(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ベルト搬送装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20240902BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G03G21/16 180
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020155906
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 崇夫
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165263(JP,A)
【文献】特開2006-317594(JP,A)
【文献】特開2019-211541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、テンションローラを含む複数の張架ローラと、
前記テンションローラの回転軸線方向の端部において前記テンションローラを回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材を前記テンションローラの回転軸線方向と交差する方向に移動可能に支持する軸受支持部材と、
前記軸受部材と前記軸受支持部材との間に設けられ、前記テンションローラを付勢して前記ベルトに張力を付与する付勢部材と、
前記軸受支持部材を支持する支持部材と、
前記軸受支持部材と前記軸受部材とに係合することで前記軸受部材をロックすることが可能なロック部材であって、前記ロック部材と前記軸受支持部材及び前記軸受部材のうち一方との係合が解除されて、前記軸受部材が前記付勢部材により移動して前記ベルトに張力を付与することを許す第1位置と、前記ロック部材が前記軸受支持部材と前記軸受部材とに係合することで前記軸受部材をロックして、前記軸受部材が前記付勢部材により移動することを規制する第2位置と、に移動可能なロック部材と、
を有し、
前記軸受部材、前記軸受支持部材、前記付勢部材及び前記ロック部材は、前記ロック部材が前記第2位置に配置された状態で一体的に前記支持部材から取り外し可能であることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
前記支持部材を揺動可能に保持する保持部材を更に有し、
前記軸受部材は、前記ベルトの搬送時に前記ベルトと摺擦することが可能な摺擦部を有し、前記軸受部材に支持された前記テンションローラにより前記ベルトを幅方向に移動させることが可能なステアリング機構を構成し、
前記テンションローラは、前記摺擦部と前記ベルトとの間に作用する摩擦力により揺動させられる前記支持部材により揺動させられることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
前記摺擦部は、前記テンションローラの回転軸線方向に関して前記テンションローラの中央部側から端部側に向かう方向の下流側にいくほど大きい外径を有するテーパー状の面を備えることを特徴とする請求項2に記載のベルト搬送装置。
【請求項4】
前記軸受支持部材は、前記テンションローラの回転軸線方向に沿って移動させられて前記支持部材に取り付けられるように構成され、
前記軸受部材は、前記テンションローラの回転軸線方向に沿って移動させられて前記テンションローラに取り付けられるように構成され、
前記ロック部材が前記第1位置に配置されて前記複数の張架ローラに前記ベルトが張架された状態で前記軸受支持部材が前記テンションローラの回転軸線方向に沿う方向に移動することを規制すると共に、前記ロック部材が前記第2位置に配置された状態で前記軸受支持部材が前記テンションローラの回転軸線方向に沿う方向に移動することを許す規制手段を有することを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項5】
前記規制手段は、
前記支持部材に設けられ、前記軸受支持部材が前記支持部材に取り付けられる際の前記軸受支持部材の移動方向の下流側ほど、前記付勢部材の前記軸受支持部材に対する付勢方向の下流側に位置するように前記テンションローラの回転軸線方向に対して傾斜した傾斜部と、
前記軸受支持部材に設けられ、前記ロック部材が前記第1位置に配置されて前記複数の張架ローラに前記ベルトが張架された状態で、前記軸受支持部材が前記付勢部材により付勢されることで前記傾斜部と係合する規制係合部と、
を有することを特徴とする請求項4に記載のベルト搬送装置。
【請求項6】
前記軸受部材は、前記ベルトの搬送時に前記ベルトと摺擦することが可能な摺擦部を有し、
前記摺擦部は、前記テンションローラの回転軸線方向に関して前記テンションローラの中央部側から端部側に向かう方向の下流側にいくほど大きい外径を有するテーパー状の面を備え、
前記傾斜部の前記テンションローラの回転軸線方向に対する傾斜角は、前記テーパー状の面の前記テンションローラの回転軸線方向に対するテーパー角よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のベルト搬送装置。
【請求項7】
前記ロック部材は、前記軸受支持部材に移動可能に取り付けられ、前記第1位置で前記軸受部材のロックを解除し、前記第2位置で前記軸受部材をロックすることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項8】
前記軸受支持部材は、軸部を有し、
前記ロック部材は、穴部を有し、
前記ロック部材は、前記穴部に前記軸部が回動可能に嵌合することで、前記軸部の軸線の周りを回動可能なように前記軸受支持部材に取り付けられることを特徴とする請求項7に記載のベルト搬送装置。
【請求項9】
前記ロック部材の回動方向に関して、前記ロック部材が前記第1位置、前記第2位置及びこれらの間の位置にあるとき、前記ロック部材は、前記軸部の軸線方向に沿って前記軸受支持部材から外れる方向へ移動することが規制されることを特徴とする請求項8に記載のベルト搬送装置。
【請求項10】
前記軸部には、前記軸部の軸線方向と交差する方向に突出した突起が設けられ、
前記穴部の内面には、前記突起の通過を許す溝部が設けられ、
前記ロック部材の回動方向に関して、前記ロック部材が前記第1位置、前記第2位置及びこれらの間の位置にあるとき、前記突起と前記溝部とは異なる位相にあり、前記突起が前記ロック部材と係合して、前記ロック部材は前記軸部の軸線方向に沿って前記軸受支持部材から外れる方向へ移動することが規制され、
前記ロック部材が第3位置にあるとき、前記突起と前記溝部とは同じ位相にあり、前記ロック部材は前記軸部の軸線方向に沿って前記軸受支持部材から外れる方向へ移動することが許されることを特徴とする請求項9に記載のベルト搬送装置。
【請求項11】
前記軸部の軸線方向は、前記テンションローラの回転軸線方向と略平行であることを特徴とする請求項8に記載のベルト搬送装置。
【請求項12】
前記軸受部材、前記軸受支持部材、前記付勢部材及び前記ロック部材を備え、一体的に前記支持部材から取り外し可能なユニットは、前記テンションローラの回転軸線方向の両端部側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項13】
前記ベルトを介して前記テンションローラと対向するように当該ベルト搬送装置の所定の位置に取り外し可能に装着される別のユニットを更に有し、
前記ロック部材は、前記第1位置にあるときには前記別のユニットが前記所定の位置に装着されることを許し、前記第2位置にあるときには前記別のユニットが前記所定の位置に装着されることを妨げることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項14】
前記別のユニットは、前記ベルトをクリーニングするクリーニング装置を有することを特徴とする請求項13に記載のベルト搬送装置。
【請求項15】
前記ベルトは、像担持体から一次転写されたトナー像を記録材に二次転写するために搬送する中間転写体であることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルトとこのベルトが張架される複数の張架ローラとを有するベルト搬送装置、及びこのベルト搬送装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの電子写真方式や静電記録方式を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置では、無端状のベルトとこのベルトが張架される複数の張架ローラとを有するベルト搬送装置が用いられている。例えば、感光体上に形成したトナー像を、無端状のベルトで構成された中間転写ベルトに一次転写した後に記録用紙などの記録材に二次転写する中間転写方式の画像形成装置がある。ベルト搬送装置は、例えば、この中間転写ベルトを搬送する装置として用いられる。以下、主に、中間転写ベルトを搬送するベルト搬送装置を例として説明する。
【0003】
また、ベルト搬送装置では、張架ローラの外径の精度や、各張架ローラ間の相対的なアライメントの精度などによって、ベルトの搬送時にベルトが幅方向のいずれかの端部側に寄ってしまう「ベルト寄り」が発生することがある。このようなベルト寄りを抑制する手段として、ベルト搬送装置にステアリング機構が設けられることがある。ステアリング機構としては、センサーやアクチュエータなどの電気部品を用いて、複数の張架ローラのうちの少なくとも1つである傾動可能なステアリングローラを傾動させる構成のものがある。また、このような電気部品を必要とせずにステアリングローラを操舵するように構成された調芯機構も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中間転写ベルトは、継続して使用すると、電気抵抗値の変動、表面の劣化などによって、画像不良を生じさせる場合がある。そのため、中間転写ベルトは、所定の寿命に到達した場合には、所望の画質を維持するために新しいものに交換する必要がある。しかしながら、従来のベルト搬送装置には、次のような課題がある。
【0006】
ベルト搬送装置は、一般的に、付勢手段により付勢されたテンションローラによって中間転写ベルトに張力を付与する構成となっている。そのため、中間転写ベルトを交換する際には、テンションローラによって中間転写ベルトに付与される張力を解除(遮断)する必要がある。従来、一般的には、テンションローラの支持手段や付勢手段に関する部品を1つずつ取り外して分解することが行われている。そのため、中間転写ベルトの交換作業が煩雑であるという課題がある。また、中間転写ベルトの交換容易性を達成するなどのために、ベルト搬送装置のフレームを折り畳み可能にした構成などがある。このような構成は、大掛かりなものとなってしまい、重量が増加するなどの課題がある。
【0007】
また、テンションローラがステアリング機構における傾動可能なステアリングローラを兼ねる場合、上述のような従来の張力を解除する構成では、上記課題に加えて、構成部品の位置精度の低下などにより調芯性能に影響が出る場合があるという課題も生じ得る。
【0008】
したがって、本発明の目的は、簡易な構成でベルトを容易に着脱することが可能なベルト搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係るベルト搬送装置にて達成される。要約すれば、本発明は、無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、テンションローラを含む複数の張架ローラと、前記テンションローラの回転軸線方向の端部において前記テンションローラを回転可能に支持する軸受部材と、前記軸受部材を前記テンションローラの回転軸線方向と交差する方向に移動可能に支持する軸受支持部材と、前記軸受部材と前記軸受支持部材との間に設けられ、前記テンションローラを付勢して前記ベルトに張力を付与する付勢部材と、前記軸受支持部材を支持する支持部材と、前記軸受支持部材と前記軸受部材とに係合することで前記軸受部材をロックすることが可能なロック部材であって、前記ロック部材と前記軸受支持部材及び前記軸受部材のうち一方との係合が解除されて、前記軸受部材が前記付勢部材により移動して前記ベルトに張力を付与することを許す第1位置と、前記ロック部材が前記軸受支持部材と前記軸受部材とに係合することで前記軸受部材をロックして、前記軸受部材が前記付勢部材により移動することを規制する第2位置と、に移動可能なロック部材と、を有し、前記軸受部材、前記軸受支持部材、前記付勢部材及び前記ロック部材は、前記ロック部材が前記第2位置に配置された状態で一体的に前記支持部材から取り外し可能であることを特徴とするベルト搬送装置である。
【0010】
本発明の他の態様によると、無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、テンションローラを含む複数の張架ローラと、前記テンションローラの回転軸線方向の端部において前記テンションローラを回転可能に支持する軸受部材と、前記軸受部材を前記テンションローラの回転軸線方向と交差する方向に移動可能に支持する軸受支持部材と、前記軸受部材と前記軸受支持部材との間に設けられ、前記テンションローラを付勢して前記ベルトに張力を付与する付勢部材と、前記軸受支持部材を支持する支持部材と、前記軸受支持部材に設けられた第1係合部であって、着脱可能なロック部材と係合可能な第1係合部と、前記軸受部材に設けられた第2係合部であって、着脱可能な前記ロック部材と係合可能な第2係合部と、を有し、前記ロック部材が前記第1係合部と前記第2係合部とに係合されていないときには、前記軸受部材は前記付勢部材により移動して前記ベルトに張力を付与することを許され、前記ロック部材が前記第1係合部と前記第2係合部とに係合されたときには、前記ロック部材が前記軸受部材をロックして、前記軸受部材は前記付勢部材により移動することを規制され、前記軸受部材、前記軸受支持部材及び前記付勢部材は、前記ロック部材が前記第1係合部と前記第2係合部とに係合された状態で一体的に前記支持部材から取り外し可能であることを特徴とするベルト搬送装置が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によると、記録材にトナーで画像を形成する画像形成を行う画像形成装置において、前記画像形成に用いられる上記本発明のベルト搬送装置を有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成でベルトを容易に着脱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】中間転写ベルトを取り外した状態の中間転写ユニットの斜視図である。
【
図6】自動調芯機構の作動原理を説明するための模式図である。
【
図8】離間機構の動作を説明するための模式図である。
【
図9】中間転写ユニットの着脱時の画像形成装置の概略断面図である。
【
図10】中間転写ユニットの着脱動作を説明するための斜視図である。
【
図11】中間転写ユニットの着脱動作を説明するための断面図である。
【
図12】中間転写ベルトの交換作業を説明するための平面図である。
【
図13】位置決め板を説明するための側面図である。
【
図15】ロック解除状態の着脱ユニットを示す平面図である。
【
図16】ロック状態の着脱ユニットを示す平面図である。
【
図17】中間転写ユニットから取り外された着脱ユニットを示す平面図である。
【
図18】ロック解除忘れ防止機能を説明するための側面図である。
【
図19】ロック部材の他の例を説明するための側面図である。
【
図20】着脱ユニットの他の例を説明するための模式図である。
【
図21】着脱ユニットの他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るベルト搬送装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置200の概略断面図(後述する感光ドラム1の回転軸線方向と略直交する断面)である。本実施例の画像形成装置200は、電子写真方式を用いてフルカラー画像の形成が可能な、中間転写方式、タンデム方式を採用したレーザービームプリンタである。画像形成装置200は、原稿から読み取った画像情報や、外部機器から入力された画像情報に基づいて、記録材Sに画像を形成して出力することができる。なお、記録材Sは、普通紙やコート紙などの特殊紙といった記録用紙、封筒やインデックス紙などの特殊形状を有するもの、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、及び布などを含む。
【0016】
画像形成装置200は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する。各色用の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、各色用の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdに対応して付した符号の末尾のa、b、c、dを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Pは、後述する感光ドラム1(1a、1b、1c、1d)、帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、露光装置3(3a、3b、3c、3d)、現像装置4(4a、4b、4c、4d)、一次転写ローラ(5a、5b、5c、5d)、ドラムクリーニング装置6(6a、6b、6c、6d)などを有して構成される。
【0017】
トナー像を担持する像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、図中矢印R1方向(時計回り方向)に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナー)3によって画像情報に従って走査露光され、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されることで現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、現像装置4は、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。本実施例では、帯電ローラ2、露光装置3及び現像装置4は、感光ドラム1上にトナー像を形成するトナー像形成手段を構成する。
【0018】
なお、本実施例では、画像形成装置200の装置本体201には、補給用の現像剤を収容する現像剤容器Ta、Tb、Tc、Tdが着脱可能に装着されている。各現像剤容器Ta、Tb、Tc、Tdには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを含む補給用の現像剤が収容されている。各現像剤容器Tは、補給装置70(イエロー色用の補給装置70aのみを図示)を介して現像装置4の現像容器41に適宜現像剤を補給する。また、本実施例では、現像装置4は、現像剤として、磁性キャリア粒子(キャリア)及び非磁性トナー粒子(トナー)を含む二成分現像剤を用いる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、現像剤としては、磁性トナー粒子や非磁性トナー粒子によって構成される一成分現像剤、キャリア液中にトナー粒子を分散させた液体現像剤を用いることもできる。
【0019】
4つの感光ドラム1と対向するように、中間転写ユニット20が配置されている。中間転写ユニット20は、回転可能な中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7と、中間転写ベルト7が張架される複数の張架ローラ(支持ローラ)と、を有する。本実施例では、中間転写ユニット20は、複数の張架ローラとして、二次転写内ローラ8、ステアリングローラ17、離間ローラ19及び上流ガイドローラ18を有する。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ8、17、18、19に巻き掛けられ、外周面において各画像形成部Pの各感光ドラム1と対向している。また、中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5が配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の内周面を感光ドラム1に向けて押圧し、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)T1を形成する。中間転写ベルト7は、駆動ローラの機能を有する二次転写内ローラ8が駆動モータ(図示せず)によって図中矢印R3方向(反時計回り方向)に回転駆動されることで、図中矢印R2方向(反時計回り方向)に回転(周回移動)する。二次転写内ローラ8は、中間転写ベルト7を挟んで後述する二次転写外ローラ9と対向しており、二次転写外ローラ9と共に後述する二次転写部T2を形成される。上流ガイドローラ18は、中間転写ベルト7の回転方向に関して二次転写内ローラ8よりも上流かつ一次転写ローラ5(最下流の一次転写ローラ5d)よりも下流に配置されている。上流ガイドローラ18は、中間転写ベルト7が一定の方向から二次転写部T2に進入するように中間転写ベルト7を案内する。ステアリングローラ17は、中間転写ベルト7の回転方向に関して二次転写内ローラ8よりも下流かつ離間ローラ19よりも上流に配置されている。ステアリングローラ17は、詳しくは後述するように、中間転写ベルト7の幅方向(中間転写ベルト7の搬送方向と略直交する方向)に関する中間転写ベルト7の位置を制御するステアリング機構としての自動調芯機構17U(
図4)を構成する。離間ローラ19は、中間転写ベルト7の回転方向に関してステアリングローラ17よりも下流かつ一次転写ローラ5(最上流の一次転写ローラ5a)よりも上流に配置されている。各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19は、詳しくは後述する離間機構35(
図8)によって移動させられることで、中間転写ベルト7の張架形態を変更する。これにより、中間転写ベルト7の外周面を各感光ドラム1a~1dの一部又は全部から離間させることが可能である。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部T1において、一次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写時に、一次転写ローラ5には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。例えばフルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、重ね合わされるようにして中間転写ベルト7上に順次一次転写される。
【0020】
中間転写ベルト7の外周面側において、二次転写内ローラ8と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写外ローラ9が配置されている。二次転写外ローラ9は、二次転写内ローラ8に向けて押圧され、中間転写ベルト7を介して二次転写内ローラ8に当接し、中間転写ベルト7と二次転写外ローラ9とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写外ローラ9の作用によって、中間転写ベルト7と二次転写外ローラ9とに挟持されて搬送されている記録材S上に二次転写される。二次転写時に、二次転写外ローラ9には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。記録材Sは、記録材収容部としての給送カセット60に収容されている。給送カセット60に収容された記録材Sは、給送手段としての給送ローラ61などによって1枚ずつ給送されて、レジストレーションローラ対62に向けて搬送される。レジストレーションローラ対62は、記録材Sの斜行の補正を行うと共に、各画像形成部Pによる画像形成動作の進行に合わせて記録材Sを二次転写部T2に送り込む。
【0021】
トナー像が転写された記録材Sは、定着手段としての定着装置13へと搬送される。定着装置13は、ハロゲンヒータなどの熱源によって加熱される加熱ローラ14と、加熱ローラ14に圧接する対向ローラ15と、を有する。定着装置13は、加熱ローラ14と対向ローラ15とによって記録材Sを挟持して搬送しながら記録材Sに熱及び圧力を付与する。これにより、定着装置13は、トナーを記録材Sに溶融・固着させて、画像を記録材Sに定着させる。定着装置13を通過した記録材Sは、装置本体201の上部に設けられた排出トレイ63へと排出(出力)される。なお、両面印刷を行う場合は、反転搬送路(図示せず)を介して第1面(表面)と第2面(裏面)とが入れ換えられた状態の記録材Sが、レジストレーションローラ対62に再度搬送される。そして、二次転写部T2及び定着装置13を通過して裏面に画像が形成された記録材Sが排出トレイ63に排出される。
【0022】
一方、一次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)などの付着物は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって、感光ドラム1上から除去されて回収される。また、二次転写後に中間転写ベルト7上に残留したトナー(二次転写残トナー)などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置11によって、中間転写ベルト7上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置11は、中間転写ベルト7を介してステアリングローラ17と対向する位置に配置されている。本実施例では、ベルトクリーニング装置11は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード111と、クリーニング容器112と、を有する。クリーニングブレード11は、中間転写ベルト7を介してステアリングローラ17に向けて押圧される。ベルトクリーニング装置11は、回転している中間転写ベルト7の表面から、クリーニングブレード111によって二次転写残トナーなどの付着物を掻き取って、クリーニング容器112内に収容する。クリーニング容器112に収容されたトナーなどは、クリーニング容器112内の搬送部材(図示せず)によってクリーニング容器112から排出され、搬送経路(図示せず)を介して回収容器(図示せず)へと搬送されて回収される。本実施例では、ドラムクリーニング装置6も、上記ベルトクリーニング装置11と同様の構成とされている。
【0023】
なお、装置本体201の上面には、ユーザーインターフェースとなる操作表示部40が設けられている。操作表示部40は、現在の設定情報などを表示可能な液晶パネルなどの表示部と、ユーザーやサービス担当者などの操作者が情報を入力可能な各種ボタンなどの操作部と、を有する。操作者は、操作表示部40から、例えば、出力画像をカラー画像とモノクロ画像との間で切り換える設定などを行うことができる。また、装置本体201には、操作表示部40を介して入力される情報に基づいて画像形成装置200の動作を統括制御する中央処理装置(CPU)50が設けられている。
【0024】
また、本実施例では、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2及びドラムクリーニング装置4とは、一体的に装置本体201に対して着脱可能なドラムユニットを構成している。また、各画像形成部Pにおいて、現像装置4は、実質的に単独で装置本体201に対して着脱可能な現像ユニットを構成している。また、中間転写ベルト7、各張架ローラ8、17、18、19、各一次転写ローラ5及びベルトクリーニング装置11は、一体的に装置本体201に対して着脱可能な中間転写ユニット20を構成している。
【0025】
2.中間転写ユニット
次に、本実施例におけるベルト搬送装置としての中間転写ユニット20の構成について更に説明する。ここで、画像形成装置200及びその要素に関して、
図1の紙面手前側を「正面(前)」側、紙面奥側を「背面(後)」側とする。この正面側と背面側とを結ぶ方向は、感光ドラム1の回転軸線方向と略平行であるものとする。また、画像形成装置200及びその要素に関して、上下方向は重力方向(鉛直方向)の上下を言うものであるが、それぞれ直上、直下のみを意味するものではなく、それぞれ注目する要素又は位置を通る水平面よりも上側、下側を含む。
【0026】
図2は、中間転写ユニット20を背面側の斜め上から見た斜視図である。また、
図3は、中間転写ベルト7を取り外した状態の中間転写ユニット20を背面側の斜め上から見た斜視図である。なお、
図2及び
図3(後述する
図10、
図12、
図13も同様)では、簡単のため、ベルトクリーニング装置11の図示は省略されている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、中間転写ユニット20は、後述するガイド部材としての転写レール78F、78R(
図10)によって支持される、中間転写ユニット20の枠体(保持部材)としての転写フレーム21を有する。転写フレーム21には、中間転写ユニット20を転写レール78F、78Rへと装着するための、第1位置決め部21f、21rと、第2位置決め部21a、21bと、が設けられている。第1位置決め部21f、第2位置決め部21aはそれぞれ転写フレーム21の正面側の側部に設けられ、第1位置決め部21r、21bはそれぞれ転写フレーム21の背面側の側部に設けられている。第1位置決め部21f及び21rは、中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称に配置され、それぞれ二次転写内ローラ8と略同軸上の円弧形状の側面を有するように構成されている。第2位置決め部21a及び21bは、中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称に配置され、それぞれ略同軸上に正面側と背面側とに延びた円柱形状を有するように構成されている。中間転写ユニット20は、第1位置決め部21f、21r、第2位置決め部12a、12bの4箇所の位置決め部を介して装置本体201内へと装着されて位置決めされる。これにより、
図1に示す画像形成装置200の断面が形成される。更に、転写フレーム21の正面側の側部と、転写フレーム21の背面側の側部に取り付けられた位置決め板28とには、第3位置決め部21c、28cがそれぞれ設けられている。
図2に示すように、第3位置決め部28cは、背面側に延びた2つの円柱部28c1、28c1と、これら2つの円柱部28c1、28c1を接続する接続部(水平部)28c2と、を有する。接続部28c2は、2つの円柱部28c1、28c1を接続するように複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に延びている。
図2には、背面側の第2位置決め部28cのみ詳細に図示しているが、第3位置決め部21c、28cは、中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対象に構成されている。第3位置決め部21c、28cの機能に関しては後述する。
【0028】
二次転写内ローラ8、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19は、それぞれ転写フレーム21の正面側の側部と背面側の側部とに挟まれる形で、それぞれの回転軸線方向の両端部が上記各側部に軸受部材を介して回転可能に支持されている。ここでは、これら二次転写内ローラ8、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19の回転軸線方向を中間転写ベルト7の幅方向(中間転写ベルト7の搬送方向と略直交する方向)とする。なお、二次転写内ローラ8、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19の回転軸線方向は、各感光ドラム1a~1dの回転軸線方向と略平行である。また、詳しくは後述するように、ステアリングローラ17を含む自動調芯機構17Uは、転写フレーム21に設けられたステアリング支持部21sによって支持されている。
【0029】
駆動ローラの機能を有する二次転写内ローラ8の回転軸線方向の一端部(本実施例では背面側の端部)には、駆動伝達手段としての駆動カップリング34が取り付けられている。駆動カップリング34は、中間転写ユニット20が装置本体201に装着された状態で、装置本体201に設けられたベルト駆動ユニット(図示せず)の出力軸に連結され、ベルト駆動ユニットからの駆動力を二次転写内ローラ8に伝達する。ベルト駆動ユニットは、モータなどの駆動源と、駆動カップリング34に係合するカップリング部材と、を有する。二次転写内ローラ8は、ゴムなどの中間転写ベルト7に対する摩擦係数が比較的高い材質で構成された表面を有しており、駆動カップリング34を介して駆動力が伝達されることで中間転写ベルト7を
図2中の矢印R2方向に搬送する。なお、本実施例では、駆動伝達手段として駆動カップリング34を用いたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、駆動伝達手段として接離可能なギアを用いて、装置本体201に設けられた駆動源と中間転写ユニット20に設けられた駆動ローラとを連結してもよい。
【0030】
図4及び
図5は、本実施例における自動調芯機構17Uの構成について説明するための斜視図である。
図4は、自動調芯機構17Uの全体を背面側の斜め上から見た斜視図であり、
図5は、自動調芯機構17Uの背面側の端部の近傍の斜視図である。本実施例では、自動調芯機構17Uは、ステアリングローラ17、並びに、後述するステアリング軸受23、スライドガイド24、テンションバネ25及び揺動板26などを有して構成される。
【0031】
本実施例では、中間転写ユニット20は、ステアリング機構としての自動調芯機構17Uを有する。自動調芯機構17Uは、上述のようにして搬送される中間転写ベルト7に対し、ステアリングローラ17がその回転軸線方向の両端部の摩擦力のバランスを維持するように自動的に傾動する構成とされている。これにより、自動調芯機構17Uは、センサーやアクチュエータを必要とせずに、中間転写ベルト7の傾動を制御して、中間転写ベルト7の調芯(ステアリング)、すなわち、中間転写ベルト7の幅方向の位置を制御することが可能である。
【0032】
図4に示すように、ステアリングローラ17は、円筒状のローラ本体17aと、ステアリングローラ17の回転軸線方向に関するローラ本体17aの両端部から外側に突出するローラ軸17bと、を有する。ローラ本体17aの回転軸線方向の両端部に対向する位置には、それぞれ軸受部材としてのステアリング軸受23が配置されている。各ローラ軸17bは、それぞれ対応するステアリング軸受23に設けられた支持部(軸受部)23aに嵌挿される形でステアリング軸受23に回転可能に支持される。一対のステアリング軸受23は、ステアリングローラ17の回転軸線方向の両端部を支持した状態で、支持部材としての揺動板26に支持されている。つまり、各ステアリング軸受23は、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略平行な揺動板26の長手方向の両端部に取り付けられた軸受支持部材としてのスライドガイド24により、スライド移動可能に支持されている。ステアリング軸受23とスライドガイド24との間には、付勢手段としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成されたテンションバネ25が圧縮された状態で設けられている。一対のテンションバネ25は、揺動板26の長手方向の両端部において一対のステアリング軸受23に対してそれぞれ付勢力を付与する。揺動板26は、ステアリングローラ17を揺動(回動、傾動)させることで、二次転写内ローラ8などの他の張架ローラに対するステアリングローラ17の相対的なアライメントを変更可能な状態でステアリングローラ17を支持する、揺動部材を構成する。なお、ここでは、二次転写内ローラ8などの他の張架ローラに対するステアリングローラ17のアライメントを、単にステアリングローラ17のアライメントともいう。また、テンションバネ25は、ステアリングローラ17を中間転写ベルト7の内周面に押圧して中間転写ベルト7に張力を付与する張力付与手段を構成する。
【0033】
図4及び
図5に示すように、スライドガイド24は、ステアリング軸受23を、
図5中の矢印K1方向、すなわち、テンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(加圧方向)に沿う方向に移動するようにガイドする嵌合溝(凹部)243を有する。テンションバネ25は、嵌合溝243内において、一端部がスライドガイド24に設けられた座面に当接し、他端部がステアリング軸受23に設けられた座面に当接する。つまり、一対のスライドガイド24は、一対のステアリング軸受23を、それぞれテンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(加圧方向)に沿って案内する案内部を構成する。これにより、各テンションバネ25の付勢力を、それぞれ対応するステアリング軸受23に対して有効に伝達することができる。また、各スライドガイド24は、それぞれテンションバネ25の付勢力に抗してテンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(加圧方向)へのステアリング軸受23の移動を規制可能なロック部材22を有する。このロック部材22は、詳しくは後述する着脱ユニット23Uを構成する。そして、このロック部材22は、着脱ユニット23Uを構成する部品群において、ステアリング軸受23及びテンションバネ25がスライドガイド24から脱落するのを防止する機能を有する。また、このロック部材22は、自動調芯機構17Uが中間転写ユニット20に未装着のアセンブリ状態にあるときに、ステアリング軸受23及びステアリングローラ17が揺動板26から脱落するのを防止する機能を有する。
【0034】
図2に示すように、中間転写ベルト7が複数の張架ローラ8、17、18、19に張架された状態では、ステアリング軸受23は、テンションバネ25を圧縮する方向に移動する。したがって、この状態では、テンションバネ25の弾発力によってステアリングローラ17が中間転写ベルト7の内周面に押し付けられ、中間転写ベルト7に張力が発生する。このように、本実施例では、ステアリングローラ17は、テンションバネ25からの付勢力によって中間転写ベルト7に適度な張力を付与するテンションローラ(張力付与ローラ)を兼ねている。
【0035】
図4に示すように、揺動板26には、その長手方向の中央部に、支持軸としての回動軸部材27が、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿って転写フレーム21側に突出した状態で固定されている。また、揺動板26は、その長手方向の両端部に、それぞれスライドガイド24が取り付けられている。
図3及び
図5に示すように、回動軸部材27は、転写フレーム21に設けられたステアリング支持部21sに回動可能な状態で嵌合される。これにより、揺動板26は、転写フレーム21によって揺動可能(回動可能、傾動可能)に支持される。
図4に示すように、揺動板26は、ステアリングローラ17を支持した状態で、回動軸部材27の軸線であるステアリング軸線Jを中心とする揺動方向Roに揺動可能である。これにより、揺動板26の長手方向の端部は、
図5中の矢印ST1方向に沿って図中上下方向に移動可能である。このように、ステアリングローラ17のアライメントを変化させるためのアライメント変化手段としての自動調芯機構17Uは、ステアリングローラ17と共に転写フレーム21に対して揺動可能なユニットとして構成される。
【0036】
3.自動調芯機構の詳細構成及び作用
次に、
図5及び
図6を参照して、本実施例における自動調芯機構17Uのより詳細な構成及び作用について説明する。
図6(a)、(b)は、いずれも
図2及び
図3中の矢印TV方向、すなわち、二次転写内ローラ8とステアリングローラ17とで形成される中間転写ベルト7の面に略垂直な方向から見た、自動調芯機構17Uの模式的な平面図(上視図)である。なお、本実施例では、この中間転写ベルト7の面と、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面と、は略平行であり、またこれらの面は画像形成装置200内で略水平に配置される。
図6(a)は、自動調芯機構17Uの作用によって、中間転写ベルト7の幅方向の両端部側に作用する力が釣り合った定常状態、すなわち、中間転写ベルト7の掛かり位置が称呼の位置にある状態を示す。
図6(b)は、中間転写ベルト7が図中矢印R2方向に搬送されているときに、図中左側にベルト寄りが生じた状態を示している。
【0037】
図5に示すように、ステアリングローラ17のローラ軸17bを軸支するステアリング軸受23は、中間転写ベルト7の内周面と摺擦(摺接)することでステアリングトルクを発生させるための摺擦部(摩擦部)としての摺擦面231を有する。ただし、ステアリングトルクとは、ベルト寄りを低減可能な方向に向かってステアリングローラ17のアライメントを変化させようとする力のモーメントを指す。前述のように、ステアリング軸受23は、スライドガイド24によって、
図5中の矢印K1方向に沿ってスライド移動するように移動方向を制限されている。そのため、ステアリング軸受23は、中間転写ベルト7の搬送時に、中間転写ベルト7に対して従動せずに中間転写ベルト7の内周面と摺擦可能である。
【0038】
摺擦面231は、ステアリングローラ17の回転軸線方向の外側に向かうにつれて外径が次第に大きくなるテーパー状に形成されており、円筒状であるステアリングローラ17の外径よりも大きな最大径を有している。
図6(b)に示すように、本実施例では、ステアリングローラ17の外径は16mm(φ16)に設定されている。ステアリング軸受23の摺擦面231は、ステアリングローラ17との隣接部(接合部)ではステアリングローラ17の外径と同じ外径16mm(φ16)の円周状の外周部を有する。そして、ステアリング軸受23の摺擦面231は、この外周部からテーパー角ψ=10°の割合で外側に向かって徐々に大径化する曲面形状を有している。なお、このテーパー角ψは、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略直交する方向に見たときに、該ステアリングローラ17の回転軸線方向とステアリング軸受23の摺擦面231とがなす角度である。
【0039】
また、本実施例では、中間転写ベルト7の幅方向の寸法は、テーパー角ψを有する摺擦面231の領域にまで中間転写ベルト7の一部が跨るように設定されている。言い換えると、中間転写ベルト7の幅方向の寸法は、次のように設定されている。つまり、中間転写ベルト7の幅を「Lb」とする。また、ステアリングローラ17の回転軸線方向に関するローラ本体17aの長さを「Lr」とする。また、ステアリングローラ17の回転軸線方向に関する各ステアリング軸受23の摺擦面231の長さを「Lf」とする。ステアリングローラ17の回転軸線方向に関する各ステアリング軸受23、23の外側の端部間の幅は、「Lr+2Lf」で表される。このとき、幅Lbは、長さLrよりも長く、かつ、幅Lr+2Lfよりも短く設定されている(Lr<Lb<L+2Lf)。
【0040】
図6を参照して、中間転写ベルト7がステアリング軸受23の摺擦面231と摺擦することで自動調芯が可能になる作動原理について説明する。上述のように、ステアリング軸受23は、中間転写ベルト7に対して従動しないように支持されているため、中間転写ベルト7の搬送中には中間転写ベルト7の内周面と摺擦可能である。このとき、中間転写ベルト7とステアリング軸受23との摩擦力は、中間転写ベルト7がステアリング軸受23に巻き付いた領域で生じる。つまり、この摩擦力は、
図5中の矢印Gで示すように、中間転写ユニット20を背面側からステアリングローラ17の回転軸線方向に沿って見たとき、中間転写ベルト7が下方に向かうステアリング軸受23の右側の領域で生じる。そのため、ステアリング軸受23には、下向きの摩擦力が作用する。
【0041】
上述のように、中間転写ベルト7の幅方向の寸法(Lb)は、ステアリング軸受23のテーパー状の摺擦面231に中間転写ベルト7が跨るように設定されている。したがって、
図6(a)に示す定常状態(称呼の状態)では、次のようになる。つまり、中間転写ベルト7は、両側のステアリング軸受23の摺擦面231と、同等の掛かり幅(例えば2mm)で摺擦する。この状態では、中間転写ベルト7から両側のステアリング軸受23に作用する摩擦力により発生するモーメントは、互いに打ち消し合う。すなわち、中間転写ベルト7から各ステアリング軸受23が受ける摩擦力は、ステアリング軸受23及び揺動板26に対して、ステアリング軸線Jを中心とする互いに逆方向のモーメントとして作用する。このため、
図6(a)に示す定常状態では、各ステアリング軸受23が受ける摩擦力が概ね等しく、モーメントが互いに打ち消し合って、揺動板26の姿勢が維持される。これにより、ステアリングローラ17は、二次転写内ローラ8などの他の張架ローラと、回転軸線方向が略平行となる姿勢(アライメントが揃った状態)に保持される。
【0042】
これに対し、
図6(b)に示すように、中間転写ベルト7が幅方向のいずれか一方に偏る、所謂、「ベルト寄り」が発生した状態では、次のようになる。つまり、一方のステアリング軸受23に対する中間転写ベルト7の掛かり幅が、他方のステアリング軸受23に対する中間転写ベルト7の掛かり幅よりも大きくなる。図示の例では、図中左側のステアリング軸受23に対する中間転写ベルト7の掛かり幅がD[mm]であり、図中右側のステアリング軸受23に対する中間転写ベルト7の掛かり幅が0[mm]である。すなわち、図中右側のステアリング軸受23の摺擦面231から中間転写ベルト7が離脱した状態である。この場合、中間転写ベルト7からステアリング軸受23の摺擦面231の一定の掛かり幅の範囲が受ける上述の下向きの摩擦力をF(ST)とすると、一方のステアリング軸受23が受ける力の大きさはF(ST)*Dとなる。これに対し、他方のステアリング軸受23については中間転写ベルト7の掛かり幅が0[mm]であることから、当該ステアリング軸受23は実質的に中間転写ベルト7からの力を受けていない。したがって、
図6(b)の状態では、ステアリングローラ17の左側の端部を下方(
図6の紙面奥側)へ移動させるようなステアリングトルクが発生する。
【0043】
以上の原理によって生じるステアリングローラ17の舵角、すなわち、ステアリングトルクに従って揺動した状態のステアリングローラ17の傾斜角度は、ベルト寄りを元に戻す方向に合致する。そのため、中間転写ベルト7の搬送に伴ってベルト寄りが低減される。このように、自動調芯機構17Uは、中間転写ベルト7を搬送する駆動力の一部をステアリングトルクへと変換することで、中間転写ベルト7の幅方向の位置を制御する自動調芯効果を発揮する。
【0044】
なお、本実施例では、自動調芯機構17Uは、ステアリング軸受23の摺擦面231にテーパー角ψを設け、ステアリング軸受23の中間転写ベルト7に対する摩擦係数μSを比較的低く設定し、急激なステアリング動作を抑制するように構成されている。具体的には、本実施例では、ステアリング軸受23の材質として摺擦性(低摩擦性)を有するPOM(ポリアセタール)などの樹脂材料を使用している。また、ステアリング軸受23(摺擦面231)の中間転写ベルト7に対する摩擦係数(動摩擦係数)μSを0.3程度としている。また、本実施例では、ステアリング軸受23の摺擦面231のテーパー角ψを5~10°程度に設定している。これにより、急激なステアリング動作を抑制して、良好な自動調芯効果を得ることができる。また、本実施例では、中間転写ベルト7との摩擦帯電による静電的な弊害を考慮して、ステアリング軸受23には導電性も付与している。ただし、必要とするステアリングトルクが得られれば、ステアリング軸受23はテーパー角ψや摺擦性が本実施例とは異なっていてもよい。例えば、ステアリング軸受23の摺擦面231を円筒状(ψ=0°)としてもよい。
【0045】
4.中間転写ベルトの離間機構
次に、
図7及び
図8を参照して、本実施例における中間転写ベルト7を感光ドラム1a~1dから離間可能とするための移動機構としての離間機構35について説明する。
図7は、離間機構35を構成する後述する離間スライダ30を正面側から見た模式的な側面図である。
図8は、離間機構35による離間動作を説明するための離間機構35を正面側から見た模式的な側面図である。
図8(a)は、カラーモード(以下、「CLモード」ともいう。)、
図8(b)は、モノクロモード(以下、「BKモード」ともいう。)、
図8(c)は、全離間モードの状態を示している。本実施例では、離間機構35は、後述する離間スライダ30、離間カム31及び離間カム軸32などを有して構成される。
【0046】
前述のように、中間転写ベルト7の内周面側には、4つの感光ドラム1a~1dのそれぞれに対応して4つの一次転写ローラ5a~5dが配置されている。本実施例では、これらの一次転写ローラ5a~5dと、中間転写ベルト7の回転方向に関してこれらの一次転写ローラ5a~5dよりも上流に位置する離間ローラ19とは、転写フレーム21に対して相対移動可能である。本実施例では、各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19は、
図8中の上下方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に対して近付く方向及び離れる方向に沿ってスライド移動可能とされている。
【0047】
一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19の移動は、
図7に示す移動部材としての離間スライダ30のスライド動作によって行われる。離間スライダ30は、中間転写ユニット20の転写フレーム21(
図2及び
図3参照)の正面側の側部と背面側の側部とに隣接して、それぞれ転写フレーム21の内部に収容されている。転写フレーム21の正面側と背面側とにそれぞれ配置される離間スライダ30は、同様(中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称)の形状を有している。離間スライダ30は、4つの一次転写ローラ5a~5dのそれぞれに対応する4つのカム面30a、30b、30c、30d、及び離間ローラ19に対応する1つのカム面30eを有する。離間スライダ30は、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に沿ってスライド移動可能に転写フレーム21に保持されている。転写フレーム21の正面側と背面側とにそれぞれ配置される離間スライダ30は、同期して上記移動方向にスライド移動するように構成されている。
【0048】
離間スライダ30の各カム面30a~30eは、それぞれ離間スライダ30のスライド移動方向に対して傾斜した傾斜面301と、離間スライダ30のスライド移動方向と略平行な平坦部302と、を有する。各カム面30a~30eは、後述するモードの切り換えにおける各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19の動作を達成できるように形成されている。例えば、離間ローラ19に対応するカム面30eは、離間ローラ19の図中下方の位置に対応する傾斜面301と、離間ローラ19の図中上方の位置に対応する平坦部302と、を有する。
【0049】
図8(a)、(b)、(c)に示すように、各一次転写ローラ5a~5dは、それぞれの回転軸線方向の両端部が、対応する一次転写軸受29a~29dによって回転可能に支持されている。各一次転写軸受29a~29dは、各一次転写ローラ5a~5dの回転軸線方向の両端部側において、転写フレーム21に保持されている。各一次転写軸受29a~29dは、図中上下方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に対して近付く方向及び離れる方向に沿って移動可能に嵌合された状態で、転写フレーム21に保持されている。また、各一次転写軸受29a~29dは、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向への移動を規制されている。各一次転写軸受29a~29dには、それぞれ離間スライダ30の各カム面30a~30dに当接する当接部29a1~29d1が設けられている。また、各一次転写軸受29a~29dと転写フレーム21との間には、付勢手段としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成された一次転写バネSPa~SPdが設けられている。一次転写バネSPa~SPdは、それぞれ各一次転写軸受29a~29dをカム面30a~30dに押圧するように図中下方へ向けて付勢する。離間スライダ30がスライド移動すると、各当接部29a1~29d1が各カム面30a~30dに当接した状態で、各一次転写軸受29a~29dが図中上下方向に沿って移動することにより、各一次転写ローラ5a~5dが図中上下方向に沿って移動する。
【0050】
図8(a)、(b)、(c)に示すように、離間ローラ19も、各一次転写ローラ5a~5dと同様にして移動可能とされている。つまり、離間ローラ19は、回転軸線方向の両端部が、離間ローラ軸受29eによって回転可能に支持されている。離間ローラ軸受29eは、離間ローラ19の回転軸線方向の両端部側において、転写フレーム21に保持されている。離間ローラ軸受29eは、図中上下方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に対して近付く方向及び離れる方向に沿って移動可能に嵌合された状態で、転写フレーム21に保持されている。離間ローラ軸受29eは、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向への移動を規制されている。離間ローラ軸受29eには、離間スライダ30のカム面30eに当接する当接部29e1が設けられている。また、離間ローラ軸受29eと転写フレーム21との間には、付勢手段としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成された離間ローラバネSPeが設けられている。離間ローラバネSPeは、離間ローラ軸受29eをカム面30eに押圧するように図中下方へ向けて付勢する。離間スライダ30がスライド移動すると、当接部e1がカム面30eに当接した状態で、離間ローラ軸受29eが図中上下方向に沿って移動することにより、離間ローラ19が図中上下方向に沿って移動する。
【0051】
離間スライダ30は、離間カム軸32に取り付けられた離間カム31と係合するスライド付勢面30f(
図7)を有する。離間スライダ30は、離間カム31によってスライド付勢面30fが押圧されることで、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に付勢される。離間カム軸32は、転写フレーム21の正面側の側部と背面側の側部との間に挟まれる形で、その回転軸線方向の両端部が軸受部材を介して上記各側部に回転可能に支持されている。また、離間カム軸32の回転軸線方向の両端部に、それぞれ離間カム31が固定されている。離間カム軸32の回転軸線方向の一端部(本実施例では背面側の端部)には、中間転写ユニット20が装置本体201に装着された状態で、装置本体201に設けられた駆動源に連結される、離間カップリング33(
図2)が取り付けられている。離間スライダ30は、一次転写軸受29a~29d及び離間ローラ軸受29eの移動方向と交差する方向に移動可能である。
【0052】
本実施例では、このように離間スライダ30及び離間カム31を備えた離間機構35により各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19の移動が行われ、
図8(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すモードの切り換えが行われる。なお、このモードの切り換えは、画像形成装置200に設けられたCPU50(
図1)からの制御信号に基づき、離間カム軸32の回転位相が制御されることで達成される。また、ここではCLモード、BKモード、全離間モードの順に切り換わる場合の動作を例に説明するが、動作を逆にたどることで任意のモード間で切り換え可能である。
【0053】
図8(a)に示すCLモードでは、各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19がいずれも図中下方の位置に保持され、中間転写ベルト7は各感光ドラム1a~1dに当接する。この状態では、各感光ドラム1a~1dにトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト7を介して記録材Sに転写することで、フルカラー画像を記録材Sに形成することができる。
【0054】
図8(a)に示すCLモードから、
図8(b)に示すBKモードに切り換わる場合、離間カム31が図中矢印R4方向(時計回り方向)に90度回転し、離間スライダ30が図中右方向(
図8(b)中の矢印K2方向)にスライド移動する。BKモードでは、イエロー、マゼンタ、シアンの各色用の一次転写ローラ5a、5b、5cが図中上方の位置へ移動して中間転写ベルト7の内周面から離間すると共に、離間ローラ19も図中上方の位置へと移動する。このとき、中間転写ベルト7は、図中上方の位置の離間ローラ19と図中下方の位置に保持されたままのブラック色用の一次転写ローラ5dとに張架された状態となり、ブラック色用の感光ドラム1d以外の感光ドラム1a、1b、1cから離間する。この状態では、ブラック色用の感光ドラム1dにトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト7を介して記録材Sに転写することで、ブラック単色画像を記録材Sに形成することができる。
【0055】
図8(b)に示すBKモードから、
図8(c)に示す全離間モードに切り換わる場合、離間カム31が図中矢印R4方向(時計回り方向)に更に90度回転し、離間スライダ30が更に図中右方向(
図8(c)中の矢印K2方向)にスライド移動する。全離間モードでは、全ての一次転写ローラ5a~5dが図中上方の位置へ移動して中間転写ベルト7の内周面から離間すると共に、離間ローラ19は図中上方の位置に留まる。このとき、中間転写ベルト7は、図中上方の位置の離間ローラ19と上流ガイドローラ18(
図1)とに張架された状態となり、全ての感光ドラム1a~1dから離間する。中間転写ユニット20は、後述の中間転写ベルト7の交換作業が行われる場合の他、例えば、画像形成装置200が画像形成動作(印刷ジョブ)の開始を指令する信号の待機中である場合に、全離間モードとされる。
【0056】
5.中間転写ユニットの着脱及び位置決め構成
次に、中間転写ベルト7の交換などの際に装置本体201に対して中間転写ユニット20を着脱するための構成について説明する。
【0057】
図9は、中間転写ユニット20を装置本体201に対して着脱する際の様子を示す本実施例の画像形成装置200の概略断面図である。中間転写ユニット20は、離間機構35により全離間モードに保持された状態で装置本体201に対して着脱可能である。本実施例では、装置本体201の正面側から見て右側の側部に設けられた右扉RDを操作者(交換作業者)が開くことで、中間転写ユニット20が露出する。そして、操作者が中間転写ユニット20を図中左右方向、すなわち、
図9中の矢印K3で示す複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に移動させることで、中間転写ユニット20を装置本体201に対して着脱することができる。なお、
図9中前後方向に中間転写ユニット20を移動させて装置本体201に対して着脱するように構成することも可能である。ただし、その場合、画像形成部Pa~Pdに対する中間転写ユニット20の位置決め精度が低下しやすいという観点や、中間転写ユニット20を覆うような筐体が必要であり構成が複雑化しやすいという観点などから、本実施例では上述の着脱方向としている。
【0058】
図10及び
図11を参照して、中間転写ユニット20の装置本体201に対する着脱動作について更に説明する。
図10(a)、(b)、(c)は、中間転写ユニット20の装置本体201に対する着脱動作の過程を示す斜視図である。
図10(a)、(b)、(c)中の上方が装置本体201の背面側、下方が装置本体201の正面側である。
図10(a)は、中間転写ユニット20が装置本体201に対して装着された状態(以下、「装着状態」ともいう。)を示している。
図10(b)は、中間転写ユニット20が装置本体201へ装着される途中の状態(以下、「途中状態」ともいう。)を示している。また、
図10(c)は、中間転写ユニット20が、装置本体201から引き出されて、装置本体201から取り外し可能な状態(以下、「引出状態」ともいう。)を示している。
図11(a)、(b)、(c)は、中間転写ユニット20の装置本体201に対する着脱動作の過程を示す断面図であり、装置本体201の背面側の断面を示している。ここで、
図11(a)、(b)、(c)は、それぞれ
図10(a)、(b)、(c)と対応する中間転写ユニット20の状態を示している。
【0059】
装置本体201の正面側の内面及び背面側の内面に、それぞれガイド部材としての転写レール78F、78Rが配置されている。正面側の転写レール78Fと背面側の転写レール78Rとは、一部の形状の差異を除いて、中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称の形状とされている。上記一部の形状は、
図11に示す、伝達駆動孔78d及び離間駆動孔78sである。伝達駆動孔78dは、装置本体201に設けられた駆動源から中間転写ユニット20に設けられた駆動カップリング34へと駆動伝達するための孔(開口部)である。また、離間駆動孔78sは、装置本体201に設けられた駆動源から中間転写ユニット20に設けられた離間カップリング33へと駆動伝達するための孔(開口部)である。伝達駆動孔78d及び離間駆動孔78sからは、それぞれ駆動連結するための連結部材が突出する(図示せず)。上述のように、正面側及び背面側の転写レール78F、78Rは、上記一部の形状の差異以外は略対称の形状であるため、背面側の転写レール78Rの構成を例として説明する。
【0060】
転写レール78Rには、中間転写ユニット20を着脱するためのガイド部が設けられている。第1ガイド部781は、転写フレーム21に設けられた前述の第1位置決め部21rが移動可能に嵌合するように構成されている。また、第2ガイド部782は、転写フレーム21に設けられた前述の第2位置決め部21bが移動可能に嵌合するように構成されている。また、第3ガイド部783は、前述の第3位置決め部28cが移動可能に係合するように構成されている。なお、前述のように、背面側の第3位置決め部28cは、転写フレーム21の背面側の側部に取り付けられた位置決め板28に設けられており、正面側の第3位置決め部21cは転写フレーム21の正面側の側部に設けられている。
【0061】
装置本体201からの中間転写ユニット20の取り外し手順について説明する。装着状態(
図10(a)、
図11(a))では、第1位置決め部21rが第1ガイド部781と嵌合し、かつ、第2位置決め部21bが第2ガイド部782と嵌合する。これにより、中間転写ユニット20は、画像形成部Pa~Pdに対して位置決めされ、前述のCLモード又はBKモードで画像形成が可能である。
【0062】
中間転写ユニット20が全離間モードとされた状態で、操作者が転写フレーム21に設けられたフレーム保持部21hと把手部材Hとを保持しながら、中間転写ユニット20を図中矢印K3方向に沿って図中右方向に移動させる。これにより、途中状態(
図10(b)、
図11(b))となる。フレーム保持部21hと把手部材Hとは、それぞれ転写フレーム21の正面側の側部と背面側の側部の図中右側の端部に設けられている。途中状態では、第1位置決め部21rが第1ガイド部781と移動可能に嵌合し、第3位置決め部28cが第3ガイド部783と移動可能に係合する。前述のように、第3位置決め部28cは、2つの円柱部28c1、28c1と、これら2つの円柱部28c1、28c1を接続する接続部(水平部)28c2と、を有する。
【0063】
途中状態よりも僅かに中間転写ユニット20を引き出すと、第1位置決め部21rが第1ガイド部781から抜ける(嵌合関係が解除される)。このとき、操作者がフレーム保持部21hと把手部材Hとを手離した場合、中間転写ユニット20の自重によって第3位置決め部28cには図中時計回りにモーメントが生じる。言い換えると、フレーム保持部21h及び把手部材H側が下方に降下しようとする。しかし、第3位置決め部28cと第3ガイド部783とが移動可能に係合していることにより、中間転写ユニット20は転写レール78F、78Rに保持される。中間転写ユニット20に対する転写レール78F、78Rの保持(落下防止)は、引出状態(
図10(c)、
図11(c))まで続く。このとき、第2位置決め部21bは第4ガイド部784を通過するが、本実施例では第2位置決め部21bと第4ガイド部784とは物理的に接触しないように構成されている。中間転写ユニット20は、引出状態まで移動させた後に、装置本体201から取り外し可能となる。
【0064】
なお、中間転写ユニット20の装置本体201に対する装着手順は、上述の取り外し手順とは逆の手順となる。
【0065】
6.中間転写ベルトの着脱
次に、中間転写ベルト7の交換などの際に中間転写ユニット20に対して中間転写ベルト7を着脱するための構成について説明する。
【0066】
6-1.中間転写ベルトの交換作業の概略
まず、中間転写ベルト7の交換作業(着脱作業)の概略について説明する。
図12は、
図2及び
図3中の矢印TV方向から見た中間転写ユニット20の分解平面図である。
図13は、位置決め板28の近傍を背面側から見た中間転写ユニット20の概略側面図である。
図13(a)は、位置決め板28を中間転写ユニット20の使用時の位置に配置した状態、
図13(b)は、位置決め板28を中間転写ベルト7の着脱時の位置に配置した状態を示している。
【0067】
本実施例では、中間転写ユニット20において、把手部材H、着脱ユニット23U、ステアリングローラ17は、転写フレーム21などに対して着脱可能とされており、位置決め板28は転写フレーム21に対して移動可能に取り付けられている。詳しくは後述するように、着脱ユニット23Uは、スライドガイド24、ステアリング軸受23、テンションバネ25及びロック部材22を含む。中間転写ユニット20に対して中間転写ベルト7を着脱する際には、中間転写ユニット20を装置本体201から取り外した後、把手部材H、着脱ユニット23U及びステアリングローラ17を取り外し、位置決め板28を移動させる。この作業は、装置本体201から取り外した中間転写ユニット20を、例えば
図12の紙面手前側の中間転写ベルト7の面側を上にして該面が略水平となるように作業台GLなどの上に載置して行うと好適である。なお、
図12中の作業台GLの仮想線(一点鎖線)は、後述するように中間転写ベルト7を着脱する際に、転写フレーム21の正面側の側部を下にして中間転写ユニット20を作業台GLの上に立てた状態を示すものである。
【0068】
装置本体201から取り外した中間転写ユニット20を、上述のように例えば作業台GLの上に載置したら、把手部材Hを転写フレーム21から取り外す。把手部材Hは、ビスなどの締結具、スナップフィット係合などの適宜の固定手段により、取り外し可能に転写フレーム21に固定されている。操作者は、該固定手段に応じた手順で把手部材Hを取り外すことができる。また、着脱ユニット23Uを、揺動板26及びステアリングローラ17から取り外す。着脱ユニット23Uの構成については後述して詳しく説明する。着脱ユニット23Uを取り外すと、ステアリングローラ17を取り外せるようになる。そして、ステアリングローラ17を、中間転写ベルト7の内周面側から抜き取るようにして取り外す。また、位置決め板28を移動させる。位置決め板28を移動させると、中間転写ベルト7を取り外せるようになる。
【0069】
なお、詳しくは後述するように、着脱ユニット23Uが取り外される際に、着脱ユニット23Uの機能によって、テンションバネ25により中間転写ベルト7に付与される張力が解除(遮断)される。また、後述するように、中間転写ベルト7を着脱する際に、ステアリングローラ17の回転軸線方向の両端部側の着脱ユニット23Uのうち、一方(本実施例では背面側)の着脱ユニット23Uのみを取り外すようにしてもよい。また、例えば一方の着脱ユニット23Uを取り外し、ステアリングローラ17を取り外さずに、中間転写ベルト7を取り外すようにしてもよい。
【0070】
ここで、
図13を参照して、位置決め板28の構成について更に説明する。
図13(a)は、装置本体201から取り外された後に位置決め板28が移動させられていない状態(前述の「引出状態」も含む。)の中間転写ユニット20の位置決め板28の近傍を示している。また、
図13(b)は、位置決め板28が移動させられて中間転写ベルト7が交換可能な状態で待機している中間転写ユニット20の位置決め板28の近傍を示している。
【0071】
図13(a)、(b)に示すように、本実施例では、位置決め板28は、回動軸線28xを中心として、図中手前側(背面側)へ約90°回動可能に、転写フレーム21に取り付けられている。本実施例では、位置決め板28は、転写フレーム21の背面側の側部に設けられた回動支持軸21dに、位置決め板28の図中下方の端部に設けられたヒンジ部28aが回動可能に嵌合され、図中上方を下方に向けて回動させるように構成されている。なお、本実施例では、位置決め板28には、
図13(a)の状態で、転写フレーム21の背面側の側部に設けられた第2位置決め部21bを位置決め板28の外側に露出させるための開口部である、第2位置決め孔28bが設けられている。ここで、
図13(a)、(b)に示すように、中間転写ベルト7が複数の張架ローラに張架された状態(本実施例では、前述の「全離間モード」の状態)の中間転写ユニット20を中間転写ベルト7の幅方向(張架ローラの回転軸線方向)に沿って見たときに、中間転写ベルト7の外周面で囲まれた領域を「ベルト領域(ベルト投影面)A7」とする。
【0072】
図13(a)の状態では、位置決め板28及び位置決め板28に設けられた第3位置決め部28cの一部は、ベルト領域A7の内側と外側とに跨るように位置する(第1状態)。この場合、
図12中の矢印K4方向、すなわち、中間転写ベルト7の幅方向(張架ローラの回転軸線方向)に沿って中間転写ベルト7を移動させようとしても、移動軌跡で中間転写ベルト7と位置決め板28とが干渉する。そのため、中間転写ベルト7の取り外しは不可能である。そのため、本実施例では、位置決め板28は、上述のように移動可能(回動可能)とされている。
図13(a)の状態から、位置決め板28を回転軸28xを中心として図中手前側へ約90°回動させることによって、
図13(b)の状態となる。
図13(b)の状態では、位置決め板28及び位置決め板28に設けられた第3位置決め部28cの全部がベルト領域A7の内側に位置する(第2状態)。これにより、
図12中の矢印K4方向に沿って中間転写ベルト7を移動させることが可能となる。なお、位置決め板28が閉じられると、位置決め板28の内側に設けられた係合突起281、282が、それぞれ転写フレーム21に設けられた係合穴211、212と嵌合することで、閉じた状態(第1状態)で保持される。
【0073】
上述のようにして把手部材H、着脱ユニット23U及びステアリングローラ17を取り外し、位置決め板28を移動させた後、
図12に示すように、転写フレーム21の正面側の側部を作業台GLに接地させて、中間転写ユニット20を作業台GLの上に立てる。つまり、転写フレーム21に設けられたフレーム保持部21hが下方に位置するようにして、中間転写ユニット20を作業台GLの上に載置する。そして、中間転写ベルト7を、図中矢印K4方向に沿って図中上方に移動させて、転写フレーム21の周囲から取り外す。なお、中間転写ユニット20は、自立する構成としてもよいし、例えば操作者が片手で転写フレーム21を保持しながら、他方の片手で中間転写ベルト7を着脱する構成としてもよい。
【0074】
その後、例えば新品の中間転写ベルト7を、図中矢印K4方向に沿って図中下方に移動させて、転写フレーム21の周囲に装着する。その後は、上述の取り外し手順とは逆の手順で、中間転写ユニット20を組み立てることができる。また、その後、前述のようにして、中間転写ユニット20を装置本体201に装着することができる。
【0075】
6-2.着脱ユニット
次に、本実施例における着脱機構としての着脱ユニット23Uについて説明する。
図14は、
図4及び
図5に示した本実施例における自動調芯機構17Uを、背面側からステアリングローラ17の回転軸線方向に沿って見た側面図である。
図14(a)は、
図4及び
図5と同じ状態を示している。つまり、
図14(a)は、テンションバネ25の付勢力によって中間転写ベルト7に張力が付与されている状態(第1状態、ロック解除状態)を示している。一方、
図14(b)は、詳しくは後述するように、着脱ユニット23Uの機能によって、テンションバネ25により中間転写ベルト7に付与される張力が解除(遮断)された状態(第2状態、ロック状態)を示している。また、
図15、
図16及び
図17は、
図4及び
図5に示した本実施例における自動調芯機構17Uの背面側の端部の近傍を、
図2及び
図3中の矢印TV方向から見た平面図(上視図)である。
図15は、
図14(a)と同じ状態を示している。また、
図16は、
図14(b)と同じ状態を示している。また、
図17は、着脱ユニット23Uが揺動板26及びステアリングローラ17から取り外された状態を示している。なお、
図14~
図17には、ステアリングローラ17の回転軸線方向(中間転写ベルト7の幅方向)の一方の端部側(背面側)の着脱ユニット23Uの構成を示している。ここでは、この一方の端部側を例として説明するが、本実施例では他方の端部側の着脱ユニット23Uの構成も同様(中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称)であり実質的に同一の機能を有する。
図14~
図16において、中間転写ベルト7の図示は省略されている。
【0076】
図14(a)、(b)に示すように(
図4及び
図5も参照)、揺動板26は、その長手方向(ステアリングローラ17の回転軸線方向と略平行な方向)と略直交する断面が、ステアリングローラ17側に開口した略コの字形状を有する。着脱ユニット23Uは、スライドガイド24が揺動板26の長手方向の端部の上記断面略コの字形状の内側に、該揺動板26の長手方向に沿って外側から内側にスライド移動させられるようにして嵌合させられて、揺動板26に取り付けられている(
図17参照)。また、スライドガイド24が上述のように揺動板26に取り付けられる際に、ステアリング軸受23の支持部23aにステアリングローラ17のローラ軸17bが挿通されることで、ステアリングローラ17はステアリング軸受23によって支持されるようになる。
【0077】
図14(a)に示すように、着脱ユニット23Uは、ステアリング軸受23、スライドガイド24、テンションバネ25、及びロック部材22を有して構成される。ステアリング軸受23、スライドガイド24及びテンションバネ25は、それぞれ前述の構成及び機能を有しており、ステアリング軸受23とスライドガイド24との間にテンションバネ25が圧縮された状態で配置されている。スライドガイド24は、図中上下方向、すなわち、テンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(図中矢印K6方向)と交差(本実施例では略直交)する方向への移動は、揺動板26と嵌合することで規制されている。そして、
図14(a)の状態(第1状態、ロック解除状態)で、スライドガイド24は、図中矢印K5方向、すなわち、テンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(図中矢印K6方向)とは逆方向に移動して揺動板26と接触(当接)する。つまり、テンションバネ25の図中の矢印K5方向の付勢力は、スライドガイド24を介して揺動板26が受ける。また、図中矢印K6方向の付勢力は、ステアリングローラ17を介して中間転写ベルト7が受け、中間転写ベルト7の張力となる。
【0078】
そして、
図14(a)に示すように、スライドガイド24には、ロック部材22が取り付けられている。本実施例では、スライドガイド24には、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略平行に外側に向けて延びた、ロック部材支持部としての円柱状の軸部241が設けられている。この軸部241に、ロック部材22に設けられた支持受け部としての穴部221が嵌挿される。これによって、ロック部材22は、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略平行な回動軸線を中心として回動可能に、スライド部材24に取り付けられる。また、ロック部材22には、係合部としてのフック部222が設けられている。このフック部222は、ステアリング軸受23に設けられた、ステアリングローラ17の回転軸線方向の外側に向けて延びた被係合部としての突起部232に係合可能に構成されている。
【0079】
図14(b)に示すように、ロック部材22が図中矢印R5方向(時計回り方向)に回動して、フック部222が突起部232に係合する。この状態で、ステアリング軸受23はスライドガイド24の嵌合溝243に嵌合したままであり、テンションバネ25は該嵌合溝243内においてスライドガイド24とステアリング軸受23との間に配置されたままである。
図14(b)の状態(第2状態、ロック状態)では、テンションバネ25の図中矢印K5方向の付勢力は、スライドガイド24とロック部材22とが受ける。また、図中矢印K6方向の付勢力は、ステアリング軸受23とロック部材22とが受ける。結果として、テンションバネ25の付勢力は着脱ユニット23Uの内部で閉じ、テンションバネ25により揺動板26と中間転写ベルト7とに付与される付勢力が解除(遮断)される。ロック部材22は、テンションバネ25により中間転写ベルト7に付与される張力を解除する張力解除手段を構成する。なお、本実施例では、ロック部材22は、
図14(a)の状態からテンションバネ25を圧縮するようにステアリング軸受23を図中矢印K5方向に若干移動させた状態で突起部232と係合して、
図14(b)の状態となる。ロック部材22を突起部232に係合させる動作によって、テンションバネ25を圧縮するようにステアリング軸受23を図中矢印K5方向に若干移動させるようにしてもよい。
【0080】
ロック部材22の移動方向(回動方向)における、フック部22の突起部232との係合が解除されて、着脱ユニット23U(中間転写ユニット20)が
図14(a)のロック解除状態(第1状態)となる位置を、ロック解除位置(第1位置)とする。また、ロック部材22の移動方向(回動方向)における、フック部22が突起部232と係合して、着脱ユニット23U(中間転写ユニット20)が
図14(b)のロック状態(第2状態)となる位置を、ロック位置(第2位置)とする。このように、ロック部材222を
図14(a)のロック解除位置(第1位置)から
図14(b)のロック位置(第2位置)に移動(回動)させることで、テンションバネ25により中間転写ベルト7に付与される張力が解除(遮断)される。これにより、詳しくは後述するように、着脱ユニット23Uをステアリングローラ17の回転軸線方向に沿って外側に移動させて、揺動板26及びステアリングローラ17から容易に取り外すことができる。このとき、スライドガイド24は、揺動板26の長手方向に沿って外側に向けてスライド移動させられる。また、このとき、ステアリング軸受23は、支持部23aがステアリングローラ17のローラ軸17bから引き抜かれるようにステアリングローラ17の回転軸線方向に沿って外側に向けてスライド移動させられる。そして、スライドガイド24、ステアリング軸受23、テンションバネ25及びロック部材22を含む着脱ユニット23Uの全体が一体的に揺動板26及びステアリングローラ17から取り外される(
図17参照)。着脱ユニット23Uは、中間転写ユニット20から取り外された状態でも、ロック部材22がテンションバネ25の付勢力に抗してステアリング軸受23をスライドガイド24に保持した状態を維持する。着脱ユニット23Uを取り外すと、ステリングローラ17をその回転軸線方向に沿って移動させることで、中間転写ベルト7の内側から引き抜くようにして容易に取り外すことができるようになる。また、前述のように位置決め板28を移動させたうえで、中間転写ベルト7をその幅方向に移動させて転写フレーム21の周囲から引き抜くようにして容易に取り外すことができるようになる。
【0081】
図15~
図17を参照して、着脱ユニット23Uの着脱及び位置決めについて更に説明する。上述のように、
図15は、
図14(a)と同じ状態(第1状態、ロック解除状態)を示している。また、
図16は、
図14(b)と同じ状態(第2状態、ロック状態)を示している。また、
図17は、着脱ユニット23Uが揺動板26及びステアリングローラ17から取り外された状態を示している。
【0082】
スライドガイド24には、
図15~
図17に示される側面であるスライドガイド上面244に、
図15~
図17の紙面手前側に向けて突出するように規制受け部としての円柱状の規制突起部
(規制係合部)242が設けられている。また、揺動板26には、上記スライドガイド上面244に対向する側部である揺動板上側部262に、揺動板26の長手方向の端部から内側に直線状に延びるように切り欠かれて形成された、規制溝部263が設けられている。後述するように、規制溝部263の、揺動板26の長手方向と略直交する方向(図中矢印K5方向に沿う方向)に関してステアリングローラ17とは反対側の側部は、規制突起部242と係合する規制部としての規制斜面
(傾斜部)261を構成する。スライドガイド24は、揺動板26の長手方向の端部の規制溝部263の開口部から、規制突起部242を揺動板26の長手方向の外側から内側へと規制溝部263を通して移動させるようにして、揺動板26に取り付けられる。また、スライドガイド24は、上記とは逆方向に移動させられて、揺動板26から取り外される。後述するように、本実施例では、規制溝部263の伸長方向は、揺動板26の長手方向に対して傾斜している(傾斜角β)。本実施例では、規制部としての規制斜面261と、規制受け部としての規制突起部242とで、スライドガイド24(着脱ユニット23U)のステアリングローラ17の回転軸線方向に沿う方向の移動を規制可能な規制手段80が構成される。
【0083】
ここで、揺動板26の長手方向と略直交する方向(図中矢印K5方向に沿う方向)に関する、規制溝部263の側部のステアリングローラ17に対し最も遠い位置と最も近い位置との間の幅を幅W26とする。このとき、幅W26は、スライドガイド24を揺動板26の長手方向に沿って移動させて揺動板26に対して着脱できるように、規制突起部242に対して所定のクリアランスを有するように設定されている。規制溝部263の揺動板26の長手方向に関する長さL26については後述する。
【0084】
図15の状態では、規制突起部242は、規制溝部263の規制斜面261と接触する。本実施例では、ステアリング軸受23の摺擦面231にテーパー角ψが設けられている。本実施例では、摺擦面231は、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略直交する方向に見たとき、該回転軸線方向の内側から外側に行くほど、テンションバネ25のステアリング軸受23に対する付勢方向の下流側に位置するように直線状に傾斜している。そのため、
図15の状態で中間転写ベルト7が張架されていると、ステアリング軸受23の摺擦面231にはテンションバネ25からの付勢力の分力が、図中矢印K7方向へ働く。図中矢印K7方向は、揺動板26の長手方向(ステアリングローラ17の回転軸線方向)に沿って該揺動板26の外側に向かう方向である。また、スライドガイド24は、ステアリング軸受23と係合してこれをスライド移動可能にガイドするように構成されているため、結果としてスライドガイド24にもテンションバネ25からの付勢力の分力(ここでは「離脱力」ともいう。)が、図中矢印K7方向へ働く。
【0085】
一方、本実施例では、規制斜面261にも傾斜角βが設けてられている。なお、この傾斜角βは、揺動板26の長手方向(ステアリングローラ17の回転軸線方向)と略直交する方向に見たときに、該揺動板26の長手方向(ステアリングローラ17の回転軸線方向)と規制斜面261とがなす角度である。本実施例では、規制斜面261は、揺動板26の長手方向と略直交する方向に見たとき、該長手方向の外側から内側に行くほど、テンションバネ25のスライドガイド24に対する付勢方向の下流側に位置するように直線状に傾斜している。そのため、
図15の状態で、スライドガイド24が図中矢印K5方向に揺動板26と接触していない場合、規制突起部242には図中矢印K8方向へ、テンションバネ25からの付勢力の分力(ここでは「阻止力」ともいう。)が働く。図中矢印K8方向は、揺動板26の長手方向に沿って該揺動板26の内側に向かう方向である。つまり、本実施例では、
図15の状態で中間転写ベルト7が張架されていると、規制突起部242は、規制溝部263の伸長方向に関して傾斜面261の両端部間の所定位置(傾斜途中)に位置するように構成されている。言い換えれば、規制溝部263の揺動板26の長手方向に関する長さL26は、
図15の状態で中間転写ベルト7が張架されているときに、規制突起部242が規制斜面261の上記傾斜途中の所定位置に位置決めされるように設定されている。これにより、着脱ユニット23U(スライドガイド24、ステアリング軸受23など)の揺動板26及びステアリングローラ17に対する位置精度が向上する。
【0086】
なお、上記離脱力と上記阻止力とは、テンションバネ25の付勢力、ステアリング軸受23のテーパー角ψと揺動板26の傾斜角β、構成する部材の摩擦係数などで決定される。ただし、基本的に、傾斜角β>テーパー角ψを満たす(すなわち、傾斜角βの方がテーパー角ψよりも大きい)構成とすることで、スライドガイド24の図中矢印K7及び矢印K8方向への移動を規制することが可能となる。ステアリング軸受23にテーパー状の面が設けられていない場合(ψ=0°)でも、規制斜面261に傾斜角βを設けることで、中間転写ベルト7に張力が付与された状態で着脱ユニット23Uの揺動軸26の長手方向外側に向かう移動を規制することができる。なお、これに限定されるものではないが、傾斜角βは、45°以下で十分であることが多く、典型的には30°以下とされる。本実施例では、テーパー角ψが10°であるのに対して、傾斜角βは15°である。
【0087】
図16の状態では、前述の通り、テンションバネ25の付勢力は着脱ユニット23Uの内部で閉じているため、スライドガイド24が揺動板26を付勢することも無い。つまり、上記阻止力が働かず、結果として着脱ユニット23Uは図中矢印K7及び矢印K8方向へ移動させて、揺動板26及びステアリングローラ17に対して着脱することが可能となる。
【0088】
図17に示すように、着脱ユニット23Uは、図中矢印K7及び矢印K8方向へ移動させて、揺動板26及びステアリングローラ17に対して着脱自在である。中間転写ベルト7を着脱する際には、着脱ユニット23Uのロック部材22をロック位置(第2位置)に配置し、着脱ユニット23Uを取り外した後に、ステアリングローラ17を取り外し、中間転写ベルト7を取り外す。そして、ステアリングローラ17を取り付け、中間転写ベルト7を取り付けた後に、着脱ユニット23Uを取り付けて、着脱ユニット23Uのロック部材22をロック解除位置(第1位置)に配置する。
【0089】
ここまで、着脱ユニット23Uの着脱に関して、揺動板26の長手方向の一方の端部側の構成を例に説明した。前述のように、本実施例では、揺動板26の長手方向の両端部側の着脱ユニット23Uは、同一部材を略対称に配置することによって、実質的に同一の機能を持たせている。ただし、中間転写ベルト7を着脱する際に、ステアリングローラ17の回転軸線方向の両端部側の着脱ユニット23Uのうち、一方(本実施例では背面側)の着脱ユニット23Uのみを取り外すようにしてもよい。また、例えば一方の着脱ユニット23Uを取り外し、ステアリングローラ17を取り外さずに、中間転写ベルト7を取り外すようにしてもよい。さらに、一方(例えば背面側)の軸受構成だけを、本実施例と同様の着脱ユニット23Uを備えた構成とすることも企図し得る。その場合、他方の軸受構成は容易には着脱できないようになっていてよい。
【0090】
6-3.ロック解除忘れ防止
次に、
図18を参照して、本実施例におけるロック部材22のロック解除防止構成について説明する。
図18は、中間転写ユニット20の着脱ユニット23Uの近傍を背面側から見た側面図である。
図18(a)は、ロック部材22がロック解除位置(第1位置)に配置された状態(上述の第1状態、かつ、装置本体201に対する設置状態)を示している。また、
図18(b)は、ロック部材22がロック位置(第2位置)に配置された状態(上述の第2状態、かつ、装置本体201に対する設置状態)を示している。
【0091】
上述のように、着脱ユニット23Uを構成するロック部材22は、中間転写ベルト7に対する付勢力(張力)を遮断(解除)する機能を有する。しかし、仮に、この付勢力を解除したまま中間転写ユニット20を動作させてしまうと、例えば中間転写ベルト7に適切に駆動が伝達されずに中間転写ベルト7の適切な搬送ができなくなるなどの不具合が生じる。そのため、本実施例では、中間転写ユニット20(着脱ユニット23U)には、ロック部材22のロック解除忘れを防止する機能が設けられている。
【0092】
簡単のため、以上では詳しい説明は省略したが、本実施例では、中間転写ユニット20は、転写フレーム21にベルトクリーニング装置11が装着された状態で装置本体201に対して着脱される。前述のように、ベルトクリーニング装置11は、中間転写ベルト7を介してステアリングローラ17と対向する位置に装着される。中間転写ベルト7の交換などの際に中間転写ベルト7を転写フレーム21から取り外す際には、前述のように着脱ユニット23Uを取り外す前に、ベルトクリーニング装置11を取り外す。また、例えば新品の中間転写ベルト7を装着し、前述のように着脱ユニット23Uを取り付けた後で、ベルトクリーニング装置11を装着する。ベルトクリーニング装置11は、ステアリングローラ11の揺動に伴って一体的に揺動するように、ステアリングローラ17に対して位置決めされて、転写ユニット20に固定される。
【0093】
図18(a)に示すように、本実施例では、ベルトクリーニング装置11のクリーニング容器112には、ベルトクリーニング装置11をステアリングローラ17に対して位置決めするための被位置決め部としての位置決め溝113が形成されている。また、本実施例では、着脱ユニット23Uを構成するステアリング軸受23の支持部23aの外周面が、位置決め部としての位置決め面233を構成する。ベルトクリーニング装置11は、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略直交する方向(図中矢印K9方向)に沿って移動させて、位置決め溝113を位置決め面233に嵌合させることで、ステアリングローラ17に対して位置決めされる。なお、
図18(a)、(b)には、ステアリングローラ17の回転軸線方向の一方の端部側の構成のみが示されているが、他方の端部側の構成も同様(中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称)である。
【0094】
図18(a)に示すように、ロック部材22がロック解除位置(第1位置)に配置された状態では、位置決め溝113と位置決め面233とが適切に嵌合して、ベルトクリーニング装置11はステアリングローラ17に対して適切に位置決めされる。つまり、ロック部材22は、ロック解除位置(第1位置)にあるときには、ベルトクリーニング装置11の通常の使用時における所定の位置への装着を許す。したがって、ベルトクリーニング装置11は、通常は、ロック部材22がロック解除位置(第1位置)に配置され、着脱ユニット23U(中間転写ユニット20)がロック解除状態(第1状態)とされてから、中間転写ユニット20に装着される。
【0095】
一方、
図18(b)に示すように、ロック部材22がロック位置(第2位置)に配置された状態では、ロック部材22に設けられた当接部223が、ベルトクリーニング装置11のクリーニング容器112に設けられた被当接部114に当接する。これにより、ロック部材22が、図中矢印K9方向に沿ったベルトクリーニング装置11の移動に干渉する。これにより、
図18(b)の状態では、
図18(a)の状態と比較して、隙間L11の分だけベルトクリーニング装置11を中間転写ユニット20に適切に装着できないように構成されている。つまり、ロック部材22は、ロック位置(第2位置)にあるときには、ベルトクリーニング装置11の通常の使用時における所定の位置への装着を妨げる。そして、本実施例では、
図18(b)の状態で中間転写ユニット20を装置本体201に装着すると、隙間L11の分だけ中間転写ユニット20が前述の右扉RD側(装着方向の手前側)に突出し、右扉RDが閉まらないように構成されている。これにより、ロック部材22のロック解除忘れの防止が図られている。
【0096】
7.効果
以上説明したように、本実施例では、ベルト搬送装置20は、無端状のベルト7と、ベルト7が張架される複数の張架ローラであって、テンションローラ17(本実施例ではステアリングローラを兼ねる。)を含む複数の張架ローラと、テンションローラ17の回転軸線方向の端部においてテンションローラ17を回転可能に支持する軸受部材23と、軸受部材23を移動可能に支持する軸受支持部材24と、軸受部材23と軸受支持部材24との間に配置されテンションローラ17を付勢してベルト7に張力を付与する付勢部材25と、軸受支持部材24を支持する支持部材26と、軸受支持部材24と軸受部材23とに係合可能なロック部材22であって、軸受支持部材24及び軸受部材23のうち一方との係合が解除され付勢部材25によりベルト7に張力が付与されることを許す第1位置(ロック解除位置)と、軸受支持部材24と軸受部材23とに係合して付勢部材25によりベルト7に付与される張力を解除する第2位置(ロック位置)と、に移動可能なロック部材22と、を有する。そして、軸受部材23、軸受支持部材24、付勢部材25及びロック部材22は、ロック部材22が第2位置に配置された状態で一体的に支持部材26及びテンションローラ17に対して着脱可能なユニット23Uを構成する。本実施例では、ベルト搬送装置20は、支持部材26を揺動可能に保持する保持部材21を有し、軸受部材23は、ベルト7の搬送時にベルト7と摺擦することが可能な摺擦部231を有し、支持部材26を揺動させることで軸受部材23に支持されたテンションローラ17を揺動させてベルト7を幅方向に移動させることが可能なステアリング機構17Uを構成する。本実施例では、摺擦部231は、テンションローラ17の回転軸線方向に関してテンションローラ17の中央部側から端部側に向かう方向の下流側ほど外径が大きくなるように形成されたテーパー状の面を有する。
【0097】
また、本実施例では、軸受支持部材24は、テンションローラ17の回転軸線方向に沿って移動させられて支持部材26に取り付けられるように構成され、軸受部材23は、テンションローラ17の回転軸線方向に沿って移動させられてテンションローラ17に取り付けられるように構成される。そして、本実施例では、ベルト搬送装置20は、ロック部材22が第1位置に配置されて複数の張架ローラにベルト7が張架された状態で軸受支持部材24のテンションローラ17の回転軸線方向に沿う方向の移動を規制すると共に、ロック部材22が第2位置に配置された状態で軸受支持部材24のテンションローラ17の回転軸線方向に沿う方向の移動を許す規制手段80を有する。本実施例では、規制手段80は、支持部材26に設けられ、軸受支持部材24が支持部材26に取り付けられる際の軸受支持部材24の移動方向の下流側ほど、付勢部材25の軸受支持部材24に対する付勢方向の下流側に位置するようにテンションローラ17の回転軸線方向に対して傾斜した規制部261と、軸受支持部材24に設けられ、ロック部材22が第1位置に配置されて複数の張架ローラにベルト7が張架された状態で、軸受支持部材24が付勢部材25により付勢されることで規制部261と係合する規制受け部242と、を有する。本実施例では、規制部261のテンションローラ17の回転軸線方向に対する傾斜角βは、摺擦部231のテーパー状の面のテンションローラ17の回転軸線方向に対するテーパー角ψよりも大きい。
【0098】
また、本実施例では、ロック部材22は、軸受支持部材24に移動可能に取り付けられ、第1位置に配置されたときには軸受部材23との係合が解除され、第2位置に配置されたときには軸受部材23と係合する。本実施例では、軸受支持部材24は、軸部241を有し、ロック部材22は、穴部221を有し、ロック部材22は、穴部221が軸部241と回動可能に嵌合することで、軸部241の軸線の周りを回動可能なように軸受支持部材24に取り付けられる。本実施例では、軸部241の軸線方向は、テンションローラ17の回転軸線方向と略平行である。ただし、本発明は斯かる構成に限定されるものではなく、ロック部材22は、軸受部材23に移動可能に取り付けられ、第1位置に配置されたときには軸受支持部材24との係合が解除され、第2位置に配置されたときには軸受支持部材24と係合するように構成されてもよい。また、ロック部材23の回動方向は、テンションローラ17の回転軸線と略平行な軸線の周りを回動する方向に限定されるものではなく、例えばテンションローラ17の回転軸線と交差(例えば略直交)する方向に沿う軸線の周りを回動するようにしてもよい。また、本実施例では、ユニット23Uは、テンションローラ17の回転軸線方向の両端部側に設けられている。
【0099】
また、本実施例では、ベルト搬送装置20は、ベルト7を介してテンションローラ17と対向するように当該ベルト搬送装置20の所定の位置に着脱可能に装着されて用いられる別のユニット11を有し、ロック部材22は、第1位置にあるときには該別のユニット11の上記所定の位置への装着を許し、第2位置にあるときには該別のユニット11の上記所定の位置への装着を妨げる。本実施例では、該別のユニット11は、ベルト7をクリーニングするクリーニング装置である。
【0100】
そして、本実施例によれば、実質的に着脱ユニット23Uのロック部材22を移動(回動)させるだけで、テンションバネ25により中間転写ベルト7に付与される張力を解除(遮断)することができる。そして、スライドガイド24、テンションバネ25、ロック部材22及びステアリング軸受23を含む着脱ユニット23Uの全体を一体的に揺動板26及びステアリングローラ17に対して着脱できる。そのため、本実施例によれば、簡易な構成で中間転写ベルト7を容易に着脱することが可能となる。中間転写ベルト7の着脱容易性(交換容易性)の向上を図ることは、例えば中間転写ベルト7の交換作業中などにおける中間転写ベルト7などの不用意な破損を防止することにもつながる。
【0101】
特に、張架ローラの回転軸線方向の端部に、該張架ローラの外径よりも大きい最大外径を有するなどしてベルトの着脱の妨げになり得る部品がある場合、ベルトを着脱する際には該部品を着脱することが望まれる。本発明に従う着脱ユニット23Uは、そのような張架ローラを支持する軸受部、更には該部品を有するものとして構成する場合、ベルトの着脱容易性に関して特に顕著な効果を発揮する。本実施例では、着脱ユニット23Uは、そのような張架ローラとしての、テンションローラを兼ねるステアリングローラ17を支持するステアリング軸受23(支持部23aと摺擦面231とを備えている。)を有するものとして構成されている。
【0102】
また、本実施例では、自動調芯機構17Uを構成するステアリング軸受23を含む着脱ユニット23Uは、その全体を一体的に着脱できるようになっている。したがって、本実施例では、ステアリング軸受23及びその支持手段や付勢手段に関する部品を、1つずつ取り外して分解したり、1つずつ組み立てて固定したりする必要はない。そのため、本実施例によれば、中間転写ベルト7の交換作業が容易になるだけではなく、構成部品の位置精度の低下などにより調芯性能に影響が出ることを抑制することができる。
【0103】
また、本実施例では、着脱ユニット23Uは、テンションバネ25により中間転写ベルト7に張力が付与された状態で、前述の離脱力と阻止力とによって、揺動板26の長手方向に関する位置が決められるようになっている。そのため、本実施例では、自動調芯機構17Uを構成するステアリング軸受23を含む着脱ユニット23Uの位置精度が向上し、中間転写ベルト7の交換作業が調芯性能に影響を与えることなどを抑制することができる。
【0104】
このように、本実施例によれば、汎用性の高い簡易な構成で中間転写ベルト7の交換が可能になると共に、調芯性能の確保、不用意な破損の防止などを図ることが可能となる。
【0105】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する(後述する実施例3、4も同様である。)。
【0106】
本実施例では、スライドガイド24及びロック部材22に設けられた、スライドガイド24からのロック部材22の脱落を防止するための構成について説明する。
図19は、本実施例における着脱ユニット23Uのロック部材22の近傍を示す側面図である。
図19(a)は、スライドガイド24に取り付けられたロック部材22が
図14(a)と同様のロック解除位置(第1位置)に配置された状態を示している。また、
図19(b)は、スライドガイド24に取り付けられたロック部材22が
図14(b)と同様のロック位置(第2位置)に配置された状態を示している。また、
図19(c)は、ロック部材22が、ロック部材22をスライドガイド24に対して着脱する際の着脱位置(第3位置)に配置された状態を示している。
【0107】
本実施例では、
図19(a)~(c)に示すように、スライドガイド24のロック部材支持部としての円柱状の軸部241に、抜け止め突起241pが設けられている。この抜け止め突起241pは、軸部241の先端近傍における周方向の一部に、該軸部241の半径方向、すなわち、該軸部241の軸線方向と交差(本実施例では略直交)する方向に突出して設けられている。また、本実施例では、
図19(a)~(c)に示すように、ロック部材22の支持受け部としての穴部221の内面の一部に、ロック部材22をスライドガイド24に取り付ける際に抜け止め突起241pが通過可能な切り欠き溝部221pが形成されている。
【0108】
ロック部材22のスライドガイド24への取り付け時には、
図19(c)に示すように、ロック部材22の回動方向に関して、ロック部材22を、抜け止め突起241pが切り欠き溝部221pを通過可能な着脱位置(第3位置)に配置する。そして、ロック部材22を、軸部241の軸線方向に沿って外側から内側に向けて移動させることで、スライドガイド24に取り付ける。その後、ロック部材22を、図中矢印R6方向、すなわち、ロック部材22のロック解除位置(第1位置)からロック位置(第2位置)に向かう方向への回動方向(図中矢印K5方向)とは逆方向に回動させる。これにより、ロック部材22の回動方向に関して、切り欠き溝部221pは、抜け止め突起241pを通過可能な位置から外れる。また、抜け止め突起241pが、切り欠き溝部221p以外の穴部221の縁に係合することが可能となる。そして、抜け止め突起241pがロック部材22と係合することで、ロック部材22がスライドガイド24から脱落することが防止される。
図19(a)、(b)のように、ロック部材22の回動方向に関して、ロック部材22がロック解除位置(第1位置)、ロック位置(第2位置)及びこれらの間の位置にあるとき、抜け止め突起241pと切り欠き溝部221pとは異なる位置(位相)にある。これにより、抜け止め突起241pは、ロック部材22と係合してロック部材22が軸部241の軸線方向に沿ってスライドガイド24から外れる方向へ移動することを規制することが可能である。
【0109】
また、本実施例では、
図19(a)~(c)に示すように、スライドガイド24には、軸部241に隣接して、ロック部材22の回動を規制する回り止め部245が設けられている。また、本実施例では、
図19(a)~(c)に示すように、ロック部材22には、穴部221に隣接して、弾性変形可能な回り止め受け部224が設けられている。ロック部材22を、
図19(c)の着脱位置(第3位置)から
図19(b)のロック位置(第2位置)の近傍まで図中矢印K6方向に回動させる際に、回り止め受け部224が弾性変形しながら回り止め部245と係合する。この係合は、ロック部材22が
図19(a)のロック解除位置(第1位置)に配置された状態でも維持される。回り止め部245と回り止め受け部224との係合は、操作者がロック部材22を回動させることで、回り止め受け部224が弾性変形することで容易に解除することができる。ただし、この係合は、ロック部材22の自重では解除されないようになっている。そのため、ロック部材22を回り止め部245と回り止め受け部224とを係合させるように回動させた後は、切り欠き溝部221pが抜け止め突起241pと合致する着脱位置(第3位置)までロック部材22が不用意に回動することが防止される。また、本実施例では、この回り止め部245と回り止め受け部224との係合は、ロック部材22をロック解除位置(第1位置)で保持する機能も有する。これにより、中間転写ユニット20の使用時にロック部材22が不用意に回動することが防止される。
【0110】
[実施例3]
本実施例では、実施例1(又は実施例2)におけるロック部材22に対応する部材が、着脱ユニット23Uの着脱時にのみ着脱ユニット23Uに取り付けられる構成について説明する。
図20は、本実施例における着脱ユニット23Uを説明するための模式図である。
【0111】
実施例1(実施例2も同様)では、ロック部材22はスライドガイド24と共に一体的に着脱ユニット23Uを構成していた。これにより、実質的にロック部材22を移動(回動)させるだけで、着脱ユニット23Uが着脱可能となり、中間転写ベルト7の着脱容易性が著しく向上するため好ましい。ただし、実施例1におけるロック部材22に対応する部材を、着脱ユニット23U(中間転写ユニット20)をロック状態(第2状態)とするときにのみ取り付けるように構成することもできる。
【0112】
つまり、例えば
図20に示すように、スライドガイド24に、実施例1における軸部241に対応する第1係合部としての第1突起部246を設ける。また、ステアリング軸受23に、第2係合部としての実施例1における突起部232と同様の第2突起部232を設ける。そして、実施例1においてロック部材22を回動させて突起部232に係合させたのに代えて、ロック具
(ロック部材)301を第1突起部246と第2突起部232とに係合させて、テンションバネ25による中間転写ベルト7に対する付勢力(張力)を遮断(解除)する。なお、ロック具301は、実施例1(又は実施例2)におけるロック部材22と同様の構成(形状)のものとしてもよい。
【0113】
このように、本実施例では、ベルト搬送装置20は、軸受支持部材24に設けられた第1係合部246と、軸受部材23に設けられた第2係合部232と、を有する。第1係合部246及び第2係合部232は、第1係合部246と第2係合部232とに着脱可能に係合可能なロック具301が第1係合部246と第2係合部232とに係合されていないときには、付勢部材25によりベルト7に張力が付与されることを許し、第1係合部246と第2係合部232とにロック具301が係合されたときには、付勢部材25によりベルト7に付与される張力を解除するように構成される。そして、軸受部材23、軸受支持部材24及び付勢部材25は、第1係合部246と第2係合部232とにロック具301が係合された状態で一体的に支持部材26及びテンションローラ17に対して着脱可能なユニット23Uを構成する。
【0114】
これによっても、操作者はロック具301を持参する必要があるなどの制約があるが、実施例1で説明したのと対応する効果を相応に得ることができる。
【0115】
[実施例4]
本実施例では、着脱ユニット23Uが適用される中間転写ユニット20の他の例について説明する。
図21は、着脱ユニット23Uを適用する中間転写ユニット20の他の例を説明するための模式図である。
【0116】
前述のように、張架ローラの回転軸線方向の端部に、該張架ローラの外径よりも大きい最大外径を有するなどしてベルトの着脱の妨げになり得る部品がある場合、本発明に従う着脱ユニット23Uを適用することによる効果が特に顕著となる。
【0117】
実施例1では、着脱ユニット23Uは、ステアリング機構を構成するステアリングローラを兼ねるテンションローラの軸受部材を含み、この軸受部材にはステアリング機構を構成する摺擦部が設けられていた。そして、この摺擦部は、テンションローラの回転軸線方向の端部に、テンションローラの外径よりも大きい外径を有する部分を有するものであった。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。
【0118】
例えば、上述のように張架ローラの回転軸線方向の端部に設けられ、中間転写ベルト7の着脱の妨げとなり得る部品は、実施例1におけるステアリングローラの軸受部材に限定されるものではない。例えば、中間転写ベルト7の幅方向への移動(蛇行)を抑制するために、
図21(a)に示すような構成とされることが考えられる。つまり、テンションローラ17の軸受部材23と一体で又は軸受部材23とは別部材として該軸受部材23に隣接して、中間転写ベルト7の幅方向の端部に当接して中間転写ベルト7の幅方向の移動を規制するベルト規制部302が設けられる。ベルト規制部302は、軸受部材23に対して相対的に回転可能に設けられていてよい。このベルト規制部302の最大外径はテンションローラ17の外径よりも大きくなり得る。あるいは、
図21(b)に示すような構成とされることが考えられる。つまり、中間転写ベルト7の幅方向の端部において、中間転写ベルト7の裏面に、中間転写ベルト7の周方向に沿って延びるリブ303が設けられる。そして、テンションローラ17の軸受部材23と一体で又は軸受部材23とは別部材として該軸受け部材23に隣接して、リブ303と係合して中間転写ベルト7の幅方向の移動を規制するベルト規制部304が設けられる。ベルト規制部304は、軸受部材23に対して相対的に回転可能に設けられていてよい。このベルト規制部304は、その最大外径はテンションローラ17の外径よりも大きくなくてよいが、中間転写ベルト7のリブ303と干渉するため、中間転写ベルト7の着脱時には着脱することが望まれる。
【0119】
このような場合に、着脱ユニット23Uを、少なくとも軸受部材23と、軸受部材23を支持する軸受支持部材24と、軸受部材23と軸受支持部材24との間に配置されたテンションバネ25と、ロック部材22と、を有する構成とすることができる。これにより、実施例1の場合と同様に、中間転写ベルト7の着脱容易性を向上させることができる。なお、上述のようにベルト規制部302、304が軸受部材23とは別部材とされている場合も、上記着脱ユニット23Uの構成を適用することで、中間転写ベルト7の着脱容易性は相応に向上する。その軸受部材23とは別部材とされているベルト規制部302、304も軸受部材23などと一体的に着脱ユニット23Uとして着脱できるようにしてもよい。
【0120】
なお、実施例2、3の構成を本実施例の構成と組み合わせてもよい。
【0121】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0122】
上述の実施例では、ベルト搬送装置は、中間転写ベルトを搬送するものであったが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、感光体などの像担持体上に形成されたトナー像が転写される記録材を担持して搬送する記録材担持体として、無端状のベルトで構成された記録材担持ベルトを有する、直接転写方式の画像形成装置が当業者には周知である。この記録材担持ベルトを搬送するベルト搬送装置にも本発明を適用することができる。その他、像担持体としての感光体ベルトや静電記録誘電体ベルト、あるいは記録材を加熱する定着装置などの画像加熱装置が備えた加熱回転体や加圧回転体としてのベルトなどを搬送するベルト搬送装置に本発明を適用してもよい。つまり、ベルトは、トナー像を直接又は記録材を介して担持して搬送する像搬送体であってよい。典型的には、ベルトは、像担持体から一次転写されたトナー像を記録材に二次転写するために搬送する中間転写体である。
【符号の説明】
【0123】
5 一次転写ローラ
7 中間転写ベルト
11 ベルトクリーニング装置
17 ステアリングローラ
17U 自動調芯機構
20 中間転写ユニット
22 ロック部材
23 ステアリング軸受
23U 着脱ユニット
24 スライドガイド
26 揺動板