(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置するための船および方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/04 20060101AFI20240902BHJP
B66C 23/53 20060101ALI20240902BHJP
B63B 27/10 20060101ALI20240902BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E02D13/04
B66C23/53
B63B27/10 A
E02D27/52 Z
(21)【出願番号】P 2021560985
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020060567
(87)【国際公開番号】W WO2020212409
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-10
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519091203
【氏名又は名称】イーテーエルエーセー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デヘール・テレンス・ヴィレム・アウフスト・フェマイェル
(72)【発明者】
【氏名】マタイス・ミヒル・ストフレーゲン
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02886722(EP,A1)
【文献】米国特許第07367464(US,B1)
【文献】国際公開第2015/165463(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/088832(WO,A1)
【文献】実開昭55-154744(JP,U)
【文献】実開平04-030185(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
B66C 19/00-23/94
B63B 27/10
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置するための船であって、
実質的に垂直な方向に前記パイルを吊り下げ、かつ前記パイルを下降させるための巻上げケーブルおよび巻上げウィンチを備えるクレーンと、
前記パイルを保持するためのパイル保持システムであって、前記パイル保持システムにより保持されたパイル部分の水平な動きを制限する、パイル保持システムと、
2本のタガーラインおよび対応するタガーウィンチを含むタガーシステムであって、前記タガーラインは、前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の位置において、前記パイルに直接または間接的に接続可能である、タガーシステムと、
前記巻上げウィンチおよび2つの前記タガーウィンチを制御して、前記巻上げウィンチを用いて、前記パイル保持システムにより保持された前記パイルを下降させ、かつ2つの前記タガーウィンチを用いて、2つの各水平方向における前記パイルの動きを減衰させるための制御システムと、
を備え
、
前記パイル保持システムは、前記パイル保持システムに保持されたパイルの実質的に水平な方向に対応する方向と、前記パイル保持システムに保持されたパイルの実質的に垂直な方向に対応する方向と、の間で枢動するように構成され、かつ、
前記パイルが実質的に水平な方向にあるときに追加のタガーウィンチおよびタガーラインが前記パイルの下方に設けられ、したがって、前記タガーシステムは、前記パイル保持システム、および前記パイル保持システムに保持された前記パイルのいずれの方向においても、前記パイル保持システム、および前記パイル保持システムに保持された前記パイルと実質的に位置合わせされる船。
【請求項2】
前記タガーシステムは、前記クレーン上に配置される、請求項
1に記載の船。
【請求項3】
前記タガーシステムは、前記船のデッキ上、または前記クレーン以外の船上の別構造に配置される、請求項
1に記載の船。
【請求項4】
前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の前記位置は、前記パイルの上端である、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の船。
【請求項5】
前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の前記位置は、前記巻上げケーブルにより吊り下げられた負荷コネクタにおける位置であるか、または前記負荷コネクタと前記パイルの上端との間の取付けデバイスにおける位置である、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の船。
【請求項6】
二本の前記タガーラインは、第1のタガーラインおよび第2のタガーラインを含み、前記タガーシステムは、前記第1のタガーラインに対する第1のタガーウィンチ、および前記第2のタガーラインに対する第2のタガーウィンチをさらに備える、請求項
1に記載の船。
【請求項7】
前記第1および第2のタガーウィンチは前記クレーン上に配置される、請求項
6に記載の船。
【請求項8】
前記タガーシステムは、前記第1のタガーウィンチと前記位置との間で前記第1のタガーラインをガイドするための第1のタガー滑車と、前記第2のタガーウィンチと前記位置との間で前記第2のタガーラインをガイドするための第2の滑車と、を含む、請求項
6または
7に記載の船。
【請求項9】
前記クレーンは、略水平な回転軸回りに回転する構造に回転可能に接続されたブームを備え、前記構造は、前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の前記位置に向かって、前記ブームの両側にある2本の前記タガーラインをガイドするためのスプレッダを備える、請求項
1に記載の船。
【請求項10】
前記タガーシステムは、前記第1のタガーウィンチと前記位置との間で前記第1のタガーラインをガイドするための第1のタガー滑車と、前記第2のタガーウィンチと前記位置との間で前記第2のタガーラインをガイドするための第2の滑車と、を含み、前記クレーンは、略水平な回転軸回りに回転する構造に回転可能に接続されたブームを備え、前記構造は、前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の前記位置に向かって、前記ブームの両側にある2本の前記タガーラインをガイドするためのスプレッダを備え、かつ、前記第1および第2の滑車はスプレッダ上に配置される、請求項
6または
7に記載の船。
【請求項11】
前記2本のタガーラインは、前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の位置から、実質的に水平方向に延びる、請求項
1に記載の船。
【請求項12】
個々の滑車は、前記パイル保持システムと前記巻上げケーブルとの間の前記位置に向かって、各々の前記タガーラインをガイドするか、または前記タガーシステムは、前記船の上部デッキ上の上昇した位置に配置される、請求項
11に記載の船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置するための船および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風車を設置するための知られた方法においては、まず、海底にパイルを打ち込むことにより、パイルの形の基礎が設置され、その後に、直ちに風車を全体として設置することにより、または部品状態にある風車をパイル上で組み立てることにより、風車がパイル上に設置される。
【0003】
より大型の風車へと向かう動向があり、現在遭遇するものよりも深い水深を有する場所に、洋上風車を設置したいという希望がある。それらは共に、より大型の、かつ重量のある基礎を生ずる。したがって、近い将来において、100メートルを超える、おそらく120メートルを超える、またはそれ以上大きなパイルを設置することが必要になると予測される。このようなパイルの重量は、1000mtを超える、おそらく1300mtを超える、またはそれ以上になる可能性がある。
【0004】
パイルの設置は、現在、ジャッキアップタイプの船を用いて行われ、その場合、その脚が水の中に下されて、水の外に少なくとも部分的に出るように船を持ち上げ、波が、船に対して限定的な、または最小の影響だけを与えるようにする。その例は、特許文献1において見出すことができる。
【0005】
波は、ジャッキアップタイプの船に対して限定的な、または最小の影響を与えるが、波およびさらに風は、下降中にパイルそれ自体に対して、無視できない影響を有する可能性があり、巻上げケーブルによりクレーンからぶら下がっている間に、パイルの揺れ、すなわち、振り子状の動きを生ずる。これらの動きを減衰させるために、特許文献1は、船上の支持構造に対して移動可能な把持部材を備えた把持構成を使用することを教示しており、その場合、動き減衰手段は、支持構造に対する把持部材の動きを減衰するように提供され、その長手方向を横切るパイルの揺動を減衰する。
【0006】
特許文献1の教示の欠点は、動き減衰手段は、パイルが振り子のように揺れる剛体の固有モードまたは0次の固有モードの減衰を生ずるに過ぎないことである。より高い固有モードは、動き減衰手段によってほとんど減衰されず、したがって、これらのより高い固有モードを励起することのできるより厳しい波および風の状況においては特に、パイルは、前記パイルの設置を妨げる望ましくない動きをする。将来のパイルの予測される長さの増加に伴い、この問題もまた増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第2 886 722号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0110582号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置するための船および方法を提供することであり、その船および方法は、それぞれ、厳しい風および波の状況においてパイルの設置を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置するための方法が提供され、前記方法は、次のステップを含み、すなわち、
a)パイルを巻上げケーブルから実質的に垂直な方向に吊り下げるステップと、
b)パイルの下端をパイル保持システム内に供給して、パイル保持システムにより保持されたパイル部分の水平な動きを制限するステップと、
c)パイル保持システムによって保持されたパイルを下降させるステップであって、少なくとも水域の飛沫帯を通してパイルを下降させることを含む、ステップと、
を含み、
ステップc)の間に、2本のタガーラインが、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置において、パイルに直接または間接的に接続され、前記タガーラインは、2つの各水平方向のパイルの動きを減衰するように動作する。
【0010】
この方法の利点は、パイルの水平位置が、2つの異なる高さレベルにおいて制御されることであり、したがって、波および/または風により励起されたとき、より多くの固有モードを有効に減衰させることができ、厳しい風および波の状況の中で、設置を行うことが可能になる。
【0011】
当業者が、2つの異なる高さレベルにおいてパイルの水平位置を制御するように企図する場合、当技術分野で知られた2つのパイル保持システムを使用し、パイル保持システムとタガーシステムの組合せを用いることに代えて、互いの上にそれらを配置することになるが、それは、特許文献1が、1つのこのようなパイル保持システムを使用することを教示し、また特許文献2が、タガーラインが負荷に対して引っ張るだけであり、押すことができないので、タガーラインを用いることを避けるよう教示するからである。しかし、本発明者らは、異なる水平方向に作用する2本のタガーラインを用いることはまた、十分にパイルの動きを減衰できることを見出した。
【0012】
実施形態では、水域、すなわち、海における波は、平面視で波の伝播方向を有する。さらに、2本のタガーラインの一方、すなわち、第1のタガーラインは、平面視で、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置から、第1のタガー引張り方向に延び、一方、2本のタガーラインの他方、すなわち、第2のタガーラインは、平面視で、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置から、第2のタガー引張り方向に延びる。第1のタガー引張り方向および第2のタガー引張り方向は、第1のタガー引張り方向および第2のタガー引張り方向の間の角度を2つの等しい部分へと分割する内部の二等分線を画定する。好ましくは、第1のタガー引張り方向および第2のタガー引張り方向は、波の伝播方向が、二等分線に直角な方向と第1のタガー引張り方向に直角な方向との中間に、または二等分線に直角な方向と第2のタガー引張り方向に直角な方向との中間にあるように位置決めされる。その利点は、パイル固有モードの全体期間において、2本のタガーラインの少なくとも1本が、パイルに引張り力を加えることができ、それにより、固有モードのより有効な減衰を生ずることであり得る。
【0013】
実施形態では、2本のタガーラインの動作は、パイルの下降の制御に応じて制御され、2本のタガーラインもまた、減衰すべき動きがない場合であってもパイルの下降に従う必要がある。
【0014】
実施形態では、少なくとも2本のタガーラインは、負荷コネクタまたは取付けデバイスをパイルの上端に接続する前に、負荷コネクタまたは取付けデバイスに接続される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置するための船が提供され、前記船は、以下のものを備え、すなわち、
- 実質的に垂直な方向にパイルを吊り下げ、かつパイルを下降させるための巻上げケーブルおよび巻上げウィンチを備えるクレーンと、
- パイルを保持するためのパイル保持システムであって、パイル保持システムにより保持されたパイル部分の水平な動きを制限する、パイル保持システムと、
- 2本のタガーライン、および対応するタガーウィンチを含むタガーシステムであって、前記タガーラインは、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置において、パイルに直接または間接的に接続可能である、タガーシステムと、
- 巻上げウィンチおよび2つのタガーウィンチを制御して、巻上げウィンチを用いて、パイル保持システムにより保持されたパイルを下降させ、かつ2つのタガーウィンチを用いて2つの各水平方向におけるパイルの動きを減衰させるための制御システムと、
を備える。
【0016】
実施形態では、タガーシステムは、クレーン上に設けられる。
【0017】
実施形態では、クレーンは、実質的に水平な回転軸回りで回転する構造に回転可能に接続されたブームを備え、その構造は、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置の方向に、ブームの両側にある2本のタガーラインをガイドするためのスプレッダを備える。
【0018】
実施形態では、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置は、パイルの上端である。
【0019】
実施形態では、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置は、巻上げケーブルにより吊り下げられた負荷コネクタにおいてである。
【0020】
実施形態では、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置は、負荷コネクタとパイルの上端との間の取付けデバイスにおいてである。
【0021】
実施形態では、2本のタガーラインは、第1のタガーラインおよび第2のタガーラインを含み、タガーシステムは、第1のタガーラインに対する第1のタガーウィンチ、および第2のタガーラインに対する第2のタガーウィンチをさらに備え、好ましくは、第1、および第2のタガーウィンチは、例えば、クレーンの構造、またはそのブーム上など、クレーン上に配置される。
【0022】
実施形態では、タガーシステムは、第1のタガーウィンチと上記位置との間で第1のタガーラインをガイドするための第1のタガー滑車と、第2のタガーウィンチと上記位置との間で第2のタガーラインをガイドするための第2のタガー滑車と、を含み、第1および第2の滑車は、スプレッダ上に配置されることが好ましい。
【0023】
実施形態では、タガーシステムは、クレーン以外の船のデッキ、または船上の別の構造に配置される。
【0024】
実施形態では、パイル保持システムは、パイル保持システムにおいて保持されるパイルの実質的に水平な方向に対応する方向と、パイル保持システムにおいて保持されるパイルの実質的に垂直な方向に対応する方向と、の間で枢動するように構成され、タガーシステムは、パイル保持システム、およびパイル保持システムに保持されたパイルの任意の方向において、パイル保持システム、およびパイル保持システムに保持されたパイルと実質的に位置合わせされる。
【0025】
実施形態では、2本のタガーラインは、実質的に水平方向に、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置から延びる。これは、タガーラインを、パイル保持システムと巻上げケーブルとの間の位置に向けてガイドするために、船の上部デッキの上の上昇させた位置において滑車を使用することにより得ることができるが、船の上部デッキの上の上昇させた位置にタガーシステム全体を配置することにより得ることもできる。
【0026】
本発明を、次に、添付図面を参照することにより非限定的な方法で述べるものとし、図中、同様な要素は同様な記号を用いて示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態による船上で使用される、かつ/または方法において使用されるクレーンを概略的に示す図である。
【
図2】
図1のクレーンを含む本発明の実施形態による船を概略的に示す図である。
【
図3】
図1のクレーンの負荷コネクタ、およびタガーシステムの引張り方向の概略平面図である。
【
図4】実質的に水平な方向にパイルを備える本発明の別の実施形態による船を概略的に示す図である。
【
図5】実質的に垂直な方向にあるパイルを備えた
図4の船を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および
図2は、本発明の実施形態による船1、および船1上で使用されるクレーン10、ならびに/または本発明の実施形態による方法を概略的に示す。
図1は、船1とは分離したクレーン10を概略的に示し、また
図2は、クレーン10を含み、本発明の実施形態による方法を実行する船1を概略的に示している。
【0029】
図示されたクレーン10は、台座取付けクレーンであるが、本発明はまた、マストクレーン(mast crane)など他のタイプのクレーンを使用できることが当業者には明らかであろう。この実施形態におけるクレーン10は、台座11、実質的に垂直な回転軸回りで台座に対して回転可能な構造12、および実質的に水平な回転軸14回りで、構造12に対して回転可能なブーム13を含む。
【0030】
クレーン10は、構造12の上端とブーム13の上端との間に延びるラフィングケーブル15をさらに備えることができ、そのラフィングケーブル15は、構造12に対するブーム13の角度方向を設定するために、ラフィングウィンチ(図示略)を用いて引き込む、または繰り出すように構成される。ラフィングウィンチは、構造12の内側に配置することができる。
【0031】
クレーン10は、巻上げケーブル20を備える巻上げシステム、巻上げケーブルに接続される負荷コネクタ21、および負荷コネクタ21を下降または持ち上げるように巻上げケーブルに対して動作する巻上げウィンチ(図示略)をさらに備える。巻上げウィンチはまた、構造12の内側に配置することができ、巻上げケーブル20は、好ましくは、回転軸14における、またはその付近の位置を介して、巻上げウィンチと負荷コネクタとの間で延び、したがって、ラフィングケーブル15を用いるクレーンのラフィング動作が、ブーム13の上端と負荷コネクタ21の間で延びる巻上げケーブルの長さに最小の影響を与えるようにする。
【0032】
図1および
図2の実施形態では、クレーン10はまた、タガーシステムを備え、それは、本実施形態において以下のものを含む、すなわち、
- 第1のタガーウィンチ30、
- 第2のタガーウィンチ31、
- 第1のタガーライン32、
- 第2のタガーライン33、
- 第1の滑車34、および
- 第2の滑車35。
【0033】
第1のタガーライン32は、第1のタガーウィンチ30から第1の滑車34を介して負荷コネクタ21まで延びるように構成され、一方、第2のタガーライン33は、第2のタガーウィンチ31から第2の滑車35を介して負荷コネクタ21まで延びるように構成される。
【0034】
第1および第2のタガーライン32、33とブーム13との間の干渉を回避するために、構造12はスプレッダ16を備え、第1および第2の滑車34、35が、比較的大きな水平距離にてスプレッダ16に固定されて、第1および第2のタガーライン32、33が、ブーム13を通過し、かつ負荷コネクタ21に接続できるようにする。スプレッダ16のさらなる利点は、第1および第2のタガーライン32、33が、負荷コネクタから異なる方向に延び、したがって、異なる水平方向に、負荷コネクタ21に対して力を加えることができることである。
【0035】
図2では、クレーン10は、船1上に配置される、より詳細には、船1の上部デッキ2に配置される。船1は、ジャッキアップタイプの船であり、脚3が、水の中に降ろされて、船1を少なくとも部分的に水の外へと持ち上げ、波が船1に対して限定された、または最小の影響を与えるようにすることができる。
【0036】
船は、上部デッキ2上に配置されたパイル保持システム40をさらに含む。パイル保持システムは、支持構造41、および支持構造41により支持されたパイルホルダ42を備える。パイルホルダ42は、パイル50を保持し、かつパイルホルダ42によって保持されたパイル部分の水平な動きを制限するように、パイル50に係合するための把持デバイス43を含む。把持デバイス43は、パイルと係合するための複数のローラを備えることができ、パイルを保持し、かつパイルが、パイルホルダに対するパイルの長手方向軸に平行な方向に動くことができるが、パイルホルダ42によって保持されたパイル部分の横方向の動きを制限する。
【0037】
図2で示されるパイル50などのパイルは、船1上に、または水平な方向に離れた供給船上に保管され、かつ/または輸送され得る。したがって、その状況において、クレーン10を使用して、パイルが、
図2で示される実質的に垂直な方向に巻上げケーブルから吊り下げられるまで、パイル50の一端を、すなわち、その上端を持ち上げることができる。このために、パイル50と負荷コネクタ21の間のインターフェースとして、取付けデバイス22を使用することができ、その取付けデバイス22は、互いに干渉させることなく、負荷コネクタ21に対するパイル50の回転を可能にするように構成することができる。
【0038】
パイル50を垂直な方向に提供した後、パイル50の下側部分または下端が、パイル保持システム40のパイルホルダ42に提供される。したがって、パイル50の下側部分の位置は、パイル保持システム40により制御され、またパイル50の上側部分の位置は、巻上げケーブル20(垂直な位置決め用)を用いて、かつ2本のタガーライン32、33(水平な位置決め用)を用いて制御される。
【0039】
パイル50を、巻上げケーブル20を用いて下降させたとき、パイル50は、まず水域の飛沫帯を通過することになり、その飛沫帯は、パイルを水中へと下降させたとき、空気から水への遷移部であり、そこでパイルは波を受ける。船1、好ましくは、クレーン10は、巻上げウィンチおよび2つのタガーウィンチ30、31を制御して、巻上げウィンチを用いて、パイル保持システム40により保持されたパイル50を下降させ、かつ2つのタガーウィンチ30、31を用いて、2つの各水平方向におけるパイル50の動きを減衰させるための制御システムを含む。したがって、剛体固有モードまたはより高い固有モードが、波および/または風によって励起されたとき、パイル保持システムおよびタガーシステムは、パイル50の下降中に生ずる動きを減衰することができる。これは、厳しい風および/または水の状況において、洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置できるようにする。
【0040】
代替的に、タガーシステムは、第2のパイル保持システムにより置き換えることもできるが、こうすることは、比較的大きく、重い第2のパイル保持システムを、他のパイル保持システム40の上に配置すべきであるため、船を劇的に複雑化することになる。さらに、2つのパイル保持システムの間の垂直な距離は、両方のパイル保持システムが可能な限り長く、下降高さにわたってパイルを保持できるのに好ましい小さな距離と、パイルの下側部分が、下側のパイル保持システムにより保持されるとき、初期の下降中に、パイルを適正に定位置に保持するために好ましい大きな距離と、の間の常に妥協となる。
【0041】
図3は、負荷コネクタ21を平面視で概略的に示しており、第1のタガーライン32および第2のタガーライン33が負荷コネクタから離れて延びている。第1のタガーライン32は、負荷コネクタ21から、第1のタガー引張り方向TP1へと延び、また第2のタガーライン33は、負荷コネクタ21から、第2のタガー引張り方向TP2へと延びる。第1および第2のタガー引張り方向TP1、TP2は、第1と第2のタガー引張り方向の間の角度を2つの等しい部分αおよびβへと分割する内側二等分線BIを画定する。パイルの設置中に、第1および第2のタガー引張り方向は、海における波の波伝播方向が、実線の陰影を用いて示されるように、二等分線BIに直角な方向D1と、第1のタガー引張り方向TP1に直角な方向D2と、の中間にある、または点/バブルの陰影を用いて示されるように、二等分線BIに直角な方向D1と、第2のタガー引張り方向TP2に直角な方向D3と、の中間にあるように配置されると好ましい。その利点は、負荷コネクタが、波伝播方向に実質的に平行な方向に動くパイル固有モードの期間全体において、2本のタガーライン32、33の少なくとも1本が、パイルに対して引張り力を加えることができ、それにより、固有モードのより有効な減衰が得られることであり得る。
【0042】
上記の例は、タガーシステムを、クレーンの一部であるとして、またはクレーン上に配置されるものとして述べているが、タガーシステムはまた、船上のどこか他に設けることもでき、これに限定されないが、船のデッキ上に、パイル保持システムに、または別個の船に配置されることを含む。船のデッキ上に設けられるタガーシステムの例を、次に、以下でより詳細に述べる。
【0043】
図4および
図5は、本発明の別の実施形態による船1を示す。
図4は、パイル50、パイル保持システム40、タガーシステム、およびクレーン10の一部を示すだけである。
図4において、パイル50は、実質的に水平な方向にある。
図5は、パイル50、パイル保持システム40、タガーシステムの一部、および実質的に垂直な方向にあるパイル50を備えるクレーン10を示す。
【0044】
船1は、ジャッキアップタイプの船であり、その場合、脚3(
図4では部分的に見えるが、
図5では完全に見える)は、水Wの中へと下降し、水Wの外に少なくとも部分的に船1を持ち上げるために、その対応する脚3aを介して海底Bと係合することができ、したがって、波は、船1に対して限定された、または最小の影響を与えるだけである。
【0045】
パイル保持システム40は、船1の上部デッキ2に配置される。パイル保持システム40は、支持構造41、および支持構造41により支持されるパイルホルダ42を備える。パイルホルダ42は、パイル50に係合してパイルを保持し、パイルホルダ42によって保持されたパイル部分の横方向の動きを制限する把持デバイスを含むことができる。横方向の動きは、パイル50の長手方向軸51に直角な動きである。
【0046】
パイル保持システム40は、
図4で示されるように、パイルホルダ42によって保持されるパイル50の実質的に水平な方向に対応するパイルホルダ42の実質的に垂直な方向と、
図5で示されるように、パイルホルダ42によって保持されるパイル50の実質的に垂直な方向に対応するパイルホルダ42の実質的に水平な方向との間で、実質的に水平な枢動軸PA回りで、パイルホルダ42が枢動可能であるように構成される。パイル50は、通常、その長さに起因して、実質的に水平な方向で輸送される。上記で述べたように枢動できるパイルホルダ42を有することは、なお水平な方向にあるパイル50を、パイルホルダ42の中に導くことができ、それにより、パイルホルダ42は、直立させている間中、パイル50の下端をガイドするのを支援できるようになる。
【0047】
パイル保持システム40は、パイルホルダ42に取り付けられる底部端支持体BESをさらに含み、底部端支持体BESが、パイルホルダ42と共に枢動できるようにする。底部端支持体BESは、パイル50の底部端に係合して、直立させる間中、底部端を保持するように構成される。
【0048】
パイル50を直立させることは、クレーン10を用いることにより達成される。クレーン10は、
図1および
図2における実施形態のクレーン10と同様のタイプおよび設計のものとすることができる。
図4は、巻上げシステムの一部を示す。巻上げシステムは、巻上げケーブル20と、巻上げケーブル20に接続された、例えば、フックなどの負荷コネクタ21と、を含む。
【0049】
クレーン10は、
図5で示されるように、パイルが、巻上げケーブル20から実質的に垂直な方向に吊り下げられるまで、パイル50の一端を、すなわち、その上端を持ち上げるために使用される。このために、取付けデバイス22を、パイル50と負荷コネクタ21との間のインターフェースとして使用することができ、その取付けデバイス22は、互いに干渉することなく、負荷コネクタ21に対するパイル50の回転を可能にするように構成することができる。
【0050】
パイル50が実質的に垂直な方向にあり、パイル50の全重量が、クレーン10により担持されるとき、底部端支持体BESは取り除かれるか、または外されて、パイル50が水Wの中に下降できるようにし得る。
【0051】
タガーシステムは、各タガーウィンチ31により動作可能なタガーライン32を含む。タガーライン32は、
図4および
図5で示され、また対応するタガーウィンチ31は、
図4だけで示されている。タガーウィンチ31は、船1の上部デッキ2上に配置される。タガーシステムはまた、船1の上部デッキ2に配置される滑車34、および取付けデバイス22に配置される滑車35を含む。タガーライン32は、
図4で示されるように、タガーウィンチ31から滑車34を介して滑車35へと延び、次いで上部デッキ2へと戻ることができ、例えば、滑車34に、またはその近くに取り付けられる。その場合、タガーライン32は、パイル保持システム40と巻上げケーブル20の間の位置において、パイル50に、すなわち、取付けデバイス22に間接的に接続される。
【0052】
示された実施形態では、タガーウィンチ31およびタガーライン32は、パイルが、実質的に水平な方向にあるとき、パイル50の下に配置される。これは、タガーシステムが、パイルホルダ42およびパイル50のいずれの方向においても、パイル保持システム40およびパイル50と位置合わせされることを意味する。
【0053】
パイル50を、巻上げケーブル20を用いて下降させたとき、パイル50は、まず水Wの飛沫帯を通過することになり、その飛沫帯は、パイル50を水Wの中に下降させたときの空気から水への遷移部であり、そこでパイル50は波を受ける。船1、おそらくクレーン10は、巻上げケーブル20に対して動作する巻上げウィンチと、タガーウィンチ31と、を制御して、巻上げウィンチを用いて、パイル保持システム40により保持されたパイル50を下降させ、かつタガーウィンチ31を用いて水平方向におけるパイル50の動きを減衰させるための制御システムを含む。したがって、剛体固有モードまたはより高い固有モードが、波および/または風により励起されたとき、パイル保持システム40およびタガーシステムは、パイル50の下降中に生じた動きを減衰することができる。これは、厳しい風および/または波の状況において、洋上風車を支持するように適合されたパイルを設置できるようにする。
【0054】
図4および
図5の実施形態において、タガーシステムは、1本のタガーラインおよび対応するタガーウィンチだけを含むが、タガーシステムは、例えば、
図1および
図2の実施形態で示されるように、さらなるタガーラインおよび対応するタガーウィンチを備えることができ、少なくとも2つの異なる水平方向において減衰させることができる。その場合、タガーシステムは全体として、パイル保持システムおよびパイルと位置合わせされ得るが、タガーラインおよびタガーウィンチの個々の対など、それらの部分は、位置合わせされないこともあり得る。したがって、パイルの長手方向軸を通り、水平な方向および垂直な方向に延びる平面に関して、タガーシステムの対称的なレイアウトはまた、位置合わせされたタガーシステムであると呼ぶことができる。
【0055】
上記の例は、2本のタガーラインが、負荷コネクタに接続されることを示しているが、これに限定されることなく、負荷コネクタとパイルの上端の間の取付けデバイス、またはパイルの上端それ自体を含む任意の他の位置もまた可能である。
【0056】
全体の記述は、2本のタガーライン、すなわち第1および第2のタガーラインの使用を示しているが、2を超える、したがって、3、4、またはさらに多くのタガーラインが使用されることも考えられる。さらに、2本のタガーラインの複数の組が存在することも可能であり、各組は、パイルの異なる部分に作用するか、またはパイルの同じ部分に作用するが、異なる時間期間中に行われるように構成される。例えば、2本のタガーラインの第1の組は、第1の下降段階中にパイルに対して(直接的に、または間接的に)動作することができ、一方、2本のタガーラインの第2の組は、後続する下降段階中にパイルに対して動作することができる。こうすることは、パイルが、比較的大きな長さを有しており、下降させると、タガーラインは、他のタガーラインと比較して、好ましさの劣るパイルに対する方向を生ずるおそれのある場合に良好であり、したがって、これらのタガーラインが、減衰手順を引き継ぐことができるようになる。
【符号の説明】
【0057】
1 船
2 上部デッキ
3 脚
3a 脚
10 クレーン
11 台座
12 構造
13 ブーム
14 回転軸
15 ラフィングケーブル
16 スプレッダ
20 巻上げケーブル
21 負荷コネクタ
22 取付けデバイス
30 第1のタガーウィンチ
31 第2のタガーウィンチ
32 第1のタガーライン
33 第2のタガーライン
34 第1の滑車
35 第2の滑車
40 パイル保持システム
41 支持構造
42 パイルホルダ
43 把持デバイス
50 パイル
51 長手方向軸
α 角度
β 角度
B 海底
BES 底部端支持体
BI 二等分線
PA 枢動軸
TP1 第1のタガー引張り方向
TP2 第2のタガー引張り方向
W 水