(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/18 20060101AFI20240902BHJP
B66C 23/74 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E02F9/18
B66C23/74 B
(21)【出願番号】P 2021027624
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204284(JP,A)
【文献】特開平11-256612(JP,A)
【文献】特開2007-085010(JP,A)
【文献】特開2020-158310(JP,A)
【文献】特開2016-137998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/28
B66C 23/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置と、前記上部旋回体の後部に搭載されたカウンタウエイトと、該カウンタウエイトと前記作業装置との間における機体フレーム上に設けられたエンジンを収納するハウスと、該ハウスと前記カウンタウエイトとの間に介在されて互いの接触を防止する接触防止部材とを備え、
前記ハウスの後面に、前記エンジンを冷却した後の排風をハウスの外部へ排出させる排風口が設けられている建設機械において、
前記接触防止部材は、一対の立板部材を、互いの板面を対向させて車幅方向両側に設けることで、板面側に形成された空間に前記カウンタウエイトの前壁を配置してなり、
前記カウンタウエイトの前壁は、
前後方向の段差からなる凸側壁面部及び凹側壁面部と前記立板部材の外側空間に設けられる傾斜壁面部とを有し、各壁面部同士は、前後方向の離間距離が前記立板部材の板幅寸法よりも小さくなる位置関係で設けられ、
前記傾斜壁面部は、前記カウンタウエイトを搭載する際の前記ハウスの後面との当たりを逃がすための隙間を形成し、前記排風口からの排風の流れが外側に向かうようにガイドするように、壁面が外側に向かうほど前記ハウスの後面から大きく離間していることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記カウンタウエイトは、複数のウエイト部材を互いに分離可能に積み重ねて形成され、前記複数のウエイト部材は、水平断面の形状が同一形状であることを特徴とする請求項
1記載の建設機械。
【請求項3】
前記
凹側壁面部の一部は、前記上部旋回体からカウンタウエイトを分離させるときに上部旋回体の後部に搭載したまま残留される常設ウエイトからなることを特徴とする請求項
1又は2記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、作業装置を備えた上部旋回体にカウンタウエイトを着脱可能に搭載した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンや杭打機などの重量のある建設機械を運搬する際には、一般に、構成部品である下部走行体、上部旋回体、作業装置及びカウンタウエイトを分解して別々に運搬し、現場でこれらを組み立てて使用している。この種の建設機械に用いられるカウンタウエイトは、上部旋回体の後端下部に突設したカウンタウエイト搭載部にウエイトを積み重ねてなる積層型カウンタウエイトが採用されており、上部旋回体の後端との間に高強度の接触防止部材を介在させて、搭載されるウエイトが上部旋回体の後端に衝突して上部旋回体の後部が破損することを防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上部旋回体の両側部においては、動力源であるエンジンや油圧機器などを収納するハウスが設けられていることが一般的である。ハウス内には、エンジンの前部側にラジエータやエンジンで駆動される冷却用のファンなどの熱交換器が設けられるとともに、ハウスの前面に吸気口が、反対側の後面に排風口がそれぞれ設けられることにより、ファンの回転で吸気口から外気を導入して熱交換器に通し、冷却済み空気(排風)を排風口から排出するように構成されている。しかしながら、特許文献1に記載された小型杭打機のように、車体のコンパクト性を得ようとすれば、その設計上、ハウスのすぐ後方にカウンタウエイトを配置する必要があるが、こうしたレイアウトに起因して排風の流れが妨げられると、熱交換器の冷却能力が低下しやすくなり、最悪の場合、エンジンや油圧機器のオーバーヒートを招くおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、排風抵抗の増加を抑えてハウス内の熱気を外部へ効率よく排出することが可能な排風構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置と、前記上部旋回体の後部に搭載されたカウンタウエイトと、該カウンタウエイトと前記作業装置との間における機体フレーム上に設けられたエンジンを収納するハウスと、該ハウスと前記カウンタウエイトとの間に介在されて互いの接触を防止する接触防止部材とを備え、前記ハウスの後面に、前記エンジンを冷却した後の排風をハウスの外部へ排出させる排風口が設けられている建設機械において、前記接触防止部材は、一対の立板部材を、互いの板面を対向させて車幅方向両側に設けることで、板面側に形成された空間に前記カウンタウエイトの前壁を配置してなり、前記カウンタウエイトの前壁は、前後方向の段差からなる凸側壁面部及び凹側壁面部と前記立板部材の外側空間に設けられる傾斜壁面部とを有し、各壁面部同士は、前後方向の離間距離が前記立板部材の板幅寸法よりも小さくなる位置関係で設けられ、前記傾斜壁面部は、前記カウンタウエイトを搭載する際の前記ハウスの後面との当たりを逃がすための隙間を形成し、前記排風口からの排風の流れが外側に向かうようにガイドするように、壁面が外側に向かうほど前記ハウスの後面から大きく離間していることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記カウンタウエイトは、複数のウエイト部材を互いに分離可能に積み重ねて形成され、前記複数のウエイト部材は、水平断面の形状が同一形状であることを特徴としている。
【0009】
加えて、前記凹側壁面部の一部は、前記上部旋回体からカウンタウエイトを分離させるときに上部旋回体の後部に搭載したまま残留される常設ウエイトからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建設機械によれば、カウンタウエイトの接触防止部材として一対の立板部材を採用し、これらの板面側に形成した空間にカウンタウエイトの前壁を配置するとともに、前壁の各壁面部同士を前後方向の離間距離が立板部材の板幅寸法よりも小さくなる位置関係で設けているので、特許文献1の接触防止部材を備えた構成と同様に吊り状態にあるカウンタウエイトの接触防止や位置決めの容易化が図れ、さらには、カウンタウエイトの壁面部の段差や傾斜がもたらす前後方向の寸法差により、壁面部が立板部材の前側縁の位置を超えてハウスに接近するおそれがなくなり、ハウスの後面にある排風口との間に一定の隙間を設けることができる。すなわち、建設機械の安定度に必要なウエイト重量を確保しつつ、排風抵抗の増加を抑えてハウス内の熱気を外部へ効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の建設機械の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図3】上部旋回体からカウンタウエイトを取り外した状態を示す側面図である。
【
図7】カウンタウエイトを搭載する作業状態を示す図である。
【
図8】排風口から排出された排風の流れを示す図である。
【
図9】排風構造の変形例を示す要部側面一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図9は、本発明を建設機械の一例である小型杭打機に適用したもので、杭打機11は、
図1及び
図2に示すように、クローラを備えた下部走行体12の上部に、旋回ベアリング13を介して上部旋回体14が旋回可能に設けられており、上部旋回体14の前部には、起伏可能なリーダ15が設けられている。また、上部旋回体14の前後左右の4箇所には安定用のジャッキ16が設けられている。さらに、上部旋回体14の後端下部にはカウンタウエイト搭載部17が突設され、該カウンタウエイト搭載部17には、作業中の車体のバランスをとるためのカウンタウエイト18が搭載されている。
【0013】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、上端部には吊り用のロープが巻掛けられるトップシーブ19が、下部前方には回転駆動される施工部材の振れを防止する振止装置20がそれぞれ備わっている。また、リーダ15の前面中央にはラックピニオン式昇降機構の構成品の一つであるラックギヤ21が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ22,22が、リーダ15の全長に亘ってそれぞれ連続的に設けられている。
【0014】
作業装置の一例であるオーガ23は、出力軸(ロッド)23aを回転駆動させるためのオーガ駆動用油圧モータ23bやチャック機構23cなどを備えており、前記ガイドパイプ22,22に摺接する左右一対のガイドギブ23d,23dが後方に突出して設けられるとともに、前記ラックギヤ21の両側に設けられている歯列に歯合するピニオンギヤをオーガ昇降用油圧モータ23eで回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能に構成されている。
【0015】
上部旋回体14は、
図3にも示すように、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレーム24と、該メインフレーム24の車幅方向両側部に枠組みされたフロアフレーム25(反対側は図示せず)とが一体的に結合されている機体フレームを有しており、各種大型部品は主にメインフレーム24に装着されている。右側のフロアフレーム上の前部には、オーガ23や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室26が設置されている。また、右側のフロアフレーム上の後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収納する機器収納ハウス27が設けられている。一方、左側のフロアフレーム25上には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するためのエンジンパワーユニット(油圧源装置)や、これに付属する燃料タンク、排ガス浄化装置などの複数の関連機器を収納するエンジン収納ハウス28が設けられている。
【0016】
エンジンパワーユニットは、図示は省略するが、フロアフレーム25上に防振状態で搭載されたディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)と、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に、片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置とを有して構成されている。また、フロアフレーム25上のエンジンの前部側、つまり冷却ファンによる冷却風の流れ方向の上流側には、冷却ファンと対面して配置されたラジエータが設けられている。
【0017】
各ハウス27,28は、略矩形箱型に形成され、複数の点検扉28a(反対側は図示せず)がそれぞれ設けられている。また、エンジン収納ハウス28の前後面は、比較的小さい孔を多数備えたパンチングメタル形状を有しており、昇降用の階段29を備えた前面28bに吸気口が、反対側の後面28cに排風口がそれぞれ設けられている。これにより、冷却ファンの回転で吸気口から外気を導入してラジエータに通し、冷却済み空気(排風)を排風口から外へ排出することが可能である。機器収納ハウス27についても後面27aに同様のパンチングメタル形状を有しており、油温上昇に伴って発生する作動油タンクの熱を外へ排出することが可能である。
【0018】
このように形成された杭打機11は、
図3に示すように、質量制限に影響を与えるカウンタウエイト18を上部旋回体14から分離させた状態で別々に輸送され、現場でこれらを組み立てて使用される。
【0019】
ここで、車体のコンパクト性が求められる小型の杭打機11では、その設計上、ハウス27,28のすぐ後方にカウンタウエイト18を配置する必要がある。しかしながら、カウンタウエイト18がハウス27,28に近づき過ぎると、ハウス後面からの排風の排出が妨げられ、例えば、高負荷で長時間運転するような場合に、エンジンや油圧機器のオーバーヒートを招くおそれがある。そこで、杭打機11にはカウンタウエイト18のバランスウエイトとしての機能やその搭載性を損ねずに放熱効果を高めることが可能な排風構造が備わっている。この排風構造は、カウンタウエイト搭載部17とこれに搭載するカウンタウエイト18とで形成されている。
【0020】
カウンタウエイト搭載部17は、
図4乃至
図6に示すように、それ自体がバランスウエイトとして機能するもので、カウンタウエイト18を支持する本体部30の両側にジャッキ16の取付部を兼ねた接触防止部材31を備え、該接触防止部材31が各ハウス27,28とカウンタウエイト18との間に介在されることにより、これらの互いの接触を防止している。本体部30の前端における幅方向の2箇所には、メインフレーム24の後端部に取り付けるための二股部30aが設けられており、これをメインフレーム24の連結腕24aに重合させ、連結ピン32によるピン結合がなされることにより、カウンタウエイト搭載部17が連結腕24aを介して上部旋回体14の後部に取り付けられた状態となる。
【0021】
接触防止部材31は、カウンタウエイト搭載部17の前部に鉛直上方に延びる一対の立板部材33,33を設けて本体部30の両側面と一体化が図られ、互いの立板部材33,33の板面を対向させて、かつ、カウンタウエイト搭載部17の中心線を挟んで幅方向に離間させている。これにより、吊り状態にあるカウンタウエイト18の前壁を立板部材33の後側縁33aに当接させると、カウンタウエイト搭載部17に対して前後方向に片寄せ状態で位置決めされる。
【0022】
一対の立板部材33,33は、カウンタウエイト18の衝突に耐える厚み(例えば板厚寸法32mm)と幅寸法Wとを有する鋼板であって、上端部に車体を吊り上げるための吊り部33bを有するとともに、これらの内側板面には溶接で固定された一対の常設ウエイト34,34がそれぞれ設けられている。常設ウエイト34は、カウンタウエイト18の前壁の一部を構成するもので、上部旋回体14からカウンタウエイト18を分離させるときに上部旋回体14の後端部、すなわち、一対の立板部材33,33の内側空間に搭載したまま残留される。
【0023】
カウンタウエイト18は、複数のウエイト部材35を互いに分離可能に積み重ねて形成されている。各ウエイト部材35は、幅方向において対称形状をなし、複数枚の鋼製厚板を積層して周囲を化粧板で覆った幅広なブロック体である。また、各ウエイト部材35の水平断面の形状は同一形状であり、上面の幅方向2箇所には搭載時に使用される吊り耳35a,35aが取り付けられている。また、各ウエイト部材35間(載置面)には、図示は省略するが、凹部と凸部とからなる嵌合構造が設けられており、各ウエイト部材35を上下に積み重ねたときに相互の位置決めが図られるとともに、幅方向両側面35b,35bが各ハウス27,28の外側面と略面一に整合した状態となる。
【0024】
このように形成されたカウンタウエイト18は、カウンタウエイト搭載部17に全てのウエイト部材35を搭載した状態で、カウンタウエイト搭載部17及びウエイト部材35を貫通した長尺のボルト36をナット37で締結することによってカウンタウエイト搭載部17にまとめて固定される。
【0025】
前記排風構造は、カウンタウエイト18の搭載状態で、一対の立板部材33,33の板面側に形成された内外空間にカウンタウエイト18の前壁を配置したものである。この前壁は、
図4及び
図5などに示すように、常設ウエイト34及びウエイト部材35の前壁面部であって幅方向(
図5の上下方向)において対称形状をなし、前後方向(
図5の左右方向)の段差からなる凸側壁面部35cや凹側壁面部34a,35d、さらには、前壁の角隅部を面取りした前後方向の傾斜からなる傾斜壁面部35eを有している。
【0026】
各壁面部34a,35c,35d,35e同士は、壁面上に規定した2点間の前後方向の離間距離が立板部材33の板幅寸法Wよりも小さくなる位置関係で設けられている。これにより、例えば、凸側壁面部35cと凹側壁面部35dとの壁面上2点間の前後方向の離間距離を立板部材33の板幅寸法Wよりも小さくなる値で最大に設定すれば、ハウス27,28の後面27a,28cと凸側壁面部35cとの接触を回避しつつ、上部旋回体14の後端中央部におけるウエイト搭載量を増大させることができる。
【0027】
一方、凸側壁面部35cの位置に対して凹側壁面部35dの位置が後退することで、立板部材33の内側に空間が設けられるため、ハウス27,28との間で立板部材33の板幅寸法W分の前後空間、つまり常設ウエイト34の設置空間(占有空間)を確保することができる。また、壁面状に設置した常設ウエイト34の厚みを減らし、凹側壁面部34aと凹側壁面部35dとの壁面上2点間の前後方向の離間距離を立板部材33の板幅寸法Wの半分程度の値に設定すると、凹側壁面部34aが対面するハウス27,28の後面27a,28c、つまり排風口との間に一定の隙間を確保することができる。
【0028】
さらに、傾斜壁面部35eは、立板部材33の外側空間に設けられるとともに、壁面が内側から外側に向かうほど、言い換えると、壁面がウエイト部材35の側面35bに近い位置ほどハウス27,28の後面27a,28cから大きく離間している。これにより、例えば、凹側壁面部35dと、傾斜壁面部35eにおける内側端部との壁面上2点間の前後方向の離間距離を立板部材33の板幅寸法Wの範囲内で、かつ、なるべく大きくなる値で設定すれば、凹側壁面部34aを後退させて設けた隙間分の重量に相当する重量を積み降ろし可能な状態で確保しつつ、傾斜壁面部35eが対面するハウス27,28の後面27a,28c、つまり排風口との間に外側へ向かって徐々に広がる隙間を確保することができる。
【0029】
このような排風構造を備えた杭打機11は、施工現場に搬入されると、例えば、起立させたリーダ15の前面にオーガ23が装着され、カウンタウエイト搭載部17にはカウンタウエイト18が搭載される。ここで、ウエイト部材35は、クレーンの吊り操作でカウンタウエイト搭載部17上に順に重ねられる。このとき、
図7に示すように、ウエイト部材35の向きが左右に振れた状態でも、その前壁(凹側壁面部35d)が接触防止部材31の立板部材33に当接してこれ以上ハウス28に近づくことが阻止される。さらには、傾斜壁面部35eからなる面取り形状により、ハウス28の後面28cとの当たりを逃がすための隙間が形成され、ハウス28への接触が回避される。
【0030】
組立作業の完了後、エンジンを駆動すると、エンジンパワーユニットから必要となる動力が、例えば、オーガ昇降用油圧モータ23eやオーガ駆動用油圧モータ23bなどを作動させる圧油が得られ、リーダ15の前面に装着したオーガ23の昇降及び回転駆動を含む各種動作が行える。これにより、杭打機11は、現場の施工位置にジャッキ16を接地した静止状態で、オーガ23から駆動力を得て地中に杭を造成することが可能になる。
【0031】
ここで、高負荷で長時間運転するような場合には、排風構造がその放熱機能を発揮し、
図8の矢印で示すように、カウンタウエイト18の前壁(壁面部34a,35c,35e)とエンジン収納ハウス28の後面28cとの間に設けた隙間により、排風口からの排風の排出が促進される。また、傾斜壁面部35eに当たった排風は、その流れが外側に向かうようにガイドされる。反対側の機器収納ハウス27においても同様に、排風構造が機能して排風口からの熱の放出が促進される。
【0032】
このように、本発明の建設機械によれば、カウンタウエイト18の接触防止部材31として一対の立板部材33,33を採用し、これらの板面側に形成した空間にカウンタウエイト18の前壁を配置するとともに、前壁の各壁面部34a,35c,35d,35e同士を前後方向の離間距離が立板部材33の板幅寸法Wよりも小さくなる位置関係で設けているので、特許文献1の接触防止部材を備えた構成と同様に吊り状態にあるカウンタウエイト18の接触防止や位置決めの容易化が図れ、さらには、カウンタウエイト18の壁面部34a,35c,35d,35eの段差や傾斜がもたらす前後方向の寸法差により、壁面部35c,35eが立板部材33の前側縁33cの位置を超えてハウス27,28に接近するおそれがなくなり、ハウス27,28の後面27a,28cにある排風口との間に一定の隙間を設けることができる。すなわち、建設機械の安定度に必要なウエイト重量を確保しつつ、排風抵抗の増加を抑えてハウス内27,28の熱気を外部へ効率よく排出することができる。
【0033】
また、傾斜壁面部35eが立板部材33の外側空間に設けられ、その壁面が外側に向かうほどハウス27,28の後面27a,28cから大きく離間しているので、排風口の周囲において熱の滞りが少なくなり、排風の流れを円滑なものとすることができ、さらに、こうした傾斜壁面部35eからなる面取り形状により、搭載されるウエイト部材35の振れなどの問題に対しても同時に解決を図ることができる。
【0034】
加えて、複数のウエイト部材35について水平断面の形状を同一形状としているので、ウエイト部材35を積み重ねる順番に特段の注意を払う必要がなくなり、カウンタウエイト18を着脱する際の作業効率化に寄与するものである。すなわち、ウエイト部材35を積み重ねてなる積層型カウンタウエイトに好適な排風構造が得られる。
【0035】
とりわけ、カウンタウエイト18の前壁が常設ウエイト34からなるため、特許文献1の接触防止部材を備えた構成にも容易に適用することができる。この場合、立板部材33の板面側に形成された空間を重量調整のための空間(スペース)とすることで、輸送時に質量制限の影響が小さい場合であれば、調整部分の多くを車体側に残留させるだけでよいことになる。一方、質量制限の影響が大きい場合であれば、調整部分をウエイト部材35側に預けて車体から分離させるだけでよいので、車体の軽量化を図ることが容易である。すなわち、設計の適用の幅を広げることが容易な建設機械の排風構造が達成される。
【0036】
図9は、本発明の排風構造を備えた建設機械の変形例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
本変形例では、前記形態例における排風構造の基本構成をそのまま有しており、凹側壁面部35dが対面するハウス27,28の後面27a,28cとの間に形成した隙間に整流板38を設けたものである。整流板38は、矩形平板状のものであって、カウンタウエイト搭載部17における本体部30の前端上面から上方へ向かって延び、その板面が上方に向かうほどハウス27,28の後面27a,28cから大きく離間して配置されている。そして、このように構成された本形態例においても、凹側壁面部35dを含む前壁の特徴的な排風構造によって排風抵抗の増加を抑えることができ、さらに、本形態例の場合には、整流板38の傾斜した板面によって上向きの気流を形成することが可能となり、排風の整流効果が発揮される。
【0038】
なお、本発明は、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。この場合、排風構造を設ける際に、排気系に対して構造変更を何ら必要としないので、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。とりわけ、建設機械の中でも杭の埋設や地盤改良などを行う杭打機は、施工位置にジャッキを接地して長時間その場に止まることから、ヒートバランスの向上対策として特に有効である。
【符号の説明】
【0039】
11…杭打機、12…下部走行体、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…リーダ、16…ジャッキ、17…カウンタウエイト搭載部、18…カウンタウエイト、19…トップシーブ、20…振止装置、21…ラックギヤ、22…ガイドパイプ、23…オーガ、23a…出力軸、23b…オーガ駆動用油圧モータ、23c…チャック機構、23d…ガイドギブ、23e…オーガ昇降モータ、24…メインフレーム、24a…連結腕、25…フロアフレーム、26…運転室、27…機器収納ハウス、27a…後面、28…エンジン収納ハウス、28a…点検扉、28b…前面、28c…後面、29…階段、30…本体部、30a…二股部、31…接触防止部材、32…連結ピン、33…立板部材、33a…後側縁、33b…吊り部、33c…前側縁、34…常設ウエイト、34a…凹側壁面部、35…ウエイト部材、35a…吊り耳、35b…側面、35c…凸側壁面部、35d…凹側壁面部、35e…傾斜壁面部、36…ボルト、37…ナット、38…整流板