(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】洗浄が容易なコーティング
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20240902BHJP
C09D 183/08 20060101ALI20240902BHJP
C09D 185/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B05D7/24 302L
C09D183/08
C09D185/00
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302R
(21)【出願番号】P 2021525814
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019080795
(87)【国際公開番号】W WO2020099290
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ニール・グレゴリー・プシーラー
(72)【発明者】
【氏名】シン・ツァオ・タン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ジュン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】サミ・ピリネン
(72)【発明者】
【氏名】アリ・カルッカイネン
(72)【発明者】
【氏名】ミルジャ・ハンヌ-クウレ
(72)【発明者】
【氏名】オスカリ・マエキマルティ
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228238(JP,A)
【文献】特表2005-508420(JP,A)
【文献】特開2014-021316(JP,A)
【文献】特表2014-501804(JP,A)
【文献】特開平10-120442(JP,A)
【文献】特開2003-238577(JP,A)
【文献】国際公開第2006/045582(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190526(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1665752(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102732152(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を作製する方法であって、
a)第1の容器内で第1の前駆体組成物(FPC)を調製する工程であって、
a1)1つ又は複数の下記式(I)
M
1(OR
1)
nR
2
m (I)
(式中、
M
1は、z価の金属又は半金属であり、
R
1は、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
2は、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~zであり、
mは、z-1~0であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物を供給する工程、及び
a2)M
1(OR
1)部分を少なくとも部分的に加水分解し、且つ前記1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物を重合する工程
を含む、工程、
b)第2の容器内で第2の前駆体組成物(SPC)を調製する工程であって、
b1)以下の式(III)
R
5-R
F-Q-Si(OR
3)
oR
4
p (III)
(式中、
R
Fは、フルオロポリエーテル基であり、
Qは、2価の連結基であり、
R
3は、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
4は、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
oは、1、2、又は3であり、
pは、0、1、又は2であり、
o+pは、3であり、
R
5は、H、xが1~10であるC
xF
2x+1、又はQ、R
3、R
4、o、及びpが上記で定義されたとおりである-Q-Si(OR
3)
oR
4
pであり、存在するQ、R
3、R
4、o、及びpは、出現ごとにそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)
の化合物から選択される、加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
を含む、工程、
c)前記第1の前駆体組成物(FPC)を前記第2の前駆体組成物(SPC)と組み合わせる工程、
d)前記基板上に薄層を形成する工程
、並びに
f
)工程d)で得られた中間生成物を硬化させて薄膜を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物は、フッ素を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物のうちの1つ又は複数は、式(I)のR
2残基中に少なくとも1個のフッ素原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程f)の後の前記薄膜の厚さは、15.0~120nmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒が存在する場合、フッ素含有溶媒の量は、存在する溶媒の総質量に対し75質量%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)において、前記第1の前駆体組成物(FPC)の固形分と前記第2の前駆体組成物(SPC)の固形分との間の質量比は、100:1.0~0.5:1.0の
間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
M
1は、Si、Ge、Sb、Ti、Zr、Al、Sn、W、Se、Cr、Ag、又はNiから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)は、ディップコーティング、スロットコーティング、スロットコーティングとスピンコーティングの組み合わせ、スピンコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、カーテンコーティング、ローラコーティング、ロールツーロールコーティング、スクリーン印刷によって、又はバー、ブラシを使用することによって、又はラビングによって達成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程a2)において、下記式(II)
R
7'
t'(OR
6')
s'M
2-Y-M
2'(OR
6)
sR
7
t (II)
(式中、
M
2、M
2'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してx価の金属又は半金属から選択され、
Yは、2価の連結基であり、
R
6、R
6'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
7、R
7'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
s、s'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して1~x-1から選択され、
t、t'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してx-2~0から選択され、
s+tは、x-1であり、且つ
s'+t'は、x-1である)
の化合物が存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
e)溶媒が存在する場合、工程d)の後に部分的又は完全に溶媒を除去する工程
をさらに含み、
工程e)の後、硬化する工程f)を行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法によって得られる薄膜を物品の少なくとも1つの表面に適用する工程を含む、物品を製造する方法。
【請求項12】
前記物品は、光学的又は電気的に被覆された物品である、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
第1の前駆体組成物(FPC)及び第2の前駆体組成物(SPC)を含む組成物を調製する方法であって、前記方法は、
a)第1の容器内で第1の前駆体組成物(FPC)を調製する工程であって、
a1)1つ又は複数の下記式(I)
M
1(OR
1)
nR
2
m (I)
(式中、
M
1は、z価の金属又は半金属であり、
R
1は、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
2は、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~zであり、
mは、z-1~0であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物を供給する工程、及び
a2)M
1(OR
1)部分を少なくとも部分的に加水分解し、且つ前記1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物を重合する工程
を含む、工程、
b)第2の容器内で第2の前駆体組成物(SPC)を調製する工程であって、
b1) 以下の式(III)
R
5-R
F-Q-Si(OR
3)
oR
4
p (III)
(式中、
R
Fは、フルオロポリエーテル基であり、
Qは、2価の連結基であり、
R
3は、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
4は、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
oは、1、2、又は3であり、
pは、0、1、又は2であり、
o+pは、3であり、
R
5は、H、xが1~10であるC
xF
2x+1、又はQ、R
3、R
4、o、及びpが上記で定義されたとおりである-Q-Si(OR
3)
oR
4
pであり、存在するQ、R
3、R
4、o、及びpは、出現ごとにそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)
の化合物から選択される、加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
を含む、工程、
c)前記第1の前駆体組成物(FPC)を前記第2の前駆体組成物(SPC)と組み合わせる工程、
を含む、方法。
【請求項14】
第1の容器中の第1の前駆体組成物(FPC)及び第2の容器中の第2の前駆体組成物(SPC)を含むパーツキットを作製する方法であって、
前記方法は、
a)第1の容器内で第1の前駆体組成物(FPC)を調製する工程であって、
a1)1つ又は複数の下記式(I)
M
1(OR
1)
nR
2
m (I)
(式中、
M
1は、z価の金属又は半金属であり、
R
1は、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
2は、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~zであり、
mは、z-1~0であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物を供給する工程、及び
a2)M
1(OR
1)部分を少なくとも部分的に加水分解し、且つ前記1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物を重合する工程
を含む、工程、
b)第2の容器内で第2の前駆体組成物(SPC)を調製する工程であって、
b1)以下の式(III)
R
5-R
F-Q-Si(OR
3)
oR
4
p (III)
(式中、
R
Fは、フルオロポリエーテル基であり、
Qは、2価の連結基であり、
R
3は、それぞれ独立してC
1~C
10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R
4は、それぞれ独立してC
1~C
20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
oは、1、2、又は3であり、
pは、0、1、又は2であり、
o+pは、3であり、
R
5は、H、xが1~10であるC
xF
2x+1、又はQ、R
3、R
4、o、及びpが上記で定義されたとおりである-Q-Si(OR
3)
oR
4
pであり、存在するQ、R
3、R
4、o、及びpは、出現ごとにそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)
の化合物から選択される、加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
を含む、工程、
を含む、方法。
【請求項15】
基板上に薄膜を作製するための、請求項1
3に記載の方法によって得られる組成物又は請求項1
4に記載の方法によって得られるパーツキットの使用。
【請求項16】
光学又は電気コーティングを作製するための、請求項1
3に記載の方法によって得られる組成物又は請求項1
4に記載の方法によって得られるパーツキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い硬度を有し、耐摩耗性があり、且つ洗浄が容易なコーティングを作製する方法、コーティング組成物、当該コーティングを含む物品、及びコーティングを作製するための当該コーティング組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルディスプレイ、ソーラーパネルスクリーン、及び窓といった多くの用途において、衛生及び外観上の理由から、汚れが除去された表面を保つことができること、並びに機器を、その性能を最大限発揮して使用できることが重要である。機器又は施用の耐用期間が終わるまでこの性能を維持できることも同様に重要である。耐摩耗性を伴う洗浄が容易な(E2C:Easy to clean)特性は、フッ素化材料を使用して疎水性且つ疎油性のコーティング(coating)を達成することよってしばしば示されてきた。これらのフッ素化材料は、例えばガラス基板への接着性を向上させるためにシロキサン基で官能化されることが多い。そのような材料の好適な例は、耐摩耗性と共に良好なE2C特性をもたらすことが示されているシロキサン官能化パーフルオロポリエーテルである。しかし、これらの種の材料の希釈には、通常、特定の種類の溶媒のみ、すなわちフッ素系溶媒しか使用することができないため、これらの材料は製造コストに伴って非常に高価となる。従って、フッ素系溶媒を完全に避けることができない場合でも、例えばフッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の混合物を使用することによって、必要となるフッ素系溶媒の量を少なくとも減らすことが望まれる。更に、これらの種の材料は、通常、単層コーティングを製造するために使用される。単層コーティングは、原理上、下層の基板の強度を再現する。通常、このような単層コーティングは、特に高温に曝される場合、特に湿気に曝される場合、長期的熱安定性に劣るという問題も有する。更に、これらの単層コーティングは、厳しい耐摩耗性条件を満たすことができず、長期の耐用期間を維持できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、優れたE2C特性、高い硬度、及び高い耐久性を有し、摩耗及び環境条件下でこれらの特性を維持できるコーティングが求められる。このようなコーティングは、滑らかな基板表面上及び粗い基板表面上の両方に、並びにガラス、セラミック、及び/又は金属といった異なる種類の基板上に使用可能であるべきである。更に、コーティングを施す表面の硬度を向上させることが望ましい。更にこれは、特定の追加の下塗層(primer layer)を必要とすることなく、基板上に単層膜を使用することよって達成されるべきである。
【0004】
更に、コーティング組成物は、スロット、スピン、スプレー、バー、ローラ、又は他の典型的な湿潤膜を作製するための塗工方法を使用し、大気条件での液相析出法によって塗布可能であるべきであり、且つ比較的低い最終硬化温度、例えば150℃~250℃、又は80℃でも硬化可能であるべきである。そのため、例えば、電子線又はプラズマ化学気相蒸着(PECVD)といった、高コストで煩雑な方法は避けるべきである。
【0005】
本発明が提供する以下の方法によって上記の目的を達成することができることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基板上に薄膜を作製する方法であって、
a)第1の容器内で第1の前駆体組成物(FPC:first precursor composition)を調製する工程であって、
a1)1つ又は複数の下記式(I)
M1(OR1)nR2
m (I)
(式中、
M1は、z価の金属又は半金属であり、
R1は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R2は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~zであり、
mは、z-1~0であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物を供給する工程、及び
a2)M1(OR1)部分を少なくとも部分的に加水分解し、且つ前記1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物を重合する工程
を含む、工程、
b)第2の容器内で第2の前駆体組成物(SPC)を調製する工程であって、
b1)加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
を含む、工程、
c)前記第1の前駆体組成物(FPC)を前記第2の前駆体組成物(SPC)と組み合わせる工程、
d)前記基板上に薄層を形成する工程、
e)任意選択で、溶媒が存在する場合、工程d)の後に部分的又は完全に溶媒を除去する工程、並びに
f)工程e)を実施した場合、工程e)で、又は工程e)を実施しない場合、工程d)で得られた中間生成物を硬化させて薄膜を得る工程
を含む、方法。
【発明の効果】
【0007】
結果として得られるコーティングは、優れた硬度、耐摩耗性、及び優れた表面洗浄性をもたらす。コーティングは、表示装置の光学特性を更に向上させることができる。更に、フッ素含有溶媒の過剰な使用を避けることができ、且つより広範囲の成膜機器への適用が可能となる。更に、組成物は従来の方法で塗布可能であり、低温で硬化可能である。組成物は、追加の接着促進層の使用を必要とせずに、多様な基板表面に対する接着性を向上させる。これは、優れた熱安定性及び長期的性能安定性も有し(基板上の薄い単層ではなく、より厚い物理コーティングとしての耐用期間の安定性を意味する)、且つフッ素系溶剤含有量及びフッ素含有量が少ないために、費用効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】最上部に材料コーティング層が直接成膜された、塗工基板の断面を示す図である。
【
図2】基板表面が、材料コーティング層を中間層上に成膜する前に基板の最上部に成膜された中間層を有する、塗工基板の断面を示す図である。
【
図3】基板最上部に材料層を成膜する方法の典型的な順序を示す図である。
【
図4】基板及び材料コーティング層の断面像を示す図である。
【
図5】基板最上部に材料層を成膜し、且つパターン形成する方法の典型的な順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、明確に反する記載がない限り、以下の定義が適用される。
【0010】
オルガニル基は、炭素原子に1つの遊離原子価を有する有機置換基である。
【0011】
オルガノヘテリル基は、炭素原子以外の原子に1つの遊離原子価を有する有機置換基である。
【0012】
フッ素化オルガニル基又はフッ素化オルガノヘテリル基は、少なくとも1個の水素原子がフッ素で置換された、上記のように定義されたオルガニル基又はオルガノヘテリル基である。
【0013】
第1の前駆体組成物
上記で概説されたように、第1の前駆体組成物(FPC)は、第1の容器内で調製され、調製は、以下の工程:
a1)1つ又は複数の下記式(I)
M1(OR1)nR2
m (I)
(式中、
M1は、z価の金属又は半金属であり、
R1は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R2は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~zであり、
mは、z-1~0であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物を供給する工程、及び
a2)M1(OR1)部分を少なくとも部分的に加水分解し、且つ1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物を重合する工程を含む。
【0014】
工程a1)において、最大で5つの異なる式(I)の金属又は半金属化合物が供給されてよく、通常、3つ以下の異なる式(I)の金属又は半金属化合物が供給される。
【0015】
好ましくは、第1の実施形態において、1つ又は複数の式(I)の金属又は半金属化合物は、フッ素を有さない。従って、複数の式(I)の金属又は半金属化合物が供給される場合、全ての金属又は半金属化合物がフッ素を有さないことが好ましい。
任意選択的なフッ素含有溶媒を除き、工程c)の前の第1の前駆体組成物(FPC)の調製が完了するまでの間、フッ素含有化合物が存在しないことがより好ましく、溶媒が存在する場合、存在するフッ素含有溶媒の量は、存在する溶媒の総質量に対し75質量%以下であることが更に好ましく、フッ素含有溶媒を含め、フッ素含有化合物は、工程c)の前の第1の前駆体組成物(FPC)の調製が完了するまでの間、存在しないことが最も好ましい。
【0016】
好ましくは、第2の実施形態において、1つ又は複数の下記式(I)の金属又は半金属化合物のうちの1つ又は複数は、式(I)のR2残基中に少なくとも1個のフッ素原子を含む。従って、第2の実施形態において、1つ又は複数の、例えば1、2、又は3つの下記式(I)の金属又は半金属化合物は、式(I)のR2残基中に1個又は複数個のフッ素原子を含有する。
【0017】
M1は、好ましくはSi、Ge、Sb、Ti、Zr、Al、Sn、W、Se、Cr、Ag、又はNiから、より好ましくはSi、Ti、Zr、Ge、Sbから選択され、最も好ましくはM1はSiである。
【0018】
R1は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択される。
【0019】
R1のオルガニル基にヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、S、又はSiから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0020】
好ましいOR1基は、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びアリールオキシ基である。
【0021】
M1に結合する酸素原子に結合するR1のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常Oとは異なる。
【0022】
R1のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、又はSから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0023】
R1中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常5個以下であり、好ましくは3個以下である。
【0024】
R1は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C10のオルガニル基であり、R1は、より好ましくはC1~C10のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C10の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
【0025】
上記の変形例のいずれか1つに係るR1中に存在する総炭素原子数は、好ましくは1~6個であり、より好ましくは1~4個である。
【0026】
R2は、第1の実施形態において、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基若しくはオルガノヘテリル基から選択され、又は、第2の実施形態において、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、若しくはフッ素化オルガノヘテリル基から選択される。
【0027】
R2のオルガニル基にヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、S、又はSiから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
M1に結合するR2のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oと異なる。
R2のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、又はSから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0028】
R2中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常8個以下であり、好ましくは5個以下であり、最も好ましくは3個以下である。
【0029】
第1の実施形態において、R2は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C20のオルガニル基であり、R2は、より好ましくはC1~C20のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C20の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
第2の実施形態において、R2は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C20のオルガニル基及び/又はフッ素化オルガニル基であり、R2は、より好ましくはC1~C20のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C20の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
フッ素化オルガニル基は、好ましくは1~30個のフッ素原子を含み、より好ましくは3~17個のフッ素原子を含む。
【0030】
上記の変形例のいずれか1つに係るR2中に存在する総炭素原子数は、好ましくは1~15個であり、より好ましくは1~12個であり、最も好ましくは1~10個である。
【0031】
nは、好ましくは少なくとも2である。金属又は半金属M1の価数zが4以上である場合、nは、好ましくは少なくとも3である。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの式(I)の化合物において、R1及びR2は、存在する場合、それぞれ同一である。よって、R1及びR2は、依然として異なっていてもよい。
【0033】
より好ましくは、式(I)の各化合物において、各々のR1及びR2は、存在する場合、それぞれ同一である。そのため、複数の式(I)の化合物が使用される場合、1つの式(I)の化合物のR1は、依然として式(I)の別の化合物のR1と異なっていてもよい。
【0034】
工程a1)において複数の式(I)の化合物が供給される場合、少なくとも1つの式(I)の化合物においてn=zであり、一方で少なくとも1つの他の式(I)の化合物においてはn<zであることが好ましい。
【0035】
適切な式(I)の化合物は、例えば、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシビニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェナントレン-9-トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n-プロポキシトリメチルシラン、メトキシジメチルエチルシラン、エトキシジメチルエチルシラン、n-プロポキシジメチルエチルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、n-プロポキシジメチルビニルシラン、トリメトキシメチルシラン及びトリエトキシメチルシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラ-ヒドロデシル)トリメトキシシラン、トリデカフルオロトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリメトキシシラン、ペンタフルオロスチレニルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、パーフルオロドデシル-1H,1H,2H,2H-トリエトキシシラン、パーフルオロテトラ
デシル-1H,1H,2H,2H-トリエトキシシラン、[(4-トリフルオロメチル)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]トリエトキシシラン、ポリ(メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルシロキサン)、並びにこれらの混合物である。
【0036】
工程a2)において、M1(OR1)部分は、下記式(II)
R7'
t'(OR6')s'M2-Y-M2'(OR6)sR7
t (II)
(式中、
M2、M2'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してx価の金属又は半金属から選択され、
Yは、2価の連結基であり、
R6、R6'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R7、R7'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
s、s'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して1~x-1から選択され、
t、t'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してx-2~0から選択され、
s+tは、x-1であり、且つ
s'+t'は、x-1である)
の化合物の存在中、少なくとも部分的に加水分解されうる。
【0037】
工程a2)において式(II)の化合物が存在する場合、当該化合物は、好ましくは、工程a1)の前、後、又は同時に完了しうる更なる工程a1a)で供給される。
【0038】
M2及びM2'は、好ましくは独立してSi、Ge、Sb、Ti、Zr、Al、Sn、W、Se、Cr、Ag、又はNiから選択され、より好ましくは独立してSi、Ti、Zr、Ge、Sbから選択され、最も好ましくはM2及びM2'はSiである。
好ましくは、M2及びM2'は、同一である。
【0039】
Yは、好ましくはC1~C20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、より好ましくはC1~C20のヒドロカルビル基から選択され、更に好ましくはC1~C20の直鎖、分岐状、若しくは環状アルキル基又はC6~C20のアリール基から選択される。
【0040】
R6、R6'は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択される。
【0041】
R6及び/又はR6'のオルガニル基にヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、S、又はSiから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0042】
好ましいOR6及び/又はOR6'基は、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びアリールオキシ基である。
【0043】
M1に結合する酸素原子に結合するR6及び/又はR6'のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oと異なる。
R6及び/又はR6'のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、又はSから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0044】
R6及び/又はR6'中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常5個以下であり、好ましくは3個以下である。
【0045】
R6及び/又はR6'は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C10のオルガニル基であり、R6及び/又はR6'は、より好ましくはC1~C10のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C10の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
【0046】
上記の変形例のいずれか1つに係るR6及び/又はR6'中に存在する総炭素原子数は、好ましくは1~6個であり、より好ましくは1~4個である。
【0047】
好ましくは、R6及びR6'は同一である。
【0048】
R7、R7'は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択される。
【0049】
R7及び/又はR7'のオルガニル基にヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、S、又はSiから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0050】
M1に結合するR7及び/又はR7'のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oと異なる。
【0051】
R7及び/又はR7'のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、又はSから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0052】
R7及び/又はR7'中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常8個以下であり、好ましくは5個以下であり、最も好ましくは3個以下である。
【0053】
R7及び/又はR7'は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C20のオルガニル基であり、R7及び/又はR7'は、より好ましくはC1~C20のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C20の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
【0054】
上記の変形例のいずれか1つに係るR7及び/又はR7'中に存在する総炭素原子数は、好ましくは1~15個であり、より好ましくは1~10個であり、最も好ましくは1~6個である。
【0055】
好ましくは、R7及びR7'は同一である。
【0056】
s及び/又はs'は、好ましくは少なくとも2である。金属又は半金属M2及び/又はM2'の価数zが4以上である場合、s及び/又はs'は、好ましくは少なくとも3である。
【0057】
適切な式(II)の化合物は、例えば、1,2-ビス(トリメトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1-(ジメトキシメチルシリル)-1-(トリメトキシシリル)メタン、1-(ジエトキシメチルシリル)-1-(トリエトキシ)メタン、1-(トリメトキシメチルシリル)-2-(ジメトキシシリル)エタン、1-(ジメトキシメチルシリル)-2-(トリメトキシシリル)エタン、1-(ジエトキシメチルシリル)-2-(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,2-ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2-ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、4,4'-ビス(トリエトキシシリル)-1,1'-ビフェニル、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、及び1,3-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、並びにこれらの組み合わせである。
【0058】
工程a2)における、任意選択で上記又は下記のように定義される式(II)の化合物の存在中での、少なくとも部分的な加水分解は、好ましくは、酸性又は塩基性条件下で、通常、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロ酪酸、又は他の鉱酸若しくは有機酸、又は塩基といった触媒、より好ましくはHNO3といった鉱酸を使用して達成される。
酸が使用される場合、酸の濃度は、好ましくは0.01mol/l~1.0mol/l、より好ましくは0.05mol/l~0.2mol/lである。酸は、通常、水又は水と他の有機溶媒、例えば、アルコール、ケトン、好ましくはアセトンといったケトンとの混合物中に溶解される。
【0059】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解は、好ましくは50から150℃の間の温度、より好ましくは80~120℃で達成される。
【0060】
好ましくは、工程a2)における少なくとも部分的な加水分解は、0.5~10時間、好ましくは1.0~5.0時間で達成される。
【0061】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解の間、塩基性物質、例えば、C1~C4-トリアルキルアミンといったアミンが添加されてよい。
【0062】
好ましくは、工程a2)の生成物の分子量は、500g/mol~6000g/mol、より好ましくは800g/mol~4000g/molである。
【0063】
第1の前駆体組成物の調製中、1つ又は複数の追加の有機溶媒が使用されてよい。
【0064】
好ましくは、溶媒は、アルコール類、好ましくは1~6個の炭素原子を含有するアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルといったエーテルアルコール類、アセトンといったケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、酢酸エチル、ギ酸メチルといったエステル類、及びジエチルエーテル、THFといったエーテル類、好ましくはアルコール類、エーテルアルコール類、又はケトン類から選択される。
【0065】
最大で5つの有機溶媒の混合物が使用されてよく、好ましくは3つ以下の有機溶媒が使用され、最も好ましくは1つのみの有機溶媒が使用される。
【0066】
好ましくは、上記で概説されたように、第1の前駆体組成物の調製中に使用される有機溶媒は、フッ素を有さない。
【0067】
より好ましくは、工程a2)の後、追加の工程a3)が行われる。
【0068】
a3)工程a2)で溶媒が存在する場合、工程a2)で使用された溶媒又は複数の溶媒を、上記で概説された1つ又は複数の有機溶媒と交換するか、又は
工程a2)で溶媒が存在しない場合、上記で概説された1つ又は複数の有機溶媒を添加する工程。
【0069】
溶媒の交換とは、溶媒交換の前後に存在する溶媒又は溶媒混合物が異なることを意味する。通常、工程a2)における少なくとも部分的な加水分解において存在する水が、少なくとも溶媒交換によって除去される。
【0070】
従って、例えば、工程a2)における少なくとも部分的な加水分解で使用される水及び任意選択的な有機溶媒、例えばケトンは、異なる有機溶媒、例えばエーテルアルコールといったアルコールで置き換えられる。
【0071】
第1の前駆体組成物の固形分は、好ましくは、第1の前駆体組成物の全量に対し1.0~25質量%、より好ましくは、第1の前駆体組成物の全量に対し5~20質量%である。
【0072】
第1の前駆体組成物の調製は、好ましくは0~150℃の温度範囲内で、より好ましくは40~120℃の温度範囲内で達成される。
【0073】
第2の前駆体組成物
上記で概説されたように、第2の前駆体組成物(SPC)は、第2の容器内で調製され、調製は、以下の工程:
b1)加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
を含み、
加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)は、好ましくは以下の式(III)
R5-RF-Q-Si(OR3)oR4
p (III)
(式中、
RFは、フルオロポリエーテル基であり、
Qは、2価の連結基であり、
R3は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R4は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
oは、1、2、又は3であり、
pは、0、1、又は2であり、
o+pは、3であり、
R5は、H、xが1~10であるCxF2x+1、又はQ、R3、R4、o、及びpが上記で定義されたとおりである-Q-Si(OR3)oR4
pであり、存在するQ、R3、R4、o、及びpは、出現ごとにそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)
の化合物から選択される。
【0074】
R3は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択される。
【0075】
R3のオルガニル基中にヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、S、又はSiから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0076】
好ましいOR3基は、アルコキシ、アシルオキシ、及びアリールオキシ基である。
【0077】
M1に結合する酸素原子に結合するR3のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oと異なる。
【0078】
R3のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、又はSから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0079】
R3中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常5個以下であり、好ましくは3個以下である。
【0080】
R3は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C10のオルガニル基であり、R3は、より好ましくはC1~C10のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C10の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
【0081】
上記の変形例のいずれか1つに係るR3中に存在する総炭素原子数は、好ましくは1~6個であり、より好ましくは1~4個である。
【0082】
R4は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択される。
【0083】
R4のオルガニル基中にヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、S、又はSiから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0084】
Siに結合するR4のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oと異なる。
R4のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、又はSから選択され、より好ましくはN及びOから選択される。
【0085】
R4中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常8個以下であり、好ましくは5個以下であり、最も好ましくは3個以下である。
【0086】
R4は、好ましくは3個以下のヘテロ原子を含有するC1~C20のオルガニル基であり、R4は、より好ましくはC1~C20のヒドロカルビル基であり、更に好ましくはC1~C20の直鎖、分岐状、又は環状アルキル基である。
【0087】
上記の変形例のいずれか1つに係るR4中に存在する総炭素原子数は、好ましくは1~15個であり、より好ましくは1~10個であり、最も好ましくは1~6個である。
【0088】
oは、好ましくは1~3であり、より好ましくは2又は3であり、最も好ましくは3である。
pは、好ましくは0~2であり、より好ましくは0又は1であり、最も好ましくは0である。
o+pは3である。
【0089】
フルオロポリエーテル基RFは、通常、150~10,000g/mol、より好ましくは250~5,000g/mol、最も好ましくは350~2,500g/molの分子量を有する。
【0090】
フルオロポリエーテル基RF中、全ての水素原子がフッ素に置換されているとは限らない。フルオロポリエーテル基RF中に水素原子が存在する場合、フッ素/水素の分子比は、好ましくは少なくとも5であり、より好ましくは少なくとも10である。より好ましくは、フルオロポリエーテル基RFは、パーフルオロポリエーテル基である。
【0091】
フルオロポリエーテル基RFは、直鎖であっても、分岐状であってもよく、好ましくは直鎖の基である。
【0092】
フルオロポリエーテル基RFの繰り返し単位は、好ましくはC1~C6のフッ素化ジアルコールであり、より好ましくはC1~C4のフッ素化ジアルコールであり、最も好ましくはC1~C3のフッ素化ジアルコールである。
【0093】
フルオロポリエーテル基RFの好ましい単量体は、パーフルオロ-1,2-プロピレングリコール、パーフルオロ-1,3-プロピレングリコール、パーフルオロ-1,2-エチレングリコール、及びジフルオロ-1,1-ジヒドロキシメタンであり、好ましくはパーフルオロ-1,3-プロピレングリコール、パーフルオロ-1,2-エチレングリコール、及びジフルオロメタンジオールである。
【0094】
後者の単量体、ジフルオロ-1,1-ジヒドロキシメタンは、ポリ(テトラフルオロエチレン)の酸化によって得られうる。
【0095】
2価のパーフルオロポリエーテル基の好ましい構造として、
-CF2O(CF2O)m(C2F4O)pCF2-(式中、m及びpの平均値は0~50、但しm及びpは、実質的にゼロではない)、
-CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-、
-CF2O(C2F4O)pCF2-、及び
-(CF2)3O(C4F8O)p(CF2)3-
(式中、pの平均値は、3~50である)が挙げられる。
これらの中でも、特に好ましい構造は、
-CF2O(CF2O)m(C2F4O)pCF2-、
-CF2O(C2F4O)pCF2-、及び
-CF(CF3)(OCF2(CF3)CF)pO(CF2)mO(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-である。
【0096】
1価のパーフルオロポリエーテル基の好ましい構造として、
CF3CF2O(CF2O)m(C2F4O)pCF2-、
CF3CF2O(CF2O)pCF2-、
CF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-、
(式中、m及びpの平均値は0~50であり、m及びpは、独立して0でない)又は、これらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
特に好ましいフルオロポリエーテル基RFは、
-CF2O-[C2F4O]m-[CF2O]n-(1<n<8及び3<m<10)
R-[C3F6O]n-(n=2~10、Rは、直鎖又は分岐状、好ましくは直鎖のパーフルオロ化C2又はC3アルコール、好ましくはC3アルコールである)から選択される。
【0098】
2価の連結基Qは、パーフルオロポリエーテルをケイ素含有基に連結させる。
【0099】
Qは、通常、500g/mol以下、より好ましくは250g/mol以下、最も好ましくは150g/molの分子量を有する。2価の連結基の例は、アミド含有基及びアルキレン基である。
【0100】
加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン化合物は、その正確な化学構造が公表されていなくても市販のものを使用することができる。
【0101】
適切な市販の加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシランは、例えば、フルオロリンクS10(CAS no.223557-70-8、Solvay社)、オプツール(商標)DSX(ダイキン工業株式会社)、SHIN-ETSU SUBELYN(商標)KY-1900(信越化学工業株式会社)、及びDow Corning(登録商標)2634(CAS no.870998-78-0)である。
【0102】
第2の前駆体組成物(SPC)の調製中、有機溶媒が使用されてよい。
【0103】
好ましくは、溶媒は、アルコール類、好ましくは1~6個の炭素原子を含有するアルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールといったエーテルアルコール類、ケトン類、酢酸エチル、ギ酸エチルといったエステル類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類といったエーテル類、部分的又は完全にフッ素化された炭化水素類から選択され、アルコール類、好ましくは1~6個の炭素原子を含有するアルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルといったエーテルアルコール類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類、エチレングリコール、又はそれらの混合物が特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルといったエーテルアルコール類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類、エチレングリコール、又はそれらの混合物、例えばメトキシノナフルオロブタン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エトキシノナフルオロブタン、イソプロピルアルコール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及び/又はエチレングリコールが最も好ましい。
【0104】
第2の前駆体組成物(SPC)の調製中に溶媒が存在する場合、フッ素含有溶媒の量は、存在する溶媒の総質量に対し90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、最も好ましくは75体積%以下である。
【0105】
適切なフッ素含有溶媒は、例えば、部分的又は完全にフッ素化された炭化水素類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類、又はそれらの混合物、例えば、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、及びエトキシノナフルオロブタンである。
【0106】
第2の前駆体組成物の固形分は、好ましくは、第2の前駆体組成物の全量に対し0.2~100質量%、より好ましくは、第2の前駆体組成物の全量に対し0.3~20質量%である。
【0107】
第2の前駆体組成物の調製は、好ましくは0~75℃の温度範囲内で、より好ましくは20~50℃の温度範囲内で達成される。
【0108】
工程c)
工程c)において、第1の前駆体組成物(FPC)は、第2の前駆体組成物(SPC)と組み合わされる。
第1の前駆体組成物(FPC)と第2の前駆体組成物(SPC)の組み合わせは、2つの組成物を混合することによって行われることが好ましい。第1の前駆体組成物(FPC)と第2の前駆体組成物(SPC)は、好ましくは、2つの組成物をフラスコといった容器に加え、組み合わされた組成物を攪拌することによって、組み合わされる、例えば混合される。
【0109】
2つの前駆体組成物を組み合わせると、反応が起こりうる。しかし、この反応は、硬化反応と異なる。第2の前駆体組成物のシラン基は、第1の前駆体組成物のシラン基と反応してコーティング成膜が可能なプレポリマーを形成する。
【0110】
望ましい最終固形分を得るために、工程c)において追加の有機溶媒が添加されうる。
【0111】
最終的な配合物に使用されるフッ素含有溶媒の量は、存在する溶媒の総質量に対し、90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、最も好ましくは75体積%以下である。
【0112】
好ましくは、添加されうる溶媒は、アルコール類、好ましくは1~6個の炭素原子を含有するアルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールといったエーテルアルコール類、ケトン類、酢酸エチル、ギ酸メチルといったエステル類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類といったエーテル類から選択され、アルコール類、好ましくは1~6個の炭素原子を含有するアルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルといったエーテルアルコール類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類、エチレングリコール、又はそれらの混合物が特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルといったエーテルアルコール類、部分的又は完全にフッ素化されたエーテル類、エチレングリコール、又はそれらの混合物、例えばメトキシノナフルオロブタン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エトキシノナフルオロブタン、酢酸エチル、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソプロピルアルコール、エタノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールが最も好ましい。
【0113】
工程c)において、第1の前駆体組成物(FPC)の固形分と第2の前駆体組成物(SPC)の固形分との間の質量比は、好ましくは100:1.0~0.5:1.0の間であり、好ましくは80:1.0~1.0:1.0の間であり、より好ましくは60:1.0~1.5:1.0の間である。
【0114】
更に、薄膜用のコーティング組成物に使用される一般的な添加剤は、工程c)中に添加されうる。このような一般的な添加剤として、例えば、界面活性剤、レベリング剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、水及び酸素捕捉剤、触媒、光開始剤、又はそれらの混合物が挙げられる。場合により、薄膜コーティング溶液中に散乱粒子を導入することも好ましい。通常、そのような粒子は、例えば照明用途といった特定の要件を満たすための、更なる光学的効果をもたらす。これらの粒子は、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、又は同様の無機粒子でありうる。
【0115】
工程c)の後に得られる組成物の固形分は、好ましくは、組成物の全量に対し0.1~10質量%であり、より好ましくは、組成物の全量に対し0.1~5質量%である。
【0116】
好ましくは、工程c)の後に得られる組成物の固形分におけるフッ素含有量は、工程c)の後に得られる配合組成物の全量に対し、0.005~0.3質量%、好ましくは0.01~0.1質量%の間である。
【0117】
好ましくは、工程c)の後に得られる組成物の固形分におけるフッ素含有量は、工程c)の後に得られる組成物の総固形分に対し、0.1~17.5質量%、好ましくは0.2~15質量%の間である。
【0118】
通常、且つ好ましくは、工程c)後の固形分は、工程d)が完了するまで変わらないままである。
【0119】
工程c)における温度は、75℃を超えないことが好ましく、50℃を超えないことがより好ましく、通常35℃を下回る。
【0120】
反応時間は、通常24時間を下回り、好ましくは6~15時間である
【0121】
工程d)
工程d)において、基板上に薄層が形成される。
【0122】
適切な基板として、セラミック、ガラス、金属、天然及び人工石、高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)、塗料(例えば、アクリル樹脂上のもの等)、粉末塗料(例えば、ポリウレタン又はハイブリッド粉末塗料等)、木材及び繊維基板(例えば、織物、革、カーペット、紙等)が挙げられる。好ましくは、基板は、セラミック、ガラス、金属、高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)、天然及び人工石から、より好ましくは金属、セラミック、ガラス、及び高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)から選択される。
【0123】
工程d)は、好ましくはディップコーティング、スロットコーティング、スロットコーティングとスピンコーティングの組み合わせ、スピンコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、カーテンコーティング、ローラコーティング、ロールツーロール(roll to roll)コーティング、スクリーン印刷によって、又はバー、ブラシを使用することによって、又はラビングによって、より好ましくはスプレーコーティング、スロットコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、最も好ましくはスプレーコーティング及びスピンコーティング(幾つかの典型的な液相析出法を挙げるが、これらに限定されない)によって達成される。このような方法は、当技術分野で知られている。
【0124】
工程d)における温度は、75℃を超えないことが好ましく、50℃を超えないことがより好ましく、35℃を超えないことが最も好ましい。
【0125】
工程d)中の基板の温度は、好ましくは100℃を超えず、より好ましくは50℃を超えず、最も好ましくは35℃を超えない。場合により、予熱された基板上に成膜することが好ましい可能性がある。
工程d)で基板上に薄層を形成した後、且つ工程f)で中間生成物を硬化させる前、薄膜にパターンを形成し、表面構造及びパターンを形成することができる。適切なパターン形成方法は、ナノインプリント、エンボス加工、ロールツーロール、グラビア、フレキソ印刷、ローラ、インクジェット、スクリーン印刷、スプレー、且つ/又はUVリソグラフィであり、表面構造(ナノスケール、又はマイクロ若しくはミリメートルスケール)を形成するために使用される。パターン形成の目的は、更なる光学的、物理的、又は化学的特性を薄膜に与えることである。
【0126】
工程e)
工程d)において溶媒が存在する場合、溶媒は、工程e)において部分的又は完全に除去されることが好ましい。工程e)は、任意選択であり、通常は必要ない。成膜方法と製造ラインの仕様の間には差異がある。
【0127】
温度に加え、溶媒の蒸発を促進させるために、真空乾燥工程も任意選択で適用されてよい。真空乾燥工程が使用される場合、通常、真空乾燥工程は最初に適用され、熱による予備硬化が後に続く。通常、除去は50~200kPaの圧力で行われ、且つ/又は50~150℃の温度での熱硬化が後に続く。好ましくは、除去は90~115kPaの圧力で行われ、且つ/又は60~100℃の温度での熱硬化が後に続く。
【0128】
任意選択の熱による予備硬化は、通常、例えば対流式オーブン、ホットプレート、又はIR照射を使用し、熱に曝すことによって達成される。
【0129】
任意選択の真空乾燥は、塗工された基板(coated substrate)が入れられる特定のチャンバ内で高真空を印加することによって溶媒の除去が可能な特定の機器によって行われる。
【0130】
工程f)
工程f)において、工程e)を実施した場合、工程e)で、又は工程e) を実施しない場合、工程d)で得られた中間生成物が硬化される。
【0131】
硬化は、通常、例えば対流式オーブン、ホットプレート、又はIR照射を使用し、熱に曝すことによって達成される。熱及びUV硬化処理の組み合わせも任意選択で使用されてよい。
【0132】
硬化に用いられる温度は、通常、300℃を超えず、好ましくは250℃を超えず、最も好ましくは150℃を超えないか、又は80℃を超えない。
【0133】
硬化時間は、通常、10分間~5.0時間であり、好ましくは20分間~3.0時間であり、最も好ましくは5分間~1.0時間である。
【0134】
工程f)の後に得られる最終的な薄膜の総フッ素含有量は、好ましくは薄膜の総質量に対し0.2~15質量%である。
【0135】
工程f)の後の薄膜の厚さは、好ましくは15.0~120nmであり、より好ましくは30~100nmである。
【0136】
好ましくは、膜の鉛筆硬度(PEHA)は少なくとも7Hであり、好ましくは少なくとも8Hであり、最も好ましくは少なくとも9Hである。
【0137】
好ましくは、膜の初期水接触角は少なくとも110°であり、好ましくは少なくとも115°であり、最も好ましくは少なくとも120°である。
【0138】
好ましくは、膜の(632nmにおける)屈折率は1.50を下回り、好ましくは1.48を下回り、最も好ましくは1.46を下回る。
【0139】
好ましくは、膜のRMS表面粗さは5.0nmを下回り、好ましくは3.5nmを下回り、最も好ましくは2.5nmを下回る。
【0140】
好ましくは、膜のa*は-0.2~+0.2の間であり、好ましくは-0.1~+0.1の間であり、最も好ましくは-0.05~+0.05の間である。
【0141】
好ましくは、膜のb*は-0.2~+0.2の間であり、好ましくは-0.1~+0.1の間であり、最も好ましくは-0.05~+0.05の間である。
【0142】
膜は、ゴリラガラス(gorilla glass)基板上に適用された際に、塗工されていないゴリラガラスの透過率と比較して、好ましくは少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも0.75%、最も好ましくは少なくとも1.0%の透過率の向上をもたらす。
【0143】
5000サイクル後の膜の性能は、初期の接触角に対する5000サイクル後の接触角の比として測定し、好ましくは20%未満、好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満である。
【0144】
綿布で100000サイクル摩擦した後の膜の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも105°である。
【0145】
スチールウールで8000サイクル摩擦した後の膜の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも80°であり、より好ましくは少なくとも90°であり、最も好ましくは少なくとも100°である。
【0146】
ミノア消しゴム(Minoan eraser)で2500サイクル摩擦した後の膜の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも105°である。
【0147】
スチールウールで2000サイクル摩擦した後の膜の水接触角は、金属基板上に適用された際、好ましくは少なくとも85°であり、より好ましくは少なくとも95°であり、最も好ましくは少なくとも105°である。
【0148】
スチールウールで3000サイクル摩擦した後の膜の水接触角は、ソーダ石灰ガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも105°である。
【0149】
スチールウールで2000サイクル摩擦した後の膜の水接触角は、セラミック基板上に適用された際、好ましくは少なくとも80°であり、より好ましくは少なくとも90°であり、最も好ましくは少なくとも100°である。
【0150】
「汗試験」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも105°である。
【0151】
「高温高湿度(85℃/82%)」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも105°である。
【0152】
「250℃温度安定性試験」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも110°である。
【0153】
「酸試験」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも110°である。
【0154】
「熱サイクル/衝撃(-40℃→+85℃)試験」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも110°である。
【0155】
「UV安定性試験」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも110°である。
【0156】
「200℃の長期(6時間)高温安定性」処理された膜の、スチールウールで5000サイクル摩擦した後の水接触角は、ゴリラガラス基板上に適用された際、好ましくは少なくとも90°であり、より好ましくは少なくとも100°であり、最も好ましくは少なくとも110°である。
【0157】
「長期性能安定性(室温で6カ月)」が試験された膜の、5000サイクル摩擦した膜の安定性能は、ゴリラガラス基板上に適用された際、初期の接触角に対する5000サイクル後の接触角の比として測定し、好ましくは15%未満であり、好ましくは10%未満であり、最も好ましくは8%未満である。
【0158】
5000サイクル後の膜の性能は、初期のRMS表面粗さに対する5000サイクル後のRMS表面粗さの増大として測定し、好ましくは15%未満であり、好ましくは10%未満であり、最も好ましくは5%未満である。
【0159】
物品
本発明は、物品、好ましくは光学的又は電気的に被覆された物品であって、本発明の方法によって得られる薄膜を含む、物品に更に関する。
【0160】
物品は、携帯型タッチパネルディスプレイ又は他のインタラクティブタッチスクリーン装置といったタッチパネルディスプレイ、ソーラーパネルや窓等のガラス全般、携帯電話やコンピュータの金属ケース等の金属表面でありうる。
【0161】
本発明に係る方法によって得られる薄膜を含む物品用の適切な材料として、セラミック、ガラス、金属、天然及び人工石、高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)、塗料(例えば、アクリル樹脂上のもの等)、粉末塗料(例えば、ポリウレタン又はハイブリッド粉末塗料等)、木材及び繊維基板(例えば、織物、革、カーペット、紙等)が挙げられる。
好ましくは、物品用の材料は、セラミック、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸ガラス、又は他の任意の種のガラス)、金属(例えば、アルミニウム、スチール等)、高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)、天然及び人工石から、より好ましくは金属、セラミック、ガラス、及び高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)から選択される。
【0162】
物品の厚さ及び形状は、個別に変動してよく、平面、2D、又は3D形状でありうる。
【0163】
物品は、薄膜が物品に適用される、例えば物品上に成膜される前に、化学的、物理的、及び/又は機械的表面処理を受けうる。
【0164】
金属の場合、例えばアルミニウムは、材料の堆積前に、研磨、陽極酸化、着色、又は他のコーティングで被覆されうる。
ガラスは、非強化でも、熱的又は化学的に強化されていてもよく、各種の(アルカリ性又は酸性)表面処理剤を使用し、例えば研磨、研削、洗浄等、様々な表面処理を受けうる。
【0165】
更に、物品は、平面であっても、表面テクスチャ(例えば、エッチング加工されたガラス表面、又は陽極酸化されたアルミニウム表面)を有していてもよく、又は物品上の他の層がテクスチャリング/波型表面をもたらしてもよく、物品上の他の層に表面テクスチャがなくてもよい。
【0166】
ガラスの場合、表面は、(例えば、ガラスに防眩(AG)効果をもたらすために)エッチング加工を使用するか、又はAG効果をもたらすためにコーティング層を施すことによって表面加工(texture)されてもよい。
【0167】
薄膜は、物品の少なくとも一つの表面が薄膜に直接接するよう、物品上に直接適用されうる。
【0168】
薄膜は、中間層の内表面が物品の少なくとも1つの表面に直接接するよう、中間層上にも適用されうる。その結果、薄膜は、中間層の外表面に直接接する。中間層は、材料コーティング層に関連し、機械的、物理的、化学的、又は光学的機能を有しうる。中間層は、実際の物理的コーティング層であってよく、又は物品中の中間層に直接接する表面の領域における分子若しくは原子レベルの修飾であってよい。
【0169】
本発明の方法の好ましい変形例及び実施形態は、本発明に係る物品の好ましい変形例及び実施形態でもある。
【0170】
本発明は、第1の前駆体組成物(FPC)及び第2の前駆体組成物(SPC)を含む組成物であって、第1の前駆体組成物(FPC)は、重合した式(I)
M1(OR1)nR2
m (I)
(式中、
M1は、z価の金属又は半金属であり、
R1は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R2は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~z-1であり、
mは、1~z-1であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物であり、
これにより、M1(OR1)部分の少なくとも部分的な加水分解によって重合は達成され、
第2の前駆体組成物(SPC)は、
b1)加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
によって得られる、組成物に更に関する。
【0171】
本発明に係る方法の好ましい特徴は、本発明の組成物の好ましい特徴でもある。
本組成物は、驚くべきことに、室温及びやや高い温度(40℃まで)で安定である。
【0172】
実施例に記載されるように決定される、組成物の保存可能期間は、通常、少なくとも6カ月である。
【0173】
本発明は、第1の容器中の第1の前駆体組成物(FPC)及び第2の容器中の第2の前駆体組成物(SPC)を含むパーツキットであって、第1の前駆体組成物(FPC)は、重合した式(I)
M1(OR1)nR2
m (I)
(式中、
M1は、z価の金属又は半金属であり、
R1は、それぞれ独立してC1~C10のオルガニル基又はオルガノヘテリル基から選択され、
R2は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニル基、オルガノヘテリル基、フッ素化オルガニル基、又はフッ素化オルガノヘテリル基から選択され、
nは、1~z-1であり、
mは、1~z-1であり、
n+mは、zである)
の金属又は半金属化合物であり、
これにより、M1(OR1)部分の少なくとも部分的な加水分解によって重合は達成され、
第2の前駆体組成物(SPC)は、
b1)加水分解性基を含むフルオロポリエーテルシラン(PFS)を供給する工程
によって得られる、パーツキットに更に関する。
【0174】
本発明に係る方法及び組成物の好ましい特徴は、本発明のパーツキットの好ましい特徴でもある。
【0175】
本発明は、基板上に薄膜を作製するための、本発明に係る組成物又はパーツキットの使用に更に関する。
【0176】
本発明は、光学コーティング又は電気コーティングを作製するための、本発明に係る組成物又はパーツキットの使用に更に関する。
【実施例】
【0177】
測定方法
分子量
分子量の測定に使用される手段は、WATERS社GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ):waters1515アイソクラティックHPLCポンプ、waters2414屈折率検出器である。
測定用の較正標準としてポリスチレン標準が使用される。測定用の実際の試料は、溶離溶液としてTHFを使用し、4m-%試料として調製される。
【0178】
固形分
分子量の決定に使用される手段は、Mettler Toledo HB43ハロゲン乾燥機/秤である。アルミニウム皿/カップ上で試料を秤量し、約1グラムの材料を使用して測定を行う。
【0179】
保存可能期間の決定
実際の測定データについては実施例1Aの材料のデータを参照のこと。材料の保存可能期間は、以下の材料処理/適用結果安定性/硬化膜としての再現性によって決定される。膜厚及び摩擦性能の値は、硬化膜から測定される。膜厚は、エリプソメータ(ホリバ・ジョバンイボン社製UVISEL-VASE)を使用することによって特性評価される。測定は、ゴリラガラス4及びシリコンウエハ(直径150mm、型/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30オーム・cm、厚さ:675±25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、前面:研磨、裏面:エッチング加工、フラット:1 SEMIスタンダード)を基板として使用して行われる。材料膜の成膜は、スプレーコーティングを使用して行われ、前処理(プラズマ)されたガラス基板上に材料膜をスプレーコーティングにより塗工し(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)、例えば150℃60分の熱硬化が後に続く。
【0180】
粘度
器具製造業者:Grabner Instruments社、Viscometer MINIVIS-II。測定方法「落球式粘度測定」。試料は、直径3.175mmのスチールボールを使用し、20℃で測定される。
【0181】
膜厚及び屈折率
膜厚及び屈折率は、エリプソメータ(ホリバ・ジョバンイボン社製UVISEL-VASE)を使用することによって測定される。測定は、ゴリラガラス4又はシリコンウエハ(直径150mm、型/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗:1~30オーム・cm、厚さ:675±25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング加工、フラット:1 SEMIスタンダード)を基板として使用して行われる。スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板上に材料膜を作製し、例えば150℃60分の熱硬化が後に続く。
透過率
コニカミノルタ社製分光光度計CM-3700A(ソフトウェア:SpectraMagic NX)。試験片の作製は、各実施例において記載される。
【0182】
色及びヘイズ測定
L*(D65)、a*(D65)、及びb*(D65)、並びにヘイズは、コニカミノルタ社製分光光度計CM-3700A(ソフトウェア:SpectraMagic NX)を使用して求められた。測定は、ゴリラガラス4を基板として使用して行われる。スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板上に材料膜を作製し、例えば150℃60分の熱硬化が後に続く。
【0183】
鉛筆硬度(PEHA)
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板又は陽極酸化アルミニウム基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分及び(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。鉛筆硬度は、Elcometer鉛筆硬度試験機を使用し、ASTM規格D3363-00に準じて求められる。
【0184】
水接触角(CA)
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板又は陽極酸化アルミニウム基板上に膜を作製し、例えば(ガラス及びセラミックに関しては)150℃60分及び(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。静的接触角の測定は、液滴サイズ4μlの蒸留水を使用して光学的張力計によって行われ、3つの測定点の平均が測定結果値として記録され、液滴の輪郭を表す数値法としてヤング・ラプラスの式が使用される(手段:Attension Theta光学式張力計)。水に加え、ジヨードメタン及びヘキサデカン等の他の液体も表面特性評価に使用されうる。
【0185】
摩擦
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラス及びセラミックに関しては)150℃60分及び(陽極酸化アルミニウム及び他の金属に関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。摩擦試験は、ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分を使用して行われる(手段:Taberリニア摩耗試験機5750)。摩耗試験評価基準:初期水接触角、1000サイクル間隔(最大8000サイクル)での水接触角測定、及び1000サイクル間隔(最大8000サイクル)での目視による表面破損の検査/目視による擦傷検査。水接触角は、水接触角測定法に従って測定され、目視検査は、顕微鏡検査並びに緑及び赤色光質ランプ検査にて行われる。スチールウールに加え、綿布及びミノア消しゴムも摩擦性能試験に使用される。
接着性
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板又は陽極酸化アルミニウム基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分及び(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。接着性は、Elcometerクロスハッチテスタ及びElcometerテープ試験を使用し、ASTM規格D3359-D9に準じて求められる。
【0186】
沸騰水試験
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分及び(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後(coated and cured)の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料基板は、沸騰水中に1時間浸される。沸騰水中での1時間の処理が完了した後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0187】
化学耐性試験(汗試験)
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分や(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料基板は、人の汗を模した溶液中に72時間浸される。汗溶液は、下記を含有する:純水100ml+NaCl 5g+2Na2HPO4 5g+99%酢酸2ml。汗溶液中での72時間の浸漬が完了した後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0188】
化学耐性試験(酸試験)
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分及び(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料基板は、酸性溶液中に24時間浸される。酸性溶液は、下記を含有する:1質量%H2SO4。酸性溶液中での24時間の浸漬が完了した後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0189】
HTHH試験
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分や(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料は、温度85℃、相対湿度85%の条件の環境チャンバ内に100時間置かれる。100時間の85/85環境チャンバ処理が完了した後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0190】
高温試験1及び2
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分や(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料は、250℃の対流式オーブン内に10時間置かれ、高温試験1が実施される。試料は、200℃の対流式オーブン内に6日間置かれ、高温試験2が実施される。高温試験が完了した後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0191】
熱衝撃試験
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分や(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料は熱衝撃試験チャンバ内に置かれる。試験チャンバは、-40℃(10分間保持)から+85℃(10分間保持)までの温度サイクルに従い、これらの2つの温度間(温度変化の間隔は10秒間)の温度サイクルが合計120サイクル繰り返される。120回の熱衝撃サイクルの後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0192】
UV安定性試験
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス基板、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製し、例えば(ガラスに関しては)150℃60分や(陽極酸化アルミニウムに関しては)80℃60分の熱硬化が後に続く。ガラスの場合、塗工硬化後の基板に対し、以下の初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、試料は、UV安定性試験チャンバ内に置かれる。UV試験チャンバは、試料が最初に(60℃で)4時間の0.77W/m2のUV露光に、次いで4時間の50℃の集光条件(condensing conditions)に曝されるサイクルに従い、このサイクルが、合計40時間、5回繰り返される。40時間のUV安定性試験の後、試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。基板が陽極酸化アルミニウムである場合、接着性及び水接触角のみが測定され、初期値と摩擦試験後の値が比較され、性能が検証される。
【0193】
膜エージング(Aged Film)試験
スプレー手段(典型的なスプレー処理:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:100mm、流速:5~6ml/分、噴霧空気圧:5kg/cm2)を使用することによって、前処理(プラズマ)されたゴリラガラス上に膜を作製し、例えば150℃60分の熱硬化が後に続く。塗工硬化後の基板に対し、初期測定が行われる:接着性、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角。初期測定の後、塗工ゴリラガラス試料は、事務机に保管され、2カ月、4カ月、及び6カ月の測定点で試験される。試料の接着性試験を行い、試料に5000サイクルの摩擦試験(ボンスタースチールウール#0000、荷重1kg、ヘッド1×1cm、ストローク2インチ、速度60サイクル/分)を施す。摩擦試験後、透過率、反射率、L*、a*、b*、及び水接触角を特性評価し、基準が満たされているかを確認するため、初期値と比較する。
【0194】
図面の説明
添付の図面は、実施形態を説明する。
【0195】
図1は、最上部に材料コーティング層110が成膜された、塗工基板100の断面を示す。任意選択で、材料コーティング層110は、基板100の両側(両面)に塗工されうる。
【0196】
図2は、塗工基板200の断面を示し、この例において、基板表面は、材料コーティング層220が層210上へ成膜される前に、基板の最上部に成膜された中間層210を有する。中間層210は、材料コーティング層220に関連し、機械的、物理的、化学的、又は光学的機能を有しうる。中間層は、実際の物理的なコーティング層であってもよいし、又は最上面の基板200の材料における分子若しくは原子レベルの修飾であってもよい。
コーティング層210は、基板200表面を活性化し、基板200と材料コーティング層220との間の良好な接着を達成する下塗層であってもよい。代替的に、コーティング層210は、例えば追加のガラス腐食防止、拡散バリア、導電性若しくは半導電性コーティング層、又はコーティング積層体(coating stack)全体の光学特性を向上させる役割を果たす光学的コーティング層をもたらす、(パターンが形成されるか、又はパターンが形成されない)コーティング層であってもよい。
代替的な構成において、コーティング層210は、本発明に記載される実際の材料コーティング層であってもよく(この場合、基板200とコーティング層210との間の更なる任意選択のコーティング層が適用されうる)、コーティング層220は、更なる表面処理化学物質層、下塗層、又は例えば追加のガラス腐食防止、拡散バリア、導電性若しくは半導電性コーティング層、及び/若しくはコーティング積層体全体の光学特性を向上させる役割を果たす光学的コーティング層をもたらす、(パターンが形成されるか、又はパターンが形成されない)コーティング層として機能しうる。具体的には、コーティング層210は、材料コーティング層210及びコーティング積層体全体の水接触角及び油接触角の更なる増大ももたらしうる。
【0197】
図3は、基板最上部に材料層を成膜する方法の典型的な順序を示す。工程1は、基板の用意を含み、工程2は、塗工処理を含み、工程3は、コーティングのその最終形態への硬化を含む。
【0198】
適切な基板として、セラミック、ガラス、金属、天然及び人工石、高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)、塗料(例えば、アクリル樹脂上のもの等)、粉末塗料(例えば、ポリウレタン又はハイブリッド粉末塗料等)、木材及び繊維基板(例えば、織物、革、カーペット、紙等)が挙げられる。好ましくは、基板は、セラミック、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸ガラス、又は他の任意の種のガラス)、金属(例えば、アルミニウム、スチール等)、高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)、天然及び人工石から、より好ましくは金属、セラミック、ガラス、及び高分子材料(例えば、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体といったスチレン共重合体、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)から選択される。基板の厚さ及び形状は、個別に変動してもよく、平面、2D、又は3D形状でありうる。基板は、材料の堆積(deposition)前に、化学的、物理的、及び/又は機械的表面処理を受けうる(且つ実際のコーティング材料の堆積前に成膜される中間層を有しうる)。金属の場合、例えばアルミニウムは、材料の堆積前に、研磨、陽極酸化、着色、又は他のコーティングで被覆されうる。ガラスは、非強化でも、熱的又は化学的に強化されていてもよく、各種の(アルカリ性又は酸性)表面処理剤を使用し、例えば研磨、研削、洗浄等、様々な表面処理を受けうる。更に、基板は、平面であっても、表面テクスチャ(例えば、エッチング加工されたガラス表面、又は陽極酸化されたアルミニウム表面)を有していてもよく、又は基板上の他の層がテクスチャリング/波型表面をもたらしてもよく、基板上の他の層に表面テクスチャがなくてもよい。ガラスの場合、表面は、(例えば、ガラスに防眩(AG)効果をもたらすために)エッチング加工を使用するか、又はAG効果をもたらすためにコーティング層を施すことによって表面加工(texture)されてもよい。
【0199】
材料コーティング層は、好ましくはスピンオン、ディップ、スプレー、バー、インクジェット、ロールツーロール、グラビア、フレキソ印刷、スクリーン印刷、カーテン、ドリップ、ローラ、スクリーン印刷塗工法、ブラシ塗工を用いる湿式化学塗工法を使用することによって、又はラビング、押出塗工やスロットコーティング、スロットとスピンの組み合わせによって、より好ましくはスプレーコーティング、スロットコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、最も好ましくはスプレーコーティング(幾つかの典型的な液相析出法を挙げるが、これらに限定されない)によって塗布される。湿式化学塗工工程の後、任意選択で過剰な溶媒の除去工程が行われ、熱硬化のみ若しくはUV硬化を使用するか、又はそれらの組み合わせであってもよい硬化工程が後に続く。
【0200】
典型的なスプレー処理の概要:
1.基板の前洗浄:
a.洗剤「Merck107553」(特にソーダ石灰ガラスの場合、アルカリ性洗剤も使用されうる)による洗浄
b.DI水によるすすぎ
c.噴霧器による吹き付け
【0201】
2.プラズマ前処理(機器ブランド:Creating-nano、モデル:CNT-ASP003RT)
a.出力:800W
b.走査速度:400mm/s
c.ピッチ:10~30mm
d.ギャップ:25~30mm
【0202】
3.スプレー条件(機器ブランド:Creating-nano、モデル:PSC640)
a.スプレー量:6~20ml/分
b.圧力:2~5kg/cm2
c.走査速度:300~800mm/s
d.ギャップ:3~10cm
e.ピッチ:5~20mm
【0203】
4.焼成条件
オーブン:80~150℃/30~60分
【0204】
図4は、基板400及び材料コーティング層410の断面像を示す。材料層の成膜に加え、パターン形成処理(ナノインプリント、エンボス加工、ロールツーロール、グラビア、フレキソ印刷、ローラ、インクジェット、スクリーン印刷、スプレー及び/又はUVリソグラフィがパターン形成処理として使用される)が、材料膜に表面構造(ナノスケール、又はマイクロ若しくはミリメートルスケール)を形成して、材料コーティング層又はコーティング層に更なる光学的、物理的、又は化学的特性をもたらすために使用される。
【0205】
図5は、基板500最上部に材料層510を成膜し、且つパターン形成する方法の典型的な順序を示す。工程1は、基板の用意を含み、工程2は、塗工処理を含み、工程3は、材料コーティングのパターン形成処理(これは、熱及びUV硬化、又はそれらの組み合わせを含んでもよい)を含み、工程4は、コーティングのその最終形態への硬化を含む。工程2及び工程3は、成膜技術及びパターン形成技術に応じて、1工程として組み合わせられ得る。
【0206】
本発明によって、膜及び構造体の製造に適する材料が提供される。層は、ガラス、シリコン、窒化珪素、他の酸化物コーティング層、金属、セラミック、及びプラスチックといった様々な基板表面上に堆積され得る。
【0207】
感熱性及び/又は感放射性材料組成物のパターン形成は、直接リソグラフィパターン形成、従来のリソグラフィマスキング及びエッチング手段、インプリント、並びにエンボス加工を通して行われうるが、これらに限定されない。
【0208】
組成物は、比較的低い処理温度で、例えば最大で250℃の温度で、又は50℃の温度、及びこれらの限界値の間の範囲で硬化される層の形成に使用されうる。
【0209】
成膜(任意選択でパターン形成)及び硬化後、材料膜及び/又は構造体は、過酷な環境条件に耐えることができ、高い機械的耐久性、熱安定性、及び化学的安定性を有し、それによって防汚及び洗浄が容易な特性並びに反射防止特性の長期的安定性が達成され、且つ持続される。以下、前述のシロキサン高分子コーティング組成物の調製、及びコーティングを製造するためのそれらの使用に関する更なる詳細を示す非限定的な幾つかの実施例を用いて本発明を説明する。
【0210】
合成例
(実施例1)
溶液1:テトラエトキシシラン(63.84g)及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.6g滴下して加えた。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178gであり、その固形分は14.45%であった。2-メトキシプロパノール(79.21グラム)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0211】
1A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec3700を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec3700、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液1を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌し、反応させた。
【0212】
1B.配合物調製(SC=0.85%)
15gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、84.64gのNovec7100、79.32gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び17gの溶液1を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0213】
(実施例2)
溶液2:テトラエトキシシラン(60.64g)、1,2-ビストリエトキシシリルエタン(5.43g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を45.26g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178.66gであり、その固形分は17.20%であった。2-メトキシプロパノール(128.59g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0214】
2A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液2を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0215】
(実施例3)
溶液3:テトラエトキシシラン(60.64g)、フェニルトリメトキシシラン(2.73g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.60g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、176gであり、その固形分は16.44%であった。2-メトキシプロパノール(113.34g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0216】
3A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液3を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0217】
(実施例4)
溶液4:テトラエトキシシラン(60.64g)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3.62g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.60g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、171.05gであり、その固形分は18.46%であった。2-メトキシプロパノール(144.70g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0218】
4A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液4を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0219】
(実施例5)
溶液5:テトラエトキシシラン(60.64g)、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3.80g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.60g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、168.73gであり、その固形分は17.60%であった。2-メトキシプロパノール(128.23g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0220】
5A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液5を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0221】
(実施例6)
溶液6:テトラエトキシシラン(60.64g)、メチルトリエトキシシラン(2.57g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.60g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、172.26gであり、その固形分は16.97%であった。2-メトキシプロパノール(120.06g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0222】
6A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液6を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0223】
(実施例7)
溶液7:テトラエトキシシラン(60.64g)、エチルトリメトキシシラン(2.08g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.60g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、177gであり、その固形分は16.43%であった。2-メトキシプロパノール(113.81g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0224】
7A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液7を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0225】
(実施例8)
溶液8:テトラエトキシシラン(60.64g)、フェニルメチルジメトキシシラン(2.79g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.05g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、175.88gであり、その固形分は16.08%であった。2-メトキシプロパノール(106.93g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0226】
8A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液8を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0227】
(実施例9)
溶液9:テトラエトキシシラン(63.84g)及びエタノール(75g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。最終的に溶液を固形分10%まで希釈した。
【0228】
9A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液9を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0229】
(実施例10)
溶液10:テトラエトキシシラン(63.84g)、Novec7100(50g)、及びアセトン(50g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。最終的に溶液を固形分10%まで希釈した。
【0230】
10A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液10を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0231】
(実施例11)
溶液11:テトラエトキシシラン(63.84g)及び2-プロパノール(130g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。固形分は10.41%であった。9.6gの2-プロパノールを添加することによって溶液を10%まで希釈した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータで2-プロパノールを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。最終的に溶液を固形分10%まで希釈した。
【0232】
11A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液11を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0233】
(実施例12)
溶液12:テトラエトキシシラン(63.84g)及び2-プロパノール(110g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を66.24g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。固形分は10.28%であった。6.54gの2-プロパノールを添加することによって溶液を10%まで希釈した。
【0234】
12A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液12を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0235】
(実施例13)
溶液13:テトラエトキシシラン(63.84g)及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。200gの2-メトキシエタノールを添加し、アセトンから2-メトキシエタノールへの溶媒交換を減圧下で開始した。固形分は16.45%であった。113.7gの2-メトキシエタノールを添加することによって溶液を10%まで希釈した。
【0236】
13A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液13を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0237】
(実施例14)
溶液14:テトラエトキシシラン(63.84g)及び2-プロパノール(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。200gの2-プロパノールを添加し、2-プロパノールから2-プロパノールへの溶媒交換を減圧下で開始した。固形分は13.9%であった。69.1gの2-プロパノールを添加することによって溶液を10%まで希釈した。
【0238】
14A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液14を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0239】
14B.配合物調製(SC=0.4%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.9gのNovec7100、43.8gの2-メトキシ-1-プロパノール、43.8gの2-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び8gの溶液14を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0240】
14C.配合物調製(SC=0.4%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.9gのNovec7100、87.6gの2-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び8gの溶液14を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0241】
(実施例15)
溶液15:テトラエトキシシラン(63.84g)及びテトラヒドロフラン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。200gの2-メトキシ-1-プロパノールを添加し、テトラヒドロフランから2-メトキシ-1-プロパノールへの溶媒交換を減圧下で開始した。固形分は14.94%であった。93.26gの2-メトキシ-1-プロパノールを添加することによって溶液を10%まで希釈した。
【0242】
15A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び16gの溶液15を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0243】
(実施例16)
溶液16:テトラエトキシシラン(63.84g)及び2-メトキシ-1-プロパノール(130g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.16g滴下した。溶液を105℃で1時間還流させ、冷却した。固形分は11.35%であった。31.64gの2-メトキシ-1-プロパノールを添加することによって溶液を10%まで希釈した。
【0244】
16A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び16gの溶液16を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0245】
(実施例17)
溶液17:テトラエトキシシラン(63.84g)及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。44.6gの水(0.1MのHNO3)を滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178gであり、その固形分は14.45%であった。2-メトキシプロパノール(79.21g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0246】
17A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0247】
17B.配合物調製(SC=1%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.6gのNovec7100、76.54gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び20gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0248】
17C.配合物調製(SC=2%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.1gのNovec7100、58.04gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び40gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0249】
17D.配合物調製(SC=3%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、73.6gのNovec7100、39.54gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び60gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0250】
17E.配合物調製(SC=4%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、73.1gのNovec7100、21.08gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び80gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0251】
17F.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec3700、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0252】
17G.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)UF503(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec3700、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0253】
17H.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)UD509(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec3700、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0254】
17I.配合物調製(SC=0.75%)
25gのフルオロリンクS10(Novec3700を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0255】
17J.配合物調製(SC=0.75%)
25gのSHIN-ETSU SUBELYN(商標)KY-1900(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0256】
17K.配合物調製(SC=0.75%)
25gのSHIN-ETSU SUBELYN(商標)KY-1900(Novec7100を使用して20%から0.2%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0257】
17L.配合物調製(SC=0.75%)(Met123;金属用試料)
25gのSHIN-ETSU SUBELYN(商標)KY-1900(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.9gのNovec7100、32.83gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、43.82gのn-ペンタン、及び8gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0258】
17M.配合物調製(SC=0.75%)(Met115;金属用試料)
50gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、50.0gのNovec7100、43.82gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、43.82gの2-プロパノール、及び8gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0259】
17N.配合物調製(SC=0.75%)(Met107-mod1;金属用試料)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、118.72gのNovec7200、43.82gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び8gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0260】
17O.配合物調製(SC=0.75%)(Met107-mod2;金属用試料)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、118.72gのNovec71IPA、43.82gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び8gの溶液17を500mlの丸底フラスコに加え、処理前に一晩攪拌した。
【0261】
(実施例18)
溶液18:テトラエトキシシラン(50.64g)、1,2-ビストリエトキシシリルエタン(5.43g)、パーフルオロドデシル-1H,1H,2H,2H-トリエトキシシラン(1.5g)、パーフルオロテトラデシル-1H,1H,2H,2H-トリエトキシシラン(2.4g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を43.27g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178.66gであり、その固形分は15.20%であった。2-メトキシプロパノール(123.59g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0262】
18A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液18を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0263】
(実施例19)
溶液19:テトラエトキシシラン(50.64g)、[(4-トリフルオロメチル)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]トリエトキシシラン(2.1g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を41.33g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178.66gであり、その固形分は14.20%であった。2-メトキシプロパノール(114.59g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0264】
19A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液NEWx2を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0265】
(実施例20)
溶液20:テトラエトキシシラン(50.64g)、1,2-ビストリエトキシシリルエタン(5.43g)、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン(1.9g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を41.90g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178.66gであり、その固形分は15.20%であった。2-メトキシプロパノール(110.59g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0266】
20A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのオプツール(商標)DSX E(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液NEWx3を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0267】
(実施例21)
溶液21:テトラエトキシシラン(50.64g)、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリメトキシシラン(2.6g)、及びアセトン(200g)を丸底フラスコに入れた。0.1MのHNO3を44.26g滴下した。溶液を95℃で1時間還流させ、冷却した。ロータリーエバポレータでアセトンを除去し、2-メトキシプロパノールを添加した。得られた溶液量は、178.66gであり、その固形分は18.20%であった。2-メトキシプロパノール(132.59g)を用いて溶液を更に10%に希釈した。
【0268】
21A.配合物調製(SC=0.75%)
25gのSHIN-ETSU SUBELYN(商標)KY-1900(Novec7100を使用して20%から0.4%に希釈)、74.73gのNovec7100、81.17gの2-メトキシ-1-プロパノール、4.96gのエチレングリコール、及び15gの溶液NEWx4を500mlの丸底フラスコに加え、攪拌し、処理前に一晩反応させた。
【0269】
処理条件及び適用例:
スプレー装置及びスプレーパラメータ:
直径0.3~0.5mmのノズルを有するHVLPスプレーガン;典型的な設定:走査速度(300~1200mm/s)、ピッチ(50~100mm)、ギャップ(50~100mm)、噴霧圧力(4~6Kg/cm2)、及び流速(5~20ml/分)。実施例:走査速度(300mm/s)、ピッチ(50mm)、ギャップ(100mm)、噴霧圧力(5Kg/cm2)、及び流速(10ml/分)。スプレー装置は、スプレーヘッド又は複数のスプレーヘッドが、例えば基板の移動方向に垂直に、移動/走査しながら基板が移動する(10mm~100mm/s)ような装置でありうる。一部の装置において、基板は、スプレーヘッド又は複数のスプレーヘッドが固定されているか、又は任意選択で基板に対して同様に動きながら基板が回転する(50~1000rpm/分)、いわゆるスピンドルスプレー装置に設置されうる。スピンドルスプレー装置は、特に3Dオブジェクトの堆積への使用に有益でありうる。
【0270】
スプレーコーティング前の典型的な基板洗浄手順(ガラスの例):
ガラス基板には、塗工前に、汚れ、破片、及びあらゆる油気があってはならない。ガラス表面の良好な濡れを得る(優れた塗工性能及び視覚品質を確保するため、塗工前のガラス表面の水接触角は<5°である必要がある)ことが非常に重要である。工程1:液体アルカリ又は酸性ガラス洗浄溶液、ガラス洗浄装置に使用される非発泡洗浄剤、工程2:ガラス洗浄装置内でのDI水洗浄工程、工程3:プラズマ/コロナ処理(可能であれば、品質検査として水接触角検査で<5°にする)(ガラスの場合、液体洗浄工程又はプラズマ洗浄工程のいずれかが使用されうる)、工程4:スプレー処理(厚さ40~100nmの硬化膜を目的としてスプレーパラメータを最適化する。熱硬化へ移行する際、湿性コーティングを破損しないよう気を付けて基板を取り扱う)、工程5:硬化温度80~250℃、硬化時間30~60分、特別な雰囲気なし。
【0271】
以下、実施例としての、より大きなコンベヤ型の生産ライン装置、及び典型的に使用されるパラメータの概要である。
【0272】
【0273】
本ラインは、前洗浄(アルカリ洗浄+DI+プラズマ)、任意選択で追加の塗工処理、続く材料のスプレーコーティングによる堆積、及びやはり同一のインライン型コンベヤに統合される熱硬化工程を最後に含む。コンベヤの速度は、通常、例えば0.2m/分~0.8m/分で変動しうる。スプレーヘッド走査速度は、通常、コンベヤを通して設置されるスプレーヘッドの数に応じて、例えば100mm/s~1200mm/sで変動しうるため、スプレーヘッドによって全表面積が覆われうる。基板表面からスプレーヘッドへの距離は、50mm~200mmで変動しうる。使用される典型的な噴霧圧力は、1.5~4バールの間である。典型的な材料供給圧力は、0.2~2.0バールである。最終的な硬化は、80℃~150℃で行われる。熱硬化コンベヤのライン速度は、例えば0.2~0.8m/分でありうる。
【0274】
先に記載されたように、スピンコーティング、ローラコーティング、バーコーティング/マイヤーバーコーティング、スロットコーティング技術といった他の方法が、基板上の成膜に適用されうる。各成膜技術に関し、配合物、材料組成、及び溶媒系、並びに添加物は、特定の成膜技術に適するように選択されるべきである。材料の堆積に関連してフッ素化溶媒に加え他の溶剤が使用されうることは、本発明に記載される新規の材料に特に有益である。一部の成膜方法では、フッ素化溶媒の揮発性が非常に高いことに起因し、配合物にフッ素化溶媒のみを使用する場合、十分な膜品質を達成できないことがある。十分な光学的、機械的、及び化学的性能を達成するためには、塗工材料の膜厚、塗工均一性、及びコーティングの品質を最適化する必要がある。膜厚、塗工均一性、及びコーティングの品質は、材料の組成及び配合、並びに堆積パラメータを調整することによって最適化されうる。本発明に係る材料により、使用される多種多様な液相析出技術に合わせた組成及び配合の調整において、特に非常に高度な調整が可能となる。更に、低温硬化性能を目的として、例えば80℃の硬化温度で機能するよう材料を最適化する場合、必要な膜性能を得やすくするために、熱硬化中に全ての溶媒を蒸発させることができるよう溶媒混合物を最適化する必要がある。
【0275】
以下の実施例のために、最適な塗工方法としてスプレーコーティングを説明する。
【0276】
適用例:
スプレー手段を使用することによって、前処理(プラズマ)されたガラス、陽極酸化アルミニウム基板、又はセラミック基板上に膜を作製する。ソーダ石灰ガラスの場合、下記の試料洗浄処理が使用される:a)アルカリ洗浄(RBS又は同様のアルカリ洗浄溶液PH10)、b)DI水、続くc)プラズマ洗浄。
材料合成例からの試料の調製に使用される典型的なスプレー処理パラメータ:
- 走査速度:300mm/s
- ピッチ:50mm
- ギャップ:100mm
- 流速:5~6ml/分
- 噴霧空気圧:5kg/cm2
【0277】
スプレー処理の後、例えば(ガラス及びセラミックに関しては)150℃60分や(陽極酸化アルミニウム及び他の金属に関しては)80℃60分の熱硬化が続く。熱硬化は、オーブン内又はコンベヤ上で行われる。
【0278】
試料は、先に規定された測定方法、及び以下の表にまとめられる様々な合成例に要約されたデータに従って特性評価される。
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
陽極酸化アルミニウムの場合、試料は、先に規定されたスプレー処理によって調製され、80℃の温度で硬化される(表6のデータに関する試料調製)。
【0287】
【0288】
【0289】
ソーダ石灰ガラス試料の調製(表8のデータに関する試料調製)
・ガラス洗浄:アルカリ洗浄+DI水+プラズマ
・スプレー処理:走査速度(300mm/s)、ピッチ(50mm)、ギャップ(100mm)、噴霧圧(5Kg/cm2)、及び流速(10ml/分)
・熱硬化:150℃/60分
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
本発明は、以下の重要な特徴を提供する:
・非常に薄い(50~100nm)硬質コーティング(非塗工表面と塗工表面の硬度を比較した場合、ゴリラガラス及びソーダ石灰ガラスの両方の場合においてガラス表面の硬度を向上させる特性を有し、この特性は、従来の単層による手法と比較して優れた性能をもたらす)
・洗浄が容易な表面を与える疎水特性と疎油特性の組み合わせ
・優れた耐擦傷性(本発明の実施例により、(一般的に使用される研磨剤である)スチールウールに対してだけでなく、綿布及びミノア消しゴムヘッドに対しても「最高水準の」摩擦性能がもたらされうることを見出した(最大で5000サイクルの摩擦性能で基準を満たす結果が得られる)。この組み合わせは、単層による手法又は市場に出回っているこの種のあらゆるE2Cコーティングと比較して優れた摩擦性能をもたらす。)
・高い熱及び化学耐久性、並びに長期耐久性(データによって示されるように、コーティング製品は、まず高温(>250℃)で硬化しうるが、150℃といった低温でも、又は80℃ですら硬化しうる。本発明の実施例は、この場合でも、従来の単層による手法と比較して非常に良好な熱安定性及び長期安定性を有することが示された。)
・高価なPVD処理材料と比較し、金属表面上での優れた化学耐性(本発明の手法は、コーティング成膜前に追加の下塗層を必要とせずに、金属表面上で非常に良好な化学耐性を有することが示された。)
・スプレー、ディップ、ローラ、スロット、又は他の溶液処理によって塗布可能であり、低コストで大型基板のコーティングが実現される。本発明は、様々な成膜技術のニーズに応じて調整可能なE2C塗工液配合物のための新規の手法を提供する。
・ガラス、金属、AG又はAR等の表面に適しており、本発明は、その表面で優れた性能を発揮する基板表面に関し、幅広い選択肢を提供する。例えば、エッチング加工された防眩ソーダ石灰ガラス又は金属表面上では、従来の手法は、下塗層がなければ十分な性能を発揮することができない。
・本発明に係る試料は、コーティング組成物について優れた保存可能期間安定性も発揮することができる。
【符号の説明】
【0294】
100 基板
110 材料コーティング層
200 基板
210 コーティング層
220 材料コーティング層
400 基板
410 材料コーティング層
500 基板
510 材料コーティング層