(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】充放電装置の薄型二次電池との接続機構
(51)【国際特許分類】
H01M 10/46 20060101AFI20240902BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240902BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M10/46 101
H01M10/44 P
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2020185133
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】原口 智生
(72)【発明者】
【氏名】石橋 輝人
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-190328(JP,A)
【文献】特開2000-100480(JP,A)
【文献】特開2000-058137(JP,A)
【文献】特開昭60-180797(JP,A)
【文献】特開平07-171783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な複数の薄型二次電池を厚さ方向に並べて配置した状態で、前記各薄型二次電池の電極に、充放電電源に接続された端子をそれぞれ接続して、前記薄型二次電池の充放電を行う充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、
前記薄型二次電池ごとに、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部が設けられ、
前記第1の把持片部の前記第2の把持片部との対向面側には、前記端子と第1の磁気吸引体がそれぞれ取付けられ、
前記第2の把持片部の前記第1の把持片部との対向面側には、前記端子と対となる端子受部と、前記第1の磁気吸引体と対となる第2の磁気吸引体が、それぞれ取付けられ、
対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体との磁気吸引力により、対向する前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とが接近し、前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間に配置された前記電極が、前記端子と前記端子受部とで挟持されることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項2】
充放電可能な複数の薄型二次電池を厚さ方向に並べて配置した状態で、前記各薄型二次電池の電極に、充放電電源に接続された端子をそれぞれ接続して、前記薄型二次電池の充放電を行う充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、
前記薄型二次電池ごとに、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部が設けられ、しかも、前記薄型二次電池の厚さ方向に沿って隣り合う前記第1の把持片部同士が連結されて一体となり、かつ、前記薄型二次電池の厚さ方向に沿って隣り合う前記第2の把持片部同士が連結されて一体となり、
前記第1の把持片部の前記第2の把持片部との対向面側には前記端子が、前記第2の把持片部の前記第1の把持片部との対向面側には前記端子と対となる端子受部が、それぞれ取付けられ、
更に、1又は2以上の前記第1の把持片部のそれぞれ対向する前記第2の把持片部との対向面側には、第1の磁気吸引体が取付けられ、該第1の磁気吸引体が設けられた前記第1の把持片部に対向する前記第2の把持片部の対向面側には、前記第1の磁気吸引体と対となる第2の磁気吸引体が取付けられ、
対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体との磁気吸引力により、対向する前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とが接近し、前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間に配置された前記電極が、前記端子と前記端子受部とで挟持されることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、更に、前記第1、第2の把持片部が内部に収容され、該第1の把持片部と該第2の把持片部とを接近又は離反する方向に移動可能にガイドする枠体を有し、該枠体の上部には、前記電極を前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間に誘導する挿通溝が形成されていることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項4】
請求項3記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記枠体は絶縁材で構成されていることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1の把持片部の前記第2の把持片部との対向面側、又は、前記第2の把持片部の前記第1の把持片部との対向面側には、更に温度センサが取付けられていることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子受部が電圧測定用端子であることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、対向する前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間にばね材が配置され、自由状態では前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間隔を広げ、前記電極に対して前記端子及び前記端子受部を非接触状態にすることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子は前記第1の把持片部に弾性部材を介して取付けられていることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子は弾性を有していることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子は前記第1の把持片部に取付け取外し可能に取付けられていることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1、第2の把持片部のいずれか一方又は双方が基板であることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか一方が電磁石Aであり、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか他方が電磁石B又は磁性体であることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【請求項13】
請求項12記載の充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1、第2の磁気吸引体がそれぞれ前記電磁石A、Bであることを条件として、
対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた対となる前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に斥力が働くように、かつ、背中合わせに配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に引力が働くように、前記電磁石A、Bへの通電が行われて、対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とを離反させ、
対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた対となる前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に引力が働くように、かつ、背中合わせに配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に斥力が働くように、前記電磁石A、Bへの通電が行われて、対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とを接近させることを特徴とする充放電装置の薄型二次電池との接続機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型二次電池の充放電を行う充放電装置の薄型二次電池との接続機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド自動車、その他の電気製品等において、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を始めとする充放電可能な二次電池が広く使用されている。この二次電池としては、例えば、薄型二次電池(通称:ラミネートセル)がある。
この電池の製造においては、従来の充放電用電池と同様、製造した電池の充放電試験を行い、電池が所定の性能や特性を満たしているか否かを検査してから出荷している。この充放電試験は、複数の薄型二次電池を厚さ方向に並べて配置した状態で、各薄型二次電池の電極に、充放電電源(充放電装置の電源)に接続された端子をそれぞれ接続することで行われている。
【0003】
上記した薄型二次電池の電極に端子を接続する技術としては、例えば、特許文献1に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構がある。具体的には、エアシリンダに取付けられたローラ保持部材に設けられた対となるローラ間に、平面視して略V字状に拡開したチャック部材の金属板を複数配置し、エアシリンダにより対となるローラを金属板の拡開方向に沿って移動させることで拡開した金属板を閉じ、対向する金属板の間に配置された薄型二次電池の電極を金属板でチャックする構成である。
このように、引用文献1では、略V字状に拡開したチャック部材の金属板の開閉に、拡開方向とは直交する方向に移動する対となるローラを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1のように、略V字状に拡開したチャック部材の金属板の開閉にローラを使用する場合、ローラの経年劣化(例えば、摩耗等)により、例えば、ローラが回転しなくなり、正常な動作ができなくなるおそれがある。また、金属板の開閉にローラを使用しているため、これらを設置するためのスペースを確保する必要がある。
また、チャック部材は複数設置されているため、これらチャック部材の金属板を同時に閉じるには、エアシリンダの能力を高める必要があり、この能力が十分でなければ、チャック部材の金属板を閉じることができず、正常な動作ができなくなるおそれがある。
更に、充放電電源からの通電電流の上昇等により、薄型二次電池の電極に対するチャック部材の金属板への接圧を高める必要がある場合は、金属板のばね圧を上昇させる必要があるが、このとき、ばね圧がチャック機構全体にかかるため、このばね圧に耐え得る構造が必要となり、チャック機構の規模を大きくしなければならないおそれがある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、構成を簡単にでき、従来よりも狭いスペースで電極との接続を実施可能な充放電装置の薄型二次電池との接続機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構は、充放電可能な複数の薄型二次電池を厚さ方向に並べて配置した状態で、前記各薄型二次電池の電極に、充放電電源に接続された端子をそれぞれ接続して、前記薄型二次電池の充放電を行う充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、
前記薄型二次電池ごとに、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部が設けられ、
前記第1の把持片部の前記第2の把持片部との対向面側には、前記端子と第1の磁気吸引体がそれぞれ取付けられ、
前記第2の把持片部の前記第1の把持片部との対向面側には、前記端子と対となる端子受部と、前記第1の磁気吸引体と対となる第2の磁気吸引体が、それぞれ取付けられ、
対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体との磁気吸引力により、対向する前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とが接近し、前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間に配置された前記電極が、前記端子と前記端子受部とで挟持される。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構は、充放電可能な複数の薄型二次電池を厚さ方向に並べて配置した状態で、前記各薄型二次電池の電極に、充放電電源に接続された端子をそれぞれ接続して、前記薄型二次電池の充放電を行う充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、
前記薄型二次電池ごとに、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部が設けられ、しかも、前記薄型二次電池の厚さ方向に沿って隣り合う前記第1の把持片部同士が連結されて一体となり、かつ、前記薄型二次電池の厚さ方向に沿って隣り合う前記第2の把持片部同士が連結されて一体となり、
前記第1の把持片部の前記第2の把持片部との対向面側には前記端子が、前記第2の把持片部の前記第1の把持片部との対向面側には前記端子と対となる端子受部が、それぞれ取付けられ、
更に、1又は2以上の前記第1の把持片部のそれぞれ対向する前記第2の把持片部との対向面側には、第1の磁気吸引体が取付けられ、該第1の磁気吸引体が設けられた前記第1の把持片部に対向する前記第2の把持片部の対向面側には、前記第1の磁気吸引体と対となる第2の磁気吸引体が取付けられ、
対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体との磁気吸引力により、対向する前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とが接近し、前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間に配置された前記電極が、前記端子と前記端子受部とで挟持される。
【0009】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、更に、前記第1、第2の把持片部が内部に収容され、該第1の把持片部と該第2の把持片部とを接近又は離反する方向に移動可能にガイドする枠体を有し、該枠体の上部には、前記電極を前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間に誘導する挿通溝が形成されていることが好ましい。
ここで、前記枠体は絶縁材で構成することができる。
【0010】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1の把持片部の前記第2の把持片部との対向面側、又は、前記第2の把持片部の前記第1の把持片部との対向面側には、更に温度センサが取付けられていることが好ましい。
【0011】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子受部が電圧測定用端子であることが好ましい。
【0012】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、対向する前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間にばね材が配置され、自由状態では前記第1の把持片部と前記第2の把持片部との間隔を広げ、前記電極に対して前記端子及び前記端子受部を非接触状態にすることが好ましい。
【0013】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子は前記第1の把持片部に弾性部材を介して取付けられていることが好ましい。
また、前記端子自体が弾性を有していてもよい。
【0014】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記端子は前記第1の把持片部に取付け取外し可能に取付けられていることが好ましい。
【0015】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1、第2の把持片部のいずれか一方又は双方が基板であることが好ましい。
【0016】
第1、第2の発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構において、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか一方が電磁石Aであり、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか他方が電磁石B又は磁性体であることが好ましい。
ここで、前記第1、第2の磁気吸引体がそれぞれ前記電磁石A、Bであることを条件として、
対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた対となる前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に斥力が働くように、かつ、背中合わせに配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に引力が働くように、前記電磁石A、Bへの通電が行われて、対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とを離反させ、
対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた対となる前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に引力が働くように、かつ、背中合わせに配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部にそれぞれ取付けられた前記電磁石Aと前記電磁石Bとの間に斥力が働くように、前記電磁石A、Bへの通電が行われて、対向配置された前記第1の把持片部と前記第2の把持片部とを接近させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構は、薄型二次電池ごとに、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部を設け、第1の把持片部の第2の把持片部との対向面側に端子と第1の磁気吸引体が、第2の把持片部の第1の把持片部との対向面側に端子受部と第2の磁気吸引体が、それぞれ取付けられ、対となる第1、第2の磁気吸引体の磁気吸引力により、対向する第1、第2の把持片部が接近して、電極が端子と端子受部とで挟持されるので、従来のように、チャック機構の構成を複雑にすることなく、また、ローラ等を使用することなく、充放電装置の端子と薄型二次電池の電極との接続ができる。
従って、構成を簡単にでき、従来よりも狭いスペースで電極との接続を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構の正断面図、(B)は側断面図、(C)は(A)のa-a矢視図である。
【
図2】同充放電装置の薄型二次電池との接続機構の動作原理を示す説明図である。
【
図3】同充放電装置の薄型二次電池との接続機構の他の動作原理を示す説明図である。
【
図4】第1の変形例に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構の動作原理を示す説明図である。
【
図5】第2の変形例に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構を正面視した説明図である。
【
図6】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構の非接続状態を示す正面図、(B)は側断面図、(C)は(A)のb-b矢視断面図である。
【
図7】(A)は同充放電装置の薄型二次電池との接続機構の接続状態を示す正面図、(B)は(A)のc-c矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)~(C)、
図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構(以下、単に接続機構とも記載)10は、充放電可能な複数の薄型二次電池11を厚さ方向に並べて配置した状態で、各薄型二次電池11の電極12に、充放電電源(図示しない)に接続された端子13をそれぞれ接続して、薄型二次電池11の充放電(充放電試験(充放電検査))を行う充放電装置に用いられる機構である。なお、
図1(A)~(C)、
図2では、厚さ方向に並べて配置された複数の薄型二次電池11のうち、1つの薄型二次電池11についてのみ図示している(厚さ方向に並べて配置された複数の薄型二次電池11については、後述する
図3参照)。
以下、詳しく説明する。
【0020】
充放電装置には、例えば、複数の薄型二次電池11を厚さ方向に並べて収容配置可能なトレイ等を収納するための収容部が設けられている。この収容部内であって、トレイ等に並べて配置された複数の薄型二次電池11にそれぞれ対応する位置には、各薄型二次電池11の電極12に接続される端子13が配置され、この端子13が充放電電源に接続されている。
なお、充放電電源は、一つの薄型二次電池11に対して一つ使用されるものであり、1つのトレイに収容配置される薄型二次電池11の最大個数が、充放電電源の個数と同じになるが、直列で接続された2つ以上の複数の薄型二次電池11に対して充放電電源を一つ使用することもできる。この薄型二次電池11は、例えば、正極、セパレータ、負極を交互に積層し、この正極と負極をそれぞれ電極12(タブとも称す)に接続して、ラミネートフィルムで構成した容器の中に入れ、電解液を注入してシール(電極12は外部へ突出)したリチウムイオン電池であるが、充放電可能な薄型二次電池であれば特に限定されるものではない。
【0021】
接続機構10は、
図1(A)~(C)に示すように、薄型二次電池11ごとに設けられた枠体14を有し、この枠体14内に、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部15、16の把持側(
図1(A)、
図2では上側)が収容されている。
枠体14は、樹脂(絶縁材の一例)で構成され、その外観形状が直方体状となって、下端部が開口し、第1、第2の把持片部15、16に被さっている。この枠体14の下側(開口側)には、第1、第2の把持片部15、16の厚み方向に沿って配置された抜止めロッド17が取付けられ、枠体14の上部には、枠体14内に挿入される電極12を、第1の把持片部15と第2の把持片部16との間に誘導する挿通溝18が形成されている。
これにより、枠体14内で、第1の把持片部15と第2の把持片部16とを接近又は離反する方向に移動可能にガイド(可動範囲を制限)できると共に、第1、第2の把持片部15、16からの枠体14の抜止めが図られる。
【0022】
第1の把持片部15の第2の把持片部16との対向面側には、上側に端子13が、この端子13の下方に電磁石(電磁石A:第1の磁気吸引体の一例)19が、それぞれ取付けられている。また、第2の把持片部16の第1の把持片部15との対向面側には、上側に端子13と対となる端子受部20が、この端子受部20の下方に温度センサ21が、この温度センサ21の下方に電磁石19と対となる電磁石(電磁石B:第2の磁気吸引体の一例)22が、それぞれ取付けられている。なお、温度センサ21は、第1の把持片部15の第2の把持片部16との対向面側(端子13の下方で電磁石19の上方)に取付けてもよい。
端子13と端子受部20は、第1の把持片部15と第2の把持片部16との間に配置された電極12を、その厚み方向両側から挟み込む(挟持する)ように、対向した位置に取付け固定されたものであり、端子13と端子受部20が電極12に接触することにより、端子13を介して薄型二次電池11の充放電を行うことができる。なお、端子受部20を電圧測定用端子にすることで、充放電を行う際の電圧測定も可能になる。
【0023】
電磁石19、22は、電気を流す(電圧を加える)ことで磁化するものであり、電流の向きを変えることで、磁石の極(N極とS極)を入れ替えることができるものである。
ここで、電磁石19、22は第1、第2の把持片部15、16の対向面側にそれぞれ、その同一高さ位置に取付け固定され、互いに異なる極に磁化させることで第1、第2の把持片部15、16が引き付けられ、端子13と端子受部20で電極12を挟持できる。なお、電磁石19、22は、正面視して挿通溝18より下方位置(側面視して枠体14内に誘導された電極12とは重ならない位置)に取付けられており、端子13と端子受部20で電極12を挟持できれば、電磁石19と電磁石22の接近時に、電磁石19と電磁石22とが必ずしも接触(当接)する必要はなく、隙間(例えば、0.1mm~数mm程度)を有してもよい。
ここで、第1の把持片部15に取付けられた電磁石19に、第2の把持片部16と対向する側がN極(反対側がS極)となるように電気を流した場合について、
図2を参照しながら説明する。
【0024】
図2の左図では、第2の把持片部16に取付けられた電磁石22に、第1の把持片部15と対向する側がN極(反対側がS極)となるように電気を流している。これにより、電磁石19と電磁石22との間で斥力(反発力)が生じるため、第1、第2の把持片部15、16が離反する方向に移動し、電極12に対して端子13及び端子受部20が非接触状態になる。
図2の右図では、上記した電磁石22に、第1の把持片部15と対向する側がS極(反対側がN極)となるように電気を流している。これにより、電磁石19と電磁石22との間で引力(磁気吸引力)が生じるため、第1、第2の把持片部15、16が接近する方向に移動し、電極12に対して端子13及び端子受部20が接触状態になる(当接する)。
なお、電磁石19に、第2の把持片部16と対向する側がS極(反対側がN極)となるように電気を流した場合は、上記した電磁石22の極が逆になるように電気を流す。
【0025】
使用にあっては、まず、複数の薄型二次電池11が収容されたトレイを収容部に収容する。これにより、
図1(B)に示すように、第1、第2の把持片部15、16が収容された枠体14の上方に、薄型二次電池11が配置される。
次に、
図1(A)に示すように、枠体14に対し、薄型二次電池11が収容されたトレイを下降させる(又は、薄型二次電池11が収容されたトレイに対し、枠体14を上昇させる)。このとき、薄型二次電池11の電極12が、枠体14の上部に形成された挿通溝18を介して第1の把持片部15と第2の把持片部16との間に誘導されて位置決め(配置)される。
なお、この時点では、
図2の左図に示すように、第1、第2の把持片部15、16が離間した状態であって、端子13及び端子受部20は電極12に対して非接触状態にある。このとき、電磁石19、22には通電しなくてよいが(無通電状態にできるが)、例えば、残留磁化(磁化に伴う磁力の残留)等を考慮すれば、電磁石19と電磁石22との対向側がN極同士(又はS極同士)となるように電気を流す、又は、後述する
図4に示すように、対向する第1、第2の把持片部15、16の間にばね材24を配置するのがよい。
【0026】
続いて、電磁石19と電磁石22との間で引力(磁気吸引力)が生じるように、電磁石19、22に電気を流す。これにより、
図2の右図に示すように、第1、第2の把持片部15、16を接近する方向に移動させ、電極12に対して端子13及び端子受部20が接触状態になる(電極12が端子13と端子受部20とで挟持される)。
そして、予め設定した試験プログラムに従って、各充放電電源で同じ又は異なる充放電試験を遂行する。
以上の方法により、薄型二次電池11の充放電を行った後は、電磁石19と電磁石22との間で斥力(反発する力)が生じるように、電磁石19、22に電気を流す。これにより、
図2の左図に示すように、第1、第2の把持片部15、16を離反する方向に移動させ、電極12に対して端子13及び端子受部20を非接触状態にする。
【0027】
なお、上記した電磁石19、22への通電は、
図3に示すように行うこともできる。この
図3の符号23は、隣り合う薄型二次電池11の間に配置された絶縁性を備えるスペーサである。
図3の上図に示すように、対向する第1の把持片部15と第2の把持片部16とを離反させる際、対向配置された第1、第2の把持片部15、16にそれぞれ取付けられた対となる電磁石19、20への通電は、電磁石19と電磁石22との間に斥力が働くように行う(
図3では、薄型二次電池11ごとに、電磁石19の対向する電磁石22側と、電磁石22の対向する電磁石19側の双方が、薄型二次電池11の厚さ方向に渡ってN極とS極が交互となるように行う)。
このとき、薄型二次電池11の厚さ方向に沿って隣り合う、一方の薄型二次電池11の把持に使用される第1の把持片部15に取付けられた電磁石19と、他方の薄型二次電池11の把持に使用される第2の把持片部16に取付けられた電磁石22との間(即ち、背中合わせに配置された第1の把持片部15と第2の把持片部16にそれぞれ取付けられた電磁石19と電磁石22との間)に引力が働くように、電磁石19、22への通電を行う(
図3では、薄型二次電池11ごとに、電磁石19の第1の把持片部15への取付け側と、電磁石22の第2の把持片部16への取付け側の双方が、薄型二次電池11の厚さ方向に渡ってS極とN極が交互となるように行う)。
これにより、対向する第1、第2の把持片部15、16の離反時の斥力を高めることができる。
【0028】
図3の下図に示すように、対向する第1の把持片部15と第2の把持片部とを接近させる際、対向配置された第1、第2の把持片部15、16にそれぞれ取付けられた対となる電磁石19、20への通電は、電磁石19と電磁石22との間に引力が働くように行う(
図3では、電磁石19の対向する電磁石22側が、薄型二次電池11の厚さ方向に渡ってN極とS極が交互となるように、かつ、電磁石22の対向する電磁石19側が、薄型二次電池11の厚さ方向に渡ってS極とN極が交互となるように行う)。
このとき、薄型二次電池11の厚さ方向に沿って隣り合う、一方の薄型二次電池11の把持に使用される第1の把持片部15に取付けられた電磁石19と、他方の薄型二次電池11の把持に使用される第2の把持片部16に取付けられた電磁石22との間(即ち、背中合わせに配置された第1の把持片部15と第2の把持片部16にそれぞれ取付けられた電磁石19と電磁石22との間)に、斥力が働くように電磁石19、22への通電を行う(
図3では、電磁石19の第1の把持片部15への取付け側が、薄型二次電池11の厚さ方向に渡ってS極とN極が交互となるように、かつ、電磁石22の第2の把持片部16への取付け側が、薄型二次電池11の厚さ方向に渡ってN極とS極が交互となるように行う)。
これにより、対向する第1、第2の把持片部15、16の接近時の引力を高めることができる。
【0029】
このように、第1、第2の把持片部15、16の接近と離反(以下、開閉とも記載)は、電磁石19、22に通電することで実施できる。なお、例えば、接続機構10が待機状態の場合(薄型二次電池11の充放電を行わない場合)は、第1、第2の把持片部15、16が離間した状況下で通電しない状態(無通電状態)にできるため、消費電力を抑えることができる。
また、電磁石19、22の使用により、例えば、コイルの巻数を変更することで、電磁石19と電磁石22との間で生じる引力や斥力の強弱を調整できる。
上記した温度センサ21は、充放電時における薄型二次電池11の温度を測定するもの(例えば、サーミスタや熱電対等)であり、電極12に対して端子13及び端子受部20が接触状態になった場合に、温度センサ21も電極12の表面に接触することで測定できる。
【0030】
また、
図4に示すように、対向する第1の把持片部15と第2の把持片部16との間に、第1の把持片部15と第2の把持片部16を連結するばね材(圧縮コイルばね等)24を配置することもできる(側面視して、端子13及び端子受部20より下方で、かつ、電磁石19、22より上方の高さ位置)。
この場合、自由状態(電磁石19、22が無通電状態)では、
図4の左図に示すように、第1の把持片部15と第2の把持片部16との間隔が広げられ(開状態にされ)、電極(図示しない)に対して端子13及び端子受部20が非接触状態になる。
なお、
図4の右図に示すように、電極に対して端子13及び端子受部20を接触状態にする場合は、電磁石19、22への通電を、ばね材24の弾性力よりも強い引力となるように行い、第1の把持片部15と第2の把持片部16との間隔を狭くする(閉状態にする)。
【0031】
そして、
図5に示すように、端子13を第1の把持片部15に、ばね(圧縮コイルばね等:弾性部材の一例)25を介して取付けることもできる。なお、ばねの代わりにゴム等を使用することもできる。
また、端子自体が弾性を有していれば、端子をばねを介することなく第1の把持片部に取付けることもできる。このような端子としては、例えば、板ばね形状のものがある。
これにより、例えば、接続機構10の構造上の誤差を吸収することができ、電極12と端子13との接触を、より確実に実施できる。
また、端子は、第1の把持片部に、取付け取外し可能に取付けられていることが好ましい。これにより、端子が交換可能になり、メンテナンス性を向上できる。
更に、第1、第2の把持片部のいずれか一方又は双方を基板にすることもできる。これにより、端子、端子受部、電磁石、及び、温度センサのいずれか1又は2以上を、基板に半田付け等することができ、薄型二次電池の厚さ方向に隣り合う対となる第1、第2の把持片部の間隔を、更に狭くすることができる(より狭いスペースでも対応できる)。なお、第1、第2の把持片部は、樹脂製や金属製(弾性を備えてもよい。)でもよい。
【0032】
次に、
図6(A)~(C)、
図7(A)、(B)を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る充放電装置の薄型二次電池との接続機構(以下、単に接続機構とも記載)30について説明するが、基本的な原理は前記した充放電装置の薄型二次電池との接続機構10と同一であるため、同一部材については同一符号を付して、詳しい説明を省略する。
接続機構30は、第1、第2の把持部材31、32を有している。この第1、第2の把持部材31、32は、薄型二次電池11ごとに、間隔を有して対向配置される第1、第2の把持片部15a、16a(前記した第1、第2の把持片部15、16と同様)をそれぞれ有し、薄型二次電池11の厚さ方向に沿って隣り合う第1の把持片部15a同士が連結部材33によって連結されて一体となり、薄型二次電池11の厚さ方向に沿って隣り合う第2の把持片部16a同士が連結部材34によって連結されて一体となっている。
なお、第1、第2の把持片部15a、16aについても、前記した第1、第2の把持片部15、16と同様、枠体内に収容されることが好ましい。
【0033】
第1、第2の把持部材31、32をそれぞれ構成する5つ(複数)の第1の把持片部15aと5つ(複数)の第2の把持片部16aは、薄型二次電池11の厚さ方向に沿って交互に配置されている。なお、第1の把持片部15aには端子13が、第2の把持片部16aには端子受部20が、それぞれ取付けられている。
図6(B)に示すように、第1、第2の把持部材31、32を側面視した際の、第1の把持片部15aと第2の把持片部16aとの重複部分には、電磁石19、22が取付け固定されている。この電磁石19は、5つの第1の把持片部15aのうち、中央に位置する第1の把持片部15aに、電磁石22は、5つの第1の把持片部16aのうち、中央に位置し、中央に位置する第1の把持片部15aと対向する第2の把持片部16aに、それぞれ取付け固定されている。
これにより、複数の第1、第2の把持片部15a、16aの接近(
図7(A)、(B))と離反(
図6(A)~(C))を、対向する1対の電磁石19、22に通電することで実施できる。
【0034】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の充放電装置の薄型二次電池との接続機構を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、第1、第2の把持片部の双方に電磁石を取付けた場合について説明したが、第1、第2の磁気吸引体のいずれか一方を電磁石とし、第1、第2の磁気吸引体のいずれか他方を磁性体(強磁性体)とすることもできる。なお、磁性体には、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト、非酸化金属磁性体(オキサイド)等を使用できる。
【0035】
また、前記実施の形態においては、第1、第2の把持片部に電磁石を1個ずつ取付けた場合について説明したが、例えば、2個以上の複数個ずつ取付けてもよい。これにより、対向する電磁石同士の引力を更に強めることができ、電極に対する端子及び端子受部の接圧を容易に高めることができる。
そして、前記実施の形態においては、把持部材に設けられた複数の把持片部のうち、中央に位置する1つの把持片部に電磁石を取付けた場合について説明したが、2つ以上の把持片部に電磁石をそれぞれ取付けてもよい。この場合、少なくとも把持部材(連結部材)の長手方向中央部に位置する把持片部に電磁石を取付けることが好ましい。
【0036】
また、前記実施の形態においては、第1の把持片部と第2の把持片部との間に薄型二次電池の電極を配置するに際し、薄型二次電池が収容されたトレイを下降、又は、第1、第2の把持片部を上昇させた場合について説明したが、この動作は薄型二次電池のトレイへの収容状態等によって変わるため、特に限定されるものではなく、トレイに収容された薄型二次電池の電極の向きに応じて、例えば、トレイ及び/又は第1、第2の把持片部を前進や後退させることもできる。
更に、前記した充放電装置の薄型二次電池との接続機構の各動作、及び、薄型二次電池の充放電は、制御手段(例えば、コンピュータ等)により、予め設定されたプログラムに基づいて順次行われる。
【符号の説明】
【0037】
10:充放電装置の薄型二次電池との接続機構、11:薄型二次電池、12:電極、13:端子、14:枠体、15、15a:第1の把持片部、16、16a:第2の把持片部、17:抜止めロッド、18:挿通溝、19:電磁石(第1の磁気吸引体)、20:端子受部、21:温度センサ、22:電磁石(第2の磁気吸引体)、23:スペーサ、24:ばね材、25:ばね(弾性部材)、30:充放電装置の薄型二次電池との接続機構、31:第1の把持部材、32:第2の把持部材、33、34:連結部材