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特許7547128検査装置、検査システム、超音波診断装置、音響結合材装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】検査装置、検査システム、超音波診断装置、音響結合材装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020153057
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047251
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 裕久
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 洋一
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0241115(US,A1)
【文献】特開平07-031617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0083061(US,A1)
【文献】特開2002-306478(JP,A)
【文献】特開2016-073352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブにより送信され、前記超音波プローブの音響放射面に密着された音響結合材を通過した超音波が反射し、前記音響結合材を通過した反射波の波形を検出する検出部と、
前記超音波プローブの音響放射面に密着された前記音響結合材の特性に応じて異なる検査の手順を定めた検査情報を取得する取得部と、
前記検出部により検出された波形及び前記検査情報に基づいて、前記超音波プローブの性能を検査する検査部と、を備える、
検査装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記音響結合材における前記超音波プローブに密着された面に対向する界面により反射された前記反射波の波形を検出する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記音響結合材における前記超音波プローブに密着された面に対向する対向面に取り付けられた反射板により反射された前記反射波の波形を検出する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記超音波プローブに支持させる支持部材によって支持された反射板により反射された前記反射波の波形を検出する、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記超音波プローブの音響放射面に密着された前記音響結合材における前記超音波が通過する領域の厚み及び材質ごとに検査の手順を定めた前記検査情報を取得する
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記音響結合材を含む音響結合材ユニットにICタグが設けられ、前記超音波プローブにICタグリーダが設けられ、前記ICタグは、前記音響結合材を特定する特定情報を記憶し、前記ICタグリーダは、前記ICタグに記憶された前記特定情報を読み取り、前記超音波プローブは、前記ICタグリーダによって読み取られた前記特定情報を前記検査装置に送信し、
前記取得部は、前記超音波プローブにより送信された前記特定情報に応じた前記検査情報を取得し、
前記検査部は、前記取得部により取得された前記検査情報に従う波形の超音波を前記超音波プローブに送信させることにより、前記超音波プローブの性能を検査する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
請求項1、2または4に記載の検査装置と、
前記超音波プローブに密着される前記音響結合材と、を備える、
検査システム。
【請求項8】
請求項3に記載の検査装置と、
前記超音波プローブに密着される前記音響結合材と、
前記音響結合材に密着された前記反射板と、を備える、
検査システム。
【請求項9】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の検査装置と、
前記超音波プローブにより送信された超音波を被検体に反射させ、反射した反射波に基づいて被検体の情報を取得する診断部と、を備える、
超音波診断装置。
【請求項10】
超音波プローブに密着させられる音響結合材と、
前記音響結合材を特定する特定情報であって、請求項に記載の前記検査装置に提供する前記特定情報を記憶する記憶部と、を備える、
音響結合材装置。
【請求項11】
検査装置のコンピュータに、
超音波プローブにより送信され、前記超音波プローブの音響放射面に密着された音響結合材を通過した超音波が反射し、前記音響結合材を通過した反射波の波形を検出させ、
前記超音波プローブの音響放射面に密着された前記音響結合材の特性に応じて異なる検査の手順を定めた検査情報を取得させ、
検出された前記波形及び前記検査情報に基づいて、前記超音波プローブの性能を検査させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、検査装置、検査システム、超音波診断装置、音響結合材装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブの音響放射部には多数の振動子が配列されている。超音波プローブは、例えば、長期間使用されると、振動子の劣化や使用環境の影響を受けて、特性が経時変化する。このため、超音波プローブの性能を定期的に検査することにより、超音波プローブの性能を確認し、超音波プローブに異常が生じていないことが確認されている。
【0003】
超音波プローブの性能を確認するにあたり、従来、例えば、超音波プローブを検査用の治具で固定し、超音波プローブが超音波を送信する方向に水などの溶媒を介して反射板を設置し、この反射板に向けて超音波プローブに送信させた超音波の反射波の波形などを利用していた。しかし、この方法では、超音波プローブを治具で固定した際のアライメントが難しく、安定して検査を行うことは難しかった。あるいは、超音波プローブが送信した超音波がレンズ面で反射した反射波を利用して超音波プローブの性能を検査する技術もある。しかし、この技術では、反射波に含まれるノイズが大きく、性能の検査が難しくなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-178083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、簡素な装置で超音波プローブの性能を精度よく検査できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検査装置は検出部と、検査部と、を持つ。検出部は、超音波プローブにより送信され、前記超音波プローブの音響放射面に密着された音響結合材を通過した超音波が反射し、前記音響結合材を通過した反射波の波形を検出する。検査部は、前記検出部により検出された波形に基づいて、前記超音波プローブの性能を検査する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の検査システム1の構成の一例を示す図。
図2】超音波プローブ10の一部拡大断面図。
図3】検査装置100により検出される信号波形の時間変化を示す図。
図4】音響結合材20が設けられていない超音波プローブ10の一部拡大断面図。
図5】超音波プローブ10に音響結合材20が設けられていない場合に検査装置100により検出される信号波形の時間変化を示す図。
図6】第2の実施形態の検査システム2の構成の一例を示す図。
図7】第3の実施形態の検査システム3の構成の一例を示す図。
図8】第4の実施形態の検査システム4の構成の一例を示す図。
図9】第5の実施形態の超音波診断システム5の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の検査装置、検査システム、超音波診断装置、音響結合材装置、及びプログラムについて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の検査システム1の構成の一例を示す図である。検査システム1は、例えば、超音波プローブ10が送信した超音波の反射波を受信して反射波の波形を検出する際の検出精度などを検査することで、超音波プローブの性能を検査する。検査システム1は、例えば、音響結合材20と、検査装置100と、ディスプレイ装置200と、を備える。
【0010】
超音波プローブ10は、例えば、被検体を超音波診断する際に用いられる。検査装置100は、超音波プローブ10において超音波診断を行っていない際に、超音波プローブ10の性能を検査するために用いられる。超音波プローブ10は、被検体を超音波診断する際には、例えば、超音波診断装置300(図9参照)により出力される駆動信号に基づき、被検体内の画像を取得するために被検体に対して超音波を送信する。超音波プローブ10は、送信した超音波の反射波を音響放射面16で受信する。超音波プローブ10は、受信した超音波の反射波に基づく反射波情報を生成して超音波診断装置300に送信する。
【0011】
超音波プローブ10は、例えば、性能を検査するために供される際には、例えば、検査装置100により出力される駆動信号に応じた超音波を送信する。超音波プローブ10は、送信した超音波の反射波を音響放射面16で受信する。超音波プローブ10は、受信した超音波の反射波に基づく反射波情報を生成して検査装置100に送信する。
【0012】
図2は、超音波プローブ10の一部拡大断面図である。超音波プローブ10は、例えば、振動子12と、レンズ14と、を備える。振動子12は、複数の振動素子を備え、検査装置100により出力された駆動信号に応じて各振動素子が振動して超音波を送信する。振動子12により送信された超音波は、レンズ14を通過する。レンズ14は、通過する超音波の焦点を調整する。レンズ14を通過した超音波は、音響放射面16を通じて外部に送信される。音響放射面16は、例えば、レンズ14における振動子12と接する面に対向する面である。
【0013】
音響結合材20は、超音波プローブ10の検査に適した材質で形成された、例えばゴム製であり、例えば略直方体形状をなす。音響結合材20は、超音波プローブ10の性能を検査する際に、超音波プローブ10の音響放射面16にソノゼリー(登録商標)などの音響結合剤(ゼリー状の音響結合剤)や粘着剤等により接着され、音響放射面16に密着された状態で取り付けられている。音響結合材20は、ゴム製以外でもよく、例えば、ゲル状または液状の音響結合剤を袋体に封入した部材でもよい。
【0014】
音響結合材20における超音波プローブ10の音響放射面16に密着する密着面と、密着面に対向する対向面との間の距離(音響結合材20の厚み)は、超音波プローブ10の検査に適した距離に調整されている。超音波プローブ10により送信される超音波は、音響結合材20を通過し、音響結合材20の対向面で反射して反射波となる。音響結合材20の対向面は、音響結合材20におけるレンズ14と密着する面に対向する界面である。音響結合材20が超音波プローブ10に密着されることにより、超音波プローブ10が送信する超音波及び超音波が反射した反射波は、いずれも音響結合材20を通過する。
【0015】
検査装置100は、例えば、送受信回路110と、処理回路120と、メモリ130と、を備える。送受信回路110は、例えば、超音波プローブ10の振動子12を振動させる駆動回路等を含む。送受信回路110は、処理回路120により送信される送受信条件に応じて、ケーブルLを介して超音波プローブ10に駆動信号を出力する。送受信回路110は、超音波プローブ10により出力される反射波情報を取得する。送受信回路110は、取得した反射波情報をデジタル信号に変換する。
【0016】
処理回路120は、例えば、検出機能121と、検査機能122と、表示制御機能123と、を備える。処理回路120は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ(記憶回路)130に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路(circuitry)を意味する(以下、同様)。メモリ130にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0017】
メモリ130は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ130は、例えば、超音波プローブ10の性能を検査する際のプロトコル131を記憶する。プロトコル131は、超音波プローブ10の性能の検査を実施する際の手順であり、例えば、超音波プローブ10や超音波プローブ10に取り付けられる音響結合材20の種類ごとに異なる。これらのデータは、メモリ130ではなく(或いはメモリ130に加えて)、検査装置100が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0018】
検出機能121は、超音波プローブ10により送信され、超音波プローブ10の音響放射面16に密着された音響結合材20を通過した超音波が反射し、音響結合材20を通過した反射波の波形を検出する。このため、検出機能121は、超音波プローブ10により送信された反射波情報に基づいて、超音波プローブ10が受信した反射波の波形を検出する。検出機能121は、検出部の一例である。
【0019】
検査機能122は、メモリ130に記憶されたプロトコル131に従い、超音波プローブ10が所定の波形の超音波を送信するように、超音波プローブ10に対して、駆動信号を送受信回路110に出力させる。検査機能122は、超音波プローブ10に送信させる超音波の波形と、検出機能121により出力される反射波の波形を含む信号波形を検出し、検出した信号波形に基づいて、超音波プローブ10の性能を検査する。
【0020】
表示制御機能123は、ディスプレイ装置200に画像を表示させる。表示制御機能123は、例えば、超音波プローブ10により送信される信号波形の画像をディスプレイ装置200に表示させる。ディスプレイ装置200は、例えば、液晶ディスプレイである。ディスプレイ装置200は、画像を表示するものあればよく、例えばプロジェクタでもよい。
【0021】
図3は、検査装置100により検出される信号波形の時間変化を示す図である。検査機能122は、例えば、検出機能121により検出されたイニシャル波形W1と受信波形W2を含む信号波形から、受信波形W2を抽出する。検査機能122は、抽出した信号波形に基づいて超音波プローブ10の性能を検査する。
【0022】
検査機能122は、例えば、受信波形W2の振幅やTOF(Time Of Flight)に基づいて超音波プローブ10の性能を検査する。検査機能122は、例えば、検査の結果、受信波形W2の振幅が所定値未満であるときに、超音波プローブ10の性能が低下していると判定する。検査に用いられる所定値は、例えば、超音波プローブ10に出力される駆動信号に応じて定められている。検査機能122は、検査部の一例である。
【0023】
第1の実施形態の検査装置100は、超音波プローブ10に超音波を送信させるとともに、超音波の反射波を受信させて超音波プローブ10の性能を検査する。このとき、超音波プローブ10には、音響結合材20が密着されている。図2に示すように、超音波プローブ10の振動子12が送信した超音波及びその反射波(以下、「送受信波」)Sは、レンズ14の他に音響結合材20を通過する。このため、音響結合材20が設けられていない場合と比較して、音響結合材20が設けられている分送受信波Sが通過する経路が長くなる。
【0024】
これに対して、例えば、超音波プローブ10に音響結合材20が設けられていない場合を想定する。図4は、音響結合材20が設けられていない超音波プローブ10の一部拡大断面図、図5は、超音波プローブ10に音響結合材20が設けられていない場合に検査装置100により検出される信号波形の時間変化を示す図である。
【0025】
例えば、音響結合材20が設けられていない場合、振動子12から送信された超音波はレンズ14の音響放射面16に反射して反射波となり、振動子12は、この反射波を受信する。この場合には、送受信波Shが通過する距離が短くなる。このため、イニシャル波形W1が発現する時刻と受信波形W2が発現する時刻の間が短くなり、イニシャル波形W1と受信波形W2の分解能が低くなる。
【0026】
一方、超音波プローブ10に音響結合材20が設けられ、送受信波Sが通過する経路が長くなると、超音波プローブ10が超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間がその分長くなる。その結果、検査機能122が検出する信号波形において、イニシャル波形W1が発現する時刻と受信波形W2が発現する時刻の時間差を大きくすることができるので、イニシャル波形W1と受信波形W2を良好に分離することができる。その結果、受信波に含まれるノイズを小さくすることができるので、超音波プローブの性能を精度よく検査することができる。
【0027】
第1の実施形態においては、音響結合材20は、例えば接着剤によって超音波プローブに密着されている。このため、例えば超音波プローブ10を支持するための治具や水などの溶媒などを用いる必要はない。したがって、簡素な装置で超音波プローブ10の性能を検査することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態の検査システム2の構成の一例を示す図である。第2の実施形態の検査システム2は、音響結合材装置30を備える点で第1の実施形態と異なる。音響結合材装置30は、第1の実施形態と同様の音響結合材20と、音響結合材20に密着する反射板32と、を備える。
【0029】
音響結合材20は、第1の実施形態と同様に、超音波プローブ10に密着して取り付けられている。反射板32は、音響結合材20における超音波プローブ10に密着する密着面に対向する対向面に密着して取り付けられている。反射板32は、超音波プローブ10により送信される超音波を反射させて、超音波プローブの性能の検査に利用する反射波とする。反射板32は、剛体、例えば金属製である。反射板32は、金属製以外のものでもよく、例えば、樹脂製でもよい。
【0030】
第2の実施形態の検査システム2は、音響結合材装置30を備える。音響結合材装置30における音響結合材20は、第1の実施形態の検査システム1と同様に、超音波プローブ10に密着して取り付けられている。このため、送受信波Sが通過する経路が長くなり、検査装置100における検査を行う際のイニシャル波形W1が発現する時刻と受信波形W2が発現する時刻の時間差を大きくすることができるので、S/N比を良好にすることができる。さらに、超音波プローブ10を支持するための治具や水などの溶媒などを用いる必要はない。したがって、簡素な装置で超音波プローブ10の性能を検査することができる。
【0031】
第2の実施形態の検査システム2における反射板32は剛体であるので、超音波プローブ10との間における相対的な位置関係を安定させることができる。このため、レンズ14と反射板32との間の距離、言い換えると、送受信波Sが通過する距離を一定に保ちやすくすることができる。したがって、安定的な検査が可能となり、例えば、TOFなどの詳細データについても精度よく検査することができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態の検査システム3の構成の一例を示す図である。第3の実施形態の検査システム2は、音響結合材ユニット40を備える点で第1の実施形態と異なる。音響結合材ユニット40は、第3の実施形態と同様の音響結合材装置30と、音響結合材装置30における反射板32を超音波プローブ10に支持させる支持部材34とを備える。
【0033】
支持部材34には、反射板32が固定されている。支持部材34は、超音波プローブ10における振動子12を収容するケースに嵌り合う嵌合部を備える。嵌合部の内側の形状は、超音波プローブ10における振動子12を収容するケースの外形と略一致している。例えば、支持部材34を超音波プローブ10における音響放射面16側からスライドさせることにより、支持部材34は超音波プローブ10のケースに嵌り込む。支持部材34が超音波プローブ10のケースに嵌り込むことで、反射板32が超音波プローブ10に支持される。
【0034】
第3の実施形態の検査システム3は、音響結合材装置30を備える。このため、受信波に含まれるノイズを小さくすることにより超音波プローブの性能を精度よく検査することができるとともに、簡素な装置で超音波プローブ10の性能を検査することができる。さらに、第3の実施形態の検査システム3において、反射板32は、支持部材34によって超音波プローブ10のケースに支持されている。このため、反射板32を容易に取り付けることができるとともに、確実に支持することができる。
【0035】
音響結合材装置30における支持部材34は、他の態様でもよい。例えば、超音波プローブ10のケース及び支持部材34の一方または両方が磁石を備え、磁石でない他方が金属等であり、磁力を持って超音波プローブ10のケースが反射板32を支持するようにしてもよい。あるいは、超音波プローブ10のケース及び支持部材34の双方に、互いに嵌り合う嵌合部材が取り付けられており、これらの嵌合部材を嵌合させて、超音波プローブ10のケースが反射板32を支持するようにしてもよい。
【0036】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態の検査システム4の構成の一例を示す図である。第4の実施形態の検査システム4は、音響結合材ユニット40にICタグ210が設けられ、超音波プローブ10にICタグリーダ220が設けられている点で第3の実施形態と異なる。さらに、第4の実施形態の検査システム4は、検査装置100の処理回路120に、さらに、取得機能124が設けられ、メモリ130には、複数の第kプロトコル131k(k=1、2、3、・・・、n、以下同様)が格納されている点で第3の実施形態と異なる。何番目のプロトコルであるかを区別しない場合には、「k」の符号を省略し、プロトコル131と記載する。
【0037】
ICタグ210は、例えば、音響結合材を特定する特定情報を記憶する。特定情報は、例えば、ICタグ210が取り付けられている音響結合材20を特定する情報、例えば音響結合材番号を含む。ICタグリーダ220は、ICタグ210に読取信号を送信し、ICタグ210が記憶する特定情報を読み取る。音響結合材番号は、例えば、音響結合材を製造する際に定められる。超音波プローブ10は、ICタグリーダ220によって読み取った特定情報を検査装置100に送信して提供する。ICタグ210は、記憶部の一例である。
【0038】
検査装置100の送受信回路110は、超音波プローブ10が送信した特定情報を受信し、取得機能124に出力する。取得機能124は、超音波プローブ10により送信された特定情報が示す音響結合材番号を取得する。検査機能122は、取得機能124が取得した音響結合材番号に基づいて、メモリ130に記憶された複数のプロトコル131の1つの第kプロトコル131kを選択する。選択された第kプロトコル131kは、超音波プローブ10の音響放射面16に密着された音響結合材20における超音波が通過する領域の厚み及び材質に応じた検査の手順を含む。
【0039】
検査機能122は、選択した第kプロトコル131kに従い、超音波プローブ10が所定の波形の超音波を送信するように、超音波プローブ10に対して、駆動信号を送受信回路110に出力させる。取得機能124は、取得部の一例であり、プロトコル131は、検査情報の一例である。
【0040】
メモリ330に格納された第kプロトコル131kは、それぞれの音響結合材番号ごとに、その音響結合材が取り付けられた超音波プローブ10を検査するためのプロトコルの情報を含む。音響結合材が取り付けられた超音波プローブ10を検査するためのプロトコルは、その音響結合材の特性(例えば、超音波が通過する領域の厚み及び材質)に応じて予め定められてメモリ130に記憶されている。
【0041】
第4の実施形態の検査システム4は、音響結合材装置30を備える。このため、受信波に含まれるノイズを小さくすることにより超音波プローブの性能を精度よく検査するとともに、簡素な装置で超音波プローブ10の性能を検査することができる。さらに、第4の実施形態の検査システム4では、超音波プローブ10に設けられたICタグリーダ220によって、ICタグ210に記憶され、音響結合材20を特定する音響結合材情報を読み取り、検査装置100は、音響結合材20の特性に応じたプロトコルで超音波プローブ10の性能を検査する。このため、超音波プローブ10に取り付けられた音響結合材20に応じたプロトコルで超音波プローブ10の検査を行うことができ、精度のよい検査を行うことができる。
【0042】
しかも、ICタグリーダ220によってICタグ210に記憶された音響結合材情報を読み取る。このため、例えば超音波プローブ10の性能を検査するオペレータが、超音波プローブ10に取り付ける音響結合材20を間違えたとしても、正しく検査することができる。
【0043】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態の超音波診断システム5の構成の一例を示す図である。第5実施形態の超音波診断システム5は、上記各実施形態の検査装置100に代えて、超音波診断装置300を備える。超音波診断装置300は、超音波プローブ10の性能の検査と、超音波プローブ10を用いた超音波診断を実行する。超音波診断装置300は、超音波プローブ10の性能を検査する際には、第1の実施形態から第4の実施形態で説明した検査装置100と同様の処理を実行する。超音波診断装置300は、超音波プローブ10を用いて超音波診断するにあたり、被検体に向けて超音波プローブ10に超音波を送信させ、超音波を被検体に反射させる。超音波プローブ10は、超音波が反射した反射波を受信し、反射波情報を生成して超音波診断装置300に送信する。超音波診断装置300は、送信された反射波情報に基づいて、診断に用いるための被検体の情報を取得する。
【0044】
超音波診断装置300は、例えば、送受信回路310と、処理回路320と、メモリ330と、を備える。送受信回路310は、第1の実施形態の送受信回路110と同様の構成を有する。処理回路320は、例えば、検出機能321と、検査機能322と、表示制御機能323と、取得機能324と、診断機能325と、を備える。処理回路320は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ330に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。メモリ330にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成してもよいし、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。メモリ330は、第4の実施形態のメモリ130と同様、超音波プローブ10の性能を検査する際の複数の第kプロトコル331kを記憶する。
【0045】
検出機能321、検査機能322、表示制御機能323、及び取得機能324は、第4の実施形態の検出機能121、検査機能122、表示制御機能123、及び取得機能124と同様の機能を有する。検出機能321は、検出した反射波の波形を検査機能322とともに診断機能325にも出力する。診断機能325は、検査機能322が超音波プローブ10の性能を検査する際に主に機能するのに対して、例えば、超音波プローブ10を用いた超音波診断の際に主に機能する。
【0046】
超音波診断を行うにあたり、診断機能325は、送受信回路310に送受信条件を出力し、送受信回路310が超音波プローブ10に出力する送信電圧を制御する。診断機能325は、超音波プローブ10により送信された超音波を被検体に反射させた、反射した反射波の波形に基づいて、超音波診断に用いる被検体の情報を取得する。反射波は、検出機能321により診断機能325に出力される。診断機能325は、取得した被検体の情報に基づいて、検査者や医師に提供する情報を生成して提供する。診断機能325は、診断部の一例である。
【0047】
第5の実施形態の超音波診断システム5は、音響結合材装置30を備える。このため、受信波に含まれるノイズを小さくすることにより超音波プローブの性能を精度よく検査することができるとともに、簡素な装置で超音波プローブ10の性能を検査することができる。さらに、第5の実施形態の超音波診断システム5では、超音波プローブ10に設けられたICタグリーダ220によって、ICタグ210に記憶され、音響結合材20を特定する音響結合材情報を読み取り、超音波診断装置300は、音響結合材20の特性に応じたプロトコルで超音波プローブ10の性能を検査する。このため、超音波プローブ10に取り付けられた音響結合材20に応じたプロトコルで超音波プローブ10の検査を行うことができ、精度のよい検査を行うことができる。
【0048】
さらに、第5の実施形態の超音波診断システム5では、第4の実施形態の検査装置100が有する検査機能122と同等の検査機能322を超音波診断装置が備えている。このため、超音波診断装置を用いた超音波診断に用いていた超音波プローブ10の性能を診断するにあたり、超音波プローブ10を超音波診断装置から計測装置に接続し直す手間を省くことができる。したがって、例えば、超音波診断を実施する検査者や医師などが超音波プローブ10の性能の検査を実施するオペレータとなる場合でも、多大な手間を要することなく超音波プローブ10の性能を検査することができる。
【0049】
上記の各実施形態では、検査装置100で性能を検査できる超音波プローブ10は、特定の種類のみであるが、複数種類の超音波プローブ10を検査装置100で検査できるようにしてもよい。この場合、検査装置100は、複数の超音波プローブ10のそれぞれに応じたプロトコルを記憶しておき、超音波プローブ10により提供される超音波プローブを特定するプローブ特定情報に応じたプロトコルで超音波プローブ10の性能を検査するようにしてもよい。
【0050】
第4の実施形態の検査システム4及び第5の実施形態の超音波診断システム5では、ICタグリーダ220が超音波プローブ10に設けられているが、ICタグリーダ220は、超音波プローブ10以外に設けられていてもよい。ICタグリーダ220は、例えば、検査装置100や超音波診断装置300に設けられていてもよい。この場合、超音波プローブ10の検査を行う場合には、音響結合材20に設けられたICタグ210を、検査装置100または超音波診断装置300に設けられたICタグリーダ220に近づけて、ICタグ210に記憶される音響結合材情報をICタグリーダ220に読み取らせるようにしてもよい。
【0051】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、超音波プローブにより送信され、前記超音波プローブの音響放射面に密着された音響結合材を通過した超音波が反射し、前記音響結合材を通過した反射波の波形を検出する検出部と、前記検出部により検出された波形に基づいて、前記超音波プローブの性能を検査する検査部と、を持つことにより、簡素な装置で超音波プローブの性能を精度よく検査することができる。
【0052】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1~4…検査システム
5…超音波診断システム
10…超音波プローブ
12…振動子
14…レンズ
16…音響放射面
20…音響結合材
30…音響結合材装置
32…反射板
34…支持部材
40…音響結合材ユニット
100…検査装置
110、310…送受信回路
120、320…処理回路
121、321…検出機能
122、322…検査機能
123、323…表示制御機能
124、324…取得機能
130、330…メモリ
131…プロトコル
200…ディスプレイ装置
210…ICタグ
220…ICタグリーダ
300…超音波診断装置
325…診断機能
330…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9