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特許7547173振動型アクチュエータ、多軸ステージ、多関節ロボット及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】振動型アクチュエータ、多軸ステージ、多関節ロボット及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H02N2/04
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020183713
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073612
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】有満 安倫
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200374(JP,A)
【文献】特開2014-072986(JP,A)
【文献】特開2020-058174(JP,A)
【文献】特開2019-198227(JP,A)
【文献】特開2013-230018(JP,A)
【文献】特開平07-319543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体と、前記振動体を保持する保持部と、を有する振動体ユニットと、
加圧手段と、
前記加圧手段による加圧力により前記振動体と接触する接触体と、を備え、
前記振動体に所定の振動が励起されることにより前記接触体と前記振動体ユニットとが第1の方向に相対移動する振動型アクチュエータであって、
前記接触体と前記振動体ユニットとが前記第1の方向に相対移動している際に前記振動体ユニットが少なくとも前記加圧手段による加圧方向へ変位することができように前記保持部を連結対象物に対して前記第1の方向において連結する連結部を備え
前記連結部は、2自由度以上の回転自由度を有する回転軸を有し、前記振動体ユニットに対して1自由度以上の回転自由度を有する回転軸によって拘束されていることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項2】
前記連結部は、所定の間隔をもって略平行に配置される2本の円柱状の軸部を有し、
前記保持部は、前記2本の軸部のうちの一方の軸部を回転可能に保持する隙間穴を有することを特徴とする請求項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項3】
前記連結部は、軸部の両端に球体部が設けられた構造を有し、
前記保持部は、前記球体部を回転可能に保持する球状の穴を有することを特徴とする請求項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項4】
振動体と、前記振動体を保持する保持部と、を有する振動体ユニットと、
加圧手段と、
前記加圧手段による加圧力により前記振動体と接触する接触体と、を備え、
前記振動体に所定の振動が励起されることにより前記接触体と前記振動体ユニットとが第1の方向に相対移動する振動型アクチュエータであって、
前記接触体と前記振動体ユニットとが前記第1の方向に相対移動している際に前記振動体ユニットが少なくとも前記加圧手段による加圧方向へ変位することができように前記保持部を連結対象物に対して前記第1の方向において連結する連結部と、
複数の前記振動体ユニットと、を備え、
前記連結部は、前記第1の方向に並べて配置される2個の前記振動体ユニットを連結し、前記2個の振動体ユニットのそれぞれに1自由度の回転自由度をもって拘束されていることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項5】
前記複数の振動体ユニットを支持する支持部材を備え、
前記支持部材に取り付けられて、前記第1の方向と前記加圧手段による加圧方向とに直交する第2の方向への前記連結部の変位を規制する変位抑制部を備えることを特徴とする請求項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項6】
前記複数の振動体ユニットのうち前記第1の方向の端にそれぞれ位置する振動体ユニットの保持部に取り付けられて、前記接触体を前記第1の方向に移動可能に支持する接触体支持部を備えることを特徴とする請求項又はに記載の振動型アクチュエータ。
【請求項7】
前記振動体ユニットを支持する支持部材を備え、
前記支持部材に取り付けられて、前記複数の振動体ユニットのうち前記第1の方向の少なくとも一方の端に位置する振動体ユニットの前記第1の方向への移動を規制する第1の拘束部を備えることを特徴とする請求項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1の拘束部は、前記第1の方向と前記加圧手段による加圧方向とに直交する第2の方向への前記振動体ユニットの移動を規制することを特徴とする請求項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項9】
前記支持部材に取り付けられて、前記複数の振動体ユニットのうち前記第1の方向の一方の端に位置する振動体ユニットの、前記第1の方向と前記加圧手段による加圧方向とに直交する第2の方向への変位を規制する第2の拘束部を備えることを特徴とする請求項又はに記載の振動型アクチュエータ。
【請求項10】
前記複数の振動体ユニットのうちなくとも1つの振動体ユニット保持部に取り付けられ、前記第1の方向と前記加圧手段による加圧方向とに直交する第2の方向および前記第1の方向への前記保持部の変位を規制する支持案内部を備えることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項11】
前記複数の振動体ユニットのうち少なくとも2個の振動体ユニットは、前記2個の振動体ユニットのそれぞれが有する振動体が前記第1の方向と直交する平面において異なる角度で前記接触体に接触するよう配置されていることを特徴とする請求項又はに記載の振動型アクチュエータ。
【請求項12】
前記振動体ユニットを支持する支持部材を備え、
前記連結部は、前記振動体ユニットおよび前記支持部材のそれぞれに対して1自由度の回転自由度をもって拘束された状態で、前記振動体ユニットと前記支持部材とを連結していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項13】
前記支持部材に取り付けられて、前記接触体を前記第1の方向に移動可能に支持する接触体支持部を備えることを特徴とする請求項12に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項14】
前記支持部材に取り付けられて、前記第1の方向と前記加圧手段による加圧方向とに直交する第2の方向への前記連結部の変位を規制する変位抑制部を備えることを特徴とする請求項12又は13に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項15】
前記振動体ユニットは、前記加圧手段が前記振動体を前記接触体に押し当てる加圧力の反力を受ける反力受部を備えることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項16】
前記反力受部は、前記接触体に接触し、前記接触体との間に生じる摩擦力によって前記接触体の移動に伴って回転するローラであることを特徴とする請求項15に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項17】
前記振動体ユニットは、前記接触体を挟んで配置された2つの前記振動体を有し、
前記2つの振動体のうち1つの振動体が前記反力受部として機能することを特徴とする請求項15に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項18】
前記振動体は、
前記接触体と接触する突起部を有する弾性体と、
前記弾性体に取り付けられた電気-機械エネルギ変換素子と、を有し、
前記突起部の先端に前記第1の方向と前記加圧手段による加圧方向とを含む平面内で楕円運動が励起されて前記突起部が前記接触体に推力が与えられることにより前記接触体と前記振動体ユニットとが相対移動することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項19】
接触体と、
それぞれが前記接触体と接触する振動体と、前記振動体を保持する保持部とを有する第1の振動体ユニットおよび第2の振動体ユニットと、
前記第1の振動体ユニットの振動体を前記接触体に対して所定の加圧力で押し当てる第1の加圧手段と、
前記第1の加圧手段による加圧力の反力を受ける第1の反力受部と、
前記第2の振動体ユニットの振動体を前記接触体に対して前記所定の加圧力で押し当てる第2の加圧手段と、
前記第2の加圧手段による加圧力の反力を受ける第2の反力受部と、を備える振動型アクチュエータであって、
前記第1の振動体ユニットおよび前記第2の振動体ユニットと前記接触体とが相対移動する際に前記接触体の形状に起因して、前記第1の振動体ユニットの振動体と前記接触体との接触面の位置が前記第1の加圧手段による加圧方向において変化し、および/または、前記第2の振動体ユニットの振動体と前記接触体との接触面の位置が前記第2の加圧手段による加圧方向において変化した場合に、前記第1の加圧手段と前記第2の加圧手段によるそれぞれの加圧力の差が小さくなり、且つ、前記第1の反力受部と前記第2の反力受部が受けるそれぞれの反力の差が小さくなるように、前記第1の振動体ユニットと前記第2の振動体ユニットとを、前記第1の振動体ユニットを前記第1の加圧手段による加圧方向へ変位可能に且つ前記第2の振動体ユニットを前記第2の加圧手段による加圧方向へ変位可能に連結する連結部を備えることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータと、
前記振動型アクチュエータにより駆動される部品と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータと、
前記振動型アクチュエータが固定される固定部と、
前記接触体に接続されて前記固定部に対して所定の方向に相対移動するステージと、を備えることを特徴とする多軸ステージ。
【請求項22】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータを駆動源として備えることを特徴とする多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータと、振動型アクチュエータを備える多軸ステージ、多関節ロボット及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる振動モードを組み合わせた振動を振動体に発生させて、振動体とこれに接触する接触体との間に推力を発生させる振動型アクチュエータが知られている。また、単一の振動モードを振動体に発生させて、振動体と接触体との間の摩擦力を変化させる振動型アクチュエータが知られている。これらの振動型アクチュエータについて、推力やトルクの増大、設計自由度の向上、故障リスクの分散等を図るために、複数の振動体を設けた構成が提案されている。例えば、特許文献1は、複数の振動体(圧電振動子)を直列に配列して共通の接触体(動体)を所定方向に移動させる構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-316675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術のように複数の振動体を備える振動型アクチュエータでは、複数の振動体の構成に合わせて接触体の長手方向(移動方向)のサイズが大きくなる。そのため、接触体を高い精度で成形(製造)することが容易でなくなり、また、経時的に接触体の形状を長手方向において高い精度で維持すること(つまり、長手方向での変形を抑制すること)が容易でなくなる場合がある。
【0005】
接触体の形状精度が高くない場合や接触体に変形が生じた場合には、複数の振動体ごとに接触体との間に生じる加圧力とその反力にばらつきが生じ、その結果、次のような問題が生じる。例えば、接触体の形状精度が高くない場合には、振動体ごとに接触体へ与える推力がばらついてしまうことにより、所望の駆動特性が得られないおそれがある。また、接触体の変形により加圧力と反力が減少した場合には、振動体と接触体との間に生じる摩擦力が小さくなるため、推力やトルクが低下してしまう。一方、接触体の変形により加圧力と反力が増大した場合には、振動体とこれを保持する各種部品に変形や破損が生じ、また、振動体と接触体との間に生じる摩擦力の増大により振動体又は接触体の摩耗が急速に進行して、装置寿命が短くなるおそれがある。
【0006】
なお、振動体が1個のみの振動型アクチュエータであっても、同様の問題が生じ得る。つまり、接触体が相対移動方向となっている一方向にのみ長い形状を有する場合には、振動体と接触体との間に作用する加圧力とその反力の大きさが、接触体の形状に起因して、接触体と振動体との相対移動に伴って変化してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、接触体と振動体との相対移動に伴って接触体と振動体との間に生じる加圧力とその反力の変化を小さくすることができる振動型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る振動型アクチュエータは、振動体と、前記振動体を保持する保持部と、を有する振動体ユニットと、加圧手段と、前記加圧手段による加圧力により前記振動体と接触する接触体と、を備え、前記振動体に所定の振動が励起されることにより前記接触体と前記振動体ユニットとが第1の方向に相対移動する振動型アクチュエータであって、前記接触体と前記振動体ユニットとが前記第1の方向に相対移動している際に前記振動体ユニットが少なくとも前記加圧手段による加圧方向へ変位することができように前記保持部を連結対象物に対して前記第1の方向において連結する連結部を備え、前記連結部は、2自由度以上の回転自由度を有する回転軸を有し、前記振動体ユニットに対して1自由度以上の回転自由度を有する回転軸によって拘束されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接触体と振動体との相対移動に伴って接触体と振動体との間に生じる加圧力とその反力の変化を小さくすることができる振動型アクチュエータを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】振動体の概略構成を示す図である。
図2】振動体に励起される振動モードを説明する模式図である。
図3】第1実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図4】2個の振動体ユニットの部分的な正面図及び下面図である。
図5】振動体ユニットを連結する連結部とその変形例の構成を説明する図である。
図6】振動体ユニットを構成する保持部とその変形例の構成を説明する図である。
図7】接触体に歪みが生じている振動型アクチュエータの挙動を説明する図である。
図8】第2実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図9】振動型アクチュエータにおいて反力受部と接触体支持部が兼用された構成例を説明する図である。
図10】第3実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を説明する図である。
図11】振動型アクチュエータの変位抑制部の概略構成を示す斜視図である。
図12】第4実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図13】第5実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図14】第6実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図15】第7実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を説明する図である。
図16】第8実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図17】第9実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成を示す正面図である。
図18】複数の振動体による接触体の支持手法を説明する模式図である。
図19】振動体ユニットに変位検出手段を設けた構成例を説明する図である。
図20】第10実施形態に係るアクチュエータユニットの概略構成を説明する図である。
図21】第11実施形態に係るアクチュエータユニットの概略構成を説明する図である。
図22】第12実施形態に係る装置の概略構成を示す平面図である。
図23】第13実施形態に係る装置の概略構成を説明する図である。
図24】第14実施形態に係る多軸ステージの概略構成を示す平面図である。
図25】第15実施形態に係る多関節ロボットの概略構成を示す平面図である。
図26】第16実施形態に係る多関節ロボットの概略構成を示す平面図である。
図27図27の多関節ロボットを構成するワイヤ駆動マニピュレータの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
最初に後述する各実施形態に係る振動型アクチュエータに共通して用いられる振動体及び接触体について説明する。図1(a)は振動型アクチュエータを構成する振動体1の概略構成を示す平面図であり、図1(b)は振動体1の正面図であり、図1(c)は振動体1の側面図である。
【0013】
なお、説明の便宜上、図1(a)~(c)に示すように、振動体1に対して、x軸(x方向)、y軸(y方向)及びz軸(z方向)からなる直交座標系を設定する。z方向は、振動体1の厚さ方向であり、2か所に設けられた突起部2a(詳細は後述する)の突出方向である。y方向は、振動体1の長手方向であり、2か所の突起部2aを結ぶ方向である。x方向は、振動体1の短手方向(幅方向)であり、y方向及びz方向と直交する方向である。図1に示す各方向について、各方向を示す矢印の始点から終点へ向かう方向を正方向(+方向)とし、終点から始点へ向かう方向を負方向(-方向)とする。
【0014】
振動体1は、弾性を有する弾性体2と、弾性体2に接合された電気-機械エネルギ変換素子3を備える。電気-機械エネルギ変換素子3は、例えば、逆圧電効果によって電圧を力に変換する圧電素子であり、矩形薄板状の圧電セラミックスの表裏面に所定の電圧が印加される電極が設けられて構成される。弾性体2は、突起部2a、釣支部2b、支持端部2c及びベース部2dを有する。2か所の突起部2aは、矩形平板状のベース部2dにおいて電気-機械エネルギ変換素子3が接合されている面の反対の面に+z方向へ突出するように設けられている。なお、突起部2aは、弾性体2(ベース部2d)をプレス加工する等して形成してもよいし、突起状部材を所定の方法によりベース部2dに接合することによって設けてもよい。支持端部2cは、後述する保持部8に振動体1を固定するための矩形平板状の部位である。釣支部2bは、ベース部2dと支持端部2cとを接続する役割を担う矩形平板状の部位である。
【0015】
ここで、突起部2aについてより詳細に説明する。図1(d)は突起部2aの概略構造を示す断面図である。突起部2aの母材2eの表面には摩擦材2fが設けられている。なお、ここでは、母材2eの材質はベース部2d(図1(d)に不図示)の材質と同じである。母材2eにマルテンサイト系のステンレス鋼が用いられる場合、摩擦材2fには、無電解ニッケルめっき皮膜、クロームめっき皮膜、焼入れによる硬化層、イオン窒化処理による窒化皮膜等を用いることができる。また、母材2eにPEEK-CF30等の繊維強化されたエンジニアリングプラスチックや硬質セラミックスを用いることで、母材2eに摩擦材2fを兼用させる(この場合には母材2eと摩擦材2fの区別はない)構成を採用することもできる。
【0016】
次に、振動体1に励起される2つの振動モード(振動形状)について説明する。図2(a)は振動体1に励起される第1の振動モードを説明する模式図であり、図2(b)は振動体1に励起される第2の振動モードを説明する模式図である。なお、図2では振動体1の変形は誇張表現されている。また、説明の便宜上、振動体1と接触し、振動体1から推力(摩擦駆動力)を受ける接触体4を図2に示している。
【0017】
接触体4は、振動体1(突起部2a)と接触する部材である。振動体1に発生した振動によって、振動体1と接触体4とは、後述するようにy方向で相対移動する。接触体4と振動体1との接触は、接触体4と振動体1との間に他の部材が介在しない直接接触に限られない。接触体4と振動体1の接触は、振動体1に発生させた振動によって振動体1と接触体4とが相対移動するならば、接触体4と振動体1との間に他の部材が介在する間接接触であってもよい。
【0018】
図2(a)に示す第1の振動モードは、x方向に略平行な3個の節線がベース部2dに生じる二次の面外曲げ振動モードであり、この振動モードによって2か所の突起部2aの先端にはy方向に変位する振動が励起される。一方、図2(b)に示す第2の振動モードは、y方向に略平行な2個の節線がベース部2dに生じる一次の面外曲げ振動モードであり、この振動モードによって2か所の突起部2aの先端にはz方向に変位する振動が励起される。
【0019】
位相の異なる複数の交番電圧を電気-機械エネルギ変換素子3に印加することによって第1の振動モードと第2の振動モードの各振動を同時に励起させると、2個の突起部2aの先端部に、各振動が組み合わされた楕円運動をyz平面内で生じさせることができる。突起部2aの先端部にyz平面内で楕円運動が生じると、接触体4はy方向への推力を受け、その結果、振動体1と接触体4をy方向に相対移動させることが可能になる。
【0020】
なお、電気-機械エネルギ変換素子3へ電圧を印加しない状態では、突起部2aと接触体4との間の静止摩擦力が、振動体1と接触体4との相対位置を維持する保持力として作用する。また、電気-機械エネルギ変換素子3へ印加する電圧を調整して振動体1に励起する振動の振幅を調整することにより、突起部2aと接触体4との接触時間を調整して見かけの摩擦力を変化させることができる。更に振動体1に第2の振動モードの振動のみを励起し、その振動振幅を制御することによって、突起部2aと接触体4との間に生じる摩擦力を変化させることができる。これらを用いれば、例えば、振動体1に対して接触体4が移動する構成の場合、接触体4に外力(振動体1以外からの力)を加えて接触体4を移動させる際の反力の大きさを調節することができる。例えば、ユーザが接触体4に直接的に外力を加えて操作した際にユーザが受ける操作反力を調節することができる。
【0021】
振動体1を用いた振動型アクチュエータでは、詳細は後述するが、図2に示すように突起部2aの先端部は接触体4と接触する。接触体4において突起部2aと接触する表面(摩擦摺動面)には摩擦材4aが設けられている。そして、前述したように突起部2aの表面には摩擦材2fが設けられている。これにより、弾性体2と接触体4との間で安定した摩擦摺動特性を得ることができる。なお、摩擦材4aの素材及び形成方法は、摩擦材2fの素材及び形成方法に準ずる。
【0022】
続いて、振動体1と接触体4に用いられる材料について説明する。弾性体2に用いられる材料としては、振動損失の少ないマルテンサイト系ステンレス鋼や部分安定化ジルコニア(PSZ)等の高靭性セラミックスが挙げられる。その他に、30wt%程度の炭素繊維によって強化されたポリエーテルエーテルケトン(PEEK-CF30)等のエンジニアリングプラスチック(FRP)や炭化ケイ素(SiC)等の半導体、アルミニウム合金等が挙げられる。電気-機械エネルギ変換素子3には、チタン酸鉛-ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが用いられる。接触体4には、マルテンサイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、PEEK-CF30等のFRP、PSZやアルミナ(酸化アルミニウム)等のファインセラミックス等が用いられる。なお、振動体1と接触体4に用いられる材料(素材)は、ここに挙げたもの限定されるものではない。
【0023】
<第1実施形態>
図3は第1実施形態に係る振動型アクチュエータ101の概略構成を示す正面図である。振動型アクチュエータ101は、y方向に直列に配置された2個の振動体ユニット5と、2個の振動体ユニット5のそれぞれの振動体1と接触する接触体4を備える。なお、振動体1について設定したx方向、y方向及びz方向にしたがって、振動型アクチュエータ101について図3に示すようにx方向、y方向及びz方向を設定する。また、以下に説明する他の実施形態に係る振動型アクチュエータを含めて、y方向を振動型アクチュエータの左右方向として、+y側を右側、-y側を左側とする。また、z方向を振動型アクチュエータの上下方向として、+z側を上側、-z側を下側とする。
【0024】
振動体ユニット5は、振動体1、不織布16、加圧部7、保持部8、反力受部9及び回転支持部10を有する。振動体ユニット5は、図2に示した振動モードの振動を励振可能な加圧支持構造を有する。1つの振動体ユニット5において、振動体1の(弾性体2の)支持端部2cは、保持部8の側壁であるy方向側の壁部の上面に固定されている。電気-機械エネルギ変換素子3の裏面側(弾性体2と接合されている面の反対側の面)には不織布16が配置されている。不織布16は、羊毛フェルト等の不織布素材やグラスウール等からなる布状部材であって、振動体1に生じる振動モードを維持しながら振動体1を支持する。加圧部7が不織布16と図4(c)を参照して後述するスペーサ19とを介して振動体1を接触体4に押圧することにより、振動体1の突起部2aは接触体4に接触する。なお、振動体1は保持部8に固定されているため、保持部8は振動体1と一体となって接触体4に向けて押圧されている。
【0025】
ここで、不織布16の設置方法について説明する。図4(a)は2個の振動体ユニット5の部分的な正面図であり、図4(b)は図4(a)に対応する下面図である。保持部8にはz方向に貫く貫通穴8eが設けられており、振動体1が保持部8に保持された状態で保持部8を-z方向側から見ると、電気-機械エネルギ変換素子3が貫通穴8eから露出した状態となっている。不織布16(図4(b)のハッチング領域)は、電気-機械エネルギ変換素子3に接するように貫通穴8eの内部に設置される。
【0026】
なお、電気-機械エネルギ変換素子3の裏面(-z方向側の面)には、不図示であるが実際には電気-機械エネルギ変換素子3に給電を行うためのフレキシブル配線板が取り付けられる。よって、正確には、不織布16は、電気-機械エネルギ変換素子3に取り付けられたフレキシブル配線板と接するように設置される。
【0027】
図4(c)は、不織布16の-z方向側に配置されるスペーサ19の概略構成を不織布16と共に示す斜視図である。なお、スペーサ19は、図1乃至図3では保持部8によって隠れるために不図示となっている。スペーサ19は、略直方体の形状を有し、不織布16が貼り付けられた状態で、z方向に変位可能に、貫通穴8eに嵌め込まれる。
【0028】
加圧部7は、スペーサ19を介して不織布16を電気-機械エネルギ変換素子3に圧接させ、これにより、振動体1の突起部2aが接触体4に所定の押圧力で押し当てられる。加圧部7は、例えば、z方向に復元力を呈するコイルばね、板ばね、皿ばね、ウェーブワッシャ、ゴム、エアチューブ等の弾性力を有する部品によって構成される。図3には、加圧部7に圧縮コイルばねを用いた例が示されている。
【0029】
反力受部9は、接触体4の上面(接触体4における突起部2aとの接触面の反対側の面)に接触するように配置されており、振動体1(突起部2a)を接触体4に押圧する加圧力の反力を受ける。振動型アクチュエータ101では、反力受部9は、支持部材15に取り付けられた回転支持部10に、x軸と平行な軸を中心として回転可能に支持されたローラである。支持部材15は、振動型アクチュエータ101を構成する各種部品を組み付けるための基材である。振動型アクチュエータ101では、振動型アクチュエータ101を搭載した機器のフレーム等に支持部材15が固定されており、機器内において位置が変わらない支持部材15(振動体ユニット5)に対して接触体4がy方向に移動するものとする。
【0030】
接触体4は、2個の振動体ユニット5がそれぞれ備える振動体1から受ける推力によりy方向に移動可能な状態で支持部材15に支持されている。具体的には、接触体4を移動可能に支持する接触体支持部12として、z軸と平行な軸を中心として回転可能な4個のローラが、支持部材15に設けられている。4個の接触体支持部12は、接触体4のx方向における自由度を拘束した状態でy方向への移動を可能とするリニアガイドの役割を担っている。
【0031】
2個の振動体ユニット5のうち右側(+y側)に位置する振動体ユニット5の保持部8は、連結部14によって支持部材15に取り付けられている。また、2個の振動体ユニット5のうち左側の振動体ユニット5の保持部8は、連結部14によって右側の振動体ユニット5の保持部8に連結されている。
【0032】
図5(a)は連結部14の概略構成を示す斜視図である。連結部14は、x方向に貫通するように所定の間隔で2個の穴が設けられたリンク部材14b(結合部)と、リンク部材14bの2つの穴にそれぞれ挿入されて略平行にリンク部材14bに取り付けられる円柱形状のピン14a(軸部)を有する。2本のピン14aはリンク部材14bのそれぞれの穴においてリンク部材14bに固定されている。なお、2個のピン14aとリンク部材14bは、z方向から見た場合にH型に一体的に(継ぎ目無く)成形されたものであってもよい。
【0033】
2個のピン14aの一方は、図3中に示す支持部材15の基準原点Oから+z方向に距離L1だけ離れた位置に位置決めされ、これにより連結部14は支持部材15に位置決めされたピン14aの中心軸を回転中心とした回転自由度を有する。一方、接触体4の中心は、支持部材15に位置決めされたピン14aの中心から+z方向に距離L2だけ離れた位置に位置決めされる。こうして、接触体4は、支持部材15の基準原点Oから+z方向に距離L1+L2だけ離れた位置に精度よく位置決めされる。
【0034】
ここで、連結部14の変形例について説明する。図5(b)は連結部14の第1の変形例である連結部14eの概略構成を示す斜視図である。連結部14eは、リンク部材14cと、2本のピン14aから構成される。ピン14aは、図5(a)を参照して説明したものと同じである。リンク部材14cにはx方向に貫通する2個の穴が設けられており、それぞれの穴に連通するように+z側に開口部14dが設けられている。ピン14aは、x方向から挿嵌するのではなく、+z側から開口部14dを通じて穴に押し込んで嵌め込むスナップフィット構造となっており、これにより容易に連結部14eを組み立てることが可能となっている。
【0035】
図5(c)は連結部14の第2の変形例である連結部14hの概略構成を示す斜視図である。連結部14hは、円柱状のリンク部材14f(軸部)の両端に球体部14gが設けられたボールジョイントである。連結部14hにより支持部材15と保持部8とを連結する場合には、一方の球体部14gは保持部8に、他方の球体部14gは支持部材15にそれぞれ可動に配置される。
【0036】
連結部14,14e,14hの回転自由度について説明する。本発明に係る振動型アクチュエータに用いられる連結部は、2自由度以上の回転自由度を有する回転軸を有し、1自由度以上の回転自由度を有する回転軸によって振動体ユニットに拘束されるものであればよい。連結部14,14eは、2本のピン14aの軸まわりの2自由度を有する。換言すれば、連結部14,14eは、支持部材15や振動体ユニット5に対して、1自由度を有するピン14aによって拘束される。一方、連結部14hは、1個の球体部14gについて2自由度を有する。換言すれば、連結部14hは、支持部材15や振動体ユニット5に対して、2回転自由度を有するの球体部14gによって拘束される。また、連結部14hは、リンク部材14fのy軸と平行な軸まわりの1自由度を有する。つまり、連結部14hは、合計で5自由度を有する。よって、連結部14hを用いた場合には、連結部14,14eを用いた場合と比較して、接触体4の所定の方向での捻れ等を含む複雑な形状に対して振動体ユニット5を追従させることや、振動体ユニット5を曲面に沿って配置することが可能となる。振動体ユニット5を曲面に沿って配置する具体的な構成として、図21を参照して振動体ユニット5を円周状に配置した構成について後述する。
【0037】
次に、連結部14等により複数の振動体ユニット5を連結するための保持部8の構成について説明する。図6(a)は保持部8の概略構成を示す正面図である。保持部8の左右端(y方向端)にはそれぞれ、ピン14aを挿嵌するための円筒状の隙間穴8aと、連結部14のリンク部材14bを配置する凹部8g(図4(b)参照)が設けられている。リンク部材14bと凹部8gとの間には、適切な隙間が設けられている。ピン14aが隙間穴8aに対して可能な限りがたつきなく挿嵌されることにより保持部8は連結部14によって連結され、その状態で保持部8と連結部14はピン14aの中心軸まわりに相対的に回転可能な自由度を有する。つまり、2個の振動体ユニット5は、連結部14でx軸と平行な軸まわりの回転の2自由度を有することによって、z方向に変位可能で且つx軸と平行な軸まわりに傾斜可能となっている。
【0038】
図6(b)は保持部8の変形例に係る保持部8hの概略構成を示す正面図である。保持部8hは、隙間穴8aの-z側に開口部8dを設け、ピン14aをx方向から挿嵌するのではなく、-z側から開口部8dを通じて隙間穴8aに押し込んで嵌め込むスナップフィット構造となっている。この場合、事前にピン14aがリンク部材14bに固定された状態の連結部14を保持部8hに-z側から簡単に組み付けることができるため、生産性を向上させることが可能となる。
【0039】
上記の通りに構成された振動型アクチュエータ101では、2個の振動体ユニット5を備えることによって推力やトルクを増大させており、接触体4は厚さ(z方向長さ)及び幅(x方向長さ)に比較して、移動方向であるy方向の長さが大きくなっている。この場合、接触体4には、加工や使用材料の残留応力等に起因してy方向において撓みや捻れが生じやすく、よって、接触体4の形状精度を高めることは容易ではない。この問題は、振動型アクチュエータ101の小型化を図るために接触体4の厚さを薄くした場合等には更に顕著となる。仮に接触体4を高い形状精度で加工することができたとしても、その後に焼入れやイオン窒化処理、アニール処理等の熱処理を行った場合や経時変化に起因して接触体4に長手方向で撓みや捻れ等が生じることは容易に想定される。
【0040】
接触体4の元々の形状精度が高くない場合や接触体4に変形が生じた場合、接触体4に対する振動体ユニット5の加圧方向であるz方向でのこれらの相対位置が変化するため、複数の振動体ユニット5ごとに振動体1を接触体4に押し当てる加圧力に差が生じる。このような加圧力の変化は、接触体4のy方向の移動によって変化することが想定される。例えば、理想的な状態(設計値)から加圧力が小さくなった振動体1では、接触体4との間に生じる摩擦力が低下するため、推力やトルクが低下する可能性がある。一方、理想的な状態よりも加圧力が大きくなった振動体1では、振動体1と接触体4の接触面の面圧が過大となってしまうことで異常な摩耗が生じるおそれがある。また、振動体1の駆動時に接触体4から受ける反力が大きくなることによって振動体1の釣支部2bに変形や破損が生じるおそれがある。
【0041】
このような問題の発生を回避するために、振動型アクチュエータ101は、複数の振動体ユニット5が独立してz方向に変位可能に支持されている。以下、この特徴的な構成について詳細に説明する。
【0042】
図7は、接触体4にyz平面に平行な平面内で歪みが生じている場合の振動型アクチュエータ101の挙動を説明する正面図である。なお、図7では、振動体ユニット5の動きを分かりやすくするために、接触体4の変形(歪み)が誇張して表現されている。
【0043】
振動型アクチュエータ101では、2個の振動体ユニット5がそれぞれ連結部14を介して接触体4の歪みに従動(追従)してz方向に変位可能である。これにより、2個の振動体1の接触体4に対するそれぞれの加圧力とその反力の変化を小さくすることができる。つまり、y方向において接触体4に撓みや捻れ等が生じていても、振動体ユニット5がz方向に従動的に変位することにより、2個の振動体ユニット5で接触体4に対する振動体1の加圧力や反力受部9が受ける反力の大きさを常に一定に維持することができる。その結果、2個の振動体ユニット5は接触体4に対して適切な大きさの推力(例えば、設計値の推力)を効率よく発生させることができる。また、加圧力不足による推力不足の発生や過大な加圧力に起因する摩耗や破損の発生を抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図8は第2実施形態に係る振動型アクチュエータ102の概略構成を示す正面図である。なお、図示の通りに振動型アクチュエータ102に対して設定した直交座標系は第1実施形態に準じており、以下に説明する各実施形態に係る振動型アクチュエータ及びアクチュエータユニットについても同様に直交座標系を設定する。また、振動型アクチュエータ102の構成要素のうち、振動型アクチュエータ101(図3参照)の構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能や構成についての説明を省略する。
【0045】
振動型アクチュエータ102は3個の振動体ユニット11を備える。振動体ユニット11は、振動型アクチュエータ101に用いられている振動体ユニット5を構成する保持部8、加圧部13、反力受部9及び回転支持部10を一体的にユニット化するための保持部18を有する。振動体ユニット11では、保持部18の内部に不織布16が貼り付けられたスペーサ19が配置されている。そして、振動体1を構成する電気-機械エネルギ変換素子3に不織布16が接触した状態で、振動体1のy方向端の支持端部2cは保持部18に固定されている。なお、不織布16が貼り付けられたスペーサ19は、振動体ユニット5と振動体ユニット11とでは、形状(サイズ)は異なるが、共通して図4(c)に示した構成となっている。
【0046】
反力受部9は、接触体4と突起部2aの接触面の反対側(接触体4の上方(+z側))に設けられており、振動体1(突起部2a)を接触体4に加圧する力の反力を受ける。反力受部9は、振動型アクチュエータ101の回転支持部10と同等の回転支持部10(不図示)によってx軸と平行な軸まわりに回転可能に支持されており、且つ、回転支持部10に対して圧縮コイルばねが加圧部13として配置されている。こうして、加圧部13の加圧反力(圧縮コイルバネがz方向に伸びようとする力)によって、反力受部9が接触体4に押圧されると共に、振動体1の突起部2aの先端が接触体4に押圧される。
【0047】
3個の振動体ユニット11のうち左右(-y側と+y側)の2個の振動体ユニット11はそれぞれ、連結部14を介して支持部材15に連結されており、これにより振動型アクチュエータ101の右側の振動体ユニット5と同様に、z方向に変位可能となっている。中央の1個の振動体ユニット11は、連結部14を介して右側の振動体ユニット11と連結されており、これにより振動型アクチュエータ101の左側の振動体ユニット5と同様に、z方向に変位可能となっている。なお、振動型アクチュエータ102では、左側の振動体ユニット11と中央の振動体ユニット11とは、互いに拘束されることなく独立している。振動型アクチュエータ102の他の要素については、振動型アクチュエータ101と同様に構成されているため、説明を省略する。
【0048】
なお、振動型アクチュエータ102では、連結部14と接触体4との干渉が懸念される場合には、連結部14をx方向に所定の距離だけオフセットさせて設置することにより、この問題を解消することができる。また、振動型アクチュエータ102では、複数の(具体的には3個の)連結部14は、それぞれのピン14aが接触体4と突起部2aとの接触面と同一のxy平面上に配置されるように配置されることが望ましい。例えば、接触体4に第1実施形態で説明したように歪みや捻れ等の変形が生じているとする。その場合、接触体4の形状に倣ってそれぞれの振動体ユニット11がz方向に変位する際には、接触体4と突起部2aとの間に生じる推力によるyz面内の力のモーメントが連結部14のピン14aを支点として発生する。このとき、接触体4と突起部2aとの接触面と同一平面上にピン14aがあれば、推力が発生する点と回転運動が発生する支点が同一面内となるため、振動体ユニット11での推力発生時に接触体4に生じさせる曲げモーメントの発生を抑制することができる。その結果、3個の振動体ユニット11は、接触体4に対して適切な大きさの推力を効率的に発生させることが可能になる。また、3個の振動体ユニット11のそれぞれの摩擦摺動部における加圧力のばらつきや変動を抑制することが可能になることで、過大な加圧力に起因する摩耗や破損を抑制することができる。
【0049】
ところで、上述した振動型アクチュエータ101,102の構成では、反力受部9と接触体支持部12とは、相異なる構成要素として振動体ユニット5,11に設けられている。但し、このような構成に限られず、図9を参照して以下に説明する構成とすることも可能である。
【0050】
図9(a)~(d)はそれぞれ、反力受部9と接触体支持部12とを兼用した構成例を説明する図である。図9(a)は、反力受部及び接触体支持部として機能するローラ9a,9bを備える構成を示している。ローラ9a,9bはzx断面がV字形状の溝を有する架台24に設けられており、zx断面が三角形状の接触体4Kは振動体1によって上方向(+z方向)に押圧される。ローラ9a,9bはそれぞれ、回転軸22,23を中心として接触体4Kに従動して回転する。ローラ9a,9bは、接触体4Kの押圧によるz方向の加圧力に対する反力を生じさせる反力受部として機能すると共に、接触体4Kのx方向における自由度を拘束する接触体支持部として機能する。
【0051】
図9(b)は、反力受部及び接触体支持部として機能する転動体9cを備える構成を説明を示している。球状の転動体9cは、接触体4Lにy方向に延在するように設けられたV字状の溝4dと架台25によってz方向で挟持されて、振動体1によって上方向(+z方向)に押圧される。転動体9cは、接触体4Lへの押圧によるz方向の加圧力に対する反力を生じさせる反力受部として機能すると共に、接触体4Lのx方向における自由度を拘束する接触体支持部として機能する。
【0052】
図9(c)は、接触体4Mに設けられた複数の(2本の)V字状の溝4dにそれぞれ、図9(b)の構成に用いられている転動体9d,9eを配置した構成を示している。図9(b),(c)の各構成からわかるように、接触体に設ける溝の数に制限はなく、例えば、接触体の幅(x方向長さ)に合わせて、接触体を安定してy方向に移動可能とする溝数を決定し、各溝に転動体を配置した構成とすることができる。
【0053】
図9(d)は、接触体4Nの摩擦摺動面側にV字状の溝4dを設け、溝4dの斜面に突起部2aを圧接させた構成を示している。この構成では、振動体1の突起部2aが反力受部及び接触体支持部として機能する。図9(a)~(d)の構成を振動型アクチュエータ101,102に適用することにより、振動体ユニット5,11の部品数を削減して、構成の簡素化を図ることができる。
【0054】
ここまで、2個の振動体ユニット5を備える振動型アクチュエータ101と、3個の振動体ユニット11を備える振動型アクチュエータ102について説明した。しかし、1個の振動体ユニット5又は振動体ユニット11を支持部材15に連結部14を介して連結する構成であっても、接触体4に対する振動体1の加圧力とその反力の変化を小さく保つ効果を得ることができる。
【0055】
また、1個の振動型アクチュエータに含まれる振動体ユニットの数は、接触体の長さや必要な推力、振動型アクチュエータの仕様等に応じて、適宜、変更され得る。また、振動型アクチュエータ101,102では支持部材15に4個の接触体支持部12が設けられているが、接触体支持部の数はこれに限定されず、3個以上であればよい。更に、接触体支持部は必ずしも支持部材に設ける必要はなく、後述するように振動体ユニットを構成する保持部に設けることも可能である。
【0056】
振動型アクチュエータ101,102では、反力受部9及び接触体支持部12にはそれぞれ、所定の位置において軸まわりに回転可能であり、且つ、接触体4を支持可能なローラを用いている。反力受部9及び接触体支持部12には、これに限定されず、可動な回転軸を有し、接触体4に対してばね等の弾性体で付勢される定圧予圧構成のローラや、接触体を支持可能な任意の滑り案内機構を用いてもよい。また、振動体ユニット5,11の1個ごとに設けられる反力受部9の数や形状、配設位置は任意に設定が可能であり、接触体4に対する振動体1の加圧反力を受ける任意の要素が反力受部9として採用され得る。
【0057】
そして、接触体4として、y方向に一体的に(構造的に繋ぎ目なく)延在した棒状のものを取り上げたが、接触体は短冊状に形成された複数の素材を接合した積層構造を有するものであってもよい。また、振動体と接触体の相対移動方向において振動体ユニットは動かずに接触体が移動する構成について説明したが、逆に接触体が動かずに振動体ユニットが移動する構成とすることも可能である。
【0058】
<第3実施形態>
図10は第3実施形態に係る振動型アクチュエータ201の概略構成を示す正面図である。なお、振動型アクチュエータ201の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能や構成についての説明を省略する。
【0059】
振動型アクチュエータ201は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する3個の振動体ユニット20を備える。3個の振動体ユニット20はそれぞれ、接触体4を挟んで上下方向(z方向)で対向するように配置された2個の振動体1を有し、それぞれの振動体1の突起部2aが接触体4に所定の加圧力で接触している。接触体4は、上下面(xy面)が突起部2aとの摩擦摺動面となるため、接触体4の上下面には摩擦材4a(図2参照)が設けられていることが望ましい。
【0060】
振動体ユニット20は、振動型アクチュエータ102(図8参照)の振動体ユニット11と比較すると、反力受部9を振動体1の突起部2aに置換した構成と言うことができる。保持部18は、振動体ユニット11の保持部18と同等である。
【0061】
図10(b)は、スペーサ19の概略構成を示す斜視図である。保持部18に保持された振動体1はそれぞれ、上面に不織布16が貼り付けられたスペーサ19に支持されている。スペーサ19は、不織布16が電気-機械エネルギ変換素子3と接するように、それぞれの振動体1に対してが配置される。スペーサ19の側面には、加圧部17として用いられている引張コイルばねの端部を引っ掛けるためのフック19aが設けられている。振動体ユニット20では、接触体4を挟んで配置された2個のスペーサ19をz方向において引張コイルばねで引き寄せることにより、2個の振動体1が接触体4に引き寄せられて、突起部2aが所定の加圧力で接触体4に接触している。
【0062】
支持部材15には接触体支持部12が設けられている。接触体支持部12による接触体4のy方向への案内方法は、第1及び第2実施形態と同様である。3個の振動体ユニット20のうち左右(-y側、+y側)に配置された2個の振動体ユニット20は、振動型アクチュエータ102の左右の振動体ユニット11と同様に、連結部14を介して支持部材15に連結されている。また、3個の振動体ユニット20のうち中央の振動体ユニット20は、右側の振動体ユニット20と連結部14を介して連結されている。こうして、3個の振動体ユニット20はそれぞれz方向に変位可能となっている。
【0063】
第2実施形態でも述べたように、連結部14と接触体4との干渉が懸念される場合には、連結部14をx方向に所定の距離だけオフセットさせて設置することが望ましい。なお、振動型アクチュエータ201では、振動型アクチュエータ102と同様に、左側の振動体ユニット20と中央の振動体ユニット20は、互いに拘束されずに独立している。
【0064】
振動型アクチュエータ201では、連結部14は、接触体4を挟んで対向する突起部2aの先端を結ぶ中心点を含む平面内(接触体4のz方向の中心を通ってy軸と平行な平面内)にピン14aの中心が位置するように配置されることが好ましい。これは、第2実施形態で説明したように、振動体ユニット20の推力発生時に接触体4に生じさせる曲げモーメントの発生を抑制することができるからである。
【0065】
振動型アクチュエータ201では、右側の振動体ユニット20と中央の振動体ユニット20を連結する連結部14は、変位抑制部21によってx方向の自由度を拘束された状態となっている。図11は変位抑制部21の概略構成を示す斜視図である。変位抑制部21は、門型の形状を有しており、その底面部21bが支持部材15に固定される。底面部21bの支持部材15への固定方法には、接着剤を用いる方法や、底面部21bに設けられた隙間穴21aを利用してビスやリベット等により固定する方法を用いることができる。
【0066】
変位抑制部21は、連結部14のリンク部材14bの両側面(x方向側面)が変位抑制部21の内壁21cとの間に収まるように支持部材15に固定される。その際、リンク部材14bの両側面と内壁21cとの間に生じる隙間は、連結部14がz方向に滑らかに動くことができる範囲で、できるだけ小さいことが望ましい。
【0067】
振動型アクチュエータ201では、反力受部9が振動体1の突起部2aに置換されているため、接触体4を駆動する突起部2aの数が増大することにより、大きな推力を得ることができる。また、振動体1の突起部2aが反力受部9として機能するため、反力受部9として別途の部品が不要となるため、構成の簡素化を実現することができる。更に、3個の振動体ユニット20のうち中央の振動体ユニット20に取り付けられた連結部14の側面を変位抑制部21で拘束している。これにより、中央の振動体ユニット20へx方向の外力及びz軸と平行な軸まわりのモーメントが加わった際に、これらの力やモーメントを受ける部品が破損することを抑制することが可能になる。
【0068】
<第4実施形態>
図12は第4実施形態に係る振動型アクチュエータ202の概略構成を示す正面図である。なお、振動型アクチュエータ202の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能や構成についての説明を省略する。
【0069】
振動型アクチュエータ202は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する3個の振動体ユニット26を備える。なお、支持部材15には接触体支持部12が設けられており、接触体支持部12による接触体4のy方向への案内方法は、振動型アクチュエータ101(図3参照)と同様である。
【0070】
3個の振動体ユニット20はそれぞれ、接触体4を挟んでz方向で対向するように配置された2個の振動体1を有し、それぞれの振動体1の突起部2aが接触体4に所定の加圧力で接触している。振動体1は保持部8に支持されており、その支持方法及び不織布及びスペーサの設置方法は振動型アクチュエータ102(図8参照)と同様である。保持部8の側面にはフック8fが設けられている。フック8fには加圧部17として用いられている引張コイルばねの端部が引っ掛けられており、これにより、個々の振動体ユニット26において2個の振動体1は保持部8を介して接触体4に引き寄せられて接触体4に所定の加圧力で接触する。
【0071】
3個の振動体ユニット26のうち左右に配置された2個の振動体ユニット26をそれぞれ構成する2個の保持部8は、図3(振動型アクチュエータ101)の構成と同様に、連結部14を介して支持部材15に連結されており、これによりz方向に変位可能である。3個の振動体ユニット26のうち中央の振動体ユニット26を構成する2個の保持部8は、図4に示した構成で右側の振動体ユニット26を構成する保持部8と連結部14を介して連結されており、これによりz方向に変位可能となっている。なお、振動型アクチュエータ202でも、左側の振動体ユニット26と中央の振動体ユニット26は、互いに拘束されずに独立している。
【0072】
振動型アクチュエータ202では、z方向で対向する突起部2aの先端を結ぶ中心点を含む平面上に、つまり、接触体4のz方向の中心上に、z方向で対向するピン14aの中点が配置されるように連結部14がz方向で対向するように設けられることが望ましい。また、振動型アクチュエータ202では、3か所に設けられた変位抑制部21によって保持部8のx方向の自由度を拘束している。変位抑制部21が保持部8の自由度を拘束する態様は、上述の第3実施形態において変位抑制部21が連結部14を拘束する態様と同様である。右側の変位抑制部21は、その内壁21c(図11参照)が2個の振動体ユニット26を構成する4個の保持部8の側面と対向してx方向の自由度を拘束している。このとき、保持部8のx方向側面と変位抑制部21の内壁21cとの間に生じる隙間は、保持部8がz方向に滑らかに動くことができる範囲で、できるだけ小さいことが望ましい。変位抑制部21の固定方法は、第3実施形態での説明の通りである。
【0073】
このように振動型アクチュエータ202は、振動型アクチュエータ201(図10参照)とは異なる支持構造でこれと同等の性能を得ることができる。また、振動型アクチュエータ202では、振動体ユニット26を連結部14によって支持部材15に連結することができればよいためにその他の支持機構を支持部材15側に設ける必要がなく、よって、支持部材15の剛性に対する要求レベルが下がる。したがって、支持部材15を軽量化、小型化して、振動型アクチュエータ202全体の小型軽量化を図ることが可能になる。例えば、接触体4をステンレス系金属で形成する場合、接触体4のy方向の曲げ剛性に比べて支持部材15の曲げ剛性を小さくすることができるため、支持部材15を樹脂等で形成して軽量化を図ることが可能になる。
【0074】
<第5実施形態>
図13は第5実施形態に係る振動型アクチュエータ203の概略構成を示す正面図である。なお、振動型アクチュエータ203の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能及び構成についての説明を省略する。
【0075】
振動型アクチュエータ203は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する3個の振動体ユニット20を備える。接触体支持部12は、3個の振動体ユニット20のうち左側に位置する振動体ユニット20の左端部と、右側に位置する振動体ユニット20の右端部にそれぞれ設けられている。より詳しくは、接触体支持部12は、振動体ユニット20を構成する保持部18に配置され、接触体4のx方向の自由度を拘束して、接触体4をy方向に案内する。
【0076】
3個の振動体ユニット20のうち左側の振動体ユニット20の保持部18は、回転支点型の拘束部31を介して支持部材15に支持されている。拘束部31は、例えば、蝶番や弾性ヒンジ等である。拘束部31は、x軸と平行で支点Aを通る軸まわりに振動体ユニット20を回転可能に支持する一方で、支持した振動体ユニット20のy方向及びz方向の位置を拘束している。拘束部31によって左側の振動体ユニット20が相対的に支持部材15に対して位置決めされることにより、左側の振動体ユニット20に設けられた接触体支持部12によって、接触体4もまた支持部材15に対して精度よく位置決めされる。
【0077】
一方、3個の振動体ユニット20のうち右側の振動体ユニット20の保持部18は、移動支点型の拘束部32を介して支持部材15に支持されている。拘束部32は、例えば、ローラとリニアガイドを含んで構成されている。拘束部32は、x軸と平行で支点Bを通る軸まわりに振動体ユニット20を回転可能に支持する。振動体ユニット20は、拘束部32によって、x方向の位置は拘束されるが、y方向には一定距離だけ移動可能となっている。
【0078】
3個の振動体ユニット20のうち中央の振動体ユニット20は、連結部14により左側及び右側の振動体ユニット20と連結され、その連結方法は振動型アクチュエータ201(図10参照)での右側及び中央の振動体ユニット20の連結方法と同じである。つまり、右側及び中央の振動体ユニット20を連結する連結部14は、x方向の変位(移動)が変位抑制部21によって規制されている。
【0079】
このように振動型アクチュエータ203では、振動型アクチュエータ201とは異なる支持構造で振動型アクチュエータ201と同等の性能を得ることができる。また、振動型アクチュエータ203では、接触体支持部12を支持部材に設けず、振動体ユニット20の一部に設けているため、接触体4と振動体1の相対的な位置決め精度を向上させることができる。その際、接触体4の移動方向であるy方向(左右方向)の左右に位置する振動体ユニット30に接触体支持部12を設けることにより、支持部材15に対するy方向及びz方向での接触体4の位置決め精度を向上させることができる。
【0080】
<第6実施形態>
図14は第6実施形態に係る振動型アクチュエータ204の概略構成を示す正面図である。なお、振動型アクチュエータ204の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能及び構成についての説明を省略する。
【0081】
振動型アクチュエータ204は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する3個の振動体ユニット20を備える。振動型アクチュエータ204では、振動型アクチュエータ203(図13参照)と同様に、接触体支持部12は、3個の振動体ユニット20のうち左側の振動体ユニット20の左端部と、右側の振動体ユニット20の右端部にそれぞれ設けられている。
【0082】
左右の振動体ユニット20の保持部18はそれぞれ、回転支点型の拘束部31を介して支持部材15に支持されている。拘束部31は、左側の振動体ユニット20を支点Cを通りx軸と平行な軸まわりに回転可能に支持し、同様に、右側の振動体ユニット20を支点Dを通りx軸に平行な軸まわりに回転可能に支持する。こうして、左右の振動体ユニット20のy方向及びz方向での位置は、拘束部31によって拘束されている。中央の振動体ユニット20は、連結部14によって左側の振動体ユニット20と連結されており、その連結方法及び変位抑制部21によるx方向の自由度の拘束については、振動型アクチュエータ201(図10参照)の中央の振動体ユニットと同様である。
【0083】
このように振動型アクチュエータ204では、振動型アクチュエータ201とは異なる支持構造で振動型アクチュエータ201と同等の性能を得ることができる。第5及第6実施形態では拘束部31,32を用いた振動体ユニットの支持態様の例について説明したが、これに限らず、アプリケーションや仕様によって制約されることの多い支持部材15の内部構造に鑑みて、適切な拘束部を選択すればよい。
【0084】
<第7実施形態>
図15(a)は第7実施形態に係る振動型アクチュエータ205の概略構成を示す平面図である。図15(b)は振動型アクチュエータ205の正面図である。なお、図15(b)では、振動体ユニット20の支持構造を明らかにするために、支持部材15の+z側の部分を省略している。また、振動型アクチュエータ205構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能及び構成についての説明を省略する。
【0085】
振動型アクチュエータ205は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する3個の振動体ユニット20を備える。左右の振動体ユニット20は、振動型アクチュエータ201の左右の振動体ユニット20と同様に、合計4個の連結部14によって支持部材15に連結されている。中央の振動体ユニット20は、左右の振動体ユニット20に対してy軸と平行な軸まわりに90°回転させた態様で配置されている。中央の振動体ユニット20は、図8(c)に示す2個の連結部14hによって右側の振動体ユニット20と連結されている。なお、図15では、連結部14hの球体部14gは、保持部18に設けられた球状の穴(不図示)に回転可能に嵌め込まれた状態となっており、リンク部材14fのみが外観に現れた状態が示されている。2個の連結部14hで中央の振動体ユニット20を支持することにより、中央の振動体ユニット20は接触体4の形状に倣ってx方向及びz方向に変位可能となっている。
【0086】
このように振動型アクチュエータ205では、接触体4の移動方向と直交する平面(zx平面)において異なる角度を付けて複数の振動体ユニット20が配置されているため、突起部2aも異なる角度に配置される。これにより、振動体1の突起部2aが接触体支持部12の機能を担うことができる。その結果として、別途の部品として接触体支持部12が不要となり、部品数の削減による小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0087】
<第8実施形態>
図16は第8実施形態に係る振動型アクチュエータ301の概略構成を示す正面図である。なお、振動型アクチュエータ301の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能及び構成についての説明を省略する。
【0088】
振動型アクチュエータ301は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する2個の振動体ユニット26及び1個の振動体ユニット27の合計3個の振動体ユニットを備える。左側と中央の振動体ユニット26の支持構造は、振動型アクチュエータ202(第4実施形態、図12)と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
右側の振動体ユニット27は、接触体4をz方向(上下方向)で挟んで対向するように配置された2個の振動体1を有する。上側の1個の振動体1は保持部8に支持され、下側の振動体1は保持部28に支持されている。保持部28は、ビス止めや接着等によって支持部材15に固定されている。保持部28には複数の支持案内部29が取り付けられている。複数の支持案内部29はそれぞれ、スライドピンやリニアガイド等によって構成されており、支持案内部29によって保持部8をx方向とy方向において図示の位置で拘束する(x方向及びy方向への変位を規制する)一方で、z方向には自由度を与えている。したがって、振動体ユニット27では、保持部8が保持部28に対して相対的にz方向に変位可能となっている。保持部8と支持案内部29との間に設けられる隙間が大きすぎると、保持部8が傾斜することによって推力が低下するおそれがある。そのため、保持部8を滑らかにz方向に変位させるために、例えば、yz面内の傾斜(ピッチング)及びzx面内の傾斜(ローリング)についての許容範囲を設定した上で、この隙間をできる限り小さく設けることが望ましい。
【0090】
振動型アクチュエータ301では、上記の各実施形態に係る振動型アクチュエータで得られる効果に加えて、保持部28を支持部材15に固定するため、保持部28に設置した振動体1の位置を基準に接触体4を位置決めすることが可能になるという効果が得られる。なお、振動型アクチュエータ301では、左側に振動体ユニット26に代えて振動体ユニット27を用いることも可能である。その場合、2個の保持部28が支持部材15に固定されるため、2個の保持部28が支持する2個の振動体1の合計4個の突起部2aが接触体4に均一に押圧されるようにすることが望ましい。その方法としては、例えば、振動体ユニット27との間隔を十分に長く取る方法や、支持部材15のy方向の曲げ剛性を接触体4の曲げ剛性よりも十分に小さく設定する方法等が挙げられる。
【0091】
<第9実施形態>
図17は第9実施形態に係る振動型アクチュエータ302の概略構成を示す正面図である。なお、振動型アクチュエータ302の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能及び構成についての説明を省略する。
【0092】
振動型アクチュエータ302は、接触体4の移動方向であるy方向に直列的に配置されて、接触体4をy方向に駆動する1個の振動体ユニット26及び2個の振動体ユニット30の合計3個の振動体ユニットを備える。3個の振動体ユニットのうち中央に配置された振動体ユニット26の支持構造は、振動型アクチュエータ202(第4実施形態、図12)と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
3個の振動体ユニットのうち左右それぞれの振動体ユニット30の下側の保持部8には、支持案内部29が固定されている。支持案内部29の構成及び上側の保持部8の支持態様は、振動型アクチュエータ301(図16参照)の振動体ユニット27の場合と同様である。そして、支持案内部29には、接触体支持部12が設けられている。接触体支持部12による接触体4の支持方法及び案内方法は振動型アクチュエータ203(図13参照)の場合と同様である。
【0094】
左右それぞれの振動体ユニット30の保持部18は、回転支点型の拘束部31を介して支持部材15に支持されている。拘束部31は、左側の振動体ユニット30を支点Eを通りx軸と平行な軸まわりに回転可能に支持し、右側の振動体ユニット30を支点Fを通りx軸と平行な軸まわりに回転可能に支持する。こうして、左右の振動体ユニット30のy方向及びz方向の位置は、拘束部31により拘束される。このように振動型アクチュエータ302では、振動型アクチュエータ301とは異なる支持構造で振動型アクチュエータ301と同等の性能を得ることができる。
【0095】
次に、上述した各実施形態に係る振動型アクチュエータへの適用が可能な構成として、1個の振動体ユニットが複数の振動体を備えて各振動体の突起部を接触体に接触させて支持する種々の構成について説明する。図18(a)~(f)はそれぞれ、複数の振動体による接触体の支持構造を説明する模式図であり、接触体の移動方向であるy方向から見て簡易的に示している。なお、座標軸は図18(a)にのみ示し、図18(b)~(f)では省略している。また、振動体に対する不織布、スペーサ、加圧部及び保持部については、図18(a)~(f)では不図示であるが、上記の各実施形態で説明したものを適宜選択して用いることができる。
【0096】
図18(a)は、対向する2個の振動体1が接触体4を支持する構成を示しており、例えば、振動型アクチュエータ201(図10参照)等で用いられている構成である。図18(b)は、矩形状の断面を有する接触体74の4側面にそれぞれ振動体1を配置して接触体74を支持する構成を示している。図18(c)は、略円形の断面を有する接触体75における略円筒形の側面(曲面)をzx平面において略120°間隔で配置された3個の振動体1で支持する構成を示している。
【0097】
図18(d)は、多角形状の断面を有する接触体76の側面のうちの3側面にそれぞれ振動体1を配置して接触体76を支持する構成を示している。図18(e)は、多角形状の断面を有する接触体77の側面のうちの3側面をそれぞれサイズと推力が異なる振動体1,81により支持した構成を示している。図18(f)は、略円形の断面を有する接触体75における略円筒形の側面を、2個の振動体1と2個の反力受部9とで支持した構成を示している。これらの構成を取捨選択して用いることにより、種々の断面形状を有する接触体を振動体により適切に支持することができる。
【0098】
続いて、上記の各実施形態に係る振動型アクチュエータを構成する振動体ユニットに変位検出手段を設けた構成例について説明する。図19は、振動体ユニット20に変位検出部84を取り付けた状態を示す正面図である。ここでは振動体ユニット20を取り上げるが、変位検出部84は振動体ユニット26等の他の振動体ユニットにも搭載可能である。
【0099】
変位検出部84は、スケール82と検出器83を有する。スケール82は、保持部18に設けられた接触体支持部12において接触体4(図19に不図示)と物理的に干渉しない(接触しない)位置に取り付けられる。スケール82は、接触体4の変位に従って接触体支持部12と共に回転する。検出器83は、スケール82の回転変位を読み取ることによって、接触体4のy方向移動量を検出する。スケール82の回転変位は、検出器83が備える光源部からスケール82へ光を照射し、その反射光を検出器83の受光部にて受光することにより読み取ることができる。検出器83が出力した接触体4のy方向移動量に基づいて、接触体4の位置や速度、加速度等の駆動パラメータを制御することができる。
【0100】
なお、変位検出部84は、拘束部31等に支持された振動体ユニットに設けられると移動量をより高い精度で検出することができる。また、変位検出部84としては、光学式、磁気式又は静電容量式等の種々のものを採用することができる。変位検出部84は、ここでは光学式で反射型のものについて説明したが、光学式の場合には透過型のものを用いることもできる。更に、回転型の変位検出部84に代えて、接触体4に直動型のスケールを配置し、振動体ユニットに検出器を配置した直動型の変位検出部を採用してもよい。拘束部31等に拘束されることにより支持部材15に対して位置決めされている振動体ユニットに変位検出部84を適用することにより、支持部材15を基準とした接触体4の相対位置を検出することが可能になる。
【0101】
<第10実施形態>
図20は第10実施形態に係るアクチュエータユニット401の概略構成を説明する図である。図20(a)~(d)はそれぞれ、アクチュエータユニット401の平面図(上面図)、側面図、正面図及び斜視図である。なお、アクチュエータユニット401の構成要素のうち、上述した各振動型アクチュエータの構成要素に対応するものについては、同じ名称と符号を用いることとし、それらについて共通する機能及び構成についての説明を省略する。
【0102】
アクチュエータユニット401は、振動型アクチュエータ204を外装部材86を用いてパッケージ化したものである。つまり、アクチュエータユニット401では、振動型アクチュエータ204の保持部18が拘束部31を介して外装部材86の内側底面に可動に固定されている。そして、接触体4が外装部材86の端面(zx面)を貫通した状態でy方向に移動することで、接触体4の動力を取り出す構成となっている。そのため、アクチュエータユニット401では、振動型アクチュエータ204の接触体4のみが外装部材86から露出する。なお、外装部材86によって覆われて不可視となった振動体ユニット20等は図20(c)において破線で示されている。
【0103】
このように、振動型アクチュエータ204を外装部材86によってパッケージ化してアクチュエータユニット401とすることにより、ユーザは外装部材86を把持して安全に取り扱うことができ、また、振動型アクチュエータ204を保護することができる。なお、ここでは振動型アクチュエータ204をパッケージ化した例を示したが、上記の各実施形態に係る振動型アクチュエータは例外なく外装部材86を用いてユニット化することができる。外装部材86は、支持部材15や拘束部31等と一体的に構成されてもよい。また、拘束部31に限らず、同等の機能を有するものであれば、他の機械要素又は機械部品を用いることが可能である。
【0104】
<第11実施形態>
図21は第11実施形態に係るアクチュエータユニット402の概略構成を説明する図である。図21(a),(c),(d)はそれぞれ、アクチュエータユニット402の平面図(上面図)、側面図及び斜視図である。図21(b)は、アクチュエータユニット402を構成する外装部材90,92及び変位抑制部21を非表示とした平面図である。
【0105】
アクチュエータユニット402は、振動体1を有する3個の振動体ユニット40を備え、3個の振動体ユニット40は円柱状の外装部材92に保持されている。振動体ユニット40において、振動体1をそれぞれ保持する保持部8は連結部14h(図8(c)参照)によって連結されて、外装部材92の円周上に配置されている。
【0106】
接触体91は、円環状(リング状)の形状を有しており、不図示の回転支持機構に回転可能に支持された状態で、一方のxy面が3個の振動体1の突起部2aに接触している。なお、接触体91の回転支持機構は、例えば、転がり軸受けや滑り軸受け等によって構成される軸支機構である。接触体91の他方のxy面には外装部材90が取り付けられている。
【0107】
アクチュエータユニット402では、振動体ユニット40を駆動すると、接触体91と外装部材90は一体となって、外装部材90のxy面の中心を通りz軸と平行な軸まわりに、外装部材92に対して相対的に回転する。つまり、アクチュエータユニット402は、外装部材90の回転運動を動力として外部に出力する。
【0108】
振動体ユニット40の構成についてより詳細に説明する。振動体ユニット40は、保持部8、振動体1及び加圧部7と、不図示の不織布が貼り付けられたスペーサを有する。加圧部7を用いた振動体1の接触体91への押圧方法は、振動型アクチュエータ101(図3参照)で説明した振動体ユニット5での振動体1の接触体4への押圧方法と同じである。3個の振動体ユニット40のうち図21(c)での左側の振動体ユニット40は、連結部14hを用いて外装部材92に固定された支持部材93に連結され、残りの2個の振動体ユニット40は、順次、連結部14hを用いて右側へ連結されている。よって、3個の振動体ユニット5のそれぞれの振動体1は、接触体4に周方向で撓み等の変形が生じていても、接触体4の変形に追従して変位することができる。
【0109】
このように、振動体ユニット40及び接触体91を外装部材90,92を用いてパッケージ化することにより、第10実施形態と同様に、外装部材90,92を把持して安全に取り扱うことが可能になり、また、振動体ユニット40を保護することができる。
【0110】
アクチュエータユニット402では、振動体ユニット40が径方向にずれないように、連結部14hは外装部材92に固定された変位抑制部21によって拘束されてしている。このとき、振動体1が接触体91の概ね中央部である一点鎖線G(図21(b))を摩擦摺動するように、連結部14の形状や変位抑制部21の位置を適切に設計することが望ましい。また、連結部14を用いて振動体ユニット40を周方向に連結することにより、図21(b)に破線Hで囲まれた空きスペースを広く取ることが可能となる。そこで、こうして生じた空きスペースを変位検出手段や回路基板等の配置スペースとして有効活用することにより、アクチュエータユニット402の小型化を図ることができる。
【0111】
なお、アクチュエータユニット402は3個の振動体ユニット40を備えるが、連結された複数の振動体ユニット40の振動体1を接触体91の変形に追従させて変位させる観点からは、振動体ユニット40は2個以上連結されていればよい。第10及び第11実施形態に共通して、アクチュエータユニットは、適用される機器での仕様に合わせて振動型アクチュエータの構成を選択し、また、振動体ユニットの配置や数を適宜調整して、パッケージ化することが望ましい。
【0112】
<第12実施形態>
以下の各実施形態では、上述した各種の振動型アクチュエータの応用例、つまり、振動型アクチュエータを搭載した各種の装置(機器)について説明する。
【0113】
図22は第12実施形態に係る装置501の概略構成を示す平面図である。装置501は、6個の振動型アクチュエータ205と支持部材35を備える。6個の振動型アクチュエータ205は、指示部材15を介して、且つ、連結部14または支持部材15を基準位置として、支持部材35に固定されている。支持部材35は、支持部材15をxy平面内で拡大したものに相当し、1部材として形成されている。
【0114】
装置501のように、6個の振動型アクチュエータ205を平面上に整列させて配置することは容易である。例えば、支持部材35の基準位置Jからy方向に距離dだけ離れ、且つ、x方向には隣り合う支持部材15同士との間隔が距離eとなるようにして、6個の振動型アクチュエータ205を簡単に整列配置することができる。この場合、x方向で隣り合う振動型アクチュエータ205の接触体4同士との間隔を全て同じ距離fとすることができる。6個の振動型アクチュエータ205のそれぞれの接触体4は、1個の駆動部品に接続されてもよいし、異なる駆動部品に接続されてもよい。
【0115】
なお、装置501は、ここでは6個の振動型アクチュエータ205を備える構成としてが、任意の複数の振動型アクチュエータ205を用いて装置501と同様の装置を構成することができることは言うまでもない。また、装置の構成によっては、複数の振動型アクチュエータは、同一平面上又は異なる平面上の任意の位置に配置され得る。
【0116】
<第13実施形態>
図23(a)は第13実施形態に係る装置502の概略構成を示す平面図である。図23(b)は装置502を構成する振動型アクチュエータ201の概略構成を示す側面図である。装置502は、12個の振動型アクチュエータ201(図10参照)と支持部材36を備える。支持部材36は、12個の振動型アクチュエータ201の12個の支持部材15を、y方向を軸方向としてy方向と直交する断面が点Kを中心とする略正十二角形を描くように柱状に1部材として形成したものである。12個の振動型アクチュエータ201はそれぞれ、指示部材15を介して、且つ、支持部材15を基準位置として、支持部材36のzx断面の略正12角形の各辺に対応する12側面(y軸と平行な面)に放射状に固定されている。こうして、装置502では、y方向から見て点Kを中心とする直径gのピッチ円37の円周上に複数の接触体4を精度よく配置することができる。なお、装置502では支持部材36の全ての側面に振動型アクチュエータ205を配置したが、振動型アクチュエータ205は任意の側面の任意の位置に配置され得る。また、支持部材36は、12角柱に限定されず、任意の多角柱に変更が可能である。
【0117】
<第14実施形態>
図24は第14実施形態に係る多軸ステージ503の概略構成を示す平面図である。多軸ステージ503は、固定部41、xステージ42、yステージ43及びxyステージ44を備える。
【0118】
固定部41は、全ての方向で自由度が拘束されており、不動である。図22を参照して説明した装置501と同様の手法で、4個のアクチュエータユニット401(図20参照)がy方向に並べられて固定部41に固定されている。固定部41に固定された4個のアクチュエータユニット401の4本の接触体4は、図24でのx方向に移動可能であり、それぞれの右端がxステージ42に固定されている。
【0119】
xステージ42は、x方向にのみ移動可能であって、その他の方向では自由度が拘束されており、固定部41に固定された4個のアクチュエータユニット401によってx方向に駆動される。xステージ42には、2個のアクチュエータユニット401がx方向に並べて固定されている。xステージ42に固定された2個のアクチュエータユニット401の2本の接触体4は、図24でのy方向に移動可能であり、それぞれの上端がyステージ43に固定されている。
【0120】
yステージ43は、y方向にのみ移動可能であって、その他の方向における自由度が拘束されており、xステージ42に固定された2個のアクチュエータユニット401によってy方向に駆動される。yステージ43には、xyステージ44が固定されている。xステージ42及び/又はyステージ43の移動に連動して、xyステージ44はxy平面内で移動する。
【0121】
固定部41に設けられるアクチュエータユニット401が移動させる質量は、xステージ42に設けられたアクチュエータユニット401が移動させる質量よりも大きい。このことを考慮して、固定部41とxステージ42にそれぞれ配置されるアクチュエータユニット401の数は、移動対象物の質量に対応して設定すればよい。多軸ステージ503は2自由度のxyステージとして構成されているが、複数のアクチュエータユニット401を用いて任意の自由度を有するステージを実現することができる。
【0122】
多軸ステージ503では、複数のアクチュエータユニット401によって駆動対象物を所定の方向に移動させる構成となっているため、xy平面と平行な面内でのモーメントの発生が抑制される。その結果、xyステージ44をxy平面内で精度よく移動させることができる。
【0123】
<第15実施形態>
図25は第15実施形態に係る多関節ロボット505の概略構成を示す平面図である。多関節ロボット505は、拮抗駆動方式を採用した多関節ロボットの一例である。多関節ロボット505は、第1関節52、固定部54、第1プーリ55、第1リンク56、第2リンク57、第2関節58、第2プーリ59、第3プーリ60、ワイヤ51e及びワイヤ53eを備える。なお、以下の説明では、固定部54に設けられた複数のアクチュエータユニット401を区別するために、アクチュエータユニット401にE1,F1,E2,F2の符号をそれぞれ付与する。
【0124】
第1関節52は、点Lを中心とするz軸と平行な軸まわりに回転可能な回転自由度を有する。第2関節58は、点Mを中心とするz軸と平行な軸まわりに回転可能な回転自由度を有し、第1リンク56の運動に拘束される。破線で示される第1プーリ55は、第1リンク56に拘束され、且つ、第1関節52を中心に回転可能に設けられている。第2リンク57は、第2関節58を介して第2関節58を中心に回転可能に設けられている。第2プーリ59は、第2リンク57に拘束されている。第3プーリ60は、第1関節52を中心に回転可能に設けられている。
【0125】
ワイヤ51eは、第1プーリ55に巻き付けられており、その一端がアクチュエータユニットF1の接触体4に結合されると共に、その他端はアクチュエータユニットE1の接触体4に結合されている。ワイヤ53eは、第3プーリ60に巻きつけられており、その一端がアクチュエータユニットF2の接触体4に結合されると共に、その他端がアクチュエータユニットE2の接触体4に結合されている。ワイヤ53aは、無端状(輪状)に形成されており、第2プーリ59と第3プーリ60に架設されている。
【0126】
接触体4の移動方向が図25でy方向となるように配置されているアクチュエータユニットE1,F1はそれぞれ、ワイヤ51eをy方向に駆動する。ワイヤ51eが弛まないようにアクチュエータユニットE1,F1がy方向の推力を発生させると、発生した推力の差分によってワイヤ51eと第1プーリ55との間に摩擦力が生じて、第1リンク56を第1関節を中心に回動させることができる。これにより、アクチュエータユニットE1,F1は、x軸に対して角度θ1の変位を第1リンク56に生じさせることができる。
【0127】
同様に、接触体4が図25でのx方向に移動可能に配置されたアクチュエータユニットE2,F2はそれぞれ、ワイヤ53eをx方向に駆動する。ワイヤ53eが弛まないようにアクチュエータユニットE2,F2がx方向の推力を発生させると、発生した推力の差分によってワイヤ53eと第2プーリ59との間に摩擦力が生じて、第2プーリ59を回転させることができる。これにより、第1リンク56を第1関節52を中心として回動させることができる。また、第2プーリ59が回転すると、ワイヤ53aと第3プーリ60との間に摩擦力が生じて、第3プーリ60が回転する。これにより、第2リンク57を第2関節58を中心として回動させることができる。つまり、アクチュエータユニットE2,F2は、図25でのx軸に対して角度θ1の変位を第1リンク56に生じさせると共に、第1リンク56に対する角度θ2の変位を第2リンク57に生じさせることができる。なお、その際にアクチュエータユニットE2,F2の駆動により生じる第1リンク56の角度θ1の変位を打ち消すようにアクチュエータユニットE1,F1を駆動することで、第2リンク57の角度θ2の変位のみを生じさせることができる。
【0128】
こうして、多関節ロボット505は、複数のアクチュエータユニット401の駆動によって、第2リンク57の先端Nをxy平面内の目標位置に到達させることができる。そして、ワイヤ51e,53eが弛まないように常に張力をかけた状態で拮抗駆動することにより、関節まわりのがたつきやワイヤ51e,53eの座屈による偏差の発生を抑制することができる。その結果、各関節まわりの捩り剛性を高めることができる、また、先端Nを高精度に位置決めすることが可能になる。
【0129】
<第16実施形態>
図26は第16実施形態に係る多関節ロボット506の概略構成を示す平面図である。第15実施形態に係る多関節ロボット505は拮抗駆動方式で動作するが、これに対して多関節ロボット506は、ワイヤが座屈しない推力の範囲でワイヤを押し引きする駆動方式で動作する。
【0130】
多関節ロボット506は、装置502、ワイヤ駆動マニピュレータ504を備える。図27は、ワイヤ駆動マニピュレータ504の概略構成を示す斜視図である。ワイヤ駆動マニピュレータ504は、例えば、特開2018-140101号公報に記載されているものと同等である。ワイヤ駆動マニピュレータ504は、線状部材案内部61と、2か所の湾曲区間66a,66bを有する。線状部材62は、線状部材案内部61に設けられた案内管の65の中空部を座屈することなく摺動することによって、湾曲区間66a,66bの曲率を変えることができる。なお、線状部材案内部61は、図26に示されるように、可撓性であって構わない。
【0131】
ワイヤ駆動マニピュレータ504では、1個の湾曲区間当たり3本の線状部材62が設けられている。具体的には、6本の線状部材62のうち3本の線状部材の先端は案内部材先端部材63aに固定され、1本は案内部材64aに固定され、他の2本の線状部材を駆動することによって湾曲区間66aの曲率を変えている。同様に、残りの3本の線状部材62の先端は、先端部材63bに固定され、そのうち1本の線状部材は案内部材64bに固定され、他の2本の線状部材を駆動することによって湾曲区間66bの曲率を変えている。
【0132】
多関節ロボット506では、ワイヤ駆動マニピュレータ504の駆動源として装置502(図23参照)が用いられている。装置502の振動型アクチュエータ201の接触体4は、線状部材62に結合されており、ワイヤ駆動マニピュレータ504の湾曲区間66a,66bの曲率を変える駆動源として用いられる。なお、装置502は、図20を参照して説明した構成と同様に、外装部材を用いてパッケージ化されていることが望ましく、これにより内部部品を適切に保護することができ、また、操作性を高めることができる。
【0133】
多関節ロボット506では、装置502によりワイヤ駆動マニピュレータ504を駆動することにより、湾曲区間66a,66bの曲率を高精度に制御することができる。また、ワイヤ駆動マニピュレータ504を駆動する駆動部に装置502を用いることにより、駆動部を小型化、軽量化して、操作性を高めることができる。更に、装置502での振動体ユニット数を増減させることによって、湾曲区間66a,66bに要求される出力に容易に対応することができる。加えて、ワイヤ駆動マニピュレータ504の線状部材62の駆動にダイレクトドライブ型の振動型アクチュエータを用いることにより、電磁モータと減速機構を組み合わせた駆動手段を用いる場合と比較して、応答性を向上させることができる。
【0134】
装置502を構成する複数の振動型アクチュエータ201は、共通の部品を用いた複数の振動体ユニット20によって構成されているため、それぞれの振動型アクチュエータ201からの出力の変更を振動体ユニット20の増減によって容易に行うことができる。また、振動体1に励起される複数の振動モードの振動の振幅比率を変化させることによって、湾曲区間66a,66bを駆動する(変形させる)ための推力の大きさや駆動速度を制御することもできる。電気-機械エネルギ変換素子3に電圧を印加しない場合には、突起部2aと接触体4との間に作用する静止摩擦力によって湾曲区間66a,66bの姿勢を維持することができる。
【0135】
更に、第2の振動モード(図2(b))のみで振動体1を駆動して突起部2aと接触体4との間に作用する摩擦力を変化させて、湾曲区間66a,66bに外力が作用した際に、その外力にしたがって湾曲区間66a,66bの姿勢が変わる設定とすることもできる。この機能は、例えば、ワイヤ駆動マニピュレータ504が人体に触れた際に人体に対する危険を回避するための安全機構として用いることができる。
【0136】
なお、多関節ロボット506は、例えば、工業用内視鏡や医療用内視鏡、治療や生検、検査等の医療行為に用いられるカテーテル等の手術器具に適用することができる。また、多関節ロボット506は、2か所の湾曲区間66a,66bを有する4自由度の構成となっているが、湾曲区間数、つまり自由度は任意に設定することができる。このとき、湾曲区間の数や案内部材の径に応じて、装置502に対して支持部材36の形状やピッチ円37の直径g、振動型アクチュエータ201の数や配置を適切な条件に設定すればよい。
【0137】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0138】
例えば、振動体ユニットと連結部によって連結される連結対象物は、上記実施形態では別の振動体ユニットや支持部材としたが、これら限られず、接触体との相対移動が可能な部位や部品であればよい。また、更に、上記の各実施形態に係る振動型アクチュエータ及びアクチュエータユニットを適用した装置の例として、多軸ステージ503、多関節ロボット505,506を取り上げたが、適用可能な装置の例はこれらに限られるものではない。例えば、本発明に係る装置の別の例としては、顕微鏡や工作機械、測定装置等の種々のステージ装置、多関節ロボット505よりも多くの自由度を有する垂直多関節ロボットやパラレルリンク型のロボット等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0139】
1 振動体
4 接触体
5,11,20,26,27,30,40 振動体ユニット
7,13,17 加圧部
8,18,28 保持部
9 反力受部
12 接触体支持部
14 連結部
15,35,36 支持部材
21 変位抑制部
29 支持案内部
31,32 拘束部
101,102,201~205,301,302 振動型アクチュエータ
501,502 装置
503 多軸ステージ
505,506 多関節ロボット
図1
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