算部20は、前回の積算流量値から、ステップ13にて入力された流量計測値を減算して(S16)、積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を更新する(S17)。
【0061】
弁開度演算部20は、ステップ17にて更新した積算流量値(弁開閉装置12の気体消費量)を弁開閉装置12の総気体量で除することで、弁11の弁開度を演算するステップを実行する(S18)。次に、弁開度補正処理部21は、弁開度の補正条件が適合するか否かを判断して(S19)、適合する場合には、弁開度演算部21にて演算された弁11の弁開度を補正するステップを実行する(S20)。
【0062】
即ち、弁開度補正処理部21は、弁開度の補正条件として、弁開閉装置12及び配管14の周囲温度が所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上である場合に、弁開度演算部20にて弁開度演算に用いられた気体消費量を増加して変更して、弁11の弁開度を補正する。
【0063】
また、弁開度補正処理部21は、弁開度の補正条件として、配管14内に残圧が存在するか否かを判断し、残圧が存在しない場合に、弁開度演算部20にて弁開度演算に用いられた総気体量に、弁開閉装置12及び配管14内の動力用気体Aが弁開閉装置12を動作させるに必要な圧力に到達するための気体量を加算して総気体量を変更し、弁11の弁開度を補正する。
【0064】
また、弁開度補正処理部21は、弁開度の補正条件として、弁開度が任意に設定した範囲(例えば、全閉からの開弁時には0%~20%、全開からの閉弁時には100%~80%)内にあるか否かを判断し、上記範囲内にある場合には、弁開度演算部20にて弁開度演算に用いられた気体消費量から、弁11の全開または全閉からの動作開始時に必要なトルクに相当する気体消費量を差し引いて気体消費量を変更し、弁11の弁開度を補正する。
【0065】
更に、弁開度補正処理部21は、弁開度補正条件として、弁開閉装置12が弁11を全開または全閉動作させて自動停止しているときに弁開度演算部20により演算された弁開度と全開または全閉の弁開度との差が所定範囲(全開時自動停止の場合が例えば95%以上100%未満、全閉時自動停止の場合が例えば0%を超え5%以下)内にあるか否かを判断し、所定範囲内にある場合には、弁開度演算部20にて演算された弁11の弁開度を100%(全開)または0%(全閉)に補正する。
【0066】
また、弁開度補正処理部21は、弁開度の補正条件として、配管14内で生じた圧力損失を解消するために第1気体供給源13の供給圧力を増大させたか否かを判断し、増大させた場合には、弁開度演算部20にて弁開度演算に用いられた気体消費量から、第1気体供給源13の供給圧力の増大により増加した動力用気体Aの流量増加分を差し引いて気体消費量を変更し、弁11の弁開度を補正する。
【0067】
入出力部22は、弁開度演算部20または弁開度補正処理部21にて演算または補正された弁11の弁開度を表示する(S21)。開閉器16から閉操作信号が信号変換部19を経て入力された場合には、弁開度演算部20は弁11の弁開度の演算を停止する(S22)。開閉器16から閉操作信号が入力されない場合には、ステップS13~S21の各ステップが繰り返される。
【0068】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば次の効果(1)~(3)を奏する。
(1)開閉器16が第1気体供給源13からの動力用気体Aを弁開閉装置12へ供給させ、またはその供給を遮断させることで、弁開閉装置12が、現場に設置された弁11を開弁または閉弁する。このため、現場の弁11周辺が水没したり放射線量が高くなったりして作業員が立ち入ることができなくなった場合でも、現場に設置された弁11を確実に遠隔操作することができる。
【0069】
(2)第1気体供給源13から弁開閉装置12へ開操作により動力用気体Aを供給し、閉操作によりその供給を遮断する開閉器16の開閉操作信号、並びに弁開閉装置12と第1気体供給源13を接続する配管14内の動力用気体Aの流量及び圧力のそれぞれの信号に基づいて、弁開度演算部20が、弁開閉装置12により開弁または閉弁される弁11の弁開度を演算し、更に弁開度補正処理部21が、上述の各信号及び設定された各種パラメータに基づいて、弁開度演算部20により演算された弁開度を補正している。この結果、現場の弁11周辺が水没したり放射線量が高くなったりして作業員が立ち入ることができなくなった場合でも、現場に設置された弁11の弁開度を正確且つ確実に検知することができる。
【0070】
(3)開閉器16は、第1気体供給源13と弁開閉装置12とを接続する配管14において第1圧力調整器15と流量計測器17との間に配設されているが、図1の2点鎖線に示すように、圧力計測器18と弁開閉装置12との間に配設されることで、第1圧力調整器15を省略することができる。つまり、開閉器16が配管14における圧力計測器18の下流側に配設され且つ第1圧力調整器15が省略されることで、開閉器16を閉操作した状態で第1気体供給源13の元栓を開き始め、配管14内の圧力を圧力計測器18にて計測して、配管14内の圧力が弁開閉装置12等に対し許容される適性値になるように上記元栓の開度を調整する。この開度調整終了後に開閉器16を開操作することで、弁開閉装置12等を適正に動作させることができると共に、第1圧力調整器15の省略によって弁開度検知装置10のコストを低減することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10…弁開度検知装置、11…弁、11A…弁軸、12…弁開閉装置、13…第1気体供給源(流体供給源)、14…配管、16…開閉器(開閉手段)、17…流量計測器(流量計測手段)、18…圧力計測器(圧力計測手段)、20…弁開度演算部(弁開度演算手段)、21…弁開度補正処理部(弁開度補正処理手段)、22…入出力部(入出力手段)、A…動力用気体(流体)
図1
図2
図3
図4