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特許7547356Srcキナーゼ阻害剤を使用して線維性疾患若しくは線維性状態又は間質性肺疾患を処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】Srcキナーゼ阻害剤を使用して線維性疾患若しくは線維性状態又は間質性肺疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20240902BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/496
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K31/4418
A61P1/16
A61P9/00
A61P7/00
A61P1/00
A61P17/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P13/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021550035
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2020051642
(87)【国際公開番号】W WO2020174420
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】62/811,009
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】カズンズ,レスリー
(72)【発明者】
【氏名】ニベンズ,チャド
(72)【発明者】
【氏名】エスコット,キャサリン ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】モンクリー,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】プラッセ,アンティエ
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】N Engl J Med.,2014年,370,pp.2071-2082
【文献】N Engl J Med.,2014年,370,pp.2083-2092
【文献】Alzheimer's Research & Therapy,2015年,7,35, pp.1-11
【文献】J Pharmacol Exp Ther.,2014年,351,pp.87-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の特発性肺線維症(IPF)を処置するための医薬であって、サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩を含み、前記IPFは、異常なコラーゲン沈着を特徴とするか、又は高解像度コンピュータ断層撮影(HRCT)若しくは生検により決定された、病変若しくは瘢痕の持続性で消耗性の異常形成を特徴とする、医薬。
【請求項2】
前記IPFは、上皮間葉転換(EMT)をさらに特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記IPFは、コラーゲンI、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加をさらに特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
前記IPFは、sVEGF、及び/又はsIL-8、及び/又はsIL-6の発現の増加をさらに特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記IPFは、VCAM-1の発現の減少をさらに特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記IPFは、細胞外マトリックス(ECM)形成をさらに特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
ヒト患者の特発性肺線維症(IPF)を処置するための医薬であって、サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩を含み、前記サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩は、ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量と組み合わせて、前記ヒト患者に投与される、医薬。
【請求項8】
前記IPFは、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする、請求項に記載の医薬。
【請求項9】
a.サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩と、
b.ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量と
を含む医薬組み合わせであって、
サラカチニブは、75~500mgの量で存在し、例えば90~135mg、例えば100~125mg、例えば約100mg、又は例えば約125mgの量で存在する、
医薬組み合わせ剤。
【請求項10】
サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回の投与用の経口剤形である、請求項に記載の医薬組み合わせ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ある特定のSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、ヒト等の温血動物の線維症及び線維性状態(例えば特発性肺線維症)の処置でのこの使用とに関する。本開示はまた、ヒト等の温血動物の線維症及び線維性状態(例えば、特発性肺線維症等の間質性肺疾患)の処置のための、前記Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の単独での又は少なくとも1種の追加の治療薬との組み合わせでの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
リモデリングは、組織の損傷及び炎症に対する正常な反応であり、全身の多くの組織で観察される。炎症の消散及び組織損傷の修復の後、この組織は、一般的にはその元の状態に戻る。しかしながら、過度の制御されていない組織修復、又はもはや必要とされない場合でのリモデリングの停止の失敗により、線維症を特徴とする状態が引き起こされる。線維症は、典型的には、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞の過形成又は異常増殖の後に生じる細胞外マトリックス成分の蓄積を伴う。組織線維症の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:肺線維症、腎線維症、心筋線維症、肝硬変及び肝臓の線維症、皮膚の瘢痕及びケロイド、癒着、線維腫症、アテローム性動脈硬化症、並びにアミロイドーシス。線維症は、影響を受けた臓器の正常な機能を著しく損なうことが多く、多くの線維性状態は、実際に、生命を脅かすか、又は著しく外観を損なう。残念ながら、これらの疾患の処置選択肢は限られており、臓器移植等の危険を伴い且つ費用がかかる手順が、利用可能な唯一のアプローチであることが多い。
【0003】
未だ対処されていない高い臨床ニーズを有する特に重度の線維性状態の一例は、特発性肺線維症(IPF)である。IPFは、肺実質の瘢痕化(線維化)を特徴とする慢性で絶え間なく且つ最終的には致命的な障害である。この疾患は、消耗性の咳、肺機能の低下、疲労、及び呼吸困難を引き起こし、高レベルの酸素補充が必要であることから、身体活動が制限され、患者の生活の質及び自立が時間と共に劇的に低下する。IPFの患者の生存期間の中央値は、2.5年~3.5年の範囲であり、ほとんどの患者は、疾患の悪化に起因する呼吸不全により死亡する(非特許文献1)。
【0004】
IPFの疾患病理はあまり理解されておらず、薬物処置の選択肢はほとんどない(非特許文献2)。2014年に、FDAは、IPFの処置のための2種の新規の抗線維化剤ピルフェニドン(Esbriet(登録商標))及びニンテダニブ(OFEV(登録商標))を承認した。ピルフェニドンの作用機序は、完全には立証されていない。ニンテダニブは、PDGFRα及びβ受容体キナーゼ、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR1~3)キナーゼ、並びに線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR1~3)キナーゼを特異的に標的とするチロシンキナーゼ阻害剤である。臨床試験及び現実の経験から、平均して、両方の薬物も肺機能の低下速度を遅延させるが、反応にはばらつきがあり、好ましくない安全性に起因して服薬順守が困難であり、どちらの薬物も、肺機能の進行性低下を停止させないことが実証されている。さらに、どちらの薬物も、IPFを治療しないか、症状を改善しないか、又は全生存期間の利益を示さない。重要なことに、これら2剤による臨床経験から、抗線維化治療の開始後1年では、患者のほぼ40%で処置が中断されており、終了の最も多い理由は、消化管又は皮膚の有害な副作用であった(非特許文献3、及び非特許文献4)。さらに、軽度から中程度のIPFに適応されるピルフェニドンによる処置は、非常に高い及び頻繁な用量を設定する必要があり、このことは、安全性及び患者の服薬順守の両方での問題を示す。15日目以降のピルフェニドンの1日当たりの推奨される用量は、2403mg/日であり、患者は、1日当たり9個のEsbriet(登録商標)カプセル(3個の267mgカプセルを食事と一緒に1日3回)を服用する必要がある。
【0005】
2014年におけるEsbriet(登録商標)及びOFEV(登録商標)の米国での承認にもかかわらず、IPFは、患者の生活の質を損ない且つ医療の利用及び費用を押し上げる慢性的で致命的な疾患のままである。そのため、生活の質を維持する/回復させるためにIPFの様々な形態/ステージの経過を安全に且つより確実に変更する、より有効な治療法の開発が急務のままである。
【0006】
サラカチニブ(Saracatinib)(ADZ0530)は、シグナル伝達に関与する他のタンパク質キナーゼよりも選択性が高い、チロシンキナーゼのSrcファミリの強力な阻害剤である(非特許文献5及び非特許文献6)。この化合物及びその製造は、腫瘍の処置のためのキナゾリン誘導体の使用に関する特許文献1に開示されている。サラカチニブは、最初は癌の処置用に開発されたが、臨床試験では、この適応症で十分な有効性が示されなかった。サラカチニブはまた、アルツハイマー病でも研究されている(非特許文献7)。
【0007】
サラカチニブはまた、ブレオマイシンマウス肺線維症モデルでも試験されており、筋線維芽細胞の分化に影響を及ぼすことが分かっている(非特許文献8)。ブレオマイシンマウスには、実施が非常に容易であり、且つIPFで見られる組織学的変化とある程度の類似性があるという利点がある。しかしながら、この疾患モデルで多数の薬剤が試験されており、ある程度の活性を示すことが分かったが、この活性がヒトで再現されるほど進展しているものは比較的少ない(非特許文献9)。この理由の一つは、このモデルが、後に線維化段階となる急性炎症成分を有しており、そのためにIPFが再現されず、従って、臨床使用での化合物の活性のプロファイルに関する情報の提供に関して価値が制限されるということである。ブレオマイシンチャレンジモデルでは、多くの抗炎症機序が有効であることが実証されているが、臨床的有用性は示されていない(例えば、トラロキヌマブ(tralokinumab)、レブリキズマブ(lebrikizumab)、IL-4/13のSNYプログラム)。Huらにより認められているように、ブレオマイシン処置により、齧歯類では肺線維症が誘発され、その結果として生じる線維症は、ヒト肺線維症の多くの重要な特徴を共有するが、ブレオマイシンモデルは、ヒトIPFを再現せず、進行性線維症のモデルでははい。線維症は、ブレオマイシンの点滴注入後3~4週しか持続せず、その後に自然回復する傾向があり、肺は、ほぼ正常な状態に戻り、線維症は最小限に抑えられる。線維症の自然回復を示すことによりヒト疾患とは異なることに加えて、ブレオマイシンモデルはまた、過形成性のII型肺胞上皮細胞(AEC)、細気管支化、及びハニカム嚢胞(honeycomb cyst)等の、ヒトでの疾患の進行と決定的に関連する他の細胞型、プロセス、及び構造も欠いている。患者のIPFの緩やかで可逆的な進行という態様は、ブレオマイシンモデルでは再現されず(非特許文献10)、従って、ブレオマイシンモデルは、ヒトIPFの進行性で不可逆的な性質の理解に関して大きな限界がある。このことは、進行性IPFの様々な病期及び/又は様々な形態での化合物の臨床活性を評価することになっている場合に特に関連する。
【0008】
IPFは、ステージ及び重症度を特徴とし得る異質性疾患と認識されている。公開されている研究は、IPFの臨床経過は様々であるが、例えば、線維症がより急速に進行する患者の別個の下位群が存在することを示唆している(非特許文献11及び非特許文献12)。近年では、Herazo-Mayaらは、IPFの患者の死亡率及び無移植生存率を予測する末梢血トランスクリプトームシグネチャを特定するレトロスペクティブ研究を公開した(非特許文献13)。このシグネチャは、FVCと相関しており、治療を行なわないと、経時的に安定している。小さい患者群からのデータは、治療的介入に反応して、高リスクプロファイルが正常化されることを示唆する。局所的肺環境下で、Prasse他は、IPF患者からの気管支洗浄サンプルにおいて、気道基底細胞により駆動され且つ死亡率又は肺移植のリスクが高いか低いかを予測するトランスクリプトームシグネチャを特定している(非特許文献14)。これらの結果は、疾患の進行及び治療に対する反応のバイオマーカーへの重要な洞察を提供し、新規の治療標的を暗示する可能性がある。そのような患者の様々な群で効果的な処置を達成することは、困難である。この不均一性にもかかわらず、現在の薬物はいずれも、肺機能の進行性喪失を停止させないか、疾患を回復させないか、又はIPFを治癒しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第01/94341号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【文献】Raghu G,et al.,Am J Respir Critical Care Med 2015;Vo.192,No.2:https://doi.org/10.1164/rccm.201506-1063ST
【文献】Mason D P et al.,Ann Thoracic Surgery 84:1121-8,2007
【文献】Corte T,et al.,Respiratory research 2015;16:116
【文献】Xaubet A,et al.,Am J Respir Critical Care Med 2003;168(4):431-5
【文献】Chang YM,et al.,Oncogene 2008:27(49):6365-75
【文献】Greet TO et al.,Mol Oncol.2009;3(3):248-61
【文献】Nygaard et al.,Alzheimer’s Res Therapeutic,2015;7(1):35
【文献】Hu M et al.,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics;2014,351:87-95
【文献】Moeller A, et al.,Int J Biochem Cell Biol.2008;40(3):362-282
【文献】Chua F,et al.,Am J Respir Cell Molecular Biology 2005;33(1):9-13
【文献】Ley B et al.,Ann Intern Med 2012;156(10):684-91
【文献】Martinez FJ,et al.2005;142(12):963-7
【文献】Herazo-Maya et al.Lancet Respir Med 2017;5:857-68
【文献】Prasse et al.2018 https://doi.org/10.1164/rccm.201712-2551OC,PMID:30141961
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、線維性疾患及び線維性状態の様々な形態及びステージの経過を安全に且つより確実に変更する、より有効な治療法の開発が急務なままであることは明らかである。
【0012】
驚くべきことに、本開示により、ある特定のSrcキナーゼ阻害剤(例えばサラカチニブ)は、異なる作用機序で作用し、線維性状態の処置のための既存の医薬品を上回る特定の利益を付与することが示されている。例えば、本開示により、ある特定のSrcキナーゼ阻害剤(例えばサラカチニブ)が、線維症の病理の複数の駆動因子を標的とし、特発性肺線維症(進行性の形態及び/若しくは特発性肺線維症の様々なステージを含む)等の線維症及び線維性状態の処置及び/若しくは予防で特に有効であり、並びに/又はピルフェニドン及びニンテダニブ等の既存の医薬品と比較した場合に、そのような状態に対して安全で許容性が良好な治療を付与することが実証されている。
【0013】
さらに、出願人はまた、ある特定のSrcキナーゼ阻害剤(例えばサラカチニブ)が、ヒト等の温血動物の線維症及び線維性状態(例えば特発性肺線維症)の処置のための少なくとも1種の追加の治療薬(例えば抗線維化剤)と組み合わせて使用される場合には、驚くほど有効であることも発見している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示のSrcキナーゼ阻害剤は、驚くべきことに、従来の処置方法とは異なる機序により、ある特定の線維症及び特定の線維性状態の処置で有効である。一実施形態は、この線維症及び線維性状態は、高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)又は生検により決定された、病変又は瘢痕の持続性で消耗性の異常形成を特徴とする。別の実施形態では、この線維症及び線維性状態は、異常なコラーゲン沈着を特徴とする。そのため、本開示は、ヒト患者のそのような線維症及び線維性状態を処置する方法に関する。そのような方法は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をこのヒト患者に投与することを含む。一実施形態では、このSrcキナーゼ阻害剤は、その安全で許容される用量では、臨床的に意義のある効力で、Srcキナーゼの阻害に関して選択的である。一実施形態では、この線維症及び線維性状態は、上皮間葉転換(EMT)を特徴とする。一実施形態では、この線維症及び線維性状態は、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする。一実施形態では、この線維性疾患又は線維性状態は、sVEGF、及び/又はsIL-8、及び/又はsIL-6の発現の増加を特徴とする。一実施形態では、この線維性疾患又は線維性状態は、VCAM-1の発現の減少を特徴とする。一実施形態では、この線維症及び線維性状態は、細胞外マトリックス(ECM)形成を特徴とする。
【0015】
本開示はまた、ヒト患者の、気道基底細胞媒介性の肺リモデリングを特徴とする間質性肺疾患を処置する方法にも関する。この方法は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をこのヒト患者に投与することを含む。一実施形態では、この間質性肺疾患(ILD)は、特発性肺線維症(IPF)、特発性非特異的間質性肺炎、分類不可能な特発性間質性肺炎、結合組織疾患随伴ILD(connective tissue disease-associated ILD)、関節リウマチ関連ILD(rheumatoid arthritis-related ILD)、線維性慢性過敏性肺炎、線維性慢性サルコイドーシス、及び他の職業性曝露に関連するILDから選択される。
【0016】
本開示はまた、ヒト患者の、好適には気道基底細胞媒介性の肺リモデリングを特徴とする肺線維症を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤の治療上有効な量を前記ヒト対象に投与することを含む方法にも関する。一実施形態では、この肺線維症は、高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)又は生検により決定された、病変又は瘢痕の持続性で消耗性の異常形成を特徴とする。一実施形態では、この肺線維症は、上皮間葉転換(EMT)を特徴とする。一実施形態では、この肺線維症は、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする。一実施では、この肺線維症は、細胞外マトリックス(ECM)形成を特徴とする。
【0017】
別の対象では、本開示は、ヒト患者の線維症及び線維性状態を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を、少なくとも1種の追加の治療薬と組み合わせて、このヒト患者に投与することを含む方法に関する。一実施形態では、この線維症又は線維性状態は、肺線維症である。別の実施形態では、この線維症又は線維性状態は、間質性肺疾患(ILD)である。別の実施形態では、この線維症又は線維性状態は、特発性肺線維症(IPF)である。一実施形態では、この少なくとも1種の追加の治療薬は、抗線維化剤である。一実施形態では、この間質性肺疾患(ILD)は、特発性肺線維症(IPF)、特発性非特異的間質性肺炎、分類不可能な特発性間質性肺炎、結合組織疾患随伴ILD、関節リウマチ関連ILD、線維性慢性過敏性肺炎、線維性慢性サルコイドーシス、及び他の職業性曝露に関連するILDから選択される。
【0018】
本開示はまた、Srcキナーゼ阻害剤を薬学的に適切な担体と一緒に含む医薬組成物の、必要な患者への投与による、ヒト患者の、本明細書で説明されている線維症及び線維性状態の処置の方法にも関する。
【0019】
本開示は、さらに、Srcキナーゼ阻害剤を少なくとも1種の追加の治療薬と組み合わせて含む、線維性疾患及び線維性状態の処置のための医薬組み合わせに関する。
【0020】
これ以降、添付の図面を参照し本開示の実施形態をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】200mg/kg BIDでのピルフェニドン(PIR)、30mg/kg BIDでのニンテダニブ(NIN)、1(0530-1)、3(0530-3)、又は10(0530-10)mg/kg BIDでのサラカチニブによる処置後での、ブレオマイシン(Bleo)により誘発された肺傷害及び線維症後のマウスでのヒドロキシプロリンレベルを示す。
図2】サラカチニブ(円形)、ニンテダニブ(三角形)、又ピルフェニドン(四角形)で処置されたヒト肺線維芽細胞の最大αSMAレベル%を示す。
図3】サラカチニブ(円形)、ニンテダニブ(三角形)、又ピルフェニドン(四角形)で処置されたヒト肺線維芽細胞の平均IL-6レベルを示す。
図4】サラカチニブ、ピルフェニドン、又はニンテダニブで処置された気道基底細胞(ABC)のオルガノイド形成を示す。
図5】示された濃度でのサラカチニブ(SARA)、ピルフェニドン(Prif)、又はニンテダニブ(Nin)で処置されたABCのオルガノイド形成のより高倍率の画像を示す。
図6】サラカチニブ、ピルフェニドン、又はニンテダニブで処置されたABCに関する光学密度/ウェル及びオルガノイドのカウント数/ウェルを示す。
図7】サラカチニブ(3.3μM)に関する相対的なタンパク質発現(化合物/ビヒクルコントロールの対数比)を示すDiscoverXアッセイ結果を示す。
図8】ニンテダニブ(1.1μM)に関する相対的なタンパク質発現(化合物/ビヒクルコントロールの対数比)を示すDiscoverXアッセイ結果を示す。
図9】サラカチニブのみ及びニンテダニブのみと比較して、サラカチニブ及びニンテダニブの組み合わせに関する相対的なタンパク質発現(化合物/ビヒクルコントロールの対数比)を示すDiscoverXアッセイ結果を示す。
図10】サラカチニブ(Sara)及びニンテダニブ(Ninte)のキナーゼツリー(kinase trees)を示し、各円形は、それぞれの分子により阻害されるキナーゼを示し、円形のサイズは、この阻害の効力を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書で使用される場合、語句「有効な量」は、処置される症状及び/又は状態を有意に且つ肯定的に変更する(例えば、肯定的な臨床反応を生じる)のに十分なSrcキナーゼ阻害剤の量、又はSrcキナーゼ阻害剤を含む組成物の量を意味する。医薬組成物で使用される有効成分の有効な量は、担当医の知識及び専門的技術内で、処置される特定の状態、この状態の重症度、処置期間、同時療法の性質、採用されている特定の有効成分、利用される特定の薬学的に許容される賦形剤/担体、及び同様の因子により様々であるだろう。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、妥当な利益/リスク比と一致して、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を起こすことなくヒト及び動物の組織との接触における使用に好適な、正当な医学的判断の範囲内である化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0024】
特定の数値への言及は、別途文脈が明確に指示しない限り、この特定の数値を少なくとも含む。値の範囲が表されている場合には、別の実施形態は、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。さらに、範囲で記された値への言及は、この範囲内のありとあらゆる値を含む。全ての範囲は、包括的であり且つ組み合わせ可能である。
【0025】
明確にするために本明細書では別々の実施形態の文脈で説明されている本開示のSrcキナーゼ阻害剤、組成物、及び方法のある特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせても提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本開示のSrcキナーゼ阻害剤、組成物、及び方法の様々な特徴はまた、別々に又は任意の部分組み合わせでも提供され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数を含む。
【0027】
先行詞「約」の使用により値が近似値として表されている場合には、この特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるだろう。
【0028】
用語「約」は、数値範囲、カットオフ、又は具体的な値に関して使用される場合には、列挙された値が、この列挙された値から最大10%程度変動し得ることを示すために使用される。本明細書で使用される数値の多くは実験的に決定されていることから、そのような決定は、異なる実験間で変動し得、且つ多くの場合には変動するであろうことを当業者は理解すべきである。本明細書で使用される値は、この固有の変動により過度に制限されると見なされるべきではない。そのため、用語「約」は、指定の値からの±10%以下の変動、±5%以下の変動、±1%以下の変動、±0.5%以下の変動、又は±0.1%以下の変動を包含するために使用される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「処置する」及び同様の用語は、下記を指す:症状の重症度及び/又は頻度を低下させること、症状及び/又は前記症状の根本的な原因を除去すること、症状及び/又はその根本的な原因の頻度又は可能性を低下させること、IPF等の線維症の進行を遅延させること(delaying)、予防すること、及び/又は遅延させること(slowing)、並びにIPF等の線維症により直接的に又は間接的に引き起こされる損傷を改善すること、又は修復すること。本明細書で使用される場合は、処置するは、予防及び治療的処置を包含することが意図されている。
【0030】
Srcキナーゼ阻害剤
本開示により、ある特定のSrcキナーゼ阻害剤が線維症の処置用の既存の医薬品を超える特定の利益をもたらすことが実証されている。
【0031】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、選択的Srcキナーゼ阻害剤であり、即ち、このSrcキナーゼ阻害剤は、シグナル伝達に関与する他のタンパク質キナーゼよりもSrcファミリキナーゼに対して選択的である。好適には、Srcファミリは、c-Src、c-Yes、Lck、Lyn、及びFynを含み、特定の一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、c-Srcキナーゼ、c-Yesキナーゼ、Lckキナーゼ、Lynキナーゼ、及びc-Fynキナーゼに対して選択的である。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、c-Srcキナーゼ、c-Yesキナーゼ、Lckキナーゼ、Lynキナーゼ、及びc-Fynキナーゼのそれぞれに対するIC50アッセイが100nM以下であり、例えば、75、50、40、30、20、15、12、又は10nM以下である。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、PDGFRα及び/又はPDGFRβに対するIC50アッセイが1000nM超である。
【0032】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、c-Srcキナーゼに対して選択的であり、且つC-Srcキナーゼに対するIC50アッセイが100nM以下であり、例えば、75、50、40、30、20、15、12、10、8、6、4、又は約3nM以下である。さらなる実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、c-Yesキナーゼに対して選択的であり、且つc-Yesキナーゼに対するIC50アッセイが100nM以下であり、例えば、75、50、40、30、20、15、12、10、8、6、又は4nM以下である。さらなる実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、Lckキナーゼに対して選択的であり、且つLckキナーゼに対するIC50アッセイが100nM以下であり、例えば、75、50、40、30、20、12、10、6、又は4nM以下である。さらなる実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、Lynキナーゼに対して選択的であり、且つLynキナーゼに対するIC50アッセイが100nM以下であり、例えば、75、50、40、30、20、15、12、10、8、6、又は5nM以下である。さらなる実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、c-Fynキナーゼに対して選択的であり、且つc-Fynキナーゼに対するIC50アッセイが100nM以下であり、例えば、75、50、40、30、20、15、12、又は10以下である。さらなる実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、EGFRに対するIC50アッセイが200nM以下であり、例えば、150、100、70、又は約66nM以下である。
【0033】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、PDGFRα及び/又はPDGFRβに対するIC50アッセイが5000nM以上であり、例えば、6000、7000、10000nm以上である。
【0034】
チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、VEGFR阻害剤及びPDGFR阻害剤)は、様々な臓器(例えば、心臓、肺、肝臓、腎臓、甲状腺、皮膚、血液凝固、消化管、及び神経系)への毒性効果を伴う。そのため、PDGFRに対する活性の欠如は、Srcキナーゼ阻害剤の良好な許容性に有利に寄与し、それにより、安全性プロファイルの改善及び/又は患者の服薬順守の改善がもたらされ得る(Li et al.Eur J Clin Pharmacol.2017 Oct;73(10):1209-1217)。
【0035】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩である。図10は、サラカチニブの優れた選択性を図示する、サラカチニブ及びニンテダニブのキナーゼツリーを示す。サラカチニブは、化学名がN-(5-クロロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-7-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ)-5-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)キナゾリン-4-アミンであり、下記:
【化1】
で示される構造を有する。
【0036】
一実施形態では、サラカチニブは、フマル酸塩の形態である。別の実施形態では、サラカチニブは、ジフマル酸塩の形態である。サラカチニブ及びその類似体(例えば、その調製物)のさらなる詳細は、2001年12月13日に公開され且つ「Quinazoline Derivatives for the Treatment of Tumors」という表題の国際公開第01/94341号パンフレット;並びに2006年6月22日に公開され且つ「Chemical Process」という表題の国際公開第2006/064217号パンフレットで説明されており、これら両方の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、ダサチニブ、ボスチニブ、若しくはイマチニブ、又はこれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0037】
本Srcキナーゼ阻害剤の好適な薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩又は塩基塩である。そのような塩は、生理学的に非毒性である。
【0038】
薬学的に許容される酸付加塩の例として、下記が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、コリン、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、ジエチレンジアミン、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、2 ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メグルミン、2 ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、キナ酸塩、サルチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシレート(p トルエンスルホン酸塩)、トリフルオロ酢酸塩、及びウンデカン酸塩。
【0039】
薬学的に許容される塩基塩の例として、下記が挙げられる:アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩;有機塩基との塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン塩及びN メチルD グルカミン;並びにアミノ酸(例えば、アルギニン、リシン、オルニチン等)との塩。同様に、塩基性窒素含有基を、下記のような薬剤で四級化し得る:低級ハロゲン化アルキル、例えば、ハロゲン化メチル、ハロゲン化エチル、ハロゲン化プロピル、及びハロゲン化ブチル;硫酸ジアルキル、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル;硫酸ジアミル;長鎖ハロゲン化物、例えば、ハロゲン化デシル、ハロゲン化ラウリル、ハロゲン化ミリスチル、及びハロゲン化ステアリル;ハロゲン化アリールアルキル、例えば臭化ベンジル、並びに同類のもの。
【0040】
線維症
「線維症」又は「線維性疾患若しくは線維性状態」は、本明細書で使用される場合、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞の過形成、及び異常増殖の後に起こる細胞外マトリックス成分の蓄積を指す。組織線維症の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:肺線維症、腎線維症、心筋線維症、肝硬変及び肝臓の線維症、皮膚の瘢痕及びケロイド、癒着、線維腫症、アテローム性動脈硬化症、並びにアミロイドーシス。
【0041】
一態様では、線維症を処置する方法であって、本明細書で説明されているSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をヒト患者に投与することを含む方法が提供される。別の態様では、ヒト患者の線維症の処置での使用のための、本明細書で説明されているSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供される。一実施形態では、このSrcキナーゼ阻害剤は、その安全で許容される用量では臨床的に意義のある効力を示す。
【0042】
好適には、線維症及び線維性状態は、高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)又は生検により決定された、病変又は瘢痕の持続性で消耗性の異常形成を特徴とする。別の実施形態では、線維症及び線維性状態は、異常なコラーゲン沈着を特徴とする。
【0043】
一実施形態では、線維症及び線維性状態は、上皮間葉転換(EMT)を特徴とする。別の実施形態では、線維症及び線維性状態は、ヒト患者でのコラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする。一実施形態では、線維症及び線維性状態は、ヒト患者でのコラーゲン-I、MMP-9、及びTIMP-1の発現の増加を特徴とする。一実施形態では、線維症及び線維性状態は、ヒト患者でのコラーゲン-I及びMMP-9の発現の増加を特徴とする。一実施形態では、線維症及び線維性状態は、ヒト患者でのコラーゲン-I及びTIMP-1の発現の増加を特徴とする。一実施形態では、線維症及び線維性状態は、ヒト患者でのMMP-9及びTIMP-1の発現の増加を特徴とする。別の実施形態では、線維症及び線維性状態は、細胞外マトリックス(ECM)形成を特徴とする。
【0044】
一部の実施形態では、本明細書で開示されているのは、組織中の線維症を減少させる方法であって、この線維症を減少させるか又は阻害するのに十分な量で、線維性の細胞又は組織と、本明細書で開示されているSrcキナーゼ阻害剤とを接触させることを含み、この線維症は、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする、方法である。一部の実施形態では、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする線維症は、線維性状態を含む。
【0045】
一部の実施形態では、線維症の減少、又は線維性状態の処置は、下記の内の1つ又は複数の減少又は阻害を含む:細胞外マトリックスタンパク質の形成若しくは沈着;線維化促進性細胞型の数(例えば、線維芽細胞若しくは免疫細胞の数);線維性病変内の細胞コラーゲン若しくはヒドロキシプロリンの含有量:線維形成性タンパク質の発現若しくは活性;又は炎症反応を伴う線維症の減少。
【0046】
一部の実施形態では、線維性状態は、原発性線維症である。一部の実施形態では、線維性状態は、特発性である。一部の実施形態では、線維性状態は、疾患(例えば、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、悪性若しくは癌性の疾患、及び/又は結合性疾患);毒素;侵襲(例えば、環境ハザード(例えば、アスベスト、炭塵、多環芳香族炭化水素)、喫煙、創傷);医療処置(例えば、外科的切開、化学療法、又は放射線)、又はこれらの組み合わせを伴う(例えば、これらに続発する)。
【0047】
一部の実施形態では、線維性状態は、肺の線維性状態、肝臓の線維性状態、心臓若しくは血管系の線維性、腎臓の線維性状態、皮膚の線維性状態、消化管の線維性状態、骨髄若しくは造血組織の線維性状態、神経系の線維性状態、関節の線維性状態、又はこれらの組み合わせである。
【0048】
一実施形態では、線維性状態を処置する方法であって、この処置は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をヒト患者に投与することを含み、この線維性状態は、肺の線維性状態、肝臓の線維性状態、心臓若しくは血管系の線維性、腎臓の線維性状態、皮膚の線維性状態、消化管の線維性状態、骨髄若しくは造血組織の線維性状態、神経系の線維性状態、関節の線維性状態、又はこれらの組み合わせである、方法が提供される。別の実施形態では、ヒト患者の線維性状態の処置での使用のためのSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩であって、この線維性状態は、肺の線維性状態、肝臓の線維性状態、心臓若しくは血管系の線維性、腎臓の線維性状態、皮膚の線維性状態、消化管の線維性状態、骨髄若しくは造血組織の線維性状態、神経系の線維性状態、関節の線維性状態、又はこれらの組み合わせである、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0049】
一部の実施形態では、線維性状態は、筋肉、腱、軟骨、皮膚(例えば、皮膚の表皮若しくは内皮)、心臓組織、血管組織(例えば、動脈、静脈)、膵臓組織、肺組織、肝臓組織、腎臓組織、子宮組織、卵巣組織、神経組織、精巣組織、腹膜組織、結腸、小腸、胆道、腸、骨髄、又は造血組織の内の1つ又は複数から選択された組織に影響を及ぼす。
【0050】
一部の実施形態では、線維性状態は、肺の線維性状態である。一部の実施形態では、肺の線維性状態は、下記の内の1つ又は複数から選択される:肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患、原因不明の線維化性胞隔炎(CFA)、閉塞性細気管支炎、又は気管支拡張症。一部の実施形態では、肺の線維症は、疾患、毒素、侵襲、医療処置、又はこれらの組み合わせに続発する。一部の実施形態では、肺の線維症は、下記の内の1つ又は複数を伴う:疾患プロセス、例えば石綿症及び珪肺症;職業上の危険;環境汚染物質;喫煙;自己免疫性の結合組織障害(例えば、関節リウマチ、強皮症、及び全身性エリテマトーデス(SLE));結合組織障害、例えばサルコイドーシス;感染性疾患、例えば感染、特に慢性感染;医療処置、例えば、限定されないが、放射線療法、及び薬物療法、例えば化学療法(例えば、ブレオマイシン、メトトレキサート、アミオダロン、ブスルファン、及び/又はニトロフラントインによる処置)。一部の実施形態では、本開示の方法により処置される肺の線維性状態は、癌の処置、例えば、癌(例えば、ブレオマイシンによる扁平上皮癌、精巣腫瘍、ホジキン病)の処置を伴う(例えば、この処置に続発する)。
【0051】
一部の実施形態では、線維性状態は、肝臓の線維性状態である。ある特定の実施形態では、肝臓の線維性状態は、下記の内の1つ又は複数から選択される:脂肪肝疾患、脂肪肝(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変(PBC))、肝硬変、アルコール誘発性の肝臓線維症、胆管傷害、胆管線維症、胆汁うっ滞、又は胆管症。一部の実施形態では、肝臓(hepatic)又は肝臓(liver)の線維症として下記が挙げられるが、これらに限定されない:アルコール依存症、ウイルス感染症、例えば、肝炎(例えば、C型肝炎、B型肝炎、又はD型肝炎)、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、進行性塊状線維症、毒素又は刺激物(例えば、アルコール、医薬品、及び環境毒素)への曝露を伴う肝線維症。
【0052】
一部の実施形態では、線維性状態は、心臓の線維性状態である。ある特定の実施形態では、心臓の線維性状態は、心筋線維症(例えば、放射線性心筋炎と関連する心筋線維症、外科手術の合併症(例えば、心筋の術後線維症)、感染性疾患(例えば、シャーガス病、細菌性心筋炎、旋毛虫性心筋炎、又は真菌性心筋炎));肉芽腫、代謝性貯蔵障害(例えば、心筋症、ヘモクロマトーシス);発達障害(例えば心内膜線維弾性症);動脈硬化、又は毒素若しくは刺激物への曝露(例えば、薬物誘発性心筋症、薬物誘発性心毒性、アルコール性心筋症、コバルト毒素又は曝露)である。一部の実施形態では、心筋線維症は、心臓組織の炎症性障害(例えば心筋サルコイドーシス)を伴う。
【0053】
一部の実施形態では、線維性状態は、腎臓の線維性状態である。一部の実施形態では、腎臓の線維性状態では、下記の内の1つ又は複数から選択される:腎線維症(例えば、慢性腎線維症)、損傷/線維症を伴う腎症(例えば、糖尿病を伴う慢性腎症(例えば糖尿病性腎症))、ループス、腎臓の強皮症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、ヒト慢性腎疾患(CKD)を伴うIgA腎病症性線維症(IgA nephropathyrenal fibrosis)、慢性進行性腎症(CPN)、尿細管間質性線維症、尿管閉塞、慢性尿毒症、慢性間質性腎炎、放射線腎症、糸球体硬化症、進行性糸球体腎症(PGN)、内皮性/血栓性細小血管症損傷、HIV随伴腎症、肝硬変、又は毒素、刺激物、若しくは化学療法剤への曝露と関連する線維症。
【0054】
一部の実施形態では、線維性状態は、皮膚の線維性状態である。一部の実施形態では、皮膚の線維性状態は、下記の内の1つ又は複数から選択される:皮膚線維症、強皮症、腎性全身性線維症(例えば、重度の腎不全の患者でMRIの造影剤物質として頻繁に使用されるガドリニウムへの曝露後に生じる腎性全身性線維症)、瘢痕、及びケロイド。
【0055】
一部の実施形態では、線維性状態は、消化管の線維性状態である。一部の実施形態では、この線維性状態は、強皮症を伴う線維症;放射線誘発性腸線維症;バレット食道、及び慢性胃炎等の前腸炎症性傷害を伴う線維症、並びに/又は炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、及びクローン病等の後腸炎症性傷害を伴う線維症の内の1つ又は複数から選択される。
【0056】
一部の実施形態では、線維性状態は、癒着である。一部の実施形態では、癒着は、下記の内の1つ又は複数から選択される:腹部癒着、腹膜癒着、骨盤癒着、心膜癒着、硬膜外癒着、腱周囲関節包炎又は癒着性関節包炎。
【0057】
一部の実施形態では、線維性状態は、目の線維性状態である。一部の実施形態では、目の線維性状態は、前眼部の疾患(例えば、緑内障及び角膜混濁)を含み、一部の実施形態では、目の線維性状態は、後眼部の疾患(例えば、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、及び血管新生緑内障)を含み、一部の実施形態では、目の線維性状態は、目の手術後の線維症に起因する。
【0058】
一部の実施形態では、線維性状態は、骨髄又は造血組織の線維性状態である。一部の実施形態では、骨髄の線維性状態は、原発性骨髄線維症(本明細書では、特発性骨髄化生又は慢性特発性骨髄線維症とも称される)等の骨髄の慢性骨髄増殖性疾患の本質的な特徴である。一部の実施形態では、骨髄の線維症は、悪性状態、又はクローン性増殖性疾患により引き起こされる状態を伴う(例えば、これらに続発する)。一部の実施形態では、骨髄線維症は、血液障害(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄異形成、有毛細胞白血病、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫若しくは非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、又は慢性骨髄性白血病(CML)の内の1つ又は複数から選択される血液障害)を伴う。一部の実施形態では、骨髄線維症は、非血液障害(例えば、骨髄への固形腫瘍転移、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織障害、若しくは多発性筋炎)、感染(例えば結核)、又はビタミンD欠乏症を伴う二次性副甲状腺機能亢進症から選択される非血液障害)を伴う(例えば、これらに続発する)。
【0059】
一部の実施形態では、線維性状態は、関節の線維性状態である。一部の実施形態では、関節の線維性状態は、関節線維症である。一部の実施形態では、関節の線維性状態は、膝、股関節、足首、足関節、肩、肘、手首、手関節、脊椎、又はこれらの組み合わせで起こる。一部の実施形態では、関節線維症は、全膝関節置換術後に起こり、又は部分的な膝関節置換術後であっても起こる。
【0060】
一部の実施形態では、線維症は、移植片対宿主病(GVHD)を伴う。一部の実施形態では、線維症は、強皮症GVHD、慢性肺GVHD、又は慢性肝臓GVHDを伴う。一部の実施形態では、線維症は、肝臓、肺、膵臓、腎臓、骨髄、心臓、皮膚、腸、又は関節の線維症である。一部の実施形態では、線維症は、肝臓の線維症である。一部の実施形態では、線維症は、肺の線維症である。一部の実施形態では、線維症は、膵臓の線維症である。一部の実施形態では、患者は、肝硬変、慢性膵炎、嚢胞性線維症、又は癌を有する。一部の実施形態では、癌は、固形腫瘍癌である。
【0061】
好適には、ヒト患者でのECM、又はコラーゲンI、MMP-9、及び/若しくはTIMP-1の発現の増加、又はEMTを特徴とする線維性状態は、肝線維症、拡張型心筋症、慢性低酸素症、間質性肺疾患、又は特発性肺線維症である。
【0062】
間質性肺疾患及び特発性肺線維症
一実施形態では、線維性状態は、間質性肺疾患(ILD)である。一実施形態では、線維性状態は、徐々に線維化する間質性肺疾患である。別の実施形態では、線維性状態は、特発性肺線維症(IPF)である。特定の一実施形態では、線維性状態は、進行性IPFである。進行性IPFは、疾患の進行速度に関して特徴付けられ得る。例えば、急速進行性IPFの患者及び緩徐進行性IPFの患者を区別し得る。緩徐進行性IPFを、肺機能の低下が緩徐に進行し且つ呼吸困難が悪化するIPFと定義し得る。多くの場合には、緩徐進行性IPF患者は、診断前の症状の長い持続期間を経験し、且つ緩徐進行性の臨床経過を経験する(Martinez FX et al.,Ann Intern Med 2005;142:963-967)。緩徐進行性IPFは、診断から数年以内に死亡に至る可能性がある。急速進行性IPFは、診断前の症状及び死亡までの進行の持続期間がより短い、より急速な進行性の臨床経過を示す患者を含む。
【0063】
IPFに加えて、他の進行性線維化性間質性肺疾患として、例えば、特発性非特異的間質性肺炎、分類不可能な特発性間質性肺炎、結合組織疾患随伴ILD(例えば関節リウマチ関連ILD)、線維性慢性過敏性肺炎、線維性慢性サルコイドーシス、及び他の職業性曝露に関連するILDが挙げられる。これらの疾患は、ある特定の臨床的特徴をIPFと共有し、この臨床的特徴として下記が挙げられる:呼吸機能の低下;治療オプションの制限;若年死亡率;及び著しく損なわれた生活の質。このILDの群内では、進行性線維症は、罹患率及び死亡率と強く関連する重要な特徴である。
【0064】
一実施形態では、間質性肺疾患(ILD)を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をヒト患者に投与することを含む方法が提供される。別の態様では、ヒト患者の間質性肺疾患の処置での使用のためのSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供される。一実施形態では、この間質性肺疾患は、IPFである。別の実施形態では、この間質性肺疾患は、特発性非特異的間質性肺炎、分類不可能な特発性間質性肺炎、結合組織疾患随伴ILD(例えば関節リウマチ関連ILD)、線維性慢性過敏性肺炎、線維性慢性サルコイドーシス、及び他の職業性曝露に関連するILDから選択される。
【0065】
当業者は、肺機能検査によりIPFの程度及び重症度のいくつかの指標を得ることができることに気付くだろう。例えば、リットルでの肺機能の測定値であり且つ完全に吸い込んだ後に吐き出し得る肺中の空気の量を表す努力性肺活量(FVC)は、患者のIPFの重症度の指標を提供し得る。FVCは、肺機能検査の特定のタイプである肺活量測定として既知の検査で測定される。肺の気嚢から血液中へと通過する酸素の程度を表す一酸化炭素に関する肺の拡散能力(DLCO)も、患者のIPFの程度及び重症度の指標を提供する。FVC及びDLCOは両方とも、同一の性別、年齢、及び身長の人に関して予測される正常値の割合として表され得る。当業者は、FVCパラメータ及びDLCOパラメータを決定して使用する方法に気付くだろう。
【0066】
一実施形態では、進行性IPFは、予測される20%~80%(例えば、予測される50~75%、50~65%、50~60%、又は50~55%)のFVC閾値を特徴とする。一実施形態では、進行性IPFは、予測される20~70%(例えば、予測される35~55%、35~45%、又は35~40%)のDLCOを特徴とする。
【0067】
IPFの疾患重症度を、軽度、中程度、又は重度に分類し得る。軽度、中程度、又は重度のIPFの標準的な定義は存在しないが、臨床試験は、一般的に、軽度から中程度の患者と、重度の疾患を有する患者とを区別するために、予測される50~55%のFVC閾値と、予測される35~40%のDLCO閾値とを採用している(M Kolb et al.,Eur.Respir Rev 2014;23:220-224)。
【0068】
一実施形態では、線維性状態は、軽度、中程度、又は軽度から中程度のIPFである。一実施形態では、軽度から中程度のIPFは、予測される50%以上(例えば、予測される50及び75%若しくは50~55%)のFVC閾値、及び/又は予測される35%以上(例えば、予測される20及び70%若しくは予測される35~40%)のDLCO閾値を特徴とする。
【0069】
一実施形態では、線維性状態は、重度のIPFである。一実施形態では、重度のIPFは、予測される50%未満(例えば、予測される45%、40%、35%、30%、25%、20%、10%、若しくは5%未満)のFVC閾値、及び/又は予測される35%未満(例えば、予測される30%、25%、20%、15%、10%、若しくは5%未満)のDLCO閾値を特徴とする。
【0070】
一実施形態では、進行性IPFは、0.3L以下(例えば、0.25L、0.15L、又は0.12L以下)の、FVCにより測定された年間減少率を特徴とする。好適には、FVCにより測定された年間減少率は、0.1L~0.3Lであり、例えば0.13L~0.21Lである。好適には、FVCにより測定された年間減少率は、0.05L以上であり、例えば、0.08L、0.10L、又は0.13L以上である。一実施形態では、進行性IPFは、FVCの減少率が1%以上(例えば、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、又は20%以上)であることを特徴とする。好適には、FVCの減少率は、20%以下であり、例えば、18%、16%、14%、12%、10%、8%、6%、4%、2%、又は1%以下である。好適には、FVCの減少率は、約5%であり、例えば、約10%、約15%、又は約20%である。
【0071】
一実施形態では、進行性IPFは、1%以上(例えば、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%、22%、又は25%以上)のDLCOの減少率を特徴とする。好適には、DLCOの減少率は、25%以下であり、例えば、22%、20%、18%、16%、15%、14%、12%、10%、8%、6%、4%、2%、又は1%以下である。好適には、DLCOの減少率は、約5%であり、例えば約10%、例えば約15%、例えば約20%、例えば約25%である。
【0072】
一実施形態では、線維性状態は、緩徐進行性IPFである。一実施形態では、緩徐進行性IPFは、1%以上(例えば、2%、4%、6%、又は8%以上)のFVCの減少率を特徴とする。一実施形態では、緩徐進行性IPFは、約5%(例えば約10%)のFVCの減少率を特徴とする。一実施形態では、緩徐進行性IPFは、1%以上(例えば、2%、4%、6%、8%、10%、12%、又は14%以上)のDLCOの減少率を特徴とする。一実施形態では、急速進行性IPFは、約5%(例えば約10%)のDLCOの減少率を特徴とする。
【0073】
一実施形態では、線維性状態は、急速進行性IPFである。一実施形態では、急速進行性IPFは、10%以上(例えば、12%、14%、16%、18%、又は20%以上)のFVCの減少率を特徴とする。一実施形態では、急速進行性IPFは、約15%(例えば約20%)のFVCの減少率を特徴とする。一実施形態では、急速進行性IPFは、15%以上(例えば、16%、18%、20%、22%、又は25%以上)のDLCOの減少率を特徴とする。一実施形態では、急速進行性IPFは、約15%(例えば約20%又は25%)のDLCOの減少率を特徴とする。
【0074】
IPFは、軽度、中程度、軽度から中程度、又は重度であり得、且つ急速進行性又は緩徐進行性であり得ることを理解されたい。急速進行性及び緩徐進行性は、IPFの進行速度に関し、軽度、中程度、軽度から中程度、及び重度は、IPFがどのレベルまで進行しているかに関する。一実施形態では、線維性状態は、急速進行性IPFであり、このIPFは、軽度、中程度、軽度から中程度、又は重度のIPFを特徴とする。一実施形態は、線維性状態は、緩徐進行性IPFであり、このIPFは、軽度、中程度、軽度から中程度、又は重度のIPFを特徴とする。
【0075】
一実施形態では、急速進行性及び/又は緩徐進行性IPFを処置する方法であって、このIPFは、軽度、中程度、軽度から中程度、又は重度であることを特徴とし、この処置する方法は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をヒト患者に投与することを含む、方法が提供される。別の態様では、急速進行性及び/又は緩徐進行性IPFの処置での使用のためのSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩であって、このIPFは、ヒト患者において軽度、中程度、軽度から中程度、又は重度であることを特徴とする、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0076】
安全性プロファイル
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、十分に許容される安全性プロファイルを有する。即ち、このSrcキナーゼ阻害剤を、安全性及び許容性を示しつつ有効性を引き出す用量で使用し得る。一実施形態では、IPFを処置するために使用される場合には、このSrcキナーゼ阻害剤(例えばサラカチニブ)は、ピルフェニドン又はニンテダニブと比較して少ない有害反応又は中断で同一の又は改善された有効性を示す。
【0077】
有害反応は、System Organ Class(SOC)により様々な頻度グループに分類される。非常にありふれているは、≧1/10の発生率を指し、一般的は≧1/100~<1/10を指し、一般的ではないは≧1/1000~<1/100を指し、希は≧1/10000~<1/1000を指す。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤と関連する有害反応の数は、一般的、一般的ではない、及び/又は希と分類される。
【0078】
一実施形態では、有害反応は下記である:感染;侵襲;血液障害;リンパ系障害;免疫系障害;代謝障害;栄養障害;精神障害;神経系障害;血管障害;呼吸障害;胸郭障害;縦隔障害;消化管障害;肝胆道障害;皮膚障害;皮下組織障害;筋骨格障害;結合組織障害;全身障害;投与部位の状態;傷害中毒;及び/又は処置合併症。
【0079】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤と関連する消化管の有害反応の数は、一般的、一般的ではない、又は希と分類される。好適には、この消化管の有害反応は下記である:下痢、吐き気、腹痛、消化不良、胃食道逆流性疾患、嘔吐、腹部膨満、腹部不快感、胃部不快感、胃炎、便秘、及び/又は鼓腸。
【0080】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤と関連する肝胆道障害の数は、一般的、一般的ではない、又は希と分類される。好適には、この肝胆道障害は、ヒト患者での肝酵素のレベルの上昇をもたらす。
【0081】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤と関連する栄養障害の数は、一般的、一般的ではない、又は希と分類される。好適には、この栄養障害は、食欲不振である。
【0082】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤と関連する皮膚障害及び/又は皮下組織障害の数は、一般的、一般的ではない、又は希と分類される。好適には、この皮膚障害は、光過敏性反応及び/又は発疹である。
【0083】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤と関連する全身障害の数は、一般的、一般的ではない、又は希と分類される。好適には、この全身障害は、疲労である。
【0084】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、ニンテダニブ及び/又はピルフェニドンに対する安全性プロファイルが改善されている。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、ニンテダニブ及び/又はピルフェニドンと比べて、有害反応の発生率及び/又は重症度が低い。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、ニンテダニブ及び/又はピルフェニドンと比べて、消化管の有害反応の発生率及び/又は重症度が低い。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤は、ニンテダニブ及び/又はピルフェニドンと比べて、下痢、吐き気、腹痛、消化不良、胃食道逆流性疾患、嘔吐、腹部膨満、腹部不快感、胃部不快感、胃炎、便秘、及び/又は鼓腸の発生率及び/又は重症度が低い。
【0085】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をヒト患者に投与することにより、このヒト患者の全生存率及び/又は無増悪生存率が増加する。
【0086】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量をヒト患者に投与することにより、線維症の症状(好適にはIPFの症状)が改善され、予防され、及び/又は維持され、この症状として、咳、肺機能の低下、疲労、及び呼吸困難が挙げられる。
【0087】
医薬組成物
本開示のさらなる態様によれば、本明細書の上記で定義されているSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、本明細書で定義されているような線維症の処置での使用のための薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と共に含む医薬組成物が提供される。
【0088】
本開示の組成物は、経口使用に適した形態(例えば、錠剤、トローチ剤、硬若しくは軟カプセル剤、水性若しくは油性の懸濁液、乳濁液、分散性の散剤若しくは顆粒剤、シロップ剤、又はエリキシル剤)、局所使用に適した形態(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、又は水性若しくは油性の液剤若しくは懸濁液)、吸入による投与に適した形態(例えば、微細化散剤又は液体エアロゾル剤)、吹送による投与に適した形態(例えば、微細化散剤)、又は非経口投与に適した形態(例えば、静脈内、皮下、筋肉内若しくは筋肉内へ投与するための無菌の水性若しくは油性液剤、又は直腸投与用の坐剤)であり得る。
【0089】
本開示の組成物を、当技術分野に公知の従来の医薬賦形剤を使用する従来の手順により得ることができる。そのため、経口使用が意図されている組成物は、例えば、1種又は複数種の着色料、甘味料、香味料及び/又は保存料を含み得る。
【0090】
単一剤型を作製するために1種又は複数種の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤と組み合わされる有効成分の量は、必然的に、処置される宿主、及び特定の投与経路に応じて変わるだろう。例えば、ヒトへの経口投与が意図されている製剤は、一般に、例えば、0.5mg~0.5g(より好適には、0.5~200mg、例えば、1~150mg、75~150mg、90~135mg、100~125mg、例えば100mg、例えば約125mg)の有効化合物と、適切で好都合な量の賦形剤とを含むだろう。Srcキナーゼ阻害剤の治療目的又は予防目的の用量のサイズは、必然的に、公知の医学の原則に従い、状態の性質及び重症度、動物又は患者の年齢、性別、並びに投与経路に応じて変わるだろう。
【0091】
投与レジメン
治療目的又は予防目的のためのSrcキナーゼ阻害剤の使用において、このSrcキナーゼ阻害剤は、一般に、例えば、必要な場合には分割用量で投与される、0.1mg/kg~75mg/kg(体重)の範囲内の1日用量が投与されるように投与されるだろう。一般に、非経口経路を用いる場合には、より低い用量が投与されるだろう。そのため、例えば、静脈内投与の場合には、例えば0.1mg/kg~30mg/kg(体重)の範囲の用量が一般に使用されるだろう。同様に、吸入による投与の場合には、例えば0.05mg/kg~25mg/kg(体重)の範囲内の用量が使用されるだろう。一実施形態では、サラカチニブ等のSrcキナーゼ阻害剤を、例えば錠剤又はカプセル剤の形態で、経口投与により投与する。
【0092】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤の治療上有効な量を、1日1回投与するか、1日2回投与するか、又は1日3回投与する。好適には、この治療上有効な量を、1日1回投与する。好都合には、この治療上有効な量を、少なくとも2日間連続にわたり、好適には4週以上にわたり、好適には14週以上にわたり、好適には26週以上にわたり、好適には52週以上にわたり、好適には2年以上にわたり、又はより長くにわたり、1日1回投与する。
【0093】
適切な投与量を、疾患の重症度及び対象のサイズを参照することにより決定し得る。典型的な投与量は、1日に少なくとも1回(例えば、1日に1回又は2回)投与されるヒト用量当たり0.01mg~500mg(例えば0.1~175mg、例えば1~125mg)の範囲である。例えば、サラカチニブ等のSrcキナーゼ阻害剤の投与量は、1日当たり100mg、125mg、又は最大250mgであり得る。
【0094】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤の治療上有効な量は、1日当たり5~500mgであり、好適には1日当たり10~400mgであり、好適には1日当たり20~300mgであり、好適には1日当たり30~200mgであり、好適には1日当たり75~150mgであり、好適には100~150mgであり、好適には110~140mgであり、好適には120~130mgであり、又は好適には約125mgである。
【0095】
併用療法
一実施形態では、線維症を処置する方法は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を、少なくとも1種の他の治療薬の治療上有効な量と組み合わせて、ヒト患者に投与することをさらに含む。この組み合わされた投与は、別々であり得るか、同時であり得るか、又は順次であり得る。一実施形態では、この線維症は、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする。
【0096】
治療薬は、ヒト患者で治療効果を生じ得る化学的分子又は生物学的分子(例えば、化合物、ペプチド、核酸、タンパク質、及び抗体、又はこれらの断片)を指す。一実施形態では、治療薬は、薬学的に活性な化合物である。別の実施形態では、治療薬は、抗線維化剤である。
【0097】
そのような薬理学的に活性な化合物は、例えば、線維症の処置においても薬理学的に活性である化合物(例えば、ピルフェニドン又はニンテダニブ)であり得る。そのような薬理学的に活性な化合物はまた、分泌促進(secretolytic)、気管支拡張(broncholytic)、及び/又は抗炎症活性を有する物質でもあり得、例えば下記であり得る:抗コリン剤、ベータ-2模倣物、コルチコステロイド、PDE-IV阻害剤、p38 MAPキナーゼ阻害剤、MK2阻害剤、ガレクチン阻害剤、NKiアンタゴニスト、LTD4アンタゴニスト、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、PDGF阻害剤、FGF阻害剤、TGFベータ阻害剤、LPA1アンタゴニスト、LOXL2阻害剤、CTGF阻害剤、ペントキシフィリン、N-アセチルシステイン、抗IL13剤、抗IL4剤、アルファVインテグリン阻害剤(例えば、αVβ1、αVβ2、αVβ3、αVβ4、αVβ5、αVβ6、αVβ7、αVβ8、及びこれらの任意の組み合わせの阻害剤)、IGF阻害剤、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤、JNK阻害剤、ペントラキシン2、並びに/又はエンドセリンアンタゴニスト。
【0098】
本Srcキナーゼ阻害剤と組み合わされて使用されることになる他の薬理学的に活性な化合物として、抗線維化活性を有する化合物が挙げられ、例えば下記が挙げられる:PDE-III阻害剤、複合抗IL4/13剤、複合PI3k/mTOR阻害剤、オートタキシン阻害剤、P2X2アンタゴニスト、CTGFアンタゴニスト、5-LOアンタゴニスト、ロイコトリエンアンタゴニスト、ROCK阻害剤、PDGFR阻害剤(α及び/若しくはβ)、FGR阻害剤、並びに/又はVEGFR阻害剤。一実施形態では、この抗線維化剤は、ピルフェニドン若しくはその薬学的に許容される塩、又はニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0099】
一実施形態では、線維症を処置する方法は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量と、少なくとも1種の抗線維化剤の治療上有効な用量とを、別々に、同時に、順次に、又はこのSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、この少なくとも一種の抗線維化剤とを含む医薬組成物の形態で、ヒト患者に投与することをさらに含む。抗線維化剤は、ヒト患者に投与された場合に、線維症を減少させ、及び/又は阻害する、本明細書で定義されている薬物である。
【0100】
一実施形態では、1種の抗線維化剤を、Src阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与する。一実施形態では、2種の抗線維化剤を、Src阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与する。
【0101】
抗線維化剤は、遊離形態(即ち、遊離酸若しくは遊離塩基)であってもよいし薬学的に許容される塩の形態であってもよいことを理解されたい。
【0102】
特定の一実施形態では、抗線維化剤は、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩;ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩;及びこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、抗線維化剤は、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩である。一実施形態では、抗線維化剤は、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩である。本開示では、驚くべきことに、サラカチニブ等のSrcキナーゼ阻害剤は、ニンテダニブ又はピルフェニドン等の抗線維化剤と組み合わされた場合には、線維症の処置で相乗効果をもたらすとことが示されている。
【0103】
一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、本明細書で定義されている少なくとも薬理学的に活性な化合物又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の抗線維化剤又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又はピルフェニドン若しくはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩と、ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又はピルフェニドン若しくはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、医薬組成物中には、0.5mg~0.5g(例えば、0.5~200mg、1~150mg、75~150mg、90~135mg、又は100~125mg)のSrcキナーゼ阻害剤が存在する。
【0104】
キット
さらなる態様では、(a)サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩と、(b)少なくとも1種の追加の治療薬の治療上有効な量とを含む医薬組み合わせであって、サラカチニブは、75~500mg(例えば90~135mg、例えば100~125mg、例えば約100mg、又は例えば約125mg)の量で存在する、医薬組み合わせが提供される。一実施形態では、サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日当たり1回の投与のための経口剤形で存在する。一実施形態では、この追加の治療薬は、ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩、ピルフェニドン若しくはその薬学的に許容される塩、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0105】
一実施形態では、医薬組み合わせは、要素のキットである。このキットは、使用説明書と、本明細書で定義されているSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩とを含む。
【0106】
さらなる態様では、要素のキットであって、使用説明書と、本明細書で定義されているSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の他の薬理学的に活性な化合物又はその薬学的に許容される塩とを含むキットが提供される。
【0107】
一実施形態では、要素のキットであって、使用説明書と、本明細書で定義されているSrcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、本明細書で定義されている少なくとも1種の抗線維化剤又はその薬学的に許容される塩とを含むキットが提供される。
【0108】
さらなる態様では、要素のキットであって、使用説明書と、本明細書で定義されている医薬組成物とを含むキットが提供される。一実施形態では、この医薬組成物は、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、抗線維化剤又はその薬学的に許容される塩とを含む。
【実施例
【0109】
実施例1-キナーゼ選択性
サラカチニブ、ニンテダニブ、及び4-アミノ-5-(4-クロロフェニル)-7-(ジメチルエチル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(PP2)に関するc-Srcキナーゼ、c-Yesキナーゼ、Lckキナーゼ、Lynキナーゼ、c-Fynキナーゼ、及びEGFRキナーゼ、並びにPGFRTKα及びPGFRTKβに対するIC50アッセイ値を、下記の表1に表す。
【0110】
サラカチニブ及びPP2に関するIC50アッセイ値は、Hennequin 2006 DOI:10.1021/jm060434qで開示されている。ニンテダニブに関するIC50アッセイ値は、Hilberg et al,“Triple Angiokinase Inhibitor with Sustained Receptor Blockade and Good Antitumor Efficacy”,Cancer Res 2008;68:(12).June 15,2008. DOI:10.1158/0008-5472.2008年6月公開のCAN-07-6307で開示されている。
【0111】
【表1】
【0112】
表1で表されるIC50アッセイ値は、サラカチニブが強力であり、且つニンテダニブ又は化合物PP2と比較された場合にはSrcファミリキナーゼ(c-Src、c-Yes、Lck、Lyn、及びc-Fyn)に対する選択性が高いことを示す。
【0113】
実施例2-ブレオマイシンモデル
ブレオマイシン硫酸塩を、Sigma-Aldrichから得た。酵素単位(U)へのIU換算は、約1.5~2U/mgである。50μLでの4U/kgの送達のために、2mg/mLの溶液を、0.9% NaClで調製した。ブレオマイシン又はビヒクルを、0日目に鼻腔内投与した。化合物を、線維症の歴史的な開始時期に合わせたブレオマイシン導入後7日で開始する強制経口投与により、1日2回投与した(200mg/kg BIDでのピルフェニドン、30mg/kg BIDでのニンテダニブ、1、3、又は10mg/kg BIDでのサラカチニブ)。体重及び臨床観察を、7日目、14日目、及び21日目に記録した。21日目に、マウスを、頸椎脱臼により安楽死させた。一方の肺組織を解剖し、局所的なコラーゲン沈着の指標としてヒドロキシプロリンレベルを分析し、他方の肺をホルマリンで固定して、組織病理検査(シリウスレッドによる定量的染色)を行なった。各群からの動物の半分に、21日目での末梢採血の1時間前に投与し(下記を参照されたい)(Cmax)、この動物の残り半分には投与しなかった(Cmin)(表2)。
【0114】
【表2】
【0115】
結果を、図1に表す。観察された効果は、サラカチニブが、(はるかに低い用量で)ピルフェニドンと比較して有利であり、且つ臨床的に意義のある用量でニンテダニブよりも潜在的に優れていることを示す。
【0116】
実施例3-健康なドナーからの初代ヒト肺線維芽細胞でのTGF-ベータ-誘発性変化への効果
健康なドナーからの正常なヒト肺線維芽細胞(継代5)を、10% FBS及び1% ペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEM培養培地中に1cm当たり50,000個の細胞で、96ウェルプ培養プレートに播種した。これを、24時間にわたり37℃で培養し、次いでDPBSで2回洗浄し、24時間にわたり血清飢餓させた後、サラカチニブ、ニンテダニブ、ピルフェニドン、又は陽性コントロールSB-525334、Alk-5阻害剤、又はビヒクルコントロールとしての0.1% DMSOの形態で処置を加えた。細胞を1時間にわたりインキュベートした後、この化合物/ビヒクル処置の上に0.123ng/ml TGF-ベータ1を添加し、細胞を24時間にわたりインキュベートした。
【0117】
24時間後、培地を回収してIL-6に関して分析し、細胞を溶解させて、RNAの単離、DNAの合成、及びTaqMan定量PCRを行なうか、又は固定して、アルファ-平滑筋アクチン(αSMA)に関する染色及びHoechst核染色を行なった。αSMAに関して陽性であり、それにより筋線維芽細胞表現型を示す細胞染色の割合を、ハイコンテント画像分析(high content image analysis)を使用して決定した。定量PCRからのCt値を、2種の参照遺伝子の幾何平均Ct値に対して正規化し、これらの参照遺伝子に対する倍数発現として表した(2^-デルタCt)。
【0118】
TGF-ベータ1誘発性反応の50%を阻害するのに必要な用量(IC50)を、4パラメータ非線形回帰モデルを使用して用量反応曲線をデータにフィットさせることにより、様々な化合物に関して決定した。
【0119】
【表3】
【0120】
サラカチニブは、治療濃度で優れた効力を示した(表3、図2、及び図3)。実際に、サラカチニブは、細胞の生存に影響を及ぼすことなく、αSMAの用量依存的阻害を引き起こした。ニンテダニブ及びピルフェニドンはαSMAを阻害したが、治療濃度を超えており、且つ細胞死のある程度の証拠があった。
【0121】
実施例4-オルガノイド形成アッセイ
IPF患者からの気道基底細胞(ABC)は、その増殖、遊走、及びアポトーシスに対する耐性において「癌のようである」と説明されている。このABCは、細気管支化の領域で富化されており、肺機能に直接関係する構造である線維芽細胞病巣にまで及ぶ。健康なコントロール(HC)-ABCを、増殖因子及びサイトカインを含む培養物中で刺激して、3Dオルガノイドを産生させ得る。しかしながら、IPF-ABCは、培養物中で3Dオルガノイドを自発的に形成する。腫瘍学で観察される成功を受けて、IPF-ABCオルガノイド形成は、治療活性に関するスクリーニングのためのツールとして検討されている(A Prasse et al.,European Respiratory Journal 2017;50;及びA Prasse et al.,Am J Respir Crit Care Med.2018 Aug 24.doi:10.1164/rccm.201712-2551OC)。
【0122】
ABCは、IPF病理に関連することが理解されており、観察されたシグナルは、疾患の重症度(FVCの減少、胚移植の必要性、及び死亡リスク)と相関する。実際に、ABCモデルは、IPFでの異常な創傷治癒(例えば、線維芽細胞の細管の形成、3Dオルガノイド構造、ECM成分の産生)を再現する。ヒトIPF ABCが移植されたマウスは、強固な線維化反応、遊走、肺胞区画への侵入、嚢胞構造等の広範囲のIPF病理を再現する。
【0123】
IPF患者又は健康なボランティア(HV)のいずれかに由来する気道基底細胞(ABC)を、Matrigel(登録商標)(インキュベータ(5% CO、37℃)中において最大35日にわたり、IPFの患者又は正常な肺のいずれかに由来する肺線維芽細胞と共に又はこの肺線維芽細胞なしでのトランスウェルシステムにおけるCorning)で培養した。培地交換(BEGM(Lonza,Basel,Switzerland,#CC-3170)/DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(Gibco,Swit Fisher Scientific/Germany);比率1:1)を、7日毎に行なった。条件培地を、Sircolアッセイ(Scientific-Biocolor/UK、#S1000)に使用し、このアッセイを、製造業者により推奨されているように実施した(https://www.biocolor.co.uk/product/sircol-soluble-collagen-assay/)。オルガノイドを、8、25、75、210、又は600nM サラカチニブ、又は1mM ピルフェニドン、又は1μM ニンテダニブで処理した(ピルフェニドン及びニンテダニブは、陽性コントロールとして作用する)。スフェロイド形成を、Axio Vert.A1/Zeiss/Germany及びAxio Observer Z1/Zeiss/Germanyで文書に記録した。
【0124】
結果を、図4、5、及び6に表す。図4及び図5は、様々な倍率レベルで、サラカチニブ、ピルフェニドン、又はニンテダニブで処理したABCのスフェロイド形成を示す。サラカチニブは、試験した濃度では非毒性である。治療用量を超える人為的に高い用量でのニンテダニブ及びピルフェニドンは、オルガノイド形成にほとんどか又は全く影響を及ぼさない。ヒトIPF ABCマウスモデルでのこれらのデータは、サラカチニブが差別化されており、ニンテダニブ又はピルフェニドンと比べで独自の効果を有することを示唆する。
【0125】
実施例5-DiscoverX
BioMAPパネルは、インビトロでの形式で人体の様々な側面をモデル化するように設計されたヒト初代細胞ベースのシステムで構成されている。Diversity PLUSパネルで利用可能な12種のシステムは、ヒトの様々な病態をモデル化する一連の広範なシステムにわたり、偏りのない方法で試験試薬のキャラクタリゼーションを可能にする。BioMAPシステムは、健康なヒトドナーからの1種又は複数種の初代ヒト細胞型で構築されており、ヒトの組織又は病状で自然に発生する関連シグナル伝達ネットワークを捕捉するために、刺激物(例えば、サイトカイン又は増殖因子)が添加されている。システムは、単球により駆動されるTh1炎症(LPSシステム)又はT細胞刺激(SAgシステム)、マクロファージ活性化により駆動される慢性Th1炎症(1Mphgシステム)、及び胚中心で発生するB細胞のT細胞依存性活性化(BTシステム)等の全身免疫反応の側面を再現する。BE3Cシステム(Th1)及びBF4Tシステム(Th2)は、肺の気道炎症を表し、MyoFシステムは、筋線維芽細胞-肺組織リモデリングをモデル化する。
【0126】
各試験試薬は、個々のシステム環境内でのタンパク質バイオマーカー読み取りの変化から作成されているシグネチャBioMAPプロファイルを生じる。バイオマーカー読み取り(1つのシステム当たり7~17個)は、治療的及び生物学的な関連性から選択され、疾患の転帰又は特定の薬物効果を予測し、且つ作用機序(MoA)が既知である試薬を使用して検証される。各読み取りは、タンパク質を検出する免疫ベースの方法(例えばELISA)又は増殖及び生存を測定する機能アッセイにより、定量的に測定される。BioMAP読み取りは多種多様であり、細胞表面の受容体、サイトカイン、ケモカイン、マトリックス分子、及び置酵素を含む。
【0127】
データマイニングツールを含むカスタム設計のソフトウェアを使用して、BioMAPプロファイルを、生物活性剤(生物製剤、承認薬、化学物質、及び実験薬)の4,000種を超えるBioMAPプロファイルの独自の参照データベースと比較して、分類して最も類似するプロファイルを特定し得る。この頑強なデータプラットフォームは、類似する活性の偏りのない数学的特定を実施することにより、BioMAPプロファイルの迅速な評価及び解釈を可能にする。特定のBioMAP活性は、インビボでの生物学と相関しており、多パラメータのBioMAPプロファイルは、MoA及び標的選択性に基づいて化合物を区別するために使用されており、且つ多様な生理学的システムにわたりインビボでの毒物学的転帰(例えば、血管毒性、発達毒性等)のための予測シグネチャを提供し得る。
【0128】
サラカチニブ及びニンテダニブを、100% DMSOで、10mM濃度のストック溶液として調製した。Combo ELECTパネルでは、2種の連続的に希釈された単一の試験薬剤/薬物の全ての混合物を試験するために、4×4の組み合わせアレイが作成されている。試験薬剤/薬物を、選択されたBioMAPシステム(BioMAP Combo ELECTにより利用可能な50+のヒト生物学及び疾患モデルシステム)において、3重で、それぞれ4種の濃度(3倍希釈:3.3、1.1、0.367、及び0.123μMのサラカチニブ;1、330、110、及び37μMのニンテダニブ)にてスクリーニングする。
【0129】
結果を、図7、8、及び9に示す。
【0130】
図7は、サラカチニブが、N-カドヘリンの発現の減少及びα-SMAの発現の増加を引き起こすことを示し、これらは両方とも、筋線維芽細胞の活性化と関連する。サラカチニブはまた、TIMP-1及びMMP-9の発現を減少も引き起こし、これらは両方とも、線維症関連マトリックスと関連する。サラカチニブは、sVEGFの発現の減少を引き起こす。sVEGFの発現は、組織リモデリング及び/又は創傷治癒と関連している。加えて、サラカチニブは、sIL-8及びsIL-6の発現の減少、並びにVCAM-1タンパク質の発現の増加を引き起こす。これらは、炎症と関連している。
【0131】
図8は、ニンテダニブが、TIMP-1及びMMP-9の発現の減少を引き起こすことを示し、これらは両方とも、線維症関連マトリックスと関連する。
【0132】
図9は、サラカチニブ及びニンテダニブの組み合わせが、コラーゲンIの新規の阻害、並びにサラカチニブのみ又はニンテダニブのみと比べてMMP-9及びTIMP-1の高い阻害を引き起こすことを示す。
【0133】
実施例6-安全性及び許容性
サラカチニブ(1日当たり100mg又は125mg)を、アルツハイマー病(AD)を患っているヒト患者での二重盲検プラセボ対照臨床試験で試験している。安全性及び許容性の結果を、特発性肺線維症(IPF)の処置用のピルフェニドン(Noble et al 2016 doi:10.1183/13993003.00026-2015)及びニンテダニブ(Richeldi et al 2016.doi:10.1016/j.rmed.2016.02.001)の安全性及び許容性のプロファイルと比較して、下記の表4、5、及び6に要約する。
【0134】
【表4】
【0135】
表4に示されているように、サラカチニブは、ニンテダニブと比べて良好な消化管許容性プロファイルを有する。
【0136】
【表5】
【0137】
表5に示されているように、サラカチニブは、ニンテダニブ及びピルフェニドンと比べて同様の又は良好な全身許容性プロファイルを有する。
【0138】
【表6】
【0139】
表6に示されているように、サラカチニブ処理は、中断がより少なくなる可能性がある。
【0140】
この記載された説明は、実施例を使用して、本発明を開示し、且つあらゆる当業者が、本発明を実行すること(例えば、本開示の塩、物質、又は組成物のいずれかを製造すること及び使用すること、並びに本開示の方法又はプロセスのいずれかを実施すること)を可能にする。本発明の特許取得の対象となる範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が気づく他の実施例を含んでもよい。そのような他の実施例は、それらが、特許請求の範囲の逐語的な文言と異ならない要素を有する場合には、又はそれらが、特許請求の範囲の逐語的な文言と非実質的な相違を有する等価な要素を含む場合には、特許請求の範囲内であることが意図される。本明細書では、本発明の好ましい実施形態が示されており且つ説明されているが、そのような実施形態は、例示としてのみ提供され、その他の点で本発明の範囲を限定することは意図されていない。本発明の実施では、本発明の説明されている実施形態に対する様々な代替を採用してもよい。本節で使用されている節の見出し及び全体の開示は、限定することは意図されていない。
【0141】
上記で引用された全ての参考文献(特許及び非特許)は、参照により本特許出願に組み込まれる。これらの参考文献の議論は、それらの著者によりなされた主張を要約することが意図されているにすぎない。任意の参考文献(又は任意の参考文献の一部)が関連する先行技術(又はあらゆる先行技術)であることを、何ら承認するものではない。出願人は、引用された参考文献の正確さ及び妥当性に異議を唱える権利を留保する。
本発明は、以下の態様を含む。
[1] ヒト患者の線維性疾患又は線維性状態を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記ヒト患者に投与することを含み、前記線維性疾患又は線維性状態は、異常なコラーゲン沈着を特徴とするか、又は高解像度コンピュータ断層撮影(HRCT)若しくは生検により決定された、病変若しくは瘢痕の持続性で消耗性の異常形成を特徴とする、方法。
[2] 前記線維性疾患又は線維性状態は、上皮間葉転換(EMT)をさらに特徴とする、項1に記載の方法。
[3] 前記線維性疾患又は線維性状態は、コラーゲンI、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加をさらに特徴とする、項1又は2に記載の方法。
[4] 前記線維性疾患又は線維性状態は、sVEGF、及び/又はsIL-8、及び/又はsIL-6の発現の増加をさらに特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記線維性疾患又は線維性状態は、VCAM-1の発現の減少をさらに特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記線維性疾患又は線維性状態は、細胞外マトリックス(ECM)形成をさらに特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記線維性疾患又は線維性状態は、肺の線維性疾患若しくは線維性状態、肝臓の線維性疾患若しくは線維性状態、心臓若しくは血管系の線維性疾患若しくは線維性状態、腎臓の線維性疾患若しくは線維性状態、皮膚の線維性疾患若しくは線維性状態、消化管の線維性疾患若しくは線維性状態、骨髄若しくは造血組織の線維性疾患若しくは線維性状態、神経系の線維性疾患若しくは線維性状態、関節の線維性疾患若しくは線維性状態、又はこれらの組み合わせである、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記線維性疾患又は線維性状態は、間質性肺疾患である、項7に記載の方法。
[9] ヒト患者の、気道基底細胞媒介性の肺リモデリングを特徴とする間質性肺疾患を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記ヒト患者に投与することを含む方法。
[10] 前記間質性肺疾患(ILD)は、特発性肺線維症(IPF)、特発性非特異性間質性肺炎、分類不能な特発性間質性肺炎、結合組織疾患随伴ILD、関節リウマチ関連ILD、線維性慢性過敏性肺炎、線維性慢性サルコイドーシス、及び他の職業性曝露に関連するILDから選択される、項9に記載の方法。
[11] ヒト患者の、気道基底細胞媒介性の肺リモデリングを特徴とする肺線維症を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記ヒト患者に投与することを含む方法。
[12] 前記肺線維症は、上皮間葉転換(EMT)をさらに特徴とする、項9~11のいずれか一項に記載の方法。
[13] 前記肺線維症は、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加をさらに特徴とする、項9~12のいずれか一項に記載の方法。
[14] 前記肺線維症は、細胞外マトリックス(ECM)形成をさらに特徴とする、項9~13のいずれか一項に記載の方法。
[15] ヒト患者の肺線維症を処置する方法であって、Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を、少なくとも1種の追加の治療薬の治療上有効な量と組み合わせて、前記ヒト患者に投与することを含む方法。
[16] 前記ヒト患者は特発性肺線維症(IPF)を有する、項8~15のいずれか一項に記載の方法。
[17] 前記IPFは、コラーゲン-I、及び/又はMMP-9、及び/又はTIMP-1の発現の増加を特徴とする、項16に記載の方法。
[18] 前記ヒト患者は、軽度から中程度又は重度の進行性IPFを有する、項16又は17に記載の方法。
[19] 前記ヒト患者は、努力性肺活量の閾値が50~55%と予測され、及び/又は一酸化炭素に関する肺の拡散能力の閾値が35~40%と予測される、項16~18のいずれか一項に記載の方法。
[20] 前記ヒト患者は、努力性肺活量の閾値が50%未満と予測され、及び/又は一酸化炭素に関する肺の拡散能力の閾値が35%未満と予測される、項16~19のいずれか一項に記載の方法。
[21] 前記ヒト患者は、急速進行性IPFを有する、項16~20のいずれか一項に記載の方法。
[22] 前記Srcキナーゼ阻害剤は、サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩である、項1~21のいずれか一項に記載の方法。
[23] サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を、1日1回投与する、項22に記載の方法。
[24] サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量は、1日当たり5~500mgである、項22又は23に記載の方法。
[25] 前記少なくとも1種の追加の治療薬は、抗線維化剤である、項15~24のいずれか一項に記載の方法。
[26] 前記少なくとも1種の追加の治療薬は、ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩、ピルフェニドン若しくはその薬学的に許容される塩、又はこれらの組み合わせから選択される、項25に記載の方法。
[27] 前記Srcキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩と、前記少なくとも1種の追加の治療薬とを、別々に投与するか、同時に投与するか、又は順次に投与する、項25又は26に記載の方法。
[28] a.サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩と、
b.少なくとも1種の追加の治療薬の治療上有効な量と
を含む医薬組み合わせであって、
サラカチニブは、75~500mgの量で存在し、例えば90~135mg、例えば100~125mg、例えば約100mg、又は例えば約125mgの量で存在する、
医薬組み合わせ。
[29] サラカチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回の投与用の経口剤形である、項28に記載の医薬組み合わせ。
[30] 前記追加の治療薬は、ニンテダニブ若しくはその薬学的に許容される塩、ピルフェニドン若しくはその薬学的に許容される塩、又はこれらの組み合わせから選択される、項28又は29に記載の医薬組み合わせ。
図1
図2
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図5
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図7
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図10