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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/06 20060101AFI20240902BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20240902BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E05F5/06
E05F5/00 D
E06B3/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021092113
(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公開番号】P2022184333
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 高宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 修一
(72)【発明者】
【氏名】竹長 宰児
(72)【発明者】
【氏名】小石 恵
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-105839(JP,A)
【文献】特開2016-211163(JP,A)
【文献】実開昭52-027493(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0113880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00
E06B 3/04- 3/46
E06B 3/50- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体に支持されて見付け方向にスライド可能な少なくとも1枚の可動障子を含み、見込み方向に並べて配置される複数枚の障子と、を備え、
前記可動障子と、当該可動障子と隣り合う隣接障子とのうちのいずれか一方の前記障子に設けられ、他方の前記障子に当接して前記可動障子と前記隣接障子との相対位置を維持させるストッパーを備えた建具であって、
前記ストッパーは、
前記一方の前記障子の前記他方の前記障子側の面に設けられた開孔から挿入され、前記一方の前記障子と係合して面外方向への移動が規制され、操作により前記規制が解除される係合部を備えた挿入部、及び、
前記挿入部が挿入されて前記一方の前記障子から突出する突出部、
を有する本体部材と、
前記本体部材よりも高い弾性を備え、前記突出部に取り付けられて前記他方の前記障子が当接される障子当接部、及び、
前記本体部材と前記開孔を形成する部位との間に配置される介装部、
を有する弾性部材と、
を有することを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記開孔は、
前記一方の前記障子を構成し、中空部を有する框の前記他方の前記障子側の面を形成する壁部に設けられており、
前記挿入部は、前記可動障子のスライドの方向における一方側にて前記框に当接する框当接部と、前記スライドの方向と交差する交差方向に対向する2つの前記係合部と、を有しており、
前記2つの前記係合部は、前記交差方向において当該2つの前記係合部にわたる幅が前記開孔の幅より狭くなるべく撓み変形可能であり、前記中空部内にて当該開孔の縁をなす前記壁部に係合され、
前記介装部は、前記開孔の前記スライドの方向における他方側で前記壁部と前記本体部材との間に挟持されることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
各々の前記係合部は、前記交差方向における前記開孔の前記縁をなす前記壁部と係合する係合面が、前記中空部の内側から外側に向かって、互いに対向する側に近づく傾斜を有することを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の建具であって、
前記本体部材は、前記一方の前記障子に取り付けられた状態で、前記交差方向における前記開孔の前記縁をなす前記壁部と係合している前記係合部が位置する部位と、外部とを連通する連通孔を備えていることを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1に記載の建具であって、
前記開孔は、
前記一方の前記障子を構成し、中空部を有する框の前記他方の前記障子側の面を形成する壁部に設けられており、
前記開孔は、前記スライドの方向と交差する交差方向の幅が広い拡幅孔部と、前記交差方向の幅が狭い狭幅孔部とを有しており、
前記挿入部は、前記スライドの方向における一方側にて前記框に当接する框当接部と、
前記交差方向に各々突出し、突出した先端部間の間隔が、前記拡幅孔部よりも狭く前記狭幅孔部よりも広い第一の前記係合部と、
前記スライドの方向の他方側に延出し、延出された先端部が前記壁部と係合する第二の前記係合部をなす延出部と、を有し、
前記框当接部が前記框に当接された状態で、前記第一の前記係合部が前記狭幅孔部の縁をなす前記壁部と係合し、前記第二の前記係合部が、前記開孔よりも前記スライドの方向における他方側で前記壁部と係合し、
前記弾性部材は、前記拡幅孔部を前記框の外側から覆うカバー部を有し、
前記介装部と前記カバー部とにより前記拡幅孔部の縁をなす前記壁部を挟持することを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項5に記載の建具であって、
前記介装部は、前記中空部の内側から外側に向かって、外周側から内側に傾く傾斜を備え、
前記傾斜が、前記拡幅孔部の前記縁をなす前記壁部と係合することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見付け方向にスライド可能な障子の移動を規制するストッパーを備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、見付け方向にスライド可能な障子の移動を規制するストッパーとして、例えば、引違い状に配置された2枚の障子のうちの一方の障子に、他方の障子を当てて引き残し寸法を確保するストッパー構造を備えた建具は知られている(例えば、特許文献1参照)。この建具のストッパー構造は、取付部とストッパー部とを有し、障子の上框及び下框の戸先側にそれぞれ設けられている。
【0003】
このように、障子の上框及び下框に取り付けられ、障子の移動を規制するストッパーとしては、引戸の横框に設けられる補助錠も知られている。補助錠のなかには、外障子の室内側に設けられ、移動する内障子に当たるように設けられている。補助錠は、例えば、外障子が備える横框の室内側壁に形成され、横框の端部から長手方向に延びる切り欠きでなる取付孔に、補助錠を係合しつつ長手方向に沿って挿入し、横框の小口を縦框に突き当てて横框と縦框とを接合することにより補助錠が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-105839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の建具に設けられる障子のストッパーは、補助錠のように、横框に設けられた取付孔に挿入し、当該横框の小口に縦框を突き当てて接合することにより補助錠を取り付けているので、経年による摩耗や劣化により交換する際には、横框と縦框とを分離しなければならない。このため、ストッパーを交換する際の作業性が悪いという課題がある。
【0006】
また、縦框と横框との接合部に設けられる取付孔に挿入して取り付けるため、各部材の寸法の公差や部材同士のクリアランス、さらには障子が衝突する際の衝撃等により、縦框及び横框とストッパーとの間にガタツキが生じやすいという課題があった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、交換が容易であり、ガタツキが生じ難いストッパーを備えた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、枠体と、前記枠体に支持されて見付け方向にスライド可能な少なくとも1枚の可動障子を含み、見込み方向に並べて配置される複数枚の障子と、を備え、前記可動障子と、当該可動障子と隣り合う隣接障子とのうちのいずれか一方の前記障子に設けられ、他方の前記障子に当接して前記可動障子と前記隣接障子との相対位置を維持させるストッパーを備えた建具であって、前記ストッパーは、前記一方の前記障子の前記他方の前記障子側の面に設けられた開孔から挿入され、前記一方の前記障子と係合して面外方向への移動が規制され、操作により前記規制が解除される係合部を備えた挿入部、及び、前記挿入部が挿入されて前記一方の前記障子から突出する突出部、を有する本体部材と、前記本体部材よりも高い弾性を備え、前記突出部に取り付けられて前記他方の前記障子が当接される障子当接部、及び、前記本体部材と前記開孔を形成する部位との間に配置される介装部、を有する弾性部材と、を有することを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交換が容易であり、ガタツキが生じ難いストッパーを備えた建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る建具の横断面図である。
図2】本実施形態に係る建具の縦断面図である。
図3】第一障子に設けられたストッパー第二障子に当接している状態を示す図である。
図4】第一実施形態のストッパーが框に取り付けられている状態を示す斜視図である。
図5】第一実施形態のストッパーの構成を示す斜視図である。
図6】第一実施形態のストッパーが取り付けられている状態を示す図である。
図7図6におけるA矢視図である。
図8図8(a)は、第一実施形態のストッパーの挿入部が開孔に挿入される状態を示す図であり、図8(b)は、図8(a)におけるB矢視図であり、図8(c)は、第一実施形態のストッパーの係合部が開孔を通過する状態を示す図であり、図8(d)は、図8(c)におけるC矢視図であり、図8(e)は、第一実施形態のストッパーが取り付けられた状態を示す図であり、図8(f)は、図8(e)におけるD矢視図である。
図9】第二実施形態のストッパーが框に取り付けられている状態を示す斜視図である。
図10】第二実施形態のストッパーの構成を示す斜視図である。
図11図11(a)は、第二実施形態のストッパーの本体部材を示す平面図であり、図11(b)は、図11(a)におけるE矢視図である。
図12図12(a)は、第二実施形態のストッパーの弾性部材を示す平面図であり、図12(b)は、図12(a)におけるF矢視図である。
図13図13(a)は、第二実施形態のストッパーの挿入部が開孔に挿入される状態を示す図であり、図13(b)は、第二実施形態のストッパーの対向片が拡幅孔部に位置する状態を示す図であり、図13(c)は、第二実施形態のストッパーが取り付けられた状態を示す図である。
図14図13(c)におけるG矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、図1図2に示すように、浴室と脱衣室との間に設けられ、2枚の障子1、2をいずれも左右方向にスライド可能に支持する建具枠3を有する浴室用の建具4を例に挙げて説明する。以下の説明では、2枚の可動障子のうちの脱衣室側に設けられている可動障子を第一障子1とし、第一障子1と見込み方向に隣り合い浴室側に設けられている隣接障子となる可動障子を第二障子2として説明する。
【0012】
以下の説明においては、建物等に取り付けられている建具4を浴室側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、浴室の内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具4の各部位であっても、また、建具4を構成する各部材については単体の状態であっても、建具4が建物に取り付けられている状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0013】
本実施形態の建具4は、第一障子1及び第二障子2を開くときに、図3に示すように、第二障子2に当てて引き残し寸法を確保するストッパー5が第一障子1に設けられている。第一障子1には、戸先框12に当該第一障子1をスライドさせる際に把持するハンドル1bが設けられており、ストッパー5は、第一障子1における上下の横框11と戸先框12との接合部に、図4に示すように、浴室内側に突出させて設けられている。尚、図4においては、下側に設けられているストッパー5を示している。
【0014】
このため、ハンドル1bを把持して第一障子1を開放方向(左方向)にスライドすると、ストッパー5が第二障子2の召し合わせ框23に突き当てられ、第一障子1の開放方向への移動が規制され、第一障子1と第二障子2との相対位置が維持されることにより、第二障子2の召し合わせ框23とハンドル1bとの間に引き残しとなる間隔が確保される。
【0015】
第一障子1は、例えばガラスなどの面材1aと、面材1aの周端部を収容する框10と、を有している。框10は、面材1aの上下に配置される2本の横框11と、面材1aの左右に配置され横框11の小口が突き当てられて当該横框11と枠組みされる戸先框12及び召し合わせ框13と、を有している。
【0016】
2本の横框11、戸先框12及び召し合わせ框13は、いずれもアルミニウム製の押し出し成形材であり、各々長手方向に貫通する中空部11a、12a、13aを有している。
【0017】
2本の横框11は、中空部11aを形成し、見込み方向に対向し脱衣室側にて見付け面を形成する横室外壁部11b及び浴室側にて見付け面を形成する横室内壁部11cと、を有している。上側の横框11は、下側に向かって横室外壁部11bと横室内壁部11cとの間隔が狭くなり、下端部に面材1aの上端部が収容される面材収容部11dが設けられている。下側の横框11は、上側に向かって横室外壁部11bと横室内壁部11cとの間隔が狭くなり、上端部に面材1aの下端部が収容される面材収容部11dが設けられている。
【0018】
戸先框12は、水平断面がほぼ矩形状をなす中空部12aを形成し、左右方向に対向し框10の内周側に位置して見込面を形成する縦内周壁部12b及び框10の外周側に位置して見込面を形成する縦外周壁部12cと、見込み方向に対向し、脱衣室側すなわち浴室の外側に位置して見付け面を形成する縦室外壁部12d及び浴室の内側に位置して見付け面を形成する縦室内壁部12eと、を有している。縦内周壁部12bには、見込み方向におけるほぼ中央に、長手方向に沿って面材1aの側端部が収容される面材12fが設けられている。
【0019】
縦室外壁部12d及び縦室内壁部12eは、縦内周壁部12bよりも内周側に僅かに延出された内周延出部12gを有している。戸先框12の上端部及び下端部には、屋外側および屋内側の内周延出部12gの間に、上下の横框11の小口が縦内周壁部12bに当接され、外周側から進入するビスが横框11に螺合されて、戸先框12と2本の横框11とが接合されている。
【0020】
ストッパー5は、上下の横框11と戸先框12との接合部に各々設けられている。框10の上下に設けられるストッパー5は、同一なので、ここでは、下側の横框(以下、下横框ともいう)11と戸先框12との接合部に設けられるストッパー5を例に挙げて説明する。
【0021】
下側のストッパー5は、図4図5に示すように、下横框11と戸先框12とが接合された状態で、下横框11の横室内壁部11cの戸先側の端から召し合わせ側に切り欠かれた切欠部11eと、縦室内壁部12eの内周延出部12gと、により形成される開孔10aに挿入されて取り付けられている。開孔10aは、下横框11の横室内壁部11cの平坦な部位における上下方向のほぼ中央に設けられ、矩形状をなしている。
【0022】
まず、第一実施形態のストッパー5について説明する。
第一実施形態のストッパー5は、合成樹脂製の本体部材6と、本体部材6に嵌合され本体部材6よりも高い弾性を有する合成ゴムなどにより形成された弾性部材63と、を有している。
【0023】
本体部材6は、開孔10aから中空部11a内に挿入されて開孔10aの縁10bに係合する挿入部60と、挿入部60が挿入された状態で框10の浴室内側に突出する突出部61と、を有している。
【0024】
挿入部60は、図6図7に示すように、上下に対向する上壁部60aと下壁部60bとを有し、上壁部60a及び下壁部60bにおける左右の両端を上下に繋ぐ左壁部60c及び右壁部60dとを有し、内部に中空部60eを有している。
【0025】
上壁部60a及び下壁部60bには、左右方向における中央に、挿入される先端側すなわち、脱衣室側のみが繋がり、左右の部位及び浴室側の部位が切り離された係合部60fが設けられている。係合部60fは、繋がっている脱衣室側の部位を支点にして、上壁部60a及び下壁部60bの面外方向に撓み変形可能である。
【0026】
上壁部60a及び下壁部60bにおける、係合部60fの左右及び脱衣室側に位置する上面部60g及び下面部60hは、上壁部60aの上面から下壁部60bの下面まで長さ、すなわち上下の幅W1が、開孔10aにおける上下の幅W2(図5)よりも僅かに狭く形成されている。上壁部60a及び下壁部60bの浴室側の部位60iは、上下の幅W3が、脱衣室側の上面部60g及び下面部60hの幅W1より僅かに広く、開孔10aにおける上下の幅W2とほぼ同じに形成されている。上壁部60a及び下壁部60bにおける脱衣室側と浴室側との段差は、脱衣室側に向かって幅が狭くなる傾斜面によって繋がっている。
【0027】
係合部60fにおける浴室側の部位60jは、上下の幅W4が、開孔10aにおける上下の幅W2よりも広く形成されており、浴室側の部位60jと上面部60g及び下面部60hとの段差は、脱衣室側に向かって幅が狭くなる傾斜面によって繋がっている。ここで、係合部60fにおける浴室側の部位60jの上下の幅W4が、交差方向において2つの係合部にわたる幅に相当する。
【0028】
挿入部60は、開孔10aに挿入される際に、浴室側の部位60jが開孔10aの縁10bに押圧されて係合部60fが中空部60e側に撓み変形し、係合部60fにおける浴室側の部位60jが開孔10aを通過したときに、係合部60fの撓み変形が解除されて、浴室側への移動が規制される。
【0029】
係合部60fの端面、すなわち、挿入部60が開孔10aに挿入されて、係合部60fが開孔10aの端部周辺にて横室内壁部11cの内面と対向する部位は、上下方向の中央から離れた部位60kは、横室内壁部11cの内面と平行をなし、中央側の部位は浴室側に向かって間隔が狭くなるような、換言すると、中空部11aの内側から外側に向かって、2つの係合部60fが互いに対向する側に近づく傾斜を有する傾斜部60lをなしている。横室内壁部11cの内面と平行をなす部位60kは、突出部61の後述する座部61aとの間隔が、横室内壁部11cの厚みより広く形成されており、傾斜部60lの浴室側の縁と座部61aとの距離は、横室内壁部11cの厚みtより僅かに短く設定されている。
【0030】
右壁部60dは、挿入部60が挿入された際に戸先框12の縦内周壁部12bに当接される。戸先框12には、縦内周壁部12bよりも内周側に突出する内周延出部12gが設けられているので、右壁部60dの浴室側の部位は、内周延出部12gを避けるべく浴室側に向かって左方向に傾斜する傾斜面60mが設けられている。ストッパー5は、挿入部60が挿入される際に、右壁部60d及び傾斜面60mが内周延出部12gに案内されつつ挿入されて右壁部60dが縦内周壁部12bに当接される。
【0031】
挿入部60の突出部61との境界部における左右方向の幅W5は、開孔10aの左右方向の幅W6より僅かに小さく形成されており、挿入部60が挿入されて右壁部60dの傾斜面60mが戸先框12の内周延出部12gに当接した状態で、左壁部60cと開孔10aの左側の縁との間には、隙間Sが設けられている。
【0032】
左壁部60cは、脱衣室側の端に召し合わせ框13側に突出する突起60nを有しており、挿入部60を装着する際、左右に間違えると、突起60nが縦内周壁部12bに当接して装着できないように構成されている。
【0033】
突出部61は、挿入部60との境界部分が、上壁部60a及び下壁部60bの浴室側の部位60iよりも上下に張り出しており、張り出した部位が横室内壁部11cにおいて開孔10aの周囲に浴室側から当接される座部61aをなしている。
【0034】
突出部61は、平面視の外形形状が、座部61a側を底辺とし、左側の角部が直角をなす、ほぼ台形状をなしている。平面視が台形状をなす突出部61は、左側にてほぼ矩形状をなす突出本体部61bが挿入部60と繋がっており、突出本体部61bから右方向に延出されてほぼ三角形状をなす右方向延出部61cが設けられている。
【0035】
右方向延出部61cは、座部61aよりも、戸先框12における縦室内壁部12eの厚み分浴室側に位置する底面61dを有しており、挿入部60が挿入された状態で底面61dが縦室内壁部12eに当接されるように構成されている。
【0036】
突出本体部61bにおいて座部61aと直交する左側面は、右方向に窪む矩形状の凹部61e有している。突出部61の左側面において右方向に窪んだ部位のほぼ中央には、挿入部60の中空部60eと繋がった、突出部61の中空部61fと連通する円形状の貫通孔61gが設けられており、貫通孔61gの脱衣室側に、中空部61fと連通し矩形状をなす連通孔61hが設けられている。
【0037】
連通孔61hが設けられていることにより、框10に取り付けられている本体部材6の係合部60fを、外部から連通孔61hに挿入した工具、治具等により係合部60fを操作することが可能となる。このため、連通孔61hに挿入した工具、治具等により中空部60e内にて2つの係合部60fを互いに近付けるように操作することにより、係合部60fの開孔10aの縁10bとの係合を解除して、本体部材6を取り外すことが可能となる。
【0038】
弾性部材63は、突出部61に設けられた凹部61eに嵌め込まれるほぼ板状をなす弾性板部63aと、弾性板部63aの凹部61eと対向する面から突出し、突出部61に設けられた貫通孔61gに係止される弾性係止片63bと、弾性板部63aと繋がり、脱衣室側に延びる弾性延出部63cとを有している。
【0039】
ストッパー5は、弾性部材63が本体部材6に取り付けられた状態で框10に取り付けられる。ストッパー5の取り付けは、図8(a)に示すように、框10が枠組みされた状態で、框10の開孔10aに挿入部60を突起60nから挿入する。突起60nが挿入された後には、例えば、右壁部60dを縦室内壁部12eの内周延出部12gに沿わせて挿入する。
【0040】
挿入部60を挿入し続けると、上下の係合部60fが開孔10aの上下の縁と接触し、図8(b)に示すように、係合部60fが中空部60e側に押圧されることにより撓み変形しつつ係合部60fが開孔10aを通過する。係合部60fが開孔10aを通過すると、図8(c)に示すように、係合部60fの撓み変形が解除され、係合部60fの端面に設けられた傾斜部60lと開孔10aの縁10bとが係合し、ストッパー5の浴室側への移動が規制される。ここで、傾斜部60lが、係合部において交差方向における開孔の縁をなす壁部と係合する係合面に相当する。
【0041】
また、係合部60fが開孔10aを通過する際には、右壁部60dの浴室側に設けられている傾斜面60mが縦室内壁部12eの内周延出部12gに沿って挿入部60が挿入されることによりストッパー5が右方向に移動し右壁部60dが縦内周壁部12bに当接される。このとき、弾性部材63の弾性延出部63cが左壁部60cと開孔10aの10bとの間に挟持され、ストッパー5の左右方向の移動も規制される。ここで、弾性延出部63cが、本体部材と開孔の縁との間に配置される介装部に相当する。
【0042】
ストッパー5が取り付けられている第一障子1を開放方向にスライドすると、弾性部材63の弾性板部63aが第二障子2の召し合わせ框23に突き当てられて引き残しが確保される。ここで、弾性板部63aが、本体部材よりも高い弾性を備え、突出部に取り付けられて他方の障子が当接される障子当接部に相当する。
【0043】
第一実施形態のストッパー5を備えた建具4によれば、第二障子2に当接して2枚の障子1、2の相対位置を維持させるストッパー5は、第一障子1の横室内壁部11cと内周延出部12gにより形成される開孔10aに挿入部60を挿入すると、挿入部60が有する係合部60fが横室内壁部11cと係合して、本体部材6の面外方向への移動が規制されるので、突出部61を第一障子1の外側に突出させた状態で本体部材6を第一障子1に取り付けることが可能である。
【0044】
また、係合部60fは、対向する2つの係合部60fを互いに近付けるように操作することにより、本体部材6の面外方向への移動の規制を解除することができるので、2つの係合部60fを操作することにより本体部材6を面外方向に移動させて容易に取り外すことが可能である。
【0045】
また、第二障子2が当接される突出部61には、本体部材6より高い弾性を備える弾性部材63の弾性板部63aが取り付けられているので、第二障子2が当接した際の衝撃を抑えることが可能である。また、弾性部材63は、本体部材6と開孔10aの縁10bとの間に配置される弾性延出部63cを有しているので、開孔10aに挿入されたストッパー5のガタツキを抑えることが可能である。このため、交換が容易であり、ガタツキが生じ難いストッパー5を備えた建具4を提供することが可能である。
【0046】
また、挿入部60が交差方向に対向する2つの係合部60fを有しており、2つの係合部60fにわたる幅W4、すなわち2つの係合部60fが対向する側とは反対側の部位同士の間の距離が、開孔10aの幅W2より狭くなるべく撓み変形可能なので、2つの係合部60fの幅W4を開孔10aの幅W2よりも狭く撓み変形させて、挿入部60を開孔10aから中空部60e内に挿入することができる。また、2つの係合部60fは、中空部60e内にて開孔10aの縁10bをなす横室内壁部11cに係合されるので、開孔10aを通過した2つの係合部60fの撓み変形が復元することにより開孔10aの縁10bをなす横室内壁部11cに係合させて、容易にストッパー5を框10に取り付けることが可能である。
【0047】
また、本体部材6は、挿入部60の右壁部60dがスライド方向における右側(一方側)にて戸先框12の縦内周壁部12bに当接し、スライド方向における左側(他方側)は、開孔10aの縁10bをなす横室内壁部11cとの間に弾性延出部63cが挟持されるので、本体部材6及び弾性部材63でなるストッパー5のスライド方向のガタツキを抑えることが可能である。
【0048】
また、下横框11の中空部11a内にて開孔10aの縁10bをなす横室内壁部11cに係合する係合部60fの傾斜部60lは、中空部11aの内側から外側に向かって、互いに対向する側に近づく傾斜を有しているので、開孔10aを広げる方向及び横室内壁部11cを中空部11aの外方向に押圧する状態で係合する。このため、本体部材6と開孔10aをなす横室内壁部11cとの間に隙間が生じ難いのでストッパー5のガタツキをより確実に抑制することが可能である。
【0049】
また、本体部材6が取り付けられた状態で連通孔61hを通して係合部60fを操作することができるので、開孔10aの縁10bに係合している係合部60fの係合を解除して本体部材6を取り外すことが可能である。このため、取り付けられているストッパー5の弾性部材63を取り外したのちに、本体部材6を取り外すことにより、ストッパー5を容易に取り外すことが可能である。
【0050】
次に第二実施形態のストッパー7について説明する。
第二実施形態のストッパー7は、図9図10に示すように、下横框11の横室内壁部11cの戸先側の端から召し合わせ側に切り欠かれた切欠部11eと、下横框11が戸先框12と接合されて、縦室内壁部12eの内周延出部12gと、により形成される開孔10cに挿入されて取り付けられている。開孔10cは、下横框11の平坦な部位における上下方向のほぼ中央に設けられており、上下方向の幅が互いに異なる2つの部位が繋がって形成されている。開孔10cの2つの部位は、召し合わせ框13側に幅が広い拡幅孔部10dが位置し、戸先框12側に幅が狭い狭幅孔部10eが位置している。
【0051】
ストッパー7は、合成樹脂製の本体部材8と、本体部材8に嵌合され本体部材8よりも高い弾性を有する弾性部材83と、を有している。
本体部材8は、開孔10cから中空部11a内に挿入される挿入部80と、挿入部80が挿入された状態で框10の浴室内側に突出する突出部81と、を有している。
【0052】
挿入部80は、図11(a)、図11(b)に示すように、上下に対向する上壁部80aと下壁部80bとを有し、上壁部80a及び下壁部80bにおける左右の両端を上下に繋ぐ左壁部80c及び右壁部80dとを有している。
【0053】
上壁部80aの上面から下壁部60bの下面までの幅W7は、開孔10cにおける狭幅孔部10eの上下の幅W8よりも僅かに狭く形成されている。上壁部80a及び下壁部80bの浴室側には、挿入部80が挿入されたときに横室内壁部11cにおいて狭幅孔部10eを形成する縁10fの中空部11a側の面と対向する対向片80eが各々設けられている。
【0054】
上壁部80aに設けられている対向片80eの上端と下壁部80bに設けられている対向片80eの下端との幅W9は、狭幅孔部10eの上下の幅W8よりも広く、拡幅孔部10dの上下方向の幅W10より僅かに狭く形成されている。ここで、対向片80eが、交差方向に各々突出し、突出した先端部間の間隔が、拡幅孔部よりも狭く狭幅孔部よりも広い第一の係合部に相当する。
【0055】
対向片80eの脱衣室側には、対向片80eと繋がり、上壁部80a及び下壁部80bから見込み方向に沿って隆起するガイド部80gが設けられており設けられている。ガイド部80gは脱衣室側に向かって隆起量が漸次小さくなる傾斜を有しており、挿入部80が拡幅孔部10dから挿入される際に拡幅孔部10dの縁に案内される。
【0056】
また、対向片80eには、ガイド部80gとは反対側、すなわち浴室側に僅かに突出する突部80fを有しており、突部80fと、突出部81の後述する座部81aとの間隔W11は、横室内壁部11cの厚みtとほぼ等しく設定されている。
【0057】
右壁部80dは、挿入部80が挿入された際に戸先框12の縦内周壁部12bに当接され、右壁部80dの浴室側の部位には、浴室側に向かって左方向に傾斜する傾斜部80hが設けられている。ストッパー7は、挿入部80が挿入されて右壁部80dが縦内周壁部12bに当接される。ここで、右壁部80dが、スライドの方向における一方側にて框に当接する框当接部に相当する。
【0058】
左壁部80cには、左方向、すなわち召し合わせ框13側に延出された左延出部80iを有している。左延出部80iは、上壁部80aの上面から下壁部60bの下面までの幅W7と同じ幅を有する板状の部位であり、横室内壁部11cとほぼ平行に配置される。左延出部80iは、挿入部80が挿入されて右壁部80dが戸先框12の縦内周壁部12bに当接された状態で、左延出部80iの延出された先端が、拡幅孔部10dよりも召し合わせ框13側に位置して横室内壁部11cと対向するように構成されている。
【0059】
左延出部80iには、上下方向における中央近傍に、他の部位よりも浴室側に突出する突部80jが左右方向に沿って設けられている。突部80jの先端側の部位は、横室内壁部11cに当接、又は横室内壁部11cに近接して対向する。また、左延出部80iの脱衣室側の面には、上下方向の中央に、左延出部80iの先端部と左壁部80cとを繋ぐリブ80kが設けられている。ここで、左延出部80iがスライドの方向の他方側に延出する延出部に相当し、突部80jの先端側の部位が、延出された先端部が壁部と係合する第二の係合部に相当する。
【0060】
突出部81は、挿入部80との境界部分が、上壁部80a及び下壁部80bよりも上下に張り出しており、張り出した部位が横室内壁部11cにおいて開孔10cの周囲に浴室側から当接される座部81aをなしている。
【0061】
ストッパー7の突出部81も、第一形態のストッパー5と同様に、平面視の外形形状が、座部81a側を底辺とし、左側の角部が直角をなす、ほぼ台形状をなしている。平面視が台形状をなす突出部81は、左側にてほぼ矩形状をなす突出本体部81bが挿入部80と繋がっており、突出本体部81bから右方向に延出されてほぼ三角形状をなす右方向延出部81cが設けられている。
【0062】
右方向延出部81cは、座部81aよりも、戸先框12における縦室内壁部12eの厚み分浴室側に位置する底面81dを有しており、挿入部80が挿入された状態で底面81dが縦室内壁部12eに当接されるように構成されている。
【0063】
突出本体部81bにおいて座部61aと直交する左側面をなす、突出本体部81bの左側面は、右方向に窪む矩形状の凹部81e有している。突出部81の左側面において右方向に窪んだ部位のほぼ中央には、突出本体部81b内に設けられている中空部81fと連通する円形状の貫通孔81gが設けられている。
【0064】
弾性部材83は、図12(a)、図12(b)に示すように、突出部81に設けられた凹部81eに嵌め込まれるほぼ板状をなす弾性側板部83aと、弾性側板部83aの凹部81eと対向する面から突出し、突出部81に設けられた貫通孔81gに係止される弾性係止片83bと、弾性側板部83aと繋がり召し合わせ框13側に延出され左延出部80iに沿って配置される弾性平板部83cと、を有している。すなわち、弾性部材83は、凹部81eに入り込む弾性側板部83aと左延出部80iに沿う弾性平板部83cとがL字状をなしている。
【0065】
弾性平板部83cは、横室内壁部11cよりも浴室側に位置する室内板部83dと、横室内壁部11cよりも脱衣室側に位置する室外板部83eと、室内板部83dと室外板部83eとを繋ぐ連結部83fとを有している。室内板部83dは、弾性側板部83aと同様に、突出部81の上下方向の幅と同じ幅を有しており、弾性部材83が本体部材8とともに取り付けられたときに、室内板部83dにより開孔10cにおける拡幅孔部10dを下横框11の外側から覆うように構成されている。ここで、室内板部83dが、拡幅孔部を框の外側から覆うカバー部に相当する。
【0066】
連結部83fは、上下方向の幅W12が、挿入部80の上壁部80aの上面から下壁部60bの下面までの幅W7とほぼ等しく形成されており、連結部83fの左右方向の長さは、弾性部材83が本体部材8とともに取り付けられたときに、本体部材8と、開孔10cにおける召し合わせ框13側の縁10fとにより挟持される長さに設定されている。また、連結部83fの見込み方向の幅W13は、横室内壁部11cの厚みよりも僅かに狭く設定されている。
【0067】
室外板部83eは、連結部83fよりも上下方向及び召し合わせ框13側にそれぞれ突出する外周突部83gを有している。外周突部83gの突出している先端は、弾性部材83が本体部材8とともに取り付けられたときに、拡幅孔部10dの縁10fよりも外側に位置するように形成されている。
【0068】
外周突出部83gは、突出している先端に向かって見込み方向の幅が漸次狭くなるように、浴室側及び脱衣室側に傾斜面83hが設けられている。浴室側の傾斜面83hは、弾性部材83が本体部材8とともに取り付けられたときに、開孔10cの縁10fと係合する。
【0069】
弾性平板部83cの脱衣室側には、左右方向に沿って、浴室側に窪む溝部83iが設けられている。弾性部材83は、弾性係止片83bが貫通孔81gに係止された状態で、弾性側板部83aが凹部81eに入り込こみ、溝部83iに左延出部80iの突部80jが入り込む状態で弾性平板部83cが左延出部80iに当接される。このとき、弾性平板部83cが左延出部80iに当接した状態では、左延出部80iの先端は、弾性平板部83cよりも召し合わせ框13側に突出している。
【0070】
ストッパー7は、まず本体部材8が框10に取り付けられ、取り付けられた本体部材8及び框10に弾性部材83が取り付けられる。ストッパー7の取り付けは、框10が枠組みされた状態で、図13(a)に示すように、框10の開孔10cに、挿入部80を左延出部80iから挿入する。このとき、挿入部80の上下に設けられている対向片80eが開孔10cを通過する際には、本体部材8を召し合わせ框13側、すなわち戸先框12とは反対側に移動して拡幅孔部10d側から挿入する。
【0071】
次に、図13(b)に示すように、挿入部80を下横框11内に挿入しつつ、左延出部80iの先端側を横室内壁部11c側に、右方向延出部81cの先端側を戸先框12の縦室内壁部12e側に移動するように回転させる。
【0072】
次に、右方向延出部81cの先端側が縦室内壁部12eに当接した状態で本体部材8を戸先框12側に移動し、右壁部80dを縦内周壁部12bに当接させる。この状態で、上下の対向片80eと座部81aとの間に、開孔10cの狭幅孔部10eの縁10fが位置している。また、この状態では、左延出部80iに設けられている突部80jの先端側の部位は、横室内壁部11cに当接、又は横室内壁部11cに近接して対向している。
【0073】
次に、図13(c)に示すように、框10に取り付けられた本体部材8の貫通孔81gに弾性部材83の弾性係止片83bを係止して弾性側板部83aを凹部81eに配置し、弾性平板部83cの室外板部83eを中空部11a内に挿入する。この状態で、外周突出部83gの浴室側の傾斜面83hは、開孔10cにおける拡幅孔部10dの縁10fと係合する。このとき、図14に示すように、外周突出部83gの浴室側の傾斜面83hが、開孔10cにおける拡幅孔部10dの上下の縁10fと接触するので、傾斜面83hは上下方向から支持されて上下方向の移動が規制される。
【0074】
また、弾性平板部83cの召し合わせ框13側の連結部83fが開孔10cの縁10fに当接され、弾性平板部83cは、本体部材8と開孔10cの縁10fとに挟持されて左右方向の移動が規制される。ここで、弾性側板部83aが、本体部材よりも高い弾性を備え、突出部に取り付けられて他方の障子が当接される障子当接部に相当し、弾性平板部83cが、本体部材と開孔の縁との間に配置される介装部に相当する。
【0075】
第二実施形態のストッパー7を備えた建具4によれば、第二障子2に当接して2枚の障子1、2の相対位置を維持させるストッパー7は、第一障子1の横室内壁部11cと内周延出部12gとにより形成される開孔10cに挿入部80を挿入すると、挿入部80が有する対向片80eが横室内壁部11cと係合し、突部80jの先端側の部位が、横室内壁部11cに当接、又は横室内壁部11cに近接して対向して、本体部材8の面外方向への移動が規制されるので、突出部81を第一障子1の外側に突出させた状態で本体部材8を第一障子1に取り付けることが可能である。
【0076】
また、第二障子2が当接される突出部81には、本体部材8より高い弾性を備える弾性部材83の弾性側板部83aが取り付けられているので、第二障子2が当接した際の衝撃を抑えることが可能である。また、弾性部材83は、本体部材8と開孔10cの縁10fとの間に配置される連結部83f及び傾斜面83hを有しているので、開孔10cに挿入されたストッパー7のガタツキを抑えることが可能である。
【0077】
また、挿入部80が、交差方向となる上下方向に各々突出する2つの対向片80eを有しており、2つの対向片80eの突出している先端部間の間隔W9は、開孔10cの拡幅孔部10dよりも狭いので、挿入部80を拡幅孔部10dから中空部11a内に挿入することができる。また、2つの対向片80eの突出している先端部間の間隔W9は、開孔10cの狭幅孔部10eよりも広いので、挿入部80を中空部11aに挿入した本体部材8を狭幅孔部10e側に移動することにより、本体部材8を開孔10cから抜けない状態で配置することが可能である。
【0078】
また、狭幅孔部10e側に配置された本体部材8は、対向片80eが拡幅孔部10dに位置するように本体部材8を移動するように操作することにより、本体部材8の面外方向への移動の規制を解除することができるので、対向片80eを一体に備えた本体部材8を操作することにより本体部材8を面外方向に移動させて容易に取り外すことが可能である。このため、交換が容易であり、ガタツキが生じ難いストッパー7を備えた建具4を提供することが可能である。
【0079】
また、対向片80eが狭幅孔部10eと係合している状態では、右壁部80dがスライド方向の右側で戸先框12に当接しているので、本体部材8のスライド方向における右側への移動が規制される。
【0080】
また、右壁部80dがスライド方向の右側で戸先框12に当接している状態で、スライド方向における左側は、弾性部材83の、拡幅孔部10dを下横框11の外側から覆う室内板部83dと浴室側の傾斜面83hとにより拡幅孔部10dの縁10fをなす横室内壁部11cを挟持するので、本体部材8及び弾性部材83でなるストッパー7のスライド方向のガタツキを抑えることが可能である。
【0081】
また、浴室側の傾斜面83hは、中空部11aの内側から外側に向かって、外周側から内側に傾く傾斜しており、開孔10cの縁10fをなす横室内壁部11cと係合するので、開孔10cを広げる方向及び横室内壁部11cを中空部11aの外方向に押圧する状態で係合する。このため、室内板部83dと浴室側の傾斜面83hとにより拡幅孔部10dの縁10fをなす横室内壁部11cをより確実に挟持し、ストッパー7のガタツキをより確実に抑制することが可能である。
【0082】
上記実施形態においては、ストッパー5、7が取り付けられる開孔10a、10cが、横室内壁部11cに設けられた切欠部11eと内周延出部12gとにより形成されている例について説明したが、これに限らず、例えば、横框または縦框に設けられた矩形状の開孔であっても構わない。
上記実施形態においては、第一障子1にストッパー5、7が設けられている例について説明したが、第二障子に設けられていても構わない。
【0083】
また、上記実施形態においては、2枚の障子1、2を備えた建具4を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、少なくとも1枚の可動障子を含む複数枚の障子を有する建具であれば構わない。また、複数枚の障子を備えている場合には、複数枚の障子のうちのいずれかの可動障子と、当該可動障子と隣り合う隣接障子とのうちの一方に、他方に当接するストッパーが設けられていれば構わない。
【0084】
上記実施形態においては、2枚の障子1、2がいずれも左右方向にスライド可能な可動障子を備えた建具を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、見込み方向において隣り合う2枚の障子のうちの、いずれか一方が枠体等に固定されたFIX障子であっても構わない。
【0085】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0086】
枠体と、前記枠体に支持されて見付け方向にスライド可能な少なくとも1枚の可動障子を含み、見込み方向に並べて配置される複数枚の障子と、を備え、前記可動障子と、当該可動障子と隣り合う隣接障子とのうちのいずれか一方の前記障子に設けられ、他方の前記障子に当接して前記可動障子と前記隣接障子との相対位置を維持させるストッパーを備えた建具であって、前記ストッパーは、前記一方の前記障子の前記他方の前記障子側の面に設けられた開孔から挿入され、前記一方の前記障子と係合して面外方向への移動が規制され、操作により前記規制が解除される係合部を備えた挿入部、及び、前記挿入部が挿入されて前記一方の前記障子から突出する突出部、を有する本体部材と、前記本体部材よりも高い弾性を備え、前記突出部に取り付けられて前記他方の前記障子が当接される障子当接部、及び、前記本体部材と前記開孔を形成する部位との間に配置される介装部、を有する弾性部材と、を有することを特徴とする建具である。
【0087】
このような建具によれば、他方の障子に当接して2枚の障子の相対位置を維持させるストッパーは、一方の障子の壁部に設けられた開孔に挿入部を挿入すると、挿入部が有する係合部が一方の障子と係合して面外方向への移動が規制されるので、突出部を一方の障子の外側に突出させた状態でストッパーを一方の障子に備えることが可能である。また、係合部は操作により面外方向への移動の規制を解除することができるので、操作することにより面外方向に移動させて本体部材を取り外すことが可能である。
【0088】
また、他方の障子が当接される突出部には、本体部材より高い弾性を備える弾性部材の障子当接部が取り付けられているので、他方の障子が当接した際の衝撃を抑えることが可能である。また、弾性部材は、本体部材と開孔の縁を形成する部位との間に配置される介装部を有しているので、開孔に挿入されたストッパーのガタツキを抑えることが可能である。このため、交換が容易であり、ガタツキが生じ難いストッパーを備えた建具を提供することが可能である。
【0089】
かかる建具であって、前記開孔は、前記一方の前記障子を構成し、中空部を有する框の前記他方の前記障子側の面を形成する壁部に設けられており、前記挿入部は、前記可動障子のスライドの方向における一方側にて前記框に当接する框当接部と、前記スライドの方向と交差する交差方向に対向する2つの前記係合部と、を有しており、前記2つの前記係合部は、前記交差方向において当該2つの前記係合部にわたる幅が前記開孔の幅より狭くなるべく撓み変形可能であり、前記中空部内にて当該開孔の縁をなす前記壁部に係合され、前記介装部は、前記開孔の前記スライドの方向における他方側で前記壁部と前記本体部材との間に挟持されることを特徴とする建具。
【0090】
このような建具によれば、挿入部が交差方向に対向する2つの係合部を有しており、2つの係合部にわたる幅、すなわち2つの係合部が対向する側とは反対側の部位同士の間の距離が、開孔の幅より狭くなるべく撓み変形可能なので、2つの係合部の幅を開孔の幅よりも狭く撓み変形させて、挿入部を開孔から中空部内に挿入することができる。また、2つの係合部は、中空部内にて開孔の縁をなす壁部に係合されるので、開孔を通過した2つの係合部の撓み変形が復元することにより開孔の縁をなす壁部に係合させて、容易にストッパーを框に取り付けることが可能である。
【0091】
また、本体部材は、挿入部の框当接部がスライド方向における一方側にて框に当接し、スライド方向における他方側は、開孔の縁をなす壁部との間に介装部が挟持されるので、本体部材及び弾性部材でなるストッパーのスライド方向のガタツキを抑えることが可能である。
【0092】
かかる建具であって、各々の前記係合部は、前記交差方向における前記開孔の前記縁をなす前記壁部と係合する係合面が、前記中空部の内側から外側に向かって、互いに対向する側に近づく傾斜を有することを特徴とする。
【0093】
このような建具によれば、中空部内にて開孔の縁をなす壁部に係合する係合部の係合面は、中空部の内側から外側に向かって、互いに対向する側に近づく傾斜を有しているので、開孔を広げる方向及び壁部を中空部の外方向に押圧する状態で係合する。このため、本体部材と開孔をなす壁部との間に隙間が生じ難いのでストッパーのガタツキをより確実に抑制することが可能である。
【0094】
かかる建具であって、前記本体部材は、前記一方の前記障子に取り付けられた状態で、前記交差方向における前記開孔の前記縁をなす前記壁部と係合している前記係合部が位置する部位と、外部とを連通する連通孔を備えていることを特徴とする。
【0095】
このような建具によれば、本体部材が取り付けられた状態で連通孔を通して係合部を操作することができるので、開孔の縁に係合している係合部の係合を解除して本体部材をより容易に取り外すことが可能である。
【0096】
かかる建具であって、前記開孔は、前記一方の前記障子を構成し、中空部を有する框の前記他方の前記障子側の面を形成する壁部に設けられており、前記開孔は、前記スライドの方向と交差する交差方向の幅が広い拡幅孔部と、前記交差方向の幅が狭い狭幅孔部とを有しており、前記挿入部は、前記スライドの方向における一方側にて前記框に当接する框当接部と、前記交差方向に各々突出し、突出した先端部間の間隔が、前記拡幅孔部よりも狭く前記狭幅孔部よりも広い第一の前記係合部と、前記スライドの方向の他方側に延出し、延出された先端部が前記壁部と係合する第二の前記係合部をなす延出部と、を有し、前記框当接部が前記框に当接された状態で、前記第一の前記係合部が前記狭幅孔部の縁をなす前記壁部と係合し、前記第二の前記係合部が、前記開孔よりも前記スライドの方向における他方側で前記壁部と係合し、
前記弾性部材は、前記拡幅孔部を前記框の外側から覆うカバー部を有し、前記介装部と前記カバー部とにより前記拡幅孔部の縁をなす前記壁部を挟持することを特徴とする。
【0097】
このような建具によれば、挿入部が、交差方向に各々突出する2つの第一の係合部を有しており、2つの第一の係合部の突出した先端部間の間隔は、開孔の拡幅孔部よりも狭いので、挿入部を拡幅孔部から中空部内に挿入することができる。また、2つの第一の係合部の突出した先端部間の間隔は、開孔の狭幅孔部よりも広いので、挿入部を中空部に挿入した本体部材を狭幅孔部側に移動することにより、本体部材を開孔から抜けない状態で配置することが可能である。また、狭幅孔部側に配置された本体部材は、第一の係合部を拡幅孔部まで移動して挿入部を引き出すことにより容易に取り外すことが可能である。
【0098】
また、第一の係合部が狭幅孔部と係合している状態では、框当接部がスライド方向の一方側で框に当接しているので、本体部材のスライド方向における一方側への移動が規制される。さらに、このとき、スライド方向における他方側では中空部内にて延出部の先端部でなる第二の係合部が壁部と係合しているので、延出部の先端が開孔から抜け出ることを防止することができる。
【0099】
また、框当接部がスライド方向の一方側で框に当接している状態で、スライド方向における他方側は、弾性部材の、拡幅孔部を框の外側から覆うカバー部と介装部とにより拡幅孔部の縁をなす壁部を挟持するので、本体部材及び弾性部材でなるストッパーのスライド方向のガタツキを抑えることが可能である。
【0100】
かかる建具であって、前記介装部は、前記中空部の内側から外側に向かって、外周側から内側に傾く傾斜を備え、前記傾斜が、前記拡幅孔部の前記縁をなす前記壁部と係合することを特徴とする。
【0101】
このような建具によれば、介装部は、中空部の内側から外側に向かって、外周側から内側に傾く傾斜が開孔の縁をなす壁部と係合するので、開孔を広げる方向及び壁部を中空部の外方向に押圧する状態で係合する。このため、介装部とカバー部とにより拡幅孔部の縁をなす壁部をより確実に挟持し、ストッパーのガタツキをより確実に抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 第一障子、2 第二障子、4 建具、5 ストッパー、6 本体部材、
7 ストッパー、8 本体部材、10 框、10a 開孔、10b 開孔の縁、
10c 開孔、10d 拡幅孔部、10e 狭幅孔部、10f 開孔の縁、
11a 中空部、11c 横室内壁部、60 挿入部、60d 右壁部
60f 係合部、60l 傾斜部、61 突出部、61h 連通孔、
63 弾性部材、63a 弾性板部、63c 弾性延出部、80 挿入部、
80d 右壁部、80e 対向片、80f 突部、80i 左延出部、
80j 突部、81 突出部、83 弾性部材、83a 弾性側板部、
83c 弾性平板部、83f 連結部、83h 傾斜面、
W2 開孔における上下の幅、
W9 上壁部の対向片の上端と下壁部に設けられている対向片の下端との幅、
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