(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】抗エラスチン抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240902BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240902BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240902BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240902BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240902BHJP
A61K 49/16 20060101ALI20240902BHJP
C12N 5/20 20060101ALI20240902BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240902BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C07K16/18
C07K16/46 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K45/00
A61K47/68
A61K49/16
C12N5/20
C12N5/10
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2021542139
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 US2019014537
(87)【国際公開番号】W WO2020153940
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513113703
【氏名又は名称】クレムソン・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ブヤバハレ,ナレンドラ・アール
(72)【発明者】
【氏名】ライス,チャールズ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ノソウディ,ナシム
(72)【発明者】
【氏名】カラムチェド,サケス
(72)【発明者】
【氏名】パラサラム,バイディーシュ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504040(JP,A)
【文献】特表2011-503564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 38/00-51/12
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2、又は配列番号3のエピトープを特異的に認識する抗体又はその抗原結合断片であって、該エピトープが、弾性繊維の非晶質の架橋されたエラスチン構成部分であり、かつ、該弾性繊維のミクロフィブリルスキャフォールディング構造の分解に起因して曝露され到達可能になるエピトープであり、該抗体又はその抗原結合断片が、重鎖可変領域であって、以下:配列番号9に記載される第1のCDR;該第1のCDRに続いて該重鎖可変領域上に位置する配列番号11に記載される第2のCDR;及び該第2のCDRに続いて該重鎖可変領域上に位置する配列番号13に記載される第3のCDRを含む重鎖可変領域を含み、該抗体又はその抗原結合断片が、さらに軽鎖可変領域であって、以下:配列番号27に記載される第4のCDR;該第4のCDRに続いて該軽鎖可変領域上に位置する配列番号29に記載される第5のCDR;及び該第5のCDRに続いて該軽鎖可変領域上に位置する配列番号31に記載される第6のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、前記抗体又その抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号7又は配列番号25を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号5又は配列番号23を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
非ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はナノボディである抗体である、請求項1~
4のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド連結Fv、又はscFvを含む抗原結合断片である、請求項1~
4のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
二次材料に、直接的に又は間接的に連結されている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項8】
二次材料が、抗凝固薬、抗血小板薬、抗炎症薬、SMC増殖阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、カテプシン阻害剤、細胞分裂阻害剤、抗酸化薬、コラーゲン安定化剤、エラスチン安定化剤及びエラスチン再生剤、サイトカイン、酵素、ケモカイン、放射性同位体、毒素、免疫調節剤、キレート剤、核酸構築物、化学療法剤、エラスチン架橋剤又はトロポエラスチン架橋剤等の生物活性剤を含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
二次材料が、光活性化剤、フルオロフォア、放射性同位体、生物発光タンパク質若しくはペプチド、蛍光タグ、蛍光タンパク質若しくはペプチド、親和性標識、酵素標識、MRI剤、金粒子、x線不透過性物質、又は同位体標識等の画像化剤を含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項10】
二次材料が、粒子の形態の担体、例えば、ポリマーを含む分解性粒子を任意選択で含むナノ粒子等の担体を含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項11】
担体が、粒子の形態におけるものである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
粒子が、ナノ粒子である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
粒子が、ポリマーを含む分解性粒子である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列を含むハイブリドーマ又は遺伝子修飾細胞。
【請求項15】
核酸配列が、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号26、配列番号28、及び配列番号30を含むか、又は核酸配列が、配列番号6及び/若しくは配列番号24を含む、請求項
14に記載のハイブリドーマ又は遺伝子修飾細胞。
【請求項16】
分解された弾性線維を、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含む方法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又はその抗原結合断片が、二次材料に作動可能に連結されている、前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
二次材料が、担体及び担体に取り込まれた生物活性剤を含み、生物活性剤が、抗体又はその抗原結合断片が分解された弾性線維に結合した後に、担体から放出される、請求項
16に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
二次材料が、画像化剤を含む、請求項
16に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]エラスチンは、ほとんどの結合組織において、また身体全体にわたって見られる弾性線維のタンパク質成分である。弾性線維は、様々なタンパク質、糖タンパク質及びエラスチン受容体複合体から形成されるミクロフィブリルのマントルによって包囲及び支持されている非晶質エラスチンの不溶性コアを含む。弾性線維の非晶質エラスチンコアは、可溶性トロポエラスチンモノマーを、ミクロフィブリルスキャフォールドへ堆積及び組込みさせて、続いて、不溶性線維状ポリマーを形成するようにモノマーを架橋すると形成される。
【0002】
[0002]弾性線維の分解は、動脈瘤(例えば、腹部大動脈瘤、脳動脈瘤)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患、高血圧、α-1アンチトリプシン欠乏症、マルファン症候群、アテローム動脈硬化症、動脈硬化症及びその他を含む多くの病態、並びに老化(即ち、経時的な肌の堅さ/滑らかさの損失)の一般的な特徴である。弾性線維分解は、多くの場合、エラスチン及び弾性線維のスキャフォールディング構成成分の一方又は両方を攻撃し得る、エラスターゼ酵素、カテプシン、及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)酵素を含む酵素によって引き起こされる。かかる酵素は、動脈における血管細胞、皮膚及び肺における真皮及び肺線維芽細胞を含む自然細胞によって、並びに様々な疾患状態における浸潤性炎症細胞によって分泌され得る。
【0003】
[0003]あいにく、上述の病態他における治療用及び診断用化合物の最も一般的な送達方法は、依然として全身送達である。全身的に導入された作用剤は通常、初回通過効果及び他のメカニズムを介して、身体によって濾過される。したがって、全身送達法は、多くの場合、大用量の化合物を必要とし、これは、コストの付加に加えて、患者に対して不要な及び/又は毒性のある副作用を引き起こし得る。例えば、作用剤の全身及び/又は全体的送達は、オフターゲットの作用、即ち、身体における非標的構造との相互作用を有する場合があり、それらが、正常な組織及び/又は臓器レベルの機能を変更させて、有害な副作用を招き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]標的化剤として使用することができ、また治療又は診断目的での作用剤の標的送達のために生物活性剤と併せて送達させることができる抗エラスチン抗体が、当該技術分野で必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]一実施形態によれば、エピトープエラスチンを特異的に認識しそれに結合し、特に、配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のうちの1つのエピトープに結合する抗エラスチン抗体又はその抗原結合部分が開示されている。例えば、開示されるような抗エラスチン抗体又は抗原結合断片は、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号27、配列番号29、若しくは配列番号31から選択される1つ又は複数のCDR断片を含み得る。
【0006】
[0006]また、記載されるような抗エラスチン抗体又はその抗原結合部分を含む組成物が開示されている。例えば、組成物は、作用剤、例えば、治療剤又は検出可能なマーカー等の診断剤等の生物活性剤に、直接的に又は間接的に結合された抗エラスチン抗体又はその抗原結合部分(例えば、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号27、配列番号29、又は配列番号31から選択される1つ又は複数のCDR断片を含む抗体全体又はその断片)を含み得る。組成物は、活性剤(例えば、治療薬)と結合された粒子及び粒子の外部表面に結合された抗エラスチン抗体又はその抗原結合断片を含み得、その結果、抗原と結合すると、抗体又はその断片が、粒子を弾性線維に固着させることができる。
【0007】
[0007]抗体の使用方法もまた、記載されている。例えば、使用方法は、分解された弾性線維を、作用剤、例えば治療剤及び/又は画像化剤に作動可能に連結されており、任意選択で、粒子又は他の送達メカニズムに連結されている、記載されるような抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップを含み得る。治療薬は、分解された弾性線維の通常領域における使用のための任意の治療薬であり得る。例えば、治療薬は、弾性線維を含有する結合組織を直接処置する際の使用のためのものであってもよく、或いは、治療薬は、別の使用、例えば、分解された弾性線維の存在に間接的に関係するか、又は更には分解された弾性組織の存在とは無関係であるが、分解された弾性線維の通常領域において標的構成成分(例えば、組織)を含む状態のためのものであってもよい。
【0008】
[0008]また、開示される抗体及び/又はその抗原結合部分の材料及び産生方法も開示されている。例えば、開示されるモノクローナル抗エラスチン抗体を産生するハイブリドーマ細胞を形成する方法及びこのようにして形成されるハイブリドーマ、並びに抗エラスチン抗体又はその抗原結合部分をコードする1つ又は複数の核酸配列、例えば、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号26、配列番号28、又は配列番号30から選択されるセグメントをコードする1つ又は複数のCDRを含む、遺伝子修飾細胞、ベクター等が開示されている。
【0009】
[0009]当業者に対する、最良な形態を含む完全で権限を付与する開示は、特に、添付の図面に対する言及を含む、明細書の残部においてより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]開示される抗体でタグ付けされたナノ粒子とのインキュベーション後の、それぞれの部分がエラスターゼで処置されたラット大動脈を示す。
【
図2】[0011]開示される抗体でタグ付けされたナノ粒子とのインキュベーション後の、それぞれの部分がエラスターゼで処置されたマウス大動脈を示す。
【
図3】[0012]検出可能なマーカー及び開示される抗体でタグ付けされたナノ粒子によるin vivo標的化後の、損傷したラット大動脈を示す。
【
図4】[0013]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用した免疫組織化学染色を示す。
【
図5】[0014]対照として二次抗体のみを使用した免疫組織化学(IHC)染色を示す。
【
図6】[0015]本明細書に開示されるような抗体でタグ付けされたヒト組織のVerhoeff van Gieson染色の結果を示す。
【
図7】[0016]損傷した弾性線維を示すヒト組織のVerhoeff van Gieson染色の結果を示す。
【
図8】[0017]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したラット肺におけるエラスターゼ肺気腫モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図9】[0018]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したマウス肺におけるエラスターゼ肺気腫モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図10】[0019]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図11】[0020]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したエラスターゼ処理マウス皮膚のIHC染色を示す。
【
図12】[0021]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したラット肺におけるエラスターゼ動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図13】[0022]対照として二次抗体を使用したラット肺におけるエラスターゼ動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図14】[0023]対照として二次抗体を使用したラット肺におけるエラスターゼ動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図15】[0024]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図16】[0025]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図17】[0026]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図18】[0027]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図19】[0028]対照として二次抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図20】[0029]対照として二次抗体を使用したマウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル由来の組織のIHC染色を示す。
【
図21】[0030]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したエラスターゼ処置マウス皮膚のIHC染色を示す。
【
図22】[0031]プロトコールの一次抗体として、本明細書に開示されるような抗体を使用したエラスターゼ処置マウス皮膚のIHC染色を示す。
【
図23】[0032]対照として二次抗体を使用したエラスターゼ処置マウス皮膚のIHC染色を示す。
【
図24】[0033]対照として二次抗体を使用したエラスターゼ処置マウス皮膚のIHC染色を示す。
【
図25】[0034]開示される抗体と、可溶性トロポエラスチンとの間の結合の検出をもたらす銀染色及びウェスタンブロットを示す。
【
図26】[0035]開示される抗体を用いた場合のヒト大動脈のH&E染色のIHCを示す。
【
図27】[0036]軽度の動脈瘤分解を伴うヒト大動脈のVerhoeff van Gieson(VVG)染色を示す。
【
図28】[0037]記載されるような抗体の、
図27の損傷した組織への結合を示す。
【
図29】[0038]対照抗体を使用した場合の、ヒト大動脈組織への結合の欠如を示す。
【
図30】[0039]開示される抗体を用いた場合のヒト大動脈のH&E染色のIHCを示す。
【
図31】[0040]軽度の動脈瘤分解を伴うヒト大動脈のVerhoeff van Gieson(VVG)染色を示す。
【
図32】[0041]記載されるような抗体の、
図27の損傷した組織への結合を示す。
【
図33】[0042]対照抗体を使用した場合の、ヒト大動脈組織への結合の欠如を示す。
【
図34】[0043]ex vivo標的化プロトコールにおける、開示される抗体の、アテローム性プラーク(CEA)への結合を示す。
【
図35】[0044]ヒト大動脈のアテローム性プラークにおける、開示される抗体の、エラスチンへの結合を示す、色素負荷粒子の直接的検査、H&E染色、及びVVG染色を含むIHCを示す。
【
図36】[0045]ヒト大動脈のアテローム性プラークにおける、開示される抗体の、エラスチンへの結合を示す、色素負荷粒子の直接的検査、H&E染色、及びVVG染色を含むIHCを示す。
【
図37】[0046]本明細書に記載されるようなモノクローナル抗体を示す。
【
図38】[0047]動脈瘤性大動脈の形態を可視化して(右)、大動脈内の抗体でタグ付けされた金ナノ粒子の分布を示す(左)CTスキャンに基づいて形成される三次元モデルの画像を提示する。
【
図39】[0048]本明細書に記載されるような抗体を用いて金ナノ粒子でタグ付けされた動脈瘤性大動脈の2つの暗視野顕微鏡法画像を提供する。
【
図40】[0049]本明細書に記載されるような抗体を用いて金ナノ粒子でタグ付けされた動脈瘤性大動脈の組織学的分析を示す。
【
図41】[0050]本明細書に記載されるような抗体を用いて金ナノ粒子でタグ付けされた腎上部大動脈組織のハイパースペクトルマッピングを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0051]目下開示される主題の様々な実施形態について、ここで詳細に言及され、その1つの又は複数の実施例が、以下で記載される。実施形態はそれぞれ、主題の説明の目的で提供されるものであり、主題の限定の目的で提供されるものではない。実際に、本開示の範囲又は主旨を逸脱せずに、様々な修正及び変更が、本開示に対して成され得ることは、当業者に明らかである。例えば、或る実施形態の一部として説明又は記載される特徴は、別の実施形態で使用されて、更なる実施形態をもたらし得る。したがって、本開示は、併記の特許請求の範囲及びそれらの等価体の範囲内にあるような修正及び変更を網羅すると意図される。
【0012】
[0052]本開示は概して、エラスチンのエピトープを特異的に結合することができる抗エラスチン抗体及びその抗原結合断片に関する。より具体的には、非晶質の架橋されたエラスチンのラット、マウス、ブタ、ウマ、イヌ、及びヒト並びに他の形態に特異的な単離抗体又は抗原結合断片が開示される。特に、開示される抗体及び抗原結合断片は、GALGPGGKPPKPGAGLL(配列番号1)、LGYPIKAPKLPGGYGLPYTTGKLPYGYPGGVAGAAGKAGYPTTGTGV(配列番号2)、若しくはPGGYGLPYTTGKLPYGYP(配列番号3)の1つ又は複数のエピトープ配列を特異的に認識しそれに結合する。また、生物活性剤の、エラスチンを含む領域への送達用の標的化剤として、抗エラスチン抗体及び抗原結合断片を取り込むことができる送達剤が開示される。
【0013】
[0053]配列番号1~配列番号3によって例示されるエピトープ配列は、弾性線維の分解時に、特に、弾性線維のミクロフィブリルスキャフォールディング構造の分解時に、曝露され到達可能になり得る弾性線維の非晶質の架橋エラスチン構成成分のポリペプチド構成成分である。したがって、一実施形態では、開示される標的化剤を利用して、損傷した弾性線維に結合することができ、血中に循環し得るような、健常な弾性線維若しくは可溶性エラスチン前駆物質若しくは分解構成成分への結合をほとんど示し得ないか、又は全く示し得ない。例えば、配列番号1~配列番号3の1つ又は複数を特異的に認識しそれに結合する抗体又はその抗原結合断片(複数可)を含む標的化剤は、アルファ-エラスチン分解産物への結合をほとんど示し得ないか、又は全く示し得ない。一実施形態では、標的化剤は、もはや可溶性ではないが、弾性線維として完全に架橋及び形成されていない未熟エラスチン、例えば、アテローム性線維皮膜における未熟エラスチンに結合することができる。
【0014】
[0054]開示される抗体/断片は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(即ち、本明細書に記載されるポリペプチドの1つ又は複数を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子)を包含する。完全抗体は概して、2つの免疫グロブリン重鎖及び2つの免疫グロブリン軽鎖から構成され得る。1つの特定の実施形態では、本明細書で開示されるような抗体は、重鎖として配列番号5を、軽鎖として配列番号23を含み得る。しかしながら、本発明が、代替的定常領域と併せて、開示される抗体の可変部分(配列番号7(VH)及び配列番号25(VL))を含む完全抗体並びにそれらの単離抗原結合部分(任意選択でそれらの各々のFR領域配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39と併せた、1つ又は複数のCDR領域配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号27、配列番号29、及び配列番号31)を包含することは、理解されるべきである。開示される抗体に基づく、本明細書で開示される標的化剤として、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、CDRでグラフトされた抗体、非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、ヤギ又は任意の他の動物由来)、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインのいずれかに基づく単一ドメイン抗体(ナノボディ)、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二特異性抗体、それらの機能的に活性なエピトープ結合断片、二官能性ハイブリッド抗体、抗体の単鎖等が挙げられ得るが、限定されない。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD)であり得る。概して、抗体は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3アイソタイプである。1つの特定の実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプであり得る。更に、抗体は概して、カッパ軽鎖を含み得る。
【0015】
[0055]本明細書で開示されるような抗原結合化合物は、完全抗体に限定されない。一実施形態では、開示される化合物及び方法は、完全抗体の1つ又は複数の抗原結合断片を利用することができる。例えば、方法及び材料は、エラスチンのエピトープを標的化しそれに結合することができる完全抗体の1つ又は複数のCDR領域を取り込むことができる。例として、標的化剤は、任意選択で、本明細書に記載されるような軽鎖の可変領域(配列番号25)のCDR断片について記載している配列番号27、配列番号29、若しくは配列番号31の1つ又は複数と併せて、本明細書に記載されるような重鎖の可変領域(配列番号7)のCDR断片について記載している配列番号9、配列番号11若しくは配列番号13の1つ又は複数を含み得る。CDR断片は、一実施形態では、完全可変領域において見出されるように、一方又は両方のFR断片によって境界されて提供され得るか、或いは、天然FR断片とは無関係に、単離フォーマットで利用され得る。例として、一実施形態では、本明細書に記載されるような標的化剤は、CDR断片のいずれかの末端上に天然で見られるFR断片(配列番号15及び配列番号17)と併せて、本明細書に記載されるモノクローナル抗体のCDR断片(配列番号9)を含む配列番号15、配列番号9、及び配列番号17を順番に含むペプチド配列を取り込むことができる。CDR断片と併せて利用され得るFR断片は、分解されたエラスチンのエピトープを選択的に認識する標的化剤の形成の際に、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号33、配列番号35、配列番号37、及び配列番号39の1つ又は複数を含み得る。
【0016】
[0056]本明細書で利用される場合、「選択的に認識する」及び「選択的に結合する」という用語は、分子の、エピトープへの結合が、例えばELISA、免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、低温置換アッセイ等の当該技術分野で公知の技法によって決定される場合に、分子の、無関係のエピトープへの結合又は無関係の分子の、エピトープへの結合よりも、2倍を超えるか、又はそれ以上、例えば、約2倍~約5倍を超えることを意味する。通常、特異的結合は、解離定数(KD)が、幾つかの実施形態で、約1×10-5M又はそれ未満、又は約1×10-6M又はそれ未満、例えば、約1×10-7Mである場合、非特異的結合と区別され得る。
【0017】
[0057]開示される抗体の機能性抗原結合断片として、配列番号1~配列番号3の1つ又は複数を特異的に認識しそれに結合することが可能なFab、scFv-Fc二価分子、F(ab’)2、及びFv、例えば、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号25、配列番号27、配列番号29、若しくは配列番号31の1つ又は複数が挙げられ得る。
【0018】
[0058]本明細書に記載されるような抗原結合ペプチドは、当業者によって理解されるように、修飾を取り込むことができる。例えば、ほとんどの生存生物においてL-異性体として存在する多くの天然アミノ酸が存在するが、本開示の実施形態は、L-アミノ酸のみに限定されず、ヒト若しくは任意の他の微生物によって天然ではコードされないD-アミノ酸又は他の非タンパク質原性のアミノ酸を置き換える修飾を含み得る。ここで、D-アミノ酸((d)が続くアミノ酸識別子)を特記しない限りは、一般的なアミノ酸に関する言及は、L-アミノ酸を示す。
【0019】
[0059]本開示の実施形態では、標的化剤は、開示されるペプチドに対する、例えば、標的化剤において利用され得るような開示されるCDR断片に対するオルニチン置換を含み得る。幾つかの実施形態では、標的化剤は、下記の群:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンから選択されるヒトタンパク質原性アミノ酸の1つ又は複数のアミノ酸置換を含み得る。
【0020】
[0060]一実施形態では、標的化剤は、本明細書で開示されるペプチドに構造上及び/又は機能的に類似したペプチドを含み得る。構造上類似したペプチドは、第1のアミノ酸側鎖を有する1つのアミノ酸の、第2のアミノ酸側鎖を有する第2のアミノ酸による置換等の変形を包含し得る。第1のアミノ酸側鎖及び第2のアミノ酸側鎖はともに、標的化剤の機能的類似性を維持するための類似した特徴、即ち、エラスチンエピトープ結合を提供する。類似した特徴は、第1のアミノ酸側鎖と類似した極性、電荷、又はサイズを有する側鎖を含み得る。例として、ロイシンは、疎水性側鎖を含み、幾つかの実施形態では、標的化剤は、開示される配列(例えば、CDR配列)のロイシンの、イソロイシン、バリン、又はアラニンによる置換を含んでもよく、というのは、これらのアミノ酸はそれぞれ、類似した疎水性側鎖を含むためである。別の例として、ヒスチジンは、正の電荷も保有し得る芳香族側鎖を含み、幾つかの実施形態では、エラスチン結合抗体又はその断片の1つ又は複数のヒスチジンは、芳香族側鎖を含むアミノ酸で、又はフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アルギニン若しくはリジン等の正の電荷を保有し得るアミノ酸で置換され得る。これらは、考え得る置換の例として提供され、類似した側鎖特性を有するアミノ酸を置換することによって、意図される変形の範囲を限定するとは意図されない。
【0021】
[0061]幾つかの実施形態では、抗原結合断片は、Fabを含み、ここで、断片は、抗体分子の一価抗原結合断片を含有し、それは、抗体全体の、酵素パパインによる消化によって産生されて、無傷の軽鎖(例えば、配列番号23)又はその可変領域(例えば、配列番号25)及び1つの重鎖の一部(例えば、配列番号9、配列番号11、配列番号13の1つ又は複数、任意選択で、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21の1つ又は複数と併せて)を生じ得る。
【0022】
[0062]一実施形態では、抗原結合断片は、Fab’を含むことができ、これは、抗体全体をペプシンで処置した後、還元によって得られ得る抗体分子の断片であり、無傷の軽鎖(例えば、配列番号23)又はその可変領域(例えば、配列番号25)及び重鎖の一部(例えば、配列番号25)及び重鎖の一部(例えば、配列番号9、配列番号11、配列番号13の1つ又は複数、任意選択で、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21の1つ又は複数と併せて)を生じ得る;抗体分子1つ当たり、2つのFab’断片が得られ得る。抗体の(Fab’)2断片が包含され、これは、続く還元を伴わずに、抗体全体を酵素ペプシンで処置することによって得られ得る。F(ab’)2断片は、2つのジスルフィド結合によって結び付いている2つのFab’断片の二量体である。また、Fvも包含され、これは、2つの鎖として発現される、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作断片である。一実施形態では、抗体は、単鎖抗体(「SCA」)を包含することができ、これは、遺伝的に融合された単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結されている、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する、遺伝子操作分子である。抗体断片は、scFv-Fcであってもよく、これは、一実施形態では、単鎖Fv(scFv)を、IgG等の免疫グロブリン(Ig)由来のヒンジ領域、及びFc領域と融合させることによって産生される。
【0023】
[0063]抗体又はその抗原結合断片は、標的エピトープとの特異的認識及び結合を妨害しない、当該技術分野で公知であるような修飾を含み得る。例えば、修飾は、抗体又は断片の表示形態から分泌形態へのシフト中のコンフォメーション変化を最低限に抑えることができる。当業者に理解されるように、修飾は、修飾の存在がなければ、他の場合では存在しない機能特性を付与するための当該技術分野で公知の修飾であり得る。本発明は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、粒子、別の分子又は他の細胞リガンドへの結合等によって、翻訳中又は後に差次的に修飾される材料を包含する。多数の化学修飾のいずれも、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、ツニカマイシンの存在下での代謝合成を含むが、これらに限定されない公知の技法によって実行され得る。
【0024】
[0064]修飾は、N末端修飾及び/又はC末端修飾を含み得る。例えば、修飾は、N末端ビオチン化及び/又はC末端ビオチン化を含み得る。一実施形態では、抗体又は抗原結合断片の分泌可能形態は、免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域への結合を可能にするN末端修飾を含む。別の実施形態では、Igヒンジ領域は、IgAヒンジ領域に由来するが、これに限定されない。別の実施形態では、抗体又は抗原結合断片の分泌可能形態は、酵素的にビオチン化可能な部位への結合を可能にするN末端修飾及び/又はC末端修飾を含む。別の実施形態では、上記部位のビオチン化は、ストレプトアビジン、アビジン、アビジン由来部分、又は二次試薬でコーティングされた任意の表面に結合するように、部位を官能基化することができる。
【0025】
[0065]修飾として、例えば、N連結又はO連結炭水化物鎖の付加、化学部分の、アミノ酸骨格への結合、N連結又はO連結炭水化物鎖の化学的修飾、及びN末端メチオニン残基の付加又は欠失が挙げられ得る。
【0026】
[0066]抗体又は抗原結合断片は、当該技術分野で周知されているような任意の合成プロセス又は組換えプロセスによって産生され得る。抗体又は抗原結合断片は、当該技術分野で公知の技法を用いて、生物物理学的又は物理学的特性を変更させるように、更に修飾され得る。例えば、抗体は、プロテアーゼに対するその安定性を増加させるように、或いはその親油性、溶解度、又は配列番号1~3の1つ若しくは複数への結合親和性を修飾するように修飾され得る。
【0027】
[0067]例として、抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、霊長類、ニワトリ及びヒトを含む様々な動物の、少なくとも1つの抗エラスチンエピトープを含む、記載されるようなペプチド配列全体、又は記載されるような配列の1つ又は複数を含有するエラスチンのペプチド断片等の標的抗原による免疫化によって産生され得る。一実施形態では、抗原又は抗原を含有するペプチド断片は、動物の免疫化前に精製され得る。免疫化後に得られる抗体又は抗原結合断片は、当該技術分野で公知の方法、例えば、ゲル濾過、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィー等によって精製され得る。アフィニティークロマトグラフィー又は当該技術分野で公知の多数の他の技法を使用して、血清、腹水、又はハイブリドーマ上清から、ポリクローナル又はモノクローナル抗体を単離することができる。
【0028】
[0068]「精製」は、抗体が、通常抗体と関連付けられるタンパク質の少なくとも幾つかから分離されること、好ましくは、タンパク質以外の全ての細胞材料から分離されることを意味する。
【0029】
[0069]抗体又はその抗原結合断片は、遺伝子組換え技法を使用することによって産生され得る。例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fv、SCA、scFv-Fc等の抗体の機能性断片等の形成において、遺伝子組換え技法。
【0030】
[0070]一実施形態では、例えばキメラ抗体の形成において、例えば、1つ又は複数のCDR領域(配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号27、配列番号29、配列番号31)を含む、重鎖の可変領域(配列番号7)及び軽鎖の可変領域(配列番号25)の全て又は一部を取り込む標的化剤を産生する方法は、遺伝子組換え技法の利用により実行され得る。
【0031】
[0071]例として、配列番号7によって表されるアミノ酸配列をコードするDNA(VH領域)が調製される。同様に、配列番号25によって表されるアミノ酸配列をコードするDNA(VL)が調製される。かかるDNAの例として、配列番号6及び配列番号24によって表されるものが挙げられるが、他のヌクレオチド配列を有するものが使用されてもよい。
【0032】
[0072]依然として所望の活性を保持する、開示される配列の一部又は突然変異体もまた、本開示の範囲内とみなされる。例えば、突然変異体は、1つ又は複数のアミノ酸置換(例えば、バリン用のコドンを、アラニン用のコドンに突然変異させること)をコードする配列番号6又は配列番号24に対する変更を含み得る。更に、又は或いは、DNA配列の突然変異体は、縮重コドンを自然コドンに代わって置換するために、自然cDNA配列に対する1つ又は複数の点突然変異を含み得る。
【0033】
[0073]開示されるような核酸配列(例えば、抗体のCDR領域をコードする配列番号6若しくは配列番号24又はその一部)の突然変異体を含む本開示の実施形態に関して、突然変異体は、抗体変異体を産生するように、或る疎水性アミノ酸(例えば、バリン)を別の疎水性アミノ酸(例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、又はトリプトファン)に代わって置換するために、発現されるタンパク質を修飾する1つ又は複数のコドン突然変異を含み得る。
【0034】
[0074]コドン冗長性に起因して、本明細書に記載されるような抗体又は抗原結合断片をコードし得る、多くの理論上考え得るcDNA配列変異体が存在する。更に、結合活性を保持しながら、自然タンパク質配列を修飾する変異体は更に、この数を増やす。これらの実施形態に関して、遺伝子修飾は、ペプチド(例えば、配列番号7)又は自然ペプチドの結合機能を保持するペプチド変異体の発現をもたらし得る。
【0035】
[0075]VH(例えば、配列番号7)又はVL(配列番号25)をコードするDNAは、一実施形態では、キメラ抗体発現ベクターを構築するように、ヒト抗体の各々の定常領域(CH又はCL)をコードする配列を有するベクターに挿入することができる。利用され得るようなヒト抗体のCH又はCLをコードする配列を有するベクターは、市販されている。構築された発現ベクターを宿主細胞に導入することによって、キメラ抗体を発現する組換え細胞を得ることができる。続いて、組換え細胞を培養することができ、所望のキメラ抗体が、培養液から獲得され得る。
【0036】
[0076]宿主細胞は、発現ベクターが、そこで機能を果たすことが可能である限り、特に限定されない。例として、動物細胞(例えば、COS細胞、CHO細胞、HEK細胞等)、酵母、細菌(大腸菌(Escherichia coli)等)、植物細胞、昆虫細胞等は、適切に用いられ得る。
【0037】
[0077]一実施形態では、組換え技法を利用して、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号27、配列番号29、若しくは配列番号31の1つ又は複数を含む特異的なCDRを含む抗体を産生することができる。例えば、方法は、ヒト化抗体を形成する際に利用することができ、ヒト化抗体は、本発明で利用される場合、ヒト以外の動物に由来するCDR、及びヒトに由来する他の領域(フレームワーク領域、定常領域等)を有する抗体を指す。
【0038】
[0078]例えば、抗体の重鎖CDR(配列番号9、配列番号11、配列番号13)及び軽鎖CDR(配列番号27、配列番号29、配列番号31)をコードするヌクレオチド配列が調製され得る。DNAとして、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号26、配列番号28、配列番号30によって表される各CDRヌクレオチド配列に相当する配列が例示されるが、上記で論述されるように、他のヌクレオチド配列を有するものが使用されてもよい。DNAは、PCR等の公知の方法によって調製され得る。DNAは、化学合成によって調製され得る。
【0039】
[0079]これらの配列を使用して、重鎖CDRコード領域(例えば、配列番号8、配列番号10、配列番号12)が、ヒト抗体におけるVHのフレームワーク領域(FR)をコードする各々の領域にグラフトされている可変領域をコードする配列が調製され得る。同様に、軽鎖CDRコード領域(例えば、配列番号26、配列番号28、配列番号30)が、ヒト抗体におけるVLのFRをコードする各々の領域にグラフトされている可変領域をコードする配列が調製され得る。続いて、ヒト化抗体発現ベクターを構築するように、調製された核酸配列は、ヒト抗体の所望の定常領域(CH又はCL)をコードする配列を有するベクターに挿入され得る。構築された発現ベクターを、宿主細胞に導入することによって、ヒト化抗体を発現する組換え細胞が得られ得る。次に、組換え細胞を培養することができ、所望のヒト化抗体が、培養液から獲得され得る。
【0040】
[0080]完全抗体のCDRの全てよりも少ないCDRを含む標的化剤は、類似の手順で産生され得る。例えば、定常領域のない抗体のVH領域のみ又はVL領域のみを含む標的化剤は、類似の様式で産生され得る。
【0041】
[0081]本明細書に記載されるような方法に従って形成される標的化剤を精製する方法は、特に限定されず、公知の技法が用いられ得る。例えば、ハイブリドーマ又は組換え細胞の培養上清が収集されてもよく、抗体又は抗原結合断片は、各種クロマトグラフィー、塩析、透析、膜分離等の公知の技法の組合せによって精製され得る。抗体のアイソタイプがIgGである場合、抗体は、プロテインAを使用したアフィニティークロマトグラフィーによって利便性よく精製され得る。
【0042】
[0082]開示される材料の利用において、抗体又は抗原結合断片は、作用剤を、分解された弾性線維へ、又は分解された弾性線維付近の領域へ、標的化及び送達するために、二次材料に作動可能に連結され得る。本明細書で利用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、2つ又はそれよりも多い分子、配列、粒子又はそれらの組合せが、構成成分の適正な機能を保証するような様式で、特に、抗体又はその抗原結合断片がそのエピトープに結合し得るような様式で結合される永続的又は一時的(分解性)結合のいずれかであり得る直接的又は間接的結合を指す。したがって、抗体又はその抗原結合断片は、任意の種類の有用な作用剤を、動脈、肺、皮膚等の結合組織における領域又はその付近の領域に送達することができる。更に、幾つかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、1つ又は複数の活性剤を運搬及び送達することができる担体(例えば、本明細書で更に記載されるような粒子)に直接連結させることができる。したがって、組成物を利用して、担体からの作用剤の制御放出を介して、長期間にわたって、活性剤を送達することができる。
【0043】
[0083]抗体又はその抗原結合断片は、アテローム脈硬化症及び動脈硬化症等の循環器疾患、並びに慢性気管支炎、COPD及び肺気腫等の肺疾患を含む、エラスチンタンパク質分解が特徴である疾患の治療又は診断における、生物活性剤の送達に利用することができる。弾性線維分解を含む可能性があり、また抗体又はその抗原結合断片が作用剤送達に利用され得る他の状態として、動脈瘤、動脈硬化症、アテローム動脈硬化症、遺伝性障害、鈍器外傷、マルファン症候群、弾性線維性仮性黄色腫、皮膚の老化等と関連付けられるものが挙げられ得る。一実施形態では、材料は、老化で、並びに多数の遺伝性障害及び代謝障害でよく見られる血管石灰化の治療に利用することができる。血管石灰化は目下、糖尿病及び慢性腎疾患(CKD)等の他の障害を患う患者における、並びに一般集団における心血管イベントの強力な予測因子と認識されている。材料は、アテローム動脈硬化症とは無関係に存在し得る、通常、弾性線維分解と関連付けられる内側血管石灰化(MAC)の治療に利用することができる。エラスチン特異的な内側石灰化は、収縮期血圧(SBP)及び脈圧(PP)の上昇を招き、孤立性収縮期高血圧(ISH)に寄与する。一実施形態では、開示される材料は、内膜及び内側石灰化において同時に、未熟な、及び/又は損傷したエラスチン線維を標的化するのに利用することができる。例えば、アテローム動脈硬化性石灰化及び内側石灰化の両方が対象に存在する場合、開示される材料は、同時に石灰化によって、標的化し得る。
【0044】
[0084]一実施形態では、開示される材料及び方法は、脆弱性のアテローム性プラークを安定化するのに有益性を示し得る。アテローム性プラークは、プラーク上に産生される線維皮膜を含むことが見出されている。近年、これらの線維皮膜が、未熟(即ち、完全に架橋及び形成されていない)を含み得ることが発見されている。現在、研究により、患者によっては、厚い線維皮膜を有する安定なプラークを有するものもいれば、患者によっては、脆弱性の薄い皮膜を有するものもいることが示されている。比較的薄い皮膜の存在に起因するプラークの破裂は、死を招き得る。開示される抗体は、これらのアテローム動脈硬化性線維皮膜において未熟なエラスチンに結合して、それにより、例えば、担体ナノ粒子と併せて、生理活性剤を、局所的な領域に送達するのに役立ち得る。例えば、線維皮膜のコラーゲン/エラスチンを安定化させることができるか、又は他の場合では、皮膜の強度を増加させて、破裂を防止することができる作用剤は、標的化抗体を用いて送達され得る。
【0045】
[0085]材料は、日光曝露又は他の疾患状態に起因するものを含む、弾性線維の損失/分解に起因して年齢とともに起こる場合が多い、瘢痕、肌のたるみ及びしわを含む状態のためなどのスキンケアにおいて用途を有し得る。送達剤の利用から恩恵を受け得るような患者にはまた、皮膚血管炎等の皮膚動脈状態を患う患者が含まれ得る。皮膚血管炎は、皮膚における細動脈における弾性板損傷を引き起こす可能性があり、処置組成物の送達のための材料の使用は、かかる損傷を軽減し得る。
【0046】
[0086]抗体又はその抗原結合断片の使用によって送達され得る作用剤として、抗凝固薬、抗血小板薬、抗炎症薬、SMC増殖阻害剤、NMP及びカテプシン阻害剤、細胞分裂阻害剤、抗酸化薬、キレート剤、エラスチン安定化剤及び再生剤、サイトカイン、酵素、ケモカイン、放射性同位体、酵素的に活性な毒素、又は化学療法剤等であるが、これらに限定されない生物活性剤が挙げられ得る。
【0047】
[0087]一実施形態では、材料は、DNA及び/又はRNA核酸構築物を含み得る遺伝子材料の送達において利用され得る。記載される標的化材料を用いて送達され得る遺伝子材料として、マイクロRNA、トランスファーRNA、リボソームRNA、サイレンシングRNA、レギュレーティングRNA、アンチセンスRNA、RNA干渉、非コード及びコードRNA、DNA断片、制御配列と併せて遺伝子を含むプラスミド、機能性構築物の前駆物質(例えば、mRNA前駆物質)、DNA/RNAプローブ等が挙げられるが、限定されない。
【0048】
[0088]シスタチンは、材料を用いて送達され得るようなカテプシン阻害剤の例示的な例の1つである。MMP阻害剤の例として、MMP-2、MMP-9、及びMMP-12の阻害剤が挙げられ、それらは全て、エラスチン分解に関与している。かかるMMP阻害剤として、メタロプロテイナーゼ(TIMP)、即ち、TIMP1、TIMP2、TIMP3、若しくはTIMP4の4つの組織阻害剤の1つ又は複数が挙げられ得るが、限定されない。合成MMP阻害剤として、MMP活性部位で、触媒性亜鉛原子に結合するキレート基を含有するものが挙げられる。したがって、MMP阻害及び/又は他の理由に有用であり得るようなキレート剤は、本発明に包含される。典型的なキレート基として、ヒドロキサメート、カルボキシレート、チオール、及びホスフィニルが挙げられる。ドキシサイクリン、ミノサイクリン等のテトラサイクリン抗生物質は、開示される抗体又はその抗原結合断片を用いて送達され得る。
【0049】
[0089]抗体又はその抗原結合断片は、1つ若しくは複数のサイトカインの産生を増加又は減少させ得るか、自己抗原提示をアップレギュレート又はダウンレギュレートし得るか、MHC抗原をマスキングし得るか、或いは免疫細胞の1つ若しくは複数のタイプの増殖、分化、遊走又は活性化状態を促進し得る、1つ又は複数の免疫調節剤の送達において利用され得る。免疫調節剤として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);局所用ステロイド;サイトカイン、ケモカイン、又は受容体アンタゴニスト;異種抗リンパ球グロブリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
[0090]一実施形態では、標的送達用の生物活性化合物は、分解されたエラスチンを直接的に処置するのに利用され得るような化合物を含み得る。かかる化合物として、結合組織に更なる構造的支持を提供するように、エラスチンの架橋を促進し得るもの、及び特にトロポエラスチンの形成及び/又は架橋の増加により、エラスチン形成をアップレギュレートし得る化合物が挙げられる。例えば、ペンタガロイルグルコース(PGG)等のエラスチン架橋剤は、抗体又はその抗原結合断片を用いて送達され得る。新たな弾性線維の形成を促進するように、トロポエラスチンの形成及び/又は架橋を促進し得る生物活性化合物として、リジルオキシダーゼ酵素及び/又は銅イオン等のリジルオキシダーゼ活性を高める作用剤、又はサイクリックAMP(cAMP)誘導因子であるフォルスコリンが挙げられる。トロポエラスチンの架橋を促進するのに利用され得る別の化合物は、リジルオキシダーゼ活性を高めることがわかっているTGF-βである。銅イオン(Cu2+)は、酸素からの電子移動により、エラスチンにおけるリジン残基での酸化的脱アミノ化及びアルデヒド形成を促進することが可能となることによって、内因性リジルオキシダーゼの細胞外輸送並びに内因性及び外因性リジルオキシダーゼの機能活性を高め得る。したがって、抗体又はその抗原結合断片は、分解された弾性線維への送達用の銅イオンと、直接的に又は間接的に連結させることができる。
【0051】
[0091]一実施形態では、当該技術分野で公知であるような、万能キレート剤であることがわかっている、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);カルシウム特異的なキレーターであるエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA);エチレングリコール四酢酸;ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸;8-ヒドロキシ-7-ヨード-5-キノリンスルホン酸;ポリ(ガンマ-グルタミン酸);チオ硫酸ナトリウム;アルファ-リポ酸;ビスホスホネート;ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);及び/又は他のキレーター等の、無機質を溶解し得る作用剤が送達され得る。
【0052】
[0092]抗体又はその抗原結合断片は、画像化剤に、直接的に又は間接的に連結させることができる。抗体を介して、分解された弾性線維に結合すると、画像化剤は、弾性線維分解の位置及び程度の決定、並びに関連する疾患状態、若しくは無関係の疾患状態の診断において使用され得る。画像化剤として、当該技術分野で公知であるような、CT若しくはMRIスキャン、又はSPECT画像化用の画像化剤が挙げられ得る。材料に、直接的に又は間接的に連結され得るような検出可能マーカーとして、光活性化剤、フルオロフォア、放射性同位体、生物発光タンパク質若しくはペプチド、蛍光タグ(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、シアニン色素等)、蛍光タンパク若しくはペプチド、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジン、プロテインA等)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、又は同位体標識(例えば、125I)、金粒子、竿状物質(rods)、x線不透過性物質、及び微小気泡(例えば、超音波画像化用)、又は抗体の検出、及び任意選択で、領域の画像化を可能にする任意の他のかかる検出可能部分が挙げられ得る。
【0053】
[0093]上述されるように、抗体又は抗原結合断片は、分解された弾性線維の領域へ、送達用の作用剤を運搬し得るバルク材料(一般的に、粒子の形態であるが、必ずしもそうではない)に直接的に連結され得る。概して、有用なサイズ及び形状に形成されることが可能な任意のバルク生体適合性合成又は天然材料は、担体を形成する際に利用され得る。一実施形態では、高分子粒子が利用され得る。例えば、ポリスチレン、ポリ(乳酸)、ポリケタール、ブタジエンスチレン、スチレン-アクリル-ビニルタ-ポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(シアノアクリル酸アルキル)、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ジビニルベンゼン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、アクリロニトリル、塩化ビニル-アクリレート、ポリ(エチレングリコール)等、又はそれらのアルデヒド、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル若しくはヒドラジド誘導体を含むが限定されない天然又は合成ポリマーから形成される粒子が利用され得る。タンパク質等の生物学的ポリマーで形成される粒子が使用され得る。例えば、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン)、デキストラン、ゼラチン、キトサン、デンドリマー、リポソーム等で形成される分子が利用され得る。かかる粒子は、それらが、公知の方法に従って、有機溶媒を用いずに形成され得るため、或る特定の実施形態では好ましい場合がある。担体粒子を形成する際に利用され得るような他の生体適合性材料として、シリカ、チタニア、ジルコニア等の酸化物、及び金、銀、白金、パラジウム等の貴金属が挙げられ得るが、限定されない。概して、材料は、生体適合性であり、また非免疫原性である。適切な生分解性材料として、多糖及び/又はポリ(乳酸)のホモポリマー及び共重合体が挙げられ得るが、限定されない。例えば、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)共重合体、ポリ(エチレングリコール)(PEG)/ポリ(乳酸)(PLA)ブロック共重合体、及びそれらの誘導体で形成される粒子が利用され得る。
【0054】
[0094]バルク担体材料の選択を利用して、負荷された粒子からの生物活性剤の放出速度の制御を提供することができる。例えば、生分解性材料の選択を利用して、作用剤放出の速度を制御して、大部分は粒子分解速度によって、またより程度は低いが、バルク粒子を通じた、及びバルク粒子からの活性剤の拡散によって制御され得る放出メカニズムを提供することができる。活性剤放出速度が、拡散(例えば、非分解性粒子)又はナノ粒子分解速度(例えば、小さなマトリックスメッシュサイズに起因した粒子を通じた活性剤の拡散は本質的にない)の1つによって、或いは所望の放出速度に操作され得るそれらの幾つかの組合せに限定されるように、材料を利用することができる。
【0055】
[0095]粒子は、微粒子又はナノ粒子であり得る。本明細書で利用される場合、ナノ粒子という用語は概して、サイズ、即ち、平均直径が、約1000ナノメートル(nm)又はそれ未満、一般的に約500nm又はそれ未満、例えば約200nm又はそれ未満、或いは約100nm又はそれ未満であり得る粒子を指す。1つの特定の実施形態では、ナノ粒子は、サイズが約50nm又はそれ未満、例えば平均直径が約20nmであり得る。一実施形態では、ナノ粒子は、約50nm~約400nm、又は約100nm~約300nmの平均直径を有し得る。
【0056】
[0096]或いは、より大きな粒子が利用されてもよい。例えば、他の実施形態では、最大約50マイクロメートル(μm)の平均サイズを有する微粒子が、担体として利用され得る。
【0057】
[0097]概して、粒子の好ましいサイズは、特定の用途、例えば、表面用途(クリーム又はローションで見られるような)による、循環器又は消化管を使用した非経口的注射による、吸入によるなどの作用剤の特定の送達方法、並びに作用剤の、粒子からの所望の放出速度に依存し得る。例えば、粒子は、細胞外マトリックスに残存して、損傷した弾性線維との相互作用に利用可能であるように、細胞取り込みを防ぐサイズであり得る。したがって、より小さな粒子は、より高い細胞取り込みを示すことがわかっているため、粒子は、一実施形態では、約100nm又はそれを上回り得る。粒子はまた、結合組織の弾性線維と接触するように内皮に浸透して、基底膜に浸透するのに十分小さくてもよい。例えば、粒子は、内皮及び基底膜に浸透するように、一実施形態では、平均直径が約400nm又はそれ未満であり得る。静脈内投与される配合物における使用を意図する場合、大きな粒子(例えば、約1μmよりも大きい)は、それらが微小血管系でつまるようになるので、通常不適である。更に、より大きな粒子は、in vivoで蓄積又は凝集し得る。したがって、静脈内投与のために、1μm未満の粒子が通常使用される。
【0058】
[0098]概して、粒子状担体は、形状が実質的に球状であり得るが、平板、竿状物質、棒、不規則な形状等を含むが、これらに限定されない他の形状は、使用に適している。当業者に理解されるように、粒子の組成、形状、サイズ、及び/又は密度は、多種多様であり得る。
【0059】
[0099]損傷した弾性線維をより良好に標的化するように、望ましい表面電荷を有する粒子が設計され得る。例えば、正に帯電したナノ粒子は、負に帯電した粒子と比較して、優れた細胞取り込みを示している。したがって、一実施形態では、細胞マトリックスにおいて粒子を維持して、細胞取り込みを回避するように、負の表面電荷を有する粒子が開発され得る。
【0060】
[0100]粒子は、任意の適切な方法に従って、1つ又は複数の作用剤が負荷され得る。例えば、沈殿法を利用して、一ステップ形成プロセスで、負荷された粒子を形成し得る。この方法に従って、粒子バルク材料(例えば、ポリ-(D,L-ラクチド-コ-グリコリド又はPGA/PLA共重合体)等の生体適合性ポリマー)は、溶媒中に溶解され得る。適切な溶媒は、関与する特定の材料に依存し得る。例えば、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、又はアセトニトリル等を含む有機溶媒が利用され得る。ポリマーを適切に可溶化するように、溶液には、超音波処理等の標準的な加工処理を施し得る。続いて、溶液は、第2の溶液に、一般的に滴下で添加され得る。自発的に、又は乳化方法後に、例えば、超音波処理後に、バルク材料の粒子は、第2の溶液中で形成され得る。
【0061】
[0101]単一ステップ形成プロセスを利用する場合、送達用の作用剤(例えば、治療薬)もまた、第1の溶液又は第2の溶液のいずれかに含まれ得る。粒子の形成時に、作用剤は、バルク材料を有する粒子に取り込まれ得る。
【0062】
[0102]粒子内又は粒子上の作用剤の初期濃度は、作用剤の性質、送達速度等に応じて、明らかに様々である。例えば、一実施形態では、粒子中/上の生物活性剤の負荷濃度は、粒子の約4重量%~約40重量%を上回って様々であってもよく、特定の作用剤、粒子バルク材料等に応じて、より高濃度及びより低濃度が可能である。例えば、送達用の作用剤が、バルク粒子材料において高い溶解度を示す実施形態では、特に両方の材料が非常に疎水性である場合に、非常に高い負荷レベルが達成され得る。
【0063】
[0103]形成プロセスは、2ステッププロセスを含むことができ、そこでは、粒子がまず形成され、続いて、1つ又は複数の活性剤が、形成された粒子に、又は形成された粒子の表面上に負荷される第2の負荷ステップを行う。例えば、方法は、拡散プロセスを介して粒子を負荷するように、送達用の作用剤を含む溶液中に、予め形成された、任意選択で架橋される高分子粒子を膨潤させることを含み得る。別の実施形態では、負荷方法は、二重エマルジョン重合を含んでもよく、これにより、親水性化合物の、疎水性粒子への負荷が可能となる。ナノ粒子の形成方法は、特に限定されず、当該技術分野において公知であるような他の形成方法、例えば、超音波処理方法、溶媒沈殿方法等が利用され得る。
【0064】
[0104]負荷された粒子は、活性化合物の、粒子からの放出速度を制御するように形成され得る。適切な制御メカニズムは、当業者に公知である。例えば、放出速度は、公知であるように、バルク粒子材料に対する、送達用の作用剤の相対濃度、バルクナノ粒子材料の分子量及び分解特性、ポリマー粒子マトリックスのメッシュサイズ、粒子の表面と作用剤との間の結合メカニズム等に依存し得る。これらの場合のいずれにおいても、当業者は、所望の放出速度を達成するように、系を操作することが可能である。例えば、純粋に拡散律速の放出の場合、かかる制御は、粒子内の作用剤濃度及び/又は粒子サイズ、粒子ポリマーメッシュサイズ等の変動によって達成され得る。純粋に分解律速の放出の場合、ポリマーのモノマー単位、例えば、PLGAポリマーのグリコール酸含有量、及び/又は粒子バルク材料の分子量、並びに粒子サイズを調節して、活性化合物の放出速度を「微調整」することができる。例えば、より高いグリコール酸含有量及びより低分子量を有するPLGAポリマーの使用は、ポリマーを用いて形成される粒子の分解速度の増加をもたらし得る。作用剤の、粒子からの放出速度は、数日から数カ月まで様々な期間、持続放出が可能な担体を産生するように、上記パラメーターを利用して調節することができ、最大放出速度は概して、数時間から数週間まで様々である。
【0065】
[0105]送達用の作用剤は、必ずしもバルク材料内に取り込まれる必要はない。例えば、一実施形態では、作用剤は、粒子の表面上に結合され得る。例えば、作用剤は、エピトープ結合抗体又は断片の、粒子への結合に関して以下でより詳述されるものと類似した化学を利用して、粒子の表面に結合され得る。
【0066】
[0106]抗体又は抗原結合断片は、任意の適切なプロセスに従って、担体とコンジュゲートされ得る。例えば、粒子は、粒子の、抗体とのコンジュゲーションを促進するために、表面反応性基を含み得る。表面反応性基として、アルデヒド、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル等が挙げられ得るが、これらに限定されない。表面反応性基は、当該技術分野で一般に公知であるように、形成される際に粒子表面上に存在し得るか、又は形成された粒子の、例えば、酸化、アミノ化等により、形成後に表面に付加され得る。続いて、抗体又は断片は、例えば、抗体がチオール化された抗体である、マレイミドを用いた反応により、粒子とコンジュゲートされ得る。
【0067】
[0107]抗体又は断片は、非特異的な吸着又は共有結合のいずれかを介して、担体(例えば、粒子)に結合され得る。好ましい結合方法は概して、形成されたコンジュゲートの所望の用途に依存し得る。例えば、系がin vivoで機能を果たすように設計される実施形態では、担体粒子は、様々な生物作用剤及び組織との多重衝突に遭遇すると予想され得る。したがって、かかる実施形態では、抗体/断片が、粒子の、他の材料との衝突により取り除かれないことをより良好に保証するために、共有結合が好ましい可能性がある。
【0068】
[0108]抗体/断片(及び任意選択で、同様に活性処置剤等の別の作用剤も)を、担体表面に結合するのに利用される特定の化学は、特に限定されない。例えば、一実施形態では、抗体又は断片は、ポリペプチドのアミン基と、粒子の塩化アルキルとの間の求核置換反応に従って、クロロメチル化粒子に結合され得る。別の実施形態では、可溶性カルボジイミド(EDC)及びグルタルアルデヒド化学を使用して、ポリペプチドのアミン基の、それぞれ、カルボキシル化粒子及びアミノ化粒子への共有結合を達成することができる。更に別の実施形態によれば、ペプチドは、ストレプトアビジン単層の、粒子への初期共有結合、続く所望の量のビオチン化抗体の制御可能な結合により、粒子に結合され得る。更に別の実施形態によれば、抗体/断片は、架橋剤、例えば、ペプチドのアミン基と、高分子粒子のC-H又はC-C結合とを架橋することができる、Pierce社から入手可能な光活性試薬であるスルホ-HSAB(N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベノエート(azidobenoate))等のフェニルアジド架橋剤を使用して、粒子に共有結合され得る。
【0069】
[0109]一実施形態では、分子スペーサー、例えば、親水性スペーサーを利用して、抗体/断片を粒子に係留することができる。スペーサーの利用により、共有結合されたペプチドの、粒子表面との間の相互作用を防止することができ、したがって、機能性の部分的又は完全損失を招き得る、抗体/断片の構造上の変化を防止することができる。スペーサーとして、ポリ(エチレングリコール)、ポリビニルアルコール、多糖等であるが限定されない長(例えば、約2,000~約20,000Daの重量平均分子量)親水性ポリマーが挙げられ得る。
【0070】
[0110]スペーサー及びペプチドは、互いへの結合を促進するように、官能性を含み得るか、又は官能性を含むように加工処理され得る。例えば、PEGスペーサーは、アルデヒド官能性を含むことができ、スペーサーのアルデヒド基と、粒子のアミン基との共有結合により、アミノ化粒子に結合することができる。次に、チオール化抗体/断片は、チオール化抗体を含む溶液の、マレイミドの存在下での粒子の水性懸濁液との混合を含む簡素なプロセスに従って、スペーサーに結合させることができる。
【0071】
[0111]コンジュゲーションの最終段階で、担体粒子は、例えば、Tween(登録商標)20、Pluronic(登録商標)等の界面活性剤、又は粒子上に吸着され得るデキストランで遮断されて、溶液に曝露される任意の疎水性表面を遮断して、並びに任意の結合されていない作用剤を除くことができる。低濃度のかかる材料は概して、作用剤の活性を妨害しない。界面活性剤の存在により、望ましくないタンパク質-粒子相互作用を低減させることができ、粒子の凝集を防ぐことができる。界面活性剤の存在はまた、系を潜在的に不活性化し得る材料が利用される環境において、他のタンパク質による粒子の表面の非選択的「ファウリング」を防止することができる。
【0072】
[0112]一実施形態では、担体を操作して、所望の用途のためのアンカリング特性を示すことができる。例えば、担体粒子が、分解された弾性線維に結合されたままの状態で残存し得る結合能力及び時間の長さは、粒子表面上の標的化抗体/断片のサイズ及び/又は濃度を変更させることによって操作することができる。
【0073】
[0113]コンジュゲートされた化合物は、一般的に標的線維がどこに存在するかに応じて、任意の適切な方法に従って、分解された弾性線維に送達され得る。例えば、静脈内送達経路等の全身送達法を考慮すると、説明の目的であり、限定されると意図されず、弾力線維症の場合に見られるように、損傷した弾性線維と接触するまで、コンジュゲートは循環し得る。抗体/断片を介して、弾性線維に結合されると、作用剤は、検出を促進し得るか、又は、例えば粒子分解、拡散等を介して粒子から放出されて、所望の活性を提供し得る。化合物は、血管周囲又は血管内のパッチ、局所塗布、静脈内送達、浸透圧ポンプ、吸入等を取り入れている持続放出方法を含む、様々な送達方法に従って、急性的に若しくは慢性的に、送達又は投与され得る。
【0074】
[0114]本開示は、以下の実施例を参照して、より良好に理解され得る。
【実施例】
【0075】
形成方法
モノクローナル抗体形成
[0115]キーホールリンペットホモシアニン(KLH)を、ラットエラスチンの選択したアミノ酸ペプチド断片(即ち、配列番号1~配列番号3の1つ)にコンジュゲートした。標準的なプロトコールを使用して、RBF/dnj又はbalb/cマウスを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の総KLH-ペプチドタンパク質100μgの初期用量及び総容量200μLのTiterMax@アジュバントで皮下的に(s.c.)感作させた。続くブースターを、14日後にフロイント不完全アジュバント中で付与した。続いて、アジュバントを含まないブースターを、21日間隔で、総計4回の免疫化で付与した。最後の免疫化は、腹腔内(i.p.)注射で付与した。最後の免疫化の5日後、マウスをCO2チャンバー中で安楽死させて、脾臓を、続いてポリエチレングリコール(PEG)の存在下でFOX-NY又はSp2/0-Ag14骨髄腫のいずれかと融合させる細胞用に収集して、ハイブリドーマを作製して、標準的な細胞成長手順を使用して、96ウェルマイクロタイタープレートで培養した。融合の14日後に、これらの粗製ハイブリドーマ混合物からの上清を、ELISAステップによって、コンジュゲートされてない遊離ペプチド断片に対する免疫反応性に関してスクリーニングした。陽性ハイブリドーマを、限界希釈によって更に培養及びクローニングして、モノクローナル抗体分泌細胞株(ハイブリドーマ)を生じた。続いて、ハイブリドーマ培養液上清を、特異性に関して再検査して、アイソタイプ及び技術的応用に関して十分に特性化した。
ポリクローナル抗体形成
[0116]キーホールリンペットホモシアニン(KLH)を、ラットエラスチンの選択したアミノ酸ペプチド断片(即ち、配列番号1~配列番号3の1つ)にコンジュゲートした。ホワイトニュージーランドウサギを、2つの肩部領域それぞれに、及び2つの後部臀部領域それぞれに付与されるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の総KLH-ペプチドタンパク質100μgの初期用量及び総容量200μLのTiterMax@アジュバントで皮下的に(s.c.)感作させた。続くブースターを、14日後にフロイント不完全アジュバント中で付与した。続いて、アジュバントを含まないブースターを、21日間隔で、総計5回の免疫化で付与した。10日後、ウサギを安楽死させて、失血させて、血液を凝血させて、遠心分離後に、血清を収集した。続いて、血清を、抗体力価に関して特性化した。
ナノ粒子形成。
1)DiR色素(蛍光標識及びin vivo画像化に有用である)を負荷したナノ粒子
[0117]DiRを負荷した粒子を、コアセルベーションによって調製した。簡潔に述べると、脱イオン水4mL中にウシ血清アルブミン(BSA)(SeraCare社、マサチューセッツ州)250mgを溶解させることによって、蛍光赤外色素ヨウ化1,1-ジオクタデシル-3,3,3,3-テトラメチルインドトリカルボシアニン(DIR)-負荷したナノ粒子(DIR-NP)を得た。次に、DIR 2.5mgを、アセトン100μL中に溶解して、BSA溶液に添加した。1時間攪拌した後、連続超音波処理(Omni Ruptor 400 Ultrasonic Homogenizer、Omni International社、ジョージア州、ケネソー)下で30分間、エタノール24mLに滴加した。架橋した後、グルタルアルデヒド(EM等級70%、EMS社、ペンシルベニア州)を、攪拌中に添加した(BSA 1mg当たり42μg)。次に、DIR-NP 10mgを、ヘテロ二官能性架橋剤α-マレイミド-ω-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルポリ(エチレングリコール)(マレイミド-PEG-NHSエステル、MW 2000Da、Nanocs社、ニューヨーク州)とともにインキュベートして、スルフィドリル反応性の粒子系を達成した。Traut試薬(34μg、G-Biosciences社、ミズーリ州、セントルイス)を、対照としてのウサギ抗ラットエラスチン抗体(United States Biological社、スワンプスコット、マサチューセッツ州)又は本明細書に記載される配列に対して形成された抗体10μgのチオール化に使用して、混合物を、HEPES緩衝液(20mM、pH=9.0)中で、室温で1時間インキュベートした。チオール化した抗体を、HEPES緩衝液ですすいで、ナノ粒子に添加して(NP 1mg当たり抗体4μg)、コンジュゲーションのために一晩インキュベートした。
2)EDTA(キレート剤)を負荷したナノ粒子
[0118]脱イオン水4mL中にBSA(SeraCare社、マサチューセッツ州)200mg及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)(Fisher Scientific社、ニュージャージー州)100mgを溶解することによって、EDTA負荷したナノ粒子(EDTA-NP)を得て、pHを8.5に調節した。この水溶液を、プローブ型超音波処理下で1時間、エタノール16mL中に滴加した。架橋した後、グルタルアルデヒドを、超音波処理中に添加した(BSA 1mg当たり10μg)。エラスチン抗体コンジュゲーション手順は、DIR-NPの手順と同様であった。
3)PGG(エラスチンを安定化するのに有用である)を負荷したナノ粒子
[0119]脱イオン(DI)水4mL中にBSA(SeraCare社、マサチューセッツ州)250mgを溶解することによって、PGG負荷したナノ粒子(PGG-NP)を得た。PGG(125mg)を、ジメチルスルホキシド400μl中に溶解して、BSA溶液に徐々に添加した。攪拌の1時間後、混合物を、連続超音波処理下で30分間、エタノール24mLに滴加した。グルタルアルデヒドを、攪拌中に12μg/mg(タンパク質(BSA))の濃度で添加した。エラスチン抗体コンジュゲーション手順は、DIR-NPの手順と同様であった。
4)MMP阻害剤BB-94を負荷したナノ粒子
[0120]ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ナノ粒子は、溶媒拡散に基づいて、ナノ沈殿方法を使用して調製した。PLA(平均MW75k~120k)(Sigma Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)を、アセトン(VWR International社、ペンシルバニア州、ラドノール)中に溶解した。1,2-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG(2000)マレイミド)(Avanti Polar Lipids社、アラバマ州、アラバスター)及びBB-94(Sigma Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)中に溶解して、続いて、上記溶液をPLA溶液に添加した。ポリマー溶液を、超音波処理(Omni Ruptor 4000)下で保持した水に、4℃で20分間滴加した(16μ/秒)。超音波処理後、14000×gで、4℃で30分間の遠心分離によって、粒子を蒸留水で2回洗浄した後、蒸留水中に再懸濁した。非溶媒(水)対溶媒(アセトン)比は、全ての実験に関して1:15であった。5:1、10:1及び15:1のポリマー対BB-94の比を含有する3つの異なるバッチを調製し、ここでは、2つのポリマー間の比(PLA:DSPE-PEG(2000)マレイミド)は、4:1であった。エラスチン抗体コンジュゲーション方法は、DIR-NPの手順と同様であった。
5)ドキシサイクリンヒクレートを負荷したナノ粒子
[0121]ドキシサイクリンヒクレート(Sigma Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)負荷したBSAナノ粒子を、同様の手順を使用して調製した。簡潔に述べると、ドキシサイクリンヒクレート(DOXTot)25mgを、水2mL中にBSA(BSATot)100mgとともに溶解して、500rpmで30分間攪拌した。その後、エタノール4mLを、自動ディスペンサーを使用して、1ml/分の速度で滴加して、これにより、溶液は濁った。これに、8%グルタルアルデヒド(40μg/mg(BSA))を添加して、アルブミンを架橋して、混合物を室温で2時間攪拌した。得られた溶液を、14,000rpmで10分間遠心分離して、形成されたナノ粒子を分離した。ナノ粒子を、DI水で三度洗浄した後、抗エラスチン抗体コンジュゲーションを進めた。洗い流し液から得られた上清を使用して、UV分光高度計(BioTek Instruments社、バーモント州、ウィヌースキ)を使用して、273nmでの吸光度を測定することによって、遊離ドキシサイクリン(DOXF)の量を推定した。DOXTotと、DOXFとの間の差により、約17%の量の封入されているドキシサイクリン(DOXNP)を付与した。
【0076】
実施例1
[0122]記載されるような配列番号1(GALGPGGKPPKPGAGLL)に対して、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を形成した。
【0077】
[0123]ラット及びマウスの大動脈(n=8)を、BioChemed社から購入した。ブタ膵臓エラスターゼ(10U/mL)を、DI水中に溶解することによって、エラスターゼ溶液を調製した。大腿骨を縫合して、大動脈の下部半分を、エラスターゼ溶液中に、37℃で1時間懸濁させた。続いて、大動脈を生理食塩水中で完全に洗浄して、大動脈全体を、配列番号1に対するモノクローナル抗体でタグ付けしたDiR-NPの10mg/mL溶液中で一晩インキュベートした。その後、大動脈を、振盪機で、生理食塩水中で90分間洗浄して、IVIS画像化システムを使用して画像化した。
図1は、ラット大動脈に関する結果を示し、
図2は、マウス大動脈に関する結果を示す。図示されるように、抗エラスチン抗体は、分解された弾性線維を含む大動脈の部分に、優先的に結合した。
【0078】
[0124]6週齢の8匹のスプラーグドーリー雄ラットを、それぞれ5分間で3回の0.5M CaCl
2の外膜周囲塗布によって、腹部大動脈傷害に付した。傷害の10分後、ラットに、配列番号1に対する抗エラスチンモノクローナル抗体でタグ付けされた10mg/kgの濃度のBSA-DiR NPを注射した。注射の24時間後、動物を安楽死させて、大腿動脈を、IVIS画像化システムを使用して、ナノ粒子標的化に関して画像化した。
図3に示されるように、抗体は、大動脈の他の部分における健常なエラスチンを残しながら、大動脈において、損傷したエラスチン(四角形領域)を首尾よく標的化した。
【0079】
実施例2
[0125]石灰化したヒトの脚の大動脈の一部を加工処理して、パラフィン中に包埋した。5μm切片を切り出して、正に帯電したスライドガラス上に載せて、組織学的分析を実施した。一次抗体として配列番号1に対するモノクローナル抗体(10μg/mL)を用いてエラスチンを検出する免疫組織化学(IHC)を、市販のIHCキット(Enzo Life Sciences社)を使用して実施した。更に、Verhoeff van Gieson(VVG)染色を使用して、壊れた(又は損傷した)エラスチン線維を同定した。IHCにより、配列番号1に対する抗体が、
図4のより濃い領域によって示される動脈中に存在する損傷したエラスチンを首尾よくタグ付けすることが可能であることが明らかとなった。VVG染色により、エラスチンが、壊れて、損傷していることが示された(
図6、
図7)。損傷したエラスチン線維が、VVGで可視的であったとしても、エラスチンに関するIHCは、対照抗体のみとともにインキュベートした場合に、いかなる濃い染色も示さず(
図5)、配列番号1に対する抗体が、損傷した弾性線維のヒトエラスチンを認識しそれに結合することが可能であるのに対して、対照抗体がそうしなかったことが効果的に確認された。
【0080】
実施例3
[0126]気腫モデルを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、フィルター濾過した50Uのブタ膵臓エラスターゼ(PPE)(Elastin Products Company社、ミズーリ州、オーエンズビル)の気管内注射を付与した6週齢の雄スプラーグドーリー(SD)ラット(n=6)において開発した。エラスターゼ処置したラットは、4週にわたって、エラスチン損傷を発症した。動物を安楽死させて、身体全体を生理食塩水で流した後、大動脈を慎重に外植した。肺の一部を加工処理して、パラフィン中に包埋した。5ミクロン厚の切片を作製して、一次抗体として本明細書に記載されるようなモノクローナル抗体を使用して、様々な組織を用いて、IHCキット(Enzo Life Sciences社)を使用して、免疫組織化学を実施した。パラフィンに包埋した切片に関するIHCは、製造業者のプロトコールに従って実施した。抗体の濃度は、全ての実験に関して、10μg/mLで維持した。
【0081】
[0127]同様のプロトコールを使用して、マウスにおける気腫モデルを、またマウスにおけるAngII動脈瘤モデルを開発した。
図8~
図11は、ラット肺におけるエラスターゼ気腫モデル(
図8)、マウス肺におけるエラスターゼ気腫モデル(
図9)、マウス大動脈におけるAngII動脈瘤モデル(
図10)、及びエラスターゼ処置したマウス皮膚(
図11)を含む動物モデルにおける配列1に対するモノクローナル抗体とのインキュベーション後の、各種組織のIHC染色を示す。示されるように、配列番号1に対して生じた抗体は、多種多様な組織タイプにおいて、損傷したエラスチンをタグ付けすることが可能であった。
【0082】
[0128]
図8及び
図12は、配列番号1に対して生じた抗体とのインキュベーション後の、ラット組織における気腫モデル由来の肺組織を示す。
図13及び
図14は、対照抗体とのインキュベーション後の、気腫ラットモデル由来の肺組織を示す。観察されるように、配列1に対する抗体は、損傷した組織に対して優れた結合を示した。
【0083】
実施例4
[0129]マウスに麻酔をして、アンジオテンシンを充填した浸透圧ポンプを、動物の脊椎に対して垂直にした皮下ポケットに配置した。2週後、動物は、それらの大動脈において、動脈瘤を自発的に発症した。エラスチン損傷を含有する大動脈の一部を加工処理して、パラフィン中に包埋した。5ミクロン厚の切片を作製して、一次抗体として配列番号1に対して生じたモノクローナル抗体(mAb RE2)抗体を使用して、IHCキット(Enzo Life Sciences社)を使用して、免疫組織化学を実施した。パラフィンに包埋した切片に関するIHCは、製造業者のプロトコールに従って実施した。抗体の濃度は、全ての実験に関して、10μg/mLで維持した。マウス大動脈の例は、
図15及び
図16に示される。画像における濃い領域によって観察されるように、抗体は、分解されたエラスチンに結合した。
【0084】
実施例5
[0130]
図17~
図20に示される肺組織は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、フィルター濾過した0.50Uのブタ膵臓エラスターゼ(PPE)(Elastin Products Company社、ミズーリ州、オーエンズビル)の気管内注射を付与した8週齢の雄C57BL/6マウスから得られた。エラスターゼ処置したマウスは、4週にわたって、エラスチン損傷を発症した。動物を安楽死させて、身体全体を生理食塩水で流した後、大動脈を外植した。肺の一部を加工処理して、パラフィン中に包埋した。5ミクロン厚の切片を作製して、一次抗体として配番号1に対して生じたモノクローナル抗体であるmAb RE2を使用して、様々な組織を用いて、IHCキット(Enzo Life Sciences社)を使用して、免疫組織化学を実施した。パラフィンに包埋した切片に関するIHCは、製造業者のプロトコールに従って実施した。mAb RE2の濃度は、全ての実験に関して、10μg/mLで維持した。
【0085】
[0131]
図17及び
図18は、配列番号1に対して生じた抗体を用いてIHCを実施した切片を示し、
図19及び
図20は、対照抗体を用いてIHCを実施した切片を示す。観察されるように、配列1に対する抗体は、損傷した組織に強力に結合した。
【0086】
実施例6
[0132]マウスの8週齢の無毛株から、皮膚組織を得た。動物の皮膚を四分円に分割して、リン酸緩衝生理食塩水中に溶解して、フィルター滅菌したブタ膵臓エラスターゼ(30U)を皮内に注射した。これを2週後及び4週後に繰り返した。皮膚におけるエラスチンは、エラスターゼ活性に起因して損傷した。動物を安楽死させて、皮膚を慎重に収集して、凍結させた。後に、皮膚資料を加工処理して、パラフィン中に包埋した。5ミクロン厚の切片を作製して、一次抗体としてmAb RE2抗体を使用して、IHCキット(Enzo Life Sciences社)を使用して、免疫組織化学を行った(
図21及び
図22)。
図23及び
図24は、対照抗体を使用した結果を示す。パラフィンに包埋した切片に関するIHCは、製造業者のプロトコールに従って実施した。抗体の濃度は、全ての実験に関して、10μg/mLで維持した。
【0087】
実施例7
[0133]ウェスタンブロット及び銀染色を使用して、開示される抗体の、トロポエラスチンとの結合を検出した。細胞培養培地、アルファエラスチン標準物質、及びエラスターゼで消化したラット大動脈由来の上清溶液を使用して、配列番号1に対して生じたモノクローナル抗体及び対照として生じたマウスモノクローナルエラスチン抗体(ハイブリドーマ前のマウスから産生したモノクローナル抗体)によるエラスチンの検出に関して検査した。銀染色(
図25)により、75kDaのタンパク質マーカーと、50kDaのタンパク質マーカーとの間に可溶性エラスチンが示されたが、抗体はいずれも、可溶性エラスチンを検出することができなかった。エラスチンで消化した大動脈試料を使用した場合、ウサギポリクローナル抗体は、50kDaのタンパク質マーカー付近にバンドを示した。マウスクローナルは、エラスターゼで消化した大動脈試料を用いた場合に、150kDaのマーカーを超える非常に特異的な単一バンドを有したが、細胞培養培地を用いた場合には有さなかった。
【0088】
実施例8
[0134]記載されるような配列番号(PGGYGLPYTTGKLPYGYP)に対して、モノクローナル抗体IgG1アイソタイプ抗体を形成した。
【0089】
[0135]H&E染色を使用したIHC(
図26)により、軽度動脈瘤を有するヒト大動脈における分解されたエラスチンに関して特異性が示された。エラスチンに関するVVG染色における丸で囲まれた部分(
図27)は、エラスチンの分解を示し、同じ領域が、その切片への抗体結合を示した(
図28)。対照二次抗体のみは、シグナルを示さなかった(
図29)。
【0090】
[0136]H&E染色を使用したIHC(
図30)により、軽度動脈瘤を有するヒト大動脈における分解されたエラスチンに関して特異性が示された。エラスチンに関するVVG染色における丸で囲まれた部分(
図31)は、エラスチンの分解を示し、同じ領域が、その切片への抗体結合を示した(
図32)。対照二次抗体のみは、シグナルを示さなかった(
図33)。
【0091】
実施例9
[0137]新鮮なヒト頸動脈内膜剥離術(CEA)試料を2つの部分に分離した:一方の部分は、配列番号3に対して生じた抗体を負荷したDIR-NPによる標的化に使用して(ELN群)、他方の部分は、エラスチン抗体を伴わないDIR-NPによる標的化に使用した(対照群)。試料を、4℃で12時間インキュベートした。続いて、試料をPBSで洗浄し、ナノ粒子結合を、IVISを用いて検査した。IVISの結果(
図34)により、ELNをコンジュゲートしたDIR-NPが、動脈における分解されたエラスチン及び未熟エラスチンに結合される一方で、抗体を伴わない対照NPは結合されないことが示された。
【0092】
[0138]続いて、試料を、組織学標本のために脱灰させて、OCT(登録商標)中に包埋して、染色用の凍結切片を得た。
図35及び
図36に示されるように、ナノ粒子の、アテローム動脈硬化症におけるエラスチンへの標的化が、直接的な検査(左パネル)、H&E染色(中央パネル)、及びVVG染色(右パネル)によって観察された。抗体を伴わない対照NP(下部パネル)は、標的化されなかった。
【0093】
実施例10
[0139]ヒトエラスチン配列である配列番号3に対して形成されたモノクローナルIgG1アイソタイプ抗体を発現するハイブリドーマを特性化した。TRIzol(登録商標)試薬の技術マニュアルに従って、総RNAをハイブリドーマ細胞から単離した。次に、PrimeScript(商標)1st Strand cDNA合成キットの技術マニュアルに従って、アイソタイプ特異的なアンチセンスプライマー又はユニバーサルプライマーのいずれかを使用して、総RNAを、cDNAに逆転写した。GenScriptのcDNA末端の迅速増幅(RACE)の標準的な操作手順に従って、VH、VL、CH及びCLの抗体断片を増幅させた。増幅させた抗体断片を、標準的なクローニングベクターに個別にクローニングした。コロニーPCRを実施して、正確なサイズの挿入断片を有するクローンに関してスクリーニングした。正確なサイズの挿入断片を有する5個以上のコロニーを、各断片に関して配列決定した。異なるクローンの配列を整列させて、コンセンサス配列を獲得した。
【0094】
[0140]
図37は、モノクローナル抗体を模式的に示す。アイソタイプは、定常領域の配列によって分析されるように、マウスIgG/カッパであった。コンセンサス配列に関して、5個のクローンを、V
H、V
L、C
H及びC
Lの配列に関して配列決定して、全てが、99%を超える配列同一性を有した。V(D)J接合部のIMGT分析を、以下の表1に提供する。可変配列は全て、生産的であり、Dセグメントは検出されなかった。
【0095】
【0096】
[0141]配列番号4は、完全DNA配列を提供し、配列番号5は、モノクローナル抗体の重鎖に関する完全アミノ酸配列を提供する。配列番号6(nt)及び配列番号7(aa)は、配列番号8~配列番号21に記載されるCDR領域及びFR領域を伴う、重鎖の可変領域に関する配列を提供する。配列番号22は、完全DNA配列を提供し、配列番号23は、モノクローナル抗体の軽鎖に関する完全アミノ酸配列を提供する。配列番号24(nt)及び配列番号25(aa)は、配列番号26~配列番号39に記載されるCDR領域及びFR領域を伴う、軽鎖の可変領域に関する配列を提供する。
【0097】
実施例11
[0142]平均サイズ150±25nmを有するクエン酸キャップ金ナノ粒子(GNP)を、Meliorum Technologies社(ニューヨーク州、ロチェスター)から購入した。ヘテロ二官能性チオール-PEG-酸(SH-PEG-COOH)(2000MW、Nanocs社、ニューヨーク州、ニューヨーク)を、重量比4:1でGNPに添加して、混合物を、穏やかに揺らしながら、4℃で48時間インキュベートして、PEG化を達成した。10,000rpmで、室温で20分間遠心分離した後、PEG化したGNPを収集して、0.1M MES(pH:5.5)中に再懸濁した。EDC/NHS化学を利用して、PEG化したGNPを、本明細書に記載されるような抗エラスチン抗体とコンジュゲートさせた。簡潔に述べると、EDC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩)(Oakwood Chemical社、サウスカロライナ州、エスティル)及びスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド)(Sigma Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)を、重量比2:1及び4:1で個別に、PEG化したGNPに添加した。この混合物を、穏やかにボルテックスしながら、室温で6時間インキュベートした。生じたGNPを、10,000rpmで、室温で20分間遠心分離した後に収集して、PBS(pH7.8)1mL中に再懸濁させた。GNP1mg当たり抗エラスチン抗体4μgを添加して、混合物を、ゆっくりと揺らして、4℃で一晩インキュベートした。生じた溶液を、10,000rpmで20分間遠心分離することによって、過剰な抗体を除去した。得られた抗体/ナノ粒子コンジュゲート(EL-GNP)を、注射用に濃度3mg/mLになるように生理食塩水中に再懸濁させた。
【0098】
[0143]15匹の雄低密度リポタンパク質受容体欠損(LDLr)(-/-)マウス(2カ月齢、C57BL/6バックグラウンドで)を、Jackson Laboratory社(メイン州、バーハーバー)から入手した。11匹のマウスを動脈瘤研究に使用した一方で、他の4匹のマウスを、健常な月齢対照として使用した。動脈瘤は、飽和脂肪(21%wt/wt)及びコレステロール(0.2%wt/wt;カタログ番号TD88137;Harlan Teklad社)7を有する食餌と組み合わせた、アンジオテンシンII(AngII、Bachem Americas社、カリフォルニア州、トーランス)の全身注入によって誘導された。簡潔に述べると、マウスに、高脂質食餌を、AngII注入前の1週間及びAngII注入中の6週間、給餌した。AngIIを充填した浸透圧ポンプ(モデル2004、Alzet、カリフォルニア州、クパチーノ)を、イソフルラン麻酔下でマウスの右後方肩部での切開により、皮下移植した。外科的プロセス全体にわたって、麻酔として、2%~3%イソフルランをマウスに吸入させた。AngIIに関するポンピング速度を、1000ng/km/分に設定した。移植後4週間、ポンプを外植して、マウスを2週間回復させた。疾患進行を、高周波超音波機Fujifilm VisualSonics Vevo 2100(Fujifilm VisualSonics社、カナダ、オンタリオ州、トロント)を用いて、リニアアレイプローブ(MS-550D、広帯域周波数22MHz~55MHz)を利用することによってモニタリングした。
【0099】
[0144]EL-GNPを、造影剤として、2%~3%イソフルラン吸入下で、10mg/kg(動物の体重)の投与量で、後眼窩注射によりマウス(n=15)に付与した。マウスを、注射の24時間後に安楽死させて、大動脈全体(上行大動脈から腸骨分岐点まで)を外植した。大動脈の周囲の結合組織をきれいにした後、マイクロCTスキャンした。大動脈をコーン油に浸して、高性能in vivoマイクロCTシステム(Skyscan 1176、Bruker社、マサチューセッツ州、ビレリカ)を用いて画像化した(90kV、250mAs、300ms、0.2mm Alフィルター)。Feldkampアルゴリズムに基づくSkyscan Nreconソフトウェアを使用して、再構築を実行した。大動脈の再構築画像を可視化させて、DataViewer及びCT-Voxソフトウェアを使用して、動脈瘤の寸法を測定した。3D最大値投影法(MIP)画像(
図38、左)を獲得して、大動脈内のEL-GNPの分布を決定した一方で、減衰画像(
図38、右)を獲得して、EL-GNP及び組織の両方によって付与されるシグナルの強度を研究した。シグナル強度は、CT-Anソフトウェアを使用して更に定量化した。
【0100】
[0145]凍結切片化した組織学的試料(5μm)を、CytoViva強化暗視野顕微鏡工学システム(CytoViva社、アラバマ州、オーバーン)を用いて検査した。システム(Olympus BX51)は、液浸オイル(タイプA、nd>1.515、Cargille Brand)超暗視野冷却器及び1.2~1.4の調節可能な開口数を有する40倍air Plan-FL対物レンズを用いる。Fiber-lite DC-950調節ラミネーターによって、照明が提供された。ゲイン2.8及び露光時間53msを用いてExponent 7ソフトウェアを使用して、強化暗視野顕微鏡画像(
図39)を獲得して、EL-GNPを可視化させた。ハイパースペクトルイメージャ(顕微鏡上に取り付けられ、Exelis Visual Information Solutions社からのEnvironment for Visualizationソフトウェアによって制御されている)を使用して、完全な視野(643個のライン)で、露光時間0.25msで試料中のEL-GNPをマッピングする(
図41)ためのスペクトル情報を抽出した。陰性対照試料を画像化及び分析して、参照としてのスペクトルライブラリーを創出した。マッピングは、陰性対照のスペクトルライブラリーを、陽性対照から差し引くことにより、フィルタリングしたスペクトルライブラリーを適用することによって達成された。
【0101】
[0146]動脈瘤及び健常な大動脈の両方の凍結切片を、組織学的分析に使用した(
図40)。大動脈を、緩衝ホルマリン中で固定して、DI水中で洗浄した後、最適切断温度(OCT)コンパウンド(Sakura Finetek社、カリフォルニア州、トーランス)中に包埋して、標準的な手順に従って切片化した。5マイクロメートルの切片を、正に帯電したスライドガラス上に載せた。スライドを、100%の予冷アセトン(Fisher Science Education社、ペンシルバニア州、ナザレス)中に10分間配置させて、組織をスライドに接着させた。続いて、スライドを、水道水で3分間すすいで、更なる染色のためにOCTコンパウンドを除去した。スライドをVerhoeff-van Gieson(VVG)で染色して、種々の試料におけるエラスチン損傷を決定した。
【0102】
[0147]
図39及び
図40は、大動脈の2つの切片(画像の左及び右)の暗視野画像(
図39)及びVVG染色画像(
図40)を提示する。観察されるように、より強力な暗視野画像シグナルは、
図39の左画像において観察され、それは、ほぼ無傷のエラスチン線維を含有する各図の右に示される組織切片(右、
図40)と比較した場合に、より多くのエラスチン損傷を示した(左、
図40)。金ナノ粒子によって付与されるシグナルは、画像におけるより濃い矢印によって示される、分解されたエラスチンが露出されている位置で見出された一方で、健常なエラスチン線維及び無傷のエラスチン線維は、画像におけるより明るい矢印によって示されるように、GNPシグナルを欠如していた。
【0103】
[0148]
図41は、抗体でタグ付けしたEL-GNPを用いて金ナノ粒子でタグ付けられた腎上部大動脈組織のハイパースペクトルマッピングの結果を提供する。
図41の上から下までの列は、それぞれ、高レベルから低レベルまで、大動脈壁内の種々のレベルのエラスチン損傷を有する腎上部大動脈に相当する。第1の欄(A)は、VVG染色後の明視野顕微鏡法画像(40倍)を提示し、種々のエラスチン分解レベルを実証した。第2の欄(B)は、矢印によって示されるような組織における高コントラストEL-GNPの存在を示す強化暗視野顕微鏡法(40倍)画像を提示する。第3の欄(C)は、ハイパースペクトル画像(40倍)を含み、第4の欄(D)は、陰性対照を用いて作成した各々の参照スペクトルライブラリーに対してマッピングしたハイパースペクトル画像を含む。これにより、暗視野顕微鏡法と比較した場合、EL-GNPのより広い分布が同定された(
図39)。更に、組織が、より多くのエラスチン損傷を示した場合、マッピングされたEL-GNP量が増加した。
【0104】
[0149]本主題は、本発明の特定の実施形態に関して詳述されてきたが、当業者は、先述の理解に達すると、かかる実施形態に対する変更、かかる実施形態の変形、及びかかる実施形態に対する等価体を容易に生じ得ることが理解されよう。したがって、本開示の範囲は、限定の目的ではなく、例の目的であり、本主題の開示は、当業者に容易に明らかであるように、本主題に対するかかる修飾、変形及び/又は付加の包含を排除しない。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【配列表】