(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】送信源位置標定装置及び送信源位置標定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G01S3/48
(21)【出願番号】P 2020214105
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】越後貫 智也
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219259(JP,A)
【文献】特開2009-041932(JP,A)
【文献】特開2019-219261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0074633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00- 3/74
G01S 5/00- 5/14
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、
前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、
前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、
各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、
前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する到来推定部と、
前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値より大きいときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度が前記所定閾値以下であるときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する到来出力部と、
を備えることを特徴とする送信源位置標定装置。
【請求項2】
送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、
前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、
前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、
各回に選択されると予測された前記送信源の位置の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、
前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する到来推定部と、
前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値より大きいときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度が前記所定閾値以下であるときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する到来出力部と、
を備えることを特徴とする送信源位置標定装置。
【請求項3】
前記到来出力部は、前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向が、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値に近いときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向が、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値から遠いときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の送信源位置標定装置。
【請求項4】
前記位置標定部は、前記送信源の位置を標定するための送信源運動モデルとして、前記送信源が固定点である運動モデル又は前記送信源が直線移動する運動モデルを適用する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の送信源位置標定装置。
【請求項5】
送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定ステップと、
前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択ステップと、
前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測ステップと、
各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力ステップと、
前記位置出力ステップにおいて最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する到来推定ステップと、
前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値より大きいときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度が前記所定閾値以下であるときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する到来出力ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための送信源位置標定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信源の位置を標定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送信源の位置を標定する技術が、特許文献1、2等に開示されている。特許文献1、2では、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、カルマンフィルタ等による送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5730473号明細書
【文献】特許第5730506号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の受信波の到来方向の乱れに伴なう課題を
図1に示す。ここで、位置標定システムを搭載する移動体の姿勢変化等に応じて、送信源と移動体との間の受信波の到来経路にマルチパス等が生じて、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じる。
【0005】
図1では、送信源の真位置は移動していない。最初に、移動体がほぼ直線移動する初期段階((1)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていないため、送信源の標定位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((1)の標定位置)。その後、移動体が180°旋回する中期段階((2)の移動体位置)では、送信源と移動体の姿勢の関係でブラインド等が生じ、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じているため、送信源の標定位置に飛びが生じてしまい、送信源の標定位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができない((2)の標定位置)。最後に、移動体が再び直線移動する終期段階((3)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていなくても、送信源の標定位置を移動しない送信源の真位置の近傍になかなか復帰することができない((3)の標定位置)。よって、到来方向が一度でも乱れると、送信源の標定位置と移動しない送信源の真位置(移動する送信源の真位置でもよい。)との間の標定誤差を生じさせる。
【0006】
従来技術の送信源の真位置の移動に伴なう課題を
図2に示す。ここで、送信源の標定位置の収束指標として、送信源の標定位置を中心とし送信源の真位置が存在する確率が高い円内の半径の大きさ(以下では、送信源の「標定指標」という。)等が採用される。そして、送信源の標定指標は、標定初期段階から位置収束段階へと、徐々に小さくなるのであって、再び大きくなるわけではない(位置標定処理が異常に動作する場合を除く。)。
【0007】
図2では、送信源の真位置が移動している。しかし、送信源の移動のデータを得られないため、送信源の真位置を固定点として取り扱っている。最初に、送信源の標定指標が大きい標定初期段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができ、送信源の標定位置を移動する送信源の真位置に追従させることができる。最後に、送信源の標定指標が小さい位置収束段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができず、送信源の標定位置を移動する送信源の真位置に追従させることができない。よって、送信源の真位置が長時間移動したときには、送信源の標定位置と移動する送信源の真位置との間の標定誤差を生じさせる。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、送信源の位置を標定するにあたり、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときや、送信源の真位置が移動するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、標定された送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。そして、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。さらに、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。そのうえで、受信波の到来方向に乱れが生じれば、最終出力された送信源の位置に基づいて、受信波の到来方向の推定値を出力する。
【0010】
具体的には、本開示は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する到来推定部と、前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値より大きいときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度が前記所定閾値以下であるときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する到来出力部と、を備えることを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0011】
また、本開示は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定ステップと、前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択ステップと、前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測ステップと、各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力ステップと、前記位置出力ステップにおいて最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する到来推定ステップと、前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値より大きいときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度が前記所定閾値以下であるときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する到来出力ステップと、を順にコンピュータに実行させるための送信源位置標定プログラムである。
【0012】
これらの構成によれば、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、最終出力された送信源の位置に基づいて、受信波の到来方向の推定値を出力することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。そして、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、受信波の到来方向の実測値を間引くのではなく、受信波の到来方向の推定値を出力することにより、送信源の真位置が移動しているものの送信源の出力位置が固定されることをなくすことができる。
【0013】
前記課題を解決するために、標定された送信源の位置の分散値が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに(分散値は通常は小さい。)、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。そして、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。さらに、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。そのうえで、受信波の到来方向に乱れが生じれば、最終出力された送信源の位置に基づいて、受信波の到来方向の推定値を出力する。
【0014】
具体的には、本開示は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、各回に選択されると予測された前記送信源の位置の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する到来推定部と、前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値より大きいときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度が前記所定閾値以下であるときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力する到来出力部と、を備えることを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0015】
この構成によれば、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、最終出力された送信源の位置に基づいて、受信波の到来方向の推定値を出力することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。そして、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、受信波の到来方向の実測値を間引くのではなく、受信波の到来方向の推定値を出力することにより、送信源の真位置が移動しているものの送信源の出力位置が固定されることをなくすことができる。
【0016】
また、本開示は、前記到来出力部は、前記送信源からの新たな受信波の到来方向のスペクトルにおいて、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向が、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値に近いときに、前記送信源からの受信波の到来方向の実測値として、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向を出力する一方で、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向が、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値から遠いときに、前記最大強度を与える前記送信源からの受信波の到来方向に代えて、前記送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を出力することを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0017】
この構成によれば、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルが最適化されているならば、受信波の到来方向の推定値に基づいて、最大強度を与える受信波の到来方向の良否を判定することができる。一方で、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルが最適化されていなければ、最大強度と所定閾値との間の大小関係に基づいて、最大強度を与える受信波の到来方向の良否を判定することができる。
【0018】
また、本開示は、前記位置標定部は、前記送信源の位置を標定するための送信源運動モデルとして、前記送信源が固定点である運動モデル又は前記送信源が直線移動する運動モデルを適用することを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0019】
この構成によれば、送信源の真位置が固定されるときも、送信源の真位置が移動するときも、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを最適化することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示は、送信源の位置を標定するにあたり、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときや、送信源の真位置が移動するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術の受信波の到来方向の乱れに伴なう課題を示す図である。
【
図2】従来技術の送信源の真位置の移動に伴なう課題を示す図である。
【
図3】本開示の位置標定システムの構成を示す図である。
【
図4】本開示の第1の位置標定処理の手順を示す図である。
【
図5】本開示の第1の位置標定処理の内容を示す図である。
【
図6】本開示の第2の位置標定処理の手順を示す図である。
【
図7】本開示の第2の位置標定処理の内容を示す図である。
【
図8】本開示のモデル更新処理の概要を示す図である。
【
図9】本開示の到来出力処理の手順を示す図である。
【
図10】本開示の到来出力処理の内容を示す図である。
【
図11】本開示の到来出力処理の内容を示す図である。
【
図12】本開示の受信波の到来方向の乱れに対する解決を示す図である。
【
図13】本開示の送信源の真位置の移動に対する解決を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0023】
(本開示の位置標定システムの概要)
本開示の位置標定システムの構成を
図3に示す。位置標定システムPは、到来方向測定装置1及び送信源位置標定装置2から構成される。送信源位置標定装置2は、位置標定部21、位置選択部22、位置予測部23、位置出力部24、到来推定部25及び到来出力部26から構成される。送信源位置標定装置2は、
図4、
図6及び
図9に示す送信源位置標定プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現される。
【0024】
到来方向測定装置1は、移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、送信源からの受信波の到来方向のスペクトルを算出し、到来方向スペクトル結果に基づいて、送信源からの受信波の到来方向を算出する。ここで、送信源からの受信波の到来方向のスペクトルとして、MUSIC(Multiple Signal Classification)スペクトル等が挙げられる。そして、到来方向測定装置1は、MUSICスペクトルを算出したうえで、MUSICスペクトル結果に基づいて、送信源からの受信波の到来方向を算出するために、各アンテナ間の受信位相差の情報、各アンテナの搭載位置の情報及び送信源の送信周波数の情報を取得する。
【0025】
位置標定部21は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムPを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する。ここで、位置標定部21として、カルマンフィルタ等が挙げられ、カルマンフィルタ等の状態方程式として、固定点モデル(送信源が固定)又は直線移動モデル(送信源が直線移動)等が挙げられ、カルマンフィルタ等の観測方程式として、三角測量方程式等が挙げられる。そして、位置標定部21は、送信源の位置を標定するために、送信源からの受信波の到来方向の情報、移動体の位置姿勢の情報及び前回の送信源の標定位置の情報を取得する。
【0026】
位置選択部22、位置予測部23及び位置出力部24について、
図4~
図7を用いて説明する。到来推定部25及び到来出力部26について、
図8~
図13を用いて説明する。
【0027】
(本開示の第1の位置標定処理)
本開示の第1の位置標定処理の手順及び内容を
図4及び
図5に示す。位置選択部22は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が極小値に到達するたびに、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。
【0028】
位置予測部23は、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。そして、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。以下に具体的に説明する。
【0029】
位置標定部21は、時刻t1以前から時刻t4以降まで等しい時間間隔をおいて、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムPを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する(ステップS1)。
【0030】
時刻t1以前では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に未だ所定分散値より大きい(ステップS2、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS3)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0031】
時刻t1以前でも、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に初めて所定分散値より小さくなるが(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS5)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0032】
時刻t
1では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
1の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
1の黒丸)を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0033】
時刻t1から時刻t2まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS5)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0034】
時刻t
2では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
2の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置予測部23は、時刻t
1及び時刻t
2に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
2に選択された送信源の位置から外挿することにより、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
3の白丸への方向)を算出する(ステップS6)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
3の白丸への方向)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0035】
時刻t2から時刻t3まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS5)。そして、位置予測部23は、時刻t1及び時刻t2に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS5)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0036】
時刻t
3では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
3の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置予測部23は、時刻t
2及び時刻t
3に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
4の白丸の方向)を算出する(ステップS6)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
4の白丸の方向)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0037】
時刻t3から時刻t4まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS5)。そして、位置予測部23は、時刻t2及び時刻t3に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS5)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0038】
時刻t
4では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
4の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置予測部23は、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t
4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分を、時刻t
4に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
5の白丸の方向)を算出する(ステップS6)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
5の白丸の方向)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0039】
時刻t4から時刻t5まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS5)。そして、位置予測部23は、時刻t3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS5)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0040】
なお、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が一時的に所定分散値より大きくなったとしても、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が以前に所定分散値より小さかったときの送信源の移動方向及び移動速度の予測結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することができる。
【0041】
(本開示の第2の位置標定処理)
本開示の第2の位置標定処理の手順及び内容を
図6及び
図7に示す。位置選択部22は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに(標定指標は通常は小さい。)、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。
【0042】
位置予測部23は、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。そして、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。以下に具体的に説明する。
【0043】
位置標定部21は、時刻t1以前から時刻t4以降まで等しい時間間隔をおいて、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムPを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する(ステップS11)。
【0044】
時刻t1以前では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に未だ所定分散値より大きい(ステップS12、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS13)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0045】
時刻t
1では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に初めて所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されていない(ステップS14、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
1の黒丸)を選択する(ステップS15)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
1の黒丸)を送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0046】
時刻t1から時刻t2まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t1から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS17)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0047】
時刻t
2では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t
1から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過している(ステップS16、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
2の黒丸)を選択する(ステップS18)。そして、位置予測部23は、時刻t
1及び時刻t
2に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
2に選択された送信源の位置から外挿することにより、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
3の白丸)を算出する(ステップS18)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
3の白丸)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0048】
時刻t2から時刻t3まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t2から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS17)。そして、位置予測部23は、時刻t1及び時刻t2に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に所定時間間隔が経過する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS17)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0049】
時刻t
3では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t
2から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過している(ステップS16、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
3の黒丸)を選択する(ステップS18)。そして、位置予測部23は、時刻t
2及び時刻t
3に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
4の白丸)を算出する(ステップS18)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
4の白丸)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0050】
時刻t3から時刻t4まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t3から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS17)。そして、位置予測部23は、時刻t2及び時刻t3に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に所定時間間隔が経過する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS17)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0051】
時刻t
4では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t
3から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過している(ステップS16、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
4の黒丸)を選択する(ステップS18)。そして、位置予測部23は、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t
4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分を、時刻t
4に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
5の白丸)を算出する(ステップS18)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
5の白丸)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0052】
時刻t4から時刻t5まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t4から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS17)。そして、位置予測部23は、時刻t3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に所定時間間隔が経過する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS17)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0053】
なお、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が一時的に所定分散値より大きくなったとしても、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が以前に所定分散値より小さかったときの送信源の移動方向及び移動速度の予測結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することができる。
【0054】
又は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が一時的に所定分散値より大きくなったとしても、送信源の位置の分散値(標定指標)が所定分散値より小さい状態から大きい状態へと遷移するまでの送信源の移動方向及び移動速度の算出結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することもできる。
【0055】
なお、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が再び所定分散値より小さくなったときには、送信源の位置の分散値(標定指標)が所定分散値より大きい状態から小さい状態へと遷移してからの送信源の移動方向及び移動速度の算出結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することができる。
【0056】
(本開示の到来出力処理)
本開示のモデル更新処理の概要を
図8に示す。
図8に不図示のモデル更新部は、位置出力部24において最終出力された送信源の位置に基づいて、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデル(固定点モデル又は直線運動モデル等)を更新する。
【0057】
図8の左側では、位置出力部24は、更新前の送信源運動モデルとして固定点モデルに基づいて、時刻t
1~t
4における送信源の出力位置を最終出力する。そして、モデル更新部は、時刻t
1~t
4における送信源の出力位置に基づいて、更新後の送信源運動モデルとして直線運動モデルを構築する。
図8の右側では、位置出力部24は、更新後の送信源運動モデルとして直線運動モデルに基づいて、時刻t
4~t
7における送信源の出力位置を最終出力する。そして、モデル更新部は、時刻t
4~t
7における送信源の出力位置に基づいて、更なる更新後の送信源運動モデルとして新たな直線運動モデルを構築する。
【0058】
なお、モデル更新部は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が極小値に到達する時刻のうち、毎回の時刻に又は数回おきの時刻に、送信源運動モデルを更新することができる。また、モデル更新部は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が初めて所定分散値より小さくなった後に所定時間間隔が経過する時刻のうち、毎回の時刻に又は数回おきの時刻に、送信源運動モデルを更新することができる。
【0059】
このように、送信源の真位置が固定されるときも、送信源の真位置が移動するときも、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを最適化することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。
【0060】
本開示の到来出力処理の手順を
図9に示す。
図1の従来技術に示したように、位置標定システムPを搭載する移動体の姿勢変化等に応じて、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じる。そして、一のアンテナの受信波と他のアンテナの受信波との相関が低くなり、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度が低くなる。そこで、受信波の到来方向に乱れが生じれば、最終出力された送信源の位置に基づいて、最大強度を与える受信波の到来方向に代えて、受信波の到来方向の推定値を出力する。
【0061】
本開示の到来出力処理の内容を
図10及び
図11に示す。到来推定部25は、位置出力部24において最終出力された送信源の位置と、GPS等を用いて測定された移動体の位置と、に基づいて、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を算出する(ステップS21)。到来出力部26は、送信源からの新たな受信波の到来方向のMUSICスペクトルにおいて、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向を抽出する(ステップS22)。そして、送信源と移動体との間の受信波の到来経路に、マルチパス等が生じているかどうかに応じて、ステップS23~S25に示す処理を実行する。
【0062】
まず、送信源と移動体との間の受信波の到来経路に、マルチパス等が生じていないときについて説明する。
図10の左欄では、送信源からの新たな受信波の到来方向のMUSICスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値(要求精度に応じて適宜設定)より大きい(ステップS23、YES)。そこで、到来出力部26は、送信源からの受信波の到来方向の実測値として、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値ではなく、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向を、位置標定部21に出力する(ステップS24)。
【0063】
図11の左欄では、
図10の左欄と同等の現象として、送信源からの新たな受信波の到来方向のMUSICスペクトルにおいて、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向が、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値に近い(ステップS23、YES)。ここで、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値は、送信源の真位置とほぼ一致する送信源の出力位置(本開示の第1及び第2の位置標定処理を参照)に基づいて算出される。そこで、到来出力部26は、送信源からの受信波の到来方向の実測値として、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値ではなく、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向を、位置標定部21に出力する(ステップS24)。
【0064】
次に、送信源と移動体との間の受信波の到来経路に、マルチパス等が生じているときについて説明する。
図10の右欄では、送信源からの新たな受信波の到来方向のMUSICスペクトルにおいて、最大強度が所定閾値(要求精度に応じて適宜設定)以下である(ステップS23、NO)。そこで、到来出力部26は、送信源からの受信波の到来方向の実測値として、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向に代えて、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を、位置標定部21に出力する(ステップS25)。
【0065】
図11の右欄では、
図10の右欄と同等の現象として、送信源からの新たな受信波の到来方向のMUSICスペクトルにおいて、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向が、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値から遠い(ステップS23、NO)。ここで、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値は、送信源の真位置とほぼ一致する送信源の出力位置(本開示の第1及び第2の位置標定処理を参照)に基づいて算出される。そこで、到来出力部26は、送信源からの受信波の到来方向の実測値として、最大強度を与える送信源からの受信波の到来方向に代えて、送信源からの新たな受信波の到来方向の推定値を、位置標定部21に出力する(ステップS25)。
【0066】
つまり、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルが最適化されていなければ(送信源の移動時に固定点モデル等を適用していれば)、最大強度と所定閾値との間の大小関係に基づいて、最大強度を与える受信波の到来方向の良否を判定することができる。一方で、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルが最適化されているならば(送信源の移動時に直線移動モデル等を適用していれば)、受信波の到来方向の推定値に基づいて、最大強度を与える受信波の到来方向の良否を判定することができる。
【0067】
そして、位置標定システムPを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、最終出力された送信源の位置に基づいて、受信波の到来方向の推定値を出力することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。さらに、位置標定システムPを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、受信波の到来方向の実測値を間引くのではなく、受信波の到来方向の推定値を出力することにより、送信源の真位置が移動しているものの送信源の出力位置が固定されることをなくすことができる。
【0068】
本開示の受信波の到来方向の乱れに対する解決を
図12に示す。
図12でも
図1と同様に、送信源の真位置は移動していない。最初に、移動体がほぼ直線移動する初期段階((1)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていないため、送信源の出力位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((1)の出力位置)。その後、移動体が180°旋回する中期段階((2)の移動体位置)では、送信源と移動体の姿勢の関係でブラインド等が生じ、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じているが、その到来方向を採用しないため、送信源の出力位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((2)の出力位置)。最後に、移動体が再び直線移動する終期段階((3)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていないため、送信源の出力位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((3)の出力位置)。よって、到来方向が乱れたときにも、初期段階、中期段階及び終期段階のすべての段階において、送信源の出力位置と移動しない送信源の真位置(移動する送信源の真位置でもよい。)との間の出力誤差を生じさせない。
【0069】
本開示の送信源の真位置の移動に対する解決を
図13に示す。
図13でも
図2と同様に、送信源の真位置が移動している。最初に、送信源の移動のデータを得られないため、送信源の真位置を固定点として取り扱っている。しかし、送信源の標定指標が大きい標定初期段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができるため、送信源の出力位置を移動する送信源の真位置に追従させることができる。最後に、送信源の移動のデータを得られるため、送信源の真位置を移動点として取り扱っている。すると、送信源の標定指標が小さい位置収束段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができなくても、送信源の出力位置を移動する送信源の真位置に追従させることができる。よって、送信源の真位置が長時間移動したときにも、送信源の出力位置と移動する送信源の真位置との間の出力誤差を生じさせない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示の送信源位置標定装置及び送信源位置標定プログラムは、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときや、送信源の真位置が移動するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らすことができる。
【符号の説明】
【0071】
P:位置標定システム
1:到来方向測定装置
2:送信源位置標定装置
21:位置標定部
22:位置選択部
23:位置予測部
24:位置出力部
25:到来推定部
26:到来出力部