(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/045 20060101AFI20240902BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B41J2/045
B41J2/015 101
(21)【出願番号】P 2020172783
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-142490(JP,A)
【文献】特開2017-159643(JP,A)
【文献】特開2008-213321(JP,A)
【文献】特開2003-237064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記液体を噴射する噴射部と、
複数の駆動基板と、
前記複数の駆動基板内にそれぞれ設けられており、前記噴射部に対して所定の駆動波形を有する駆動信号を印加することによって前記液体を噴射させる、1または複数の駆動デバイスと、
前記駆動波形の設定を行う波形設定部と、
前記波形設定部と前記複数の駆動基板との間に配置された制御切替部と、
前記液体噴射ヘッドの外部と前記波形設定部との間での第1制御通信が行われる、外部制御ラインと、
前記波形設定部と前記制御切替部との間での第2制御通信が行われる、内部制御ラインと、
前記制御切替部と、前記複数の駆動基板の各々における前記駆動デバイスとの間において、第3制御通信が個別的に行われる、複数の駆動制御ラインと
を備え、
前記波形設定部は、前記液体噴射ヘッドの外部から前記第1制御通信を利用して伝送された第1波形設定情報に基づいて、前記駆動波形を設定するための第2波形設定情報を生成し、
前記制御切替部は、
前記波形設定部から前記第2制御通信を利用して伝送された前記第2波形設定情報を、前記第3制御通信を利用して前記駆動デバイスへと伝送させる際に、
前記複数の駆動制御ラインのうちの少なくとも1つの駆動制御ライン上での前記第3制御通信を利用して、前記複数の駆動基板のうちの少なくとも1つの駆動基板における前記駆動デバイスに対して、前記第2波形設定情報
を伝送させる伝送制御動作と、
前記複数の駆動制御ラインの全てについて、前記第3制御通信を利用した前記第2波形設定情報の伝送を遮断させる遮断制御動作と、
の間での制御切替を行う
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記液体噴射ヘッドの外部から前記第1制御通信を利用して伝送された前記第1波形設定情報を格納する、波形格納部を更に備え、
前記波形設定部は、
前記波形格納部に格納されている前記第1波形設定情報に基づいて、前記第2波形設定情報を生成すると共に、
前記制御切替部による前記伝送制御動作の際には、前記第3制御通信を利用して、前記第2波形設定情報を前記駆動デバイスへと伝送させる
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記波形設定部を介した前記液体噴射ヘッドの外部と前記制御切替部との間の制御通信である、間接制御通信と、
前記波形設定部を介さない前記液体噴射ヘッドの外部と前記制御切替部との間の制御通信である、直接制御通信と、
のうちの一方が実行されるように制御ラインの接続切替を行う、ライン切替部を更に備えた
請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記ライン切替部が、
前記間接制御通信の際に選択的に接続される第1のライン切替部と、
前記直接制御通信の際に選択的に接続される第2のライン切替部と
を含んで構成されていると共に、
前記内部制御ラインが、
前記波形設定部と前記第1のライン切替部との間に配置された、第1の内部制御ラインと、
前記第1および第2のライン切替部と前記制御切替部との間に配置された、第2の内部制御ラインと
を含んで構成されている
請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記制御切替部は、
前記直接制御通信の際には、前記遮断制御動作を実行することにより、
前記外部制御ラインと前記複数の駆動制御ラインとの間の接続を、遮断させる
請求項3または請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記波形設定部は、
前記複数の駆動基板における前記駆動デバイスのうちの少なくとも1つの駆動デバイスにおいて検出されたエラーに関する、前記エラーが検出された前記駆動デバイスと対応付けたエラー情報を、
前記第3制御通信および前記第2制御通信を利用して、前記少なくとも1つの駆動デバイスから収集して格納すると共に、
前記第1制御通信を利用して、前記エラー情報を前記液体噴射ヘッドの外部へと出力する
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記複数の駆動制御ライン上にはそれぞれ、対応する前記駆動基板における駆動条件を含む駆動情報を格納する、駆動情報格納部を更に備え、
前記波形設定部は、
前記第3制御通信および前記第2制御通信を利用して、前記複数の駆動制御ライン上の各々における前記駆動情報格納部から、前記駆動情報を収集して格納すると共に、
前記第1制御通信を利用して、前記駆動情報を前記液体噴射ヘッドの外部へと出力する
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1波形設定情報が、時間軸に沿って設定された1または複数種類の基準電位値を含む、簡易波形設定情報であり、
前記第2波形設定情報が、前記基準電位値ごとに設定される複数種類の電源電位値を含む、本波形設定情報であり、
前記波形設定部は、前記簡易波形設定情報を前記本波形設定情報へと変換することにより、前記簡易波形設定情報に基づいて前記本波形設定情報を生成する
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-170652号公報
【文献】特開2000-334938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは一般に、利便性を向上させることが、求められている。利便性を向上させることが可能な液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する噴射部と、複数の駆動基板と、これらの複数の駆動基板内にそれぞれ設けられており、噴射部に対して所定の駆動波形を有する駆動信号を印加することによって液体を噴射させる、1または複数の駆動デバイスと、上記駆動波形の設定を行う波形設定部と、この波形設定部と複数の駆動基板との間に配置された制御切替部と、上記液体噴射ヘッドの外部と波形設定部との間での第1制御通信が行われる外部制御ラインと、波形設定部と制御切替部との間での第2制御通信が行われる内部制御ラインと、制御切替部と複数の駆動基板の各々における駆動デバイスとの間において、第3制御通信が個別的に行われる複数の駆動制御ラインと、を備えたものである。上記波形設定部は、上記液体噴射ヘッドの外部から上記第1制御通信を利用して伝送された第1波形設定情報に基づいて、上記駆動波形を設定するための第2波形設定情報を生成する。上記制御切替部は、波形設定部から上記第2制御通信を利用して伝送された上記第2波形設定情報を、上記第3制御通信を利用して駆動デバイスへと伝送させる際に、上記複数の駆動制御ラインのうちの少なくとも1つの駆動制御ライン上での上記第3制御通信を利用して、複数の駆動基板のうちの少なくとも1つの駆動基板における駆動デバイスに対して、上記第2波形設定情報を伝送させる伝送制御動作と、上記複数の駆動制御ラインの全てについて、上記第3制御通信を利用した上記第2波形設定情報の伝送を遮断させる遮断制御動作と、の間での制御切替を行う。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図3】
図2に示した液体噴射ヘッドの構成例を模式的に表す断面図である。
【
図4】
図1~
図3に示した液体噴射ヘッドの詳細構成例を表すブロック図である。
【
図5】
図4に示した簡易波形設定情報および本波形設定情報の構成例を表すタイミング図である。
【
図6A】
図5に示した基準電位値の詳細構成例を表す模式図である。
【
図6B】
図5に示した電源電位値の詳細構成例を表す模式図である。
【
図7】
図4に示した液体噴射ヘッドにおける伝送制御動作の一例を表すブロック図である。
【
図8】
図4に示した液体噴射ヘッドにおける遮断制御動作の一例を表すブロック図である。
【
図9】変形例1に係る簡易波形設定情報および本波形設定情報の構成例を表すタイミング図である。
【
図10A】
図9に示した基準電位値の詳細構成例を表す模式図である。
【
図10B】
図9に示した電源電位値の詳細構成例を表す模式図である。
【
図11】変形例2に係る液体噴射ヘッドの構成例を表すブロック図である。
【
図12】変形例3に係る液体噴射ヘッドの構成例を表すブロック図である。
【
図13】
図12に示した液体噴射ヘッドにおける直接制御通信の際の動作例を表すブロック図である。
【
図14】
図12に示した液体噴射ヘッドにおける間接制御通信の際の動作例を表すブロック図である。
【
図15】
図12に示した液体噴射ヘッドにおける間接制御通信の際の他の動作例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(各種の波形設定情報および制御ラインを用いる基本構成例)
2.変形例
変形例1(簡易波形設定情報および本波形設定情報に関する変形例)
変形例2(簡易波形設定情報を格納する波形格納部を更に設けるようにした例)
変形例3(間接制御通信と直接制御通信との切替を行うようにした例)
3.その他の変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[プリンタ5の概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
図2は、
図1に示した液体噴射ヘッドとしてのインクジェットヘッド1の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。
図3は、
図2に示したインクジェットヘッド1の構成例を、模式的に断面図(Y-Z断面図)で表したものである。
【0011】
なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
プリンタ5は、後述するインク9を利用して、被記録媒体(例えば、
図1中に示した記録紙P)に対し、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。このプリンタ5は、
図1に示したように、インクジェットヘッド1、印刷制御部2およびインクタンク3を備えている。
【0013】
なお、インクジェットヘッド1は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応し、プリンタ5は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
(A.印刷制御部2)
印刷制御部2は、インクジェットヘッド1に対して、各種の情報(データ)を供給するものである。具体的には
図1に示したように、印刷制御部2は、インクジェットヘッド1内(後述する駆動デバイス41等)に対してそれぞれ、印刷制御信号Scを供給するようになっている。
【0015】
なお、この印刷制御信号Scには、例えば、画像データ、吐出タイミング信号、および、インクジェットヘッド1を動作させるための電源電圧等が、含まれるようになっている。また、この印刷制御部2は、本開示における「液体噴射ヘッドの外部」の一具体例に対応している。
【0016】
(B.インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3内のインク9は、
図1に示したように、インク供給管30を介して、インクジェットヘッド1内(後述する噴射部11)へと供給されるようになっている。なお、このようなインク供給管30は、例えば、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0017】
(C.インクジェットヘッド1)
インクジェットヘッド1は、
図1中の破線の矢印で示したように、後述する複数のノズル孔Hnから記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド1は、例えば
図2,
図3に示したように、1つの噴射部11と、1つのI/F(インターフェース)基板12と、4つのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dと、2つの冷却ユニット141,142とを、備えている。
【0018】
(C-1.I/F基板12)
I/F基板12は、
図2,
図3に示したように、2つのコネクタ10と、4つのコネクタ120a,120b,120c,120dと、回路配置領域Acとを、備えている。
【0019】
コネクタ10は、
図2に示したように、印刷制御部2からインクジェットヘッド1(後述する各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)へ向けて供給される、前述した印刷制御信号Scを入力する部分(コネクタ部分)である。
【0020】
コネクタ120a,120b,120c,120dはそれぞれ、I/F基板12と、フレキシブル基板13a,13b,13c,13dとの間をそれぞれ、電気的に接続する部分(コネクタ部分)である。
【0021】
回路配置領域Acは、I/F基板12上において各種の回路が配置されている領域である。なお、I/F基板12上の他の領域にも、このような回路配置領域が設けられているようにしてもよい。
【0022】
(C-2.噴射部11)
噴射部11は、
図1に示したように、複数のノズル孔Hnを有しており、これらのノズル孔Hnからインク9を噴射する部分である。このようなインク9の噴射は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の後述する駆動デバイス41から供給される駆動信号Sd(駆動電圧Vd)に従って、行われるようになっている(
図1参照)。
【0023】
このような噴射部11は、
図1に示したように、アクチュエータプレート111およびノズルプレート112を含んで構成されている。
【0024】
(ノズルプレート112)
ノズルプレート112は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、
図1に示したように、上記した複数のノズル孔Hnを有している。これらのノズル孔Hnは、所定の間隔をおいて並んで形成されており、例えば円形状となっている。
【0025】
具体的には、
図2に示した噴射部11の例では、ノズルプレート112内における複数のノズル孔Hnが、列方向(X軸方向)に沿ってそれぞれ配置された、複数のノズル列(4つのノズル列)により構成されている。また、これらの4つのノズル列同士は、列方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。
【0026】
(アクチュエータプレート111)
アクチュエータプレート111は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート111には、複数のチャネル(圧力室)が設けられている。これらのチャネルは、インク9に対して圧力を印加するための部分であり、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルは、圧電体からなる駆動壁(不図示)によってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0027】
このようなチャネルには、インク9を吐出させるための吐出チャネルと、インク9を吐出させないダミーチャネル(非吐出チャネル)とが、存在している。言い換えると、吐出チャネルにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルにはインク9が充填されないようになっている。なお、各吐出チャネルに対するインク9の充填は、例えば、そのような各吐出チャネルに共通して連通する流路(共通流路)を介して、行われるようになっている。また、各吐出チャネルは、ノズルプレート112におけるノズル孔Hnと個別に連通している一方、各ダミーチャネルは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルとダミーチャネルとは、前述した列方向(X軸方向)に沿って、交互に並んで配置されている。
【0028】
また、上記した駆動壁における対向する内側面にはそれぞれ、駆動電極が設けられている。この駆動電極には、吐出チャネルに面する内側面に設けられたコモン電極(共通電極)と、ダミーチャネルに面する内側面に設けられたアクティブ電極(個別電極)とが、存在している。これらの駆動電極と、後述する駆動デバイス41との間は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、電気的に接続されている。これにより、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、駆動デバイス41から各駆動電極に対し、前述した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)が印加されるようになっている(
図1参照)。
【0029】
(C-3.フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)
フレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、
図2,
図3に示したように、I/F基板12と噴射部11との間を電気的に接続する基板である。これらのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、前述したノズルプレート112における4列のノズル列ごとのインク9の噴射動作を、個別に制御するようになっている。また、例えば
図3中の符号P1a,P1b,P1c,P1dにて示したように、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが噴射部11と接続する箇所付近(圧着電極433付近)では、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが、折り曲げられるようになっている。なお、圧着電極433と噴射部11との間は、例えばACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)を用いた熱圧着によって、互いに電気的接続がなされるようになっている。
【0030】
このようなフレキシブル基板13a,13b,13c,13d上にはそれぞれ、1または複数の駆動デバイス41が、個別に実装されている(
図3参照)。これらの駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11における対応するノズル列内のノズル孔Hnからインク9を噴射させるための、駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を出力するデバイスである。なお、この駆動信号Sdは、詳細は後述するが、所定の駆動波形を有している。したがって、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dからは、このような駆動信号Sdが、噴射部11に対して出力されるようになっている。なお、このような各駆動デバイス41は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成されている。
【0031】
また、これらの各駆動デバイス41は、前述した冷却ユニット141,142によって冷却されるようになっている。具体的には
図3に示したように、フレキシブル基板13a,13b上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット141が固定配置されており、この冷却ユニット141がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。同様に、フレキシブル基板13c,13d上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット142が固定配置されており、この冷却ユニット142がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。なお、このような冷却ユニット141,142はそれぞれ、各種方式の冷却機構を用いて構成することが可能である。
【0032】
[インクジェットヘッド1の詳細構成]
続いて、
図1~
図3に加えて
図4を参照して、インクジェットヘッド1の詳細構成例について説明する。
【0033】
図4は、
図1~
図3に示したインクジェットヘッド1の詳細構成例を、ブロック図で表したものである。
図4に示したように、インクジェットヘッド1は、前述したI/F基板12、フレキシブル基板13a~13dおよび噴射部11に加えて、外部制御ラインLexと、内部制御ラインLinと、複数(この例では4つ)の駆動制御ラインLda~Lddとを、備えている。また、I/F基板12は、波形設定部121および制御切替部122を有しており、フレキシブル基板13a~13dはそれぞれ、複数の駆動デバイス41を有している。なお、各フレキシブル基板13a~13d内の複数の駆動デバイス41は、例えば、互いに直列接続(カスケード接続)されるようになっている。
【0034】
(各種の制御ライン)
外部制御ラインLexは、
図4に示したように、インクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)と波形設定部121との間を接続しており、これらの間で後述する第1制御通信C1を行うための制御ラインである。
【0035】
内部制御ラインLinは、
図4に示したように、波形設定部121と制御切替部122との間を接続しており、これらの間で後述する第2制御通信C2を行うための制御ラインである。
【0036】
複数の駆動制御ラインLda~Lddは、制御切替部122と、複数のフレキシブル基板13a~13d内の各駆動デバイス41との間を接続しており、これらの間で後述する第3制御通信C3a~C3dを個別に行うための制御ラインである。具体的には
図4に示したように、駆動制御ラインLdaは、制御切替部122と、フレキシブル基板13a内の各駆動デバイス41とを接続しており、これらの間で第3制御通信C3aが行われるようになっている。同様に、駆動制御ラインLdbは、制御切替部122と、フレキシブル基板13b内の各駆動デバイス41とを接続しており、これらの間で第3制御通信C3bが行われるようになっている。駆動制御ラインLdcは、制御切替部122と、フレキシブル基板13c内の各駆動デバイス41とを接続しており、これらの間で第3制御通信C3cが行われるようになっている。駆動制御ラインLddは、制御切替部122と、フレキシブル基板13d内の各駆動デバイス41とを接続しており、これらの間で第3制御通信C3dが行われるようになっている。
【0037】
なお、このような各種の制御ライン(外部制御ラインLex、内部制御ラインLinおよび駆動制御ラインLda~Ldd)はそれぞれ、有線による制御ライン、または、無線による制御ラインのいずれであってもよい。
【0038】
(波形設定部121)
波形設定部121は、各駆動デバイス41から噴射部11へと供給される駆動信号Sd(
図4参照)における、駆動波形の設定を行うものである。具体的には
図4に示したように、波形設定部121は、インクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)から供給される簡易波形設定情報Iw1に基づいて、そのような駆動波形を設定するための本波形設定情報Iw2を生成するようになっている。また、波形設定部121は、印刷制御部2から第1制御通信C1を利用して伝送された簡易波形設定情報Iw1を、後述する手法にて本波形設定情報Iw2へと変換することにより、簡易波形設定情報Iw1に基づいて本波形設定情報Iw2を生成するようになっている。
【0039】
なお、このような簡易波形設定情報Iw1および本波形設定情報Iw2の詳細については、後述するが(
図5,
図6A,
図6B参照)、
図4中に示したように、簡易波形設定情報Iw1におけるデータ量Dw1は、本波形設定情報Iw2におけるデータ量Dw2未満となっている(Dw1<Dw2)。
【0040】
また、波形設定部121は、上記したようにして簡易波形設定情報Iw1に基づいて本波形設定情報Iw2を生成する際に、詳細は後述するが、本波形設定情報Iw2が不適切な内容になると判定した場合には、以下のようなエラー通知を行う。具体的には
図4に示したように、波形設定部121は、そのように判定した場合には、印刷制御部2に対して、第1制御通信C1を利用して第1エラー情報Ie1を出力することで、エラー通知を行うようになっている。
【0041】
更に、波形設定部121は、各フレキシブル基板13a~13d内の駆動デバイス41のうちの少なくとも1つにおいて検出されたエラー情報(第2エラー情報Ie2)についても、印刷制御部2に対してエラー通知を行うようになっている。具体的には、
図4に示した例では、波形設定部121は、第3制御通信C3a~C3dのうちの第3制御通信C3bと、第2制御通信C2とを利用して、上記した少なくとも1つの駆動デバイス41(この例では、フレキシブル基板13b内の1つの駆動デバイス41)から、第2エラー情報Ie2を収集して格納する。そして、波形設定部121は、このようにして格納した第2エラー情報Ie2を、第1制御通信C1を利用して印刷制御部2へと出力することで、エラー通知を行うようになっている。
【0042】
このような第2エラー情報Ie2では、駆動デバイス41に関する各種のエラー(例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)伝送エラーや、異常波形設定や異常駆動動作に関するエラーなど)と、そのようなエラーが検出された駆動デバイス41とが、対応付けられて記憶されている。また、各駆動デバイス41では、例えば、インクジェットヘッド1の起動時の検査や、所定時間ごとの巡回検査などによって、第2エラー情報Ie2の検出が行われるようになっている。
【0043】
(制御切替部122)
制御切替部122は、
図4に示したように、波形設定部121と複数のフレキシブル基板13a~13dとの間に、配置されている。この制御切替部122は、波形設定部121から第2制御通信C2を利用して伝送された本波形設定情報Iw2を、第3制御通信C3a~C3dを利用して駆動デバイス41へと伝送させる際に、所定の制御切替動作を行うようになっている。具体的には、制御切替部122は、以下のような伝送制御動作と遮断制御動作との間で、制御切替動作を行う。
【0044】
伝送制御動作の際には、複数の駆動制御ラインLda~Lddのうちの少なくとも1つの駆動制御ライン上での第3制御通信(第3制御通信C3a~C3dのうちの少なくとも1つ)を利用して、複数のフレキシブル基板13a~13dのうちの少なくとも1つにおける駆動デバイス41に対して、本波形設定情報Iw2
が伝送されるようになっている(後述する
図7参照)。
【0045】
一方、遮断制御動作の際には、複数の駆動制御ラインLda~Lddの全てについて、第3制御通信C3a~C3dを利用した本波形設定情報Iw2の伝送が、遮断されるようになっている(後述する
図8参照)。
【0046】
なお、このような伝送制御動作と遮断制御動作との間での制御切替動作の詳細については、後述する。
【0047】
[波形設定情報の構成]
続いて、
図4に加えて、
図5,
図6A,
図6Bを参照して、前述した各種の波形設定情報(簡易波形設定情報Iw1および本波形設定情報Iw2)の構成例(データ構成例)について、説明する。
【0048】
図5は、簡易波形設定情報Iw1(
図5(A))および本波形設定情報Iw2(
図5(B))の構成例をそれぞれ、タイミング図で表したものである。なお、
図5中の横軸には、時間tを示している。また、
図6Aは、
図5(A)に示した後述する基準電位値V1の詳細構成例を模式的に表したものであり、
図6Bは、
図5(B)に示した後述する電源電位値V2の詳細構成例を模式的に表したものである。
【0049】
(簡易波形設定情報Iw1)
簡易波形設定情報Iw1(第1波形設定情報)は、時間軸に沿って設定された1または複数種類の基準電位値V1を、含んでいる。具体的には
図5(A)に示したように、この簡易波形設定情報Iw1は、基準電位値情報としてのVALUEと、基準電位期間情報としてのLENGTH1とをそれぞれ、各基準電位値V1の期間ごとに、有している。つまり、
図5(A)の例では、タイミングt10~t11,t11~t12,t12~t13,t13~t14,t14~t15,t15~t16,t16~t17,t17~t18,t18~t19の期間ごとに、VALUEおよびLENGTH1がそれぞれ、設定されている。
【0050】
VALUEは、1または複数種類の基準電位値V1から選択して設定された任意の基準電位値V1が、時間軸に沿って並んで配置されているものである。具体的には、
図5(A),
図6Aに示した例では、VALUEが2進数の値(2ビット)で示されており、3種類の基準電位値V1との対応関係が、以下のようになっている。
・VALUE=0b00 → V1=GND(グランド電位)
・VALUE=0b01 → V1=VP(所定の正電位)
・VALUE=0b10 → V1=VM(所定の負電位)
【0051】
LENGTH1は、VALUEにおける任意の基準電位値V1ごとの期間を示しており、
図5(A)に示した例では、駆動デバイス41にて使用されている内部クロックの個数(16進数の値の2ビット)にて示されている。具体的には、例えば、内部クロック周期=50[ns]である場合、LENGTH1=0x10では、50[ns]×16=800[ns]という期間となり、LENGTH1=0x1Eでは、50[ns]×30=1.5[μs]という期間となり、LENGTH1=0x3Cでは、50[ns]×60=3.0[μs]という期間となる。
【0052】
(本波形設定情報Iw2)
本波形設定情報Iw2(第2波形設定情報)は、簡易波形設定情報Iw1における基準電位値V1ごとに設定される、複数種類の電源電位値V2を含んでいる。具体的には
図5(B)に示したように、この本波形設定情報Iw2は、電源選択情報としてのASW_SELと、電源電位値情報としてのVSELと、電源電位期間情報としてのLENGTH2とをそれぞれ、各電源電位値V2の期間ごとに、有している。つまり、
図5(B)の例では、タイミングt10~t11,t11~t12,t12~t13,t13~t14,t14~t15,t15~t16,t16~t17,t17~t18,t18~t19の期間ごとに、ASW_SEL、VSELおよびLENGTH2がそれぞれ、設定されている。
【0053】
ASW_SELは、簡易波形設定情報Iw1にて設定されている任意の基準電位値V1(上記したGND、VPまたはVM)ごとに設定されており、複数種類の電源電位値V2のうちの1種類の電源電位値V2を選択するための情報である。具体的には、
図5(B),
図6Bに示した例では、ASW_SELが16進数の値(2ビット)で示されており、6種類の電源電位値V2との対応関係が、以下のようになっている。つまり、基準電位値V1=GND,VP,VMの各々に対応して、GND1/GND2,VP1/VP2,VM1/VM2が、個別に設定されるようになっている。なお、この例では、VC=VM2として、VCには負電位(第2の負電位)が設定されるようになっている。
・ASW_SEL=0x01 → V2=GND1(第1のグランド電位)
・ASW_SEL=0x02 → V2=GND2(第2のグランド電位)
・ASW_SEL=0x04 → V2=VP1(第1の正電位)
・ASW_SEL=0x08 → V2=VP2(第2の正電位)
・ASW_SEL=0x10 → V2=VM1(第1の負電位)
・ASW_SEL=0x20 → V2=VM2(=VC)(第2の負電位)
【0054】
VSELは、ASW_SELによって選択された1種類の電源電位値V2が、時間軸に沿って並んで配置されているものである(
図5(B)参照)。
【0055】
LENGTH2は、VSELにおける1種類の電源電位値V2ごとの期間を示しており、
図5(B)に示した例では、上記したLENGTH1の場合と同様に、駆動デバイス41にて使用されている内部クロックの個数(16進数の値の2ビット)にて示されている。なお、この
図5(A),
図5(B)の示した例では、LENGTH1およびLENGTH2の値がそれぞれ、互いに同一となっている。
【0056】
ここで、本波形設定情報Iw2に含まれる、このようなVSELおよびLENGTH2等を用いて、前述した駆動信号Sdにおける駆動波形が設定されるようになっている。また、前述した波形設定部121において、簡易波形設定情報Iw1を基にして本波形設定情報Iw2を生成する際に、簡易波形設定情報Iw1におけるVALUEから、本波形設定情報Iw2におけるASW_SELへと変換する規則は、例えば以下の通りとなっている。
【0057】
(a1)VALUE=GNDの場合には、ASW_SEL=GND1/GND2、VALUE=VPの場合には、ASW_SEL=VP1/VP2、VALUE=VMの場合には、ASW_SEL=VM1/VM2、をそれぞれ選択する設定に置き換える。
(b1)VALUEの値が設定されたときに、ASW_SELにおいて前回選択された値は選択せず、別の値を選択する。
【0058】
ここで、上記(b1)について詳細に説明すると、
図5(A),
図5(B)の例では、VALUE=0b00(V1=GND)のときに、前回のASW_SEL=0x01(V2=GND1)であった場合には、今回のASW_SEL=0x02(V2=GND2)を選択する。このときに、逆に、前回のASW_SEL=0x02(V2=GND2)であった場合には、今回のASW_SEL=0x01(V2=GND1)を選択する。
【0059】
同様に、
図5(A),
図5(B)の例では、VALUE=0b01(V1=VP)のときに、前回のASW_SEL=0x04(V2=VP1)であった場合には、今回のASW_SEL=0x08(V2=VP2)を選択する。このときに、逆に、前回のASW_SEL=0x08(V2=VP2)であった場合には、今回のASW_SEL=0x04(V2=VP1)を選択する。
【0060】
同様に、
図5(A),
図5(B)の例では、VALUE=0b10(V1=VM)のときに、前回のASW_SEL=0x10(V2=VM1)であった場合には、今回のASW_SEL=0x20(V2=VM2)を選択する。このときに、逆に、前回のASW_SEL=0x20(V2=VM2)であった場合には、今回のASW_SEL=0x10(V2=VM1)を選択する。
【0061】
このようにして、
図5(A),
図5(B)の例では、基準電位値V1ごとの複数種類(この例では2種類)の電源電位値V2がそれぞれ、所定の単位期間ΔT内において、所定の順番で入れ替わるように(この例では、2種類の電源電位値V2が交互に入れ替わるように)、設定されている。これは、詳細は後述するが、基準電位(この例では、GND,VP,VM)ごとの各電源ラインでの単位期間ΔT当たりの許容消費電流値を、見かけ上増加させるためである。具体的には、例えば、1つ当たりの許容消費電流値=300[mA]である、同電位の電源ラインが2つ設けられている場合において、これら2つの電源ラインを交互に選択して駆動波形を設定した場合、全体としての許容消費電流値=600[mA]とみなすことができる。また、このようにして交互に選択する場合でなくても、例えば、単位期間ΔT内において、これら2つの電源ラインの使用頻度(設定頻度)が同じであれば、同様にして、許容消費電流を見かけ上増加させることが可能である。
【0062】
すなわち、このような本波形設定情報Iw2では、単位期間ΔT内における、基準電位値V1ごとの複数種類の電源電位値V2の設定頻度がそれぞれ、各電源電位値V2に対応する各電源ラインでの許容消費電流値の比に応じて、設定されているのが望ましいと言える。具体的には、例えば、V1=GNDに対応したV2=GND1/GND2について、対応する各電源ラインでの許容消費電流値の比が、GND1:GND2=1:2である場合には、単位期間ΔT内でのV2=GND1/GND2の設定頻度も、GND1:GND2=1:2であるのが望ましい。また、上記した例では、単位期間ΔT内における、基準電位値V1ごとの複数種類の電源電位値V2の設定頻度がそれぞれ、互いに同等(望ましくは同一、つまり、1:1)となっている。
【0063】
ここで、上記したフレキシブル基板13a~13dはそれぞれ、本開示における「駆動基板」の一具体例に対応している。また、第1制御通信C1は、本開示における「第1制御通信」の一具体例に対応し、第2制御通信C2は、本開示における「第2制御通信」の一具体例に対応し、第3制御通信C3a~C3dはそれぞれ、本開示における「第3制御通信」の一具体例に対応している。また、簡易波形設定情報Iw1は、本開示における「第1波形設定情報」の一具体例に対応し、本波形設定情報Iw2は、本開示における「第2波形設定情報」の一具体例に対応している。また、第2エラー情報Ie2は、本開示における「エラー情報」の一具体例に対応している。
【0064】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ5の基本動作)
このプリンタ5では、以下のようなインクジェットヘッド1によるインク9の噴射動作を用いて、被記録媒体(記録紙P等)に対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。具体的には、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0065】
まず、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11におけるアクチュエータプレート111内の前述した駆動電極(コモン電極およびアクティブ電極)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する。具体的には、各駆動デバイス41は、前述した吐出チャネルを画成する一対の駆動壁に配置された各駆動電極に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁がそれぞれ、その吐出チャネルに隣接するダミーチャネル側へ、突出するように変形する。
【0066】
このとき、駆動壁における深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁がV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁の屈曲変形により、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形する。このように、一対の駆動壁での圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルの容積が増大する。そして、吐出チャネルの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネル内へ誘導されることになる。
【0067】
次いで、このようにして吐出チャネル内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルの内部に伝播する。そして、ノズルプレート112のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極に印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁が復元する結果、一旦増大した吐出チャネルの容積が、再び元に戻ることになる。
【0068】
このようにして、吐出チャネルの容積が元に戻る過程で、吐出チャネル内部の圧力が増加し、吐出チャネル内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(
図1,
図2,
図4参照)。このようにしてインクジェットヘッド1におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0069】
(B.詳細動作および作用・効果)
続いて、本実施の形態のインクジェットヘッド1における詳細動作、作用および効果について、従来の手法と比較しつつ説明する。
【0070】
(B-1.従来の駆動信号の波形設定について)
まず、近年では、インクジェットヘッド内の噴射部を駆動する駆動信号において、駆動波形の複雑化が進んでいる。このような複雑な波形は、例えば、吐出時に発生する駆動ノイズを低減したり、吐出性能のばらつきを補正したり、印刷品質を向上させるなど、様々な効果を狙って使用されている。具体的には、例えば、前述した特許文献1では、各ノズルの吐出体積のばらつきを抑えるために、各ノズルを駆動する共通な駆動波形に対して、電圧の補正を行うようにしている。
【0071】
ところが、このような手法では、インクジェットヘッドの駆動に対して効果的である反面、駆動波形の設定自体は、更に複雑化していくことになる。また、このような複雑な駆動波形は、正確に設定された状態であれば、狙いの効果を発揮することが可能である一方、仮に誤って設定された場合には、狙いの効果が得られないばかりでなく、インクジェットヘッドの誤動作や故障、破損等にもつながるおそれがある。
【0072】
また、例えば、インクジェットヘッド内に駆動波形の読み出し機能を設けるようにし、インクジェットヘッドに実際に設定された駆動波形と、本来設定されるべき駆動波形とを比較することで、駆動波形設定の誤りを検出して修正する手法も、挙げられる。ただし、この手法では、波形設定に関する送信データと受信データとの比較をしているだけであり、送信データ自体が誤っている場合には、効果が無いことになる。また、送信データが複雑な波形設定である場合には、その複雑な波形設定についてユーザが完全に理解する必要があるため、ユーザの負担が増加してしまうことにもなる。
【0073】
このようにして、インクジェットヘッドに適用される駆動信号の波形設定に関する、従来の手法では、インクジェットヘッドの性能が低下したり、ユーザの利便性が低下してしまうおそれがあると言える。
【0074】
(B-2.本実施の形態)
そこで、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のような構成になっていると共に、以下のような動作を行うようになっている。これにより本実施の形態では、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0075】
(制御切替動作について)
まず、本実施の形態では、前述した外部制御ラインLex上の第1制御通信C1を利用して、インクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)から波形設定部121へと伝送された簡易波形設定情報Iw1に基づいて、波形設定部121において本波形設定情報Iw2が生成される。そして、前述した内部制御ラインLin上の第2制御通信C2を利用して、波形設定部121から制御切替部122へと伝送された本波形設定情報Iw2が、複数の駆動制御ラインLda~Ldd上の第3制御通信C3a~C3dを利用して、制御切替部122から各駆動デバイス41へと伝送される際に、前述した伝送制御動作と遮断制御動作との間での制御切替動作が、制御切替部122にて行われる。
【0076】
ここで、
図7,
図8はそれぞれ、このような伝送制御動作および遮断制御動作の一例を、ブロック図で表したものである。
【0077】
まず、
図7に示した伝送制御動作の際には、複数の駆動制御ラインLda~Lddのうちの少なくとも1つ(この例では、全ての駆動制御ラインLda~Ldd上)での第3制御通信(この例では、全ての第3制御通信C3a~C3d)を利用して、本波形設定情報Iw2が伝送される。具体的には
、この例では、全てのフレキシブル基板13a~13
dにおける駆動デバイス41に対して、本波形設定情報Iw2が、制御切替部122から並行的に伝送される(
図7参照)。これにより、例えば、各フレキシブル基板13a~13d内の駆動デバイス41に対して、本波形設定情報Iw2が順番に伝送される場合と比較して、駆動波形の設定に必要される時間(設定時間)を、最大で1/4ほどに短縮できることになる。
【0078】
一方、
図8に示した遮断制御動作の際には、複数の駆動制御ラインLda~Lddの全てについて、第3制御通信C3a~C3dを利用した本波形設定情報Iw2の伝送がそれぞれ、制御切替部122によって遮断される(
図8中の「×(バツ)」印参照)。つまり、この遮断制御動作の際には、波形設定部121から制御切替部122へと伝送された本波形設定情報Iw2が、全てのフレキシブル基板13a~13d内の各駆動デバイス41に対して、伝送されないこととなる。
【0079】
このようにして本実施の形態では、複数のフレキシブル基板13a~13dのうちの少なくとも1つにおける駆動デバイス41に対して、本波形設定情報Iw2が伝送されたり、あるいは、複数の駆動制御ラインLda~Lddの全てについて、第3制御通信C3a~C3dを利用した本波形設定情報Iw2の伝送が遮断されたりする。これにより、例えば、複数のフレキシブル基板13a~13d上の全ての駆動デバイス41に対して、同一の本波形設定情報Iw2を並行して一括的に供給したり(一括的な波形設定)、複数のフレキシブル基板13a~13d上の駆動デバイス41に対して、互いに異なる本波形設定情報Iw2を個別的に供給したり(個別的な波形設定)、といったインクジェットヘッド1内での各種の波形設定が、容易に実現される。その結果、本実施の形態では、インクジェットヘッド1における利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0080】
更に、本実施の形態では、第3制御通信C3a~C3dおよび第2制御通信C2を利用して、少なくとも1つの駆動デバイス41における第2エラー情報Ie2が、波形設定部121にて収集されて格納されると共に、第1制御通信C1を利用して、このような第2エラー情報Ie2が、インクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)へと出力される。これにより、インクジェットヘッド1のユーザ自身によって、インクジェットヘッド1内の全ての駆動デバイス41についての第2エラー情報Ie2を、個別に収集する手間が省かれることから、例えば、そのようなエラーへの対処を迅速に行うことが可能となる。その結果、インクジェットヘッド1における利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0081】
(波形設定情報について)
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)から供給される簡易波形設定情報Iw1に基づいて、このインクジェットヘッド1内の波形設定部121において、駆動信号Sdの駆動波形を設定するための本波形設定情報Iw2が、生成される。具体的には、この波形設定部121では、前述した基準電位値V1を含む簡易波形設定情報Iw1が、この基準電位値V1ごとに設定される複数種類の電源電位値V2を含む、本波形設定情報Iw2へと変換される。
【0082】
このようにして、駆動信号Sdにおける複雑な波形設定が、インクジェットヘッド1内にて実現されることから、インクジェットヘッド1のユーザにとっては、そのような複雑な波形設定が、容易に実現可能となる。つまり、インクジェットヘッド1のユーザ自身でそのような複雑な波形設定をしたうえで、インクジェットヘッド1を使用する必要が無くなる。よって本実施の形態では、そのような複雑な波形設定がなされた駆動信号Sdを用いて、インクジェットヘッド1の性能を向上させつつ(例えば、残響低減用の補助パルス信号を利用した画質向上や、消費電流の低減、高周波駆動による印刷動作の実現など)、利便性を向上させることが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態では、本波形設定情報Iw2において、前述した単位期間ΔT内における基準電位値V1ごとの複数種類の電源電位値V2の設定頻度がそれぞれ、前述したようにして、各電源電位値V2に対応する各電源ラインでの許容消費電流値の比に応じて設定されている。これにより、基準電位(例えば、GND,VP,VMなど)ごとの各電源ラインでの単位期間ΔT当たりの許容消費電流値を、増加したとみなすことができる。したがって、例えば、インクジェットヘッド1において高周波駆動を行う場合であっても、このインクジェットヘッド1の破損のおそれを、低減することができる。その結果、インクジェットヘッド1の性能を、更に向上させることが可能となる。
【0084】
更に、本実施の形態では、上記した単位期間ΔT内における、基準電位値V1ごとの複数種類の電源電位値V2の設定頻度がそれぞれ、前述したようにして互いに同等となっていることから、以下のようになる。すなわち、上記した基準電位ごとの各電源ラインでの単位期間ΔT当たりの許容消費電流値を、更に増加したとみなすことができる。したがって、例えば、インクジェットヘッド1において高周波駆動を行う場合であっても、このインクジェットヘッド1の破損のおそれを、更に低減することができる。その結果、インクジェットヘッド1の性能を、より一層向上させることが可能となる。
【0085】
加えて、本実施の形態では、上記した単位期間ΔT内において、基準電位値V1ごとの複数種類の電源電位値V2がそれぞれ、前述したようにして所定の順番で入れ替わるように設定されていることから、以下のようになる。すなわち、基準電位値V1ごとの複数種類の電源電位値V2の設定頻度を、上記したように単位期間ΔT内で互いに同等とするのが、容易となる。その結果、インクジェットヘッド1の性能を、より簡易に向上させることが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態では、簡易波形設定情報Iw1が、前述した各情報(VALUE,LENGTH1)を含んで構成されていると共に、本波形設定情報Iw2が、前述した各情報(ASW_SEL,VSEL,LENGTH2)を含んで構成されている。これにより、駆動信号Sdにおける駆動波形が、容易に実現される。つまり、駆動信号Sdにおける前述したような複雑な波形設定が、インクジェットヘッド1内において、更に容易に実現される。その結果、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0087】
更に、本実施の形態では、簡易波形設定情報Iw1に基づいて本波形設定情報Iw2が生成される際に、本波形設定情報Iw2が不適切な内容になると判定された場合には、波形設定部121からインクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)に対して、エラー通知(第1エラー情報Ie1の通知)が行われることから、以下のようになる。すなわち、例えば、そのような不適切な内容の本波形設定情報Iw2を用いて駆動信号Sdの駆動波形を設定した場合における、インクジェットヘッド1の破損のおそれや、インクジェットヘッド1の性能低下のおそれなどを、回避することができる。その結果、インクジェットヘッド1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0088】
加えて、本実施の形態では、簡易波形設定情報Iw1におけるデータ量Dw1が、本波形設定情報Iw2におけるデータ量Dw2未満となっている(Dw1<Dw2)ことから、以下のようになる。すなわち、インクジェットヘッド1の外部(例えば、印刷制御部2等の上流回路)から伝送されるデータ量を、減らすことができる。これにより、駆動信号Sdにおいて、上記したような複雑な波形設定を行う際に、データ伝送による消費電力も減少させることができ、インクジェットヘッド1の性能を更に向上させることが可能となる。また、データの伝送時間が短くなるため、例えば上記した上流回路からインクジェットヘッド1内への設定時間も、短くなる。これにより、インクジェットヘッド1自体で上記したような複雑な波形設定を行っている間に、上流回路やソフトウェアによって他の設定などを行うことも可能なため、例えば、プリンタ5全体での起動時間の短縮などにもつながる。その結果、利便性を更に向上させることが可能となる。加えて、簡易波形設定情報Iw1におけるデータ量Dw1が相対的に少ないことから、インクジェットヘッド1内で必要となるメモリなどの容量を、削減することも可能となる。
【0089】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~3)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0090】
[変形例1]
(構成)
図9は、変形例1に係る液体噴射ヘッドにおいて適用される、簡易波形設定情報Iw1(
図9(A))および本波形設定情報Iw2(
図9(B))の構成例を、タイミング図で表したものである。なお、
図9中の横軸には、時間tを示している。また、
図10Aは、
図9(A)に示した基準電位値V1の詳細構成例を模式的に表したものであり、
図10Bは、
図9(B)に示した電源電位値V2の詳細構成例を模式的に表したものである。
【0091】
なお、この変形例1のインクジェットヘッドは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、この変形例1のインクジェットヘッドを備えたプリンタは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0092】
この変形例1に適用される波形設定情報では、
図9(A)に示した簡易波形設定情報Iw1は、
図5(A)に示した実施の形態の場合と同一の情報となっている一方、
図9(B)に示した本波形設定情報Iw2は、
図5(B)に示した実施の形態の場合とは、異なっている。
【0093】
具体的には、この変形例1の本波形設定情報Iw2は、実施の形態の本波形設定情報Iw2において、以下説明する中間電位値としてのVPHを示す情報(中間電位値情報V3)を、付加的に設定したものとなっている(
図9(B)参照)。詳細には、
図9(B)に示した例では、タイミングt11~t12の期間内(タイミングt11~t21の期間)、タイミングt12~t13の期間内(タイミングt12~t22の期間)、タイミングt13~t14の期間内(タイミングt13~t23の期間)、タイミングt14~t15の期間内(タイミングt14~t24の期間)、タイミングt15~t16の期間内(タイミングt15~t25の期間)、タイミングt16~t17の期間内(タイミングt16~t26の期間)にそれぞれ、そのような中間電位値情報V3が、時間軸に沿った電源電位値V2の間に、付加的に設定されている。
【0094】
一方、この変形例1の簡易波形設定情報Iw1には、実施の形態の簡易波形設定情報Iw1と同様に、そのような中間電位値情報V3は、含まれないようになっている(
図9(A)参照)。
【0095】
ここで、
図10Aに示した、簡易波形設定情報Iw1におけるVALUEと基準電位値V1との対応関係例については、
図6Aに示した実施の形態の場合と、同様となっている。一方、
図10Bに示した、本波形設定情報Iw2におけるASW_SELと電源電位値V2との対応関係例についても、基本的には、
図6Bに示した実施の形態と同様であるが、この
図10Bの例では、ASW_SEL=0x20の場合において、VC=VPHが設定されるようになっている。
【0096】
上記した中間電位値としてのVPH(VSEL=VPH)は、駆動信号Sdの駆動波形において設定される電源電位値V2のうちの、最小値(GND1/GND2)と最大値(VP1/VP2)との間に位置する電位値である。また、
図9(B)に示した例では、このようなVPH=最大値(VP1/VP2)×0.5に設定されている。ただし、VPHの値としては、この例(最大値×0.5)には限られず、最小値と最大値との間に位置する電位値であればよい。
【0097】
また、このようなVPHは、
図9(B)に示したような、階段状の駆動波形(波形の立ち上がりや立ち下がりなど)を設定する際に、そのような立ち上がり段階や立ち下がり段階において、短期間だけ設定されるようになっている。具体的には、そのような立ち上がり段階や立ち下がり段階において、VPHを必ず経由するように設定されている。これにより、詳細は後述するが、このような階段状の駆動波形を設定する際の消費電力(負荷容量である噴射部11に対する駆動電流)を、低減することが可能となっている。
【0098】
ここで、この変形例1の波形設定部121において、簡易波形設定情報Iw1におけるVALUEから、本波形設定情報Iw2におけるASW_SELへと変換する規則は、基本的には、前述した実施の形態の場合と同様に、例えば以下の通りとなっている。
【0099】
(a2)VALUE=GNDの場合には、ASW_SEL=GND1/GND2、VALUE=VPの場合には、ASW_SEL=VP1/VP2、VALUE=VMの場合には、ASW_SEL=VM1、をそれぞれ選択する設定に置き換える。
(b2)VALUEの値が設定されたときに、ASW_SELにおいて前回選択された値は選択せず、別の値を選択する(前述した(b1)と同様)。
(c2)(GND1/GND2)から(VP1/VP2)に立ち上がる場合には、(VP1/VP2)の期間を規定するLENGTH2の値を、減少させる(例えば、0.4[μs]に対応する0x08程度、減少させる)と共に、VPHの期間を規定するLENGTH2の値を、その減少させた値に設定する(
図9(B)参照)。
(d2)(VP1/VP2)から(GND1/GND2)に立ち下がる場合には、(GND1/GND2)の期間を規定するLENGTH2の値を、減少させる(例えば、0.4[μs]に対応する0x08程度、減少させる)と共に、VPHの期間を規定するLENGTH2の値を、その減少させた値に設定する(
図9(B)参照)。
【0100】
また、この変形例1においても実施の形態と同様に、簡易波形設定情報Iw1に基づいて本波形設定情報Iw2が生成される際に、本波形設定情報Iw2が不適切な内容になると判定された場合には、波形設定部121から印刷制御部2に対して、第1エラー情報Ie1の通知が行われる。具体的には、特にこの変形例1では、例えば、上記したVPHの設定期間(
図9(B)中に示した期間ΔtPH参照)の長さが、元の(VP1/VP2)や(GND1/GND2)の設定期間(
図9(B)中に示した期間ΔtP参照)の長さよりも、大きくなってしまうような内容(ΔtPH≧ΔtP)の場合には、本波形設定情報Iw2が不適切な内容になると、判定されることとなる。これは、(ΔtPH≧ΔtP)となってしまうと、VPHの設定期間を付加した際に、(VP1/VP2)や(GND1/GND2)の期間が無くなってしまい、不適切な駆動波形となってしまうからである。なお、このようなVPHの設定期間の長さを示す情報は、例えば、波形設定部121または波形格納部123に、格納されるようになっている。
【0101】
(作用・効果)
このようにして変形例1では、上記した中間電位値情報V3が、本波形設定情報Iw2において付加的に設定されると共に、簡易波形設定情報Iw1には含まれないようになっていることから、以下のようになる。すなわち、簡易波形設定情報Iw1におけるデータ量Dw1を抑えつつ、そのような中間電位値情報V3を用いて駆動信号Sdの駆動波形を設定することで、例えば
図9(B)に示したような、階段状の駆動波形(波形の立ち上がりや立ち下がりなど)を設定する際の消費電力を、低減することができる。その結果、変形例1に係るインクジェットヘッド全体での消費電力の低減を、そのインクジェットヘッド内で容易に実現することが可能となる。
【0102】
[変形例2]
(構成)
図11は、変形例2に係る液体噴射ヘッド(インクジェットヘッド1B)の構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例2のインクジェットヘッド1Bは、
図4に示した実施の形態のインクジェットヘッド1において、I/F基板12の代わりにI/F基板12Bを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0103】
なお、このインクジェットヘッド1Bは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、このインクジェットヘッド1Bを備えたプリンタは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0104】
I/F基板12Bは、I/F基板12において、波形格納部123を更に設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0105】
この波形格納部123は、
図11に示したように、インクジェットヘッド1Bの外部(印刷制御部2)から第1制御通信C1を利用して伝送された簡易波形設定情報Iw1を、格納するものである。また、このようにして波形格納部123に格納されている簡易波形設定情報Iw1に基づいて、波形設定部121が本波形設定情報Iw2を生成するようになっている(
図11参照)。そして、制御切替部122による前述した伝送制御動作の際には、このようにして波形設定部121にて生成された本波形設定情報Iw2が、第3制御通信C3a~C3dを利用して、波形設定部121から制御切替部122を介して、各駆動デバイス41へと伝送されることになる。
【0106】
(作用・効果)
このようにして変形例2では、インクジェットヘッド1Bの外部(印刷制御部2)から第1制御通信C1を利用して伝送された簡易波形設定情報Iw1が、波形格納部123に格納されると共に、この格納されている簡易波形設定情報Iw1に基づいて、波形設定部121にて本波形設定情報Iw2が生成される。そして、制御切替部122による伝送制御動作の際には、第3制御通信C3a~C3dを利用して、本波形設定情報Iw2が駆動デバイス41へと伝送される。
【0107】
これにより、インクジェットヘッド1Bのユーザにとっては、簡易波形設定情報Iw1を波形格納部123に格納させるだけで、このインクジェットヘッド1B内で本波形設定情報Iw2が生成され、駆動デバイス41へと供給されることになる。また、このような構成により、例えば、簡易波形設定情報Iw1に含まれている誤った波形設定を修正したうえで、本波形設定情報Iw2を作成する、といったことも可能となる。したがって、インクジェットヘッド1B内での波形設定が、更に容易に実現されると共に、波形設定の際の正確性も向上する結果、インクジェットヘッド1Bにおける利便性を更に向上させつつ、インクジェットヘッド1Bの性能を向上させることも可能となる。
【0108】
[変形例3]
(構成)
図12は、変形例3に係る液体噴射ヘッド(インクジェットヘッド1C)の構成例を、ブロック図で表したものである。また、
図13は、このインクジェットヘッド1Cにおける後述する直接制御通信の際の動作例を、ブロック図で表したものである。一方、
図14,
図15はそれぞれ、このインクジェットヘッド1Cにおける後述する間接制御通信の際の動作例を、ブロック図で表したものである。
【0109】
この変形例3のインクジェットヘッド1Cは、
図11に示した変形例2のインクジェットヘッド1Bにおいて、I/F基板12Bおよびフレキシブル基板13a~13dの代わりに、I/F基板12Cおよびフレキシブル基板13Ca~13Cdをそれぞれ設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0110】
I/F基板12Cは、I/F基板12Bにおいて、第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bを更に設けると共に、内部制御ラインLinが第1内部制御ラインLin1および第2内部制御ラインLin2により構成されているようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0111】
ここで、インクジェットヘッド1Cは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、このインクジェットヘッド1Cを備えたプリンタは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、上記した第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bはそれぞれ、本開示における「ライン切替部」の一具体例に対応している。また、このうちの第1ライン切替部124aは、本開示における「第1のライン切替部」の一具体例に対応し、第2ライン切替部124bは、本開示における「第2のライン切替部」の一具体例に対応している。また、上記した第1内部制御ラインLin1は、本開示における「第1の内部制御ライン」の一具体例に対応し、上記した第2内部制御ラインLin2は、本開示における「第2の内部制御ライン」の一具体例に対応している。
【0112】
また、フレキシブル基板13Ca~13Cdはそれぞれ、これまでに説明したフレキシブル基板13a~13dにおいて、駆動情報格納部42を更に設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている(
図12~
図15参照)。
【0113】
この駆動情報格納部42は、各駆動制御ラインLda~Ldd上にそれぞれ設けられており、対応するフレキシブル基板13Ca~13Cdにおける駆動条件(例えば、吐出性能を向上させるための適切な各種駆動条件)を含む、駆動情報Idを格納するものである。このような駆動情報Idとしては、例えば、各フレキシブル基板13Ca~13Cdと接続されている、噴射部11内の各ノズル列の駆動に関する情報や、このような各ノズル列同士の吐出性能ばらつきを抑制するために使用される電圧情報(ランク電圧)などが、含まれている。また、ノズル列自体の個体識別情報や、インクジェットヘッド1Cの工場出荷時の性能データの情報や、インクジェットヘッド1Cの累積起動時間の情報なども、駆動情報Idに含まれているようにしてもよい。このような情報も駆動情報Idに含まれているようにした場合、仮に、I/F基板12Cを取り換えた場合でも、噴射部11に関するこれらの情報を、そのまま継承することが可能となる。
【0114】
上記した第1内部制御ラインLin1は、
図12に示したように、波形設定部121と第1ライン切替部124aとの間に、配置されている。また、第2内部制御ラインLin2は、
図12に示したように、第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bと、制御切替部122と、波形格納部123との間に、配置されている。
【0115】
第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bはそれぞれ、間接制御通信(
図14,
図15参照)と、直接制御通信(
図13参照)とのうちの一方が選択的に実行されるように、制御ラインの接続切替を行うもの(ライン切替部)である。具体的には、第1ライン切替部124aは、間接制御通信の際に選択的に接続されるようになっており(
図14,
図15参照)、第2ライン切替部124bは、直接制御通信の際に選択的に接続されるようになっている(
図13参照)。
【0116】
また、このような選択的接続の制御は、波形設定部121から第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bへとそれぞれ出力される、選択信号SEL1,SEL2によって行われている(
図12~
図15参照)。具体的には、間接制御通信の際には、波形設定部121によって、選択信号SEL1=「H(ハイ)」状態、および、選択信号SEL2=「L(ロー)」状態に設定されることで、第1ライン切替部124aが接続状態(有効状態)に、第2ライン切替部124bが非接続状態(無効状態)に、それぞれ設定される(
図14,
図15参照)。一方、直接制御通信の際には、波形設定部121によって、選択信号SEL1=「L」状態、および、選択信号SEL2=「H」状態に設定されることで、第1ライン切替部124aが非接続状態(無効状態)に、第2ライン切替部124bが接続状態(有効状態)に、それぞれ設定される(
図13参照)。
【0117】
ここで、例えば
図13に示したように、直接制御通信とは、波形設定部121を介さない、インクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)と制御切替部122との間の制御通信のことである。この直接制御通信の際には、上記したように、第2ライン切替部124bが選択的に接続されることで、外部制御ラインLex、第2ライン切替部124bおよび第2内部制御ラインLin2を介して、印刷制御部2と、制御切替部122および波形格納部123との間が、(波形設定部121を介さずに)直接的に接続されるようになっている(
図13参照)。したがって、例えば
図13中に示したように、インクジェットヘッド1C内での波形設定の際に、印刷制御部2から波形格納部123に対して、簡易波形設定情報Iw1を(波形設定部121を介さずに)直接的に供給できるようになっている。また、このような直接制御通信の際には、制御切替部122は、前述した遮断制御動作を実行することにより、外部制御ラインLexと各駆動制御ラインLda~Lddとの間の接続を、遮断させるようになっている(
図13中に示した「×」印参照)。
【0118】
一方、例えば
図14,
図15に示したように、間接制御通信とは、波形設定部121を介した、インクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)と制御切替部122との間の制御通信のことである。この間接制御通信の際には、上記したように、第1ライン切替部124aが選択的に接続されることで、外部制御ラインLex、波形設定部121、第1内部制御ラインLin1、第1ライン切替部124aおよび第2内部制御ラインLin2を介して、印刷制御部2と、制御切替部122および波形格納部123との間が、(波形設定部121を介して)間接的に接続されるようになっている(
図14,
図15参照)。したがって、例えば
図14中に示したように、インクジェットヘッド1C内での波形設定の際に、波形格納部123に格納されている簡易波形設定情報Iw1が、第2内部制御ラインLin2、第1ライン切替部124aおよび第1内部制御ラインLin1を介して、波形設定部121へと供給されるようになっている。また、この波形設定部121にて生成された本波形設定情報Iw2が、第1内部制御ラインLin1、第1ライン切替部124aおよび第2内部制御ラインLin2を介して、制御切替部122へと供給されるようになっている(
図14参照)。そして、制御切替部122は、前述した伝送制御動作を実行することにより、受け取った本波形設定情報Iw2を、第3制御通信C3a~C3dを利用して、各フレキシブル基板13Ca~13Cd内の駆動デバイス41へと伝送するようになっている(
図14参照)。
【0119】
また、例えば
図15に示したように、波形設定部121は、この間接制御通信の際に、前述した各種のエラー情報(第1エラー情報Ie1および第2エラー情報Ie2)に加えて、前述した駆動情報Idも、インクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)へと出力するようになっている。具体的には、波形設定部121は、まず、第3制御通信C3a~C3dおよび第2制御通信C2を利用して、各駆動制御ラインLda~Ldd上における前述した駆動情報格納部42から、駆動情報Idを収集して格納する(
図15参照)。そして、波形設定部121は、このようにして格納した駆動情報Idを、第1制御通信C1を利用して、印刷制御部2へと出力するようになっている(
図15参照)。
【0120】
(作用・効果)
このようにして、変形例3のインクジェットヘッド1Cでは、上記した間接制御通信と直接制御通信とのうちの一方が実行されるように、ライン切替部(第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124b)による接続切替が行われることから、以下のようになる。すなわち、必要に応じて、波形設定部121を介さない直接制御通信が実行可能となることから、例えば、インクジェットヘッド1C内での波形設定の際に、このインクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)から波形格納部123に対して、簡易波形設定情報Iw1を直接的に供給できるようになる。これにより、波形設定部121を介した間接制御通信を利用する場合とは異なり、この波形設定部121内での処理の遅延等を回避できることから、インクジェットヘッド1C内での波形設定を、迅速に行うことができる。その結果、インクジェットヘッド1Cにおける利便性を、より一層向上させることが可能となる。
【0121】
ここで、波形設定部121は内での処理の遅延等について、詳細に説明すると、以下の通りである。すなわち、まず、簡易波形設定情報Iw1を波形格納部123に読み書きする場合、波形設定部121は、例えば波形格納部123への制御通信かどうかを判別し、該当する制御通信であった場合のみ、波形格納部123に対して内部制御ラインLinを用いて制御通信を行うようにする必要がある。このような制御通信の振り分け処理が、波形設定部121にて行われるようにした場合、印刷制御部2から波形設定部121への制御通信の後に、この振り分け処理と波形格納部123への制御通信とが発生する。そして、その期間内においては、印刷制御部2が次の制御通信を行うことができなくなり、待ち時間が発生してしまうことになる。その結果、大量の制御通信を用いて行う駆動波形設定の際に、そのような待ち時間が頻発することから、駆動波形設定を行う時間が、大幅に増加してしまうのである。
【0122】
また、この変形例3では、上記したライン切替部が、第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bを含んで構成されていると共に、内部制御ラインLinが、第1内部制御ラインLin1および第2内部制御ラインLin2を含んで構成されていることから、以下のようになる。すなわち、上記した間接制御通信および直接制御通信の際に、第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124bの一方のみがそれぞれ、選択的に接続されることになる。したがって、インクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)からの制御(直接制御通信を利用した制御)と、波形設定部121からの制御(間接制御通信を利用した制御)とが、波形格納部123や制御切替部122に対して、同時に起こり得ないようにすることができる。これにより、上記したようなインクジェットヘッド1C内での迅速な波形設定が、容易に実現される結果、インクジェットヘッド1Cにおいて、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0123】
更に、この変形例3では、直接制御通信の際には、制御切替部122による遮断制御動作が実行されることで、外部制御ラインLexと複数の駆動制御ラインLda~Lddとの間の接続が遮断されることから、以下のようになる。すなわち、インクジェットヘッド1Cの外部(例えば、印刷制御部2等の上流回路)からは、インクジェットヘッド1C内について、波形設定部121および波形格納部123しか認識できない状態となるため、例えば、インクジェットヘッド1Cの外部から駆動デバイス41に対して誤った波形設定を行うことを、防ぐことができる。これにより、インクジェットヘッド1Cにおける利便性を更に向上させると共に、上記したような誤った波形設定に起因した、インクジェットヘッド1Cの性能低下を防止することも可能となる。
【0124】
加えて、この変形例3では、第3制御通信C3a~C3dおよび第2制御通信C2を利用して、駆動情報格納部42に格納されている駆動情報Idが、波形設定部121にて収集されて格納されると共に、第1制御通信C1を利用して、このような駆動情報Idがインクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)へと出力される。これにより、各フレキシブル基板13a~13dにおける前述した駆動条件を含む駆動情報Idを、インクジェットヘッド1Cのユーザ自身によって個別に収集する手間が省かれ、容易に取得することができる。その結果、インクジェットヘッド1Cにおける利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0125】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0126】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0127】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、I/F基板、フレキシブル基板(駆動基板)、駆動デバイス、各種の制御ラインおよびライン切替部等の構成例について、具体的に挙げて説明したが、これらの構成例は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。例えば、上記実施の形態等では、本開示における「駆動基板」がフレキシブル基板である場合を、例に挙げて説明したが、例えば、本開示における「駆動基板」が、非フレキシブル基板であってもよい。また、上記実施の形態等では、本開示における「ライン切替部」の一例として、2つのライン切替部(第1ライン切替部124aおよび第2ライン切替部124b)によって構成されている場合について説明したが、他の構成によって本開示における「ライン切替部」を実現してもよい。
【0128】
更に、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの数値例については、実施の形態等で説明した数値例には限られず、他の数値であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した波形設定情報(簡易波形設定情報Iw1および本波形設定情報Iw2)のデータ構成例についても、上記実施の形態等で説明した例には限られず、他のデータ構成であってもよい。
【0129】
加えて、上記実施の形態等で説明した、制御切替動作(伝送制御動作および遮断制御動作)や、間接制御通信および直接制御通信の各動作、波形設定情報(本波形設定情報Iw2)の生成動作、各種エラー情報の通知動作等については、上記実施の形態等で説明した動作例には限られず、他の動作例であってもよい。
【0130】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば、アクチュエータプレート111における各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0131】
更に、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッド、あるいは、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドのいずれであっても、本開示を適用することが可能である。
【0132】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0133】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0134】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0135】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0136】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記液体を噴射する噴射部と、
複数の駆動基板と、
前記複数の駆動基板内にそれぞれ設けられており、前記噴射部に対して所定の駆動波形を有する駆動信号を印加することによって前記液体を噴射させる、1または複数の駆動デバイスと、
前記駆動波形の設定を行う波形設定部と、
前記波形設定部と前記複数の駆動基板との間に配置された制御切替部と、
前記液体噴射ヘッドの外部と前記波形設定部との間での第1制御通信が行われる、外部制御ラインと、
前記波形設定部と前記制御切替部との間での第2制御通信が行われる、内部制御ラインと、
前記制御切替部と、前記複数の駆動基板の各々における前記駆動デバイスとの間において、第3制御通信が個別的に行われる、複数の駆動制御ラインと
を備え、
前記波形設定部は、前記液体噴射ヘッドの外部から前記第1制御通信を利用して伝送された第1波形設定情報に基づいて、前記駆動波形を設定するための第2波形設定情報を生成し、
前記制御切替部は、
前記波形設定部から前記第2制御通信を利用して伝送された前記第2波形設定情報を、前記第3制御通信を利用して前記駆動デバイスへと伝送させる際に、
前記複数の駆動制御ラインのうちの少なくとも1つの駆動制御ライン上での前記第3制御通信を利用して、前記複数の駆動基板のうちの少なくとも1つの駆動基板における前記駆動デバイスに対して、前記第2波形設定情報を伝送させる伝送制御動作と、
前記複数の駆動制御ラインの全てについて、前記第3制御通信を利用した前記第2波形設定情報の伝送を遮断させる遮断制御動作と、
の間での制御切替を行う
液体噴射ヘッド。
(2)
前記液体噴射ヘッドの外部から前記第1制御通信を利用して伝送された前記第1波形設定情報を格納する、波形格納部を更に備え、
前記波形設定部は、
前記波形格納部に格納されている前記第1波形設定情報に基づいて、前記第2波形設定情報を生成すると共に、
前記制御切替部による前記伝送制御動作の際には、前記第3制御通信を利用して、前記第2波形設定情報を前記駆動デバイスへと伝送させる
上記(1)に記載の液体噴射ヘッド。
(3)
前記波形設定部を介した前記液体噴射ヘッドの外部と前記制御切替部との間の制御通信である、間接制御通信と、
前記波形設定部を介さない前記液体噴射ヘッドの外部と前記制御切替部との間の制御通信である、直接制御通信と、
のうちの一方が実行されるように制御ラインの接続切替を行う、ライン切替部を更に備えた
上記(2)に記載の液体噴射ヘッド。
(4)
前記ライン切替部が、
前記間接制御通信の際に選択的に接続される第1のライン切替部と、
前記直接制御通信の際に選択的に接続される第2のライン切替部と
を含んで構成されていると共に、
前記内部制御ラインが、
前記波形設定部と前記第1のライン切替部との間に配置された、第1の内部制御ラインと、
前記第1および第2のライン切替部と前記制御切替部との間に配置された、第2の内部制御ラインと
を含んで構成されている
上記(3)に記載の液体噴射ヘッド。
(5)
前記制御切替部は、
前記直接制御通信の際には、前記遮断制御動作を実行することにより、
前記外部制御ラインと前記複数の駆動制御ラインとの間の接続を、遮断させる
上記(3)または(4)に記載の液体噴射ヘッド。
(6)
前記波形設定部は、
前記複数の駆動基板における前記駆動デバイスのうちの少なくとも1つの駆動デバイスにおいて検出されたエラーに関する、前記エラーが検出された前記駆動デバイスと対応付けたエラー情報を、
前記第3制御通信および前記第2制御通信を利用して、前記少なくとも1つの駆動デバイスから収集して格納すると共に、
前記第1制御通信を利用して、前記エラー情報を前記液体噴射ヘッドの外部へと出力する
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(7)
前記複数の駆動制御ライン上にはそれぞれ、対応する前記駆動基板における駆動条件を含む駆動情報を格納する、駆動情報格納部を更に備え、
前記波形設定部は、
前記第3制御通信および前記第2制御通信を利用して、前記複数の駆動制御ライン上の各々における前記駆動情報格納部から、前記駆動情報を収集して格納すると共に、
前記第1制御通信を利用して、前記駆動情報を前記液体噴射ヘッドの外部へと出力する
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(8)
前記第1波形設定情報が、時間軸に沿って設定された1または複数種類の基準電位値を含む、簡易波形設定情報であり、
前記第2波形設定情報が、前記基準電位値ごとに設定される複数種類の電源電位値を含む、本波形設定情報であり、
前記波形設定部は、前記簡易波形設定情報を前記本波形設定情報へと変換することにより、前記簡易波形設定情報に基づいて前記本波形設定情報を生成する
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(9)
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0137】
1,1B,1C…インクジェットヘッド、10…コネクタ、11…噴射部、111…アクチュエータプレート、112…ノズルプレート、12,12B,12C…I/F基板、120a,120b,120c,120d…コネクタ、121…波形設定部、122…制御切替部、123…波形格納部、124a…第1ライン切替部、124b…第2ライン切替部、13a,13b,13c,13d,13Ca,13Cb、13Cc,13Cd…フレキシブル基板、141,142…冷却ユニット、2…印刷制御部、3…インクタンク、30…インク供給管、41…駆動デバイス、42…駆動情報格納部、433…圧着電極、5…プリンタ、9…インク、P…記録紙、Hn…ノズル孔、Sc…印刷制御信号、Sd…駆動信号、Vd…駆動電圧、Ac…回路配置領域、Lex…外部制御ライン、Lin…内部制御ライン、Lin1…第1内部制御ライン、Lin2…第2内部制御ライン、Lda,Ldb,Ldc,Ldd…駆動制御ライン、C1…第1制御通信、C2…第2制御通信、C3a,C3b,C3c,C3d…第3制御通信、Iw1…簡易波形設定情報、Iw2…本波形設定情報、Ie1…第1エラー情報、Ie2…第2エラー情報、Id…駆動情報、Dw1,Dw2…データ量、V1…基準電位値、V2…電源電位値、V3…中間電位値情報、SEL1,SEL2…選択信号、t…時間、t10~t19,t21~t26…タイミング、ΔT…単位期間、ΔtP,ΔtPH…期間。