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特許7547355精製ガスの製造方法、有価物の製造方法、ガス精製装置及び有価物製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】精製ガスの製造方法、有価物の製造方法、ガス精製装置及び有価物製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10K 1/04 20060101AFI20240902BHJP
   C10K 1/32 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C10K1/04
C10K1/32
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021548939
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035837
(87)【国際公開番号】W WO2021060289
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019172541
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友也
(72)【発明者】
【氏名】夏山 和都
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058042(JP,A)
【文献】特開2016-187332(JP,A)
【文献】特許第6097895(JP,B1)
【文献】特公平06-083772(JP,B2)
【文献】特開2008-222882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10K 1/04
C10K 1/32
B01D 53/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物由来の原料ガス中の不純物を除去する精製ガスの製造方法であって、
前記原料ガスを相転移性不純物除去部に通し、前記原料ガス中の固相化した相転移性不純物を除去する固相化不純物除去工程と、
前記固相化不純物除去工程後の前記原料ガスを真空ポンプと組み合わせた圧力スイング吸着装置に通し、前記原料ガス中の不純物を除去する不純物除去工程とを含
前記真空ポンプから吐出された排気ガスは、選択可能な複数の吐出路の少なくとも1つに流される、精製ガスの製造方法。
【請求項2】
前記原料ガスを相転移性不純物除去部に通す工程の前段で、前記原料ガスを冷却する冷却工程を含む、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程の冷却温度が20℃以上である、請求項2に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項4】
前記真空ポンプから吐出された排気ガスを固液不純物除去部に通し、前記原料ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去する固液不純物除去工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項5】
前記固液不純物除去部は、ミストセパレータである、請求項4に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項6】
前記真空ポンプから吐出された排気ガスは、圧力計によって圧力が測定される、請求項1~のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程は、相転移温度以下である5℃以上40℃以下に冷却する、請求項2又は3のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法によって得られた精製ガスを、有機触媒に接触させて有価物を得る、有価物の製造方法。
【請求項9】
廃棄物由来の原料ガス中の不純物を除去するガス精製装置であって、
前記原料ガス中の固相化した相転移性不純物を除去する相転移性不純物除去部と、
真空ポンプと組み合わされ、前記相転移性不純物除去部で固相化した前記相転移性不純物が除去された前記原料ガス中の不純物を除去する圧力スイング吸着装置とを備え、
前記真空ポンプは、吐出する前記原料ガスの流路として選択可能な複数の吐出路を備える、ガス精製装置。
【請求項10】
前記原料ガスを相転移性不純物除去部に通す工程の前段で、前記原料ガスを冷却する冷却部をさらに備える、請求項9に記載のガス精製装置。
【請求項11】
前記冷却部による冷却温度が20℃以上である、請求項1に記載のガス精製装置。
【請求項12】
前記真空ポンプから吐出された排気ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去する固液不純物除去部をさらに備える、請求項~1のいずれか1項に記載のガス精製装置。
【請求項13】
前記固液不純物除去部は、ミストセパレータである、請求項12に記載のガス精製装置。
【請求項14】
前記真空ポンプの吐出側に、吐出する前記原料ガスの圧力を測定する圧力計を備える、請求項~1のいずれか1項に記載のガス精製装置。
【請求項15】
前記冷却部は、相転移温度以下である5℃以上40℃以下に冷却する、請求項10又は11に記載のガス精製装置。
【請求項16】
請求項~1のいずれか1項に記載のガス精製装置と、前記ガス精製装置で得られた精製ガスに接触させる有機触媒を有する有価物生成部とを備える、有価物製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物に由来する原料ガスに含有する不純物を除去する精製ガスの製造方法、有価物の製造方法、ガス精製装置及び有価物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物、一般廃棄物などの各種廃棄物は、熱分解により、ガス化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、廃棄物を熱分解することで、一酸化炭素と水素を多く含む原料ガスが得られる。廃棄物由来の原料ガスは、種々の用途に利用可能であり、例えば、微生物触媒、金属触媒などを用いて、エタノール等の有価物に変換することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
廃棄物由来の原料ガスは、例えば、都市固形廃棄物(MSW)などの炭素以外の成分を多く含む物質をガス化する場合に、ナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール等の昇華性物質をはじめとする、気相と固相の間で相転移可能な相転移性不純物が含まれている。この種の相転移性不純物は、廃棄物処理施設で生成された当初は気相であっても、メインストリームの温度条件等によっては固相化し、メインストリームに設置されているフィルタに付着することで、フィルタの詰まりを発生させることがある。このため、頻繁にフィルタ交換しなければならず、メンテナンスが煩雑化し、運転コストが増大する。
【0004】
廃棄物由来の原料ガスには、多量に水分が含まれており、水分及び相転移性不純物を除去するために一度に原料ガスを冷却すると、固相化した相転移性不純物とスス及びタール等の液相化した不純物とをフィルタで捕捉することになり、フィルタの詰まりが酷くなる。そこで、原料ガス中の水分と相転移性不純物とを別々に除去するために、原料ガスの冷却工程を二段階に分けて行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-45857号公報
【文献】特開2014-050406号公報
【文献】特許6134347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原料ガス中に含まれる相転移性不純物が多量である場合では、冷却工程を二段階にしたり、冷却温度を下げたりしても吸着法による除去処理が不十分となることがある。その場合には、メインストリームに設置されているフィルタの詰まりを発生させることがあり、メンテナンスの煩雑化及び運転コストの増大という課題は残る。さらに、冷却工程において、温度を過度に下げるには多大なエネルギーを要することから、運転コストが増大するという問題が生じる。また、冷却工程において、温度を過度に下げることによって、メインストリームにおいて凍結などの弊害も発生することがある。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、廃棄物由来の原料ガスから有価物を生成する際に、原料ガス中に含有する相転移性不純物を効率的に除去することができる精製ガスの製造方法、有価物の製造方法、ガス精製装置及び有価物製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、真空ポンプと組み合わせた圧力スイング吸着装置によって、原料ガス中の相転移性不純物を除去することで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[18]を提供する。
[1]廃棄物由来の原料ガス中の不純物を除去する精製ガスの製造方法であって、前記原料ガスを相転移性不純物除去部に通し、前記原料ガス中の固相化した前記相転移性不純物を除去する固相化不純物除去工程と、前記固相化不純物除去工程後の前記原料ガスを真空ポンプと組み合わせた圧力スイング吸着装置に通し、前記原料ガス中の不純物を除去する不純物除去工程とを含む、精製ガスの製造方法。
[2]前記原料ガスを相転移性不純物除去部に通す工程の前段で、前記原料ガスを冷却する工程を含む、[1]に記載の精製ガスの製造方法。
[3]前記冷却工程の冷却温度が20℃以上である、[2]に記載の精製ガスの製造方法。
[4]前記真空ポンプから吐出された排気ガスを固液不純物除去部に通し、前記原料ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去する固液不純物除去工程をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の精製ガスの製造方法。
[5]前記固液不純物除去部は、ミストセパレータである、[1]~[4]のいずれかに記載の精製ガスの製造方法。
[6]前記真空ポンプから吐出された排気ガスは、選択可能な複数の吐出路の少なくとも1つに流される、[1]~[5]のいずれかに記載の精製ガスの製造方法。
[7]前記真空ポンプから吐出された排気ガスは、圧力計によって圧力が測定される、[1]~[6]のいずれかに記載の精製ガスの製造方法。
[8]前記冷却工程は、前記相転移温度以下である10℃以上30℃以下に冷却する、[2]~[7]のいずれかに記載の精製ガスの製造方法。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の精製ガスの製造方法によって得られた精製ガスを、有機触媒に接触させて有価物を得る、有価物の製造方法。
[10]廃棄物由来の原料ガス中の不純物を除去するガス精製装置であって、前記原料ガス中の固相化した前記相転移性不純物を除去する相転移性不純物除去部と、真空ポンプと組み合わされ、前記相転移性不純物除去部で固相化した前記相転移性不純物が除去された前記原料ガス中の不純物を除去する圧力スイング吸着装置とを備える、ガス精製装置。
[11]前記原料ガスを相転移性不純物除去部に通す工程の前段で、前記原料ガスを冷却する冷却部をさらに備える、[10]に記載の精製ガス製造装置。
[12]前記冷却部による冷却温度が20℃以上である、[11]に記載の精製ガス製造装置。
[13]前記真空ポンプから吐出された排気ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去する固液不純物除去部をさらに備える、[10]~[12]のいずれかに記載のガス精製装置。
[14]前記固液不純物除去部は、ミストセパレータである、[10]~[13]のいずれかに記載のガス精製装置。
[15]前記真空ポンプは、吐出する前記原料ガスの流路として選択可能な複数の吐出路を備える、[10]~[14]のいずれかに記載のガス精製装置。
[16]前記真空ポンプの吐出側に、吐出する前記原料ガスの圧力を測定する圧力計を備える、[10]~[15]のいずれかに記載のガス精製装置。
[17]前記冷却部は、前記相転移温度以下である10℃以上30℃以下に冷却する、[11]~[16]のいずれかに記載のガス精製装置。
[18][10]~[17]のいずれかに記載のガス精製装置と、前記ガス精製装置で得られた精製ガスに接触させる有機触媒を有する有価物生成部とを備える、有価物製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃棄物由来の原料ガスから有価物を生成する際に、原料ガス中に含有する相転移性不純物を効率的に除去することができる精製ガスの製造方法、有価物の製造方法、ガス精製装置及び有価物製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るガス精製装置に備える圧力スイング吸着装置を示す模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る精製ガスの製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る精製ガスの製造方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る精製ガスの製造方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の第4の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図(その1)である。
図9】本発明の第4の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図(その2)である。
図10】本発明の第5の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図である。
図11】本発明のその他の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図(その1)である。
図12】本発明のその他の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図(その2)である。
図13】本発明のその他の実施形態に係るガス精製装置を示す模式図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分は同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るガス精製装置1aは、図1に示すように、原料ガス生成設備100及び有価物生成反応部110と接続されて設けられている。原料ガス生成設備11は、廃棄物由来ガスである原料ガスG1を生成する設備である。原料ガス生成設備11で生成された原料ガスG1は、ガス精製装置1aに導入される。ガス精製装置1aは、導入された原料ガスG1に含有する不純物を除去し、精製ガスG2を生成する設備である。ガス精製装置1aで生成された精製ガスG2は、有価物生成反応部110に導入される。有価物生成反応部110は、導入された精製ガスG2からエタノール等の有価物を生成する設備である。
なお、本明細書において、「原料ガス」とは、原料ガス生成設備100でガス化したガスをいう。また、「精製」とは、ガスの精製分離をすることでガス中に含まれる不純物を除去することをいう。
また、本明細書において、原料ガス生成設備100でガス化した原料ガスG1が精製され、有価物生成反応部110の発酵槽に入るまでの流れをメインストリームという。一方、メインストリーム以外の流れとしては、後述する真空ポンプ40等から排気される流れをいう。
【0013】
<原料ガス生成設備>
原料ガス生成設備100は、廃棄物をガス化して廃棄物由来の原料ガスを精製する設備である。廃棄物のガス化は、例えばガス化炉を用いるとよい。ガス化炉は、炭素源を燃焼(不完全燃焼)させる炉であり、例えば、キルンガス化炉、固定床ガス化炉、流動床ガス化炉、シャフト式炉、プラズマガス化炉、炭化炉等が挙げられる。廃棄物を原料ガスにガス化する際の温度は、特に制限されるものではないが、通常100~2,500℃であり、好ましくは700~1,500℃であり、より好ましくは1,100~1,300℃である。
ガス化する廃棄物としては、産業固形廃棄物などの産業廃棄物でもよいし、都市固形廃棄物(MSW)などの一般廃棄物でもよく、例えば、プラスチック廃棄物、生ゴミ、廃棄タイヤ、バイオマス廃棄物、食料廃棄物、建築資材、木材、木質チップ、繊維、紙類等の可燃性物質であれば特に限定されない。
【0014】
廃棄物をガス化して得られる原料ガスG1は、一酸化炭素および水素を含む合成ガスであるとよいが、これら以外にも二酸化炭素、酸素、及び窒素の少なくともいずれかをさらに含んでもよい。原料ガスG1は、水分を含み、また、硫化水素、塩化水素、青酸、アンモニア、NOx、SOx、アセチレン及びBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)等の気相不純物、スス及びタール等の固相又は液相である固液相不純物、並びに、相転移性不純物などの不純物を含む。なお、相転移性不純物質とは、原料ガス生成設備100からの供出時は大部分が気相であるが、有価物生成部110までの輸送過程で相転移して一部又は全部が固相となり得る不純物質(水を除く)をいい、例えばナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール等の昇華性物質が挙げられる。
【0015】
原料ガスG1が合成ガスである場合、一酸化炭素および水素を含む。また、原料ガスG1は、一酸化炭素を0.1体積%以上80体積%以下、水素を0.1体積%以上80体積%以下含むことが好ましい。また、原料ガスG1を構成する合成ガスは、二酸化炭素を含有してもよい。原料ガスG1において二酸化炭素は、0.1体積%以上70体積%以下含有されるとよい。
また、原料ガスG1における一酸化炭素濃度は、好ましくは10体積%以上70体積%以下であり、より好ましくは20体積%以上50体積%以下である。また、原料ガスG1における水素濃度は、好ましくは10体積%以上70体積%以下であり、より好ましくは20体積%以上50体積%以下である。
【0016】
また、原料ガスG1中の二酸化炭素濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1体積%以上40体積%以下、より好ましくは0.3体積%以上30体積%以下である。二酸化炭素濃度は、有機触媒により、エタノール生成を行う場合に低くすることが特に好ましく、そのような観点から、より好ましくは0.5体積%以上25体積%以下である。
原料ガスG1中の窒素濃度は、通常40体積%以下であり、好ましくは1体積%以上20体積%以下である。
また、原料ガスG1中の酸素濃度は、通常5体積%以下であり、好ましくは1体積%以下である。また、酸素濃度は、低ければ低い方がよく、0体積%以上であればよい。ただし、一般的には不可避的に酸素が含有されることが多く、酸素濃度は実用的には0.001体積%以上である。
【0017】
原料ガスG1における一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素及び酸素の濃度は、廃棄物の種類、原料ガス生成工程におけるガス化温度、ガス化時の供給ガスの酸素濃度等の燃焼条件を適宜変更することで、所定の範囲とすることができる。例えば、一酸化炭素や水素濃度を変更したい場合は、廃プラ等の炭化水素(炭素および水素)の比率が高い廃棄物に変更し、窒素濃度を低下させたい場合は原料ガス生成設備11において酸素濃度の高いガスを供給する方法等がある。
さらに、原料ガスG1は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の各成分の濃度調整を適宜行ってもよい。濃度調整は、これら成分の少なくとも1種を原料ガスG1に添加して行うとよい。
なお、上記した原料ガスG1における原料ガスにおける各物質の体積%は、後述するガス精製装置1aに導入される直前の原料ガスにおける各物質の体積%を意味し、後述する前段処理が行われる場合には、前段処理が行われた後の各物質の体積%である。
【0018】
<ガス精製装置>
ガス精製装置1aは、相転移性不純物除去部20と、真空ポンプ40と組み合わされた圧力スイング吸着装置30とを備える。相転移性不純物除去部20は冷却部10の後段に設けられ、圧力スイング吸着装置30は相転移性不純物除去部20の後段に設けられる。
なお、本明細書において、「後段」とは、原料ガスの供給流れに沿う後段を意味し、「前段」とは、上記原料ガスの供給流れに沿う前段を意味する。なお、原料ガスG1の供給流れとは、ガス精製装置1aへの原料ガスG1の導入から精製ガスG2としてガス精製装置1aから排出されるまでの流れを意味し、本実施形態では原料ガス生成設備100から有価物生成部110までのガスの流れを意味する。
【0019】
ガス精製装置1aは、図示しないが、相転移性不純物除去部20の前段に前段処理部が設けられることが好ましく、原料ガスG1は、ガス精製装置1aに供給される前に、前段処理部において適宜前処理が行われるとよい。前段処理部は、原料ガスG1に含まれる各種不純物、水、二酸化炭素などを除去する。もちろん、前段処理部は省略されてもよい。
【0020】
<前段処理部>
前段処理部は、特に限定はなく、例えば、スクラバー及び脱硫装置等が挙げられる。スクラバーは、水又はオイルからなる洗浄液を原料ガスに接触させ、水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を原料ガスG1から除去する。水溶性不純物としては、硫化水素、塩化水素、青酸などの酸性ガス、アンモニアなどの塩基性ガス、NOx、SOxなどの酸化物が挙げられる。また、油溶性不純物としては、BTEX、ナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトールなどが挙げられる。
【0021】
<相転移性不純物除去部>
相転移性不純物除去部20は、相転移性不純物除去部20に導入される原料ガスG1中の固相化した相転移性不純物を捕捉して除去する。
相転移性不純物除去部20は、固相化した相転移性不純物を除去することができるものであれば特に限定はなく、ミストセパレータも採用できる。ミストセパレータとしては、特に限定はなく、例えば、金属、樹脂、繊維及びセラミック等のフィルタが挙げられ、これらを組み合わせたものであってもよい。フィルタは、単層メッシュ構造であってもよく、多層メッシュ構造であってもよい。フィルタの目の粗さは、固相化した相転移性不純物を除去できる程度のものであればよく、目の粗さを比較的粗くすることで、固相化した相転移性不純物及び凝縮水等によって詰まることが抑制でき、フィルタの交換頻度を少なくすることができる。
なお、本明細書において、「除去」とは、原料ガスから除去対象物質の少なくとも一部を除去することで、ガス中の対象物質の濃度を低減させることを意味し、除去対象物質を完全に除去することに限定されない。
【0022】
<圧力スイング吸着装置(PSA)>
圧力スイング吸着装置30は、真空ポンプ40と組み合わされたものであり、相転移性不純物除去部20で固相化した相転移性不純物が除去された原料ガスG1中の不純物を除去する。
圧力スイング吸着装置30は、二酸化炭素及びBTEX等の気相不純物を吸着させて除去できるものであれば特に限定はなく、例えば、真空ポンプ40が一体となっている圧力真空スイング吸着(PVSA)装置が挙げられる。
圧力スイング吸着装置30は、吸着剤が充填された吸着塔を有し、圧力を変化させることで、吸着塔に充填される吸着剤に不純物を吸着させて除去する精製工程と、吸着剤に吸着した不純物を脱離する再生工程とを繰り返す装置である。圧力スイング吸着装置30に使用する吸着剤は、ゼオライト、シリカゲル、活性炭などによって構成されるとよいが、二酸化炭素及びBTEX等の気相不純物を効率的に除去する観点から、ゼオライト、シリカゲルが好ましく、ゼオライトがより好ましい。
【0023】
真空ポンプ40は、圧力スイング吸着装置30の吸着剤が備えられている吸着部を減圧することで、吸着剤に吸着している気相不純物を脱離して排出を促す。真空ポンプ40によって脱離した気相不純物は、真空ポンプ40に備える吐出路41から吐出される。つまり、真空ポンプ40は、圧力スイング吸着装置30の吸着剤の表面に気相不純物が蓄積されるのを防ぐことができ、吸着剤の吸着能力を長期間維持することができる。
また、真空ポンプ40は、再生工程において、圧力スイング吸着装置30を減圧することで、吸着剤に吸着している気相不純物のみならず、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分も除去することができる。真空ポンプ40が吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分の一部を再生工程で除去することで、後の精製工程において同じ吸着部に原料ガスG1を通過させた際に、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分が原料ガスG1中に含有してしまうことを防ぐことができる。つまり、真空ポンプ40は、精製工程において、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分が原料ガスG1中に含有することを防ぎ、安定的に精製ガスG2を供給することができる。
【0024】
以下、図2を用いて圧力スイング吸着装置30についてより詳細に説明する。なお、以下の説明では、圧力スイング吸着装置30が、2つの吸着塔を有する例を説明する。ただし、圧力スイング吸着装置30における吸着塔は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。
図2に示すように、圧力スイング吸着装置30は、第1及び第2吸着塔31,32を備え、第1及び第2吸着塔31,32に原料ガスG1を供給するための導入路21が接続される。
【0025】
導入路21は、2本の分岐路21a,21bに分岐され、各分岐路21a,21bが第1及び第2吸着塔31,32の一端31a,32bそれぞれに接続される。そして、各分岐路21a,21bには、バルブ22a,22bが取り付けられている。
また、導入路21には加圧手段23が設けられ、加圧手段23によって加圧された原料ガスG1が、各分岐路21a,21bを介して、第1吸着塔31又は第2吸着塔32に供給される。加圧手段23としては、公知のものであればよく、例えばブロアー装置を使用すればよい。原料ガスG1は、加圧手段23によって例えばゲージ圧で0~100kPa、好ましくはゲージ圧で20~80kPaに加圧されるとよい。
導入路21では、バルブ22aが開放され、かつバルブ22bが閉じられることで、第1吸着塔31に原料ガスG1が供給される。また、バルブ22bが開放され、かつバルブ22aが閉じられることで、第2吸着塔32に原料ガスG1が供給される。
【0026】
第1吸着塔31又は第2吸着塔32に原料ガスG1が供給されることで、各吸着塔において精製工程が行われる。具体的には、原料ガスG1が供給された一方の吸着塔(第1及び第2の吸着塔31,32のいずれか)は、その一端31a,32aから原料ガスG1が塔内部に導入される。
塔内部に導入された原料ガスG1は、第1吸着塔31又は第2吸着塔32の内部を通過させ、その他端31b,32bから排出される。原料ガスG1は、第1吸着塔31又は第2吸着塔32を通過することで、原料ガスG1に含まれる不純物が吸着剤によって吸着される。したがって、第1吸着塔31又は第2吸着塔32の他端31b,32bから排出されたガスは、吸着塔21によって精製されたガス(精製ガスG2)として、供給路33(33a又は33b)を介して有価物生成反応部110に供給される。
【0027】
圧力スイング吸着装置30は、真空ポンプ40を備え、真空ポンプ40は減圧路42を介して第1吸着塔31又は第2吸着塔32に接続される。減圧路42は、分岐して2本の減圧路42a,42bが設けられ、各減圧路42a,42bが第1及び第2吸着塔31,32の一端31a,32bに接続される。真空ポンプ40は、減圧路42a又は減圧路42bを介して、第1吸着塔31又は第2吸着塔32の内部を吸引して減圧させることができる。減圧路42a,42bのそれぞれには、バルブ43a,43bが設けられる。
【0028】
第1吸着塔31は、バルブ43aを開放し、バルブ34aを閉じた状態とし、かつバルブ43bを閉じた状態で真空ポンプ40により減圧することで第1吸着塔31において再生工程が行われる。また、第2吸着塔32でも、バルブ43bを開放し、バルブ34bを閉じた状態とし、かつバルブ43aを閉じた状態で真空ポンプ40により減圧することで第2吸着塔32において再生工程が行われる。
また、上記再生工程は、精製工程と並行して進行させるとよい。具体的には、一方の吸着塔に廃棄物由来の原料ガスG1を通過させながら、他方の吸着塔を真空ポンプ40により吸引して減圧状態にし、次いで、真空引きを終了した後に窒素ガス等のパージガスによりパージすることで他方の吸着塔で再生工程を行うとよい。再生工程に使用されるパージガスは、第1及び第2吸着塔31,32の他端31b,32bに設けられるパージ路(図示せず)から塔内部に導入される。塔内部に導入されたパージガスは、第1及び第2吸着塔31,32の内部を通過し、第1及び第2吸着塔31,32の一端31a,32bから減圧路42を介して排気ガスとして排気される。
さらに、第1及び第2吸着塔31,32それぞれにおいては、各バルプの開閉を繰り返して、上記した精製工程と、再生工程を交互に繰り返すとよい。本実施形態では、このように吸着塔を複数個設けて、その複数個の吸着塔で原料ガスG1を順次精製することで原料ガスを吸着塔により連続的に精製されることになる。
【0029】
真空ポンプ40は、再生工程において、第1及び第2吸着塔31,32を減圧することで、吸着剤に吸着している気相不純物を除去する再生のみならず、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分も除去する。真空ポンプ40によって除去された吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分は、吐出路41から吐出される。真空ポンプ40が吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分の一部を再生工程で除去することで、後の精製工程において同じ吸着部に原料ガスG1を通過させた際に、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分が原料ガスG1中に含有してしまうことを防ぐことができる。つまり、真空ポンプ40は、精製工程において、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分が原料ガスG1中に含有することを防ぎ、安定的に精製ガスG2を供給することができる。
【0030】
圧力スイング吸着装置30の各吸着塔31,32で行われる精製工程は、所定時間継続して行うとよく、例えば、0.1~10分、好ましくは0.5~5分行うとよい。
また、第1及び第2の吸着塔31,32のそれぞれは、再生工程において、真空ポンプ40により例えば、ゲージ圧で0~-101.3kPa、好ましくはゲージ圧で-60~-98kPaに減圧される。各吸着塔内部の圧力を上記範囲内とすることで、吸着剤に吸着された不純物を適切に脱離させることができる。さらに、各吸着塔において真空ポンプ40による減圧は、精製工程と同程度もしくは、真空ポンプに消費される電力の観点から、より短い時間行うとよく、例えば、上記精製工程の時間の0~70%好ましくは5~50%短い時間で行うとよい。
【0031】
<有価物生成反応部>
圧力スイング吸着装置30で不純部が除去されたガスは、必要に応じて、後段処理部(図示しない)で適宜処理された後に、精製ガスG2として、有価物生成部110に供給される。
後段処理部としては、特に限定されないが、温度スイング吸着装置、銅、パラジウム等の金属触媒、各種フィルタなどの各種清浄装置などが挙げられる。もちろん、後段処理部は省略されてもよい。
【0032】
有価物生成部110は、有機触媒又は金属触媒などの触媒を有する。有価物生成部110において、精製ガスG2は、有機触媒又は金属触媒などの触媒に接触して、有価物に変換される。有価物は、合成ガスから変換することが可能な有機化合物であれば特に限定されないが、エタノールが好ましい。エタノールは、合成ガスに含まれる水素及び一酸化炭素より容易に合成できる。また、有価物生成部110に使用される触媒としては、有機触媒が好ましい。有機触媒としては、ガス資化性微生物が好ましく使用される。
ガス資化性微生物を用いてエタノールに変換する場合、ガス資化性微生物が充填された発酵槽の内部に合成ガスを供給し、微生物発酵槽にて合成ガスを微生物発酵させて、エタノールを製造する。ガス資化性微生物としては、例えば上掲特許文献2、国際公開第2011/087380号、米国特許第2013/0065282号等に開示された嫌気性細菌を用いることができる。
図示は省略するが、有価物生成反応部110の後段には、蒸留塔を含む精製部が設けられており、精製部によってエタノール等の有価物が抽出される。
【0033】
[精製ガスの製造方法]
第1の実施形態に係る精製ガスの製造方法は、図3に示すように、固相化不純物除去工程S11と、不純物除去工程S12とを含む。以下に、第1の実施形態に係る精製ガスの製造方法を図1及び図3を参照して説明する。
【0034】
<固相化不純物除去工程>
固相化不純物除去工程S11において、原料ガスG1中の固相化した相転移性不純物を除去する。
具体的には、原料ガスG1を相転移性不純物除去部20に備えるフィルタに通すことで、固相化した相転移性不純物をフィルタで除去する。
また、相転移性不純物除去部20に備えるフィルタは、原料ガスG1中のスス及びタール等の固液相不純物の一部を除去することができる。
【0035】
<不純物除去工程>
不純物除去工程S12において、固相化不純物除去工程S11後の原料ガスG1を真空ポンプ40と組み合わせた圧力スイング吸着装置30に通し、原料ガスG1中の不純物を除去する。
具体的には、固相化不純物除去工程S11後の原料ガスG1を圧力スイング吸着装置30の吸着剤が備えられている吸着部に通すことで、原料ガスG1中の二酸化炭素及びBTEX等の気相不純物を吸着部に吸着させて除去する。
次いで、真空ポンプ40によって、圧力スイング吸着装置30の吸着剤が備えられている吸着部を減圧することで、吸着剤に吸着している気相不純物を脱離させる。そして、真空ポンプ40は、気相不純物を含む排気を吐出路41から吐出する。
また、真空ポンプ40は、圧力スイング吸着装置30を減圧することで、吸着剤に吸着している気相不純物のみならず、吸着剤に残存する相転移性不純物及び水分も除去する。そして、真空ポンプ40は、相転移性不純物及び水分を含む排気を吐出路41から吐出する。
不純物除去工程S12を経て生成した精製ガスG2は、有価物生成反応部110に導入され、有価物生成反応部110によって、精製ガスG2からエタノール等の有価物を生成する。
【0036】
本発明の第1の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、真空ポンプと組み合わせた圧力スイング吸着装置を用いることによって、真空ポンプが圧力スイング吸着装置の吸着剤の表面に不純物が蓄積されるのを防ぐことができ、圧力スイング吸着装置の吸着剤の吸着能力を長期間維持することができる。
また、真空ポンプは、原料ガス中の相転移性不純物の一部を排出することができるので、相転移性不純物除去部と併せて原料ガス中に含有する相転移性不純物を除去することができ、メインストリームに設置されているフィルタが相転移性不純物によって詰まることを抑制することができる。このことにより、フィルタ交換等のメンテナンスを軽減し、運転コストを低減することができる。
また、真空ポンプは、原料ガス中の水分の一部を排出することができるので、原料ガス中の水分を排出する役割の一部を担うことができ、冷却部で冷却させて凝縮するのみで原料ガス中の水分を排出するより電気使用量等の運転コストを低減することができる。
また、本発明の第1の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、廃棄物由来ガスである原料ガス中の不純物を効率よく除去することができ、ガス資化性微生物を安定的に培養することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では、第2の実施形態について、第1の実施形態と重複するものについては説明を省略し、第1の実施形態との相違点を説明する。
第2の実施形態におけるガス精製装置1bは、図4に示すように、相転移性不純物除去部20の上流側に冷却部10をさらに備える。
【0038】
<冷却部>
冷却部10は、導入された原料ガスG1を冷却し、相転移性不純物を固相化させる。冷却温度は、冷却部10で除去する相転移不純物量に応じて決定される。原料ガス生成設備100における生成時又は原料ガス生成設備100からの供出時における原料ガスG1の温度は、常温より高温であり、例えば30℃~数百℃程度である。ここで、相転移温度とは、相転移性不純物が相転移する温度をいい、具体的には、相転移性不純物が昇華する温度をいう。つまり、冷却部10の冷却目標温度は、原料ガスG1に含有する相転移性不純物の相転移(例えば、ナフタレンの昇華固化)が十分に起き得る範囲で設定されている。冷却部10の冷却目標温度としては、相転移性不純物の相転移温度を包含するものであればよく、5℃以上40℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることがより好ましく、15℃以上35℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上30℃以下であることがよりさらに好ましい。冷却部10において、冷却する温度が上記下限以上であることで、メインストリームにおける配管及びフィルタ等での凍結による詰まりを防止することができる。また、冷却する温度が上記下限以上であることで、温度を下げるエネルギーを抑制すことができ、運転コストを低減することができる。本発明の構成を取ることで、例えば20℃以上という比較的高温条件で冷却部10を運転しても圧力スイング吸着装置30で相転移性不純物を除去できるため問題が無く、また真空ポンプ40の稼働に必要なエネルギーは冷却に必要なエネルギーと比べ小さいため、この場合エネルギー的に有利である。さらに、冷却する温度が上記下限以上であることで、相転移性不純物が固相化しすぎてフィルタ等で詰まりが生じるのも防ぐことができる。
冷却部10から圧力吸着スイング装置30までの間の原料ガスG1の温度は、上記下限以上となることから、原料ガスG1の成分が凍結することでフィルタ等において詰まりを生じさせることがない。また、適宜温度を調整することによって原料ガスG1中の相転移性不純物が固相化しすぎてフィルタ等で詰まりが生じることも防ぐことができる。
【0039】
冷却部10としては、例えば、熱交換器(チラー)及びスクラバー等が挙げられる。
冷却部10としての熱交換器(チラー)は、複数の冷却管によって構成されている多管式の熱交換器であることが好ましい。冷却部10が多管式の熱交換器である場合、冷却管は、洗浄容易性の観点から、直管であることが好ましく、それぞれ管軸を上下へ向けて、互いに平行に並べられていることが好ましい。冷却管の外部には、エチレングリコール等の冷媒が流れており、冷却管の内部を流れる冷却部10に導入された原料ガスG1を冷却する。冷却部10は、ドレイン路11を備え、冷却によって凝縮した原料ガスG1中の相転移性不純物や水分をドレイン路11から排出する
冷却部10としてのスクラバーは、水スクラバーであることが好ましい。冷却部10が水スクラバーである場合、内部の循環水を供給する循環水供給路(図示せず)を備える。また、水スクラバーは内部に原料ガスG1と循環水の気液接触効率を上げる為の充填材を持つことが好ましい。さらに、水スクラバーは外部に熱交換器を持ち、水スクラバー内部の循環水は熱交換器の冷却によって一定温度に保たれている。冷却部10に導入された原料ガスG1は、水スクラバー内部の循環水と気液接触し、冷却される。冷却部10は、ドレイン路11を備え、冷却によって凝縮した原料ガスG1中の相転移性不純物や水分を循環水とともにドレイン路11から排出する。
【0040】
第2の実施形態に係る精製ガスの製造方法は、図5に示すように、冷却工程S10をさらに含む。
【0041】
<冷却工程>
冷却工程S10において、原料ガスG1を相転移性不純物の相転移温度まで冷却する。
具体的には、原料ガス生成設備11で生成された原料ガスG1を冷却部10によって冷却する。原料ガス生成設備100で生成された原料ガスG1は、冷却部10で相転移性不純物の相転移温度以下まで冷却することによって、原料ガスG1中に含有する相転移性不純物を固相化させる。
また、冷却部10で原料ガスG1を冷却することによって、原料ガスG1中の水分の一部が凝縮し、その凝縮水は、ドレイン路11から排出される。
【0042】
本発明の第2の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、第1の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法に記載した同等の効果を奏し得る。
さらに、本発明の第2の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、原料ガスを冷却部で転移温度以下まで冷却することによって、原料ガス中に含有する相転移性不純物を固相化させることができ、相転移性不純物除去部で相転移性不純物を効率よく除去することができる。このことにより、メインストリームに設置されているフィルタが相転移性不純物によって詰まることを抑制することができ、フィルタ交換等のメンテナンスを軽減し、運転コストを低減することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。以下では、第3の実施形態について、第2の実施形態と重複するものについては説明を省略し、第2の実施形態との相違点を説明する。
第3の実施形態におけるガス精製装置1cは、図6に示すように、真空ポンプ40の下流側である吐出路41に固液不純物除去部50をさらに備える。
【0044】
固液不純物除去部50は、真空ポンプ40から吐出された排気ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去する。具体的には、固液不純物除去部50は、真空ポンプ40の吐出後においては気相であるが、真空ポンプ40から離れることによって常温及び常圧下になることで固相化又は液相化する不純物を除去する。したがって、固液不純物除去部50は、真空ポンプ40の下流側である吐出路41であって、固相化又は液相化する不純物が生じる箇所以降に設けられることが好ましい。固液不純物除去部50が除去する固相不純物としては、例えば、温度の低下によって固相化した相転移性不純物及び塵埃等が挙げられる。固液不純物除去部50が除去する液相不純物としては、例えば、液相化した水滴等が挙げられる。
固液不純物除去部50としては、固相不純物及び液相不純物を除去することができるものであれば特に限定はなく、例えば、ミストセパレータが挙げられる。ミストセパレータとしては、特に限定はなく、例えば、金属、樹脂、繊維及びセラミック等のフィルタが挙げられ、これらを組み合わせたものであってもよい。フィルタは、単層メッシュ構造であってもよく、多層メッシュ構造であってもよい。フィルタの目の粗さは、固相不純物及び液相不純物を除去できる程度のものであればよく、目の粗さを比較的粗くすることで、固相不純物、液相不純物及び凝縮水等によって詰まることが抑制でき、フィルタの交換頻度を少なくすることができる。
【0045】
第3の実施形態に係る精製ガスの製造方法は、図7に示すように、固液不純物除去工程S13をさらに含む。
【0046】
<固液不純物除去工程>
固液不純物除去工程S13において、図6に示すように、真空ポンプ40から吐出された排気ガスを固液不純物除去部50に通し、排気ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去する。
具体的には、不純物除去工程S12後の原料ガスG1を固液不純物除去部50に通すことで、固相化不純物除去工程S11及び不純物除去工程S12で除去しきれなかった原料ガスG1中の不純物を除去する。特に、固液不純物除去部50によって、真空ポンプ40の吐出後においては気相であるが、真空ポンプ40から離れることによって常温及び常圧下になることで固液相化する不純物を除去することで、真空ポンプ40の吐出後の吐出路41,51での詰まりを抑制することができる。
【0047】
本発明の第3の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、第1及び第2の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法に記載した同等の効果を奏し得る。
さらに、本発明の第3の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、固液不純物除去部によって原料ガス中の固相不純物及び液相不純物を除去することで、真空ポンプの吐出路における詰まりも抑制することができる。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。以下では、第4の実施形態について、第2の実施形態と重複するものについては説明を省略し、第2の実施形態との相違点を説明する。
第4の実施形態におけるガス精製装置1d,1eの真空ポンプ40は、図8及び図9に示すように、吐出する排気ガスの流路として選択可能な複数の吐出路41a,41bを備える。
【0049】
図8に示すガス精製装置1dにおいては、真空ポンプ40は、複数の吐出路41a,41bと同数の吐出口を備える。この場合、真空ポンプ40の吐出する排気ガスの流路は、吐出路41a,41bのそれぞれに備えるバルブ44a,44bによって選択可能となっている。ガス精製装置1dにおける真空ポンプ40は、バルブ44aが開放され、かつバルブ44bが閉じられることで、吐出路41aから吐出される。また、ガス精製装置1dにおける真空ポンプ40は、バルブ44bが開放され、かつバルブ44aが閉じられることで、吐出路41bから吐出される。
【0050】
図9に示すガス精製装置1eにおいては、真空ポンプ40は、1つの吐出口を備え、吐出口に接続された吐出路41から分岐する複数の吐出路41a,41bを備える。この場合、真空ポンプ40の吐出する排気ガスの流路は、吐出路41a,41bのそれぞれに備える上流側のバルブ42a,42b及び下流側のバルブ43a,43bによって選択可能となっている。ガス精製装置1eにおける真空ポンプ40は、バルブ44a,45aが開放され、かつバルブ44b,45bが閉じられることで、吐出路41aから吐出される。また、ガス精製装置1eにおける真空ポンプ40は、バルブ44b,45bが開放され、かつバルブ44a,45bが閉じられることで、吐出路41bから吐出される。
【0051】
本発明の第4の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、第1及び第2の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法に記載した同等の効果を奏し得る。
さらに、本発明の第4の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、真空ポンプから吐出する排気ガスの流路として選択可能な複数の吐出路を備えることで、いずれかの吐出路に詰まりが生じた場合であっても、他の吐出路によって運転を続けることができる。また、真空ポンプから吐出する排気ガスの流路として選択可能な複数の吐出路を備えることで、運転に使用していない吐出路の洗浄を行うことができ、詰まりを予防することができる。さらに、吐出口が複数あることで、例えば1つの吐出口が詰まったとしても原料ガスのメインストリームが閉塞することがないため、ガス精製を継続的に行えることや、発酵槽への原料ガス供給停止リスクを下げる、もしくは無くすことが可能という利点がある。これにより精製した原料ガスが継続的に発酵槽に入るため、有機物質の生産性維持や触媒活性の維持を可能とする。なお触媒が微生物の場合、原料組成の突然の変化に伴い活性低下が起こることや、原料ガスの供給停止により最悪死滅することがある。
一方、従来は冷却部の配管が詰まるため、原料ガスのメインストリームが閉塞してしまう。この場合、メインストリームの閉塞を防ぐには冷却部を複数併設するしか手段がなく、これは多大なコストが必要となることや、ストリームの切り替えの手間などの課題が生じる。
また、配管径を太くすることで外気への熱伝導率が低下し、冷えにくくなるために析出量を減らすことができる。配管の外形は太いほど冷却抑制効果があり、例えば、配管の外形を165.2mm以上にすることが望ましい。
【0052】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。以下では、第5の実施形態について、第2の実施形態と重複するものについては説明を省略し、第2の実施形態との相違点を説明する。
第5の実施形態におけるガス精製装置1fは、図10に示すように、真空ポンプ40の吐出側に、吐出する排気ガスの圧力を測定する圧力計60を備える。
【0053】
圧力計60は、真空ポンプ40の吐出側(例えば、吐出路41)を流れる排気ガスの圧力を測定する。圧力計60は、測定した圧力データを制御部61に送信する。制御部61は、受信した圧力データに基づいて、真空ポンプ40から吐出する排気ガスの流路を選択する制御を行う。制御部61による制御としては、例えば、受信した圧力データが所定値より高くなった場合に、現状の選択している流路に詰まりが生じていると判断し、別の流路を選択する制御を行う。
圧力計60の設置箇所は、図10に示したように、真空ポンプ40の吐出側の直後の吐出路41に限られず、複数の吐出路41a,41bに設置する形態であってもよい。
【0054】
本発明の第5の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、第1及び第2の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法に記載した同等の効果を奏し得る。
さらに、本発明の第5の実施形態に係るガス精製装置及び精製ガスの製造方法によれば、真空ポンプの吐出側に排気ガスの圧力を測定する圧力計を備えることによって、吐出路の圧力を把握することができ、吐出路の詰まり等による圧力上昇等の異常を直ぐに察知し、対応することができる。
【0055】
(その他の実施の形態)
以上のように、本発明の実施形態を参照しつつ具体的に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されない。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り様々な改良が可能である。
例えば、第3の実施形態に係るガス精製装置1cと第4の実施形態に係るガス精製装置1eとを組み合わせる形態としてもよい。具体的には、その他の実施形態に係るガス精製装置1gとしては、図11に示すように、固液不純物除去部50を真空ポンプ40の下流側の直後であって、複数の吐出路41a,41bに分岐する前に設けてもよい。また、その他の実施形態に係るガス精製装置1hとしては、図12に示すように、固液不純物除去部50を複数の吐出路41a,41bのそれぞれに設けてもよい。また、その他の実施形態に係るガス精製装置1iとしては、図13に示すように、固液不純物除去部50を複数の吐出路41a,41bが合流した後に設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1a~1i:ガス精製装置
10:冷却部
11:ドレイン路
20:相転移性不純物除去部
21:導入路
22a,22b:バルブ
23:加圧手段
30:圧力スイング吸着装置
31:第1吸着塔
32:第2吸着塔
33,33a,33b:供給路
34a,34b:バルブ
40:真空ポンプ
41,41a,41b:吐出路
42,42a,42b:減圧路
43a,43b:バルブ
44a,44b,45a,45b:バルブ
50:固液不純物除去部
60:圧力計
61:制御部
100:原料ガス生成設備
110:有価物生成反応部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13