(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】部屋換気構造及び建物
(51)【国際特許分類】
F24F 7/10 20060101AFI20240902BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20240902BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20240902BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F24F7/10 A
F24F7/08 101Z
E04B1/70 A
E04B1/76 200A
(21)【出願番号】P 2020138814
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2022-12-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】太田 勇
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-161749(JP,A)
【文献】特開2007-016552(JP,A)
【文献】特開2004-144400(JP,A)
【文献】特開平07-145957(JP,A)
【文献】特開2016-125742(JP,A)
【文献】特開平06-249463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0291376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
F24F 7/08
E04B 1/70
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設けられた部屋と、前記建物の外から、前記建物内における他の部屋又は通路を介さずに前記部屋の中へ空気を給気する給気部と、前記部屋の中の空気を、前記他の部屋又は前記通路を介さずに前記建物の外へ排気する排気部と、を備える部屋換気構造において、
前記部屋は、
当該部屋の床面を構成するとともに、前記給気部から取り入れた空気を前記床面が広がる方向に分散させつつ前記部屋の床上空間へ導入する空気分散部と、
前記他の部屋又は前記通路へつながる出入口を開閉する扉と、を備え、
前記扉は、前記扉の下部に設けられて、前記扉を閉じた状態のときに前記出入口における前記床面との間の隙間を塞ぐための閉塞部材を有し、
前記閉塞部材は、前記扉の下部において上下動可能に構成されていて、前記床面と当接した状態、又は前記床面から離間した状態に切り替え可能とされて
おり、
前記閉塞部材の、前記床面と当接した状態、又は前記床面から離間した状態の切り替えは、当該閉塞部材に接続されたレバーになされた操作に応じて行われることを特徴とする部屋換気構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の部屋換気構造において、
前記空気分散部は、当該部屋の下面から離間して設けられるとともに、水平方向に二次元状に広がるように分布する複数の給気孔を有する床板であり、
前記給気部は、前記部屋における前記床板の下の床下空間へ空気を給気することを特徴とする部屋換気構造。
【請求項3】
請求項
1に記載の部屋換気構造において、
前記空気分散部は、多孔質材料で板状に形成されるとともに、当該部屋の下面に敷き詰められた床板であり、
前記給気部は、前記床板の側面又は下面へ空気を給気することを特徴とする部屋換気構造。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の部屋換気構造において、
前記排気部は、前記部屋の上面から前記建物の外へ排気することを特徴とする部屋換気構造。
【請求項5】
請求項
4に記載の部屋換気構造において、
前記部屋は、前記上面から離間するように設けられ、二次元状に広がるように分布する複数の排気孔を有する天井板を備えることを特徴とする部屋換気構造。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の部屋換気構造において、
前記給気部を通る空気の温度を、前記部屋の温度に近づくように調節する室温調節部を備えることを特徴とする部屋換気構造。
【請求項7】
請求項
6に記載の部屋換気構造において、
室温調節部は、
前記排気部を通る空気と媒体との熱交換を行う熱交換器と、
前記給気部を通る空気と前記媒体との熱交換を行う第二の熱交換器と、
前記熱交換器の媒体出口と前記第二の熱交換器の媒体入口とを接続する第一の媒体流路と、
前記第二の熱交換器の媒体出口と前記熱交換器の媒体入口とを接続する第二の媒体流路と、
前記媒体を循環させるポンプと、を備えることを特徴とする部屋換気構造。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の部屋換気構造を備えた建物であって、
所定階に、前記部屋換気構造をそれぞれ備えた複数の前記部屋と、前記部屋換気構造を備えていない他の部屋と、複数の前記部屋と前記他の部屋を接続する通路と、が設けられており、
前記他の部屋における前記通路へつながる出入口を開閉する扉は、複数の前記部屋の前記扉が有する前記閉塞部材と同様に構成された他の閉塞部材を有していることを特徴とする建物。
【請求項9】
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の部屋換気構造を備えた建物であって、
所定階に、前記部屋換気構造を備えた前記部屋と、前記部屋換気構造を備えていない他の部屋と、前記部屋と前記他の部屋を接続する通路と、が設けられており、
前記部屋と前記他の部屋は隣接して配置され、
前記他の部屋は、前記通路へつながる複数の出入口をそれぞれ開閉する複数の扉を備え、
前記複数の扉は、前記部屋の前記扉と互いに近接して配置された第一の扉と、当該第一の扉よりも前記部屋から離間して配置された第二の扉と、を含み、
前記第一の扉及び前記第二の扉は、前記部屋の前記扉が有する前記閉塞部材と同様に構成された他の閉塞部材を有していることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋換気構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部屋を備える建物において、一の部屋で発生した汚染物質(ウイルス等)が他の部屋に拡散するのを抑制するため、一の部屋の換気を行う際、当該一の部屋に設けられた給気口から給気するとともに、一の部屋に設けられた排気口から排気すること(第一種換気)が従来行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、給気口や排気口の位置、給気口から部屋内への空気の吹き出し方、あるいは部屋内から排気口への空気の取り込み方等によっては、部屋内の空気が大きく攪拌され、部屋の床や壁に付着していた汚染物質が部屋内に巻き上げられてしまう可能性がある。
すなわち、従来の建物では、部屋の換気を行うことにより、部屋に居る人が汚染物質に汚染(例えばウイルス感染)されてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、部屋に設けられた給気口から給気するとともに同部屋に設けられた排気口から排気する部屋換気構造において、同部屋内に付着している汚染物質が部屋内において巻き上げられてしまったり、攪拌されてしまったりするのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図2,5,6に示すように、建物100内に設けられた部屋1と、前記建物100の外から、前記建物100内における他の部屋120又は通路130を介さずに前記部屋1の中へ空気を給気する給気部2と、前記部屋1の中の空気を、前記他の部屋120又は前記通路130を介さずに前記建物100の外へ排気する排気部3と、を備える部屋換気構造110において、前記部屋1は、当該部屋1の床面12aを構成するとともに、前記給気部2から取り入れた空気を前記床面12aが広がる方向に分散させつつ前記部屋1の床上空間1bへ導入する空気分散部12,12Aと、前記他の部屋120又は前記通路130へつながる出入口1aを開閉する扉11と、を備え、前記扉11は、前記扉11の下部に設けられて、前記扉を閉じた状態のときに前記出入口1aにおける前記床面との間の隙間を塞ぐための閉塞部材11aを有し、前記閉塞部材11aは、前記扉11の下部において上下動可能に構成されていて、前記床面12aと当接した状態、又は前記床面12aから離間した状態に切り替え可能とされて
おり、前記閉塞部材11aの、前記床面12aと当接した状態、又は前記床面12aから離間した状態の切り替えは、当該閉塞部材11aに接続されたレバーになされた操作に応じて行われることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明は、部屋1内に取り入れられた空気を、空気分散部12,12Aによって床面12aが広がる方向に分散させつつ部屋1の床上空間1bへ導入させる。
また、このとき、空気は分散されるため、1箇所から集中して導入される場合に比べて速度が遅くなる。
その結果、部屋1内の空気が攪拌されにくくなる。
よって、請求項1に記載の発明によれば、部屋1内に付着している汚染物質が部屋1内において巻き上げられてしまうのを防ぐことができる。
また、扉11の隙間を空気が通れなくなるため、他の部屋120又は通路130と部屋1との間の空気及び汚染物質(ウイルス等)の移動がより生じにくくなる。
さらに、汚染物質の心配がないときには、閉塞部材11aを床面12aから離間させることによって、他の部屋120又は通路130も含めた建物100全体の換気が可能となる。
【0008】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の部屋換気構造110において、例えば
図2,6に示すように、前記空気分散部は、当該部屋1の下面1cから離間して設けられるとともに、水平方向に二次元状に広がるように分布する複数の給気孔12bを有する床板12であり、前記給気部2は、前記部屋1における前記床板12の下の床下空間1fへ空気を給気することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、吸音パネルのような既存の建材を用いて空気分散部を構成することができる。
また、床下空間1fによって、給気部2から取り入れた空気を確実に拡散させることができる。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1に記載の部屋換気構造110において、例えば
図5に示すように、前記空気分散部は、多孔質材料で板状に形成されるとともに、当該部屋の下面に敷き詰められた床板12Aであり、前記給気部2は、前記床板の側面又は下面へ空気を給気することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、床面12aの下に空間ができないため、空気を拡散可能としつつ、比較的強度の高い床面12aを構成することができる。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の部屋換気構造110において、例えば
図2,5,6に示すように、前記排気部3は、前記部屋1の上面1dから前記建物100の外へ排気することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、床面12aから出た空気が比較的まっすぐ上方へ登っていくようになり、部屋1内の空気が更に攪拌されにくくなる。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4に記載の部屋換気構造110において、例えば
図6に示すように、前記部屋1は、前記上面1dから離間するように設けられ、二次元状に広がるように分布する複数の排気孔13aを有する天井板13を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、部屋1内の空気は、天井面全体から均一にかつゆっくりと排気されるようになる。
このため、部屋1内の空気が更に攪拌されにくくなる。
【0020】
請求項
6に記載の発明は、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の部屋換気構造110において、例えば
図2,5,6に示すように、前記給気部2を通る空気の温度を、前記部屋1内の温度に近づくように調節する室温調節部4を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、外気が部屋1の温度より低い場合は給気部2を通る空気が温められ、外気が部屋1の温度より高い場合は給気部2を通る空気が冷やされるため、部屋1内の換気を行っても部屋1内を快適な温度に保つことができる。
また、空気が部屋1へ入る前に温度が調節されるため、部屋1に居る人が、給気部2から取り入れた空気を暑い又は冷たいと感じにくくすることができる。
【0022】
請求項
7に記載の発明は、請求項
6に記載の部屋換気構造110において、例えば
図2,5,6に示すように、室温調節部4は、前記排気部3を通る空気と媒体との熱交換を行う熱交換器41と、前記給気部2を通る空気と前記媒体との熱交換を行う第二の熱交換器42と、前記熱交換器41の媒体出口と前記第二の熱交換器42の媒体入口とを接続する第一の媒体流路43と、前記第二の熱交換器42の媒体出口と前記熱交換器41の媒体入口とを接続する第二の媒体流路44と、前記媒体を循環させるポンプ45と、を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、外気が部屋の温度より低い(高い)場合は、相対的に温度が高い(低い)排気部3を通る空気と媒体とが熱交換することによって媒体が温められ(冷やされ)、温められた(冷やされた)媒体と給気部2を通る空気とが熱交換することによって空気が温められる(冷やされる)。
このように、給気空気の加温・冷却に排気のエネルギーを使うことで、部屋1内を快適な温度に保つことができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の部屋換気構造を備えた建物100であって、
所定階に、前記部屋換気構造110をそれぞれ備えた複数の前記部屋1と、前記部屋換気構造110を備えていない他の部屋120と、複数の前記部屋1と前記他の部屋120を接続する通路130と、が設けられており、
前記他の部屋120における前記通路130へつながる出入口を開閉する扉11は、複数の前記部屋1の前記扉11が有する前記閉塞部材11aと同様に構成された他の閉塞部材11aを有していることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の部屋換気構造110を備えた建物であって、
所定階に、前記部屋換気構造110を備えた前記部屋1と、前記部屋換気構造110を備えていない他の部屋120と、前記部屋1と前記他の部屋120を接続する通路130と、が設けられており、
前記部屋1と前記他の部屋120は隣接して配置され、
前記他の部屋120は、前記通路130へつながる複数の出入口をそれぞれ開閉する複数の扉11を備え、
前記複数の扉11は、前記部屋1の前記扉11と互いに近接して配置された第一の扉11と、当該第一の扉11よりも前記部屋1から離間して配置された第二の扉11と、を含み、
前記第一の扉11及び前記第二の扉11は、前記部屋1の前記扉11が有する前記閉塞部材11aと同様に構成された他の閉塞部材11aを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、部屋内に付着している汚染物質が部屋内において巻き上げられてしまったり、攪拌されてしまったりするのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る建物内部の平面図である。
【
図2】
図1の建物が備える部屋換気構造の一例を示す断面図である。
【
図3】
図1の建物が備える扉及び閉塞部材の一例を示す側面図である。
【
図4】
図1の建物が備える扉及び閉塞部材の他の例を示す側面図である。
【
図5】
図1の建物が備える部屋換気構造の他の例を示す断面図である。
【
図6】
図1の建物が備える部屋換気構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0027】
〔建物〕
建物100は、
図1に示すように、複数の部屋換気構造110を備えている。
部屋換気構造110は、建物100内における他の部屋120又は通路130を介さずに部屋1の中へ空気を給気するとともに、部屋1の中の空気を他の部屋又は通路を介さずに建物100の外へ排気する換気を行うものである。
このため、他の部屋120又は通路130と部屋1との間の空気及び汚染物質(ウイルス等)の移動が生じにくくなっている。
本実施形態に係る建物100は、他の部屋120と、通路130と、を更に備えている。
なお、一つの建物100に備えられる部屋換気構造110は、一つだけであってもよい。
【0028】
〔部屋換気構造の構成〕
部屋換気構造110は、
図2に示すように、部屋1の他、給気部2と、排気部3と、を備えている。
また、本実施形態に係る部屋換気構造110は、室温調節部4を更に備えている。
【0029】
(部屋)
本実施形態に係る部屋1は、
図1に示したように、扉11を備えている。
扉11は、他の部屋120又は通路130へつながる出入口1aを開閉するものである。
扉11は、
図3に示すように、閉塞部材11aを備えている。
閉塞部材11aは、閉じた状態のときに出入口1aとの間の隙間を塞ぐようになっている。
本実施形態に係る閉塞部材11aは、例えば
図3(a)に示すように、扉11の下面に、下端が床面12aに当接するように設けられていてもよいし、
図3(b)に示すように、扉11の正面又は背面の下部に、下端が床面12aに当接するように設けられていてもよい。
こうすることで、扉11の隙間を空気が通れなくなるため、他の部屋120又は通路130と部屋1との間の空気及び汚染物質の移動がより生じにくくなる。
【0030】
なお、閉塞部材11aは、例えば
図4に示すように、扉11の下部において上下動可能に構成され、床面12aと当接した状態、又は床面12aから離間した状態に切り替え可能となっていてもよい。
この場合、閉塞部材11aの状態の切り替えは、閉塞部材11aを直接動かすことによって行われるようになっていてもよいし、例えば閉塞部材11aに接続された図示しないレバーになされた操作に応じて行われるようになっていてもよい。
このようにすれば、汚染物質の心配がないときには、閉塞部材11aを床面12aから離間させることによって、他の部屋120又は通路130も含めた建物100全体の換気が可能となる。
【0031】
また、部屋1は、
図2に示したように、空気分散部12を備えている。
空気分散部12は、当該部屋1の床面12aを構成するとともに、給気部2から取り入れた空気を床面12aが広がる方向に分散させつつ部屋1の床上空間1bへ導入するものである。
本実施形態に係る空気分散部は、部屋1の下面1cから離間して設けられるとともに、水平方向に二次元状に広がるように分布する複数の給気孔12bを有する床板12となっている。こうすることで、吸音パネルのような既存の建材を用いて空気分散部12を構成することができる。
【0032】
なお、空気分散部は、
図5に示すように、硬質の多孔質材料で板状に形成され、当該部屋1の下面1cに敷き詰められた床板12Aであってもよい。このようにすれば、床下空間ができないため、空気を拡散可能としつつ、比較的強度の高い床面12aを構成することができる。
また、床板12,12Aは、取り外し可能となっていてもよい。このようにすれば、床板12,12Aや部屋1の下面1cの掃除や交換を行いやすくなるため、ゴミや埃によって床板12,12Aの給気孔12bや細孔が目詰まりしたり、部屋1の下面1cにゴミや埃が堆積してしまったりするのを効果的に防ぐことができる。
【0033】
また、部屋1は、例えば
図5に示すように、天井板13は、上面1dから離間するように設けられ、自身が広がる方向に二次元状に広がるように分布する複数の排気孔13aを有する天井板13を備えていてもよい。
なお、
図5には、水平に広がるように配置された天井板13を例示したが、天井板13は傾斜していてもよい。
【0034】
(給気部)
給気部2は、建物100の外から、建物100内における他の部屋120又は通路130を介さずに部屋1の中へ空気を給気するものである。
本実施形態に係る給気部2は、
図2,5,6に示したように、給気ダクト21と、給気ファン22と、を備えている。
【0035】
給気ダクト21の入口は建物100の外壁100aに設けられ、出口(給気口)は部屋1の側面1eにおける床面12aよりも下方に設けられている。すなわち、本実施形態に係る給気部2は、部屋1における床板12の下の床下空間1fへ空気を給気するようになっている。
なお、給気ダクト21の出口は、部屋1の下面1cに設けられていてもよい。
【0036】
給気ファン22は、給気ダクト21の入口近傍に設けられている。
給気ファン22が回転すると、外気が給気ダクト21に取り込まれ、給気ダクト21内を流れていく。
なお、給気ファン22は、給気ダクト21の中や、給気ダクト21の出口近傍に設けられていてもよい。
また、排気部3が後述する排気ファン32を備える場合、給気部2は給気ファン22を備えていなくてもよい。
【0037】
(排気部)
排気部3は、部屋1の中の空気を、他の部屋120又は通路130を介さずに建物100の外へ排気するようになっている。
本実施形態に係る排気部3は、排気ダクト31と、排気ファン32と、を備えている。
【0038】
排気ダクト31の入口(排気口)は部屋1の上面1dに設けられ、出口は建物100の外壁100aに設けられている。すなわち、本実施形態に係る排気部3は、部屋1の上面1dから建物100の外へ排気するようになっている。
なお、排気ダクト31の出口は、部屋1の側面1eの上部(天井板13を備える場合は天井面よりも上)に設けられていてもよい。
【0039】
排気ファン32は、排気ダクト31の出口近傍に設けられている。
排気ファン32が回転すると、部屋1内の空気が排気ダクト31に取り込まれ、排気ダクト31内を流れていく。
なお、排気ファン32は、排気ダクト31の中や、排気ダクト31の入口近傍に設けられていてもよい。
また、給気部2が給気ファン22を備える場合、排気部3は排気ファン32を備えていなくてもよい。
【0040】
(室温調節部)
室温調節部4は、給気部2を通る空気の温度を、部屋1内の温度に近づくように調節するようになっている。
本実施形態に係る室温調節部4は、熱交換器41と、第二の熱交換器42と、第一の媒体流路43と、第二の媒体流路44と、ポンプ45と、を備えている。
【0041】
熱交換器41は、排気部3を通る空気と媒体との熱交換を行うものである。
本実施形態に係る熱交換器41は、排気ダクト31内に配置されている。
第二の熱交換器42は、給気部2を通る空気と媒体との熱交換を行うものである。
本実施形態に係る第二の熱交換器42は、給気ダクト21内に配置されている。
媒体は、水や空気でもよいし、その他の気体、液体であってもよい。
【0042】
第一の媒体流路43は、熱交換器41の媒体出口と第二の熱交換器42の媒体入口とを接続する。
本実施形態に係る第一の媒体流路43は、パイプで構成されている。
第二の媒体流路44は、第二の熱交換器42の媒体出口と熱交換器41の媒体入口とを接続する。
本実施形態に係る第二の媒体流路44は、パイプで構成されている。
なお、建物100が各種配管を通すパイプスペースを備える場合、第一,第二の媒体流路43,44は、パイプスペース内を通されるようになっていてもよい。このようにすれば、第一,第二の媒体流路43,44が部屋1,120や通路130から見えなくなるため、建物100内の見栄えを良くすることができる。
【0043】
ポンプ45は、媒体を循環させるものである。
ポンプ45は、媒体流路と熱交換器の継ぎ目に設けられていてもよいし、第一,第二の媒体流路の途中に設けられていてもよい。
【0044】
従来の空気熱交換では、汚染物質の「戻り」の懸念があった。
しかし、本実施形態に係る室温調節部4は、上記のような機構を有することにより、汚染物質の戻りのリスクを限りなく低減することができる。
【0045】
なお、建物100が複数の部屋換気構造110を複数備える場合、必ずしも全ての部屋換気構造110がそれぞれ室温調節部4を備えていなくてもよい。
すなわち、複数の部屋1にそれぞれ通じる複数の給気ダクト21、及び複数の排気ダクト31を互いに接続し、複数の給気ダクト21の合流部と、及び複数の排気ダクト31の合流部との間に一の室温調節部4を設けることにより、室温調節部4を複数の部屋1で共通化することも可能である。
【0046】
〔部屋換気構造の動作〕
以上のように構成された本実施形態に係る部屋換気構造110は、例えば建物100内に設けられた図示しないスイッチがオンにされたことを契機として、給気部2の給気ファン22を回転させる。
すると、給気ダクト21の入口から外気が取り込まれる。取り込まれた外気は、給気ダクト21を通って、空気分散部12,12Aに送られる。
空気分散部12,12Aは、部屋1内に取り入れた空気を、床面12aが広がる方向に分散させつつ部屋1の床上空間1bへ導入させる。
このとき、空気は分散されるため、1箇所から集中して導入される場合に比べて速度が遅くなる。その結果、部屋1内の空気が攪拌されにくくなる。
【0047】
また、部屋換気構造110は、図示しないスイッチがオンにされたことを契機として、排気部3の排気ファン32も回転させる。
すると、排気ダクト31の入口から部屋1内の空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、排気ダクト31を通って、建物100の外へ排出される。
上述したように、排気ダクト31の入口は、部屋1の上面1dに設けられているため、床面12aから出た空気が比較的まっすぐ上方へ登っていくようになり、部屋1内の空気が更に攪拌されにくくなる。
また、上述したように、部屋1に天井板13を備えるようにすれば、部屋1内の空気は、天井面全体から均一にかつゆっくりと排気されるようになる。このため、部屋1内の空気が更に攪拌されにくくなる。
【0048】
また、本実施形態に係る部屋換気構造110は、図示しないスイッチがオンにされたことを契機として、室温調節部4のポンプ45を駆動させる。
すると、ポンプ45は、熱交換器41,42及び媒体流路43,44内の媒体を循環させる。
ここで、外気が部屋の温度より低い場合は、相対的に温度が高い排気部3を通る空気と媒体とが熱交換することによって媒体が温められ、温められた媒体と給気部2を通る空気とが熱交換することによって給気部2を通る空気が温められる。
一方、外気が部屋の温度より高い場合は、相対的に温度が低い排気部3を通る空気と媒体とが熱交換することによって媒体が冷やされ、冷やされた媒体と給気部2を通る空気とが熱交換することによって給気部2を通る空気が冷やされる。
このため、部屋1内の換気を行っても部屋1内を快適な温度に保つことができる。
また、空気が部屋1へ入る前に温度が調節されるため、部屋1に居る人が、給気部2から取り入れた空気を暑い又は冷たいと感じにくくすることができる。
特に、本実施形態に係る室温調節部4は、給気空気の加温・冷却に排気のエネルギーを使うことで、部屋1内を快適な温度に保つことができる。
なお、ポンプ45は、部屋1の温度と外気温との差が無くなった場合に、動作を停止するように構成されていてもよい。
【0049】
〔効果〕
以上説明してきた部屋換気構造110は、部屋1内に取り入れられた空気を、空気分散部12,12Aによって床面12aが広がる方向に分散させつつ部屋1の床上空間1bへ導入させる。
また、このとき、空気は分散されるため、1箇所から集中して導入される場合に比べて速度が遅くなる。
その結果、部屋1内の空気が攪拌されにくくなる。
よって、請求項1に記載の発明によれば、部屋1内に付着している汚染物質が部屋1内において巻き上げられてしまったり、攪拌されてしまったりするのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0050】
100 建物
100a 外壁
110 部屋換気構造
1 部屋
1a 出入口
1b 床上空間
1c 下面
1d 上面
1e 側面
1f 床下空間
11 扉
11a 閉塞部材
12,12A 床板(空気分散部)
12a 床面
12b 給気孔
13 天井板
13a 排気孔
2 給気部
21 給気ダクト
22 給気ファン
3 排気部
31 排気ダクト
32 排気ファン
4 室温調節部
41 熱交換器
42 第二の熱交換器
43 第一の媒体流路
44 第二の媒体流路
45 ポンプ
120 他の部屋
130 通路