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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】溶融用ヒータ、および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/14 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B29C65/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021044363
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143703
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】内藤 章弘
(72)【発明者】
【氏名】上村 孝志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆貴
(72)【発明者】
【氏名】西田 正三
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-162264(JP,A)
【文献】特開2007-296700(JP,A)
【文献】特開2019-155775(JP,A)
【文献】特表平09-502405(JP,A)
【文献】特開平08-156102(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2007-0006861(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-45/84
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の半成形品のそれぞれの接合端面を溶融して接合し成形品を製造するときに前記接合端面を溶融させるための溶融用ヒータであって、
前記溶融用ヒータは、
平行に配置された2枚のガラス板と、
前記2枚のガラス板の間に全体として平板状のユニットに配置された複数本の要素ヒータと、を備え、
前記ガラス板には、前記接合端面の形状に合わせた表面加工が施され、前記複数本の要素ヒータから放射される赤外線をコントロールして前記接合端面を選択的に加熱して溶融すると共に他の部分の溶融を防止するようになっている、溶融用ヒータ。
【請求項2】
前記複数本の要素ヒータのそれぞれは直線状になっており互いに平行に配置されている、請求項1に記載の溶融用ヒータ。
【請求項3】
前記溶融用ヒータは、前記複数本の要素ヒータがそれぞれ水平に設けられている、請求項1または2に記載の溶融用ヒータ。
【請求項4】
前記表面加工は赤外線を特定のパターンで遮光し、または減光し、あるいは散乱するマスキング処理である、請求項1~3のいずれかの項に記載の溶融用ヒータ。
【請求項5】
前記表面加工は前記ガラス板の表面の凹凸により赤外線の屈折を調整して赤外線を集光し、あるいは発散させる凹凸加工である、請求項1~4のいずれかの項に記載の溶融用ヒータ。
【請求項6】
前記複数本の要素ヒータは、個別に通電を制御することが可能になっている、請求項1~5のいずれかの項に記載の溶融用ヒータ。
【請求項7】
前記複数本の要素ヒータは、隣接する2本が1組として直列に接続されており、組毎に通電される、請求項1~6のいずれかの項に記載の溶融用ヒータ。
【請求項8】
前記溶融用ヒータは、前記複数本の要素ヒータのうち略半数の前記要素ヒータから平面状の1層目が形成され、残りの本数の前記要素ヒータから平面状の2層目が形成された、2層構造になっている、請求項1~7のいずれかの項に記載の溶融用ヒータ。
【請求項9】
前記1層目と前記2層目の間には、赤外線を反射する反射部材が設けられている、請求項8に記載の溶融用ヒータ。
【請求項10】
前記溶融用ヒータの前記複数本の要素ヒータには、それぞれ、前記1層目と前記2層目が対向する側の面において、赤外線を反射する表面処理が施されている、請求項8に記載の溶融用ヒータ。
【請求項11】
平行に配置された2枚のガラス板と、
前記2枚のガラス板の間に全体として平板状のユニットに配置された複数本の要素ヒータと、を備えている溶融用ヒータを使用して、
一対の金型によって一対の半成形品を成形する射出成形工程と、
型開工程において一方の半成形品を一方の金型に、そして他方の半成形品を他方の金型にそれぞれ残す型開工程と、
前記一対の半成形品のそれぞれの接合端面を近づけて対向させる整合工程と、
前記一対の半成形品の接合端面間に前記溶融用ヒータを非接触的に挿入して接合端面を溶融する溶融工程と、
前記溶融用ヒータを退避させて型閉じして互いの接合端面を圧着する圧着工程と、を備え、
前記ガラス板には前記接合端面の形状に合わせた表面加工を施しておき、前記溶融工程において、前記複数本の要素ヒータから放射される赤外線をコントロールして前記接合端面を選択的に加熱して溶融すると共に他の部分の溶融を防止するようにする、成形品の製造方法。
【請求項12】
前記溶融用ヒータは、前記複数本の要素ヒータのそれぞれが直線状になっており互いに平行に配置されている、請求項11に記載の成形品の製造方法。
【請求項13】
前記溶融用ヒータは、前記複数本の要素ヒータがそれぞれ水平に設けられている、請求項11または12に記載の成形品の製造方法。
【請求項14】
前記表面加工は赤外線を特定のパターンで遮光し、または減光し、あるいは散乱するマスキング処理である、請求項11~13のいずれかの項に記載の成形品の製造方法。
【請求項15】
前記表面加工は前記ガラス板の表面の凹凸により赤外線の屈折を調整して赤外線を集光し、あるいは発散させる凹凸加工である、請求項11~14のいずれかの項に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の一対の半成形品をそれぞれの接合端面を溶融して接合して成形品を得るとき、それらの接合端面の溶融に使用される溶融用ヒータ、および溶融用ヒータを使用して成形品を製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂からなる一対の半成形品を、それぞれの接合端面を溶融して互いに圧着し、成形品を製造するには、接合端面を溶融する溶融用ヒータを使用する必要がある。溶融用ヒータは、非接触かつ短時間で溶融端面を加熱することができるカーボンヒータ、ハロゲンヒータから形成されている。カーボンヒータまたはハロゲンヒータは、接合端面の形状に適合するようにその形状が形成され、接合端面を効率的に溶融できるようになっている。しかしながら、接合端面の形状は成形品の種類毎に異なっているので、成形品の種類毎に溶融用ヒータを用意しなければならない。
【0003】
これに対して特許文献1には、カーボンヒータまたはハロゲンヒータについて平板状を呈するように加工した溶融用ヒータが提案されている。つまりカーボンヒータまたはハロゲンヒータを、複数箇所の直線区間が形成されるように複数回屈曲させる。そして複数の直線区間が互いに平行に等間隔になるように、かつ同一平面状に配置されるようにする。このようにして溶融用ヒータが平板状に形成されている。この溶融用ヒータは、それぞれの接合端面が対向するように配置された一対の半成形品の間に非接触的に挿入する。そして溶融用ヒータを揺動させると接合端面を均一に溶融することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-116712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の溶融用ヒータは、接合端面の形状に合わせて形成する必要がない。つまり成形品の種類毎に溶融用ヒータを用意する必要がなく汎用的に使用でき優れている。しかしながら、溶融したい接合端面以外の部分も加熱される揺動されるという問題がある。
【0006】
本開示において、半成形品の接合端面を選択的に加熱することができる溶融用ヒータ、および成形品の製造方法を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
溶融用ヒータを、平行に配置された2枚のガラス板と、これら2枚のガラス板の間に設けた複数本の要素ヒータとから構成する。複数本の要素ヒータは、全体として平板状のユニットに配置されるようにする。そしてガラス板には、複数本の要素ヒータから放射される赤外線をコントロールする表面加工を施す。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、他の部分を溶融することなく、接合端面を選択的に加熱して溶融することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る製造装置である、射出成形機とヒータ装置の一部を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係る射出成形機の一部とヒータ装置とを示す側面図である。
図3】本実施の第1の形態に係る溶融用ヒータの正面図である。
図4図3におけるX-X断面で示す、本実施の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
図5】一対の要素ヒータからなるペアヒータを示す正面図である。
図6】本実施の形態に係る成形品の製造装置である、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部と、溶融用ヒータとを示す正面断面図である。
図7A】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法の一部の工程における、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部とを示す正面断面図である。
図7B】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法の一部の工程における、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部とを示す正面断面図である。
図7C】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法の一部の工程における、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部とを示す正面断面図である。
図7D】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法の一部の工程における、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部と、溶融用ヒータとを示す正面断面図である。
図7E】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法の一部の工程における、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部とを示す正面断面図である。
図7F】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法の一部の工程における、本実施の形態に係る金型と、射出成形機の一部とを示す正面断面図である。
図8】本実施の第2の形態に係る溶融用ヒータの正面図である。
図9】本実施の第3の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
図10】本実施の第4の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
図11】本実施の第5の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
図12】本実施の第6の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
図13】本実施の第7の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
図14】本実施の第8の形態に係る溶融用ヒータの上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
本実施の形態を説明する。
<成形品の製造装置>
本実施の形態に係る成形品の製造装置1は、図1に示されているように、射出成形機2と、本実施の形態に係るヒータ装置3とから構成されている。後で説明するように、射出成形機2において一対の半成形品を成形し、これら一対の半成形品の接合端面をヒータ装置3によって溶融し、半成形品を圧着して成形品を得るようになっている。
【0013】
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機2は型締装置5と射出装置6とから構成されている。型締装置5はベッドB上に固定されている固定盤8と、ベッドB上をスライドする型締ハウジング9と、ベッドB上を同様にスライドする可動盤11とを備えている。固定盤8と型締ハウジング9は複数本、例えば4本のタイバー12、12、…によって連結されている。可動盤11は、固定盤8と型締ハウジング9の間でスライド自在になっている。型締ハウジング9と可動盤11の間にはトグル機構からなる型締機構14が設けられている。なお型締機構14は直圧式の型締シリンダから構成してもよい。
【0014】
固定盤8と可動盤11にはそれぞれ本実施の形態に係る固定側金型16と可動側金型17とが設けられ、型締機構14を駆動すると型開閉するようになっている。型締ハウジング9は、これらの金型16、17の厚みに応じてスライドして、型開き時の固定盤8と可動盤11との距離を調整するようになっている。これらの金型16、17については後で説明する。本実施の形態に係るヒータ装置3は、これらの金型16、17に隣接して配置されており、図1において紙面の奥行き方向に設けられている。
【0015】
射出装置6は、加熱シリンダ19と、この加熱シリンダ19に入れられているスクリュ20と、スクリュ20を駆動するスクリュ駆動装置21とから構成されている。加熱シリンダ19にはホッパ22と射出ノズル23とが設けられている。スクリュ20を回転してホッパ22から樹脂材料を供給すると樹脂材料は加熱シリンダ19内で溶融され計量される。スクリュ20を軸方向に駆動すると溶融された樹脂が射出ノズル23から射出される。
【0016】
<ヒータ装置>
本実施の形態に係るヒータ装置3は、図2に示されているように、射出成形機2の側方に設けられている。ヒータ装置3は、次に説明する本実施の形態に係る溶融用ヒータ25と、この溶融用ヒータ25を水平に駆動する駆動機構26と、駆動機構26を支持している基台24とから概略構成されている。駆動機構26によって、溶融用ヒータ25を金型16方向に駆動したり、金型16から退避させたりできるようになっている。ヒータ装置3には溶融用ヒータ25に電力を供給する電力供給装置も設けられているが、図2においては図示が省略されている。
【0017】
<溶融用ヒータ>
本実施の形態に係る溶融用ヒータ25として、図3、4には本実施の第1の形態に係る溶融用ヒータ25Aが示されている。溶融用ヒータ25Aは、金属製の長方形状の枠体27と、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ等からなり赤外線、遠赤外線を照射する複数本の直線状の要素ヒータ28、28、…と、2枚のガラス板30、30とから構成されている。複数本の要素ヒータ28、28、…は枠体27内に平行に配置され、全体が平板状のユニットになっている。そしてこれら複数本の要素ヒータ28、28、…を覆うように2枚のガラス板30、30が枠体27に設けられている。
【0018】
第1の実施の形態についてより詳しく説明すると、要素ヒータ28、28、…は2本ずつが1組のペアヒータ32、32になっている。ペアヒータ32は、図5に示されているように、石英ガラス管33と、この石英ガラス管33に入れられた2本の要素ヒータ28、28とからなる。これら要素ヒータ28、28はそれぞれの一方の端部において結線されている。従って、他方の端部から電力を供給すると電流が2本の要素ヒータ28、28を直列に流れるようになっている。このようなペアヒータ32、32、…が、図3に示されているように、垂直に設けられ、水平方向に所定の間隔を空けて平行に配置されている。
【0019】
第1の実施の形態においては、要素ヒータ28、28、…が断線した場合、断線した1本の要素ヒータ28のみを交換すれば足りる。あるいは、1組の要素ヒータ28、28からなるペアヒータ32のみを交換すれば足りる。これは、要素ヒータ28、28、…を、加熱対象に適合させるようにその形状を屈曲させる等の加工が不要であるからである。つまり、本開示は修復コストを低減するとともに予備ヒータの管理が容易となる効果を奏する。
【0020】
溶融用ヒータ25Aは、2枚のガラス板30、30が設けられている点、およびこれらのガラス板30、30に表面加工が施されている点に特徴がある。複数本の要素ヒータ28、28からの赤外線は平面状に一様に放射されるが、この赤外線をコントロールするために表面加工が施されている。第1の実施の形態においては、表面加工は赤外線を遮光する、あるいは減光するマスキング処理になっている。後で説明するように半成形品の接合端面だけを選択的に加熱できるように、接合端面の形状に合わせて所定のパターンでマスキング処理が施されている。
【0021】
具体的に説明すると、本実施の形態においては、マスキング処理のうち皮膜処理が採用されている。つまり、ガラス板30、30の表面に、図4において符号35、35、…で示されているように、遮光用の塗料が塗布されている。この他に皮膜処理として、メッキ、コーティングを施してもよいし、色付きのガラスを接合してもよい。さらにマスキング処理にはサンド処理、あるいはエッジング処理もある。つまりガラス板30、30の表面にサンド処理を施して、擦りガラスに加工して所定のパターンで赤外線が散乱・減光されるようにしてもよい。このようなマスキング処理を施したガラス板を用いることで、成形品形状が変更した場合でも、成形品形状のパターンに合わせてマスキング処理したガラス板に入れ替えるだけで、簡単にヒータの加熱領域を変更することができる。
【0022】
図3においては、複数本の要素ヒータ28、28、…のそれぞれに設けられている電線は途中で図示が省略されている。これらの電線は、図示されない電力供給装置に接続されており、必要なタイミングで電力が供給され要素ヒータ28、28から赤外線が照射されるようになっている。
【0023】
<金型>
本実施の形態に係る固定側金型16と可動側金型17とを説明する。図6に示されているように、固定側金型16は、その背面から射出装置6の射出ノズル23がタッチしており樹脂が射出されるようになっている。可動側金型17は、可動盤11に固定されている固定プレート17Aと、この固定プレート17Aに対してスライド自在に設けられているスライド金型17Bとから構成されている。スライド金型17Bはピストンシリンダユニット38によって上下にスライドされるようになっている。後で説明するように、スライド金型17Bは成形位置と、圧着位置とにスライドされることになる。
【0024】
固定側金型16とスライド金型17Bには、パーティングラインに成形品を成形するための凹凸が形成されている。すなわち固定側金型16には、その上側に第1の凹部40が形成され、下側に第1の凸部41が形成されている。そしてスライド金型17Bには、その上側に第2の凸部42が形成され、下側に第2の凹部43が形成されている。従って、スライド金型17Bを成形位置にして、金型16、17を型締めすると、第1の凹部40と第2の凸部42とから、そして第1の凸部41と第2の凹部43とからそれぞれキャビティが構成されることになる。
【0025】
<成形品の製造方法>
本実施の形態に係る成形品の製造装置1を使用して成形品を製造する方法を説明する。図6に示されているように、ピストンシリンダユニット38を駆動してスライド金型17Bを下方にスライドする。すなわち成形位置にする。型締装置5を駆動して型締めする。そうすると図7Aに示されているように、固定側金型16の第1の凹部40とスライド金型17Bの第2の凸部42とから、そして固定側金型16の第1の凸部41とスライド金型17Bの第2の凹部43とから、それぞれキャビティが構成される。次に、射出成形工程を実施する。つまり射出装置6から樹脂を射出する。そうすると、第1、2の半成形品45、46が成形される。
【0026】
第1、2の半成形品45、46の冷却・固化を待って型開工程を実施する。そうすると図7Bに示されているように、第1の半成形品45は固定側金型16に、第2の半成形品46はスライド金型17Bに残った状態で型開きされる。第1の半成形品45と第2の半成形品46には、それぞれ接合端面45A、46Aが形成されている。
【0027】
整合工程を実施する。つまり図7Cに示されているように、ピストンシリンダユニット38を駆動して、スライド金型17Bを上方の圧着位置にスライドする。このとき第1、2の半成形品45、46は、それぞれの接合端面45A、46A同士が対向する。すなわち整合する。
【0028】
溶融工程を実施する。つまり駆動機構26(図2参照)を駆動して、図7Dに示されているように第1、2の半成形品45、46の間に本実施の形態に係る溶融用ヒータ25Aを挿入する。必要に応じて型締装置5(図1参照)により型開量を調節して接合端面45A、46Aの間隔を近づける。ただし溶融用ヒータ25Aは接合端面45A、46Aに対して非接触状態を維持する。複数本の要素ヒータ28、28、…(図3図4参照)に電流を供給すると赤外線が放射される。ガラス板30に施されたマスキング処理35、35によって赤外線は接合端面45A、46Aを選択的に照射して、これらを溶融する。
【0029】
圧着工程を実施する。つまり駆動機構26(図2参照)を駆動して、溶融用ヒータ25Aを退避する。ついで図7Eに示されているように、型締装置5を駆動して型閉じする。そうすると第1、2の半成形品45、46はそれぞれの接合端面45A、46A同士が圧着される。つまり接合される。型締装置5を駆動して型開きすると、図7Fに示されているように成形品47が得られる。
【0030】
<第2の実施の形態に係る溶融用ヒータ>
溶融用ヒータ25は色々な変形が可能である。図8には第2の実施の形態に係る溶融用ヒータ25Bが示されている。この実施の形態においては、複数本の要素ヒータ28、28、…はペアにはなっておらず、互いに独立している。つまりこれらの要素ヒータ28、28、…それぞれ石英ガラス管33‘、33’、…に1本ずつ設けられている。このような要素ヒータ28、28、…は水平に設けられ、上下方向に等間隔に配置されている。
【0031】
なお、要素ヒータ28、28、…による加熱は赤外線の放射の割合がほとんどだが、空気の対流による加熱の割合も若干ある。加熱された空気は、図8において符合50で示されているように上昇するので、上方の方がより加熱されやすい。そこで、下側に配置されている要素ヒータ28、28、…に比して上側に配置されている要素ヒータ28、28、…の通電時間を短くしたり、供給する電流の大きさを小さくしたりして、調整しても良い。
【0032】
<第3の実施の形態に係る溶融用ヒータ>
図9には第3の実施の形態に係る溶融用ヒータ25Cが示されている。この実施の形態においては、2枚のガラス板30‘、30’に施されている表面加工は、板厚を部分的に変えて表面に凹凸を形成する凹凸加工からなる。具体的には、ガラス板30‘、30’には、凸部51、51、…と、凹部52、52が形成されている。このような凹凸加工が施されているので、要素ヒータ28、28、…から照射される赤外線は屈折する。すなわち、凸部51では集光され、凹部52では発散されることになる。これによって半成形品45、46(図7C参照)の接合端面45A、46Aを選択的に加熱することができる。
【0033】
<第4の実施の形態に係る溶融用ヒータ>
図10には第4の実施の形態に係る溶融用ヒータ25Dが示されている。この実施の形態においては、要素ヒータ28、28、…は第1層と第2層の2層に配置されている。すなわち2層構造になっている。そして第1層の要素ヒータ28、28、…と第2層の要素ヒータ28、28、…の間には反射板55が設けられている。反射板55によって第1層の要素ヒータ28、28、…からの赤外線と、第2層の要素ヒータ28、28、…からの赤外線とを分離して、一方のガラス板30側と、他方のガラス板30側とに均等に照射することができる。なお、反射板55は必須ではなく、必要に応じて設けるようにすればよい。
【0034】
なお、1台の射出成形機2に複数台の射出装置6、6を設けて、色違い、あるいは樹脂違いの半成形品45、46を成形する場合がある。この場合、半成形品45と半成形品46とでの赤外線の吸収率や溶融温度の違いから両者の溶融状態に違いが出て、両者を溶着できる温度まで加熱すると、先に溶融した方の樹脂が分解を始める恐れがある。このような場合、第1層と第2層とに配置されている要素ヒータ28、28、…の通電時間に差をつけたり、供給する電流の大きさに差をつけたりして、両者の溶融状態を調整しても良い。
【0035】
<第5の実施の形態に係る溶融用ヒータ>
図11には第5の実施の形態に係る溶融用ヒータ25Eが示されている。この実施の形態も、第4の実施の形態と同様に、要素ヒータ28、28、…が2層構造に配置されている。この実施の形態においては、それぞれの石英ガラス管33、33には、一方の面にアルミ蒸着等により反射膜56、56、…が施されている。これによって第4の実施の形態における反射板55(図10参照)と同様の効果が得られる。
【0036】
<第6、7の実施の形態に係る溶融用ヒータ>
本実施の形態に係る溶融用ヒータ25において、要素ヒータ28、28、…の配置の方向には制約はない。ヒータを斜め方向に配置したり、必要最小限の回数折り曲げた要素ヒータ28を一部、あるいは全体に配置したり、などの色々な変形が可能である。このような変形例として、図12、13には、第6の実施の形態に係る溶融用ヒータ25F、第7の実施の形態に係る溶融用ヒータ25Gが示されている。
【0037】
<第8の実施の形態に係る溶融用ヒータ>
図14には、第8の実施の形態に係る溶融用ヒータ25Hが示されている。この実施の形態では、成形品の溶着部が両側部において一部横方向に張り出した形状になっている。溶着部の形状に合わせて枠体27、ガラス板30も横方向に張り出した形状になっている。この実施の形態においては、要素ヒータ28、28、…も設けられているが、横方向に張り出した部分に対応するように形状が変形された湾曲ヒータ58、58も採用されている。湾曲ヒータ58、58を採用することによって、複雑な溶着部の形状に対しても対応することができる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 成形品の製造装置 2 射出成形機
3 ヒータ装置 5 型締装置
6 射出装置 8 固定盤
9 型締ハウジング 11 可動盤
12 タイバー 14 型締機構
16 固定側金型 17 可動側金型
17A 固定プレート 17B スライド金型
19 加熱シリンダ 20 スクリュ
21 スクリュ駆動装置 22 ホッパ
23 射出ノズル 24 基台
25、25A、25B、25C、25D、25E、25F、… 溶融用ヒータ
26 駆動機構 27 枠体
28 要素ヒータ 30 ガラス板
32 ペアヒータ 33 石英ガラス管
35 マスキング処理 38 ピストンシリンダユニット
40 第1の凹部 41 第1の凸部
42 第2の凸部 43 第2の凹部
45 第1の半成形品 45A 接合端面
46 第2の半成形品 46A 接合端面
47 成形品 51 凸部
52 凹部 55 反射板
56 反射膜 58 湾曲ヒータ
B ベッド

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14