IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジーシーの特許一覧

特許7547144歯科ユニットの給水路の洗浄装置、及びこれを備える歯科ユニット
<>
  • 特許-歯科ユニットの給水路の洗浄装置、及びこれを備える歯科ユニット 図1
  • 特許-歯科ユニットの給水路の洗浄装置、及びこれを備える歯科ユニット 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】歯科ユニットの給水路の洗浄装置、及びこれを備える歯科ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61C19/00 C
A61C19/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020163441
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055803
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆広
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-104655(JP,A)
【文献】特開2015-080740(JP,A)
【文献】特開2018-000736(JP,A)
【文献】特開2012-192120(JP,A)
【文献】米国特許第04545956(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科ユニットの給水路を洗浄する洗浄装置であって、
洗浄液を貯留する洗浄液容器と、
前記洗浄液容器に対して前記洗浄液に希釈される前の原液を供給する原液供給路と、を備え
前記原液供給路には、前記洗浄液容器の上流側に前記原液が貯留された原液容器から供給された前記原液を所定の量で貯留する中間容器が備えられており、
前記原液容器から前記中間容器への前記原液の移動、及び、前記中間容器から前記洗浄液容器への前記原液の移動が自由落下により行われる、
洗浄装置。
【請求項2】
請求項に記載の洗浄装置を備え、前記洗浄装置により給水路に洗浄液が供給される、歯科ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科ユニットの給水路を洗浄するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科ユニットは、歯科治療等の際に使用される各種設備が備えられるユニットであり、患者が着座する患者用椅子を備えている。またその周囲には、歯科治療のためのハンドピース等の各種器具が配置されるドクターユニット、アシスタントユニット、患者にうがい水等を供給する出水部、これを排水するためのスピットン、及び患者の口腔内を照らす歯科用照明等が備えられている。さらに歯科ユニットには、出水部やハンドピース等に対して水を供給する給水路が備えられている。
【0003】
ここで、給水路は衛生の観点から、該給水路を構成する配管内を洗浄することが好ましく、そのために例えば特許文献1のような給水路に対する洗浄装置がある。
【0004】
このような洗浄装置は、給水路に対して並列に設置され、操作盤の操作で作動する弁が切り替えられ、給水路に対して洗浄液を流して配管内に充填させることができるように構成されている。そして洗浄が終わると操作盤の操作で作動する弁が切り替えられ、給水路に水が流れて洗浄液がすすがれて排出されるとともに、出水部やハンドピースに再び水を供給できる状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-171277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の洗浄装置は、人による準備及び操作が多いため、洗浄液の調整や操作に誤りを生じるリスクがあり、また、洗浄実行に手間がかかっていた。
【0007】
そこで、本開示は上記の問題点に鑑み、歯科ユニットのための洗浄装置において、洗浄液の調整や操作の誤りを防ぐとともに手間を抑えることが可能な洗浄装置を提供することを課題とする。またこの洗浄装置を備える歯科ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様は、歯科ユニットの給水路を洗浄する洗浄装置であって、洗浄液を貯留する洗浄液容器と、洗浄液容器に対して洗浄液に希釈される前の原液を供給する原液供給路と、を備え、原液供給路には、洗浄液容器の上流側に原液が貯留された原液容器から供給された原液を所定の量で貯留する中間容器が備えられており、原液容器から中間容器への原液の移動、及び、中間容器から洗浄液容器への原液の移動が自由落下により行われる、洗浄装置である。
【0011】
本開示の他の態様は、上記洗浄装置を備え、洗浄装置により給水路に洗浄液が供給される、歯科ユニットである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の洗浄装置によれば、原液を洗浄液容器に供給する手段を備えているので、人による希釈や操作の機会を減らすことができることから、誤りを防ぐとともに手間を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は歯科ユニット1の外観斜視図である。
図2図2は洗浄装置10を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら形態に限定されるものではない。
【0015】
1.歯科ユニットの構成
図1は1つの形態にかかる歯科ユニット1の外観図、図2は歯科ユニット1が備える1つの形態にかかる洗浄装置10を説明するための模式図である。図1図2からわかるように、歯科ユニット1は、基台2、患者用椅子3、歯科用照明4、ドクターユニット5、アシスタントユニット6、給水路、空気路、及び洗浄装置10を備えている。
【0016】
1.1.基台
基台2は患者用椅子3の下方に配置されており、患者用椅子3の土台となるものである。基台2は、筐体により外郭が形成されるとともに、該筐体の内側には、各種制御機器が内包されている。ここに含まれる制御機器としては、例えば、患者用椅子3の昇降、傾倒起立等をさせるための油圧回路、及び該油圧回路を制御する油圧制御手段を挙げることができる。また基台2のうち、患者用椅子3の背面側には、フットスイッチが設けられ、施術者はこのフットスイッチやドクターユニット5の操作パネル5dの操作スイッチを操作して油圧制御手段に対して指令を出し、油圧回路を制御して患者用椅子3の昇降、傾倒起立をさせることができる。
【0017】
1.2.患者用椅子
患者用椅子3は、公知の通りであるが、着座部、背もたれ、ヘッドレスト、レッグレスト、及びフットレストを備えており、基台2に配置された油圧回路により上記したように昇降、及び傾倒起立させることができるように構成されている。
【0018】
1.3.歯科用照明
歯科用照明4は、治療を行うときに的確に患者の口腔内を照明することができるように、自在継ぎ手等により自由度高く移動回動可能なアームを介して取り付けられている。従って、歯科用照明4は、その位置、角度を調整することにより、施術者が患者の口腔内を適切に観察できる位置へ該歯科用照明4を移動させることが可能である。
【0019】
1.4.ドクターユニット
ドクターユニット5は、患者用椅子3の側方のうちアシスタントユニット6とは反対側の側方に設けられ、施術者が必要とする各器具やスイッチ等が備えられる作業台5aを有している。この作業台5aにはその上面に作業面5bを有するとともに、施術者が施術の際に使用するハンドピース群5cがホルダーに収められている。ハンドピース群5cに含まれるハンドピースとしては、例えば、エアタービン、マイクロモータ、スケーラ、シリンジ等を挙げることができる。作業台5aには、操作パネル5dが設けられてもよく、ここに各種操作スイッチ類が配置されており、例えば患者用椅子3の傾倒起立、昇降操作、歯科用照明4の点灯及び消灯の切り替え、給水路の洗浄の開始や開始のための設定等が可能となっている。
そして、作業台5aはアーム5eにより移動及び回動ができるように支持されており、施術者の移動に合わせて作業台5aも移動及び回動することが可能とされ、利便性の向上が図られている。
【0020】
1.5.アシスタントユニット
アシスタントユニット6は、患者用椅子3の側方のうちのドクターユニット5が配置された側とは反対側に設けられ、アシスタントハンガー7、スピットン8、及び出水部9を備えている。
【0021】
1.6.アシスタントハンガー
アシスタントハンガー7は、主にアシスタントが使用する器具が具備された部位である。アシスタントハンガー7は、ハンガー部7a、及びハンガー支柱7bを備えている。ハンガー部7aには、例えばバキューム、排唾管、シリンジ等のハンドピースが懸架されている。そしてこのようなハンガー部7aがハンガー支柱7bにより移動及び回動可能に支持されている。
【0022】
1.7.スピットン
スピットン8は、出水部9から供給された水により治療中や治療後に患者がうがいをして、口腔内を洗浄するときに使用するものである。従って、スピットン8は、うがいをした後の口腔内の水を吐き捨てるため、鉢状とされている。そしてスピットン8に排出された唾液や水は、ウオーターユニット中の排水トラップを介して排出される。ここで、スピットン8は、患者の正面側に向かって水平面内で回動可能とされている。これにより患者の目の前にスピットン8を配置することができ、利便性を向上させている。
【0023】
1.8.出水部
出水部9は、給水源からの水が流出する部位であり、治療中や治療後に患者がうがいをして、口腔内を洗浄するとき等に使用される。
【0024】
1.9.給水路
給水路は、図2に一部が示されているように、給水源から出水部9やハンドピース等に水を供給する配管及び各種機器からなる給水路である。ここに備えられる各種機器は例えば弁やレギュレータ等を挙げることができるが公知のものを必要に応じて適用することができる。
【0025】
1.10.空気路
空気路は、図2に一部が示されているように、空気供給源から各ハンドピースに空気(エアー)を供給する配管及び各種機器からなる空気回路である。ここに備えられる各種機器は例えば弁やレギュレータ等を挙げることができるが公知のものを必要に応じて適用することができる。
【0026】
1.11.洗浄装置
洗浄装置10は、給水路の管内を洗浄する装置であり、給水路内に洗浄液を充填させる装置である。図2に洗浄装置10の構成を概念的に示した。
洗浄装置10は、洗浄液容器11、原液供給路20、液流路30、及び、空気供給路40を有している。
【0027】
[洗浄液容器]
洗浄液容器11は、洗浄液(原液が水により所定の濃度に希釈された液)が貯留される容器である。洗浄液容器11は密閉可能にフタが配置され、該フタの部分に配管が通される。具体的には、原液供給路20、液流路30、及び、空気供給路40のそれぞれからの配管が通されている。
洗浄液容器11の容量は特に限定されることはないが、洗浄対象となる給水路の管路内容量の1.5倍以上とすることが好ましい。
【0028】
用いられる洗浄液の種類は特に限定されることはないが、過酸化水素水、次亜塩素酸水、界面活性剤などが挙げられる。
【0029】
[原液供給路]
原液供給路20は、洗浄液の希釈前の組成物である原液を洗浄液容器11に供給する流路である。本形態で原液供給路20には、原液容器21、中間容器22、中間容器前弁23、中間容器後弁24、中間容器水位センサ25、及び、洗浄液容器水位センサ26を有し、これらが配管により接続されて原液が流れるように構成されている。より詳しくは次の通りである。
【0030】
<原液容器>
原液容器21は原液が入った容器である。原液の種類は使用される洗浄液により決まるものであり限定されることはない。なお、原液容器21には通常30回分~90回の洗浄が行われる分量の原液が収納されている。
【0031】
<中間容器>
中間容器22は、原液容器21から原液の一部(好ましくは1回~数回の洗浄に必要な量の原液)を流入させて貯留するとともに、貯留した原液を洗浄液容器に供給するための容器である。容器の具体的形態は特に限定されることはなく、適切な容量及び材質の容器を用いることができる。中間容器22の容量は特に限定されることはないが、省スペースやコストの観点から原液容器21よりも小さい容量とすることができる。具体的な容量は特に限定されることはないが原液容器の1/50~1/10程度としてもよい。
このような中間容器22によれば、原液容器21から洗浄液容器11に直接原液を供給するよりも供給量の精度を高めることができる。また、原液容器21における原液の枯渇後に原液容器21の交換が遅れても中間容器22に貯留された分の原液による洗浄機会を確保することができる。
【0032】
<中間容器前弁>
中間容器前弁23は、原液容器21から中間容器22への原液の流れの禁止と許容を切り替える弁である。中間容器前弁23は原液の流れの禁止と許容を切り替えることができればその具体的態様は限定されることはないが、電気制御による自動切換えが可能であること及び応答速度が速い観点から電磁弁であることが好ましい。
【0033】
<中間容器後弁>
中間容器後弁24は、中間容器22から洗浄液容器11への原液の流れの禁止と許容を切り替える弁である。中間容器後弁24は原液の流れの禁止と許容を切り替えることができればその具体的態様は限定されることはないが、電気制御による自動切換えが可能であること及び応答速度が速い観点から電磁弁であることが好ましい。
【0034】
<中間容器水位センサ>
中間容器水位センサ25は、中間容器22に貯留した原液の液位を検知するセンサである。液位を検知するセンサの具体的な態様は特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。
中間容器水位センサ25で検知すべき原液の量は適宜決めることができるが、例えば1回~数回の洗浄に用いられる原液の量とすることができる。これにより後述するように洗浄液容器11で適切な濃度の洗浄液が自動的に調合される。
【0035】
<洗浄液容器水位センサ>
洗浄液容器水位センサ26は、洗浄液容器11に貯留した洗浄液の液位を検知するセンサである。液位を検知するセンサの具体的な態様は特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。
洗浄液容器水位センサ26で検知すべき洗浄液の量は適宜決めることができるが、例えば1回又は数回の洗浄に用いられる洗浄液の量とすることができる。これにより後述するように洗浄液容器11で適切な濃度の洗浄液が自動的に調合される。
【0036】
<各部材の配置及び配管>
上記した各部材は例えば次のようにして配置される。
原液が流れるように、原液容器21と中間容器前弁23、中間容器前弁23と中間容器22、中間容器22と中間容器後弁24、及び、中間容器後弁24と洗浄液容器11がそれぞれ配管により接続されている。従って、原液容器21内の原液は、原液の上流側から下流側に向けて、原液容器21、中間容器前弁23、中間容器22、中間容器後24、及び、洗浄液容器11の順に流れる。
本形態では重力の利用により原液が自由落下することで原液が原液容器21から洗浄液容器11に至るように構成されている。従って、本形態では原液供給路20は、高い方から低い位置になるように、原液容器21、中間容器前弁23、中間容器22、中間容器後弁24、及び、洗浄液容器11の順に配置されている。
【0037】
<他の形態例>
上記は自由落下を利用することにより原液を移動させる態様例である。これによれば必要な機器を少なく抑えることができ、簡易に原液供給路を構成することができる。ただし、これに限定されることはなく、例えば原液の移動をポンプにより行ってもよい。
上記は中間容器22における原液の量を中間容器水位センサ25により、洗浄液容器11における洗浄液の量を洗浄液容器水位センサ26によりそれぞれ検知することを示したが、この他、流量計、圧力計、重量計等を用いて原液の量、洗浄液の量を検知してもよい。
また、原液の残りが所定量を下回った時に報知するように原液容器にもセンサを設けることもできる。同様に洗浄液の残りが所定量を下回った時に報知するためのセンサを洗浄液容器11に設けることもできる。
【0038】
[液流路]
液流路30は、洗浄液容器11に供給する水、及び、洗浄液容器11で調合された洗浄液を給水路に供給する流路である。液流路30から洗浄液容器11に供給される水により原液を希釈して洗浄液が調合される。また調合された洗浄液が洗浄液容器11から液流路30を通して洗浄対象の配管である給水路に供給される。
【0039】
液流路30は上記のように、液流路30から洗浄液容器11に供給される水により原液を希釈して洗浄液が調合され、調合された洗浄液が洗浄液容器11から液流路30を通して給水路に供給されるように構成されていればその具体的構成は特に限定されることはない。本形態では、既に歯科ユニットに具備されている給水源から給水路への配管を用いている。これにより歯科ユニットの構造を簡略化することができる。そのため、本形態で液流路30は液切替弁31を備えている。
【0040】
液切替弁31は、給水源からの配管、給水部9やハンドピースへの配管、及び、洗浄液容器11からの配管が接続される。そしてこの接続により、給水源と給水路とを繋ぐ流路(通常の治療等で利用する流路)、給水源と洗浄液容器11とを繋ぐ流路(洗浄液容器11へ希釈のための水を供給する流路)、及び、洗浄液容器11と給水路とを繋ぐ流路(洗浄液が洗浄対象である給水路に供給される流路)を切り替えることができる。
液切替弁31は、このように液の流れを切り替えることができればその具体的態様は限定されることはないが、電気制御による自動切換えが可能であること及び応答速度が速い観点から電磁弁であることが好ましい。
【0041】
すなわち、本形態によれば液流路30は、液切替弁31及び液切替弁31と洗浄液容器11とを結ぶ配管を有して構成されている。
【0042】
また、本形態では、配管の数の減少及び装置構造の簡略化の観点から、通常の歯科ユニットに具備されている給水源から給水路への流路を用いるとともに、洗浄液容器11への給水及び調合された洗浄液の給水路への供給の配管を兼用するものとした。ただし、これに限らず、通常の歯科ユニットに具備されている流路とは別に流路を設けてもよいし、洗浄液容器11への給水のための配管と調合された洗浄液の給水路への供給のための配管とを別の配管としてもよい。
【0043】
[空気供給路]
空気供給路40は、洗浄液容器11に空気を供給する流路である。空気供給路40から洗浄液容器11に供給される空気により、洗浄液容器11の内圧を上昇させ、洗浄液容器11に貯留した洗浄液を押し出すようにして液流路30に流させる。
【0044】
空気供給路40はこのように、空気供給路40から洗浄液容器11に供給される空気により、洗浄液容器11の内圧を上昇させ、洗浄液容器11に貯留した洗浄液を押し出すようにして液流路30に流させるように構成されていればその具体的構成は特に限定されることはない。本形態では、既に歯科ユニットに具備されている空気供給源から空気路への流路を用いている。これにより歯科ユニットの構造を簡略化することができる。そのため、本形態で空気供給路40は空気切替弁41及びレギュレータ42を備えている。
【0045】
空気切替弁41は、空気供給源からの配管、ハンドピース等への配管、及び、洗浄液容器11へ(本形態では途中にレギュレータ42が配置されている。)の配管が接続される。そしてこの接続により、空気供給源とハンドピース等とを繋ぐ流路(通常の治療等で利用する流路)、及び、空気供給源と洗浄液容器11とを繋ぐ流路(洗浄液容器11から洗浄液を流出させるための空気を供給する流路)を切り替えることができる。
空気切替弁41は、このように空気の流れを切り替えることができればその具体的態様は限定されることはないが、電気制御による自動切換えが可能であること及び応答速度が速い観点から電磁弁であることが好ましい。
【0046】
レギュレータ42は、洗浄液の充填圧力の調整を可能とし、空気切替弁41と合わせることで一定の時間制御により定量の洗浄液を供給することを目的としているレギュレータである。レギュレータ42は圧力計も合わせて備えている。
【0047】
すなわち、本形態によれば空気供給路40は、空気切替弁41、空気切替弁41とレギュレータ42とを結ぶ配管、及び、レギュレータ42と洗浄液容器11とを結ぶ配管を有して構成されている。
【0048】
また、本形態では、配管の数の減少及び装置構造の簡略化の観点から、通常の歯科ユニットに具備されている空気供給源から空気路への流路を用いることとした。ただし、これに限らず、通常の歯科ユニットに具備されている空気供給源から空気路への流路とは別に流路を設けてもよい。
【0049】
[制御手段]
以上のような洗浄装置10による給水路の洗浄は自動的に行われることが好ましい。そのため、洗浄装置10には不図示の制御手段が具備される。制御手段としては例えばコンピュータが挙げられる。すなわち、制御手段は、利用者の洗浄開始の操作に基づく電気信号、及び/又は、指定された時期に達することによる発生した信号により、中間容器前弁23、中間容器後弁24、液切替弁31、及び、空気切替弁41に対して指令をし、洗浄液による給水路の洗浄を行う。具体的な洗浄の流れは後で説明する。
そのため、制御手段は例えば、演算子、RAM、記憶手段、受信手段、及び出力手段を備えている。
【0050】
演算子は、いわゆるCPU(中央演算子)により構成されており、中間容器前弁23、中間容器後弁24、液切替弁31、及び、空気切替弁41等に電気的に接続され、これらを制御することができる手段である。また、記憶媒体として機能する記憶手段等に記憶された各種プログラムを実行し、これに基づいて各種データの生成やデータの選択をする手段として演算を行うのも演算子である。
【0051】
RAMは、演算子の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する構成部材である。RAMは、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0052】
記憶手段は、各種演算の根拠となるプログラムやデータが保存される記憶媒体として機能する部材である。また記憶手段には、プログラムの実行により得られた中間、最終の各種結果を保存することができてもよい。
【0053】
本形態では、この記憶手段に記憶されたプログラムの1つに、後で説明するように各構成部材を作動させ、洗浄を行うためのプログラムが含まれる。
【0054】
受信手段は、洗浄開始の操作や予め決められたタイミングに達したことを示す信号を取り入れるための機能を有する構成部材である。
【0055】
出力手段は、得られた結果のうち外部に出力すべき情報を適切に外部に出力する機能を有する構成部材であり、本形態では中間容器前弁23、中間容器後弁24、液切替弁31、及び、空気切替弁41が電気的に接続されている。
【0056】
2.洗浄
以上のような構成を有する歯科ユニット1では、例えば次のように給水路の洗浄が行われる。なお、以下の動作は洗浄開始の操作以外は制御手段により自動に行われる。
【0057】
洗浄開始の操作、又は、予め決められた時間に達したことにより、次のように洗浄が開始される。ここで、この例では、洗浄開始の直前では、中間容器22が空であるとともに、中間容器前弁23、中間容器後弁24は原液が流れることが禁止され、液切替弁31は給水源から給水路への流路が開放(図2の矢印Aの流れが許容)され、空気切替弁41は空気供給源から空気路への流路が開放(図2の矢印Bの流れが許容)されている。
【0058】
洗浄開始の操作、又は、予め決められた時間に達したことにより、中間容器前弁23が開放され原液容器21から中間容器22に原液が流れる(図2の矢印C)。中間容器22の中間容器水位センサ25により、中間容器22に所定の量の原液が貯留されたことが検知されると中間容器前弁23が閉鎖し、原液容器21から中間容器22への原液の流れが停止する。ここで本形態は1回に利用される原液の量が中間容器22に貯留されると当該流れが停止するように構成されている。また、本形態では原液容器21から中間容器22への自由落下により原液が流れるため構造が簡易である。
【0059】
中間容器前弁23が閉鎖されると、中間容器後弁24が開放され中間容器22から洗浄液容器11に原液が流れる(図2の矢印D)。中間容器後弁24は予め決められた時間(中間容器22から洗浄液容器11に原液が移動する十分な時間)が経過したときに閉鎖される。
本形態では中間容器22から洗浄液容器11への自由落下により原液が流れるため構造が簡易である。
【0060】
洗浄液容器11に原液が供給されると、液切替弁31が切り替わり給水源から洗浄液容器11に水が供給される(図2の矢印E)。これにより洗浄液容器11に水が供給されて原液が希釈されて洗浄液が調合される。洗浄液容器11に所定の量の洗浄液が貯留されたことが洗浄液容器水位センサ26に検知されると液切替弁31が、洗浄液容器11から給水路に連通するように切り替わる(ただし、この時点で洗浄液は洗浄液容器11から流出しない。)。これにより、給水源から洗浄液容器11への水の流れが停止する。ここで本形態は1回に利用される原液を適切な濃度に希釈する量の水が洗浄液容器11に供給されると当該流れが停止するように構成されている。
【0061】
洗浄液容器11への水の供給が停止されると、空気切替弁41が切り替わり空気供給源から洗浄液容器11に空気が供給される(図2の矢印F)。すると、洗浄液容器11の内圧が上昇し、洗浄液容器11に貯留した洗浄液が押し出されるようにして液流路30の配管に流れ、液切替弁31を通って給水路へ洗浄液が流れる(図2の矢印G)。これにより給水路の洗浄が行われる。
【0062】
その後、液切替弁31が給水源から給水路へ水が流れるように切り替わり(図2の矢印A)、給水路に水が流れることで給水路のすすぎが行われる。
【0063】
なお、ここでは洗浄動作が開始されてから中間容器22に原液が供給される例を説明したが、その他、洗浄動作が開始される時点で既に中間容器22に原液が貯留しており、この回の作動では中間容器22の原液が利用され、原液容器21から中間容器22に供給された原液は次の洗浄に用いられるように構成することもできる。
【0064】
3.効果等
以上のような洗浄装置10及びこれを備える歯科ユニット1によれば、通常は歯科ユニットの利用者が手作業で原液を決められた濃度に希釈した洗浄液を歯科ユニットに取り付ける必要があるところ、その手間を省くことができる。これに伴い希釈濃度の誤りを防ぐことも可能となる。
また、従来は希釈した洗浄液を歯科ユニットに取り付ける必要があるのに対して、本開示の歯科ユニット1によれば、原液を歯科ユニットに設置すればよく、歯科ユニットに対する作業量の頻度を低減することが可能である。
さらに、原液を歯科ユニットに設置するとともに、洗浄の自動実行をすることができるように構成すれば、長期休暇による歯科ユニットの不使用中であっても定期的(例えば1日1回)に洗浄の自動運転をすることもできる。
また、洗浄液容器11に洗浄液が所定量を下回った時に報知をするセンサを設ける構成にすれば、洗浄液が無い状態での運転を防ぐことができる。
【0065】
従来は密閉状態で高い気密性を要する洗浄液容器を利用者が交換する必要があったため、気密の確実性の問題や設置の容易性の観点から利用者によって良好な作業性あるとは言えなかった。これに対して本開示によれば、特に高い密閉性を要しない原液容器を交換するだけでよいため利用者の作業性を向上させることができる。なお、原液容器に原液が所定量を下回った時に報知するセンサを設ける構成とすれば、原液容器の交換時期も容易に知ることができる。
このような交換性の向上により、洗浄装置の全部をアシスタントユニットの内部に一体に配置しても作業性に影響が低いことから、作業性のために洗浄装置の少なくとも一部を外付けする場合に比べて配管等が簡素化でき、メンテナンス性や低コスト化が可能となる。
【0066】
原液供給路20において、原液が自由落下により洗浄液容器11に供給されるように構成すれば、装置を簡易に構成することができ、その制御も信頼性が高いものとなる。
【符号の説明】
【0067】
1 歯科ユニット
10 洗浄装置
11 洗浄液容器
20 原液供給路
21 原液容器
22 中間容器
23 中間容器前弁
24 中間容器後弁
30 液流路
31 液切替弁
40 空気供給路
41 空気切替弁
図1
図2