(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20240902BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240902BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/42 500Q
A61B6/42 500S
(21)【出願番号】P 2021007473
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大坪 慶貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正隆
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128355(JP,A)
【文献】特開2016-070890(JP,A)
【文献】特開2018-115899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0196033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を電気信号に変換する放射線検出器と、
前記放射線検出器を支持する支持基台と、を備え、
前記支持基台は、前記放射線検出器を支持する面と反対方向に厚いリブを含み、
前記リブは、放射線入射の法線方向から見て、前記放射線検出器と前記支持基台とが固定されている固定範囲よりも外側に配置され、且つ前記リブの配置範囲と前記固定範囲と
の間に溝部が設けられている放射線撮影装置。
【請求項2】
前記リブは、前記支持基台の端部に配置されている請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記放射線検出器を内包する外装を更に備え、
前記リブは、前記外装の端部への衝撃が印加された場合には、前記外装と前記リブとの接触が前記外装と他の箇所との接触よりも優先的に行われるような位置に配置されている請求項1又は2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記外装から外装リブが伸び、
前記リブは、前記支持基台の端部近傍に配置され、前記外装の端部への衝撃が印加された場合には、前記外装リブと前記リブとの接触が前記外装リブと他の箇所との接触よりも優先的に行われるような位置に配置されている請求項
3に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記放射線検出器と前記支持基台との間に配置され、放射線を遮蔽する遮蔽材を更に備え、
前記放射線検出器と前記支持基台とは、前記遮蔽材を介して固定され、
前記固定範囲は、前記遮蔽材が配置されている範囲である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記遮蔽材と前記支持基台とを固定する固定部材を更に備え、
前記固定部材は、前記遮蔽材のサイズよりも大きいサイズを有する請求項5に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記放射線検出器と前記支持基台とを固定する固定部材を更に備え、
前記固定範囲は、前記固定部材が配置されている範囲である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記固定部材は、両面に粘着性を持たせたシート材である請求項6又は7に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
被写体を透過した放射線を電気信号に変換する放射線検出器と、
前記放射線検出器を支持する支持基台と、を備え、
前記支持基台は、前記放射線検出器を支持する面と反対方向に厚いリブを含み、
前記リブは、放射線入射の法線方向から見て、前記放射線検出器と前記支持基台とが固定されている固定範囲よりも外側に配置され、且つ前記リブの配置範囲と前記固定範囲とが重ならないように配置されており、且つ前記リブと前記支持基台との境界に溝部が設けられてい
る放射線撮影装置。
【請求項10】
前記リブは、前記支持基台の外周4辺の各辺に配置されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、被検体を透過した放射線を検出し、放射線を電気信号に変換する放射線撮影装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、半導体センサを使用して放射線画像を撮影する放射線撮影装置(Digital Radiography)が普及してきている。この装置は病院内外問わずあらゆる場合での使用を期待され、可搬性、操作性の良さを求められることで、小型化、薄型化、軽量化が進められている。そのため、昨今ではワイヤレスタイプの放射線撮影装置が多く普及してきている。
【0003】
上述のように可搬性に対する要求がこれまで以上に増加傾向にあり、軽さだけではなく堅牢性への要求も強くなっている。放射線撮影装置は内部にガラス製の半導体センサを搭載していることが多く、落下や衝撃による破損が懸念される。ここで、特許文献1には、センサとセンサを支持する支持基台の間に別途支持部材を設けることでセンサ入射方向からの荷重を支持基台で受け、センサの破損を回避するための形状について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このとき、従来の構成では、例えば、放射線撮影装置の端部からの荷重や衝撃等により支持基台の端部が変形した際、その変形がセンサに伝搬することで、センサの破損につながってしまう可能性がある。このとき、例えば、支持基台と放射線撮影装置の外装とが固定されないような構成では、支持基台の内部移動等により、上述したような破損につながってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、開示の技術は、センサの破損リスクを低減可能な放射線撮影装置を提供することを目的の一つとする。
【0007】
なお、上記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的の1つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の放射線撮影装置の一つは、
被写体を透過した放射線を電気信号に変換する放射線検出器と、
前記放射線検出器を支持する支持基台と、を備え、
前記支持基台は、前記放射線検出器を支持する面と反対方向に厚いリブを含み、
前記リブは、放射線入射の法線方向から見て、前記放射線検出器と前記支持基台とが固定されている固定範囲よりも外側に配置され、且つ前記リブの配置範囲と前記固定範囲との間に溝部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術の一つによれば、センサの破損リスクを低減可能な放射線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)各実施形態における放射線撮影装置の外観(放射線入射側)を示す。(b)各実施形態における放射線撮影装置の外観背面を示す。
【
図3】実施形態1における放射線撮影装置100の背面筐体3を取り外した図である。
【
図4】実施形態1における放射線撮影装置の断面を示す。
【
図5】配置範囲31と固定範囲32との位置関係を示した入射面側からの投影図である。
【
図6】実施形態2における放射線撮影装置の断面を示す。
【
図7】実施形態3における放射線撮影装置の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(a)、(b)は、各実施形態における放射線撮影装置(以下、撮影装置と呼ぶ)の主な構成を示す図である。
図1(a)は、放射線撮影装置100の表面側から見た図、(b)は放射線撮影装置100の背面から見た図を示している。
【0012】
放射線撮影装置100の主な構造は、外装は枠体1と、放射線受光面2、無線通信を可能とするための無線用電波透過窓4を有する背面筐体3から成る。放射線撮影装置の外装には、軽量で且つ強度の高い材料が求められる。このとき、放射線撮影装置の外装としては、例えば、CFRP、アルミニウム合金、マグネシウム合金等を採用することができる。また、放射線撮影受光面2には、放射線透過率の良好な材質を選定する必要がある。このとき、外装材料としてアルミニウム合金やマグネシウム合金等の金属材料を採用する際には、放射線受光面2としては、CFRP等の高剛性且つ高放射線透過率を有する材料を採用することができる。
【0013】
図2は、
図1(b)のA-Aにおける断面図を示す。放射線撮影装置100の内部には被写体を透過した放射線を受光し放射線を光へ変換する蛍光体6が積層され、その光を電気信号に変換する放射線検出器7の一例であるセンサ7が内包されている。また、センサ7は、放射線を遮蔽する遮蔽材8を介して支持基台9に取り付けられている。センサ7に積層される蛍光体6の材料としては、一般的にGOS(Gd
2O
2S)もしくはCsIが多く用いられる。センサ7は一般的にガラスを用いているため、強い衝撃、荷重、変位を受けると割れが発生する。そのため、放射線撮影装置100内のセンサ7の放射線受光面側には、衝撃を吸収するための衝撃吸収部材10を配置している。遮蔽材8は、被写体およびセンサ7を透過した放射線から電気基板を保護し、また、放射線撮影装置100を透過した放射線であって、その背後にある壁等で散乱した放射線が、蛍光体6やセンサ7に再入射することを防ぐ機能を有する。支持基台9のセンサ貼付面との対面には、センサ7で変換された電気信号を、フレキ11を介して読み出すための電気基板12a、12bや、読み出した後に画像データを生成する電気基板12c、無線通信モジュール基板12dなどが設置されている。生成された撮影画像は、外部の通信ユニット(不図示)を通じて表示システム(不図示)に通信され、表示される。放射線撮影装置100は無線通信による画像転送を行う装置を示しており、撮影装置内部に無線通信用のアンテナ13を有している。このとき、外装が金属系材料で作られる場合には、無線電波は遮蔽されてしまうため、放射線撮影装置100には、無線用電波透過窓4や5を設けており、アンテナ13はそれに近い位置に放射特性を考慮し配置されていてもよい。また、無線用電波透過窓4、5は、外装の隣接する側面を跨ぎ、一体化されていてもよい。
【0014】
[実施形態1]
続いて、実施形態1について説明をする。
図3は、放射線撮影装置100の背面筐体3を取り外した図である。外装である枠体1の中に支持基台9が収まっており、支部部材9には前述のとおり各電気基板類12、フレキ11が配置され、図中支持基台9の裏面側にはセンサ7が配置される。支持基台9の端部外周にリブ21が配置される。リブ21は、支持基台と同一の材料で形成されているが、異なる材料で形成されてもよい。また、リブ21は支持基台外周4辺の各辺に少なくとも1箇所ずつ設けられているが、各辺の設置範囲は問わない。また、リブ21は、支持基台9と同じ材料で一体的に構成されていてもよいし、異なる材料の部材が結合されて構成されてもよい。
【0015】
図4は、支持基台9、リブ21の構成を示す断面図である。支持基台9の端部にリブ21が構成される。リブとは支持基台の基本肉厚よりも厚みの大きい突起を指す。リブ21はセンサ7に対して反対方向に伸びたリブ構成である。ここで、放射線撮影装置100の端部に衝撃が印加されたとき、支持基台9と枠体1とが固定されていないために支持基台9が内部移動する可能性がある。このような場合において、外装である枠体1とリブ21との接触が枠体1と他の箇所(例えば、内部部品等)との接触よりも優先的に行われるような位置に、リブ21は配置されている。このとき、衝撃に伴って、リブ21の局所的な変形が発生する。また、センサ7は、遮蔽材8と固定され、また、支持基台9と遮蔽材8とを固定部材22により固定することで、センサ7と支持基台9とが固定されるように構成されている。このとき、センサ7と支持基台9とが固定されている固定範囲32は、遮蔽材8が配置されている範囲となる。ここで、固定部材22とは、例えば、両面に粘着性を持たせたシート材であってもよい。また、遮蔽材8の配置は必須ではなく、センサ7と支持基台9とは、固定部材22の一例であるシート材により直接的に固定されるように構成されてもよい。このとき、センサ7と支持基台9とが固定されている固定範囲32は、固定部材22の一例であるシート材が配置されている範囲となる。ここで、リブ21は、放射線入射の法線方向から見たときに、リブ21の配置範囲31と固定範囲32とが重ならないように配置される。すなわち、リブ21は、放射線入射の法線方向から見て、センサ7と支持基台9とが固定されている固定範囲32よりも外側に配置され、且つリブ21の配置範囲31と固定範囲32とが重ならないように配置されている。これにより、センサ7の破損リスクを低減する効果を得ることができる。
【0016】
なお、固定部材22の境界がセンサ7における撮影可能範囲内に配置されると、撮影画像に影響が出てしまう可能性がある。このため、固定部材22は、遮蔽材8のサイズよりも大きいサイズを有していてもよい。このとき、固定部材22のサイズと遮蔽材8のサイズとが同じであってもよい。また、固定部材22の境界がセンサ7における撮影可能領域内に配置されなければ、固定部材22が遮蔽材8のサイズよりも小さいサイズを有していてもよい。
【0017】
ここで、例えば、外装の端部への衝撃が印加された場合には、リブ21の局所変形が発生してしまう可能性がある。このとき、リブ21に固定されずに、支持基台9の基本肉厚部のみの固定範囲32内で固定された遮蔽材8およびセンサ7は、リブ21の局所変形に追従しないように構成することができる。このため、衝撃および変形伝達を抑えることでセンサ7の破損リスクの低減につながる。なお、
図5は、リブ21の配置範囲31と固定範囲32との位置関係を入射面側からの投影図である。
【0018】
[実施形態2]
実施形態2に関して説明する。
図6はリブ21近傍の断面図である。本実施形態ではリブ21を支持基台7の端部近傍に配置する。また、外装リブの一例である枠体リブ23が外装から伸びているような形に構成される。なお、枠体リブ23は、枠体1と同一の部材であるが、異なる材料であってもよい。ここで、放射線撮影装置100の端部に衝撃が印加されたとき、枠体リブ23とリブ21との接触が枠体リブ23と他の箇所(例えば、内部部品等)との接触よりも優先的に行われるような位置に、リブ21は配置されている。これにより、リブ21の局所変形が発生することで、実施形態1と同様のセンサの破損リスクを低減する効果を得ることができる。
【0019】
実施形態1ではリブ21が支持基台7の端部外周に配置されていたが、リブ21が、端部から所定距離内側に配置されてもよい。
【0020】
[実施形態3]
実施形態3に関して説明する。
図7は、リブ21近傍の断面図である。リブ21と支持基台7の基本肉厚部との境界に溝部24を設ける。溝部24は、固定部材22の固定範囲32よりも外側に配置される。これにより、外装の端部への衝撃が印加された場合には、リブ21の局所的な変形量が増えることにより、衝撃を吸収することができる。このため、固定範囲32の内側への衝撃の伝達を低減することができる。ため、センサ7の破損低減につながる。本実施形態は、実施形態1、実施形態2の構成ともに適応可能であり、各構成のセンサ7の破損リスクを低減する効果をより向上させる構成である。
【符号の説明】
【0021】
1 枠体
2 放射線透過板
3 背面筐体
6 蛍光体
7 センサ(放射線検出部)
8 遮蔽材
9 支持部材
10 衝撃吸収部材
11a~e フレキ
12a~g 電気基板類
21 リブ
22 固定部材
23 枠体リブ
24 溝部
31 配置範囲
32 固定範囲
100 放射線撮影装置