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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61F13/494 115
A61F13/494 111
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020162099
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054856
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 渉
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-173380(JP,A)
【文献】特開2017-023782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 13/02
A41B 13/08
A61F 13/00
A61F 13/16-13/20
A61F 13/494
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
吸収体の裏側に配置された液不透過性シートと、
排泄物の遮断位置に沿って、前記トップシートの表面から起き上がる起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記遮断位置の外側における前記トップシートの表面を含む部分に取り付けられた付根部と、前記付根部から突出する本体部と、前記本体部における前記遮断位置に沿う方向の両端部が倒伏状態に固定されて形成された倒伏部と、前記本体部における倒伏部間の部分が非固定とされて形成された起き上がり部とを有するギャザー不織布と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられたギャザー弾性部材とを有するものであり、
前記トップシートは、前記遮断位置よりも外側であって、かつ前記吸収体よりも外側に端部を有し、
前記付根部及び前記液不透過性シートは、前記トップシートよりも外側であって、かつ前記吸収体よりも外側に延び出た延出部分をそれぞれ有し、
前記付根部の延出部分及び前記液不透過性シートの延出部分が、前記トップシート及び前記吸収体を介さずに前記遮断位置に沿う方向に連続的に接合されて外側接合部が形成され、
前記トップシートの外側の縁から前記外側接合部まで、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合されておらず、上方が前記ギャザー不織布により覆われ、下方が前記液不透過性シートにより覆われた貯留間隙を有し、
前記貯留間隙より内側かつ前記吸収体の端部より外側の範囲では、前記トップシート、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記外側接合部に、前記遮断位置に沿う方向に延びるサイド弾性部材を有し、
前記サイド弾性部材を有する部分は、前記サイド弾性部材とともに前後方向に収縮して皺が形成されているとともに、前後方向に伸長可能であり、
前記貯留間隙と前記サイド弾性部材との幅方向の間隔が3mm以下である、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
吸収体の裏側に配置された液不透過性シートと、
排泄物の遮断位置に沿って、前記トップシートの表面から起き上がる起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記遮断位置の外側における前記トップシートの表面を含む部分に取り付けられた付根部と、前記付根部から突出する本体部と、前記本体部における前記遮断位置に沿う方向の両端部が倒伏状態に固定されて形成された倒伏部と、前記本体部における倒伏部間の部分が非固定とされて形成された起き上がり部とを有するギャザー不織布と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられたギャザー弾性部材とを有するものであり、
前記トップシートは、前記遮断位置の外側に端部を有し、
前記付根部及び前記液不透過性シートは、前記トップシートよりも外側に延び出た延出部分をそれぞれ有し、
前記付根部の延出部分及び前記液不透過性シートの延出部分が、前記トップシートを介さずに前記遮断位置に沿う方向に連続的に接合されて外側接合部が形成され、
前記トップシートの外側の縁から前記外側接合部まで、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合されておらず、上方が前記ギャザー不織布により覆われ、下方が前記液不透過性シートにより覆われた貯留間隙を有し、
前記トップシートの端部が1回又は複数回折り返されて、複数の層が積層されている、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートの折り返された部分の層間が接合されていない、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ギャザー不織布における前記貯留間隙の上方を覆う部分の下面に、上方に窪む凹部が少なくとも前後方向に間欠的に形成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記液不透過性シートにおける前記貯留間隙の下方を覆う部分の上面に、下方に窪む凹部が少なくとも前後方向に間欠的に形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
吸収体の裏側に配置された液不透過性シートと、
排泄物の遮断位置に沿って、前記トップシートの表面から起き上がる起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記遮断位置の外側における前記トップシートの表面を含む部分に取り付けられた付根部と、前記付根部から突出する本体部と、前記本体部における前記遮断位置に沿う方向の両端部が倒伏状態に固定されて形成された倒伏部と、前記本体部における倒伏部間の部分が非固定とされて形成された起き上がり部とを有するギャザー不織布と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられたギャザー弾性部材とを有するものであり、
前記トップシートは、前記遮断位置の外側に端部を有し、
前記付根部及び前記液不透過性シートは、前記トップシートよりも外側に延び出た延出部分をそれぞれ有し、
前記付根部の延出部分及び前記液不透過性シートの延出部分が、前記トップシートを介さずに前記遮断位置に沿う方向に連続的に接合されて外側接合部が形成され、
前記トップシートの外側の縁から前記外側接合部まで、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合されておらず、上方が前記ギャザー不織布により覆われ、下方が前記液不透過性シートにより覆われた貯留間隙を有し、
前記トップシートの外側の縁から前記外側接合部までの範囲には、前記貯留間隙と、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合された補助接合部とが、少なくとも前後方向に交互に繰り返し設けられている、
ことを特徴とする、吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起き上がりギャザーの付根部における排泄液の染み出しを抑制した吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在では、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品のほとんど多くは、表面の幅方向両側から起き上がる起き上がりギャザーを備えている。起き上がりギャザーを備えることにより、排泄物の横方向移動が起き上がりギャザーにより遮断され、いわゆる横漏れが防止される。また、使い捨ておむつでは、ウエストからの漏れを防止するために、表面のウエスト側に起き上がりギャザーを備えているものもある。
【0003】
殆ど多くの起き上がりギャザーは、不織布(以下、ギャザー不織布という)を弾性伸縮部材(以下、ギャザー弾性部材という)により収縮させて起き上がらせる基本構造を採用している(例えば特許文献1~3参照)。より詳細には、起き上がりギャザーは、吸収性物品における排泄物の遮断位置に沿って延在しており、吸収性物品における遮断位置の外側に取り付けられた付根部と、この付根部から突出する本体部と、この本体部における遮断位置延在方向の両端部が物品表面において倒伏状態で固定されて形成された倒伏部と、本体部における倒伏部間の部分が非固定とされて形成された起き上がり部とを有している。そして、ギャザー不織布の本体部は少なくとも先端部は、先端(突端)で折り返されて二層構造となっており、起き上がり部の少なくとも先端部の層間にギャザー弾性部材が遮断位置延在方向に伸長状態で固定されている。
【0004】
ギャザー不織布は遮液性(液体の遮断性。排泄物の液分が浸透して染み出るのを防止する性質。)が要求される。このため、ギャザー不織布としては、緻密な構造のメルトブローン層を含む不織布、例えばSMS不織布(スパンボンド層-メルトブローン層-スパンボンド層)が好適に用いられる。また、ギャザー不織布に排泄物の液分が浸透してにじみ出るのを防止するために、撥水剤又は疎水剤をギャザー不織布に塗布することも行われている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、起き上がりギャザーによる排泄液の堰き止め状態が、ある程度続いたときに、起き上がりギャザーの付根部の表面に排泄液が染み出すことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-154928号公報
【文献】特開2001-25485号公報
【文献】特開2010-137062号公報
【文献】特開平07-184955号公報
【文献】特開2001-293032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、起き上がりギャザーの付根部における排泄液の染み出しを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題について鋭意研究した結果次のような知見を得た。すなわち、起き上がりギャザーの付根部はトップシートの表面に固定されており、起き上がりギャザーによる排泄液の堰き止め状態が続くと、排泄液がトップシートに浸透して起き上がりギャザーの付根部の裏側に至り、逃げ場を失ってギャザー不織布から染み出していた。以下に述べる吸収性物品は、このような知見に基づくものである。
【0009】
<第1の態様>
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
吸収体の裏側に配置された液不透過性シートと、
排泄物の遮断位置に沿って、前記トップシートの表面から起き上がる起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記遮断位置の外側における前記トップシートの表面を含む部分に取り付けられた付根部と、前記付根部から突出する本体部と、前記本体部における前記遮断位置に沿う方向の両端部が倒伏状態に固定されて形成された倒伏部と、前記本体部における倒伏部間の部分が非固定とされて形成された起き上がり部とを有するギャザー不織布と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられたギャザー弾性部材とを有するものであり、
前記トップシートは、前記遮断位置の外側に端部を有し、
前記付根部及び前記液不透過性シートは、前記トップシートよりも外側に延び出た延出部分をそれぞれ有し、
前記付根部の延出部分及び前記液不透過性シートの延出部分が、前記トップシートを介さずに前記遮断位置に沿う方向に連続的に接合されて外側接合部が形成され、
前記トップシートの外側の縁から前記外側接合部まで、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合されておらず、上方が前記ギャザー不織布により覆われ、下方が前記液不透過性シートにより覆われた貯留間隙を有する、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
本吸収性物品では、起き上がりギャザーの付根部はトップシートの表面に固定されており、起き上がりギャザーによる排泄液の堰き止め状態が続くと、排泄液がトップシートに浸透して起き上がりギャザーの付根部の裏側に至るのは、従来と同様であるが、トップシートの外側の縁には外側接合部が隣接しているのではなく、貯留間隙が隣接している。したがって、トップシートに浸透して起き上がりギャザーの付根部の裏側に至った排泄液は、直ちに逃げ場を失うのではなく、貯留間隙に逃げることができ、その分だけギャザー不織布を透過してその表面に染み出しにくくなる。
【0011】
<第2の態様>
前記外側接合部に、前記遮断位置に沿う方向に延びるサイド弾性部材を有し、
前記サイド弾性部材を有する部分は、前記サイド弾性部材とともに前後方向に収縮して皺が形成されているとともに、前後方向に伸長可能であり、
前記貯留間隙と前記サイド弾性部材との幅方向の間隔が3mm以下である、
第1の態様の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
本態様のように、外側接合部に平面ギャザーを形成するためのサイド弾性部材を有する場合には、貯留間隙とサイド弾性部材との幅方向の間隔が3mm以下であることにより、サイド弾性部材の収縮力により貯留間隙の上方及び下方の部材に皺がよりやすくなり、貯留間隙がより厚く、かつより確実に形成されるため好ましい。
【0013】
<第3の態様>
前記トップシートの端部が1回又は複数回折り返されて、複数の層が積層されている、
第1又は2の態様の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本態様のように、トップシートの端部が折り返されて複数層重なっていると、貯留間隙がより厚く、かつより確実に形成されるため好ましい。
【0015】
<第4の態様>
前記トップシートの折り返された部分の層間が接合されていない、
第3の態様の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
前述のように、トップシートの端部が折り返されて複数層重なっている場合、本態様のように、層間が接合されていないことにより、層間に大きな隙間が形成されやすく、貯留間隙が全体としてさらに厚くなり、かつトップシートの端部を含む部分が硬質にならないため好ましい。
【0017】
<第5の態様>
前記ギャザー不織布における前記貯留間隙の上方を覆う部分の下面に、上方に窪む凹部が少なくとも前後方向に間欠的に形成されている、
第1~4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
本態様の凹部を設けることにより、貯留間隙がより大きく、かつより確実に形成されるため好ましい。
【0019】
<第6の態様>
前記液不透過性シートにおける前記貯留間隙の下方を覆う部分の上面に、下方に窪む凹部が少なくとも前後方向に間欠的に形成されている、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
本態様の凹部を設けることにより、貯留間隙がより大きく、かつより確実に形成されるため好ましい。
【0021】
<第7の態様>
前記トップシートの外側の縁から前記外側接合部までの範囲に、前記貯留間隙と、前記付根部及び前記液不透過性シートが接合された補助接合部とが、少なくとも前後方向に交互に繰り返し設けられている、
第1~6のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
貯留間隙が広範囲に連続していると、表面が広範囲に浮き上がることにより見栄えや装着感が悪化するおそれがあるため、本態様のように補助接合部を間欠的に設けて、表面の浮き上がりを抑制するのも好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、起き上がりギャザーの付根部における排泄液の染み出しを抑制できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】連結式使い捨ておむつの内面を示す、展開状態における平面図である。
図2】連結式使い捨ておむつの外面を示す、展開状態における平面図である。
図3図1の6-6線断面図である。
図4図1の7-7線断面図である。
図5図1の8-8線断面図である。
図6図1の9-9線断面図である。
図7図1の5-5線断面図である。
図8】(a)(b)ともに、起き上がりギャザーの要部を拡大して示す断面図である。
図9】(a)(b)ともに、起き上がりギャザーの要部を拡大して示す断面図である。
図10】連結式使い捨ておむつの内面を示す、展開状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図7は吸収性物品の一例である連結式使い捨ておむつ(一般に、テープタイプ使い捨ておむつともいう)を示しており、図中の符号Xは連結テープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。なお、断面図における点模様部分は、特に示さない限り、その表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としてのホットメルト接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。
【0026】
この連結式使い捨ておむつは、前後方向LDの中央を含む股間部Mと、前後方向LDの中央より前側に延びる腹側部分Fと、前後方向LDの中央より後側に延びる背側部分Bとを有している。また、この連結式使い捨ておむつは、股間部Mを含む範囲に内蔵された吸収体56と、吸収体56の表側を覆う液透過性のトップシート30と、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11と、液不透過性シート11の裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。
【0027】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。なお、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。
【0028】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0029】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0030】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0031】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0032】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、通常の場合、50~350g/m2とすることができる。
【0033】
(包装シート)
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0034】
この包装シート58は、図3に示すように、一枚で吸収体56の全体を包む構造とするほか、上下2枚等の複数枚のシートで吸収体56の全体を包むようにしてもよい。包装シート58は省略することもできる。
【0035】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシートなどを用いることができる。後述する貯留間隙は、特にトップシートが親水性の不織布である場合に特に意義があるものとなる。
【0036】
トップシート30は、前後方向では製品前端から後端まで延びているが、必要に応じて、適宜の変形が可能である。
また、トップシート30は、幅方向WDでは後述する起き上がりギャザー60の起点(遮断位置)の外側まで延びている。図示例のトップシート30は、吸収体56よりも側方に延びているが、例えば後述する起き上がりギャザー60の起点(遮断位置)が吸収体56の側縁よりも幅方向中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート30の幅を吸収体56の全幅より短くする等、適宜の変形が可能である。
【0037】
(中間シート)
トップシート30を透過した液の逆戻りを防止するために、トップシート30の裏側に中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0038】
中間シート40としては、各種の不織布を好適に用いることができ、特に嵩高なエアスルー不織布を好適に用いることができる。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯かつ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0039】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。また、中間シート40は、おむつの全長にわたり設けてもよいが、図示例のように排泄位置を含む中間部分にのみ設けてもよい。
【0040】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するものが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
【0041】
液不透過性シート11は、トップシート30よりも幅方向WDの外側に延び出た延出部分11Eを有している。液不透過性シート11は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましい。
【0042】
(外装不織布)
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度が1.0~6.0dtex、目付けが15~45g/m2、かつ厚みが0.5~3.0mmの不織布であると好ましい。
【0043】
外装不織布12に代えて不織布以外のシートを用いることもでき、また外装不織布12を省略することもできる。
【0044】
(エンドフラップ部、サイドフラップ部)
図示例の連結式使い捨ておむつは、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップ部EFと、吸収体56の両方の側縁よりも側方にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のサイドフラップ部SFとを有している。サイドフラップ部SFは、図示例のように、吸収体56を有する部分から連続する素材(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
【0045】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFには、糸ゴム等の細長状弾性部材からなるサイド弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。サイド弾性部材64は、図示例のように、ギャザー不織布62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向外側において、ギャザー不織布62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。サイド弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0046】
平面ギャザーは、サイド弾性部材64の収縮力が作用する部分(図中ではサイド弾性部材64が図示された部分)である。よって、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64が存在する形態の他、平面ギャザーよりも前側、後側又はその両側にわたりサイド弾性部材64が存在しているが、平面ギャザーの部位以外ではサイド弾性部材が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、サイド弾性部材64を挟むシートに固定されていなかったり、あるいはその両方であったりすることにより、平面ギャザー以外の部位に収縮力が作用せず(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)に、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64の収縮力が作用する構造も含まれる。
【0047】
(起き上がりギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、排泄物の遮断位置に沿って、トップシート30の表面から起き上がる起き上がりギャザー60が設けられている。
【0048】
起き上がりギャザー60は、遮断位置の外側におけるトップシート30の表面を含む部分に固定された付根部65、この付根部65から延び出た本体部66、この本体部66の前後方向の両端部が倒伏状態に固定された倒伏部67、及び本体部66のうち前後の倒伏部67間に位置する非固定の起き上がり部68を有するギャザー不織布62と、起き上がり部68の少なくとも先端部に固定されたギャザー弾性部材63とを有するものとなっている。
【0049】
図3図8に示す例のギャザー不織布62は、本体部66の先端(付根部65側と反対側の端)で二つ折りされることにより内側層62n及び外側層62fの2層構造となっており、その内側層62n及び外側層62fの間に、ギャザー弾性部材63が設けられているものである。内側層62nは図3図8に示すように付根部65まで延びていても、また図9(b)に示すように起き上がり部68におけるギャザー弾性部材を有する中間位置までしか延びていなくてもよい。つまり、起き上がり部68の付根部65側に一層の部分を有していてもよい。また、ギャザー不織布62は3層以上の層構造を有していてもよい。ギャザー不織布62を複数層構造とする場合、一枚の不織布を折り返すことなく、又は一枚の不織布の折り返しによる層数の増加とともに、別の不織布を貼り付けることにより層数を増加させてもよい。
【0050】
付根部65は、トップシート30の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端が遮断位置60Bとして前後方向に連続している。また、付根部65は、トップシート30よりも幅方向の外側に延び出た延出部分65Eを有しており、この延出部分は、各サイドフラップ部SFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
【0051】
起き上がりギャザー60の接合始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性部材63の収縮力により立ち上がり、身体表面に密着するようになる。
【0052】
起き上がりギャザー60の本体部66を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分66Bとこの基端側部分66Bの幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分66Aとを有する二つ折りした状態で、本体部66の前後方向両端部を固定して倒伏部67を形成すると、起き上がり部68が図8(b)に示すように屈曲し、先端側部分66Aが装着者の肌に沿って接触するようになる。
【0053】
ギャザー不織布62の種類は特に限定されないが、通常の場合、液遮断性を確保するために撥水性のものが用いられる。特に、肌触り及び液遮断性を両立できる点で、スパンボンド層間にメルトブローン層を有する不織布(SMS不織布、SMMS不織布、SSMS不織布、SSMMS不織布)が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0054】
ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。ギャザー弾性部材63は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。展開状態におけるギャザー弾性部材63の伸長率は適宜定めることができるが、例えば200~260%程度とすることができる。
【0055】
(ウイング部分)
本連結式使い捨ておむつでは、背側部分Bは股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。同様に、腹側部分Fも股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。これらウイング部分WPは、それ以外の部分と別の部材により形成することもできる。しかし、図示例のようにサイドフラップ部SFを有する構造において、サイドフラップ部SFの側部における前後方向LD中間を切断することにより、股間部Mの側縁からウイング部分の下縁71までの凹状縁70が形成され、その結果としてウイング部分WPが形成されていると、製造が容易であるため好ましい。
【0056】
(連結テープ)
図1図2及び図6に示すように、背側部分Bにおけるウイング部分WPには、腹側部分Fの外面に対して着脱可能に連結される連結テープ13がそれぞれ設けられている。おむつ10の装着に際しては、連結テープ13を腰の両側から腹側部分Fの外面に回して、連結テープ13の連結部13Aを腹側部分F外面の適所に連結する。
【0057】
連結テープ13は、図6及び図7に示すように、ウイング部分WPに固定された基端部13C、及びこの基端部13Cから延び出た本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材における本体部13Bの幅方向WDの中間部に設けられた、腹側部分Fに対する連結部13Aとを有している。本体部13Bにおける、連結部13Aより基端部13C側が腹側部分Fと連結されない非連結部となり、反対側が摘み部となっている。これら非連結部及び摘み部は、本体部13Bをなすシート基材のみからなっている。基端部13Cの側縁はウイング部分WPの側縁に一致していてもよいし、図6に示すように、ウイング部分WPの側縁から幅方向WDの内方にわずかに離間していてもよい。連結部13Aの幅方向内方の縁は、ウイング部分WPの側縁に一致していてもよいが、図6に示すように、ウイング部分WPの側縁から幅方向WDの外方に十分に離間していることが好ましい。
【0058】
連結部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)を設ける他、粘着剤層を設けてもよい。フック材は、その連結面に多数の係合突起を有するものであり、係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。
【0059】
また、基端部13Cから本体部13Bまでを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0~3.5dtex、目付け60~100g/m2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0060】
連結テープ13は、少なくとも非連結部の一部が幅方向WDに伸縮するものであっても、全体が伸縮しないものであってもよい。
【0061】
(ターゲット部)
腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所には、ターゲット部12Tが設けられている。ターゲット部12Tは、図示例のように、連結を容易にするためのシート材を腹側部分Fの外面に貼り付けることにより設けることができる。
【0062】
ターゲット部12Tを形成するためのシート材は特に限定されるものではないが、連結部13Aがフック材の場合、例えば間欠的なパターンの超音波溶着により部分的に繊維相互が溶着された長繊維不織布を用いることができる。
【0063】
また、連結部13Aがフック材の場合、ターゲット部12Tを形成するためのシート材として、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなる基材の表面に多数縫い出された複合的なシート材を用いることができる。
【0064】
さらに、連結部13Aがフック材であり、腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所が不織布からなる場合(例えば図示例のように外装不織布12を有する場合)には、ターゲット部12Tを形成するためにシート材を付加せずに、外装不織布12の適所をターゲット部12Tとし、フック材を外装不織布12の繊維に絡ませて連結することもできる。
【0065】
一方、連結部13Aが粘着材層の場合には、ターゲット部12Tを形成するためのシート材として、粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0066】
(貯留間隙)
図1及び図8(a)に示すように、起き上がりギャザー60の付根部65の延出部分65E及び液不透過性シート11の延出部分11Eが、トップシート30を介さずに遮断位置60Bに沿う方向に連続的に接合されて外側接合部69が形成されるとともに、トップシート30の端部と外側接合部69との間に、付根部65及び液不透過性シート11が接合されておらず、上方がギャザー不織布62により覆われ、下方が液不透過性シート11により覆われた貯留間隙80を有すると好ましい。この場合、起き上がりギャザー60の付根部65がトップシート30の表面に固定されていると、起き上がりギャザー60による排泄液の堰き止め状態が続いたときに、排泄液がトップシート30に浸透して起き上がりギャザー60の付根部65の裏側に至る。ここで、トップシート30の端部には外側接合部69が隣接しているのではなく、貯留間隙80(貯留空間)が介在している。したがって、トップシート30に浸透して起き上がりギャザー60の付根部65の裏側に至った排泄液は、直ちに逃げ場を失うのではなく、貯留間隙80に逃げることができ、その分だけギャザー不織布62を透過してその表面に染み出しにくくなる。
【0067】
貯留間隙80は、トップシート30の外側の縁から前記外側接合部69まで延びている限り、図8(b)に示すように、トップシート30の外側の縁よりも内側(幅方向WDの中央側)まで延びていてもよい。
【0068】
貯留間隙80の幅方向WDの寸法81は適宜定めればよいが、通常の場合5~20mm程度であるのが好ましい。図示例のように、各サイドフラップ部SFに平面ギャザーを形成するためのサイド弾性部材64を有する場合には、幅方向WD(遮断位置60Bに沿う方向と直交する方向)における貯留間隙80の寸法は、幅方向WDにおける遮断位置60Bとサイド弾性部材64との間隔の0.5~1.0倍とすることができる。
【0069】
貯留間隙80は前後方向LDに連続的に設けられていることが好ましいが、間欠的に複数設けられていてもよい。貯留間隙80の前後方向LDの寸法82(複数の場合は総和)は適宜定めればよいが、通常の場合、起き上がり部68の前後方向LDの寸法の0.5~2.0倍程度とすることができ、特に1.0~1.8倍であると好ましい。
【0070】
また、各サイドフラップ部SFに平面ギャザーを形成するためのサイド弾性部材64を有する場合には、貯留間隙80とサイド弾性部材64との幅方向WDの間隔D1が3mm以下(つまり0~3mm)、特に0.1~3.0mmであると、サイド弾性部材64の収縮力により貯留間隙80の上方及び下方の部材に皺がよりやすくなり、貯留間隙80がより厚く、かつより確実に形成されるため好ましい。
【0071】
トップシート30の端部は、図8に示すように、折り返しのない一層のままで幅方向WD外側に延びていても、図9(a)に示すように1回(又は複数回でもよい)折り返されて、複数の層が積層されていてもよい。後者のようにトップシート30の端部が折り返されて複数層重なっていると、貯留間隙80がより厚く、かつより確実に形成されるという利点がある。特に、後者の場合、トップシート30の端部の層間が接合されていないと、層間に大きな隙間が形成されやすく、貯留間隙80が全体としてさらに厚くなり、かつトップシート30の端部を含む部分が硬質にならないため好ましい。折り返し部分31の幅方向WDの寸法31Wは適宜定めることができるが、通常の場合、貯留間隙80の幅方向WDの寸法81の0.2~1.0倍程度とすることができる。
【0072】
図9(b)に示すように、ギャザー不織布62における貯留間隙80の上方を覆う部分の下面に、上方に窪む凹部85が少なくとも前後方向LDに間欠的に形成されているのも好ましい。これとともに(又はこれに代えて)、同図に示すように、液不透過性シート11における貯留間隙80の下方を覆う部分の上面に、下方に窪む凹部86が少なくとも前後方向LDに間欠的に形成されているのも好ましい。これらの凹部85,86を設けることにより、貯留間隙80がより大きく、かつより確実に形成されるようになる。これらの凹部85,86を設ける場合、凹部85,86の寸法、間隔等は適宜定めればよい。一例としては、凹部85,86の幅方向WDの寸法は、貯留間隙80の幅方向の寸法81の0.2~0.5倍程度とすることができる。また、凹部85,86の前後方向LDの寸法は、貯留間隙80の幅方向の寸法81の0.5~2.0倍程度とすることができる。さらに、凹部85,86の前後方向LDの間隔は適宜定めることができるが、凹部85,86の前後方向LDの寸法の0.2~2.0倍程度とすることができる。凹部85,86の平面形状は、三角形や、矩形等の多角形、円形等適宜の形状とすることができ、エンボス加工等の賦形加工により形成することができる。
【0073】
図1に示すように貯留間隙80が広範囲に(図示例ではほぼ起き上がり部68分の前後方向LDの全体にわたり)連続していると、貯留間隙80を有する部分の表面が広範囲に浮き上がることにより見栄えや装着感が悪化するおそれがある。よって、図10に示すように、トップシート30の外側の縁から外側接合部69までの範囲には、貯留間隙80と、付根部65及び液不透過性シート11が接合された補助接合部89とを、少なくとも前後方向LD(好ましくは前後方向LD及び幅方向WDの両方)に交互に繰り返し設けて、表面の浮き上がりを抑制するのも好ましい。この場合における補助接合部89の寸法、間隔は適宜定めればよい。一例としては、補助接合部89の幅方向WDの寸法は、貯留間隙80の幅方向の寸法81の0.2~1.0倍程度とすることができ、特に0.2~0.5倍程度であると好ましい。また、補助接合部89は、貯留間隙80の幅方向WDの外側の縁から離間していることが望ましい。また、補助接合部89の前後方向LDの寸法は、貯留間隙80の幅方向の寸法81の0.2~1.0倍程度とすることができる。さらに、補助接合部89の前後方向LDの間隔は適宜定めることができるが、補助接合部89の前後方向LDの寸法の0.5~3.0倍程度とすることができる。
【0074】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載がない限り、以下の意味を有するものである。
【0075】
「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
【0076】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0077】
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0078】
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0079】
「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0080】
「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0081】
「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度37度で使用される。
【0082】
「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0083】
「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0084】
「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0085】
「空隙率」とは、以下の方法により計測するものである。すなわち、中シートにおける接合部以外の部分を矩形に切取り、試料とする。試料の長さ、幅、厚み、重量を測定する。不織布の原料密度を用いて、試料と同じ体積で空隙率が0%の場合の仮想重量を算出する。試料重量及び仮想重量を以下の式に代入し、空隙率を求める。
空隙率 = 〔 (仮想重量 - 試料重量) / 仮想重量 〕 × 100
【0086】
「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0087】
「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0088】
各部の寸法は、特に記載がない限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0089】
試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、起き上がりギャザーを備えるものであれば、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつに限られず、パッドタイプやパンツタイプ等、使い捨ておむつ全般に利用できることはもちろん、生理用ナプキン等の他の吸収性物品にも利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
11…液不透過性シート、12…外装不織布、12T…ターゲット部、13…連結テープ、13A…連結部、13B…本体部、13C…基端部、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60B…遮断位置、62…ギャザー不織布、62n…内側層、62f…外側層、63…ギャザー弾性部材、64…サイド弾性部材、65…付根部、66…本体部、67…倒伏部、68…起き上がり部、69…外側接合部、80…貯留間隙、85,86…補助接合部、89…補助接合部、M…股間部、WD…幅方向、LD…前後方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10