(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】設置体装置、設置部材
(51)【国際特許分類】
A47B 13/00 20060101AFI20240902BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A47B13/00 Z
F16B21/06 A
(21)【出願番号】P 2020203796
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-152242(JP,A)
【文献】実開平07-030859(JP,U)
【文献】登録実用新案第3209497(JP,U)
【文献】登録実用新案第3152493(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108013591(CN,A)
【文献】実開昭51-141777(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/00、96/04
A47G 29/00
F16B 7/00- 7/22
F16B 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被設置面に対して設置される設置対象物と、前記設置対象物の設置に用いられる設置部材と、を備える設置体装置であって、
被設置面に吸着固定可能な吸盤と、
前記吸盤の吸着面と反対側に向けて延びる雄ネジ部と、
前記雄ネジ部に螺進退可能に螺合され、前記雄ネジ部の螺進に伴い前記吸盤を押圧可能な押圧
部材と、
前記設置対象物に直接又は間接的に設けられている第1連結部材と、
前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と係合して
前記設置対象物の離脱を抑制する第2連結部材と、
前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と前記第2連結部材との係合状態を解除可能な解除部材と、を備える設置体装置。
【請求項2】
前記第1連結部材と前記第2連結部材との一方は、弾性変形により他方と係合可能な係合部を備え、
前記解除部材は、前記係合部を弾性変形させて前記第1連結部材と前記第2連結部材との前記係合状態を解除する、請求項1に記載の設置体装置。
【請求項3】
前記第1連結部材が、前記押圧
部材側に
係合凸部が形成されている前記係合部を備え、
前記第2連結部材は、前記係合部が係合可能
な係合
凹部を備え、
前記解除部材は、前
記係合
凹部よりも前記押圧
部材側に設けられ、前記押圧
部材側から前記係合部の前記
係合凸部に当接して前記係合部を弾性変形させて前記係合状態を解除可能である、請求項2に記載の設置体装置。
【請求項4】
前記第1連結部材は、中空筒状の連結筒部を備え、
前記連結筒部は、
前記押圧
部材と対向する側から反対側へと向けて切れ込んだスリットと、
当該連結筒部の先端側を自由端として弾性変形可能な前記係合部と、
前記係合部と前記スリットを介して挟まれ、前記係合部よりも弾性変形しづらい非変形壁と、を備え、
前記解除部材と前記係合部との位置関係を、前記連結筒部の周方向にずれた位置と合致した位置とに変更可能である、請求項3に記載の設置体装置。
【請求項5】
前記第1連結部材は、中空筒状の連結筒部を備え、
前記連結筒部は、
前記押圧
部材と対向する側から反対側へと向けて切れ込んだスリットと、
当該連結筒部の先端側を自由端として弾性変形可能な前記係合部と、
前記係合部と前記スリットを介して挟まれ、前記係合部よりも弾性変形しづらい非変形壁と、を備え、
前記解除部材と前記係合部との位置関係に関わらず、前記係合状態の解除が可能である、請求項3に記載の設置体装置。
【請求項6】
前記第1連結部材と前記第2連結部材とは、係合状態で前記雄ネジ部の周方向に回動可能である請求項1~5のいずれか1項に記載の設置体装置。
【請求項7】
前記第2連結部材は、前
記係合
凹部よりも前記押圧
部材側に、前記解除部材の前記雄ネジ部周りの回動を規制する回動規制部を備える、請求項4に記載の設置体装置。
【請求項8】
前記押圧
部材は、前記雄ネジ部の螺退動に伴い、前記解除部材に当接して前記解除部材による前記係合状態の解除が可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の設置体装置。
【請求項9】
前記押圧
部材は、前記螺退動に伴い前記解除部材による前記係合状態の解除が可能となる前に、前記吸盤から離間する、請求項8に記載の設置体装置。
【請求項10】
前記解除部材は、少なくとも前記押圧
部材が吸盤から離間するまで、前記雄ネジ部の螺退動を規制しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の設置体装置。
【請求項11】
前記解除部材の前記第2連結部材からの離間を規制する離間規制部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の設置体装置。
【請求項12】
前記離間規制部は、前記雄ネジ部である、請求項11に記載の設置体装置。
【請求項13】
前記解除部材は、前記第2連結部材及び前記雄ネジ部の一方に遊嵌可能な環状部を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の設置体装置。
【請求項14】
前記解除部材は、自重により前記第1連結部材と前記第2連結部材との係合状態を解除しない、請求項1~13のいずれか1項に記載の設置体装置。
【請求項15】
被設置面に対する設置対象物の設置に用いられる設置部材であって、
被設置面に吸着固定可能な吸盤と、
前記吸盤の吸着面と反対側に向けて延びる雄ネジ部と、
前記雄ネジ部に螺進退可能に螺合され、前記雄ネジ部の螺進に伴い前記吸盤を押圧可能な押圧
部材と、
前記設置対象物に直接又は間接的に取り付け可能な第1連結部材と、
前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と係合して離脱を抑制する第2連結部材と、
前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と前記第2連結部材との係合状態を解除可能な解除部材と、を備える設置部材。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の設置体装置の設置構造であって、
前記吸盤が前記押圧
部材に押圧されて前記被設置面に吸着固定されており、
前記設置対象物が互いに係合している前記第1連結部材及び前記第2
連結部材を介して前記被設置面に設置されている設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被設置面に対して設置部材を用いて設置対象物を設置可能な設置体装置、及び、その設置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衝立等の設置対象物を机上等の被設置面に設置する場合に、吸盤を利用して吸着固定させることで、設置や取り外しを容易にすることが行われている。吸盤を利用して設置する衝立としては、特許文献1に記載の衝立がある。特許文献1に記載の衝立では、吸盤に上方へ延びる取付部を設け、その取付部に板を上方から差し込むことで、設置及び取り外しが容易な衝立を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の衝立では、設置及び取り外しは容易であるものの、使用時に板が容易に外れてしまうため、衝立としての機能を十分に発揮できるとは言えない。また、設置場所は机の上面等に限られ、天井から吊下げたり、側壁に取り付けたりして使用することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、取り付け及び取り外しが可能であり、且つ、机上等以外にも設置可能な設置体装置、及び、設置部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の構成は、被設置面に対して設置される設置対象物と、前記設置対象物の設置に用いられる設置部材と、を備える設置体装置であって、被設置面に吸着固定可能な吸盤と、前記吸盤の吸着面と反対側に向けて延びる雄ネジ部と、前記雄ネジ部に螺進退可能に螺合され、前記雄ネジ部の螺進に伴い前記吸盤を押圧可能な押圧部材と、前記設置対象物に直接又は間接的に設けられている第1連結部材と、前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と係合して前記設置対象物の離脱を抑制する第2連結部材と、前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と前記第2連結部材との係合状態を解除可能な解除部材と、を備える。
【0007】
第1の構成では、第1連結部材と第2連結部材との係合により設置対象物の離脱が抑制されるため、机上等以外に設置可能であるとともに、その係合状態を解除可能な解除部材を備えることで、容易に係合状態を解除可能な設置体装置を提供することができる。
【0008】
第2の構成は、第1の構成に加えて、前記第1連結部材と前記第2連結部材との一方は、弾性変形により他方と係合可能な係合部を備え、前記解除部材は、前記係合部を弾性変形させて前記第1連結部材と前記第2連結部材との前記係合状態を解除する。
【0009】
第2の構成では、係合部が弾性変形するものであるため、押圧操作により係合及び解除が可能であり、より容易に取り付け及び取り外しが可能な設置体装置を提供することができる。
【0010】
第3の構成は、第2の構成に加えて、前記第1連結部材が、前記押圧部材側に係合凸部が形成されている前記係合部を備え、前記第2連結部材は、前記係合部が係合可能な係合凹部を備え、前記解除部材は、前記係合凹部よりも前記押圧部材側に設けられ、前記押圧部材側から前記係合部の前記係合凸部に当接して前記係合部を弾性変形させて前記係合状態を解除可能である。
【0011】
第3の構成では、係合状態の解除操作が設置対象物の自重により行われないため、設置対象物の重量の制約が少なくなり、且つ、設置対象物に荷重が掛かった場合に係合状態が解除される自体も抑制することができる。
【0012】
第4の構成は、第3の構成に加えて、前記第1連結部材は、中空筒状の連結筒部を備え、前記連結筒部は、前記押圧部材と対向する側から反対側へと向けて切れ込んだスリットと、当該連結筒部の先端側を自由端として弾性変形可能な前記係合部と、前記係合部と前記スリットを介して挟まれ、前記係合部よりも弾性変形しづらい非変形壁と、を備え、前記解除部材と前記係合部との位置関係を、前記連結筒部の周方向にずれた位置と合致した位置とに変更可能である。
【0013】
第4の構成では、解除部材と係合部との位置関係をずれた位置とすれば、解除部材を操作したとしても係合状態は解除されないため、簡易な構成でロック機能を付与することができる。
【0014】
第5の構成は、第3の構成に加えて、前記第1連結部材は、中空筒状の連結筒部を備え、前記連結筒部は、前記押圧部材と対向する側から反対側へと向けて切れ込んだスリットと、当該連結筒部の先端側を自由端として弾性変形可能な前記係合部と、前記係合部と前記スリットを介して挟まれ、前記係合部よりも弾性変形しづらい非変形壁と、を備え、前記解除部材と前記係合部との位置関係に関わらず、前記係合状態の解除が可能である。
【0015】
第5の構成では、解除部材と係合部との位置関係に関わらず解除操作が可能であるため、係合状態の解除をより容易に行ことができる。
【0016】
第6の構成は、第1~第5のいずれかの構成に加えて、前記第1連結部材と前記第2連結部材とは、係合状態で前記雄ネジ部の周方向に回動可能である。
【0017】
第6の構成では、吸盤による設置後に設置対象物の回動が必要となった場合に回動が可能であるため、設置の際の利便性をさらに向上させることができる。
【0018】
第7の構成は、第4の構成に加えて、前記第2連結部材は、前記係合凹部よりも前記押圧部材側に、前記解除部材の前記雄ネジ部周りの回動を規制する回動規制部を備える。
【0019】
第7の構成では、被係合部と解除部材との位置関係の一致操作を行う必要がなく、解除部材及び被係合部と係合部との位置関係の一致操作のみにより解除操作が可能であるため、係合状態を解除する際の操作を容易にすることができる。
【0020】
第8の構成は、第1~第7のいずれかの構成に加えて前記押圧部材は、前記雄ネジ部の螺退動に伴い、前記解除部材に当接して前記解除部材による前記係合状態の解除が可能である。
【0021】
第8の構成では、吸盤の吸着力を弱める作業と、第1連結部材と第2連結部材の係合状態の解除とを同様の操作により可能であるため、作業工程を単純化することができる。
【0022】
第9の構成は、第8の構成に加えて、前記押圧部材は、前記螺退動に伴い前記解除部材による前記係合状態の解除が可能となる前に、前記吸盤から離間する。
【0023】
第9の構成では、吸盤の取り外し作業の途中に係合が解除されないため、吸盤の取り外し作業と係合状態の解除作業とを別々に行うことが可能となる。
【0024】
第10の構成は、第1~第7のいずれかの構成に加えて、前記解除部材は、少なくとも前記押圧部材が吸盤から離間するまで、前記雄ネジ部の螺退動を規制しない。
【0025】
第10の構成では、第9の構成と同等の効果を得ることができる。
【0026】
第11の構成は、第1~第10のいずれかの構成に加えて、前記解除部材の前記第2連結部材からの離間を規制する離間規制部を備える。
【0027】
第11の構成では、解除部材と第2連結部材との間隔の拡大を抑制できるため、係合状態を解除する際の解除部材の操作量を低減することができる。
【0028】
第12の構成は、第11の構成に加えて、前記離間規制部は、前記雄ネジ部である。
【0029】
第12の構成では、雄ネジ部に離間規制部の機能を与えることで、全体の構成を簡略化しつつ第11の構成の効果を得ることができる。
【0030】
第13の構成は、第1~第12のいずれかの構成に加えて、前記解除部材は、前記第2連結部材及び前記雄ネジ部の一方に遊嵌可能な環状部を備える。
【0031】
第13の構成では、解除部材の周方向への離脱を抑制することができる。
【0032】
第14の構成は、第1~第13のいずれかの構成に加えて、前記解除部材は、自重により前記第1連結部材と前記第2連結部材との係合状態を解除しない。
【0033】
第14の構成では、設置体装置を天井配置する場合においても、解除部材による意図しない係合状態の解除を抑制することができる。
【0034】
第15の構成は、被設置面に対する設置対象物の設置に用いられる設置部材であって、被設置面に吸着固定可能な吸盤と、前記吸盤の吸着面と反対側に向けて延びる雄ネジ部と、前記雄ネジ部に螺進退可能に螺合され、前記雄ネジ部の螺進に伴い前記吸盤を押圧可能な押圧部材と、前記設置対象物に直接又は間接的に取り付け可能な第1連結部材と、前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と係合して離脱を抑制する第2連結部材と、前記雄ネジ部の先端側に設けられており、前記第1連結部材と前記第2連結部材との係合状態を解除可能な解除部材と、を備える。
【0035】
第15の構成では、設置対象物の設置に用いることで第1の構成と同等の効果を得ることができる。
【0036】
第16の構成は、第1~第14のいずれかの構成に関する設置構造であって、前記吸盤が前記押圧部材に押圧されて前記被設置面に吸着固定されており、前記設置対象物が互いに係合している前記第1連結部材及び前記第2連結部材を介して前記被設置面に設置されている。
【0037】
第16の構成では、第1~第14のいずれかの構成と同等の効果を有する設置構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図22】係合状態を解除している状況を示すA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<実施形態>
本実施形態に係る設置部材10は、
図1に示すように、設置対象物100を被設置面に取り付ける場合に用いられるものであり、設置部材10と設置対象物100とにより設置体装置が構成されている。
図1に示す設置対象物100は衝立であり、被設置面は例えば机の上面である。以下の説明では、
図1に示すように設置対象物100を机の上面である被設置面に取り付ける場合において、天地の方向を上下方向と定義して説明する。また、設置部材10を構成する各部材は、特に言及の無い限りは、一定の可撓性を有する樹脂により形成されている。
【0040】
衝立である設置対象物100は、4本の円筒管101を長方形状に配置したものであり、上側の角のそれぞれは、内部が空洞のL字型の管であるL字管102で接続されており、下側の角のそれぞれは、内部が空洞のT字型の管であるT字管103で接続されている。T字管103の下側には、本実施形態に係る設置部材10が取り付けられ、その設置部材10を介して被設置面に設置されている。また、4本の円筒管101に囲まれる領域には透明なアクリル板104が取り付けられている。
【0041】
設置部材10は、弾性を有する塩化ビニールで形成された、中心が上方へ向けて窪んだ円形の吸盤21を備えている。この吸盤21の窪んだ側の反対側の中心には、円筒の側面に螺旋状の凸部が設けられた雄ネジ部22が接続されている。雄ネジ部22の螺旋状の凸部は、雄ネジ部22の上端までは形成されておらず、雄ネジ部22の上端には、周囲が平滑な円筒状の先端筒部23が形成されている。この先端筒部23から雄ネジ部22の内側端近傍に至るまでの内側には、断面円形の空洞である挿入孔24が形成されている。
【0042】
吸盤21には、押圧部材30が上側から被せられている。この押圧部材30は、円筒形の筒部31と、その筒部31の上側の開口から連続的に形成されており、上端へ向かうにつれ縮径する略円錐台筒状の円錐筒部32とを備えている。この円錐筒部32の側面には、周方向に連続する凹凸が設けられている。筒部31の下端側には拡径して設けられた円環状のフランジ部33が形成されている。このフランジ部33は筒部31と中心軸を共有しており、厚みは全面に亘って均一で、直径は吸盤21の直径よりもやや大きい。フランジ部33の下面には、筒部31等と中心軸を共有する円環状の当接部34が、下方へ突出するように設けられている。この当接部34は、上下方向の高さ及び径方向の厚みは均一で、直径は、吸盤21の直径よりもやや小さい。押圧部材30の円錐筒部32の内周面側には、螺旋状に連続する雌ネジ部35が形成されている。この雌ネジ部35の径は吸盤21の雄ネジ部22の径と略等しい。
【0043】
以上のように構成される押圧部材30の雌ネジ部35に対して、雄ネジ部22が下方から螺着されることで、押圧部材30に雄ネジ部22を介して吸盤21が取り付けられる。吸盤21を被吸着面に取り付ける場合には、吸盤21を被吸着面に吸着当接させた状態で、雌ネジ部35に対して雄ネジ部22がネジ込まれる螺進動が行われるように押圧部材30を回転させる。こうすることで、当接部34が吸盤21の外周近傍を上側から押圧しつつ吸盤21が上方向へと引っ張られ、吸盤21と被吸着面との間の体積が大きくなってその空間の気圧が低下し、吸盤21を非吸着面に吸着固定することができる。このとき、押圧部材30を回転させなければ雌ネジ部35に対する雄ネジ部22の螺着状態は維持されるため、当接部34による吸盤21への押圧状態、及び、雄ネジ部22と雌ネジ部35とによる吸盤21の引き上げ状態も維持され、吸盤21の被吸着面からの離脱を抑制することができる。
【0044】
一方、吸盤21を被吸着面から外す場合には、螺進動の場合とは逆向きに押圧部材30を回転させることにより、雄ネジ部22が雌ネジ部35から抜ける方向へと回転移動する螺退動が生じる。こうすることで、当接部34が吸盤21から離間し、且つ、雄ネジ部22と雌ネジ部35とによる吸盤21の引き上げ状態が解除されるため、吸盤21を非吸着面から外すことができる。
【0045】
雄ネジ部22の上端側には、先端筒部23の周囲を囲うように、略円環状の解除部材40が配置されている。この解除部材40について、
図2~11を参照して説明する。解除部材40は、上下方向の厚みが略均一であり、雄ネジ部22と中心軸線を共有する円環状の円環部41と、その円環部41の内周から上方へ向けて立設している押圧部42とにより構成されている。円環部41の内径は、雄ネジ部22の谷の外径よりもやや大きく、且つ、雄ネジ部22の山の外径よりも小さい。また、円環部41の内周面の下端は、面取りされている。押圧部42の内周側は、上方へ向けて垂直に立設しており、その高さは、雄ネジ部22の先端筒部23の上下方向の高さよりも高くなっている。また、押圧部42の外周側は、上端から下端へ向けて拡幅するように傾斜している。この解除部材40が雄ネジ部22の先端筒部23の周囲を囲うように雄ネジ部22の上側から被せられ、円環部41の下面が雄ネジ部22の山に上側から当接することで、雄ネジ部22に対して載置されており、先端筒部23に遊嵌しているといえる。
【0046】
雄ネジ部22の上端には、略筒状の被係止部材50が取り付けられている。この被係止部材50について、
図2~6及び
図12~16を参照して説明する。被係止部材50の下端には、円筒状の挿入筒部51が形成されている。この挿入筒部51の外径は挿入孔24の内径と略等しく、挿入筒部51が雄ネジ部22の挿入孔24に挿入されることで、被係止部材50が雄ネジ部22に取り付けられている。挿入筒部51の上側には、挿入筒部51よりも拡幅された下側フランジ部52が形成されている。この下側フランジ部52は、上下方向の厚みが略均一であり、平面視での形状は、前後それぞれの一部を除いて、挿入筒部51と中心軸線を共有する円形である。
【0047】
下側フランジ部52の前後方向の端部側のそれぞれには、内側へ向けて凹んだ回動規制部53が形成されている。この回動規制部53の外形は、挿入筒部51と中心軸線を共有する円弧状であり、その径は、解除部材40の円環部41の内径と略等しい。また、回動規制部53の周方向の幅は、解除部材40の押圧部42の周方向の幅と略等しい。下側フランジ部52の上側には、円筒形の中間筒部54が設けられている。この中間筒部54は、下側フランジ部52と中心軸が共通しており、直径は、下側フランジ部52に設けられている回動規制部53の外形円の直径と等しい。
【0048】
中間筒部54の上方には、中間筒部54よりも拡幅された上側フランジ55が設けられている。この上側フランジ部55は、上下方向の厚みが略均一であり、平面視での形状は、下側フランジ部52の回動規制部53の上方に位置する部分を除いて、挿入筒部51と中心軸線を共有する円形である。また、その円の直径は、下側フランジ部52の外形を構成する円の直径よりも、若干小さい。上側フランジ部55の前後方向の端部側のそれぞれには、内側へ向けて凹んだ係合凹部56が形成されている。この係合凹部56の外形は、挿入筒部51と中心軸線を共有する円弧状であり、その径は、上方から下方へ向かうにしたがって漸増している。また、係合凹部56の上端の外形を構成する円の直径は、中間筒部54の直径よりも大きい。
【0049】
上側フランジ部55の上方には、挿入筒部50等と中心軸が共通する円筒形の外嵌軸57が設けられている。この外嵌軸57の直径は、中間筒部54の直径と等しい。なお、本実施形態において、挿入筒部51の下端から外嵌軸57の上端に至るまで、内側は上下方向に貫通しているが、仕切りを設けてもよいし、内部を中空としなくてもよい。
【0050】
以上説明した被係止部材50は、挿入筒部51が雄ネジ部22の挿入孔24に挿入されて取り付けられている。このとき、下側フランジ部52の下面は先端筒部23の上面に当接している。解除部材40の円環部41は、下側フランジ部52と雄ネジ部22の山の最上段との間を上下方向へ移動可能となっており、押圧部42は、下側フランジ部52の回動規制部53内に位置している。すなわち、解除部材40は上下方向への移動は可能であるが、回動規制部53により回動が規制されている。なお、挿入筒部51は、雄ネジ部22の挿入孔24の内部に接着剤により接着されており、被係止部材50単体での回動は規制されている。
【0051】
被係止部材50には、連結部材60が着脱可能に取り付けられて使用される。この連結部材60について、
図2~6,17~21を参照して説明する。連結部60は、円筒形の連結筒部61を備えている。この連結筒部61は、下方が開放された筒状であり、上方には、円筒形の連結部62が設けられている。連結筒部61の内側の上端から下端までの高さは、被係止部材50の上側フランジ部55の上面から下側フランジ部52の下面までの高さと略等しい。また、連結筒部61の内径は、被係止部材50の上側フランジ部55の直径と略等しく、連結筒部61の外径は、被係止部材50の下側フランジ部52の外径と略等しい。
【0052】
連結部62は内部が空洞の円筒形であり、その外径は、設置対象物100のT字管103の内径と等しく、連結部62をT字管103の内部に差し込むことで連結部材60と設置対象物100とを連結することができる。また、連結部62の内径は、被係止部材50の外嵌軸57の外径と略等しく、連結部62の内部において、外嵌軸57の高さよりもやや高い部分には、仕切りが設けられている。
【0053】
連結筒部61には、下端から上側へと切れ込んだスリット63が4つ設けられている。このスリット63の配置は、ひとつのスリット63から見て、周方向で隣接する一方のスリット63との間隔は、周方向で隣接する他方のスリット63との間隔よりも大きくなっており、4つのスリット63について、大きいほうの間隔どうしは等しく、小さいほうの間隔どうしも等しい。すなわち、連結筒部61を底面側から見た場合、4つのスリット63を仮想的な直線で結べば長方形となる。また、スリット63の狭いほうの間隔は、係合凹部56の幅と略等しい。
【0054】
スリット63がこのように設けられており、間隔が広いほうの一対のスリット63を介して区画されている部分は、間隔が狭いほうの一対のスリット63を介して区画されている部分よりも弾性変形しづらいため、非変形壁64と称する。一方、間隔が狭いほうの一対のスリット63を介して区画されている部分については、係合部65と称する。この係合部65の下端側には、連結筒部61の内側へ向けて突出した係合凸部66が設けられている。この係合凸部66は、係合部65の下端から上方へ向かうにつれ徐々に内側へ向けて突出していき、且つ、上端は水平となっている。
【0055】
連結部材60を被係止部材50に係合させる場合には、連結部材60の係合部65の位置と被係止部材50の係合凹部56の位置とを一致させた状態で、被係止部材50の上側から連結部材60を被せる。このとき、係合部65が備える係合凸部66の内側面が係合凹部56と当接し、係合凹部56の傾斜に沿って係合部65が弾性変形して徐々に外側へと広げられていく。そして、係合凸部66の上面が係合凹部56の下端に到達すれば、係合部65の弾性力により元の形状に復元し、係合凸部66の上面が係合凹部56の下面に当接して係合することとなる。このとき、連結筒部61の内側面が上側フランジ部55の外周面と略当接し、連結筒部61の内側の上端面が上側フランジ部55の上面と略当接し、連結筒部61の下端面が下側フランジ部52の上面と略当接する。また、被係止部材50の外嵌軸57は、連結筒部61の内部に嵌まり込む。連結部材60を被係止部材50に係合させた状態では、係合凸部66は上側フランジ部55の下側に位置しており、周方向への回転は規制されないため、中間筒部54の周囲を周回させることができる。
【0056】
連結部材60を被係止部材50から取り外す場合には、解除部材40を上方へ押し上げる。このとき、解除部材40の押圧部42の外側面が連結部材60の係合凸部66の内側面に当接する。解除部材40が上方へ徐々に押し上げられることで、
図22に示すように、押圧部42の外側面の傾斜と係合凸部66の内側面の傾斜とにより、係合部65が外側へと徐々に開いていき、係合凸部66が係合凹部56よりも広くなるまで係合部65が開けば、連結部材60を被係止部材50から取り外すことができる。
【0057】
解除部材40の押し上げは、人が直接解除部材40を押し上げるものとしてもよいが、押圧部材30を回転させ、当接部34が吸盤21から離間する方向へと移動するように雄ネジ部22を螺退動させる。この場合には、螺退動に伴い押圧部材30と解除部材40との位置が接近し、雄ネジ部22の山が雌ネジ部35内に入りきれば、解除部材40の下面が雌ネジ部35の上面に当接する。この状態で雄ネジ部22の螺退動をさらに進めれば、押圧部材30により解除部材40がさらに上に押し上げられ、解除部材40の押圧部42が連結部材60の係合凸部66を押圧して、連結部材60と被係止部材50との係合状態が解除される。なお、解除部材40の重量については、設置部材10を係合状態としたうえで天地を逆とした場合に、押圧部42が係合凸部66に当接したとしても、係合状態が解除されない程度の重量となっている。
【0058】
なお、以上説明した連結部材60と被係止部材50について、互いに連結する部材であるため、連結部材60を第1連結部材と称し、被係止部材50を第2連結部材と称することもできる。また、雄ネジ部22の山により解除部材40の被係止部材50からの離間が規制されているため、雄ネジ部22を離間規制部と称することもできる。
【0059】
また、設置場所については、床面や机上等に限られず、天井等から吊下げたり、側壁等に取り付けたりすることもできる。すなわち、吸盤21を取り付け可能な場所であれば、取り付け場所が制限されることなく設置をおこなうことができる。
【0060】
上記構成により、本実施形態に係る設置部材10及び、その設置部材10を備える設置体装置は、以下の効果を奏する。
【0061】
・被係止部材50と連結部材40との係合により設置対象物100の離脱が抑制されるため、机上等以外に設置可能であるとともに、その係合状態を解除可能な解除部材40を備えることで、容易に係合状態を解除可能な設置部材10及び設置体装置を提供することができる。
【0062】
・係合部65が弾性変形するものであるため、押圧操作により係合及び解除が可能であり、より容易に取り付け及び取り外しが可能な設置部材10及び設置体装置を提供することができる。
【0063】
・係合状態の解除操作が設置対象物100の自重により行われないため、設置対象物100の重量の制約が少なくなり、且つ、設置対象物100に荷重が掛かった場合に係合状態が解除される自体も抑制することができる。
【0064】
・係合状態において、解除部材40の押圧部42と連結部材60の係合部65との位置関係を周方向にずれた位置とすれば、解除部材40を操作したとしても係合状態は解除されないため、簡易な構成でロック機能を付与することができる。
【0065】
・係合状態において、連結部材60は周方向に回動可能であるため、設置後に設置対象物100の回動が必要となった場合等に回動が可能であるため、設置の際の利便性をさらに向上させることができる。
【0066】
・回動規制部53を備えているため、係合凹部56と押圧部42との位置関係の一致操作を行う必要がなく、係合凹部56及び押圧部42と係合部66との位置関係の一致操作のみにより解除操作が可能であるため、係合状態を解除する際の操作をより容易におこなうことができる。
【0067】
・押圧部材30の回転操作による雄ネジ部22の螺退動により解除部材40による解除操作が可能であるため、吸盤21の吸着力を弱める操作と、被係止部50と連結筒部60との係合状態の解除操作とが同様の操作となり、作業工程を単純化することができる。
【0068】
・押圧部材30の当接部34が吸盤21から離間するまでは、解除部材40により係合状態が解除されないため、吸盤21の取り外し作業と係合状態の解除作業とを別々に行うことが可能である。
【0069】
・雄ネジ部22が離間規制部として機能し、解除部材40と被係止部材50との間隔の拡大を抑制しているため、係合状態を解除する際の解除部材40の操作量を低減することができる。また、雄ネジ部22に離間規制部の機能を与えることで、全体の構成を簡略化しつつ効果を得ることができる。
【0070】
・解除部材40が円環部41を備え、先端筒部23に遊嵌しているため、解除部材の周方向への離脱を抑制することができる。
【0071】
・解除部材40の自重により係合状態が解除されないため、設置体装置を天井配置する場合等においても、解除部材40による意図しない係合状態の解除を抑制することができる。
【0072】
<変形例>
・実施形態では、弾性変形する係合部65により連結部材60と被係止部材50とが係合するものとしているが、係合状態を維持するための構造については、実施形態に限られない。例えば、係合部65に準ずる部材を連結部材60に準ずる部材に脱着自在とし、係合部65に準ずる部材を取り外す際に、解除部材40に準ずる部材を利用するものとしてもよい。また、係合状態を維持するための構造については、その他の種々の公知の構造を採用することができ、解除部材40の形状は、その係合状態の構造に応じて係合状態を解除可能な形状とすればよい。
【0073】
・実施形態では、設置対象物100側に弾性変形して係合する係合部65を備える連結部材60を設け、雄ネジ部22等の側にその係合部65が係合する被係止部材50を設けている。この点、雄ネジ部22等の側に弾性変形して係合する部材を設け、設置対象物100の側に、その係合する部材が係合可能な部材を設けるものとしてもよい。
【0074】
・実施形態では、連結部材60に連結筒部61を設け、その連結筒部61に形成されているスリット63により係合部65を設けるものとしている。この点、連結筒部61を設けず、連結部62の下端側から係合部65に準ずる部材が下方に突出するようにして設け、その係合部65が被係止部材50に係合することで、連結部材60と被係止部材50とを係合させるものとしてもよい。
【0075】
・実施形態では、係合部65の数を2つとしたが、1つでもよいし、3以上であってもよい。また、スリット63を等間隔に設け、いずれの係合部65も弾性変形可能として非変形壁64を設けないものとしてもよい。
【0076】
・実施形態では、係合状態で連結部材60が周方向に回動可能としているが、回動しないものとしてもよい。この場合には、例えば、係合状態で係合部65の下端側の一部が下側フランジ部52の回動規制部53に挟まれる状態とする等の手段をとればよい。こうすることで、係合状態の解除時に解除部材40及び被係止部材50と連結部材60との位置合わせが必要なくなるという効果を得ることができる。
【0077】
・実施形態では、解除部材40が回動規制部53により回動が規制されているが、下側フランジ52及び回動規制部53を設けないものとしてもよい。この場合には、係合状態を解除する際に、解除部材の押圧部42と連結部材60の係合部65との位置合わせを行えばよい。また、解除部材40に対して、押圧部42に準ずる部材を環状に立設するように設け、その環状に立設した部材により係合状態を解除するものとしてもよい。この場合には、被係止部材50に対して連結部材60が回動して係合部65の周方向の相対位置が変わったとしても、係合部65の下方には環状に立設した部材が配置されており、位置合わせを行うことなく係合状態の解除が可能となる。
【0078】
・実施形態では、連結部材60を設置対象物100が備えるT字管103に取り付けるものとしているが、設置対象物100が連結部材60に準ずる部材を予め備えているものとしてもよい。また、設置対象物100の円筒管101やT字管103が、連結部材60の連結筒部61と同等の形状の部分を予め備えているものとしてもよい。
【0079】
・実施形態では、解除部材40の被係止部材50からの離間を規制する離間規制部として、雄ネジ部22の山を利用しているが、雄ネジ部22の先端に離間規制部として機能する部材を別途設けるものとしてもよいし、押圧部材30の上端側に離間規制部として機能する部材を設けるものとしてもよい。
【0080】
・解除部材40、被係止部材50、連結部材60等の形状は、円環状や円筒状である必要はなく、多角形状や、多角筒状であってもよい。これらの場合には、係合状態で回動させることができない場合があるが、意図しない回動を抑制することができる。
【0081】
・係合状態の解除操作時に解除部材40を移動させるものとしているが、解除部材40の位置を固定しておき、被係止部材50及び連結部材60を解除部材40に対して押圧することで係合状態の解除を行うものとしてもよい。なお、この場合には、机上等に設置する場合には、設置対象物100の重量により係合状態が解除されないようにする必要がある。
【0082】
・連結部材60が備える連結部62の形状は、取り付けられる設置対象物100の形状に応じて種々の変更が可能である。また、実施形態では設置対象物100に対して連結部材60が直接接続されるものとしているが、他の取付部材等を介して間接的に接続されるものとしてもよい。さらに、連結部材60について、設置対象物100に対して直接または間接的に着脱可能とする必要は必ずしも無く、連結部材60を設置対象物100に対して取り外し不能に取り付けてもよいし、設置対象物100が連結部材60の連結筒部62に準ずる構成を直接又は間接的に備えているものとしてもよい。
【0083】
・実施形態では、取付対象物100として衝立を用いる例を示したが、取付対象物100としては種々の物品を採用可能である。取付対象物としては、例えば、看板や誘導灯等の設置物や、天井から吊下げる案内板等が挙げられる。
【符号の説明】
【0084】
設置部材…10,吸盤…21,雄ネジ部…22,先端筒部…23、挿入孔…24,押圧部材…30、雌ネジ部…35、解除部材…40,円環部…41,押圧部…42,被係止部材…50,挿入筒部…51,下側フランジ部…52,回動規制部…53,中間筒部…54,上側フランジ部…55,係合凹部…56、外嵌軸…57、連結部材…60、連結筒部…61、連結部…62、スリット…63、非変形壁…64、係合部…65、係合凸部…66