(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】振込処理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20240902BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2021205234
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2021203756
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 慶美
(72)【発明者】
【氏名】保田 一光
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-286689(JP,A)
【文献】特開2020-197768(JP,A)
【文献】特開2021-162887(JP,A)
【文献】特開2003-316951(JP,A)
【文献】特開2006-190250(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0011526(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第113128792(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振込処理システムであって、
利用者端末から、会計システムが提供するウェブサイトに埋め込まれたAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を介して、複数の銀行の振込先口座に対する振込指示を受信する受信手段と、
振込処理の上限金額を、利用者企業ごとに管理する管理手段であって、前記上限金額は、各振込先口座宛ての所定期間の振込金額に基づいて更新され、並びに、前記利用者企業の年商、業種および財務状況に基づいて更新される、管理手段と、
前記振込処理の振込金額が前記上限金額を超えない場合に、前記振込指示に応じて、複数の利用者口座からの振込を管理口座に集約し、前記管理口座から一時口座を介して、前記複数の銀行の振込先口座への振込処理を行う振込手段と
を備え、
前記複数の利用者口座から前記一時口座までの振込処理は、デビット決済を利用した処理によって実施されることを特徴とする振込処理システム。
【請求項2】
前記振込処理の振込金額が前記上限金額を超える場合は、前記振込手段による振込処理を中止し、前記利用者端末に前記上限金額を超えた旨を示すエラー情報を表示することを特徴とする請求項
1に記載の振込処理システム。
【請求項3】
前記上限金額は、月次で管理されることを特徴とする請求項
1または
2に記載の振込処理システム。
【請求項4】
コンピュータによって実施される振込処理方法であって、
利用者端末から、会計システムが提供するウェブサイトに埋め込まれたAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を介して、複数の銀行の振込先口座に対する振込指示を受信する受信ステップと、
振込処理の上限金額を、利用者企業ごとに管理する管理ステップであって、前記上限金額は、各振込先口座宛ての所定期間の振込金額に基づいて更新され、並びに、前記利用者企業の年商、業種および財務状況に基づいて更新される、管理ステップと、
前記振込処理の振込金額が前記上限金額を超えない場合に、前記振込指示に応じて、複数の利用者口座からの振込を管理口座に集約し、前記管理口座から一時口座を介して、前記複数の銀行の振込先口座への振込処理を行う振込ステップと
を含み、
前記複数の利用者口座から前記一時口座までの振込処理は、デビット決済を利用した処理によって実施されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振込処理システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブサイトまたは専用のアプリケーション等を介して、企業の会計サービスが提供されている。企業の利用者は、そのような会計サービスを利用して、取引先企業からの請求データを処理し、取引先企業への支払いを行っている(例えば、特許文献1参照)。取引先企業への支払いは、例えば、利用者が、会計サービスによって提供される一時的な銀行口座(以下、一時口座とも称する)への入金を行い、次いで、当該一時口座から取引先企業の振込先口座への振込が行われることによって実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、利用者が複数の銀行から振込を行って一時口座に入金する場合、銀行毎に振込を行う必要があったため、作業が煩雑になってしまっていた。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものであり、利用者の利便性を向上させることを可能にする振込処理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によると、振込処理システムは、利用者端末から、複数の銀行の振込先口座に対する振込指示を受信する受信手段と、前記振込指示に応じて、複数の利用者口座から前記複数の銀行の振込先口座への振込処理行う振込手段とを備える。
【0007】
また、一実施形態によると、振込処理方法は、利用者端末から、複数の銀行の振込先口座に対する振込指示を受信する受信ステップと、前記振込指示に応じて、複数の利用者口座から前記複数の銀行の振込先口座への振込処理行う振込ステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、利用者の利便性を向上させることを可能にする振込処理システムおよび方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る振込処理システムの概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る振込処理システムの処理概要を説明する図である。
【
図3】一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る決済機関システムの振込サーバの機能構成例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る振込処理のフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る利用者端末の操作イメージの例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る振込先銀行の一覧画面の例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る上限金額情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。本明細書及び添付の図面を通して同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(システム構成例)
図1は、一実施形態に係る振込処理システムの概略構成図である。振込処理システム100は、利用者端末101、会計システム102、決済機関システム103、複数の銀行システム105、106、107を含み、ネットワーク109を介して通信可能に接続されている。
【0012】
利用者は、利用者端末101を使用して、会計システム102が提供するウェブサイトにアクセスし、取引先への振込を指示する端末である。また、利用者は、利用者端末101を使用して、複数の銀行システム105、106、107のそれぞれが提供するウェブサイトにアクセスし、個別に振込を行ったり、残高を照会したりすることができる。
【0013】
決済機関システム103は、複数の銀行システム105、l06、107から入金された利用者残高の管理口座111を管理する。また、決済機関システム103は、振込サーバ110を有し、複数の銀行システム105、106、107の利用者口座から管理口座111への振込処理を行ったり、管理口座111から一時口座を介して複数の銀行システム105、106、107の取引先口座へ振込処理を行ったりする。また、振込サーバ110は、各取引先口座への振込金額をチェックし、振込を行うどうかの判定を行ってもよい。詳細は後述する。
【0014】
(処理概要)
図2は、一実施形態における振込処理システムの処理概要を説明する図である。
【0015】
本実施形態では、まず、複数の銀行(例として、それぞれA銀行、B銀行、C銀行とする)の利用者口座から、決済機関システム103の管理口座211へ振込が行われる。例えば、利用者は、利用者端末101において、会計システム102が提供するウェブサイトに組み込まれたAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を介して、(a)A銀行の利用者口座から管理口座211への振込、(b)B銀行の利用者口座から管理口座211への振込、(c)C銀行の利用者口座から管理口座211への振込を指示する。
【0016】
管理口座211へ振込まれたお金は、さらに、一時口座212へ振り込まれる。一時口座212は、会計システム102を提供している企業の口座とすることができる。利用者口座から管理口座にお金を集約し、一時口座に移動させるまでの振込処理は、いわゆるデビット決済を利用した処理によって実施することができる。
【0017】
さらに、一時口座212へ振り込まれたお金は、複数の銀行の取引先口座205、206、207へ振り込まれる。
【0018】
このように、本実施形態では、(a)~(c)の振込処理をまとめて一度に行うことができ、利用者からの一度の指示で複数の振込先口座へ振込を行うことができる。
【0019】
(コンピュータのハードウェア構成)
図3は、一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成例を示す。コンピュータ300は、利用者端末101、或いは、会計システム102、決済機関システム103、および複数の銀行システム105、106、107を構成する1つまたは複数のサーバコンピュータとすることができる。
【0020】
本実施形態におけるコンピュータ300は、プロセッサ301と、メモリ302と、記憶装置303と、通信インターフェース(I/F)305と、入力装置306と、表示装置307とを備え、これらはバス310を介して通信可能に接続されている。
【0021】
プロセッサ301は、CPU(Central Processing Unit)とすることができ、バス310を介して接続された他の各構成要素を制御し、データを処理する。また、プロセッサ301は、メモリ302または記憶装置303に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、本実施形態に係る各種処理を実行する。
【0022】
メモリ302は、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを含み、本実施形態に係る各種処理を実行するためのプログラム及びデータを記憶する。RAMは、ワークメモリとして動作し、プロセッサ301が読み出したプログラムをロードすることができる。
【0023】
記憶装置303は、HDD(Hard Disk Drive)、SDD(Solid State Drive)などの大容量記憶装置とすることができ、本実施形態に係る各種処理を実行するためのプログラム及びデータを記憶する。
【0024】
通信インターフェース(I/F)305は、有線または無線ネットワークに接続し、データを送受信するためのインターフェースであって、他のコンピュータとの通信を可能にする。
【0025】
入力装置306は、キーボード、マウス、表示装置307を兼ねるタッチパネルディスプレイなどとすることができる。
【0026】
表示装置307は、液晶ディスプレイや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどとすることができる。
【0027】
尚、コンピュータのハードウェア構成は上述した構成例に限定されるものではなく、その他の構成要素を含んでよい。
【0028】
(機能構成)
図4は、一実施形態にかかる決済機関システム103の振込サーバ110の機能構成例を示す図である。
【0029】
振込サーバ110は、振込指示受信部401、および振込処理部403を有する。さらに、振込サーバ110は、振込金額記憶部405、および上限管理部407を有してよい。これらの機能部は、
図3を参照して説明したように、コンピュータ300のプロセッサ301がメモリ302または記憶装置303に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実装され得る。ここでは、特に本実施形態に関する機能部について説明するが、振込サーバ110はその他の機能部も含み得る。
【0030】
振込指示受信部401は、1または複数の利用者口座から1または複数の取引先口座への振込指示を、振込サーバ110が提供するAPI(以下、振込APIと称する)を介して利用者端末101から受信する。なお、振込指示は、利用者端末101において、会計システム102が提供するウェブサイトを介して登録した請求データに基づいて生成される。1または複数の利用者口座および取引先口座は、1または複数の異なる銀行の口座であってよい。
【0031】
振込APIは、会計システム102が提供するウェブサイトに埋め込むことができ、登録された1または複数の利用者口座を利用者によって選択可能に表示する。利用者は、1または複数の利用者口座を選択し、振込指示を送信することができる。
【0032】
振込処理部403は、振込指示受信部401が受信した振込指示に応じて、振込処理を実施する。振込処理部403により、
図2を参照して説明した振込処理が実施される。
【0033】
振込金額記憶部405は、各振込先口座への振込金額を記憶する。振込金額は、振込先の企業ごとに、月次で合算して記憶される。さらに、各振込先口座へのすべての振込金額を月次で合算して記憶してもよい。
【0034】
上限管理部407は、振込金額記憶部405に記憶された各振込先口座への振込金額に基づいて、振込指示を受けた振込金額によって、当月の振込金額が、その利用者に対して月単位で設定された振込の上限金額を超えるかどうか判定する。上限金額を超えない場合は、振込処理部403による振込処理が実施される。一方、上限金額を超える場合は、振込処理部403による振込処理を中止し、当月の振込の合計金額が、上限金額を超えた旨を示すエラー情報を利用者端末101に送信する。
【0035】
なお、設定された上限金額は、随時見直される。例えば、各振込先宛の直近一年間の振込金額に基づいて、毎月見直しを実施してもよい。あるいは、利用者企業の年商、業種、財務状況などから総合的に上限金額を算出し、1年ごとに見直してもよい。
【0036】
上述した振込サーバ110の機能構成は、一例に過ぎず、上述した例に限定されないことに留意されたい。
【0037】
(振込処理)
図5は、一実施形態に係る振込処理のフローチャートを示す。以下に説明する振込処理の各ステップは、利用者端末101または振込サーバ110によって実施される。
【0038】
まず、ステップS501において、利用者端末101は、会計システム102によって提供されるウェブサイト上で、振込先銀行の一覧画面を表示する。一覧画面は、振込サーバ110が提供する振込APIをウェブサイトに埋め込むことによって実装され得る。
【0039】
次いで、ステップS503において、利用者は、利用者端末101上で1または複数の振込先口座の銀行を選択し、ウェブサイトに表示された振込ボタン(あるいは連携ボタン)を押下する。
【0040】
次いで、ステップS505において、利用者端末101は、振込指示を振込サーバ110に送信する。
【0041】
なお、初回操作時は銀行を選択する必要があるが、2回目以降は、銀行の選択は省略することができる。上記ステップの操作イメージの例を、
図6に示す。利用者端末101は図示されるように、操作画面を表示する。
【0042】
図7は、S501において表示される振込先銀行の一覧画面の例を示す。一覧画面700に示されるように、本実施形態では、一度に複数の振込先銀行を選択することができる。すなわち、一つの振込APIを実装することによって、複数の振込先銀行を選択することが可能となる。
【0043】
次いで、ステップS507において、振込サーバ110の振込指示受信部401は、振込APIを介して振込指示を受信する。
【0044】
次いで、ステップS509において、振込サーバ110の上限管理部407は、今回の振込金額を振り込むことによって、利用者企業に設定された振込の上限金額を超えるかどうか判定する(上限チェック)。
【0045】
図8は、一実施形態に係る上限金額情報の例を示す。図示されるように、上限金額情報800は、各振込先の月ごとの上限金額と、合計上限金額とを含む。上限管理部407は、上限金額情報800に基づいて、今回の振込金額によってそれぞれの上限金額を超えるかどうか判定する。
【0046】
ステップS511において、上限金額を超えると判定されると、上限管理部407は、振込処理部403による振込処理を中止し、エラー情報を利用者端末101に送信する。ステップS513において、利用者端末101はエラー情報を表示し、利用者に通知する。なお、上限金額を超えて振込が必要な場合、取引銀行経由で振込サーバの上限金額を一時的に引き上げたうえで改めてウェブサイトから振込ボタンを押下することで、振込処理を実施することができる。
【0047】
一方、ステップS511において、上限金額を超えないと判定されると、上限管理部407は、振込処理部403による振込処理を続行させる。
【0048】
ステップS515において、振込サーバ110の振込処理部403は、振込指示に基づく振込処理を実施する。具体的には、1または複数の振込先銀行宛ての振込電文がそれぞれ、各銀行に送信される。また、振込処理が実施されると、振込金額記憶部405は、振込金額を記憶する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によると、利用者の利便性を向上させることを可能にする振込処理システムおよび方法を提供することができる。
【0050】
より具体的には、会計システムが提供するウェブサイトなどに振込APIを埋め込み、複数銀行宛ての振込を一回のオペレーションで実行することで、業務効率化の効果がある。また、利用者が、振込だけのために各銀行が提供するインターネットバンキングにログインする手間を省く効果もある。
【0051】
さらに、振込上限金額を利用企業の利用状況(毎月の振込金額)や売上・業種を踏まえた財務内容などから総合的に判断し、月次ベースで上限金額を変動させ、振込サーバで管理することで、不正利用を防止する効果がある。また、振込上限金額を振込サーバで管理することで、振込APIを埋め込むウェブサイトごとに上限金額の管理機能を実装する労力を削減できる効果もある。
【符号の説明】
【0052】
104 振込サーバ
401 振込指示受信部
403 振込処理部
405 振込金額記憶部
407 上限管理部