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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】有機汚泥の消化
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20240902BHJP
   C02F 11/123 20190101ALI20240902BHJP
   C02F 11/125 20190101ALI20240902BHJP
   C02F 11/126 20190101ALI20240902BHJP
   C02F 11/127 20190101ALI20240902BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
C02F11/123
C02F11/125
C02F11/126
C02F11/127
B01D19/04 A
B01D19/04 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021553049
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 NL2020050095
(87)【国際公開番号】W WO2020180175
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】2022675
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521400110
【氏名又は名称】ハスコニングディーエイチヴィー ネダーランド ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス アントニウス セオドア ウィルヘルミナス マリア
(72)【発明者】
【氏名】コーンニーフ エディ
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037989(WO,A1)
【文献】特開昭58-205595(JP,A)
【文献】特開平08-229595(JP,A)
【文献】特開2008-030008(JP,A)
【文献】特開平04-061996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 3/28- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性消化により含水有機汚泥を連続処理する方法であって、前記方法は、
(a1)投入汚泥の一部または全てを、流体接続(fci)を介して一連のN個の消化リアクタ(1-N)における第1消化リアクタに供給し、前記投入汚泥の被制御部分を、流体接続(fcb)を介して第2消化リアクタに供給することであって、ここでN≧2であることと、
(a2)n番目の消化リアクタの排出物を、流体接続(fc)を介してn+1番目の消化リアクタに供給することであって、ここでn∈[1,N-1]であることと、
(a3)前記N番目の消化リアクタの前記排出物の被制御部分を、流体接続(fcN)を介して少なくとも1つの下位の(n∈[1,N-1])消化リアクタに供給することと、
(a4)前記第2消化リアクタの排出物の被制御部分を、流体接続(fc2)を介して前記第1消化リアクタに供給することと、
(a5)前記N番目の消化リアクタの前記排出物の30~100%の被制御部分を除去することと、
(b)少なくとも1つの供給することまたは除去すること(a1-a5)を制御することであって、
(b1)(b30)脂肪酸濃度の少なくとも2つの値と、(b11)pHの少なくとも2つの値と、(b12)前記供給量中の乾燥汚泥の量と、(b13)少なくとも1つの消化リアクタの温度と、(b14)前記投入汚泥の種類と、任意に(b37)アルカリ度と(b35)酸化還元値とを取得することであって、投入物における少なくとも1つの前記汚泥の値および前記N個の消化リアクタのうち少なくとも前記第1消化リアクタの値が取得される、取得することによって、および
(b1)で得られた値に基づいて(b2)n番目のリアクタから次のn+1番目のリアクタへのオーバーフローを制限または防止することにより、(b2b)少なくとも1つの消化リアクタにおける液面を調節すること、および(b2a)少なくとも1つのフロー、(b2c)消化リアクタ内の汚泥の量、(b2d)消化リアクタ内の消泡剤の量、およびそれらの組合せから選択されるパラメータを調節することであって、ここでフロー(b2a)は(a1-a5)における提供することまたは除去することからのフローから選択される、調節することによって、少なくとも1つの供給することまたは除去すること(a1-a5)を制御することと、
(c)3日を超える期間中、前記含水有機汚泥を消化することであって、消化のための総固形物滞留時間(SRT)は、前記一連のN個の消化リアクタのうち少なくとも1つにおいて、20~70℃の温度で3~21日間である、有機汚泥を消化することと、を含む方法。
【請求項2】
(d)前記N番目の消化リアクタから消化後槽(11)へ前記汚泥を供給することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(e)前記N番目の消化リアクタおよび/または消化後槽から脱水装置(21)に供給し、形成されたバイオマスを脱水し、(b1)前記投入物における前記汚泥の特徴および前記N個の消化リアクタのうちの少なくとも前記第1消化リアクタの汚泥の特徴を取得すること、および(b3)少なくとも1つのN番目の消化リアクタおよび/または消化後槽と脱水装置との間におけるフローを調節することにより、脱水を制御することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱水装置より前に1つ以上のバッファが設けられている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
供給を制御することおよび/または脱水を制御することは、(b15)供給変動、(b16)投入汚泥の生成設備、(b17)投入汚泥の生成方法、(b18)投入汚泥の年齢、(b19)投入汚泥の有機炭素含有量(COD)(b20)投入汚泥の生成方法、(b21)投入汚泥の生成中に化学物質を投与すること、(b22)残存する投与化学物質の残留濃度、(b23)投入汚泥の生成中の処理設定を行うこと、(b24)高分子電解質濃度、(b25)高分子電解質の種類、(b26)ボウル速度、(b27)前記汚泥に加えられる圧力、(b28)生成されるガス、(b29)排出ストリームにおけるアンモニア濃度、(b31)たんぱく質濃度、(b32)糖濃度、(b33)セルロース系物質の濃度、(b34)分解性有機物の量、(b35)前記投入汚泥の生成時の境界条件、(b36)揮発性脂肪酸濃度、(b38)陽イオン濃度、(b39)差速、および(b40)微量元素のうちの少なくとも1つを取得することを更に含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Nが2~10である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記投入汚泥の0~50%の被制御部分を第2消化リアクタに供給すること、および/または
前記第2消化リアクタの排出物の0~50%の被制御部分を、流体接続を介して前記第1消化リアクタに供給すること、および/または
前記第1消化リアクタへの前記N番目の消化リアクタの前記排出物の返送が所定の設定点に達した際に、前記第1消化リアクタの前記排出物の0~50%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも第2消化リアクタに段階供給すること、および/または
前記N番目の消化リアクタの前記排出物の0~70%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも1つの下位消化リアクタに供給すること、および/または
前記N番目の消化リアクタの前記排出物の0~30%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも第2消化リアクタに供給すること、および/または
前記N番目の消化リアクタの前記排出物の50~100%の被制御部分を、流体接続を介して脱水装置および/または消化後槽に供給すること、を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記含水有機汚泥を消化することは、少なくとも2つの消化リアクタで行われ、および/または
消化は、各消化リアクタ内で、独立して、50~65℃の温度で行われ、および/または
消化のための全固形物滞留時間(SRT)は、4~21日の期間であり、および/または
消化期間は、少なくとも1つの消化リアクタの合計期間である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
消化することは、n∈[1,N]の連続攪拌タンクリアクタ、n∈[1,N]のバッチリアクタ、n∈[1,N]の区分された副リアクタを備える単一のリアクタ、およびn∈[1,N]の栓流リアクタのうちの少なくとも1つにおいて行われる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記投入汚泥が肥料、処理済み汚水および浚渫からの一次汚泥および二次汚泥のうちの1つ以上である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記投入汚泥および/または消化リアクタが少なくとも2つの異なる汚泥を備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ベルトフィルタプレス、遠心分離機、脱水スクリュー、ドラム濃縮機、フィルタプレス、および重力ベルトのうちの少なくとも1つにおいて脱水が行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
制御することは、
前記汚泥から得られたデータおよび/または予測されたデータを保存データと比較することと、
前記得られた/予測されたデータと類似する前記保存データ中の1組を特定することと、
少なくとも消化リアクタおよび/または脱水装置を動作させるための前記1組の保存データに関連する方法動作設定を読み出すことと、
前記読み出した動作設定のうちの少なくとも1つを少なくとも消化リアクタおよび/または脱水装置に適用することと、を更に含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
制御することは、少なくとも1つの消化リアクタおよび/または脱水装置のpH、酸化還元電位、揮発性脂肪酸濃度、アルカリ度、陽イオン濃度、および温度のうちの少なくとも1つを調整することを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
得られたデータは数学的に重み付けされ、および/または
得られたデータは数学的に平均化され、および/または
得られるべきデータは数学的に予測される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は継続的に行われるか、または前記方法は一定時間ごとに行われるか、または前記方法はインシデント後に行われるか、または前記方法は統計的プロセス制御およびそれらの組み合わせに基づいて行われる、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
乾燥物は、測定される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つのポンプ、またはそれらの組み合わせを用いてフローが制御される、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
脱水時に、0.1~2440分ごとに乾物含量が測定され、および/または
乾物含量は脱水装置の設定を調整するために用いられる、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも前記第1消化リアクタの前記pHは、5.0超を維持するように制御され、および/または
少なくとも1つの消化リアクタの前記酸化還元値は、-200mV未満を維持するように制御され、および/または
少なくとも1つの消化リアクタの前記pHは、9未満を維持するように制御され、および/または
少なくとも1つの消化リアクタの前記酸化還元値は、-450mV超を維持するように制御され、および/または
泡の量は、0.01~1wt.%の消泡剤を加えることにより制御され、および/または
消泡剤は、精油、脂肪酸エステル、ポリアルキルグリコール、アルカン系炭化水素、ポリジメチルシロキサン、シリコンエマルション、ポリエーテル、シリコンポリマ、シメチコン、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせから選択される成分を含む、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記N番目のリアクタの排出物は、脱水前に攪拌タンクリアクタ内で処理され、および/または
微生物汚泥は、粒状にされるか、凝集されるか、バイオフィルムを形成するか、またはそれらの組み合わせが行われ、および/または
システムには、1日当たりシステム容積1mにつき、1kg超のCODが投入され、および/または
少なくとも1つのフローは、前記フローを提供するポンプの電力消費量によりモニタリングされ、および/または
含水汚泥は、ステップ(a)に先立って前処理をされ、および/または
汚泥2kg/m超が存在する、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
嫌気性消化により含水有機汚泥を連続処理するためのリアクタ装置であって、前記リアクタ装置は、
一連のN個の消化リアクタ(1-N)であって、Nが2以上である消化リアクタと、
n番目の消化リアクタとn+1番目の消化リアクタとの間における流体接続(fc)と、
第1消化リアクタ用の汚泥投入(fci)と、
前記N番目の消化リアクタ用の排出物排出(fco)と、
任意に、前記N番目の消化リアクタと流体接続された消化後槽(11)と、
前記消化後槽と流体接続(fcdw)された任意の脱水装置(21)と、
前記第2消化リアクタと前記第1消化リアクタとの間における流体排出物接続(fc2)と、
前記N番目の消化リアクタと少なくとも1つの下位の(n∈[1,N-1])の消化リアクタとの間における流体排出物接続(fcN)と、
少なくとも1つの供給することまたは除去すること(a1-a5)を制御するために構成された、少なくとも1つの制御部であって、
(b1)(b30)脂肪酸濃度の少なくとも2つの値と、(b11)pHの少なくとも2つの値と、(b12)前記供給量中の乾燥汚泥の量と、(b13)少なくとも1つの消化リアクタの温度と、(b14)前記含水有機投入汚泥の種類と、任意に(b37)アルカリ度とを取得すること、および任意に(b35)酸化還元値を取得することであって、前記投入物における少なくとも1つの前記含水有機汚泥の値および前記N個の消化リアクタのうち少なくとも第1消化リアクタの値が取得される、取得することによって、および
(b1)で得られた値に基づいて(b2)n番目のリアクタから次のn+1番目のリアクタへのオーバーフローを制限または防止することにより、(b2b)消化リアクタにおける液面を調節すること、および(b2a)少なくとも1つのフロー、(b2c)消化リアクタ内の含水有機汚泥の量、(b2d)消化リアクタ内の消泡剤の量、およびそれらの組合せから選択されるパラメータを調節することであって、ここでフロー(b2a)は(a1-a5)における提供することまたは除去することからのフローから選択され、脱水を制御するために(b1)(b11)pHおよび(b35)酸化還元値の値が取得され、前記投入物における少なくとも1つの前記含水有機汚泥の値および前記N個の消化リアクタのうち少なくとも前記第1消化リアクタの値が取得される、調節することによって、および
(b3)少なくとも1つのN番目の消化リアクタおよび/または消化後槽と脱水装置との間におけるフローを調節することによって、
少なくとも1つの供給することまたは除去することを制御するための少なくとも1つの制御部と、
少なくとも1つの消化リアクタ内における前記含水有機汚泥を、3日を超える期間中、20~70℃の温度で消化するための、少なくとも1つのヒータであって、前記少なくとも1つの消化リアクタは消化のための総固形物滞留時間(SRT)が3~21日間に構成された、少なくとも1つのヒータと、
任意に少なくとも1つの消化リアクタ内における混合器と、
フローを提供するための少なくとも1つのポンプと、を備えるリアクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、例えば肥料、汚水処理プラントからの汚泥、浚渫汚泥の有機画分など様々な発生源からの有機汚泥の消化の分野に属する。本方法は、嫌気性消化により含水有機汚泥を連続処理するための高度な制御を提供する。本発明は、得られたバイオマスの脱水にも関する。
【0002】
[発明の背景]
汚水処理には、通常、幾つかの段階が含まれている。一次処理は、例えば網で粗い無機物を除去し、例えば砂トラップで砂を除去し、また例えば一次沈殿槽で不溶性有機物の一部を除去する。二次処理は、通常、存在する生体物質を汚泥に変える微生物を用いて行われ得る。一般的に、二次処理は、リン酸塩や硝酸塩などの汚染物質の除去をも含んでいてもよく、得られた処理済み汚水の質を更に向上させるための三次処理と組み合わされてもよい。二次処理は、通常、嫌気ゾーン、無酸素ゾーン、および好気ゾーンを含み、汚水は活性汚泥により処理される。汚泥中に存在する微生物が汚泥の成長をもたらし、有機物が汚泥に変換される。余剰汚泥は、沈殿により処理水から分離された後、廃棄物として汚水処理プラントから排出されてもよい。しかし、近年の改良により、何とか有機画分の更に大きい部分を分解して汚泥を有価資源として利用するようになった。通常、汚泥は濃縮および脱水されてもよい。
【0003】
本発明は、嫌気性含水汚泥リアクタおよび当該リアクタの運転方法の分野に屬する。嫌気性リアクタは、嫌気条件下で嫌気性汚泥を用いて有機物をバイオガスに変換するリアクタである。この汚泥は微生物を含む。
【0004】
「汚泥」という用語は、2~12wt.%、好ましくは3~9wt.%の乾燥固形分を有する、水溶性媒体中の無機物および有機物のスラリーまたは懸濁液を言及するのに用いられる。汚泥が12wt.%を超える濃度を有する場合、含水汚泥流用の従来のリアクタにおいてその汚泥を消化するのは難しい。汚泥は、部分的に、特定の微生物によってメタンを含むバイオガスに変換されてもよい。汚泥のバイオガスへの変換は複雑なプロセスであって、多くの変数および例えば加水分解、酸生成、メタン生成などの変換工程を必要とし、そのうち加水分解は、通常、分解処理における律速段階である。
【0005】
汚泥の嫌気性消化後に、得られた含水バイオマスは、通常、脱水される。なお、脱水後のバイオマスの乾物含量は、(法的にも実際的にも)特定の仕様の範囲内になるようにしなくてはならない。複数の電解質や高価な装置を使用するため、脱水プロセス自体も費用がかかる。
【0006】
残念なことに、消化用のリアクタ内で組み合わされたり、部分的に組み合わされたりし得る、あるいは連続して同様に処理され得る様々な発生源からの有機汚泥の消化は、汚泥の組成、存在する微生物、および一般に汚泥を特徴付ける変数が大きく異なるため、最適化することが困難である。得られた汚水についても、同じことが準用される。含水バイオマスの脱水は、脱水装置を用いて行われる。脱水に関しては、流入する含水バイオマスの特徴が消化プロセスによって変化するため、差異が更に厄介であり、この差異は測定することが難しい。通常、乾燥物および脱水装置に流入する含水バイオマスの変動のみが測定される。例えば、測定器が汚染されやすい傾向があり、また、水性排出物中の気泡が測定を妨げるため、乾物含量は、一般に、測定が不正確になる。この不正確さを克服するため、制御パラメータの設定は、高分子電解質の多めの投与および汚泥に対する低めの加圧力を含み、通常、慎重に選択され、次善最適である。しかし、含水バイオマス脱水特性が未知であり、同じ乾物含量および同じプロセスパラメータの設定で、異なる脱水結果が得られるかもしれないため、このアプローチはやはり好ましい。どの脱水結果が得られるかを予測する方法はない。さらに、定期的に発生することが分っている含水バイオマスの組成や流れなどにおける変化に適応するため、やはり慎重なアプローチが好ましい。一般的には、制御システムは変化に対してゆっくり反応することが分かっている。
【0007】
また、脱水バイオマスがしばしば廃棄されることも注目される。生体物質に関する問題は、病原性の可能性がある微生物が処理後も(まだ)存在し得ることであろう。そのため、バイオマスは更に土壌改良剤などに使用することができず、病原微生物の危険性を低減させるために、更なる処理が必要となり得る。通常、病原微生物の十分な減少を実現するために、高温および/または長い滞留時間が用いられる。これに関しては、クラスAのバイオソリッドに関するEPA503が参照される。
【0008】
一般的には、汚水処理中に濃度および他のパラメータを測定またはモニタリングすることは、必ずしも非常に正確なわけではないが、当該技術において十分確立されている。これらのパラメータは、汚水処理工程において広く利用可能な器具類によって測定される。生物処理システムを制御するため、特に処理システムへの曝気量を制御するために、そうした器具類を使用することは十分に確立されている。
【0009】
汚水処理の消化についての一般的な参考文献は、「Eddy、M.A.、Burton、F.L.、Tchobanoglous、G. and Tsuchihashi、R.、2013.廃水工学:処理および資源回収(p.2048).マグロウヒル・エデュケーション社:米国、ニューヨーク州、ニューヨーク市」であり、この参考文献およびその内容は、参照により組み込まれている。
【0010】
WO2015/037989A1(以下を参照)、US2012/125840A、およびGB 2 528 110 Aが更に参照される。US2012/125840Aは、清澄器、回分リアクタ、および/または消化槽を用いて生体物質の嫌気性消化を行うためのシステムおよび方法を開示している。GB 2 528 110 A は、車両または牽引可能トレーラに搭載されたリアクタシステム、制御システム、および加熱システムを備える、有機廃棄物の高速嫌気性消化のための移動式嫌気性消化プラントを記載している。そのリアクタシステムは2つ以上のリアクタを含み、少なくとも1つのリアクタタンク内にガス回収システムを備え、順番にあるいは並行して動作可能である。記載されたシステムおよび方法は、病原性制御には適しておらず、少なくとも許容できる結果につながる条件下における消化の制御とは全く組み合わされていない。
【0011】
したがって、本発明は、機能性および長所を損なうことなく上記の短所の1つ以上を解消する、嫌気性消化によって含水有機汚泥を連続的に処理するための改良された方法に関する。
【0012】
[発明の概要]
本発明は、第一の局面において、嫌気性消化によって含水有機汚泥を連続的に処理する方法に関し、その方法は、(a1)投入汚泥の一部または全てを、一連のN個の消化リアクタにおける第1消化リアクタに供給し、投入汚泥のうち0~50%の被制御部分を(直接)第2消化リアクタに供給することであって、ここでN≧2、例えばN≧5であることと、(a2)n番目の消化リアクタの排出物を、流体接続を介してn+1番目の消化リアクタに供給することであって、ここでn∈[1,N]であることと、(a3)N番目(最終)の消化リアクタの排出物のうち0~70%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも1つの下位の(n∈[1,N-1])消化リアクタに供給することと、(a4)第2消化リアクタの排出物のうち0~50%の被制御部分を、流体接続を介して第1消化リアクタに供給することと、(a5)N番目(最終)の消化リアクタの排出物のうちの30~100%の被制御部分(残余)を、例えば消化後リアクタおよび/または脱水装置などの流体接続へ除去することと、(b)少なくとも1つの供給することまたは除去すること(a1-a5)を制御することであって、(b1)(b11)pHの少なくとも2つの値(その値における電位の変動または変化を規定する第1および第2の値)と、(b12)供給量における乾燥汚泥の量と、(b13)少なくとも1つの消化リアクタの温度と、(b14)投入汚泥の種類と、任意に、別々にまたは例えば1つの測定装置を用いて一緒に取得し得る(b30)脂肪酸濃度および(b37)アルカリ度のうち少なくとも1つと、を取得すること、および任意に(b35)酸化還元値を取得することであって、投入物における少なくとも1つの汚泥の値およびN個の消化リアクタのうち少なくとも第1の消化リアクタの値が取得されることによって、ならびに(b2)(b2b)消化リアクタ内の液面と、(b2a)少なくとも1つのフロー、(b2c)消化リアクタ内の汚泥の量、(b2d)消化リアクタ内の消泡剤の量、およびそれらの組合せから選択されたパラメータとを調節することであって、ここで、フロー(b2a)はフロー(a1-a5)から選択される、調節することによって、少なくとも1つの供給することまたは除去すること(a1-a5)を制御することと、(c)任意に、3日を超える期間中、少なくとも1つの消化リアクタ内において、20~70℃の温度で有機汚泥を消化することと、任意に、(d)N番目の消化リアクタから、好ましくはN番目の消化リアクタに後続する消化後リアクタ(11)に汚泥を供給すること、および/または(e)(b1)投入物における汚泥の特徴およびN個の消化リアクタのうち少なくとも第1消化リアクタの汚泥の特徴を取得することにより、および(b3)少なくとも1つのN番目の消化リアクタと脱水装置との間におけるフローを調節することにより、形成されたバイオマスを脱水し、脱水を制御することと、を含む。本消化は、中温条件下(20~45℃)および/または高温条件下(45~70℃)で行われてもよく、高温条件は病原微生物の数を大きく減少させるという利点を提供する。本方法および装置によれば、制御および調節が大幅に向上し、病原性生物の十分な減少だけでなく好収率および適切な消化がもたらされる。これは、比較的温和な温度条件下で、比較的短い滞留時間で実現される。実際に、2-リアクタシステムは、この目的のためにすでに十分な一定の用途がある。例えば、発泡は最小化され(ほとんどまたは全く発泡せず)、消化は最適化される(約30%から約80%の消化乾燥物)。なお、多量の発泡は、リアクタの停止および再始動が必要かもしれないこと、または少なくとも消化が中断していることを意味する。本出願人は、WO2015/037989A1およびNL2021302を出願しており、その出願書類および内容は参照により本明細書に組み込まれる。それらは、特にリアクタ装置、動作条件、および脱水の一定の詳細を提供する。前述のように、投入汚泥は、多種多様な発生源および異なる発生源から発生し得る。投入汚泥は、少なくとも一部が第1消化リアクタに、または同様に第1消化に供給され、消化リアクタの状態、脱水装置、および受入汚泥の特徴などに応じて、任意に一部が第2消化リアクタ等に供給される。消化リアクタのアウトプット(排出物)は、後続の消化リアクタに供給される。第2消化リアクタの排出物の一部は、第1消化リアクタに返送供給されてもよい。同様に、最終消化リアクタの排出物の一部は、例えば第1消化リアクタまたは第2消化リアクタなど、前の消化リアクタに返送供給されてもよい。なお、(b2b)消化リアクタ内の液面を制御することは、通常、n番目のリアクタから次のn+1番目のリアクタへのオーバーフローを制限または防止することにより、病原性生物の数が一般に少なくとも1000の倍数で十分に減少するよう、n+1番目のリアクタの汚染を防ぐことに関する。オーバーフローは、更に、または追加的に、通常、最終(N番目)のリアクタから始まって、n番目のリアクタを少なくとも部分的に空にし、その後n-1番目のリアクタを少なくとも部分的に空にすることにより、防ぐことができる。処理のこの部分の制御、および脱水の制御は、pH、酸化還元値など特定のパラメータを取得すること、およびバルブを用いることなどにより、後続および/または返送消化リアクタの間のフローを調節することにより行われる。これらのパラメータは、消化リアクタから、投入汚泥から、返送汚泥から、ならびに脱水投入および脱水排出から取得される。脱水前に、有機汚泥は、3日を超える期間中、20~70℃の温度で消化され、有機物の大部分は消化され、病原微生物の数は大幅に減少し、好ましくはゼロになる。上記のように、更なるステップにおいて、消化後のバイオマスは脱水される。したがって、本発明は、種々の投入バイオマスの処理を大幅に改良することができ、コストを削減し、得られる最終生産物の品質を向上させ、化学物質の使用を低減させ、労力を低減させ、生産されるバイオガスの量を増加させる制御システムを提供する。
【0013】
本発明は、優れた制御を提供する。また、クラスAのバイオソリッドを得ることも可能である。第2リアクタ内においてすでにクラスAのバイオソリッドを得られることが分かっている。さらに、例えばEpHyra(登録商標)技術を用いた場合などは、更なる処理能力を実現することができる。
【0014】
第二の局面において、本発明は嫌気性消化により含水有機汚泥を連続処理するためのリアクタ装置に関し、リアクタ装置は、一連のN個の消化リアクタ(1、N)であって、Nが2以上である消化リアクタと、n番目の消化リアクタとn+1番目の消化リアクタとの間における流体接続と、第1消化リアクタ用の汚泥投入と、N番目の消化リアクタ用の排出物排出と、N番目の消化リアクタと流体接続された消化後リアクタ11と、消化後リアクタと流体接続された任意の脱水装置21と、第2消化リアクタと第1消化リアクタとの間における流体排出物接続と、N番目の消化リアクタと少なくとも1つの下位の(n∈[1,N-1])消化リアクタとの間における流体排出物接続と、N番目の消化リアクタ用の排出物排出と、少なくとも1つの供給することまたは除去すること(a1-a5)を制御するための少なくとも1つの制御部であって、(b1)(b11)pHの少なくとも2つの値と、(b12)供給量中の乾燥汚泥の量と、(b13)少なくとも1つの消化リアクタの温度と、(b14)投入汚泥の種類と、(b37)アルカリ度とを取得し、また任意に(b35)酸化還元値を取得することであって、ここで投入物における少なくとも1つの汚泥の値およびN個の消化リアクタのうち少なくとも第1消化リアクタの値を取得することによって、および(b2)(b2b)消化リアクタにおける液面を調節し、(b2a)少なくとも1つのフロー、(b2c)消化リアクタ内の汚泥の量、(b2d)消化リアクタ内の消泡剤の量、およびそれらの組合せから選択されたパラメータを調節することであって、ここでフロー(b2a)はフロー(a1-a5)から選択され、脱水を制御するために(b1)(b11)pHおよび(b35)酸化還元値の値が取得され、投入物における少なくとも1つの汚泥の値およびN個の消化リアクタのうち少なくとも第1消化リアクタの値が取得されることによって、および(b3)少なくとも1つのN番目の消化リアクタおよび/または任意の消化後リアクタと脱水装置との間におけるフローを調節することによって、少なくとも1つの供給することまたは除去することを制御するための少なくとも1つの制御部と、少なくとも1つの消化リアクタ内において3日を超える期間中、20~70℃の温度で有機汚泥を消化するための、少なくとも1つのヒータと、フローを提供するための少なくとも1つのポンプと、を備えるリアクタ装置である。
【0015】
これにより、本発明は上記の問題点のうち1つ以上に対する解決策を提供する。
本発明の利点は、説明全体にわたって詳述される。
[発明の詳細な説明]
本発明は、第1の局面において、請求項1に記載の方法に関する。
【0016】
例示的な実施形態において、本方法は、(d)N番目の消化リアクタから、好ましくはN番目の消化リアクタに後続する消化後リアクタ11に汚泥を供給することを更に含んでもよい。
【0017】
例示的な実施形態において、本方法は、(e)N番目の消化リアクタおよび/または消化後槽から脱水装置21に供給し、形成されたバイオマスを脱水し、(b1)投入物における汚泥の特徴およびN個の消化リアクタのうちの少なくとも第1消化リアクタの汚泥の特徴を取得すること、および(b3)少なくとも1つのN番目の消化リアクタおよび/または消化後リアクタと脱水装置との間におけるフローを調節することにより、脱水を制御することを含んでもよい。
【0018】
本方法の例示的な実施形態において、脱水装置より前に1つ以上のバッファが設けられていてもよい。
本方法の例示的な実施形態において、供給を制御することおよび/または脱水を制御することは、(b15)供給変動(feed flux)、(b16)投入汚泥の生成設備、(b17)投入汚泥の生成方法、(b18)投入汚泥の年齢、(b19)投入汚泥の有機炭素含有量(COD)(b20)投入汚泥の生成方法、(b21)投入汚泥の生成中の化学物質投与、(b22)残存する投与化学物質の残留濃度、(b23)投入汚泥の生成中の処理設定、(b24)高分子電解質濃度、(b25)高分子電解質の種類、(b26)ボウル速度、(b27)汚泥に加えられる圧力、(b28)生成されるガス、(b29)排出ストリーム、好ましくはN番目の消化リアクタの排出ストリームにおけるアンモニア濃度、(b30)脂肪酸濃度、(b31)たんぱく質濃度、(b32)糖濃度、(b33)セルロース系物質の濃度、(b34)分解性有機物の量、(b35)投入汚泥の生成時の境界条件、(b36)揮発性脂肪酸濃度、(b37)重炭酸塩濃度などのアルカリ度、(b38)例えばストルバイトなどのリン酸塩鉱物が消化リアクタ内に堆積するのを防ぐまたは制限するための、Na濃度、Ca濃度、Mg濃度などの陽イオン濃度、(b39)差速、および(b40)例えば最終リアクタから第1リアクタになど、上位のリアクタから下位のリアクタに排出物を返送供給することなどによる、微量元素、のうちの少なくとも1つを取得することを更に含んでもよい。多くの変数を考慮に入れてもよい。これらの変数のうち幾つかは、多くの場合において比較的重要であることが分かっているが、ある場合においてのみ他の変数が重要であるかもしれない。しかしながら、これらの変数(pHおよび酸化還元値も含む)およびこれらの変数に関するデータを取得することに基づいて、はるかに優れた消化の制御、ならびにその後の消化後および脱水の制御についても実現される。変数は、通常、リアクタおよび装置の設定を調整するために用いられる。こうした調整は、通常、先に行われた消化を考慮して、汚泥の同程度の投入供給とともに行うことができる。そのため、本方法は、最適条件により早く到達し、材料、化学物質、およびエネルギーの消費を低減させ、廃棄物を低減させ、またバイオガス生産量を向上させる。
【0019】
本方法の例示的な実施形態において、Nは2~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6であって、例えば4のように3~5などである。したがって、リアクタの数、または同じく区画の数は、通常あまり多くない。
【0020】
例示的な実施形態において、本方法は、投入汚泥の0~50%、好ましくは投入汚泥の0.1~10%、より好ましくは、投入汚泥の0.5~5%、更に好ましくは投入汚泥の3~5%の被制御部分を、第2消化リアクタに供給することを含んでもよい。政令を考慮するなど一定の場合において、第1消化リアクタは迂回できないため、投入供給量は全く第2消化リアクタに回されない。
【0021】
例示的な実施形態において、本方法は、第2消化リアクタの排出物の0~50%、好ましくは第2消化リアクタの排出物の0.5~20%、より好ましくは第2消化リアクタの排出物の1~10%、例えば1.5~5%の被制御部分を、流体接続を介して第1消化リアクタに供給することを含んでもよい。
【0022】
例示的な実施形態において、本方法は、第1消化リアクタへのN番目の消化リアクタの排出物返送が所定の設定点に達した際に、第1消化リアクタの排出物の0~50%、好ましくは第1消化リアクタの排出物の1~30%、より好ましくは第1消化リアクタの排出物の2~10%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも第2消化リアクタに段階供給することを含んでもよく、ここで、所定の設定点は、N番目の消化リアクタの排出物の20%、好ましくはN番目の消化リアクタの排出物の10%であり、少なくとも第1消化リアクタ、好ましくは大半または全ての消化リアクタに関して、pHを5.0超、好ましくは5.2超、例えば5.6超に維持することと組み合わせるのが好ましい。同様に、第1リアクタの排出物の一部が消化後槽に供給されてもよい。
【0023】
例示的な実施形態において、本方法は、N番目の消化リアクタの排出物の0~50%、好ましくはN番目の消化リアクタの排出物の1~30%、より好ましくはN番目(最終)の消化リアクタの排出物の2~10%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも第1消化リアクタに供給することを含んでもよい。
【0024】
例示的な実施形態において、本方法は、N番目の消化リアクタの排出物の0~30%、好ましくはN番目の消化リアクタの排出物の1~10%、より好ましくはN番目の消化リアクタの排出物の2~5%の被制御部分を、流体接続を介して少なくとも第2消化リアクタに供給することを含んでもよい。
【0025】
例示的な実施形態において、本方法は、N番目の消化リアクタの排出物の50~100%、好ましくはN番目の消化リアクタの排出物の60~98%、より好ましくはN番目の消化リアクタの排出物の80~90%の被制御部分を、流体接続を介して脱水装置および/または消化後槽に供給することを含んでもよい。
【0026】
上記の制御などによれば、例えばpHおよび/または酸化還元電位に関して様々なリアクタの消化が最適化される。
本方法の例示的な実施形態において、有機汚泥を消化することは、少なくとも2つの消化リアクタ、好ましくは2~N個の消化リアクタ、より好ましくは3~5個の消化リアクタにおいて行われる。
【0027】
本方法の例示的な実施形態において、高温消化は、各消化リアクタ内で、独立して、50~65℃、好ましくは52~60℃、より好ましくは53~58℃、例えば55~57℃の温度で行われる。より高温での消化は、病原微生物を大幅に低減させることが分かっている。これにより、クラスAのバイオソリッドを得ることも可能である。代替的に、または追加的に、中温消化は、各消化リアクタ内で、独立して、25~40℃、好ましくは30~38℃、例えば35~37℃の温度で行われる。その結果、使用されるエネルギーはより少ない。
【0028】
本方法において、消化のための全固形物滞留時間(SRT)は、3~30日、好ましくは4~21日、より好ましくは例えば8~12日など6~15日を含む5~18日の期間である。
【0029】
本方法の例示的な実施形態において、消化期間は少なくとも1つの消化リアクタの合計期間である。
本方法の例示的な実施形態において、消化することは、n∈[1ーN]の連続攪拌タンクリアクタ、n∈[1ーN]のバッチリアクタ、例えば上下方向に分離された区画などn∈[1ーN]の区分された副リアクタを備える単一のリアクタ、およびn∈[1ーN]の栓流リアクタのうちの少なくとも1つであって、好ましくはn∈[1ーN]の栓流リアクタにおいて行われる。これに関して、流体接続は、管状構造に関してもよく、または単に断続壁の部分的な不在に関してもよい。生じうる問題は、リアクタ、特に第1消化リアクタの低下(酸性化)である。N番目の消化の排出物および同様に第2消化リアクタの排出物を第1消化リアクタに返送供給することにより、pHを制御してもよい。
【0030】
本方法の例示的な実施形態において、リアクタ間および脱水装置へのフローが制御される。
本方法の例示的な実施形態において、投入汚泥は、肥料、処理済み汚水および浚渫からの一次汚泥および二次汚泥のうちの1つ以上である。
【0031】
本方法の例示的な実施形態において、投入汚泥および/または消化リアクタは、例えば一次または二次汚泥、「冬季」汚泥または「夏季」汚泥、異なる汚水プラントからの汚泥等、3~10の異なる汚泥などの少なくとも2つの異なる汚泥を含む。汚泥は、特徴の点で異なっていてもよい。
【0032】
本方法の例示的な実施形態において、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、脱水スクリュー、ドラム濃縮機、フィルタプレス、および重力ベルトのうちの少なくとも1つにおいて脱水が行われる。
【0033】
本方法の例示的な実施形態において、制御することは、汚泥から得られたデータおよび/または予測されたデータを保存データ、好ましくはコンピュータ上、サーバ上、またはクラウド内の保存データと比較することと、
得られた/予測されたデータと類似する保存データ中の1組を特定することと、
少なくとも消化リアクタおよび/または脱水装置を動作させるための1組の保存データに関連する方法動作設定を読み出すことと、
読み出した動作設定のうちの少なくとも1つを少なくとも消化リアクタおよび/または脱水装置に適用することと、を更に含む。
【0034】
本方法の例示的な実施形態において、制御することは、少なくとも1つの消化リアクタおよび/または脱水装置のpH、酸化還元電位、揮発性脂肪酸濃度、アルカリ度、陽イオン濃度、および温度のうちの少なくとも1つを、例えば少なくとも1つのフロー(a1)~(a5)を調整することなどによって調整することを含む。
【0035】
本方法の例示的な実施形態において、得られたデータは数学的に重み付けされる。
本方法の例示的な実施形態において、得られたデータは数学的に平均化される。
本方法の例示的な実施形態において、得られるべきデータは数学的に予測される。
【0036】
上記の重み付け、平均化、および予測を用いて、消化能力を統計学的に制御することができ、偏差は速やかに特定することができ、またそれにより処理条件を調整してもよく、後続のリアクタおよび装置の処理条件も速やかに、および必要なときに調整してもよい。さらに、処理条件が生成限度などの処理範囲内に留まっている場合には、反応する必要がない。
【0037】
本方法の例示的な実施形態において、本方法は継続的に行われる。
本方法の例示的な実施形態において、本方法は、例えば1~60分ごとなど一定時間ごとに行われる。
【0038】
本方法の例示的な実施形態において、本方法はインシデント後に行われる。特にこのような場合には、本方法およびシステムの再始動または再起動が必要となり得る。
本方法の例示的な実施形態において、本方法は統計的プロセス制御および上記の組み合わせに基づいて行われる。一例は、例えば前述のNL2021302に記載されている。
【0039】
本方法の例示的な実施形態において、乾燥物は、例えば濁度測定装置、好ましくは流体接続と並行する濁度測定装置、電波装置、光学装置、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
【0040】
本方法の例示的な実施形態において、少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つのポンプ、およびそれらの組み合わせを用いてフローが制御される。
本方法の例示的な実施形態において、脱水時に、0.1~2440分ごと、好ましくは1~15分ごと、例えば2~7分ごとに乾物含量が測定される。
【0041】
本方法の例示的な実施形態において、乾物含量は脱水装置の設定を調整するために用いられる。
本方法の例示的な実施形態において、通常少なくとも第1消化リアクタ、好ましくは各消化リアクタについて、少なくとも1つの消化リアクタのpHは5.5超、好ましくは5.8超を維持するように制御される。
【0042】
本方法の例示的な実施形態において、通常少なくとも第1消化リアクタ、好ましくは各消化リアクタについて、少なくとも1つの消化リアクタの酸化還元値は、-200mV未満、好ましくは-300mV未満を維持するように制御される。
【0043】
本方法の例示的な実施形態において、通常少なくとも第1消化リアクタ、好ましくは各消化リアクタについて、少なくとも1つの消化リアクタのpHは、9未満、好ましくは8未満を維持するように制御される。
【0044】
本方法の例示的な実施形態において、通常少なくとも第1消化リアクタ、好ましくは各消化リアクタについて、少なくとも1つの消化リアクタの酸化還元値は、-450mV超を維持するように制御される。
【0045】
本方法の例示的な実施形態において、泡の量は、0.01~1wt.%、好ましくは0.02~0.2wt.%、例えば0.05~0.1wt.%の消泡剤を加えることにより制御される。
【0046】
本方法の例示的な一実施形態において、消泡剤は、精油、脂肪酸エステル、ポリアルキルグリコール、アルカン系炭化水素、ポリジメチルシロキサン、シリコンエマルション、ポリエーテル、シリコンポリマ、シメチコン、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせから選択される成分を含む。適切な消泡剤の例としては、Struktol社のStruktol J 673-1A、Struktol SB 2080、およびStruktol SB 2322、TeamAquaFix社のDeFoam 3000、CarlRoth社のシリコン消泡エマルション、およびSigma-Aldrich社のAntifoam 204、シリコン消泡剤、Antifoam B エマルション、Antifoam A 濃縮液、Antifoam Y-30 エマルション、Antifoam SE-15、EX-CELL消泡剤、およびシメチコンが挙げられる。
【0047】
本方法の例示的な一実施形態において、N番目のリアクタの排出物は、脱水前に攪拌タンクリアクタ内で処理される。
本方法の例示的な一実施形態において、微生物汚泥は、粒状にされるか、凝集されるか、バイオフィルムを形成するか、またはそれらの組み合わせが行われる。
【0048】
本方法の例示的な一実施形態において、システムには、1日当たりシステム容積1mにつき、1kg超、好ましくは2kg超、より好ましくは例えば最大20kgの5kg超のCODが投入される。一般的には、6~8kgが使用される。
【0049】
本方法の例示的な一実施形態において、少なくとも1つのフローは、そのフローを提供するポンプの電力消費量によりモニタリングされる。
本方法の例示的な一実施形態において、含水汚泥は、ステップ(a)に先立って、好ましくは浄化、沈砂除去、脂肪除去、油脂除去、pH調整、および予備沈殿のうちの少なくとも1つにより前処理をされ、および/または
各リアクタには汚泥2kg/m超、好ましくは汚泥2.5kg/m超、例えば汚泥5~80kg/m超が存在する。乾燥固形分については、その量は、特に第1リアクタ/区画において、各リアクタ、1日当たり、例えば27kgDS/mなど最大80kgDS/mである。
【0050】
本発明は添付の図および実施例により更に詳述されるが、図および実施例は例示的および説明的な性質のものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者にとっては、自明であるにせよそうでないにせよ、多くの変形が本願請求項により規定される保護の範囲に含まれると考え得ることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の詳細を示す。
図2】本発明の詳細を示す。
図3】本発明の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[図面の詳細な説明]
図1は、リアクタ装置の模式図を示す。連続した第1~第Nリアクタが示されているが、これは第1~第N区画(図の下部)を有する1つのリアクタにも関連し得る。この単一リアクタは、尖った底部の代わりになる、破線で表された湾曲した底部または平らな底部を有してもよい。Mは、行われ得る測定を示す。消化後槽11および脱水ユニット21が更に示されている。投入物の一部は、リアクタ2に直接供給され得る(上方の点線)。最終(N番目)のリアクタの排出物の一部は、下位のリアクタに供給され得る(下方の破線)。また、上位のリアクタの一部が下位のリアクタに供給されてもよい。これは、共通ラインを介してもよく、灰色がかったラインで表される少なくとも1つの更なる追加ラインに対して行われてもよい。第2リアクタの一部は、第1リアクタに返送することもできる(実線)。
【0053】
図2は、動作方法の模式図を示す。リアクタ3の内容物の一部はリアクタ1に返送され、リアクタ3の内容物の一部は、通常、その0~20%がリアクタ1および2にそれぞれ返送される。pHは、5.6を超えるように維持される。リアクタ3の排出物は、消化後槽に供給される。そこからの排出物は、例えば脱水されるなど更に処理され得る。
【0054】
図3は、投入物の一部は再循環され、一部は消化後処理され、一部は所定の時間一連のリアクタに留まることを模式的に示している。
図は、以下の説明および実施例において更に詳述される。
【0055】
[実施例/実験]
以下は、本発明の一例に関する。
本発明においては、概して中温処理に適用されるEpHyra(登録商標)技術が用いられる。この栓流処理において、滞留時間は、全ての固形物についてほぼ同じである。このことは、固形物の一部が平均滞留時間より短い滞留時間を有する連続攪拌タンクリアクタ(CSTR)に基づく従来の消化槽に比べて、より効率的である。EpHyra(登録商標)技術は、消化用の複数の区画を用いるため、相分離が生じ得る。相分離により、第1区画では主に脂肪酸生成が起こるため、第1区画においてpHを大きく低下させる。最終区画からの再循環フローは、第1区画におけるpHおよび第1区画の(再)植菌を制御するために用いられる。高い再循環率によりプロセスがむしろ従来型のCSTR消化槽に近くなるため、再循環率には限度がある。EpHyra(登録商標)のコンセプトは、有機廃棄物の分解における最大25%の追加、最大25%まで増強されたバイオガス生成、およびより高い積載率を維持する能力をもたらし、それにより必要なリアクタ容積は低減する。本技術はまた、より優れた脱水性をもたらし、次に汚泥輸送の量を低減させる。バイオソリッドクラスA適格の要求を満たすために、汚泥は、少なくとも以下の病原体減少要件のうちの1つを満たさなければならない。すなわち、全固形物(TS)1グラム当たりの糞便大腸菌群が1,000最確数(MPN)未満、またはTS4グラム当たりのサルモネラ属菌が3MPN未満である。病原体減少の次に、汚泥の揮発性固形物(VS)濃度が少なくとも38%減少する必要がある。
【0056】
連続する3つのリアクタが用いられた。リアクタはそれぞれ21.5リットルの容積を有し、55℃に保たれた。pHは、各リアクタについて5.6~7.6の範囲内に維持された。第1リアクタは、通常、第2リアクタより低いpHを有し、第2リアクタは、第3リアクタより低いpHを有する。リアクタごとのRTは4日であるため、総RTは12日である。実際には、固形物滞留時間と水力学的滞留時間との間において、あったとしても大した違いは見られなかった。出発物質として、ズウォレにある汚水処理プラント(WWTP)の高温消化槽からの再循環汚泥が使用された。リアクタには、40%の一次汚泥と、アメルスフォールトにあるWWTPからの4wt.%DSおよび3wt.%ODSを有する60%の二次汚泥との混合物が供給された。汚泥は、使用前に、管の詰まりを引き起こし得る大きい粒子を除去するため、篩を用いてろ過した。温度、pH、DSおよびODSは制御された。プロジェクトの間、5つの蠕動ポンプが用いられた。流入用に1つ、排出用に1つ、再循環用に1つ、第1リアクタと第2リアクタとの間に1つ、第2リアクタと第3リアクタとの間に1つである。これらのポンプは、1時間に5~10分間汲み上げるよう、タイマを用いて設定された。ポンプは、まず水を用いて較正され、その後、設定点フローを保証するため汚泥が用いられた。第1リアクタにおける酸性化を回避するため、再循環フローは10%であった。最初の数週間は、リアクタを始動するためであり、その期間に以下のパラメータが測定された。すなわち、温度、pH、TS濃度、VS濃度である。温度およびpHは、対応するセンサを用いて測定された。TS濃度は、105℃のオーブン内で試料を乾燥させることにより測定された。汚泥の揮発性固形物(VS)濃度は、550℃のオーブンでの焼却により測定された。温度およびpHは、稼働日毎に複数回測定された。流入物のTSおよびVS濃度は、アメルスフォールトのWWTPから新たな汚泥が回収された後に測定され、各リアクタの排出物のTSおよびVS濃度は、稼働日1回おきに測定された。TSおよび揮発性固形物(VS)は、るつぼと「デンバーインストルメント社 AA-250」の分析天びんとを用い、標準方法に従って測定された。「Memmert ULM500」のオーブンおよび「EUROTHERM 808」のマフラー炉が、それぞれ乾燥および焼却用に用いられた。「Hach HQ40D」のメータが、pH測定のために用いられた。温度は、「Voltcraft PL-125-T2」を用いて測定された。各リアクタの外側に熱電対が取り付けられ、ポリウレタンフォームを用いて断熱された。
【0057】
TSは、リアクタ3内で約2.8wt.%、リアクタ2内で約3.0wt.%、リアクタ1内で約3.5wt.%であった。VSは、リアクタ3内で約1.7wt.%、リアクタ2内で約2.0wt.%、リアクタ1内で約2.5wt.%であった。時間の経過とともに変化が生じた。
【0058】
ここで、病原性低下が実現された。大腸菌は、排出物における乾燥物(DS)1グラム当たり1000コロニー形成単位(最確数:MPN)未満であり、サルモネラ菌は同様にDS1グラム当たり3MPN未満であり、ODS消化は38%超であった。ODSの減少は、第3リアクタ内が最も良く(約40%)、第2リアクタ内で約30%、第1リアクタ内で約20%であった。
【0059】
リアクタ内での滞留時間に応じて、消化固形物は16.5wt.%を超える乾燥固形分を含む。
このようにして、バイオソリッドクラスAの生体物質が生成される。
図1
図2
図3