(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】積層グレイジング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240902BHJP
C03C 3/078 20060101ALI20240902BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20240902BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240902BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240902BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C03C27/12 R
C03C3/078
C03C3/087
C03C21/00 101
B32B17/10
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2020551907
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 GB2019050791
(87)【国際公開番号】W WO2019186114
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-24
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ ミケッティ
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508995(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183381(WO,A1)
【文献】特表平06-503063(JP,A)
【文献】特表2017-508693(JP,A)
【文献】特開2005-139046(JP,A)
【文献】特表2015-533113(JP,A)
【文献】特開2007-197288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
C03C 21/00
C03C 1/00 - 14/00
B32B 17/10
B60J 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性中間層材料の少なくとも1つの(第1の)層を含む中間層構造によって第2のガラスシートに接合された第1のガラスシートを含む、積層グレイジングであって、
前記第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれ第1の主表面および反対側の第2の主表面を有し、前記積層グレイジングは、前記第1のガラスシートの前記第2の主表面の少なくとも一部が前記第2のガラスシートの前記第1の主表面に面するように配置されており
;
前記第1のガラスシートは、当該第1のガラスシートの前記第1の主表面の少なくとも中央領域における表面圧縮応力が少なくともCS
minであり、前記第1のガラスシートの厚さtは、1.4mm~2.6mmであり、CS
min(MPa)が下記式により与えられ、
【数1】
ここで、a
1は、
138.8MPaであり、
前記第1のガラスシートの前記第1の主表面の前記中央領域における前記表面圧縮応力がCS
max未満であり、CS
max(MPa)が下記式により与えられ、
【数2】
ここで、b
1は、
123.12MPaであ
り、
前記第2のガラスシートの厚さは、0.3mm~1.0mmであり、
前記第2のガラスシートは、表面圧縮応力が400MPa~700MPaであり、及び層深度(DOL)が25μm~45μmである化学強化ガラスのシートであり、
前記第1のガラスシートは、(重量で)SiO
2
69~74%;Al
2
O
3
0~3%;Na
2
O 10~16%;K
2
O 0~5%;MgO 0~6%;CaO 5~14%;SO
3
0~2%、およびFe
2
O
3
0.005~2%を含むガラス組成を有し、並びに、
前記第2のガラスシートは、66~72mol% SiO
2
、1~4mol% Al
2
O
3
、8~15mol% MgO、1~8mol% CaO、12~16mol% Na
2
Oを含む組成を有し、ここで、MgO+CaOが12~17mol%であり、CaO/(MgO+CaO)が0.1~0.4である、
積層グレイジング。
【請求項2】
接着性中間層材料の少なくとも1つの(第1の)層を含む中間層構造によって第2のガラスシートに接合された第1のガラスシートを含む、積層グレイジングであって、
前記第1のガラスシートは、(重量で)SiO
2
69~74%;Al
2
O
3
0~3%;Na
2
O 10~16%;K
2
O 0~5%;MgO 0~6%;CaO 5~14%;SO
3
0~2%、およびFe
2
O
3
0.005~2%を含むガラス組成を有し、
前記第2のガラスシートは、66~72mol% SiO
2、1~4mol% Al
2O
3、8~15mol% MgO、1~8mol% CaO、12~16mol% Na
2Oを含む組成を有し、ここで、MgO+CaOが12~17mol%であり、CaO/(MgO+CaO)が0.1~0.4であり、
前記第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれ第1の主表面および反対側の第2の主表面を有し、前記積層グレイジングは、前記第1のガラスシートの前記第2の主表面の少なくとも一部が前記第2のガラスシートの前記第1の主表面に面するように配置されており;
前記第1のガラスシートの厚さは、2.6mm超8mm未満であり、当該第1のガラスシートの前記第1の主表面の中央領域における表面圧縮応力は、50MPa~150MPaであり;
前記第2のガラスシートは、厚さが0.3mm~1.0mmであり、表面圧縮応力が400~700MPaであり、及び層深度が25μm~45μmである化学強化ガラスのシートである、積層グレイジング。
【請求項3】
前記第1のガラスシートの厚さは、2.8mm~5.5mmであり、当該第1のガラスシートの前記第1の主表面の前記中央領域における前記表面圧縮応力は、60MPa~130MPaである、請求項
2に記載の積層グレイジング。
【請求項4】
前記第2のガラスシートは、表面圧縮応力が450MPa~675MPaであるように化学的に強化されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項5】
前記第2のガラスシートは、層深度(DOL)が30μm~40μmであるように化学的に強化されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項6】
前記接着性中間層材料の第1の層は、前記第1および/または第2のガラスシートと同延である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項7】
前記接着性中間層材料の第1の層は、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音改質PVB;エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC);またはエチレンおよびメタクリル酸の共重合体を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項8】
前記接着性中間層材料の第1の層の厚さは、0.3mm~2.3mmである、請求項
7に記載の積層グレイジング。
【請求項9】
太陽光制御機能を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項10】
前記太陽光制御機能が前記第1および/または第2のガラスシート上の太陽光制御コーティングにより提供され、かつ/あるいは前記太陽光制御機能が前記第1および/または第2のガラスシートによって提供される、請求項
9に記載の積層グレイジング。
【請求項11】
前記太陽光制御機能が前記接着性中間層材料の第1の層によって提供される、請求項
9または
10に記載の積層グレイジング。
【請求項12】
前記中間層構造が、接着性中間層材料の第2の層および中間シートを含み、当該中間シートが、前記接着性中間層材料の第1および第2の層の間にあり、前記太陽光制御機能が当該中間シートによって提供される、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項13】
前記中間シートが、赤外線反射コーティング用のキャリアシートとして使用され、かつ/あるいは前記接着性中間層材料の第1および/または第2の層が、前記積層グレイジングを透過する可能性のある日射量を減らすための機能的介在物を含む、請求項
12に記載の積層グレイジング。
【請求項14】
前記第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれの縁部を有し、前記第2のガラスシートの前記縁部が前記第1のガラスシートの前記縁部と隣接し、または前記第2のガラスシートの前記縁部が前記第1のガラスシートの前記縁部に囲まれている、請求項1~
13のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項15】
前記第1および/または第2のガラスシートは、前記積層グレイジングを移動させる機構に当該積層グレイジングを接続するためのそれぞれの第1の接続部分を含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の積層グレイジング。
【請求項16】
ウィンドウ用の開口部を有する車両であって、(i)請求項1~
14のいずれか一項に記載の積層グレイジングが前記開口部内に固定されており、または(ii)請求項1~
15のいずれか一項に記載の積層グレイジングが前記開口部内で移動可能であり、または(iii)請求項
15に記載の積層グレイジングが、前記第1または第2のガラスシートの前記第1の接続部分に接続された機構によって前記開口部内で移動可能である、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層グレイジングに関し、特には、車両で使用する軽量積層グレイジングに関する。
【背景技術】
【0002】
積層グレイジングが自動車のウィンドウとして使用されていることは周知である。通常、このウィンドウとは、車両のフロントガラスであるが、車両のサイドウィンドウ、リアウィンドウ、またはサンルーフである場合もある。当技術分野では、車両のサイドウィンドウは車両のサイドライトと呼ばれることがある。一般に、車両は、少なくとも1つ、通常は2つの可動式のサイドウィンドウを有し、該サイドウィンドウは、車両の両側に1つずつ、すなわち助手席側と運転席側とにある。可動式のサイドウィンドウに加えて、1つまたは複数の固定式のサイドウィンドウ、例えば、フロントまたはリアクォーターライトがある場合がある。
【0003】
運転席のドアには、通常、適切な巻き取り機構の作動により垂直方向に移動可能なサイドウィンドウがある。巻き取り機構は、手動または電動で操作でき、サイドウィンドウと機械的に連絡する少なくとも1つの要素を有し、運転席のサイドウィンドウを画定する車両の開口部内でサイドウィンドウを動かすことができる。
【0004】
車両のサイドウィンドウは、熱強化ガラスのシートを含み得ることが知られている。そのような熱強化ガラスのシートが破壊されると、ガラスシートが多くの小さな断片に破壊されるため車両のサイドウィンドウの完全性が失われる。
【0005】
車両のサイドウィンドウの重量を減らすために、ポリビニルブチラール(PVB)などの接着性中間層によって積層されたガラスの薄いシートを使用することが知られている。積層ガラスシートの少なくとも1枚の圧縮応力を変化させて、望ましい機械的特性を提供することが知られている。
【0006】
また、積層されたサイドウィンドウは、該サイドウィンドウが完全に閉じられたときに、車両の内部に面するガラスシートが巻き取り機構まで完全に下方に延在しないような構造を有し得ることも知られている。代わりに、巻き取り機構は、積層グレイジングの外側のガラスシートの一部である接続領域にのみ接続されている。外側のガラスシートが接着性中間層材料(PVBなど)によって内側のガラスシートに接合されているため、内側のガラスシートは、巻き取り機構の作動により、外側のガラスシートと同時に移動する。しかしながら、巻き取り機構は、内側のガラスシートと直接物理的には接触していない。
【0007】
また、例えば、US4985099およびUS2015/0224855A1に記載されているように、化学的強化ガラスのシートを車両のサイドウィンドウの内側表面シートとして使用することも知られている。化学的強化ガラスのシートは、ガラスの外側ペインと同延であってもよく、または上述したように、閉位置にあるときに車両の開口部のみを覆っていてもよい。
【0008】
WO2015/092385A1には、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスでできた外側プライ(またはシート)と、化学強化ガラスでできた内側プライと、を含む積層グレイジングが記載されている。
【0009】
WO02/07967A1は、0.8mm~3.5mmの厚さを有する少なくとも1枚のガラスシートを有する積層グレイジングパネルを記載している。ガラスシートは:a)20MPa~80MPaの端部圧縮応力;およびb)ガラスの中央部分で2MPa~39MPaの表面圧縮応力を有する。グレイジングパネルは、自動車用積層グレイジングとして使用することができる。
【0010】
WO2006/043026A1は、太陽光制御機能を有する積層グレイジングを記載している。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、積層された車両用サイドウィンドウにおける表面圧縮応力のレベルが、外側のガラスシートのガラスの厚さに応じて変化し得ることを見出した。
【0012】
したがって、本発明は、接着性中間層材料の少なくとも1つの(第1の)層を含む中間層構造によって第2のガラスシートに接合された第1のガラスシートを含む、積層グレイジングであって、第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれ第1の主表面および反対側の第2の主表面を有し、積層グレイジングは、第1のガラスシートの第2の主表面の少なくとも一部が第2のガラスシートの第1の主表面に面するように配置されており;第1のガラスシートは、当該第1のガラスシートの第1の主表面の少なくとも中央領域における表面圧縮応力が少なくともCS
minであり、第1のガラスシートの厚さtは、1.4mm~2.6mmであり、CS
min(MPa)が下記式により与えられ、
【数1】
ここで、a
1は、135MPa~140MPaであり、好ましくは、a
1=138.5MPaである、積層グレイジングを提供する。
【0013】
本発明者らは、上記式を利用することにより、積層グレイジング、特に車両用の積層サイドウィンドウに必要な機械的特性が、1.4mm~2.6mmである第1のガラスシートの所与の厚さに対して迅速に得られることを見出した。
【0014】
好ましくは、第1のガラスシートの厚さが1.4mm~2.6mmである場合、第1のガラスシートの第1の主表面の中央領域における表面圧縮応力(MPa)はCS
max未満であり、CS
maxは下記式により与えられ、
【数2】
ここで、b
1は、120MPa~126MPaであり、好ましくは、b
1=123.1MPaである。
【0015】
好ましくは、2のガラスシートの厚さは、0.3mm超であり、および/または1.0mm未満である。
【0016】
好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、1.0mm未満または0.8mm未満である。
【0017】
好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、0.3mm超である。
【0018】
好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、0.3mm~1.0mmである。
【0019】
好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、0.3mm~0.8mmである。
【0020】
好ましくは、第2のガラスシートは化学的に強化されている。
【0021】
好ましくは、第2のガラスシートは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物である。
【0022】
好ましくは、第2のガラスシートは、少なくとも約6重量%の酸化アルミニウムを含む。
【0023】
好ましくは、第2のガラスシートは、66~72mol% SiO2、1~4mol% Al2O3、8~15mol% MgO、1~8mol% CaO、12~16mol% Na2Oを含む組成を有し、好ましくは、MgO+CaOが12~17mol%であり、CaO/(MgO+CaO)が0.1~0.4である。
【0024】
好ましくは、第2のガラスシートは、(重量で)Al2O3とMgOの合計が13%を超え、Al2O3とMgOの合計をK2Oの量で割った値が3を超え、かつNa2OとK2OとMgOの合計が22%を超えることを条件として、58%~70% SiO2、5%~15% Al2O3、12%~18% Na2O、0.1%~5% K2O、4%~10% MgO、および0%~1% CaOを含む組成を有する。
【0025】
好ましくは、第2のガラスシートは、表面圧縮応力が400MPaを超え、好ましくは400MPa~900MPaであり、より好ましくは400~700MPaであり、なお一層好ましくは450MPa~675MPaであるように化学的に強化されている。
【0026】
好ましくは、第2のガラスシートは、表面圧縮応力が約900MPa以下であるように化学的に強化されている。
【0027】
好ましくは、第2のガラスシートは、層深度(DOL)が10μm~60μmであり、より好ましくは25μm~45μmであり、なお一層好ましくは30μm~40μmであるように化学的に強化されている。
【0028】
好ましくは、第1のガラスシートは、フロートガラスのシートである。
【0029】
好ましくは、第1のガラスシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートである。
【0030】
好ましくは、第1のガラスシートは、(重量で)SiO2 69~74%;Al2O30~3%;Na2O 10~16%;K2O 0~5%;MgO 0~6%;CaO 5~14%;SO3 0~2%、およびFe2O30.005~2%を含むガラス組成を有する。
【0031】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、第1または第2のガラスシートと同延である。
【0032】
好ましくは、第1のガラスシートは、第2のガラスシートと同延である。
【0033】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、第1のガラスシートおよび第2のガラスシートと同延である。
【0034】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音改質PVB;エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC);またはエチレンおよびメタクリル酸の共重合体を含む。
【0035】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層の厚さは、0.3mm~2.3mm、好ましくは0.3mm~1.6mm、より好ましくは0.3mm~0.9mmである。
【0036】
好ましくは、第1および/または第2のガラスシートは、積層グレイジングを好ましくは垂直方向に移動させる機構に当該積層グレイジングを接続するためのそれぞれの第1の接続部分を含む。
【0037】
第1および第2のガラスシートは、各々が縁部を有する。好ましくは、第2のガラスシートの縁部は第1のガラスシートの縁部と隣接し、または第2のガラスシートの縁部は第1のガラスシートの縁部に囲まれている。
【0038】
第2のガラスシートの縁部が第1のガラスシートの縁部に囲まれている場合、第1のガラスシートの縁部の一部は、第2のガラスシートの縁部の一部と位置合わせすることができる。
【0039】
本発明の第2の態様は、接着性中間層材料の少なくとも1つの(第1の)層を含む中間層構造によって第2のガラスシートに接合された第1のガラスシートを含む、積層グレイジングであって、第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれ第1の主表面および反対側の第2の主表面を有し、積層グレイジングは、第1のガラスシートの第2の主表面の少なくとも一部が第2のガラスシートの第1の主表面に面するように配置されており;第1のガラスシートの厚さは、2.6mm超8mm未満であり、好ましくは6mm未満であり、当該第1のガラスシートの第1の主表面の中央領域における表面圧縮応力は、50MPa~150MPaであり;第2のガラスシートは、厚さが0.3mm~1.0mmであり、表面圧縮応力が400MPaを超え、層深度(DOL)が10μm~60μmである、化学強化ガラスのシートである、積層グレイジングを提供する。
【0040】
好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、0.4mm~0.8mである。
【0041】
好ましくは、第2のガラスシートは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物である。
【0042】
好ましくは、第2のガラスシートは、少なくとも約6重量%の酸化アルミニウムを含む。
【0043】
好ましくは、第2のガラスシートは、66~72mol% SiO2、1~4mol% Al2O3、8~15mol% MgO、1~8mol% CaO、12~16mol% Na2Oを含む組成を有し、好ましくは、MgO+CaOが12~17mol%であり、CaO/(MgO+CaO)が0.1~0.4である。
【0044】
好ましくは、第2のガラスシートは、(重量で)Al2O3とMgOの合計が13%を超え、Al2O3とMgOの合計をK2Oの量で割った値が3を超え、かつNa2OとK2OとMgOの合計が22%を超えることを条件として、58%~70% SiO2、5%~15% Al2O3、12%~18% Na2O、0.1%~5% K2O、4%~10% MgO、および0%~1% CaOを含む組成を有する。
【0045】
好ましくは、第2のガラスシートは、表面圧縮応力が400MPa~900MPaであり、より好ましくは400~700MPaであり、なお一層好ましくは450MPa~675MPaであるように化学的に強化されている。
【0046】
好ましくは、第2のガラスシートは、層深度(DOL)が25μm~45μmであり、なお一層好ましくは30μm~40μmであるように化学的に強化されている。
【0047】
好ましくは、第1のガラスシートは、フロートガラスのシートである。
【0048】
好ましくは、第1のガラスシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートである。
【0049】
好ましくは、第1のガラスシートは、(重量で)SiO2 69~74%;Al2O30~3%;Na2O 10~16%;K2O 0~5%;MgO 0~6%;CaO 5~14%;SO3 0~2%、およびFe2O30.005~2%を含むガラス組成を有する。
【0050】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、第1または第2のガラスシートと同延である。
【0051】
好ましくは、第1のガラスシートは、第2のガラスシートと同延である。
【0052】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、第1のガラスシートおよび第2のガラスシートと同延である。
【0053】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音改質PVB;エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC);またはエチレンおよびメタクリル酸の共重合体を含む。
【0054】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層の厚さは、0.3mm~2.3mm、好ましくは0.3mm~1.6mm、より好ましくは0.3mm~0.9mmである。
【0055】
好ましくは、第1および/または第2のガラスシートは、積層グレイジングを好ましくは垂直方向に移動させる機構に当該積層グレイジングを接続するためのそれぞれの第1の接続部分を含む。
【0056】
第1および第2のガラスシートの各々は縁部を有する。好ましくは、第2のガラスシートの縁部が第1のガラスシートの縁部と隣接し、または第2のガラスシートの縁部が第1のガラスシートの縁部に囲まれている。
【0057】
第2のガラスシートの不イブが第1のガラスシートの縁部に囲まれている場合、第1のガラスシートの縁部の一部は、第2のガラスシートの縁部の一部と位置合わせすることができる。
【0058】
本発明の第1および/または第2の態様による積層グレイジングは、他の好ましい特徴を有する。
【0059】
好ましくは、積層グレイジングは、太陽光制御機能を有する。
【0060】
いくつかの実施形態において、積層グレイジングの太陽光制御機能は、第1および/または第2のガラスシート上の太陽光制御コーティングによって少なくとも部分的に提供される。
【0061】
好ましくは、第1のガラスシートの第1の主表面が、その少なくとも一部に太陽光制御コーティングを有する。
【0062】
好ましくは、第1のガラスシートの第2の主表面が、その少なくとも一部に太陽光制御コーティングを有する。
【0063】
好ましくは、第2のガラスシートの第1の主表面が、その少なくとも一部に太陽光制御コーティングを有する。
【0064】
好ましくは、第2のガラスシートの第2の主表面が、その少なくとも一部に太陽光制御コーティングを有する。
【0065】
好ましくは、第1および/または第2のガラスシートの第1および/または第2の主表面上の太陽光制御コーティングは、吸収コーティング、特に赤外線吸収コーティングを含む。
【0066】
好ましくは、第1および/または第2のガラスシートの第1および/または第2の主表面上の太陽光制御コーティングは、反射コーティング、特に赤外線反射コーティングを含む。
【0067】
積層グレイジングが太陽光制御機能を有する場合、太陽光制御機能は、第1および/または第2のガラスシートによって少なくとも部分的に提供することができる。例えば、第1および/または第2のガラスシートは、適切に色合いを付けることができる。
【0068】
積層グレイジングが太陽光制御機能を有する場合、太陽光制御機能は、中間層構造によって少なくとも部分的に提供することができる。
【0069】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、該接着性中間層材料の第1の層を透過する可能性のある日射量を減らすための機能的介在物を含む。
【0070】
好ましくは、接着性中間層材料の第1の層は、日射を吸収するための吸収材を含む。
【0071】
好ましくは、中間層構造は、中間シートによって離間された2つ以上の接着性中間層材料を含み、中間シートが、少なくとも部分的に、積層グレイジングに太陽光制御機能を提供するために使用される。
【0072】
好ましくは、中間シートは、赤外線反射コーティング用のキャリアシートとして使用される。
【0073】
好ましくは、中間シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、またはガラスシートを含む。
【0074】
中間シートが赤外線反射コーティング用のキャリアシートとして使用される場合、好ましくは、赤外線反射コーティングは、少なくとも1つの金属層、より好ましくは少なくとも1つの銀層を含む。
【0075】
本発明の第1および/または第2の態様の他の実施形態において、第1および/または第2のガラスシートは、機能性コーティングを含む。
【0076】
好ましくは、第1のガラスシートの第1の主表面は、その少なくとも一部に機能性コーティングを有する。
【0077】
好ましくは、第1のガラスシートの第2の主表面は、その少なくとも一部に機能性コーティングを有する。
【0078】
好ましくは、第2のガラスシートの第1の主表面は、その少なくとも一部に機能性コーティングを有する。
【0079】
好ましくは、第2のガラスシートの第2の主表面は、その少なくとも一部に機能性コーティングを有する。
【0080】
第1および/または第2のガラスシートの第1および/または第2の主表面がその少なくとも一部に機能性コーティングを有するいくつかの実施形態では、好ましくは、機能性コーティングは、紫外線遮蔽機能および/または着色機能を含み、積層グレイジングを介した可視光および/または紫外線の通過が、機能性コーティングの存在によって変更されるようになっている。
【0081】
本発明の第1および/または第2の態様のいくつかの実施形態では、第1のガラスシートの第1の主表面および/または第2のガラスシートの第2の主表面がその少なくとも一部に機能性コーティングを有し、該機能性コーティングがセルフクリーニングタイプのコーティングを含む。
【0082】
本発明の第1および/または第2の態様のいくつかの実施形態では、積層グレイジングは、第1および/または第2のガラスシートの第1および/または第2の主表面の少なくとも一部に低放射率コーティングを含む。
【0083】
低放射率コーティングは、スズ、亜鉛、インジウム、タングステンおよびモリブデンなどの金属の酸化物の少なくとも1つの層を含む。金属の酸化物の少なくとも1つの層は、フッ素、塩素、アンチノミー、スズ、アルミニウム、タンタル、ニオブ、インジウムまたはガリウムなどのドーパントを含むことができ、その結果、フッ素ドープ酸化スズおよびスズドープ酸化インジウムなどのコーティングが生じ得る。
【0084】
好ましくは、低放射率コーティングは、少なくとも1つの金属層、好ましくは少なくとも1つの誘電体層を含む。少なくとも1つの金属層は、好ましくは、銀、金、銅、ニッケルまたはクロムを含む。
【0085】
別の態様から、本発明は、ウィンドウ、特にサイドウィンドウ用の開口部を有する車両であって、本発明の第1および/または第2の態様による積層グレイジングが当該開口部内に固定された車両を提供する。
【0086】
別の態様から、本発明は、ウィンドウ、特にサイドウィンドウ用の開口部を有する車両をであって、本発明の第1および/または第2の態様による積層グレイジングが開口部内で移動可能である車両を提供する。
【0087】
別の態様から、本発明は、ウィンドウ、特にサイドウィンドウ用の開口部を有する車両を提供し、本発明の第1および/または第2の態様の実施形態による積層グレイジングは、第1および/または第2のガラスシートが、積層グレイジングを開口部内で移動させる機構に積層グレイジングを接続するためのそれぞれの第1の接続部分を含む。好ましくは、積層グレイジングは、開口部内で垂直方向に移動することができる。
【0088】
車両が開口部に可動式のグレイジングを有する実施形態では、適切には、車両が内部を有し、開口部が周辺部を有し、積層グレイジングは、車両の外側から開口部を介して車両の内部にアクセスできないように、開口部を閉じる第1の位置に移動可能であり、積層グレイジングが第1の位置にあるとき、積層グレイジングが開口部に面していない部分があり、第1のガラスシートの第2の主表面が第2のガラスシートの第1の主表面に面していない部分がある。
【0089】
次に、本発明を以下の図(縮尺通りではない)を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】本発明の第1の態様による、車両サイドウィンドウの概略平面図である。
【
図2】
図1に示す車両サイドウィンドウの概略断面図である。
【
図3】車両サイドウィンドウを有する車両の概略側面図である。
【
図4】車両サイドウィンドウを有する車両の概略側面図である。
【
図5】車両サイドウィンドウを有する車両の概略側面図である。
【
図6】車両サイドウィンドウを有する車両の概略側面図である。
【
図7】ガラスの厚さの関数としての表面圧縮応力の上限値および下限値を示すグラフである。
【
図8】本発明の第2の態様による車両サイドウィンドウの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明の以下の説明では、表面圧縮応力測定は、Strainoptics Laser GASP-CS(http://www.strainoptics.com/files/Laser%20GASP-CS%20Quick-Start%20(English).pdf)を使用して行う。このような機器は、Strainoptics社(108 W.Montgomery Avenue,North Wales,PA 19454 USA)から入手することができる。
【0092】
図1は、可動式の車両サイドウィンドウ1の平面図を示す。平面図において、車両サイドウィンドウ1は、上部領域3、下部領域5、および接続領域7を有する。
【0093】
上部領域3は、x-x’線に関して定義され、x-x’線は、以下でさらに詳しく説明するように、車両サイドウィンドウが取り付けられている車両のスタイルによって定義される。この例では、接続領域7は、第1の台形部分7aおよび第2の台形部分7bを含む。各台形部分7a,7bは、狭くなったその端部にそれぞれの孔7c,7dを有する。孔7c,7dは、巻き取り機構(図示せず)を車両サイドウィンドウ1に接続して、該車両サイドウィンドウを垂直に、すなわち矢印8の方向に動かすために使用される。
【0094】
車両サイドウィンドウ1は、外面として使用するように構成された主表面10を有する。主表面10は、中央領域12を有し、該中央領域は、車両のサイドウィンドウ1の縁部の内側にある。
【0095】
図1は、可動式のサイドウィンドウを示しており、フロントクォーターライトまたはリアクォーターライトなどの固定式のサイドウィンドウも同じ図で表すことができるが、固定式には接続領域7はない。通常、フロントまたはリアクォーターライトは車両の開口部内に固定されているが、車両の開口部にピボット式に取り付けられるクォーターライトがあることが知られている。
【0096】
図2は、
図1に示す車両サイドウィンドウ1の、y-y線に沿った概略断面図を示す。x’-x’’線は、x-x’線と水平な平面を形成している。
【0097】
車両サイドウィンドウ1は、第1のガラスシート9、ポリビニルブチラール(PVB)の層11、および第2のガラスシート13を含む。PVBの層は、第1のガラスシート9を第2のガラスシート13に接合している。
【0098】
従来の呼び名を使用すると、主表面10は、「外側」に面するグレイジングの第1の面であるので、「表面1」として知られている。すなわち、通常の使用では、車両サイドウィンドウ1の主表面10は、太陽光線が最初に当たる第1の面である。
【0099】
第1のガラスシート9は、透明フロートガラスなどの組成を有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートであり、通常、積層グレイジングに何らかの形の太陽光制御を提供するために、着色剤として酸化鉄が添加されている。
【0100】
典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの組成は(重量で)、SiO2 69~74%;Al2O30~3%;Na2O 10~16%;K2O 0~5%;MgO 0~6%;CaO 5~14%;SO3 0~2%;Fe2O30.005~2%である。ガラス組成物は、他の添加剤、例えば、通常2%までの量で存在する清澄助剤を含んでいてもよい。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、Co3O4,NiOおよびSeなどの他の着色剤を含有して、透過光で見たときにガラスに所望の色を与えてもよい。透過ガラスの色は、BS EN410などの認められた規格で測定することができる。
【0101】
PVBの層11は、0.76mmの厚さを有するが、0.3mm~1mmの厚さを有していてもよく、例えば、PVB層は、0.38mmまたは0.86mmの厚さを有していてもよい。
【0102】
第2のガラスシート13は、0.7mmの厚さを有するが、0.3mm~1.0mmの厚さを有していてもよく、例えば、0.3mm~0.8mmまたは0.4mm~0.8mmの厚さを有していてもよい。第2のガラスシート13は、0.5mmの厚さを有していてもよい。
【0103】
第2のガラスシートは、従来の溶融塩イオン交換プロセスを使用して化学的に強化され、第2のガラスシートの表面のナトリウムイオンを適切な溶融塩のカリウムイオンと交換する。この化学強化プロセスは、層深度(DOL)が35μmであり、表面圧縮応力が400MPaを超え、通常450MPa~700MPaである、第2のガラスシートを提供するように制御する。表面圧縮応力は、900MPaに達し得る。DOLは、30μm~40μmとすることができる。
【0104】
第2のガラスシート13に適したガラス組成は、コーニング社(Corning Incorporated)から入手可能なGorilla(商標)ガラスなどのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。
【0105】
第2のシート13の特定の組成は、68mol% SiO2、2.5mol% Al2O3、11mol% MgO、3.7mol% CaO、14.2mol% Na2O、0.6mol% K2Oである。この組成の場合、MgO+CaOは14.7mol%であり、Na2O+K2Oは14.8mol%である。これは、公開されているWO02014/148020A1の20ページの表2の組成番号13である。第2のシートの酸化鉄(Fe2O3)含有量は低くてもよく、0.1重量パーセント未満、すなわち、約0.012重量パーセントである。
【0106】
図2に示すように、PVBの層11および第2のガラスシート13はいずれも線x’-x’’の下に延び、その結果、
図1のx-x’線の下に延びているが、PVBの層11と第2のガラスシート13は、第1のガラスシート9と同延ではない。これにより、接続領域7がPVBの層11および第2のガラスシート13で覆われなくなるので、接続領域7、すなわち孔7c(
図2には不図示)および7dを介して、従来の巻き取り機構を取り付けることができる。しかしながら、PVBの層11および/または第2のガラスシート13は、第1のガラスシート9と同延であってもよい。
【0107】
図3は、車両50(すなわち、車)の概略側面図を示す。車両50は、サイドドア52と、周辺部56を有する開口部54と、を有し、該開口部では、
図1および2に示されるタイプの車両サイドウィンドウが、当技術分野で既知の方法でその中を垂直方向に移動することができる。周辺部56は、車両ドアの一部、すなわち適切なフレーム、または車両本体の一部であり得る。
【0108】
周辺部56は、角j,kおよびmを有する。j-m線は、
図1に示すx-x’線の位置を定義する。
図3では、開口部54は、車両サイドウィンドウが開口部54を閉じている、閉構成で示されている。
図1および
図2を参照すると、第1のガラスシートの主表面10の一部が開口部54を閉じている。
【0109】
また
図3に示すように、車両50は、本発明による構成を有することができる固定式のサイドウィンドウ58を有する。ただし、サイドウィンドウ58はフレームに固定されているため、サイドウィンドウ58に巻き取り機構を接続するための接続領域を設ける必要はない。
【0110】
図4は、車両のサイドウィンドウが完全に下に巻かれた第2の構成にある開口部54’を備えた車両50を示す。
【0111】
図1~3を参照すると、
図5は、開口部54内で移動可能な車両サイドウィンドウ1が組み込まれたサイドドア52を有する車両50を示している。この図では、x-x’線(すなわち、開口部によって定義されるj-m線)の下にある車両サイドウィンドウ1を仮想線で示している。ドア52の下部には、巻き取り機構60が配置されている。適切なリンケージ62が、巻き取り機構60を車両サイドウィンドウ1の接続領域に接続している。第1のリンケージ部材63は第1の台形部分7aと機械的に連絡し、第2のリンケージ部材64は第2の台形部分7bと機械的に連絡している。穴7c,7dは、それぞれのリンケージ部材63,64の端部をそれぞれの台形部分7a,7bに取り付けるために使用することができる。
【0112】
開口部54は、車両サイドウィンドウ1の上部領域3によって閉じられている。
【0113】
図6は、
図5に示された車両50を示しており、ここで、巻き取り機構60は、開口部に開口66が存在するように、車両サイドウィンドウを部分的に下に巻くように適切に作動している。すなわち、開口部はもはや完全に閉じられていない。巻き取り機構60の作動により、巻き取りリンケージ62は、
図5に示される第1の位置から
図6に示される第2の位置に移動する。第1および第2のリンケージ63,64のそれぞれを巻き取り機構60に向かって適切に動かすことにより、開口部の車両サイドウィンドウが下げられる。その結果、車両サイドウィンドウ1の線x-x’線は、開口部によって定義されるj-m線の下に移動する。車両50の内部は、開口部66を介してアクセス可能である。
【0114】
本発明の第1の態様によれば、第1のガラスシートの中央領域12の圧縮応力が第1のガラスシートの厚さに応じて変化する場合に、車両のサイドウィンドウ1は、許容できる機械的特性を有することが見出された。
【0115】
表1は、第1のガラスシート9の異なる厚さに対して有用であることが判明している、その少なくとも1つの主表面の中央領域における第1のガラスシート9の表面圧縮応力の下限および上限レベルの例を提供している。
【0116】
【0117】
例えば、表1では、本発明によれば、厚さが1.4mmのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートの場合、シートの少なくとも1つの主表面の中央領域の表面圧縮応力は、18MPa超23MPa未満である。同様に、厚さが2.1mmのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートの場合、シートの少なくとも1つの主表面の中央領域の表面圧縮応力は、30MPa超35MPa未満である。
【0118】
第1のガラスシートに必要な表面圧縮応力のレベルは、第1のガラスシートを適切な高温に適切に加熱し、次に、該第1のガラスシートの主表面に冷却流体のジェットを向けて加熱されたガラスシートを適切に冷却することによって達成することができる。
【0119】
図7は、表1に示されたデータをグラフ形式で示している。軸17は、第1のガラスシートの厚さ(mm)であり、軸19は、第1のガラスシートの中央領域12で前述のStrainoptics Laser GASP-CSを使用して測定された表面圧縮応力の大きさである。
【0120】
「中抜き正方形」の点は、特定のガラス厚さt(mm)での、第1のガラスシートの中央領域における目標とする表面圧縮応力の下限レベルCS(MPa)である。
【0121】
線21は、「中抜き正方形」のデータセットを通る傾向線であり、傾向線は次の方程式を有する:
【数3】
ここで、tは、第1のガラスシートの厚さ(mm)である。
【0122】
「黒丸」の点は、特定のガラス厚さt(mm)での、第1のガラスシートの中央領域における目標とする表面圧縮応力の上限レベルCS(MPa)である。
【0123】
線23は、「黒丸」のデータセットを通る傾向線であり、傾向線は次の方程式を有する:
【数4】
ここで、tは、第1のガラスシートの厚さ(mm)である。
【0124】
ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの場合、式(1)および(2)は、1.4~2.6mmの所定のガラス厚さでの表面圧縮応力の目標下限および上限レベルを提供する。これは、好ましくは、第2のガラスシートが400MPa~700MPaの表面圧縮応力および30~40μmの層深度を有し、接着性中間層が0.3mm~0.9mmの厚さを有する、化学強化ガラスのシートである場合である。
【0125】
図2では、PVBの層11は、第2のガラスシート13とだけ同延である。しかしながら、図示の実施形態に対する代替的な実施形態では、PVBの層11は、第1および第2のガラスシートの両方と同一と同延である。そのような実施形態では、第1および第2のガラスシートは、互いに同延であり、または互いに実質的に同延である。
【0126】
適切な積層プロセスを使用して、適切な高温および高圧を使用して、車両サイドウィンドウ1を作成することができる。PVBの層11は、積層プロセスの前にシートの形で適切に提供してもよい。
【0127】
図8は、本発明の第2の態様による積層グレイジングの概略断面図を示している。積層グレイジング31は、車両サイドウィンドウであり、
図1および2を参照して説明した車両サイドウィンドウ1と同様である。
図2のように、x’-x’’線はx-x’線と水平面を形成している。
【0128】
積層グレイジング31は、接着性中間層35によって第2のガラスシート37に接合された第1のガラスシート33を有する。接着層35は、ポリビニルブチラール(PVB)、EVA、PVC、EMA、ポリウレタン(PU)、吸音改質PVBまたはウベコール(液体硬化性樹脂)の少なくとも1つの層を含むことができる。
【0129】
第1のガラスシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩組成を有し、厚さが3.0mmであるが、厚さは、2.8mm~5.5mmとすることができる。第1のガラスシートの中央領域39における目標圧縮応力は、60MPa~130MPaである。
図8に示す例では、第1のガラスシートの中央領域39における表面圧縮応力は90MPaであった。
【0130】
この例では、接着剤層35は、0.76mmの厚さを有するPVBの層であるが、接着剤層35の厚さは、0.3mm~0.9mmとすることができ、例えば、接着剤層の厚さは、0.38mm、0.76mm、または0.86mmとすることができる。
【0131】
第2のガラスシート37は、0.3~1.0mmの厚さを有する、化学強化ガラスのシートである。
図8では、第2のガラスシート37の厚さは、0.7mmまたは0.5mmである。
【0132】
第2のガラスシートは、従来の溶融塩イオン交換処理を使用して化学的に強化されており、第2のガラスシート37には、35μmの層深度(DOL)と、400MPaを超え、通常450MPa~700MPaである表面圧縮応力と、がもたらされている。表面圧縮応力は、900MPaに達し得る。DOLは、化学強化プロセスの長さおよび/またはその温度を調整することにより、30μmから40μmの間で変化させることができる。
【0133】
第2のガラスシートに適したガラス組成は、コーニング社(Corning Incorporated)から入手可能なGorilla(商標)ガラスなどのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。
【0134】
第2のシート7の特定の組成は、68mol% SiO2、2.5mol% Al2O3、11mol% MgO、3.7mol% CaO、14.2mol% Na2O、0.6mol% K2Oである。この組成の場合、MgO+CaOは14.7mol%であり、Na2O+K2Oは14.8mol%である。これは、公開されているWO02014/148020A1の20ページの表2の組成番号13である。第2のシートの酸化鉄(Fe2O3)含有量は低くてもよく、0.1重量パーセント未満、すなわち、約0.012重量パーセントである。
【0135】
前の図では、車両サイドウィンドウ1,31は、平坦な外面を有する平坦面(または平面)であるとして示されているが、車両サイドウィンドウ1,31は、1つまたは複数の方向に湾曲していてもよい。1つ以上の方向のうちの1つの曲率半径は、1000mm~8000mmとすることができる。積層グレイジングが2つの方向に湾曲している場合、適切には、曲率の各方向は互いに直交している。適切には、曲率の一方向または両方向の曲率半径は、1000mm~8000mmとすることができる。
【0136】
第1のガラスシートを成形するための適切な技術が知られている。しかしながら、第2のガラスシートは、最初は平坦であり、積層プロセス中に平坦な第2のガラスシートに適切な圧力を加えることにより、湾曲した第1のガラスシートによって設定される所望の形状に「冷間成形」することができる。積層プロセス中の温度は、接着層(つまり、PVBのシート)を第1および第2のガラスシートに接着させるのに十分であるが、そのような温度は、相補的な成形部材間で押圧すること、および/または重力の影響下でたるませることによって、第2のガラスシートだけを永久的に変形させるのには十分ではない。
【0137】
本発明の先の例では、第1のガラスシートを第2のガラスシートに接合する単一の接着層を示した。しかしながら、第1のガラスシートが1つまたは複数の接着剤層を含む中間層構造によって第2のガラス板に接合され得ることは、本発明の範囲内である。例えば、中間層構造は、2つ以上の接着剤層を含むことができる。2つ以上の接着剤層のうちの2つは、積層温度で熱的に安定である中間シートによって離間されていてもよい。これは、一方の面で第1の接着剤層と直接接触し、もう一方の面で第2の接着剤層と直接接触する中間シートによって適切に提供される。そのような構造では、第1および第2の接着剤層は同じ材料(すなわち、PVB、PVC、EVA)とすることも、異なる材料とすることもできる。すなわち、第1の接着層をPVBとし、第2の接着層をEVAとしてもよい。中間シートは、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリカーボネートを含んでいてもよく、または、例えば、第2のガラスシートと同じ組成を有するガラスシートとすることができる。中間シートの主表面には、赤外線反射コーティングが施されていてもよい。
【0138】
第1のガラスシートを第2のガラスシートに接合するために使用する接着剤層は、例えば、US5013134に記載されるようなゴーストフリーのヘッドアップディスプレイフロントガラスを提供するために使用されるタイプの、くさび状プロファイルを有し得ることが当該技術分野で知られている。そのようなくさび状の接着剤層は、本発明において有用であり得る。
【0139】
本発明は、車両用グレイジングの分野、特に、車両の開口部内で移動可能であるか、または車両の開口部内で固定され得る、車両サイドウィンドウの分野に特定の用途を見出すものである。積層グレイジングは、車両の後部(すなわち、車両のバックライトの一部もしくは全体として)または車両のルーフで使用することができる。
【0140】
したがって、本発明は、接着性中間層材料の少なくとも第1の層を含む中間層構造によって互いに接合された第1および第2のガラスシートを含む、積層グレイジングを提供する。第1のガラスシートの第1の主表面の中央領域における表面圧縮応力は、第1のガラスシートの厚さによって決まる。第1のガラスシートの厚さが1.4mm~2.6mmの場合、その主表面の中央領域の最小表面圧縮応力はガラスの厚さの関数であり、厚さが2.6mm超8mm未満の場合、表面圧縮応力は50~150MPaで有用であることが分かっている。第2のガラスシートは、0.3mm~1.0mmの厚さを有する化学強化ガラスのシートとすることができる。積層グレイジングは、車両の開口部内に固定式であっても、または可動式(移動可能)であってもよい。
【実施例】
【0141】
本発明は、以下の態様を有する。
【0142】
態様1:
接着性中間層材料の少なくとも1つの(第1の)層を含む中間層構造によって第2のガラスシートに接合された第1のガラスシートを含む、積層グレイジングであって、
第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれ第1の主表面および反対側の第2の主表面を有し、積層グレイジングは、第1のガラスシートの第2の主表面の少なくとも一部が第2のガラスシートの第1の主表面に面するように配置されており;
第1のガラスシートは、当該第1のガラスシートの第1の主表面の少なくとも中央領域における表面圧縮応力が少なくともCS
minであり、第1のガラスシートの厚さtは、1.4mm~2.6mmであり、CS
min(MPa)が下記式により与えられ、
【数5】
ここで、a
1は、135MPa~140MPaであり、好ましくは、a
1=138.5MPaである、積層グレイジング。
【0143】
態様2:
第1のガラスシートの第1の主表面の中央領域における表面圧縮応力がCS
max未満であり、CS
max(MPa)が下記式により与えられ、
【数6】
ここで、b
1は、120MPa~126MPaであり、好ましくは、b
1=123.1MPaである、態様1による積層グレイジング。
【0144】
態様3:
第2のガラスシートの厚さが0.3mm超であり、および/または第2のガラスシートの厚さが1.0mm未満である、態様1または2による積層グレイジング。
【0145】
態様4:
第2のガラスシートが化学的に強化されている、態様1~3のいずれかによる積層グレイジング。
【0146】
態様5:
第2のガラスシートが、表面圧縮応力が400MPaを超え、好ましくは400MPa~900MPaであり、より好ましくは400~700MPaであり、なお一層好ましくは450MPa~675MPaであるように化学的に強化されている、態様1~4のいずれかによる積層グレイジング。
【0147】
態様6:
第2のガラスシートが、層深度(DOL)が10μm~60μmであり、より好ましくは25μm~45μmであり、なお一層好ましくは30μm~40μmであるように化学的に強化されている、態様1~5のいずれかによる積層グレイジング。
【0148】
態様7:
接着性中間層材料の少なくとも1つの(第1の)層を含む中間層構造によって第2のガラスシートに接合された第1のガラスシートを含む、積層グレイジングであって、
第1および第2のガラスシートの各々は、それぞれ第1の主表面および反対側の第2の主表面を有し、積層グレイジングは、第1のガラスシートの第2の主表面の少なくとも一部が第2のガラスシートの第1の主表面に面するように配置されており;
第1のガラスシートの厚さは、2.6mm超8mm未満であり、好ましくは6mm未満であり、当該第1のガラスシートの第1の主表面の中央領域における表面圧縮応力は、50MPa~150MPaであり;
第2のガラスシートは、厚さが0.3mm~1.0mmである化学強化ガラスのシートであり、表面圧縮応力が400MPaを超え、層深度が10μm~60μmである、積層グレイジング。
【0149】
態様8:
第2のガラスシートがアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物である、態様1~7のいずれかによる積層グレイジング。
【0150】
態様9:
第2のガラスシートが少なくとも約6重量%の酸化アルミニウムを含む、態様1~8のいずれかによる積層グレイジング。
【0151】
態様10:
第2のガラスシートが、66~72mol% SiO2、1~4mol% Al2O3、8~15mol% MgO、1~8mol% CaO、12~16mol% Na2Oを含む組成を有し、好ましくは、MgO+CaOが12~17mol%であり、CaO/(MgO+CaO)が0.1~0.4であり、または第2のガラスシートが、(重量で)Al2O3とMgOの合計が13%を超え、Al2O3とMgOの合計をK2Oの量で割った値が3を超え、かつNa2OとK2OとMgOの合計が22%を超えることを条件として、58%~70% SiO2、5%~15% Al2O3、12%~18% Na2O、0.1%~5% K2O、4%~10% MgO、および0%~1% CaOを含む組成を有する、態様1~7のいずれかによる積層グレイジング。
【0152】
態様11:
第2のガラスシートが、表面圧縮応力が400MPa~900MPaであり、好ましくは400~700MPaであり、より好ましくは450MPa~675MPaであるように化学的に強化されている、態様7~10のいずれかによる積層グレイジング。
【0153】
態様12:
第2のガラスシートが、層深度(DOL)が25μm~45μmであり、好ましくは30μm~40μmであるように化学的に強化されている、態様7~11のいずれかによる積層グレイジング。
【0154】
態様13:
第1のガラスシートが、(重量で)SiO2 69~74%;Al2O30~3%;Na2O 10~16%;K2O 0~5%;MgO 0~6%;CaO 5~14%;SO3 0~2%、およびFe2O30.005~2%を含むガラス組成を有する、態様1~12のいずれかによる積層グレイジング。
【0155】
態様14:
接着性中間層材料の第1の層が、第1および/または第2のガラスシートと同延である、態様1~13のいずれかによる積層グレイジング。
【0156】
態様15:
接着性中間層材料の第1の層が、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音改質PVB;エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC);またはエチレンおよびメタクリル酸の共重合体を含む、態様1~14のいずれかによる積層グレイジング。
【0157】
態様16:
接着性中間層材料の第1の層の厚さが、0.3mm~2.3mm、好ましくは0.3mm~1.6mm、より好ましくは0.3mm~0.9mmである、態様1~11のいずれかによる積層グレイジング。
【0158】
態様17:
積層グレイジングが太陽光制御機能を有する、態様1~16のいずれかによる積層グレイジング。
【0159】
態様18:
太陽光制御機能が、第1および/または第2のガラスシート上の太陽光制御コーティングにより少なくとも部分的に提供される、態様17による積層グレイジング。
【0160】
態様19:
太陽光制御機能が、第1および/または第2のガラスシートによって少なくとも部分的に提供される、態様17または18による積層グレイジング。
【0161】
態様20:
太陽光制御機能が、接着性中間層材料の第1の層によって少なくとも部分的に提供される、態様17~19のいずれかによる積層グレイジング。
【0162】
態様21:
積層グレイジングが、第1および/または第2のガラスシートの第1および/または第2の主表面の少なくとも一部に低放射率コーティングを含む、態様1~20のいずれかによる積層グレイジング。
【0163】
態様22:
第1および第2のガラスシートの各々がそれぞれの縁部を有し、第2のガラスシートの縁部が第1のガラスシートの縁部と隣接し、または第2のガラスシートの縁部が第1のガラスシートの縁部に囲まれており、好ましくは、第1のガラスシートの縁部の一部が、第2のガラスシートの縁部の一部と位置合わせされている、態様1~21のいずれかによる積層グレイジング。
【0164】
態様23:
第1および/または第2のガラスシートが、積層グレイジングを好ましくは垂直方向に移動させる機構に当該積層グレイジングを接続するためのそれぞれの第1の接続部分を含む、態様1~22のいずれかによる積層グレイジング。
【0165】
態様24:
第1のガラスシートが第1の接続部分を画定する孔を含み、接着性中間層材料の第1の層が孔を有し、中間層材料の第1の層の当該孔が第1のガラスシートの孔と同心である、態様23による積層グレイジング。
【0166】
態様25:
第1のガラスシートの孔と接着性中間層材料の第1の層の孔とが同一形状であり、好ましくは円形である、態様24による積層グレイジング。
【0167】
態様26:
支持シートが孔を有し、当該支持シートの孔が接着性中間層材料の第1の層の孔と同心である、態様24または25による積層グレイジング。
【0168】
態様27:
支持シートの孔と接着性中間層材料の第1の層の孔とが同一形状であり、好ましくは円形である、態様26による積層グレイジング。
【0169】
態様28:
ウィンドウ、特にサイドウィンドウ用の開口部を有する車両であって、態様1~22のいずれかによる積層グレイジングが当該開口部内で固定されている、車両。
【0170】
態様29:
ウィンドウ、特にサイドウィンドウ用の開口部を有する車両であって、態様1~27のいずれかによる積層グレイジングが当該開口部内で移動可能である、車両。
【0171】
態様30:
ウィンドウ、特にサイドウィンドウ用の開口部を有する車両であって、態様23~27のいずれかによる積層グレイジングが、第1または第2のガラスシートの第1の接続部分に接続された機構によって開口部内で移動可能である、車両。
【0172】
態様31:
積層グレイジングが開口部内を垂直に移動可能である、態様30による車両。
【0173】
態様32:
車両が内部を有し、開口部が周辺部を有し、積層グレイジングは、車両の外側から開口部を介して車両の内部にアクセスできないように、開口部を閉じる第1の位置に移動可能であり、積層グレイジングが第1の位置にあるとき、積層グレイジングが開口部に面していない部分があり、第1のガラスシートの第2の主表面が第2のガラスシートの第1の主表面に直接面していない部分がある、態様29~31のいずれかによる車両。