(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】イオン化デバイスを含む質量分析計
(51)【国際特許分類】
H01J 49/42 20060101AFI20240902BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20240902BHJP
H01J 49/38 20060101ALI20240902BHJP
H01J 49/04 20060101ALI20240902BHJP
H01J 49/10 20060101ALI20240902BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
H01J49/42 400
H01J49/42 850
H01J49/02 700
H01J49/38
H01J49/04 040
H01J49/10
G01N27/62 G
(21)【出願番号】P 2021560222
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2020057739
(87)【国際公開番号】W WO2020200833
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】102019204694.0
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507102296
【氏名又は名称】ライボルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leybold GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Str. 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ゴークホーヴァー レオニート
(72)【発明者】
【氏名】フェドセンコ ゲンナディー
(72)【発明者】
【氏名】ラウエ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロイター リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】チュン ヒン イウ アントニー
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510477(JP,A)
【文献】特表2018-518019(JP,A)
【文献】特表2016-512647(JP,A)
【文献】特開2002-260575(JP,A)
【文献】特開平08-203648(JP,A)
【文献】国際公開第2014/105089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00-49/48
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン(4a,4b)を貯蔵するための内部(2a)を有するイオントラップ(2)と、
電圧信号(U
RF,U
stim1,U
stim2)に結合するための該内部(2a)の境界を定める該イオントラップ(2)の電極(3;7a,7b)に接続された信号発生器(5;6a,6b)と、
イオン化されて該内部(2a)に供給されることになるガス(4,22)をイオン化するためのイオン化デバイス(15)と、
を含む質量分析計(1)であって、
前記イオン化デバイス(15)は、イオン(4a,4b,17)を発生させるための前記電極(3;7a,7b)の中に結合された前記信号発生器(5;6a,6b)の前記電圧信号(U
RF,U
stim1,U
stim2)を使用するために該信号発生器(5;6a,6b)に接続され、
前記信号発生器(5)に接続された前記電極(3)は、前記内部(2a)の中への前記ガス(4)の前記供給のための通過開口部(16)を有し、
前記信号発生器(5)に接続された前記イオントラップ(2)の前記電極(3)は、前記イオン(4a,4b,17)がその間に発生される前記イオン化デバイス(15)の少なくとも2つの電極(3,18)のうちの第1の電極を形成し、前記少なくとも2つの電極(3,18)は前記第1の電極(3)及び第2の電極を含み、
前記電極(3)は、前記通過開口部(16)の領域で先端まで先細であってその側面上で前記内部(2a)から外側に向く管状電極部分(3a,3b)を有する、
ことを特徴とする質量分析計(1)。
【請求項2】
分析されることになるガス(4)又はイオン化ガス(22)の形態にあるガス(4,22)を前記イオン化デバイス(15)に供給するように具現化されたガス供給器(11)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
前記ガス供給器(11)は、前記イオン化デバイス(15)への前記ガス(4,22)のパルス式供給のための制御デバイス(14)を用いて制御可能である少なくとも1つのバルブ(13)を有することを特徴とする請求項
2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記イオン化デバイス(15)は、前記ガス(4)を前記イオントラップ(2)に供給するように意図されて該イオン化デバイス(15)の第2の電極を形成する導電供給ライン(18)を有することを特徴とする請求項
1に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記イオン化デバイス(15)は、前記ガス(4)を前記イオントラップ(2)に供給するための電気絶縁材料で作られた供給ライン(19)を有し、
前記イオン化デバイス(15)の前記第2の電極(18)は、前記供給ライン(19)の外側に配置される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の質量分析計。
【請求項6】
前記イオン化デバイス(15)は、電気絶縁材料で作られた供給ライン(19)を有し、
前記イオン化デバイス(15)の前記第2の電極(18)は、前記供給ライン(19)内に配置される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記供給ライン(19)に配置された前記第2の電極(18)は、前記イオン化デバイス(15)の前記第1の電極(3)に面する先端(18a)を有することを特徴とする請求項
6に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記信号発生器(5)は、前記イオン(4a,4b)を前記内部(2a)に貯蔵するために前記電圧信号(U
RF)を前記イオントラップ(2)のリング電極(3)の中に結合するように具現化されることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記信号発生器(6a,6b)は、前記内部(2a)内で前記イオン(4a,4b)を励起するために前記電圧信号(U
stim1,U
stim2)を前記イオントラップ(2)の少なくとも1つのキャップ電極(7a,7b)の中に結合するように具現化されることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記イオントラップ(2)から取り出されたイオン(4a,4b)又は該イオントラップ(2)に貯蔵された該イオン(4a,4b)によって発生されたイオン信号(u
ion(t))を検出するための検出器(9)を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の質量分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2019年4月2日出願のドイツ国特許出願第10 2019 204 694.0号に対する優先権を主張するものであり、その開示全体は、この出願の開示の一部と見なされ、かつそこに引用によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、イオンを貯蔵するための内部を有するイオントラップ、特に電気イオン共鳴トラップと、内部の境界を定めるイオントラップの電極に接続された電圧信号、特に無線周波数電圧信号に結合するための信号発生器と、イオン化されて内部に供給されることになるガスをイオン化するためのイオン化デバイス、特にプラズマイオン化デバイスとを含む質量分析計に関する。
【背景技術】
【0003】
ガス又はガス混合物をイオン化するための様々なイオン化方法は、質量分析計での検出に対して適用することができる。一例として、イオン化は、電子衝突イオン化により、熱フィラメントの手段により、電界イオン化により、パルスレーザを用いたイオン化により、光子イオン化により、プラズマを用いたイオン化により、その他で実施することができる。全てのこれらのイオン化処理の実現は、イオン化を実施するためにそれぞれのイオン化デバイスへの電力供給を必要とする。
【0004】
分析されることになるガスが検出器の外側でプラズマによってイオン化される質量分析計は、第1にイオンを検出器の中にイオン移動するために、第2にプラズマイオン化デバイス内のより高いガス圧力と検出器内のより低いガス圧力とを保証するために、イオンソース又はプラズマイオン化デバイスと検出器との間に存在する差動ポンプ式イオン移動ステージ、スキマーなどのような様々な追加のデバイスを有する。プラズマイオン化デバイスは、これらの追加のデバイスによって検出器から空間的に分離される。これに代えて、検出器は、より高い圧力範囲で作動させることもできると考えられるが、これは、その機能、特に感度を低減する。
【0005】
プラズマイオン化に関して、プラズマイオン化デバイスには、典型的に外部電圧ソースから電圧が供給される。通例では、プラズマイオン化デバイスは、プラズマを点火するために少なくとも2つの電極とプラズマチャンバとを有する。従って、プラズマイオン化デバイスは、比較的大きい設置空間を必要とし、かつ質量分析計の追加の構成要素を意味する。
【0006】
国際出願公開第2014/118122号は、ガス混合物をイオン化するためのイオン化ユニットとイオン化されたガス混合物を検出するための検出器とを含む質量分析計を開示している。イオン化ユニットは、プラズマを発生させることによって検出されることになるガス混合物をこのガス混合物が検出器、例えばイオントラップに供給される前にイオン化するように具現化されたプラズマイオン化デバイスを有することができる。これに代えて、ガス混合物は、直接に、すなわち、先行するイオン化なしに検出器(例えば、イオントラップの形態にある)の中に導入することもできると考えられる。この場合に、イオン化ガスのイオン及び/又は準安定粒子は、検出器内のガス混合物を衝突イオン化又は電荷交換イオン化によってイオン化するために検出器に供給することができるであろう。イオン化ガスのイオン及び/又は準安定粒子は、プラズマイオン化デバイスの支援によって同様にイオン化することができる。
【0007】
国際出願公開第2016/096457号は、イオン化デバイスとそのようなイオン化デバイスを有する質量分析計とを説明している。イオン化デバイスは、1次プラズマ領域にイオン化ガスの準安定粒子及び/又はイオンを発生させるためのプラズマ発生デバイスと、2次プラズマ領域にグロー放電を発生させるための電界発生デバイスと、イオン化されることになるガスを2次プラズマ領域の中に供給するための入口と、イオン化ガスの準安定粒子及び/又はイオンを2次プラズマ領域の中に供給するための更に別の入口とを含む。
【0008】
国際出願公開第2017/194333号は、少なくとも1つの第1の電極、例えばリング電極を有し、同じく少なくとも1つの第2の電極、例えばキャップ電極を有するイオントラップと、イオントラップ内に電気貯蔵場を発生させるために第1の電極の中に結合可能であるRF貯蔵信号を発生させるための貯蔵信号発生器と、イオントラップに貯蔵されたイオンを励起するための励起信号を発生させるための励起デバイスと、同じく励起されたイオンによって発生されたイオン信号を検出するための検出器とを含むイオンを検出するための質量分析計を説明している。貯蔵信号発生器は、RF貯蔵信号の振幅及び/又は周波数を設定するように具現化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際出願公開第2014/118122号
【文献】国際出願公開第2016/096457号
【文献】国際出願公開第2017/194333号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
質量分析計を小型設計に実現することができ、かつイオンを検出する時にイオン化デバイスによって引き起こされる干渉を回避することができるように、冒頭に示したタイプの質量分析計を発展させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、特にプラズマイオン化デバイスの形態にあるイオン化デバイスが、イオン又はプラズマを発生させるための電極の中に結合された信号発生器の電圧信号を使用するために信号発生器に接続される(少なくとも1つの導電接続を通じて)冒頭に示したタイプの質量分析計によって達成される。
【0012】
本発明は、これに加えて、イオン化されてイオントラップの内部に供給されることになるガスのイオン化のために又はプラズマの発生のためにイオントラップの内部にイオンを貯蔵する及び/又は励起するのにいずれにせよ必要とされる信号発生器の電圧信号を同じく使用することを提案する。これは、例えば追加の電圧ソースの形態にあるイオン化デバイスへの追加の電源をほぼ完全に除外することを可能にする。従来のイオン化デバイスに使用される電圧ソースは、質量分析計の支援によって記録されたスペクトルに干渉、より厳密には干渉周波数をもたらす場合があることが見出されている。イオン又はプラズマを発生させるための電圧信号の使用は、下記でより詳細に説明するように、同じく質量分析計の小型設計を容易にする。
【0013】
仮に電圧信号がAC電圧である場合に、電圧信号は、イオン化デバイスの2つの異なる構成要素、一般的に2つの電極にこの2つの電極の間にイオン又はプラズマを発生させるために印加することができる。これに代えて、電圧信号は、イオン化デバイスの第2の電極を一定電位に、例えば接地電位に保ちながら、第1の電極に印加することができる。特に、いずれにせよ信号発生器に接続されるイオントラップの電極は、(プラズマ)イオン化デバイスの一部又はその電極を形成することができ、従って、他に追加で必要とされる電極を節約することを可能にする。
【0014】
一実施形態では、信号発生器に接続された電極は、内部の中へのガスの供給のための通過開口部を有する。イオントラップの内部に供給されるそのイオン化のためのガスは、イオン化デバイスを通してかつ任意的にプラズマを通して又は少なくともそれを越えて誘導されることは理解される。電極に通過開口部を具備することは、電極の支援で又は電極の中に結合された電圧信号の支援でプラズマがイオントラップの直ぐ手前で点火されることを可能にし、イオン化されたガスは、通過開口部を通じて直接に内部の中に誘導することができ、従って、イオントラップの中へのイオン移動の必要性が排除される。
【0015】
更に別の実施形態では、質量分析計は、分析されることになるガス又はイオン化ガスの形態でガスをイオン化デバイスに供給するように具現化されたガス供給器を含む。WO 2014/118122 A2との関連で上述したように、分析されることになるガス混合物又はガスは、イオン化デバイス内のイオントラップの外側でイオン化することができ、かつイオントラップの内部にイオン化されたガスとして又はイオン化された化学種の形態で供給することができる。この場合に、ガス供給器は、典型的には、分析されることになるガスが導入される(処理)チャンバなどに接続される。
【0016】
これに代えて、その全体が引用によってこの出願に組み込まれているWO 2014/118122 A2に説明されているように、イオン化されるガスは、分析されることになるガスをイオン化するためにイオントラップの内部の中に導入されるイオン化ガスとすることができる。この場合に、イオン化ガスと分析されることになるガスは、典型的には、2つの別々の入口を通してイオントラップの内部の中に導入される。ここで、ガス供給器は、典型的には、イオン化ガスがそこから取られるガスリザーバを有する。通例では、イオン化ガスは、不活性ガス、例えば、ヘリウムである。
【0017】
ある発展では、ガス供給器は、イオン化デバイスへのガスのパルス式供給のための制御デバイスによって制御可能である少なくとも1つのバルブを有する。ガスのパルス式供給は、イオン化デバイスに供給されるガスのガス圧力及び従って同じくイオン又はプラズマを発生させるべき領域のガス圧力の変動をもたらす。イオン化デバイス内のパルス周波数又は圧力変動が制御可能バルブの支援で適切に選択又は設定される場合に、プラズマは、イオン化デバイス内で昇降するガス圧力に起因して、この目的で開ループ又は閉ループコントローラを必須とすることなく、点火して再度消火することができる。従って、典型的にかなり複雑であり、従って困難である質量分析計の制御は、この自動性によって簡易化することができる。例えば、電子ビームイオン化中の放出電流の閉ループ制御に対する従来のイオン化処理で発生するような追加の開ループ又は閉ループ制御費用は、その結果として回避することができる。
【0018】
更に別の実施形態では、信号発生器に接続されたイオントラップの電極は、イオン又はプラズマがその間に発生されるイオン化デバイスの少なくとも2つの電極のうちの第1のものを形成する。上記で更に上述したように、内部の境界を定めるイオントラップの電極は、同時に、イオンを発生させるための又は潜在的にこの場合はプラズマ発生のための電極として使用され、従って、電極は、従来のイオン化デバイスに対して節約することができる。
【0019】
1つの発展では、電極は、突出電極部分、特に、特に通過開口部の領域で先端に向けて先細であってその側面上で内部から外側に向く突出電極部分を有する。先端に向けて先細の電極部分の使用は、電気力線密度及び従って電界強度が先端で高いので、イオンの発生を促進することができる。特に、突出電極部分は、通過開口部の管状継続部として具現化することができる。これに代えて、突出電極部分は、内部から外側を向く電極の側で通過開口部からオフセットされた配置を有することができ、かつ任意的に先端まで先細であるその端部と共に通過開口部の領域の中に延びることができる。
【0020】
先端まで先細である管状電極部分の代わりに、通過開口部を延ばす円筒電極部分を内部から外側を向く電極の側に形成することもできると考えられる。一例として、これは、管状供給ラインを電極に接続するのに有利とすることができる。管状供給ラインへの接続に関して、電極は、通過開口部の近くに1又は2以上の切り欠きを有することもできると考えられ、及び/又は通過開口部は、この目的でステップを有することができるであろう。
【0021】
イオン化デバイスの少なくとも1つの更に別の電極を構成するためのいくつかのオプションが存在する。
【0022】
1つの発展では、イオン化デバイスは、ガスをイオントラップに供給することを意図し、かつイオン化デバイスの第2の電極を形成する導電供給ライン、特に導電管状供給ラインを有する。導電供給ライン、例えば金属供給ラインは、一定電位、例えば接地電位に又は電圧信号を同じくそこに印加するために信号発生器に接続することができる。
【0023】
この場合に、導電供給ラインは、2つの電極の間にプラズマを発生させるために、通過開口部が形成されたイオントラップの電極から離間している。この場合に、特に、プラズマの点火を簡易又は容易にするために、先端まで先細である上述の電極部分を電極が有する場合に有利である。供給ラインとイオントラップの電極との間の間隙又は間隔を架橋するために、間隙の領域で金属供給ラインを取り囲む絶縁材料、例えばセラミックで作られた供給ラインの一部分は、供給ガスが周囲の中に逃げることができないようなタイプのクラディングとして使用することができる。
【0024】
代替実施形態では、イオン化デバイスは、ガスを供給するための電気絶縁材料で作られた供給ライン、特に管状供給ラインを有し、イオン化デバイスの第2の電極は、供給ラインの外側に配置される。この場合に、第2の電極は、例えば、供給ラインの外側に締結された金属リング又は金属チューブとして具現化することができる。ここで、プラズマは、誘電体障壁放電によって点火され、すなわち、第2の電極は、イオン化されるガスが流れる供給ライン内の空間から供給ラインの(誘電体)材料によって遮蔽される。誘電材料放電では実質的に電子のみが加速されるので、誘電材料放電は、低温プラズマの発生を容易にし、これは、本発明の用途に対して有利であると考えられる。
【0025】
更に別の代替実施形態では、イオン化デバイスは、電気絶縁材料で作られた供給ライン、特に管状供給ラインを有し、イオン化デバイスの第2の電極は、供給ライン内に配置される。この場合に、イオン化されるガスは、少なくとも一部は第2の電極の周りを流れる。第2の電極を供給ライン内に配置することは、イオン又はプラズマの発生に関して有利である第2の電極の形状を選択することを可能にする。しかし、供給ラインを通るガスの流れが第2の電極によって過度に強く影響を受けないことが保証されなければならない。第2の電極は、管状供給ラインの壁を通って延びる電極部分の支援で供給ラインに締結することができる。これに代えて、電極は、供給ラインの壁の内側に締結することができ、かつ電圧信号又は任意的に一定電位を供給ライン内で誘導される電気ラインの支援でそこに印加することができる。
【0026】
1つの発展では、供給ラインに配置された第2の電極は、イオン化デバイスの第1の電極(及びイオントラップ)に面する先端を有する。一例として、先端は、上記で更に上述した通過開口部を延ばす管状電極部分の中に突出することができる。先端まで先細である第2の電極に加えて、第1の電極も先端を有し、従って、2つの先端の間でイオンを発生させる及び/又はプラズマを点火することができる。この場合に、先端まで先細である電極部分が、通過開口部からのオフセットを有して電極に取り付けられ、かつ通過開口部の方向に延びる場合に有利である。
【0027】
一実施形態では、信号発生器は、イオンを内部に貯蔵するためにイオントラップのリング電極の中に電圧信号を結合するように具現化される。この場合に、イオントラップは、例えば、イオントラップの内部の境界を互いに定める少なくとも1つのリング電極と一般的に少なくとも2つのキャップ電極とを有するイオン共鳴ストラップとすることができる。双曲ポールトラップの形態にある従来の四重極トラップの場合に、リング及びキャップ電極の各々は、実質的に双曲幾何学形状を有する。通例では、2つのキャップ電極は、接地電位にあり(励起がない時)、一方で無線周波数AC電圧の形態にある無線周波数貯蔵電圧信号がリング電極に印加される。無線周波数貯蔵電圧信号により、イオントラップに電界(四重極電界)が発生し、この電界は、そのような電界内のイオン又は荷電粒子はイオントラップに安定的に貯蔵することができるので電気貯蔵場とも呼ぶ。上述のように、信号発生器によって発生される無線周波数貯蔵電圧信号は、イオン化デバイス内にRFプラズマを発生させるのに使用することができる。貯蔵電圧信号は、典型的には、例えば1MHz程度のMHz範囲にある周波数を有する。
【0028】
更に別の実施形態では、質量分析計の信号発生器又は(更に別の)信号発生器は、内部でイオンを励起するためにイオントラップの少なくとも1つのキャップ電極の中に電圧信号を結合するように具現化される。典型的に上述のリング電極又はあるリング電極の中に結合される貯蔵電圧信号に対する代替として、キャップ電極の中に結合される励起電圧信号もプラズマを発生させるのに使用することができる。典型的には、例えば、いわゆるSWIFT(「貯蔵波形逆フーリエ変換」)励起を発生させるためのそのような励起電圧信号は、同様に無線周波数AC電圧信号である。励起電圧信号は、典型的には、専用励起信号発生器によって発生され、かつそれによってキャップ電極の中に結合される。励起信号は、(プラズマ)イオン化デバイス内にRFプラズマを発生させるのに有利に使用することができる。任意的に、上述の電圧信号又は励起目的に使用される電圧信号は、リング電極の中にも結合することができる。
【0029】
更に別の実施形態では、質量分析計は、イオントラップから取り出されたイオンを検出するための又はイオントラップに貯蔵された(かつ励起された)イオンによって発生されたイオン信号を検出するための検出器を含む。電子イオン共鳴セルに基づく質量分析計は、貯蔵されたイオンがイオントラップからターゲット方式で(過励起により)取り出されて(粒子)検出器によって検出されるいわゆる「不安定性モード」で通常は作動される。
【0030】
これに代えて、イオントラップに貯蔵されたイオンは、検出されているイオンの励起中に発生するイオン信号によって非破壊方式で検出することができる。この場合に、イオンは、イオントラップの1又は複数のキャップ電極上で誘起された電荷を測定又は検出することによって検出される。誘起電荷を発生させるために、イオンは、励起信号によって振動するように励起され、この振動の周波数は、励起されたイオンのイオン質量に依存するか又は質量電荷比に依存し、従って、励起されたイオンは、キャップ電極で発生されたイオン電流又はイオン信号に基づいて検出することができる。誘起電荷又はイオン電流信号は、典型的には、イオン電流又はそれに比例する電圧イオン信号が記録されてフーリエ変換を用いて分光計内で周波数スペクトルに又は質量スペクトルに変換されることによって測定される。この変換に起因して、そのような質量分析計は、(電気)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)質量分析計とも呼ばれる。
【0031】
イオン化デバイス内でイオン又はプラズマを発生させるための電圧信号の本発明の使用は、必ずしも上記で更に上述したタイプのイオントラップに適用される必要はなく、むしろ原理的にはこれは電圧信号がその中に結合される少なくとも1つの電極を有する他のタイプのイオントラップにおいて実施することもできることは理解される。
【0032】
本発明の更に別の特徴及び利点は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照する本発明の例示的実施形態の以下の説明から及び特許請求の範囲から明らかである。個々の特徴は、各場合にそれら自体によって個々に又は本発明の変形でのあらゆる望ましい組合せでの複数のものとして実現することができる。
【0033】
例示的実施形態を概略図面に例示して以下の説明で解説する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】イオントラップと電極内の通過開口部を通じてイオントラップに供給されるガスをイオン化するためのイオン化デバイスとを有する質量分析計の概略図である。
【
図2a】電極が通過開口部で鋭く突出する電極部分を有する
図1の質量分析計の詳細の概略図である。
【
図2b】電極が通過開口部で鋭く突出する電極部分を有する
図1の質量分析計の詳細の概略図である。
【
図3a】イオン化デバイスが誘電体障壁放電又は先端放電を発生させるように具現化される
図2aと類似の概略図である。
【
図3b】イオン化デバイスが誘電体障壁放電又は先端放電を発生させるように具現化される
図2bと類似の概略図である。
【
図4】ガス圧力と電極間隔の積の関数としてのプラズマの点火電圧のパッシェン曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の図面の説明では、同一の参照符号を同一又は機能的に同一の構成要素それぞれに対して使用する。
【0036】
図1は、イオントラップ2を有し、その中に貯蔵されたイオン4a、4bを質量分析によって検査するための質量分析計1を示している。図示の例では、イオントラップ2は、電気イオントラップ(ポールトラップ)として具現化され、リング電極3の形態にある第1の電極を有する。リング電極3にはAC電圧U
RFの形態にある無線周波数貯蔵電圧信号が印加され、この信号は、分析されることになるガス4のイオン4a、4bを動的に貯蔵する無線周波数交流電界の形態にある電気貯蔵場Eをイオントラップ2内に発生させる。質量分析計1は、無線周波数貯蔵電圧信号U
RFを発生させるための貯蔵信号発生器5を有する。図示の例では、貯蔵信号発生器5は、kHzからMHz程度、例えば、1MHzの一定周波数と、数百ボルトの一定(最大)振幅とで貯蔵電圧信号U
RFを発生させるように具現化される。これに代えて、貯蔵信号発生器5は、貯蔵電圧信号U
RFの周波数及び/又は振幅を設定又は変更するように具現化することができる。この目的に対して、貯蔵信号発生器5は、例えば、冒頭で引用したWO 2017/194333 A1に例示するように具現化することができる。
【0037】
電気貯蔵場Eから、イオン4a、4bに対して強めの程度に作用してイオン4a、4bをイオントラップ2の中央又は中心から遠ざける平均回復力がもたらされる。イオン4a、4bの質量電荷比(m/z)を測定するために、イオン4a、4bは、励起信号Ustim1、Ustim2(刺激)によって振動するように励起され、振動の周波数は、イオン質量とイオン電荷とに依存し、典型的には、kHzからMHz程度の大きさ、例えば、約1kHzから200kHzの周波数範囲にある。それぞれの励起信号Ustim1、Ustim2は、各場合にその下流に増幅器が接続された第1及び第2の励起信号発生器6a、6bによって発生される。
【0038】
無反応非破壊(すなわち、検出後に変わることなくイオン4a、4bがイオントラップ2に存在する)検出に対して、励起イオン4a、4bの振動信号は、イオントラップ2のキャップ電極7a、7bを形成する2つの測定電極での誘起された鏡像電荷の形態で取り出される。2つのキャップ電極7a、7bは、それぞれのフィルタを通してそれぞれの低ノイズ電荷増幅器8a、8bに接続される。
【0039】
電荷増幅器8a、8bは、各場合に最初にキャップ電極7a、7bでの励起に起因して発生された2つのイオン電流I
ion1、I
ion2の一方を取り込んで増幅し、次いで、これらの電流を仮想接地電位に保つ。電荷増幅器8a、8bによって電圧信号に変換されたイオン電流I
ion1、I
ion2から、減算により、
図1の右下に示す時間プロファイルを有するイオン信号U
ion(t)が発生される。
【0040】
イオン信号U
ion(t)は検出器9に供給され、図示の例では、検出器9は、アナログデジタルコンバータ9aと、
図1の右上に示す質量スペクトルを生成するための高速フーリエ分析(FFT)のための分光計9bとを有する。この場合に、検出器9又は分光計9bは、最初にイオントラップ2内に貯蔵されたイオン4a、4bの特徴的なイオン共鳴周波数f
ionの周波数スペクトルを発生させ、この周波数スペクトルが、それぞれのイオン4a、4bの質量及び電荷へのイオン共鳴周波数f
ionの依存性に基づいて質量スペクトルに変換される。この質量スペクトルには、質量電荷比m/zに依存する検出粒子又は検出電荷の個数が示されている。
【0041】
図1に示す例では、分析されることになるガス4は、チャンバ10からガス供給器11によって取られ、このチャンバは、産業処理、例えば、コーティング処理が実施される産業装置の一部を形成する処理チャンバである。これに代えて、チャンバ10は、例えば、リソグラフィ装置の(真空)ハウジング又はいずれかの他のタイプのチャンバとすることができる。ガス供給器11は、ガス4がチャンバ10から流出することを可能にするための出口12と、分析されることになるガス4をパルス方式でイオン化するイオン化デバイス15に分析されることになるガス4を給送するために制御デバイス14によって制御可能であるバルブ13とを有する。
図1に示す例では、イオン化デバイス15は、リング電極3に隣接して配置される。リング電極3には、イオン化された分析されることになるガス4、すなわち、イオン4a、4bがイオントラップ2の内部2aの中に導入される際に通る通過開口部16が形成される。図示の例では、通過ボア16が、イオントラップ2の中心平面内を延び、この中心平面に関してキャップ電極7a、7b及びリング電極3が鏡面対称方式で配置される。
【0042】
図1に示す質量分析計1では、イオン化デバイス15は、イオントラップ2に直ぐ隣接して、より厳密には、分析されることになるガス4の供給のための通過開口部16が形成されたリング電極3の領域に直ぐ隣接して配置される。貯蔵信号発生器5によって発生されて第1の電気接続ライン20aを通してリング電極3に供給される貯蔵電圧信号U
RFは、結果的にイオン化デバイス15内でも利用可能であり、
図2a、
図2bに基づいて下記で説明するようにイオン4a、4b、17又はプラズマを発生させるのに使用することができる。
【0043】
図2aに示すイオン化デバイス15では、内部2aの境界を定めるイオントラップ2のリング電極3は、境界を定めるのと同時にイオン化デバイス15の第1の電極3を形成し、この第1の電極3は、第2の電極18と共にこれら2つの電極3、18の間の空間内にイオン4a、4bを発生させるのに使用される。電極3に印加される貯蔵電圧信号U
RFを用いてイオン化デバイス15を貫流するガス4の中にRFプラズマを発生させることができるという事実が利用される。ここで、第2の電極18には一定電位(例えば、接地電位)が印加される。第2の電極18に一定電位を発生させるために必ずしもこの電極を貯蔵信号発生器5に接続する必要はないことは理解される。
【0044】
図2aに示すイオン化デバイス15では、第2の電極は、分析されることになるガス4がイオントラップ2の方向に貫流する金属供給ライン18として具現化される。内部2aから外側に向くその外側では、リング電極3は、先端まで先細であって通過開口部16を取り囲む又は通過開口部16を第2の電極18の方向に延ばす管状電極部分3aを有する。第2の電極18は、先端まで先細である電極部分3aの端部から予め決められた距離dに配置される。リング電極3又は先端まで先細である電極部分3aと第2の電極18として使用される供給ラインの端部との間の間隙を架橋するために、イオン化デバイス15は、電気絶縁材料、図示の例ではセラミックから構成される管状供給ライン部分19を有する。電気絶縁供給ライン部分19は、第2の電極を形成する供給ライン18の外側に沿って延び、かつリング電極3に面するその端部とリング電極3の間の間隙を架橋する。供給ライン部分19は、分析されることになるガス4が周囲に逃げることができることを防止する。
【0045】
2つの電極3、18の間の空間内でプラズマを点火するための又はイオン4a、4bを発生させるための点火経路が利用可能であり、この点火経路は、分析されることになるガス4の流れ方向の2つの電極3、18の間の距離dに対応し、例えば、約100μmと50mmの間の長さを有することができる。
【0046】
制御デバイス14は、いずれの場合にも分析されることになるガス4をイオントラップ2の内部2aにパルス方式で供給するために制御可能バルブ13を駆動しなければならないので、プラズマは、分析されることになるガス4のパルス式供給のパラメータの適切な選択の場合に自動的に点火され、ガス圧力が降下した時に閉ループ制御を必要とすることなく再度消火される。パルス方式でイオントラップ2内に供給されたイオン4a、4bを貯蔵及び分析する間にプラズマを消火することは、イオントラップ2内の電気貯蔵場Eでのプラズマによる干渉を回避するのに、例えば、空間荷電効果を最小にするのに有利である。
【0047】
図2bに示すイオン化デバイス15は、第2の電極18が配置された電気絶縁材料で作られた供給ライン19を有する点で
図2aに示すイオン化デバイス15とは実質的に異なる。
図2bに示す例では、第2の電極18は、先端まで先細であって突出電極部分3aでリング電極3の通過開口部16の中に突出する端部18aを有する。このようにして、イオントラップ2の内部2aに直ぐ隣接して通過開口部16にイオン17を発生させることが可能である。
【0048】
図2bに示す例では、イオン化されてイオントラップ2の内部2aに供給されることになるガスは、イオン化ガス22、典型的には、希ガス、例えば、ヘリウムである。イオン化ガス22は、ガス供給器11のガスリザーバ21内に保たれ、ガス出口12及び制御可能バルブ13を通してイオン化デバイス15の供給ライン19に供給される。イオン化ガス22は、分析されることになるガス4をイオントラップ2の内部2aでイオン化するのに使用される。この場合に、分析されることになるガス4は、第1のキャップ電極7a内の通過開口部26を通してイオントラップ2の内部2aの中に導入され、ほぼイオントラップ2の中心に位置合わせされる。イオントラップ2は対称軸23を有し、それに関してイオントラップ2の電極3、7a、7b、より厳密には内部2aの境界を定めるこれらの電極の内側が回転対称性を有する。分析されることになるガス4は、イオン化デバイス15内で発生されたイオン化ガス22のイオン17を用いてイオントラップ2の内部2aで衝突イオン化及び/又は電荷交換イオン化によってイオン化される。イオン化ガス22のイオン17がイオントラップ2の電気貯蔵場E内に貯蔵される場合、又は少なくとも比較的長い軌道の中に強制的に入れられる場合に、分析されることになるガス4又はそのイオン4a、4bとイオン化ガス22のイオン17との間の衝突回数は、ターゲット方式で増大させることができる。イオン化ガス22としてネオン又はアルゴンの使用は、この目的に対して有利である。
【0049】
図2bに示すものとは異なり、仮に分析されることになるガス4がイオントラップ2の外側でイオン化される場合、すなわち、仮にイオン化ガス22の使用が除外される場合に、第1のキャップ電極7aを通ってイオントラップ2の内部2aに流入する分析されることになるガス4は、例えば
図2aに示すように構成することができる(プラズマ)イオン化デバイス15の支援で同じくイオン化することができる。この場合に、第1のキャップ電極7a及びリング電極3は、イオン化デバイス15の一部を形成する。この場合に、プラズマ発生デバイス15内にプラズマ17を発生させるために、第1の励起信号発生器6aによって発生される励起電圧信号U
stim1が使用される。分析されることになるガス4又はイオン化ガス22をイオン化するのに、第2のキャップ電極7b又は第2の励起信号発生器6bを相応に使用することができることは理解される。
【0050】
図3a、
図3bは、
図2a、
図2bに示す例と第2の電極18の構成が異なる(プラズマ)イオン化デバイス15内にイオン4a、4b又はプラズマを発生させるための2つの更に別のオプションを示している。
【0051】
図3aに示す例では、供給ライン19は、
図2bのように電気絶縁材料から形成される。供給ライン19の外側にはリング形の金属カフ18(又はパイプ部分)が取り付けられてイオン化デバイス15の第2の電極を形成する。第2の電極又はカフ18は、供給ライン19によって遮蔽されるので、プラズマ17は、供給ライン19内のリング電極3に直ぐ隣接する領域に誘電体障壁放電によって発生する。
【0052】
図3bに示す例では、第2の電極18は、
図2bに示す例のように電気絶縁供給ライン19内に配置される。第2の電極18は、ロッド形状実施形態を有し、かつ同じくリング電極3又は通過開口部16に面する先端18aを有する。円筒供給ライン19を受け入れる又は締結するために
図3aでのように使用される第1の突出円筒電極部分3aに加えて、先端まで先細である第2の突出電極部分3bがリング電極3上に形成される。第2の電極部分3bは、通過開口部16からの横方向オフセットを用いてかつ先端まで先細であるその端部を有してリング電極3の外側に取り付けられ、かつ第2の電極18の先端18aへの間隙にイオン4a、4b又はプラズマを発生させるために第2の電極18の先端18aの方向に延びる。
【0053】
要約すると、イオントラップ2の電極3、7a、7bに印加される電圧信号又は電位は、分析されることになるガス4又はイオン化ガス22のイオントラップ2の内部2aの中への入口の領域に上述した方式で、すなわち、電極3の特定の形状又はイオン化デバイス15の適切な実施形態によってイオン4a、4b、17又はプラズマを発生させるのに使用することができる。信号発生器5、6a、6bによって電極3、7a、7bにそれぞれの電圧信号URF、Ustim1、Ustim2が供給されるので、イオン化デバイス15に対して追加の電圧供給器は必要とされない。更に、それぞれの電極3、7a、7bは、適切な場合にイオン化デバイス15の(第1の)電極として使用することができると考えられる。
【0054】
上述した手順は、
図1に示すような電気共鳴トラップの形態にあるイオントラップ2を有する質量分析計1内だけでなく、異なるタイプのトラップ2にも有利に適用することができることは理解される。イオン4a、4、17又はプラズマを発生させるのに使用される電圧信号は、適用可能な場合に、(無線周波数)AC電圧ではなく、この場合にDC電圧とすることができると考えられる。
【0055】
図1に示す質量分析計1の場合でのように、イオントラップ2に貯蔵されたイオン4a、4bの非破壊分析を実施することも必須ではない。むしろ、イオン4a、4b又はターゲット様式での個々のイオン種は、検出目的でイオントラップ2から取り出すことができるであろう。この場合に、イオントラップ2から取り出されたイオン4a、4bは、イオントラップ2の外側に配置された検出器9内で検出される。
【符号の説明】
【0056】
1 質量分析計
2 イオントラップ
7a、7b キャップ電極
16 通過開口部
E 電気貯蔵場