(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】荷室構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
(21)【出願番号】P 2020162059
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】田港 武志
(72)【発明者】
【氏名】中村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】川原田 真実
(72)【発明者】
【氏名】村上 恒平
(72)【発明者】
【氏名】重久 大輔
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118492(JP,A)
【文献】特開2016-124525(JP,A)
【文献】米国特許第05716091(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバックを具備するリアシートと、該リアシートの後方の床面に凹設された荷室収納部とを有する車両の荷室構造であって、
第1のボード部と第2のボード部とがヒンジ部を介して回転可能に連接し、前記リアシートと前記荷室収納部との間に配置される可動ボードと、
前記荷室収納部の車両前方側の側面
の上端部に設けられ、前記第1のボード部を当該側面に取り付ける取付部と、
前記第2のボード部を、前記シートバックの後面に沿った状態で前記シートバックの変位に追従させる追従手段とを有
し、
前記シートバックが倒伏状態のときに前記第2のボード部の一部が前記シートバックの後面に押し付けられる、荷室構造。
【請求項2】
起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバックを具備するリアシートと、該リアシートの後方の床面に凹設された荷室収納部とを有する車両の荷室構造であって、
第1のボード部と第2のボード部とがヒンジ部を介して回転可能に連接し、前記リアシートと前記荷室収納部との間に配置される可動ボードと、
前記荷室収納部の車両前方側の側面
の上端部に設けられ、前記第1のボード部を当該側面に取り付ける取付部と、
前記第2のボード部を、前記シートバックの後面に沿った状態で前記シートバックの変位に追従させる追従手段とを有
し、
前記取付部は、前記シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って前記第1のボード部に対して前記第2のボード部が開いた角度が、前記起立状態にて180度以下となる向きで前記第1のボード部を前記側面に取り付ける、荷室構造。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の荷室構造において、
前記可動ボードは、第1のボード部から突出した突起部を有し、
前記取付部は、前記突起部が差し込まれる差し込み固定孔である、荷室構造。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の荷室構造において、
前記追従手段は、一端が前記第1のボード部に取り付けられ、他端が前記第2のボード部に取り付けられ、前記第2のボード部を前記シートバックに向かって付勢するばね部材である、荷室構造。
【請求項5】
請求項
1に記載の荷室構造において、
前記取付部は、前記シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って前記第1のボード部に対して前記第2のボード部が開いた角度が、前記起立状態にて180度以下となる向きで前記第1のボード部を前記側面に取り付ける、荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室構造に関し、特に、リアシートの後方の床面に荷室収納部が凹設された車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SUV(Sport Utility Vehicle)タイプのようないわゆるハッチバックタイプの自動車の人気が高まりつつある。このようなハッチバックタイプの自動車においては、トランクを荷室として有するセダンタイプの自動車とは異なり、リアシートの後方のスペースがそのまま荷室して使用される。そして、リアシートのシートバックを、起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能な構成とすることで、荷室の広さを使用目的や乗車人数に応じて自由に設定することができる。さらに、このように使用される荷室スペースの床面に収納部を凹設するとともに、収納部をデッキボードで開閉自在に覆うことで、収納部に物品を収納可能としながらも、荷室に荷物を収納することができる。
【0003】
ここで、上記のように、シートバックが、起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能な構成において、シートバックと荷室の床面との間に、シートバックの状態に応じて変位可能な可動ボードを配置しておき、シートバックが倒伏状態のときに、シートバックの後面と荷室の床面とが可動ボードによって架設された状態とする構造が、多くの自動車に搭載されている。この構造によれば、シートバックが倒伏状態のときに可動ボードによってシートバックの後面と床面とが連続した平面が得られて、シートバックが起立した状態よりも広い荷室空間を得ることができる。このような可動ボードは、上述したように、荷室スペースの床面に収納部を凹設するとともに、収納部をデッキボードで開閉自在に覆う構成においては、車両後方側の端部がデッキボードに連結された構成とすることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、荷室スペースの床面に収納部を凹設するとともに、収納部をデッキボードで開閉自在に覆う荷室構造においては、デッキボードが、収納部の上面を覆うだけでなく収納部の任意の高さに設置可能な、いわゆる二段デッキ構造の荷室構造が考えられている。そのような荷室構造においては、上記のように、可動ボードの車両後方側の端部がデッキボードに連結された構成とすると、可動ボードの一部を、例えば蛇腹状に構成するなど特殊な形態としなければ、デッキボードの設置高さの変更に対応させることが困難となる。
【0006】
そこで、本願出願人は、さらに鋭意研究を行い、荷室スペースの床面に凹設された収納部をデッキボードで開閉自在に覆う荷室構造において、リアシートのシートバックが倒伏状態にて収納部の上面をデッキボードで覆った場合に可動ボードによってシートバックの後面とデッキボードとが連続した平面を得られる構成としながらも、デッキボードを任意の高さに設置できる可動ボードを有する新たな荷室構造を見出した。
【0007】
本発明は、起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバックを具備するリアシートと、リアシートの後方の床面に凹設された荷室収納部とを有する車両にて荷室収納部をデッキボードで開閉自在に覆う荷室構造において、リアシートのシートバックが倒伏状態にて荷室収納部の上面をデッキボードで覆った場合にシートバックの後面とデッキボードとが連続した平面を得られる構成としながらも、デッキボードを任意の高さに設置することができる荷室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバックを具備するリアシートと、該リアシートの後方の床面に凹設された荷室収納部とを有する車両の荷室構造であって、
第1のボード部と第2のボード部とがヒンジ部を介して回転可能に連接し、前記リアシートと前記荷室収納部との間に配置される可動ボードと、
前記荷室収納部の車両前方側の側面の上端部に設けられ、前記第1のボード部を当該側面に取り付ける取付部と、
前記第2のボード部を、前記シートバックの後面に沿った状態で前記シートバックの変位に追従させる追従手段とを有し、
前記シートバックが倒伏状態のときに前記第2のボード部の一部が前記シートバックの後面に押し付けられる構造である。
または、起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバックを具備するリアシートと、該リアシートの後方の床面に凹設された荷室収納部とを有する車両の荷室構造であって、
第1のボード部と第2のボード部とがヒンジ部を介して回転可能に連接し、前記リアシートと前記荷室収納部との間に配置される可動ボードと、
前記荷室収納部の車両前方側の側面の上端部に設けられ、前記第1のボード部を当該側面に取り付ける取付部と、
前記第2のボード部を、前記シートバックの後面に沿った状態で前記シートバックの変位に追従させる追従手段とを有し、
前記取付部は、前記シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って前記第1のボード部に対して前記第2のボード部が開いた角度が、前記起立状態にて180度以下となる向きで前記第1のボード部を前記側面に取り付ける構造である。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、荷室収納部の上面がデッキボードによって覆われた状態においてリアシートのシートバックが倒伏状態となると、荷室収納部の車両前方側の側面には可動ボードの第1のボード部が取付部によって取り付けられており、第2のボード部がヒンジ部を軸として回転して追従手段によってシートバックの後面に沿った状態でシートバックの変位に追従することで、可動ボードの第2のボード部によってシートバックの後面とデッキボードとが連続した平面が得られる。この際、可動ボードは、デッキボードではなく、荷室収納部の車両前方側の側面に設けられた取付部によって第1のボード部が荷室収納部の側面に取り付けられているので、デッキボードの荷室収納部における設置高さを変えることができる。
【0010】
また、可動ボードが、第1のボード部から突出した突起部を有し、取付部が、突起部が差し込まれる差し込み固定孔であれば、突起部を差し込み固定孔に差し込むだけで、荷室収納部の車両前方側の側面に可動ボードの第1のボード部が取り付けられることになる。
【0011】
また、追従手段が、一端が第1のボード部に取り付けられ、他端が第2のボード部に取り付けられ、第2のボード部をシートバックに向かって付勢するばね部材であれば、第2のボード部をシートバックに貼着などの手段で固定させることなく、第2のボード部が、シートバックの後面に沿った状態でシートバックの変位に追従することになる。
【0012】
また、取付部が、シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って第1のボード部に対して第2のボード部が開いた角度が、シートバックの起立状態にて180度以下となる向きで第1のボード部を荷室収納部の側面に取り付けれていれば、シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って第1のボード部に対して第2のボード部が開いた角度が180度を超えることがなくなり、可動ボードのヒンジ部の劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバックを具備するリアシートと、リアシートの後方の床面に凹設された荷室収納部とを有する車両にて荷室収納部をデッキボードで開閉自在に覆う荷室構造において、第1のボード部と第2のボード部とがヒンジ部を介して回転可能に連接し、リアシートと荷室収納部との間に配置される可動ボードの第1のボード部が、荷室収納部の車両前方側の側面に設けられた取付部によってその側面に取り付けられ、可動ボードの第2のボード部が、追従手段によって、シートバックの後面に沿った状態でシートバックの変位に追従するため、リアシートのシートバックが倒伏状態にて荷室収納部の上面をデッキボードで覆った場合にシートバックの後面とデッキボードとが連続した平面を得られる構成としながらも、デッキボードを任意の高さに設置することができる。
【0014】
また、可動ボードが、第1のボード部から突出した突起部を有し、取付部が、突起部が差し込まれる差し込み固定孔であるものにおいては、突起部を差し込み固定孔に差し込むだけで、荷室収納部の車両前方側の側面に可動ボードの第1のボード部を取り付けることができる。
【0015】
また、追従手段が、一端が第1のボード部に取り付けられ、他端が第2のボード部に取り付けられ、第2のボード部をシートバックに向かって付勢するばね部材であるものにおいては、第2のボード部をシートバックに貼着などの手段で固定させることなく、シートバックの後面に沿った状態でシートバックの変位に追従させることができる。
【0016】
また、取付部が、シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って第1のボード部に対して第2のボード部が開いた角度が、シートバックの起立状態にて180度以下となる向きで第1のボード部を荷室収納部の側面に取り付けるものにおいては、シートバックの倒伏状態から起立状態への変位に伴って第1のボード部に対して第2のボード部が開いた角度が180度を超えることがなくなり、可動ボードのヒンジ部の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の荷室構造に用いられる可動ボードの実施の一形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図である。
【
図2】
図1に示した固定部材の詳細な構造を示す図であり、(a)は固定部材の正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図、(c)は固定部材の正面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示した可動ボードが取り付けられる車室構造を上方から見た図である。
【
図4】
図1及び
図2に示した可動ボードが取り付けられる車室構造を側方から見た図である。
【
図5】
図3及び
図4に示した荷室構造への
図1及び
図2に示した可動ボードの取付方法を説明するための図である。
【
図6】
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボードが取り付けられた状態において荷室収納部の上面がデッキボードで覆われた場合の作用を説明するための図である。
【
図7】
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボードが取り付けられた状態においてデッキボードが荷室収納部の底面に載置される場合の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の荷室構造に用いられる可動ボードの実施の一形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図である。
【0020】
本形態の可動ボードは
図1に示すように、第1のボード部11aと第2のボード部11bとがヒンジ部12を介して連接して構成されている。ボード部11a,11bは、例えば、規則的に配列された複数の円柱の上面及び底面がそれぞれシート部材で覆われた板状構造からなり、ボード部11aとボード部11bとの境界部分が薄く形成されることで、その境界部分がヒンジ部12となってボード部11aとボード部11bとが回転可能となっている。なお、ボード部11a,11bの構造としてハニカム構造を採用することも考えられる。
【0021】
ボード部11aは、略長方形の形状から後述する荷室収納部の側面の形状に応じて長手方向の両端がそれぞれ切り欠かれた切り欠き部16a,16bを有する形状となっている。ボード部11aの一方の面には、ヒンジ部12の近傍に、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂からなり、突起部となる4つの固定部材20が取り付けられているとともに、ヒンジ部12とは反対側の端辺に沿う領域に、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂からなる3つの固定部材30が、その一部がボード部11aからヒンジ部12とは反対側に突出して取り付けられている。また、ボード部11aの固定部材20,30が取り付けられた面には、ヒンジ部12の近傍に2つのばね固定部15aが設けられており、巻きばね14の一端が固定されている。
【0022】
ボード部11bは、略長方形の形状を有し、その短手方向に延びたスリット13が形成されており、それにより、長手方向に例えば4:6に分割されている。ボード部11bの両面のうち、ボード部11aの固定部材20,30が取り付けられた面との同一面には、スリット13によって分割された2つの領域のそれぞれにおいて、ボード部11aのばね固定部15aの近傍に、例えばPOM(polyacetal:ポリアセタール)等の樹脂からなるばね固定部材15bがリベットなどによって取り付けられている。ばね固定部材15bには、ボード部11aのばね固定部15aに一端が固定された巻きばね14の他端側が引っ掛けられている。これにより、巻きばね14の一端がボード部11aに取り付けられ、他端がボード部11bに取り付けられた状態となり、ボード部11bが、
図1(b)に示す矢印B方向に付勢された状態となっている。
【0023】
図2は、
図1に示した固定部材20,30の詳細な構造を示す図であり、(a)は固定部材20の正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図、(c)は固定部材30の正面図である。
【0024】
図1に示した固定部材20は
図2(a),(b)に示すように、板状の固定部21から挿入ピン23が前面側に突出して構成されている。固定部21には取付孔22が設けられており、取付孔22にリベット等を挿入することで固定部材20がボード部11aに取り付けられている。このように固定部材20がボード部11aに取り付けられることで、固定部材20がボード部11aから突出した状態となる。挿入ピン23には、互いに並行して延びる2本のスリット24が設けられており、2本のスリット24間の領域が、一部が固定部21から離れる方向に突出した板ばね部25となっている。板ばね部25は、固定部21に向かう方向に変位可能となっていることで弾性力を有している。
【0025】
図1に示した固定部材30は
図2(c)に示すように、板状の固定部31の一端辺から挿入ピン33が下方に突出して構成されている。固定部31には取付孔32が設けられており、取付孔32にリベット等を挿入することで固定部材30がボード部11aに取り付けられている。このようにして固定部材30がボード部11aに取り付けられることになるが、
図1に示したように、固定部材30がボード部11aのヒンジ部12とは反対側の端辺に沿う領域に取り付けられることで、挿入ピン33がボード部11aから突出した状態となる。挿入ピン33には、その先端部に不織布34が巻き付けられている。
【0026】
図3は、
図1及び
図2に示した可動ボード10が取り付けられる車室構造を上方から見た図であり、
図4は、
図1及び
図2に示した可動ボード10が取り付けられる車室構造を側方から見た図である。
【0027】
図1及び
図2に示した可動ボード10は、
図3及び
図4に示すようにリアシート40の後方においてリアシート40とハッチドア70との間の空間の床面に荷室収納部50が凹設された車両に取り付けられる。
【0028】
リアシート40は、起立する起立状態と前方に倒伏する倒伏状態とに変位可能なシートバック41を有している。このシートバック41は、例えば4:6に分割して起立状態と倒伏状態とに変位可能となっている。
【0029】
荷室収納部50は、リアシート40とフィニッシュプレート60との間の床面に、後輪71やバッテリーなどを避けるようにして凹設されている。荷室収納部50の底面には、一部が窪んでなる収納穴51が設けられており、工具などを収納することができる。また、荷室収納部50の底面のうち車両前方側の側面50aとの連接辺近傍には、3つの差し込み固定孔53が設けられている。荷室収納部50の側面のうち車両前方側の側面50aには、その上端部に4つの差し込み固定孔52が設けられている。荷室収納部50の側面のうち車両後方側の側面には、その上端部に2つの固定ピン56が設けられている。また、固定ピン56が設けられた側面の上端部が載置台54となるとともに、差し込み固定孔52が設けられた側面50a側にも2つの載置台55が設けられることで、後述するデッキボードが載置可能な構造となっている。載置台54,55にデッキボードが載置されると、荷室収納部50の上面がデッキボードによって覆われた状態となる。
【0030】
以下に、
図3及び
図4に示した荷室構造への
図1及び
図2に示した可動ボード10の取付方法について説明する。
【0031】
図5は、
図3及び
図4に示した荷室構造への
図1及び
図2に示した可動ボード10の取付方法を説明するための図であり、車室構造を側方から見た図である。
【0032】
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボード10を取り付ける場合は、
図5に示すように、リアシート40のシートバック41が起立した起立状態において、可動ボード10を、2つのボード部11a,11bが開いた状態とし、固定部材20,30及びばね固定部材15bが取り付けられた面が車両の前方を向くようにリアシート40のシートバック41の後方に配置する。そして、可動ボード10がシートバック41の後面に沿うようにボード部11aを下側として上方から下方に下ろしていく。すると、ボード部11aには固定部材20,30が取り付けられているとともに、荷室収納部50には、車両前方側の側面50aと、底面のうち車両前方側の側面50aとの連接辺近傍とに差し込み固定孔52,53がそれぞれ設けられているので、固定部材20の挿入ピン23を差し込み固定孔52に差し込むことができるとともに、固定部材30の挿入ピン33を差し込み固定孔53に差し込むことができる。
【0033】
このようにして荷室収納部50の車両前方側の側面50aに可動ボード10のボード部11aが取り付けられることになる。その際、固定部材20の挿入ピン23が、上述したように板ばね部25を有する構成であることで、固定部材20の挿入ピン23が差し込み固定孔52に差し込まれた後、車両の走行時の振動などによって差し込み固定孔52から不用意に抜けなくなる。また、固定部材30の挿入ピン33の先端部に不織布34が巻き付けられていることで、差し込み固定孔53の下部に何らかの部材が配置されている場合でも、その部材と挿入ピン33が当接することによる異音やがたつきの発生を抑制することができる。
【0034】
なお、可動ボード10のボード部11aを荷室収納部50の車両前方側の側面50aに取り付ける手段は、上述したように、固定部材20の挿入ピン23を差し込み固定孔52に差し込むこととともに、固定部材30の挿入ピン33を差し込み固定孔53に差し込むものには限らず、ビスやリベットなどを用いて可動ボード10のボード部11aを荷室収納部50の車両前方側の側面50aに取り付けてもよい。ただし、固定部材20の挿入ピン23を差し込み固定孔52に差し込むこととともに、固定部材30の挿入ピン33を差し込み固定孔53に差し込む構成とすれば、固定部材20,30の挿入ピン23,33を差し込み固定孔52,53に差し込むだけで、荷室収納部50の車両前方側の側面50aに可動ボード10のボード部11aを取り付けることができる。
【0035】
以下に、上記のようにして荷室構造に取り付けられた可動ボード10による作用について説明する。
【0036】
まず、荷室収納部50の上面がデッキボードで覆われた状態における作用について説明する。荷室収納部50に収納した荷物などを外部から視認できないようにする場合や、リアシート40のシートバック41を倒伏状態としてシートバック41の後面とデッキボード57とが連続した平面を得てその上にさらに荷物などを収納したい場合などの使用方法である。
【0037】
図6は、
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボード10が取り付けられた状態において荷室収納部50の上面がデッキボードで覆われた場合の作用を説明するための図であり、車室構造を側方から見た図である。
【0038】
図5に示したようにして
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボード10が取り付けられた状態において、
図6(a)に示すように、デッキボード57を荷室収納部50の載置台54,55に載置することにより、荷室収納部50の上面をデッキボード57で覆うことができる。その際、載置台54に設けられた固定ピン56にデッキボード57に設けられた窪み(不図示)を嵌合させることで、デッキボード57を確実に固定することができる。
【0039】
また、可動ボード10のボード部11bは、ボード部11aが荷室収納部50の側面50aに取り付けられた場合にリアシート40のシートバック41の後方に位置することになるが、巻きばね14によって図中A方向に付勢されているため、シートバック41に押し付けられた状態となっている。そのため、リアシート40と荷室収納部50との間に小さな荷物などが入り込んでしまうことが回避される。
【0040】
リアシート40のシートバック41が起立状態から前方に倒伏した倒伏状態になると、上述したように可動ボード10のボード部11bがシートバック41に押し付けられた状態となっていることから、
図6(b)に示すように、シートバック41の起立状態から倒伏状態への変位に追従してボード部11bがヒンジ部12を軸として図中A方向に回転し、デッキボード57とシートバック41の後面とに架設された状態となる。
【0041】
これにより、リアシート40のシートバック41が倒伏状態にて荷室収納部50の上面をデッキボード57で覆った場合にシートバック41の後面とデッキボード57とが連続した平面を得ることができる。
【0042】
なお、リアシート40のシートバック41は、例えば4:6に分割して起立状態と倒伏状態とに変位可能となっているが、上述したように、ボード部11bもその長手方向に例えば4:6に分割されているため、リアシート40のシートバック41の分割された2つの領域の一方が起立状態となり、他方が倒伏状態となっても、それぞれの状態に追従してシートバック41の後面に沿った状態となる。
【0043】
次に、デッキボードを荷室収納部50の底面に載置する場合における作用について説明する。リアシート40とハッチドア70との間のスペースに収納する荷物などが荷室収納部50に収納できないような大きなものである場合などの使用方法である。
【0044】
図7は、
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボード10が取り付けられた状態においてデッキボードが荷室収納部50の底面に載置される場合の作用を説明するための図であり、車室構造を側方から見た図である。
【0045】
図5に示したようにして
図3及び
図4に示した荷室構造に
図1及び
図2に示した可動ボード10が取り付けられた状態において、
図7(a)に示すように、デッキボード57を車両前方側から荷室収納部50に入り込ませていくことで、荷室収納部50の底面にデッキボード57を載置することができる。その際、デッキボード57は荷室収納部50の車両後方側の側面の上端を載置台54として載置されることで荷室収納部50の上面を覆っていたが、荷室収納部50は、車両前方側の側面50aが、底面側が前方になるように傾いているため、デッキボード57を荷室収納部50に入り込ませることができ、また、その分、収納スペースを広くすることができる。なお、荷室収納部50の車両前方側の側面50aの傾きの角度は、特に限定しないが、シートバック41の倒伏状態から起立状態への変位に伴ってボード部11aに対してボード部11bが開いた角度が、シートバック41の起立状態にて180度以下となるようなものとすれば、シートバック41の倒伏状態から起立状態への変位に伴ってボード部11aに対してボード部11bが開いた角度が180度を超えることがなくなり、可動ボード10のヒンジ部12の劣化を抑制することができる。
【0046】
また、この状態においても、可動ボード10のボード部11bが巻きばね14によって図中A方向に付勢されているため、シートバック41に押し付けられた状態となっており、それにより、リアシート40と荷室収納部50との間に小さな荷物などが入り込んでしまうことが回避される。
【0047】
リアシート40のシートバック41が起立状態から前方に倒伏した倒伏状態になると、上述したように可動ボード10のボード部11bがシートバック41に押し付けられた状態となっていることから、
図7(b)に示すように、シートバック41の起立状態から倒伏状態への変位に追従してボード部11bがヒンジ部12を軸として図中A方向に回転し、デッキボード57とシートバック41の後面と間に可動ボード10が存在する状態となる。
【0048】
このように本形態においては、可動ボード10が、デッキボード57ではなく、荷室収納部50の車両前方側の側面50aに設けられた差し込み固定孔52に固定部材20が差し込まれることで荷室収納部50の側面50aに取り付けられているので、リアシート40のシートバック41が倒伏状態にて荷室収納部50の上面をデッキボード57で覆った場合にシートバック41の後面とデッキボード57とが連続した平面を得られる構成としながらも、デッキボード57を任意の高さに設置することができる。
【0049】
なお、本形態においては、可動ボード10のボード部11bを、リアシート40のシートバック41の後面に沿った状態でシートバック41の変位に追従させる追従手段として、一端がボード部11aに取り付けられ、他端がボード部11bに取り付けられ、ボード部11bをシートバック41に向かって付勢するばね部材である巻きばね14を例に挙げて説明したが、追従手段はこれに限らない。例えば、面ファスナーなどを用いてボード部11bをリアシート40のシートバック41に貼着することで、ボード部11bをリアシート40のシートバック41の後面に沿った状態でシートバック41の変位に追従させてもよい。ただし、追従手段として、本形態のようなばね部材を用いれば、ボード部11bをリアシート40のシートバック41に貼着などの手段で固定させることなく、シートバック41の後面に沿った状態でシートバック41の変位に追従させることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 可動ボード
11a,11b ボード部
12 ヒンジ部
13,24 スリット
14 巻きばね
15a ばね固定部
15b ばね固定部材
16a,16b 切り欠き部
20,30 固定部材
21,31 固定部
22,32 取付孔
23,33 挿入ピン
25 板ばね部
34 不織布
40 リアシート
41 シートバック
50 荷室収納部
51 収納穴
52,53 差し込み固定孔
54,55 載置台
56 固定ピン
57 デッキボード
60 フィニッシュプレート
70 ハッチドア
71 後輪