IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイコエレクトロニクスジャパン合同会社の特許一覧

<>
  • 特許-コネクタ 図1
  • 特許-コネクタ 図2
  • 特許-コネクタ 図3
  • 特許-コネクタ 図4
  • 特許-コネクタ 図5
  • 特許-コネクタ 図6
  • 特許-コネクタ 図7
  • 特許-コネクタ 図8
  • 特許-コネクタ 図9
  • 特許-コネクタ 図10
  • 特許-コネクタ 図11
  • 特許-コネクタ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/658 20110101AFI20240902BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20240902BHJP
【FI】
H01R13/658
H01R12/71
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020213091
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099373
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】水上 和宏
(72)【発明者】
【氏名】熊本 忠史
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-011018(JP,U)
【文献】特開2019-149238(JP,A)
【文献】米国特許第06059581(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178101(US,A1)
【文献】特開2016-018589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/658
H01R 12/71
H01R 24/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電体からなり、基部と、該基部から相手コネクタと嵌合する前方に延び相手コンタクトとの接触を担う接点部と、該基部から回路基板が配置される下方に延び該回路基板に接続される基板接続部とを有するコンタクト、
第1の誘電体からなり、前記接点部を前方に露出させた状態に前記基部を支持するフロントハウジング、
第2の誘電体からなり、前記基板接続部を下方に露出させた状態に前記基部を該フロントハウジングとの間に挟んで該基部を支持するバックハウジング、
第2の導電体からなり、前記接点部から離れて該接点部を取り巻く筒部と、該筒部の後部に繋がって下方に広がり前記回路基板に接続される接地部とを有するフロントシェル、
および
第3の導電体からなり、前記フロントシェルの後端部上部に下方から接する接触部と、前記接地部に係止する係止部と、該係止部における前記接地部の係止により弾性変形するばね部とを有するカバーシェルを備え、
該ばね部の弾性変形により、前記係止部において前記接地部に第1方向と前記第1方向に直交する第2方向のそれぞれに反力RF1と反力RF2が生じ、
前記反力RF1により前記バックハウジングを前方に押した状態に該バックハウジングに前記カバーシェルが接するとともに
前記反力RF2により前記接触部で前記フロントシェルの後端上部を上方に押した状態に該フロントシェルに前記カバーシェルが接触することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フロントシェルが、該フロントシェルの後端部上部に後方に突き出た舌部を有し、
前記接触部が、前記舌部を受け入れる凹部を有し、
前記カバーシェルが、前記ばね部の弾性変形により、前記凹部に受け入れた前記舌部を上方に押すことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接地部が、横方向に延びた延在部を有し、
前記係止部が、前記延在部に係止することにより前記ばね部を弾性変形させることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記係止部が、上方に向って窪んだ窪みを有し、該窪みで前記延在部に係止することを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ばね部が、前記係止部よりも前方に突き出た形状を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の伝送に適したコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号は外部からの電磁ノイズの影響を受けやすく、この電磁ノイズの影響を軽減するため、シールドで覆った構造のコネクタが採用される。すなわち、高周波信号の直接の伝送を担うコンタクトをハウジングで支持し、コンタクトおよびハウジングをシールドで取り巻いた構造のコネクタが採用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンタクトがインシュレータと呼ばれるハウジングで支持され、その周囲が外周シェルおよびバックシェルと呼ばれるシールドで取り囲まれた構造のコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-018589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、コネクタを構成する部品の各々には公差、すなわち寸法誤差が存在する。このため、この寸法誤差に起因して、部品を組み立てて完成させたコネクタの伝送特性がコネクタごとにばらつくおそれがある。このばらつきが大きいと、そのばらつきが大きい分だけ伝送特性の低いコネクタとして取り扱う必要があり、高性能な伝送特性を持つコネクタを構成するための妨げとなる。寸法誤差を抑えるには部品の各々を高精度に製造する必要があるが、これを追及すると高価な部品となり限界がある。
【0006】
本発明は、組立てにより部品の寸法誤差の影響を抑えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のコネクタは、
第1の導電体からなり、基部と、基部から相手コネクタと嵌合する前方に延び相手コンタクトとの接触を担う接点部と、基部から回路基板が配置される下方に延び回路基板に接続される基板接続部とを有するコンタクト、
第1の誘電体からなり、上記接点部を前方に露出させた状態に基部を支持するフロントハウジング、
第2の誘電体からなり、基板接続部を下方に露出させた状態に基部をフロントハウジングとの間に挟んで支持するバックハウジング、
第2の導電体からなり、接点部から離れて接点部を取り巻く筒部と、筒部の後部に繋がって下方に広がり回路基板に接続される接地部とを有するフロントシェル、および
第3の導電体からなり、フロントシェルの後端部上部に下方から接する接触部と、上記接地部に係止する係止部と、係止部の係止により弾性変形するばね部とを有し、ばね部の弾性変形により、バックハウジングを前方に押した状態にバックハウジングに接するとともに接触部でフロントシェルの後端上部を上方に押した状態にフロントシェルに接触するカバーシェルを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のコネクタは、カバーシェルに接触部と係止部とばね部を備え、係止部をフロントシェルの接地部に係止させてばね部を弾性変形させる構造を有する。そして、本発明のコネクタでは、そのばね部の弾性変形により、1つには、接触部でフロントシェルの後端上部を上方に押した状態にフロントシェルに接触する。これにより、フロントシェルには、接触部と係止部との双方で確実に接触して、良好なシールド性能が確保される。また、もう1つには、このカバーシェルは、ばね部の弾性変形により、バックハウジングを前方に押した状態にバックハウジングに接する。これにより、フロントハウジングやバックハウジングの寸法誤差によらず、バックハウジングとカバーシェルとの間に隙間が生じることが防止され、寸法誤差の影響が抑えられた高性能の伝送特性を有するコネクタが実現する。
【0009】
ここで、本発明のコネクタにおいて、フロントシェルが、フロントシェルの後端部上部に後方に突き出た舌部を有し、
上記接触部が、舌部を受け入れる凹部を有し、
カバーシェルが、ばね部の弾性変形により、上記凹部に受け入れた舌部を上方に押す構造とすることが好ましい。
【0010】
この構造を採用すると、ばね部の弾性変形により、カバーシェルとフロントシェルが確実に接触する。
【0011】
また本発明のコネクタにおいて、上記接地部が、横方向に延びた延在部を有し、係止部が、延在部に係止することによりばね部を弾性変形させることが好ましい。
【0012】
接地部に横方向に延びた延在部を設け、この延在部に係止部を係止させることにより、確実な係止が可能である。
【0013】
また、この延在部を設けた構造において、係止部が上方に向って窪んだ窪みを有し、その窪みで延在部に係止することが好ましい。
【0014】
窪んだ形状の係止部とすることによって、さらに確実な係止が可能である。
【0015】
また、本発明のコネクタにおいて、ばね部が、係止部よりも前方に突き出た形状を有することが好ましい。
【0016】
係止部よりも前方に突き出た位置にばね部を設けることで、カバーシェルに、バックハウジングを前方に押した状態にバックハウジングに接するとともに接触部でフロントシェルの後端上部を上方に押した状態にフロントシェルに接触する、という作用を付与することができる。
【0017】
ここで、係止部よりも前方に突き出た位置にばね部を設けるにあたっては、ばね部が孔を有し、係止部の係止によりその孔の変形を伴う弾性変形を生じることが好ましい。
【0018】
ばね部に孔を形成することで、ばね力が調整され、確実に上記の作用を成すばね部が形成される。
【発明の効果】
【0019】
以上の本発明によれば、組立てにより部品の公差の影響が抑えられたコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
図2図1に斜視図を示したコネクタの6面図である。
図3図1図2に示したコネクタの分解斜視図である。
図4】このコネクタの、カバーシェルを組み立てる前の状態を示した側面図(A)、カバーシェルを組み立てることにより完成した状態を示した側面図(B)、および組み立てた状態において一部を断面して示した側面図(C)である。
図5】比較例としてのコネクタの分解斜視図である。
図6】比較例のコネクタの側面図である。
図7】比較例における電圧定在波比を示した図である。
図8】比較例におけるインピーダンスを示した図である。
図9】比較例のコネクタの、一部を断面して示した側面図である。
図10】「実施例」と「比較例」の挿入損失を示した図である。
図11】「実施例」と「比較例」の電圧定在波比(VSWR)を示した図である。
図12】「実施例」と「比較例」のインピーダンス(ohm)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。ここで、図1(A)と図1(B)は、互いに異なる方向から見たときの斜視図である。
【0023】
また、図2は、図1に斜視図を示したコネクタの6面図である。ここで、図2(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)は、それぞれ、平面図、正面図、側面図、背面図、および底面図である。
【0024】
さらに、図3は、図1図2に示したコネクタの分解斜視図である。
【0025】
このコネクタ100は、図3に示すように、フロントシェル10、フロントハウジング20、コンタクト30、バックハウジング40、およびカバーシェル50で構成されている。
【0026】
コンタクト30は、導電体、例えば銅合金を材料とした部品である。このコンタクト30を構成している導電体は、本発明にいう第1の導電体の一例に相当する。このコンタクト30は、基部31と、接点部32と、基板接続部33とを有する。
【0027】
接点部32は、基部31から、相手コネクタ(不図示)と嵌合する前方に延び、相手コネクタに備えられている相手コンタクト(不図示)との電気的な接触を担っている。本実施形態のコンタクト30の接点部32は、棒状に水平に延びた雄型の接点部である。
【0028】
また、基板接続部33は、基部31から、回路基板(不図示)が配置される下方に延び回路基板への接続を担っている。ここで、本実施形態のコンタクト30の基板接続部33は、回路基板の表面にはんだ付けされる表面実装タイプとなっている。すなわち、この基板接続部33は、下方に延びた後、後方に折れ曲がって水平に延びている。この水平に延びている部分が回路基板の表面に置かれてはんだ付けされる。
【0029】
また、フロントハウジング20は、本発明にいう第1の誘電体の一例である樹脂からなる。本実施形態のフロントハウジング20には前後に貫通した孔21が形成されている。フロントハウジング20は、孔21にコンタクト30の接点部32が挿し込まれてその接点部32を前方に露出させた状態に、基部31を支持している。
【0030】
また、バックハウジング40は、本発明にいう第2の誘電体の一例である樹脂からなる。このバックハウジング40は、基板接続部33を下方に露出させた状態に、基部31を、フロントハウジング20との間に挟んで支持している。
【0031】
さらに、フロントシェル10は、銅合金等の導電体の板材からなり、打抜きおよび曲げ加工により形成されている。このフロントシェル10を構成している銅合金等の導電体は、本発明にいう第2の導電体の一例に相当する。このフロントシェル10は、筒部11と接地部12とを有する。
【0032】
筒部11は、前後に延びる向きの略円筒形を有する。この筒部11には、コンタクト30の接点部32が挿し込まれ、筒部11は、挿し込まれた接点部32を、その接点部32から離れて取り巻いている。
【0033】
また、接地部12は、筒部11の後部に繋がって下方に広がっている。この接地部12は、回路基板への接続を担っている。この接地部12も、コンタクトの基板接続部33と同様、途中で後方に折れ曲がって水平に延びている。この水平に延びている部分が回路基板の表面に置かれてはんだ付けされる。本実施形態の接地部12は、左右2か所ではんだ付けされる形状となっている。
【0034】
カバーシェル50もフロントシェル10と同様、銅合金等の導電体の板材からなり、打抜きおよび曲げ加工により、バックハウジング40を覆う形状に形成されている。このカバーシェル50を構成している銅合金等の導電体は、本発明にいう第3の導電体の一例に相当する。このカバーシェル50には、接触部51と、係止部52と、ばね部53とが形成されている。
【0035】
接触部51は、フロントシェル10の後端部上部に下方から接する。ここで、フロントシェル10の後端部上部には、後方に突き出た舌部13が設けられている。一方、接触部51には、舌部13を受け入れる凹部511が設けられている。このカバーシェル50は、ばね部53の後述する弾性変形の作用により、凹部511に受け入れた舌部13を上方に押して、フロントシェル10とカバーシェル50との確実な接触を保証している。
【0036】
また、係止部52は、フロントシェル11の接地部12に係止する。具体的には、接地部12には、横方向に延びた延在部121が設けられている。また、係止部52は上方に向って窪んだ窪み521(図3図4(A)参照)を有する。この係止部52の窪み521が延在部121に跨るようにして延在部121に係止する。接地部12には左右の各々に延びた一対の延在部121が設けられている。これに対応して、左右一対の係止部52が形成され、カバーシェル50は、フロントシェル10に、左右2か所の係止部52で係止する。これらの係止部52は、延在部121への係止により、フロントシェル10に確実に接触する。すなわち、カバーシェル50は、上方に形成されている接触部51と、下方の左右一対の係止部52との合計3か所でフロントシェル10に接触し、フロントシェル10と同一の電位に保たれてシールドの役割を成している。
【0037】
このコネクタ100が組み立てられてカバーシェル50が延在部121に係止すると、ばね部53が弾性変形する。このばね部53が弾性変形すると、1つには、上記の通り、凹部511に受け入れた舌部13を上方に押して、フロントシェル10とカバーシェル50との確実な接触を保証する。また、もう1つには、ばね部53が弾性変形すると、カバーシェル50がバックハウジング40を前方に押した状態にバックハウジング40に接する。これにより、バックハウジング40やカバーシェル50などの部品に寸法誤差があっても、バックハウジング40とカバーシェル50との間に隙間が形成されることが防止され、コネクタ100ごとの伝送特性のばらつきが抑えられる。詳細は後述する。
【0038】
また、ばね部53は、係止部52よりも前方に突き出た形状を有する。このばね部53も左右一対形成されている。本実施形態では、ばね部53に孔531が形成されている。そして、係止部52が延在部121に係止すると、ばね部53は、孔531の変形を伴いながら弾性変形する。
【0039】
図4は、このコネクタの、カバーシェルを組み立てる前の状態を示した側面図(A)、カバーシェルを組み立てることにより完成した状態を示した側面図(B)、および組み立てた状態において一部を断面して示した側面図(C)である。図4(B)は、図2(C)と同一の図に、カバーシェル50が延在部121に及ぼす力をベクトル表示した図である。
【0040】
このコネクタ100を組み立てるにあたっては、図4(A)に示すように、カバーシェル50が最終の組み立て部品となる。このカバーシェル50の組立にあたっては、フロントシェル10の舌部13を接触部51の凹部511に受け入れて、係止部53を延在部121に係止させる。すると、延在部121がばね部53を押し上げるのでばね部53が上向きに弾性変形し、カバーシェル50の係止部52からフロントシェル10の延在部212に、図4(B)に示すベクトルXの向きの力が与えられる。このベクトルXは、水平成分Yと垂直成分Zとに分解される。
垂直成分Zにより延在部212には垂直成分Zと逆向きの反力RZが生ずる。この反力RZがカバーシェル50を押し上げることにより、フロントシェル10の舌部13が接触部51により押し上げられてその舌部13と接触部51との電気的な接触を確実にするとともに、係止部52の、延在部121への係止を確実にして、係止部52と延在部121との電気的な接続も確実にしている。また、水平成分Yにより延在部212には水平成分Yと逆向きの反力RYが生ずる。この反力RYによりバックハウジング40が後方からカバーシェル50に押され、部品に寸法誤差があっても、図4(C)に矢印Pで示した通り、バックハウジング40とカバーシェル50との間に隙間が生じることが防止される。
【0041】
図5は、比較例としてのコネクタの分解斜視図である。
【0042】
この図5に示す比較例のコネクタ200は、フロントシェル10、フロントハウジング20、コンタクト30、バックハウジング40、およびカバーシェル60で構成されている。これらの部品のうち、カバーシェル60を除く他の部品は、図3に示した本実施形態のコネクタ100の対応する部品と同一である。一方、カバーシェル60は、図3に示したカバーシェル50と比べると、ばね部53が欠落している点が異なっている。また、この比較例のカバーシェル60の場合、左右の壁に切起し片61を形成しバックハウジング40を左右から弾性的に挟む構造としている。
【0043】
以下では、本実施形態のコネクタ100と図5に示した比較例としてのコネクタ200について、部品の寸法誤差に起因する伝送特性の変動について考察する。
【0044】
図6は、比較例のコネクタの側面図である。ここで、図6(A)はカバーシェル60がフロントシェル10の舌部13と延在部121との双方に接触した状態にあるコネクタ200を示している。また、図6(B)に示したコネクタ200の場合、カバーシェル60の縦寸法が短めであることなどに起因して、矢印Qで示した、カバーシェル60と延在部121との間に隙間が生じている。
【0045】
図7は、比較例における電圧定在波比を示した図である。
【0046】
この図7において横軸は信号の周波数(GHz)、縦軸は、電圧定在波比(VSWR)である。また、実線で示した「接触」のグラフは、図6(A)のように、カバーシェル60がフロントシェル10の舌部13と延在部121との双方に接触した状態にある場合のグラフである。一方、破線で示した「非接触」のグラフは、図6(B)のように、カバーシェル60がフロントシェル10の舌部13には接触しているものの、延在部121との間には隙間がある場合のグラフである。
【0047】
電圧定在波比(VSWR)は、実線のグラフの方が高い周波数まで低い値を保っている。
【0048】
図8は、比較例におけるインピーダンスを示した図である。
【0049】
この図8において、横軸は時刻(ps)、縦軸はインピーダンス(ohm)である。実線と破線はの意味は、図7の場合と同じである。
【0050】
インピーダンス(ohm)は、実線のグラフの方が50ohm付近で安定していることが分かる。
【0051】
本実施形態のコネクタ100の場合は、部品のばらつきがあっても、常に、カバーシェル50がフロントシェル10の舌部13と延在部121との双方に接触した状態が維持される。
【0052】
図9は、比較例のコネクタの、一部を断面して示した側面図である。ここで、図9(A)はカバーシェル60がバックハウジング40に接触した状態にある。一方、図9(B)の場合、カバーシェル60の前後方向の寸法が長めであることなどに起因して、矢印Rで示した、カバーシェル60とバックハウジング40との間に隙間が生じている。
【0053】
図10は、「実施例」と「比較例」の挿入損失を示した図である。図10の横軸は信号の周波数(GHz)、縦軸は挿入損失(dB)である。
【0054】
ここで、「実施例」は、図3に示した構造のコネクタを指し、「比較例」は、図5に示した構造のコネクタを指している。また、「前寄り」、「中央」、「後寄り」は、組立後のカバーシェル50(ないしカバーシェル60)の背面の前後方向の位置を意味している。「比較例」の場合、カバーシェル60が後寄りの場合、図9(B)に示したように、バックハウジング40との間に隙間が生じていることになる。
【0055】
この挿入損失(dB)については、「実施例」、「比較例」とも、また、「前寄り」、「中央」、「後寄り」のいずれにおいても、ほとんど同一である。
【0056】
図11は、「実施例」と「比較例」の電圧定在波比(VSWR)を示した図である。
【0057】
この図11の横軸は信号の周波数(GHz)、縦軸は電圧定在波比(VSWR)である。「実施例」、「比較例」、また、「前寄り」、「中央」、「後寄り」の意味は、図10の場合と同じである。
【0058】
実線で示した「実施例」の方が、破線で示した「比較例」と比べ、「前寄り」、「中央」、「後寄り」が互いに近似したカーブとなっている。
【0059】
図12は、「実施例」と「比較例」のインピーダンス(ohm)を示した図である。
【0060】
この図12の横軸は時刻(ps)、縦軸はインピーダンス(ohm)である。
【0061】
「実施例」、「比較例」、また、「前寄り」、「中央」、「後寄り」の意味は、図10図11の場合と同じである。
【0062】
図11の場合と同様、実線で示した「実施例」の方が、破線で示した「比較例」と比べ、「前寄り」、「中央」、「後寄り」が互いに近似したカーブとなっている。
【0063】
これらの図10図12から分かるように、同じ寸法誤差の場合、本実施形態のコネクタ100の方が、比較例のコネクタと比べ、安定した伝送性能が得られることが分かる。
【0064】
なお、ここでは、雄型のコンタクトを備えたコネクタについて説明したが、本発明は、雌型のコンタクトを備えたコネクタにもそのまま適用することができる。
【0065】
また、ここでは、表面実装型のコネクタについて説明したが、回路基板のスルーホールに挿し込んではんだ付けするタイプのコネクタにもそのまま適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 フロントシェル
11 筒部
12 接地部
121 延在部
121a 延在部の上端縁
13 舌部
20 フロントハウジング
21 孔
30 コンタクト
31 基部
32 接点部
33 基板接続部
40 バックハウジング
50 バックシェル
51 接触部
511 凹部
52 係止部
521 窪み
53 ばね部
531 孔
60 バックシェル
61 切起し片
100,200 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12