(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】耐光性、耐熱性および耐久性紫外線吸収剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240902BHJP
C07D 249/20 20060101ALI20240902BHJP
C08L 83/00 20060101ALI20240902BHJP
C08K 5/378 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C09K3/00 104C
C07D249/20 502
C08L83/00
C08K5/378
(21)【出願番号】P 2020563173
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049869
(87)【国際公開番号】W WO2020137819
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2018242938
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
(72)【発明者】
【氏名】矢下 亜紀良
(72)【発明者】
【氏名】金子 信裕
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021664(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174788(WO,A1)
【文献】特開平8-67813(JP,A)
【文献】特表平6-505744(JP,A)
【文献】特開2019-210289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(1)で表わされるチオアリール環基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなる高耐光性紫外線吸収剤。
【化1】
(式中、PhBzT
1aは置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-X
1a-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、該2-フェニルベンゾトリアゾール骨格は、次式(A)で表される。
【化2】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子または、メチル基、t-ブチル基、およびヒドロキシ基から選ばれる置換基を示す。前記チオアリール環基はR
7またはR
8に結合する。前記チオアリール環基以外のR
6~R
9は全て水素原子である。)
X
1aはフェニル環の残基を示し
、
l=1~5で、R
1aは、それぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基である。)
【請求項2】
l=1~3である、
請求項1に記載の高耐光性紫外線吸収剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高耐光性紫外線吸収剤と、有機樹脂とを含む、有機樹脂組成物。
【請求項4】
有機樹脂が熱可塑性樹脂の重合体または共重合体である、
請求項3に記載の有機樹脂組成物。
【請求項5】
有機樹脂が熱硬化性樹脂の重合体または共重合体である、
請求項3に記載の有機樹脂組成物。
【請求項6】
ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤であって、
前記紫外線吸収剤は微粒子の形態であり、該微粒子は次式(1)で表わされるチオアリール環基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体を含み、前記紫外線遮蔽膜は酸化ケイ素および前記微粒子を含み、前記紫外線遮蔽膜形成用組成物は酸化ケイ素前駆体および前記微粒子を含む、紫外線吸収剤。
【化3】
(式中、PhBzT
1aは置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-X
1a-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、該2-フェニルベンゾトリアゾール骨格は、次式(A)で表される。
【化4】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子または、メチル基、t-ブチル基、およびヒドロキシ基から選ばれる置換基を示す。前記チオアリール環基はR
7またはR
8に結合する。前記チオアリール環基以外のR
6~R
9は全て水素原子である。)
X
1aはフェニル環またはナフチル環の残基を示し、l個のR
1aはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基もしくは炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、lは0~5の整数を示す。)
【請求項7】
前記紫外線吸収剤は、平均粒径が150nm以下の微粒子の形態である、
請求項6に記載の紫外線吸収剤。
【請求項8】
l=1で、R
1aは、炭素数2~8の直鎖または分岐のアルキル基である、
請求項6又は7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項9】
R
1aは、炭素数3~8の分岐アルキル基である、
請求項8に記載の紫外線吸収剤。
【請求項10】
l=2で、R
1aは、炭素数1~4の直鎖または分岐のアルキル基である、
請求項6又は7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項11】
l=1~5で、R
1aは、それぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基である、
請求項6又は7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項12】
l=1~3である、
請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項13】
前記紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物は、前記式(1)で表わされる紫外線吸収剤および有機化合物Bとして前記式(1)以外の紫外線吸収剤を含有する、
請求項6~12のいずれか一項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項14】
前記有機化合物Bが、平均粒径が150nm以下の微粒子の形態である、
請求項13に記載の紫外線吸収剤。
【請求項15】
前記紫外線吸収剤が含まれる前記紫外線遮蔽膜付きガラスは、ISO13837(convention A)に従って算出したT
UV400が2%以下であり、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが70%以上である、
請求項6~14のいずれか一項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項16】
前記紫外線吸収剤が含まれる前記紫外線遮蔽膜付きガラスは、CIE標準のC光源からの透過光が、L
*a
*b
*表色系により表示して、-15以上0以下のa
*と12以下のb
*とを有する、
請求項6~15のいずれか一項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項17】
前記紫外線吸収剤が含まれる前記紫外線遮蔽膜付きガラスは、CIE標準のC光源からの透過光のJIS K7373:2006に規定された黄色度YIが14以下である、
請求項6~16のいずれか一項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項18】
前記紫外線吸収剤が含まれる前記紫外線遮蔽膜付きガラスは、波長295~450nm、照度76mW/cm
2の紫外線を100時間照射した後の紫外線透過率T
UV400から前記紫外線を照射する前の紫外線透過率T
UV400を差し引いた差分ΔT
UV400が2%以下である、
請求項6~17のいずれか一項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項19】
前記ガラスが輸送機材用ガラスである、
請求項6~18のいずれか一項に記載の紫外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤、特に高耐光性や耐熱性に優れ、さらに耐光性および耐熱性、すなわち耐久性に優れた紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂部材は、紫外線の作用により劣化し、変色や機械的強度の低下等の品質劣化を引き起こし、長期の使用を阻害される。また、日焼け、眼組織障害などの健康リスクの低減、さらには、光学的機能の付与の観点からも、有機、無機部材に紫外線吸収剤を配合し、紫外線を遮蔽、吸収することが種々検討されている(特許文献1)。
【0003】
近年、部材における品質劣化の抑制、健康障害の予防等の効果をさらに高めるために、より長波長領域(380~400nm)の波長光を効率よく吸収しながら、一方で400nmより長波長の可視光線(~500nm)の吸収を抑制し、添加した部材の黄色化を抑え、初期の外観を良好とする紫外線吸収剤が望まれている。しかしながら、例えば、従来のベンゾトリアゾール誘導体は、長波長領域の波長光(380~400nm)を十分に吸収しようとすると、その波長領域の吸収効率が低いため、多くの添加量が必要となり、さらに、その光学的特性から400nmより長波長の光も多く吸収し、添加した部材を黄色化する問題があった。
【0004】
本発明者らは、特に、380~400nmまでの有害光を効率よく十分に吸収し、かつ初期の黄色化の要因となる400nm以上の波長光の吸収を抑制する紫外線吸収剤として、硫黄含有基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体を提案した(特許文献2、3)。この紫外線吸収剤は、その光学的特性から、250~400nmまでの波長領域の光を十分に吸収することができ、しかも、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高く、少量の添加で、その波長光を効率よく吸収でき、さらに、350~390nmの吸収ピークの傾きが従来の紫外線吸収剤よりも大きく400nm付近以上の波長光の吸収を抑制し、配合した部材の初期の黄色化を抑制することができる。
【0005】
一方で、紫外線吸収剤は、そのような吸収波長の光学特性以外にも、有機材料、無機材料との親和性に優れ、紫外線吸収剤を含有させた有機材料組成物、無機材料組成物から紫外線吸収剤がブリードアウトしない、有機、無機材料の外観の保持に優れた紫外線吸収剤が望まれている。また、紫外線吸収剤は、長期の紫外線への暴露により、例えば、光の吸収能等の性質の劣化など、長期の使用を阻害することのないよう、耐光性の改良が求められている。他方で、例えば、樹脂材料の成形、乾燥時など製造工程または実使用時に、長時間一定温度での高温環境下に置かれた場合、熱分解による変色、重量減少、光の吸収能の低下が生じないなど耐熱性にも優れることが求められ、製造から使用時までを考慮すると耐光性と耐熱性の両方に優れた耐久性の高い紫外線吸収剤が望まれている。さらに、紫外線吸収剤を含有させた、有機材料組成物、無機材料組成物においても、長期の使用期間に渡って変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないなど耐光性だけでなく耐熱性にも優れた有機材料組成物、無機材料組成物とする紫外線吸収剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-184882号公報
【文献】国際公開第2016/021664号
【文献】国際公開第2016/174788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2、3では、硫黄含有基としてアルキル基を基本骨格とするものを中心に、380~400nmまでの波長光を十分に効率よく吸収すること、初期の黄色化を抑制することの課題を解決することについて主に検討しているが、チオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体の耐光性、さらには耐熱性を含めた耐久性については全く検討されていなかった。
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、紫外線吸収剤が380~400nmまでの波長領域の有害光を効率よく吸収し、かつ初期の黄色化の要因となる400nm以上の波長光の吸収を抑制することで有害光の影響が少なく、有機材料、ガラスをはじめとする無機材料と親和性が良く外観に優れた部材を得ることができ、また、耐光性または耐熱性に優れ、さらに耐光性および耐熱性、すなわち耐久性に優れた紫外線吸収剤を提供することを課題としている。紫外線吸収剤を含む有機材料組成物は、紫外線吸収剤がブリードアウトせず、紫外線吸収剤との親和性に優れ、外観の保持に優れ、特に外観が透明である場合は、黄色化を抑制し、その透明性の保持に優れた組成物とすることができることを課題としている。さらには、有機材料組成物においても、長期の使用期間に渡って変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないなど耐光性および耐熱性、すなわち耐久性に優れた有機材料組成物とする紫外線吸収剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、[I]本発明の高耐光性紫外線吸収剤は、次式(1)~(4)のいずれかで表されるチオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなることを特徴としている。
【0010】
【0011】
(式中、PhBzT1aは置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-X1a-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、X1aはフェニル環またはナフチル環の残基を示し、l個のR1aはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、lは0~5の整数を示す。)
【0012】
【0013】
(式中、PhBzT1bは置換基を有していてもよい、チオシクロヘキシル環基(-S-Cy-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、Cyはシクロヘキシル環残基を示し、m個のR1bはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、mは0~5の整数を示す。)
【0014】
【0015】
(式中、PhBzT1cおよびPhBzT2cはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-A1c-S-)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、A1cは次式:
【0016】
【0017】
(式中、X1cとX2cはそれぞれ独立にフェニル環またはナフチル環の残基を示し、n個のR1cとp個のR2cはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、nとpは0~4の整数を示し、A2cは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基、2価の芳香族基、またはスルフィド基-S-を示し、qは0または1の整数を示す。)で表される基であるか、あるいはフェニル環またはナフチル環残基を示す。)
【0018】
【0019】
(式中、PhBzT1dおよびPhBzT2dはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、ベンゾトリアゾール骨格のフェニル部位にチオアリール環基(-S-X1d-…または-S-X2d-…)が結合し、2位のフェニル骨格PhにA1dが結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、X1dとX2dはそれぞれ独立にフェニル環またはナフチル環の残基を示し、r個のR1dとs個のR2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、rとsは0~5の整数を示す。A1dは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。)
この高耐光性紫外線吸収剤の耐光性の指標としては、下記の条件で測定したとき、380、390、400nmの波長の透過率の差(ΔTuv)のうち少なくともいずれかが6%以下であることが好ましく、いずれも6%以下がより好ましく、いずれも4%以下がさらに好ましく、いずれも2%以下が一層好ましい:
<透過率の差(ΔTuv)の測定条件>
ソーダガラスにアクリル樹脂と紫外線吸収剤の質量比0.6~3.4:0.1、膜厚2~50μmで塗膜したサンプルを、波長300~400nm、照度42W/m2、ブラックパネル温度63℃の条件で70時間、紫外線を照射し、照射前(T1uv)、照射後(T2uv)の紫外-可視透過スペクトルの透過率より、下記式で算出する。
【0020】
【0021】
[II]本発明の耐熱性紫外線吸収剤は、次式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるチオアリール環基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなることを特徴としている。
【0022】
【0023】
(式中、PhBzT1aは置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-X1a-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、X1aはフェニル環またはナフチル環の残基を示し、l個のR1aはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、lは0~5の整数を示す。)
【0024】
【0025】
(式中、PhBzT1cおよびPhBzT2cはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-A1c-S-)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、A1cは次式:
【0026】
【0027】
(式中、X1cとX2cはそれぞれ独立にフェニル環またはナフチル環の残基を示し、n個のR1cとp個のR2cはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、nとpは0~4の整数を示し、A2cは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基、2価の芳香族基、またはスルフィド基-S-を示し、qは0または1の整数を示す。)で表される基であるか、あるいはフェニル環またはナフチル環残基を示す。)
【0028】
【0029】
(式中、PhBzT1dおよびPhBzT2dはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、ベンゾトリアゾール骨格のフェニル部位にチオアリール環基(-S-X1d-…または-S-X2d-…)が結合し、2位のフェニル骨格PhにA1dが結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、X1dとX2dはそれぞれ独立にフェニル環またはナフチル環の残基を示し、r個のR1dとs個のR2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、rとsは0~5の整数を示す。A1dは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。)
[III]本発明の耐久性紫外線吸収剤は、上記の耐熱性紫外線吸収剤であり、高耐光性かつ耐熱性の耐久性紫外線吸収剤であって、
下記の条件で測定したとき、380、390、400nmの波長の透過率の差(ΔTuv)のうち少なくともいずれかが6%以下であることを特徴としている:
<透過率の差の測定条件>
ソーダガラスにアクリル樹脂と紫外線吸収剤の質量比0.6~3.4:0.1、膜厚2~50μmで塗膜したサンプルを、波長300~400nm、照度42W/m2、ブラックパネル温度63℃の条件で70時間、紫外線を照射し、照射前(T1uv)、照射後(T2uv)の紫外-可視透過スペクトルの透過率より、下記式で算出する。
【0030】
【0031】
この耐久性紫外線吸収剤の耐光性の指標としては、上記380、390、400nmの波長の透過率の差(ΔTuv)が、いずれも6%以下が好ましく、いずれも4%以下がより好ましく、いずれも2%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明の有機樹脂組成物は、上記の高耐光性紫外線吸収剤、耐熱性紫外線吸収剤または耐久性紫外線吸収剤と、有機樹脂とを含む。
【0033】
[IV]本発明の紫外線吸収剤は、ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤であって、
次式(1)~(6)のいずれかで表わされるチオアリール環基、チオシクロヘキシル環基、チオアルキル基、またはチオアルキレン基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなることを特徴としている:
【0034】
【0035】
(式中、PhBzT1aは置換基を有していてもよい、チオアリール環基(-S-X1a-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、X1aはフェニル環またはナフチル環の残基を示し、ここでX1aはl個のR1a以外にも置換基を有していてもよく、l個のR1aはそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、炭素鎖の水素原子が置換されるか、炭素鎖の基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~18の炭化水素基もしくは炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、lは0~5の整数を示す。)
【0036】
【0037】
(式中、PhBzT1bは置換基を有していてもよい、チオシクロヘキシル環基(-S-Cy-…)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、Cyはシクロヘキシル環残基を示し、ここでCyはm個のR1b以外にも置換基を有していてもよく、m個のR1bはそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、炭素鎖の水素原子が置換されるか、炭素鎖の基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~18の炭化水素基もしくは炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、mは0~5の整数を示す。)
【0038】
【0039】
(式中、PhBzT1cおよびPhBzT2cはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、チオアリール環基またはチオアルキレン基(-S-A1c-S-)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、A1cは次式:
【0040】
【0041】
(式中、X1cとX2cはそれぞれ独立にフェニル環またはナフチル環の残基を示し、ここでX1cとX2cはn個のR1cとp個のR2c以外にも置換基を有していてもよく、n個のR1cとp個のR2cはそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、炭素鎖の水素原子が置換されるか、炭素鎖の基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~18の炭化水素基もしくは炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、nとpは0~4の整数を示し、A2cは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基、2価の芳香族基、またはスルフィド基-S-を示し、qは0または1の整数を示す。)で表される基であるか、あるいはフェニル環残基、ナフチル環残基、または芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。)
【0042】
【0043】
(式中、PhBzT1dおよびPhBzT2dはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、ベンゾトリアゾール骨格のフェニル部位にチオアリール環基(-S-X1d-…または-S-X2d-…)が結合し、2位のフェニル骨格PhにA1dが結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、X1dとX2dはそれぞれ独立にフェニル環またはナフチル環の残基を示し、ここでX1dとX2dはr個のR1dとs個のR2d以外にもの置換基を有していてもよく、r個のR1dとs個のR2dはそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、炭素鎖の水素原子が置換されるか、炭素鎖の基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~18の炭化水素基もしくは炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基を示し、rとsは0~5の整数を示す。A1dは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。)
【0044】
【0045】
(式中、PhBzT1eは置換基を有していてもよい、チオアルキル基(-S-Y1e)が結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、Y1eは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキル基を示す。)
【0046】
【0047】
(式中、PhBzT1fおよびPhBzT2fはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、ベンゾトリアゾール骨格のフェニル部位にチオアルキル基(-S-Y1fまたは-S-Y2f)が結合し、2位のフェニル骨格PhにA1fが結合した2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を示し、Y1fとY2fはそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキル基を示す。
A1fは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0048】
本発明の紫外線吸収剤によれば、本発明の紫外線吸収剤は380~400nmまでの波長領域の有害光を効率よく吸収し、かつ初期の黄色化の要因となる400nm以上の波長光の吸収を抑制することで有害光の影響が少なく、有機材料、ガラスをはじめとする無機材料との親和性がよく外観に優れた部材を得ることができ、また、本発明の紫外線吸収剤は2-フェニルベンゾトリアゾール骨格にチオエーテル基を介してアリール基を導入することでπ電子共役系、またはそのアリール基に導入した炭化水素基の分子間相互作用の安定化効果により、耐光性または耐熱性に優れ、さらに耐光性および耐熱性、すなわち耐久性に優れる。紫外線吸収剤を含む有機材料組成物は、紫外線吸収剤がブリードアウトせず、紫外線吸収剤との親和性に優れ、外観の保持に優れ、特に外観が透明である場合は、黄色化を抑制し、その透明性の保持に優れた組成物とすることができる。さらには、紫外線吸収剤の上記物性及び有機材料の劣化防止より、長期の使用期間に渡って変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないなど耐光性および耐熱性、すなわち耐久性に優れる。また、本発明の紫外線吸収剤は、そのような有機材料組成物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】実施例における化合物1~5の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
【
図2】実施例における化合物6~10の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
【
図3】実施例における化合物11~15の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
【
図4】実施例における化合物16~18、参考例における化合物19、21および比較例における化合物22の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0051】
本明細書において「本発明の紫外線吸収剤」と表記する場合、[I]高耐光性紫外線吸収剤、[II]耐熱性紫外線吸収剤、[III]耐久性紫外線吸収剤、[IV]ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤の少なくともいずれかを意味している。
【0052】
本明細書において「高耐光性紫外線吸収剤」とは、限定的ではないが、主には、380、390、400nmの波長の透過率の差(ΔTuv)が、本明細書に好ましい例として開示した範囲ものを意図している。
【0053】
本明細書において「耐熱性紫外線吸収剤」とは、限定的ではないが、加熱後の重量変化率および/または変色において、本明細書に好ましい例として開示した範囲ものを意味している。
本明細書において「耐久性紫外線吸収剤」とは、上記の耐熱性に加えて、限定的ではないが、主には、380、390、400nmの波長の透過率の差(ΔTuv)が、本明細書に好ましい例として開示した範囲のものを意味している。
【0054】
以下における、式(A)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール骨格とそれに続く式(1)~(4)の2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体の具体的な態様および好ましい例示の記述においては、特に明示しない限り本発明の紫外線吸収剤全般を対象としており、主には高耐光性紫外線吸収剤を中心に記述しているが、後述の実施例欄の結果に基づいて、耐熱性紫外線吸収剤または耐久性紫外線吸収剤、有機樹脂組成物、ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤の具体的な態様および好ましい例示をも包含している。
本発明の紫外線吸収剤、特に高耐光性紫外線吸収剤、耐熱性紫外線吸収剤、耐久性紫外線吸収剤は、チオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなり、この2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、上記式(1)~(4)のいずれかで表される。また、ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤は、チオアリール環基、チオシクロヘキシル環基、チオアルキル基、またはチオアルキレン基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなり、この2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、上記式(1)~(6)のいずれかで表わされる。
【0055】
(2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体の2-フェニルベンゾトリアゾール骨格)
式(1)におけるPhBzT1a、式(2)におけるPhBzT1b、式(3)におけるPhBzT1cおよびPhBzT2c、式(4)におけるPhBzT1dおよびPhBzT2d、式(5)におけるPhBzT1e、式(6)におけるPhBzT1fおよびPhBzT2fの2-フェニルベンゾトリアゾール骨格は、次式(A)で表される。
【0056】
【0057】
式(A)中、R1~R9は、それぞれ独立に、その少なくとも1つはチオアリール環基、チオシクロヘキシル環基、チオアルキル基、またはチオアルキレン基を示し、それ以外は水素原子または置換基を示す。
【0058】
式(A)において、チオアリール環基、チオシクロヘキシル環基、チオアルキル基、またはチオアルキレン基の置換位置は特に限定されず、上記式(1)~(6)において規定しない限りR1~R9のうちいずれであってもよいが、R6~R9が好ましく、R7、R8がより好ましい。チオアリール環基、チオシクロヘキシル環基、チオアルキル基、またはチオアルキレン基の置換数も上記式(1)~(6)において規定しない限り特に限定されないが、例えば1~2個であり、1個が好ましい。
【0059】
上記置換基としては、以下の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基等が挙げられる。上記置換基が2価の基である場合、R1~R9のうちいずれか2つ(好ましくは隣接する2つ)が、一緒になって環を形成する。これらの置換基は、さらに以下に例示したような芳香族基、不飽和基、窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい。
【0060】
炭化水素基としては、直鎖または分岐のアルキル基、直鎖または分岐のアルケニル基、直鎖または分岐のアルキニル基、水素原子がアルキル基で置換してもよいベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、炭素数が好ましくは1~18、より好ましくは1~10である。具体的には、直鎖または分岐のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、ベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、1,1,3,3-テトラメチルブタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基等が挙げられる。直鎖または分岐のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロパ-1-エン-1-イル基、アリル基、イソプロペニル基、ブタ-1-エン-1-イル基、ブタ-2-エン-1-イル基、ブタ-3-エン-1-イル基、2-メチルプロパ-2-エン-1-イル基、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル基、ペンタ-1-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、3-メチルブタ-2-エン-1-イル基、3-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-1-エン-1-イル基、ヘキサ-2-エン-1-イル基、ヘキサ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル基、ヘプタ-1-エン-1-イル基、ヘプタ-6-エン-1-イル基、オクタ-1-エン-1-イル基、オクタ-7-エン-1-イル基、ノナ-1-エン-1-イル基、ノナ-8-エン-1-イル基、デカ-1-エン-1-イル基、デカ-9-エン-1-イル基、ウンデカ-1-エン-1-イル基、ウンデカ-10-エン-1-イル基、ドデカ-1-エン-1-イル基、ドデカ-11-エン-1-イル基、トリデカ-1-エン-1-イル基、トリデカ-12-エン-1-イル基、テトラデカ-1-エン-1-イル基、テトラデカ-13-エン-1-イル基、ペンタデカ-1-エン-1-イル基、ペンタデカ-14-エン-1-イル基、ヘキサデカ-1-エン-1-イル基、ヘキサデカ-15-エン-1-イル基、ヘプタデカ-1-エン-1-イル基、ヘプタデカ-16-エン-1-イル基、オクタデカ-1-エン-1-イル基、オクタデカ-9-エン-1-イル基、オクタデカ-17-エン-1-イル基等が挙げられる。直鎖または分岐のアルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパ-1-イン-1-イル基、プロパ-2-イン-1-イル基、ブタ-1-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、1-メチルプロパ-2-イン-1-イル基、ペンタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-1-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基、ヘプタ-1-イン-1-イル基、ヘプタ-6-イン-1-イル基、オクタ-1-イン-1-イル基、オクタ-7-イン-1-イル基、ノナ-1-イン-1-イル基、ノナ-8-イン-1-イル基、デカ-1-イン-1-イル基、デカ-9-イン-1-イル基、ウンデカ-1-イン-1-イル基、ウンデカ-10-イン-1-イル基、ドデカ-1-イン-1-イル基、ドデカ-11-イン-1-イル基、トリデカ-1-イン-1-イル基、トリデカ-12-イン-1-イル基、テトラデカ-1-イン-1-イル基、テトラデカ-13-イン-1-イル基、ペンタデカ-1-イン-1-イル基、ペンタデカ-14-イン-1-イル基、ヘキサデカ-1-イン-1-イル基、ヘキサデカ-15-イン-1-イル基、ヘプタデカ-1-イン-1-イル基、ヘプタデカ-16-イン-1-イル基、オクタデカ-1-イン-1-イル基、オクタデカ-17-イン-1-イル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基がより好ましい。また、それらの炭化水素基の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子と置換してもよい。
芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。1価の芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-ビフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基等が挙げられる。2価の芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,8-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、9,10-アントラセニレン基、1,8-アントラセニレン基、2,7-アントラセニレン基、2,6-アントラセニレン基、1,4-アントラセニレン基、1,3-アントラセニレン基等が挙げられる。
【0061】
不飽和基は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、炭素-酸素二重結合(カルボニル基、アルデヒド基、エステル基、カルボキシ基、カルバメート基、尿素基、アミド基、イミド基、カルバモイル基、ウレタン基等)、炭素-窒素二重結合(イソシアネート基等)、炭素-窒素三重結合(シアノ基、シアナト基等)等の炭素-炭素または炭素-ヘテロ原子の不飽和結合を含み、炭素数が好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、アクリロイル基、メタクロイル基、マレイン酸モノエステル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、アルデヒド基、エステル基、カルボキシ基、カルバメート基、尿素基、アミド基、イミド基、カルバモイル基、シアノ基、シアナト基、イソシアネート基、ウレタン基等が挙げられる。
【0062】
窒素含有基は、シアノ基、ニトロ基または1~3級アミノ基を含み、炭素数が好ましくは0~10である。窒素含有基としては、特に限定されないが、例えば、シアノ基、シアナト基、イソシアネート基、ニトロ基、ニトロアルキル基、カルバメート基、尿素基、アミド基、イミド基、カルバモイル基、ウレタン基等、イミド基、アミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノアルキル基、3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル基、2-[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル-)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール-イル]-メチル基等が挙げられる。
【0063】
酸素含有基は、芳香環基または脂環式基を含む場合には炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14であり、さらに好ましくは6~12、芳香環基または脂環式基を含まない場合には炭素数が好ましくは0~18である。酸素含有基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、t-ブトキシ基、sec-ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、1-ヘキシルオキシ基、2-ヘキシルオキシ基、3-ヘキシルオキシ基、1-ヘプチルオキシ基、2-ヘプチルオキシ基、3-ヘプチルオキシ基、4-ヘプチルオキシ基、1-オクチルオキシ基、2-オクチルオキシ基、3-オクチルオキシ基、4-オクチルオキシ基、1-ノニルオキシ基、2-ノニルオキシ基、3-ノニルオキシ基、4-ノニルオキシ基、5-ノニルオキシ基、1-デシルオキシ基、2-デシルオキシ基、3-デシルオキシ基、4-デシルオキシ基、5-デシルオキシ基、1-ウンデシルオキシ基、1-ドデシルオキシ基、1-トリデシルオキシ基、1-テトラデシルオキシ基、1-ペンタデシルオキシ基、1-ヘキサデシルオキシ基、1-ヘプタデシルオキシ基、1-オクタデシルオキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、アセトキシ基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシ基、尿素基、ウレタン基、アミド基、イミド基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバメート基、カルバモイル基、ポリオキシエチレン基等が挙げられる。これらの中でもヒドロキシ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のエーテル基、炭素数1~18のエステル基、炭素数1~20のポリオキシエチレン基が好ましい。
【0064】
リン含有基は、ホスフィン基、ホスファイト基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、またはリン酸エステル基を含み、芳香環基または脂環式基を含む場合には炭素数が好ましくは6~22、芳香環基または脂環式基を含まない場合には炭素数が好ましくは0~18である。リン含有基としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフィン基、トリエチルホスフィン基、トリプロピルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリペンチルホスフィン基、トリヘキシルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基、トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基、メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。
【0065】
脂環式基は、炭素数が好ましくは3~10、より好ましくは3~8である。脂環式基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0066】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0067】
耐光性を高める観点において、下記の置換基の組み合わせが好ましい。
【0068】
下記のア~オについては、本発明の紫外線吸収剤と有機樹脂を含む有機材料との組み合わせにおいて、式(A)におけるR6、R7、R8、R9の組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。
ア-1 各式(1)、(3)、(4)のR6、R7、R8、R9のうち少なくともいずれかは、チオアリール環基である。また、式(2)のR6、R7、R8、R9のうち少なくともいずれかは、チオシクロヘキシル環基である。また、上記[IV]において式(3)のR6、R7、R8、R9のうち少なくともいずれかは、チオアルキレン基である。また、式(5)、(6)のR6、R7、R8、R9のうち少なくともいずれかは、チオアルキル基である。
ア-2 ア-1において、チオアリール環基のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dは、フェニル環もしくはナフチル環の残基である。
ア-3 ア-1、2において、PhBzT1a、PhBzT1b、PhBzT1c、PhBzT2c、PhBzT1d、PhBzT2dに、1個のチオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基が結合する。また、上記[IV]においてPhBzT1c、PhBzT2cに、1個のチオアルキレン基が結合する。PhBzT1e、PhBzT1f、PhBzT2fに、1個のチオアルキル基が結合する。
ア-4 ア-1からア-3のいずれかにおいて、1個のチオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基はR7またはR8に結合する。また、上記[IV]において1個のチオアルキレン基、1個のチオアルキル基はR7またはR8に結合する。
ア-5 ア-1からア-4のいずれかにおいて、チオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基以外のR6~R9は全て水素原子である。また、上記[IV]においてチオアルキレン基、チオアルキル基以外のR6~R9は全て水素原子である。
ア-6 ア-1からア-5のいずれかにおいて、チオアリール環基のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基である。
ア-7 ア-1からア-5のいずれかにおいて、チオアリール環基のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはナフチル環の残基である。
【0069】
式(1)~(3)、(5)の式(A)におけるR1、R2、R3、R4、R5の組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。式(3)におけるPhBzT1cおよびPhBzT2cのR1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立に異なっても、同一でもよい。
イ-1 炭素数1~18の炭化水素基(アルケニル基、アルキニル基を含む炭素数2~18の炭化水素基を含む。)、ヒドロキシ基、炭素数6~18の芳香族基、炭素数1~18のエーテル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のエステル基、(メタ)アクリロイルオキシ基および/または炭素数1~20のポリオキシエチレン基、またはそれらの置換基で水素原子が置換されるか基端が中断されるか炭素-炭素結合が中断されてもよい炭素数1~18の炭化水素基から選ばれる置換基を1つ以上含む。
イ-2 イ-1において、置換基が炭素数1~10の炭化水素基、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
イ-3 イ-2において、置換基が炭素数1~8の炭化水素基、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
イ-4 イ-1からイ-3のいずれかにおいて、置換基の炭化水素基が直鎖または分岐のアルキル基である。
イ-5 イ-4において、置換基がメチル基、t-ブチル基、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
イ-6 イ-5において、置換基がメチル基、t-ブチル基、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、かつヒドロキシ基は1つ以下である。
イ-7 イ-1からイ-6のいずれかにおいて、置換基の数が1~4個である。
イ-8 イ-1からイ-7のいずれかにおいて、R1~R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR1~R5は水素原子である。
イ-9 イ-1からイ-8のいずれかにおいて、R1、R2、R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR1~R5は水素原子である。
イ-10 イ-9において、R1はヒドロキシ基、R2はt-ブチル基、R4はメチル基であり、R3、R5は水素原子である。
イ-11 イ-1からイ-9のいずれかにおいて、R1、R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR1~R5は水素原子である。
イ-12 イ-11においてR1はヒドロキシ基、R4はメチル基であり、R2、R3、R5は水素原子である。
【0070】
式(4)、(6)の式(A)におけるR1、R2、R3、R4、R5の組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。式(4)におけるPhBzT1dおよびPhBzT2d、式(6)におけるPhBzT1fおよびPhBzT2fのR1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立に異なっても、同一でもよい。
イ-13 PhBzT1dおよびPhBzT2dのそれぞれのR2は、-A1d-である。また、PhBzT1fおよびPhBzT2fのそれぞれのR2は、-A1f-である。
イ-14 イ-13において、-A1d-、-A1f-は炭素数1~8の2価の炭化水素基である。
イ-15 イ-13において、-A1d-、-A1f-は炭素数1~4の2価の炭化水素基である。
イ-16 イ-13において、-A1d-、-A1f-は炭素数1~2の2価の炭化水素基である。
イ-17 イ-14からイ-16のいずれかにおいて、-A1d-、-A1f-は直鎖または分岐のアルキル基である。
イ-18 イ-17において、-A1d-、-A1f-はメチレン基またはエチレン基である。
イ-19 イ-13から18のいずれかにおいて、-A1d-、-A1f-以外のR1、R2、R3、R4、R5に、炭素数1~18の炭化水素基(アルケニル基、アルキニル基を含む炭素数2~18の炭化水素基を含む。)、ヒドロキシ基、炭素数6~18の芳香族基、炭素数1~18のエーテル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のエステル基、(メタ)アクリロイルオキシ基および/またはポリオキシエチレン基、またはそれらの置換基で水素原子が置換されるか基端が中断されるか炭素-炭素結合が中断されてもよい炭素数1~18の炭化水素基から選ばれる置換基を1つ以上含む。
イ-20 イ-19において、置換基が炭素数1~10の炭化水素基、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
イ-21 イ-20において、置換基が炭素数1~8の炭化水素基、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
イ-22 イ-19からイ-21のいずれかにおいて、置換基の炭化水素基が直鎖または分岐のアルキル基である。
イ-23 イ-22において、置換基がメチル基、t-ブチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチルおよびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
イ-24 イ-23において、置換基がメチル基、t-ブチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチルおよびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、かつヒドロキシ基は1つ以下である。
イ-25 イ-19からイ-24のいずれかにおいて、置換基の数が1~4個である。
イ-26 イ-19からイ-25のいずれかにおいて、R1、R3、R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR1、R3、R4、R5は水素原子である。
イ-27 イ-19からイ-26のいずれかにおいて、R1、R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR3、R5は水素原子である。
イ-28 イ-27において、R1はヒドロキシ基、R4は1,1,3,3-テトラメチルブチルであり、R3、R5は水素原子である。
(式(1)、(4)で表される、チオアリール環基(-S-X1a-…、-S-X1d-…または-S-X2d-…)を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体)
式(1)、(4)における、それぞれl個のR1aおよびX1a、r個のR1dおよびX1d、s個のR2dおよびX2dの組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。
ウ-1 X1a、X1d、X2dはフェニル環の残基である。
ウ-2 ウ-1において、l、r、s=0で、X1a、X1d、X2dに置換基R1a、R1d、R2dはなく、X1a、X1d、X2dにおけるR1a、R1d、R2dに置換し得る部分はすべて水素原子である。
ウ-3 ウ-1において、l、r、s個のR1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基であり、炭化水素基は、好ましくは炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、r、s=1~5である。
ウ-4 ウ-3において、l、r、s=1~3である。
ウ-5 ウ-4において、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に少なくとも一つは炭素数3~8の分岐アルキル基である。
ウ-6 ウ-4において、l、r、s=1で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
ウ-7 ウ-6において、l、r、s=1で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数2~8、さらに好ましくは炭素数3~8、一層好ましくは炭素数3~5、特に好ましくは炭素数4~5、ことさら好ましくは炭素数4である。
ウ-8 ウ-3~7のいずれかにおいて、PhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対して、それぞれR1a、R1d、R2dの少なくとも一つはパラ位に有する。
ウ-9 ウ-4において、l、r、s=2で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
ウ-10 ウ-9において、l、r、s=2で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基の各炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは炭素数1であり、および/またはアルキル基の総炭素数は、好ましくは2~12、より好ましくは2~10、さらに好ましくは2~5、特に好ましくは2である。
ウ-11 ウ-9、10のいずれかにおいて、PhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対してl、r、s=2のそれぞれのR1a、R1d、R2dはオルト、パラ位もしくはオルト、メタ位に有する。
ウ-12 ウ-3からウ-11のいずれかにおいて、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に三級炭素および/または四級炭素を有する炭化水素基であり、好ましくはアルキル基である。
ウ-13 ウ-1において、l、r、s個のR1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基であり、好ましくは炭素数1~8の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~4の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基である。また、好ましくはl、r、s=1~3、より好ましくはl、r、s=1~2、特に好ましくはl、r、s=1である。
ウ-14 ウ-13において、l、r、s=1であり、アルコキシ基はPhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対してメタ位に有する。
ウ-15 ウ-1において、l、r、s個のR1a、R1d、R2dはヒドロキシ基であり、好ましくはl、r、s=1~3、より好ましくはl、r、s=1~2、特に好ましくはl、r、s=1である。
ウ-16 ウ-15において、l、r、s=1であり、ヒドロキシ基はPhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対してパラ位に有する。
ウ-17 X1a、X1d、X2dはナフチル環の残基であり、好ましくはl、r、s=0である。
【0071】
式(1)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、特に限定されないが、例えば、5-フェニルチオ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-tert-ブチル-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(2,4-ジメチル-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(3-メトキシ-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-(1,1-ジメチル-プロピル)-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-イソプロピル-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(2-メチル-5-tert-ブチル-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-メチル-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(2,4-ジ(1,1-ジメチルプロピル)-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール 、5-(4-ヒドロキシ-フェニルチオ)-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-ナフチルチオ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-フェニルチオ-2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0072】
(式(2)で表される、チオシクロヘキシル環基(-S-Cy-…)を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体)
式(2)におけるm個のR1bの組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。
エ-1 m=0で、Cyに置換基R1bはなく、CyにおけるR1bに置換し得る部分はすべて水素原子である。
エ-2 m個のR1bは、それぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基であり、炭化水素基は、好ましくは炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、m=1~5である。
エ-3 エ-2において、m=1~3である。
エ-4 エ-3において、R1bは、それぞれ独立に少なくとも一つは炭素数3~8の分岐アルキル基である。
エ-5 エ-3において、m=1で、R1bは、炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
エ-6 エ-5において、m=1で、R1bは、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数2~8、さらに好ましくは炭素数3~8、一層好ましくは炭素数3~5、特に好ましくは炭素数4~5、ことさら好ましくは炭素数4である。
エ-7 エ-2~6のいずれかにおいて、PhBzT1b-S-に対してR1bの少なくとも一つはパラ位に有する。
エ-8 エ-3において、m=2で、R1bは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
エ-9 エ-8において、m=2で、R1bは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基の各炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは炭素数1であり、および/またはアルキル基の総炭素数は、好ましくは2~12、より好ましくは2~10、さらに好ましくは2~5、特に好ましくは2である。
エ-10 エ-8、9のいずれかにおいて、PhBzT1b-S-に対してm=2のR1bはオルト、パラ位もしくはオルト、メタ位に有する。
エ-11 エ-2からエ-10のいずれかにおいて、R1bは、三級炭素および/または四級炭素を有する炭化水素基であり、好ましくは分岐のアルキル基である。
エ-12 エ-1において、m個のR1bは、それぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基であり、好ましくは炭素数1~8の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~4の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基である。また、好ましくはm=1~3、より好ましくはm=1~2、特に好ましくはm=1である。
エ-13 エ-12において、m=1であり、アルコキシ基はPhBzT1b-S-に対してメタ位に有する
エ-14 エ-1において、m個のR1bはヒドロキシ基であり、好ましくはm=1~3、より好ましくはm=1~2、特に好ましくはm=1である。
エ-15 エ-14において、m=1で、ヒドロキシ基はPhBzT1b-S-に対してパラ位に有する。
【0073】
式(2)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、特に限定されないが、例えば、5-シクロヘキシルチオ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-メチル-シクロヘキシル)-チオ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-メトキシ-シクロヘキシル)-チオ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-(4-イソプロピル-シクロヘキシル)-チオ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、等が挙げられる。
【0074】
(式(3)で表される、チオアリール環基(-S-A1c-S-)を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体)
上記式(3)において、A2cは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基、2価の芳香族基、またはスルフィド基-S-を示す。
【0075】
A2cにおける炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖または分岐のアルキレン基、直鎖または分岐のアルケニレン基、直鎖または分岐のアルキニレン基等が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,1-ジメチル-メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、1-メチルエタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、エイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、分岐のアルキレン基がより好ましい。
【0076】
2価の炭化水素基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。
【0077】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記において式(A)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール骨格のR1~R9の置換基として記載した1価もしくは2価の基と同様のものが挙げられ、その記載が参照される。
A2cにおける2価の芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。2価の芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,8-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、9,10-アントラセニレン基、1,8-アントラセニレン基、2,7-アントラセニレン基、2,6-アントラセニレン基、1,4-アントラセニレン基、1,3-アントラセニレン基等が挙げられる。
【0078】
式(3)における、それぞれn個のR1c及びX1c、p個のR2c及びX2c、q個のA2cの組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。
オ-1 X1c、X2cはフェニル環の残基である。
オ-2 オ-1において、n、p=0で、X1c、X2cに置換基R1c、R2cはなく、X1c、X2cにおけるR1c、R2cに置換し得る部分はすべて水素原子である。
オ-3 オ-1において、n、p個のR1c、R2cは、それぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基であり、炭化水素基は、好ましくは炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、n、p=1~5である。
オ-4 オ-3において、n、p=1~3である。
オ-5 オ-4において、R1c、R2cは、それぞれ独立に少なくとも一つは炭素数3~8の分岐アルキル基である。
オ-6 オ-4において、n、p=1で、R1c、R2cは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
オ-7 オ-6において、n、p=1で、R1c、R2cは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数2~8、さらに好ましくは炭素数3~8、一層好ましくは炭素数3~5、特に好ましくは炭素数4~5、ことさら好ましくは炭素数4である。
オ-8 オ-4において、n、p=2で、R1c、R2cは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
オ-9 オ-8において、n、p=2で、R1c、R2cは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基の各炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは炭素数1であり、および/またはアルキル基の総炭素数は、好ましくは2~12、より好ましくは2~10、さらに好ましくは2~5、特に好ましくは2である。
オ-10 オ-3からオ-9のいずれかにおいて、R1c、R2cは、それぞれ独立に三級炭素および/または四級炭素を有する炭化水素基であり、好ましくはアルキル基である。
オ-11 オ-1において、n、p個のR1c、R2cは、それぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基であり、好ましくは炭素数1~8の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~4の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基である。また、好ましくはn、p=1~3、より好ましくはn、p=1~2、特に好ましくはn、p=1である。
オ-12 オ-1において、n、p個のR1c、R2cはヒドロキシ基であり、好ましくはn、p=1~3、より好ましくはn、p=1~2、特に好ましくはn、p=1である。
オ-13 X1c、X2cはナフチル環の残基であり、好ましくはn、p=0である。
オ-14 オ-1からオ-13のいずれかにおいて、q=1、A2cがスルフィド基である。好ましくは、n、p=0、X1c、X2cに置換基R1c、R2cはなく、X1c、X2cにおけるR1c、R2cに置換し得る部分はすべて水素原子である。
オ-15 オ-1からオ-13のいずれかにおいて、q=1、A2cが炭素数1~8(好ましくは炭素数1~4)の炭化水素基(好ましくは、直鎖または分岐のアルキレン基)である。好ましくは、n、p=0、X1c、X2cに置換基R1c、R2cはなく、X1c、X2cにおけるR1c、R2cに置換し得る部分はすべて水素原子である。
オ-16 オ-1からオ-13のいずれかにおいて、q=0である。好ましくは、n、p=0、X1c、X2cに置換基R1c、R2cはなく、X1c、X2cにおけるR1c、R2cに置換し得る部分はすべて水素原子である。
オ-17 オ-1からオ-16のいずれかにおいて、-(A1c)q-は、PhBzT1c-S-、PhBzT2c-S-に対してパラ位に有る。
【0079】
式(3)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、特に限定されないが、例えば、4,4'-チオビス[(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル-チオベンゼン]、4,4'-プロパン-2,2-ジイル-ビス[(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル-チオベンゼン]、4,4'-ビフェニル-ビス[(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル-チオ]等が挙げられる。
(式(4)で表される、5位にチオアリール環基(-S-X1d-…または-S-X2d-…)を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体)
上記式(4)において、A1dは芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。
【0080】
A1dにおける炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、前記において式(3)のA2cにおける炭素数1~20の2価の炭化水素基と同様であり、その記載が参照される。芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基についてもその記載が参照される。
【0081】
A1dにおける2価の芳香族基としては、前記において式(3)のA2cにおける2価の芳香族基と同様であり、その記載が参照される。
【0082】
式(4)で表される、5位にチオアリール環基(-S-X1d-…または-S-X2d-…)を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、特に限定されないが、例えば、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-5-イル-(4-tert-ブチル-チオフェニル))-4-(4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)フェノール]、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-5-イル-(4-tert-ブチル-チオフェニル))-4-(2-ヒドロキシエチル)フェノール]等が挙げられる。
【0083】
以上に本発明の紫外線吸収剤の例を説明したが、その中で高耐光性紫外線吸収剤の好ましい態様をさらに示すと次のとおりである。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、sは0である。
特に、2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、式(1)、(3)のいずれかで表わされるものであり、式(1)、(3)においてX1a、X1c、X2cはフェニル環の残基を示し、l、n、pは0であり、2-フェニルベンゾトリアゾール骨格のR1にヒドロキシ基、R4にメチル基を有する。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基を示し、l、n、p、r、sは1~5の整数を示す。
特に、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に少なくとも一つは炭素数3~8の分岐アルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
あるいは、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1の整数を示す。
あるいは、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは2の整数を示す。
あるいは、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の三級炭素および/または四級炭素を有する炭化水素基を示し、l、n、p、r、sは1~5の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはヒドロキシル基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはナフチル環の残基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(2)で表わされるものであり、前記式(2)において、mは0である。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(2)で表わされるものであり、前記式(2)において、R1bはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(3)で表わされるものであり、式(3)においてX1cとX2cはフェニル環の残基を示し、qは1であり、A2cはスルフィド基-S-を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(3)で表わされるものであり、前記式(3)においてX1cとX2cはフェニル環の残基を示し、qは1であり、A2cは炭素数1~8の炭化水素基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[I]の式(3)で表わされるものであり、前記式(3)においてX1cとX2cはフェニル環の残基を示し、qは0である。
【0084】
また、耐熱性紫外線吸収剤の好ましい態様をさらに示すと次のとおりである。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは0~3の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数2~8の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数4~8の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
【0085】
(紫外線吸収剤)
ベンゾトリアゾールにチオアリール環基を導入した本発明の紫外線吸収剤は、特許文献2(国際公開第2016/021664号)に記載しているが、長波長の紫外線吸収、モル吸光係数に優れ、それらを用いた部材は黄色への変色を抑制できる。さらに、本発明の紫外線吸収剤は耐光性が高く、長期間の紫外線吸収剤の劣化(分解)による透過率の変化(透過率の差)が小さく、長波長領域までの紫外線の吸収効果を継続することが可能であり、本発明の高耐光性紫外線吸収剤の好ましい態様では、下記の測定条件で、波長300~400nmの紫外線を部材に70時間照射した後、長波長領域の380、390、400nmのいずれかの波長の透過率の差は6%以下である。その中でも、より高耐光性の紫外線吸収剤は、380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差は6%以下であり、いずれも4%以下がさらに好ましく、いずれも2%以下が一層好ましい。また、耐熱性が高く、紫外線吸収剤の有機、無機材料への添加、添加された有機、無機材料を加熱加工する際や、それらの材料を高温条件下で実使用する際、熱分解による紫外線吸収の効果の低減、変色等を抑制することが可能であり、本発明の耐熱性紫外線吸収剤の好ましい態様では、120℃で48時間加熱した際に変色しないことが好ましく、160℃で6時間加熱した際に変色しないことがより好ましく、160℃で12時間加熱した際に変色しないことがさらに好ましく、特に160℃で24時間加熱した際に変色しないことが好ましい。および/または、長時間(一定時間一定温度)での加熱環境下での紫外線吸収剤の熱分解等による重量変化率は、120℃で48時間加熱後に0.03重量%未満が好ましく、160℃で6時間加熱後に0.20重量%未満がより好ましく、160℃で12時間加熱後に0.08重量%未満がさらに好ましく、160℃で24時間加熱後に0.04重量%未満が特に好ましい。
【0086】
さらに、本発明の紫外線吸収剤は、耐熱性と上述の耐光性を合わせ持つことで製造から使用時まで耐久性が高く、紫外線吸収、耐変色性に優れる。そのような本発明の耐久性紫外線吸収剤の好ましい態様では、上記の高耐光性と耐熱性の好ましい態様をいずれも満足する。
【0087】
また、本発明の紫外線吸収剤は、有機、無機材料に含有させて使用する点においても、紫外線吸収剤の耐熱性、耐光性、さらには紫外線吸収剤と有機、無機材料との親和性に優れ、有機、無機材料の紫外線吸収能の保持、耐変色性、優れた外観に寄与する。特に有機材料として樹脂を使用する場合は、ブリードアウトすることなく紫外線吸収剤が樹脂の劣化を抑制する点に優れ、無機材料としてガラスを使用する場合は、紫外線吸収剤がガラスの紫外線吸収能を保持する点において優れる。
<透過率の差(ΔTuv)の測定条件>
ソーダガラスにアクリル樹脂と紫外線吸収剤の質量比0.6~3.4:0.1、膜厚2~50μmで塗膜したサンプルを、波長300~400nm、照度42W/m2、ブラックパネル温度63℃の条件で70、140時間、紫外線を照射し、照射前(T1uv)、照射後(T2uv)の紫外-可視透過スペクトルの透過率より、下記式で算出する。
【0088】
【0089】
本発明の紫外線吸収剤の耐光性は、式(1)のX1a、式(2)のCy、式(3)のX1cとX2c、式(4)のX1dとX2dに影響され、さらに、各X1a、Cy、X1c、X2c、X1d、X2dの置換基の有無または適切な置換基R1a、R1b、R1cとR2c、R1dとR2dを選定することにより耐光性は向上する。例えば、式(1)、(3)、(4)のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはナフチル環の残基よりフェニル環の残基が好ましく、R1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、ヒドロキシ基よりも炭化水素基およびアルコキシ基が好ましく、炭化水素基の中でも、直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、高耐光性である。
さらに、式(1)において、X1aがフェニル環の残基であり、l=1~3、R1aが、少なくとも一つは炭素数3~8の分岐のアルキル基が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
【0090】
X1aがフェニル環の残基であり、l=1、R1aが直鎖または分岐のアルキル基の場合、
・アルキル基の炭素数1~18が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の炭素数1~10が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の炭素数1~8が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の炭素数2~8がより好ましく、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmの2つの波長は透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の炭素数3~8がさらに好ましく、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmの2つの波長は透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の炭素数3~5が一層好ましく、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の炭素数4~5が特に好ましく、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmの1つの波長は透過率が6.0以下、2つの波長は透過率の差が4.0以下である。
・アルキル基の炭素数4がことさら好ましく、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下である。
・R1aが三級炭素および/または四級炭素を有するアルキル基が好ましく、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下である。
【0091】
X1aがフェニル環の残基であり、l=2、R1aが直鎖または分岐のアルキル基の場合、
・アルキル基の各炭素数1~18が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の各炭素数1~10が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の各炭素数1~5が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の各炭素数1~4がより好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下である。
・アルキル基の各炭素数1がさらに好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下である。
・アルキル基の総炭素数2~12が好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の総炭素数2~10がより好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
・アルキル基の総炭素数2~5がより好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下である。
・アルキル基の総炭素数2がさらに好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下である。
【0092】
また、l=0、つまり、X1aの置換基がすべて水素原子であることが好ましく、照射時間70、140時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下である。
【0093】
一方で、式(3)において、
・q=1、A2cはスルフィド基であることがより好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下である。
・q=1、A2cは炭素数1~8であることが好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下、および照射時間140時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下である。
・q=0であることが好ましく、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下である。
【0094】
一般的に、紫外線吸収剤を、部材として、樹脂に添加する場合、低融点の化合物は、経時による紫外線吸収剤のブリードアウトが早く、一方で、例えば、熱可塑性樹脂、ガラス等の無機材料の加熱による加工、成形時にはブリードアウトまたは分解し、紫外線吸収の効果を十分発揮できない、または、ブロッキング等の要因にもなる。また、紫外線吸収剤を粉砕(微粒子化)、分散して使用する際、低融点の紫外線吸収剤は、その工程で発生する熱によって凝集し、使用が難しく、高融点の方が望ましく、さらに、耐光性を合わせ持つことで光吸収特性の保持が可能となる。これらの観点からは、本発明の高耐光性紫外線吸収剤の融点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは145℃以上、ことさら好ましくは150℃以上である。融点の観点では、式(1)のX1aはナフチル環が好ましい。X1aがフェニル環の残基の場合、R1aはヒドロキシ基が好ましく、R1aが直鎖または分岐のアルキル基の場合、l=0よりl=1が好ましい。l=1の場合、好ましくはアルキル基の炭素数は2~8、より好ましくは3~8、さらに好ましくは炭素数3~4である。式(3)においてq=1の場合、A2cは炭化水素基(好ましくは、直鎖もしくは分岐のアルキレン基)が好ましい。さらにq=0が好ましい。
【0095】
上述のように、紫外線吸収剤を有機材料、無機材料へ添加する際、紫外線吸収剤を添加した有機材料、無機材料を加熱加工する際およびそれらの材料を高温条件で使用する際に紫外線吸収剤が分解すると紫外線吸収の効果を十分に発揮できないばかりか、紫外線吸収剤の熱分解に伴う変色により紫外線吸収剤を含む材料の変色を生じる。そのため、紫外線吸収剤には耐熱性が求められ、加熱に対して熱分解による変色並びに重量減少が少ないものが望ましい。長時間(一定時間一定温度)加熱(製造、使用)環境下における、紫外線吸収剤の熱分解は、重量減少と変色を生じ、変色が小さいほど、重量変化率も少ない。
【0096】
変色の観点では、より高温でより長時間加熱下に置かれた際に変色の度合いが小さいことが望ましく、例えば、黒色より黄色が好ましく、淡黄色がより好ましく、変色しないことがさらに好ましい。
【0097】
本発明の紫外線吸収剤は、上述のように耐光性、耐熱性さらには耐久性に優れ、有機材料として樹脂に使用した場合は、その樹脂組成物の劣化を防止することができ、長期間樹脂組成物の紫外線吸収能、外観を保持することができる。
【0098】
例えば、恒温器内で一定時間一定温度での加熱環境下に静置した紫外線吸収剤の変色の指標としては、120℃で48時間、変色しないことが好ましく、より160℃で6時間、さらに160℃で12時間、特に160℃で24時間加熱した際に変色しないことが好ましい。
【0099】
重量減少率の観点では、より高温でより長時間加熱下に置かれた際に重量減少率が小さいことが望ましく、例えば、重量減少率は0.20重量%未満が好ましく、0.08重量%未満がより好ましく、0.04重量%未満がさらに好ましく、0.03重量%未満が特に好ましい。
【0100】
例えば、恒温器内で一定時間一定温度での加熱環境下に静置した紫外線吸収剤の熱分解等による重量変化率の指標としては、120℃で48時間加熱後に0.03重量%未満が好ましく、より160℃で6時間加熱後に0.20重量%未満、さらに160℃で12時間加熱後に0.08重量%未満、特に160℃で24時間加熱後に0.04重量%未満が好ましい。
【0101】
長時間(一定時間一定温度)加熱環境下における耐熱性の点では、紫外線吸収剤は、上記の変色または重量変化率の指標を満たすものが望ましく、両方の指標を組み合わせた条件を満たすものがより望ましい。
【0102】
この耐熱性の観点から、本発明の紫外線吸収剤の構造は、式(1)、(3)、(4)のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基である化合物が好ましく、式(1)、(3)、(4)のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基であり、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは0~3の整数である化合物がより好ましく、式(1)、(3)、(4)のl、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1~3の整数である化合物がさらに好ましく、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数2~8の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1~3の整数である化合物が特に好ましく、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数4~8の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1~3の整数である化合物が殊更好ましい。
【0103】
本発明の紫外線吸収剤は、上記に挙げた耐熱性の点での変色や重量減少の好ましい各水準と、上記の透過率の差が380、390、400nmにおいて、少なくともいずれかが6%以下、より好ましくは、いずれの波長も6%以下、さらに好ましくは、いずれも4%以下、一層好ましくは、いずれも2%以下とする耐光性を組み合わせた耐久性に優れたものが好適に使用できる。このような例も包含する本発明の一態様における紫外線吸収剤は、耐光性に優れ長期の使用において紫外線に暴露しても劣化せず、長期間に渡って紫外線吸収能を発揮し、さらには有機樹脂の劣化を抑制する。また、耐熱性にも優れ、本発明の高耐光性紫外線吸収剤を添加した有機材料、無機材料などを製造、加工、または粉砕(微粒子化)、分散する際、さらに加工後、実使用する際に長時間(一定時間一定温度)で高温環境に置かれたり、変色や重量減少率が少ない。このように本発明の一態様では製造から使用時において、ブリードアウトせず、紫外線吸収能を保持し、耐光性、耐熱性、耐久性に優れ、さらには、有機及び無機材料と親和性(密着性)がよく、外観に優れた部材、有機、無機材料が得られることができる紫外線吸収剤が提供される。
【0104】
(組成物)
本明細書において、組成物の用語には、固形状や流動状、ゲル状、ゾル状などその性状を問わず、本発明の紫外線吸収剤を含む組成物が包含され、部材の他、部材を製造するための原料も包含する。
【0105】
本明細書において、部材の用語には、特に限定されないが、例えば、任意の形状を持つ形状物が包含される。本発明の紫外線吸収剤を含む部材等の組成物における用途としては、例えば、後記に記載したものが含まれる。
【0106】
本発明の紫外線吸収剤を含む組成物の材料としては、有機材料、無機材料が挙げられる。本発明の紫外線吸収剤は、種々の有機材料、無機材料との親和性、相溶性、密着性が高く、本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散、塗布、コーティングさせた場合、均質な組成物、部材を得ることができ、特に透明な部材を用いた場合には透明性に優れた部材を得ることができる。
【0107】
本発明の紫外線吸収剤を含む組成物には、有機材料組成物、無機材料組成物が含まれる。この有機材料組成物、無機材料組成物の形状は、特に限定されず、例えば、コーティング膜、被覆膜、積層膜、フィルム、シート、プレート、粉体状、粒状、ペレット状、タブレット状、成形品等が挙げられる。
【0108】
本発明の紫外線吸収剤を含む有機材料組成物、無機材料組成物において、本発明の紫外線吸収剤は、ブリードアウトすることなく、長期の使用期間に渡って変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないなど耐光性だけでなく耐熱性にも優れた有機材料組成物、無機材料組成物を得ることができ、劣化を抑制する。また、有機材料、無機材料、特に有機材料と親和性がよい。
【0109】
上記の本発明の紫外線吸収剤の特性から、これを含有させた、有機材料組成物、無機材料組成物においては、黄色化を抑制しながら380~400nmまでの波長領域の有害光を効率よく吸収し、外観に優れ、紫外線吸収剤がブリードアウトせず、長期の使用期間に渡って変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないなど耐光性だけでなく耐熱性にも優れた有機材料組成物、無機材料組成物とすることができる。
【0110】
有機材料組成物は、水、溶剤、および本発明の紫外線吸収剤を除いた全ての材料の合計量に対して、有機材料を50質量%以上含有する。
無機材料組成物は、水、溶剤、および本発明の紫外線吸収剤を除いた全ての材料の合計量に対して、無機材料を50質量%以上含有する。
【0111】
本発明の紫外線吸収剤を含む組成物は、有機無機材料組成物であってもよい。ここで有機無機材料組成物は、上記有機材料組成物のうち、有機材料以外の材料として無機材料を含むもの、上記無機材料組成物のうち、無機材料以外の材料として有機材料を含むものである。
本発明の紫外線吸収剤を含む組成物は、有機材料、無機材料、部材等を最終的に形成するための原料を添加、混合したものであってもよい。また、本発明の紫外線吸収剤を含む組成物は、上記の本発明の紫外線吸収剤を含む有機材料組成物、無機材料組成物、有機無機材料組成物を水、有機溶剤等の液体に分散、溶解、混合したものであってもよい。
【0112】
有機材料としては特に限定されないが、例えば有機樹脂、動植物由来の材料、原油由来の材料、有機化合物等が挙げられる。本発明において有機樹脂組成物は、本発明の紫外線吸収剤と有機樹脂とを含む有機組成物であり、有機材料組成物に含まれる。
【0113】
有機樹脂としては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用することができ、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、それぞれ1種の繰り返し単位を有する重合体、複数の繰り返し単位を含む共重合体が含まれる。
【0114】
本明細書において、熱可塑性樹脂(重合体および共重合体)および熱硬化性樹脂(重合体および共重合体)の用語は、下記に例示したような個別の種類の当該樹脂において、当該樹脂の一般的な用語の意義における本来の繰り返し単位に加え、当該樹脂の全量に対してその他の繰り返し単位を20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下含むことを許容する。また、そのような当該樹脂と、その他の樹脂との混合物であり、その他の樹脂の含有量が混合物の全量に対して20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下であることを許容する。
【0115】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、重合体としては、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリマレイミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、共重合体としては、ブタジエン-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン系共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-アクリロニトリル系共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
熱可塑性樹脂の重合体としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0117】
(メタ)アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0118】
オレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2、3-ジメチルブタジエン)、ポリシクロヘキサジエン、ポリシクロペンタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリクロロプレン、ポリノルボルネン等が挙げられる。
【0119】
スチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン等が挙げられる。
【0120】
エステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸等が挙げられる。
【0121】
エーテル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0122】
塩化ビニル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、等が挙げられる。
【0123】
フッ素系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0124】
ビニル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルスルホン酸およびその塩等が挙げられる。
【0125】
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0126】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0127】
ポリイミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド等が挙げられる。
【0128】
ポリアミドイミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドイミド等が挙げられる。
【0129】
ポリマレイミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリマレイミド、ポリN-フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0130】
ポリビニルピロリドン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0131】
ポリウレタン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン等が挙げられる。
【0132】
ポリスルホン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリスルホン等が挙げられる。
【0133】
熱可塑性樹脂の共重合体としては、上記に挙げた重合体の原料モノマーを複数含むものが挙げられ、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0134】
ブタジエン-スチレン系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0135】
アクリロニトリル-スチレン系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0136】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0137】
スチレン-イソプレン系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン-イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0138】
スチレン-アクリル酸系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0139】
塩化ビニル-塩化ビニリデン-アクリロニトリル系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル-塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0140】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、重合体としては、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、エピスルフィド系樹脂、共重合体としては、アクリルメラミン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0141】
熱硬化性樹脂の重合体としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0142】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0143】
尿素系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、尿素樹脂等が挙げられる。
【0144】
メラミン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0145】
不飽和ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0146】
アルキド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アルキド樹脂等が挙げられる。
【0147】
エポキシ系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0148】
エピスルフィド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0149】
熱硬化性樹脂の共重合体としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0150】
アクリルメラミン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリルメラミン樹脂等が挙げられる。
【0151】
アクリルウレタン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
【0152】
本発明の紫外線吸収剤と有機樹脂との相溶性、紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物の透明性の観点からは、熱可塑性樹脂(重合体および共重合体)および熱硬化性樹脂(重合体および共重合体)を用いることが好適である。また、熱可塑性樹脂の重合体の中でも、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート)、スチレン系樹脂(ポリスチレン)が好ましく、熱可塑性樹脂の共重合体の中でも、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)が好ましい。熱硬化性樹脂の重合体の中でも、尿素系樹脂(尿素樹脂)、メラミン系樹脂(メラミン樹脂)が好ましい。熱硬化性樹脂の共重合体の中でも、アクリルメラミン系樹脂(アクリルメラミン樹脂)が好ましい。
【0153】
本発明の化合物の分散、加熱加工、ブリードアウト等による樹脂からの溶出抑制の観点から、好ましくは熱可塑性樹脂(重合体、共重合体)および熱硬化性樹脂(重合体、共重合体)を、より好ましくは熱可塑性樹脂の重合体および共重合体と熱硬化性樹脂の重合体を用いることができる。また、熱可塑性樹脂の重合体の中でも、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート)、スチレン系樹脂(ポリスチレン)が好ましく、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂の共重合体の中でも、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)が好ましい。熱硬化性樹脂の重合体の中でも、尿素系樹脂(尿素樹脂)、メラミン系樹脂(メラミン樹脂)が好ましく、尿素系樹脂がより好ましい。
【0154】
本発明の紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物の耐熱性、つまり長時間(一定時間一定温度)で加熱した際の透過率の減少の観点から、有機樹脂としては、熱可塑性樹脂(重合体、共重合体)および熱硬化性樹脂(重合体、共重合体)が好ましい。特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂の重合体の中でも、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート)、スチレン系樹脂(ポリスチレン)が好ましく、熱可塑性樹脂の共重合体の中でも、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)が好ましい。熱硬化性樹脂の重合体の中でも、尿素系樹脂(尿素樹脂)、メラミン系樹脂(メラミン樹脂)が好ましい。熱硬化性樹脂の共重合体の中でも、アクリルメラミン系樹脂(アクリルメラミン樹脂)があげられる。より好ましくは熱可塑性樹脂の重合体と熱硬化性樹脂の共重合体を用いることができる。特に熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)が使用できる。
【0155】
本発明の紫外線吸収剤の中でも、耐熱性に優れる有機樹脂組成物を得る観点から、上記の耐熱性の指標を満たす紫外線吸収剤が使用でき、式(1)、(3)、(4)のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基である化合物が好ましく、式(1)、(3)、(4)のX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基であり、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは0~3の整数である化合物がより好ましく、式(1)、(3)、(4)のl、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1~3の整数である化合物がさらに好ましく、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数2~8の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1~3の整数である化合物が特に好ましく、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数4~8の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1~3の整数である化合物が殊更好ましい。
【0156】
本発明の有機樹脂組成物は、本発明の紫外線吸収剤を除いた有機樹脂組成物全量に対して0.001質量%以上の有機樹脂を含むことが好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量以上が特に好ましい。有機樹脂組成物は、例えば、本発明の紫外線吸収剤と有機樹脂を、または紫外線吸収剤を有機樹脂に混合、分散または溶解させたものである。有機樹脂組成物には、フィラーやシランカップリング剤、プライマー等に使用される無機化合物を添加してもよい。
【0157】
無機材料としては、特に限定されないが、例えば、ゾルゲル法によるシリカ質材料、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、石英、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング剤、金属、金属酸化物、鉱物、無機化合物等が挙げられる。ガラスとしては、特に限定されないが、例えば、酸化珪素、無アルカリガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
水ガラスとしては、特に限定されないが、水溶性アルカリ金属塩の水溶液、例えば、珪酸ソーダ、珪酸カリウム等が挙げられる。低融点ガラスとしては、特に限定されないが、例えば、主成分として酸化鉛(PbO)と無水ほう酸(B2O3)とを含むガラス等が挙げられる。シリコン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メチルシリコン樹脂、メチルフェニルシリコン樹脂、およびエポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等で変性された有機樹脂変性シリコン樹脂等が挙げられる。アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルエトキシシラン等が挙げられる。金属としては、特に限定されないが、例えば、Zn、Fe、Cu、Ni、Ag、Si、Ta、Nb、Ti、Zr、Al、Ge、B、Na、Ga、Ce、V、P、Sb等が挙げられる。金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。鉱物としては、例えばスメクタイト、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト等が挙げられる。
【0158】
部材の形状
部材の形状は特に限定されず任意の形状であってよく、例えば、コーティング、接着剤、粘着剤、柔軟性または可撓性を持つフィルムあるいは剛性を持つ板状(プレート状)の部材、粉体状、粒状、ペレット状、タブレット状(錠剤状)の部材、マスターバッチ、成形品等が挙げられる。
[1]コーティング
具体的な適用例としては、樹脂、ガラス等の部材表面へのコーティングが挙げられる。
コーティング方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散した樹脂、塗料、シリカ質材料、ガラス、溶剤分散液等を部材の表面に塗布、スプレー、成膜または本発明の紫外線吸収剤を含む被膜を作製する方法が挙げられる。
[2]接着剤
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、種々の材料、部材に適用される有機系接着剤(有機樹脂、合成ゴム、澱粉、膠等)、無機系接着剤(シリカ、セラミック、セメント、ハンダ、水ガラス等)に本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散させた接着剤が挙げられる。
[3]粘着剤
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、種々の材料、部材に適用される粘着剤(有機樹脂、有機オリゴマー、ゴム系粘着剤、澱粉、膠、シリコーン系粘着剤、シランカップリング剤系粘着剤等)に本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散させた粘着剤が挙げられる。
[4]フィルム
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、柔軟性または可撓性を持つフィルム状の樹脂、ガラス、酸化ケイ素前駆体、に本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散させた部材が挙げられる。フィルムは、単層フィルムや、基材フィルムまたは基板に、各種用途に応じた1層または複数の層が設けられた多層フィルムやフィルム付き基板でもよく、複層のフィルムが設けられる場合にはその少なくとも1層に本発明の紫外線吸収剤が含有される。本発明の紫外線吸収剤を含有させたフィルム状の樹脂やガラス、ガラスを合わせたガラスの中間膜に使用することもできる。
[5]板
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、板状(プレート状)の樹脂、ガラスに本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散させた部材が挙げられる。
[6]粉体、粒、ペレット、タブレット(錠剤)
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、粉体状、粒状、ペレット状、タブレット状(錠剤状)の樹脂、ガラスに本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散させた部材が挙げられる。
[7]マスターバッチ
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、樹脂等に本発明の紫外線吸収剤、顔料等の着色料を必要に応じて混合、溶解、分散させた粒状、ペレット状等の樹脂組成物が挙げられる。他の樹脂等と溶融混合して、着色または着色を調製するために使用される。
[8]成形品
具体的な適用例としては、特に限定されないが、例えば、樹脂、ガラスに本発明の紫外線吸収剤を混合、溶解、分散させて成形した物品が挙げられる。
【0159】
添加剤
本発明の紫外線吸収剤を含む組成物および部材には各種添加剤、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定化剤、顔料、染料、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤、安定化剤、抗酸化剤、キレート剤等の添加剤、などを、その特性を悪化させない程度に含有させてもよい。
【0160】
本発明の紫外線吸収剤は高耐光性、高耐熱性、高耐久性が求められる分野で使用され、組成物および部材の種類、形状、用途等は限定されない。
【0161】
本発明の紫外線吸収剤を含有させた組成物、部材は、長期の使用期間に渡って変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないなど耐光性だけでなく耐熱性にも優れた紫外線吸収剤含有組成物とすることができ、例えば、本発明の紫外線吸収剤を含有させた透明樹脂、透明ガラス用のコーティング膜、フィルム等において、製造から使用時までの長期間、黄色化、変色、紫外線吸収能の低下、透明性の低下が生じないコーティング膜、フィルム等とすることができる。
本発明の紫外線吸収剤の用途は特に限定されないが、特に380~400さらには380~420nmの波長光、日光または紫外線を含む光に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。
【0162】
特に限定されないが、例えば、住居、施設、輸送機材、ディスプレイ等に使用される部材や物品、住居および施設、輸送機器等の内外装材、内外装用塗料および該塗料によって形成させる塗膜や接着剤や粘着剤、精密機械、電子電気機器用部材および各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用フィルムや部材、食品、化学品、薬品および香粧品等の容器または包装材、農工業用シートまたはフィルム材、印刷物、染色物および染顔料等の退色防止剤、樹脂部材または各種デバイスの保護膜、ガラス中間層、化粧品、衣料用繊維製品および繊維、カーテン、絨毯および壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具、光ピックアップレンズ、カメラ用レンズおよびレンチキュラーレンズ等の光学レンズ、光学フィルター、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、鏡、写真材料およびディスプレイ等の光学用品および光学用品の保護フィルム、光学材料、機能性の光学層を有するフィルム(各種光ディスク基板保護フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、偏光層保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角向上フィルム、電磁波シールドフィルム、防眩フィルム、遮光フィルムおよび輝度向上フィルム等)や部材や接着剤や粘着剤、光ファイバーまたは情報記録基盤等の光学成形品、太陽電池用表面保護フィルム、文房具、標示板および標示器等とその表面コーティング材、ガラス代替品またはその表面コーティング材、住居、施設または輸送機材等のガラスおよびガラスのコーティング材、採光ガラス、蛍光灯、水銀灯、ハロゲン電球およびLEDライト等の部材、光源用部材および光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設および輸送機材等のウィンドウガラス、ウインドウフィルムおよび合わせガラスの中間フィルム等にも用いることができる。
【0163】
本発明の紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤を含む有機材料、無機材料の製造、加工において、長時間(一定時間一定温度)で加熱環境に置かれても変色並びに重量減少が少ないことから好ましく使用できる。本発明の紫外線吸収剤の中でも、有機樹脂と組合せて有機樹脂組成物を製造、加工する場合の加熱による変色が少ない点から、120℃で48時間加熱した際に変色しないことが好ましく、より160℃で6時間、さらに160℃で12時間、特に160℃で24時間以上変色しないことが好ましい。および/または、紫外線吸収剤の熱分解による重量減少率の点からは、120℃で48時間加熱後に0.03重量%未満が好ましく、より160℃で6時間加熱後に0.20重量%未満、さらに160℃で12時間加熱後に0.08重量%未満、特に160℃で24時間加熱後に0.04重量%未満が好ましい。加熱環境下での変色または重量減少率が少ない紫外線吸収剤が好ましく、変色並びに重量減少率が少ない紫外線吸収剤がより好ましい。本発明の紫外線吸収剤と組み合わせる有機樹脂は、特に限定されないが、例えば、上記の熱可塑性樹脂(重合体および共重合体)および熱硬化性樹脂(重合体および共重合体)が挙げられる。有機樹脂の中でも、加熱成形、加工が広く行われている点から、熱可塑性樹脂との組み合わせが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂の重合体の中でも、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート)、スチレン系樹脂(ポリスチレン)が好ましく使用でき、熱可塑性樹脂の共重合体の中でも、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)が好ましく使用できる。
【0164】
本発明の紫外線吸収剤と組み合わせることによって、380~400nmまでの波長光を十分に効率よく吸収し、黄色化が抑制され、有機樹脂組成物が得られる。また、本発明の紫外線吸収剤の耐光性、耐熱性、耐久性、さらには有機樹脂との相溶性、親和性から、本発明の紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物は、外観に優れ製造、加工時の加熱、高温および/または紫外線暴露環境下での使用において、変色せず、透明性を保持し、黄色化を抑制し、紫外線吸収剤のブリードアウトを生じない。
【0165】
(250~420nmまでの有害光の吸収と初期の黄色化の抑制)
本発明の紫外線吸収剤は、その光学的特性から、250~400nmまでの波長領域の光を十分吸収することができ、さらに添加量によっては400~420nmの波長を吸収することもできる。しかも、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高く、少量の添加で、250~400nmまでの波長光を十分吸収でき、吸収ピークの傾きが従来の紫外線吸収剤よりも大きいことから、樹脂部材の黄色化を抑制することができる。
【0166】
また、人体への悪影響、例えば眼組織の障害の引き金となる可能性がある~400(420)nmまでの波長領域の有害光を吸収し、部材の黄色化の要因となる400(420)nm以上の波長光の吸収を抑制し、黄色化を抑え外観に優れた樹脂部材を得るためには、50~100μMクロロホルム溶液における光の吸収ピークが350~390nmにあることが好ましく、360~380nmにあることがより好ましく、特に360~375nmにあることが好ましい。また、それらの波長領域にある吸収ピークは、最大吸収波長(λmax)であることが好ましい。さらに、その波長ピークは、400nmよりも長波長の光の吸収を抑制し、黄色化を抑制するために、長波長側の吸収スペクトルはシャープな方が(傾きの絶対値が大きい方が)良く、式(1)、(2)の化合物は100μMクロロホルム溶液、式(3)、(4)の化合物は50μMクロロホルム溶液における吸収ピークの長波長側の傾き(吸収ピークと長波長側の吸収スペクトルのピークエンドを結んだ直線の傾きの絶対値)が0.025以上であることが好ましく、0.030以上がより好ましく、0.040以上がさらに好ましく、0.042以上が一層好ましい。また、少量で効率よく吸収するためには、上記の350~390nmの吸収ピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:ελmax)は、17000L/(mol・cm)以上が好ましく、18000L/(mol・cm)以上がより好ましく、20000L/(mol・cm)以上がさらに好ましく、40000L/(mol・cm)以上が一層好ましい。
【0167】
これらの紫外線吸収剤を用いることで有機材料組成物(有機樹脂組成物)、無機材料組成物も黄色抑制され、良好な透明性の外観が得られる。
【0168】
(ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤)
以下、上記[IV]の紫外線吸収剤について説明する。
上記[IV]の紫外線吸収剤は、ガラス用の紫外線遮蔽膜または紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤であって、上記式(1)~(6)のいずれかで表わされるチオアリール環基、チオシクロヘキシル環基、チオアルキル基、またはチオアルキレン基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体からなる。
【0169】
上記[IV]において、式(1)、(2)、(3)、(4)のX1a、Cy、X1c、X2c、X1d、X2dに有していてもよいR1a、R1b、R1c、R2c、R1d、R2d以外の置換基としては、上記式(A)のR1~R9の置換基として記載したものが挙げられる。
【0170】
上記[IV]の紫外線吸収剤は、380~400nmまでの波長領域の有害光を効率よく吸収し、かつ初期の黄色化の要因となる400nm以上の波長光の吸収を抑制することで有害光の影響が少なく外観に優れた部材を得ることができ、さらに耐光性または耐熱性に優れ、あるいは耐光性および耐熱性、すなわち耐久性に優れている。特に、黄色系への顕著な着色を抑制しながら波長400nm近傍の光の透過率を長期に亘って低下させることに適した紫外線遮蔽膜を形成したガラス、更に高い可視光透過率を有するガラスに適した紫外線遮蔽膜、また、紫外線吸収剤遮蔽膜用組成物および分散液を提供することを可能になる。さらに上記[IV]の紫外線吸収剤は耐熱性に優れ、ガラスの紫外線遮蔽膜形成時及びその後の2次加工時等の加熱工程下、さらには使用環境下において、熱分解による紫外線遮蔽効果の低下を防ぐことが可能になる。耐熱性の観点から、本発明の紫外線吸収剤の好ましい構造としては、式(1)、(3)、(4)は
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは0~3の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数2~8の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
・2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記[II]の式(1)、(3)、(4)で表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数4~8の直鎖または分岐のアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1~3の整数を示す。
【0171】
本発明の紫外線吸収剤は紫外線遮蔽膜に適しており、上記のように380~400nmまでの波長領域の有害光を効率よく吸収し、かつ初期の黄色化の要因となる400nm以上の波長光の吸収を抑制する光学特性、ガラスに対する親和性が良いことから、本発明の紫外線吸収剤を含む紫外線遮蔽膜はガラスと密着性が良く、そのガラスは透明性が高く、黄色化が抑制され、紫外線遮蔽効果を長時間維持できる。
【0172】
例えば、本発明の紫外線吸収剤は、下記のようなガラス組成、用途に用いることができる。
【0173】
ガラス表面に存在する水酸基と本発明の紫外線吸収剤のチオエーテル基が水素結合を介して親和性があり、上記[IV]の紫外線吸収剤は、ガラスとの親和性に優れることから、紫外線遮蔽膜はガラスと密着性に優れ、透明性に優れた紫外線遮蔽膜を含むガラスを得ることができる。
【0174】
ガラスが高屈折率を必要とする用途に用いる場合、本発明の紫外線吸収剤は、その構造的特徴から屈折率が高く、紫外線吸収剤を用いた紫外線遮蔽膜を含むガラスは、その屈折率を保持することも可能である。
【0175】
紫外線遮蔽膜としては、特に限定されず、ガラス片側表面、ガラス両表面、合わせガラスの中間膜、ガラス表面および合わせガラス中間膜の積層膜の一部であっても良い。紫外線遮蔽膜の形成に適した組成物に使用される材料は、特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機材料が挙げられる。紫外線遮蔽膜の形状は特に限定されず、コーティング膜、被覆膜、積層膜、フィルム、シート、プレート、成形品等が挙げられ(好ましくは、コーティング膜、フィルムが挙げれらる)、これらが粘着層、接着層を有していてもよく、粘着性、接着性を有したものであってもよい。紫外線遮蔽膜の材質は特に限定されず、樹脂、紙、繊維、ガラス、金属、鉱物等が挙げられる。樹脂、ガラスの場合、結晶、非晶質、液晶であってもよく、ガラスの紫外線遮蔽膜に適している。
上記[IV]の紫外線吸収剤は、次の紫外線吸収剤a、bを包含する。
【0176】
<紫外線吸収剤a>
次の(1)、(2)のいずれかの紫外線吸収剤:
(1)ガラスをはじめとする無機材料組成物用の紫外線遮蔽膜に使用される紫外線吸収剤であって、前記紫外線遮蔽膜の原料は、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素を含むガラスの原料となるゾルゲル法によるシリカ質材料、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、石英、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング剤等であり、前記紫外線遮蔽膜である、上記[IV]の紫外線吸収剤
前記紫外線遮蔽膜の一例としては、紫外線遮蔽膜が、ガラスの表面に形成されたコーティング膜であり、前記コーティング膜が、主成分である酸化ケイ素と、上記[IV]の紫外線吸収剤を含み、前記コーティング膜がガラス質であるものが挙げられる。
(2)ガラス用の紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤であって、前記紫外線遮蔽膜形成用組成物は、上記の紫外線遮蔽膜の材質に使用される原料、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素を含むガラスの原料となる酸化ケイ素前駆体、アルコキシシラン、シランカップリング剤等と、上記[IV]の紫外線吸収剤とを含む紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤
前記紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤の形態は、特に限定されず、溶媒に溶解させて添加して使用することができ、粉体、粒状、微粒子状の紫外線吸収剤を分散して使用することもできる。
【0177】
コーティング膜、フィルムが酸化ケイ素を主成分とするガラス質であり、紫外線吸収剤を分散させて用いる場合、透明性、紫外線遮蔽効果の点から、紫外線吸収剤の微粒子の平均粒径としては150nm以下が好ましく、10~150nmがより好ましく、50~140nmがさらに好ましく、70~140nmが特に好ましい。微粒子の平均粒径が、大きすぎると膜の透明性を低下させるおそれがあり、小さすぎると紫外線吸収能が劣化したり、その持続性が低下したりおそれがある。
【0178】
前記紫外線遮蔽膜形成用組成物の一例としては、酸化ケイ素前駆体と、上記[IV]の紫外線吸収剤とを含み、上記[IV]の紫外線吸収剤が、平均粒径が150nm以下の微粒子の形態を有するものが挙げられる。
【0179】
<紫外線吸収剤b>
(1)ガラス用の紫外線遮蔽膜に使用される紫外線吸収剤であって、上記[IV]の紫外線吸収剤を含む有機材料組成物から形成された前記紫外線遮蔽膜に用いられる、紫外線吸収剤
(2)ガラス用の紫外線遮蔽膜形成用組成物に使用される紫外線吸収剤であって、上記[IV]の紫外線吸収剤を含む有機材料組成物に用いられる、紫外線吸収剤
【0180】
本発明の紫外線吸収剤、有機材料組成物は、耐熱性が高く、80℃以上、さらには120℃以上、特に160℃以上の熱成形温度、熱硬化温度を持つ樹脂に(樹脂を)、または、それらの温度で製造、使用するのに好ましく用いることができる。
【0181】
上記紫外線吸収剤a、bにおける(2)組成物において、任意成分として、特に限定されないが、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定化剤、顔料、染料、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤、安定化剤、抗酸化剤、キレート剤等の添加剤、水、有機溶媒等の溶媒を含んでいてもよい。
【0182】
ここで有機材料組成物は、上記において記述した組成物である。有機材料組成物は、上記[IV]の紫外線吸収剤と有機樹脂とを含む有機樹脂組成物が好ましい。
【0183】
上記[IV]の紫外線吸収剤のうち、式(1)、(3)、(4)においては、上記[I]~[III]の記載が参照される。式(2)においては、上記[I]の記載が参照される。
【0184】
式(3)において、チオアルキレン基を有する場合、A1cは、フェニル環残基、ナフチル環残基、または芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。アルキレン基は、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,1-ジメチル-メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、1-メチルエタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、エイコサン-1,20-ジイル基、ヘンエイコサン-1,21-ジイル基、ドコサン-1,22-ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0185】
アルキレン基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、または炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。
【0186】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記において式(A)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール骨格のR1~R9の置換基として記載した1価もしくは2価の基と同様のものが挙げられ、その記載が参照される。
【0187】
式(5)において、チオアルキル基(-S-Y1e)におけるY1eは、芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキル基を示す。これらのアルキル基は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、1,1,3,3-テトラメチルブタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、エイコサン-1,20-ジイル基、ヘンエイコサン-1,21-ジイル基、ドコサン-1,22-ジイル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基、ベンジル基が好ましく、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基、ベンジル基がより好ましい。
【0188】
また式(6)において、チオアルキル基(-S-Y1f、-S-Y2f)におけるY1fとY2fはそれぞれ独立に、芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、およびハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキル基を示す。これらのアルキル基は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、1,1,3,3-テトラメチルブタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、エイコサン-1,20-ジイル基、ヘンエイコサン-1,21-ジイル基、ドコサン-1,22-ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。その中でも炭素数1~18が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。
【0189】
アルキル基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、または炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。
【0190】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記において式(A)で表される2-フェニルベンゾトリアゾール骨格のR1~R9の置換基として記載した1価もしくは2価の基と同様のものが挙げられ、その記載が参照される。
【0191】
上記[IV]における式h(1)~(6)のR6、R7、R8、R9の組み合わせは上記ア-1~7、式(1)~(6)のR1、R2、R3、R4、R5の組み合わせは上記イ-1~28、式(2)のm個のR1bの組み合わせは上記エ-1~15、式(3)における、それぞれn個のR1c及びX1c、p個のR2c及びX2c、q個のA2cの組み合わせは上記オ-1~17が好ましく参照される。
【0192】
さらに上記[IV]における式(1)、(4)における、それぞれl個のR1aおよびX1a、r個のR1dおよびX1d、s個のR2dおよびX2dの組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。
ウ´-1 X1a、X1d、X2dはフェニル環の残基である。
ウ´-2 ウ´-1において、l、r、s=0で、X1a、X1d、X2dに置換基R1a、R1d、R2dはなく、X1a、X1d、X2dにおけるR1a、R1d、R2dに置換し得る部分はすべて水素原子である。
ウ´-3 ウ´-1において、l、r、s個のR1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基であり、炭化水素基は、好ましくは炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、r、s=1~5である。
ウ´-4 ウ´-3において、l、r、s=1~3である。
ウ´-5 ウ´-4において、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に少なくとも一つは炭素数3~8の分岐アルキル基である。
ウ´-6 ウ´-4において、l、r、s=1で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
ウ´-7 ウ´-6において、l、r、s=1で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数2~8、さらに好ましくは炭素数3~8である。
ウ´-8 ウ´-3~7のいずれかにおいて、PhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対して、それぞれR1a、R1d、R2dの少なくとも一つはパラ位に有する。
ウ´-9 ウ´-4において、l、r、s=2で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10)の直鎖または分岐のアルキル基である。
ウ´-10 ウ´-9において、l、r、s=2で、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、当該アルキル基の各炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは炭素数1であり、および/またはアルキル基の総炭素数は、好ましくは2~12、より好ましくは2~10、さらに好ましくは2~5、特に好ましくは2である。
ウ´-11 ウ´-9、10のいずれかにおいて、PhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対してl、r、s=2のそれぞれのR1a、R1d、R2dはオルト、パラ位もしくはオルト、メタ位に有する。
ウ´-12 ウ´-3からウ´-11のいずれかにおいて、R1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に三級炭素および/または四級炭素を有する炭化水素基であり、好ましくはアルキル基である。
ウ´-13 ウ´-1において、l、r、s個のR1a、R1d、R2dは、それぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基であり、好ましくは炭素数1~8の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~4の直鎖のアルキル基を持つアルコキシ基である。また、好ましくはl、r、s=1~3、より好ましくはl、r、s=1~2、特に好ましくはl、r、s=1である。
ウ´-14 ウ´-13において、l、r、s=1であり、アルコキシ基はPhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対してメタ位に有する。
ウ´-15 ウ´-1において、l、r、s個のR1a、R1d、R2dはヒドロキシ基であり、好ましくはl、r、s=1~3、より好ましくはl、r、s=1~2、特に好ましくはl、r、s=1である。
ウ´-16 ウ´-15において、l、r、s=1であり、ヒドロキシ基はPhBzT1a-S-、PhBzT1d-S-、PhBzT2d-S-に対してパラ位に有する。
ウ´-17 X1a、X1d、X2dはナフチル環の残基であり、好ましくはl、r、s=0である。
【0193】
上記[IV]の紫外線吸収剤の好ましい態様をさらに示すと次のとおりである。
カ-1 上記[IV]の紫外線吸収剤
カ-2 カ-1において、2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、m、n、p、r、s個のR1a、R1b、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、m、n、p、r、sは0~5の整数を示す。
カ-3 カ-1、2において、前記2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、チオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基はベンゾトリアゾール骨格のフェニル部位に結合する。
カ-4 カ-2、3において、前記2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に少なくとも一つは炭素数3~8の直鎖または分岐のアルキル基であり、l、n、p、r、sは1または2の整数を示す。
カ-5 カ-2~4において、前記2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に少なくとも一つは三級炭素および/または四級炭素を有するアルキル基を示し、l、n、p、r、sは1または2の整数を示す。
カ-6 カ-1において、前記2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)においてX1a、X1c、X2c、X1d、X2dはフェニル環の残基を示し、l、n、p、r、s個のR1a、R1c、R2c、R1d、R2dはそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子であり、l、n、p、r、sは1または2の整数を示す。
カ-7 カ-2~6において、前記2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)において2-フェニルベンゾトリアゾール骨格にヒドロキシ基、メチル基を有する。
カ-8 カ-7において、前記2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(1)、(3)、(4)のいずれかで表わされるものであり、前記式(1)、(3)、(4)において2-フェニルベンゾトリアゾール骨格ののうちベンゾトリアゾール骨格におけるフェニル部位にチオアリール環基を有し、かつ2位のフェニル骨格Phにヒドロキシ基、t-ブチル基、メチル基を有する。
カ-9 カ-1において、2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体は、前記式(6)で表わされるものであり、前記式(6)においてY1fとY2fはそれぞれ独立に炭素数1~18の炭化水素基、炭素数1~18のアルコキシ基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1~22の直鎖または分岐のアルキル基を示す。
【0194】
<紫外線吸収剤a>
以下、上記[IV]の紫外線吸収剤のうち、上記紫外線吸収剤aについて、ガラス質コーティング膜付き輸送機材(車両を含む)用ガラスに用いる例を挙げて説明する。
【0195】
この紫外線吸収剤aが使用されるガラスは、ガラスと、その表面に形成された紫外線遮蔽膜とを備えている。紫外線遮蔽膜は酸化ケイ素と紫外線吸収剤aとを含む。紫外線遮蔽膜は酸化ケイ素を主成分とすることが好ましい。
【0196】
また、紫外線遮蔽膜の膜質は任意であるが、ガラス質であることが好ましい。本明細書で膜がガラス質であるとは、膜のマトリクス成分がガラス質であることをいい、膜が有機化合物A、後述する有機化合物BおよびITO微粒子などの結晶質成分を含む場合も、膜がガラス質であるとする。本明細書において「主成分」は質量基準で50%以上、好ましくは60%以上を占める成分を意味する用語である。酸化ケイ素は膜に耐久性と実用上必要な硬さとを付与する成分である。紫外線吸収剤aは紫外線遮蔽成分として機能する。
【0197】
紫外線遮蔽膜は、酸化ケイ素および紫外線吸収剤a以外の成分を含んでいてもよい。膜の任意成分としては、特に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤aに該当しない紫外線遮蔽成分である後述の有機化合物B、および親水性有機化合物である有機化合物Cが挙げられる。有機化合物Cはポリマーであってもよい。紫外線遮蔽膜は、シランカップリング剤に由来する構造単位等のその他成分をさらに含んでいてもよい。シランカップリング剤に由来する構造単位は、シランカップリング剤が他の有機物および/または無機物と反応して生成したシランカップリング剤誘導体である。
【0198】
紫外線吸収剤aの添加するサイズ、形態は限定されないが、紫外線遮蔽膜を含むガラスの光の透過性を高めるためには、微粒子として添加される。微粒子としての添加は、溶質として添加した場合と比較して紫外線遮蔽効果の持続性を向上させる。膜のヘイズ率を抑制するために、微粒子の平均粒径は150μm以下に調整される。紫外線吸収剤aとしては、常温で固体である有機化合物が適している。本明細書において「常温」は25℃を意味する用語である。
【0199】
なお、常温で固体である紫外線遮蔽成分としては、紫外線吸収剤を重合させて得たポリマーも知られている。しかし、このような紫外線遮蔽成分は、(メタ)アクリル基などの重合性官能基を導入した紫外線吸収剤を重合して製造されるため、単位質量あたりで比較すると紫外線遮蔽効果が低分子量の紫外線吸収剤に劣る。
【0200】
有機化合物Aの分子量は、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2000以下がさらに好ましく、1500以下が特に好ましく、場合によっては1300以下、さらに1200以下、特に900以下、とりわけ800以下であってもよい。有機化合物Aの分子量は、200以上が好ましく、300以上がより好ましい。有機化合物Aは、分子中に、重合可能な炭素-炭素二重結合を含まないことが好ましい。重合可能な炭素-炭素二重結合としては、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基等の重合性官能基に含まれる二重結合が挙げられる。
【0201】
上記例においては、紫外線吸収剤aは、紫外線遮蔽膜形成用組成物および紫外線遮蔽膜中において、結晶状態を保持していることが好ましい。紫外線吸収剤aが結晶状態を保持していることはX線回折により確認できる。紫外線吸収剤aは、所定の平均粒径となるように公知の乾式または湿式の粉砕装置を用いて砕いてから紫外線遮蔽膜形成用組成物に配合するとよい。紫外線吸収剤aが粉砕されて所定の平均粒径に到達する時間は、粉砕装置の種類、投入量、さらには回転数等の粉砕条件に依存する。このため、量産に際しては、予め、粉砕装置による粉砕を適宜中断してサンプリングした粉砕物の平均粒径を確認することを繰り返しながら、所定の平均粒径が得られるまでの時間を定めておくとよい。なお、粉砕に際しては、粉砕するべき紫外線吸収剤aに、界面活性剤、水溶性樹脂等を適宜添加してもよい。紫外線吸収剤aは、平均粒径が150nm以下、好ましくは10~150nm、より好ましくは50~140nm、特に好ましくは70~140nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜の透明性を低下させるが、小さすぎると紫外線吸収能が劣化したり、その持続性が低下したりおそれがある。なお、上記「平均粒径」は、後述する実施例の欄における測定値も含め、光子相関法の一種である動的光散乱法による測定値に基づく数値であり、具体的には、球相当径の体積基準による分布において累積頻度が50%となる粒子径である。「平均粒径」は、例えば、日機装社製「マイクロトラック超微粒子粒度分布計9340-UPA150」を用いて測定することができる。膜中に分散した紫外線吸収剤aの微粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察すれば、その存在を確認できる。SEMまたはTEMを用いて観察した膜断面に存在する各微粒子の最大長さの上位10%の平均値Aは、上述の定義による「平均粒径」の値を下回ることはない。したがって、上記平均値Aが150nm以下であれば「平均粒径」を150nm以下とみなすことができる。また、上記膜断面に存在する各微粒子の最大長さを規定する方向と直交する方向についての長さの下位10%の平均値Bは、上述の定義による「平均粒径」の値を上回ることはない。したがって、例えば上記平均値Bが50nm以上であれば「平均粒径」を50nm以上とみなしてもよい。紫外線吸収剤aは、これを溶かしうる有機溶媒に溶解させた溶質として膜に導入することもできる。溶質としての導入は、より容易に実施できる方法であり、紫外線遮蔽膜における紫外線吸収剤aのより均一な分布を実現するためには望ましい方法でもある。しかし、紫外線吸収剤aを微粒子として膜に導入することにより、膜の紫外線遮蔽能の持続性は向上する。さらに、紫外線吸収剤aを微粒子として添加することにより、溶質としての添加よりも好ましい分光吸収特性が得られる。微粒子として添加することにより、分光吸光度曲線における有機化合物Aによる吸収ピークが溶質として添加したときよりも長波長側にシフトすることがある。このシフトにより、波長400nm近傍の光をより効果的に遮蔽することが可能になる。しかし一方で、吸収ピークの長波長側へのシフトによって、紫外線遮蔽膜の黄色系への着色はより強くなるが、それらを配慮することによって有機化合物Aは、紫外線遮蔽膜の黄色系への強い着色を抑制しながら波長400nm近傍の光の透過率を十分に低下させることに適している。紫外線遮蔽膜形成用組成物は、酸化ケイ素前駆体と紫外線吸収剤aとを含む膜形成溶液でありうる。膜形成溶液を構成する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒等が挙げられるが、上記例のように紫外線吸収剤を微粒子で分散する点においては、水および低級アルコールが適しており、水が最も適している。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等炭素数1~3のアルコールが好適である。紫外線遮蔽膜形成用組成物は、有機化合物B、シランカップリング剤等の紫外線遮蔽膜に配合してもよい成分を含んでいてもよい。紫外線遮蔽膜形成用組成物は、必要に応じ、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定化剤、顔料、染料、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤、安定化剤等の添加剤を含んでいてもよい。酸化ケイ素前駆体は、紫外線遮蔽膜に酸化ケイ素を供給できる限り、その種類に制限はない。後述するゾルゲル法により紫外線遮蔽膜を成膜する場合、好ましい酸化ケイ素前駆体は、加水分解性官能基を有するケイ素化合物であり、典型的にはシリコンテトラアルコキシドである。なお、シランカップリング剤に含まれるケイ素原子からも酸化ケイ素が供給される。したがって、シランカップリング剤も酸化ケイ素前駆体として機能する。紫外線遮蔽膜中の酸化ケイ素は、膜全体の40質量%以上、50質量%以上(この場合は酸化ケイ素が膜の主成分となる)、場合によっては70質量%以上、を占めていてもよい。紫外線遮蔽膜は、好ましくは、酸化ケイ素を主成分とし、Si-O結合のネットワーク中に有機化合物Aの微粒子やその他の成分が分散している形態を有する。このような形態を有する膜は、窓ガラス等としての屋外での使用に適している。紫外線遮蔽膜形成用組成物は、その組成物から形成される紫外線遮蔽膜の酸化ケイ素の含有率が上記程度になるように酸化ケイ素前駆体を含んでいることが好ましい。紫外線吸収剤aは、紫外線遮蔽膜中の酸化ケイ素に対し、質量%により表示して、0.01~90%、さらには0.1~80%、一層1~80%、特に5~60%、殊更5~50%、とりわけ7~30%の範囲で含まれていることが好ましい。これを考慮すると、紫外線吸収剤aは、膜形成溶液の液量に対しては、同じく質量%により表示するが、特に限定されないが、例えば、0.5~25%、より好ましくは0.5~15%となるように添加することが好ましい。有機化合物Bは、紫外線吸収剤aに該当しない紫外線遮蔽成分である。有機化合物Bとしては、特に限定はされないが、例えば、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン、ベンゾエート骨格を含む紫外線吸収剤である。特に限定されないが、例えば、2-フェニル-ベンゾトリアゾール骨格を含み、2-フェニル-ベンゾトリアゾール骨格に硫黄原子含有基が接続されていない分子構造を有する有機化合物や、ベンゾフェノン化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤aと同様、有機化合物Bは、紫外線遮蔽膜形成用組成物及び紫外線遮蔽膜中において、結晶状態を保持していることが好ましい。有機化合物Bは、所定の平均粒径となるように公知の乾式または湿式の粉砕装置を用いて砕いてから紫外線遮蔽膜形成用組成物に配合するとよい。有機化合物Bの好ましい平均粒径は、紫外線吸収剤aについて上述したとおりである。有機化合物Bは、紫外線吸収剤aとの合計量が、紫外線遮蔽膜中の酸化ケイ素に対して紫外線吸収剤aについて上述した比率となるように配合することが好ましい。有機化合物Bは、質量基準で紫外線吸収剤a未満、好ましくは紫外線吸収剤aの50%未満となるように添加するとよい。
【0202】
有機化合物Bは、2以上の2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を有していてもよい。2以上の2-フェニルベンゾトリアゾール骨格は、アルキレン基により接続されていることが好ましい。2つの2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を有する有機化合物Bの好ましい一例は、上記式(A)においてそれぞれの骨格のR2に結合したメチレン基により互いに結合した形態を有する。この形態では、それぞれの骨格のR1がヒドロキシ基であり、R4がtert-ブチル基であり、R3およびR5が水素原子であってもよい。例えば2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル) -4-tert-オクチルフェノール]等が挙げられる。
【0203】
有機化合物Bの別の例は、ベンゾフェノン化合物である。例えば2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5'-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0204】
有機化合物Cは、親水性有機化合物であり、ポリマーであってもよい。有機化合物Cは、紫外線吸収剤aや有機化合物Bのうちベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽成分の紫外線遮蔽膜中における分散性の向上に寄与し、ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽成分による光線遮蔽能を高め、さらにはこの成分の劣化を抑制する成分である。紫外線遮蔽膜をゾルゲル法等の液相成膜により比較的厚く(例えば300nmを超える厚さ、さらには500nm以上の厚さ)形成する際には、膜形成溶液に含まれる液体成分の蒸発に伴ってクラックが発生することがある。有機化合物Cは、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする成分でもある。有機化合物Cは、好ましくはポリエーテル化合物、ポリオール化合物、ポリビニルピロリドン類およびポリビニルカプロラクタム類から選ばれる少なくとも1つに該当する。ポリエーテル化合物は2以上のエーテル結合を含む化合物である。ポリオール化合物は2以上のヒドロキシ基を含む化合物である。ポリビニルピロリドン類は、ビニルピロリドンおよびその誘導体を単量体として含む重合体である。ポリビニルカプロラクタム類は、ビニルカプロラクタムおよびその誘導体を単量体として含む重合体である。有機化合物Cの例には、ポリエーテル型の界面活性剤、ポリエポキシ化合物のエポキシ基が反応して生成するポリオール化合物が含まれる。有機化合物Cはポリマーであってもよい。有機化合物Cの例には、ポリカプロラクトンポリオール、ビスフェノールAポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールも含まれる。有機化合物Cは、膜中の酸化ケイ素に対し、質量%で表示して、0~75%、さらには0.05~50%、特に0.1~40%、とりわけ1~30%、場合によっては10%以下、必要に応じて7%以下となるように、膜に添加することが好ましい。シランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、LSiM3で示される有機化合物が好ましい。ここで、Lは、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1つであり、Mは、ハロゲン元素またはアルコキシ基である。シランカップリング剤は、L基が紫外線遮蔽膜中の有機物と反応し、X基が加水分解して膜中の無機物とそれぞれ反応する。この反応を通じて、シランカップリング剤は、有機化合物Aまたは有機化合物AおよびBである紫外線遮蔽成分の膜中における分散性の向上に寄与し、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする効果を奏する。シランカップリング剤は、シランカップリング剤から供給される酸化ケイ素が紫外線遮蔽膜中の全酸化ケイ素に対し、モル%で表示して、0~30%、好ましくは0.1~20%、より好ましくは1~10%となるように、膜に添加することが好ましい。なお、シランカップリング剤から供給される酸化ケイ素は、紫外線遮蔽膜中のシランカップリング剤に由来する構造単位のケイ素原子に結合する酸素原子の数に応じて算出する。例えば、上述のLSiM3で示されるシランカップリング剤から供給される酸化ケイ素は、ケイ素原子が3つの酸素原子に結合しているため、SiO1.5と表示される。紫外線遮蔽膜が含んでいてもよいその他の成分としては、インジウム錫酸化物(ITO)微粒子が挙げられる。ITO微粒子は近赤外線の吸収に好ましい成分である。ITO微粒子は、平均粒径が200nm以下、好ましくは5~150nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。紫外線吸収剤aの微粒子と同様、粒径が大きすぎると膜の透明性を低下させ、小さすぎると添加による効果が十分得られない。ITO微粒子も予め分散液を調製しておいて、これを膜の形成溶液に添加するとよい。紫外線遮蔽膜は、酸化ケイ素、ITO微粒子以外の無機成分を含んでいてもよい。このような無機成分としては、ゾルゲル法で用いた酸触媒に由来する成分が挙げられる。紫外線遮蔽膜中の酸化ケイ素は、膜全体の30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上(この場合は酸化ケイ素が膜の主成分となる)、場合によっては70質量%以上、を占めるようにするとよい。紫外線遮蔽膜は、好ましくは、酸化ケイ素を主成分とし、Si-O結合のネットワーク中に紫外線吸収剤aの微粒子やその他の成分が分散している形態を有する。このような形態を有する膜を含むガラスとしては、特に限定されず、建築物及び輸送機材、具体的には自動車や鉄道車両など車両、船舶、航空機などのガラス、採光ガラス、蛍光灯、水銀灯、ハロゲン電球およびLEDライト等に用いられるガラス等が挙げられ、窓ガラスなどとしての屋外での使用に特に適している。
【0205】
以下、上記例の紫外線遮蔽膜をゾルゲル法により成膜する場合の好ましい方法について説明する。ゾルゲル法に用いる有機溶媒は、シリコンアルコキシドや水との相溶性が高い溶媒が好ましく、炭素数が1~3の低級アルコールが適している。酸化ケイ素前駆体であるシリコンアルコキシドの例には、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド(TEOS)およびシリコンテトライソプロポキシド等のシリコンテトラアルコキシドが含まれる。シリコンアルコキシドの加水分解物を酸化ケイ素前駆体として用いてもよい。ゾルゲル法による形成溶液におけるシリコンアルコキシドの濃度は、シリコンアルコキシドを酸化ケイ素換算したときの酸化ケイ素濃度により表示して、3~15質量%、特に3~13質量%が好ましい。この濃度が高すぎると、膜にクラックが発生することがある。水は、シリコンアルコキシドに対し、モル比により表示して、4倍以上、具体的には4~40倍、好ましくは4~35倍が好適である。加水分解触媒としては、酸触媒、特に塩酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の強酸を用いることが好ましい。酸触媒に由来する有機物は膜硬度を低下させることがあるため、酸触媒としては無機酸が好ましい。塩酸は、揮発性が高く、膜に残存しにくいため、最も好ましい酸触媒である。酸触媒の濃度は、酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001~2mol/kgの範囲とすることが好ましい。上記程度に水を過剰に加え、上記程度の濃度となるように酸触媒を加えると、ゾルゲル法により、有機物の分解を防ぐことができる温度域で比較的厚い膜を容易に形成できる。上記に挙げた成分を含むゾルゲル法を適用できる溶液を、紫外線吸収剤a等の微粒子を分散させた分散液と混合し、さらに必要に応じて有機化合物C等を添加すれば、紫外線遮蔽膜の膜形成溶液を準備できる。ただし、膜形成溶液の調製方法がこれに限られるわけではなく、微粒子の分散液にゾルゲル法による成膜に必要な成分を順次添加してもよい。膜形成溶液は、紫外線吸収剤a等の微粒子と共に、ゾルゲル法以外の方法により膜を形成するために必要な成分、例えばポリシラザン、を含むように調製しても構わない。膜形成溶液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。膜形成溶液の乾燥工程は、塗布環境下における風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むように実施することが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に形成溶液の塗布膜を曝すことにより、実施するとよい。加熱乾燥工程では、加水分解により生成したシラノール基の縮重合反応が進行するとともに、膜に残存する液体成分の除去、特に水の除去、が進行し、酸化ケイ素のマトリックス(Si-O結合のネットワーク)が発達する。加熱乾燥工程では、300℃以下、例えば100~200℃の雰囲気に、塗布膜を曝すことにより、実施するとよい。加熱乾燥工程では特に300℃以下、例えば100~200℃、場合によっては50~100℃の雰囲気に塗布膜を曝して加熱することにより、実施するとよい。加熱乾燥工程における加熱温度は、微粒子として添加する紫外線吸収剤aおよび有機化合物B、特に微粒子として添加する紫外線吸収剤aの融点以下とすることが好ましい。加熱乾燥工程で膜を加熱する加熱温度は、微粒子として添加する紫外線吸収剤aの融点よりも低い範囲から選択することが好ましい。微粒子として有機化合物Bを添加する場合、加熱温度は、紫外線吸収剤aの融点および有機化合物Bの融点よりも低い範囲から選択することが好ましい。この場合、紫外線吸収剤aの融点および有機化合物Bの融点は、65℃以上、特に100℃以上、例えば120~240℃であることが好ましく、140~240℃であってもよい。
【0206】
以上説明した一連の工程、すなわち、a)紫外線吸収剤aの微粒子その他を含む紫外線遮蔽膜の膜形成溶液の調製工程、b)膜形成溶液のガラス上への塗布工程、c)膜形成溶液の乾燥工程を順次実施することにより、液相成膜法により、ガラスを得ることができる。この製造方法は、シリコンアルコキシド等のシリコン含有化合物を溶質として含み、常温で固体であると共に平均分子量が5000以下である有機化合物Aを平均粒径150nm以下の微粒子として含む紫外線遮蔽膜の膜形成溶液を調製する工程と、この膜形成溶液をガラス上に塗布する工程と、このガラス上において上記膜形成溶液を乾燥させて紫外線遮蔽膜を形成する工程と、を含む、紫外線遮蔽膜を有するガラス物品の製造方法である。この製造方法は本発明の別の一側面を構成する。紫外線遮蔽膜の膜厚は、300nmを超え15μm以下、さらには500nm以上10μm以下、特に1000nm以上5000nm以下、が好ましい。膜が薄すぎると十分な紫外線遮蔽能が得られないことがあり、膜が厚すぎると膜の透過率が低下してガラスの透明性を損なうことがある。
【0207】
ガラスは、特に制限されず、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを用いることができる。このガラスの典型的な組成例を示す。以下において、ガラスが含む各成分の含有率を示す「%」はすべて質量%である。アルカリ金属酸化物(R2O)は、具体的にはNa2OとK2Oとの合計量である。T-Fe2O3は、Fe2O3に換算した全酸化鉄である。また、各組成例は、表示されていない微量成分を含有するものであってもよい。例えば一般的なクリアガラスを用いることができる。そのガラス組成の一例を示す。
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4%
CaO:7~12%
MgO:1.0~4.5%
R2O:13~15%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.2%。
【0208】
また、酸化鉄の濃度を高め、必要に応じて酸化チタン、酸化セリウム等その他の紫外線吸収成分を添加した組成を有するソーダ石灰珪酸塩ガラスを用いることが好ましい。ソーダ石灰珪酸塩ガラスとしては、0.2%を超え、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.5%以上、例えば0.5~1.3%の酸化鉄を含むガラス組成を有し、波長380nmにおける光線透過率が70%以下、好ましくは50%以下、波長550nmにおける光線透過率が75%以上であるガラスを用いてもよい。例えばグリーンガラス、熱線吸収ガラス、紫外線カットグリーンガラスを用いることができる。このようなガラスのいくつかの組成例を以下に例示する。
(グリーンガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4%
CaO:7~12%
MgO:1.0~4.5%
R2O:13~15%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.4~0.6%
(熱線吸収ガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4%
CaO:7~12%
MgO:1.0~4.5%
R2O:13~15%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.5~1.1%
(UVカットグリーンガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4%
CaO:7~12%
MgO:1.0~4.5%
R2O:13~15%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.7~1.3%
CeO2:0~2%
TiO2:0~0.5%。
もっとも、酸化鉄の含有量が0.1質量%以下、好ましくは0.01%~0.06%である高透過率ガラスを用いることもできる。その一例を示す。
(高透過率ガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4%
CaO:7~12%
MgO:1.0~4.5%
R2O:13~15%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.01~0.06%。
なお、上記において、酸化鉄濃度は、ガラスに含まれる全酸化鉄をFe2O3に換算して算出される数値である。
【0209】
ただし、ガラスは、上記に限らず、可視域における光線透過率が低いものであってもよい。このようなガラスとしては、車両のガラス用として製造されている波長550nmにおける光線透過率が20~60%のガラスが挙げられる。ガラスを構成する成分のみでは、特に長波長域の紫外域を十分に遮蔽することが困難であるから、可視光透過率が低いガラスについても、上記で説明した紫外線遮蔽膜の適用は有用である。
【0210】
上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、ISO9050(1990年度版)に基づく紫外線透過率TUV380が2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下でありうる。また、上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、ISO13837(convention A)に従って算出した紫外線透過率TUV400が2%以下、好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下でありうる。上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが70%以上でありうる。上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、TUV400が2%以下であり、かつYAが70%以上でありうる。
【0211】
上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、CIE標準のC光源からの透過光がL*a*b*表色系により表示して、-15以上0以下のa*と12以下のb*とを有しうる。a*は-12以上-7以下、例えば-9以上-8以下であってもよく、b*は10以下、例えば5~10であってもよい。また、上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、CIE標準のC光源についての透過光の日本工業規格(JIS)K7373:2006に規定された黄色度YIが14以下でありうる。黄色度YIは10以下、さらには8以下であってもよい。また、上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、CIE標準のC光源についての透過光の主波長は、560nm以下でありうる。主波長は、555nm以下、例えば550~555nmの範囲にあってもよい。上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、JIS T7330の青色光障害関数に基づくブルーライトのカット率は、41%以下、好ましくは37%以下、特に好ましくは36%以下でありうる。ここでブルーライトカット率としては、太陽光の青色光による網膜損傷に関する実効放射強度(以下、太陽光の実効放射強度)に対する、ガラスを透過させることにより減少した当該実効放射強度の比、を百分率で表示した値として定義することができる。具体的には、以下の方法で求めることができる。JIS T7330:2000の付属書Aに記載の青色光障害関数に関する重み関数について波長380~550nmをまで和分し、太陽光の実効放射強度を求める。つぎに上記波長域の各波長におけるガラスの分光透過率と重み関数の積の総和をとり、当該ガラスを透過した光の当該実効放射強度(以下、透過光の実効放射強度)を求める。透過光の実効放射強度の、太陽光の実効放射強度に対する比をとり、その値を1から減算して百分率に換算することができる。
【0212】
上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、波長295~450nm、照度76mW/cm2の紫外線を100時間照射した後の紫外線透過率TUV400から上記紫外線を照射する前の紫外線透過率TUV400を差し引いた差分ΔTUV400が2%以下、さらには1%以下、特に0.5%以下でありうる。上記紫外線遮蔽膜を有するガラスは、波長295~450nm、照度76mW/cm2の紫外線を100時間照射した後の可視光透過率YAから上記紫外線を照射する前の可視光透過率YAを差し引いた差分ΔYAが-0.5%以上、特に-0.2%以上でありうる。ΔYAは、-0.5%以上1%以下、さらには-0.2%以上0.5%以下であってもよい。
【実施例】
【0213】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<合成例1> 化合物1の合成
【0214】
【0215】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g,79.2mmol)、ベンゼンチオール(17.4g,158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g,174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.9g,5.5mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物1を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1445, 1390cm-1:トリアゾール環伸縮振動 665cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.16 (s, 1H), 7.38 (d, 4H), 7.48 (s, 2H), 7.68 (s, 1H), 7.83 (d, 1H), 8.03 (d, 1H), (insg.10arom. CH), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 116.8, 118.0, 119.3, 128.3, 128.8, 129.6, 132.7 (CHarom), 125.5, 141.2, 143.2 (Carom), 129.8 (C
arom-CH3), 139.2 (C
arom-S) , 139.2 (S-C
arom), 139.2 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH)
【0216】
<合成例2> 化合物2の合成
【0217】
【0218】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g,79.2mmol)、4-tert-ブチルベンゼンチオール(26.3g,158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g,174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.9g,5.5mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物2を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1444, 1390cm-1:トリアゾール環伸縮振動 668cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.36 (s, 9H, -S-Ph-C(CH
3)3), 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.16 (s, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.44 (s, 4H), 7.59 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), (insg.9arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.3 (-S-Ph-C(CH3)3), 34.8 (-S-Ph-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 115.4, 117.8, 119.3, 126.8, 128.8, 129.2, 133.2 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.3 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.5 (C
arom-S), 138.5 (S -C
arom), 139.1, 152.0 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH)
【0219】
<合成例3> 化合物3の合成
【0220】
【0221】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g,79.2mmol)、2,4-ジメチルベンゼンチオール(21.9g,158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g,174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.9g,5.5mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物3を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1447, 1385cm-1:トリアゾール環伸縮振動 665cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.47 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.38 (s, 9H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3, -Ph-CH
3-CH
3), 7.08 (d, 1H), 7.15 (d, 2H), 7.30 (m, 2H), 7.43 (d, 1H), 7.77 (d, 1H), 8.01 (d, 1H), (insg.8arom. CH), 11.57 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.6 (-Ph-CH3-CH3), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 20.6 (-Ph-CH3-CH3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 113.3, 117.7, 119.2, 128.0, 128.3, 128.6, 135.8 (CHarom), 125.4, 141.3, 143.4, 152.0 (Carom), 128.2, 132.0, 141.9 (C
arom-CH3), 138.8 (C
arom-C(CH3)3), 139.1 (C
arom-S), 139.9 (S -C
arom), 146.6 (C
arom-OH)
【0222】
<合成例4> 化合物4の合成
【0223】
【0224】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g,79.2mmol)、3-メトキシベンゼンチオール(22.2g,158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g,174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.9g,5.5mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物4を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1380cm-1:トリアゾール環伸縮振動 660cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 3.79 (s, 3H, CH
3O-Ph-S-), 6.90 (d, 1H), 7.00 (s, 1H), 7.06 (d, 1H), 7.17 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.40 (d, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.56 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 55.4 (-S-Ph-O-CH3), 114.1, 117.3, 117.5, 118.0, 119.3, 124.6, 128.9, 130.0, 130.4 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.3 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.5 (C
arom-S), 138.5 (S -C
arom), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH), 159.9 (C
arom-OCH3)
【0225】
<合成例5> 化合物5の合成
【0226】
【0227】
4-tert-アミルフェノール(25.0g,152.2mmol)、ジメチルカルバモイルクロリド(28.2g,228.3mmol)、水素化ナトリウム(7.3g,167.4mmol)を、THF50g中で60℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えた後、塩酸を加えて酸処理を行い、水洗した有機層を減圧留去した。得られた液体をカラム精製することで、固体の中間体5-1を得た。得られた中間体5-1をスルホラン50g中で240℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えて水洗を行い、減圧留去後を行って液体の中間体5-2を得た。得られた中間体5-2と水酸化カリウムをエタノール中で60℃、3時間攪拌し、冷却後、塩酸を加えて攪拌し、水洗、再結晶、カラム精製を行うことで、4-tert-アミルチオフェノールを得た。
【0228】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(3.8g, 12.0mmol)、4-tert-アミルチオフェノール(2.8g, 15.5mmol)、炭酸カリウム(3.6g,26.4mmol)およびヨウ化カリウム(0.1g,0.8mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物5を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1380cm-1:トリアゾール環伸縮振動 660cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.72 (t, 3H, -S-Ph-CCH2CH
3), 1.31 (s, 6H, -S-Ph-C(CH
3)2), 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 1.66 (q, 2H, -S-Ph-CCH
2CH3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.16 (d, 1H), 7.36 (m, 3H), 7.44 (d, 2H), 7.60 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ9.18 (-S-Ph-CCH2
CH3), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.3 (-S-Ph-C(CH3)2), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 36.8 (-S-Ph-C(CH3)2), 38.1 (-S-Ph-CCH2CH3), 115.5, 117.8, 119.3, 127.4, 128.8, 129.3, 133.0 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.3 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.4 (C
arom-S), 138.4 (S -C
arom), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH), 150.4 (C
arom-C(CH3)2)
【0229】
<合成例6> 化合物6の合成
【0230】
【0231】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、4-イソプロピルベンゼンチオール(24.1g, 158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g, 174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.92g, 5.54mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物6を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1446, 1389cm-1:トリアゾール環伸縮振動 666cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.30 (d, 6H, (CH
3)2CH-Ph-S-), 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 2.95 (m, 1H, (CH3)2CH-Ph-S-), 7.16 (s, 1H), 7.28 (s, 2H), 7.36 (d, 1H), 7.45 (s, 2H), 7.57 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), (insg.9arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 23.9 ((CH3)2CH-Ph-S-), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 33.9 ((CH3)2
CH-Ph-S-), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 115.3, 117.8, 119.3, 127.9, 128.7, 129.2, 129.6, 133.6 (CHarom), 125.4, 141.4, 143.3 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.5 (C
arom-S), 138.5 (S -C
arom), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH), 149.7 (Carom-CH)
【0232】
<合成例7> 化合物7の合成
【0233】
【0234】
4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(25.0g,121.2mmol)、ジメチルカルバモイルクロリド(22.5g,181.7mmol)、水素化ナトリウム(5.8g,133.3mmol)を、THF50g中で60℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えた後、塩酸を加えて酸処理を行い、水洗した有機層を減圧留去した。得られた液体をカラム精製することで、固体の中間体7-1を得た。得られた中間体7-1をスルホラン50g中で240℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えて水洗を行い、減圧留去後を行って液体の中間体7-2を得た。得られた中間体7-2と水酸化カリウムをエタノール中で60℃、3時間攪拌し、冷却後、塩酸を加えて攪拌し、水洗、再結晶、カラム精製を行うことで、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)チオフェノールを得た。
【0235】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(5.5g, 17.3mmol)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)チオフェノール(5.0g, 22.5mmol)、炭酸カリウム(5.3g,38.1mmol)およびヨウ化カリウム(0.2g,1.2mmol)を、DMF60g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物7を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1380cm-1:トリアゾール環伸縮振動 660cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.76 (s, 9H, -S-Ph-CCH2C(CH
3)3), 1.40 (s, 6H, -S-Ph-C(CH
3)2), 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 1.77 (s, 2H, -S-Ph-CCH
2), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.16 (d, 1H), 7.34 (m, 1H), 7.42 (s, 4H), 7.59 (s, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.8 (-S-Ph-CCH2C(CH3)3), 31.4 (-S-Ph-C(CH3)2), 32.5 (-S-Ph-C), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 38.6 (-S-Ph-CCH2
C(CH3)3), 57.0 (-S-Ph-CCH2), 115.4, 117.8, 119.3, 127.6, 128.7, 129.2, 133.0 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.3 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.5 (C
arom-S), 138.5 (S -C
arom), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH), 151.2 (C
arom-C(CH2)2)
【0236】
<合成例8> 化合物8の合成
【0237】
【0238】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、5-tert-ブチル-2-メチルベンゼンチオール(28.5g, 158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g, 174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.92g, 5.54mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物8を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1385cm-1:トリアゾール環伸縮振動 665cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.31 (s, 9H, -S-Ph-C(CH
3)3), 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.36 (s, 6H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3, -S-Ph-CH
3), 7.15 (d, 1H), 7.34 (m, 4H), 7.56 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.01 (d, 1H), (insg.8arom. CH), 11.57 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.1 (-Ph-CH3), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.3 (-Ph-CH3-C(CH3)3), 34.5 (-Ph-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 113.6, 117.7, 119.2, 126.7, 128.7, 130.4, 130.8, 132.5 (CHarom), 125.4, 141.3, 143.4, 152.0 (Carom), 128.3, 128.4 (C
arom-CH3), 138.5 (C
arom-S), 139.1 (S -C
arom), 138.8, 150.4 (C
arom-C(CH3)3), 146.6 (C
arom-OH)
【0239】
<合成例9> 化合物9の合成
【0240】
【0241】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、p-トルエンチオール(19.7g, 158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g, 174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.92g, 5.54mmol)、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物9を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1444, 1389cm-1:トリアゾール環伸縮振動 667cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3) , 2.40 (s, 3H, CH
3-Ph-S-) , 7.16 (s, 1H), 7.23 (s, 2H), 7.32 (d, 1H), 7.43 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), (insg.9arom. CH), 11.56 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 21.2 (CH3-Ph-S-), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 115.3, 117.8, 119.3, 128.7, 129.3 130.5, 133.7(CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.9(C
arom-S) , 138.7(S -C
arom), 139.1(C
arom-C(CH3)3), 146.7(C
arom-OH)
【0242】
<合成例10> 化合物10の合成
【0243】
【0244】
2,4-ジ-tert-アミルフェノール(25.0g,106.7mmol)、ジメチルカルバモイルクロリド(19.8g,160.0mmol)、水素化ナトリウム(5.1g,117.4mmol)を、THF50g中で60℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えた後、塩酸を加えて酸処理を行い、水洗した有機層を減圧留去した。得られた液体をカラム精製することで、固体の中間体10-1を得た。得られた中間体10-1をスルホラン50g中で240℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えて水洗を行い、減圧留去後を行って液体の中間体10-2を得た。得られた中間体10-2と水酸化カリウムをエタノール中で60℃、3時間攪拌し、冷却後、塩酸を加えて攪拌し、水洗、再結晶、カラム精製を行うことで、2,4-ジ-tert-アミルチオフェノールを得た。
【0245】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(2.9g,9.2mmol)、2,4-ジ-tert-アミルチオフェノール(3.0g, 12.0mmol)、炭酸カリウム(2.8g,20.3mmol)およびヨウ化カリウム(0.1g,0.6mmol)を、DMF60g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物10を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1380cm-1:トリアゾール環伸縮振動 660cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.60 (m, 6H, -S-Ph-(CCH2CH
3)2), 1.23 (s, 6H, -S-Ph-C(CH
3)2), 1.39 (m, 15H, -S-Ph-C(CH
3)2,-Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 1.58 (q, 2H, -S-Ph-CCH
2CH3), 1.96 (q, 2H, -S-Ph-CCH
2CH3), 2.26 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.05 (m, 2H), 7.20 (d, 1H), 7.27 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.35 (s, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.92 (d, 1H), (insg.8arom. CH), 11.50 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ9.22 (-S-Ph-CCH2
CH3), 9.54 (-S-Ph-CCH2
CH3), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.3 (-S-Ph-C(CH3)2), 28.8 (-S-Ph-C(CH3)2), 29.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 34.4 (-S-Ph-C), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 37.0 (-S-Ph-C), 36.8 (-S-Ph-CCH2), 40.5 (-S-Ph-CCH2), 114.0, 117.6, 119.3, 125.0, 126.6, 127.3, 128.6, 128.7, 140.9 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.3 (C
arom-S), 138.3 (S -C
arom), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 146.6 (C
arom-OH), 150.1 (C
arom-C), 150.2 (C
arom-C)
【0246】
<合成例11> 化合物11の合成
【0247】
【0248】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、4-ヒドロキシベンゼンチオール(20.0g, 158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g, 174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.92g, 5.54mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物11を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1445, 1390cm-1:トリアゾール環伸縮振動 667cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.36 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 5.02 (s, 1H, -Ph-OH), 6.90 (d, 2H), 7.15 (s, 1H), 7.29 (d, 1H), 7.46 (m, 3H), 7.80 (d, 1H), 8.01 (d, 1H), (insg.9arom. CH), 11.57 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 114.0, 116.9, 117.7, 119.3, 128.3, 136.5 (CHarom), 125.4, 141.3, 143.3 (Carom), 128.7 (C
arom-CH3), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 139.8 (C
arom-S), 139.8 (S -C
arom), 146.7, 156.6 (C
arom-OH)
【0249】
<合成例12> 化合物12の合成
【0250】
【0251】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、2-ナフタレンチオール(25.4g, 158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g, 174.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.92g, 5.54mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物12を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1444, 1389cm-1:トリアゾール環伸縮振動 667cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.36 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.16 (s, 1H), 7.39 (d, 1H), 7.51 (m, 3H), 7.72-7.86 (m, 5H), 8.02 (d, 1H), (insg.12arom.CH), 11.56 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 117.0, 118.0, 119.3, 126.8, 127.6, 127.8, 128.9, 129.4, 131.0, 131.9, 132.8, 133.9 (CHarom), 125.4, 131.0, 133.9, 141.7, 143.2 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 137.2 (C
arom-S), 137.2 (S -C
arom), 139.2 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH)
【0252】
<合成例13> 化合物13の合成
【0253】
【0254】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、4,4'-チオビスベンゼンチオール(9.0g, 36.0mmol)、炭酸カリウム(10.9g, 79.2mmol)およびヨウ化カリウム(0.4g, 2.5mmol)を、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物13を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1444, 1389cm-1:トリアゾール環伸縮振動 667cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3400MHz): δ1.48 (s, 18H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.37 (s, 6H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.17 (s, 2H), 7.32-7.39 (m, 10H), 7.77 (s, 2H), 7.83 (d, 2H), 8.03 (d, 2H), (insg.18arom.CH), 11.53 (s, 2H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 118.0, 118.2, 119.4, 129.0, 130.2, 131.9, 132.6, 133.6 (CHarom), 125.3, 141.8, 143.2 (Carom), 128.4 (C
arom-CH3), 135.3 (C
arom-S), 136.0 (S -C
arom), 139.2 (C
arom-C(CH3)3), 146.8 (C
arom-OH)
【0255】
<合成例14> 化合物14の合成
【0256】
【0257】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(24.6g,107.8mmol)、ジメチルカルバモイルクロリド(40.0g,323.6mmol)、水素化ナトリウム(10.4g,238.4mmol)を、THF100g中で60℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えた後、塩酸を加えて酸処理を行い、水洗した有機層を減圧留去した。得られた液体をカラム精製することで、固体の中間体14-1を得た。得られた中間体14-1をスルホラン50g中で240℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えて水洗を行い、減圧留去後を行って固体の中間体14-2を得た。得られた中間体14-2と水酸化カリウムをエタノール中で60℃、3時間攪拌し、冷却後、塩酸を加えて攪拌し、水洗、再結晶、カラム精製を行うことで、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパンを得た。
【0258】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(8.0g, 25.3mmol)、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパン(3.0g, 11.5mmol)、炭酸カリウム(7.0g,50.6mmol)およびヨウ化カリウム(0.3g,1.8mmol)を、DMF60g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物14を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1380cm-1:トリアゾール環伸縮振動 660cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.49 (s, 18H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 1.73 (s, 6H, -S-Ph-C(CH
3)2), 2.37 (s, 6H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.16 (d, 2H), 7.29 (m, 4H), 7.37 (m, 2H), 7.41 (m, 4H), 7.67 (s, 2H), 7.81 (d, 2H), 8.02 (s, 2H), (insg.18arom. CH), 11.58 (s, 2H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 30.6 (-S-Ph-C(CH3)2-Ph-S), 5.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 43.0 (-S-Ph-C(CH3)2-Ph-S), 116.3, 117.9, 119.3, 128.1, 128.8, 129.6, 132.7 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.3 (Carom), 128.3 (C
arom-CH3), 137.6 (C
arom-S), 137.6 (S -C
arom), 139.2 (C
arom-C(CH3)2), 146.7 (C
arom-OH)
【0259】
<合成例15> 化合物15の合成
【0260】
【0261】
ビフェニル-4,4'-ジオール(20.0g,107.4mmol)、ジメチルカルバモイルクロリド(39.8g,322.0mmol)、水素化ナトリウム(10.3g,236.1mmol)を、THF100g中で60℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えた後、塩酸を加えて酸処理を行い、水洗した有機層を減圧留去した。得られた液体をカラム精製することで、固体の中間体15-1を得た。得られた中間体15-1をスルホラン50g中で240℃、4時間反応した。反応終了後、トルエンと水を加えて水洗を行い、減圧留去後を行って固体の中間体15-2を得た。得られた中間体15-2と水酸化カリウムをエタノール中で60℃、3時間攪拌し、冷却後、塩酸を加えて攪拌し、水洗、再結晶、カラム精製を行うことで、ビフェニル-4,4'-ジチオールを得た。
【0262】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(4.6g, 14.6mmol)、ビフェニル-4,4'-ジチオール(1.5g, 6.9mmol)、炭酸カリウム(4.0g,28.9mmol)およびヨウ化カリウム(0.2g,1.2mmol)を、DMF60g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物15を得た。
FT-IR(KBr):3000cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1380cm-1:トリアゾール環伸縮振動 660cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 18H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.38 (s, 6H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 7.17 (d, 2H), 7.41 (d, 2H), 7.55 (d, 4H), 7.41 (d, 4H), 7.77 (s, 2H), 7.85 (d, 2H), 8.04 (d, 2H), (insg.18arom. CH), 11.56 (s, 2H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 118.1, 119.3, 128.1, 128.4, 128.9, 130.0, 132.8 (CHarom), 125.4, 141.7 143.2 (Carom), 128.4 (C
arom-CH3), 136.9 (C
arom-S), 136.9 (S -C
arom), 139.2 (C
arom-C(CH3)3), 146.8 (C
arom-OH)
【0263】
<合成例16> 化合物16の合成
【0264】
【0265】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(32.3g, 0.102mol)、シクロヘキサンチオール(23.8g, 0.205mol)、炭酸カリウム(31.1g, 0.225mol)およびヨウ化カリウム(1.2g, 0.007mol)を、DMF100g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることによって、化合物16を得た。
FT-IR(KBr):2930cm-1:O-H伸縮振動 1450, 1391cm-1:トリアゾール環伸縮振動 667cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.40 (m, 4H, CH2(CH
2)2(CH2)2CH-S), 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 1.54 (m, 2H, CH
2(CH2)2(CH2)2CH-S), 1.83 (m, 2H, CH2(CH2)2CH2CH
2CH-S), 2.06 (m, 2H, CH2(CH2)2CH
2CH2CH-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3), 3.29 (m, 1H, CH2CH2CH2CH-S), 7.17 (s, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.84 (d, 1H), 8.06 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.7 (CH2(CH2)2 (CH2)2CH-S), 26.0 (CH2(CH2)2(CH2)2CH-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 33.1 (CH2(CH2)2(CH2)2CH-S), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 46.3 (CH2(CH2)2(CH2)2
CH-S), 117.2, 117.5, 119.3, 128.3, 128.8 (CHarom), 141.5, 143.2 (C
arom), 125.4 (C
arom-N), 131.2 (C
arom-CH3), 136.1 (C
arom-S), 139.1 (C
arom-C(CH3)3), 146.7 (C
arom-OH)
【0266】
<合成例17> 化合物17の合成
【0267】
【0268】
トルエン500mL中に2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(59.2g,0.187mol)を加え80℃に加熱した。次に、三塩化アルミニウム(50.0g,0.375mol)を加え、30分攪拌した後、室温まで冷却し、氷冷したイオン交換水500mLをゆっくりと加えた。その後、水層を除去して有機層を水洗し、減圧留去した後、再結晶を行うことで、中間体17-1を得た。得られた中間体17-1(20.0g,0.077mol)、ベンゼンチオール(11.0g, 0.100mol)、炭酸カリウム(23.4g,0.169mol)およびヨウ化カリウム(0.9g,0.005mol)を、DMF80g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることによって、化合物17を得た。
FT-IR(KBr):2950cm-1:O-H伸縮振動 1459, 1388cm-1:トリアゾール環伸縮振動 670cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3), 7.09 (d, 1H), 7.14 (d, 1H), 7.38 (d, 4H), 7.48 (d, 2H), 7.69 (s, 1H), 7.83 (d, 1H), 8.14 (d, 1H), (insg.11arom. CH), 10.94 (s, 1H, -Ph-OH-CH3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.5 (-Ph-OH-CH3), 116.8, 118.1, 118.8, 121.0, 128.3, 129.6, 131.3, 132.8 (CHarom), 124.8, 141.8, 143.4 (Carom), 129.9 (C
arom-CH3), 137.6 (C
arom-S) , 139.2 (S-C
arom), 147.5 (C
arom-OH)
【0269】
<合成例18> 化合物18の合成
【0270】
【0271】
5-クロロ-2-ニトロアニリン(150.0g,0.869mol)を42%テトラフルオロホウ酸(381.6g,1.825mol)に加えて5~10℃に冷却し、50%亜硝酸ナトリウム水溶液(119.7g,0.869mol)を5~10℃で2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、ジエチルエーテルを加えて結晶をろ過した後、洗浄を行うことで、中間体18-1を得た。
【0272】
4-tert-オクチルフェノール(130.0g,0.630mol)、水酸化ナトリウム(26.5g,0.663mol)、炭酸ナトリウム(35.4g,0.334mol)をメタノール850mLとイオン交換水450mL中に加えて混合し、イオン交換水3240mLに溶解した中間体18-1(171.0g,0.630mol)を4時間かけて5~10℃で滴下した。滴下後、1時間攪拌し、酸処理を行って析出した結晶をろ過後、洗浄を行うことで、中間体18-2を得た。
【0273】
トルエン400mL中に中間体18-2(75.0g,0.192mol)、2MNaOH水溶液(288.5g)、亜鉛粉末(150.99g)を加えて85℃で2時間攪拌した。反応終了後、ろ過、洗浄を行い、再結晶をすることによって、中間体18-3を得た。
【0274】
中間体18-3(5.0g,0.014mol)、4-tert-ブチルベンゼンチオール(3.5g,0.021mol)、炭酸カリウム(4.3g,0.031mol)およびヨウ化カリウム(0.2g,0.001mol)を、DMF50g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、中間体18-4を得た。
【0275】
中間体18-4(0.20g,0.410mmol)、ホルマリン水溶液(0.05g,0.615mmol)、ジエチルアミン(0.05g,0.697mmol)を1-ブタノール25mLに加え、150℃、17時間反応した。反応終了後、カラム精製をすることにより、中間体18-5を得た。
【0276】
中間体18-4(1.00g,2.052mmol)、中間体18-5(1.34g,2.341mmol)、28%ナトリウムメチラートMeOH溶液(1.33g)をキシレン25mLに加え、オートクレーブで175℃、15時間反応した。反応終了後、カラム精製をすることにより、化合物18を得た。
FT-IR(KBr):2953cm-1:O-H伸縮振動 1460, 1389cm-1:トリアゾール環伸縮振動 670cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.68 (s, 18H, -Ph-OH-CCH2C(CH
3)3), 1.35 (s, 18H, -S-Ph-C(CH
3)3), 1.36 (s, 12H, -Ph-OH-C(CH
3)2CH2C(CH3)3), 1.70 (s, 4H, -Ph-CCH
2C), 4.26 (s, 2H, -Ph-OH-CH
2-OH-Ph-), 7.34 (m, 2H), 7.37 (m, 2H), 7.43 (d, 8H), 7.63 (s, 2H), 7.80 (d, 2H), 8.02 (d, 2H), (insg.18arom. CH), 11.36 (s, 2H, -Ph-OH)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ30.9 (-Ph-OH-CH2-OH-Ph-), 31.3 (-S-Ph-C(CH3)3), 31.7 (-Ph-OH-C(CH3)2CH2C(CH3)3), 31.8 (-Ph-OH-C(CH3)2CH2C(CH3)3), 32.3 (-Ph-OH-C(CH3)2CH2
C(CH3)3), 34.7 (-S-Ph-C(CH3)3), 38.2 (-Ph-OH-C(CH3)2CH2C(CH3)3), 56.6 (-Ph-OH-C(CH3)2
CH2C(CH3)3), 115.9, 116.5, 117.9, 126.7, 129.4, 129.6, 133.0 (CHarom), 124.4, 141.6, 143.4 (Carom), 129.3 (C
arom-CH2), 129.9 (C
arom-S), 138.1 (S -C
arom), 141.4 (C
arom-C(CH3)3), 145.6 (C
arom-OH), 151.8 (C
arom-C(CH3)2)
【0277】
<合成例19> 化合物19の合成
【0278】
【0279】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(50.0g,0.158mol)、オクタンチオール(46.3g,0.316mol)、炭酸カリウム(48.1g,0.348mol)およびヨウ化カリウム(1.8g,0.011mol)を、DMF125g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物19を得た。
FT-IR(KBr):2956cm-1:O-H伸縮振動 1445, 1392cm-1:トリアゾール環伸縮振動 662cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.89 (t, 3H, CH
3(CH2)7-S) , 1.33 (m, 8H, CH3(CH
2)4(CH2)3-S), 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3, CH3(CH2)4CH
2(CH2)2-S), 1.73 (quin, 2H, CH3(CH2)5CH
2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3) , 3.02 (t, 2H, CH3(CH2)5CH2CH
2-S), 7.16 (s, 1H), 7.36 (d, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.78 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ 14.0 (CH3(CH2)7-S), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.6 (CH3
CH2(CH2)5CH2-S), 28.7 (CH3CH2(CH2)4CH2CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.8 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.8 (CH3(CH2)5
CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)5CH2
CH2-S), 113.6, 117.5, 119.3, 128.7, 129.2 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (C
arom), 128.3 (C
arom-CH3), 138.0(C
arom-S), 139.1(C
arom-C(CH3)3), 146.7(C
arom-OH)
【0280】
<合成例20> 化合物20の合成
【0281】
【0282】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(20.0g, 63.3mmol)、ベンジルメルカプタン(15.7g,126.6mmol)、炭酸カリウム(19.3g, 139.4mmol)およびヨウ化カリウム(0.74g, 4.5mmol)を、DMF50.0g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物20を得た。
FT-IR(KBr):2960cm-1:O-H伸縮振動 1441, 1392cm-1:トリアゾール環伸縮振動 664cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH
3-C(CH3)3) , 4.24 (s, 2H, Ph-CH
2-S-) , 7.16 (s, 1H), 7.26~7.38 (m, 6H), 7.72 (s, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.04 (d, 1H), (insg.10arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 38.6 (Ph-CH2-S-), 115.4, 117.6, 119.3, 128.7, 128.8, 128.8, 129.7, 137.0(CHarom), 125.4, 141.4, 143.4 (C
arom), 128.3 (C
arom-CH3), 136.5(C
arom CH2-S-) , 138.7(S -C
arom), 139.1(C
arom-C(CH3)3), 146.7(C
arom-OH)
【0283】
<合成例21> 化合物21の合成
【0284】
【0285】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(10.0g, 31.7mmol)、ヘキサンジチオール(4.76g, 31.7mmol)、炭酸カリウム(8.75g, 63.3mmol)およびヨウ化カリウム(0.37g, 2.2mmol)を、DMF50g中で、130℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、化合物21を得た。
FT-IR(KBr):3009cm-1:O-H伸縮振動 1431, 1391cm-1:トリアゾール環伸縮振動 656cm-1:C-S伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.49 (s, 18H, -Ph-OH-CH3-C(CH
3)3), 1.55 (m, 4H, -S-CH2CH2CH
2CH
2CH2CH2-S-), 1.77 (m, 4H, -S-CH2CH
2CH2CH2CH
2CH2-S-), 2.38(s, 6H, (-Ph-OH-CH
3-C(CH3)3) , 3.04 (t, 4H, -S-CH
2CH2CH2CH2CH2CH
2-S-), 7.16 (s, 2H), 7.37 (d, 2H), 7.70 (s, 2H), 7.81 (d, 2H), 8.05 (s, 2H) (insg.10arom. CH), 11.60 (s, 2H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 100MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.6 (-S-CH2CH2
CH2
CH2CH2CH2-S-), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 33.1 (-S-CH2
CH2CH2CH2
CH2CH2-S-), 35.4 (-S-CH2CH2CH2CH2CH2
CH2-S-), 113.7, 117.6, 119.3, 128.3, 129.3 (CHarom), 141.2, 143.4 (C
arom), 125.4(C
arom-N), 128.3 (C
arom-CH3), 137.7(C
arom-S), 139.1(C
arom-C(CH3)3), 146.7(C
arom-OH)
【0286】
1.紫外線吸収剤の光学特性、紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物の耐光性評価
<1>紫外線吸収剤の光学特性
紫外線吸収剤の化合物1~12,16,17,19はクロロホルムで100μMに、化合物13~15、18、21,22は50μMに溶解して、10mm石英セルに収容し、紫外可視分光光度計(日本分光社製 V-550)を用いて吸収スペクトルを測定した(
図1~4)。
【0287】
350~390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値は、各化合物の吸収ピークにおける長波長側の吸収スペクトルとベースライン(400~500nmの吸収スペクトルの傾きが0のライン)との交点をピークエンドとして(例:
図1)、下記式により求めた(表3)。
|350~390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾き|=|(ピークエンドの吸光度-350~390nmの波長領域にある吸収ピークの吸光度)/(ピークエンドの吸収波長-350~390nmの波長領域にある吸収ピークの波長)|
【0288】
また、モル吸光係数は、350~390nmの波長領域の吸収ピーク(最大吸収波長:λ
max
)の吸光度を読み取り、下記式で求めた(表4)。
モル吸光係数:ε
max
(L/(mol・cm)=A:吸光度/[c:モル濃度(mol/L)×l:セルの光路長(cm)]
【0289】
化合物1~18のいずれもチオアリール環基またはチオシクロヘキシル環基を有することで、一般的な長波長吸収タイプの紫外線吸収剤の2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-クロロベンゾトリアゾール(吸収ピーク:353.5nm、傾き:0.0219)、比較例1(化合物22、TINUVIN360、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)と比較して、360~375nmに最大吸収波長の吸収ピークがあり、長波長領域の紫外線吸収能に優れ、吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値は、0.030以上であり、特に、化合物1,2,3,6,8,10,11,12,13の傾きは0.040以上、さらに、化合物2,3,6,8,12の傾きは0.042以上で、フィルム、透明部材に対する黄色抑制効果が高いことが示唆された。
【0290】
モル吸光係数については、式(1)、(2)の化合物1~12,16,17の化合物は、20000L/(mol・cm)以上であり、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-クロロベンゾトリアゾール(15300L/(mol・cm))と比較して、少量で効率良く、長波長領域の紫外線を吸収することが可能であることを確認した。特に、2-フェニルベンゾトリアゾール骨格を2個有する式(3)、(4)の化合物13~15,18は40000L/(mol・cm)以上であり、チオアリール環基を持たない比較例22(33700L/(mol・cm))との比較から、その効果に優れていた。
【0291】
また、
図1~4の吸収スペクトルから、参考例の化合物19,21に対して、式(1)、(3)、(4)の化合物1~15,17,18の紫外線吸収剤は、チオアリール環基にフェニル環の残基、ナフチル環の残基を導入したことにより、総体的に250~330nmの領域の吸収ピークが大きくなり(吸光度が大きくなり)、低波長~長波長の広範囲に紫外線を吸収することができ、部材、紫外線吸収剤の品質劣化の抑制、健康障害の予防等の効果が高いことが示唆された。
<2>紫外線吸収剤(紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物)の耐光性評価サンプルの作製
20wt%アクリル樹脂(パラロイドB72)トルエン溶液に、化合物の溶解度を勘案しながら下記の質量比で化合物1~16,19~21を溶解した後、ソーダガラスに塗工し、80℃、10分乾燥し評価サンプルを得た。
・化合物1~6,8~11,16,19,20
配合比率(質量比)
20wt%アクリル樹脂トルエン溶液:化合物=3.0:0.1
(アクリル樹脂:化合物=0.6:0.1)
ドライ膜厚:2~3μm
・化合物7,12
配合比率
20wt%アクリル樹脂トルエン溶液:化合物=6.0:0.1
(アクリル樹脂:化合物=1.2:0.1)
ドライ膜厚:4~6μm
・化合物13
配合比率(質量比)
20wt%アクリル樹脂トルエン溶液:化合物=12.0:0.1
(アクリル樹脂:化合物=2.4:0.1)
ドライ膜厚:7~9μm
・化合物14,15,21
配合比率(質量比)
20wt%アクリル樹脂トルエン溶液:化合物=17.0:0.1
(アクリル樹脂:化合物=3.4:0.1)
ドライ膜厚:50μm
<3>紫外線吸収剤(紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物)の耐光性の評価
得られた評価サンプルについて、紫外可視分光光度計(日立製作所製 分光光度計U-3310)で紫外-可視透過スペクトルを測定し、380、390、400nmの初期(照射前)の紫外線透過率(T
1uv:%)を読み取った後、紫外線照射装置(スガ試験機製 キセノンウェザーメーターX25FL-Z)を用い、波長300~400nm、照度42W/m
2、ブラックパネル温度63℃の条件で紫外線を照射し、照射時間70、140時間後に、紫外-可視透過スペクトルを測定し、紫外線吸収剤由来の380、390、400nmの透過率(T
2uv:%)を読み取り、下記式で透過率の差ΔTuv(%)を算出し、紫外線吸収剤の耐光性を評価した(表1A、B)。
【0292】
【0293】
紫外線吸収剤、紫外線吸収能の劣化がなく(紫外線吸収能の低下がなく)耐光性に優れるとΔTuvが小さくなる。表1A、Bの照射時間70,140時間のΔTuvを次の基準で、◎~×にて評価した(表2A、B)。
◎ : ΔTuv=0~2.0
〇 : ΔTuv=2.1~4.0
△ : ΔTuv=4.1~6.0
× : ΔTuv=6.1~
【0294】
さらに、◎~×を0~3に点数化して、それぞれの化合物の照射時間(70、140時間)の点数を足し合わせた(S(70h)、S(140h))。
◎ : 3
〇 : 2
△ : 1
× : 0
【0295】
式(1)の化合物1~12(実施例1~12)は、S(70h)が1~9に対して、チオアルコキシ基(-S-X)のXがアリール環の残基ではなくアルキル基の化合物19(参考例1)およびフェニル環の残基が、直接、硫黄原子と結合していない化合物20(参考例2)は、S(70h)が0であった。また、同様に式(3)の化合物13~15(実施例13~15)は、S(70h)が4~9に対して、参考例3の化合物21は、S(70h)が3であり、アリール環の残基(X1a、X1c、X2c)が直接、硫黄原子に結合した本発明の紫外線吸収剤が、耐光性に優れることが示唆された。式(1)、(3)、(4)の紫外線吸収剤は、硫黄原子と直接結合した芳香族性のアリール環のフェニル環、ナフチル環の残基と2-フェニルベンゾトリアゾール骨格とのπ電子の相互作用により安定化し、高耐光性を発現したと考えられる。また、式(2)の化合物16(S(70h):6)も参考例の化合物19~21(S(70h):0~3)と比較して、良好な耐光性を示した。
【0296】
また、X1aがフェニル環の残基の化合物1は、S(70h)=9に対して、ナフチル環の化合物12は、S(70h)=2であり、Xがフェニル環の残基の化合物が良好な傾向を示した。
【0297】
R1aについて比較した場合、R1aがヒドロキシ基(化合物11:S(70h)=1、S(140h)=0)よりアルコキシ基(化合物4:S(70h)=8、S(140h)=6)および炭化水素基(化合物2、3、5~10:S(70h)=4~9、S(140h)=0~6)をもつ化合物は耐光性に優れていた。特に、l=0で、X1aの置換基が全て水素原子の化合物1(S(70h)=9、S(140h)=9)は高耐光性であった。
【0298】
また、式(1)において、X1aがフェニル環の残基の場合、下記の傾向を示した。
・l=1~3、R1aが、少なくとも一つは炭素数3~8の分岐のアルキル基を持つ化合物2,5,6,7,8,10は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19,20(参考例1,2)より高耐光性であった。
【0299】
l=1、R1aが直鎖または分岐のアルキル基で、
・アルキル基の炭素数1~18の化合物2,5,6,7,9は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数1~10の化合物2,5,6,7,9は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数1~8の化合物2,5,6,7,9は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数2~8の化合物2,5,6,7は、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmの2つの波長は透過率の差が6.0以下であり、化合物9、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数3~8の化合物2,5,6,7は、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmの2つの波長は透過率の差が6.0以下であり、化合物9、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数3~5の化合物2,5,6は、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、化合物7,9、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数4~5の化合物2,5は、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmの1つの波長は透過率が6.0以下、2つの波長は透過率の差が4.0以下であり、化合物6、7、9、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の炭素数4の化合物2は、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下、および照射時間140時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下であり、化合物5,6,7,9、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
【0300】
また、l=1、R1aが三級炭素および/または四級炭素を有するアルキル基の化合物2,5,6,7は、照射時間70時間後の380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下であり、化合物9、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
【0301】
l=2、R1aが直鎖または分岐のアルキル基で、
・アルキル基の各炭素数1~18の化合物3,8,10は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19,20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の各炭素数1~10の化合物3,8,10は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19,20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の各炭素数1~5の化合物3,8,10は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19,20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の各炭素数1~4の化合物3,8は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下であり、化合物10、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の各炭素数1の化合物3は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下であり、化合物8,10、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の総炭素数2~12の化合物3,8,10は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19,20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の総炭素数2~10の化合物3,8,10は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物19,20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の総炭素数2~5の化合物3,8は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下であり、化合物10、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
・アルキル基の総炭素数2の化合物3は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下であり、化合物8、10、類似構造の化合物19、20(参考例1、2)より高耐光性であった。
【0302】
式(3)の化合物は、下記の傾向を示した。
・q=1、A2cがスルフィド基である化合物13は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下であり、類似構造の化合物15、化合物21(参考例3)より高耐光性であった。
・q=1、A2cが炭素数1~8の炭化水素基である化合物14は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が2.0以下、および照射時間140時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が4.0以下であり、類似構造の化合物13,15、化合物21(参考例3)より高耐光性であった。
・q=0である化合物15は、照射時間70時間後380、390、400nmのいずれの波長も透過率の差が6.0以下であり、類似構造の化合物21(参考例3)より高耐光性であった。
【0303】
本発明の紫外線吸収剤は有機樹脂を紫外線からの劣化を抑制するが、紫外線吸収剤の優れた耐光性により、紫外線吸収剤同様に本紫外線吸収剤を含有する有機樹脂組成物は、初期からの長期間、黄色化、劣化を抑制しながら長波長を吸収することができるとが示唆された。
【0304】
2.紫外線吸収剤の融点の評価
化合物1~21の融点は、示差走査熱量計(SII社製 DSC6220)を用いて測定し、DSCピークトップ温度を融点とした(表1A、B)。また、化合物17の融点は114℃、化合物18の融点は176℃であった。
【0305】
本発明の化合物1~18は、いずれも融点100℃以上であり、化合物1~3,5~12,14~16,18は融点130℃以上、化合物2,5~9,11,12,14~16,18は融点140℃以上、化合物2,6~8,11,12,14,15,18は融点145℃以上であった。特に、化合物2,11,12,14,15,18は融点150℃以上であり、ブリードアウト、ブロッキングの抑制、分散、加熱加工性に優れることを確認した。
【0306】
式(1)においてl=1で、チオアルコキシ基の-S-結合に対してパラ位にR1aとして炭化水素基(アルキル基)を有する化合物2,5,6,7,9(融点140~155℃)は、R1aが全て水素原子の化合物1(融点136℃)、およびR1aがアルコキシ基の化合物4(融点115℃)より融点が高く、その中でも、アルキル基の炭素数3~8の化合物2,5,6,7(融点141~155℃)は、炭素数1の化合物9(融点140℃)より高く、さらに、アルキル基の炭素数3~4の化合物2,6(融点148~155℃)は、炭素数1,5,8の化合物5,7,9(融点141,146,140℃)より高く、特に炭素数4の化合物2は融点が高い傾向を確認した。
【0307】
式(1)のチオアリール環基を導入した化合物1~12は、チオアルキル基を持つ化合物19と比較して、式(3)のA1cを導入し、q=0およびq=1のA2cが炭化水素基の化合物14,15は、A1cがアルキレン基の化合物21と比較して融点が高い傾向を示した。
【0308】
また、l=1または2でR1aが炭化水素基の化合物2,3,5~10(融点131~155℃)、R1aの全てが水素原子の化合物1(融点136℃)およびR1aがアルコキシ基の化合物4(融点115℃)と比較して、R1aがヒドロキシ基の化合物11(融点208℃)、化合物14(融点196℃)、化合物15(融点236℃)およびX1aがナフチル基の化合物12(融点161℃)、化合物18(融点176℃)の融点は高く、特に、ブリードアウト、加工性の面で有用性が高い。さらに、特許文献2(国際公開第2016/021664号)に記載しているが、化合物11はR1aに反応性官能基である水酸基を有し、樹脂原料のポリマーにその水酸基と反応する官能基が存在する場合、ポリマーと反応し、樹脂に固定化され、経時のブリードアウトを抑制することができる。
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
3.紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物の透明性(紫外線吸収剤と有機樹脂との相溶性)の評価
本発明の化合物の有機樹脂の相溶性による有機樹脂組成物の透明性について確認した(表5)。
【0316】
各種、有機樹脂組成物に、本発明品を添加した熱可塑性樹脂の重合体の(メタ)アクリル系樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂フィルム(アクリル)、エステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリカーボネート系樹脂としてポリカーボネートフィルム(PC)、スチレン系樹脂としてポリスチレンフィルム(PS)を、熱可塑性樹脂の共重合体のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体としてアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体フィルム(ABS樹脂)を、熱硬化性樹脂の重合体の尿素系樹脂として尿素樹脂フィルム、メラミン系樹脂としてメラミン樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂の共重合体のアクリルメラミン系樹脂としてアクリルメラミン樹脂フィルムを用いた。
【0317】
(ポリメタクリル酸メチル樹脂フィルムの作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17それぞれを3.0wt%添加した、膜厚100~150μmのポリメタクリル酸メチル樹脂フィルムを下記手順で作製した。
【0318】
20wt%ポリメタクリル酸メチル樹脂のトルエン溶液1.00gにそれぞれ化合物1、2、6、9、17を0.0062g溶解した後、1.5×1.5cmのスライドガラスに0.2mL塗布し、80℃、10分乾燥してポリメタクリル酸メチル樹脂フィルムを得た。
【0319】
また、比較用のブランクのフィルムは、添加物を添加せず、20wt%ポリメタクリル酸メチル樹脂のトルエン溶液1.00gを、上記と同様な操作を行い作製した。
【0320】
(ポリエチレンテレフタレートフィルム:PETの作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17のそれぞれを3.0wt%添加した、膜厚40~100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを下記手順で作製した。
【0321】
ポリエチレンテレフタレートチップ0.2gとそれぞれ化合物1、2、6、9、17の0.0062gを280℃で混練し、これをスライドガラス基板上に塗布した後、素早く伸ばして空冷することで、ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0322】
また、比較用のブランクのフィルムは、添加物を添加せず、上記と同様な操作を行い作製した。
【0323】
(ポリカーボネートフィルム:PCの作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17のそれぞれを3.0wt%添加した、膜厚100~200μmのポリカーボネートフィルムを下記手順で作製した。
【0324】
ポリカーボネートチップ0.2gとそれぞれ化合物1、2、6、9、17の0.0062gを280℃で混練し、これをスライドガラス基板上に塗布した後、素早く伸ばして空冷することで、ポリカーボネートフィルムを得た。
【0325】
また、比較用のブランクのフィルムは、添加物を添加せず、上記と同様な操作を行い作製した。
【0326】
(ポリスチレンフィルム:PSの作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17のそれぞれを3.0wt%添加した、膜厚100~200μmのポリスチレンフィルムを下記手順で作製した。
【0327】
20wt%ポリスチレン樹脂のトルエン溶液1.00gにそれぞれ化合物1、2、6、9、17を0.0062g溶解した後、1.5×1.5cmのスライドガラスに0.2mL塗布し、80℃、10分乾燥してポリスチレンフィルムを得た。
【0328】
また、比較用のブランクのフィルムは、添加物を添加せず、20wt%ポリスチレン樹脂のトルエン溶液1.00gを、上記と同様な操作を行い作製した。
【0329】
(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体フィルム:ABS樹脂の作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17のそれぞれを3.0wt%添加した、膜厚100~200μmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体フィルムを下記手順で作製した。
【0330】
20wt%ABS樹脂のTHF溶液1.00gにそれぞれ化合物1、2、6、9、17を0.0062g溶解した後、1.5×1.5cmのスライドガラスに0.2mL塗布し、80℃、10分乾燥してアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体フィルムを得た。
【0331】
また、比較用のブランクのフィルムは、添加物を添加せず、20wt%ABS樹脂のTHF溶液1.00gを、上記と同様な操作を行い作製した。
【0332】
(尿素樹脂フィルムの作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17のそれぞれを0.1wt%添加した、膜厚50~100μmの尿素樹脂フィルムを下記手順で作製した。
【0333】
37wt%ホルムアルデヒド液1mL、尿素0.25g、酢酸アンモニウム0.16gを溶解し、モノマー溶液を作製した。次に、THF2mLにそれぞれ化合物1、2、6、9、17を0.0007g溶解させ、モノマー溶液1mLと均一に混合し、1.5×1.5cmのスライドガラスに0.2mL塗布した。そして、このスライドガラスをオーブンに入れ、30分かけて室温から150℃まで昇温した後、150℃で5時間反応させることにより作製した。
【0334】
また、比較用のブランクのフィルムは添加物を添加せず、モノマー溶液0.1mL、THF0.2mLを均一に混合し、上記と同様な操作を行い作製した。
(メラミン樹脂フィルムの作製)
実施例19~23の化合物1、2のそれぞれを0.1wt%添加した、膜厚10~50μmのメラミン樹脂フィルムを下記手順で作製した。
【0335】
水酸化ナトリウムでpH7.5に調製したホルムアルデヒド液5.15gにメラミン1gおよび水24.60gを添加、加熱反応し、ヘキサメチロールメラミン溶液を作製した。次に、THF1mLにそれぞれ化合物1、2、6、9、17を0.0019g溶解させ、ヘキサメチロールメラミン溶液2mLと均一に混合し、1.5×1.5cmのスライドガラスに0.2mL塗布した。そして、このスライドガラスをオーブンに入れ、30分かけて室温から150℃まで昇温した後、150℃で5時間反応することにより作製した。
【0336】
また、比較用のブランクのフィルムは添加物を添加せず、モノマー溶液0.2mL、THF0.1mLを均一に混合し、上記と同様な操作を行い作製した。
(アクリルメラミン樹脂フィルムの作製)
実施例19~23の化合物1、2、6、9、17のそれぞれを3.0wt%添加した、膜厚100~150μmのアクリルメラミン樹脂フィルムを下記手順で作製した。
【0337】
THF0.1mLにそれぞれ実施例1、2、6、9、17の化合物を0.0020g溶解させ、焼付乾燥型上塗塗料(焼付乾燥型上塗(アクリルメラミンモノマー):アクリサイトUB-63クリヤー 斎藤塗料株式会社製)0.1g(有効分65%)と均一に混合し、1.5×1.5cmにスライドガラスへ0.2mL塗布した。そして、このスライドガラスをオーブンに入れ、30分かけて室温から150℃まで昇温した後、150℃で2時間反応することにより作製した。
【0338】
また、比較用のブランクのフィルムは添加物を添加せず、アクリルメラミンモノマー0.1g、THF0.1mLを均一に混合し、上記と同様な操作を行い作製した。
【0339】
(外観)
フィルムの外観を目視で観察し、次の基準で評価した。
評価基準(ポリメタクリル酸メチル樹脂フィルム、PSフィルム、ABS樹脂フィルム)
○:比較用のブランクと同様に透明
×:比較用のブランクと比べ白濁あり
評価基準(PETフィルム、PCフィルム)
○:比較用のブランクと同様に透明
×:比較用のブランクと比べ曇りあり
評価基準(尿素樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、アクリルメラミン樹脂フィルム)
○:比較用のブランクと同様に透明
×:比較用のブランクと比べ結晶の析出あり
【0340】
表5より、本発明化合物は、いずれの樹脂に対しても相溶性良く、透明な有機樹脂組成物が得られることを確認した。
【0341】
【0342】
4.有機樹脂組成物からの紫外線吸収剤の溶出性(ブリードアウト)評価
本発明の化合物と上記3記載の有機樹脂組成物において、樹脂中からの化合物(紫外線吸収剤)の溶出性について、化合物1,2,6,9,17を用いて次の操作で評価した(表6)。
【0343】
上記3.と同様な操作で調製した樹脂の溶液を1.5×6.0cmのスライドガラスに0.8mL塗布、作製(上記3.と同様な操作)した各フィルム/スライドガラスをヘプタン80mLに浸漬し、60℃の恒温槽で6時間、静置した。その後、フィルム/スライドガラスを取り出し、ヘプタンを減圧留去し、得られた溶出物をTHFに溶解して、HPLC(高速液体クロマトグラフィー Thermo Fisher Scientific製 UltiMate3000)で定量した。
【0344】
試験後のフィルムの外観は、目視で観察し、次の基準で評価した。
評価基準
○:試験前と比べて同等の透明性を有する
△:試験前と比べて僅かに曇りがある
×:試験前と比べてかなりの曇りがある
【0345】
表6より、本発明の化合物1,2,6,9,17を含む熱可塑性樹脂/重合体の(メタ)アクリル系樹脂のポリメタクリル酸メチル樹脂フィルム、エステル系樹脂のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネート系樹脂のポリカーボネートフィルム、スチレン系樹脂のポリスチレンフィルム、熱可塑性樹脂/共重合体のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体のABS樹脂フィルム、熱硬化性樹脂/重合体の尿素系樹脂の尿素樹脂フィルム、メラミン系樹脂のメラミン樹脂フィルムの溶出量は10.0wt%以下で、試験後、酷く外観を損なうことなく、良好な結果であった。さらに、熱可塑性樹脂/重合体の中でもポリメタクリル酸メチル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネート、熱硬化性樹脂/重合体の中でも尿素樹脂フィルムは1.0wt%未満で特に良好な結果が得られた。一方で、熱硬化性樹脂/共重合体のアクリルメラミン樹脂フィルムは、試験後のフィルムは白濁し、95%以上の溶出量が確認された。
【0346】
以上の結果より、特に、本発明の化合物を含む熱可塑性樹脂/重合体、熱可塑性樹脂/共重合体及び熱硬化性樹脂/重合体等の有機樹脂組成物は、外観に優れ、分散、加熱加工、長期使用時において、ブリードアウト等での溶出を抑制し、紫外線吸収能を長期間保持できるとことが示唆された。
【0347】
その熱可塑性樹脂/重合体は結晶性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、非結晶性樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン)に分類できるが、結晶性樹脂及び非結晶樹脂の中でも、分子の配向性が高い樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート)は、側鎖に芳香族環を有し、分子の配向性が低い樹脂(ポリスチレン)より、溶出抑制効果が高いことを確認した。
【0348】
【0349】
5.紫外線吸収剤の耐熱性評価
紫外線吸収剤の耐熱性について、熱分解による重量変化率で評価した。50℃の減圧乾燥機で12時間乾燥させた化合物2、6、9、1、19のそれぞれ5gを、30mLのスクリュー管に測り取り、重量を測定した。化合物を入れたスクリュー管を120℃に設定した恒温器内に静置し、24、48、72、100、300時間後に外観変化及び重量変化率を確認した。外観変化について下記の基準で評価した。重量変化率は、電子天秤を用いて、加熱前後の重量を測定し、[((加熱前重量-加熱後重量)/加熱前重量)×100]の数式で算出した。
【0350】
次に、80℃、160℃の条件で耐熱性評価を行った。上記と同様に、50℃の減圧乾燥機で12時間乾燥させた化合物2、6、9、1のそれぞれ5gを、30mLのスクリュー管に測り取り、重量を測定し、スクリュー管を80℃に設定した恒温器内に静置し、300時間後の外観変化及び重量変化率を確認した。さらに、同様の操作で160℃に設定した恒温器内に静置し、6、12、24時間後に外観変化及び重量変化率を確認し、外観変化について下記の基準で評価した。
評価基準
120℃耐熱性評価
○ ; 外観変化:変化なし
△ ; 外観変化:淡黄色
× ; 外観変化:黄色
160℃耐熱性評価
◎ ; 外観変化:変化なし
○ ; 外観変化:淡黄色
△ ; 外観変化:黄色
× ; 外観変化:黒色
【0351】
80℃300時間での耐熱性試験では、化合物2、6、9、1は、変色しなかったことが確認された。また、重量変化も見られなかった。表7より、120℃で48時間加熱後に参考例の化合物19は淡黄色に着色したが、本発明の実施例の化合物2、6、9、1は変色しなかったことより、参考例の化合物19よりも、チオアリール環基を有する本発明化合物の耐熱性を確認することができた。
【0352】
次に、表8より、160℃の条件下で、チオアリール環基の置換基の効果について評価した。チオアリール環基にアルキル基が無い化合物1(6h:黒色)よりも、チオアリール環基にアルキル基がある化合物2、6、9(6h:変化なし~黄色)の方が長時間外観の変化が少なく、耐熱性に優れていた。さらに、アルキル基の炭素数が1の化合物9(6h:黄色、12h:黄色)よりもアルキル基の炭素数が3、4の化合物2、6(6h:変化なし、12h:変化なし~淡黄色)が耐熱性が高く、中でも、アルキル基の炭素数が4の化合物2(12h:変化なし)が、炭素数3の化合物6(12h:淡黄色)より耐熱性が優れることを確認した。
【0353】
また、加熱環境下での重量変化において、表7より参考例の化合物19は120℃で48時間加熱後の重量変化率が0.03重量%に対して、実施例の化合物2、6、9、1はいずれも重量変化率が0.01重量%であり、アリール環基の優位性を確認した。
【0354】
次に、表8より化合物1は160℃で6時間加熱した際、重量変化率が0.20重量%であったが、化合物2、6、9はいずれも重量変化率も0.1重量%以下であり、フェニル環基にアルキル基を有する化合物が耐熱性に優れていた。さらに、160℃で12時間加熱した際、化合物6は重量変化率が0.03重量%に対し、化合物2は重量変化率が0.01重量%であり、フェニル環基に炭素数3、4のアルキル基を有する化合物が耐熱性に優れ、24時間加熱後は炭素数3の化合物6(重量変化率:0.04)より炭素数4の化合物2(重量変化率:0.01)が耐熱性に優れていた。
【0355】
また、化合物1、19の加熱時の5%重量減少温度をTG/DTA(SII製)測定装置を用いて窒素雰囲気下、10℃/minの昇温条件で測定したところ、参考例の化合物19は294℃であったのに対して、化合物1が290℃であり、化合物19が、5%重量減少温度が高い結果が得られた。しかしながら、本耐熱性評価試験のように、より実用に近い条件での耐熱性評価では、本発明の紫外線吸収剤であるフェニル残基を有する化合物1が高耐熱性との結果であった。
【0356】
一般的な熱可塑性樹脂の一般的な成形温度は、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA):160℃以上、ポリエチレンテレフタレート(PET):260℃以上、ポリカーボネート(PC):220℃以上、ポリスチレン(PS):100℃以上、ABS樹脂 ABS:220℃以上であり、熱硬化性樹脂の一般的な熱硬化温度は、尿素樹脂:150℃、メラミン樹脂:150℃、アクリルメラミン樹脂フィルム:150℃である。樹脂の成形時間、熱硬化時間にもよるが、本発明の紫外線吸収剤は、耐熱性が高く、80℃以上、さらには120℃以上、特に160℃以上の熱成形温度、熱硬化温度を持つ樹脂に好ましく適用ができる。
【0357】
【0358】
【0359】
6.紫外線吸収剤を含む有機樹脂組成物の耐熱性評価
<1>耐熱性評価サンプルの作製
・紫外線吸収剤/熱可塑性樹脂 (メタ)アクリル系樹脂:ポリメタクリル酸メチル樹脂
2.5wt%ポリメタクリル酸メチル樹脂(東京化成)クロロホルム溶液に、本発明の紫外線吸収剤である化合物2、6、9、1、19および参考例5の化合物19をアクリル樹脂に対して10wt%となるように溶解した後、ガラス(松浪硝子工業社製スライドガラス MICRO SLIDE GLASS S1112)に約0.5ml滴下し、スピンコートすることで製膜し、評価サンプルを得た。
・紫外線吸収剤/熱可塑性樹脂 ポリカーボネート系樹脂:ポリカーボネート
5.0wt%ポリカーボネートクロロホルム溶液に、本発明の紫外線吸収剤である化合物2、6、9、1、19および参考例5の化合物19をアクリル樹脂に対して10wt%よなるように溶解した後、ガラス(松浪硝子工業社製スライドガラス MICRO SLIDE GLASS S1112)に約0.5ml滴下し、スピンコートすることで製膜し、評価サンプルを得た。
・紫外線吸収剤/熱硬化性樹脂 アクリルメラミン系樹脂:アクリルメラミン樹脂
5.0wt%アクリルメラミン樹脂クロロホルム溶液に、本発明の紫外線吸収剤である化合物2、6、9、1、19および参考例5の化合物19をアクリル樹脂に対して10wt%となるように溶解した後、ガラス(松浪硝子工業社製スライドガラス MICRO SLIDE GLASS S1112)に約0.5ml滴下し、スピンコートすることで製膜し、評価サンプルを得た。
<2>外観、耐熱性の評価
上記で得られた評価サンプルを160℃に設定した恒温器内に静置、加熱し、6、12時間後に外観変化及び透過率を確認した。外観変化について下記の基準で評価した。
評価基準
160℃耐熱性評価
○ ; 外観変化:変化なし
△ ; 外観変化:淡黄色
× ; 外観変化:黄色
【0360】
透過率は、紫外可視分光光度計紫外可視分光光度計(日立製作所製 分光光度計UH4150)で紫外-可視透過スペクトルを測定し、380、390、400nmの初期(照射前)の紫外線透過率(T1uv:%)と、加熱後の紫外-可視透過スペクトルを測定し、380、390、400nmの透過率(T2uv:%)を読み取り、下記式で透過率の差ΔTuv(%)を算出した。
【0361】
【0362】
【0363】
表9の外観について、実施例37~40の紫外線吸収剤及びそれらを含む有機樹脂組成物はガラスと良好な親和性により透明であり、耐熱性に優れ、評価サンプル作成直後、12h加熱後とも良好な外観を保持していた(紫外線遮蔽膜としても適する)。チオアリール環基を含む化合物2、6、9、1は、チオアルキル基を含む参考例の化合物19と比較して、380、390、400nmの6,12h後の対応するそれぞれのΔTuvはいずれも小さく(紫外線吸収能の劣化がなく)、耐熱性に優れ、アリール環基の優位性を確認した。
【0364】
また、化合物2、6、9、1の380、390、400nmの6h後及び12h後のそれぞれのΔTuvを比較したところ、いずれの樹脂組成物も、化合物2(Ph-tBu)/有機樹脂<化合物6(Ph-iPr)/有機樹脂<化合物9(Ph-Me)/有機樹脂<化合物1(Ph)/有機樹脂(例えばポリメタクリルメチル樹脂,400nm,6h後 化合物2:9.5<化合物6:12.4<化合物9:18.1<化合物1:18.4)の関係にあった。つまり、アリール環基(フェニル残基)に直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物の有機樹脂組成物が耐光性に優れ、その中でも、アルキル基の炭素数が1のメチル基より炭素数3のiPr基及び炭素数4のtBu基が、さらに、炭素数3のiPr基より炭素数4のtBu基の有機樹脂組成物の耐熱性が優れていた。
【0365】
6h後のΔTuv(6h)と12h後のΔTuv(12h)からΔTuvの変化率(ΔTuv(12h)/ΔTuv(6h))を算出し、表9に示す。熱可塑性樹脂の紫外線吸収剤/ポリメタクリル酸メチル樹脂、紫外線吸収剤/ポリカーボネートの組み合わせの樹脂組成物の変化率は、熱硬化性樹脂の紫外線吸収剤/アクリルメラミン樹脂の変化率より小さく、耐熱性に優れていた。
【0366】
7.無機材料(ガラス質)の紫外線遮蔽膜を含むガラスの耐光性評価
<1>耐光性評価サンプルの作製
本発明の紫外線吸収剤である化合物2、6、7、9、16、19、21および比較例2の化合物22(TINUVIN360、2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール] 、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)は、ペイントコンディショナーを用い、ジルコニアビーズと共に混合して粉砕して平均粒径100nmの微粒子とした。この紫外線吸収剤微粒子10質量%の水分散液と純水、エチルアルコール、テトラエトキシシラン(TEOS)、シランカップリング剤であるグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS;3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)、ポリオール化合物であるトリエチレングリコール(TEG)、ポリエーテル化合物であるポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)、ITO微粒子分散液(ITO微粒子を40質量%含むエチルアルコール溶液;三菱マテリアル製;平均粒径(公称)100nm以下)、濃塩酸(35質量%)を混合、攪拌し、紫外線遮蔽膜の膜形成溶液を得た。膜形成溶液は、各成分の濃度(含有率)が表10の値となるように調製した。比較例3の化合物23(Uvinul3050、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、BASFジャパン株式会社製、)は、予めエチルアルコールに溶かして膜形成溶液に添加した。TEG及びソルスパースは有機化合物Cに相当する。また、実施例によっては、有機化合物Cとして、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX-614)を用いた。ソルビトールポリグリシジルエーテルは、ポリエポキシ化合物であり、膜中ではグリシジル基の反応によって生成したヒドロキシ基を有するポリオール化合物となる。ただし実施例52~54では、加熱乾燥工程におけるオーブンの温度を180℃として有機化合物Aの融点よりも高くしたために、有機化合物Aが溶解して膜に添加された。次いで、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス基板(市販のUVカットグリーンガラス100×100mm、厚さ3.1mm)上に、湿度30%、室温下でこの形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま室温で約5分程度乾燥した後、予め表10のオーブン温度に昇温したオーブンに投入して15分加熱し、その後冷却して、紫外線遮蔽膜を形成した。この加熱における、膜つきガラスの温度と紫外線吸収剤の融点の関係を表10に示した。実施例41~51、55、56、比較例2は、膜つきガラスの温度が紫外線吸収剤の融点より低く、この加熱において、膜つきガラスの温度は紫外線吸収剤の融点を上回ることはなかった。なお、用いたUVカットグリーンガラスは、波長380nmにおける光線透過率(T380)が40%、波長550nmにおける光線透過率(T550)が77%である。このUVカットグリーンガラスは、Fe2O3に換算した全酸化鉄を0.9質量%程度含有している。実施例52~54は、加熱乾燥工程におけるオーブンの温度を180℃として紫外線吸収剤の融点よりも高くしたために、紫外線吸収剤が溶解して膜に添加された。比較例2は、エチルアルコール溶液として膜形成溶液に添加したため、紫外線吸収剤が溶解して膜に添加された。
【0367】
【0368】
<2>光学特性評価
光学特性は分光光度計(島津製作所製、UV-3100PC)を用いて測定した。測定した特性は、CIE標準のA光源を用いて測定するJIS R3212による可視光透過率Tvis、ISO9050(1990年度版)に従って算出した紫外線透過率TUV380、ISO13837(convention A)に従って算出した紫外線透過率TUV400、JIS T7330の青色光障害関数に基づき算出したブルーライトカット率BLcut、CIE標準のC光源を用いて測定する透過光のJIS Z8729によるL*a*b*表色系、CIE標準のC光源を用いて測定する透過光のJIS K7373(2006)による黄色度YI、CIE標準のC光源を用いて測定する透過光のJIS Z8701(1999)による主波長及び刺激純度、波長1500nmにおける光線透過率T1500である。なお、TUV380は波長280~380nmにおける光線の透過率に基づいて、TUV400は波長300~400nmにおける光線の透過率に基づいて、ブルーライトカット率は波長380~500nmにおける光線の透過率に基づいて、それぞれ算出される値である。
<3>耐光性(耐紫外線特性)評価
耐光性(耐紫外線特性)は、岩崎電気社製の紫外線照射装置(EYE SUPER UV TESTER SUV-W13)を用い、波長295~450nm、照度76mW/cm2、ブラックパネル温度83℃、湿度50%RHの条件を適用し、所定時間(100時間)、紫外線を、ガラスの膜が形成されていない面から紫外線遮蔽膜付きガラスに照射することにより実施した。紫外線照射試験後の光学特性(YA、TUV400)を測定し、同試験前後の変化(ΔYA、ΔTUV400)を算出した。
【0369】
【0370】
表11の光学特性において、本発明の紫外線吸収剤を使用した実施例41~56のガラスは、いずれも密着し、透明性が高く、TUV380が0.3%以下、TUV400が1%以下、ブルーライトカット率が40%未満、L*a*b*表色系のa*が-9以上-8以下、b*が5以上9以下であり、黄色度YIが10以下の光学特性を有し、耐光性において、紫外線照射試験後の透過率の変化率(TUV400)が20以下であり、特にチオフェニル環基を有する紫外線吸収剤は、変化率が6未満であった。また、表1Aと表11の紫外線透過率の変化率の比較において、化合物2を用いた実施例2と実施例47では、ガラス質の紫外線遮蔽膜に化合物2を添加した実施例47が樹脂フィルムに添加した実施例2より変化率が低い結果であった。この結果から、紫外線遮蔽効果を長時間維持する点において、本発明の紫外線吸収剤をガラス質の紫外線遮蔽膜に使用するのが適していることが示唆された。紫外線領域の耐光性(透過率の変化率:TUV400)からは、類似化合物で比較すると、[IV]における式(1)で表わされるチオアリール基(-S-X1a-(R1a)l)を有する化合物2、6、9、7が、チオアルキル基を有する化合物19、21より変化率が小さく、チオアリール基が耐光性に寄与していることが示唆された。チオアリール基を有する化合物の中でも、R1aが、炭素数が3~8(および三級および/または四級炭素を持つ)の化合物が、耐光性に優れていた。
【0371】
比較例2からは低いTUV400が得られず、比較例3からは低いTUV400が得られたが黄色度YIが高くなった。一方、各実施例では、黄色系への顕著な着色を抑制しながらTUV400を低下させることができた。また、実施例41~42と実施例52~53との対比から、有機化合物Aを微粒子として添加すると膜の耐光性が向上することが確認できた。また、化合物2、6、7のように、チオアリール環基が、水素原子の置換基として分岐を有する鎖状アルキル基が接続したチオアリール環基を有する有機化合物Aを用いると、これらの化合物単体でのΔTUV400が格段に優れているわけではないのに、膜のΔTUV400を十分に抑制できた。
【0372】
8.有機材料の紫外線遮蔽膜を含むガラスの透明性、光学特性の評価
<1>耐光性評価サンプルの作製
2.5wt%ポリメタクリル酸メチル樹脂(東京化成)クロロホルム溶液に、本発明の紫外線吸収剤である化合物1、2、9、19および比較例4の化合物24をアクリル樹脂に対して、10wt%溶解した後、ガラス(松浪硝子工業社製スライドガラス MICRO SLIDE GLASS S1112)に1ml滴下し、スピンコーター(アクティブ社製 密閉型スピンコーターACT-300AII)にて、20s間1500rpm保持することで製膜し、紫外線遮蔽膜を含むガラスの評価サンプルを得た。
<2>外観、光学特性の評価
得られた評価サンプルについて、外観を確認し、紫外可視分光光度計(日立製作所製 分光光度計UH4150)で紫外-可視透過スペクトルを測定し、380、390、400nmの紫外線透過率を読み取った。また、350~390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値を、上記1.<1>と同様の方法で算出した。
【0373】
【0374】
表12の外観について、実施例57~60は、樹脂に対して紫外線吸収剤濃度が10wt%の高濃度の条件で、紫外線吸収剤とガラスが、より接触する場合においても、親和性良く、ガラスと紫外線遮蔽膜との密着性がよく、紫外線遮蔽膜を含むガラスは、透明な外観であった。また、実施例の紫外線遮蔽膜を含むガラスは、比較例4のガラスより380~400nmの透過率が小さく、長波長吸収に優れることを確認した。また、実施例の紫外線遮蔽膜を含むガラスの吸収ピークの傾きの絶対値は、比較例より大きく、黄色抑制効果を有することが示唆された。