(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】リフティングマグネット作業機
(51)【国際特許分類】
B66C 13/52 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B66C13/52 Z
(21)【出願番号】P 2021002087
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 史来
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179749(JP,A)
【文献】特開2019-120200(JP,A)
【文献】特開2017-125428(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107001006(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に連結された上部旋回体の旋回フレームと、
前記旋回フレーム上の前部且つ左右方向の略中央に設けられた軸受フレームに基端を角度変更可能に連結され、先端にリフティングマグネットが備えられた多関節型の作業フロントと、
前記旋回フレーム上に配設されたエンジンの駆動力を利用して発電機により発電された電力を制御し、前記リフティングマグネットを作動させる電力制御装置と、
前記旋回フレーム上の前記軸受フレームを挟んだ一側方に設けられてオペレータが搭乗する運転室と、
前記旋回フレーム上の前記軸受フレームを挟んだ他側方に設けられて、前記エンジンの排気を浄化するための尿素水を貯留する尿素水タンクと、
を備えたリフティングマグネット作業機において、
前記尿素水タンクの前縁は、前記旋回フレームの前縁近傍に位置し、
前記電力制御装置は、前記旋回フレーム上から架台を介して支持されて前記尿素水タンクの直上に配設されている
ことを特徴とするリフティングマグネット作業機。
【請求項2】
前記エンジンは、前記旋回フレーム上の後部に搭載されて、直結された油圧ポンプを駆動して作動油を吐出させ、
前記油圧ポンプは、吐出した作動油を高圧配管を経て油圧モータに供給して、前記油圧モータに直結された前記発電機を駆動させ、
前記油圧モータ及び前記発電機は、前記電力制御装置と共に前記架台上に固定されることにより前記尿素水タンクの直上に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のリフティングマグネット作業機。
【請求項3】
前記油圧モータ及び発電機は、前記架台上の後部に配設され、
前記電力制御装置は、前記架台上の前部に配設されて制御盤の内部に収容され、
前記制御盤は、前後寸法よりも左右寸法が大きな四角箱状をなすと共に、前面に開閉可能な扉が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のリフティングマグネット作業機。
【請求項4】
前記油圧モータ及び前記発電機は、上方から上部ユニットカバーにより隠蔽され、
前記上部ユニットカバーの上面及び前記制御盤の上面は、前記上部旋回体に設けられた作業者が歩行可能な保守通路の一部として機能する
ことを特徴とする請求項3に記載のリフティングマグネット作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフティングマグネット作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
リフティングマグネット作業機は、リフティングマグネットの磁力により鋼板やスクラップ等の被吸着物を吸着して所望の場所に移動する作業を行う作業機械である。特許文献1に記載のように、この種のリフティングマグネット作業機の中には油圧ショベルをベースマシンとしたものがあり、その作業フロントにアタッチメントとしてリフティングマグネットが取り付けられると共に、リフティングマグネットを作動させるための以下に述べる電力制御装置等の機器類が備えられている。
【0003】
ベースとなる油圧ショベルは、クローラにより走行可能な下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に上部旋回体の旋回フレームが連結され、旋回フレーム上の前部且つ左右方向の略中央に軸受フレームが設けられている。軸受フレームには多関節型の作業フロントの基端が連結され、軸受フレームの左側にはオペレータが搭乗する運転室が設けられている。旋回フレーム上の後部には機械室が設けられ、その内部に油圧パワーユニットが搭載されている。油圧パワーユニットを構成するエンジンにより油圧ポンプが駆動され、油圧ポンプから作動油を供給されて上記したクローラ、旋回装置及び作業フロントがそれぞれ作動するようになっている。
【0004】
旋回フレーム上の右側において、機械室の前側には隣接して作動油タンク及び燃料タンクが設けられ、それらの前側には上記したエンジンの排気浄化のための尿素水を貯留する尿素水タンクが設けられている。結果として尿素水タンクは、運転室から見て軸受フレームを挟んだ右側に配設されている。
【0005】
以上が油圧ショベルの基本構成であり、リフティングマグネット作業機とする場合には、作業フロントにリフティングマグネットが取り付けられ、さらに旋回フレーム上の尿素水タンクの前側に制御盤が設けられる。この制御盤の搭載のために、制御盤を備えない標準仕様の油圧ショベルに比較して旋回フレームが前方に延設されている。制御盤内には、コンバータ、インバータ、ドライバ及び蓄電装置からなる電力制御装置が収容される。油圧パワーユニットのエンジンには、油圧ポンプと共に発電機が直結されて駆動され、その発電電力が高圧電線を経て制御盤に供給される。そして発電電力は、コンバータによる整流、インバータによる電圧調整、ドライバによる駆動制御を経てリフティングマグネットに供給されて作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のリフティングマグネット作業機は運転室に搭乗したオペレータの視認性、特に右斜め前方への視認性に関して改善の余地があった。
即ち、作業フロントの先端に取り付けられたリフティングマグネットは、運転室に搭乗したオペレータから見て前方やや右側に位置しており、その位置関係は上部旋回体が旋回しても変化しない。そして、このリフティングマグネットを被吸着物まで移動させて吸着したり、或いは吸着した被吸着物を所望の場所まで移動させたりする。このため作業中のオペレータの視線は、平面視においてリフティングマグネットを含む左斜め前方から右斜め前方までの領域内で、且つ側面視において斜め下方に相当する地表付近に注がれる場合が多く、この領域内での視認性が特に重要となる。
【0008】
特許文献1のリフティングマグネット作業機では、軸受フレームの右側に尿素水タンクが設けられ、その前側に制御盤が設けられている。尿素水タンクは軸受フレームを挟んで運転室の右側に位置するためオペレータの視認性に大きく影響しないものの、制御盤はオペレータから見て右斜め前方に位置しているため、特に地表付近を視認する際に視線を遮ってしまう。このような視認性の悪化は作業効率を低下させる要因になるため、従来から特に右斜め前方の地表付近を視認する際の視認性を改善する対策が要望されていた。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、運転室に搭乗したオペレータが軸受フレームを挟んで右斜め前方且つ地表付近を目視したときの視認性を向上することができるリフティングマグネット作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明のリフティングマグネット作業機は、走行可能な下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に連結された上部旋回体の旋回フレームと、前記旋回フレーム上の前部且つ左右方向の略中央に設けられた軸受フレームに基端を角度変更可能に連結され、先端にリフティングマグネットが備えられた多関節型の作業フロントと、前記旋回フレーム上に配設されたエンジンの駆動力を利用して発電機により発電された電力を制御し、前記リフティングマグネットを作動させる電力制御装置と、前記旋回フレーム上の前記軸受フレームを挟んだ一側方に設けられてオペレータが搭乗する運転室と、前記旋回フレーム上の前記軸受フレームを挟んだ他側方に設けられて、前記エンジンの排気を浄化するための尿素水を貯留する尿素水タンクと、を備えたリフティングマグネット作業機において、前記尿素水タンクの前縁が、前記旋回フレームの前縁近傍に位置し、前記電力制御装置が、前記旋回フレーム上から架台を介して支持されて前記尿素水タンクの直上に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリフティングマグネット作業機によれば、運転室に搭乗したオペレータが軸受フレームを挟んだ反対側の斜め前方且つ地表付近を目視したときの視認性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のリフティングマグネット作業機を示す側面図である。
【
図2】作業フロントを不図示とした
図1のA部詳細図である。
【
図3】作業フロントを不図示とした
図1のB矢視図である。
【
図4】作業フロントを不図示とした
図1のC矢視図である。
【
図5】架台カバー及び側部ユニットカバーを取り外して尿素水タンク、制御盤及び発電ユニットの位置関係を示した
図2に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化したリフティングマグネット作業機の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のリフティングマグネット作業機を示す側面図であり、以下の説明では、リフティングマグネット作業機に搭乗したオペレータを主体として前後方向、左右方向、上下方向を規定する。本実施形態のリフティングマグネット作業機1は一般的な油圧ショベルをベースマシンとし、その作業フロント2にアタッチメントとしてリフティングマグネット3が取り付けられると共に、リフティングマグネット3を作動させるための機器類(後述する電力制御装置23や発電ユニット27等)が備えられている。
【0014】
リフティングマグネット作業機1の下部走行体4には左右一対のクローラ5が設けられ、これらのクローラ5が図示しない走行用油圧モータに駆動されて下部走行体4が走行するようになっている。下部走行体4上には図示しない旋回装置を介して上部旋回体6の旋回フレーム6aが連結され、旋回装置に備えられた後述する旋回用油圧モータ13(
図4に示す)により駆動されて上部旋回体6が旋回するようになっている。旋回フレーム6a上の前部且つ左右方向の略中央には軸受フレーム7が設けられ、軸受フレーム7にはブーム8の基端が軸8aを介して連結されている。ブーム8の先端にはアーム9の基端が軸9aを介して連結され、アーム9の先端にはリフティングマグネット3が軸3aを介して連結され、これにより多関節型の作業フロント2が構成されている。
【0015】
上部旋回体6に対してブーム8は軸8aを中心としてブームシリンダ10の駆動により角度変更され、ブーム8に先端に対してアーム9は軸9aを中心としてアームシリンダ11の駆動により角度変更される。また、リフティングマグネット3はシリンダにより駆動されることなく軸3aを介してアーム9の先端から吊下され、その自重により常に吸着面を下方に面した姿勢に保たれて、鋼板やスクラップ等の被吸着物Sを吸着可能となっている。なお、リフティングマグネット3についてもシリンダ駆動により角度変更可能としてもよい。
【0016】
図2は作業フロント2を不図示とした
図1のA部詳細図、
図3は作業フロント2を不図示とした
図1のB矢視図、
図4は作業フロント2を不図示とした
図1のC矢視図である。
旋回フレーム6a上において、軸受フレーム7の後側には上記した旋回装置の旋回用油圧モータ13が設けられ、上部旋回体6を旋回させる。旋回フレーム6a上において軸受フレーム7を挟んだ左側(本発明の一側方に相当)にはオペレータが搭乗する運転室14が設けられ、オペレータは運転室14に設けられた図示しない操作装置を操作してリフティングマグネット作業機1を運転する。
【0017】
一方、旋回フレーム6a上の主として後部は建屋カバー15により覆われ、建屋カバー15は、機械室カバー15a、作動油タンクカバー15b及び燃料タンクカバー15cにより構成されている。機械室カバー15aは、旋回フレーム6a上の最後部で左右全体に亘って延設されており、この機械室カバー15aにより画成された機械室16内には、エンジンを動力源とする図示しない油圧パワーユニットが搭載されている。油圧パワーユニットの構成は周知のため詳細は説明しないが、エンジンにより油圧ポンプを駆動し、吐出された作動油をオペレータによる操作装置の操作に応じて油圧回路により切換制御して油圧アクチュエータ、例えば上記した走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ13、ブームシリンダ10及びアームシリンダ11等に供給して駆動する油圧システムである。これによりオペレータの操作に応じて、リフティングマグネット作業機1の走行、上部旋回体6の旋回、作業フロント2の動作等が行なわれる。
【0018】
作動油タンクカバー15bは、旋回フレーム6a上の右側において機械室カバー15aの前側に隣接して設けられ、その内部には、油圧パワーユニットにより各油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留する図示しない作動油タンクが収容されている。燃料タンクカバー15cは、作動油タンクカバー15bの前側に隣接して設けられ、その内部には、エンジンの燃料を貯留する図示しない燃料タンクが収容されている。燃料タンクカバー15cの前側には、エンジンの排気浄化のための尿素水を貯留する尿素水タンク17が配設され、図示しないボルトにより旋回フレーム6a上に固定されている。結果として尿素水タンク17は、運転室14から見て軸受フレーム7を挟んだ右側(本発明の他側方に相当)に配設されている。なお、旋回フレーム6aの上面に凹部を形成するスペース的な余地がある場合には、凹部内に尿素水タンク17を配設してもよい。
【0019】
そして詳細は後述するが、本実施形態では、特許文献1のように旋回フレーム上の尿素水タンクの前側に制御盤119(
図2,4に示す)を設けることなく、別の設置構造を採用している。このため、制御盤19の搭載のために旋回フレーム6aが前方に延設されることなく、標準仕様の油圧ショベルと同等の前後長に保たれている。結果として尿素水タンク17の前縁17aは、旋回フレーム6aの前縁6a1近傍に位置している。
【0020】
図5は架台カバー及び側部ユニットカバーを取り外して尿素水タンク17、制御盤及び発電ユニットの位置関係を示した
図2に対応する側面図であり、以下、同図に基づき尿素水タンク17及び制御盤等の設置構造について説明する。
【0021】
端的に表現すると制御盤19は、旋回フレーム6a上から架台20を介して支持されて尿素水タンク17の直上に配設されている。架台20は下方に開口する四角箱状をなし、図示しないボルトにより旋回フレーム6a上に固定されている。架台20の前面は旋回フレーム6aの前縁6a1近傍に位置し、後面は燃料タンクカバー15cと隣接し、左面は軸受フレーム7と隣接し、右面は旋回フレーム6aの右縁近傍に位置している。この架台20により旋回フレーム6a上に空間が形成され、内部に尿素水タンク17が収容されている。
なお、架台20は必ずしも箱状とする必要はなく、以下に述べる制御盤19及び発電ユニットを旋回フレーム6a上から支持可能であれば任意に形状を変更でき、例えばアングル材等を溶接してなるフレーム構造としてもよい。
【0022】
尿素水を利用したNOxの浄化作用は周知であるため、詳細は説明しないが、尿素水タンク17に貯留された尿素水が尿素水インジェクタからエンジンの排気通路に噴射され、尿素水を加水分解して生成されたアンモニアが下流側のSCR触媒に供給されて排ガス中のNOx還元作用を奏する。
【0023】
このような架台20の上面の前部に制御盤19が配設され、ボルト21及びナット22により固定されている。制御盤19は、前後寸法よりも左右寸法が大きな四角箱状をなし、内部に電力制御装置23が収容されている。図示はしないが電力制御装置23は、コンバータ、インバータ、ドライバ及び蓄電装置からなり、ドライバは、作業フロント2に沿って配索された高圧電線を介してリフティングマグネット3に接続されている。
【0024】
制御盤19の前面は脱着式の開閉可能な扉19aとして構成され、図示はしないがボルトにより制御盤19に固定されると共に、部外者による開閉を防止するためのキーロック機構が設けられている。制御盤19内の電力制御装置23の定期点検や修理等の保守は、キーロック機構及びボルトの固定を解除して制御盤19から扉19aを取り外した上で実施される。ただし本発明の開閉可能な扉とは、本実施形態のような脱着式の扉19aに限るものではなく、例えばヒンジを中心として開閉可能な扉として構成してもよい。なお、24は軸受フレーム7と制御盤19との間に形成された間隙を塞ぐ化粧板である。
【0025】
一方、架台20の上面の後部には油圧モータ25及び発電機26からなる発電ユニット27が配設され、それぞれボルト28及びナット29により架台20の上面に固定されている。結果として発電ユニット27は、制御盤19と共に尿素水タンク17の直上に配設されている。図示はしないが油圧モータ25には高圧配管の一端が接続され、高圧配管は旋回フレーム6a上を後方に延設されて、その他端が機械室16内で油圧パワーユニットのエンジンにより駆動される油圧ポンプに接続されている。発電機26は油圧モータ25に直結され、その出力端子は高圧電線を介して制御盤19内の電力制御装置23のコンバータに接続されている。従って、油圧パワーユニットのエンジンから油圧モータ25に作動油が供給され、油圧モータ25により発電機26が駆動されて発電電力が電力制御装置23のコンバータに入力される。即ち、発電ユニット27は、油圧パワーユニットで発生した作動油の油圧を電力に変換する機能を奏する。
【0026】
従って、油圧ポンプから作動油を供給されて油圧モータ25により発電機26が駆動される。発電された電力は電力制御装置23のコンバータにより整流され、インバータにより電圧調整され、ドライバにより駆動制御されてリフティングマグネット3に供給されて作動させる。
なお、油圧モータ25に作動油を供給する油圧ポンプは、例えば油圧アクチュエータを駆動する既存の油圧ポンプと共用してもよいし、専用の油圧ポンプをエンジンに直結してもよい。
【0027】
以上のように構成された架台20、制御盤19及び発電ユニット27は、上記した建屋カバー15と同様のカバーにより覆われている。詳しくは、架台20の右側には架台カバー30が図示しないボルトにより固定され、制御盤19及び発電ユニット27の右側には側部ユニットカバー31が図示しないボルトにより固定されている。これらのカバー30,31は、旋回フレーム6aの右側縁からはみ出ることなく、後側に位置する燃料タンクカバー15cの右側面と面一になるように配設され、リフティングマグネット作業機1の右側外壁を形成している。
【0028】
また、発電ユニット27の上側には上部ユニットカバー32が図示しないボルトにより固定され、これにより発電ユニット27が上方から隠蔽されている。上部ユニットカバー32の上面は、後側に位置する燃料タンクカバー15cの上面よりも若干低く、且つ前側に位置する制御盤19の上面と面一になるように配設されている。
【0029】
これらの制御盤19の上面及び上部ユニットカバー32の上面は、上部旋回体6上に設けられた保守通路の一部として機能させるために、それぞれ滑止め板33,34が固定されている。また、旋回フレーム6aの前縁6a1には下段ステップ35が固定され、軸受フレーム7と制御盤19との間の間隙には中段ステップ36が固定され、各ステップ35,36の上面は滑止め加工が施されている。同様に、燃料タンクカバー15cの上面等、建屋カバー15の上面にも滑止め板37が適宜固定されている。
【0030】
なお、従来のリフティングマグネット作業機では、制御盤19の前面に中段ステップ36が設けられていたが、本実施形態では、前面を扉19aとして機能させるために中段ステップ36が制御盤19の左側に位置変更されている。
【0031】
以上により下段ステップ35、中段ステップ36、制御盤19の上面、上部ユニットカバー32の上面、燃料タンクカバー15cの上面、作動油タンクカバー15bの上面及び機械室カバー15aの上面からなる保守通路38が形成され、作業者が保守通路38を歩行して地表Gと上部旋回体6上との間を自由に行き来できるようになっている。なお、39は保守通路38を歩行する際に作業者が把持する手摺りである。
【0032】
次に、以上のように構成されたリフティングマグネット作業機1において、運転室14に搭乗したオペレータの視界について説明する。
【0033】
[発明が解決しようとする課題]で述べたように、作業中のオペレータの視線Lは、
図4に示す平面視においてリフティングマグネット3を含む左斜め前方から右斜め前方までの領域α内で、且つ
図1に示す側面視において斜め下方の地表G付近に注がれる場合が多い。オペレータが右斜め前方を視認する場合、ブーム8の基端越しに目的物を目視することから元々視認性が良好とは言い難く、さらに特許文献1の技術では、
図2,4中に二点鎖線で示すように、尿素水タンク17の前側に配設された制御盤119により視線Lが遮られてしまう。
【0034】
本実施形態では、架台20を用いて尿素水タンク17の直上に制御盤19を配設しており、それに伴って制御盤19の搭載のために旋回フレーム6aを前方に延設する必要がなくなるため、標準仕様と同等の旋回フレーム6aの前後長に保たれている。結果として
図2~4に矢印で示すように、オペレータが軸受フレーム7を挟んで右斜め前方且つ斜め下方の地表G付近を目視したときに、制御盤19により視線Lが遮られる事態を未然に防止できると共に、旋回フレーム6aの前縁6a1についても視線Lを遮る要因にならないことから、その視認性を向上することができる。
【0035】
加えて本実施形態では、制御盤19と共に架台20上に発電ユニット27も配設しており、この設置構造により、特許文献1の技術に比較して以下に述べる利点が得られている。
【0036】
特許文献1のリフティングマグネット作業機1は、上部旋回体の後部に配置した油圧パワーユニットのエンジンに発電機(本実施形態の発電機26に相当)を直結し、その発電電力を上部旋回体の前部に配置した制御盤119(
図2,4に示す)に供給している。電力供給のために上部旋回体上には、その後部から前部までの長い経路に沿って高圧電線が配索される。高圧電線は作業中の振動により摩滅して漏電することのないように定期的な検査が必要なため、リフティングマグネット作業機1の保守性を損ねる要因になり得る。
【0037】
これに対して本実施形態では、上部旋回体6の後部に配置した油圧パワーユニットのエンジンにより油圧ポンプを駆動し、吐出された作動油を上部旋回体6の前部に配置した発電ユニット27の油圧モータ25に供給し、発電機26からの発電電力を、発電ユニット27に隣接する制御盤19に供給している。従って、作動油の供給のために、上部旋回体6には後部から前部まで特許文献1の高圧電線に代えて高圧配管が延設されるが、高圧配管は漏電の虞がない上に、堅牢なため高圧電線に比較してトラブルを生じる可能性が格段に低い。このため、リフティングマグネット作業機1の信頼性や耐久性を向上できると共に、トラブルを想定した定期的な検査等が不要になるため保守性を向上することもできる。
【0038】
このように高圧電線を高圧配管に置換するには、油圧モータ25を含めた発電ユニット27を上部旋回体6の前部に搭載する必要があるが、特許文献1の発想に基づけば、制御盤19と同様に発電ユニット27についても尿素水タンク17の前側に配設する構成しか想到できない。従って、発電ユニット27の搭載のために上部旋回体6がさらに前方に延設され、オペレータの視界に関する条件が一層悪化してしまう。
【0039】
制御盤19と共に発電ユニット27も架台20上に配設した本実施形態によれば、発電ユニット27によりオペレータの視線Lが遮られる事態を未然に防止できると共に、発電ユニット27の搭載のために旋回フレーム6aを前方に延設する必要もないため、旋回フレーム6aの前縁6a1についても視線Lを遮る要因にならない。よって、何ら弊害を発生することなく、旋回フレーム6a上の高圧電線を高圧配管に置換でき、これにより上記のような信頼性等に関する利点を達成することができる。
【0040】
加えて本実施形態では、架台20上の後部に発電ユニット27を配設し、前部に制御盤19を配設して前面に脱着式の開閉可能な扉19aを設けている。このような構成は、制御盤19内の電力制御装置23の保守性を向上させるために大きく貢献する。
内部の電力制御装置23を保守するには、制御盤19の前後左右の何れかの面に扉19aを設ける必要がある。地表Gに立った作業者が保守を実施するため、制御盤19内を容易に目視できる位置に扉19aを設けることが望ましく、また、電力制御装置23を構成する各機器を隈なく目視・点検するため、可能な限り大きな開口面積を確保することが望ましい。
【0041】
仮に制御盤19を架台20上の後部(発電ユニット27の後側)に配設した場合、その前面は発電ユニット27により遮られ、後面は燃料タンクカバー15cにより遮られ、左側面は軸受フレーム7により遮られるため、残った制御盤19の右側面に扉19aが設けられる。この場合、制御盤19の右側に立った作業者が扉19aを開いて保守はできるものの、制御盤19の左側面が狭いことから扉19aを開いたときの開口面積が小さく、特に制御盤19内の奥部に設置された機器の目視・点検が困難になる。
【0042】
これに対して本実施形態のように制御盤19を架台20上の前部(発電ユニット27の前側)に配設した場合には、その前面が遮られずに扉19aを設けることができる。この場合、制御盤19の前側に立った作業者が扉19aを開いて保守可能なことは勿論、制御盤19の前面は左側面よりも広いため大きな扉19aを設置できると共に、扉19aを開いたときの制御盤19内の奥行が浅くなる。これらの要因が相俟って、制御盤19内の奥部に設置された機器であっても容易に目視・点検でき、その保守性をさらに向上することができる。
【0043】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、旋回フレーム6a上の軸受フレーム7を挟んだ左側に運転室14を設け、右側に尿素水タンク17を設けたが、位置関係を逆転させて、右側に運転室14を、左側に尿素水タンク17を設けてもよい。この場合には、運転室14に搭乗したオペレータの左斜め前方に対する視認性が良好でなくなるが、尿素水タンク17上に制御盤19及び発電ユニット27を配設することにより、上記実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0044】
また上記実施形態では、制御盤19と共に発電ユニット27を架台20上に固定したが、これに限るものではない。例えば特許文献1の技術と同様に、発電機26については旋回フレーム6a上の後部の機械室16内に収容してエンジンで駆動するようにし、その発電電力を、旋回フレーム6aの前部に設けた架台20上の制御盤19に高圧電線を経て供給するようにしてもよい。
【0045】
また上記実施形態は、ブーム8、アーム9及びリフティングマグネット3からなる作業フロント2を備え、クローラ5により走行するリフティングマグネット作業機1として具体化したが、これに限るものではない。例えば、作業フロント2の構成を変更したり、クローラ5に代えてタイヤを備えたリフティングマグネット作業機に適用したりしてもよい。
【0046】
また上記実施形態は、油圧パワーユニットからの作動油を油圧アクチュエータに供給することにより車両1の走行や上部旋回体6の旋回を行うリフティングマグネット作業機1として具体化したが、これに限るものではない。例えば、エンジンにより発電機を駆動し、その発電電力を走行用電動モータや旋回用電動モータに供給することにより車両1の走行や上部旋回体6の旋回を行うハイブリッド型のリフティングマグネット作業機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 リフティングマグネット作業機
2 作業フロント
3 リフティングマグネット
4 下部走行体
6 上部旋回体
6a 旋回フレーム
7 軸受フレーム
14 運転室
17 尿素水タンク
19 制御盤
19a 扉
20 架台
23 電力制御装置
25 油圧モータ
26 発電機
32 上部ユニットカバー
38 保守通路