(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】並列再帰的ブロック復号のためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0413 20170101AFI20240902BHJP
【FI】
H04B7/0413 200
(21)【出願番号】P 2021531972
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2019082026
(87)【国際公開番号】W WO2020114790
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-25
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510229496
【氏名又は名称】アンスティテュ・ミーヌ・テレコム
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レカヤ,ガーヤ
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03169028(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03229429(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号によって搬送された情報シンボルのベクトルの推定を決定するためのデコーダ(300)であって、前記信号が、チャネル行列によって表される送信チャネルを通じて受信される、デコーダ(300)であり、
- 前記チャネル行列をサブ行列に分割することに従って、情報シンボルの前記ベクトルを情報シンボルの2つ以上のサブベクトルに分割するように構成されたブロック分割ユニット(303)であって、各サブベクトルが、前記チャネル行列の前記サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと関連付けられる、ブロック分割ユニット(303)と、
- 並列動作して、候補サブベクトルを決定し、前記候補サブベクトルを第1のスタック(310)に格納するように構成された2つ以上のプロセッサであって、前記2つ以上のプロセッ
サが、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって少なくとも1つの候補サブベクトルを決定することであって、候補サブベクトルが、情報シンボルのサブベクトルの推定を表す、決定することと、復号メトリクス及び前記チャネル行列内の前記候補サブベクトルの前記レベルを表す前記ブロックレベルと共に、情報シンボルの前記少なくとも1つの候補サブベクトルを前記第1のスタック(310)に格納することとを行うように構成され、前記復号メトリクスが、復号メトリクス閾値以下である、2つ以上のプロセッ
サと
を含み、
前記2つ以上のプロセッサが、
- 最高ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルの前記サブベクトルから始めて、最低ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルの前記サブベクトルに達するまで、シンボル推定アルゴリズムを再帰的に適用することによって、情報シンボルの各サブベクトルと関連付けて1つ又は複数の候補サブベクトルを決定するように構成された第1のプロセッサ(304)であって、各候補サブベクトルを前記第1のスタック(310)に格納するように構成された第1のプロセッサ(304)と、
- 最低ブロックレベルと関連付けられた前記第1のスタック(310)内のサブベクトルを再帰的に選択し、前記チャネル行列の最低ブロックレベルに達するまでシンボル推定アルゴリズムを適用することによって最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられた情報シンボルの前記サブベクトルの各々と関連付けて候補サブベクトルを決定することによって、1つ又は複数の候補サブベクトルを決定するように構成された第2のプロセッサ(305)であって、前記選択された候補サブベクトルから及び最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられている情報シンボルの前記サブベクトルと関連付けて決定された前記候補サブベクトルから少なくとも候補ベクトルを決定するように構成され、候補ベクトルが、情報シンボルの前記ベクトルの推定を表し、前記候補サブベクトルと共に格納された前記復号メトリクスから決定された累積復号メトリクスと関連付けられ、前記累積復号メトリクスから前記復号メトリクス閾値を更新するように構成される、第2のプロセッサ(305)であり、前記選択された候補サブベクトルと関連付けられた前記復号メトリクスと、最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられている情報シンボルの前記サブベクトルと関連付けて決定された前記候補サブベクトルと関連付けられた前記復号メトリクスとを加算することによって、前記候補ベクトルと関連付けられた前記累積復号メトリクスを決定するように構成される、第2のプロセッサ(305)であり、前記累積復号メトリクスと共に前記候補ベクトルを第2のスタック(307)に格納するように構成される、第2のプロセッサ(305)であって、前記復号メトリクス閾値が、前記累積復号メトリクスに更新される、第2のプロセッサ(305)と
を含む、デコーダ(300)。
【請求項2】
前記2つ以上のプロセッサの中の1つのプロセッサが、
- 前記候補サブベクトルと関連付けられた前記復号メトリクスの所定の順序に従って、前記第1のスタック(310)
に格納された候補サブベクトルを順序付けることと、
- 前記候補ベクトルと関連付けられた前記累積復号メトリクスに前記復号メトリクス閾値を更新することと、
- 前記更新された復号メトリクス閾値より高い復号メトリクスと関連付けられた前記候補サブベクトルを前記第1のスタック(310)から除去することと、
- 最低累積復号メトリクスと関連付けられた前記第2のスタック(307)に格納された前記候補ベクトルから情報シンボルのベクトルの推定を決定することと
を行うように構成される、請求項
1に記載のデコーダ。
【請求項3】
前記シンボル推定アルゴリズムが、逐次格子復号アルゴリズム、ゼロフォーシングアルゴリズム、最小平均二乗誤差アルゴリズム及びゼロフォーシング判定帰還イコライザを含む群において選ばれる、請求項
1に記載のデコーダ。
【請求項4】
前記シンボル推定アルゴリズムが、格子基底縮小アルゴリズム及び/又はMMSE-GDFEフィルタリングを使用する前処理ステップを含む、請求項
3に記載のデコーダ。
【請求項5】
前記シンボル推定アルゴリズムが、信号対雑音比及び/又は停止容量に応じて、事前に決定される、請求項
1に記載のデコーダ。
【請求項6】
前記シンボル推定アルゴリズムが、達成可能なターゲット送信速度を含む群において選ばれたサービスメトリクスのターゲット品質に応じて、事前に決定される、請求項
1に記載のデコーダ。
【請求項7】
前記ブロック分割ユニット(303)が、少なくとも2に等しいブロックの数及びブロックの長さを含む分割パラメータのセットに従って情報シンボルの前記ベクトルを分割するように構成され、前記ブロックの数が、情報シンボルの前記サブベクトルの数を表し、ブロックの長さが、情報シンボルのサブベクトルに含まれる情報シンボルの数を表す、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項8】
信号によって搬送された情報シンボルのベクトルの推定を決定するための方法であって、前記信号が、チャネル行列によって表される送信チャネルを通じて受信される、方法であり、
- 前記チャネル行列をサブ行列に分割することに従って、情報シンボルの前記ベクトルを情報シンボルの2つ以上のサブベクトルに分割することであって、各サブベクトルが、前記チャネル行列の前記サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと関連付けられる、分割することと、
- 並列動作する2つ以上のプロセッサによって、候補サブベクトルを決定し、前記候補サブベクトルを第1のスタックに格納することと
を含む、方法であり、候補サブベクトル
の決
定が、
- 前記2つ以上のプロセッ
サによって、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって少なくとも1つの候補サブベクトルを決定することであって、候補サブベクトルが、情報シンボルのサブベクトルの推定を表す、決定することと、
- 復号メトリクス及び前記チャネル行列内の前記候補サブベクトルの前記レベルを表す前記ブロックレベルと共に、情報シンボルの前記少なくとも1つの候補サブベクトルを前記第1のスタックに格納することであって、前記復号メトリクスが、復号メトリクス閾値以下である、格納することと
を含む、方法であり、
前記方法が、
- 最高ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルの前記サブベクトルから始めて、最低ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルの前記サブベクトルに達するまで、シンボル推定アルゴリズムを再帰的に適用することによって、情報シンボルの各サブベクトルと関連付けて1つ又は複数の候補サブベクトルを、第1のプロセッサ(304)によって、決定することと、
- 最低ブロックレベルと関連付けられた前記第1のスタック(310)内のサブベクトルを再帰的に選択し、前記チャネル行列の最低ブロックレベルに達するまでシンボル推定アルゴリズムを適用することによって最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられている情報シンボルの前記サブベクトルの各々と関連付けて候補サブベクトルを決定することによって、1つ又は複数の候補サブベクトルを、第2のプロセッサ(305)によって、決定することと、
- 前記選択された候補サブベクトルから及び最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられている情報シンボルの前記サブベクトルと関連付けて決定された前記候補サブベクトルから少なくとも候補ベクトルを、前記第2のプロセッサ(305)によって、決定することであって、候補ベクトルが、情報シンボルの前記ベクトルの推定を表し、前記候補サブベクトルと共に格納された前記復号メトリクスから決定された累積復号メトリクスと関連付けられる、決定することと、
- 前記累積復号メトリクスから前記復号メトリクス閾値を更新することと
をさらに含み、
前記選択された候補サブベクトルと関連付けられた前記復号メトリクスが、前記選択された候補サブベクトルと関連付けられた前記復号メトリクスと、最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられている情報シンボルの前記サブベクトルと関連付けて決定された前記候補サブベクトルと関連付けられた前記復号メトリクスとを加算することによって、決定され、前記第2のプロセッサ(305)が前記累積復号メトリクスと共に前記候補ベクトルを第2のスタック(307)に格納するように構成され、前記復号メトリクス閾値が、前記累積復号メトリクスに更新される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、デジタル通信に関し、具体的には、データ信号を復号するための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多入力多出力(MIMO)技術は、高い送信速度を提供するために、いくつかの通信システムにおいて使用される。MIMOシステムは、多数の時間スロットにわたって、送信及び/又は受信アンテナの多重度を使用して、より多くのデータシンボルを符号化及び多重化するために、空間及び時間次元を活用する。その結果、MIMOベースの通信システムの容量、範囲及び信頼性を強化することができる。例示的なMIMO通信システムは、有線、無線及び光通信システムを含む。
【0003】
MIMOシステムでは、時間/空間ダイバーシティは、時間/空間符号化を使用して達成される。送信デバイスでは、データストリームを符号化して符号語にするために時間/空間エンコーダが実装され、その後、符号語は、送信チャネルを通じて送信される。受信デバイスでは、送信デバイスによって伝送された意図されるデータストリームを回復するために、時間/空間デコーダが実装される。
【0004】
いくつかの時間/空間復号アルゴリズムが存在する。使用する復号アルゴリズムの選択は、ターゲット性能や、実装の複雑性及び関連コストに依存する。
【0005】
均等に分布している情報シンボルの存在下では、最適な時間/空間デコーダは、最尤(ML)復号基準を実施する。例示的なML復号アルゴリズムは、球体デコーダ、シュノールオイヒナーデコーダ、スタックデコーダ及びSBスタックデコーダなどの網羅的な検索及び逐次復号アルゴリズムを含む。MLデコーダは、最適な性能を提供するが、アンテナの数及び情報シンボルが属するアルファベットのサイズと共に増大する高い演算複雑性を必要とする。
【0006】
或いは、MLデコーダより低い演算複雑性を必要とする準最適復号アルゴリズムを使用することができる。例示的な準最適復号アルゴリズムは、ゼロフォーシング(ZF)及び最小平均二乗誤差(MMSE)デコーダなどの線形デコーダや、ZF-DFEデコーダなどの非線形デコーダを含む。
【0007】
線形デコーダと非線形デコーダは両方とも、シンボル間干渉除去及び各情報シンボルの個別の推定に基づく。
【0008】
別のブロック復号手法によれば、情報シンボルは、サブベクトルごとに(すなわち、シンボルのブロックごとに)復号することができる。ブロック復号を実施する復号アルゴリズムは、情報シンボルのベクトルを2つ以上のサブベクトルに分割することに基づく。各サブベクトルは、情報シンボルの以前に推定されたサブベクトルを考慮して、個別に且つ再帰的に推定される。シンボルの各サブベクトルの推定は、シンボル推定アルゴリズム(以下では、「推定アルゴリズム」とも呼ばれる)を使用して実行される。情報シンボルの対応するサブベクトルの推定をもたらすため、所定のブロックにおいて、いかなる逐次、線形又は非線形復号アルゴリズムもシンボル推定アルゴリズムとして実施することができる。
【0009】
QRベースのブロック復号アルゴリズムによれば、情報シンボルのベクトルの分割は、送信チャネルを表す上三角行列の分割に従って行われる。上三角行列は、送信チャネルを表すチャネル行列にQR分解を適用することによって得ることができる。
【0010】
QRベースのブロック復号アルゴリズムについては、“W-J Choi, R. Negi, and J.M. Cioffi, Combined ML and DFE decoding for the V-BLAST system, IEEE International Conference on Communications, Volume 3, pages 1243-1248, 2000”で開示されている。その文献では、データストリームの空間多重化を使用する無線MIMOシステムに対して、ML復号とDFE復号の組合せが提案されている。最初に、長さnの情報シンボルのベクトルが長さp及びn-pの2つのサブベクトルにそれぞれ分割される。次いで、ML復号を使用して、p個の情報シンボルを含むサブベクトルの推定が決定される。次いで、シンボル間干渉除去の後に、判定帰還等化を使用して、残りのn-p個のシンボルが推定される。分割パラメータ(すなわち、サブベクトルの数及び各サブベクトルの長さ)の選択は、決定論的なものである。
【0011】
符号化済みの無線MIMOシステムに対する他のQRベースのブロック復号アルゴリズムは、例えば、
- “K.Pavan Srinath and B.Sundar Rajan,Low ML-Decoding Complexity,Large Coding Gain,Full-Rate,Full-Diversity STBCs for 2×2 and 4×2 MIMO Systems,IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing,Volume 3,Issue 6,pages 916-927 2009”、
- “L.P.Natarajan,K.P.Srinath,and B.Sundar Rajan,On The Sphere Decoding Complexity of Gigh-Rate Multigroup Decodable STBCs in Asymmetric MIMO Systems,IEEE Transactions on Information Theory,Volume 59,Issue 9,2013”、
- “T.P.Ren,Y.L.Guan,C.Yuen,and R.J.Shen.Fast-group-decodable space-time block code.In Proceedings of IEEE Information Theory Workshop,pages 1-5,January 2010”
で開示されている。
【0012】
別のQRベースのブロック復号手法によれば、情報のベクトルの推定は、情報シンボルの各サブベクトルと関連付けられた候補サブベクトルの網羅的な検索に基づく。この手法によれば、受信信号は、2つ以上のサブベクトルに分割される。情報シンボルの各サブベクトルに対し、情報シンボルのこのサブベクトルの推定を表す考えられるすべての候補サブベクトルを列挙するために、網羅的な検索が適用される。再帰的干渉除去を使用すると、上三角行列の低い方のレベルのブロックと関連付けて以前に復号されたサブベクトルに起因する干渉を減算し、ML又はZF-DFE推定アルゴリズムを適用することによって、候補の網羅的なリストが構築される。情報シンボルのすべてのサブベクトルに対する候補のリストを導出した後、情報シンボルのベクトルの推定として、最小復号メトリクスと関連付けられた候補サブベクトルを含む候補ベクトルに相当する解が提供される。
【0013】
情報シンボルの各サブベクトルと関連付けて候補サブベクトルを生成するために適用される網羅的な検索は、高い演算複雑性を必要とする。
【0014】
最近では、特許出願第15306808.5号明細書において、「半網羅的な再帰的ブロックデコーダ(semi-exhaustive recursive block decoder)」と呼ばれるQRベースのブロック復号アルゴリズムが提案されている。半網羅的な再帰的ブロックデコーダは、オリジナルの網羅的な検索ベースの再帰的デコーダから着想を得た復号解法を提供する。それに従って、情報シンボルの各サブベクトルの考えられるすべての候補推定を列挙するために網羅的な検索を実行する代わりに、半網羅的な再帰的ブロックデコーダは、各サブベクトルに対し、生成予定の候補サブベクトルの復号メトリクスに対する半径を閾値として使用する。そのような閾値の設定により、異なるリストの候補サブベクトルの数を低減することができる。異なるサブベクトルに対する半径閾値の選択は、ターゲットダイバーシティ次数に従って実行される。半網羅的な再帰的ブロックデコーダは、オリジナルの網羅的な検索ベースの再帰的ブロックデコーダと比べて、復号複雑性が低減された、より優れた復号性能を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【非特許文献】
【0016】
【文献】W-J Choi,R.Negi,and J.M.Cioffi,Combined ML and DFE decoding for the V-BLAST system,IEEE International Conference on Communications,Volume 3,pages 1243-1248,2000
【文献】K.Pavan Srinath and B.Sundar Rajan,Low ML-Decoding Complexity,Large Coding Gain,Full-Rate,Full-Diversity STBCs for 2×2 and 4×2 MIMO Systems,IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing,Volume 3,Issue 6,pages 916-927,2009
【文献】L.P.Natarajan,K.P.Srinath, and B.Sundar Rajan,On The Sphere Decoding Complexity of Gigh-Rate Multigroup Decodable STBCs in Asymmetric MIMO Systems,IEEE Transactions on Information Theory,Volume 59,Issue 9,2013
【文献】T.P.Ren,Y.L.Guan,C.Yuen,and R.J.Shen.Fast-group-decodable space-time block code. In Proceedings of IEEE Information Theory Workshop,pages 1-5,January 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
既存の再帰的ブロック復号アルゴリズムは、線形及び非線形デコーダより優れた性能を提供する。しかし、線形及び非線形デコーダと比べて、それらの既存の再帰的ブロック復号アルゴリズムは、依然として、演算複雑性の増大を必要とする。それに従って、低い複雑性及び低レイテンシの再帰的ブロックデコーダを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの及び他の問題に対処するため、信号によって搬送された情報シンボルのベクトルの推定を決定するためのデコーダであって、信号が、チャネル行列によって表される送信チャネルを通じて受信される、デコーダが提供される。デコーダは、
- チャネル行列をサブ行列に分割することに従って、情報シンボルのベクトルを情報シンボルの2つ以上のサブベクトルに分割するように構成されたブロック分割ユニットであって、各サブベクトルが、チャネル行列のサブベクトルのレベルを表すブロックレベルと関連付けられる、ブロック分割ユニットと、
- 並列動作して、候補サブベクトルを決定し、候補サブベクトルを第1のスタックに格納するように構成された2つ以上のプロセッサであって、2つ以上のプロセッサの各々が、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって少なくとも1つの候補サブベクトルを決定することであって、候補サブベクトルが、情報シンボルのサブベクトルの推定を表す、決定することと、復号メトリクス及びチャネル行列内の候補サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと共に、情報シンボルの少なくとも1つの候補サブベクトルを第1のスタックに格納することとを行うように構成された2つ以上のプロセッサと
を含む。復号メトリクスは、復号メトリクス閾値以下である。2つ以上のプロセッサの中の1つのプロセッサは、第1のスタックに格納された候補サブベクトルから少なくとも1つの候補ベクトルを決定することであって、候補ベクトルが、情報シンボルのベクトルの推定を表し、候補サブベクトルと共に格納された復号メトリクスから決定された累積復号メトリクスと関連付けられる、決定することと、累積復号メトリクスから復号メトリクス閾値を更新することとを行うように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、2つ以上のプロセッサは、
- 最高ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルから始めて、最低ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルに達するまで、推定アルゴリズムを再帰的に適用することによって、情報シンボルの各サブベクトルと関連付けて1つ又は複数の候補サブベクトルを決定するように構成された第1のプロセッサであって、各候補サブベクトルを第1のスタックに格納するように構成された第1のプロセッサと、
- 最低ブロックレベルと関連付けられた第1のスタック内のサブベクトルを再帰的に選択し、チャネル行列の最低ブロックレベルに達するまでシンボル推定アルゴリズムを適用することによって最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルの各々と関連付けて候補サブベクトルを決定することによって、1つ又は複数の候補サブベクトルを決定するように構成された第2のプロセッサと
を含む。第2のプロセッサは、選択された候補サブベクトルから及び最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルと関連付けて決定された候補サブベクトルから候補ベクトルを決定することであって、候補ベクトルが、情報シンボルの上記ベクトルの推定を表す、決定することを行うようにさらに構成することができ、第2のプロセッサは、選択された候補サブベクトルと関連付けられた復号メトリクスと、最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルと関連付けて決定された候補サブベクトルと関連付けられた復号メトリクスとを加算することによって、候補ベクトルと関連付けられた累積メトリクスを決定するようにさらに構成することができ、第2のプロセッサは、累積復号メトリクスと共に候補ベクトルを第2のスタックに格納することであって、復号メトリクス閾値が、累積復号メトリクスに更新される、格納することを行うように構成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、2つ以上のプロセッサの中の1つのプロセッサは、
- 候補サブベクトルと関連付けられた復号メトリクスの所定の順序に従って、第1のスタックを順序付けることと、
- 候補ベクトルと関連付けられた累積復号メトリクスに復号メトリクス閾値を更新することと、
- 更新された復号メトリクス閾値より高い復号メトリクスと関連付けられた候補サブベクトルを第1のスタックから除去することと、
- 最低累積復号メトリクスと関連付けられた第2のスタックに格納された候補ベクトルから情報シンボルのベクトルの推定を決定することと
を行うように構成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムは、逐次格子復号アルゴリズム、ゼロフォーシングアルゴリズム、最小平均二乗誤差アルゴリズム及びゼロフォーシング判定帰還イコライザを含む群において選ぶことができる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムは、格子基底縮小アルゴリズム及び/又はMMSE-GDFEフィルタリングを使用する前処理ステップを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムは、信号対雑音比及び/又はアウテージ容量(outage capcaity)に応じて、事前に決定することができる。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムは、達成可能なターゲット送信速度を含む群において選ばれたサービスメトリクスのターゲット品質に応じて、事前に決定することができる。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、ブロック分割ユニットは、少なくとも2に等しいブロックの数及びブロックの長さを含む分割パラメータのセットに従って情報シンボルのベクトルを分割するように構成することができ、ブロックの数は、情報シンボルのサブベクトルの数を表し、ブロックの長さは、情報シンボルのサブベクトルに含まれる情報シンボルの数を表す。
【0026】
また、信号によって搬送された情報シンボルのベクトルの推定を決定するための方法であって、信号が、チャネル行列によって表される送信チャネルを通じて受信される、方法も提供される。方法は、
- チャネル行列をサブ行列に分割することに従って、情報シンボルのベクトルを情報シンボルの2つ以上のサブベクトルに分割することであって、各サブベクトルが、チャネル行列の上記サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと関連付けられる、分割することと、
- 並列動作する2つ以上のプロセッサによって、候補サブベクトルを決定し、候補サブベクトルを第1のスタックに格納することと
を含み、候補サブベクトルを決定するステップは、
- 2つ以上のプロセッサの各々によって、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって少なくとも1つの候補サブベクトルを決定することであって、候補サブベクトルが、情報シンボルのサブベクトルの推定を表す、決定することと、
- 復号メトリクス及びチャネル行列内の候補サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと共に、情報シンボルの少なくとも1つの候補サブベクトルを第1のスタックに格納することであって、復号メトリクスが、復号メトリクス閾値以下である、格納することと
を含む。方法は、第1のスタックに格納された候補サブベクトルから少なくとも1つの候補ベクトルを決定することであって、候補ベクトルが、情報シンボルのベクトルの推定を表し、候補サブベクトルと共に格納された復号メトリクスから決定された累積復号メトリクスと関連付けられる、決定することと、累積復号メトリクスから復号メトリクス閾値を更新することとをさらに含む。
【0027】
有利には、本発明の実施形態は、復号レイテンシが低減された且つ演算複雑性が低減された最適な復号複雑性を提供する並列再帰的ブロック復号技法を提供する。
【0028】
本発明のさらなる利点は、図面及び詳細な説明を検討するにつれて、当業者に明らかになるであろう。
【0029】
この明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】いくつかの実施形態による、通信システムにおける本発明の例示的な応用のブロック図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、無線シングルユーザMIMOシステムへの本発明の例示的な応用のブロック図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、時間/空間デコーダの構造を表すブロック図であり、並列再帰的ブロック復号が使用される。
【
図4】いくつかの実施形態による、並列再帰的ブロック復号方法を描写するフローチャートである。
【
図5】いくつかの実施形態による、時間/空間デコーダのハードウェアアーキテクチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の実施形態は、最適なダイバーシティ次数並びに低減された復号複雑性及び復号遅延を有する、送信チャネルを通じて受信された信号が搬送する情報シンボルを復号するための低い複雑性及び低レイテンシの並列再帰的ブロック復号デバイス及び方法を提供する。送信チャネルは、送信チャネルを表すチャネル状態行列にQR分解を適用することによって得られる上三角行列によって表される。
【0032】
本開示の実施形態は、並列化されたQRベースの再帰的復号アルゴリズムを提供し、情報シンボルの異なるブロック又はサブベクトルの処理の並列化により、復号遅延の大幅な低減が可能になる。
【0033】
様々な実施形態によるデバイス及び方法は、異なるタイプのシステムにおいて実装することができる。具体的には、それらのデバイス及び方法は、1つ又は複数の送信デバイスから受信デバイスに伝送された情報シンボルのベクトルの推定を決定するために、通信システムにおいて実装することができる。
【0034】
いくつかの実施形態の以下の説明は、単なる例示を目的として、通信システムを参照して行う。しかし、当業者であれば、信号処理システム、暗号化システム及び測位システムなどの他のタイプのシステムに様々な実施形態を適用できることが容易に理解されよう。
【0035】
図1は、いくつかの実施形態による、通信システム100への例示的な応用のブロック図である。通信システム100は、有線、無線又は光学式(例えば、光ファイバベース)のものであり得る。通信システム100は、送信チャネル13を通じて多数の情報シンボルを少なくとも1つの受信デバイス15(以下では、「受信機」と呼ばれる)に送信するように構成された少なくとも1つの送信デバイス11(以下では、「送信機」と呼ばれる)を含み得る。受信機15は、1つ又は複数の送信デバイス11によって送信された情報シンボルを復号するための時間/空間デコーダ10を含み得る。送信チャネル13は、いかなる有線接続、無線媒体又は光リンクでもあり得る。
【0036】
無線通信への本発明の応用では、通信システム100は、入力データを表す情報シンボルのフローを伝達するように構成された無線送信デバイス11と、送信機11によって伝送されたシンボルを復号するように構成された無線受信デバイス15とを含む無線シングルユーザMIMOシステムであり得る。
【0037】
送信デバイス11には、1つ又は複数の送信アンテナを装備することができ、受信デバイス15には、1つ又は複数の受信アンテナを装備することができ、送信アンテナの数nt及び受信アンテナの数nrは、1以上である。
【0038】
無線通信への本発明の別の応用では、通信システム100は、多数の無線送信デバイス11及び受信デバイス15が互いに通信する無線マルチユーザMIMOシステムであり得る。そのような実施形態では、通信システム100は、単独で又は組合せで、時分割多重アクセス(TDMA)、周波数分割多重アクセス(FDMA)、符号分割多重アクセス(CDMA)、空間分割多重アクセス(SDMA)などの任意の多重アクセス技法をさらに使用することができる。
【0039】
光通信への本発明の応用では、通信システム100は、光ファイバベースの通信システムであり得る。それに従って、送信機11及び受信機15は、光ファイバベースの送信システムにおける動作が可能ないかなる光学トランシーバでもあり得る。送信チャネル13は、短距離又は長距離にわたってデータを搬送するように設計されたいかなる光ファイバリンクでもあり得る。短距離にわたって光ファイバリンクを使用する例示的な応用は、データセンタ相互接続などの高容量ネットワークを含む。長距離にわたって光ファイバリンクを使用する例示的な応用は、地上及び洋上伝送を含む。そのような実施形態では、送信機11によって伝送される情報シンボルは、ファイバの異なる偏光状態に従って偏光された光信号によって搬送することができる。光信号は、受信機15に到達するまで、1つ又は複数の伝播モードに従ってファイバベースの送信チャネル11に沿って伝播する。
【0040】
光通信への本発明の別の応用では、単一波長レーザを使用して、情報シンボルを搬送する光信号を生成することができる。
【0041】
他の実施形態では、送信機11において、波長分割多重(WDM)技法を用いて、多数の独立した波長を使用して光信号の生成を可能にすることができる。
【0042】
光通信システムへの本発明のさらなる別の応用では、空間分割多重技法を用いて、マルチモード及び/又はマルチコアファイバを使用して、様々な伝播モードに従って情報シンボルを多重化することができる。
【0043】
さらに、光通信システムへの本発明のいくつかの応用では、WDMA(波長分割多重アクセス)などの多重アクセス技法を使用することができる。
【0044】
送信チャネル13は、周波数選択性、干渉及び遅延を軽減するためのOFDM(直交周波数分割多重化)及びFBMC(フィルタバンク多重搬送波)などの単一搬送波又は多重搬送波変調フォーマットを使用する、いかなる線形加算性白色ガウス雑音(AWGN)チャネル又はマルチパスチャネルでもあり得る。
【0045】
無線シングルユーザMIMOシステムへの本発明の応用では、受信信号のQRベースのサブブロック復号の複雑性と性能と復号遅延との間のトレードオフは、サブベクトル間の干渉を考慮に入れて、情報シンボルのベクトルのサブブロック分割の最適化を通じて最適化することができる。復号方法及びデバイスの例示的な応用は、これらに限定されないが、
- ITU G.hn及びHomePlug AV2仕様において規格化されている電力線配線通信、
- Wi-Fi(IEEE802.11n及びIEEE802.11ac)、セルラWiMax(IEEE802.16e)、協調WiMax(IEEE802.16j)、ロングタームエボリューション(LTE)、LTE-Advanced及び5G(進行中の規格化)などの無線規格
において実装することができる構成におけるMIMO復号を含む。
【0046】
単なる例示を目的として、以下の説明は、nt≧1の送信アンテナが装備された送信デバイス11と、送信機11によって送信された情報シンボルを復号するためのnr≧1の受信アンテナが装備された受信デバイス15とを盛り込む無線シングルユーザMIMOシステムを参照して行う。しかし、当業者であれば、本発明の実施形態は、無線マルチユーザMIMOシステム及び光学MIMOシステムなどの他の通信システムにも当てはまることが容易に理解されよう。より一般的には、本発明は、受信デバイスにおけるチャネル出力の線形表現(同等に、格子表現)によって特徴付けられるいかなる通信システムにも適用することができる。それに加えて、そのような実施形態に限定されないが、本発明は、2つ以上(nt≧2)の数の送信アンテナ及び/又は2つ以上(nr≧2)の数の受信アンテナの存在下において、特定の利点を有する。
【0047】
図2を参照すると、本発明の様々な実施形態を実装することができる例示的な無線シングルユーザMIMO通信システム200が示されている。無線シングルユーザMIMO通信システム200は、時間及び空間次元にわたって(すなわち、送信アンテナ上で)情報シンボルを多重化するための時間/空間ブロック符号化(STBC)を実施する送信機20を含み得る。その局の各送信機20は、無線通信システム200によって、別の局の受信機21とデータを交換することができる。
【0048】
無線シングルユーザMIMO通信システム200は、対称構成を提示し得る。本明細書で使用される場合、対称構成は、送信機20と受信機21に同じ数(nt=nr)のアンテナが装備されている構成を指す。或いは、MIMO構成は非対称であり得、受信アンテナの数nrは、送信アンテナの数ntとは異なる。具体的には、一実施形態では、階数不足問題を回避するため、受信アンテナの数nrは、送信機側のアンテナの数ntより大きい場合がある。例示的な非対称MIMO構成は、例えば、LTE規格でサポートされている2×4(nt=2、nr=4)及び4×8(nt=4、nr=8)を含む。
【0049】
送信機20は、チャネル行列Hcによって表される雑音の多い無線MIMOチャネル上で受信機21に信号を伝送することができる。送信機20は、無線環境において動作することができる異なるデバイス又はシステムにおいて実装することができる。そのような応用に適応させた例示的なデバイスは、携帯電話、無人機、ラップトップ、タブレット、ロボット、IoT(モノのインターネット)デバイス、基地局などを含む。送信機20は、固定又はモバイル型であり得る。送信機20は、例えば、
- 線形ブロック符号、畳み込み符号、ポーラ符号などの1つ又は複数の順方向誤り訂正(FEC)符号を実施するチャネルエンコーダ201、
- 変調済みのシンボルベクトルscを提供する直交振幅変調(QAM)などの変調スキームを実施する変調器203、
- 符号語行列Xを提供するための時間/空間エンコーダ205、
- nt個の送信アンテナ207(各送信アンテナは、OFDM又はFBMC変調器などの単一搬送波又は多重搬送波変調器と関連付けられる)
を含み得る。
【0050】
送信機20は、例えば、線形ブロック符号、畳み込み符号又はポーラ符号を実施するFECエンコーダ201を使用して、データ入力としての情報ビットの受信フローを符号化するように構成することができる。次いで、変調器203を使用して、符号化済みの二値信号をシンボルベクトルscに変調することができる。2qシンボル又は状態を有する2q-QAM又は2q-PSKなど、異なる変調スキームを実施することもできる。変調済みのベクトルscは、1つのシンボルあたりqビットのк個の複素数値シンボルs1、s2、…、sкを含む複素数値ベクトルであり得る。
【0051】
情報シンボルsjは、平均電力Esを有し、
sj=Re(sj)+ilm(sj) (1)
の形式で記載することができる。
【0052】
方程式(1)では、iは、i2=-1であるような複素数を示し、Re(.)及びIm(.)演算子はそれぞれ、入力値の実数及び虚数部分を出力する。
【0053】
2
q-QAMなどの変調フォーマットが使用される際、2
qシンボル又は状態は、整数体
【数1】
のサブセットを表す。対応するコンスタレーションは、異なる状態又はシンボルを表す2
qポイントから構成される。それに加えて、二乗変調の事例では、情報シンボルの実数及び虚数部分は、同じ有限アルファベットA=[-(q-1),(q-1)]に属する。変調スキームの最小距離d
minは、コンスタレーションの2つの隣接ポイント間のユークリッド距離を表し、そのような例では、2に等しい。
【0054】
時間/空間エンコーダ205は、符号化済みのシンボルから符号語行列Xを生成するために使用することができる。時間/空間エンコーダ205は、長さTの線形STBCを使用し、(n
t×T)次元の符号語行列Xを提供することができ、符号語行列Xは、符号帳Cに属し、T個の時間スロットにわたって送信される。そのような符号の符号化レートは、1回のチャネル使用あたり
【数2】
個の複素シンボルに等しく、кは、この事例では、к次元のベクトルs
c=[s
1,s
2,…,s
к]
tを構成する符号化済みの複素数値シンボルの数である。フルレート符号が使用される際は、時間/空間エンコーダ205は、к=n
tT個の複素数値シンボルを符号化する。STBCの例は、完全符号である。完全符号は、
【数3】
個の複素情報シンボルを符号化することによってフルレート符号化を提供し、非ゼロ行列式プロパティを満たす。
【0055】
いくつかの実施形態では、時間/空間エンコーダ205は、時間次元における符号化を実行することなく、異なる送信アンテナ上で受信複素数値情報シンボルを多重化することによって、V-BLASTスキームとして知られている空間多重化スキームを使用することができる。
【0056】
従って、構築された符号語は、多重搬送波変調技法を用いて、例えば、OFDM又はFBMC変調器を使用して、時間領域から周波数領域に変換し、送信アンテナ207にわたって広げることができる。信号は、任意選択のフィルタリング、周波数転位及び増幅の後に送信アンテナ207から送信することができる。
【0057】
受信機21は、無線ネットワークにおいて、送信チャネル(「通信チャネル」とも呼ばれる)を通じて、送信機20によって伝達された信号を受信して復号するように構成することができ、送信チャネルは、フェージング及び干渉を受け、複素数値チャネル行列Hcによって表される。それに加えて、通信チャネルは、例えば、ガウス雑音による影響により、雑音の多いものであり得る。
【0058】
受信機21は、セルラネットワークのノードBなどの基地局、ローカルエリアネットワーク若しくはアドホックネットワークのアクセスポイント又は他の任意の無線環境で動作するインタフェースデバイスに組み込むことができる。受信機21は、固定又はモバイル型であり得る。例示的な一実施形態では、受信機21は、
- チャネル行列H
c及びチャネル出力信号Y
cから、変調済みのシンボルベクトルs
cの推定
【数4】
を提供するように構成された時間/空間デコーダ211、
- 推定されたシンボルベクトル
【数5】
の復調を実行することによって2進数列を生成するように構成された復調器213、
- 例えば、ビタビアルゴリズムを使用して、送信されたビットの推定である二値信号を出力として提供するように構成されたチャネルデコーダ215
を含み得る。
【0059】
受信機21は、送信機20によって実行される処理とは逆の処理を実施する。それに従って、送信機において、多重搬送波変調というよりむしろ、単一搬送波変調が使用される場合は、nr個のOFDM又はFBMC復調器を対応する単一搬送波復調器と交換することができる。
【0060】
図3は、無線レイリーフェージング多重アンテナシステムへの応用における、いくつかの実施形態による時間/空間デコーダ300(「デコーダ」とも呼ばれる)のブロック構造を表し、デコーダ300は、n
t個の送信アンテナが装備された送信機から送信された信号を受信して復号するように構成され、デコーダ300は、n
r個の受信アンテナが装備された受信デバイスにおいて実装される。
【0061】
送信機においてк個のシンボルを符号化する長さTの時間/空間符号を使用して時間/空間符号化が実行されているいくつかの実施形態によれば、受信される複素数値信号は、
Yc=HcXc+Wc (2)
の形式で記載することができる。
【0062】
方程式(2)では、Ycは、受信信号を表すnr×T行列であり、Xcは、(nt×T)次元の複素数値符号語行列を示す。
【0063】
V-BLAST空間多重化が使用されるいくつかの実施形態によれば、受信される複素数値信号は、
yc=Hcsc+wc (3)
の形式で記載することができる。
【0064】
方程式(3)では、ycは、nr次元ベクトルであり、scは、nt次元の送信された情報シンボルの複素数値ベクトルを示す。
【0065】
方程式(2)及び(3)の複素数値nr×ntの行列Hcは、フェージング利得を含むチャネル行列を表す。レイリーフェージングチャネルでは、チャネル行列Hcへのエントリは、独立同分布(i.i.d)複素ガウスタイプのものである。コヒーレント伝送では、チャネル行列は、受信機において、最小二乗推定量などの推定技法を使用して推定することができる。マルチパスフェージング効果に加えて、送信チャネルは、雑音の多いものであり得る。雑音は、システムコンポーネント、ユーザ間干渉及びアンテナによる干渉性放射遮断の熱雑音から生じ得る。総雑音は、nr×T複素数値行列Wc及びnr次元複素数値ベクトルwcによってそれぞれ方程式(2)及び(3)でモデル化された実数値次元あたり分散σ2のゼロ平均加算性白色ガウス雑音によってモデル化することができる。
【0066】
デコーダは、複素数から実数への変換器301を含み得、複素数から実数への変換器301は、複素数値チャネル行列Hcを実数値等価行列Hに変換し、受信された複素数値信号を実数値信号に変換するように構成される。
【0067】
V-BLAST空間多重化を使用する一実施形態では、複素数から実数への変換器301は、方程式(3)の系を
【数6】
に変換するように構成することができる。
【0068】
方程式(4)のRe(.)及びIm(.)演算子は、基本的なベクトル又は行列を構成する各要素の実数及び虚数部分を指定する。複素数から実数への変換は、ベクトルの要素の任意の次数を考慮して実行することができ、方程式(4)において表現される例示的な変換に限定されない。
【0069】
送信機において線形時間/空間ブロック符号化を使用する別の実施形態では、複素数から実数への変換器301は、方程式(2)の系を、方程式(4)の線形表現形式で記載することができる実数値系に変換するように構成することができ、等価チャネル行列は、
【数7】
によって得られる実数値2n
rT×2кの行列H
eqである。
【0070】
2n
tT×2кの行列Gは、送信機において使用された線形時間/空間ブロック符号の生成行列又は符号化行列として知られている実数値行列を指定する。I
Tは、T次元の単位行列を示し、演算子
【数8】
は、クロネッカー行列積である。
【0071】
以下の実施形態の理解を容易にするため、以下の説明は、単なる例示を目的として、送信機と受信機に同じ数(nt=nr)のアンテナが装備されている対称MIMO構成に関与する空間多重化スキームを参照して行う。それに従って、方程式(3)の実数値系は、
y=Hs+w (6)
のように線形形式で記載することができる。
【0072】
方程式(6)では、ベクトルy、s、wは、n=2nt=2nrであるn次元ベクトルであり、等価実数値チャネル行列Hは、n×nの正方行列である。ベクトルsは、ベクトルscに含まれるオリジナルの複素数値情報シンボルの実数及び虚数部分を含む。
【0073】
デコーダ300は、H=QRであるように、QR分解を実数値チャネル行列に適用することによって、直交行列Q及び上三角行列Rを生成するように構成されたQR分解ユニット302を含み得る。上三角行列の成分は、Rij(i,j=1、…、n)によって示される。
【0074】
デコーダ300は、乗算ユニット309をさらに含み得、乗算ユニット309は、実数値チャネル行列のQR分解から得られた直交行列Qの転置によって実数値信号yをスケーリングすることによって、補助信号
【数9】
を決定するように構成され、その結果、
【数10】
が得られる。
【0075】
方程式(7)では、
【数11】
は、スケーリング済みの雑音ベクトルを指定する。行列Qの直交性を考慮すると、方程式(7)の系は、方程式(6)において与えられるものと等価である。
【0076】
様々な実施形態による並列化されたQRベースの再帰的ブロック復号は、方程式(7)の実数値系に基づく。
【0077】
情報シンボルのML復号は、
【数12】
によって与えられる最適化問題によって形式化することができる。
【0078】
方程式(8)では、Aは、実数ベクトルsを構成する複素数値ベクトルs
cの実数及び虚数部分が属するアルファベットを指定する。MLメトリクスは、
【数13】
のようにML復号問題と関連付けて定義することができる。
【0079】
本開示の実施形態による再帰的ブロック復号は、上三角行列を多数のサブ行列に分割することに従って、情報シンボルのベクトルを2つ以上のサブベクトルに分割することに基づく。
【0080】
それに従って、デコーダ300は、ブロック分割ユニット303をさらに含み得、ブロック分割ユニット303は、分割パラメータのセットに従って情報シンボルのベクトル及び行列の分割を実行するように構成され、分割パラメータのセットは、N≧2によって示される少なくとも2に等しいブロックの数及びl
k(k=1、…、N)によって示されるブロックの長さを含み、長さl
k≧1は、情報シンボルのk番目のサブベクトルの要素/エントリの数の観点からの長さに相当し、長さは、1以上であり、すなわち、情報シンボルの各サブベクトルは、1つ又は複数のシンボルを含む。ブロックの長さは、
【数14】
によって与えられる等式を満たす。
【0081】
分割パラメータのセットを使用することにより、ブロック分割ユニット303は、ベクトル
【数15】
をN個のサブベクトルに分割し、その結果、
【数16】
となり、添字kのサブベクトル
【数17】
(k=1、…、N)は、長さl
kを有するように構成することができる。同様に、ブロック分割ユニット303は、情報シンボルsの実数値ベクトル及び雑音ベクトル
【数18】
を長さl
kのN個のサブベクトルs
(k)及びN個のサブベクトル
【数19】
のそれぞれに分割し、その結果、
【数20】
及び
【数21】
となるように構成することができる。ベクトル
【数22】
とsと
【数23】
の分割は、
【数24】
に従って上三角行列Rをサブ行列に分割することに従って実行することができる。
【0082】
方程式(10)では、
- 正方上三角サブ行列R(k)は、(lk×lk)次元のものであり、
- サブ行列B(kj)は、(lk×lj)次元の矩形行列であり(j=k+1、…、N)、サブベクトルs(k)とサブベクトルs(j)との間の干渉を表す。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、ブロック分割ユニット303は、上三角行列Rのゼロ構造に応じて分割パラメータのセットを事前に決定するように構成することができ、その結果、分割パラメータのセットは、サブベクトル間の干渉に起因する誤差伝播を低減するために、矩形サブ行列のゼロ構造を活用するサブ行列への上三角行列の分割を提供する。現に、サブ行列B(kj)はサブベクトルs(k)とサブベクトルs(j)との間の干渉を表すため、サブベクトルs(k)の復号は、サブベクトルs(j)(j=k+1、…、N)に対して決定された推定に依存する。サブベクトルs(j)の推定に対するいかなる誤差も、サブベクトルs(k)の推定に対する誤差を引き起こし得る。サブベクトルs(k)とサブベクトルs(j)(j=k+1、…、N)との間の干渉に起因する誤差伝播は、矩形サブ行列B(kj)のゼロ構造に依存する。矩形サブ行列におけるゼロの数が少ないほど、誤差伝播が少なくなり、復号誤差性能が優れている。
【0084】
それに従って、ブロック分割ユニット303は、所定の上三角チャネル行列に対して、情報シンボルのサブベクトル間の干渉の影響を最小化することができる分割パラメータのセットを事前に決定するように構成することができる。分割パラメータのセットは、矩形サブ行列のゼロ構造を表す分割メトリクスの最適化(最小化又は最大化)に基づいて決定することができる。
【0085】
分割パラメータのセットを考慮して、上三角行列Rの分割されたサブ行列R
(k)及びB
(kj)並びに分割されたサブベクトル
【数25】
は、N個のブロック(SB)
k(k=1、…、N)にグループ分けすることができる。
【0086】
ブロック(SB)
k(k=1、…、N-1)は、パラメータのセットによって、
【数26】
のように定義することができ、式中、
【数27】
である。
【0087】
k=Nの場合は、添字Nのブロックは、
【数28】
によって定義することができ、式中、
【数29】
である。
【0088】
D(k)は、情報シンボルのサブベクトルs(k)の候補推定を決定するために、k番目のブロックに適用されるシンボル推定アルゴリズムを指定する。
【0089】
そのようなグループによれば、方程式(9)のML復号メトリクスは、
【数30】
として記載することができる。
【0090】
それに従って、方程式(8)のML最適化系は、
【数31】
として表現することができる。
【0091】
方程式(15)では、
【数32】
は、情報シンボルのサブベクトルs
(k)が属するアルファベットを指定する。
【0092】
本開示の実施形態による並列再帰的ブロック復号は、Γ
1、…、Γ
Nによって示される候補サブベクトルのセットの並列決定に基づき、その結果、セットΓ
kは、情報シンボルのk番目のサブベクトルs
(k)の1つ又は複数の候補サブベクトル
【数33】
を含み、Card(Γ
k)は、情報シンボルの複素数値ベクトルの実数及び虚数部分が属するアルファベットAの濃度(カーディナリティ)より厳密に低いセットΓ
kの濃度を指定する。それに従って、候補サブベクトルのセットは、高速復号及び低い復号複雑性を可能にする2つ以上のプロセッサ(「処理ユニット」とも呼ばれる)を使用して並列に決定することができる。2つ以上のプロセッサは、候補サブベクトルを決定するため及び候補サブベクトルを第1のスタック310に格納するために並列動作するように構成することができ、各プロセッサは、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって、少なくとも1つの候補サブベクトルを決定するように構成され、候補サブベクトルは、情報シンボルのサブベクトルの推定を表す。各プロセッサは、候補サブベクトルと関連付けられた復号メトリクス及び上三角チャネル行列内の候補サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと共に、決定された各候補サブベクトルを第1のスタック310に格納するようにさらに構成することができる。2つ以上のプロセッサの中の1つのプロセッサは、第1のスタック310に格納された候補サブベクトルから少なくとも1つの候補ベクトルを決定することであって、候補ベクトルが、情報シンボルのベクトルの推定を表し、候補サブベクトルと共に格納された復号メトリクスから決定された累積復号メトリクスと関連付けられる、決定することと、累積復号メトリクスから復号メトリクス閾値を更新することとを行うように構成することができる。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、デコーダ300は、2つ以上のプロセッサの中で、第1のスタック310を候補サブベクトル
【数34】
で埋めるために並列動作するように構成された第1のプロセッサ304及び第2のプロセッサ305を含み得、kは、1~Nの値を取り、候補サブベクトル
【数35】
(t
k=1、…、Card(Γ
k))は、情報シンボルのサブベクトルs
(k)の推定を表す。
【0094】
第1のスタック310に格納された候補サブベクトル
【数36】
は、
【数37】
によって定義された復号メトリクスと関連付けることができる。
【0095】
方程式(16)では、項
【数38】
は、シンボル間干渉に相当し、候補サブベクトル
【数39】
(j=k+1、…、N)は、セットΓ
j(j=k+1、…、N)の以前に決定された候補サブベクトルから分かっている。
【0096】
候補サブベクトル
【数40】
は、復号メトリクス条件を満たすことに従ってk番目のブロックと関連付けられたシンボル推定アルゴリズムD
(k)を適用することによって決定することができ、復号メトリクス条件によれば、候補サブベクトルと関連付けられた復号メトリクス
【数41】
は、m
thによって示される復号メトリクス閾値以下、すなわち、
【数42】
である必要がある。
【0097】
第1のスタック310に格納された候補サブベクトル
【数43】
は、上三角チャネル行列内のサブベクトルのレベルを表すブロックレベルとさらに関連付けることができる。ブロック分割表記法を使用すると、候補サブベクトル
【数44】
と関連付けられたブロックレベルは、添字kである。
【0098】
本開示の実施形態による並列再帰的ブロック復号は、異なるブロックの並列処理を提供し、その結果、情報シンボルの異なるサブベクトルに相当する候補サブベクトルが並列に決定され、情報シンボルのベクトルに対する完全なベクトル候補
【数45】
の高速提供が可能になる。その上、異なるブロックの並列処理は、候補サブベクトルの推定の間に配慮すべき復号メトリクス閾値の更新を可能にし、復号メトリクス閾値は、各候補サブベクトルに対する候補サブベクトルが決定された時点で、情報シンボルsのベクトルに対するグローバル解又は推定
【数46】
が決定される度に更新される。
【0099】
並列再帰的ブロック復号は、復号メトリクスに対する復号条件を満たすことに従ってシンボル推定アルゴリズムD
(N)を適用することによる、情報シンボルのN番目のサブベクトルs
(N)の少なくとも1つの候補サブベクトル
【数47】
推定の決定に対してNに等しいブロックレベルの最終ブロック(SB)
Nの処理から始まる。第1の候補サブベクトル
【数48】
が決定された時点で、残りのブロック(SB)
k(k=N-1、…、1)の処理を開始することができる。複数のプロセッサを実装して、異なるブロック(SB)
kを同時に処理し、セットΓ
k(k=N-1、…、1)の候補サブベクトル
【数49】
を決定することができる。
【0100】
それに従って、第1のプロセッサ304は、最高ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルから始めて、最低ブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルに達するまで、推定アルゴリズムを再帰的に適用することによって、情報シンボルの各サブベクトルと関連付けて1つ又は複数の候補サブベクトルを決定するように構成することができる。これは、N番目のブロック(SB)
Nの処理から始めるように第1のプロセッサ304を構成できることを意味し、その処理とは、セットΓ
Nの1つ又は複数のサブベクトル推定
【数50】
を決定するためにシンボル推定アルゴリズムD
(N)を適用することにあり、t
Nは、サブベクトル推定
【数51】
の添字を指定し、1~Card(Γ
N)の値を取る。第1のプロセッサ304がサブベクトル推定
【数52】
を決定する度に、第1のプロセッサ304は、第1の処理ブロックに対するNに等しい対応するブロックレベル及び復号メトリクス
【数53】
と共に、見出したサブベクトル推定
【数54】
を第1のスタック310に格納する。第1のサブベクトル推定
【数55】
を見出した後、第1のプロセッサ304は、セットΓ
Nに対応するすべての候補サブベクトルを決定するための推定プロセスを続行する。第1のプロセッサ304がN番目のブロック(SB)
Nの処理を終了した時点で、第1のプロセッサ304は、(N-1)番目のブロック(SB)
N-1を処理するために、情報シンボルのサブベクトルのレベルを1つ移動する。(N-1)番目のブロック(SB)
N-1の処理とは、セットΓ
Nにおいて決定された候補サブベクトル
【数56】
の各々に対して、セットΓ
N-1の候補サブベクトル
【数57】
を決定することにある。第1のプロセッサ304は、
- 干渉除去を実行し、サブベクトル
【数58】
を決定し、
- シンボル推定アルゴリズムD
(N-1)を適用して、メトリクス条件
【数59】
を満たす候補サブベクトル
【数60】
を決定する
ことによって、各候補サブベクトル
【数61】
を決定するように構成することができる。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、復号メトリクス閾値mthは、最初に、受信信号とゼロフォーシング判定帰還イコライザを受信信号に適用することによって決定されたZF-DFE推定との間のユークリッド距離に設定することができる(例えば、第1のプロセッサ304によって)。
【0102】
第1のプロセッサが(N-1)番目のブロック(SB)N-1の処理を終了した時点で、(N-2)番目のブロック(SB)N-2の処理に移動するなど、以下同様であり、第1のブロック(SB)1に達するまで続く。Nに等しい最高ブロックレベルとは異なるブロックレベルと関連付けられた候補サブベクトルの場合は、第1のプロセッサ304は、上記候補サブベクトルを見出すために干渉除去ステップにおいて使用された以前に処理されたブロックの候補サブベクトルと共に、候補サブベクトルを格納するように構成することができる。
【0103】
第1のプロセッサ304によって実行される処理と並列して、第2のプロセッサ305は、最低ブロックレベルと関連付けられたスタックのサブベクトルを再帰的に選択し、チャネル行列の最低ブロックレベルに達するまで推定アルゴリズムを適用することによって上記最低ブロックレベルより低いブロックレベルと関連付けられた情報シンボルのサブベクトルの各々と関連付けて候補サブベクトルを決定することによって、1つ又は複数の候補サブベクトルを決定するように構成することができる。
【0104】
これは、第1のプロセッサ304が第1の候補サブベクトル
【数62】
を決定し、それを第1のスタック310に格納した時点で、第2のプロセッサ305が起動されることを意味する。この時点では、第1のスタック310は、候補サブベクトル
【数63】
のみを含み、従って、この事例での最低ブロックレベルは、候補サブベクトル
【数64】
と関連付けられたブロックレベルNに相当する。第2のプロセッサ305は、候補サブベクトル
【数65】
を選択し、選択された候補サブベクトル
【数66】
と関連付けられたブロックレベルNより低いブロックレベルk=N-1、…、1のブロック(SB)
kの各々を処理することによって、レベルを1つずつ移動する。第2のプロセッサ305は、k番目のブロック(SB)
kを処理する際、
- 干渉除去を実行し、サブベクトル
【数67】
を決定し、
- シンボル推定アルゴリズムD
(k)を適用して、メトリクス条件
【数68】
を満たす候補サブベクトル
【数69】
を決定する
ことによって、候補サブベクトル
【数70】
を再帰的に決定するように構成することができる。
【0105】
ブロックレベルk=1の第1のブロックを処理することにより、第2のプロセッサ305は、選択された候補サブベクトル
【数71】
から及び選択された候補サブベクトル
【数72】
と関連付けられたブロックレベルNより低いブロックレベルk=N-1、…、1と関連付けられた情報シンボルのサブベクトルs
(k)と関連付けて決定された候補サブベクトル
【数73】
から候補ベクトル
【数74】
を決定する。候補ベクトル
【数75】
は、情報シンボルsのベクトルの推定を表す。第2のプロセッサ305は、選択された候補サブベクトル
【数76】
と関連付けられた復号メトリクス
【数77】
と、選択された候補サブベクトル
【数78】
と関連付けられたNに等しい最低ブロックレベルより低いブロックレベルk=1、…、N-1と関連付けられた情報シンボルのサブベクトルと関連付けて決定された候補サブベクトル
【数79】
と関連付けられた復号メトリクス
【数80】
(k=1、…、N-1)とを加算することによって、候補ベクトルと関連付けられた累積メトリクス
【数81】
を決定するように構成することができ、その結果、
【数82】
となる。
【0106】
第2のプロセッサ305は、累積復号メトリクス
【数83】
と共に、決定された候補ベクトル
【数84】
を第2のスタック307に格納するようにさらに構成することができる。
【0107】
有利には、並列再帰的ブロック復号は、決定された候補ベクトルと関連付けられた累積復号メトリクスから復号メトリクス閾値のオンライン更新をさらに可能にする。それに従って、デコーダ300に含まれる2つ以上のプロセッサの中の1つのプロセッサは、格納された候補サブベクトルと関連付けられた復号メトリクスの所定の順序(増加順又は減少順)に従って、第1のスタック310を順序付けることと、
【数85】
となるように、候補ベクトル
【数86】
と関連付けられた累積復号メトリクス
【数87】
に復号メトリクス閾値m
thを更新することとを行うように構成することができる。このプロセッサは、更新された復号メトリクス閾値より高い復号メトリクスと関連付けられた候補サブベクトルを第1のスタック310から除去するようにさらに構成することができる。
【0108】
復号メトリクス閾値のオンライン更新は、デコーダ300に含まれる第2のプロセッサ305によって又は第3のプロセッサ306によって実行することができ、第3のプロセッサ306は、候補ベクトル
【数88】
が見出される度に起動される。硬出力復号への応用では、第3のプロセッサ306は、最低累積復号メトリクスと関連付けられたスタックに格納された候補ベクトルから情報シンボルのベクトルの推定を決定/提供するように構成することができる。
【0109】
軟出力復号への応用では、第3のプロセッサ306は、第2のスタック307に格納された候補ベクトルを使用して、オリジナルの情報シンボルによって搬送された異なる情報ビットの外的情報を近似させるために対数尤度比の値を計算するように構成することができる。
【0110】
デコーダ300は、複素数値シンボルのオリジナルのベクトルs
cの推定として複素数値ベクトル
【数89】
を提供するように構成された実数から複素数への変換器308をさらに含み得る。次いで、得られた候補ベクトル
【数90】
は、複素数値ベクトル
【数91】
に変換することができ、その結果、成分
【数92】
(j=1、…、n/2)は、
【数93】
によって得られる。
【0111】
方程式(18)では、(u)jは、ベクトルuのj番目の要素を示す。
【0112】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムD(k)は、事前に決定されたか又は記憶手段からロードされた1つ又は複数のシンボル推定アルゴリズムから選択することができる。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムD(k)(k=1、…、N)は、信号対雑音比、並列再帰的ブロック復号を実施するデバイス若しくはシステムの演算能力、及び/又は、送信チャネルのアウテージ容量に応じて、事前に決定することができる。さらに、シンボル推定アルゴリズムD(k)(k=1、…、N)は、達成可能なターゲット送信速度などの必要なサービスメトリクスのターゲット品質に応じて、事前に決定することができる。
【0114】
一実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムD(k)は、同様のものであり得る。
【0115】
別の実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムD(k)は、異なるものであり得る。
【0116】
いくつかの実施形態によれば、シンボル推定アルゴリズムD(k)(k=1、…、N)は、逐次復号アルゴリズム、ZF若しくはMMSEデコーダなどの線形復号アルゴリズム又は非線形ZF-DFEデコーダを含む群において選ぶことができる。
【0117】
所定のサブブロック(SB)
kにおいて逐次復号アルゴリズムが使用される実施形態では、対応するシンボル推定アルゴリズムD
(k)は、
【数94】
に従ってブロックメトリクス
【数95】
を最小化することによって、推定
【数96】
を提供することができる。
【0118】
方程式(19)を解くため、球体デコーダ(SD)、スタックデコーダ、SBスタックデコーダ(SBスタック)などの逐次復号アルゴリズムを使用することができる。
【0119】
さらに、いくつかの実施形態では、候補サブベクトルの推定の前に、例えば、格子基底縮小及び/又はMMSE-GDFEフィルタリングを使用して、上三角サブ行列R(k)の前処理を実行することができる。
【0120】
図4を参照すると、信号によって搬送された情報シンボルのベクトルの推定を決定するための方法であって、信号が、チャネル行列によって表される送信チャネルを通じて受信される、方法も提供されている。受信信号は、方程式(6)に従って実数値系で記載することができ、同等に、方程式(7)において表現されるようにQR分解を使用して表すことができる。
【0121】
ステップ401では、チャネル行列Rをサブ行列に分割することに従って、情報シンボルのベクトル
【数97】
を情報シンボルの2つ以上のサブベクトルに分割することを実行することができる。それに従って、ベクトル
【数98】
は、N≧2個のサブベクトルに分割することができ、その結果、
【数99】
となり、添字kのサブベクトル
【数100】
(k=1、…、N)は、長さl
k≧1を有する。上三角行列Rは、方程式(10)に従って2つ以上のサブ行列に分割することができる。
【0122】
ステップ403では、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって、Γ
1、…、Γ
Nによって示される候補サブベクトルのセットを決定することができ、その結果、セットΓ
kは、情報シンボルのk番目のサブベクトルs
(k)の1つ又は複数の候補サブベクトル
【数101】
を含み、Card(Γ
k)は、情報シンボルの複素数値ベクトルの実数及び虚数部分が属するアルファベットAの濃度より厳密に低いセットΓ
kの濃度を指定する。候補サブベクトルのセットは、並列動作する2つ以上のプロセッサによって決定することができる。候補サブベクトルを決定するステップ403は、2つ以上のプロセッサの各々によって、シンボル推定アルゴリズムを適用することによって少なくとも1つの候補サブベクトルを決定するサブステップを含み得、候補サブベクトルは、情報シンボルのサブベクトルの推定を表す。
【0123】
ステップ405では、復号メトリクス及びチャネル行列R内の候補サブベクトルのレベルを表すブロックレベルと共に、情報シンボルの少なくとも1つの候補サブベクトルを第1のスタックに格納することができ、復号メトリクスは、復号メトリクス閾値以下である。
【0124】
ステップ407では、第1のスタックに格納された候補サブベクトルから少なくとも1つの候補ベクトルを決定することであって、候補ベクトルが、情報シンボルのベクトルの推定を表し、候補サブベクトルと共に格納された復号メトリクスから決定された累積復号メトリクスと関連付けられる、決定することと、累積復号メトリクスから復号メトリクス閾値を更新することとを行うことができる。
【0125】
本明細書で説明される方法及びデバイスは、例えば、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組合せにおいてなど、様々な手段によって実装することができる。ハードウェアの実装形態では、デコーダ300の処理要素は、例えば、ハードウェアのみの構成に従って(例えば、対応するメモリを有する1つ若しくは複数のFPGA、ASIC若しくはVLSI集積回路において)又はVLSIとDSPの両方を使用した構成に従って実装することができる。
【0126】
図5は、いくつかの本発明の実施形態による、デコーダ300の例示的なハードウェアアーキテクチャを表す。ハードウェアアーキテクチャは、機械又はコンピュータ実行デバイスにおいて実装することができる。示されるように、デコーダ300は、データ及びアドレスポート59を通じて互いに相互作用することができる様々な演算、記憶及び通信ユニットを含み得、
- 例えば、受信アンテナから入力データを受信するための入力周辺機器51、
- 例えば、本発明の実施形態による方法及びアルゴリズムを起動するために対応する命令を実行するように構成されたFPGA又はASICなどの1つ又は複数のマイクロプロセッサ(CPU)を含む処理周辺機器53、
- 例えば、情報シンボルの候補サブベクトル及び情報シンボルの候補ベクトルを含む第1のスタック及び第2のスタックを格納するためのランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み取り専用メモリを含み得る記憶周辺機器55、
- 例えば、構成及び保守目的のために受信デバイス21とMIMOシステム管理者との間の人間と機械の相互作用を可能にするディスプレイなどの通信手段を含む出力周辺機器57
を含む。
【0127】
本発明の実施形態は、主に、同じ数の送信アンテナと受信アンテナによって特徴付けられる対称MIMO構成を参照して説明してきたが、本発明は、nt<nrの非対称MIMO構成にも適用できることに留意すべきである。また、方程式(6)の形式の線形表現は、ステップ601の複素数から実数への変換を
U†yc=DV†sc+U†wc (20)
によって得られる等価系で実行することによって得ることもできる。
【0128】
方程式(20)では、行列UとVは、行列Hc=UDVtの特異値分解から、行列Dと共に得られるユニタリ行列である。Dは、行列Hcの特異値を表す正の対角エントリを有する対角行列である。上付き文字(.)†は、エルミート転置演算子を指定する。
【0129】
さらに、本発明の実施形態は、無線シングルユーザMIMOシステムに関連して説明してきたが、本発明は、そのような応用に限定されないことに留意すべきである。本発明は、チャネル出力の線形表現によって特徴付けられるいかなる線形通信システムにおいても動作するいかなる受信デバイスにも組み込むことができる。通信システムは、単一又は多重アンテナ及び単一又は多重搬送波通信技法を使用した、シングルユーザ又は複数のユーザに対応する、有線、無線又は光ファイバベースのものであり得る。例えば、本発明は、無線分散MIMOシステムにおいて実装される受信デバイスに組み込むことができる。分散MIMOは、例えば、3G、4G、LTE及び将来の5G規格又は同様のものにおいて適用されるセルラ通信において使用することができる。例えば、アドホックネットワーク(無線センサネットワーク、機械同士の通信、モノのインターネット(IoT)など)において適用される協調通信もまた、分散MIMOシステムの例である。無線ネットワークに加えて、本発明は、偏波分割多重OFDM(PDM-OFDM)システムなどの光ファイバベースの通信システムにおいて実装される光受信デバイスに組み込むことができる。
【0130】
さらに、本発明は、通信デバイスに限定されず、オーディオクロスオーバー及びオーディオマスタリングのようなオーディオへの応用において使用される有限インパルス応答(FIR)の電子フィルタなどの信号処理デバイスに組み込むことができる。それに従って、いくつかの実施形態は、次数MのFIRフィルタの出力シーケンスを考慮して、入力シーケンスの推定を決定するために使用することができる。
【0131】
別の応用では、本発明のいくつかの実施形態による方法、デバイス及びコンピュータプログラム製品は、例えば、搬送波位相測定を使用して測位パラメータを推定するための、例えば、少なくとも1つのGPS受信機を含むGPSを含む、IRNSS、Beidou、GLONASS、Galileoなどの全地球航法衛星システム(GNSS)において実装することができる。
【0132】
さらに、本発明のいくつかの実施形態による方法、デバイス及びコンピュータプログラム製品は、データ又はメッセージの格納、処理又は通信の間にそれらを暗号化/暗号解読するための暗号化アルゴリズムにおいて使用されるプライベートシークレット値に対する推定を決定するために暗号化システムにおいて実装することができる。格子ベースの暗号化への応用では、データ/メッセージは、格子点の形式で暗号化される。そのような暗号化済みのデータの暗号解読は、有利には、本発明のいくつかの実施形態に従って実行することができ、それにより、複雑性を低減しながら、シークレット値の回復に成功する確率を高くすることができる。
【0133】
さらに、本明細書で説明される方法は、任意のタイプのコンピュータのプロセッサに供給されるコンピュータプログラム命令によって実施することができ、その結果、本明細書で指定される機能/行為を実施するために命令を実行するプロセッサを備える機械が生成される。また、これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体に格納することもでき、その結果、特定の方法で機能するようにコンピュータに指示することができる。その目的のため、コンピュータプログラム命令は、コンピュータにロードすることができ、その結果、一連の動作ステップが実行され、それにより、実行された命令が本明細書で指定される機能を実施するためのプロセスを提供するようなコンピュータ実装プロセスが生成される。
【0134】
本発明の実施形態は、様々な例の説明によって示してきたが、また、これらの実施形態は、かなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限すること又は何らかの方法で限定することは本出願人が意図するものではない。追加の利点及び変更は、当業者には容易に明らかであろう。従って、本発明は、そのより広範な態様において、示される及び説明される具体的な詳細、代表的な方法及び説明に役立つ例に限定されない。