(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】移動体通信制御装置、移動体通信制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/28 20090101AFI20240902BHJP
H04W 4/029 20180101ALI20240902BHJP
H04W 72/04 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W4/029
H04W72/04
(21)【出願番号】P 2021136457
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 尚保
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534761(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008911(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/155887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定部と、
前記将来移動体位置推定部によって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御部と、
を備え
、
前記将来移動体位置推定部は、ビームフォーミングを行う前記基地局の利用周波数帯に基づいて、前記移動体の動作計画情報を利用した精細な将来位置の推定を行うか否かを判断する、
移動体通信制御装置。
【請求項2】
無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定部と、
前記将来移動体位置推定部によって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御部と、
前記移動体が外部装置へ送信した送信データに関する情報に基づいて、前記移動体のタスクを判定する移動体タスク判定部と、
前記移動体タスク判定部によって判定された前記移動体のタスクに基づいて、所要の通信リソース量を判定する通信リソース量判定部と、を備え、
前記ビームフォーミング制御部は、前記通信リソース量判定部によって判定された所要の通信リソース量に基づいて、前記基地局のビームフォーミングの制御を行うか否かを判断する、
移動体通信制御装置。
【請求項3】
前記移動体タスク判定部は、前記移動体が外部装置へ送信した送信データに関する情報に基づいて、前記移動体に対する運用監視及び遠隔操作のタスクを判定する、
請求項
2に記載の移動体通信制御装置。
【請求項4】
前記通信リソース量判定部は、前記移動体タスク判定部によって判定された前記移動体のタスクが実行される場所の状況に応じて、所要の通信リソース量を判定する単位の量を変える、
請求項
2に記載の移動体通信制御装置。
【請求項5】
前記通信リソース量判定部は、前記移動体タスク判定部によって判定された前記移動体のタスクが実行される場所の状況に基づいて許容通信品質を決定し、決定された許容通信品質を満たすように所要の通信リソース量を決定する、
請求項
2に記載の移動体通信制御装置。
【請求項6】
無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定部と、
前記将来移動体位置推定部によって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御部と、
前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯の情報を格納する移動体無線機情報格納部と、を備え、
前記移動体無線機情報格納部は、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とビームフォーミングを行う基地局が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とを照合し、ビームフォーミングを行う基地局に対して前記移動体が無線接続することができるか否かを判断し、
前記ビームフォーミング制御部は、前記移動体無線機情報格納部による判断結果に基づいて、ビームフォーミングを行う基地局に無線接続することができる移動体のみを、基地局のビームフォーミングの制御の対象に決定する、
移動体通信制御装置。
【請求項7】
移動体通信制御装置が、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記将来移動体位置推定ステップによって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御ステップと、を含
み、
前記将来移動体位置推定ステップは、ビームフォーミングを行う前記基地局の利用周波数帯に基づいて、前記移動体の動作計画情報を利用した精細な将来位置の推定を行うか否かを判断する、
移動体通信制御方法。
【請求項8】
移動体通信制御装置が、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記将来移動体位置推定ステップによって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記移動体が外部装置へ送信した送信データに関する情報に基づいて、前記移動体のタスクを判定する移動体タスク判定ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記移動体タスク判定ステップによって判定された前記移動体のタスクに基づいて、所要の通信リソース量を判定する通信リソース量判定ステップと、
を含み、
前記ビームフォーミング制御ステップは、前記通信リソース量判定ステップによって判定された所要の通信リソース量に基づいて、前記基地局のビームフォーミングの制御を行うか否かを判断する、
移動体通信制御方法。
【請求項9】
移動体通信制御装置が、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記将来移動体位置推定ステップによって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯の情報を格納する移動体無線機情報格納ステップと、
前記移動体通信制御装置が、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とビームフォーミングを行う基地局が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とを照合し、ビームフォーミングを行う基地局に対して前記移動体が無線接続することができるか否かを判断する判断ステップと、
を含み、
前記ビームフォーミング制御ステップは、前記判断ステップによる判断結果に基づいて、ビームフォーミングを行う基地局に無線接続することができる移動体のみを、基地局のビームフォーミングの制御の対象に決定する、
移動体通信制御方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の移動体通信制御方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信制御装置、移動体通信制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯等の高周波数帯を利用する無線通信システムにおいて、ビームフォーミングによって電波を特定のビーム方向へ集中的に発射し、端末の移動に応じてビーム方向を効率的に制御することが検討されている。
特許文献1に記載された技術は、現在のサービングセルのネットワーク機器とそれに隣接するネットワーク機器とがビームフォーミング情報を交換し、端末が移動した場合に、現在サービング中のネットワーク機器が隣接するネットワーク機器のビーム測定関連情報に基づいて端末を予め設定している。
特許文献2に記載された技術は、端末が、基地局からあらかじめ定義された信号を受信し、あらかじめ定義された信号に基づいて端末の垂直ビームフォーミング方向移動速度及び水平ビームフォーミング方向移動速度のうち少なくとも一つの移動速度情報を算出し、少なくとも一つの移動速度情報を基地局に報告している。
特許文献3に記載された技術は、データ送信装置に対応するミリ波地上局が、車両に設けられた端末に対応するミリ波車上局との間でビームフォーミング処理を行い、その結果に基づきビーム角度を検出し、検出したビーム角度とミリ波地上局の設置位置情報とから車両の位置を推定し、位置推定した車両に向けてスポット的にコンテンツデータを送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-500443号公報
【文献】特表2016-528778号公報
【文献】特開2020-28055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の技術では、端末が移動する将来位置での通信が問題なく確立されるとは限らない可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、自律的に移動するロボット等の移動体に対して将来位置での通信の確立の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定部と、前記将来移動体位置推定部によって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御部と、を備え、前記将来移動体位置推定部は、ビームフォーミングを行う前記基地局の利用周波数帯に基づいて、前記移動体の動作計画情報を利用した精細な将来位置の推定を行うか否かを判断する、移動体通信制御装置である。
本発明の一態様は、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定部と、前記将来移動体位置推定部によって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御部と、前記移動体が外部装置へ送信した送信データに関する情報に基づいて、前記移動体のタスクを判定する移動体タスク判定部と、前記移動体タスク判定部によって判定された前記移動体のタスクに基づいて、所要の通信リソース量を判定する通信リソース量判定部と、を備え、前記ビームフォーミング制御部は、前記通信リソース量判定部によって判定された所要の通信リソース量に基づいて、前記基地局のビームフォーミングの制御を行うか否かを判断する、移動体通信制御装置である。
本発明の一態様は、上記の移動体通信制御装置において、前記移動体タスク判定部は、前記移動体が外部装置へ送信した送信データに関する情報に基づいて、前記移動体に対する運用監視及び遠隔操作のタスクを判定する、移動体通信制御装置である。
本発明の一態様は、上記の移動体通信制御装置において、前記通信リソース量判定部は、前記移動体タスク判定部によって判定された前記移動体のタスクが実行される場所の状況に応じて、所要の通信リソース量を判定する単位の量を変える、移動体通信制御装置である。
本発明の一態様は、上記の移動体通信制御装置において、前記通信リソース量判定部は、前記移動体タスク判定部によって判定された前記移動体のタスクが実行される場所の状況に基づいて許容通信品質を決定し、決定された許容通信品質を満たすように所要の通信リソース量を決定する、移動体通信制御装置である。
本発明の一態様は、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定部と、前記将来移動体位置推定部によって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御部と、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯の情報を格納する移動体無線機情報格納部と、を備え、前記移動体無線機情報格納部は、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とビームフォーミングを行う基地局が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とを照合し、ビームフォーミングを行う基地局に対して前記移動体が無線接続することができるか否かを判断し、前記ビームフォーミング制御部は、前記移動体無線機情報格納部による判断結果に基づいて、ビームフォーミングを行う基地局に無線接続することができる移動体のみを、基地局のビームフォーミングの制御の対象に決定する、移動体通信制御装置である。
【0008】
本発明の一態様は、移動体通信制御装置が、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記将来移動体位置推定ステップによって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御ステップと、を含み、前記将来移動体位置推定ステップは、ビームフォーミングを行う前記基地局の利用周波数帯に基づいて、前記移動体の動作計画情報を利用した精細な将来位置の推定を行うか否かを判断する、移動体通信制御方法である。
本発明の一態様は、移動体通信制御装置が、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記将来移動体位置推定ステップによって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記移動体が外部装置へ送信した送信データに関する情報に基づいて、前記移動体のタスクを判定する移動体タスク判定ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記移動体タスク判定ステップによって判定された前記移動体のタスクに基づいて、所要の通信リソース量を判定する通信リソース量判定ステップと、を含み、前記ビームフォーミング制御ステップは、前記通信リソース量判定ステップによって判定された所要の通信リソース量に基づいて、前記基地局のビームフォーミングの制御を行うか否かを判断する、移動体通信制御方法である。
本発明の一態様は、移動体通信制御装置が、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体についての将来位置を推定する将来移動体位置推定ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記将来移動体位置推定ステップによって推定された前記移動体の将来位置に基づいて、前記移動体が将来移動する範囲で前記移動体と前記無線通信ネットワークの基地局との間の通信を確立することができるように、前記基地局のビームフォーミングを制御するビームフォーミング制御ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯の情報を格納する移動体無線機情報格納ステップと、前記移動体通信制御装置が、前記移動体に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とビームフォーミングを行う基地局が対応している無線通信方式及び無線周波数帯とを照合し、ビームフォーミングを行う基地局に対して前記移動体が無線接続することができるか否かを判断する判断ステップと、を含み、前記ビームフォーミング制御ステップは、前記判断ステップによる判断結果に基づいて、ビームフォーミングを行う基地局に無線接続することができる移動体のみを、基地局のビームフォーミングの制御の対象に決定する、移動体通信制御方法である。
【0009】
本発明の一態様は、上記のいずれかの移動体通信制御方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自律的に移動するロボット等の移動体に対して将来位置での通信の確立の信頼性を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るロボットシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る移動ロボット通信制御方法を説明するための説明図である。
【
図3】一実施形態に係る移動ロボット通信制御方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係るロボットシステムの一実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、自律的に移動するロボット(以下、移動ロボットと称する)を使用して配送を行う配送サービスシステムにおけるロボットシステムを例に挙げて説明する。配送サービスシステムにおいて、移動ロボットは、配送サービス利用者が指定した目的地まで街中を移動し、商品等の荷物を配送する。
【0013】
図1は、一実施形態に係るロボットシステムの構成例を示すブロック図である。
図1において、移動ロボット2は、無線通信ネットワークMNWを介してナビゲーション装置3と通信を行う。移動ロボット2は、移動体の一例である。ナビゲーション装置3は、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供する。また、ナビゲーション装置3は、ナビゲーション機能に加えてさらに遠隔監視機能及び遠隔操作機能を備える。
【0014】
ナビゲーション装置3は、遠隔監視機能により、移動ロボット2を無線通信により遠隔で監視する。例えば、ナビゲーション装置3は、移動ロボット2が撮像する画像や収音する音を移動ロボット2から無線通信ネットワークMNWを介して受信し、受信した画像や音を表示や再生する。監視者が当該画像や当該音を視聴することにより、リアルタイムで移動ロボット2の移動の状況の監視が行われる。
【0015】
また、ナビゲーション装置3は、遠隔操作機能により、移動ロボット2の動作モードを、自律モードから遠隔操作モードに切り替えたり又は遠隔操作モードから自律モードに切り替えたりする。自律モードでは、移動ロボット2が自律的に動作する。一方、遠隔操作モードでは、ナビゲーション装置3が遠隔操作コマンドを移動ロボット2へ送信することにより、移動ロボット2の操作が遠隔で行われる。
【0016】
本実施形態に係る配送サービスシステムでは、ナビゲーション装置3が、無線通信ネットワークMNWを介して、移動ロボット2の遠隔監視や遠隔操作を行う。このため、無線通信ネットワークMNWを介した移動ロボット2の安定的な無線通信が実現されることが好ましい。
【0017】
ナビゲーション装置3は、移動ロボット通信制御装置4と通信を行う。移動ロボット通信制御装置4は、移動ロボット2と通信を行う無線通信ネットワークMNWの基地局(図示せず)のビームを特定の方向へ集中的に発射するように制御する。本実施形態では、移動ロボット通信制御装置4は、移動ロボット2が将来移動する範囲での当該移動ロボット2と基地局との間の通信を確立することができるように、当該基地局のビームフォーミングを制御する。これにより、移動ロボット2に対して将来位置での通信の確立の信頼性を向上させることを図る。
【0018】
以下、
図1を参照して本実施形態に係るロボットシステムの構成を詳細に説明する。
【0019】
[利用者端末]
利用者端末1は、本実施形態に係る配送サービスシステムの利用者(配送サービス利用者)が利用する端末である。配送サービス利用者は、荷物を配送する宛先である目的地を指定して配送を依頼する。利用者端末1は、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置であってもよく、又は据置き型の通信端末装置(例えば据置き型のパーソナルコンピュータ等)であってもよい。
【0020】
利用者端末1は、商品発注部101と、目的地情報入力部102とを備える。商品発注部101は、配送サービス利用者による操作に応じて、商品の選択及び選択した商品の発注を行う。
【0021】
なお、商品発注部101は、配送サービス利用者が所有する物品の残量をリアルタイムに管理し、物品の残量が予め設定された閾値以下になったときに、補充用の商品を自動的に発注してもよい。
【0022】
目的地情報入力部102は、商品発注部101が商品を発注する際に、住所等の目的地を示す目的地情報を入力する。目的地情報は、配送サービス利用者が毎回指定してもよく、又は目的地情報入力部102が過去に配送サービス利用者から指定された目的地情報を記録しておき当該記録の目的地情報を自動的に再利用してもよい。
【0023】
また、目的地情報入力部102は、利用者端末1が備えるGPS(Global Positioning System)による測位機能を用いて、GPSで取得した現在位置を目的地としてもよい。また、目的地情報入力部102は、利用者端末1のカメラで撮影した利用者端末1の周囲の景色の画像を目的地の参考情報として目的地情報に付加してもよい。
【0024】
[移動ロボット]
移動ロボット2は、自律走行可能なロボットである。移動ロボット2は、無線通信部201と、経路情報格納部202と、現在位置取得部203と、状態取得部204と、撮像部205と、動作計画部206と、動作制御部207と、遠隔操作切替部208と、遠隔操作部209と、を備える。
【0025】
無線通信部201は、無線通信ネットワークMNWを介してナビゲーション装置3との間で無線通信を行う。無線通信部201は、無線通信ネットワークMNWの基地局に無線接続して当該基地局との間の通信を確立する。無線通信部201は、例えば4G(第4世代移動通信システム)や5G(第5世代移動通信システム)等の無線通信方式に対応し、自己が対応する無線通信方式の基地局を介して無線通信を行う。なお、無線通信方式として、将来の実用化が見込まれる6G(第6世代移動通信システム)等が利用されてもよい。
【0026】
無線通信部201は、ナビゲーション装置3の経路配信部306から送信された経路情報を受信して経路情報格納部202に格納する。経路情報格納部202に格納された経路情報は、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を示す経路情報であって、移動ロボット2の動作の判断に活用される。
【0027】
現在位置取得部203は、GPS等の測位システムによって、現在位置を示す位置情報を取得する。
状態取得部204は、移動ロボット2に備わる各種センサから、バッテリー残量や温度や移動速度等のデータ(状態情報)を取得する。
撮像部205は、移動ロボット2の周辺を撮像する。撮像部205は、例えば移動ロボット2の進行方向を撮像する。
【0028】
動作計画部206は、移動ロボット2の動作を計画する。動作計画部206は、経路情報格納部202内の経路情報に示される経路を移動する際に、現在位置取得部203により取得した位置情報、状態取得部204により取得した状態情報及び撮像部205により撮像された撮像画像に基づいて、移動ロボット2の周囲の環境に応じた動作を計画する。例えば、動作計画部206は、経路情報に示される経路上において、位置情報に示される位置から進行方向の前方に、撮像画像の画像認識結果の障害物が存在する場合、障害物回避時の所定の速度で当該障害物を避ける経路を移動するように動作を計画する。
【0029】
動作制御部207は、自律モードにおいて、動作計画部206が計画した計画動作に従って移動ロボット2の動作を制御する。一方、動作制御部207は、遠隔操作モードにおいて、遠隔操作部209からの動作指示に従って移動ロボット2の動作を制御する。動作制御部207は、移動ロボット2の前進や後退や右左折等の走行種別及び走行速度、並びに撮像部205の撮像方向の変更等の走行以外の動作種別を制御する。
【0030】
遠隔操作切替部208は、ナビゲーション装置3の遠隔操作命令発出部308から発出された遠隔操作切替命令に従って、移動ロボット2の動作モードを、自律モードから遠隔操作モードに切り替えたり又は遠隔操作モードから自律モードに切り替えたりする。
【0031】
遠隔操作部209は、遠隔操作モードにおいて、遠隔操作コマンドに応じた動作を動作制御部207へ指示する。遠隔操作コマンドは、遠隔操作者の操作に応じてナビゲーション装置3の遠隔操作命令発出部308から送信される。遠隔操作コマンドとして、例えば前進や後退や右折や左折等のコマンドがある。
【0032】
無線通信部201は、現在位置取得部203が取得した位置情報、状態取得部204が取得した状態情報、撮像部205が撮像した撮像画像、動作計画部206が計画した計画動作等の各種の情報をナビゲーション装置3へ送信する。
【0033】
[ナビゲーション装置]
ナビゲーション装置3は、一又は複数の移動ロボット2に対して出発地から目的地までのナビゲーションを行う。また、ナビゲーション装置3は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視や遠隔操作を行う。
【0034】
ナビゲーション装置3は、運用監視部301と、オーダー情報格納部302と、目的地取得部303と、地図情報格納部304と、経路探索部305と、経路配信部306と、映像受信部307と、遠隔操作命令発出部308と、を備える。
【0035】
ナビゲーション装置3の各機能は、ナビゲーション装置3がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、ナビゲーション装置3として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0036】
運用監視部301は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視を行う。運用監視部301は、移動ロボット2からリアルタイムに受信した位置情報や状態情報等を当該移動ロボット2の個体を識別する情報(移動ロボットID)と関連付けて、運用監視を行う。運用監視部301は、定期的に、例えば1秒間隔で更新される情報(位置情報や状態情報等)に基づいて運用監視する。運用監視部301は、移動ロボット2から受信した位置情報や状態情報等を解析し、移動ロボット2の障害を検出した場合には、例えば、監視者に対して警報を発出する。
【0037】
運用監視部301は、移動ロボット2から受信した各種の情報を移動ロボット通信制御装置4へ送信する。
【0038】
オーダー情報格納部302は、利用者端末1から商品発注のオーダー情報を受信し、受信したオーダー情報を格納する。オーダー情報格納部302は、購買システム(図示せず)と連携して購買処理を行い、商品配送計画を策定する。オーダー情報格納部302は、策定した商品配送計画により、移動ロボット2が商品を配送する出発地や目的地や時間帯等の予定配送情報を格納する。
【0039】
目的地取得部303は、オーダー情報格納部302に格納されたオーダー情報又は予定配送情報から目的地情報を取得する。
【0040】
地図情報格納部304は、全国の道路地図データや、それに付随する各種施設や店舗等の施設データ等を格納する。道路地図データは、例えば、地図上の道路を、交差点等をノードとして複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有の識別子(リンクID)、リンク長、リンクの始点・終点(ノード)の位置情報(経度、緯度)、角度(方向)データ、道路幅、道路種別などのデータを含んで構成される。道路地図データは、移動ロボット2が通行可能なレーンを示すレーン情報を含んでもよい。また、地図情報格納部304は、さらに屋内地図データを格納してもよい。
【0041】
経路探索部305は、地図情報格納部304内の地図情報を使用して、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を探索する。
【0042】
移動ロボット2の目的地は、目的地取得部303が取得した目的地情報が示す場所である。移動ロボット2の出発地は、予め設定される。例えば、商品の配送拠点(例えば、商品が貯蔵されている物流倉庫や目的地の最寄りの配送取り扱い店舗等)が、移動ロボット2の出発地として予め設定される。また、移動ロボット2が車両により目的地付近まで運送される場合には、当該移動ロボット2の運送先の場所が当該移動ロボット2の出発地として予め設定される。
【0043】
経路探索部305が利用する経路探索方法として、例えば、ダイクストラ法やA*アルゴリズムや遺伝的アルゴリズム等が利用可能である。ここでは、経路探索方法の一例としてダイクストラ法を用いて経路探索を行う方法を説明する。
【0044】
経路探索部305は、出発地から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)のコストの計算(積算)を順次行なっていき、出発地から目的地までが最小コストとなる経路を選択する。各リンクのコストは、リンクの距離が短いほど、小さな値である。
【0045】
また、各リンクのコストに対して、安全性や無線通信品質等の観点から重み付けを行ってもよい。
【0046】
例えば、所定の閾値未満の道幅の道路のリンクは、移動ロボット2が安全に移動することが難しくなるので、当該リンクに対してコストを大きくする重み付けを行ってもよい。
【0047】
例えば、移動ロボット2がサイズや構造等により種類分けされる場合、移動ロボット2の種類によっては道路の段差を乗り越えることが難しくなることが考えられる。このため、当該種類の移動ロボット2の経路を探索する場合には、段差が存在する道路のリンクに対してコストを大きくする重み付けを行ってもよい。
【0048】
例えば、移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯により種類分けされる場合、移動ロボット2の種類によっては移動するエリアにおける無線通信品質にバラツキが生じることが考えられる。このため、当該種類の移動ロボット2の経路を探索する場合には、無線通信品質が劣化する可能性が高い道路のリンクに対してコストを大きくする重み付けを行ってもよい。
【0049】
経路配信部306は、経路探索部305が探索した結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。また、経路配信部306は、当該経路情報を移動ロボット通信制御装置4へ送信する。
【0050】
映像受信部307は、移動ロボット2から送信される撮像部205により撮像されたリアルタイムの映像(撮像画像)を受信する。映像受信部307で受信された映像は、例えば、遠隔操作者が当該映像を見ながら移動ロボット2を遠隔操作するために利用される。
【0051】
遠隔操作命令発出部308は、移動ロボット2に対して、遠隔操作者がコントローラ(図示せず)に入力した遠隔操作切替命令や遠隔操作コマンドを送信する。
【0052】
[移動ロボット通信制御装置]
移動ロボット通信制御装置4は、将来ロボット位置推定部401と、ロボットタスク判定部402と、通信リソース量判定部403と、ロボット無線機情報格納部404と、ビームフォーミング制御部405と、を備える。
【0053】
移動ロボット通信制御装置4の各機能は、移動ロボット通信制御装置4がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、ナビゲーション装置3として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0054】
ここで、
図2を参照して本実施形態に係る移動ロボット通信制御方法の概略を説明する。
図2は、本実施形態に係る移動ロボット通信制御方法を説明するための説明図である。
図2において、移動ロボット2は、出発地SPから目的地EPまでの経路70を移動している。経路70は、ナビゲーション装置3の経路探索部305によって探索された経路である。移動ロボット2は、経路配信部306から送信された経路情報に基づいて、経路70上を、出発地SPから目的地EPまで移動する。
【0055】
移動ロボット2が移動する経路70を含むエリアには、4台の基地局6-1,6-2,6-3,6-4が配置されている。各基地局6-1,6-2,6-3,6-4は、自己の通信範囲を形成するための電波を送受するアンテナを備える。移動ロボット2の無線通信部201は、経路70上において、各基地局6-1,6-2,6-3,6-4と電波を送受することによって無線通信を行う。
【0056】
図2には、一例として基地局6-2が行うビームフォーミングが示される。移動ロボット通信制御装置4は、移動ロボット2の現在位置と経路情報とに基づいて移動ロボット2の将来位置を推定し、推定された将来位置に基づいて、移動ロボット2が将来移動する範囲(候補座標範囲)で移動ロボット2と基地局6-2との間の通信を確立することができるように、基地局6-2のビームフォーミングを制御する。
【0057】
図2において、移動ロボット2は、経路70上の現在位置において、基地局6-2の現在のビーム60-1によって基地局6-2との間の通信を確立している。移動ロボット通信制御装置4は、移動ロボット2の現在位置と経路70とから推定した移動ロボット2の将来位置に基づいた候補座標範囲をカバーするように、基地局6-2のビームフォーミングを制御する。このビームフォーミング制御によって、基地局6-2のビーム60-2が形成される。移動ロボット2は、経路70上を移動し、候補座標範囲の経路70上において、基地局6-2のビーム60-2によって基地局6-2との間の通信を確立する。このように本実施形態によれば、移動ロボット2の現在位置から将来位置までの経路70上の移動に追随するように、基地局6-2のビーム方向をビーム60-1からビーム60-2へと変えることができる。これにより、移動ロボット2に対して将来位置での通信の確立の信頼性を向上させることができる。
【0058】
説明を
図1に戻す。
将来ロボット位置推定部401は、ナビゲーション装置3の経路配信部306から送信された経路情報と、運用監視部301から送信された移動ロボット2の現在位置を示す位置情報とに基づいて、移動ロボット2の将来位置を推定する。
【0059】
なお、将来ロボット位置推定部401は、ビームフォーミングを行う基地局の利用周波数帯に基づいて、移動ロボット2の動作計画情報を利用した精細な将来位置の推定を行うか否かを判断してもよい。ビームフォーミングを行う基地局の利用周波数帯によって当該基地局の通信エリアの広さが変わるので、移動ロボット2の移動に対してビームフォーミング制御によりビームをどの程度まで的確に追随させる必要があるのかが変わってくる。
【0060】
例えば、基地局が28GHz程度のミリ波帯やそれに近い周波数帯を利用する場合は、移動ロボット2が走行する道路の道幅全体を単一ビームでカバーすることができる可能性が高い。したがって、移動ロボット2が障害物を避ける程度の細かな動きに対してはビームを追随させなくてもよいと考えられる。
【0061】
一方、基地局が300GHz程度のテラヘルツ波帯を利用する場合は、移動ロボット2が走行する道路の道幅全体を単一ビームでカバーすることができないと考えられる。したがって、移動ロボット2が障害物を避ける程度の細かな動きに対してもビームを追随させることが好ましい。
【0062】
そこで、ビームフォーミングを行う基地局の利用周波数帯が例えばテラヘルツ波帯である場合には、移動ロボット2が走行する道路の道幅全体を基地局の単一ビームでカバーすることが難しいので、精細な将来位置の推定を行って、基地局のビームをより的確に移動ロボット2に向けるようにする。精細な将来位置の推定には、経路情報と移動ロボット2の現在位置に加えて、移動ロボット2の動作計画部206が計画した計画動作を利用する。移動ロボット2の動作計画部206が計画した計画動作を示す動作計画情報は、運用監視部301から移動ロボット通信制御装置4へ送信される。
【0063】
一方、ビームフォーミングを行う基地局の利用周波数帯が例えばミリ波帯である場合には、移動ロボット2が走行する道路の道幅全体を単一ビームでカバーすることができる可能性が高いので、精細な将来位置の推定は行わない。
【0064】
ここで、移動ロボット2の移動に対して基地局のビームフォーミングによりビームを追随させる方法について説明する。
移動ロボット通信制御装置4には、基地局が形成する各ビームについて通信可能な範囲がビームカバー座標範囲として予め設定される。ビームカバー座標範囲は、緯度及び経度で示される。
【0065】
将来ロボット位置推定部401は、移動ロボット2の将来位置の推定結果を候補座標範囲で表す。候補座標範囲は緯度及び経度で示される。将来ロボット位置推定部401は、経路情報と移動ロボット2の現在位置の座標(緯度、経度)とに基づいて、移動ロボット2の将来位置の推定結果を、時刻(例えば1秒単位)と候補座標範囲との組合せデータとして算出する。
【0066】
移動ロボット2の将来位置の推定結果における時刻において、基地局のビームがカバーするビームカバー座標範囲が当該推定結果の移動ロボット2の候補座標範囲を全てカバーするように、基地局のビームフォーミングを制御することによって、例えば、移動ロボット2が曲がり角を曲がった時などにおいても、当該移動ロボット2の移動に追随して当該移動ロボット2と基地局との間の通信を確立し続けることができる。
【0067】
将来ロボット位置推定部401が経路情報に基づいて算出する候補座標範囲は粗くなる。一方、将来ロボット位置推定部401がさらに動作計画情報を利用して算出する候補座標範囲は精細になる。これは、経路情報が出発点から目的地までの大局的な経路を示すのに対して、動作計画情報が障害物を避けるといった局所的な経路を示すからである。
【0068】
ロボットタスク判定部402は、移動ロボット2がナビゲーション装置3へ送信した送信データに関する情報に基づいて、当該移動ロボット2のタスクを判定する。より具体的には、ロボットタスク判定部402は、移動ロボット2が送信した送信データの種類や頻度に基づいて、当該移動ロボット2のタスクを判定する。例えば、移動ロボット2から周期的に(例えば、1秒に1回の頻度で)位置情報や状態情報が送信される場合、運用監視のタスクであると判定する。例えば、移動ロボット2から常時、高品質の映像情報が送信される場合、遠隔操作のタスクであると判定する。
【0069】
通信リソース量判定部403は、ロボットタスク判定部402によって判定された移動ロボット2のタスクに基づいて、所要の通信リソース量を判定する。例えば、移動ロボット2のタスクが遠隔操作である場合、移動ロボット2からデータ量が大きな映像情報が送信されるので、通信リソース量判定部403は所要の通信リソース量を大容量と判定する。一方、移動ロボット2のタスクが運用監視である場合、移動ロボット2からデータ量が小さい位置情報や状態情報が送信されるので、通信リソース量判定部403は所要の通信リソース量を小容量と判定する。
【0070】
なお、通信リソース量判定部403は、ロボットタスク判定部402によって判定された移動ロボット2のタスクが実行される場所の状況に応じて、所要の通信リソース量を判定する単位の量を変えてもよい。例えば、移動ロボット2のタスクが遠隔操作であっても、移動ロボット2が走行する道路の道幅が狭かったり、道路上に人が密集していたり、移動ロボット2の移動速度が大きかったりするほど、人や障害物を避けるために、より高解像度の映像やより低遅延の遠隔操作コマンドの送信が要求される。このため、通信リソース量判定部403は、経路情報に関連付けられた道幅や屋外人口密度の統計情報等に基づいて、所要の通信リソース量を判定する単位の量を小さくしてきめ細かく所要の通信リソース量を判定したり、又は所要の通信リソース量を判定する単位の量を大きくして大まかに所要の通信リソース量を判定したりする。
【0071】
また、通信リソース量判定部403は、ロボットタスク判定部402によって判定された移動ロボット2のタスクが実行される場所の状況に基づいて許容通信品質を決定し、決定された許容通信品質を満たすように所要の通信リソース量を決定してもよい。例えば、移動ロボット2のタスクが遠隔操作である場合において、より高解像度の映像やより低遅延の遠隔操作コマンドの送信が要求されるときには、通信リソース量判定部403は許容通信品質を通常よりも高品質に決定して所要の通信リソース量を通常よりも大容量に決定する。一方、移動ロボット2のタスクが遠隔操作である場合において、それほど高解像度の映像や低遅延の遠隔操作コマンドの送信が要求されないときには、通信リソース量判定部403は許容通信品質を通常品質に決定して所要の通信リソース量を通常容量に決定する。
【0072】
ロボット無線機情報格納部404は、各移動ロボット2(無線通信部201)に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式(例えば5Gや4Gなど)や無線周波数帯等の情報を格納する。ロボット無線機情報格納部404は、各移動ロボット2に備わる無線送受信機が対応している無線通信方式や無線周波数帯と、ビームフォーミングを行う基地局が対応している無線通信方式や無線周波数帯とを照合し、各移動ロボット2がビームフォーミングを行う基地局に無線接続することができるか否かを判断する。
【0073】
ビームフォーミング制御部405は、将来ロボット位置推定部401によって推定された移動ロボット2の将来位置に基づいて、当該移動ロボット2が将来移動する範囲で当該移動ロボット2と無線通信ネットワークMNWの基地局との間の通信を確立することができるように、基地局のビームフォーミングを制御する。
【0074】
将来ロボット位置推定部401によって推定された移動ロボット2の将来位置は候補座標範囲で表される。ビームフォーミング制御部405は、基地局の各ビームで通信可能な範囲をビームカバー座標範囲で表す。移動ロボット通信制御装置4には、ビームカバー座標範囲が予め設定される。ビームフォーミング制御部405は、基地局の各ビームのビームカバー座標範囲によって移動ロボット2の候補座標範囲をカバーするように、基地局のビームフォーミングを制御する。より具体的には、ビームフォーミング制御部405は、候補座標範囲に対応する時刻において、基地局のビームがカバーするビームカバー座標範囲が当該候補座標範囲を全てカバーするように、基地局のビームフォーミングを制御する。
【0075】
また、ビームフォーミング制御部405は、ロボット無線機情報格納部404による判断結果に基づいて、ビームフォーミングを行う基地局に無線接続することができる移動ロボット2のみを、基地局のビームフォーミングの制御の対象に決定する。
【0076】
また、ビームフォーミング制御部405は、通信リソース量判定部403によって判定された所要の通信リソース量に基づいて、基地局のビームフォーミングの制御を行うか否かを判断する。移動ロボット2に必要な通信要件によって、ミリ波帯等の高周波数帯を利用しビームフォーミングを行う基地局との無線接続の要否が変わることが考えられる。高速大容量の通信が必要な場合には、高周波数帯を利用しビームフォーミングを行う基地局との無線接続が必要であるが、高速大容量の通信が不要な場合には、通信エリアが広い低周波数帯の基地局との無線接続でよいので、高周波数帯を利用しビームフォーミングを行う基地局との無線接続が不要である。
【0077】
例えば、移動ロボット2の遠隔操作が行われる場合は、移動ロボット2からデータ量が大きな映像情報が送信されるので、高周波数帯を利用しビームフォーミングを行う基地局と無線接続することが好ましい。一方、移動ロボット2の運用監視が行われる場合は、移動ロボット2からデータ量が小さい位置情報や状態情報が送信されるので、高周波数帯を利用しビームフォーミングを行う基地局との無線接続はなくてもよい。したがって、ビームフォーミング制御部405が通信リソース量判定部403によって判定された所要の通信リソース量に基づいて、基地局のビームフォーミングの制御を行うか否かを判断することは好ましい。
【0078】
次に
図3を参照して、本実施形態に係る移動ロボット通信制御方法を説明する。
図3は、本実施形態に係る移動ロボット通信制御方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0079】
(ステップS1) ナビゲーション装置3は、出発地及び目的地を取得する。
【0080】
(ステップS2) ナビゲーション装置3は、ステップS1で取得された出発地から目的地までの経路を探索する。ナビゲーション装置3は、当該探索の結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2及び移動ロボット通信制御装置4へ送信する。
【0081】
(ステップS3) 移動ロボット通信制御装置4は、移動ロボット2に関する情報(経路情報、位置情報、動作計画情報等)を取得する。
【0082】
(ステップS4) 移動ロボット通信制御装置4は、ステップS3で取得された情報に基づいて、移動ロボット2の将来位置を推定する。
【0083】
(ステップS5) 移動ロボット通信制御装置4は、ステップS4で推定された移動ロボット2の将来位置に基づいて、当該移動ロボット2が将来移動する範囲で当該移動ロボット2と無線通信ネットワークMNWの基地局との間の通信を確立することができるように、基地局のビームフォーミングを制御する。
【0084】
(ステップS6) 移動ロボット通信制御が終了である場合には
図3の処理を終了する。移動ロボット通信制御が継続である場合にはステップS3に戻る。
【0085】
次に
図4を参照して本実施形態に係るロボットシステムの実施例を説明する。
図4は、本実施形態に係るロボットシステムの一実施例を示す概略構成図である。
図4において、無線通信ネットワークMNWの基地局は、信号処理機能を有する収容局装置22と、アンテナを有する張出局装置6とに、光ファイバ無線(Radio over Fiber:RoF)技術を用いて分離される。一の収容局装置22は、複数の張出局装置6-1,6-2,・・・,6-pを収容する。
【0086】
収容局装置22は、バックホールネットワークBNWを介して集約局装置20と通信により接続される。集約局装置20は、複数の収容局装置22を収容する。ビームフォーミングに関して、集約局装置20は、張出局装置6が形成するビームを遠隔で制御する遠隔ビームフォーミング機能を備えてもよい。
【0087】
図4の実施例では、移動ロボット通信制御装置4が収容局装置22に設けられる。当該収容局装置22に収容される複数の張出局装置6-1,6-2,・・・,6-pのうち少なくともいずれかの張出局装置6は、移動ロボット2が移動するエリアにおける無線接続を提供するためのアンテナを有する。これにより、移動ロボット2を対象にしたビームフォーミング制御の遅延をできる限り小さくすることができる。
【0088】
また
図4の実施例では、ナビゲーション装置3が集約局装置20に設けられる。これは、集約局装置20が収容する複数の収容局装置22にそれぞれ設けられた複数の移動ロボット通信制御装置4に対して、共通のナビゲーション装置3を設けるためである。なお、ナビゲーション装置3が一の移動ロボット通信制御装置4のみに対応する場合には、ナビゲーション装置3及び移動ロボット通信制御装置4を同じ収容局装置22に設けてもよい。
【0089】
上述した実施形態によれば、移動ロボット2に対して将来位置での通信の確立の信頼性を向上させることができるという効果が得られる。
【0090】
なお、これにより、例えば配送サービスシステムにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0092】
上述した実施形態では、ロボットシステムを、配送サービスシステムに適用したが、配送サービスシステム以外の他のシステムに適用してもよい。例えば、移動ロボットにより道路を検査する道路検査サービスシステムに、上述した実施形態に係るロボットシステムを適用してもよい。
【0093】
また、上述した実施形態では、移動体として移動ロボットを例に挙げたが、これに限定されない。移動体として、自動運転を行う車両(自動運転車両)や、ドローンと称される自律的に飛行する飛行体等を適用してもよい。
【0094】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0095】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…利用者端末、2…移動ロボット、3…ナビゲーション装置、4…移動ロボット通信制御装置、20…集約局装置、22…収容局装置(基地局)、6-1,6-2,・・・,6-p…張出局装置(基地局)、201…無線通信部、202…経路情報格納部、203…現在位置取得部、204…状態取得部、205…撮像部、206…動作計画部、207…動作制御部、208…遠隔操作切替部、209…遠隔操作部、301…運用監視部、302…オーダー情報格納部、303…目的地取得部、304…地図情報格納部、305…経路探索部、306…経路配信部、307…映像受信部、308…遠隔操作命令発出部、401…将来ロボット位置推定部、402…ロボットタスク判定部、403…通信リソース量判定部、404…ロボット無線機情報格納部、405…ビームフォーミング制御部