(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】正転及び逆転モードで作動可能な遊星歯車装置を備える伝動システム
(51)【国際特許分類】
F16H 3/14 20060101AFI20240902BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20240902BHJP
F16H 3/44 20060101ALI20240902BHJP
F16H 3/02 20060101ALI20240902BHJP
F16H 3/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F16H3/14
F16H1/28
F16H3/44
F16H3/02 B
F16H3/04
(21)【出願番号】P 2021577281
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 US2020036751
(87)【国際公開番号】W WO2020263553
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506038235
【氏名又は名称】ホートン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘネシー, デビッド, アール.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, トーマス
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-265019(JP,A)
【文献】特開2002-021874(JP,A)
【文献】特開2000-055150(JP,A)
【文献】特開2015-009679(JP,A)
【文献】米国特許第02870655(US,A)
【文献】特開2005-083488(JP,A)
【文献】特開2011-089582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/14
F16H 1/28
F16H 3/44
F16H 3/02
F16H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転又は逆転作動モードのいずれかでトルクを伝達するための伝動システムであって、
回転軸を中心として回転可能なリングギア;
複数の遊星ギア;
キャリアであって、前記遊星ギアがシングルピニオン構成の前記キャリアに回転可能に接続された、キャリア;及び
前記回転軸を中心として回転可能な太陽歯車であって、前記遊星ギアがそれぞれ前記リングギア及び前記太陽歯車の両方と噛み合う、太陽歯車;
を含む遊星歯車装置と、
前記リングギアと前記キャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチであって、前記正転クラッチの係合が前記リングギアと前記キャリアを回転結合する、正転クラッチと、
前記キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキであって、前記逆転ブレーキの係合が前記回転固定位置に対する前記キャリアの制動を引き起こす、逆転ブレーキと、
前記伝動システムを正転作動モードと逆転作動モードとの間で選択的に駆動可能な制御サブシステムであって、前記制御サブシステムの駆動ストロークは、共通の制御信号に基づいて前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキの両方を駆動するように構成されており、
前記共通の制御信号は流体制御信号であり、前記正転作動モードにおいて、前記正転クラッチは係合し、前記逆転ブレーキは係合解除され、前記リングギア及び前記太陽歯車は前記回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能であり、前記逆転作動モードにおいて、前記正転クラッチは係合解除され、前記逆転ブレーキは係合し、前記リングギア及び前記太陽歯車は前記回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である、制御サブシステムと、
を備え
、
前記制御サブシステムは、
圧力チャンバーと、
少なくとも部分的に前記圧力チャンバーと共に位置決めされたピストンと、
スプリングであって、前記スプリングは、前記圧力チャンバー内のデフォルト位置へ前記ピストンをバネ付勢し、前記流体制御信号は、前記スプリングの前記バネ付勢に抗して前記ピストンを移動させるために前記圧力チャンバーを選択的に加圧する、スプリングと、
前記ピストン、前記正転クラッチ及び前記キャリアの間に動作可能に接続された回転/並進カップリングと、
前記回転/並進カップリングと前記ピストンとの間に動作可能に係合されたスラストベアリングと、
を備える伝動システム。
【請求項2】
前記制御サブシステムは、前記共通の制御信号によって制御される単一のアクチュエータを含む、請求項1に記載の伝動システム。
【請求項3】
前記制御サブシステムはスプリングを含み、前記制御サブシステムは前記スプリングによってデフォルトで前記正転作動モードにバネ付勢されている、請求項1に記載の伝動システム。
【請求項4】
前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキは、前記回転軸に対して同心に、かつ、前記軸方向において少なくとも部分的に互いに重なり合って配置されている、請求項1に記載の伝動システム。
【請求項5】
前記回転/並進カップリングは、押し込みピンアセンブリ及びピストンプレートから成る群から選択される、請求項
1に記載の伝動システム。
【請求項6】
前記バネ付勢の力は、前記ピストンを、軸方向の圧縮係合力が前記キャリアを介して前記正転クラッチに伝達され、同時に前記逆転ブレーキを圧縮されておらず係合解除されたままの状態にする第1の軸方向位置に付勢し、前記圧力チャンバーの加圧は、前記ピストンを、前記正転クラッチを圧縮されておらず係合解除されたままの状態にし、同時に軸方向の圧縮係合力を前記逆転ブレーキに伝達する第2の軸方向位置に付勢する、請求項
1に記載の伝動システム。
【請求項7】
前記制御サブシステムの前記駆動ストロークの範囲内で、前記ピストンは、同時に前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキの両方を圧縮されておらず係合解除されたままの状態にする中間の軸方向位置にある、請求項
1に記載の伝動システム。
【請求項8】
前記制御サブシステムは正転クラッチピストン及び逆転ブレーキピストンを含み、前記正転クラッチピストン及び前記逆転ブレーキピストンは、それぞれ、前記流体制御信号が通過し得る共通の圧力通路と流体的に接続されている、請求項
1に記載の伝動システム。
【請求項9】
前記正転クラッチは多板湿式摩擦クラッチを備え、前記逆転ブレーキは多板湿式摩擦クラッチを備える、請求項1に記載の伝動システム。
【請求項10】
前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキは、同心に、かつ、軸方向において少なくとも部分的に重なり合って配置されている、請求項1に記載の伝動システム。
【請求項11】
内燃エンジンと、
請求項1に記載の伝動システムと、
前記内燃エンジンと前記伝動システムのプーリとの間に係合されたベルトと、
前記太陽歯車に回転的に固定されたファンと、
を備える冷却システム。
【請求項12】
正転又は逆転作動モードのいずれかでトルクを伝達するための伝動システムであって、
回転軸を中心として回転可能なリングギア;
複数の遊星ギア;
キャリアであって、前記遊星ギアがシングルピニオン構成の前記キャリアに回転可能に接続された、キャリア;及び
前記回転軸を中心として回転可能な太陽歯車であって、前記遊星ギアがそれぞれ前記リングギア及び前記太陽歯車の両方と噛み合う、太陽歯車;
を含む遊星歯車装置と、
前記リングギアと前記キャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチであって、前記正転クラッチの係合が前記リングギアと前記キャリアを回転結合する、正転クラッチと、
前記キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキであって、前記逆転ブレーキの係合が前記回転固定位置に対する前記キャリアの制動を引き起こす、逆転ブレーキと、
前記伝動システムを正転作動モードと逆転作動モードとの間で選択的に駆動可能な制御サブシステムであって、前記制御サブシステムの駆動ストロークは、共通の制御信号に基づいて前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキの両方を駆動するように構成されており、前記正転作動モードにおいて、前記正転クラッチは係合し、前記逆転ブレーキは係合解除され、前記リングギア及び前記太陽歯車は前記回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能であり、前記逆転作動モードにおいて、前記正転クラッチは係合解除され、前記逆転ブレーキは係合し、前記リングギア及び前記太陽歯車は前記回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である、制御サブシステムと、
回転的に静止したシャフトを有するジャーナルブラケットであって、前記リングギア及び前記太陽歯車がそれぞれ前記シャフト上に回転可能に支持されている、ジャーナルブラケットと、
前記太陽歯車に回転的に固定されたマウントであって、前記マウントは外部に露出している、マウントと、
を備え
る伝動システム。
【請求項13】
前記正転クラッチ、前記逆転ブレーキ及び前記制御サブシステムは、全て、軸方向において前記遊星歯車装置の同じ側に位置している、請求項1に記載の伝動システム。
【請求項14】
リングギア、シングルピニオン遊星ギア、キャリア及び太陽歯車を含む遊星歯車装置を用いて、正回転方向又は逆回転方向のいずれかで、入力と出力との間でトルクを選択的に伝達する方法であって、前記方法は、
前記リングギアで入力トルクを受け入れるステップと、
係合された時に、前記リングギアと前記キャリアを回転結合させ、同じ方向かつ同じ又は実質的に同じ速度で回転させる正転クラッチを介して、前記リングギアと前記キャリアとの間でトルクを伝達するステップと、
前記正回転方向で、前記遊星歯車装置を介して前記太陽歯車に出力トルクを送達するステップと、
制御サブシステムで共通の制御信号を受信するステップ
であって、前記共通の制御信号は流体制御信号であり、前記制御サブシステムは1つ以上のスプリングによってデフォルト位置へバネ付勢されたピストンアクチュエータを含む、ステップと、
前記共通の制御信号の受信に反応して前記制御サブシステムで駆動ストロークを生成するステップであって、前記駆動ストロークは同時に前記正転クラッチを係合解除させると共
に逆転ブレーキを係合させる、ステップと、
前記駆動ストロークを生成するために、前記流体制御信号によって生じた加圧に基づいて前記ピストンを並進移動させるステップと、
前記駆動ストロークを生成するために前記流体制御信号による加圧に基づいて前記ピストンが並進移動された時、前記正転クラッチを係合解除させ且つ前記逆転ブレーキを係合させるために、前記ピストンを用いて軸方向に力を伝達するステップであって、前記ピストンを用いて軸方向に伝達された前記力は、前記キャリアの一部を通じて伝達される、ステップと、
前記逆転ブレーキが係合した時に前記キャリアを回転に対して制動するステップと、
前記逆転ブレーキが係合し前記正転クラッチが係合解除された時に、前記逆回転方向で、前記遊星歯車装置を介して前記太陽歯車に前記出力トルクを送達するステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記正転クラッチが係合し前記逆転ブレーキが係合解除されるデフォルト位置へ、前記制御サブシステムをバネ付勢するステップを更に備える、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記流体制御信号による加圧中、前記駆動ストロークの第1の部分において、前記正転クラッチは係合解除される一方、前記逆転ブレーキは係合解除されたままであり、前記駆動ストロークの後続の第2の部分において、前記逆転ブレーキは係合する一方、前記正転クラッチは係合解除されたままである、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキは、前記回転軸に対して同心に、かつ、前記正転クラッチと前記逆転ブレーキが径方向に互いに積み重ねられた状態で作動するよう、前記軸方向において少なくとも部分的に重なり合って配置されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
正転及び逆転作動モードでトルクを最終駆動部へ伝達するための伝動システムであって、
回転軸を中心として回転可能なリングギアであって、前記リングギアは前記伝動システムへのトルク入力として構成されている、リングギア、
複数の遊星ギア、
キャリアであって、前記遊星ギアがシングルピニオン構成の前記キャリアに回転可能に接続された、キャリア、及び
前記回転軸を中心として回転可能な太陽歯車であって、前記太陽歯車は前記伝動システムのトルク出力として構成されており、前記遊星ギアはそれぞれ前記リングギア及び前記太陽歯車の両方と噛み合う、太陽歯車
を含む遊星歯車装置と、
回転的静止したャフトを有するジャーナルブラケットであって、前記リングギア及び前記太陽歯車はそれぞれ前記シャフト上に回転可能に支持されている、ジャーナルブラケットと、
前記太陽歯車に回転的に固定されたマウントであって、前記マウントは外部に露出している、マウントと、
前記リングギアと前記キャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチであって、前記正転クラッチの係合が前記リングギアと前記キャリアを回転結合し、前記正転クラッチは湿式摩擦クラッチを備える、正転クラッチと、
前記キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキであって、前記逆転ブレーキの係合によって前記回転固定位置に対する前記キャリアの制動が生じ、前記逆転ブレーキは湿式摩擦クラッチを備え、前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキは、前記回転軸に対して同心に且つ少なくとも部分的に軸方向において重なり合って配置されている、逆転ブレーキと、
前記リングギア及び前記太陽歯車が前記回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能である正転作動モードと、前記リングギア及び前記太陽歯車が前記回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である逆転作動モードとの間で、前記伝動システムを切り替えるために、選択的に駆動可能な制御サブシステムであって、
圧力チャンバー;
少なくとも部分的に前記圧力チャンバーと共に位置決めされると共に、前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキに動作可能に接続されて両者の間で軸方向の力を選択的に伝達するピストン;及び
前記圧力チャンバー内のデフォルト軸方向位置へ前記ピストンをバネ付勢するスプリングであって、共通の流体制御信号が、前記ピストンを前記スプリングのバネ付勢に抗して駆動軸方向位置へ並進移動させるために、前記圧力チャンバーを選択的に加圧し、前記正転作動モードにおいて、前記ピストンは前記デフォルト軸方向位置にあり、前記正転クラッチは係合し、前記逆転ブレーキは係合解除されており、前記逆転作動モードにおいて、前記ピストンは前記駆動軸方向位置にあり、前記正転クラッチは係合解除され、前記逆転ブレーキは係合している、スプリング
を備える制御サブシステムと、
を備える伝動システム。
【請求項19】
前記正転クラッチ、前記逆転ブレーキ及び前記制御サブシステムは、全て、軸方向において前記リングギアの同じ側に位置している、請求項
18に記載の伝動システム。
【請求項20】
前記正転クラッチ、前記逆転ブレーキ及び前記制御サブシステムは、全て、軸方向において前記遊星歯車装置の同じ側に位置している、請求項
19に記載の伝動システム。
【請求項21】
前記デフォルト軸方向位置と前記駆動軸方向位置との間の中間軸方向位置への前記ピストンの軸方向並進移動は、前記正転クラッチ及び前記逆転ブレーキの両方を、圧縮されておらず係合解除されたままの状態にする、請求項
18に記載の伝動システム。
【請求項22】
内燃エンジンと、
請求項
18に記載の伝動システムと、
前記内燃エンジンと前記リングギアに回転的に固定されたプーリとの間に係合されたベルトと、
を備え、
前記最終駆動部は、前記太陽歯車に回転的に固定されたファンを備える、冷却システム。
【請求項23】
前記制御サブシステムは更に、
径方向に延びるスプリングブロックであって、前記回転/並進カップリングは、前記スプリングブロックと接触する押し込みピンサブアセンブリを備え、前記押し込みピンサブアセンブリの少なくとも一部は、前記キャリアの少なくとも一部を通過すると共に、前記キャリアに対して軸方向に並進移動可能であり、前記ピストンと前記スプリングは、前記スプリングブロックの反対側に位置する、スプリングブロック
を含む、請求項
1に記載の伝動システム。
【請求項24】
前記制御サブシステムは更に、
径方向に延びるスポークを有するピストンプレートであって、前記スポークは、前記ピストンプレートが前記キャリアに対して軸方向に並進移動可能であるように、前記キャリアの少なくとも一部を通過し、前記ピストンと前記スプリングは、前記ピストンプレートの反対側に位置する、ピストンプレートと、
前記ピストンプレートと前記ピストンとの間に動作可能に配置されたスラストベアリングと、
を含む、請求項
1に記載の伝動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正回転方向及び逆回転方向にトルクを伝達することが可能な機械式伝動システム、並びに、そのようなシステムの製作及び使用方法に関する。本発明の開示された実施形態は、特に遊星歯車装置を利用する機械式伝動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業、建設、鉱業及び類似の設備の多くの用途は、設備の冷却システムが周囲からのデブリで閉塞されるような状態での運転を伴う。一例は、森林収穫機からの木片である。冷却システムは、熱交換器(例えば、ラジエータ)、単純な空気流グリル、及び/又は、他の典型的な冷却システム構成要素を含むことができる。十分なデブリが蓄積されると、そのデブリによって冷却システムの効果がなくなり、エンジンの過熱につながる可能性がある。
【0003】
設備の冷却ファンは、一般に、プーリ駆動ハブ及び関連するファンを回転させるためにエンジンの機械的な回転動力を使用する、プーリ駆動ハブに取り付けられる。これは、エンジン冷却ファンを回転させる簡単で堅牢な方法である。近年、ファンの回転速度を管理するために、これらの用途においてもクラッチ機構の使用が一般的になってきており、これにより、ファンを回転させるために必要な動力、及び、ファンによって生じる騒音の、大幅な全体的低減がもたらされる。(少なくとも一部の作動条件下の)ファンのより低い作動速度によって、冷却システムにより取り込まれるデブリの量が減少する可能性がある。しかしながら、かなりの量のデブリが冷却システム内へ引き込まれ、閉塞を引き起こす可能性のある多くの用途が、依然として存在する。
【0004】
冷却システムのデブリ閉塞の問題に対するいくつかの解決策が、知られており及び/又は市場に存在する。最も一般的な商用解決策は、ファン駆動空気流の流れ方向を逆転させるためにファンの回転を(油圧で)逆転させるための油圧ファン駆動装置の使用、又は、ファンを同一の方向に回転させ続けながらファン駆動空気流の逆転を達成するための逆転ピッチファンの使用を含む。どちらの場合も、システムは、大きく、複雑で、扱いにくくなる可能性がある。ファンの回転方向を逆転させるためのシステムの他の例が特許文献1に開示されているが、これも大きくて扱いにくく、ファンの両側にベルトを必要とするため、取り付け又はメンテナンスのためのベルトアクセスを難しくしている。代替的なアプローチは、同一出願人に譲受された特許文献2~4に開示されたタイプのシステムのような、デブリを除去するための別個のブロワ流を提供するために、冷却ファンとは別個のブロワシステムを設けることである。
【0005】
連続可変かつ自動の伝動システムは、自動車用途で知られているが、そのような伝動装置は、しばしば比較的大きく複雑である。そのようなシステムは車両の主なパワートレイン用途に適しているが、大きくかつ重すぎる可能性があり、冷却システム用途にとって実用的であるには複雑すぎる制御装置を有する。例えば、冷却システムの用途には、冷却システム構成要素のために利用可能なエンジンルーム空間が限られている可能性があり、車両の車台取り付け位置に容易に適合し得るパワートレイン伝動装置は、エンジンルーム内に適合しない可能性がある。更に、複雑な連続可変かつ自動の伝動システムは、複数の制御信号によって制御される複雑な制御システムを必要とする可能性があり、これは、不必要に複雑な制御ハードウェアの必要性、並びに、故障及び/又は制御の誤動作のリスクの増大のために、冷却システム用途にとって望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2017/0342988号明細書
【文献】米国特許第9,334,788号明細書
【文献】米国特許第9,568,260号明細書
【文献】米国特許第10,082,350号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
比較的コンパクトで、質量が比較的小さく、要求の厳しい工業的及び/又は環境的条件で使用される場合にも信頼性が高く、かつ、正転及び逆転作動の間での切り替えのために比較的簡単な制御を可能とする伝動パッケージを提供しつつ、正回転方向又は逆回転方向のいずれかにおいて選択的にトルクを伝達することが可能な機械式伝動装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、正転又は逆転作動モードのいずれかでトルクを伝達するための伝動システムは、回転軸を中心として回転可能なリングギアと、複数の遊星ギアと、遊星ギアがシングルピニオン構成のキャリアに回転可能に接続された、キャリアと、遊星ギアがそれぞれリングギア及び太陽歯車の両方と噛み合う、回転軸を中心として回転可能な太陽歯車と、を含む遊星歯車装置と、正転クラッチの係合がリングギアとキャリアを回転結合するように、リングギアとキャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチと、逆転ブレーキの係合が回転固定位置に対するキャリアの制動を引き起こすように、キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキと、伝動システムを正転作動モードと逆転作動モードとの間で選択的に駆動可能な制御サブシステムと、を含む。正転作動モードにおいて、正転クラッチは係合し、逆転ブレーキは係合解除され、リングギア及び太陽歯車は回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能である。逆転作動モードにおいて、正転クラッチは係合解除され、逆転ブレーキは係合し、リングギア及び太陽歯車は回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である。制御サブシステム駆動ストロークは、共通の制御信号に基づいて、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方を作動させるように構成されている。
【0009】
他の態様において、冷却システムは、内燃エンジンと、選択的に正転及び逆転作動モードで作動することができる上述したもののような伝動システムと、内燃エンジンと伝動システムのプーリとの間に係合されたベルトと、太陽歯車に回転的に固定されたファンと、を含むことができる。
【0010】
他の態様において、伝動システムを製作する方法及びそのような伝動システムを含む冷却システムを製作する方法は、上述した構成要素の一部又は全てを提供することを含むことができる。
【0011】
他の態様において、リングギア、シングルピニオン遊星ギア、キャリア及び太陽歯車を含む遊星歯車装置を用いて、正回転方向又は逆回転方向のいずれかで、入力と出力との間でトルクを選択的に伝達する方法が提供される。方法は、リングギアで入力トルクを受け入れるステップと、係合された時に、リングギアとキャリアを回転結合させ、同じ方向かつ同じ又は実質的に同じ速度で回転させる正転クラッチを介して、リングギアとキャリアとの間でトルクを伝達するステップと、正回転方向で、遊星歯車装置を介して太陽歯車に出力トルクを送達するステップと、制御サブシステムで共通の制御信号を受信するステップと、駆動ストロークが同時に正転クラッチを係合解除させると共に逆転ブレーキを係合させるよう、共通の制御信号の受信に反応して制御サブシステムで駆動ストロークを生成するステップと、逆転ブレーキが係合された時にキャリアを回転に対して制動するステップと、逆転ブレーキが係合され正転クラッチが係合解除された時に、逆回転方向で、遊星歯車装置を介して太陽歯車に出力トルクを送達するステップと、を含む。
【0012】
更に他の態様において、正転及び逆転作動モードで最終駆動部にトルクを伝達するための伝動システムは、リングギアが伝動システムへのトルク入力として構成された、回転軸を中心として回転可能なリングギアと、複数の遊星ギアと、遊星ギアがシングルピニオン構成のキャリアに回転可能に接続された、キャリアと、太陽歯車が伝動システムのトルク出力として構成され、遊星ギアがそれぞれリングギア及び太陽歯車の両方と噛み合う、回転軸を中心として回転可能な太陽歯車と、を含む遊星歯車装置と、リングギア及び太陽歯車がそれぞれシャフト上に回転可能に支持されている、回転的に静止したシャフトを有するジャーナルブラケットと、マウントが外部に露出している、太陽歯車に回転的に固定されたマウントと、正転クラッチが湿式摩擦クラッチを含み、正転クラッチの係合がリングギアとキャリアを回転結合するように、リングギアとキャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチと、逆転ブレーキが湿式摩擦クラッチを含み、逆転ブレーキの係合が回転固定位置に対するキャリアの制動を引き起こすように、キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキと、リングギア及び太陽歯車が回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能である正転作動モードと、リングギア及び太陽歯車が回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である逆転作動モードとの間で、伝動システムを切り替えるために選択的に駆動可能な制御サブシステムと、を含む。正転クラッチ及び逆転ブレーキは、回転軸に対して同心円状に配置することができ、軸方向において少なくとも部分的に互いに重なり合うことができる。制御サブシステムは、圧力チャンバーと、少なくとも部分的に圧力チャンバーと共に位置付けられると共に、正転クラッチと逆転ブレーキとの間で軸方向の力を選択的に伝達するために、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方に動作可能に接続されたピストンと、を含む。共通の流体制御信号は、スプリングのバネ付勢に抗してピストンを駆動軸方向位置へ並進移動させるために、圧力チャンバーを選択的に加圧することができる。正転作動モードにおいて、ピストンはデフォルトの軸方向位置にあり、正転クラッチは係合され、逆転ブレーキは係合解除されている。逆転作動モードにおいて、ピストンは駆動軸方向位置にあり、正転クラッチは係合解除され、逆転ブレーキは係合されている。
【0013】
本概要は、限定ではなく、例としてのみ提供される。本発明の他の態様は、本文全体、特許請求の範囲及び添付の図面を含む、本開示の全体を考慮して理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】内燃エンジンとファンとの間に接続された伝動システムを備える冷却システムを有する装置の一実施形態の概略図である。
【
図1B】伝動システム、可変速クラッチ及びファンの側面図である。
【
図2A】正転作動条件下にある伝動システムの遊星歯車装置の正面図である。
【
図2B】逆転作動条件下にある伝動システムの遊星歯車装置の正面図である。
【
図4】伝動システムの他の実施形態の概略図である。
【
図5A】本発明による伝動システムの一実施形態の断面図である。
【
図6】
図5A及び5Bの伝動システムの正転クラッチに関連する構成要素を分離して示す部分斜視図である。
【
図7】
図6に示した伝動システムの構成要素の断面斜視図である。
【
図8】
図5A及び5Bの伝動システムの逆転クラッチに関連する構成要素を分離して示す断面斜視図である。
【
図9】
図5A及び5Bの伝動システムの逆転クラッチ及びピストンに関連する構成要素を分離して示す断面斜視図である。
【
図10】回転軸の片側のみが示されてた、伝動システムの他の実施形態の断面図である。
【
図11】回転軸の片側のみが示されてた、伝動システムの他の実施形態の断面図である。
【
図12】伝動システムの更なる実施形態の概略図である。
【
図13】伝動システムの更なる実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の図面は本発明の実施形態を説明しているが、説明で述べられるように、他の実施形態も考えられる。全ての場合において、本開示は、限定ではなく説明の目的で、本発明を提示する。本発明の原理の範囲及び精神に含まれる多数の他の変形例及び実施形態が、当業者によって考案され得ることが、理解されるべきである。図面は一定の縮尺で描かれておらず、本発明の用途及び実施形態は、図面に具体的に示されていない特徴、ステップ及び/又は構成要素を含み得る。
【0016】
一般に、本発明の実施形態は、原動機が一方向のトルク出力を提供する能力のみを有する場合であっても、原動機(例えば、内燃エンジン)から最終駆動部(例えば、ファン又は他の被駆動装置)へ、正回転方向又は逆回転方向にトルクを選択的に送達することができる伝動システム(又は装置)を提供する。いくつかの実施形態は、更に、最終駆動部に送達されるトルクに対する完全可変速度制御を可能とする。例えば、1つ以上のクラッチ及び/又はブレーキと組み合わされた遊星歯車サブシステム(遊星歯車装置とも呼ばれる)は、単一方向に回転するトルク入力を、それぞれ正転及び逆転作動モードにおいて、同一の方向又は逆の方向に最終駆動部へ選択的に伝達することを可能とすることができる。いくつかの実施形態では、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方を制御するために、単一の制御サブシステムを利用することができ、いくつかの更なる実施形態では、制御サブシステムは、伝動システムを正転及び逆転作動モードの間で切り替えるために、所与の駆動ストロークで複数のクラッチ及び/又はブレーキを同時に駆動することができる共通の制御信号(例えば、単一の制御信号)によって制御することができる。いくつかの実施形態では、制御サブシステムは、一時的な中立又は非係合遷移作動モードを伴う正転及び逆転作動モード間の「ソフトな」遷移を提供するために、多部分駆動ストロークを利用することができる。本発明は、例えば、作動中にデブリによる詰まり又は障害を受ける冷却システムを有する車両を含む設備で、効率的な冷却システムの作動の維持を支援すべく、デブリの一部又は全部を除去するために、ファン又は他の冷却システム構成要素を所望の期間にわたって選択的に逆転させることによって、実施することができる。本発明の実施形態は、比較的コンパクトで、質量が比較的小さく、要求の厳しい工業的及び/又は環境的条件で使用される場合にも信頼性が高く、かつ、正転及び逆転作動の間での切り替えを可能とするために比較的簡単な制御を可能とする伝動パッケージに、逆転能力を与えることができる。更に、本発明の開示された実施形態は、正転及び逆転作動モードの間での切り替えのために、回転インターフェースを越えて制御信号を伝達する必要性を回避することができる。他の特徴及び利点は、添付の図面を含む本開示の全体を考慮して、当業者によって認識されるであろう。
【0017】
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/868,216号の優先権を主張する。
【0018】
図1Aは、内燃エンジン22、及び、熱交換器(H/X)24と、ファン26と、エンジン22からファン26へ制御可能にトルクを送達するための伝動装置28とを含む冷却システムを有する装置20(例えば、車両、産業機械、農業機械、鉱業機械、森林/木材収穫機等)を概略的に示す。冷却システムは、装置20のエンジンルーム内に配置することができる。ベルト28がプーリ(又はシーブ)を介してエンジン22を伝動装置28に接続していることが示されているが、更なる実施形態では、チェーン又は他の適切な駆動系デバイスを使用することができる。冷却システムの典型的な作動中、ファン26は熱交換器24を通じてエンジン22に向かって冷却空気を引き込むが、これは、空気流を制限し、冷却システムの作動効率を低下させるデブリDの蓄積を引き起こす可能性がある。特に、デブリDは、冷却空気流が装置20の内部へ入る又は装置20を通過することが望まれる開放領域の、物理的な閉塞を引き起こす可能性がある。代替的な実施形態では、熱交換器24を省略することができ、ファン26は冷却空気を単にエンジン22を通過して移動させるだけでよく、この場合、デブリDは、冷却空気が装置20のエンジンルームに入ることを可能にするグリル又は同様の構造(例えば、
図1Aに示すように、熱交換器24とほぼ同一の位置に配置された)の上に容易に蓄積する可能性がある。
【0019】
しかしながら、燃焼エンジン(内燃エンジン22等)は、作動中、一方向のみに回転する。したがって、エンジン22からのトルクによって駆動されるベルト28等も、1つの回転方向にのみ回転する。エンジン22からのこの単一の回転方向のトルクは、伝動システム28への入力である。以下で更に説明するように、伝動システム28の開示された実施形態は、遊星歯車列、正転クラッチ機構及びブレーキ機構を利用して、伝達されたトルクの回転を制御可能に逆転させる機械的手段を達成し、その結果、逆転ハブ(又は逆転最終駆動部)を提供する。したがって、ファン26の回転方向を逆転させるために、伝動装置28の逆転作動を指令することができ、その結果、空気流を逆方向に押しやって蓄積されたデブリDの一部又は全てを吹き飛ばすことができる。Horton, Inc.(Roseville, MN, USA)から入手可能なHS/11ファンのような軸流ファンは、正転方向での(ただし、逆方向に回転させるとより高い出力レベルでの)作動と匹敵する、適切なファン曲線及び静圧を有することが分かった。このように、デブリDを除去すべくファン26を逆方向に回転させるために伝動装置28を使用することにより、ブロー空気流又はクリーニング空気流を一時的に提供することができる。デブリDを除去するためのそのような一時的な逆転作動は、伝動装置28が、冷却空気流を、エンジン22に向かって、熱交換器24(存在する場合)、グリル等を通って装置20内へ引き込むべくもう一度ファン26を回転させるよう、再び正転に切り替えられたとき、適切に清浄な空気流領域、適切な冷却空気流及び関連するエンジン冷却の維持を支援する。
【0020】
図1Bは、任意選択の可変速クラッチ32を介してファン26に接続された伝動システム28の側面である。可変速クラッチ32は、例えば電子制御式粘性クラッチであることができる。
図1Bに示すように、伝動システム28は、回転軸Aを中心として、正転又は逆転作動モードのいずれかで回転することができる。図示した実施形態に示すような伝動システム28は、所望の取り付け位置で伝動システム28を支持するジャーナルブラケットと、ベルト30(図示せず)から入力される一方向トルクを受け入れるための入力として機能するプーリ(又シーブ)と、を有する。外向きの取付フランジ、シャフト等の伝動システム28の出力は、変速クラッチ32の入力に回転的に固定され、ファン26は、可変速クラッチ32の出力に回転的に固定されている。伝動システム28は、正回転方向又は逆回転方向のいずれかでトルクを可変速クラッチ32に送達し、可変速クラッチは、伝動システム28からファン26へのトルクの送達の完全可変速制御を提供することができる。このようにして、伝動システム28はファンの回転方向を制御することができ、可変速クラッチ32はファン26の速度を調節することができる。いくつかの用途及び実施形態では、可変速クラッチ32は、伝動システム28が正転作動モードにあるとき、ファンのスピードを変化させるためにのみ使用され、伝動システム28が逆転作動モードにあるときはいつでも、可変速クラッチ32はフルスピードで作動する。なぜなら、デブリDを除去するための逆転作動は一時的にのみ使用することができ、ファン26のフルスピード作動はデブリを除去する逆の空気流の効率の向上を支援するからである。代替的な実施形態では、可変速クラッチの代わりに、オン/オフクラッチを利用することができる。更に別の実施形態では、クラッチ(例えば可変速クラッチ又はオン/オフクラッチ)を、伝動システム28の出力などにおいて、伝動システム28と一体化することができる。
【0021】
図2A及び2Bは、それぞれ正転作動条件及び逆転作動条件下で別個に示された、伝動システム28の遊星歯車装置40の正面である。遊星歯車装置40は、リングギア42と、太陽歯車44と、遊星ギア46と、キャリア48と、回転中心軸Aとを含む。回転中心軸Aに対して、リングギア42は径方向外方位置に配置され、太陽歯車44は中心位置又は径方向内方位置に配置されている。通常、リングギア42は径方向内向きの歯を有し、太陽歯車44は径方向外向きの歯を有する。遊星ギア46は、それぞれリングギア42及び太陽歯車44の両方と噛み合っている。図示された実施形態に示すように、遊星ギア46は、それぞれ、シングルピニオン構成のキャリア48に回転可能に接続され担持されており、遊星ギア46は、それぞれリングギア42及び太陽歯車44と係合するための別個の歯を有する、2つの回転的に固定された同軸のサブ歯車46R及び46Sを有する複合歯車である。リングギア42は遊星歯車装置40への入力として機能することができ、太陽歯車44は出力として機能することができる。例えば、リングギア42は、入力プーリ等に接続するか又は入力プーリ等と一体的かつモノリシックに形成することができ、太陽歯車44は、出力ハブ等に接続するか又は出力ハブ等と一体的かつモノリシックに形成することができる。作動中、リングギア42のような遊星歯車装置40への入力は、通常、
図1Aに関して上述したように、単一で不変の回転方向においてのみ、燃焼エンジンからのトルク入力を受ける。しかしながら、遊星歯車装置40は、太陽歯車44のような出力の回転方向を切り替えるために、作動中に正転及び逆転作動モードの間で切り替えることができる。例えば、クラッチ/ブレーキ機構(
図2A及び2Bには示されていない)は、正転作動モード又は逆転作動モードのためのキャリア48の制動回転において、リングギア42及びキャリア48を選択的に係合させて、同一の又は実質的に同一の回転速度で(同一の回転方向で)、回転軸Aを中心として共回転させることができる。クラッチ/ブレーキ機構の可能な実施形態については以下で更に説明するが、最初に、遊星歯車装置40が正転及び逆転作動モードでどのように作動するかについての一般的な説明が、役立つであろう。
【0022】
図2Aに示すように、クラッチ/ブレーキ機構は、回転入力を出力と本質的に回転ロックさせる正転作動モードにある。より具体的には、正転作動モードにおいて、リングギア42(入力)、太陽歯車44(出力)及びキャリア48は、全て、同一の速度で同一の方向に(
図2Aに示すように時計回りで)回転軸Aを中心として回転する。
図2Aに示されるような正転作動モードにおいて、遊星ギア46は、それぞれのピニオンを中心として回転することはなく、代わりに、キャリアが回転中心軸Aを中心として回転するにつれて、キャリア48と共に移動する。
図2Bに示されるような逆転作動モードにおいて、キャリア48が制動され静止状態に保持される(すなわち、回転的に固定される)一方、リングギア42も太陽歯車44もキャリア48の回転にロックされず、これにより、太陽歯車44(出力)は、回転軸Aを中心として、リングギア42(入力)とは反対方向に回転する。すなわち、
図2Bに示すように、リングギア42(入力)は時計回りに、太陽歯車44(出力)は反時計回りに、それぞれ回転軸Aを中心として回転し、更に、遊星ギア46は個々のピニオンを中心として回転するが、キャリア48は制動されているので、遊星ギア46のためのピニオンが回転中心軸Aを中心として移動することはない。キャリア48を制動するためのブレーキ機構の適用は、2~5秒のような期間にわたって制御することができ、これにより、正転方向から逆転方向へ付加される出力(例えば、ファン26)の滑らかな遷移が可能となる。
【0023】
図3は、最終駆動部126と係合した伝動システム128の実施形態の概略図である。最終駆動部126は、例えば、冷却ファン26又は他の被駆動装置であることができる。伝動システム128は、例えば
図1Aに示す装置20の伝動システム28として使用することができる。伝動システム128の、前述したものと類似又は同一の構成要素には、一般に100だけ増加された類似の参照番号が付与されている。
【0024】
図3の実施形態に示すように、伝動システム128は、リングギア142、太陽歯車144、遊星ギア146、キャリア148、プーリ(又はシーブ)150、正転クラッチ152及び逆転ブレーキ154を備える、遊星歯車サブシステムを含む。遊星ギア146は、それぞれ、リングギア142及び太陽歯車144の両方と噛み合っている。図示の実施形態に示すように、遊星ギア146は、それぞれ、シングルピニオン構成のキャリア148に回転可能に接続され担持されている。リングギア142はプーリ150に回転的に固定されており、伝動システム128への入力として機能することができる。例えば、内燃エンジン22(
図1A参照)によって駆動されるベルト30は、プーリ150及びリングギア142に、単一の回転方向のトルク入力を与えることができる。太陽歯車144は最終駆動部126と係合しており、伝動システム128の出力として機能することができる。正転クラッチ152は、リングギア142とキャリア148との間に動作可能に接続され、逆転ブレーキ154は、キャリア148と回転固定位置Xとの間に動作可能に接続されている。正転クラッチ152及び逆転ブレーキ154は、いくつかの実施形態において、それぞれ湿式摩擦クラッチ機構を含むことができるが、乾式摩擦クラッチ等のような他のタイプのクラッチ及び/又はブレーキ機構を、更なる実施形態において利用することができる。
【0025】
正転クラッチ152及び逆転ブレーキ154は、例えば
図2A及び2Bに関して上述した方法で、回転軸に対して正回転方向又は逆回転方向のいずれかに、太陽歯車144を介して最終駆動部126にトルク出力を送達すべく、伝動システム128の作動を制御するために駆動され得る。正転クラッチ152の係合は、リングギア142及び太陽歯車144が同一の回転方向に回転可能な正転作動モードに対応し、逆転ブレーキ154の係合は、太陽歯車144がリングギア142とは逆の回転方向に回転可能な逆転作動モードに対応する。特に、正転クラッチ152の係合は、リングギア142とキャリア148を回転連結し、逆転ブレーキ154の係合は、回転固定位置Xに対してキャリア148を制動する。伝動システム128の正転クラッチ152及び逆転ブレーキ154の係合及び係合解除を制御する制御及び駆動サブシステムは、後述するように変化させることができる。例えば、別個の制御信号によって制御される別個のアクチュエータは、正転クラッチ152及び逆転ブレーキ154を別個にかつ独立して係合及び係合解除するために、使用することができる。代替的に、共通のアクチュエータ及び/又は共通の制御信号を、所与の駆動ストロークにおいて同時に、正転クラッチ152及び逆転ブレーキ154の両方を係合及び係合解除するために、使用することができる。そのような実施形態のいずれにおいても、制御及び駆動サブシステムは、流体制御信号(例えば空気圧又は油圧制御信号)を利用するような純粋に機械的なものであってもよく、又は、電気機械的なもの(例えば電気駆動サーボ、ソレノイド等を有する)であってもよい。この点で、
図3に示す実施形態は、正転クラッチ152及び/又は逆転ブレーキ154を駆動するための機構に関して包括的な、関連する実施形態のファミリーと考えることができる。
【0026】
図4は、最終駆動部226と係合した伝動システム228の他の実施形態の概略図である。最終駆動部226は、例えば、冷却ファン26又は他の被駆動装置であることができる。伝動システム228は、例えば
図1Aに示す装置20の伝動システム28として使用することができる。伝動システム228の、前述したものと類似又は同一の構成要素には、
図3の実施形態に関して使用されたものよりも一般に100だけ増加された類似の参照番号が付与されている。
【0027】
図4の実施形態に示すように、伝動システム228は、リングギア242、太陽歯車244、遊星ギア246、キャリア248、プーリ(又はシーブ)250、正転クラッチ252、逆転ブレーキ254及び制御サブシステム256を備える、遊星歯車サブシステムを含む。遊星ギア246は、それぞれ、リングギア242及び太陽歯車244の両方と噛み合っている。図示の実施形態に示すように、遊星ギア246は、それぞれ、シングルピニオン構成のキャリア248に回転可能に接続され担持されている。リングギア242はプーリ250に回転的に固定されており、伝動システム228への入力として機能することができる。例えば、内燃エンジン22(
図1A参照)によって駆動されるベルト30は、プーリ250及びリングギア242に、単一の回転方向のトルク入力を与えることができる。太陽歯車244は最終駆動部226と係合しており、伝動システム228の出力として機能することができる。正転クラッチ252は、リングギア242とキャリア248との間に動作可能に接続され、逆転ブレーキ254は、キャリア248と回転固定位置Xとの間に動作可能に接続されている。正転クラッチ252及び逆転ブレーキ254は、いくつかの実施形態において、それぞれ湿式摩擦クラッチ機構を含むことができるが、乾式摩擦クラッチ等のような他のタイプのクラッチ及び/又はブレーキ機構を、更なる実施形態において利用することができる。
【0028】
正転クラッチ252及び逆転ブレーキ254は、例えば
図2A及び2Bに関して上述した方法で、回転軸に対して正回転方向又は逆回転方向のいずれかに、太陽歯車244を介して最終駆動部226にトルク出力を送達すべく、伝動システム256によって駆動され得る。正転クラッチ252の係合は、リングギア242及び太陽歯車244が同一の回転方向に回転可能な正転作動モードに対応し、逆転ブレーキ254の係合は、太陽歯車244がリングギア242とは逆の回転方向に回転可能な逆転作動モードに対応する。特に、正転クラッチ252の係合は、リングギア242とキャリア248を回転連結し、逆転ブレーキ254の係合は、回転固定位置Xに対してキャリア248を制動する。
図4に示すように、制御サブシステム256は、正転クラッチ252及び逆転ブレーキ254の両方を共通に係合及び係合解除する、共通のアクチュエータとして機能する。更に、制御サブシステム256は、いくつかの実施形態では、単一の流体制御信号(例えば空気圧又は油圧信号)のような、共通の制御信号によって制御することができる。
【0029】
図示された実施形態の制御サブシステム256は、1つ以上のアクチュエータ258(単一のアクチュエータ記号のみが示されているが)、回転/並進カップリング260及びスラスト軸受262を含む。アクチュエータ258は、デフォルト位置に付勢され、次いで、選択的に駆動されて1つ以上の他の位置に移動することができるが、いくつかの実施形態では、2つの位置、すなわちデフォルト付勢位置及び駆動位置のみが必要である。いくつかの実施形態では、アクチュエータ258のうちの1つ以上が、デフォルト位置にバネ付勢されたピストン機構であることができ、流体制御信号は、選択的に、バネ付勢力に抗してアクチュエータ258のピストン機構を移動させる(すなわち、並進させる)ための駆動力を提供することができる。単一の制御信号は、全てのアクチュエータ258を駆動することができる。図示の実施形態に示されるように、アクチュエータ258は回転的に静止しており、回転固定位置Xに、直接的に又は間接的に接続することができる。回転/並進カップリング260は、相対的な軸方向の並進を許容しつつ回転(トルク)を伝達することができる機構である。例えば、種々の実施形態では、回転/並進カップリング260は、スプライン接続、ピンアセンブリ、プレートアセンブリなどであることができる。図示の実施形態に示すように、回転/並進カップリング260は、キャリア248、正転クラッチ252及びアクチュエータ258の可動の構成要素(及び伝動システム228の他の関連する構成要素)の間で動作可能に結合されて軸方向に並進するが、トルクは、回転/並進カップリング260を横切って正転クラッチ252とキャリア248との間で依然として伝達可能である。スラスト軸受262は、回転インターフェースを横切る直線力又は並進移動力の伝達を可能にする。すなわち、スラスト軸受262は、動作可能に係合された構成要素が互いに対して回転することを可能にするが、それらの動作可能に係合された構成要素間の並進移動(例えば、軸方向の並進移動)力を依然として許容する。図示の実施形態に示すように、スラスト軸受262は、正転クラッチ252とアクチュエータ258との間に係合され、アクチュエータ258が正転クラッチ252に並進移動駆動力を選択的に伝達することを可能にするが、正転クラッチ252がアクチュエータ258に対して回転することを依然として許容する。
【0030】
図4に示されるような制御サブシステム256は、アクチュエータ258が正転クラッチ252をデフォルトで係合位置に付勢する一方、アクチュエータ258が逆転ブレーキ254をデフォルトで非係合位置に更に付勢するように構成され、これらのデフォルト位置は、伝動システム228の正転作動モードに対応する。伝動システム228の作動中、アクチュエータ258への単一の制御信号は、伝動システム228の逆転動作モードに対応して、同時に正転クラッチ252を係合解除し、逆転ブレーキ254を係合させるために、正転クラッチ252及び逆転ブレーキ254の両方を、所与の駆動ストロークで共通に駆動することができる。このようにして、図示のような伝動システム228は、正転クラッチ252又は逆転ブレーキ254のいずれかに、両方同時にではないが任意の所与の時間に係合するように構成されており、また、伝動システム228は、共通の又は単一の制御信号で正転作動モードと逆転作動モードとの間で切り替えることができる。
【0031】
図5Aは、伝動システム328の一実施形態の断面図であり、
図5Bは、伝動システム328の部分拡大図である。
図5A及び5Bは、正転作動モードにおける伝動システム328を示す。これらの図では、簡略化のため、軸受は模式的にのみ示されている。伝動システム328の構成は、上述した伝動システム128及び228の構成とほぼ同様で一致しており、図示された伝動システム328は、伝動システム228の一種と見なすことができる。伝動システム328は、例えば
図1Aに示す装置20の伝動システム28として使用することができる。伝動システム328の、前述したものと類似又は同一の構成要素には、
図4の実施形態に関して使用されたものよりも一般に100だけ増加された類似の参照番号が付与されている。
【0032】
図5A及び5Bの実施形態に示すように、伝動システム328は、リングギア342、太陽歯車344、遊星ギア346、キャリア348、プーリ(又はシーブ)350、正転クラッチ352、逆転ブレーキ354、制御サブシステム356、マウント344M及びシャフト370Sを有するジャーナルブラケット370備える、遊星歯車サブシステムを含む。伝動システム328は、回転軸Aを規定する。
図3及び4の遊星歯車装置の概略図、並びに、
図2A及び2Bの立面図と類似して又は同様に、遊星ギア346は、それぞれリングギア342及び太陽歯車344の両方と噛み合う。一般に、伝動システム328は、比較的簡単な方法で、また比較的コンパクトな全体サイズを維持しながら、単一の駆動信号によって制御される単一の駆動ストロークで、同時に、正転クラッチ352を係合解除し、逆転ブレーキ354を係合させることができる、シングルピストン設計を提供する。
【0033】
図5A及び5Bの図示された実施形態に示すように、遊星ギア346は、それぞれ、ピニオン348Pを有するシングルピニオン構成のキャリア348に回転可能に接続され担持されており、遊星ギア346は、それぞれリングギア342及び太陽歯車344と係合するための別個の歯を有する、2つの隣接する回転的に固定された同軸のサブ歯車346R及び346Sを有する複合歯車である。複合遊星ギア346の使用することにより、伝動システム328のための比較的コンパクトな全体エンベロープを維持しながら、ギア比を特定の用途の要求どおりに調整することが可能になる。遊星ギア346は、ベアリングセット346B上のピニオン348P上に取り付けることもできるし、代替的にジャーナル接続部を備えることもできる。一実施形態では3つの遊星ギア346が設けられるが、代替的な実施形態ではより多くの又はより少ない数の遊星ギア346を利用することができる。図示された実施形態では、キャリア348は、適切なベアリング373によって、シャフト370S上に又はこれに相対的に回転支持される。
【0034】
リングギア342は、機械的ファスナーなどでプーリ350に回転的に固定され、リングギア及びプーリ350は、トルク入力が存在するときはいつでも、同一の速度で同一の回転方向に共回転するよう、伝動システム328への入力として機能することができる。伝動システム328の1つの可能な適用において、内燃エンジン22(
図1A参照)によって駆動されるベルト30は、プーリ350及びリングギア342に単一の回転方向のトルク入力を与えるために、プーリ350と係合することができる。
図5A及び5Bの図示された実施形態では、リングギア342が軸方向においてプーリ350とカバー372との間に位置し、リングギア342、プーリ350及びカバー372は全て、伝動システム328の概して径方向外側の部分に位置するが、更なる実施形態では、他の配置も可能である。代替的な実施形態では、リングギア342、プーリ350及び/又はカバー372は、単一のピースとして一体的かつモノリシックに形成することができる。更に、図示の実施形態では、プーリ350は適切なベアリング374によってシャフト370S上に回転支持され、シール(例えば、動的シール又は付加的なベアリング)を、カバー372とマウント344M及び/又は太陽歯車344との間に設けることができる。このようにして、リングギア342、プーリ350及びカバー372は、遊星歯車装置及び制御サブシステム356のような伝動システム328の内部コンポーネントを保護するエンクロージャを集合的に提供することができ、伝動システム328の内部に潤滑剤を保持するのに役立つことができる。
【0035】
図示の実施形態では、太陽歯車344は、冷却ファンのような最終駆動部(図示せず)と係合することができるマウント344Mに回転的に固定されており、太陽歯車344及びマウント344Mは、伝動システム228の出力として機能することができる。マウント344Mは、カバー372の外側に隣接して配置することができ、例えば、マウント344Mは、伝動システム328の最前端又は遠位端に配置することができ、外部に露出させることができる。マウント344Mは、最終駆動部への直接的な又は間接的な取り付けを容易にするために、パイロット、ファスナー開口部及び/又は機械的ファスナーなどを有することができる、概して径方向に延びるフランジとして構成することができる。マウント344Mは、シャフト370Sへのアクセスを提供することができ、任意選択で取り外し可能なキャップ(図示せず)によって覆うことができる、中央アクセス開口部を更に有することができる。図示の実施形態に示すように、太陽歯車344は、適切なベアリング376によってシャフト370S上に回転支持される。
【0036】
正転クラッチ352は、リングギア342とキャリア348との間に、動作可能に接続される。図示の実施形態では、正転クラッチ352は、制御サブシステム356によって選択的に摩擦係合及び係合解除することができる複数のクラッチプレート352Pを備えた湿式摩擦クラッチである。湿式摩擦正転クラッチ352の係合は、以下で更に説明するように、制御サブシステム356によって制御される軸力と共に、プレート352Pを押し進めることによって行うことができる。湿式摩擦クラッチを横切る速度差で限られたスリップを許容する、そのような湿式摩擦正転クラッチ352の部分的摩擦係合は可能ではあるが、典型的な実施形態では、湿式摩擦正転クラッチ352は、当該正転クラッチ352を横切って本質的にトルクが伝達されないよう完全に係合解除されるか、又は、係合された正転クラッチ352を横切って接続された構成要素を同一の又は実質的に同一の速度で回転させるために全ての又はほぼ全てのトルクを伝達するよう完全に係合される、オン/オフクラッチとして構成される。
図5A及び5Bは、完全に係合した状態の正転クラッチ352を示す。図示の実施形態では、
図6及び7に更に示すように、クラッチプレート352Pは軸方向に延びるスタックに配置され、クラッチプレート352Pのいくつかは、キャリア348の対応するスロット又はノッチ348Nに少なくとも部分的に挿入されるなどしてキャリア348と係合するタブ352Cを有し、他のクラッチプレート352Pは、リングギア342と間接的に係合するようにリングギア342に回転的に固定されたプーリ350と係合するタブ352Rを有する。代替的な実施形態では、タブ352Rは、リングギア342又はカバー372と直接係合することができる。タブ352C及び352Rは、正転クラッチ352の異なるプレート352Pを、それぞれキャリア348及びリングギア342に回転的に固定することを可能にする。正転クラッチ352の係合により、リングギア342とキャリア348とが回転結合され、同一の回転方向及び同一又は実質的に同一の速度で回転するよう(
図2Aに示されるものと同様)、リングギア342とキャリア348との間に摩擦係合が生じる。正転クラッチ352の係合解除により、リングギア342とキャリア348とが異なる速度で回転することが可能になり、例えば、キャリア348が制動されている及び/又は回転的に静止したままである一方でリングギア342が回転することが可能になる(例えば、
図2Bに示されているものと同様)。
【0037】
逆転ブレーキ354は、キャリア348と、回転的に固定されたジャーナルブラケット370のシャフト370Sとの間で動作可能に接続されている。特に、図示の実施形態では、逆転ブレーキ354の固定部分が、シャフト370S上に回転的に固定されたスリーブ又はハブ370Xに動作可能に接続される。図示の実施形態では、逆転ブレーキ354は、制御サブシステム356によって選択的に摩擦係合及び係合解除することができる複数のクラッチプレート354Pを備えた湿式摩擦クラッチである。湿式摩擦逆転ブレーキ354の係合は、以下で更に説明するように、制御サブシステム356によって制御される軸力と共に、プレート354Pを押し進めることによって行うことができる。逆転ブレーキ354の回転的に固定された部分に対して限られたスリップを許容する、そのような湿式摩擦クラッチ逆転ブレーキ354で、部分的な制動は可能ではあるが、典型的な実施形態では、湿式摩擦クラッチ逆転ブレーキ354は、本質的にキャリア248に制動がかからないよう完全に係合解除されるか、又は、シャフト370Sに対するキャリア348の回転を防止若しくは実質的に防止するために完全に係合するかのいずれかである、オン/オフブレーキとして構成される。図示の実施形態では、
図8及び9に更に示すように、クラッチプレート354Pは軸方向に延びるスタックに配置され、クラッチプレート354Pのいくつかは、キャリア348の対応するスロット又はノッチ348Nに少なくとも部分的に挿入されるなどしてキャリア348と係合するタブ354Cを有し、他のクラッチプレート354Pは、スリーブ370Xの対応するスロット又はノッチ370Nに少なくとも部分的に挿入されるなどしてスリーブ370Xと係合するタブ354Xを有する。スリーブ370Xは、タブ354Xがジャーナルブラケット370のシャフト370Sと間接的に係合するように、シャフト370Sに回転的に固定される。代替的な実施形態では、タブ354Xは、シャフト370S又は他の回転的に固定された構造と直接係合することができる。タブ354C及び354Xは、逆転ブレーキ354の異なるプレート354Pを、それぞれキャリア348及びジャーナルブラケット370に回転的に固定することを可能にする。逆転ブレーキ354の係合は、キャリア348がジャーナルブラケット370、シャフト370S及びスリーブ370Xに対する回転に対して制動され拘束されるよう、回転的に固定されたジャーナルブラケット370(並びにシャフト370S及びスリーブ370X)とキャリア348との間に摩擦係合を生じさせる(
図2Bに示されるものと同様)。換言すれば、逆転ブレーキ354を係合させることにより、キャリア348は、本質的に回転停止され、ジャーナルブラケット370、シャフト370S及びスリーブ370Xに対して回転ロックされる。逆転ブレーキ354の係合解除により、キャリア348は、ジャーナルブラケット370、シャフト370S及びスリーブ370Xに対して回転することが可能になる(例えば、
図2Aに示されるものと同様)。
【0038】
正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354は、同心円状に配置することができ、
図5A及び5Bに示すように、軸方向において少なくとも部分的に互いに重なり合うことができる。更に、いくつかの実施形態では、プレート352P及び354Pは、軸Aの周りに同心円状に配置されたほぼ環状のディスクとして構成することができ、少なくとも部分的に軸方向に重なり合う位置を占めることができる。正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354又は少なくともそれらの構成要素の、同心状の軸方向に重なり合う配置は、伝動システム328の全体における軸方向のスペースを節約するのに役立つ。このようにして、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354の配置は、軸方向にコンパクトな伝動システム328を促進するのに役立ち、これはまた、制御サブシステム356が、比較的単純な単一の流体制御信号(及び付勢力)で、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354の両方を共通に駆動することを可能にする。同時に、正転クラッチ352、逆転ブレーキ354及び制御サブシステム356は全て、遊星歯車列の同一の(軸方向の)側に、又は、少なくとも全てリングギア342及び/又は太陽歯車344の同一の(軸方向の)側に位置することができ、これは、伝動システム328の製作及び組み立てを容易にするのに役立つことができる。
【0039】
正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354は、太陽歯車344及びマウント344Mを介して正回転方向又は逆回転方向のいずれかにトルク出力を送達するために、したがって、伝動システム328を正転作動モードと逆転作動モードとの間で切り替えるために、制御サブシステム356によって駆動可能である。
図2A及び2Bに関して上述した方法と同様に、正転クラッチ354の係合(及び逆転ブレーキ354の係合解除)は、リングギア342及び太陽歯車344が同一の回転方向に回転可能な正転作動モードに対応し、逆転ブレーキ354の係合(及び正転クラッチ352の係合解除)は、太陽歯車344がリングギア342とは逆の回転方向に回転可能な逆転作動モードに対応する。
図5A及び5Bに示されるように、制御サブシステム356は、所与の駆動ストロークにおいて、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354の両方を共通に係合及び係合解除する、すなわち、同時に正転クラッチ352を係合し逆転ブレーキ354を係合解除する、又はその逆の両方を行うために、共通の流体アクチュエータとして機能する。更に、制御サブシステム356は、バネ付勢力及び共通の流体制御信号(例えば、単一の空気圧又は油圧信号)によって制御される。
【0040】
図示の実施形態の制御サブシステム356は、ピストンアクチュエータ358と、回転/並進カップリングとして機能する押し込みピンサブアセンブリ360と、スラストベアリング362と、を含む。流体供給ライン(図示せず)は、適切なポンプ、バルブ等によって制御される外部流体源からピストンアクチュエータ358へ、流体制御信号を供給するであろう。そのような流体供給ラインは、一部の実施形態では、回転的に静止していることができ、流体供給ラインが伝動システム328の構成要素を通過する限りにおいて、流体供給ラインは、シャフト370S、スリーブ370X等のような回転的に静止した構成要素のみを通過することができる。オン/オフ乾式摩擦ファンクラッチを駆動するような、自動車及び冷却システム用途における流体制御信号の提供は、周知である。したがって、ここでは、伝動システム328の制御サブシステム356に流体制御信号を供給するための外部構成要素の議論は、必要ではない。
【0041】
図示の実施形態に示されるように、ピストンアクチュエータ358は、圧力チャンバー358Cと、ピストン358Pと、少なくとも1つのスプリング358Sと、を含む。ピストン358Pは、圧力チャンバー358Cに対して並進移動することができる。流体制御信号は、供給ライン(図示せず)を通じて圧力チャンバー358Cに供給され、圧力チャンバー358C内の加圧は、圧力チャンバー358Cに供給される流体の容積の関数として制御される。図示の実施形態では、ピストン358P及び圧力チャンバー358Cは、それぞれ概して環状の形状であり、圧力チャンバー358Cは、ジャーナルブラケット370のシャフト370Sに対して回転的に及び軸方向に固定され、ピストン358Pは、圧力チャンバー358C内に少なくとも部分的に位置決めされ、動作中、圧力チャンバー358Cに対して軸方向に並進移動可能である。ピストン358Pも、図示の実施形態では、回転的に静止している。圧力チャンバー358C(及びピストン358P)を回転的に静止させることの1つの利点は、システムの複雑さを増大させるだけでなく、典型的には経時的に摩耗する1つ以上のシールを必要とする回転インターフェースを横切って制御信号を伝達することを必要とせずに、当該制御信号が圧力チャンバー358Cに送達され得ることである。
【0042】
スプリング358Sは、ピストン358Pにバネ付勢力を加え、当該ピストン358Pをデフォルト位置に付勢する。
図5A、5B、6及び
図7に示すように、スプリング358Sは、
図5A及び5Bに示すように左側の、第1の、デフォルトの又は完全にバネ付勢された位置へピストン358Pを付勢する、軸方向のバネ付勢力を、ピストン358Pに加える。加えて、図示の実施形態では、スプリング358Sからのバネ付勢力が、正転クラッチ352を係合状態に、逆転ブレーキ354を係合解除状態に、デフォルトで同時に付勢し、その結果、制御サブシステム356のバネ付勢は、伝動システム328をデフォルトで正転作動モードにする。スプリング358Sは、マウントブロック等を介して間接的にキャリア348に係合することができ、あるいは代替的に、正転クラッチプレート352Pに加えられるバネ付勢力がキャリア348に対して加えられるように、直接的にキャリア348に係合することができる。以下で更に説明するように、スプリング358Sは、押し込みピンサブアセンブリ360を介して、正転クラッチ352のプレート352Pと間接的に係合することができる。スプリング358Sは、コイルバネ、波形バネ、皿バネ等の任意の適切なタイプのバネであることができる。単一のスプリング358Sのみが示されているが、更なる実施形態では、複数の周方向に間隔を置いたスプリングのアレイを代わりに利用することができる。このデフォルトバネ付勢の1つの利点は、制御システムの故障又は一時的にせよ制御信号の喪失によって、伝動システム328がデフォルトの正転作動モードになることである。換言すれば、制御サブシステム356への制御信号を生成するための流体圧力が存在しない場合、伝動システム328全体は、デフォルトで依然として通常方向又は正転方向に回転することができる。例えば冷却システムの用途では、これにより、デブリDを除去するための逆転作動モードが利用できない場合でも、冷却空気流を生成するために、伝動システム328が冷却ファン26に正回転方向にトルクを伝達し続けることが可能になる。
【0043】
流体圧力がピストンアクチュエータ358に加えられると、ピストン358Pは、結果として移動する。これにより、流体制御信号は、ピストンアクチュエータ358を選択的に駆動するために、圧力調整を使用することができる。より具体的には、圧力チャンバー358Cに供給される流体制御信号は、スプリング358Sからのバネ付勢力に抗して第2の、圧力付勢された又は駆動位置に向かって、ピストン358Pを軸方向に並進移動させるための駆動力を、選択的に提供することができる。すなわち、流体制御信号によって生成されたピストン358P上の流体圧力は、ピストン358Pを軸方向に並進移動させるバネ付勢力に対向し克服する軸方向の力を選択的に生成し、これは、ピストン358Pを
図5A及び5Bに示すように右側へ並進移動させる。
【0044】
一実施形態では、ピストン358Pは、例えば正転クラッチ352、逆転ブレーキ354、アクチュエータ358、押し込みピンアセンブリ360などの構成要素の相対的な軸方向位置及び/又は大きさを調節することによって調整され得る、複数部分ストロークを有することができる。ピストン358Pのストロークの第1部分により、スプリング358Sが部分的に圧縮されるか又はつぶされ、正転クラッチ352のクラッチプレート352Pへのバネ付勢力が除去され、プレート352Pの摩擦係合解除及び正転クラッチ352の係合解除が引き起こされる。ピストン358Pが、ストロークの第2の、後続の且つ最終の部分で移動し続けるにつれて、スプリング358Sは、逆転ブレーキ354のプレート354Pが摩擦係合するまで、圧縮され続ける。この複数部分ストロークは、同時に正転クラッチ352の係合解除及び逆転ブレーキ354の係合をもたらすが、正転作動モードと逆転動作モードとの間の移行は、漸進的な又は「ソフトな」ものである。すなわち、正転作動モードと逆転作動モードとの間の切り替え時の、システム(及び最終駆動部など)への応力の低減を助けるために、ピストン358Pがデフォルトのバネ付勢された軸方向位置と完全に駆動された圧力付勢された軸方向位置との間のほぼ中間軸方向位置にあるときなど、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354の両方が同時に係合解除される、駆動ストロークの中間部分における短時間の又は一時的な「中立」又は移行作動モードを提供することができる。しかしながら、更なる実施形態では、(同一の駆動ストロークの明確に異なる部分よりもむしろ)おおよそ同じ瞬間に、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354の厳密に同時の係合/係合解除が、同時係合の代替的な形態として提供され得る。
【0045】
逆転ブレーキ354が完全に係合されると、キャリア348は停止され(すなわち、回転的に制動され)、太陽歯車344(及びマウント344M)の回転方向は、遊星歯車装置によって設定された比率で反転され、それによって、伝動システム328を逆転作動モードに切り替える。それは、逆転ブレーキ354の摩擦制動力に変換される流体制御信号から生成される加圧である。流体制御信号を除去又は停止すると、スプリング358Sが逆転ブレーキ354を係合解除し、正転クラッチ352を係合させる。ピストンアクチュエータ358の開示された実施形態の1つの利点は、圧力チャンバー358Cに晒される比較的大きな表面積を有することができる単一のピストン358Pがあることである。そのような大きなピストン表面積は、圧力チャンバー358C内の流体制御信号加圧を、逆転ブレーキ354を摩擦係合させ、同時に、スプリング358Sを圧縮して正転クラッチ352を係合解除するための、比較的大きな軸力に変換する。比較的大きな表面積を有する単一のピストンは、伝動システム328が比較的コンパクトな大きさを維持し、また比較的低い質量を有することを可能にしながら、十分な力を発生させることを可能にする。正転クラッチ及び逆転ブレーキが別個のアクチュエータによって独立に制御されるよう、付加的なピストンを有するような、付加的なアクチュエータの存在は、システムの複雑さを増大させるだけでなく、システムの大きさ及び質量を増大させる傾向がある。
【0046】
押し込みピンサブアセンブリ360は、後述するスラストベアリング362と協働して、それが係合する構成要素と共に依然として回転しながら、軸方向の並進運動の伝達を可能にする。図示の実施形態では、押し込みピンアセンブリ360は、キャリア348内の対応する軸方向に延びる孔360Hを通過し、スプリングブロック360Sと係合する、1つ以上の軸方向に延びるピン360Pに接続された略環状のベース360Bを含む。孔360Hは、キャリア348の少なくとも一部を通る比較的小さな円筒形通路の略環状のアレイのような、概して離散的な周方向に間隔を置いた孔である。図示の実施形態では、ベース360Bはピストン358Pに近接して位置し、ピン360Pはそれぞれ、一方の端でベース360Bと一体であり、反対側の端でスプリングブロック360Sと接触し、ピン360P及び孔360Hの両方は、正転クラッチ352の径方向内側に、かつ、逆転ブレーキ354から径方向外側に(すなわち、径方向において正転クラッチ352と逆転ブレーキ354との間に)位置している。スプリングブロック360Sは、軸方向においてスプリング358Sと正転クラッチ352のプレート352Pとの間に位置決めされ、径方向内向きに正転クラッチ352及びスプリング358Sからピン360Pまで延びることができる。更に、スプリング358Sとピストン358Pは、軸方向に隔てられ、軸方向においてスプリングブロック360Sの反対側に位置することができる。このようにして、押し込みピンサブアセンブリ260は、スプリング358S(バネ付勢力の形態で)及び/又はピストン358P(バネ付勢力に抗する圧力により生成された駆動力の形態で)から、正転クラッチ352のプレート353Pへ、軸方向の力を伝達することができる機構を提供するために、他の構成要素に動作可能に結合される。それにより、押し込みピンサブアセンブリ360は、キャリア348を通じたスプリング358Sへのアクセスを、ピストン358Pに提供する。孔360Hとピン360Pとの間の係合は、押し込みピンサブアセンブリ360をキャリア348に回転固定するように為され、したがって、押し込みピンアセンブリ360は、キャリア348が回転するときはいつでもキャリア348と共に回転し、キャリア348が完全に制動されるときはいつでも回転を停止する。スラストベアリング362は、正転作動モードで回転することができる押し込みピンサブアセンブリ360と、伝動システム328の全ての作動条件(すなわち、正転作動モード及び逆転作動モードの両方)の下でほぼ回転的に静止しているピストン358Pと、の間の相対回転を可能にする。
【0047】
スラストベアリング362は、回転的に静止したピストン358Pから回転可能な正転クラッチ352(及び回転可能な押し込みピンサブアセンブリ360)へ、力が軸方向に伝達されることを可能とする一方、(例えば、正転作動モードの間、)それらの構成要素の間での軸Aの周りの相対回転を依然として許容する。スラストベアリング362は、ニードルスラストベアリング構成又はボールスラストベアリング構成のような任意の適切な転動体を有することができる。
図5A及び5Bに示すように、スラストベアリング362は、ピストン358Pの半径方向に延びる部分と押し込みピンサブアセンブリ360のベース360Bとの間に係合され、また、ほぼ軸方向において、一方の側のピストン358Pの径方向に延びる部分と、反対側の押し込みピンサブアセンブリ360及びキャリア348との間に位置する。ピストンアクチュエータ358のピストン358Pに流体圧力が加えられると、スラストベアリング362は軸方向に移動し、それによって、押し込みピンサブアセンブリ360に軸方向の並進力を伝達し、スプリング358Sを圧縮し、次いで、クラッチプレート352P上の力を除去し、正転クラッチ352を係合解除させる。ピストン358Pに駆動流体圧力が作用しない場合、スプリング358Sからの軸方向バネ力は、押し込みピンサブアセンブリ360からスラストベアリング362を介してピストン358Pに伝達される。
【0048】
伝動システム328の配置及び構成によって提供される多くの利点及び利益がある。例えば、第一に、単一の(流体)制御信号の使用は、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354が、不注意により同時に係合され、互いに逆らって作動することを防止する。別々の制御信号を連係させる必要はない。第二に、制御サブシステム356は、比較的単純である。なぜなら、トランスミッションシステム328は、作動するために1つの外部圧力源及び弁又はポンプのみを必要とするからである。第三に、通常の作動中、最も一般的な作動条件は、伝動システム328から正回転方向の最終駆動部(例えば、ファン26)にトルク出力を供給することであるため、正転クラッチ352をデフォルトでバネ係合させることが望ましく、したがって、駆動力の喪失(例えば、流体制御信号圧力の喪失)の場合、正転クラッチ352は係合され続け、伝動システム328は正転作動モードで作動し続け、これにより、正転全速トルク出力を最終駆動部が利用できるようになる。第四に、制御サブシステム356及び伝動システム328の作動を、全体として単一の油圧又は空気圧ラインのような共通の制御信号源によって制御可能にすることも望ましく、これにより、伝動システム328に関連する空間及び質量に寄与する付加的な圧力源及び外部の弁、ポンプなどを設ける必要がなくなる。更に、正転クラッチ352及び逆転ブレーキ354の湿式摩擦クラッチは、いずれも伝動システム328の内部に収容され、必要な空間(特に軸方向における)は比較的小さい。当業者は、添付の図面を含む本開示の全体を考慮して、他の利点及び利益を理解するであろう。
【0049】
図10は、回転軸Aの一方の側のみが示された、伝動システム428の他の実施形態の断面図である。伝動システム428の構成は、上述した伝動システム128及び228の構成とほぼ同様で一致しており、また、上述した伝動システム328と同様であり、図示された伝動システム428は、伝動システム228の一種と見なすことができる。伝動システム428は、例えば
図1Aに示す装置20の伝動システム28として使用することができる。伝動システム428の、前述したものと類似又は同一の構成要素には、
図5A~9の実施形態に関して使用されたものよりも一般に100だけ増加された類似の参照番号が付与されている。例えば、伝動システム428は、リングギア442、連結されたマウント444Mを有する太陽歯車444、遊星ギア446(複合サブギア446R及び446Sを有する)及びキャリア448を有する遊星ギアサブシステムと、プーリ(又はシーブ)450と、正転クラッチ452と、逆転ブレーキ454と、ピストンアクチュエータ458(圧力シリンダー458C、ピストン458P及びスプリングネ458Sを有する)を有する制御サブシステム456と、スラストベアリング462と、シャフト470Sを有するジャーナルブラケット470と、カバー472と、ベアリング474、476及び478と、を含む。動力伝達システム428は回転軸Aを規定する。一般に、伝動システム428は、比較的簡単な方法で、また比較的コンパクトな全体サイズを維持しながら、単一の駆動信号によって同時に、正転クラッチ452を係合解除し、逆転ブレーキ454を係合させることができる、シングルピストン設計を提供する。
【0050】
しかしながら、伝動システム428では、押し込みピンサブアセンブリ360が、キャリア448の孔又は開口部460Hを通ってほぼ径方向に延びるスポークを有するピストンプレート460に置き換えられる。
図10に示すように、ピストンプレート460の径方向外端は、軸方向において正転クラッチ452(複数のクラッチプレートを有する湿式摩擦クラッチであり得る)とスプリング458Sとの間に位置し、ピストンプレート460の径方向内端は、軸方向において逆転ブレーキ454(複数のクラッチプレートを有する湿式摩擦クラッチであり得る)とスラストベアリング462との間に位置する。更に、
図10の図示された実施形態は、スラストベアリング462に係合し、軸方向において逆転ブレーキ454に隣接して位置するピストン458Pを有する。更に、キャリア448の一端は、遊星ギア446の後側で正転クラッチ452及び逆転ブレーキ454に近接して位置し、他端は、キャリア448の反対側でベアリング478に近接して位置する。ベアリング478は、マウント444M上で(又は代替的に、太陽歯車444上で)、キャリア448を回転支持することができる。これらの違いを除いて、伝動システム428の作動は、伝動システム328の作動とほぼ同様である。
【0051】
図11は、回転軸Aの一方の側のみが示された伝動システムの他の実施形態の断面図である。伝動システム528の構成は、上述した伝動システム128及び228の構成とほぼ同様であり、図示された伝動システム528は、伝動システム228の一種と見なすことができる。伝動システム528は、例えば
図1Aに示す装置20の伝動システム28として使用することができる。伝動システム528の、前述したものと類似又は同一の構成要素には、
図10の実施形態に関して使用されたものよりも一般に100だけ増加された類似の参照番号が付与されている。例えば、伝動システム528は、リングギア542、連結されたマウント544Mを有する太陽歯車544、遊星ギア546(複合サブギア546R及び546Sを有する)及びキャリア548を有する遊星ギアサブシステムと、プーリ(又はシーブ)550と、正転クラッチ552(複数のクラッチプレートを有する湿式摩擦クラッチであり得る)と、逆転ブレーキ554(複数のクラッチプレートを有する湿式摩擦クラッチであり得る)と、制御サブシステム556と、ピストン作動機構558と、スラストベアリング562と、シャフト570Sを有するジャーナルブラケット570と、カバー572と、ベアリング574、576及び578と、を含む。伝動システム528は、回転軸Aを規定する。
【0052】
しかしながら、一般に、伝動システム528は、比較的簡単な方法で、また比較的コンパクトな全体サイズを維持しながら、単一の駆動信号によって同時に、正転クラッチ552を係合解除し、逆転ブレーキ554を係合させることができる、デュアルピストン設計を提供する。
図11に示すように、ピストン機構558は、圧力シリンダー558CB及び558CF、ピストン558PB及び558PF、スプリング558S、並びに、分岐580B及び580Fを備える圧力通路580を含む。このように、伝動システム528の図示された実施形態は、それぞれ正転クラッチ552及び逆転ブレーキ554のための別個のピストン558PF及び558PBを有するデュアルピストン構成を有し、これらは単一の(又は共通の)流体制御信号によって圧力通路580を介して制御可能であるが、それ以外の点では
図3に関して上述した実施形態と同様に作動する。この構成では、それぞれ正転クラッチ552及び逆転ブレーキ554のための別個の圧力通路分岐580F及び580Bが、共通の圧力通路580を介して単一のソースに流体的に接続される。しかしながら、
図11の実施形態では、押し込みピンサブアセンブリ又はピストンプレートを有する必要はない。
【0053】
正転クラッチ552及び逆転ブレーキ554の係合及び係合解除によって、
図2A、2B及び3に関して上述したのと基本的に同じ方法で、正転作動モードと逆転作動モードとの間で伝動システム528を切り替えることができる。
図11に示すように、圧力通路580を介して伝達される制御信号からの流体圧力が、正転クラッチ552を係合解除するために、スプリング558Sからのバネ付勢力に抗して作用するよう、スプリング558Sは、正転クラッチ552がデフォルトで正転クラッチ552に係合するようにピストン558PFを付勢し、圧力通路580の分岐580Fは、スプリング558Sからピストン558PFの反対側(すなわち、正転クラッチ552と同じ側)で圧力チャンバー558CFに接続する。図示のように、ピストン558PFは、圧力チャンバー558CFから正転クラッチ552に軸方向のバネ付勢力を伝達するために、圧力チャンバー558CFから突出する軸方向に延びるシャフトを有する。スラストベアリング562は、ピストン558PFのシャフトと正転クラッチ552との間に設けることができる。圧力通路
580の分岐
580Bは、流体制御信号によって生じる加圧がピストン558PBを逆転ブレーキ554に対して軸方向に移動させて摩擦制動係合を生成するよう、逆転ブレーキ554からピストン558PBの反対側で圧力チャンバー558CBに接続する。図示された実施形態では、ピストン558PBにリターンスプリングは設けられていないが、ピストン558PB用のそのようなリターンスプリングは、更なる実施形態で任意に利用することができる(例えば、ピストン558PF用のスプリング558Sの方向とは逆の方向にピストン558PBをバネ付勢するために)。
【0054】
正転クラッチ552は、デフォルト係合位置へバネ付勢されている。作動中、圧力通路580に沿って分岐580Fを通ってピストン558PFに伝達される制御信号からの供給圧力は、スプリング558Sを圧縮することができ、これにより正転クラッチ552のクラッチパックから垂直力を受け、係合解除を引き起こすことができる。同時に、圧力通路580に沿って分岐580Bを通ってピストン558PBに伝達される圧力は蓄積され、これにより、逆転ブレーキ554が係合し、キャリア548を停止させ、太陽歯車544を逆回転させる。このようにして、
図11に示された実施形態は、制御サブシステム556の駆動が、複数のピストン作動機構558に同時に作用し得る単一の圧力源で達成されることを可能にする。それはまた、制御信号がない場合の伝動システム528のデフォルト状態が正転作動モードにあることを可能にする。最後に、遊星歯車列の同じ(軸方向)側における同心の軸方向に重なり合う配置などで、正転クラッチ552及び逆転ブレーキ554を(径方向に)互いに積み重ねることにより、設計は比較的スペース効率が良い。
【0055】
図12及び13は、伝動システム628の他の実施形態の概略図である。
図12は、遊星歯車列と、最終駆動部626(例えば、ファン)に制御可能に動力を供給するワンウェイクラッチ690とを有する、伝動システム628の実施形態を概略的に示す。伝動システム628の遊星歯車列の3つの回転脚、すなわち、リングギア642、太陽644、遊星646及びキャリア648が存在する。図示された実施形態は、シングルピニオン遊星歯車列レイアウトを利用する。図示された実施形態では、システム628の入力は、適切なベルト(
図1A参照)を介してエンジンの回転によって駆動され得るプーリ650に取り付けられたリングギア642であり、システム628の出力は、冷却ファン、ファン駆動装置等を取り付けることができる太陽歯車644である。遊星キャリア648は、システム628の回転方向を制御するために使用される。ワンウェイクラッチ690(フリーホイール、オーバーランニングクラッチ、メカニカルダイオード又はスプラグ型クラッチとも呼ばれる)は、入力と出力との間にも採用され、リングギア642と太陽歯車644との間に接続される。ワンウェイクラッチ690は、接続された部品間の相対回転を単一の方向においてのみ許容するが、接続された部品間の相対的な回転を逆方向において回転固定又はロックする。逆転ブレーキ654は、キャリア648と回転固定点X(マウントブラケットのシャフトなど)との間に動作可能に配置され、キャリア648の回転速度を制御するために使用される。逆転ブレーキ654は、圧力信号によって作動される多板ディスクブレーキ(例えば、空気圧又は油圧によって駆動される湿式摩擦クラッチ)又は他のタイプのクラッチ及び/又はブレーキであってもよい。逆転ブレーキ654が係合解除されると、ワンウェイクラッチ690はリングギア642を太陽歯車644に回転ロックさせ、その結果、出力は直接的に入力に結合される。逆転ブレーキ654が係合されると、キャリア648の回転が停止され;次いで、回転動力はリングギア642(入力)から遊星ギア646を介して太陽歯車654(出力)に伝達され、太陽644(出力)はリングギア642(入力)とは逆の回転方向に回転する。システム628は、ファン(最終駆動部626の一実施形態として)を回転的に固定された関係で直接的に又は間接的に取り付けることを可能にする取り付け面を出力(太陽歯車644又は関連する太陽歯車シャフト)を有するか、又は、ファン速度の選択的制御を可能にするために太陽歯車644とファンとの間に取り付けられた可変ファン駆動装置も有することができる(
図1B参照)。伝動システム628’の代替実施形態が
図13に示されており、摩擦クラッチ690’が係合されたときに最終駆動部626(例えば、ファン)が正転方向に回転できるようにするために、リングギア642と太陽歯車644との間に(ワンウェイクラッチ690の代わりに)オン/オフ摩擦クラッチ690’が使用される。
【0056】
正転及び逆転作動モードを有する伝動システムの現在開示されている実施形態は、ピッチ反転ファン及び油圧反転システムのような他の反転オプションと比較して多くの利点を有する。多くのエンジンはファンを駆動するためのプーリハブを既に装備しており、本伝動システムは、そのような既存のプーリの代わりに比較的容易に取り付けることができる。したがって、必要とされる追加のスペースは、既存のプーリのスペースよりはるかに大きくない。伝動システムはまた、柔軟な構成を可能にする。ベースライン構成では、正転作動モードにおけるファン(又は他の最終駆動部)の正転速度は、エンジン速度に対して、プーリ直径のサイズを通じて調整することができる。逆転作動モード出力速度は、伝動システムの遊星歯車比を介して調整することができる。可変速ファンクラッチを任意に追加することにより、少なくとも正転方向におけるファン又は他の最終駆動部のフルスピード制御が可能になる。更に、本伝動システムの実施形態は、比較的単純な制御を有することができ、制御信号が失われた場合にデフォルトの正転作動状態を提供することができる。他の特徴及び利点は、添付の図面を含む本開示の全体を考慮して、当業者によっても認識されるであろう。
【0057】
可能な実施形態の考察
正転又は逆転作動モードのいずれかでトルクを伝達するための伝動システムは、回転軸を中心として回転可能なリングギアと、複数の遊星ギアと、遊星ギアがシングルピニオン構成のキャリアに回転可能に接続された、キャリアと、遊星ギアがそれぞれリングギア及び太陽歯車の両方と噛み合う、回転軸を中心として回転可能な太陽歯車と、を含む遊星歯車装置と、正転クラッチの係合がリングギアとキャリアを回転結合するように、リングギアとキャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチと、逆転ブレーキの係合が回転固定位置に対するキャリアの制動を引き起こすように、キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキと、伝動システムを正転作動モードと逆転作動モードとの間で選択的に駆動可能な制御サブシステムと、を含むことができる。正転作動モードにおいて、正転クラッチは係合し、逆転ブレーキは係合解除され、リングギア及び太陽歯車は回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能である。逆転作動モードにおいて、正転クラッチは係合解除され、逆転ブレーキは係合し、リングギア及び太陽歯車は回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である。制御サブシステム駆動ストロークは、共通の制御信号に基づいて、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方を駆動するように構成されている。
【0058】
先行する段落の伝動システムは、付加的に及び/又は代替的に、以下の特徴、構成及び/又は付加的構成要素のうちの1つ以上を、任意に含むことができる:
【0059】
制御サブシステムは、それぞれ共通の制御信号によって制御される複数のアクチュエータを含むことができる、又は代替的に、制御サブシステムは、共通の制御信号によって制御される単一のアクチュエータを含むことができる;
【0060】
制御サブシステムはスプリングを含むことができ、制御サブシステムはスプリングによってデフォルトで正転作動モードにバネ付勢されることができる;
【0061】
共通の制御信号は、油圧又は空気圧の共通の制御信号のような、流体制御信号であることができる;
【0062】
制御サブシステムは、圧力チャンバーと、少なくとも部分的に圧力チャンバーと共に位置決めされたピストンと、スプリングが圧力チャンバー内のデフォルト位置へピストンをバネ付勢し、流体制御信号がスプリングのバネ付勢に抗してピストンを移動させるために圧力チャンバーを選択的に加圧するように構成されたスプリングと、を含めることができる;
【0063】
制御サブシステムは、ピストン、正転クラッチ及びキャリアの間に動作可能に接続された回転/並進カップリング、並びに、回転/並進カップリングとピストンとの間に動作可能に係合されたスラストベアリングを、更に含むことができる;
【0064】
回転/並進カップリングは、押し込みピンアセンブリ、ピストンプレート、スプラインアセンブリなどであることができる;
【0065】
バネ付勢力は、ピストンを、軸方向の圧縮係合力がキャリアを介して正転クラッチに伝達され、同時に逆転ブレーキを圧縮されておらず係合解除されたままの状態にする第1の軸方向位置に付勢することができ、圧力チャンバーの加圧は、正転クラッチを圧縮されておらず係合解除されたままの状態にし、同時に軸方向の圧縮係合力を逆転ブレーキに伝達する第2の軸方向位置に付勢することができる;
【0066】
制御サブシステムの駆動ストロークの範囲内で、ピストンは、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方を圧縮されておらず係合解除されたままの状態にする中間の軸方向位置にあることができる;
【0067】
制御サブシステムは、正転クラッチピストン及び逆転ブレーキピストンが、それぞれ、流体制御信号が通過する共通の圧力通路と流体的に接続されるように構成された、正転クラッチピストン及び逆転ブレーキピストンを含むことができる;
【0068】
正転クラッチは、多板湿式摩擦クラッチを含むことができる;
【0069】
逆転ブレーキは、多板湿式摩擦クラッチを含むことができる;
【0070】
正転クラッチ及び逆転ブレーキは、同心円状に配置することができ、軸方向において少なくとも部分的に互いに重なり合うことができる;
【0071】
プーリは、リングギアに回転的に固定されることができる;
【0072】
ジャーナルブラケットは、回転的に静止したシャフトを有して設けられることができ、リングギア及び太陽歯車はそれぞれシャフト上に回転可能に支持されることができる;
【0073】
マウントは、太陽歯車に回転的に固定されることができ、マウントは外部に露出していることができる;及び/又は
【0074】
正転クラッチ、逆転ブレーキ及び制御サブシステムは、全て、軸方向において遊星歯車装置の同じ側に位置することができ、又は代替的に、正転クラッチ、逆転ブレーキ及び制御サブシステムは、全て、軸方向において少なくともリングギア及び/又は太陽歯車の同じ側に位置することができる。
【0075】
冷却システムは、内燃エンジンと、選択的に正転及び逆転作動モードで作動することができる上述したもののような伝動システムと、内燃エンジンと伝動システムのプーリとの間に係合されたベルトと、太陽歯車に回転的に固定されたファンと、を含むことができる。
【0076】
伝動システムを製作する方法及びそのような伝動システムを含む冷却システムを製作する方法は、上述した構成要素の一部又は全てを提供することを含むことができる。
【0077】
リングギア、シングルピニオン遊星ギア、キャリア及び太陽歯車を含む遊星歯車装置を用いて、正回転方向又は逆回転方向のいずれかで、入力と出力との間でトルクを選択的に伝達する方法が開示される。方法は、リングギアで入力トルクを受け入れるステップと、係合された時に、リングギアとキャリアを回転結合させ、同じ方向かつ同じ又は実質的に同じ速度で回転させる正転クラッチを介して、リングギアとキャリアとの間でトルクを伝達するステップと、正回転方向で、遊星歯車装置を介して太陽歯車に出力トルクを送達するステップと、制御サブシステムで共通の制御信号を受信するステップと、駆動ストロークが同時に正転クラッチを係合解除させると共に逆転ブレーキを係合させるよう、共通の制御信号の受信に反応して制御サブシステムで駆動ストロークを生成するステップと、逆転ブレーキが係合された時にキャリアを回転に対して制動するステップと、逆転ブレーキが係合され正転クラッチが係合解除された時に、逆回転方向で、遊星歯車装置を介して太陽歯車に出力トルクを送達するステップと、を含むことができる。
【0078】
先行する段落の方法は、付加的に及び/又は代替的に、以下の特徴、構成及び/又は付加的なステップのうちの1つ以上を、任意に含むことができる:
【0079】
正転クラッチが係合され逆転ブレーキが係合解除されるデフォルト位置へ、制御サブシステムをバネ付勢するステップ;
【0080】
共通の制御信号は、流体制御信号(油圧又は空気圧の共通の制御信号のような)であることができ、制御サブシステムは、1つ以上のスプリングによってデフォルト位置に付勢されたピストンアクチュエータを含むことができ、
【0081】
駆動ストロークを生成するために、流体制御信号によって生じた加圧に基づいてピストンを並進移動させるステップ、及び
【0082】
駆動ストロークを生成するために流体制御信号による加圧に基づいてピストンが並進移動された時、正転クラッチを係合解除させ且つ逆転ブレーキを係合させるために、ピストンを用いて軸方向に力を伝達するステップ;
【0083】
ピストンで軸方向に伝達された力は、キャリアの一部を通じて又は横切って伝達されることができる;
【0084】
流体制御信号による加圧中、駆動ストロークの第1の部分において、逆転ブレーキは係合解除されたままである一方、正転クラッチは係合解除されることができ、駆動ストロークの後続の第2の部分において、正転クラッチは係合解除されたままである一方、逆転ブレーキは係合されることができる;
【0085】
駆動ストロークの第1の部分において、駆動ストロークの中間部分において正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方が係合解除されるよう、正転クラッチは係合解除されることができ、駆動ストロークの最後の第2の部分において、正転クラッチは係合解除されたままである一方、逆転ブレーキは係合されることができる;
【0086】
制御信号の一部を流体制御信号として正転クラッチピストンに伝達し、同時に、流体制御信号の他の一部を逆転ブレーキピストンに伝達するステップ;
【0087】
正転及び逆転作動モードで最終駆動部にトルクを伝達するための伝動システムは、リングギアが伝動システムへのトルク入力として構成された、回転軸を中心として回転可能なリングギアと、複数の遊星ギアと、遊星ギアがシングルピニオン構成のキャリアに回転可能に接続された、キャリアと、太陽歯車が伝動システムのトルク出力として構成され、遊星ギアがそれぞれリングギア及び太陽歯車の両方と噛み合う、回転軸を中心として回転可能な太陽歯車と、を含む遊星歯車装置と、リングギア及び太陽歯車がそれぞれシャフト上に回転可能に支持されている、回転的に静止したシャフトを有するジャーナルブラケットと、マウントが外部に露出している、太陽歯車に回転的に固定されたマウントと、正転クラッチが湿式摩擦クラッチを含み、正転クラッチの係合がリングギアとキャリアを回転結合するように、リングギアとキャリアとの間に動作可能に接続された正転クラッチと、逆転ブレーキが湿式摩擦クラッチを含み、逆転ブレーキの係合が回転固定位置に対するキャリアの制動を引き起こすように、キャリアと回転固定位置との間に動作可能に接続された逆転ブレーキと、リングギア及び太陽歯車が回転軸を中心として同じ回転方向に回転可能である正転作動モードと、リングギア及び太陽歯車が回転軸を中心として逆の回転方向に回転可能である逆転作動モードとの間で、伝動システムを切り替えるために選択的に駆動可能な制御サブシステムと、を含むことができる。正転クラッチ及び逆転ブレーキは、回転軸に対して同心円状に配置することができ、軸方向において少なくとも部分的に互いに重なり合うことができる。制御サブシステムは、圧力チャンバーと、少なくとも部分的に圧力チャンバーと共に位置付けられると共に、正転クラッチと逆転ブレーキとの間で軸方向の力を選択的に伝達するために、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方に動作可能に接続されたピストンと、を含むことができる。共通の流体制御信号は、スプリングのバネ付勢に抗してピストンを駆動軸方向位置へ並進移動させるために、圧力チャンバーを選択的に加圧することができる。正転作動モードにおいて、ピストンはデフォルトの軸方向位置にあり、正転クラッチは係合され、逆転ブレーキは係合解除されている。逆転作動モードにおいて、ピストンは駆動軸方向位置にあり、正転クラッチは係合解除され、逆転ブレーキは係合されている。
【0088】
先行する段落の伝動システムは、付加的に及び/又は代替的に、以下の特徴、構成及び/又は付加的構成要素のうちの1つ以上を、任意に含むことができる:
【0089】
プーリは、リングギアに回転的に固定されることができる;
【0090】
正転クラッチ、逆転ブレーキ及び制御サブシステムは、全て、軸方向においてリングギアの同じ側に位置することができる;
【0091】
正転クラッチ、逆転ブレーキ及び制御サブシステムは、全て、軸方向において遊星歯車装置の同じ側に位置することができる;
【0092】
デフォルト軸方向位置と駆動軸方向位置との間の中間軸方向位置へのピストンの軸方向並進移動は、正転クラッチ及び逆転ブレーキの両方を、圧縮されておらず係合解除されたままの状態にすることができる。
【0093】
冷却システムは、内燃エンジンと、正転及び逆転作動モードで最終駆動部にトルクを伝達するための上述したもののような伝動システムと、伝動システムのプーリと内燃エンジンとの間に係合されたベルトと、を含むことができる。最終駆動部は、太陽歯車に回転的に固定されたファンであるか又はこれを含むことができる。
【0094】
要約
「実質的に」、「本質的に」、「一般的に」、「おおよそ」のような、本明細書で使用される任意の相対的な用語又は程度の用語は、本明細書で明示的に述べられる任意の適用可能な定義又は制限に従って解釈されるべきである。全ての場合において、本明細書で使用される任意の相対的な用語又は程度の用語は、任意の関連する開示された実施形態、並びに、本開示の全体を考慮して、当業者によって、熱、回転又は振動作動条件、一時的な信号の変動などによって誘発される、通常の製造公差の変動、偶発的なアライメントの変動、過渡的なアライメント又は形状の変動を包含すると理解されるような範囲又は変動を広く包含するように解釈されるべきである。更に、本明細書で使用される任意の相対的な用語又は程度の用語は、あたかも所与の開示又は列挙において限定的な相対的な用語又は程度の用語が利用されていないかのように、指定された品質、特性、パラメータ又は値を変動なしに明示的に含む範囲を包含するように解釈されるべきである。更に、「静止した」のような用語は、一般に、本明細書では相対的な意味で使用される。すなわち、伝動システムの特定の構成要素は、その伝動システムの取り付け位置に対して静止していてもよいが、その取り付け位置は、移動している車両のような装置内にあってもよい。
【0095】
本発明が好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形状及び細部において変更がなされてもよいことを、認識するであろう。例えば、一実施形態に関して説明された特徴は、他の開示された実施形態に関して利用することができる。更に、空気圧駆動信号は、種々の実施形態において、油圧駆動信号と置き換えることができる。