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▶ コロン ティシュージーン,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】椎間板変性治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/22 20150101AFI20240902BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20240902BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61K35/22
A61P19/00
A61K38/19
A61K35/32
A61P43/00 121
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021560196
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2020025705
(87)【国際公開番号】W WO2020205730
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】62/826,676
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521439110
【氏名又は名称】コロン ティシュージーン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ノー,ムーン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】カン,スン,ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー,クワン,ヒー
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の椎間板欠損部位における椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、椎間板再生機能を有する蛋白質をコードする遺伝子を導入された哺乳動物細胞を含み、
前記遺伝子がTGF-β1をコードし、
前記哺乳動物細胞がヒト胚性腎細胞であり、
前記使用は、前記組成物を前記椎間板欠損部位に移植することを含む、組成物。
【請求項2】
記哺乳動物細胞が前記哺乳動物に対して同種異系である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
哺乳動物において椎間板欠損部位の椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、
(a)椎間板再生機能を有する蛋白質をコードする遺伝子を導入された第1の哺乳動物細胞と、
(b)未改変の第2の哺乳動物結合組織細胞と、
の混合物を含み、
前記遺伝子がTGF-β1をコードし、
前記第1の哺乳動物細胞がヒト胚性腎細胞であり、前記第2の哺乳動物結合組織細胞が軟骨細胞であり、
前記使用は、前記組成物を前記椎間板欠損部位に移植することを含む、組成物。
【請求項5】
記軟骨細胞が非椎間板軟骨細胞または幼若軟骨細胞である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
記軟骨細胞がプライム型軟骨細胞である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
記第1の哺乳動物細胞または前記第2の哺乳動物結合組織細胞が前記哺乳動物に対して同種異系である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
患者の変性椎間板または損傷椎間板を治療する方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、椎間板再生機能を有する蛋白質をコードする遺伝子を導入された哺乳動物細胞を含み、
前記遺伝子がTGF-β1をコードし、
前記哺乳動物細胞がヒト胚性腎細胞であり、
前記使用は、前記組成物をそれが必要な対象の椎間板に移植することを含む、組成物。
【請求項9】
患者の変性椎間板または損傷椎間板を治療する方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、
(a)椎間板再生機能を有する蛋白質をコードする遺伝子を導入された第1の哺乳動物細胞と、
(b)未改変の第2の哺乳動物結合組織細胞と、
の混合物を含み、
前記遺伝子がTGF-β1をコードし、
前記第1の哺乳動物細胞がヒト胚性腎細胞であり、前記第2の哺乳動物結合組織細胞が軟骨細胞であり、
前記使用は、前記組成物をそれが必要な対象の椎間板に移植することを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椎間板変性の予防または遅延に関する。本願はまた、椎間板変性を予防するまたは遅延させることによって変性椎間板を治療することに関する。本発明はまた、椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法であって、損傷椎間板部位へ導入する軟骨細胞を用いる方法に関する。本発明はまた、哺乳動物宿主において椎間板変性を予防するまたは遅延させる用途の方法であって、形質転換増殖因子βスーパーファミリーの構成員をコードする少なくとも1つの遺伝子を少なくとも1つの哺乳動物細胞に導入する方法に関する。本発明はまた、椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法であって、軟骨細胞および形質転換増殖因子βスーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞の混合物を損傷椎間板部位に用いる方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
一つの局面においては、本発明は椎間板欠損部位において椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法であって、哺乳動物結合組織細胞を椎間板欠損部位に注入することを含む方法を対象とする。この過程において、好ましくは細胞のための足場または支持構造体を用いない。好ましくは、非形質転換軟骨細胞または線維芽細胞を用い、該対象は好ましくはヒトである。軟骨細胞を用いる場合には、軟骨細胞は好ましくは非椎間板軟骨細胞または幼若軟骨細胞であり、このことは2歳未満の小児から該細胞を単離することを意味する。別の局面においては、該軟骨細胞はプライム型軟骨細胞であってもよい。特に、該結合組織細胞は治療対象哺乳動物に対して同種異系であってもよい。
【0003】
上記の形質転換哺乳動物細胞は、上皮細胞、好ましくはヒト上皮細胞、またはヒト293胚性腎細胞(また、HEK293、HEK-293、あるいは293細胞などともよばれる)であってもよい 。
【0004】
一つの局面においては、本発明は椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法であって、損傷椎間板部位への導入に同種異系幼若軟骨細胞または同種異系非椎間板軟骨細胞を用いる方法に関する。
【0005】
一つの局面においては、椎間板の損傷、断裂、ヘルニア状態の部位におけるさらなる変性を予防するまたは遅延させる目的で本発明を利用する。
【0006】
別の一つの局面においては、本発明は、哺乳動物の椎間板欠損部位において椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法であって、該方法が(a)椎間板再生機能を有する蛋白質をコードする遺伝子を哺乳動物細胞に導入すること、および(b)椎間板欠損部位に該哺乳動物細胞を移植することを含む、方法を対象とする。この過程において、好ましくは細胞のための足場または支持構造体を用いない。本方法においては、該遺伝子はTGF-βスーパーファミリーに属するもの(TGF-βなど、好ましくはTGF-β1)であってもよい。
【0007】
上記の形質転換哺乳動物細胞は、上皮細胞、好ましくはヒト上皮細胞、またはヒト293胚性腎細胞(また、HEK293、HEK-293、あるいは293細胞などともよばれる)であってもよい。
【0008】
さらに別の一つの局面においては、本発明は哺乳動物の椎間板欠損部位において椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法であって、該方法が(a)椎間板再生機能を有する蛋白質をコードする遺伝子を第1の哺乳動物細胞に導入すること、および(b)(a)の哺乳動物細胞と未改変の第2の哺乳動物結合組織細胞の混合物を椎間板欠損部位に移植することを含む、方法を対象とする。この過程において、好ましくは細胞のための足場または支持構造体を用いない。本方法においては、該遺伝子はTGF-βスーパーファミリーに属するもの(TGF-βなど、好ましくはTGF-β1)であってもよい。
【0009】
上記の第1の形質転換哺乳動物細胞は、上皮細胞、好ましくはヒト上皮細胞、またはヒト293胚性腎細胞(また、HEK293、HEK-293、あるいは293細胞などともよばれる)であってもよい。
【0010】
該第2の哺乳動物結合組織細胞は、軟骨細胞または線維芽細胞であってもよい。軟骨細胞の場合には、該軟骨細胞は非椎間板軟骨細胞または幼若軟骨細胞であってもよい。特に、該第2の哺乳動物結合組織細胞としての軟骨細胞はプライム型軟骨細胞であってもよい。別の一つの局面においては、第1または第2の結合組織細胞のいずれか、もしくは両方が対象哺乳動物に対して、あるいは互いに同種異系であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A~1Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位には穿刺も処置も認められない;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。混合細胞による処置は特に椎間抗変性効果を有する。
図2図2A~2Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位には穿刺も処置も認められない;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。混合細胞による処置は特に椎間抗変性効果を有する。
図3図3A~3Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。混合細胞による処置は特に椎間抗変性効果を有する。
図4図4A~4Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。TGF-β1産生性293細胞による処置は特に椎間抗変性効果を有する。
図5図5A~5Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。TGF-β1産生性293細胞による処置および混合細胞による処置は特に椎間抗変性効果を有する。
図6図6A~6Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。非形質導入軟骨細胞による処置は椎間抗変性効果を有する。
図7図7A~7Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。非形質導入軟骨細胞による処置は椎間抗変性効果を有する。
図8図8A~8Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)T12/L1位の椎間板が針穿刺によって損傷しているが、注入はされていない;(ii)脊椎のL1/2部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L2/3位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はT12/L1およびL2/3位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)T12/L1位の椎間板が針穿刺によって損傷しているが、注入はされていない;(ii)脊椎のL1/2部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L2/3位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はT12/L1位およびL2/3位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。非形質導入軟骨細胞による処置は椎間抗変性効果を有する。
図9図9A~9Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L2/3位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL3/4部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L4/5位の椎間板が損傷しており、プライム型軟骨細胞を注入した;矢印はL2/3位およびL4/5位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。プライム型軟骨細胞による処置は椎間抗変性効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
核酸、蛋白質、その蛋白質断片または蛋白質誘導体に関する本明細書中に記載の用語「生物学的に活性な」は、野生型の核酸または蛋白質が発揮する既知生物学的機能を、核酸配列またはアミノ酸配列が模倣する能力と定義する。
【0013】
形質転換細胞または形質導入細胞に関する本明細書中に記載の用語「哺乳動物細胞」は、全ての種類の哺乳動物細胞、特にヒト細胞を含み、線維芽細胞または軟骨細胞などの結合組織細胞、あるいは幹細胞、および特にヒト胚性腎細胞、さらに特定すれば、ヒト293胚性腎細胞、もしくは上皮細胞が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0014】
本明細書中に記載の用語「結合組織」は、他の組織または臓器を繋ぐあるいは支持する組織を意味し、哺乳動物宿主の靭帯、軟骨、腱、骨、および滑膜が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0015】
本明細書中に記載の用語「結合組織細胞」または「結合組織の細胞」は、結合組織に存在する細胞を含み、膠質性細胞外マトリックスを分泌する線維芽細胞、軟骨細胞(chondrocytes)、および骨細胞(bone cells[骨芽細胞(osteoblasts)/骨細胞(osteocytes)])、ならびに脂肪細胞(fat cells(adipocytes))および平滑筋細胞などが挙げられる。好ましくは、結合組織細胞は線維芽細胞、軟骨細胞、または骨細胞である。より好ましくは、結合組織細胞は軟骨細胞である。本発明が、単一種類の細胞さらには結合組織細胞の混合培養を用いても実施し得ることは理解されるであろう。好ましくは、宿主生物に注入した場合に、結合組織細胞は負の免疫応答を引き起こさない。これに関連して、細胞媒介遺伝子治療または体細胞療法には、自己細胞のみならず同種異系細胞を用いてもよいことは理解されるであろう。
【0016】
本明細書中に記載の「結合組織細胞株」は共通の親細胞に由来する複数の結合組織細胞を含む。
【0017】
本明細書中に記載の「硝子軟骨」は、関節面を覆う結合組織を指す。硝子軟骨は、例えば、関節軟骨、肋軟骨、および鼻軟骨を含むが、これらのみに限定されるものではない。
【0018】
特に、硝子軟骨は自己複製することが知られており、変形に応答して、より摩擦の少ない安定した動きにする。厚さ、細胞密度、マトリックス組成物および機械的特性に関しては、異なる関節に存在する硝子軟骨、あるいは同一関節内に存在する硝子軟骨であっても異なるのだが、一般的構造および機能に関しては同等である。硝子軟骨の機能を幾つか挙げるならば、圧迫に対する意外なほどの剛性、復元力、および体重負荷を分散する優れた能力、軟骨下骨でのピーク応力を最小化する能力、および高耐久性などがある。
【0019】
肉眼的および組織学的に見れば、硝子軟骨は変形に抵抗する平滑で堅い表面である。軟骨の細胞外マトリックスは軟骨細胞を含むが、血管、リンパ管または神経は含まない。軟骨細胞とマトリックスとの間の相互作用を維持する精緻な高秩序構造は、代謝活性レベルを低く保ちながらも、硝子軟骨の構造と機能を維持する。参考文献:O’Driscoll, J. Bone Joint Surg., 80A: 1795-1812, 1998には、硝子軟骨の構造と機能に関して詳細な説明があり、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0020】
本明細書中に記載の「注射可能」組成物は、多様な三次元足場構造、フレームワーク構造、メッシュ構造またはフェルト構造を含まない組成物であって、ここで該構造は細胞が接着可能で2層以上で増殖可能な材料または形態でできていてもよく、該構造物が一般的には埋め込みされるものであって注入されるものではない、組成物を指す。一つの実施態様においては、本発明の注入方法は典型的には注射筒によって実施される。しかし、目的の組成物の注入にはいかなる方法を用いてもよい。例えば、カテーテル、噴霧器、または温度依存性ポリマーゲルを用いることもできる。
【0021】
本明細書中に記載の「幼若軟骨細胞」は、2歳未満のヒトから取得する軟骨細胞を指す。通常、軟骨細胞は好ましくは身体の先端部(指、鼻、耳朶など)の硝子軟骨領域から取得される。幼若軟骨細胞は、欠損椎間板または損傷椎間板の同種異系治療におけるドナー軟骨細胞として用いることができる。
【0022】
本明細書中に記載の用語「哺乳動物宿主」は、動物界の構成員(ヒトを含むが、これのみに限定されるものではない)を含む。
【0023】
本明細書中に記載の「混合細胞」または「細胞の混合物」または「細胞混合物」は、目的の遺伝子で形質転換または形質導入した第1の細胞集団および非形質導入の第2の細胞集団を含む複数の細胞の組み合わせを指す。
【0024】
本発明の一つの実施態様においては、混合細胞は、形質転換増殖因子βスーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子またはDNAで形質転換または形質導入された細胞、および形質転換増殖因子βスーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子で形質転換または形質導入されていない細胞を含む複数の細胞の組み合わせを意味してもよい。形質転換増殖因子βスーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子で形質転換または形質導入されていない細胞の、TGFスーパーファミリー遺伝子で形質転換または形質導入された細胞に対する比は、典型的には、約3~20対1の範囲であってもよい。該範囲は約3~10対1であってもよい。特に、該範囲は細胞数に関して約10対1であってもよい。しかし、これらの細胞の組み合わせが欠損椎間板の変性を減速させるまたは遅延させることによって損傷椎間板を治療することにおいて効果的である限り、これらの細胞の比を特定範囲に固定する必要があるものではないことは理解される。
【0025】
本明細書中に記載の「非椎間板軟骨細胞」は、椎間板軟骨組織以外の身体部分から単離された軟骨細胞を指す。本発明の非椎間板軟骨細胞は、欠損または損傷椎間板の治療において患者に同種異系移植または注入する目的で用いてもよい。
【0026】
本明細書中に記載の用語「患者」は、動物界の構成員(ヒトを含むが、これのみに限定されるものではない)を含む。
【0027】
本明細書中に記載の用語「プライム型」細胞は、特定の遺伝子を発現するように活性化された、または改変された細胞を指す。
【0028】
本明細書中に記載の椎間板変性の「減速」または「予防」は、所定の時間経過で通常的な変性に至る傷害部位において一般的に認められる容積または高さと比較した場合の、椎間板容積または椎間板高の経時的維持を意味する。これは容積または高さの%増加を意味するものであってもよく、所定時間に通常予想される変性度と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%などであり、あるいは該位置における椎間板損傷の軽減、または椎間板の容積または高さの減少の軽減を意味するものであってもよい。
【0029】
本明細書中に記載の「形質転換増殖因子β(TGF-β)スーパーファミリー」は、構造的に関連する蛋白質であって、広範な胚発生期の分化過程に影響する蛋白質群を含む。本ファミリーは以下を含む:雄の正常な性発達に必要なミュラー管抑制物質(MIS)(Behringerら、Nature、345:167、1990);背腹軸形成および成虫原基の形態形成に必要なショウジョウバエのデカペンタプレジック(DPP)遺伝子産物(Padgettら、Nature、325:81-84、1987);卵の植物極の位置を特定するアフリカツメガエルのVg-1遺伝子産物(Weeksら、Cell、51:861-867、1987);アフリカツメガエル胚において中胚葉形成と前部構造を誘導し得る(Thomsenら、Cell、63:485、1990)アクチビン類(Masonら、Biochem、Biophys.Res.Commun.、135:957-964、1986);およびデノボ軟骨形成および骨形成を誘導し得る(Sampathら、J.Biol.Chem.、265:13198、1990)骨形成蛋白質(BMP-2、3、4、5、6および7、オステオゲニン、OP-1などのBMP類)。TGF-β遺伝子産物は多様な分化過程に影響し得るが、そのような分化過程としては脂質生成、筋形成、軟骨形成、造血、および上皮細胞分化が挙げられる(総説としては、Massague、Cell、49:437、1987を参照のこと;本参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0030】
TGF-βファミリーの蛋白質は、まず大型の前駆蛋白質として合成されるが、それに続いて、末端からおおよそ110~140アミノ酸の塩基性残基のクラスターの部位で分解的蛋白質切断を受ける。これら蛋白質のC末端領域はいずれも構造的に関連しており、それぞれのファミリー構成員を相同性の程度にもとづいて異なる亜群に分類することができる。特定亜群内においては、相同性の範囲が70%~90%アミノ酸配列同一性であるが、亜群間の相同性はかなり低く、一般的には20%~50%の範囲に過ぎない。いずれの場合にも、活性種はC末端断片がジスルフィド架橋で二量体形成しているようである。これまでに研究されているファミリー構成員の大部分に関して、ホモ二量体種が生物学的に活性であることが分かっているが、インヒビン類(Ungら、Nature、321:779、1986)およびTGF-β類(Cheifetzら、Cell、48:409、1987)などの他のファミリー構成員に関しては、ヘテロ二量体も検出されているが、これらは各ホモ二量体とは異なる生物学的特性を有しているようである。
【0031】
TGF-β遺伝子スーパーファミリーの構成員としては、TGF-β3、TGF-β2、TGF-β4(ニワトリ)、TGF-β1、TGF-β5(アフリカツメガエル)、BMP-2、BMP-4、ショウジョウバエDPP、BMP-5、BMP-6、Vgr1、OP-1/BMP-7、ショウジョウバエ60A、GDF-1、アフリカツメガエルVgf、BMP-3、インヒビン-βA、インヒビン-βB、インヒビン-α、およびMISが挙げられる。これらの遺伝子については、Massague、Ann.Rev.Biochem.67:753-791、1998に説明があり、本参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0032】
好ましくは、TGF-β遺伝子スーパーファミリーの構成員は、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、またはBMP-7である。
【0033】
椎間板
椎間板は脊柱の長さの4分の1を構成する。環椎(C1)と軸椎(C2)間、および尾骨には椎間板が存在しない。椎間板には血管がなく、したがって必要な栄養素を拡散する終板に依存している。終板の軟骨層は所定の位置で椎間板に固定されている。
【0034】
椎間板は脊椎の衝撃吸収システムとして働く線維軟骨性緩衝物であり、脊椎、脳、およびその他の構造物(すなわち、神経)を保護している。椎間板によって、ある程度の椎体運動が可能になる:伸展および屈曲。椎間板の運動は極めて限定的であるが、複数の椎間板によって力が合わさるとかなりの運動が可能になる。
【0035】
椎間板は線維輪および髄核で構成される。線維輪はラジアルタイヤ様の強靱な構造物であり、ラメラ(椎体終板に連結するコラーゲン線維の同心円シート)でできている。該シートは様々な角度で配向する。線維輪は髄核を包んでいる。
【0036】
線維輪および髄核はいずれも水、コラーゲン、およびプロテオグリカン(PG)で構成されるが、液体(水およびPG)の量は髄核が最も多い。PG分子は重要であり、その理由は水を誘引し保持するためである。髄核は圧迫に抵抗する含水ゲル様物質を含む。髄核の水の量は、活動に応じ一日を通じて変化する。加齢によって髄核は脱水し始め、ショック吸収能が限定されることになる。線維輪は加齢によって弱くなると断裂し始める。一部の人ではこれによって疼痛を惹起しないかもしれないが、他の人では上記のいずれかまたは両方が慢性疼痛を惹起し得る。
【0037】
脱水髄核がショックを吸収できなくなることによって起こる疼痛は、軸性疼痛または椎間板腔の痛みとよばれる。一般に、髄核が徐々に脱水することを変性円板疾患とよぶ。傷害または老化プロセスで線維輪に断裂が起こると、その断裂部から髄核が突出し始めることがある。これを椎間板ヘルニアとよぶ。脊椎の全長にわたって各椎間板の後部側近くから主要な脊髄神経が出て、異なる器官、組織、四肢などへ伸びている。ヘルニア状態の椎間板がこれらの神経を圧迫する(絞扼神経)ことは非常に多く、放散痛、痺れ、うずく感じの痛み、および筋力低下および/または可動範囲の制限を引き起こす。さらに、髄核ゲルは炎症性蛋白質を含み、それに神経が接触することでも強い痛みが起こり得る。神経に関連する疼痛は神経根痛とよばれる。
【0038】
ヘルニア状態の椎間板には様々な呼称があり、これらは異なる医療専門家にとって異なる事柄を意味し得る。ずれた椎間板、破損椎間板、またははみ出た椎間板は、いずれも同一の病状を意味し得る。椎間板の隣接する椎骨への突出はシュモール結節として知られる。
【0039】
プライム型細胞療法
本発明は、椎間板変性の予防または遅延によって損傷椎間板を治療する目的で、哺乳動物の椎間板部位にプライム型細胞を投与することを含む。プライム型細胞は典型的には結合組織細胞であり、軟骨細胞または線維芽細胞を含む。
【0040】
例えば、初代軟骨細胞集団を約3回もしくは4回継代した場合には、通常その形態は線維芽細胞性軟骨細胞に変化する。初代軟骨細胞を継代した場合には、細胞は軟骨細胞特性を部分的には喪失し始め線維芽細胞性軟骨細胞の特徴を獲得し始める。これらの線維芽細胞性軟骨細胞をサイトカイン(TGF-βスーパーファミリーの蛋白質など)と共にインキュベートあるいは「プライム」した場合には、細胞が軟骨細胞特性(コラーゲン産生を含む)を回復する。
【0041】
そのようなプライム型細胞としては、TGFβ1と共にインキュベートし、そのことによってコラーゲン産生性軟骨細胞に戻った線維芽細胞性軟骨細胞が挙げられる。椎間板変性の遅延にプライム型細胞を用いることの利点は、コラーゲン産生や軟骨マトリックスの維持を目的とした椎間板への導入に利用可能な軟骨細胞を簡単に作製できることである。
【0042】
該細胞は初代細胞または約1~20継代した細胞を含み得るが、それらのみに限定されるものではない。該細胞は結合組織細胞であってもよい。該細胞は、プライミングが元の細胞の特徴への復帰を引き起こして形態変化した細胞であってもよい。該細胞は軟骨細胞、線維芽細胞、または線維芽細胞性軟骨細胞を含み得るが、それらのみに限定されるものではない。細胞を少なくとも40時間、または1~40時間、2~30時間、3~25時間、4~20時間、5~20、6~18時間、7~17時間、8~15時間、または9~14時間の間、サイトカインと共にインキュベートすることによって、プライミングは起こり得るが、次に任意に、サイトカインを細胞から分離し、軟骨、好ましくは硝子軟骨を再生するためにプライム型細胞を目的の軟骨欠損部位に注入する。一つの局面においては、該サイトカインはTGF-βスーパーファミリーの構成員であってもよい。特に、該サイトカインはTGF-β、特にTGF-β1であってもよい。
【0043】
プライミング恒温処理混合液中のサイトカインは、椎間治療法に有用な軟骨細胞を「プライム」するのに充分な量で該混合液中に存在し得る。この局面においては、該プライミング恒温処理混合液は少なくとも約1ng/mlのサイトカインを含んでいてもよい。特に、該混合液は、約1~1000ng/ml、約1~750ng/ml、約1~500ng/ml、約1~400ng/ml、約1~300ng/ml、約1~250ng/ml、約1~200ng/ml、約1~150ng/ml、約1~100ng/ml、約1~75ng/ml、約1~50ng/ml、約10~500ng/ml、約10~400ng/ml、約10~300ng/ml、約10~250ng/ml、約10~200ng/ml、約10~150ng/ml、約10~100ng/ml、約10~75ng/ml、約10~50ng/ml、約15~500ng/ml、約15~400ng/ml、約15~300ng/ml、約15~250ng/ml、約15~200ng/ml、約15~150ng/ml、約15~100ng/ml、約15~75ng/ml、約15~50ng/ml、約20~500ng/ml、約20~400ng/ml、約20~300ng/ml、約20~250ng/ml、約20~200ng/ml、約20~150ng/ml、約20~100ng/ml、約20~75ng/ml、約20~50ng/ml、約25~500ng/ml、約25~400ng/ml、約25~300ng/ml、約25~250ng/ml、約25~200ng/ml、約25~150ng/ml、約25~100ng/ml、約25~75ng/ml、約25~50ng/ml、約30~500ng/ml、約30~400ng/ml、約30~300ng/ml、約30~250ng/ml、約30~200ng/ml、約30~150ng/ml、約30~100ng/ml、約30~75ng/ml、約30~50ng/ml、約35~500ng/ml、約35~400ng/ml、約35~300ng/ml、約35~250ng/ml、約35~200ng/ml、約35~150ng/ml、約35~100ng/ml、約35~75ng/ml、約35~50ng/ml、約40~500ng/ml、約40~400ng/ml、約40~300ng/ml、約40~250ng/ml、約40~200ng/ml、約40~150ng/ml、約40~100ng/ml、約40~75ng/ml、または約40~50ng/mlを含んでいてもよい。
【0044】
本発明を実施する一つの方法は、プライム型細胞を作製するために特定の長さの時間、細胞をサイトカインと共にインキュベートし、任意にサイトカインから該細胞を分離し、椎間板またはその近傍の目的部位にプライム型細胞を注入することを含んでいてもよい。あるいは、該細胞を目的のサイトカインと共にある時間インキュベートしてもよく、またサイトカインを分離することなくその組み合わせ自体を欠損部位へ投与してもよい。
【0045】
本発明のプライム型細胞療法プロトコルにおいて、足場またはフレームワークなどの物質と共に多様な外来組織を一緒に移植してもよいが、そのような足場または組織を本発明の注入システムに含めない場合もあり得ることは、理解されるべきである。本発明の体細胞療法の好ましい一つの実施態様においては、本発明はプライム型結合組織細胞集団を椎間板腔に注入する簡単な方法を対象とする。
【0046】
ヒト患者を治療するための細胞のソースは患者自身の細胞でもよいが、細胞の組織適合性に関係なく、同種異系細胞ならびに異種細胞もまた用い得ることは、当業者であれば理解するであろう。あるいは、本発明の一実施態様では、哺乳動物宿主に対して組織適合性のある同種異系細胞を利用してもよい。さらに詳細に説明すると、ドナーと患者の組織適合性を判定し、哺乳動物宿主に組織適合性の細胞を投与する。また、必ずしもドナーと患者の組織適合性を判定することなく同種異系の幼若軟骨細胞を用いることもあり得る。
【0047】
遺伝子導入
一つの局面においては、本発明は目的とするDNA配列を哺乳動物宿主の結合組織細胞にエクスビボ導入およびインビボ導入する技術を開示する。該エクスビボ技術としては、標的哺乳動物細胞の培養、DNA配列によるインビトロ形質転換、目的のDNAベクターまたは他の導入媒体を哺乳動物細胞へ、その後、哺乳動物宿主の標的領域に改変哺乳動物細胞を移植して目的遺伝子産物をインビボ発現させることなどが挙げられる。
【0048】
本発明のプロトコルにおいて、足場またはフレームワークなどの物質と共に多様な外来組織を一緒に移植してもよいが、そのような足場または組織を本発明の注入システムに含めないことが好ましいことは、理解されるべきである。一つの実施態様においては、本発明は、TGFスーパーファミリー蛋白質あるいは培養した非形質転換/非形質導入結合組織細胞または形質転換/形質導入哺乳動物細胞またはその混合物の集団を椎間板腔に注入して、椎間板腔で外因性TGFスーパーファミリー蛋白質を発現させる、または椎間板腔で該蛋白質が活性である、簡単な方法を対象とする。
【0049】
ヒト患者の治療のための細胞の1ソースが患者自身の細胞であることは、当業者であれば理解するであろう。他の細胞ソースとしては、治療すべき患者の細胞の組織適合性に関係なく、同種異系細胞が挙げられる。
【0050】
より好ましくは、本方法は、形質転換増殖因子βスーパーファミリーの構成員、あるいは生物学的に活性なその誘導体または断片、あるいは生物学的に活性なその誘導体または断片である遺伝子産物を用いることを含む。
【0051】
本発明の別の一つの実施態様においては、TGF-βスーパーファミリーの蛋白質および好適な薬学的担体を含み、治療的有効量で患者に非経口投与する化合物を提供する。
【0052】
本発明の別の一つの実施態様は、TGF-βスーパーファミリーの蛋白質および好適な薬学的担体を含み、予防有効量で患者に非経口投与する化合物を提供する。
【0053】
治療への応用において、該TGF-β蛋白質を局所投与用に製剤化してもよい。技術および製剤の一般的な事柄については、レミントンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、最新版)に説明がある。有効成分としてのTGF蛋白質は通常、投与法および剤形の性質に応じて、希釈剤または賦形剤などの担体と組み合わせるが、担体としては充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、崩壊性ポリマーまたは滑沢剤が挙げられる。典型的な剤形としては、粉末、液体製剤(懸濁液、乳剤および溶液など)、顆粒、ならびにカプセルが挙げられる。
【0054】
また、本発明のTGF蛋白質は対象へ投与するために薬学的に許容され得る担体と組み合わせてもよい。好適な薬学的担体の例としては、様々なカチオン性脂質が挙げられ、塩化N-(1-2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-n,n,n-トリメチルアンモニウム(DOTMA)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含むが、これらのみに限定されるものではない。リポソームもまた、本発明のTGF蛋白質分子に関する好適な担体である。他の好適な担体としては、TGF蛋白質分子を含む徐放性ゲルまたはポリマーが挙げられる。
【0055】
該TGFベータ蛋白質は、ある量の生理学的に許容され得る担体または希釈剤(生理食塩水またはその他の好適な液体など)と混合してもよい。TGF蛋白質またはその生物学的活性型がその標的に到達するまでおよび/またはその組織障壁透過移動が促進されるまで、TGF蛋白質およびその生物学的活性型を分解から保護するための他の担体手段と該TGF蛋白質分子とを組み合わせてもよい。
【0056】
本発明のさらなる実施態様は、細胞を送達する前に該細胞を保存することを含む。該細胞を10%DMSOに入れて液体窒素で凍結保存してもよいことは、当業者であれば理解するであろう。
【0057】
本願において、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーの構成員(BMP-2ならびにTGF-β1、2、および3を含むが、これらのみに限定されるものではない)をコードする遺伝子で形質転換または形質導入した適当な哺乳動物細胞を注入することによって、椎間板変性を再生または予防する方法が提供される。
【0058】
本願の別の一つの実施態様においては、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子で形質転換または形質導入していない、あるいは他のいかなる遺伝子でも形質転換または形質導入していない適切な結合組織細胞を注入することによって、椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法が提供される。別の一つの局面においては、本発明は、上記の方法を用いて椎間板変性を予防するまたは遅延させることにより、損傷または変性した椎間板を治療することを対象とする。
【0059】
本願の別の一つの実施態様においては、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子で形質転換または形質導入した適当な哺乳動物細胞を注入することにより、椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法が提供される。別の一つの局面においては、本発明は、上記の方法を用いて椎間板変性を予防するまたは遅延させることにより、損傷または変性した椎間板を治療することを対象とする。
【0060】
本発明の別の一つの実施態様においては、細胞の組み合わせまたは混合物であって、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子で形質転換または形質導入した適当な哺乳動物細胞および形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーの構成員をコードする遺伝子で形質転換または形質導入していない、あるいは他のいかなる遺伝子でも形質転換または形質導入していない適切な結合組織細胞の組み合わせまたは混合物を注入することにより、椎間板変性を予防するまたは遅延させる方法が提供される。別の一つの局面においては、本発明は、上記の方法を用いて椎間板変性を予防するまたは遅延させることにより、損傷または変性した椎間板を治療することを対象とする。
【0061】
本発明の実施態様においては、足場材料または他の補助材料(外来細胞または他の生体適合性担体など)と共にまたは非存在下で上記の細胞組成を用いて、椎間板変性を予防または遅延すべき部位に該細胞を注入し得るものと、理解される。つまり、椎間板変性を予防または遅延すべき部位に、該改変細胞単独で、未改変細胞単独で、あるいはそれらの混合物または組み合わせを注入してもよい。
【0062】
以下の実施例は本発明を具体的に説明する目的で示されるものであって、限定するものではない。
【0063】
実施例
実施例1:材料と方法
プラスミド構築
TGF-β1コード配列を含む1.2-kbのBglI断片であって、その3’末端に成長ホルモンのポリA部位を含むBglI断片を、pMTMLVのBamHI部位にサブクローニングし、プラスミドpMTMLVβ1を作製した。pMTMLVベクターは、レトロウイルスベクターMFGからgag配列およびenv配列の全長、ならびにβパッケージ配列の一部を欠失させたものである。
【0064】
細胞培養および形質導入:レトロウイルスベクターにクローニングしたTGF-βのcDNAを個々に293細胞に形質導入した(293-TGF-β1)。細胞を10%濃度のウシ胎仔血清を含むダルベッコの改変イーグル培地(GIBCO-BRL、Rockville、MD)で培養した。
【0065】
導入遺伝子配列を有する細胞を選択するため、ネオマイシン(300μg/ml)を培地に添加した。TGF-β発現細胞を適時、液体窒素で保存し、注入の直前に培養した。
【0066】
椎間板の高さに関するX線画像解析
穿刺後に様々な週間隔でケタミン塩酸塩(25mg/kg)およびロンプン(1mg/kg)を投与した後、X線写真を撮影した。椎間板高に影響を及ぼす可能性もあるので、筋弛緩を同程度に保つべく、X線撮像中に一貫した麻酔レベルを保つように各動物および各回で細心の注意を払った。それゆえ、常に術前X線画像を基準測定として用いた。また、わずかに屈曲した位置に脊椎を保つように努めた。脊椎の軸回転およびビーム発散による誤差を減らすために、ウサギの腸骨稜から4cmの位置に中心設定したビームを用いて、各動物につき側臥位で少なくとも2回X線撮像を繰り返した。X線写真をデジタルスキャンし、イメージ取り込みソフトウェアでデジタル保存した。
【0067】
画像解析
デジタル化したX線画像を用い、パブリック・ドメイン画像解析を利用して椎体の高さおよびIVD高を含む測定を解析した。データをエクセルソフトウエアに転送し、Luらの「Effects of chondroitinase ABC and chymopapain on spinal motion segment biomechanics. An in vivo biomechanical, radiologic, and histologic canine study」、Spine、1997;22:1828-34の方法を用いてIVD高をDHIで表した。IVDの前部、中部、および後部から得られた測定値を平均し、隣接する椎体の高さの平均で割ることによって、IVDの平均の高さ(DHI)を算出した。注入した椎間板のDHIにおける変化を%DHIで表し、手術前に測定したIVDの高さに対して正規化した(%DHI=手術後DHI/手術前DHI X100)。対象内標準偏差(Sw)は、以下の式を用いて算出した:

√(Σ(x - x/2n)

ここで、Xは第1の測定値、Xは第2の測定値、およびn=450である。分散の%係数(%CV)を(Sw/全測定の平均 X100)として算出した。DHI測定値の観察者内誤差は最小であると推定した(Sw:0.001800316;%CV:3.13)。観察者間誤差も小さいことが分かっている(Sw:0.003227;%CV:9.6)。
【0068】
MRIによる評価
試験した全ウサギについて、直角位相四肢検出コイルを有する0.3TオープンMRI装置(Airis II、version 4.0A;Hitachi Medical System America、Inc.)を用いたMRI検査を実施した。屠殺後、周囲の軟部組織をつけたまま脊柱を分離してMRI解析に供した。以下の設定にて、矢状面のT2強調像を得た:TR(繰り返し時間)=4000ミリ秒およびTE(エコー時間)=120ミリ秒の高速スピンエコー系列;画像マトリックス=256(h)X128(v);FOV(撮像視野)=260;および加算回数=4。厚み=2mm;ギャップ=0mmであった。グレード1~4(1=正常、2=信号強度の最小限の減少があるが、高信号領域が明らかに狭くなっている、3=信号強度の中程度の減少、および4=信号強度の大幅な減少)の信号強度の変化および信号強度領域の変化にもとづき、盲検観察者が修正トンプソン分類を用いてMRIを評価した。コーエンのカッパ相関係数で判定した場合には、2評価にもとづくMRIのグレーディングは、観測者内および観察者間の信頼性相関係数において優れていた(それぞれ、K=0.98および0.90)。
【0069】
実施例2:実験方法および結果
損傷椎間板の変性を予防する
ニュージーランドホワイトの雄ウサギを用いた。観血的外科技術を利用した。腰椎における3種類の椎間レベル:L2-3、L3-4、L4-5を実験的に処置し、各動物における対照として観察した。観察したウサギ1羽当たりの複数部位/複数椎間板に関しバランスが保たれるように、レベルに対して処置を割り当てた。対象設計においては、手術前後の比較、椎間板位の変更を対照として用いた。
【0070】
実施例3:非形質導入軟骨細胞単独、TGF-Β1産生性293細胞単独、または混合細胞(ヒト軟骨細胞およびTGF-Β1産生性293細胞)を用いた注入による、ウサギ損傷椎間板変性の予防
実施例1~5で用いた軟骨細胞はいずれも非椎間板軟骨細胞であり、2歳未満の小児の指の硝子軟骨部分から得た幼若軟骨細胞である。
【0071】
腰椎の椎間板に針穿刺を施した。この針穿刺後に、TGF-β1産生性293細胞、初代非形質導入ヒト軟骨細胞、TGF-β1産生性293細胞と初代非形質導入ヒト軟骨細胞の混合物、プライム型非形質導入ヒト軟骨細胞または担体/媒体を注入した。複数の対照を用いた。実験条件を下の表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
簡単に説明すると、ウサギまたはブタの腰椎椎間板に針穿刺で損傷を与える。この針穿刺後4週間、ウサギの治癒まで待った。次に、第2の外科的方法においては、TGF-β1産生性293細胞および/または初代非形質導入ヒト軟骨細胞(約5x10)を含む実験的治療組成物を注入する、あるいは対照条件における観察を行う(表1)。
【0074】
気管内挿管し、ケタミン塩酸塩およびロンプン(登録商標)を投与するなどによって全身麻酔を実施した後、動物を仰臥位にする。乳酸リンゲル液を約5ml/kg/hrで用いる。切開部位を剃毛し、ベタジンスクラブとアルコールで交互に拭く(>3回)通常の滅菌法で消毒清拭して、切開用ドレープで覆う。目に無菌眼軟膏をつける。左後腹膜到達法を用いて、L2~L5(ウサギは6~7腰椎を有する)の椎間板の右前面を露出させる。各種の外科的準備処置を実施した後、治療スキーマを各レベルの椎間板に適用する。椎間板の「針穿刺」処置には、18ゲージ針を用いて椎間板を5mmの深度まで穿刺する(Aokiら、「Nerve fiber ingrowth into scar tissue formed following nucleus pulposus extrusion in the rabbit anular-puncture disc degeneration model:effects of depth of puncture.」 Spine.2006;31(21):E774-80)。穿刺後に、表1に挙げた試験材料を注入する。各ウサギのL1-2、L2-3、L3-4、L4-5領域のいずれか1カ所に治療組成物を適用する。
【0075】
毎月、X線画像を用いて椎間板の変化を追跡する。手術後2、8、および24週間の時点で動物を屠殺する。
【0076】
X線画像/MRI。別の椎間板位の椎間板と比較した、同一椎間板ベースライン(術前)基準からの椎間板高の増加がX線画像上で検出可能変化として現れれば、それが治癒を示唆する。他の椎間板については針穿刺前後でのみ比較する。また、同前後で無穿刺椎間板は正常な経時的変性の指標を与える。
【0077】
逆転写PCR。形質転換軟骨細胞の相対的生存量を測定するために逆転写PCRを実施した。
【0078】
組織学。また、I型コラーゲンおよびII型コラーゲンならびに、デノボ軟骨細胞の肉眼的形態の特徴付けおよび評価を確認するために組織学を利用した。
【0079】
ウェスタンブロット分析および、またはELISA。I型コラーゲンおよびII型コラーゲン、ならびにプロテオグリカン濃度、Smads2/3、Sox-9の発現定量。さらに、TGFβ-1、BMP2、BMP7、GDF5およびその他の関連する成長因子であって利用可能な抗体が存在する成長因子についてELISAを用いて評価を行った。
【0080】
カパーゼ3の発現を観察し、椎間板の他の組織構造物におけるアポトーシスを調べた。
【0081】
実施例4:
結果
結果は本願の図および図の説明に示されている。非形質導入軟骨細胞のみ、形質導入293細胞のみ、プライム型軟骨細胞のみ、または形質導入293細胞と非形質導入軟骨細胞の混合物で処置した穿刺椎間板では、媒体対照と比較して椎間板変性を予防するまたは遅延させることにおいて有益な効果を示す。
【0082】
実施例4-1:ウサギにおける穿刺椎間板の混合細胞(形質導入293細胞および形質導入軟骨細胞)治療
ウサギの試験では、混合細胞治療は椎間抗変性効果を有している。図1~4の各種実験において、その効果が認められる。図1A~1Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位には穿刺も処置も認められない;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0083】
図2A~2Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位には穿刺も処置も認められない;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0084】
図3A~3Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0085】
実施例4-2:ウサギにおける穿刺椎間板の形質導入293細胞治療
TGF-β1産生性293細胞による治療は椎間抗変性効果を有する。図4A~4Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示すが、図にはその効果が認められる。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0086】
実施例4-3:ウサギにおける穿刺椎間板の形質導入293細胞治療および混合細胞治療
TGF-β1産生性293細胞治療および混合細胞治療は椎間抗変性効果を有する。図5A~5Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示すが、図にはその効果が認められる。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞と非形質導入ヒト軟骨細胞を1:3の比で混合したものを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、TGF-β1産生性293細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0087】
実施例4-4:ウサギにおける穿刺椎間板の非形質導入軟骨細胞治療
非形質導入軟骨細胞治療は椎間抗変性効果を有する。図6~8の各種実験において、その効果が認められる。図6A~6Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0088】
図7A~7Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L1/2位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL2/3部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L3/4位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はL1/2位およびL3/4位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0089】
図8A~8Fは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示す。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後4週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)T12/L1位の椎間板が針穿刺によって損傷しているが、注入はされていない;(ii)脊椎のL1/2部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L2/3位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はT12/L1およびL2/3位の椎間板領域を指している。(C)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)T12/L1位の椎間板が針穿刺によって損傷しているが、注入はされていない;(ii)脊椎のL1/2部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L2/3位の椎間板が損傷しており、非形質導入軟骨細胞を注入した;矢印はT12/L1位およびL2/3位の椎間板領域を指している。(D)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(E)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。(F)は上記(C)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0090】
実施例4-5:ウサギにおける穿刺椎間板の非形質導入プライム型軟骨細胞治療
プライム型軟骨細胞治療は椎間抗変性効果を有する。図9A~9Dは損傷椎間板変性の減速、遅延または予防を示すが、図においてその効果が認められる。(A)は手術前のウサギ脊椎に関するMRI像を示す。(B)は手術後8週間経たウサギ脊椎に関するMRI像を示すが、ここで(i)L2/3位の椎間板が損傷しており、細胞培養培地DMEMを注入した;(ii)脊椎のL3/4部位は無穿刺無処置の対照である;および(iii)L4/5位の椎間板が損傷しており、プライム型軟骨細胞を注入した;矢印はL2/3位およびL4/5位の椎間板領域を指している。(C)は上記(A)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて形態(変性または再生の度合い)を評価するための椎間板高指数を得る。(D)は上記(B)のウサギのX線画像を示すが、この画像を用いて椎間板高指数を得る。
【0091】
実施例5
ヒト軟骨細胞のソース
1歳のヒト女性ドナーの多指症指の外科的切除で得られた軟骨組織から、初代ヒト軟骨細胞を増殖させた。多指症組織は外科室で回収した。バイオセーフティキャビネットにて以下の方法で軟骨細胞を単離した。軟骨組織を含むプラスチックボトルをアルコールで拭き、ピペットを用いて軟骨組織を滅菌PBS(1X)で洗浄した。7mgのコラゲナーゼ(Gibco BRL)を10mLのDMEM(10%FBSを含む)に溶かし、0.2μmの注射筒フィルター(Corning)で濾過することによりコラゲナーゼ溶液を調製した。洗浄した軟骨組織を37℃の振盪恒温槽中で17~18時間、コラゲナーゼ溶液で処理した。翌日、該ボトルをアルコールで消毒した。コラゲナーゼ処理材料を数回ピペッティングして組織塊をほぐして個別の細胞にした。ピペッティング後、上清を70μmのナイロン製細胞ストレーナーで濾過した(Falcon)。コラゲナーゼ処理組織によって塊ではなくなったもの(すなわち、個別の細胞)はフィルターを通過し得た。細胞濾液50mLのチューブ(Falcon)に集めて、1500rpmで5分間遠心分離した。上清の3分の2を捨てて、沈殿を10mlの滅菌PBS(1X)で洗浄した。再懸濁細胞を再び1500rpmで5分間遠心分離し、上清の3分の2を除去した後、10mlの滅菌PBS(1X)で洗浄した。細胞を再び1500rpmで5分間遠心分離してからDMEM(10%FBSを含む)に再懸濁した。次に、再懸濁細胞を4個の無コーティング25cmフラスコに移し、5%CO下37℃で4日間培養した。その後、細胞を2個の無コーティング185cmフラスコに移した。細胞を2週間培養した後、回収し、DMEM、FBSおよびDMSOが5:4:1の比の凍結保存培地に再懸濁した。1mLの細胞懸濁液を含む凍結バイアルに、4x10細胞/mLの密度で細胞を分注した。細胞を気相式液体窒素保存器に保存した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D