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特許7547293中間在庫保有量算出装置、プログラム、及び中間在庫保有量算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】中間在庫保有量算出装置、プログラム、及び中間在庫保有量算出方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240902BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240902BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021135453
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023030365
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】井本 考亮
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 優輝
(72)【発明者】
【氏名】玉置 久
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-086490(JP,A)
【文献】特開2007-115169(JP,A)
【文献】特開2012-185807(JP,A)
【文献】特開2012-133633(JP,A)
【文献】特開2007-257329(JP,A)
【文献】特開2004-054678(JP,A)
【文献】特開2017-151901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する中間在庫保有量算出装置であって、
製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の分岐ポイントに中間在庫の保有ポイントを設定する設定部と、
中間在庫の保有コストと、製品の受注に対する納期遅れ量と、中間在庫のリードタイムとを目的関数とする最適化問題の数理モデルを作成する作成部と、
前記数理モデルに基づいて、保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する計算部と、
を備え
前記最適化問題は、
中間在庫は保有上限値までしか保有できない事を表現する第1の制約条件、
保有している中間在庫以上は引き当てられない事を表現する第2の制約条件、
受注しなければ中間在庫に引き当てられない事を表現する第3の制約条件、及び、
全ての受注はいずれかの中間在庫に引き当てられなければいけない事を表現する第4の制約条件
の少なくとも一つを含む、中間在庫保有量算出装置。
【請求項2】
前記リードタイムは、中間在庫の製造開始から製品の製造完了までの所要期間である製造リードタイムと、中間在庫の製造完了から当該中間在庫が製品の受注に引き当てられるまでの待機期間とを含む、請求項1に記載の中間在庫保有量算出装置。
【請求項3】
前記数理モデルは、前記保有コストと、前記納期遅れ量と、前記リードタイムとの重み付け和として規定される線型数理モデルである、請求項1又は2に記載の中間在庫保有量算出装置。
【請求項4】
前記最適化問題は、前記第1の制約条件、前記第2の制約条件、前記第3の制約条件、及び前記第4の制約条件の全てを含む、請求項に記載の中間在庫保有量算出装置。
【請求項5】
原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する中間在庫保有量算出装置に搭載される情報処理装置を、
製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の複数の分岐ポイントの各々に中間在庫の保有ポイントを設定する設定手段と、
中間在庫の保有コストと、製品の受注に対する納期遅れ量と、中間在庫のリードタイムとを目的関数とする最適化問題の数理モデルを作成する作成手段と、
前記数理モデルに基づいて、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する計算手段と、
として機能させるためのプログラムであって、
前記最適化問題は、
中間在庫は保有上限値までしか保有できない事を表現する第1の制約条件、
保有している中間在庫以上は引き当てられない事を表現する第2の制約条件、
受注しなければ中間在庫に引き当てられない事を表現する第3の制約条件、及び、
全ての受注はいずれかの中間在庫に引き当てられなければいけない事を表現する第4の制約条件
の少なくとも一つを含む、プログラム。
【請求項6】
原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する中間在庫保有量算出方法であって、
情報処理装置が、
製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の複数の分岐ポイントの各々に中間在庫の保有ポイントを設定し、
中間在庫の保有コストと、製品の受注に対する納期遅れ量と、中間在庫のリードタイムとを目的関数とする最適化問題の数理モデルを作成し、
前記数理モデルに基づいて、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出し、
前記最適化問題は、
中間在庫は保有上限値までしか保有できない事を表現する第1の制約条件、
保有している中間在庫以上は引き当てられない事を表現する第2の制約条件、
受注しなければ中間在庫に引き当てられない事を表現する第3の制約条件、及び、
全ての受注はいずれかの中間在庫に引き当てられなければいけない事を表現する第4の制約条件
の少なくとも一つを含む、中間在庫保有量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間在庫保有量算出装置、プログラム、及び中間在庫保有量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、取得部と、受注確率密度関数生成部と、基準在庫数算出部とを備える基準在庫数算出装置が開示されている。受注確率密度関数生成部は、取得部が取得した受注実績データに基づいて、受注数の尤度を表す確率密度関数である受注確率密度関数を生成する。基準在庫数算出部は、受注確率密度関数生成部が生成した受注確率密度関数に基づいて、基準在庫数を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/135526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された基準在庫数算出装置では、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、同時に求めることができない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、適切に求めることが可能な、中間在庫保有量算出装置、プログラム、及び中間在庫保有量算出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る中間在庫保有量算出装置は、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する中間在庫保有量算出装置であって、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の分岐ポイントに中間在庫の保有ポイントを設定する設定部と、中間在庫の保有コストと、製品の受注に対する納期遅れ量と、中間在庫のリードタイムとを目的関数とする最適化問題の数理モデルを作成する作成部と、前記数理モデルに基づいて、保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する計算部と、を備える。
【0007】
本態様によれば、設定部は、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の分岐ポイントに中間在庫の保有ポイントを設定する。また、計算部は、作成部が作成した数理モデルに基づいて、保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する。従って、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、適切に求めることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記リードタイムは、中間在庫の製造開始から製品の製造完了までの所要期間である製造リードタイムと、中間在庫の製造完了から当該中間在庫が製品の受注に引き当てられるまでの待機期間とを含む。
【0009】
本態様によれば、中間在庫の製造開始から製品の製造完了までの所要期間である製造リードタイムと、中間在庫の製造完了から当該中間在庫が製品の受注に引き当てられるまでの待機期間とに基づいて、より適切な中間在庫の保有量を求めることが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記数理モデルは、前記保有コストと、前記納期遅れ量と、前記リードタイムとの重み付け和として規定される線型数理モデルである。
【0011】
本態様によれば、数理モデルを線型数理モデルとして規定する事により、線型計画法によって最適化問題を解くことが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記最適化問題は、中間在庫は保有上限値までしか保有できない事を表現する第1の制約条件、保有している中間在庫以上は引き当てられない事を表現する第2の制約条件、受注しなければ中間在庫に引き当てられない事を表現する第3の制約条件、及び、全ての受注はいずれかの中間在庫に引き当てられなければいけない事を表現する第4の制約条件の少なくとも一つを含む。
【0013】
本態様によれば、最適化問題が第1乃至第4の制約条件の少なくとも一つを含むことにより、より適切な中間在庫の保有量を求めることが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記最適化問題は、前記第1の制約条件、前記第2の制約条件、前記第3の制約条件、及び前記第4の制約条件の全てを含む。
【0015】
本態様によれば、最適化問題が第1乃至第4の制約条件の全てを含むことにより、最も適切な中間在庫の保有量を求めることが可能となる。
【0016】
本発明の一態様に係るプログラムは、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する中間在庫保有量算出装置に搭載される情報処理装置を、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の複数の分岐ポイントの各々に中間在庫の保有ポイントを設定する設定手段と、中間在庫の保有コストと、製品の受注に対する納期遅れ量と、中間在庫のリードタイムとを目的関数とする最適化問題の数理モデルを作成する作成手段と、前記数理モデルに基づいて、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する計算手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0017】
本態様によれば、設定手段は、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の分岐ポイントに中間在庫の保有ポイントを設定する。また、計算手段は、作成手段が作成した数理モデルに基づいて、保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する。従って、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、適切に求めることが可能となる。
【0018】
本発明の一態様に係る中間在庫保有量算出方法は、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する中間在庫保有量算出方法であって、情報処理装置が、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の複数の分岐ポイントの各々に中間在庫の保有ポイントを設定し、中間在庫の保有コストと、製品の受注に対する納期遅れ量と、中間在庫のリードタイムとを目的関数とする最適化問題の数理モデルを作成し、前記数理モデルに基づいて、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する。
【0019】
本態様によれば、情報処理装置は、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の分岐ポイントに中間在庫の保有ポイントを設定する。また、情報処理装置は、作成した数理モデルに基づいて、保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する。従って、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、適切に求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、適切に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る中間在庫保有量算出装置の構成を簡略化して示す図である。
図2】情報処理部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図3】受注見込み情報の一例を簡略化して示す図である。
図4】工程設計情報の一例を簡略化して示す図である。
図5】関係情報の一例を簡略化して示す図である。
図6】製造リードタイム情報の一例を簡略化して示す図である。
図7】保有上限値情報の一例を簡略化して示す図である。
図8】保有コスト情報の一例を簡略化して示す図である。
図9】最適在庫保有パターンの一例を簡略化して示す図である。
図10】シグマの集計範囲を示す図である。
図11】各変数の定義を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素については同じ符号が用いられ、適宜、詳細な説明は省略される。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る中間在庫保有量算出装置1の構成を簡略化して示す図である。中間在庫保有量算出装置1は、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の保有量を算出する情報処理装置である。中間在庫保有量算出装置1は、コンピュータシステム等によって構成され、情報処理部2と情報記憶部3とを備えている。情報処理部2はCPU等であり、情報記憶部3はHDD又はSSD等である。
【0024】
情報記憶部3からROM又はRAM等に読み出したプログラムをCPUが実行することによって、情報処理部2は、情報入力部11、中間在庫保有ポイント設定部12、数理モデル作成部13、最適在庫保有パターン計算部14、及び結果出力部15として機能する。数理モデル作成部13は、目的関数作成部21、中間在庫保有制約作成部22、中間在庫引当上限制約作成部23、受注引当タイミング制約作成部24、及び受注引当制約作成部25を有する。換言すれば、上記プログラムは、中間在庫保有量算出装置1に搭載されるコンピュータを、これらの処理部として機能させるためのプログラムである。各処理部における処理内容については後述する。
【0025】
また、原料から中間材を経て各製品が製造されるまでの製造工程を示す工程設計情報が予め作成されて、情報記憶部3に記憶されている。
【0026】
図2は、情報処理部2が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0027】
まずステップSP01において情報入力部11は、作成された受注見込み情報51を取得し、その取得した受注見込み情報51を中間在庫保有ポイント設定部12に入力する。また、中間在庫保有ポイント設定部12は、情報記憶部3から工程設計情報を読み出すことによって、当該情報を取得する。
【0028】
図3は、受注見込み情報51の一例を簡略化して示す図である。受注見込み情報51には、受注番号、受注製品名(この例ではE1~E5)、受注量、受注日、及び納期が含まれている。
【0029】
次にステップSP02において中間在庫保有ポイント設定部12は、ステップSP01で取得した工程設計情報及び受注見込み情報51に基づいて、中間在庫の保有ポイントを設定する。
【0030】
図4は、製品E1~E5に関する工程設計情報の一例を簡略化して示す図である。製品E1,E2は、原料e0から中間材e1,e2,e3を経て製造される。製品E3は、原料e0から中間材e1,e2を経て製造される。製品E4,E5は、原料e0から中間材e1,e4を経て製造される。中間在庫保有ポイント設定部12は、製造工程の分岐ポイントに、中間在庫の保有ポイントを設定する。具体的に、中間在庫保有ポイント設定部12は、「粗圧延」から「仕上圧延」及び「焼鈍」への分岐ポイントに中間材e1の保有ポイントを設定し、「精製」から「メッキ」及び「仕上切」への分岐ポイントに中間材e2の保有ポイントを設定し、「メッキ」から「仕上切」及び「巻切」への分岐ポイントに中間材e3の保有ポイントを設定し、「仕上圧延」から「精製1」及び「精製2」への分岐ポイントに中間材e4の保有ポイントを設定する。
【0031】
また、中間在庫保有ポイント設定部12は、製品E1~E5と原料e0又は中間材e1~e4との引き当ての対応関係を示す関係情報52を作成する。
【0032】
図5は、関係情報52の一例を簡略化して示す図である。製品の受注に引き当て可能な中間材に「1」のフラグが付与されている。図5に示した例によると、製品E1,E2の受注は原料e0又は中間材e1,e2,e3に引き当て可能であり、製品E3の受注は原料e0又は中間材e1,e2に引き当て可能であり、製品E4,E5の受注は原料e0又は中間材e1,e4に引き当て可能である。中間在庫保有ポイント設定部12は、作成した関係情報52を数理モデル作成部13に入力する。
【0033】
また、オペレータは、図4に示した工程設計情報又は図5に示した関係情報52を参照することにより、中間材の製造開始から製品の製造完了までの所要期間である製造リードタイムを示す製造リードタイム情報53、中間材の在庫(つまり中間在庫)の保有上限値を示す保有上限値情報54、及び、中間在庫の保有コストを示す保有コスト情報55を作成し、作成したこれらの情報を情報記憶部3に記憶する。なお、オペレータの入力操作ではなく、情報処理部2のデータ処理によってこれらの情報を作成しても良い。
【0034】
図2を参照して、次にステップSP03において数理モデル作成部13は、情報記憶部3から製造リードタイム情報53、保有上限値情報54、及び保有コスト情報55を読み出すことによって、これらの情報を取得する。
【0035】
図6は、製造リードタイム情報53の一例を簡略化して示す図である。製造リードタイムは、各中間材の製造が開始されてから製品の製造が完了するまでの所要期間(日数)である。例えば、製品E1に関しては、原料e0から製品E1の製造完了まで16日を要し、中間材e1の製造開始から製品E1の製造完了まで11日を要し、中間材e2の製造開始から製品E1の製造完了まで4日を要し、中間材e3の製造開始から製品E1の製造完了まで2日を要することが示されている。製造工程の下流の中間材ほど、製品の製造完了までの所要期間が短くなっていることが分かる。
【0036】
図7は、保有上限値情報54の一例を簡略化して示す図である。図7に示した例では、保有上限値は、中間材e1~e4のいずれに関しても50トンに設定されている。また、原料e0の保有上限値は無限大に設定されている。
【0037】
図8は、保有コスト情報55の一例を簡略化して示す図である。製造工程の下流の中間材ほど、高い保有コストが設定されている。図8に示した例では、中間材e1の保有コストは「12」、中間材e2の保有コストは「14」、中間材e3の保有コストは「18」、中間材e4の保有コストは「42」に設定されている。また、原料e0の保有コストは「0」に設定されている。
【0038】
図2を参照して、次にステップSP04において数理モデル作成部13は、入力された関係情報52と、取得した製造リードタイム情報53、保有上限値情報54、及び保有コスト情報55とに基づいて、下記式(E1)で示す最適化問題の数理モデルを作成する。
【0039】
【数1】
【0040】
この最適化問題は、目的関数及び制約条件がいずれも線型関数で記述された線型計画問題である。目的関数は、中間在庫のリードタイム(第1項及び第3項)、製品の受注に対する納期遅れ量(第2項)、及び中間在庫の保有コスト(第4項)である。数理モデルは、重み付け値w~wによってこれら4つの項目の重み付け和として規定される線型数理モデルである。重み付け値w~wは「0」以上の任意の値である。
【0041】
式(E1)において、第1項は製造リードタイムを示し、第3項は製造開始待ち時間を示している。つまり、目的関数の一つである中間在庫のリードタイムは、中間在庫の製造開始から製品の製造完了までの所要期間である製造リードタイム(第1項)と、中間在庫の製造完了から当該中間在庫が製品の受注に引き当てられるまでの待機期間(第3項)とを含む。
【0042】
式(E1)において、下記式(C1)は、受注引当制約作成部25によって作成される制約条件である。この制約条件は、全ての受注はいずれかの中間在庫に引き当てられなければいけない事を表現する。
【0043】
【数2】
【0044】
式(E1)において、下記式(C2)は、引き当て時刻を計算する式である。
【0045】
【数3】
【0046】
式(E1)において、下記式(C3)は、各受注のリードタイムを計算する式である。
【0047】
【数4】
【0048】
式(E1)において、下記式(C4)は、各受注の製造完了時刻を計算する式である。
【0049】
【数5】
【0050】
式(E1)において、下記式(C5)は、納期遅れ量を計算する式である。
【0051】
【数6】
【0052】
式(E1)において、下記式(C6)は、受注引当タイミング制約作成部24によって作成される制約条件である。この制約条件は、受注しなければ中間在庫に引き当てられない事を表現する。
【0053】
【数7】
【0054】
式(E1)において、下記式(C7)は、中間在庫引当上限制約作成部23によって作成される制約条件である。この制約条件は、保有している中間在庫以上は引き当てられない事を表現する。
【0055】
【数8】
【0056】
式(E1)において、下記式(C8)は、中間在庫保有制約作成部22によって作成される制約条件である。この制約条件は、中間在庫は保有上限値までしか保有できない事を表現する。
【0057】
【数9】
【0058】
式(E1)において、下記式(C9)は、xjktが「0」か「1」の値のみである事を明示する式である。
【0059】
【数10】
【0060】
図10は、式(E1)及び式(C1)~(C9)におけるシグマの集計範囲を示す図である。式(C1)~(C9)内で指定していない限り、シグマにおける集計範囲は図10に示す通りとなる。
【0061】
図11は、式(E1)及び式(C1)~(C9)における各変数の定義を示す図である。
【0062】
なお、以上では最適化問題が4つの制約条件(C1)(C6)(C7)(C8)を含む例について説明したが、少なくとも一つの制約条件を含めば良い。
【0063】
図2を参照して、次にステップSP05において最適在庫保有パターン計算部14は、数理モデル作成部13が作成した数理モデルに基づいて、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出することにより、最適在庫保有パターンを計算する。
【0064】
図9は、最適在庫保有パターン56の一例を簡略化して示す図である。最適在庫保有パターン56は、受注見込み情報51に相当する入力情報と、計算結果とを含む。計算結果は、引当中間在庫、引当タイミング、引当量、出荷日、及び納期遅れの有無を含む。
【0065】
例えば、受注番号001,002は最も保有コストの低い原料e0から製造しても納期に間に合うため、原料e0に引き当てている。一方、受注番号005は原料e0から製造したのでは納期に間に合わないため、高い保有コストが発生しても中間在庫e1に引き当てて製造することによって納期に間に合わせている。また、受注番号011については、中間在庫e1に引き当てることによって納期遅れを発生させている。これは、中間在庫e4の保有コストが高いため、納期遅れを発生させてでも中間在庫e4ではなく中間在庫e1に引き当てることによって保有コストの削減を図った結果である。仮に、保有コストの削減よりも納期遅れの回避を優先するのであれば、式(E1)において納期遅れ量に関する第2項の重み付け値wの値を大きくする、あるいは保有コストに関する第4項の重み付け値wの値を小さくすることによって、中間在庫e4に引き当てられることとなり、納期遅れを発生させない結果を得ることができる。
【0066】
本実施形態によれば、中間在庫保有ポイント設定部12(設定部)は、製品の製造工程を示す工程設計情報に基づいて、製造工程の分岐ポイントに中間在庫の保有ポイントを設定する。また、最適在庫保有パターン計算部14(計算部)は、数理モデル作成部13(作成部)が作成した数理モデルに基づいて、保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値を算出する。従って、最適な中間在庫の保有ポイントと、各保有ポイントにおける中間在庫の保有量の最適値とを、適切に求めることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、式(E1)において、中間在庫のリードタイムは、中間在庫の製造開始から製品の製造完了までの所要期間である製造リードタイム(第1項)と、中間在庫の製造完了から当該中間在庫が製品の受注に引き当てられるまでの待機期間(第3項)とを含む。これにより、製造リードタイムと待機期間とに基づいて、より適切な中間在庫の保有量を求めることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態によれば、数理モデルを線型数理モデルとして規定する事により、線型計画法によって最適化問題を解くことが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、最適化問題が第1制約条件(C8)、第2制約条件(C7)、第3制約条件(C6)、及び第4制約条件(C1)の少なくとも一つを含むことにより、より適切な中間在庫の保有量を求めることが可能となる。
【0070】
また、本実施形態によれば、最適化問題が第1乃至第4の制約条件の全てを含むことにより、最も適切な中間在庫の保有量を求めることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 中間在庫保有量算出装置
2 情報処理部
12 中間在庫保有ポイント設定部
13 数理モデル作成部
14 最適在庫保有パターン計算部
21 目的関数作成部
22 中間在庫保有制約作成部
23 中間在庫引当上限制約作成部
24 受注引当タイミング制約作成部
25 受注引当制約作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11