(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】λ/4型電波吸収体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240902BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240902BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B7/025
H01Q17/00
(21)【出願番号】P 2020558997
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020035968
(87)【国際公開番号】W WO2021060352
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019174459
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 幸子
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】武藤 勝紀
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163141(JP,A)
【文献】特開2018-056562(JP,A)
【文献】特開2016-210929(JP,A)
【文献】特開2017-045087(JP,A)
【文献】特開2003-289196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
H01Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜、誘電体層及び反射層を含むλ/4型電波吸収体であって、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm
2以下である、λ/4型電波吸収体。
【請求項2】
抵抗膜、誘電体層、反射層がこの順に積層された、請求項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項3】
抵抗膜にモリブデンが含まれる請求項1又は2に記載の電波吸収体。
【請求項4】
抵抗膜に酸化インジウムが含まれる請求項1又は2に記載の電波吸収体。
【請求項5】
抵抗膜のシート抵抗が200~800Ω/□の範囲にある請求項1~4いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項6】
抵抗膜の任意の9点において測定したシート抵抗の標準偏差が5Ω/□以下である、請求項1~5いずれか記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項7】
成形品と、前記成形品に取り付けられた請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波吸収体とを備えた、電磁波吸収体付成形品。
【請求項8】
抵抗膜及び誘電体層を有するλ/4型電波吸収体用部材であり、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm
2以下であるλ/4型電波吸収体用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、λ/4型電波吸収体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信機器の普及が急速に進んでおり、また自動車等において多くの電子機器が搭載されるようになり、これらから発生する電波・ノイズを原因とする電波障害、他の電子機器の誤動作等の問題が多発している。このような電波障害、誤動作等を防止する方策として、各種の電波吸収体が検討されている。例えば、特許文献1には、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が2GHz以上である電磁波吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信技術や自動運転技術において高周波数領域の電波に関して広周波数範囲において高く吸収する電波吸収体の需要が高まっている。本発明者は、研究を進める中で、これらの電波吸収体は、その構成体の一つである抵抗膜のシート抵抗の面内ばらつきのため、吸収可能な電波の周波数に設計とのズレが生じる場合があるということを見出した。
【0005】
そこで、本発明は、優れた電波吸収性能を備えるλ/4型電波吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、抵抗膜の面する誘電体層が電波吸収性能及びシート抵抗値のばらつきに与える影響が大きいことを見出した。この知見に基づいて、さらに研究を進めた結果、抵抗膜、誘電体層及び反射層を含むλ/4型電波吸収体であって、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm2以下である、λ/4型電波吸収体であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. 抵抗膜、誘電体層及び反射層を含むλ/4型電波吸収体であって、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm2以下である、λ/4型電波吸収体。
【0009】
項2. 抵抗膜、誘電体層、反射層がこの順に積層された、項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【0010】
項3. 抵抗膜にモリブデンが含まれる項1又は2に記載の電波吸収体。
【0011】
項4. 抵抗膜に酸化インジウムが含まれる項1又は2に記載の電波吸収体。
【0012】
項5. 抵抗膜のシート抵抗が200~800Ω/□の範囲にある項1~4いずれかに記載の電波吸収体。
【0013】
項6. 抵抗膜の任意の9点において測定したシート抵抗の標準偏差が5Ω/□以下である、項1~5いずれか記載のλ/4型電波吸収体。
【0014】
項7. 成形品と、前記成形品に取り付けられた項1~6のいずれか1項に記載の電磁波吸収体とを備えた、電磁波吸収体付成形品。
【0015】
項8. 抵抗膜及び誘電体層を有するλ/4型電波吸収体用部材であり、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm2以下であるλ/4型電波吸収体用部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定以上の電波吸収性を発揮できるλ/4型電波吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のλ/4型電波吸収体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】上方の図は、本発明のλ/4型電波吸収体用部材の一例を示す概略断面図である。下方は、該部材が接するように配置される、反射層として機能し得る被着体の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明のλ/4型電波吸収体の用途の一例(粘着剤層を介して成形品に取り付けられてなる形態の一例)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0019】
本発明は、その一態様において、抵抗膜、誘電体層及び反射層を含むλ/4型電波吸収体であって、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm2以下である、λ/4型電波吸収体(本明細書において、「本発明のλ/4型電波吸収体」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0020】
<1.特性>
本発明のλ/4型電波吸収体は、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm2以下という特性(本明細書において、「本発明の特性」と示すこともある。)を備える。この特性を備えることにより、優れた電波吸収性能を発揮することができる。また上記水分量は、0.6mg/cm2以下であることが好ましく、0.5mg/cm2以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明において、電波吸収性能が向上する要因としては、電波吸収体(特に抵抗膜の面する誘電体層)から生じるアウトガスを一定以下とすることで、抵抗膜のシート抵抗のばらつきを低減できると考えられる。このため、吸収可能な電波の周波数に設計とのズレが少なく、電波吸収性能に優れる。
【0022】
本発明の特性は、例えば次のように測定することができる。電波吸収体を任意の面積で切り出し試験片を得る。この試験片について熱重量・質量同時分析(TG-MS分析)を以下の条件で測定する。
(条件)
装置:NETZSCH社製、品番STA449F1及びQMS403またはその同等品
TG測定条件:40℃で1分間試料室を真空脱気させた後、Heで常圧まで戻してから50ml/minで試料室に導入しながら10℃/minの昇温速度で250℃まで昇温させて、250℃で10分間保持する。
MS測定:SCANモード
ライン温度:250℃
【0023】
上記の条件で測定して得られるデータの解析をNETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」を使用し実施する。横軸を温度、第一縦軸をTG/%、第二縦軸をイオン強度としてグラフを作成し、質量(m/z)18のピーク面積を算出する。検量線を用い、上記ピーク面積から試験片の水分量(mg/cm2)を求める。
【0024】
上記検量線を作成する際の標準資料としては例えば、シュウ酸カルシウム1水和物を用いてもよい。例えばシュウ酸カルシウム1水和物を標準資料として用いる場合、以下の手順で検量線を作成する。
(手順)
(1)規定量のシュウ酸カルシウム1水和物を測りとり、900℃まで10℃/minで加熱する。
(2)NETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」にて質量(m/z)18のクロマトグラム取得する。
(3)100℃~200℃のピーク面積を算出する。
(4)上記(1)~(3)をシュウ酸カルシウム1水和物の量を変えて2~3点測定し検量線を作成する。
【0025】
本発明の特性は、例えば誘電体層の種類や含まれる水分量の調整、電波吸収体への加熱・乾燥処理により調整することができる。
【0026】
<2.構成>
本発明のλ/4型電波吸収体の構成は、上記本発明の特性を備えるものである限り特に制限されず、例えば電波吸収体の公知の構成を採用することができる。一実施形態において、本発明のλ/4型電波吸収体は、抵抗膜、誘電体層及び反射層を有する、という構成を備える。好ましい一実施形態において、本発明のλ/4型電波吸収体は、支持体、抵抗膜、誘電体層及び反射層を有する、という構成を備える。以下に、これらの実施形態について説明する。
【0027】
<2-1.支持体>
本発明のλ/4型電波吸収体が抵抗膜を有する場合、さらに支持体を有することが好ましい。これにより、抵抗膜を保護することができ、電波吸収体としての耐久性を高めることが可能である。支持体は、シート状のものである限り、特に制限されない。支持体としては、特に制限されないが、例えば樹脂基材が挙げられる。
【0028】
樹脂基材は、樹脂を素材として含む基材であって、シート状のものである限り、特に制限されない。樹脂基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、樹脂以外の成分が含まれていてもよい。例えば、比誘電率等を調整する観点から酸化チタン等が含まれていてもよい。樹脂基材中の樹脂の合計量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0029】
樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0030】
これらの中でも、生産性や強度の観点、本発明の特性の観点等から、好ましくはポリエステル系樹脂、より好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0031】
支持体の比誘電率は、特に制限されない。支持体の比誘電率は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。中でも、膜厚のばらつきによる余裕度を高く出来るという観点から、支持体の比誘電率は、特に好ましくは1~5である。
【0032】
支持体の比誘電率は、後述の誘電体層の比誘電率と同様にして測定することができる。
【0033】
支持体の厚みは、特に制限されない。支持体の厚みは、例えば5μm以上500μm以下、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下である。特に、本発明の特性の観点から、支持体の厚みは、好ましくは30μm以上250μm以下、より好ましくは40μm以上200μm以下である。
【0034】
支持体の層構成は特に制限されない。支持体は、1種単独の支持体から構成されるものであってもよいし、2種以上の支持体が複数組み合わされたものであってもよい。
【0035】
<2-2.抵抗膜>
抵抗膜は、電波吸収体において抵抗層として機能し得る層を含む限り特に制限されない。
【0036】
抵抗膜の抵抗値は、特に制限されない。抵抗膜の抵抗値は、例えば200~800Ω/□である。該範囲の中でも、より好ましくは220~550Ω/□、さらに好ましくは250~500Ω/□である。
【0037】
抵抗膜の抵抗値は、非破壊式(渦電流法)シート抵抗測定器(EC-80P(ナプソン株式会社製)、又はその同等品)を用いて測定することができる。
【0038】
抵抗膜の厚みは、特に制限されない。抵抗膜の厚みは、例えば1nm以上200nm以下、好ましくは2nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上50nm以下である。
【0039】
抵抗膜の層構成は特に制限されない。抵抗膜は、1種単独の層から構成されるものであってもよいし、2種以上の層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0040】
<2-2-1.抵抗層>
<2-2-1-1.ITO含有抵抗層>
抵抗層としては、例えば酸化インジウムスズ(以下「ITO」とする)が用いられる。なかでも、非晶質構造が極めて安定であり、高温多湿の環境下においても抵抗膜のシート抵抗の変動を抑えることができる点から、1~40重量%のSnO2、より好ましくは2~35重量%のSnO2を含有するITOを含有するものが好ましく用いられる。上記ITOの含有量は抵抗層中、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0041】
<2-2-1-2.モリブデン含有抵抗層>
抵抗層としては、耐久性、シート抵抗の調整が容易である観点から、モリブデンを含有する抵抗層が好ましく用いられる。モリブデンの含有量の下限は特に限定されないが、より耐久性を高める観点から、5重量%が好ましく、7重量%がより好ましく、9重量%が更に好ましく、11重量%がより更に好ましく、13重量%が特に好ましく、15重量%が非常に好ましく、16重量%が最も好ましい。また、上記モリブデンの含有量の上限は、表面抵抗値の調整の容易化の観点から、30重量%が好ましく、25重量%がより好ましく、20重量%が更に好ましい。
【0042】
上記抵抗層は、モリブデンを含有している場合、さらにニッケル及びクロムを含有することがより好ましい。抵抗層にモリブデンに加えてニッケル及びクロムを含有することでより耐久性に優れた電波吸収体とすることができる。ニッケル、クロム及びモリブデンを含有する合金としては、例えば、ハステロイB-2、B-3、C-4、C-2000、C-22、C-276、G-30、N、W、X等の各種グレードが挙げられる。
【0043】
上記抵抗層がモリブデン、ニッケル及びクロムを含有する場合、モリブデンの含有量が5重量%以上、ニッケルの含有量が40重量%以上、クロムの含有量が1重量%以上であることが好ましい。モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量が上記範囲であることで、より耐久性に優れた電波吸収体とすることができる。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が7重量%以上、ニッケル含有量が45重量%以上、クロム含有量が3重量%以上であることがより好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が9重量%以上、ニッケル含有量が47重量%以上、クロム含有量が5重量%以上であることが更に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が11重量%以上、ニッケル含有量が50重量%以上、クロム含有量が10重量%以上であることがより更に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が13重量%以上、ニッケル含有量が53重量%以上、クロム含有量が12重量%以上であることが特に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が15重量%以上、ニッケル含有量が55重量%以上、クロム含有量が15重量%以上であることが非常に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が16重量%以上、ニッケル含有量が57重量%以上、クロム含有量が16重量%以上であることが最も好ましい。また、上記ニッケルの含有量は、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、65重量%以下であることが更に好ましい。上記クロム含有量の上限は、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
上記抵抗層は、上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属を含有してもよい。そのような金属としては、例えば、鉄、コバルト、タングステン、マンガン、チタン等が挙げられる。上記抵抗層がモリブデン、ニッケル及びクロムを含有する場合、上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属の合計含有量の上限は、抵抗層の耐久性の観点から、好ましくは45重量%、より好ましくは40重量%、更に好ましくは35重量%、より更に好ましくは30重量%、特に好ましくは25重量%、非常に好ましくは23重量%である。上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属の合計含有量の下限は、例えば1重量%以上である。
【0045】
上記抵抗層が鉄を含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、含有量の好ましい上限は25重量%、より好ましい上限は20重量%、更に好ましい上限は15重量%であり、好ましい下限は1重量%である。上記抵抗層がコバルト及び/又はマンガンを含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、それぞれ独立して、含有量の好ましい上限は5重量%、より好ましい上限は4重量%、更に好ましい上限は3重量%であり、好ましい下限は0.1重量%である。上記抵抗層がタングステンを含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、含有量の好ましい上限は8重量%、より好ましい上限は6重量%、更に好ましい上限は4重量%であり、好ましい下限は1重量%である。
【0046】
上記抵抗層は、ケイ素及び/又は炭素を含有してもよい。抵抗層がケイ素及び/又は炭素を含有する場合、上記ケイ素及び/又は炭素の含有量は、それぞれ独立して、1重量%以下であることが好ましく0.5重量%以下であることがより好ましい。また、抵抗層がケイ素及び/又は炭素を含有する場合、上記ケイ素及び/又は炭素の含有量は、0.01重量%以上であることが好ましい。
【0047】
抵抗層の抵抗値は、特に制限されない。抵抗層の抵抗値は、例えば200~600Ω/□である。該範囲の中でも、より好ましくは220~550Ω/□、さらに好ましくは250~500Ω/□である。
【0048】
抵抗層の任意の9点において測定したシート抵抗の標準偏差は特に制限されない。電波吸収性の観点から、抵抗層のシート抵抗の標準偏差は、5Ω/□以下であることが好ましく、4Ω/□以下であることがより好ましく、3Ω/□以下であることがさらに好ましい。抵抗層のシート抵抗の標準偏差の下限は特に制限されず、例えば0.01Ω/□以上、好ましくは0.1以上Ω/□である。
【0049】
抵抗層の任意の9点において測定したシート抵抗の標準偏差は非破壊式(渦電流法)シート抵抗測定器(EC-80P(ナプソン株式会社製)、又はその同等品)によって測定された任意の9点におけるシート抵抗値から算出することできる。抵抗層のシート抵抗の標準偏差は、電波吸収体が含有する水分量や、電波吸収体が支持体を有する場合、支持体の抵抗層に接する面の表面粗さ等により、調整することができる。
【0050】
抵抗層の厚みは、特に制限されない。抵抗層の厚みは、例えば1nm以上200nm以下、好ましくは2nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上50nm以下である。
【0051】
抵抗層の層構成は特に制限されない。抵抗層は、1種単独の抵抗層から構成されるものであってもよいし、2種以上の抵抗層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0052】
<2-2-2.バリア層>
耐久性の観点から、抵抗膜はバリア層を含むことが好ましい。バリア層は、抵抗層の少なくとも一方の表面上に配置される。バリア層について以下に詳述する。
【0053】
バリア層は、抵抗層を保護し、その劣化を抑えることができる層である限り、特に制限されない。バリア層の素材としては、例えば金属化合物、半金属化合物、好ましくは金属又は半金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物等が挙げられる。バリア層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、上記素材以外の成分が含まれていてもよい。その場合、バリア層中の上記素材量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0054】
バリア層が含む金属元素としては、例えばチタン、アルミニウム、ニオブ、コバルト、ニッケル等が挙げられる。バリア層が含む半金属元素としては、例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。
【0055】
上記酸化物としては、例えばMOX[式中、Xは式:n/100≦X≦n/2(nは金属又は半金属の価数である)を満たす数であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0056】
上記窒化物としては、例えばMNy[式中、Yは式:n/100≦Y≦n/3(nは金属又は半金属の価数である)を満たす数であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0057】
上記窒化酸化物としては、例えばMOXNy[式中、XとYは、n/100≦X、n/100≦Y、かつ、X+Y<n/2(nは金属又は半金属の価数である)であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0058】
上記酸化物又は窒化酸化物の酸化数Xに関しては、例えばMOx又はMOxNyを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MOx又はMOxNyを含む層の断面の面積当たりのMとOとの元素比率からXを算出することにより、酸素原子の価数を算出することができる。
【0059】
上記窒化物又は窒化酸化物の窒素化数Yに関しては、例えばMNy又はMOxNyを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MNy又はMOxNyを含む層の断面の面積当たりのMとNとの元素比率からYを算出することにより、窒素原子の価数を算出することができる。
【0060】
バリア層の素材の具体例としては、SiO2、SiOx、Al2O3、MgAl2O4、CuO、CuN、TiO2、TiN、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0061】
バリア層の厚みは、特に制限されない。バリア層の厚みは、例えば1nm以上200nm以下、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上20nm以下である。
【0062】
バリア層の層構成は特に制限されない。バリア層は、1種単独のバリア層から構成されるものであってもよいし、2種以上のバリア層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0063】
<2-3.誘電体層>
誘電体層は、電波吸収体において目的の波長に対して誘電体として機能し得るものである限り、特に制限されない。誘電体層としては、特に制限されないが、例えば樹脂シート、粘着剤等が挙げられる。
【0064】
樹脂シートは、樹脂を素材として含むシート状のものである限り、特に制限されない。樹脂シートは、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、樹脂以外の成分が含まれていてもよい。その場合、樹脂シート中の樹脂の合計量は、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0065】
樹脂としては、特に制限されず、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ等の合成樹脂や、ポリイソプレンゴム、ポリスチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴムおよびシリコーンゴム等の合成ゴム材料を樹脂成分として用いることが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0066】
誘電体層は、発泡体や粘着剤であってもよい。粘着剤としては、特に制限されず、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、耐候性が高いという観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0067】
誘電体層は、粘着性を備えるものであってもよい。このため、粘着性を有しない誘電体を粘着剤層により他の層に積層させる場合、該誘電体と粘着剤層とを合わせたものが「誘電体層」となる。隣接する層と積層し易いという観点から、誘電体層は、好ましくは粘着剤層を含む。
【0068】
誘電体層の比誘電率は、本発明の特性を満たし得るものである限り特に制限されない。誘電体層の比誘電率は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。中でも、誘電体の膜厚のばらつきによる余裕度を高く出来るという観点から、誘電体層の比誘電率は、特に好ましくは1~5である。
【0069】
誘電体層の比誘電率は、キーサイト社製誘電率測定装置(プレシジョンLCRメーターE4980AL)及びキーコム社製測定用電極(DPT-2141-01)により1MHzの範囲にて測定することにより測定することができる。
【0070】
誘電体層の水分量は、本発明の特性を満たし得るものである限り特に制限されない。誘電体層の水分量は、本発明の特性の観点から、好ましくは0.5mg/cm2以下である。該下限は、特に制限されず、例えば0.1μg/cm2である。尚、誘電体層の水分量は、誘電体層を構成する成分の種類や誘電体層を加熱や真空乾燥等により処理することで調整することができる。
【0071】
誘電体層の水分量は、本発明の特性と同様にして求めることができる。具体的には、例えば次のように測定することができる。誘電体層を任意の面積で切り出し試験片を得る。この試験片について熱重量・質量同時分析(TG-MS分析)を以下の条件で測定する。
(条件)
装置:NETZSCH社製、品番STA449F1及びQMS403またはその同等品
TG測定条件:40℃で1分間試料室を真空脱気させた後、Heで常圧まで戻してから50ml/minで試料室に導入しながら10℃/minの昇温速度で250℃まで昇温させて、250℃で10分間保持する。
MS測定:SCANモード
ライン温度:250℃
【0072】
上記の条件で測定して得られるデータの解析をNETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」を使用し実施する。横軸を温度、第一縦軸をTG/%、第二縦軸をイオン強度としてグラフを作成し、質量(m/z)18のピーク面積を算出する。検量線を用い、上記ピーク面積から試験片の水分量(mg/cm2)を求める。
【0073】
上記検量線を作成する際の標準資料としては例えば、シュウ酸カルシウム1水和物を用いてもよい。例えばシュウ酸カルシウム1水和物を標準資料として用いる場合、以下の手順で検量線を作成する。
(手順)
(1)規定量のシュウ酸カルシウム1水和物を測りとり、900℃まで10℃/minで加熱する。
(2)NETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」にて質量(m/z)18のクロマトグラム取得する。
(3)100℃~200℃のピーク面積を算出する。
(4)上記(1)~(3)をシュウ酸カルシウム1水和物の量を変えて2~3点測定し検量線を作成する。
【0074】
誘電体層の厚みは、本発明の特性を満たし得るものである限り特に制限されない。誘電体層の厚みは、例えば100~1000μmである。該厚みは、本発明の特性の観点から、好ましくは150~900μm、より好ましくは200~800μmである。
【0075】
誘電体層の厚みは、Nikon DIGIMICRO STANDMS-11C+Nikon DIGIMICRO MFC-101によって測定することができる。
【0076】
誘電体層の層構成は特に制限されない。誘電体層は、1種単独の誘電体層から構成されるものであってもよいし、2種以上の誘電体層が複数組み合わされたものであってもよい。例えば、粘着性を有しない誘電体とその両面に配置された粘着剤層とからなる3層構造の誘電体層、粘着性を有する誘電体からなる1層構造の誘電体層等が挙げられる。
【0077】
<2-4.反射層>
反射層は、電波吸収体において電波の反射層として機能し得るものである限り、特に制限されない。反射層としては、特に制限されないが、例えば金属膜が挙げられる。
【0078】
金属膜は、金属を素材として含む層である限り、特に制限されない。金属膜は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、金属以外の成分が含まれていてもよい。その場合、金属膜中の金属の合計量は、例えば30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、非常に好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0079】
金属としては、特に制限されず、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀、金、クロム、ニッケル、モリブデン、ガリウム、亜鉛、スズ、ニオブ、インジウム等が挙げられる。また、金属化合物、例えばITO等も、金属膜の素材として使用することができる。これらは1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0080】
反射層の厚みは、特に制限されない。反射層の厚みは、例えば1μm以上500μm以下、好ましくは2μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下である。
【0081】
反射層の層構成は特に制限されない。反射層は、1種単独の反射層から構成されるものであってもよいし、2種以上の反射層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0082】
<2-5.層構成>
本発明のλ/4型電波吸収体が抵抗膜、誘電体層及び反射層を有する場合、各層は、電波吸収性能を発揮することができる順に配置される。一例として、抵抗膜、誘電体層及び反射層は、この順に配置される。
【0083】
さらに、本発明のλ/4型電波吸収体が支持体を有する場合、一例として、支持体、抵抗膜、誘電体層及び反射層は、この順に配置される。
【0084】
本発明のλ/4型電波吸収体においては、支持体、抵抗膜、誘電体層及び反射層以外に、他の層を含むものであってもよい。他の層は、支持体、抵抗膜、誘電体層及び反射層それぞれの層の、どちらか一方の表面上に配置され得る。
【0085】
<3.製造方法>
本発明のλ/4型電波吸収体は、その構成に応じて、様々な方法、例えば公知の製造方法に従って又は準じて得ることができる。例えば、支持体上に抵抗膜、誘電体層及び反射層を順に積層させる工程を含む方法により、得ることができる。
【0086】
積層方法は特に制限されない。
【0087】
抵抗膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、パルスレーザーデポジション法等により行うことができる。これらの中でも、膜厚制御性の観点から、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、特に限定されないが、例えば、直流マグネトロンスパッタ、高周波マグネトロンスパッタ及びイオンビームスパッタ等が挙げられる。また、スパッタ装置は、バッチ方式であってもロール・ツー・ロール方式であってもよい。
【0088】
誘電体層や反射層は、例えば誘電体層が有する粘着性を利用して、積層することができる。
【0089】
<4.λ/4型電波吸収体用部材>
本発明は、その一態様において、抵抗膜及び誘電体層を含み、熱重量・質量同時分析測定による、質量18のピーク面積から求められる水分量が0.7mg/cm2以下であるλ/4型電波吸収体用部材、に関する。λ/4型電波吸収体用部材は、誘電体層を金属などの被着体に接するように配置することによりλ/4型電波吸収体を形成するための部材である。抵抗膜、誘電体層、本発明の特性、その他の構成については、本発明のλ/4型電波吸収体に関する説明と同様である。
【0090】
<5.用途>
本発明のλ/4型電波吸収体は、不要な電磁波を吸収する性能を有するため、例えば光トランシーバや、次世代移動通信システム(5G)、近距離無線転送技術等における電波対策部材として好適に利用できる。
【0091】
本発明はその一態様において、本発明のλ/4型電波吸収体を用いて、例えば、電波吸収体付成形品を製造できる。電波吸収体付成形品は、成形品と、成形品に取り付けられた電波吸収体とを備えている。成形品は、例えば、バンパーなどの自動車部品、レーダー装置の筐体等である。
【0092】
また、その他の用途として自動車、道路、人の相互間で情報通信を行う高度道路交通システム(ITS)や自動車衝突防止システムに用いるミリ波レーダーにおいても、電波干渉抑制やノイズ低減の目的で用いることができる。
【0093】
本発明は、その一態様において、本発明のλ/4型電波吸収体を含む、ミリ波レーダー、に関する。 本発明のλ/4型電波吸収体が対象とする電波の周波数は、好ましくは10~150GHz、より好ましくは50~100GHz、さらに好ましくは70~90GHzである。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0095】
(1)λ/4型電波吸収体の製造
(実施例1)
支持体として、厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(比誘電率3.2)を用意した。上記PETフィルム上に、DCスパッタリングにより、シート抵抗値375Ω/□の抵抗膜を形成した。スパッタリングはハステロイC-276をターゲットに用い、出力0.4kW、Arガス流量100sccmで導入して圧力0.12Paとなるように調整して行った。次いで、形成した抵抗膜上に厚み450μmのアクリル両面粘着テープ(ノンサポートタイプ、比誘電率2.6)からなる誘電体層を積層した。更に誘電体層の他方の面上に厚さ12μmの銅からなる反射層を積層して、λ/4型電波吸収体を得た。得られたλ/4型電波吸収体をオーブンに入れ、温度110℃の条件下で、6分間乾燥させた。
【0096】
(実施例2)
抵抗膜のシート抵抗値を表1記載の値に変更し、スパッタリングはArとO2の比率を96:4に調整したガスを導入して、0.8Paになるように調整してインジウムスズ酸化物(SnO2含有量は2重量%)をターゲットに用い、出力5.5kWにて行い、得られたλ/4型電波吸収体をオーブンに入れ、温度110℃の条件下で、3分間乾燥させた以外は実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0097】
(実施例3)
抵抗膜のシート抵抗値を表1記載の値に変更し、得られたλ/4型電波吸収体をオーブンに入れ、温度100℃の条件下で、10分間乾燥させた以外は実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0098】
(実施例4)
抵抗膜のシート抵抗値を表1記載の値に変更し、スパッタリングはArとO2の比率を96:4に調整したガスを導入して、0.8Paになるように調整してインジウムスズ酸化物(SnO2含有量は2重量%)をターゲットに用い、出力5.5kWにて行い、得られたλ/4型電波吸収体をオーブンに入れ、温度100℃の条件下で、2分乾燥させた以外は実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0099】
(実施例5)
支持体として、厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(比誘電率3.2)を用意した。上記PETフィルム上に、DCスパッタリングにより、シート抵抗値375Ω/□の抵抗膜を形成した。スパッタリングはハステロイC-276をターゲットに用い、出力0.4kW、Arガス流量100sccmで導入して圧力0.12Paとなるように調整して行った。次いで、形成した抵抗膜上に厚み377μmのポリイミドフィルム(比誘電率3.5)からなる誘電体をアクリル両面テープ(比誘電率:2.6、厚み:30μm)を介して積層した。更に誘電体層の他方の面上に厚さ12μmの銅からなる反射層を積層して、λ/4型電波吸収体を得た。得られたλ/4型電波吸収体をオーブンに入れ、温度110℃の条件下で、1分間乾燥させた。
【0100】
(実施例6)
抵抗膜のシート抵抗値を表1記載の値に変更し、得られたλ/4型電波吸収体を真空乾燥器に入れ、0.01Paの条件下で、3時間乾燥させた以外は実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0101】
(比較例1)
抵抗膜のシート抵抗値を表1記載の値に変更し、スパッタリングはArとO2の比率を96:4に調整したガスを導入して、0.8Paになるように調整してインジウムスズ酸化物(SnO2含有量は2重量%)をターゲットに用い、出力5.5kWにて行い、得られたλ/4型電波吸収体は特にオーブンで乾燥させなかったこと以外は実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0102】
(比較例2)
抵抗膜のシート抵抗値を表1記載の値に変更し、得られたλ/4型電波吸収体をオーブンに入れ、温度100℃の条件下で、1分間乾燥させた以外は実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0103】
(2)測定、評価
(2-1)熱重量・質量同時分析装置による水分量の測定
電波吸収体を縦1cm×横1.3cmに切り出し試験片を得た。この試験片について熱重量・質量同時分析(TG-MS分析)を以下の条件で測定した。
(条件)
装置:NETZSCH社製、品番STA449F1及びQMS403
試料量:100mg(1cm×1.3cm)
TG測定条件:40℃で1分間試料室を真空脱気させた後、Heで常圧まで戻してから50ml/minで試料室に導入しながら10℃/minの昇温速度で250℃まで昇温させて、250℃で10分間保持した。
MS測定:SCANモード
ライン温度:250℃
【0104】
上記の条件で測定して得られたデータの解析をNETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」を使用し実施した。横軸を温度、第一縦軸をTG/%、第二縦軸をイオン強度としてグラフを作成し、質量(m/z)18のピーク面積を算出した。検量線を用い、上記ピーク面積から試験片の水分量(mg/cm2)を求めた。
【0105】
上記検量線を作成する際の標準資料としてシュウ酸カルシウム1水和物を用い、以下の手順で検量線を作成した。
(手順)
(1)規定量のシュウ酸カルシウム1水和物を測りとり、900℃まで10℃/minで加熱。
(2)NETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」にて質量(m/z)18のクロマトグラム取得。
(3)100℃~200℃のピーク面積を算出。
(4)上記(1)~(3)をシュウ酸カルシウム1水和物の重量1.4mg、4,4mg、9.6mgの3点について測定し検量線を作成。
【0106】
(2-2)シート抵抗の標準偏差
電波吸収体作製1000時間後、非破壊式(渦電流法)シート抵抗測定器(EC-80P(ナプソン株式会社製))を用いて、支持体の抵抗膜に面している側とは反対側にプローブを当て、互いに0.5mm離れた9点のシート抵抗を測定し、これら9点分のシート抵抗値から標準偏差を求めた。
【0107】
(2-3)電波吸性能の測定
ネットワークアナライザー MS4647B(アンリツ社製)、フリースペース材料測定置 BD1-26.A(キーコム社製)を用いて電波吸収測定装置を構成した。この電波吸収測定装置を用いて、得られたλ/4型電波電磁波吸収体の79GHzでの電波吸収量をJIS R1679に基づいて測定した。なお、λ/4型電波吸収体は、電波入射方向が垂直入射かつ支持体側からの入射となるようにセットした。電波吸収量が20dB以上の場合を○、20dB未満の場合は×とした。
【0108】
(3)結果
結果を表1に示す。
【0109】
【符号の説明】
【0110】
1 支持体
2 抵抗膜
3 誘電体層
4 反射層
5 粘着剤層
6 成形品