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特許7547125締結管理の方法、システム、およびそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】締結管理の方法、システム、およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20240902BHJP
【FI】
G06Q10/0631
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020150626
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045117
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】坂井 重夫
(72)【発明者】
【氏名】山邊 雅之
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091316(JP,A)
【文献】特開2009-099100(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理サーバーによって行われる、
プラント設備の作業箇所に対する作業者の割当て情報および作業工程を含む工程情報をデータベースから読み出す工程と、
前記作業者の識別情報を取得し、前記割当て情報を利用して前記作業者の認証処理を行う工程と、
前記作業者に前記プラント設備に対する締結情報を含む指示情報を通知する工程と
記作業者から作業報告情報を取得する工程と、
前記作業報告情報と前記工程情報を対比して作業状況を評価する工程と、
作業状況の評価結果を前記データベースに登録する工程と、
を含むことを特徴とする締結管理方法。
【請求項2】
前記管理サーバーによって行われる、
送信手段から発せられた信号を受信し、前記作業者の位置情報および移動情報を取得する工程と、
前記位置情報、前記移動情報、前記作業状況の評価結果を含む作業状況画面を生成する工程と、
該作業状況画面を前記作業者、管理者に通知する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の締結管理方法。
【請求項3】
前記管理サーバーによって行われる、
前記作業状況の評価結果に応じて表示内容を切替えた前記作業状況画面を生成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の締結管理方法。
【請求項4】
業者の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記作業者の識別情報、プラント設備の作業箇所に対する前記作業者の割当て情報および作業工程を含む工程情報を格納するデータベースと
前記割当て情報を利用して前記作業者の認証処理を行い、前記工程情報を前記データベースから読み出し、前記作業者に前記プラント設備に対する締結情報を含む指示情報を通知し、前記作業者から取得した作業報告情報と前記工程情報を対比して作業状況を評価して、該評価結果を前記データベースに登録する管理サーバーと、
を備えることを特徴とする締結管理システム。
【請求項5】
前記作業者が携帯し、または締結工具に設置されており、信号を送信する送信手段を備え、
前記管理サーバーは、前記送信手段から発せられた信号を受信して前記作業者の位置情報および移動情報を取得し、前記位置情報、前記移動情報、前記作業状況の評価結果を含む作業状況画面を生成して前記作業者、管理者に通知することを特徴とする請求項4に記載の締結管理システム。
【請求項6】
コンピュータに実現させるプログラムであって
ラント設備の作業箇所に対する作業者の割当て情報および作業工程を含む工程情報を読み込む機能と
前記作業者の識別情報を取得し、前記割当て情報を利用して前記作業者を認証する機能と、
前記作業者に前記プラント設備に対する締結情報を含む指示情報を通知する機能と
記作業者から取得した作業報告情報と前記工程情報を対比して作業状況を評価する機能と、
該作業状況の評価結果をデータベースに登録させる機能と、
前記コンピュータに実現させることを特徴とする締結管理プログラム。
【請求項7】
前記コンピュータに実現させるプログラムであって、
送信手段から発せられた信号により前記作業者の位置情報および移動情報を取得する機能と、
前記位置情報、前記移動情報、前記作業状況の評価結果を含む作業状況画面を生成して、前記作業者、管理者に通知させる機能と、
前記コンピュータに実現させることを特徴とする請求項6に記載の締結管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備などに用いられるフランジの締結作業を含む組立や保守の管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントなどの設備では、配管連結や配管に対するポンプなどの接続に、フランジ継手が用いられている。フランジ継手同士の間には、ガスケットが挟み込まれて、フランジ間を複数箇所に配置したボルトおよびナットによる締結作業が行われる。
フランジを用いるプラント設備では、プラント設備の組立て、ボルトおよびナットの締結状態やガスケットによるシール状態の監視、配管やその接続部分の腐食管理などを含む保守管理が設備の安全性を確保する上で重要である。このようなプラント設備に対する締結管理では、多数の締結部分に対する作業状態を把握することで、見落とし無く監視することが重要である。
【0003】
このようなプラント設備の作業管理として、作業者に所持させた識別タグにより設備の入退出の認証に用いることや、作業者が所持する携帯端末を利用して作業工程の区別やその処理を行う時刻情報を収集するものが知られている(たとえば、特許文献1)。また、サーバーや作業者が所持する現場端末において、タイムスタンプの付与によって作業工程の時刻情報を把握可能にするものが知られている(たとえば、特許文献2)。作業者の所持するタブレット端末の加速度センサやジャイロセンサによって移動情報を測定し、その移動情報をマップ上に表示させることや現在位置を推定するものが知られている(たとえば、特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-227811号公報
【文献】特開2017-157879号公報
【文献】特開2017-190984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、締結管理処理では、締結箇所ごとに締結処理に必要なスキルを有する作業者が割当てられるが、多数の機器や長大な配管設備を備えるプラント設備の締結箇所や締結処理に必要な情報の全てを作業者が把握しておくことは困難である。
そして、締結処理の作業内容や順序などを作業者の知識や勘に委ねたのでは、工期の長期化や作業効率の低下、作業状態の確認が不十分になるなどの事態を招く恐れがあるという課題がある。
本発明の発明者は、収集した作業者の位置や移動状態、作業結果とともに、作業者の技能やプラント設備の情報、作業工程などを組み合せることで、フランジ締結処理の作業状態を管理することができるとの知見を得た。
【0006】
斯かる課題について、特許文献1ないし特許文献3に開示された構成では問題を解決することはできないものである。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、各作業箇所に対する作業者の特定、作業工程に対する作業状態を管理することで、プラント設備に対する締結処理の信頼性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の締結管理方法の一側面は、管理サーバーによって行われる、プラント設備の作業箇所に対する作業者の割当て情報および作業工程を含む工程情報をデータベースから読み出す工程と、前記作業者の識別情報を取得し、前記割当て情報を利用して前記作業者の認証処理を行う工程と、前記作業者に前記プラント設備に対する締結情報を含む指示情報を通知する工程と、前記作業者から作業報告情報を取得する工程と、前記作業報告情報と前記工程情報を対比して作業状況を評価する工程と、作業状況の評価結果を前記データベースに登録する工程とを含む。
【0009】
上記締結管理方法において、前記管理サーバーによって行われる、送信手段から発せられた信号を受信し、前記作業者の位置情報および移動情報を取得する工程と、前記位置情報、前記移動情報、前記作業状況の評価結果を含む作業状況画面を生成する工程と、該作業状況画面を前記作業者、管理者に通知する工程とを含んでよい。
上記締結管理方法において、前記管理サーバーによって行われる、前記作業状況の評価結果に応じて表示内容を切替えた前記作業状況画面を生成する工程とを含んでよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の締結管理システムの一側面は、作業者の識別情報を取得する識別情報取得手段と、前記作業者の識別情報、プラント設備の作業箇所に対する前記作業者の割当て情報および作業工程を含む工程情報を格納するデータベースと、前記割当て情報を利用して前記作業者の認証処理を行い、前記工程情報を前記データベースから読み出し、前記作業者に前記プラント設備に対する締結情報を含む指示情報を通知し、前記作業者から取得した作業報告情報と前記工程情報を対比して作業状況を評価して、該評価結果を前記データベースに登録する管理サーバーとを備える。
【0011】
上記締結管理システムにおいて、前記作業者が携帯し、または締結工具に設置されており、信号を送信する送信手段を備え、前記管理サーバーは、前記送信手段から発せられた信号を受信して前記作業者の位置情報および移動情報を取得し、前記位置情報、前記移動情報、前記作業状況の評価結果を含む作業状況画面を生成して前記作業者、管理者に通知してよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の締結管理プログラムの一側面は、コンピュータに実現させるプログラムであって、プラント設備の作業箇所に対する作業者の割当て情報および作業工程を含む工程情報を読み込む機能と、前記作業者の識別情報を取得し、前記割当て情報を利用して前記作業者を認証する機能と、前記作業者に前記プラント設備に対する締結情報を含む指示情報を通知する機能と、前記作業者から取得した作業報告情報と前記工程情報を対比して作業状況を評価する機能と、該作業状況の評価結果をデータベースに登録させる機能とを前記コンピュータに実現させる。
【0013】
上記締結管理プログラムにおいて、前記コンピュータに実現させるプログラムであって、送信手段から発せられた信号により前記作業者の位置情報および移動情報を取得する機能と、前記位置情報、前記移動情報、前記作業状況の評価結果を含む作業状況画面を生成して、前記作業者、管理者に通知させる機能とを前記コンピュータに実現させてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 作業者による締結作業の実績および信頼性を担保することができる。
(2) 作業者の位置情報に基づいて作業箇所間の移動情報を取得し、その収集した情報を画面に表示することで、作業経過を含む作業状態の見える化が図れる。
(3) 作業状態の明示により、フランジ締結処理の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る締結管理処理例を示すフローチャートである。
図2】締結管理システムの構成例を示す図である。
図3】作業者データベースの構成例を示す図である。
図4】プラントデータベースの構成例を示す図である。
図5】作業状況データベースの構成例を示す図である。
図6】工程情報データベースの構成例を示す図である。
図7】作業者の位置および移動情報を含む作業状況画面の一例を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る締結管理処理例を示すフローチャートである。
図9】締結管理システムの構成例を示す図である。
図10】管理サーバーのハードウェア構成例を示す図である。
図11】締結工具と端末装置の構成例を示す図である。
図12】指示情報の一例を示す図である。
図13】作業報告情報の一例を示す図である。
図14】作業状況画面の一例を示す図である。
図15】作業状況画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る締結管理処理工程の一例を示している。図1に示す処理は、本開示の締結管理方法、締結管理プログラムの一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この締結管理処理には、たとえば図1に示すように、信号の受信工程(S101)、作業者10の位置情報および移動情報の収集工程(S102)、作業者10の割当て情報および工程情報の読み出し工程(S103)、作業者10の認証処理工程(S104)、作業者10に対する指示情報の通知工程(S105)、作業報告情報の取得工程(S106)、作業状態の評価工程(S107)、作業データベースの登録工程(S108)を含む。
【0017】
信号の受信工程(S101):締結管理システム2は、たとえば作業者10の配置処理および作業状態の監視処理機能を備える管理サーバー4が作業者10の位置情報を示す信号を受信する。信号は、たとえば作業者10が所持し、もしくは作業者10が所持または移動に利用する機器などに設置された送信機11から送信されている。この送信機11は、たとえば設定されたタイミングで継続的に、所定の周波数の電波を送信する装置の一例である。この締結管理システム2では、プラント設備の締結処理に割当てられた作業者10全員に、それぞれ識別可能な信号を送信する送信機11を携帯させることで、作業者10ごとの位置を把握している。
作業者10の位置情報および移動情報の収集工程(S102):管理サーバー4は、たとえばそれぞれの作業箇所に移動後もしくは移動中に受信した信号を解析し、信号の識別に基づいて作業者10の位置情報および移動情報を取得する。管理サーバー4は、たとえば図示しないプラント設備の地図情報やプラント設備に設定、もしくは緯度経度などの座表情報を利用して、作業者10の位置を把握する。また管理サーバー4は、時間経過して受信した二以上の信号により、作業者10の移動を把握することで、作業者10の移動状態および移動情報を把握する。この移動情報は、送信機11による信号の送信タイミングでの位置の変遷を示すものであり、作業者10が移動した道順を表すとは限られない。そのほか、管理サーバー4は、図示しないタイマーなどによって信号を受信した時刻情報を取得してもよい。
【0018】
作業者10の割当て情報および工程情報の読み出し工程(S103):管理サーバー4は、データベース(DB)6に登録されている割当て情報や工程情報を読み出す。作業者10の割当て情報は、プラント設備のフランジ締結部を含む作業箇所に対して締結処理の担当者を割当てた情報の一例である。作業者10の割当て処理は、管理サーバー4によって行われる。この割当て処理は、たとえば予め登録されている作業者10が備える技能情報と、フランジ締結部ごとに設定される必要技能との対比により行われる。
工程情報は、プラント設備に設置された機器や実験設備、配管に設けられたフランジ締結部等の締結処理を行う作業箇所での作業内容や作業時間情報のほか、作業箇所間の移動経路や移動時間情報などが設定されている。この工程情報に設定された情報は、たとえばベテラン作業員が実際に作業したときの時間情報や、コンピュータによって割り出された理想的な締結処理時間、移動時間、移動経路情報などが設定される。
作業者10の認証処理工程(S104):管理サーバー4は、作業者10が入力した識別情報21を取得し、その識別情報21と作業者データベース14に登録されている識別情報を対比して、登録された作業者10か否かの確認と、その作業箇所に割当てられた作業者10か否かの認証処理を行う。この認証処理では、たとえば締結処理を実施する作業箇所において入力した作業者10の識別情報21を利用するほか、プラント内に入場する際や管理サーバー4へのアクセス時に行った認証情報を利用してもよい。
【0019】
作業者10に対する指示情報の通知工程(S105):管理サーバー4は、指定された作業箇所に到達した作業者10に対し、締結処理を行う部品の情報や締結工具に設定する設定情報、締結回数などの作業指示を含む指示情報を通知する。この指示情報は、たとえば作業者10が所持する端末装置12に対し、電子メールや専用のプログラム、その他の手段により送信される。作業者10は、通知された指示情報を参照し、またはこの指示情報のプログラムを締結工具に設定して締結処理を行う。
作業報告情報の取得工程(S106):管理サーバー4は、プラント設備に設定された作業箇所から締結処理の作業報告情報を受信する。この作業報告情報は、たとえば作業箇所にある1または複数の締結部について、作業の完了時、または所定のタイミングで生成され、管理サーバー4側に通知される。作業報告情報は、たとえばボルトとナットの締結状態やその作業時間情報、進捗状況などを含む作業状態情報であり、作業者10が作成したものや、締結工具やコントローラなどが収集した作業結果に基づいて端末装置12が自動作成したもの、そのほか、図示しない作業監督などによって行われた締結状態のチェック結果に基づいて作成される。
作業状態の評価工程(S107):管理サーバー4は、取得した作業報告情報と、工程情報とを対比して締結処理の進捗状態に対する評価を行う。この評価工程では、たとえば工程情報に設定された作業経過時間通りに締結処理が完了しているか否か、ボルトとナットの締結状態が規定された軸力値やフランジ間に介在するガスケットに対する面圧値などが規定条件を満たしているかなどが評価される。
作業データベースの登録工程(S108):管理サーバー4は、作業状態の評価結果を作業状況データベース18などに登録する。そのほか、管理サーバー4は、評価結果に基づいて作業状況画面を生成し、管理サーバー4の表示部や作業者10の端末装置12に通知してもよい。
【0020】
<締結管理システム2>
図2は、締結管理システムの構成を示している。図2に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この締結管理システム2は、たとえば図2に示すように、管理サーバー4、各種データベースが格納されるDB6、ネットワーク8、作業者10が携帯する端末装置12を含んでいる。
管理サーバー4は、コンピュータで構成されており、作業者10による締結処理の監視処理、作業状態に対する評価およびその評価結果の通知処理を実行する。
管理サーバー4には、たとえば作業者10を特定する識別情報21を取得するための識別情報取得手段を備える。この識別情報取得手段は、たとえばたとえばプラントの組立てや保守、管理に従事する複数の作業者10の生体情報を利用して認証を行う認証装置や、ICカードなどを読み込むリーダー(Reader)装置、そのほか作業者10ごとに割り振られたIDやパスワードなどが入力される入力端末などである。そして識別情報取得手段は、たとえばプラントの入場ゲートに設置されるほか、プラント内に設定された締結処理を行う作業箇所などに設置される。
<管理サーバー4の情報処理>
この管理サーバー4が実行する情報処理は、たとえば、
ア)作業者10の位置情報の取得
イ)位置情報に基づいて、プラント内の作業者10の移動情報の解析
ウ)プラントの作業箇所に対する作業者の配置情報の把握
エ)締結処理の工程情報の読み込み
オ)作業報告の取得
カ)締結処理の作業状態、進捗状況の判定
キ)作業状態情報の生成
ク)作業状況データベース18への登録処理
などが含まれる。
【0021】
DB6は、記憶手段の一例であり、管理サーバー4を構成するコンピュータに内蔵される記憶部のほか、管理サーバー4に接続された外部記憶装置などを利用してもよい。このDB6には、たとえば作業者データベース(DB)14、プラントデータベース(DB)16、作業状況データベース(DB)18、工程情報データベース(DB)20が格納される。
ネットワーク8は、たとえば有線または無線により管理サーバー4と複数の作業者10の端末装置12との間でデータ通信させる手段の一例である。このネットワーク8は、たとえば公衆回線を利用してもよく、またはプラント内のみでアクセス可能に制限されたプライベート回線などを利用すればよい。
送信機11は、所定の周波数の無線や電波、赤外線などの光による信号を定期的、もしくは設定したタイミングで送信して、位置を伝達する手段の一例であり、たとえばトランシーバーなどの無線機、赤外線やBluetooth(登録商標)通信を利用したビーコンなどが用いられる。管理サーバー4は、送信機11が出力した信号を所定のタイミングごとに受信することで作業者10の位置情報を把握するとともに、その位置の変遷状態から作業者10が作業箇所Aから作業箇所Bに移動したという移動情報を取得する。
端末装置12は、少なくとも管理サーバー4との間でデータ通信を行い、指示情報を受信して表示可能な情報処理装置であり、たとえば携帯電話機やモバイルPC(Personal Computer)、その他、締結作業に利用する専用端末装置などが含まれる。さらに端末装置12は、作業者10が行った締結処理の作業報告情報を管理サーバー4側に送信する。管理サーバー4は、受信した作業報告情報を解析して、作業者10の締結処理の評価を行う。
【0022】
<作業者データベース(DB)14について>
図3は、作業者データベースの一例を示している。
この作業者データベース14は、たとえばプラントの組立てや保守、管理を含む締結処理を実行する作業者10の情報源であり、作業者10の識別や能力、保有する資格情報や経験値などの情報が登録されている。
作業者データベース14は、たとえば図3に示すように、作業者10ごとの作業者ファイル22-1、22-2、・・・22-Nが含まれる。作業者ファイル22-1、22-2、・・・22-Nには、それぞれ作業者部24、ID番号部26、アドレス情報部28、日付部30、指示情報部32、作業履歴部34、技能情報部36を含んでいる。
【0023】
作業者部24には、作業者10の名前が格納される。
ID番号部26には、作業者10を表す情報として登録されたID(IDentification)番号、またはプラントに対する入場や作業の許可を受けたときに登録されたID番号などが格納される。
アドレス情報部28には、たとえば作業者10が保有する電子メールのアドレス情報などが含まれており、端末装置12で利用可能な電子メールにより、または直接データ通信により管理サーバー4から送信される指示情報を受信するための情報の一例である。
日付部30には、たとえば作業者10が締結処理を実行する日時や管理サーバー4との間で指示情報の通知や作業報告データの送信などを行った日時などの情報が格納される。
【0024】
指示情報部32には、たとえば管理サーバー4から作業者10に通知される作業箇所や作業内容、作業に必要な設定情報などを含む作業情報が格納される。
作業履歴部34には、たとえば配置された作業箇所において作業者10に割当てられた作業内容、進捗状況、作業者10から通知された作業報告情報などが格納される。
技能情報部36には、作業者10が備える技能データが格納される。この技能データには、たとえば溶接施工管理や危険物取扱い、消防設備士、ボイラー技師などの資格情報のほか、フランジおよびガスケットの締結モデルを利用した実習、工具の取扱実習などを終了した認定資格情報、そのほか作業者10が締結その他の作業を経験した情報などが含まれる。またこれらの技能データには、たとえば資格取得や実習経験からの経過年数や講習などの受講回数、作業経験の回数などの情報が含まれてもよい。
【0025】
<プラントデータベース(DB)16について>
図4は、プラントデータベースの一例を示している。
このプラントデータベース16は、プラントにおける作業箇所や締結作業の内容などの情報が格納される。
プラントデータベース16には、たとえば位置情報部38、作業履歴部40、作業対象部42、補修期間部44、技能条件情報部46が含まれる。
位置情報部38には、プラントに設置された機器や配管設備などを特定する情報であって、フランジ締結作業、設備や機器などの点検作業などの作業箇所もしくは作業内容ごとに区分けして特定された情報が格納される。締結処理では、たとえば位置情報部38に格納された位置情報ごとに作業箇所が設定されており、複数の作業箇所を組み合せて作業工程が設定される。
作業履歴部40には、プラントの機器や設備について、締結処理が行われた日付や時間情報などの履歴情報が格納される。
作業対象部42には、フランジ締結作業、配管や機器の点検作業などに用いられる部品や工具などの情報が格納される。この作業対象は、たとえばフランジやガスケットの型番や配管の径、ボルトやナットの本数や呼び径、使用する工具の種類、その他、ボルトとナットの締付けにおいて工具に設定するトルク値などの設定情報が含まれる。
補修期間部44には、たとえばプラントの補修間隔などの情報が格納される。
技能条件情報部46には、配管や設備の組立て、または保守、点検作業に関し、作業者10が習得していなければならない作業スキルの情報が格納されている。この技能条件である作業スキルには、たとえばプラントの作業に関わるために必要な資格情報のほか、このプラントもしくはフランジと同様の構成の訓練施設において習得した経験値などの条件が含まれる。管理サーバー4は、技能条件情報部46の情報と作業者10が取得している技能情報とを対比して、この作業箇所を担当する作業者10を選定する。
【0026】
<作業状況データベース(DB)18について>
作業状況データベース18は、締結処理の作業経過情報や作業報告情報が格納されるとともに、締結作業に対する評価処理を行うワークスペースとして機能する。作業状況データベース18は、たとえば図5に示すように、作業者10ごとの作業状況ファイル50-1、50-2、・・・50-Nで構成される。作業状況データベース18には、たとえば作業者部52、位置情報部54、移動情報部56、技能条件情報部58、技能情報部60、作業負荷部62、作業能力部64、評価部66が含まれる。
作業者部52には、プラントの作業箇所に配置された作業者10の名前やID情報が格納される。この作業者部52には、たとえば作業者データベース14(図3)の作業者部24やID番号部26のデータを読み出して記憶させてもよく、またはこれらの情報部とデータをリンクさせてもよい。
位置情報部54は、締結処理に関する位置情報を格納する領域であって、たとえば割当てられた作業箇所の情報が格納する作業箇所部54-1と、作業者10が所持する送信機11からの信号を格納する信号部54-2を備える。作業箇所部54-1には、フランジ締結部などの座標情報として、プラントデータベース16(図4)の位置情報部38に格納されたデータを読み出して記憶させてもよく、またはこのデータをリンクさせてもよい。信号部54-2には、受信した信号に基づいて解析した送信機11の位置を表す座標などが格納される。
移動情報部56には、信号部54-2に蓄積された位置情報の推移に基づいて、時間経過による作業者10の位置情報の推移を表す情報が格納される。この移動情報部56に格納される情報は、信号情報の送信位置の変移を表す情報であり、信号の送信間隔もしくは信号の受信間隔に応じて、作業者10の移動経路と一致しない場合もある。
技能条件情報部58には、プラントの設備や配管などに対する締結処理に必要なスキル情報が格納されており、プラントデータベース16の技能条件情報部46から読み出した情報が格納されればよく、もしくはデータをリンクさせてもよい。
【0027】
技能情報部60には、作業者10の技能情報が格納される。この技能情報部60には、たとえば作業者データベース14の技能情報部36から読み出した情報が格納されればよい。
作業負荷部62には、各作業箇所において作業者10が行う作業内容などが格納される。
この作業内容は、たとえばプラントデータベース16の作業対象部42に格納されている情報の一部または全部を格納し、またはこれらの情報から算出した負荷情報などが格納される。負荷情報は、たとえばボルトの締付け回数や締付けトルク値などの情報のほか、作業予測時間などを算出した情報であってもよい。
作業能力部64には、作業箇所における作業状況を示す情報が格納される。この作業能力は、たとえば作業負荷部62に格納される情報を利用して算出した作業目標値と、実際の作業結果との対比により算出した値などが格納されればよい。これにより、管理サーバー4は、作業箇所ごとに、作業負荷に対する作業能力の配分状態を判断して、作業者10の再配置や人員の追加などの処理に利用すればよい。
評価部66は、作業者10による締結処理に対する評価結果のほか、作業箇所において発生したフランジ締結部からの漏洩などの事故情報などが格納される。
【0028】
管理サーバー4は、データベース6に格納されている情報を利用して、プラントの作業箇所に対し、適切なスキルを有する作業者10を割当て、配置させる。管理サーバー4は、たとえばプラントデータベース16の技能条件情報部46に格納されている作業に必要なスキルに対応した機能情報を有する作業者10をピックアップして担当する作業者10を選定するほか、すでに割当てられている作業者10が適切か否かを判定する。この作業者10の選定では、たとえば複数人の作業者10が候補に挙がった場合、プラントの設備に関連した実習訓練の習得成績や訓練回数のほか、最新の訓練日が近いなどの条件を設定すればよい。
【0029】
<工程情報データベース(DB)20について>
図6は、工程情報データベースの一例を示している。
この工程情報データベース20は、プラントの締結処理における作業予定やその経過時間、作業結果などを含む管理データの一例であり、作業者10に対する作業能力の判定処理に利用する情報源である。
工程情報データベース20は、たとえば図6に示すように、作業者10ごとの工程情報ファイル70-1、70-2、・・・70-Nで構成される。工程情報データベース20には、作業者部72、日付部74、作業箇所部76、作業時間部78、設定時間部80、作業内容部82、作業状況部84を含んでいる。
【0030】
作業者部72は、プラントの作業箇所に配置された作業者10の名前やID情報が格納される。この作業者部72には、たとえば作業者部24、52やID番号部26のデータを読み出して記憶させてもよく、またはこれらの情報部とデータをリンクさせてもよい。
日付部74には、締結処理を実行する指示日が記録される。
作業箇所部76は、日付部74に指定された日に処理する作業箇所やその作業順序、フランジやガスケット、ボルト、ナットなどの作業対象の情報が格納される。この作業箇所部76に格納される情報が作業者10に対する割当て情報の一例である。
作業時間部78は、締結処理の作業時間管理情報を格納する領域であって、たとえば開始時刻部78-1、経過時間部78-2を備える。開始時刻部78-1には、締結処理の開始時刻が格納される。この開始時刻は、たとえば信号の受信に基づいて割り出した作業箇所に到達した時刻のほか、作業者10がフランジ締結部に設置された認証装置で認証した時刻、またはタグのIDコードにアクセスした時刻などが格納されてもよい。
経過時間部78-2には、締結処理を行った時間情報が格納される。この締結処理を行った時間は、たとえば作業者10が管理サーバー4に通知してもよく、または管理サーバー4が締結工具134(図11)を通じて取得した作業情報や、端末装置12を通じて通知された作業報告情報などに基づいて割り出してもよい。
設定時間部80には、たとえば予め設定された作業予定時間が格納される。
【0031】
作業内容部82には、フランジ締結部において作業者10が行う作業内容などの情報が格納される。この作業内容部82は、たとえば作業状況データベース18(図5)の作業負荷部62に格納される情報が格納されてもよく、またはデータをリンクしてもよい。
作業状況部84には、作業の進捗状況などを含む判定結果が格納される。管理サーバー4は、設定時間部80に格納される作業予定時間と経過時間部78-2の情報とを対比して、作業の進捗状況を判定する。そのほか作業状況部84には、たとえば図示しない管理者などにより行われた締結状態の確認結果や、締結時もしくはその後に発生した漏水やその他の事故などに基づいて判定した締結処理の判定結果などが格納される。
【0032】
<作業状況画面90について>
図7は、作業者の位置および移動情報を含む作業状況画面の一例を示している。
管理サーバー4は、作業者10ごとに作業工程に対する進捗状況および締結状態などに対する評価処理を行うとともに、この作業状況を示す作業状況画面90を生成する。
この作業状況画面90は、たとえば図7に示すように、プラントの設備や道路などを含む地図上に、作業箇所アイコン92と移動情報94を表示する。この作業状況画面90には、作業者10ごとに割当てられた作業箇所アイコン92を表示してもよく、または全ての作業箇所を表示してもよい。また作業状況画面90には、作業者10ごとのほか、プラントの締結処理を行う全ての作業者10の作業状況を表示してもよく、または所定の条件により抽出された一部の作業者10の作業状況を表示してもよい。さらに作業状況画面90には、たとえば現在位置、もしくは最後に受信した信号の位置に対して、次の作業箇所アイコン92への方向を示す移動指示情報96が表示される。
【0033】
<第1の実施形態の効果>
この第1の実施形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 作業状況データベース18を利用して、作業者10に対する作業箇所の設定や技能条件、または作業者10の作業の進捗状況などが容易に把握できる。これによりプラントの作業箇所における作業状態が可視化されて、プラントの締結処理に対する信頼性が高められる。
(2) 作業者10の位置およびその遷移状態や作業に要した時間などを収集することで、締結処理の作業効率を判断することができる。
(3) 作業者10の作業状況を逐次把握することで、無駄な移動や作業ロスを割り出すことが可能となる。
(4) 作業状態を把握することで、移動や締結処理における時間のロスなどを顕在化させることができ、作業者10に対する作業箇所の割当て数や作業順序、移動経路などの改善処理を行うことが可能となる。
(5) プラントデータベース16に格納された技能条件情報と作業者データベース14に登録された技能情報とを対比し、必要な作業スキルを備える作業者10を選定して作業箇所に配置させることで、プラントの組立て作業や、保守、管理作業の信頼性を高めることができる。
(6) 作業に必要なスキルを備えた作業者10を選定して作業箇所に配置させることで、プラントの安全性の向上が図れる。
(7) 作業者10のスキル情報と作業箇所に必要なスキル情報のマッチングにより、管理者の経験値によらずに適切な作業者10の配置処理を行える。
【0034】
図8は、第2の実施形態に係る締結管理処理工程の一例を示している。図8に示す工程は一例であり、この工程に本発明が限定されるものではない。この処理液生成工程において、Sは一部の工程、Sに付した番号は順序の一例である。
この締結管理処理では、たとえば図8に示すように、受信した信号により、作業者10の位置および移動情報を収集する工程(S201)、作業者10の割当て情報および工程情報の読み出し工程(S202)、フランジ締結部104に設置されているコード情報を読み込み、管理サーバー4にアクセスする工程(S203)、作業者認証工程(S204)、フランジ締結部104の情報に基づいて指示情報を取得する工程(S205)、端末装置12を介して締結工具134に設定情報を入力する工程(S206)、作業報告を端末装置12で生成し、管理サーバー4に通知する工程(S207)、作業の進捗の判定工程(S208)、表示画面の生成工程(S209)、端末装置12に通知する工程(S210)、異常状態の表示画面の生成工程(S211)を含む。
【0035】
受信した信号により、作業者10の位置および移動情報を収集する工程(S201):管理サーバー4は、送信機11が発した信号を受信し、この信号の送信位置を解析して、作業者10の位置や時間経過による位置の遷移から移動情報を取得する。
作業者10の割当て情報および工程情報の読み出し工程(S202):管理サーバー4は、たとえば工程情報データベース20(図6)の作業箇所部76などから作業者10ごとの割当て情報を読み出すとともに、その設定時間部80から工程情報を読み出す。
フランジ締結部104に設置されているコード情報を読み込み、管理サーバー4にアクセスする工程(S203):作業者10は、端末装置12などを利用して、フランジ締結部104(図9)にあるコード情報読取部112(図9)を利用して管理サーバー4にアクセスする。
作業者認証工程(S204):作業者10は、たとえば端末装置12や図示しない認証装置を利用して、作業者データベース14(図3)に登録されている作業者10であることの認証を受ける。
フランジ締結部104の情報に基づいて指示情報を取得する工程(S205):作業者10は、たとえば端末装置12を介して、タグ110のコード情報読取部112や管理サーバー4にアクセスして、締結処理に必要な位置情報や締付けトルク値などの設定情報を含む指示情報を取得する。
端末装置12を介して締結工具134に設定情報を入力する工程(S206):締結工具134(図11)には、たとえば端末装置12を介して締付けトルク値などの設定情報が入力される。
【0036】
作業報告を端末装置12で生成し、管理サーバー4に通知する工程(S207):締結管理システム2では、作業者10による端末装置12の操作により、または端末装置12の自動処理により、締結処理の作業報告情報を生成して、管理サーバー4側に通知する。
作業の進捗の判定工程(S208):管理サーバー4は、作業報告情報と工程情報データベース20の情報とを対比して、締結処理作業の時間的な状況や締結処理の精度などを含む進捗状態を判定する。
表示画面の生成工程(S209):管理サーバー4は、進捗の判定により、予定通りの進捗であれば(S208のYES)、作業者10の位置情報、移動情報などの状態情報を含む表示画面を生成する。
端末装置12に通知する工程(S210):管理サーバー4は、生成した表示画面を端末装置12に通知するほか、管理サーバー4の情報提示部136や、他の管理端末などに通知する。
異常状態の表示画面の生成工程(S211):管理サーバー4は、締結作業の進捗の判定により、工程通りの締結処理がされていないと判断した場合(S208のNO)には、異常状態を示す表示画面を生成する。この異常状態には、たとえば工程情報よりも遅延している部分が有る場合、または管理者などによる作業状態のチェックにおいて、締結処理が条件を満たしていないなどの判断、そのほか、漏水などの事故が発生した場合などが含まれる。この表示画面を生成した後、S210に移行する。
【0037】
<締結管理システム2>
図9は、第2の実施形態に係る締結管理システムの構成を示している。図9に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。また図9において、図2と同一部分には同一符号を付している。
この締結管理システム2は、たとえば図9に示すように、管理サーバー4、プラント施設100と、作業者10が所持する送信機11、端末装置12を含む。
管理サーバー4には、作業者10の識別情報21や、送信機11による信号、端末装置12で生成された作業報告情報が通知される。また管理サーバー4は、端末装置12に対し、フランジ締結部104に締結処理を実行させるための指示情報を通知するとともに、作業者10の作業状況を示す進捗画面などを通知する。
プラント施設100には、たとえば複数の配管や機器で構成されており、1つまたは一定の距離範囲内に配置されたフランジ締結部104や機器ごとに作業箇所が区分され、各作業箇所に作業箇所識別情報102A、102B、・・・102Gが設定されている。管理サーバー4は、作業箇所に対する締結処理を行うために、専門の技術や知識を有する作業者10を配置する。
【0038】
作業箇所には、たとえばフランジ締結部104として、配管106A、106Bの先端部にフランジ継手108A、108Bを備え、対向させて連結させた状態でフランジ継手108A、108Bをボルトおよびナットで締付ける。このフランジ締結部104には、たとえば配管の一部やフランジ継手の表面などにタグ110が設置されている。このタグ110には、たとえば作業者10の端末装置12などで読み取り可能な二次元コードなどのコード情報読取部112が印字されている。作業者10は、たとえば端末装置12でタグ110のコード情報読取部112を読み取ることで、直接または管理サーバー4などを通じて、作業箇所識別情報102Cやフランジ継手108A、108Bの型番やボルトおよびナットの締結本数、配管の径などの情報を取得することができる。
【0039】
そのほか、作業者10は、認証情報を含むIDカード114を所持しており、各作業箇所において、IDカード114に印字されたコード情報読取部116を端末装置12や図示しない認証装置に読み込ませる。このIDカード114には、たとえばQRコード(登録商標)などの二次元コードが付与されており、作業者10の認証情報や管理サーバー4などのへのアクセスなどを含む管理権限情報などが紐付けられている。
これにより管理サーバー4は、作業箇所に到達した作業者10の情報と、作業箇所にあるフランジ締結部104の情報を取得することで、工程情報データベース20に登録された情報と一致するか否かを判断する。そして、管理サーバー4は、工程情報データベース20に設定された作業者10であると判断した場合には、締結処理を行うための指示情報を出力するとともに、その判断結果を作業状況データベース18に登録すればよい。
【0040】
<管理サーバー4のハードウェアについて>
図10は、管理サーバーのハードウェア構成例を示している。
管理サーバー4の制御部120は、通信機能を有するコンピュータで構成される。この制御部120は、たとえばプロセッサ122、記憶部124、通信部126、入出力部(I/O)128を備える。
プロセッサ122は、記憶部124にあるOS(Operating System)を実行し、作業者10の認証処理や作業者データベース14の登録、作業者10の技能情報と作業箇所の技能条件情報との対比処理、作業進捗状況の判断処理を含む締結管理プログラムなどの各種プログラムを実現するための情報処理を実行する。
記憶部124は、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)などの記憶素子を備え、記録媒体の一例である。この記憶部124にはOS、既述の作業者10の配置処理や指示情報の生成などを実行するためのプログラムのほか、作業者データベース14、プラントデータベース16、作業状況データベース18、工程情報データベース20が格納される。
通信部126は、外部のデータベースや作業者10に与えられた端末装置12と無線通信により情報を送受信するための機能部である。
I/O128は、プロセッサ122の制御により、情報提示部136に対して作業状況画面を表示させるほか、操作入力部138からの情報の入力を行う。またI/O128には、たとえばプラント施設100に設置された識別情報入力部130が接続されるほか、外部DB132、締結工具134、端末装置12などが有線または無線などにより接続されている。
【0041】
識別情報入力部130は、作業者10の識別情報21を取込み、認証処理するための手段の一例であり、たとえば顔画像を撮影する撮像装置、認証装置などで構成される。
外部データベース132は、たとえばコンピュータのデータベースなどが含まれており、作業者データベース14、プラントデータベース16、作業状況データベース18、工程情報データベース20が格納されてもよい。
締結工具134は、作業者10が使用する締結手段の一例であり、制御部120から通知する締付けトルク値など設定情報が入力される。この締結工具134は、たとえば作業データを入力設定可能なトルクレンチやナットランナーなどの工具が含まれる。
【0042】
情報提示部136は、締結処理の状態画面や動作状態や作業者10に対して通知する作業箇所の情報などを表示する手段の一例であり、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの情報提示機器で構成される。
操作入力部138は、管理サーバー4に対する設定条件や作業者10のID番号などの認証情報を入力する手段の一例であり、たとえばキーボードやタッチパネルなどの操作手段を備える。
【0043】
<締結作業について>
図11は、締結工具と端末装置の構成例を示す図である。
管理サーバー4は、端末装置12に対して作業に必要な設定情報を含む指示情報を通知する。
作業者10は、たとえば図11に示すように、端末装置12で指示情報を受信すると、設定情報をコントローラ140に入力する。このコントローラ140は、締結工具134を制御する装置であり、締結工具134に対してケーブル144を通じて接続されており、締め付けトルク値Tなどの制御指示を入力する。コントローラ140には、たとえば設定情報や操作内容、締結工具134の状態などを表示する表示部146や設定操作や数値情報などを入力する操作入力部148を備える。
【0044】
締結工具134は、コントローラ140から入力された設定情報に基づき、フランジ締結部104の締結処理を行う。このフランジ締結部104は、たとえば連結手段であるフランジ継手108A、108B間にガスケット150が挟み込まれ、その周縁に設定された複数の締付け箇所にそれぞれボルト152A、152B、152C、・・・およびナット154A、154B、154C、・・・が配置される。フランジ継手108A、108Bの周縁上には、たとえば締付け箇所が8箇所設定されている。つまり、このフランジ継手108A、108Bには、たとえば等間隔に角度θ=45〔°〕の間隔で8本のボルト152とナット154が締付けられる。ガスケット150は、フランジ継手108A、108Bの対向面に接触するとともに、配管106A、106Bなどで形成される流路に重ならないよう配置される。
締結処理の指示情報には、たとえばフランジ継手108A、108Bの周縁上に配置されたボルト152A、152B、152C、・・・およびナット154A、154B、154C、・・・に対し、締め付け順序や段階的に締め付けを強くするために、締め付け回数、および締め付けトルク値Tの増加情報などが含まれている。
【0045】
そのほか、締結処理では、たとえばコントローラ140や端末装置12、またはその他図示しない作業状態の監視手段により、フランジ締結部104に対する締結工具134の位置や締め付け順序、締付け処理が完了したことなどを監視し、管理サーバー4に通知してもよい。
【0046】
<指示情報について>
図12は、指示情報の一例を示している。
管理サーバー4から端末装置12に通知される指示情報160には、たとえば図12に示すように、作業者10が担当するフランジ締結部104に対する設定情報部162や、この設定情報を端末装置12やその他の機器、工具などに転送するための指示情報生成操作部164が含まれる。設定情報部162には、たとえば締め付けの目標軸力またはトルク値やフランジ名、ボルトの種類、サイズや本数、ガスケットの種類などの情報が含まれる。指示情報生成操作部164には、設定情報部162に含まれる設定情報をインポートするか、またはエクスポートするかなどの選択部が含まれる。
【0047】
<作業報告情報170について>
図13は、作業報告情報の一例を示している。
この作業報告情報170は、フランジ締結部104や作業箇所ごとの作業経過や作業完了を示す情報であり、たとえば図13に示すように、担当者部172や作業内容部174、計測情報部176を備える。作業報告情報170は、たとえば締結処理を行った作業者10が端末装置12を利用して作成してもよく、または端末装置12がコントローラ140や締結工具134、その他図示しない軸力センサなどの計測機器から取得した情報を利用して自動で作成してもよい。さらに、作業報告情報170は、図示しない管理者などが行った締結状態のチェック結果に基づいて作成されてもよい。
担当者部172には、作業者10の名前やIDなどの情報が入力される。そのほか、作業日情報、作業報告の作成日時などが入力される。
作業内容部174には、作業リポートとして、作業者10による作業内容の説明や経過情報の説明、または管理者によるチェック内容や状況の報告などが入力される。
計測情報部176には、図示しない計測機器によって計測された軸力やガスケット150に負荷されている面圧情報などが入力される。
そのほか、作業報告情報170には、締結処理において発見された漏水やフランジなどの破損状況などの故障報告などが記入されてもよい。
【0048】
<作業状況画面180について>
図14図15は、作業状況画面の一例を示している。
作業状況画面180には、たとえば図14に示すように、プラントの設備や道路などを含む地図上に、作業箇所アイコン92と移動情報94が表示されるとともに、作業評価情報として、異常状態アイコン182が表示される。この異常状態アイコン182は、たとえば作業報告情報と工程情報との対比結果に基づき、作業箇所間での遅延状態、フランジ締結部104での漏水の発生箇所などを特定する情報である。
さらに作業状況画面180には、たとえば図15に示すように、作業箇所アイコン92や移動情報94について、作業報告情報に基づいて作成された作業情報画面184が表示可能となっている。作業情報画面184には、たとえば作業履歴情報、締結条件結果情報、補修状況情報、気密テスト結果情報、漏洩原因情報、漏洩対策情報などが表示されればよい。
【0049】
<第2の実施形態の効果>
この第2の実施形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(2) 締結処理の作業状況について、進捗状況や異常状態の発生状況などが作業状況画面180によって明示されることで作業状況の把握が容易となり、締結管理の信頼性が向上する。

〔変形例〕
以上説明した実施形態について、その特徴事項や変形例を以下に列挙する。
【0050】
(1) 上記実施形態では、送信機11として、無線機やビーコンなどを用いる場合を示したがこれに限らない。送信機11は、たとえば端末装置12や携帯電話機などを利用してもよい。
【0051】
(2) 上記実施形態では、作業者10が送信機11を携帯する場合を示したが、これに限らない。送信機11は、たとえば作業者10が締結処理に利用する締結工具134やその他の機器、作業者10が移動に利用する車両、端末装置12に設置されてもよい。
【0052】
(3) 上記実施形態では、作業者10に通知する指示情報や作業報告情報において、締付けトルク値や軸力、ガスケット150の面圧などの情報が用いられる場合を示したが、これに限らない。締結管理処理では、たとえば指示情報および作業報告情報として、締結時または締結状態のチェック時の気象情報や気温、湿度情報などを計測し、フランジ締結状態への影響を管理してもよい。さらに、管理サーバー4は、過去に登録された締結状態情報とともに、締結処理を行ったときの気温や湿度、気象条件などの情報を利用して、指示情報を出力するときの気象条件などに応じたガスケット150の状態予測処理を行ってもよい。これにより管理サーバー4は、締結処理時の気象条件などに基づいて、作業者10に対する作業箇所の割当てや移動順序、締付けトルク値の設定情報の調整などを行えばよい。
【0053】
(4) そのほか、管理サーバー4は、作業報告情報に含まれる情報を利用し、作業者10の技能情報を評価してもよい。この評価処理では、たとえば作業報告情報により締結状態が不良であるほか、フランジ締結部104からの漏水などの発生に対し、作業者10の技能が不足、または衰えているとの判断結果を作業者データベース14の技能情報部36に登録してもよい。これにより締結管理処理では、たとえば技能情報に基づいて作業箇所の割当てを変更するほか、作業者10に対して再度の技能研修を促す指示情報を出力してもよい。
【0054】
(5) 上記実施形態では、管理サーバー4は、取得した作業報告情報に基づいて、締結処理が工程情報に対して遅延している作業者10に対し、異常状態アイコン182を表示した作業状況画面180を通知する場合を示した。さらに管理サーバー4は、遅延している作業者10の工程情報から締結処理が未処理の締結箇所を割り出して、他の作業日に変更するほか、他の作業者10の進捗情報を参照して、未処理の締結箇所を他の作業者10に割当てる、再分担処理を行ってもよい。
【0055】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
2 締結管理システム
4 管理サーバー
6 データベース(DB)
8 ネットワーク
10 作業者
11 送信機
12 端末装置
14 作業者データベース
16 プラントデータベース
18 作業状況データベース
20 工程情報データベース
21 識別情報
22-1、22-2、・・・22-N 作業者ファイル
24 作業者部
26 ID番号部
28 アドレス情報部
30 日付部
32 指示情報部
34 作業履歴部
36 技能情報部
38 位置情報部
40 作業履歴部
42 作業対象部
44 補修期間部
46 技能条件情報部
50-1、5-2、・・・50-N 作業状況ファイル
52 作業者部
54 位置情報部
54-1 作業箇所部
54-2 信号部
56 移動情報部
58 技能条件情報部
60 技能情報部
62 作業負荷部
64 作業能力部
66 評価部
70-1、70-2、・・・70-N 工程情報ファイル
72 作業者部
74 日付部
76 作業箇所部
78 作業時間部
78-1 開始時刻部
78-2 経過時間部
80 設定時間部
82 作業内容部
84 作業状況部
90、180 作業状況画面
92 作業箇所アイコン
94 移動情報
96 移動指示情報
100 プラント施設
102A~G 作業箇所識別情報
104 フランジ締結部
106A、106B 配管
108A、108B フランジ継手
110 タグ
112 コード情報読取部
114 IDカード
116 コード情報読取部
120 制御部
122 プロセッサ
124 記憶部
126 通信部
128 I/O
130 識別情報入力部
132 外部DB
134 締結工具
136 情報提示部
138 操作入力部
140 コントローラ
144 ケーブル
146 表示部
148 操作入力部
150 ガスケット
152A、B、C、・・・ ボルト
154A、B、C、・・・ ナット
160 指示情報
162 設定情報部
164 指示情報生成操作部
170 作業報告情報
172 担当者部
174 作業内容部
176 計測情報部
182 異常状態アイコン
184 作業情報画面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15