(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20240902BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F16F15/08 E
F16F15/08 B
F16F1/36 Z
(21)【出願番号】P 2021107982
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 真央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊治
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-150596(JP,A)
【文献】特開2003-335261(JP,A)
【文献】特開2020-190268(JP,A)
【文献】特開2008-261389(JP,A)
【文献】特開2021-95972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部を第1方向に互いに連結する第1防振ゴム筒と、
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方の部材を、前記第1防振ゴム筒との間で前記第1方向に挟む第2防振ゴム筒と、
前記第2防振ゴム筒を、前記一方の部材との間で前記第1方向に挟む支持部材と、を備え、
前記第1防振ゴム筒、および前記第2防振ゴム筒は、それぞれの中心軸線が前記第1方向に延びる姿勢で設けられ、
前記第1防振ゴム筒、および前記第2防振ゴム筒のうちの少なくとも一方における外周面および内周面に、周溝が各別に形成されて
おり、
前記一方の部材には、前記第1防振ゴム筒内と前記第2防振ゴム筒内とを前記第1方向に連通する連通孔が形成され、
前記連通孔を通して、前記第1防振ゴム筒内、および前記第2防振ゴム筒内に一体に挿通され、かつ前記支持部材と、振動発生部および振動受部のうちのいずれか他方と、により前記第1方向に挟まれた芯筒を備え、
前記周溝は、前記第2防振ゴム筒における外周面および内周面に各別に形成され、
前記第2防振ゴム筒における前記第1方向に沿う前記一方の部材側の開口端縁に、径方向の内側に向けて開口する窪み部が形成され、
前記一方の部材における前記連通孔の開口周縁部に、前記窪み部内に挿入されたストッパ筒部が設けられている、防振装置。
【請求項2】
前記第2防振ゴム筒において、外周面に形成された前記周溝の本数が、内周面に形成された前記周溝の本数より多くなっている、請求項
1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記周溝は、前記第2防振ゴム筒の内周面に前記第1方向に間隔をあけて複数形成されるとともに、これらの周溝のうち、最も前記第1方向に沿う前記支持部材側に位置する前記周溝は、溝幅が前記第2防振ゴム筒に形成された全ての前記周溝のなかで最大となり、深さが前記第2防振ゴム筒に形成された全ての前記周溝のなかで最小となるように形成されている、請求項
2に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、振動発生部および振動受部を第1方向に互いに連結する第1防振ゴム筒と、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方の部材を、第1防振ゴム筒との間で第1方向に挟む第2防振ゴム筒と、第2防振ゴム筒を、前記一方の部材との間で第1方向に挟む支持部材と、を備え、第1防振ゴム筒、および第2防振ゴム筒が、それぞれの中心軸線が第1方向に延びる姿勢で設けられた防振装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、例えば第2防振ゴム筒が、第1方向に圧縮変形する過程において、第2防振ゴム筒のうち、第1方向に沿う前記一方の部材側の端部が、径方向に変形すること等に起因して、第2防振ゴム筒が、第1方向に真直ぐ圧縮変形せず、いびつに変形し、第2防振ゴム筒の静ばねが低下し、第2防振ゴム筒の耐久性を確保すること等が困難であるという問題があった。
この問題は、第1防振ゴム筒についても同様に生ずるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、第1防振ゴム筒および第2防振ゴム筒のうちの少なくとも一方は、第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部を第1方向に互いに連結する第1防振ゴム筒と、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方の部材を、前記第1防振ゴム筒との間で前記第1方向に挟む第2防振ゴム筒と、前記第2防振ゴム筒を、前記一方の部材との間で前記第1方向に挟む支持部材と、を備え、前記第1防振ゴム筒、および前記第2防振ゴム筒は、それぞれの中心軸線が前記第1方向に延びる姿勢で設けられ、前記第1防振ゴム筒、および前記第2防振ゴム筒のうちの少なくとも一方における外周面および内周面に、周溝が各別に形成されている。
【0007】
この発明によれば、第1方向の振動の入力に伴い、振動発生部および振動受部のうちのいずれか他方の部材と、支持部材と、が、第1防振ゴム筒および第2防振ゴム筒を弾性変形させながら、第1方向に変位することで、入力振動を吸収する。
第1防振ゴム筒、および第2防振ゴム筒のうちの少なくとも一方における外周面および内周面の双方に、周溝が形成されているので、このようなゴム筒が第1方向に圧縮変形したときに、このゴム筒における内周面側と外周面側とで変形が大きく異なるのを抑えることができる。これにより、このゴム筒においては、第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることが可能になり、第1方向に圧縮変形する過程でいびつに変形して静ばねが低下するのを抑制することができる。
【0008】
前記一方の部材には、前記第1防振ゴム筒内と前記第2防振ゴム筒内とを前記第1方向に連通する連通孔が形成され、前記連通孔を通して、前記第1防振ゴム筒内、および前記第2防振ゴム筒内に一体に挿通され、かつ前記支持部材と、振動発生部および振動受部のうちのいずれか他方と、により前記第1方向に挟まれた芯筒を備え、前記周溝は、前記第2防振ゴム筒における外周面および内周面に各別に形成され、前記第2防振ゴム筒における前記第1方向に沿う前記一方の部材側の開口端縁に、径方向の内側に向けて開口する窪み部が形成され、前記一方の部材における前記連通孔の開口周縁部に、前記窪み部内に挿入されたストッパ筒部が設けられてもよい。
【0009】
この場合、芯筒が設けられているので、第1方向の振動の入力に伴い、振動発生部および振動受部のうちのいずれか他方の部材と、支持部材と、が、第1方向の距離を維持したまま、第1防振ゴム筒および第2防振ゴム筒を弾性変形させながら、第1方向に変位することで、入力振動を吸収する。
芯筒およびストッパ筒部が設けられているので、第1方向に交差する方向の振動が入力されたときに、芯筒の外周面およびストッパ筒部の内周面を互いに当接させ、振動発生部および振動受部の相対変位を規制することができる。
周溝が、第2防振ゴム筒における外周面および内周面に各別に形成されているので、第2防振ゴム筒が第1方向に圧縮変形したときに、第2防振ゴム筒における内周面側と外周面側とで変形が大きく異なるのを抑えることができる。これにより、第2防振ゴム筒においては、第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることが可能になり、第1方向に圧縮変形する過程でいびつに変形して静ばねが低下するのを抑制することができる。
このように、第2防振ゴム筒を第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることが可能になることから、第2防振ゴム筒が第1方向に圧縮変形したときに、第2防振ゴム筒の内周面側の一部がストッパ筒部の先端部に向かうように、第2防振ゴム筒がいびつに変形するのを抑制することが可能になり、ストッパ筒部の先端部を、第2防振ゴム筒に食い込みにくくすることができる。
【0010】
前記第2防振ゴム筒において、外周面に形成された前記周溝の本数が、内周面に形成された前記周溝の本数より多くなってもよい。
【0011】
この場合、第2防振ゴム筒において、外周面に形成された周溝の本数が、内周面に形成された周溝の本数より多くなっているので、第2防振ゴム筒における第1方向に沿う前記一方の部材側の開口端縁に、径方向の内側に向けて開口する窪み部を形成しても、第2防振ゴム筒が第1方向に圧縮変形する過程において、第2防振ゴム筒における第1方向に沿う前記一方の部材側の端部に、径方向の外側に向けて膨出するような屈曲変形を生じさせにくくすることが可能になり、第2防振ゴム筒を確実に第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることができる。
【0012】
前記周溝は、前記第2防振ゴム筒の内周面に前記第1方向に間隔をあけて複数形成されるとともに、これらの周溝のうち、最も前記第1方向に沿う前記支持部材側に位置する前記周溝は、溝幅が前記第2防振ゴム筒に形成された全ての前記周溝のなかで最大となり、深さが前記第2防振ゴム筒に形成された全ての前記周溝のなかで最小となるように形成されてもよい。
【0013】
この場合、第2防振ゴム筒の内周面に形成された複数の周溝のうち、最も第1方向に沿う支持部材側に位置する周溝(以下、対応周溝という)が、溝幅が第2防振ゴム筒に形成された全ての周溝のなかで最大となり、深さが第2防振ゴム筒に形成された全ての周溝のなかで最小となるように形成されている。
したがって、幅広で浅い対応周溝が第1方向につぶれるまでの、第2防振ゴム筒の第1方向に沿う圧縮変形代を大きく確保することが可能になり、第2防振ゴム筒が第1方向に圧縮変形したときに、第2防振ゴム筒の内周面側の一部が、ストッパ筒部の先端部に向かうように、第2防振ゴム筒がいびつに変形するのを確実に抑制することができるとともに、第2防振ゴム筒を加硫成形金型から容易に脱型することもできる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、第1防振ゴム筒および第2防振ゴム筒のうちの少なくとも一方は、第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態として示した防振装置の縦断面図である。
【
図2】
図1の第2防振ゴム筒が第1方向に圧縮変形した状態の図である。
【
図3】
図2の第2防振ゴム筒が第1方向にさらに圧縮変形した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、防振装置の一実施形態を、
図1を参照しながら説明する。
防振装置1は、第1防振ゴム筒11、第2防振ゴム筒12、第2支持部材(支持部材)13、および芯筒14を備えている。防振装置1は、振動発生部Xから振動が入力されたときに、第1防振ゴム筒11および第2防振ゴム筒12を弾性変形させることで、この入力振動が振動受部Yに伝達するのを抑制する。振動発生部Xとしては、例えば車体フレーム等が挙げられ、振動受部Yとしては、例えばボディ等が挙げられる。
【0017】
第1防振ゴム筒11、および第2防振ゴム筒12は、それぞれの中心軸線が第1方向に延びる姿勢で設けられている。図示の例では、第1防振ゴム筒11、および第2防振ゴム筒12は、第1方向に延びる共通軸と同軸に配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、第1方向に沿う第1防振ゴム筒11側を上側といい、第2防振ゴム筒12側を下側という。第1方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
第1防振ゴム筒11は、振動発生部Xおよび振動受部Yを第1方向に互いに連結している。
図示の例では、振動発生部Xは、第1防振ゴム筒11の下方に設けられている。振動受部Yは、第1防振ゴム筒11の上方に設けられている。
【0019】
第1防振ゴム筒11の上端開口縁に、第1支持部材21が取付けられている。第1支持部材21は、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1支持部材21は、第1防振ゴム筒11の上端開口縁から径方向の内側に突出している。第1支持部材21は、第1防振ゴム筒11の上端開口縁に加硫接着されている。第1防振ゴム筒11は、第1支持部材21を介して振動受部Yに連結されている。第1防振ゴム筒11は、第1方向に圧縮変形した状態で設けられている。
なお、第1支持部材21を設けず、第1防振ゴム筒11を、振動受部Yに直接連結してもよい。
【0020】
第1防振ゴム筒11の下端開口縁に、下方に向けて突出し、振動発生部Xの後述する第1連通孔31内に挿入された筒状の緩衝突起11bが形成されている。緩衝突起11bは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0021】
第2防振ゴム筒12は、振動発生部Xおよび振動受部Yのうちのいずれか一方の部材を、第1防振ゴム筒11との間で第1方向に挟む。
図示の例では、第2防振ゴム筒12は、第1防振ゴム筒11の下方に設けられている。第2防振ゴム筒12は、第1防振ゴム筒11との間で、振動発生部Xを第1方向に挟んでいる。
【0022】
第2防振ゴム筒12の上端開口縁に、径方向の内側に向けて開口する窪み部16が形成されている。第2防振ゴム筒12の上端開口縁のうち、窪み部16の径方向の大きさは、窪み部16より径方向の外側に位置して、振動発生部Xに当接する部分の径方向の大きさと同等になっている。
なお、第2防振ゴム筒12に窪み部16を形成しなくてもよい。
【0023】
第2支持部材13は、第2防振ゴム筒12を、振動発生部Xとの間で第1方向に挟んでいる。第2支持部材13は、第2防振ゴム筒12の下端開口縁に取付けられている。第2支持部材13は、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。第2支持部材13は、第2防振ゴム筒12の下端開口縁から径方向の内側に突出している。第2支持部材13は、第2防振ゴム筒12の下端開口縁に加硫接着されている。第2防振ゴム筒12は、第1方向に圧縮変形した状態で設けられている。
【0024】
ここで、第1防振ゴム筒11および第2防振ゴム筒12により第1方向に挟まれる振動発生部Xには、第1防振ゴム筒11内と第2防振ゴム筒12内とを第1方向に連通する第1連通孔(連通孔)31が形成されている。第1連通孔31は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0025】
振動発生部Xにおける第1連通孔31の開口周縁部に、第2防振ゴム筒12の窪み部16内に挿入されたストッパ筒部32が設けられている。ストッパ筒部32は、振動発生部Xから下方に向けて突出している。ストッパ筒部32の下端開口縁は、窪み部16の内面のうち、第1方向に沿う振動発生部X側、つまり上方を向く底面16aから上方に離れている。ストッパ筒部32の下端開口縁は、窪み部16の底面16aと第1方向で対向している。ストッパ筒部32は、振動発生部Xと一体に形成されている。ストッパ筒部32は、例えばバーリング加工等により形成される。
なお、振動発生部Xにストッパ筒部32を設けなくてもよい。
【0026】
芯筒14は、振動発生部Xの第1連通孔31を通して、第1防振ゴム筒11内、および第2防振ゴム筒12内に一体に挿通されている。芯筒14は、第2支持部材13と、振動発生部Xおよび振動受部Yのうちのいずれか他方と、により第1方向に挟まれている。
図示の例では、芯筒14は、第1支持部材21および第2支持部材13により第1方向に挟まれて固定されている。芯筒14は、第1支持部材21を介して振動受部Yに連結されている。芯筒14は、第1支持部材21および第2支持部材13のうちのいずれか一方に、例えば溶接等により接合されてもよい。芯筒14は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
なお、芯筒14は、振動受部Yに直接連結されてもよい。
【0027】
ここで、振動受部Yには、第1支持部材21内に開口する第2連通孔33が形成されている。第2連通孔33は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
第2連通孔33、第1支持部材21、芯筒14、および第2支持部材13それぞれの内側を一体に貫く頭部付きボルトBにナットNが締結されることによって、振動受部Yと第2支持部材13とが第1方向に挟まれている。
【0028】
そして本実施形態では、第1防振ゴム筒11、および第2防振ゴム筒12のうちの少なくとも一方における外周面および内周面に、周溝15が各別に形成されている。周溝15は、周方向の全長にわたって連続して延びている。
図示の例では、周溝15は、第1防振ゴム筒11の外周面に形成され、第2防振ゴム筒12における外周面および内周面に各別に形成されている。
【0029】
第2防振ゴム筒12において、外周面に形成された周溝15の本数が、内周面に形成された周溝15の本数より多くなっている。図示の例では、前者は3本とされ、後者は2本となっている。
なお、前者の本数を後者の本数以下としてもよく、また、前者および後者の各本数を1本としてもよい。
【0030】
第2防振ゴム筒12において、外周面に形成された周溝15、および内周面に形成された周溝15それぞれにおける第1方向の中央部は、第1方向にずれている。
なお、第2防振ゴム筒12において、外周面に形成された周溝15、および内周面に形成された周溝15それぞれにおける第1方向の中央部を、第1方向の同じ位置に位置させてもよい。
【0031】
第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15のうち、最も上方に位置する周溝15、および最も下方に位置する周溝15は、第2防振ゴム筒12の外周面に形成されている。
なお、第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15のうち、最も上方に位置する周溝15、および最も下方に位置する周溝15を、第2防振ゴム筒12の内周面に形成してもよい。
【0032】
周溝15は、第2防振ゴム筒12の内周面に第1方向に間隔をあけて複数形成されるとともに、これらの周溝15のうち、最も下方に位置する周溝15は、溝幅が第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15のなかで最大となり、深さが第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15のなかで最小となるように形成されている。
【0033】
図示の例では、第2防振ゴム筒12の外周面に形成された複数の周溝15のうち、最も上方に位置する周溝15における溝幅および深さは、他の周溝15における溝幅および深さより小さくなっている。
第2防振ゴム筒12の内周面に形成された複数の周溝15のうち、最も上方に位置する周溝の溝幅は、第2防振ゴム筒12の外周面に形成された複数の周溝15のうち、最も上方に位置する周溝15の溝幅と同等になっている。第2防振ゴム筒12の内周面に形成された複数の周溝15のうち、最も上方に位置する周溝の深さは、第2防振ゴム筒12の外周面に形成された複数の周溝15のうち、最も上方に位置する周溝15の深さより浅くなっている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、第1方向の振動の入力に伴い、振動受部Yと第2支持部材13とが、第1防振ゴム筒11および第2防振ゴム筒12を弾性変形させながら、第1方向に変位することで、入力振動を吸収する。
第1防振ゴム筒11、および第2防振ゴム筒12のうちの少なくとも一方における外周面および内周面の双方に、周溝15が形成されているので、このようなゴム筒が第1方向に圧縮変形したときに、このゴム筒における内周面側と外周面側とで変形が大きく異なるのを抑えることができる。これにより、このゴム筒においては、第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることが可能になり、第1方向に圧縮変形する過程でいびつに変形して静ばねが低下するのを抑制することができる。
【0035】
芯筒14が設けられているので、第1方向の振動の入力に伴い、振動受部Yと第2支持部材13とが、第1方向の距離を維持したまま、第1防振ゴム筒11および第2防振ゴム筒12を弾性変形させながら、第1方向に変位することで、入力振動を吸収する。
芯筒14およびストッパ筒部32が設けられているので、第1方向に交差する方向の振動が入力されたときに、芯筒14の外周面およびストッパ筒部32の内周面を互いに当接させ、振動発生部Xおよび振動受部Yの相対変位を規制することができる。
【0036】
周溝15が、第2防振ゴム筒12における外周面および内周面に各別に形成されているので、
図2および
図3に示されるように、第2防振ゴム筒12が第1方向に圧縮変形したときに、第2防振ゴム筒12における内周面側と外周面側とで変形が大きく異なるのを抑えることができる。これにより、第2防振ゴム筒12においては、第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることが可能になり、第1方向に圧縮変形する過程でいびつに変形して静ばねが低下するのを抑制することができる。
【0037】
このように、第2防振ゴム筒12を第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることが可能になることから、第2防振ゴム筒12が第1方向に圧縮変形したときに、第2防振ゴム筒12の内周面側の一部がストッパ筒部32の下端部に向かうように、第2防振ゴム筒12がいびつに変形するのを抑制することが可能になり、ストッパ筒部32の下端部を、第2防振ゴム筒12に食い込みにくくすることができる。
【0038】
第2防振ゴム筒12において、外周面に形成された周溝15の本数が、内周面に形成された周溝15の本数より多くなっているので、第2防振ゴム筒12の上端開口縁に、径方向の内側に向けて開口する窪み部16を形成しても、第2防振ゴム筒12が第1方向に圧縮変形する過程において、第2防振ゴム筒12の上端部に、径方向の外側に向けて膨出するような屈曲変形を生じさせにくくすることが可能になり、第2防振ゴム筒12を確実に第1方向に真直ぐ圧縮変形させやすくすることができる。
【0039】
第2防振ゴム筒12の内周面に形成された複数の周溝15のうち、最も下方に位置する周溝15(以下、対応周溝という)が、溝幅が第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15のなかで最大となり、深さが第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15のなかで最小となるように形成されている。
したがって、幅広で浅い対応周溝が第1方向につぶれるまでの、第2防振ゴム筒12の第1方向に沿う圧縮変形代を大きく確保することが可能になり、第2防振ゴム筒12が第1方向に圧縮変形したときに、第2防振ゴム筒12の内周面側の一部が、ストッパ筒部32の下端部に向かうように、第2防振ゴム筒12がいびつに変形するのを確実に抑制することができるとともに、第2防振ゴム筒12を加硫成形金型から容易に脱型することもできる。
【0040】
なお、本発明の技術範囲は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0041】
例えば、第1方向は、上下方向に交差する方向であってもよく、車両に対して防振装置1を設ける向きは適宜変更してもよい。
芯筒14、およびストッパ筒部32を設けなくてもよい。
第2防振ゴム筒12に形成された全ての周溝15の大きさを互いに同じにしてもよい。
周溝15を、第1防振ゴム筒11における外周面および内周面に各別に形成してもよい。
振動受部Yが、第2防振ゴム筒12および第1防振ゴム筒11により第1方向に挟まれ、振動受部Yにおける第2連通孔33の開口周縁部に、第2防振ゴム筒12の窪み部16内に挿入されるストッパ筒部32を設けてもよい。
【0042】
防振装置1は、車両のキャビンマウントに限定されるものではなく、例えば、車両のメンバマウント、建設機械に搭載された発電機のマウント、若しくは工場等に設置される機械のマウント等に適用することも可能である。
【0043】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 防振装置
11 第1防振ゴム筒
12 第2防振ゴム筒
13 第2支持部材(支持部材)
14 芯筒
15 周溝
16 窪み部
21 第1支持部材
31 第1連通孔(連通孔)
32 ストッパ筒部
33 第2連通孔
O 中心軸線
X 振動発生部
Y 振動受部