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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G02F1/035
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021563777
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2020040044
(87)【国際公開番号】W WO2021117358
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019224546
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】原 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】岩塚 信治
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-107229(JP,A)
【文献】特開2008-052103(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039215(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110441928(CN,A)
【文献】特開平04-204524(JP,A)
【文献】特開2007-114222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0039151(US,A1)
【文献】特開2014-170049(JP,A)
【文献】特開2011-191346(JP,A)
【文献】米国特許第09170438(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力導波路と、前記入力導波路を伝搬する光を分波する分波部と、前記分波部から延びて互いに平行に設けられた第1及び第2の導波路と、前記第1及び第2の導波路を伝搬する光を合波する合波部と、前記合波部から出力される光を伝搬する出力導波路とを有するマッハツェンダー光導波路と、
前記マッハツェンダー光導波路を伝搬する光の位相を制御する信号電極とを備え、
前記第1及び第2の導波路は、
前記第1の導波路の線幅よりも前記第2の導波路の線幅のほうが狭い第1の直線部と、
前記第1の直線部と平行に設けられ、前記第2の導波路の線幅よりも前記第1の導波路の線幅のほうが狭い第2の直線部
前記第1の直線部と前記第2の直線部とを接続する第1の湾曲部とを有し、
前記第1及び第2の直線部における前記第1及び第2の導波路の線幅は、前記第1及び第2の直線部の全長に亘って一定であり、
前記第1の湾曲部における前記第1及び第2の導波路の線幅は、前記第1の湾曲部の全長に亘って、前記第1の直線部の線幅から前記第2の直線部の線幅まで連続的に変化する光変調器。
【請求項2】
前記第1及び第2の導波路は、
前記第2の直線部と平行に設けられた第3の直線部と、
前記第2の直線部と前記第3の直線部とを接続する第2の湾曲部とをさらに有し、

前記第3の直線部における前記第1及び第2の導波路の線幅は、前記第3の直線部の全長に亘って一定であり、
前記第2の湾曲部における前記第1及び第2の導波路の線幅は、前記第2の湾曲部の全長に亘って、前記第2の直線部の線幅から前記第3の直線部の線幅まで連続的に変化する請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記マッハツェンダー光導波路は、基板上に形成されたニオブ酸リチウム膜がリッジ状に成形されたリッジ導波路である、請求項1又は2に記載の光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、マッハツェンダー型光変調器の導波路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に伴い通信量は飛躍的に増大しており、光ファイバ通信の重要性が非常に高まっている。光ファイバ通信は、電気信号を光信号に変換し、光信号を光ファイバにより伝送するものであり、広帯域、低損失、ノイズに強いという特徴を有する。
【0003】
電気信号を光信号に変換する方式としては、半導体レーザによる直接変調方式と光変調器を用いた外部変調方式が知られている。直接変調は光変調器が不要で低コストであるが、高速変調には限界があり、高速で長距離の用途では外部変調方式が使われている。
【0004】
光変調器としては、ニオブ酸リチウム単結晶基板の表面付近にTi(チタン)拡散により光導波路を形成したマッハツェンダー型光変調器が実用化されている(例えば特許文献1参照)。マッハツェンダー型光変調器は、1つの光源から出た光を2つに分け、異なる経路を通過させた後、再び重ね合わせて干渉を起こさせるマッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路(マッハツェンダー光導波路)を用いるものであり、40Gb/s以上の高速の光変調器が商用化されているが、全長が10cm前後と長いことが大きな欠点になっている。
【0005】
これに対して、特許文献2には、c軸配向のニオブ酸リチウム膜を用いたマッハツェンダー型光変調器が開示されている。ニオブ酸リチウム膜を用いた光変調器は、ニオブ酸リチウム単結晶基板を用いた光変調器と比較して大幅な小型化及び低駆動電圧化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5488226号公報
【文献】特許第6456662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マッハツェンダー光導波路を構成する互いに平行な2本の光導波路の線幅が例えば製造プロセス要因により非対称性を持つことがある。このとき2本の光導波路間の実効屈折率が異なることから、光の伝搬特性に波長依存性が生じる。光の伝搬特性に波長依存性が生じる場合、入出力光の動作波長が消光状態であっても入出力光に混在する動作波長以外のバックグランド光が導光状態となるため、オフ状態のときの光強度が大きくなり、消光比が悪化する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、一対の光導波路の非対称性に起因する消光比の悪化を改善することが可能な光変調器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、一対の光導波路間の実効屈折率の違いに起因する消光比の悪化を改善する方法について鋭意研究を重ねた結果、一方の光導波路の線幅のほうが広い区間の長さと他方の光導波路の線幅のほうが広い区間の長さとを実質的に等しくすることにより、一対の光導波路間の実効屈折率を等しくすることができ、これにより消光比を改善できることを見出した。
【0010】
本発明はこのような技術的知見に基づくものであり、本発明による光変調器は、入力導波路と、前記入力導波路を伝搬する光を分波する分波部と、前記分波部から延びて互いに平行に設けられた第1及び第2の導波路と、前記第1及び第2の導波路を伝搬する光を合波する合波部と、前記合波部から出力される光を伝搬する出力導波路とを有するマッハツェンダー光導波路と、前記マッハツェンダー光導波路を伝搬する光の位相を制御する信号電極とを備え、前記第1及び第2の導波路は、前記第1の導波路の線幅よりも前記第2の導波路の線幅のほうが狭い第1の区間と、前記第2の導波路の線幅よりも前記第1の導波路の線幅のほうが狭い第2の区間とを有し、前記第1の区間と前記第2の区間は、前記湾曲部において切り替わることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、一対の光導波路を構成する第1及び第2の導波路の非対称性に起因する消光比の悪化を改善することができる。
【0012】
本発明において、前記第1及び第2の導波路は、直線部と湾曲部とを交互に組み合わせた折り返し構造を有し、前記第1の区間と前記第2の区間は、前記湾曲部において切り替わることが好ましい。マッハツェンダー光導波路を構成する第1及び第2の導波路の線幅の大小関係の交換部を折り返し形状とすることにより、線幅を連続的に変化させることができ、これにより光損失を防止と光変調器の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記第1及び第2の導波路は、前記湾曲部を偶数個備えていることが好ましい。これにより、マッハツェンダー光導波路を構成する第1及び第2の導波路の湾曲部における長さを互いに等しくすることができる。
【0014】
本発明において、前記第1及び第2の導波路は、互いに平行に設けられた第1乃至第3の直線部と、前記第1の直線部と前記第2の直線部とを接続する第1の湾曲部と、前記第2の直線部と前記第3の直線部とを接続する第2の湾曲部とを有し、前記第1の区間は、前記第1の直線部及び前記第3の直線部に設けられており、前記第2の区間は、前記第2の直線部に設けられており、前記第1の区間と前記第2の区間は、前記第1の湾曲部及び前記第2の湾曲部において切り替わることが好ましい。これにより、第1及び第2の導波路の対称性が高められた光変調器を実現することができる。
【0015】
本発明において、前記導波路は、基板上に形成されたニオブ酸リチウム膜がリッジ状に成形されたリッジ導波路であることが好ましい。光導波路をニオブ酸リチウム膜のリッジ導波路とすることで大きな曲率で湾曲部を形成することが可能となり、光変調器を小型化することができる。
【0016】
本発明による光変調器は、前記第1及び第2の導波路の少なくとも上面を覆うバッファ層を備え、前記信号電極は、前記バッファ層を介して前記第1の導波路の上面と対向していることが好ましい。これにより、駆動電圧が低く電気光学特性が良好な光変調器を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一対の光導波路の非対称性に起因する消光比の悪化を改善することが可能な光変調器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による光変調器の構成を示す略平面図であって、光導波路のみを図示したものである。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態による光変調器の構成を示す略平面図であって、進行波電極を含めた光変調器の全体を図示したものである。
図3図3(a)及び(b)は、一対の光導波路の非対称性の改善について説明するための模式図である。
図4図4(a)乃至(c)は、図1及び図2に示した光変調器の略断面図であって、(a)は図1及び図2のXa-Xa線に沿った断面図、(b)は図1及び図2のXb-Xb線に沿った断面図、(c)は図1及び図2のXc-Xc線に沿った断面図である。
図5図5(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態による光変調器の構成を示す略平面図であって、(a)は光導波路のみを図示したものであり、(b)は進行波電極を含めた光変調器の全体を図示したものである。
図6図6(a)及び(b)は、図5(a)及び(b)に示した光変調器の略断面図であって、(a)は図5(a)及び(b)のXa-Xa線に沿った断面図、(b)は図5(a)及び(b)のXb-Xb線に沿った断面図である。
図7図7は、第1の線幅一定区間ZA1の長さLA1に対する第2の線幅一定区間ZA2の長さLA2の比と光変調器の消光比との関係を示すグラフであって、横軸はLA2/LA1、縦軸は動作波長1550nmにおける消光比をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態による光変調器の構成を示す略平面図であって、図1は光導波路のみを図示したものであり、図2は進行波電極を含めた光変調器の全体を図示したものである。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態による光変調器1は、基板10上に形成され、互いに平行に設けられた第1及び第2の導波路5A,5Bを含むマッハツェンダー光導波路2と、第1の導波路5Aと平面視で重なるように設けられた信号電極21と、第2の導波路5Bと平面視で重なるように設けられた第1の接地電極22と、信号電極21から見て第1の接地電極22と反対側に設けられた第2の接地電極23とを備えている。
【0022】
マッハツェンダー光導波路2は、マッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路であって、光入力ポート1iから光出力ポート1oに向かって順に、一本の光導波路からなる入力導波路3と、入力導波路3を伝搬する光を分波する分波部4と、分波部4から延びる第1及び第2の導波路5A,5Bからなる一対の平行導波路5と、第1及び第2の導波路5A,5Bを伝搬する光を合波する合波部6と、合波部6から出力される光を伝搬する一本の光導波路からなる出力導波路7とを有している。
【0023】
光入力ポート1iから延びる入力導波路3は、分波部4を介して第1及び第2の導波路5A,5Bの一端にそれぞれ接続されており、第1及び第2の導波路5A,5Bの他端は合波部6を介して出力導波路7に接続されている。光入力ポート1iに入力された入力光Sinは、入力導波路3を通って分波部4に入力され、分波部4で分波され、第1及び第2の導波路5A,5Bを進行した後に合波部6で合波され、出力導波路7を通って光出力ポート1oから変調光Soutとして出力される。
【0024】
本実施形態において、マッハツェンダー光導波路2は、直線部と湾曲部との組み合わせにより構成されている。具体的には、マッハツェンダー光導波路2の第1及び第2の導波路5A,5Bは、互いに並行に配置された第1~第3の直線部5S~5Sと、第1の直線部5Sと第2の直線部5Sとを接続する第1の湾曲部5Cと、第2の直線部5Sと第3の直線部5Sとを接続する第2の湾曲部5Cとを有している。第1及び第2の湾曲部5C、5Cは、光導波路の進行方向を180度転換する折り返し形状を有し、同心半円状に形成されている。このように、第1及び第2の導波路5A,5Bは、直線部と湾曲部とを交互に組み合わせた折り返し構造を有している。
【0025】
マッハツェンダー光導波路2の第1及び第2の導波路5A,5Bの第1~第3の直線部5S~5Sは基板10の長手方向(Y方向)に延びており、光入力ポート1iは基板10の長手方向の一端側、光出力ポート1oは基板10の長手方向の他端側に設けられている。本実施形態において、第1及び第2の導波路5A,5Bは、湾曲部5Cを偶数個備えていることが好ましい。すなわち、第1及び第2の導波路5A,5Bは2n+1個(ただしnは正の整数)の直線部5Sと2n個の湾曲部5Cを有することが好ましい。これにより、複数の湾曲部5Cにおける第1の導波路5Aの全長と第2の導波路5Bの全長を等しくすることができ、第1の導波路5Aと第2の導波路5Bとの対称性を高めることができる。
【0026】
以上の構成において、光入力ポート1iに入力された入力光Sinは、第1の直線部5Sの一端に入力され、第1の直線部5Sの一端から他端に向かって進行し、第1の湾曲部5Cで折り返して第2の直線部5Sの一端から他端に向かって第1の直線部5Sとは逆方向に進行し、さらに第2の湾曲部5Cで折り返して第3の直線部5Sの一端から他端に向かって第1の直線部5Sと同じ方向に進行する。変調光Soutは、光出力ポート1oから出力される。
【0027】
信号電極21(第1の制御電極)は、第1の導波路5Aの一部に沿って設けられており、平面視で第1の接地電極22と第2の接地電極23との間に位置している。第1の接地電極22(第2の制御電極)は、第2の導波路5Bの一部に沿って設けられている。信号電極21の一端はRF信号入力ポートであり、信号電極21の他端は終端抵抗24を介して第1及び第2の接地電極22、23にそれぞれ接続されている。これにより、信号電極21と第1及び第2の接地電極22、23はコプレーナ型進行波電極として機能する。
【0028】
信号電極21のRF信号入力ポートには電気信号(変調信号)が入力される。第1及び第2の導波路5A,5Bはニオブ酸リチウムに代表される電気光学材料からなるので、第1及び第2の導波路5A,5Bに電界を与えることによって第1及び第2の導波路5A,5Bの屈折率がそれぞれ+Δn、-Δnのように変化し、一対の光導波路間の位相差が変化する。この位相差の変化により変調された信号光が光出力ポート1oから出力される。第1及び第2の導波路5A,5Bをそれぞれ伝搬する2つの光の位相差が大きい場合には2つの光が打ち消しあってオフ状態となり、位相差が小さい場合には2つの光の強度が強められてオン状態となる。消光比は、光変調器1のオン状態のときの光強度とオフ状態のときの光強度との比であり、オン状態のときに明るくオフのときに暗ければ消光比は大きくなり、オン状態のときに暗くオフ状態のときに明るければ消光比は小さくなる。
【0029】
DCバイアスを印加するため、第1及び第2の導波路5A,5Bと平面視で重なる位置には一対のバイアス電極(不図示)が設けられてもよい。一対のバイアス電極の一端はDCバイアスの入力ポートである。一対のバイアス電極の形成領域は、信号電極21の形成領域よりもマッハツェンダー光導波路2の光入力ポート1i側に設けられてもよく、あるいは光出力ポート1o側に設けられてもよい。また、バイアス電極を省略し、DCバイアスを予め重畳させた変調信号をRF信号入力ポートに入力することも可能である。
【0030】
本実施形態によるマッハツェンダー光導波路2の特徴は、入力導波路3から分岐して互いに平行に設けられた第1及び第2の導波路5A,5Bの線幅がその長手方向の位置によって異なる点にある。
【0031】
第1及び第2の導波路5A,5Bの組み合わせからなる平行導波路5は、光入力ポート1i側から光出力ポート1o側に向かって順に、第1の線幅一定区間ZA1、第1の線幅遷移区間ZB1、第2の線幅一定区間ZA2、第2の線幅遷移区間ZB2、第1の線幅一定区間ZA1が設けられている。特に、第1の直線部5Sと第3の直線部5Sは、第1の線幅一定区間ZA1を構成しており、第2の直線部5Sは、第2の線幅一定区間ZA2を構成している。また第1の湾曲部5Cは、第1の線幅遷移区間ZB1を構成しており、第2の湾曲部5Cは、第2の線幅遷移区間ZB2を構成している。
【0032】
ここで、第1の線幅一定区間ZA1(第1の区間)は、第1及び第2の導波路5A,5Bの線幅が一定であると共に、第1の導波路5Aの線幅よりも第2の導波路5Bの線幅のほうが狭い区間である。また、第2の線幅一定区間ZA2(第2の区間)は、第1及び第2の導波路5A,5Bの線幅が一定であると共に、第2の導波路5Bの線幅よりも第1の導波路5Aの線幅のほうが狭い区間である。第1の線幅遷移区間ZB1は、第1の導波路5Aおよび第2の導波路5Bの線幅が変化する区間である。また、第2の線幅遷移区間ZB2は、第1の導波路5Aおよび第2の導波路5Bの線幅が変化する区間である。なお線幅一定区間は線幅が完全に一定である必要はなく、線幅遷移区間と比較し線幅の変化が微小である場合を含む。
【0033】
第1の線幅一定区間ZA1における第1の導波路5Aの線幅Wa1,Wa3は、第2の導波路5Bとの関係において線幅が相対的に広くなっていればよく(Wa1<Wb1、Wa3<Wb3)、第2の線幅一定区間ZA2における第1の導波路5Aの線幅Wa2との関係において相対的に広くなっている必要はない。すなわち、第1の導波路5Aの第1の線幅一定区間ZA1における線幅Wa1と第2の線幅一定区間ZA2における線幅Wa2との間にWa1<Wa2の関係が成立していても構わない。このような関係は、第2の導波路5Bにおいても当てはまる。
【0034】
第1の線幅一定区間ZA1の全長(L+L)は、第2の線幅一定区間ZA2の全長(L)と等しいことが好ましい。すなわち、第1の導波路5Aにおいて第2の導波路5Bよりも線幅が相対的に広い部分の長さ(L+L)と線幅が相対的に狭い部分の長さ(L)は等しく、第2の導波路5Bにおいて第1の導波路5Aよりも線幅が相対的に広い部分の長さ(L)と線幅が相対的に狭い部分の長さ(L+L)は等しいことが好ましい。さらに、第1及び第2の線幅遷移区間ZB1,ZB2における第1の導波路5Aの全長と第2の導波路5Bの全長も等しいことが好ましい。ただし、光変調器に求められる消光比のレベルによっては、第1の線幅一定区間ZA1と第2の線幅一定区間ZA2の長さが完全に同一である必要はなく、多少異なっていてもよい。
【0035】
図3(a)及び(b)は、一対の光導波路の非対称性の改善について説明するための模式図である。
【0036】
基板10上の導波層11をリッジ状に加工してY方向に延びる互いに平行な複数本の直線導波路を形成する場合、製造プロセス要因により直線導波路の線幅にばらつきが生じ、例えば、図3(a)に示すように、Y方向に延びる6本の直線導波路SL~SLのうち、X方向の一端側(原点P)に最も近い直線導波路SLの線幅WSL1が最も広く、X方向の一端側から遠ざかるほど線幅が狭くなる場合がある。すなわち、6本の直線導波路SL~SLの線幅WSL1~WSL6は、WSL1>WSL2>WSL3>WSL4>WSL5>WSL6となる。この場合、これらの直線導波路から選ばれたX方向に隣り合う2本の直線導波路の線幅は常に異なるため、両者の実効屈折率も異なり、これにより光変調素子の消光比が悪化する。
【0037】
しかし、図3(b)に示すように、直線導波路SLの一端e11と直線導波路SLの一端e14とを曲がり導波路CLにより接続し、直線導波路SLの一端e12と直線導波路SLの一端e13とを曲がり導波路CLにより接続し、直線導波路SLの他端e23と直線導波路SLの他端e26とを曲がり導波路CLにより接続し、直線導波路SLの他端e24と直線導波路SLの他端e25とを曲がり導波路CLにより接続した場合には、一本の光導波路上に線幅が相対的に広い区間と狭い区間とを混在させることができる。そして図3に示すように、第1及び第2の導波路5A,5Bの各々において相手方の導波路よりも線幅が相対的に広い区間の全長と線幅が相対的に狭い区間の全長を実質的に等しくすることにより、第1及び第2の導波路5A,5Bの非対称性を相殺することができる。したがって、一対の光導波路間の実効屈折率を揃えることができ、これにより光変調器1の消光比を改善することができる。
【0038】
図4(a)乃至(c)は、図1及び図2に示した光変調器1の略断面図であって、(a)は図1及び図2のXa-Xa線に沿った断面図、(b)は図1及び図2のXb-Xb線に沿った断面図、(c)は図1及び図2のXc-Xc線に沿った断面図である。
【0039】
図4(a)乃至(c)に示すように、本実施形態による光変調器1は、基板10、導波層11、保護層12、バッファ層13、絶縁層14及び電極層15がこの順で積層された多層構造を有している。
【0040】
基板10は例えばサファイア基板であり、基板10の表面にはニオブ酸リチウム膜からなる導波層11が形成されている。導波層11はリッジ部11rからなる第1及び第2の導波路5A,5B(リッジ導波路)を有している。第1及び第2の導波路5A,5Bの幅は例えば1μm前後とすることができる。導波層11としては電気光学材料であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム(LiNbO)からなることが好ましい。ニオブ酸リチウムは大きな電気光学定数を有し、光変調器等の光学デバイスの構成材料として好適だからである。なお、リッジ部11rの幅がZ軸方向において均一でない場合には、その幅の平均値を線幅とする。
【0041】
保護層12は第1及び第2の導波路5A,5Bと平面視で重ならない領域に形成されている。保護層12は、導波層11の上面のうちリッジ部11rが形成されていない領域の全面を覆っており、リッジ部11rの側面も保護層12に覆われているので、リッジ部11rの側面の荒れによって生じる散乱損失を防ぐことができる。保護層12の厚さは導波層11のリッジ部11rの高さとほぼ同じである。保護層12の材料は特に限定されないが、例えば酸化シリコン(SiO)を用いることができる。
【0042】
バッファ層13は、第1及び第2の導波路5A,5B中を伝搬する光が信号電極21や第1の接地電極22に吸収されることを防ぐため、第1及び第2の導波路5A,5Bを構成するリッジ部11rの上面を覆うように形成されている。バッファ層13は、導波層11より屈折率が低く、透明性が高い材料からなることが好ましい。リッジ部11rの直上のバッファ層13の厚さは0.3μm以上3μm以下であることが好ましい。バッファ層13の膜厚は、電極の光吸収を低減するためには厚いほど良く、第1及び第2の導波路5A,5Bに高い電界を印加するためには薄いほど良い。電極の光吸収と電極の印加電圧はトレードオフの関係にあるため、両者のバランスを考慮して、誘電率が高く且つ屈折率が低い材料を選定することが重要である。
【0043】
本実施形態において、バッファ層13は、第1及び第2の導波路5A,5Bの上面のみならず保護層12の上面を含む下地面の全面を覆っているが、第1及び第2の導波路5A,5Bの上面付近だけを選択的に覆うようにパターニングされたものであってもよい。また保護層12を省略し、導波層11の上面全体にバッファ層13を直接形成してもよい。
【0044】
絶縁層14は、進行波電極の下面に段差を形成するために設けられている。絶縁層14の第1及び第2の導波路5A,5Bと重なる領域には開口(スリット)が形成されており、バッファ層13の上面を露出させている。この開口内に電極層15の一部が埋め込まれることにより、信号電極21及び第1の接地電極22の下面に段差が形成される。絶縁層14の厚さは1μm以上であることが好ましい。絶縁層14の厚さが1μm以上であれば、信号電極21及び第1の接地電極22の下面に段差を設けたことによる効果を得ることができる。
【0045】
電極層15には、信号電極21、第1の接地電極22及び第2の接地電極23が設けられている。信号電極21(第1の制御電極)は、第1の導波路5A内を進行する光を変調するために第1の導波路5Aに対応するリッジ部11rに重ねて設けられ、バッファ層13を介して第1の導波路5Aと対向している。第1の接地電極22(第2の制御電極)は、第2の導波路5B内を進行する光を変調するために第2の導波路5Bに対応するリッジ部11rに重ねて設けられ、バッファ層13を介して第2の導波路5Bと対向している。第2の接地電極23は、信号電極21を挟んで第1の接地電極22と反対側に設けられている。
【0046】
信号電極21は二層構造であり、電極層15に形成された上層部21aと、絶縁層14を貫通する開口内に埋め込まれた下層部21bとを有している。信号電極21の下層部21bは、信号電極21の上層部21aの第1の接地電極22寄りの端部に設けられている。そのため、信号電極21の下層部21bの下面は、上層部21aの下面よりも第1の接地電極22寄りに設けられている。このような構成により、信号電極21の下層部21bの下面は、第1の導波路5Aの上方においてバッファ層13の上面に接しており、バッファ層13を介して第1の導波路5Aを覆っている。信号電極21の上層部21aの下面は、下層部21bの下面よりも上方に位置しており、バッファ層13には接していない。
【0047】
第1の接地電極22も二層構造であり、電極層15に形成された上層部22aと、絶縁層14を貫通する開口内に埋め込まれた下層部22bとを有している。第1の接地電極22の下層部22bは、第1の接地電極22の上層部22aの信号電極21寄りの端部に設けられている。そのため、第1の接地電極22の上層部22aの下面は、下層部22bの下面よりも信号電極21寄りに設けられている。このような構成により、第1の接地電極22の下層部22bの下面は、第2の導波路5Bの上方においてバッファ層13の上面に接しており、バッファ層13を介して第2の導波路5Bを覆っている。第1の接地電極22の上層部22aの下面は、下層部22bの下面よりも上方に位置しており、バッファ層13には接していない。
【0048】
第2の接地電極23は、信号電極21を挟んで第1の接地電極22と反対側に設けられている。第2の接地電極23は電極層15に設けられた導体のみからなる単層構造であるが、信号電極21や第1の接地電極22と同様に二層構造としてもよい。
【0049】
上記のように、製造プロセス要因により一対の光導波路の線幅に非対称性が生じ、これにより消光比が悪化する場合がある。しかし、第1の線幅一定区間ZA1においては図4(a)及び図4(c)に示すように第1の導波路5Aの線幅Wa1,Wa3を第2の導波路5Bの線幅Wb1,Wb3よりも広くし、逆に第2の線幅一定区間ZA2においては図4(b)に示すように第2の導波路5Bの線幅Wb2を第1の導波路5Aの線幅Wa2よりも広くし、第1の線幅一定区間ZA1の長さと第2の線幅一定区間ZA2の長さを実質的に同一にしているので、一対の導波路の線幅の対称性を向上させて消光比を改善することができる。
【0050】
次に、導波層11をニオブ酸リチウム膜とした場合の光変調器1の構成について詳しく説明する。
【0051】
基板10はニオブ酸リチウム膜より屈折率が低いものであれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル膜として形成できる基板が好ましく、サファイア単結晶基板もしくはシリコン単結晶基板が特に好ましい。単結晶基板の結晶方位は特に限定されない。ニオブ酸リチウム膜はさまざまな結晶方位の単結晶基板に対して、c軸配向のエピタキシャル膜として形成されやすいという性質を持っている。c軸配向のニオブ酸リチウム膜は3回対称の対称性を有しているので、下地の単結晶基板も同じ対称性を有していることが望ましく、サファイア単結晶基板の場合はc面、シリコン単結晶基板の場合は(111)面の基板が好ましい。
【0052】
ここで、エピタキシャル膜とは、下地の基板もしくは下地膜の結晶方位に対して、そろって配向している膜のことである。膜面内をX-Y面とし、膜厚方向をZ軸としたとき、結晶がX軸、Y軸及びZ軸方向にともにそろって配向しているものである。例えば、第1に2θ-θX線回折による配向位置でのピーク強度の確認と、第2に極点の確認を行うことで、エピタキシャル膜を証明できる。
【0053】
具体的には、第1に2θ-θX線回折による測定を行ったとき、目的とする面以外の全てのピーク強度が目的とする面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である必要がある。例えば、ニオブ酸リチウムのc軸配向エピタキシャル膜では、(00L)面以外のピーク強度が、(00L)面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である。(00L)は、(001)や(002)などの等価な面を総称する表示である。
【0054】
第2に、極点測定において、極点が見えることが必要である。前述の第1の配向位置でのピーク強度の確認の条件においては、一方向における配向性を示しているのみであり、前述の第1の条件を得たとしても、面内において結晶配向がそろっていない場合には、特定角度位置でX線の強度が高まることはなく、極点は見られない。LiNbOは三方晶系の結晶構造であるため、単結晶におけるLiNbO(014)の極点は3つとなる。ニオブ酸リチウム膜の場合、c軸を中心に180°回転させた結晶が対称的に結合した、いわゆる双晶の状態にてエピタキシャル成長することが知られている。この場合、3つの極点が対称的に2つ結合した状態になるため、極点は6つとなる。また、(100)面のシリコン単結晶基板上にニオブ酸リチウム膜を形成した場合は、基板が4回対称となっているため、4×3=12個の極点が観測される。なお、本発明では、双晶の状態にてエピタキシャル成長したニオブ酸リチウム膜もエピタキシャル膜に含める。
【0055】
ニオブ酸リチウム膜の組成はLixNbAyOzである。Aは、Li、Nb、O以外の元素を表している。xは0.5~1.2であり、好ましくは、0.9~1.05である。yは、0~0.5である。zは1.5~4であり、好ましくは2.5~3.5である。Aの元素としては、K、Na、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Zn、Sc、Ceなどがあり、2種類以上の組み合わせでも良い。
【0056】
ニオブ酸リチウム膜の膜厚は2μm以下であることが望ましい。膜厚が2μmよりも厚くなると、高品質な膜を形成することが困難になるからである。一方、ニオブ酸リチウム膜の膜厚が薄すぎる場合は、ニオブ酸リチウム膜における光の閉じ込めが弱くなり、基板10やバッファ層13に光が漏れることになる。また電界を印加したときの光導波路の実効屈折率の変化が小さくなるおそれがある。そのため、ニオブ酸リチウム膜は、使用する光の波長の1/10程度以上の膜厚が望ましい。
【0057】
電界印加領域におけるニオブ酸リチウム膜の膜厚は1μm以上であることが好ましく、1.4μm以上であることが特に好ましい。光の波長λが光通信システムで使用される1550nmである場合において、ニオブ酸リチウム膜の膜厚を1μm未満にすると半波長電圧Vπが急激に高くなり、半波長電圧Vπを実用的な電圧値である3V以下にすることが難しいからである。これは、膜厚が薄いと、ニオブ酸リチウム膜への光の閉じ込めが弱くなり、電気光学効果が実効的に小さくなるためである。一方、膜厚が1.5μm以上であれば、光の閉じ込めが十分に強くなるので、それ以上膜厚を厚くしてもVπはほとんど変化しない。以上のように、ニオブ酸リチウム膜の膜厚を1μm以上とした場合には、駆動電圧や伝搬損失を低減することができる。
【0058】
ニオブ酸リチウム膜の形成方法としては、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの膜形成方法を利用することが望ましい。ニオブ酸リチウムのc軸が基板10の主面に垂直に配向されており、c軸に平行に電界を印加することで、電界に比例して光学屈折率が変化する。単結晶基板としてサファイアを用いる場合は、サファイア単結晶基板上に直接、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長させることができる。単結晶基板としてシリコンを用いる場合は、クラッド層(図示せず)を介して、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長により形成する。クラッド層としては、ニオブ酸リチウム膜より屈折率が低く、エピタキシャル成長に適したものを用いる。例えば、クラッド層(図示せず)としてYを用いると、高品質のニオブ酸リチウム膜を形成できる。
【0059】
なお、ニオブ酸リチウム膜の形成方法として、ニオブ酸リチウム単結晶基板を薄く研磨する方法やスライスする方法も知られている。この方法は、単結晶と同じ特性が得られるという利点があり、本発明に適用することが可能である。
【0060】
以上説明したように、本実施形態による光変調器1は、一本の入力導波路3から分岐して互いに平行に設けられた第1及び第2の導波路5A,5Bを含むマッハツェンダー光導波路2と、第1及び第2の導波路5A,5Bに電界を印加する進行波電極とを備え、第1及び第2の導波路5A,5Bの配線区間は、第1の導波路5Aの線幅よりも第2の導波路5Bの線幅のほうが広い第1の線幅一定区間ZA1と、第2の導波路5Bの線幅よりも第1の導波路5Aの線幅のほうが広い第2の線幅一定区間ZA2と、第1の線幅一定区間ZA1と第2の線幅一定区間ZA2との間に設けられ、導波路の線幅が変化する線幅遷移区間ZB1,ZB2とを有し、第1の線幅一定区間ZA1の長さと第2の線幅一定区間ZA2の長さが等しいので、製造プロセス要因による一対の光導波路の非対称性を相殺することができる。したがって、入出力光の動作波長が消光状態のときに動作波長以外のバックグランド光が導光状態となることによる消光比の悪化を改善することができる。
【0061】
図5(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態による光変調器の構成を示す略平面図であって、(a)は光導波路のみを図示したものであり、(b)は進行波電極を含めた光変調器の全体を図示したものである。また、図6(a)及び(b)は、図5(a)及び(b)に示した光変調器1の略断面図であって、(a)は図5(a)及び(b)のXa-Xa線に沿った断面図、(b)は図5(a)及び(b)のXb-Xb線に沿った断面図である。
【0062】
図5(a)及び(b)に示すように、本実施形態による光変調器1の特徴は、マッハツェンダー光導波路2の第1及び第2の導波路5A,5Bが直線部のみで構成されている点にある。また図6(a)及び(b)に示すように、光変調器1は、基板10、導波層11、保護層12、バッファ層13、絶縁層14及び電極層15がこの順で積層された多層構造を有しており、この構造は第1の実施の形態と同様である。
【0063】
本実施形態において、第1の線幅一定区間ZA1は、第1及び第2の導波路5A,5Bの線幅が一定であると共に、第1の導波路5Aの線幅よりも第2の導波路5Bの線幅のほうが狭い区間である。また、第2の線幅一定区間ZA2は、第1及び第2の導波路5A,5Bの線幅が一定であると共に、第2の導波路5Bの線幅よりも第1の導波路5Aの線幅のほうが狭い区間である。第1の線幅遷移区間ZB1は、第1の導波路5Aおよび第2の導波路5Bの線幅が変化する区間である。また、第2の線幅遷移区間ZB2は、第1の導波路5Aおよび第2の導波路5Bの線幅が変化する区間である。
【0064】
第1の実施の形態と同様に、第1の線幅一定区間ZA1の全長(L+L)は、第2の線幅一定区間ZA2の全長(L)と等しいことが好ましい。すなわち、第1の導波路5Aにおいて第2の導波路5Bよりも線幅が相対的に広い部分の長さ(L+L)と線幅が相対的に狭い部分の長さ(L)は等しく、第2の導波路5Bにおいて第1の導波路5Aよりも線幅が相対的に広い部分の長さ(L)と線幅が相対的に狭い部分の長さ(L+L)は等しいことが好ましい。さらに、第1及び第2の線幅遷移区間ZB1,ZB2における第1の導波路5Aの全長と第2の導波路5Bの全長も等しいことが好ましい。ただし、光変調器に求められる消光比のレベルによっては、第1の線幅一定区間ZA1と第2の線幅一定区間ZA2の長さが完全に同一である必要はなく、多少異なっていてもよい。本実施形態によれば、第1の導波路5Aと第2の導波路5Bとの対称性を高めて消光比を改善することができる。
【0065】
従来の光変調器においては、マッハツェンダー光導波路2を構成する第1及び第2の導波路5A,5Bのどちらか一方の線幅がその全長にわたって他方の線幅よりも僅かに広くなる場合があり、光導波路の線幅の長手方向に不均一な分布(非対称性)に起因して消光比が悪化していた。しかし、本実施形態においては、第1及び第2の導波路5A,5Bの各々において相手方の導波路よりも線幅が相対的に広い部分の長さと線幅が相対的に狭い部分の長さを等しくしているので、第1及び第2の導波路5A,5B間に対称性を高めて消光比を改善することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0067】
例えば、上記実施形態においてはシングル駆動型の光変調器を例に挙げたが、いわゆるデュアル駆動型の光変調器であってもよく、電極構造は特に限定されない。また上記実施形態においては基板10上に単一のマッハツェンダー光変調素子を設けたシングルチャネル構造であるが、複数個のマッハツェンダー光変調素子を並べたマルチチャンネルアレイ構造を有していてもよい。
【実施例
【0068】
マッハツェンダー光導波路2を構成する第1及び第2の導波路5A,5Bの第1の線幅一定区間ZA1と第2の線幅一定区間ZA2の長さの違いが消光比に与える影響を求めた。
【0069】
第1の線幅一定区間ZA1の長さがLA1のときの光路長差Δnd=5000nm、第2の線幅一定区間ZA2の長さがLA2のときの光路長差Δnd=5000nm×LA2/LA1とするとき、マッハツェンダー光導波路全体の光路長差Δnd12=Δnd-Δnd及び動作波長1550nmにおける消光比(Ext ratio)とLA2/LA1
との関係を図7のグラフに示す。
【0070】
図7から、光変調器の消光比の仕様が28dB以上である場合、LA2/LA1>0.5において仕様を満足することが分かる。すなわち、線幅一定区間における光路長差Δnd=5000nmのとき、LA2/LA1>0.5であれば所望の消光比が得られ、LA1=LA2でなくてもよいことが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1 光変調器
1i 光入力ポート
1o 光出力ポート
2 マッハツェンダー光導波路
3 入力導波路
4 分波部
5 平行導波路
5A 第1の導波路
5B 第2の導波路
5C 第1の湾曲部
5C 第2の湾曲部
5S 第1の直線部
5S 第2の直線部
5S 第3の直線部
6 合波部
7 出力導波路
10 基板
11 導波層
11r リッジ部
12 保護層
13 バッファ層
14 絶縁層
15 電極層
21 信号電極(第1の制御電極)
21a 信号電極の上層部
21b 信号電極の下層部
22 第1の接地電極(第2の制御電極)
22a 第1の接地電極の上層部
22b 第1の接地電極の下層部
23 第2の接地電極
24 終端抵抗
CL~CL 曲がり導波路
SL~SL 直線導波路
in 入力光
out 変調光(出力光)
A1 第1の線幅一定区間(第1の区間)
A2 第2の線幅一定区間(第2の区間)
B1 第1の線幅遷移区間
B2 第2の線幅遷移区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7