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  • 特許-静電チャックの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 13/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H02N13/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021554687
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020021996
(87)【国際公開番号】W WO2020185835
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】62/816,687
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515316263
【氏名又は名称】テックネティックス グループ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TECHNETICS GROUP,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】マクファデン,アンガス
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ジェイソン
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-507196(JP,A)
【文献】特開2012-235095(JP,A)
【文献】特開2018-174256(JP,A)
【文献】特開2016-076711(JP,A)
【文献】特開2008-016795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 13/00
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャック(400)を製造する方法であって、
スピンコーティング、直接スプレーコーティング、又はこれらの組み合わせからなる堆積方法群から選択される堆積方法を使用して、第1の誘電体材料の第1の層(420)、セラミック材料から形成されるハンドル(410)上に堆積させるステップであって、前記第1の誘電体材料は、イットリウム、イリジウム、エルビウム、ハフニウム、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、ランタノイド又はこれらの組み合わせからなる誘電体材料群から選択されるステップと、
前記第1の誘電体材料の前記第1の層を少なくとも600℃の温度で硬化させるステップと、
記第1の誘電体材料の前記第1の層の上に電気的機能層(430)を堆積させるステップと、
スピンコーティング、直接スプレーコーティング、又はこれらの組み合わせからなる堆積方法群から選択される堆積方法を使用して、前記第1の誘電体材料の前記第1の層及び前記電気的機能層の組み合わせの上に、第2の誘電体材料の第2の層(440)を堆積させるステップであって、前記第2の誘電体材料は、イットリウム、イリジウム、エルビウム、ハフニウム、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、ランタノイド又はこれらの組み合わせからなる誘電体材料群から選択されるステップと、
前記第2の誘電体材料の前記第2の層を少なくとも600℃の温度で硬化させるステップと、
前記第1の誘電体材料の前記第1の層、前記電気的機能層、及び前記第2の誘電体材料の前記第2の層の組み合わせの上に、機械的誘電体層(450)を堆積させるステップであって、前記機械的誘電体層は、前記ハンドルの形成に用いられた材料と同じセラミック材料から形成されるステップと、
前記機械的誘電体層をパターニングするステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の誘電体材料は前記第2の誘電体材料と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の誘電体材料及び前記第2の誘電体材料は高誘電率材料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の誘電体材料及び前記第2の誘電体材料は両方とも、誘電率が3を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
記第1の誘電体材料の前記第1の層(420)を堆積させる前記ステップはスピンコーティングを含み、前記スピンコーティングは、
少量の液体誘電体材料を前記ハンドル(410)上に塗布することと、
ある速度で前記ハンドルを回転させ、前記液体誘電体材料を遠心力で広げることと、
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
記第1の誘電体材料の前記第1の層(420)を堆積させる前記ステップは直接スプレーコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
記第1の誘電体材料の前記第1の層を堆積させる前記ステップは、前記第1の誘電体材料の複数の層を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の誘電体材料の前記複数の層を前記堆積させることは全てスピンコーティングを使用する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の誘電体材料の前記複数の層を前記堆積させることは全て直接スプレーコーティングを使用する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の誘電体材料の前記複数の層は、前記複数の層のうちの少なくとも1つがスピンコーティングの使用によって堆積し、前記複数の層のうちの少なくとも1つが直接スプレーコーティングの使用によって堆積する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
記第2の誘電体材料の前記第2の層を堆積させる前記ステップは、前記第2の誘電体材料の複数の層を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の誘電体材料の前記複数の層を前記堆積させることは全てスピンコーティングを使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の誘電体材料の前記複数の層を前記堆積させることは全て直接スプレーコーティングを使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の誘電体材料の前記複数の層は、前記複数の層のうちの少なくとも1つがスピンコーティングの使用によって堆積し、前記複数の層のうちの少なくとも1つが直接スプレーコーティングの使用によって堆積する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の誘電体材料及び前記第2の誘電体材料は、酸化物、金属酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、フッ化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法で製造された静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により完全な形で本明細書に組み込まれている、2019年3月11日に出願された米国特許仮出願第62/816,687号、件名「静電チャックの製造方法(METHODS OF MANUFACTURING ELECTROSTATIC CHUCKS)」の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書では静電チャック(ESC)の製造方法について記載しており、この方法では、ESCの少なくとも一部分が、スピンコーティング技術又はスプレー技術を使用してハンドル上にESCの層を堆積させることによって形成される。
【背景技術】
【0003】
図1を参照すると、静電チャック100は、典型的には、ハンドル即ちベースプレート110を含み、その上に誘電体材料の複数の層が堆積されてチャックボディ120が形成される。誘電体材料の隣接層間に、パターニングされた金属シート130が分散されてよく、これは電気的構成要素(例えば、電極、ヒータ等)として働く。
【0004】
上述の構成を有するESCを製造する従来の手段は一般に、テープキャスティング技術を使用して誘電体材料の複数の層をハンドル上に形成することを含む。図2を参照すると、テープキャスティング法は一般に、可動ベルトを用意し、その上に液体誘電体材料をリザーバから分散させることを含む。リザーバからベルト上に分散した材料の高さを一定にするためにドクターブレードが使用される。分散した材料がベルト上を前進するにつれて、この材料は乾燥機の下を通って硬化される。チャックボディの厚さを積み上げるために複数のテープキャスティングパスが使用されてよい。
【0005】
テープキャスティングを使用してESCの一部を製造することから複数の問題が発生する。ESCの製造に必要な全体時間は比較的長く、これは、テープキャスティング技術を使用してチャックボディを積み上げることに時間がかかる性質の為である。又、テープキャスティング工程は比較的複雑である。その為、これらの技術を使用する場合の全体的な歩留まりは低く、コストは比較的高い。
【0006】
そこで、上述の問題の一部又は全てを解決又は軽減する、改良されたESC製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、静電チャックの製造方法の様々な実施形態を説明する。幾つかの実施形態では、本方法は、スピンコーティング及び/又は直接スプレーを使用して、第1の誘電体材料の少なくとも1つの層をハンドル上に堆積させるステップと、第1の誘電体材料のその少なくとも1つの層の上に電気的機能層を堆積させるステップと、スピンコーティング及び/又は直接スプレーを使用して、第2の誘電体材料の少なくとも1つの層を電気的機能層の上に堆積させるステップと、を含む。更なる任意選択のステップ、例えば、第2の誘電体材料の少なくとも1つの層の上に機械的誘電体層を堆積させるステップ、及び機械的誘電体層をパターニングするステップも実施されてよい。幾つかの実施形態では、ハンドルの材料はAl、AlN、又はYである。幾つかの実施形態では、第1の誘電体材料及び第2の誘電体材料は同じ誘電率材料であり、この誘電体材料は高誘電率材料である。幾つかの実施形態では、機械的誘電体層の材料はハンドルと同じ材料である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】先行技術による静電チャックの一構成を示す。
図2】先行技術によるテープキャスティング技術を示す。
図3】本明細書に記載の様々な実施形態による、静電チャックの製造方法を示すフロー図である。
図4】本明細書に記載の方法に従って製造された静電チャックを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図3を参照すると、静電チャックを製造する一方法300が、スピンコーティング及び/又は直接スプレーを使用して、第1の誘電体材料の少なくとも1つの層をハンドル上に堆積させるステップ310と、第1の誘電体材料のその少なくとも1つの層の上に電気的機能層を堆積させるステップ320と、スピンコーティング及び/又は直接スプレーを使用して、第2の誘電体材料の少なくとも1つの層を電気的機能層の上に堆積させるステップ330と、を含む。
【0011】
ステップ310で、スピンコーティング及び/又は直接スプレーを使用して、第1の誘電体材料の少なくとも1つの層をハンドル上に堆積させる。スピンコーティング技術は一般に、少量の液体誘電体材料をハンドルの中心部に塗布し、その後、ハンドルを比較的高速で回転させて、その液体誘電体材料を遠心力で広げることを必要とする。スピンコーティングを実施することに適することが知られている任意の装置(例えば、スピンコータ又はスピナ)が使用されてよい。同様に、誘電体材料の広がりを引き起こす任意の適切な回転速度が使用されてよい。ハンドルの中心部に塗布する材料の量は制限がなく、一般的にはハンドル上に形成される層の所望の厚さに基づいて決定される。第1の誘電体材料の複数の層をハンドル上に堆積させる場合には、第1の層を、スピンコーティングを使用してハンドル上に直接堆積させ、後続の層を、スピンコーティングを使用して誘電体材料の先行層の上に形成する。
【0012】
直接スプレーは一般に、スプレーガンを使用して実施されてよい。スプレーガンは、液体誘電体材料が装填された後に使用されて、液体誘電体材料をハンドル上(又は複数の層を堆積させる場合には誘電体材料の先行層の上)に直接スプレーする。直接スプレーは一般に、堆積した材料の層の厚さが均一になるように実施される。
【0013】
スピンコーティングを使用するか直接スプレーを使用するかにかかわらず、堆積した層は、材料を硬化させる為に堆積後に硬化させることになる。任意の適切な硬化技術及びパラメータが使用されてよい。幾つかの実施形態では、堆積した材料の硬化は、材料を600℃以上の温度で熱することによって行われる。
【0014】
第1の誘電体材料の複数の層を堆積させる場合、堆積方法は、スピンコーティングのみであってよく、又は直接スプレーのみであってよく、又は幾つかの層の堆積がスピンコーティングで行われて、他の層の堆積が直接スプレーで行われてよい。
【0015】
第1の誘電体材料は、一般的には制限がなく、ESCのチャックボディとしての使用に適することが知られている任意の材料であってよい。幾つかの実施形態では、第1の誘電体材料は、誘電率が3を超える誘電体材料である。幾つかの実施形態では、誘電率が3を超える第1の誘電体材料はシロキサンベースの材料である。そのような誘電体材料は更に、Al等の金属酸化物成分を含んでよい。但し、金属酸化物成分は必須ではない。高誘電率の誘電体材料は、イットリウム、イリジウム、スカンジウム、エルビウム、ハフニウム、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、又は任意のランタノイドの任意の組み合わせの酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、又はフッ化物で構成されてよい。但し、そのような化合物は必須ではない。
【0016】
第1の誘電体材料の第1の層が堆積するハンドル(プレート又はベースプレートと呼ばれることもある)は、ESCのハンドルとしての使用に適することが知られている任意の材料で構成されてよい。幾つかの実施形態では、ハンドルの材料はセラミック材料である。例示的なセラミック材料として、Al、AlN、及びYがあり、これらに限定されない。他の適切な材料としてガラス又はケイ素が可能である。
【0017】
ステップ310は、ESCの最初の部分の所望の厚さが得られるまで実施する。所望の厚さに達することは、所望の厚さを有する、第1の誘電体材料の単一の層を堆積させることによって、又は第1の誘電体材料の複数の層を、個々の層の厚さの合計が所望の全体厚さになるように堆積させることによって可能である。
【0018】
所望の厚さに達したら、ステップ320を実施する。このステップで、第1の誘電体材料の1つ以上の層の上に電気的機能層が堆積する。ESCの電気的機能層としての使用に適することが知られている任意の材料が使用されてよい。幾つかの実施形態では、材料は金属材料である。金属層の厚さは、一般的には制限がなく、形成される電気的構成要素に基づいて選択されてよい。電気層を形成する方法は、例えば、既知のPVD法、又はスクリーン印刷であってよい。電気層は、任意の既知のパターニング技術を使用して、必要に応じてパターニングされてよい。
【0019】
第1の誘電体材料の1つ以上の層の上に電気的機能層が堆積したら、ステップ330を実施する。このステップで、電気的機能層の上に第2の誘電体材料の少なくとも1つの層が堆積する。電気的機能層の上に第2の誘電体材料の少なくとも1つの層を堆積させることには、ステップ310に関して上述したものと同じスピンコーティング技術及び/又は直接スプレー技術を使用する。チャックボディの第2の部分の所望の厚さが達成されるのであれば、堆積させる第2の誘電体材料は、ステップ310と同様に、単一の層でも複数の層でもよい。幾つかの実施形態では、第2の誘電体材料は第1の誘電体材料と同じである。
【0020】
幾つかの実施形態では、ESC内で複数の電気的機能層が誘電体層に挟まれるように、ステップ310、320、及び330を2回以上繰り返してよい。
【0021】
ステップ310、320、及び330の完了後に、任意選択の更なる製造ステップを実施してよい。例えば、幾つかの実施形態では、第2の誘電体材料の少なくとも1つの層の上に機械的誘電体層が形成される。この機械的誘電体層は、ESC構造に対する一種のキャップとして働く。第2の誘電体材料の少なくとも1つの層の上に機械的誘電体層を堆積させることは任意の方法で行われてよく、例えば、プラズマスプレー堆積、PVD、又は超薄膜材料を使用する接着工程によって行われてよい。機械的誘電体層の材料には制限がない。幾つかの実施形態では、機械的誘電体層はハンドルと同じ材料である。従って、例えば、ハンドルがAl、AlN、又はYで作られていれば、機械的誘電体材料は、同じAl、AlN、又はY材料で作られてよい。
【0022】
機械的誘電体層が使用される実施形態では、製造方法は更に、所望の用途に基づいて機械的誘電体層をパターニングするパターニングステップを含んでよい。任意の適切なパターニング技術が使用されてよく、例えば、除去加工が使用されてよい。一具体例では、CNC研削を使用してヘリウムチャネル、メサ等を形成してよく、ESCの使用中にこれらの上にウェハを載せることが可能である。
【0023】
図4を参照すると、上述の方法に従って製造されたESC400が示されている。ESC400はハンドル410を含み、その上に第1の誘電体材料の層420が堆積している。図4は単一の層を示しているが、当然のことながら、層420は、実際には幾つかの層で構成されてよい。層420の上に、パターニングされた電気的機能層430がある。電気的機能層430の上に、第2の誘電体材料の層440がある。図4は単一の層を示しているが、当然のことながら、層440は、実際には幾つかの層で構成されてよい。層440の上に、パターニングされた機械的誘電体層450がある。図4は単一の層420、単一の層430、及び単一の層440を示しているが、当然のことながら、ESCは、図4に示したスタックの上に層420、430、及び440の繰り返しスタックを1つ以上含んでよい。
【0024】
本明細書に記載のESC製造方法は、既知のESC製造方法を超える様々な利点を提供することが可能である。例えば、本開示の、スピンコーティング及び/又はスプレーを利用する方法は、テープキャスティングを使用する方法より製造コストを低くする。更に、本明細書に記載の製造方法で製造されたESCは、既知の方法で製造されたESCに比べて改善された特性を有することも可能である。例えば、本明細書に記載の方法で製造されたESCは、クランプ力を強めること、(静電気の粒子吸引力を弱める)ESC電圧を低減すること、電子移動度を低減して、高温でのチャック及びチャック解除の性能を高めること、残留電荷を低減又は解消すること(これは、高温でのチャック及びチャック解除の性能を高めることにも関係する)、動作温度を高めること、熱応答を高めること、及び/又は熱流量を高めることを実現することが可能である。
【0025】
以上から分かるように、本明細書では本発明の特定の実施形態について例示を目的として説明してきたが、本発明の範囲から逸脱しない限り、様々な修正が行われてよい。従って、本発明は、添付の特許請求項によって限定される場合を除き、限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4