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特許7547397貴金属回収のためのヒドロホルミル化プロセスから溶液を調製するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】貴金属回収のためのヒドロホルミル化プロセスから溶液を調製するプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/00 20060101AFI20240902BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 38/68 20060101ALI20240902BHJP
   C07B 41/06 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
B01J38/00 301Z
B01J31/24 Z
B01J38/68 A
C07B41/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021577509
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2020033762
(87)【国際公開番号】W WO2020263462
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】62/867,575
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、マイケル シー.
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンシュミット、トーマス シー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、グレン エー.
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-513516(JP,A)
【文献】特表2019-509266(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089284(WO,A1)
【文献】特開平05-261296(JP,A)
【文献】特表2004-503380(JP,A)
【文献】特開昭59-076034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01J 38/68
C07B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第8族遷移金属、および加水分解性有機リン配位子を含むヒドロホルミル化反応触媒を含む使用済み触媒流体を、前記第8族遷移金属の貴金属回収のために調製するプロセスであって、該プロセスは、貴金属を組み込む沈殿物の形成を最小化または排除し、かつ、
(a)使用済み触媒流体を活性ヒドロホルミル化反応システムから除去することであって、前記使用済み触媒流体が、前記ヒドロホルミル化反応触媒を含み、非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まない、除去することと、
ここで、「非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まない」とは、非加水分解性三有機リン化合物が、ヒドロホルミル化触媒を形成するために、第8族遷移金属のための配位子として使用されないことを意味し、任意のそのような非加水分解性有機リン化合物が使用済み触媒流体中に存在する範囲で、そのような化合物は、第8族遷移金属1モル当たり0.1モル未満の非加水分解性三有機リン化合物の量で存在し、
(b)非加水分解性三有機リン化合物を、前記流体を貯蔵する前、または貴金属回収のために輸送する前に、ステップ(a)からの前記使用済み触媒流体に添加することと、
ここで、前記非加水分解性三有機リン化合物が、アルデヒド生成物を回収するために前記使用済み触媒流体が濃縮される前に、前記使用済み触媒流体に添加され、
加水分解性有機リン配位子は、少なくとも1つのP-Z結合を含有する三価のリンP (III) 配位子であり、Zは、酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素であり、かつ、
非加水分解性リン配位子は、P-HまたはP-Z結合を含まない三有機リンP (III) 配位子であり、Zは、酸素、窒素、塩素、フッ素または臭素である、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記使用済み触媒流体が、ステップ(b)の後、1~20重量パーセントの前記非加水分解性三有機リン化合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記非加水分解性三有機リン化合物が、三有機ホスフィンである、請求項1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記非加水分解性三有機リン化合物が、トリフェニルホスフィンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記非加水分解性三有機リン化合物の供給源が、第2の使用済み触媒流体であり、前記第2の使用済み触媒流体が、三有機ホスフィンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ヒドロホルミル化反応触媒を含むヒドロホルミル化プロセスからの溶液からの貴金属の回収を容易にするためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロホルミル化プロセスおよびそれらの操作条件は、よく知られている。ヒドロホルミル化プロセスは、非対称的であっても非対称的でなくてもよく、好ましいプロセスは、非対称的でなく、任意のバッチ式、連続式、または半連続式で行うことができ、所望の任意の触媒液体および/またはガスリサイクル操作を含み得る。
【0003】
ヒドロホルミル化触媒の有用な触媒寿命は、典型的には供給物からの硫黄およびハロゲン化物などの触媒毒の蓄積、重質物(典型的にはアルデヒド縮合生成物)の蓄積、金属コロイドまたはクラスターの形成などのいくつかの要因によって制限されることは周知である。本明細書に記載されるような加水分解性配位子の場合、配位子断片および配位子酸化物の蓄積も、生成に寄与することなく貴重な反応器容積を占めることにより、アルデヒド重質物と同じ方法で触媒寿命を制限する可能性がある。さらに、そのような材料は、それらの溶解限度を超え、プロセス機器内で固体沈殿物を形成するようなレベルに達し得る。添加剤(例えば、JP2000/095722、JP2000/0351746、US4,774,361、US5,756,855に記載されている)、酸緩和剤(例えば、米国特許公開第2008/0188686号に記載されている)、または配位子分解および不溶性物質の蓄積を軽減するための抽出剤および水の添加(例えば、PCT公開第WO2012/064586号に記載されている)の使用により、触媒の寿命が延長し得る。しかしながら、ある時点で、上記のアプローチは、商業的に実行可能な触媒活性を維持するのに十分でない場合がある。
【0004】
加水分解性および非加水分解性配位子の混合物は、例えば、CN106431869、CN1986055、RU2352552、RU2584952、RU2562971、US5741,945、およびWO2017/010618に記載されているように、ヒドロホルミル化反応プロセスで使用されてきたが、そのような参考文献は、使用済み触媒液からの貴金属の回収に対する非加水分解性配位子の影響を言及していない。
【0005】
触媒の寿命を延ばす、または回復するための従来のプロセスは、触媒のパージ流を除去して、貴金属回収プロセスに送り、活性金属触媒前駆体を再生することである。あるいは、触媒溶液の大部分または全体(生成物アルデヒドを回収するために、任意選択で、気化器で、または膜もしくはナノ濾過操作で濃縮される)が排出され、貴金属回収プロセスに送られる。これらのプロセスの例は、US3,755,393、US4,388,279、US4,929,767、US5,208,194、U.S.5,237,106、およびRU2561171に開示されている。
【0006】
貴金属を回収し、ヒドロホルミル化プロセスでの使用に好適な形態で金属をリサイクルしようとするいくつかのプロセスは、JP2001/114794A、US5,290,743、US5,773,665、US,5936,130、US5,648,554、およびUS9,035,080に記載されている。ほとんどの場合、ヒドロホルミル化施設は、触媒溶液を排出するか、または使用済みの触媒液を貯蔵もしくは輸送コンテナに蓄積し、それは次いで、貴金属回収施設に輸送される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、排出、貯蔵、および/または輸送プロセス中に、かなりの量のロジウム種が溶液から沈殿するように見え、貴金属回収プロセスを複雑にすることが観察されている。不均一な混合物では、初期の貴金属含有量を決定することは、困難であり、材料のすべてが輸送コンテナから確実に除去されることが重要である。貴金属の「修復」を有することは許されないので、内容物が溶液中に残っていることを保証することが重要である。この沈殿の正確な原因は、不明である。
【0008】
貴金属回収プロセスに好適な方法で、貴金属沈殿物を形成することなく、使用済み触媒液の長期貯蔵および輸送を可能にする必要がある。ヒドロホルミル化反応プロセスの文脈では、貴金属回収プロセスでの第8族金属の回収に好適な方法で、貴金属沈殿物を形成することなく、そのようなプロセスからの使用済み触媒流体の長期貯蔵および輸送を可能にする必要がある。
【0009】
本発明の実施形態は、貴金属回収プロセスのためのヒドロホルミル化反応プロセスから触媒溶液を調製するためのプロセスを有利に提供する。そのようなプロセスは、貴金属を組み込む沈殿物の形成を有利に最小化または排除することができ、したがって、貴金属錯体が、貯蔵および貴金属回収プロセス施設への輸送中に溶液中に残ることを保証する。
【0010】
一態様では、本発明は、第8族遷移金属、および加水分解性有機リン配位子を含むヒドロホルミル化反応触媒を含む使用済み触媒流体を第8族遷移金属の貴金属回収のために調製するプロセスに関し、このプロセスは、(a)使用済み触媒流体を活性ヒドロホルミル化反応システムから除去することであって、使用済み触媒流体が、ヒドロホルミル化反応触媒を含み、非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まない、除去することと、(b)非加水分解性三有機リン化合物を、流体を貯蔵する前、または貴金属回収のために輸送する前に、ステップ(a)からの使用済み触媒流体に添加することと、を含む。
【0011】
これらおよび他の実施形態は、発明を実施するための形態において、さらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
元素周期律表およびその中の様々な族への言及はすべて、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第72版(1991-1992)CRC Press、I-11頁に掲載されているバージョンに対するものである。
【0013】
相対する記述がない限り、または文脈から黙示的でない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量に基づくものであり、すべての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度において)および当該技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその米国版に相当するものが、参照により同様に組み込まれる)。
【0014】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は互換的に使用される。「含む(comprise)」、「含む(include)」、およびそれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「a」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「ppmw」という用語は、重量百万分率を意味する。
【0016】
本発明の目的では、「炭化水素」という用語は、少なくとも1個の水素原子および1個の炭素原子を有するすべての許容される化合物を含むことが意図される。そのような許容される化合物はまた、1つ以上のヘテロ原子を有し得る。広義の態様において、許容される炭化水素は、置換または非置換であり得る、非環式(ヘテロ原子を含むまたは含まない)および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環の、芳香族および非芳香族有機化合物を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが意図される。広範な態様では、許容される置換基には、非環式および環式、分岐状および非分岐状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の有機化合物の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル(炭素の数が1~20以上、好ましくは1~12の範囲であり得る)、ならびにヒドロキシ、ハロ、およびアミノが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であり得、同じかまたは異なり得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によってどんな手法でも限定されることは意図されていない。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロホルミル化」は、限定されるものではないが、1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン系化合物または1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン系化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換または非置換アルデヒドまたは1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に転化することを含む、すべての許容される非対称および非対称でないヒドロホルミル化方法を含むことが意図される。
【0019】
本明細書において、「反応流体」、「反応媒体」、「触媒流体」、および「触媒溶液」という用語は、互換的に使用され、(a)金属-有機リン配位子錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応において形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物、(e)該金属-有機リン配位子錯体触媒および該遊離有機リン配位子のための溶媒、ならびに任意選択で、(f)反応において形成される1つ以上のリン酸性化合物(均一または不均一であり得る)を含む混合物を含み得るが、これらに限定されない。反応流体は、限定されないが、(a)反応ゾーン内の流体、(b)分離ゾーンへ向かう途中の流体流、(c)分離ゾーン内の流体、(d)リサイクル流、(e)反応ゾーンまたは分離ゾーンから抜き出された流体、(f)緩衝水溶液で処理された取り出された流体、(g)反応ゾーンまたは分離ゾーンに戻された処理された流体、(h)外部冷却器内の流体、ならびに(i)配位子分解生成物およびそれらの塩、を含むことができる。
【0020】
「加水分解性有機リン配位子」は、少なくとも1つのP-Z結合を含有する三価のリンP(III)配位子であり、Zは、酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素である。例としては、ホスファイト、ホスフィノ-ホスファイト、ビスホスファイト、ホスホナイト、ビスホスホナイト、ホスフィナイト、ホスホラミダイト、ホスフィノ-ホスホラミダイト、ビスホスホラミダイト、フルオロホスファイトなどが挙げられるが、これらに限定されない。配位子は、キレート構造を含んでもよく、ならびに/またはポリホスファイト、ポリホスホラミダイトなどの複数のP-Z部分、およびホスファイト-ホスホラミダイト、フルロホスファイト-ホスファイトなどの混合P-Z部分を含有してもよい。
【0021】
「非加水分解性リン配位子」は、P-HまたはP-Z結合を含まない三有機リンP(III)配位子であり、Zは、酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素である。非加水分解性リン配位子の非限定的な例は、トリアルキルホスフィンまたはトリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「錯体」という用語は、1つ以上の電子的に豊富な分子または原子(すなわち、配位子)の、1つ以上の電子的に乏しい分子または原子(すなわち、遷移金属)との結合により形成される配位化合物を意味する。例えば、本明細書で使用可能な有機リン配位子は、1つの非共有電子対を有する1つのリン(III)ドナー原子を保有し、これは、金属との配位共有結合を形成することができる。本明細書で使用可能なポリ有機リン配位子は、2つ以上のリン(III)ドナー原子を保有し、各々が1つの非共有電子対を有し、その各々は、独立してか、またはおそらく遷移金属と協調して(例えば、キレート化を介して)配位共有結合を形成することができる。一酸化炭素も存在し、遷移金属と錯体を形成することができる。錯体触媒の最終的な組成物もまた、上記に記載されたように、追加の配位子(複数可)、例えば、金属の配位部位または核電荷を満たす水素、モノオレフィン、またはアニオンを含有してもよい。
【0023】
第8族遷移金属上で利用可能な配位部位の数は、当技術分野で周知であり、選択される特定の遷移金属に依存する。触媒種は、単量体、二量体、またはより高い核形態の複雑な触媒混合物を含み得、その形態は、好ましくは、金属、例えば、ロジウムの1分子当たりに錯化した少なくとも1つの有機リン含有分子によって特徴付けられる。例えば、ヒドロホルミル化反応で用いられる好ましい触媒の触媒種は、1つ以上の有機リン配位子(複数可)に加えて、一酸化炭素および水素と錯体形成され得ると考えられている。使用済み触媒の場合、触媒活性がある場合とない場合があり、有機リン配位子が存在する場合と存在しない場合があるコロイド状またはクラスター状の形態を含み得る多種多様な金属錯体が存在し得る。とにかく、効果的な貴金属回収のためには、あらゆる形態の貴金属を溶液に保つ(または少なくとも懸濁させる)べきである。
【0024】
本発明の目的のために、「使用済み触媒」という用語は、分解されたか、または経済的に使用することが不可能であり、交換する必要があるほど十分に汚染された触媒を指す。いくつかの実施形態において、使用済み触媒は、その初期活性(反応速度)の75%未満の活性を有する触媒である。いくつかの実施形態において、使用済み触媒は、その初期活性(反応速度)の50%未満の活性を有する。パージ操作では、触媒の一部を除去して、動作を継続する残りの触媒に新しい触媒を添加できるようにするが、パージされた流れは、反応器に戻されないため、「使用済み触媒」とみなされる。本明細書において、「使用済み触媒流体は、使用済み触媒を含むヒドロホルミル化反応プロセスからの流体を指し、(a)金属-有機リン配位子錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応において形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物、(e)該金属-有機リン配位子錯体触媒および該遊離有機リン配位子のための溶媒、ならびに任意選択で、(f)反応において形成される1つ以上のリン酸性化合物(均一または不均一であり得る)を含む混合物も含み得るが、これらに限定されない。追加の汚染物質には、アルデヒド分解生成物(例えば、カルボン酸またはアルコール)、プロセス流体、水、ラインフラッシュなどが含まれ得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「貴金属回収プロセス」は、貴金属錯体が破壊されて、貴金属触媒前駆体を再生するプロセスを意味する。これらのプロセスでは、少なくとも1つの時点で、元の有機リン配位子のすべてが、典型的には化学的酸化(例えば、空気または過酸化物)または燃焼(「灰化」または「焙煎」)のいずれかによって除去または破壊(酸化など)されている。ヒドロホルミル化反応プロセスの文脈では、貴金属は、典型的にはロジウムなどの第8族遷移金属である。貴金属回収プロセスでは、次いで、得られた貴金属は、ロジウムの回収の場合、ハロゲン化ロジウム、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NO、ロジウムジカルボニルアセトアセトナートなどの好適な触媒前駆体である他の形態に変換される。このような貴金属回収プロセスの例には、米国特許第4,021,463号、CN102925713B、およびCN102373335に記載されているものが含まれる。本明細書で使用される場合、「貴金属回収施設」は、貴金属回収プロセスを実践する施設である。貴金属回収施設の場所は、ヒドロホルミル化反応システムまたはその近くであり得るが、典型的には、いくつかの異なる種類の施設、場所、および企業とは別個の場所にあり、それは、貴金属回収を専門とする。ほとんどの場合、ヒドロホルミル化施設は、触媒溶液を排出するか、または使用済みの触媒液を貯蔵もしくは輸送コンテナに蓄積し、それは次いで、貴金属回収施設に輸送される。ここで本発明の実施形態に目を向けると、開示されたプロセスは、ヒドロホルミル化反応プロセスからの触媒溶液からの貴金属の回収を容易にすることに関する。そのようなヒドロホルミル化反応で使用される触媒には、第8族遷移金属および加水分解性有機リン配位子が含まれる。上記のように、時間の経過とともに、ヒドロホルミル化反応プロセス内で触媒含有流体から貴金属(すなわち、第8族遷移金属)を回収する必要が生じる。一般に、開示されたプロセスは、非加水分解性三有機リン化合物を活性ヒドロホルミル化反応システムからの使用済み触媒流体に添加することを含み、使用済み触媒溶液は、非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まず、添加は、貯蔵および/または貴金属回収操作への輸送の前に行われる。本発明の目的のために、使用済み触媒流体がヒドロホルミル化反応システムから除去され、非加水分解性三有機リン化合物が貴金属回収操作に輸送するために添加されると、得られた流体は、オレフィンをヒドロホルミル化するためにヒドロホルミル化システムに戻されない。もちろん、貴金属回収操作によって触媒金属が回収されると、触媒金属前駆体は、新しい配位子および溶媒を有する新たに調製された触媒溶液などのヒドロホルミル化システムにリサイクルされ得る。
【0026】
一態様では、本発明は、第8族遷移金属、および加水分解性有機リン配位子を含むヒドロホルミル化反応触媒を含む使用済み触媒流体を第8族遷移金属の貴金属回収のために調製するプロセスに関し、このプロセスは、(a)使用済み触媒流体を活性ヒドロホルミル化反応システムから除去することであって、使用済み触媒流体が、ヒドロホルミル化反応触媒を含み、非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まない、除去することと、(b)非加水分解性三有機リン化合物を、流体を貯蔵する前、または貴金属回収のために輸送する前に、ステップ(a)からの使用済み触媒流体に添加することと、を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、使用済み触媒流体が「非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まない」と呼ばれる場合、それは、非加水分解性三有機リン化合物(例えば、本明細書で論じられるトリアリールホスフィンおよび他のもの)が、ヒドロホルミル化触媒を形成するために、第8族遷移金属のための配位子として使用されないことを意味し、任意のそのような非加水分解性有機リン化合物が使用済み触媒流体中に存在する範囲で、そのような化合物は、第8族遷移金属1モル当たり0.1モル未満の非加水分解性三有機リン化合物の量で存在する。31P NMRは、使用済み触媒液に存在する非加水分解性三有機リンP(III)化合物の量を検出および決定するために使用され、これは、これらの材料の化学シフトが、一般に、加水分解性三有機リンP(III)化合物の化学シフトとは実質的に異なるためである。
【0028】
いくつかの実施形態において、使用済み触媒流体は、非加水分解性三有機リン化合物を添加する前に、アルデヒド生成物を回収するために濃縮される。
【0029】
いくつかの実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物は、アルデヒド生成物を回収するために使用済み触媒流体が濃縮される前に、使用済み触媒流体に添加される。これは、濃縮プロセス中に貴金属が沈殿または「めっき」するのを防ぐように機能する場合がある。
【0030】
いくつかの実施形態において、濃縮プロセスは、別個のシステムを含み得るか、またはいくつかの実施形態において、ヒドロホルミル化システムにおける生成物-触媒分離処理機器が使用され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、使用済み触媒流体は、ステップ(b)の後(流体を貯蔵する前または貴金属回収のために輸送する前に)、1~20重量パーセントの非加水分解性三有機リン化合物を含む。そのような実施形態では、使用済み触媒流体の任意の濃度は、ステップ(a)および/または(b)の間に、しかし流体を貯蔵する貴金属回収のために流体を輸送する前に発生している。
【0032】
いくつかの実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物は、三有機ホスフィンである。非加水分解性三有機リン化合物は、いくつかの実施形態において、トリフェニルホスフィンである。
【0033】
いくつかの実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物の供給源は、第2の使用済み触媒流体であり、第2の使用済み触媒流体は、三有機ホスフィンを含む。第2の使用済み触媒流体は、遊離または非錯化三有機ホスフィンを含むことができる。例えば、施設が、2つのヒドロホルミル化反応プロセスを操作し、一方が加水分解性有機リン配位子を使用し、他方が非加水分解性三有機リン配位子を使用する場合、非加水分解性三有機リン配位子を含む使用済み触媒流体を、流体を貯蔵する前または貴金属回収のために輸送する前に、加水分解物を含む使用済み触媒流体に添加することができる。非加水分解性三有機リン化合物の供給源は、貴金属回収施設で加水分解性三有機リン化合物とともに焼却または除去される可能性が高いため、本発明にとって重要ではない。
【0034】
本発明で使用するための使用済み触媒流体を提供するために企図されるヒドロホルミル化反応プロセスは、金属および加水分解性有機リン配位子を含む触媒を利用する。そのようなヒドロホルミル化反応に用いることが可能な例示的な金属-有機リン配位子錯体には、金属-有機リン配位子錯体触媒が含まれる。これらの触媒、ならびにそれらの調製のための方法は、当技術分野で周知であり、本明細書で言及される特許に開示されているものを含む。一般に、そのような触媒は、その場で予備成形または成形されてもよく、加水分解性有機リン配位子、一酸化炭素、および任意選択で水素と複雑に組み合わせて、金属を含む。触媒錯体種は、単核、二核、および/またはそれ以上の核形態で存在してもよい。しかしながら、触媒の正確な構造は、知られていない。
【0035】
金属-有機リン配位子錯体触媒は、光学活性または非光学活性であってもよい。金属は、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、およびそれらの混合物から選択される8、9および10族金属を含み得、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウムおよびルテニウム、より好ましくはロジウム、コバルトおよびルテニウム、特にロジウムである。これらの金属の混合物を、使用してもよい。金属-有機リン配位子錯体および遊離有機リン配位子を構成する許容可能な有機リン配位子には、モノ-、ジ-、トリ、およびそれ以上のポリ有機リン配位子が含まれる。配位子の混合物を、金属-有機リン配位子錯体触媒および/または遊離配位子に用いることができ、そのような混合物は、同じかまたは異なっていてもよい。
【0036】
金属-有機リン配位子錯体触媒の配位子として機能し得る加水分解性有機リン配位子の中には、モノ有機ホスファイト、ジ有機ホスファイト、トリ有機ホスファイト、および有機ホスファイト化合物がある。そのような加水分解性有機リン配位子およびその調製のための方法は、当技術分野で周知である。
【0037】
代表的なモノ有機ホスファイトには、次式を有するものが含まれ得、
【化1】
式中、R10は、三価非環式および三価環状ラジカルなどの4~40個以上の炭素原子を含有する置換または非置換の三価炭化水素ラジカル、例えば、1,2,2-トリメチロールプロパンなどに由来するものなどの三価アルキレンラジカル、または1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンなどに由来するものなどの三価シクロアルキレンラジカルを表す。そのようなモノ有機ホスファイトは、例えば、US4,567,306により詳細に記載されていることが見出され得る。
【0038】
代表的なジ有機ホスファイトには、次式を有するものが含まれ得、
【化2】
式中、R20は、4~40個以上の炭素原子を含有する置換または非置換の二価炭化水素ラジカルを表し、Wは、1~18個以上の炭素原子を含有する置換または非置換の一価炭化水素ラジカルを表す。
【0039】
上記の式(II)においてWで表される代表的な置換および非置換の一価炭化水素ラジカルには、アルキルおよびアリールラジカルが含まれ、R20で表される代表的な置換および非置換の二価炭化水素ラジカルには、二価非環式ラジカルおよび二価芳香族ラジカルが含まれる。例示的な二価非環式ラジカルには、例えば、アルキレン、アルキレン-オキシ-アルキレン、アルキレン-S-アルキレン、シクロアルキレンラジカル、およびアルキレン-NR24-アルキレンが含まれ、式中、R24は、水素、または置換もしくは非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えば、米国特許第3,415,906号および同第4,567,302号などにより完全に開示されているような二価アルキレンラジカルである。例示的な二価芳香族ラジカルには、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、アリーレン-オキシ-アリーレン、アリーレン-NR24-アリーレンが含まれ、式中、R24は、上で定義されるように、アリーレン-S-アリーレン、アリーレン-S-アルキレンなどである。より好ましくは、R20は、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、および同第4,835,299号などにより完全に開示されているような二価芳香族ラジカルである。
【0040】
ジ有機ホスファイトのより好ましいクラスの代表は、次式のものであり、
【化3】
式中、Wは上で定義された通りであり、各Arは同じかまたは異なり、置換または非置換アリールラジカルを表し、各yは同じかまたは異なり、0または1の値であり、Qは-C(R33-、-O-、-S-、-NR24-、Si(R35、および-CO-から選択される二価架橋基を表し、式中、各R33は同じかまたは異なり、水素、1~12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、およびアニシルを表し、R24は上で定義された通りであり、各R35は同じかまたは異なり、水素またはメチルラジカルを表し、mは0または1の値を有する。そのようなジ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、および同第4,835,299号により詳細に記載されている。
【0041】
代表的なトリ有機ホスファイトには、次式を有するものが含まれ得、
【化4】
式中、各R46は、同じかまたは異なり、置換または未置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1~24個の炭素原子を含有し得るアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、およびアラルキルラジカルである。例示的なトリ有機ホスファイトとしは、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイトなど、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(3,6-ジ-t-ブチル-2-ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)フェニルホスファイト、およびビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-スルホニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。最も好ましいトリ有機ホスファイトは、トリスフェニルホスファイトである。そのようなトリ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第3,527,809号および同第4,717,775号により詳細に記載されている。
【0042】
代表的な有機ポリホスファイトは、2つ以上の三級(三価)リン原子を含有し、次式を有するものを含んでもよく、
【化5】
式中、Xは、2~40個の炭素原子を含有する置換または非置換のn価有機架橋ラジカルを表し、各R57は、同じかまたは異なり、4~40個の炭素原子を含有する二価有機ラジカルを表し、各R58は、同じかまたは異なり、1~24個の炭素原子を含有する置換または非置換の一価炭化水素ラジカルを表し、aおよびbは、同じかまたは異なっり得、a+bの合計が2~6であり、nがa+bに等しいという条件で、各々0~6の値を有する。aの値が2以上である場合、各R57ラジカルは、同じかまたは異なっていてもよいことを理解されたい。各R58ラジカルはまた、いかなる所与の化合物においても同じかまたは異なっていてもよい。
【0043】
Xによって表される代表的なn価(好ましくは二価)有機架橋ラジカル、および上記のR57によって表される代表的な二価有機ラジカルは、非環式ラジカルおよび芳香族ラジカルの両方、例えば、アルキレン、アルキレン-Q-アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、およびアリーレン-(CH-Q-(CH-アリーレンラジカルなどを含み、各Q、y、およびmは、式(III)において上で定義された通りである。上記のXおよびR57によって表されるより好ましい非環式ラジカルは、二価アルキレンラジカルであるが、一方で、上記のXおよびR57によって表されるより好ましい芳香族ラジカルは、例えば、米国特許第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,179,055号、同第5,113,022号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,264,616号、同第5,364,950号、および同第5,527,950号により完全に開示されるような、二価アリーレンおよびビスアリーレンラジカルである。上記の各R58ラジカルによって表される代表的な好ましい一価炭化水素ラジカルには、アルキルラジカルおよび芳香族ラジカルが含まれる。
【0044】
例示的な好ましい有機ポリホスファイトには、次式(VI)~(VIII)のものなどのビスホスファイトが含まれてもよく、
【化6】
【化7】
【化8】
式中、式(VI)~(VIII)の各R57、R58、およびXは、式(V)について上で定義されたものと同じである。好ましくは、各R57およびXは、アルキレン、アリーレン、アリーレン-アルキレン-アリレン、およびビスアリレンから選択される二価炭化水素ラジカルを表すが、一方で、各R58ラジカルは、アルキルおよびアリールラジカルから選択される一価炭化水素ラジカルを表す。そのような式(V)~(VIII)の有機ホスファイト配位子は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,748,261号、同第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,113,022号、同第5,179,055号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,254,741号、同第5,264,616号、同第5,312,996号、同第5,364,950号、および同第5,391,801号で開示されていることが見られ得る。
【0045】
式(VI)~(VIII)のR10、R20、R46、R57、R58、Ar、Q、X、m、およびyは、上で定義された通りである。最も好ましくは、Xは、二価アリール(CH-(Q)-(CH-アリールラジカルを表し、各yの値は、個別に0または1であり、mの値は、0または1であり、Qは、-O-、-S-、または-C(R35-であり、各R35は、同じかまたは異なり、水素またはメチルラジカルを表す。より好ましくは、上で定義されたR58基の各アルキルラジカルは、1~24個の炭素原子を含有し得、上記の式(VI)~(VIII)の上で定義されたAr、X、R57基、およびR58基の各アリールラジカルは、6~18個の炭素原子を含有し得、該ラジカルは、同じかまたは異なっていてもよいが、一方で、Xの好ましいアルキレンラジカルは、2~18個の炭素原子を含有し得、R57の好ましいアルキレンラジカルは5~18個の炭素原子を含有し得る。さらに、好ましくは、上記の式のXの二価Arラジカルおよび二価アリールラジカルは、フェニレンラジカルであり、そこで、-(CH-(Q)-(CH-によって表される架橋基は、フェニレンラジカルを式のリン原子に接続する式の酸素原子に対してオルトである位置で該フェニレンラジカルに結合している。任意の置換基ラジカルは、そのようなフェニレンラジカル上に存在する場合、所与の置換フェニレンラジカルをリン原子に結合する酸素原子に対して、フェニレンラジカルのパラおよび/またはオルトの位置で結合していることが好ましい。
【0046】
上記の式(I)~(VIII)のそのような有機ホスファイトのR10、R20、R57、R58、W、X、Q、およびArラジカルのいずれかを、必要に応じて、本発明のプロセスの所望の結果に過度に悪影響を及ぼさない1~30個の炭素原子を含有する任意の好適な置換基で置換することができる。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、およびシクロヘキシル置換基などの対応する炭化水素ラジカルに加えて、該ラジカル上にあり得る置換基としては、例えば、-Si(R35などのシリルラジカル、-N(R15などのアミノラジカル、-アリール-P(R15などのホスフィンラジカル、-OC(O)R15などの-C(O)R15アシルオキシラジカルなどのアシルラジカル、-CON(R15および-N(R15)COR15などのアミドラジカル、-SO15などのアルコキシラジカル、-OR15などのスルホニルラジカル、-SOR15などのスルフィニルラジカル、-P(O)(R15などのホスホニルラジカル、ならびにハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシラジカルなどを挙げることができ、各R15ラジカルは、個別に、1~18個の炭素原子(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリールおよびシクロヘキシル基)を有する同じまたは異なる一価炭化水素ラジカルを表すが、ただし、-N(R15などのアミノ置換基では、統合された各R15が、窒素原子を有する複素環式ラジカルを形成する二価架橋基も表し、-C(O)N(R15および-N(R15)COR15などのアミド置換基では、Nに結合した各R15が、水素も表すことを条件とする。特定の所与の有機ホスファイトを構成する置換または非置換の炭化水素ラジカル基のいずれかが同じかまたは異なっていてもよいことを理解されたい。
【0047】
より具体的に例示的な置換基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、アミル、sec-アミル、t-アミル、イソオクチル、デシル、オクタデシルなどの一級、二級、および三級アルキルラジカル、フェニル、ナフチルなどのアリールラジカル、ベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチルなどのアラルキルラジカル、トリル、キシリルなどのアルカリルラジカル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチルなどの脂環式ラジカル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t-ブトキシ、-OCHCHOCH、-O(CHCHOCH、-O(CHCHOCHなどのアルコキシラジカル、フェノキシなどのアリールオキシラジカル、ならびに-Si(CH、-Si(OCH、-Si(Cなどのシリルラジカル、-NH、-N(CH、-NHCH、-NH(C)などのアミノラジカル、-P(Cなどのアリールホスフィンラジカル、-C(O)CH、-C(O)C、-C(O)Cなどのアシルラジカル、-C(O)OCHなどのカルボニルオキシラジカル、-O(CO)Cなどのオキシカルボニルラジカル、-CONH、-CON(CH、-NHC(O)CHなどのアミドラジカル、-S(O)などのスルホニルラジカル、-S(O)CHなどのスルフィニルラジカル、-SCH、-SC、-SCなどのスルフィジル(sulfidyl)ラジカル、-P(O)(C、-P(O)(CH、-P(O)(C、-P(O)(C、-P(O)(C、-P(O)(C13、-P(O)CH(C)、-P(O)(H)(C)などのホスホニルラジカル挙げられる。
【0048】
そのような有機ホスファイトの特定の例示的な例としては、2-t-ブチル-4-メトキシフェニル(3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、メチル(3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、6,6’-[[3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’-[[3,3’,5,5’-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン、(2R,4R)-ジ[2,2’-(3,3’、5,5’-テトラキス-tert-ブチル-1,1-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、(2R,4R)ジ[2,2’-(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、2-[[2-[[4,8,-ビス(1,1-ジメチルエチル)、2,10-ジメトキシジベンゾ-[d,f][1,3,2]ジオキソホスフェピン-6-イル]オキシ]-3-(1,1-ジメチルエチル)-5-メトキシフェニル]メチル]-4-メトキシ、亜リン酸のメチレンジ-2,1-フェニレンテトラキス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エステル、および亜リン酸の[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイルテトラキス[2-(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]エステルが挙げられる。
【0049】
金属-有機リン配位子錯体触媒は、一酸化炭素と錯化した金属、および加水分解性有機リン配位子を有利に含み、該配位子は、キレート化および/または非キレート化様式で金属に結合(錯化)している。触媒の混合物を用いることができる。反応流体中に存在する金属-有機リン配位子錯体触媒の量は、用いられることが望ましい所定の金属濃度を提供するのに必要な最小量であればよく、例えば、上記の特許に開示されているような、関与する特定のヒドロホルミル化プロセスを触媒するのに必要な金属の少なくとも触媒量に塩基を供給する量だけ必要とする。一般に、反応媒体中の遊離金属として計算して10ppmw~1000ppmwの範囲の触媒金属、例えば、ロジウムの濃度は、ほとんどのプロセスに対して十分であるが、一般には、10~500ppmwの金属、より好ましくは25~350ppmwの金属を用いることが好ましい。もちろん、使用済み触媒液が貴金属回収施設に送られる前に濃縮されている場合、使用済み触媒液中の金属濃度は、はるかに高くなり得る。
【0050】
金属-有機リン配位子錯体触媒に加えて、遊離加水分解性有機リン配位子(すなわち、金属と錯化していない配位子)も、反応媒体中に存在し得る。遊離加水分解性有機リン配位子は、上で議論された、上で定義された加水分解性有機リン配位子のいずれかに対応し得る。遊離加水分解性有機リン配位子は、用いられる金属-有機リン配位子錯体触媒の加水分解性有機リン配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、そのような配位子は、いかなる所与のプロセスにおいても同じである必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下~100モル以上の遊離加水分解性有機リン配位子を伴い得る。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1~50モルの加水分解性有機リン配位子の存在下で実行される。より好ましくは、有機ポリホスファイトの場合、金属1モル当たり1.1~4モルの有機ポリホスファイト配位子が用いられる。加水分解性有機リン配位子の該量は、存在する金属に結合(錯化)している有機リン配位子の量と、存在する遊離有機リン配位子の量の両方の合計である。必要に応じて、追加の加水分解性有機リン配位子を、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体にいつでも任意の好適な方式で供給して、例えば、反応媒体中の遊離配位子の所定レベルを維持することができる。
【0051】
加水分解性有機リン配位子が有機リン配位子である実施形態において、有機リン配位子の加水分解および金属-有機リン配位子複合体の失活を防止および/または低減するための、抽出システムなどでの緩衝水溶液の使用は、周知であり、例えば、US5,741,942およびUS5,741,944に開示されている。そのような緩衝液システムおよび/またはそれらの調製方法は、当技術分野で周知である。緩衝液の混合物を用いることができる。
【0052】
加水分解を経験し得る例示的な金属-有機リン配位子錯体触媒によるヒドロホルミル化プロセスには、例えば、米国特許第4,148,830号、同第4,593,127号、同第4,769,498号、同第4,717,775号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,264,616号、同第5,288,918号、同第5,360,938号、同第5,364,950号、同第5,491,266号、および号、同第7,196,230号に記載されているようなプロセスが含まれる。加水分解を受ける可能性のあるP-Z部分を含有する種には、記載されたWO2008/071508、WO2005/042458、および米国特許第5,710,344号、同第6,265,620号、同第6,440,891号、同第7,009,068号、同第7,145,042号、同第7,586,010号、同第7,674,937号、および同第7,872,156号などの有機ホスホナイト、ホスホルアミダイト、およびフルオロホスホナイトが含まれる。これらの種は、米国特許第5,744,649号および同第5,741,944号に教示されている抽出技術の使用によって抽出することができる様々な酸性および/または極性分解生成物を生成するであろう。したがって、有利に用いられるヒドロホルミル化処理技術は、例えば、ガスリサイクル、液体リサイクル、およびそれらの組み合わせなどの任意の既知の処理技術に対応し得る。好ましいヒドロホルミル化プロセスは、触媒液のリサイクルを伴うものである。
【0053】
任意選択で、例えば、US4,567,306に教示されているように、有機窒素化合物をヒドロホルミル化反応流体に添加して、加水分解性有機リン配位子の加水分解時に形成される酸性加水分解副生成物を除去することができる。そのような有機窒素化合物を使用して、酸性化合物と反応し、それとの変換生成物塩を形成することによって酸性化合物を中和することができ、それによって触媒金属が酸性加水分解副生成物と錯体を形成するのを防ぎ、したがって触媒が反応条件下で反応ゾーンに存在する間に、触媒の活性を保護するのを助ける。しかしながら、これらのアミン添加剤を使用しているにもかかわらず、触媒毒および重質物の蓄積などの他の要因により、触媒活性が最終的に低下する可能性がある。
【0054】
ヒドロホルミル化反応プロセスの反応条件は、周知であり、光学活性および/または非光学活性アルデヒドを生成するためにこれまで用いられてきた任意の好適な種類のヒドロホルミル化条件を含み得る。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物のタイプにより左右される。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1~69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般に、本プロセスは、水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の全ガス圧14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満で操作されることが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るのに必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧は、1~6,900kPaが好ましく、21~5,500kPaがより好ましく、水素分圧は34~3,400kPaがより好ましく、69~2,100kPaがさらに好ましい。一般に、ガス状H:COのモル比は、1:10~100:1以上の範囲であり得、より好ましいモル比は、1:10~10:1である。
【0055】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の運転可能な反応温度で行うことができる。有利なことに、ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の反応温度で行われる。
【0056】
ヒドロホルミル化プロセスは、例えば、固定床反応器、流動床反応器、連続撹拌タンク反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、またはスラリー反応器などの1つ以上の好適な反応器を使用して実施され得る。反応器の最適なサイズおよび形状は、使用される反応器のタイプに依存する。用いられる反応ゾーンは、単一の容器であってもよく、または2個以上の個別の容器を備えてもよい。用いられる分離ゾーンは、単一の容器であってもよく、または2個以上の個別の容器を備えてもよい。本発明で用いられる緩衝液処理ゾーンは、単一の容器であってもよく、または2個以上の個別の容器を備えてもよい。本明細書で用いられる反応ゾーン(複数可)および分離ゾーン(複数可)は、同じ容器内または異なる容器内に存在し得る。例えば、反応蒸留、反応膜分離などの反応分離技術は、反応ゾーン(複数可)で起こり得る。
【0057】
オレフィン性不飽和化合物からアルデヒドを生成するための特定のヒドロホルミル化プロセス、ならびにヒドロホルミル化プロセスの反応条件および成分は、本発明の重要な特徴ではない。このプロセスは、触媒が第8族遷移金属を含み、加水分解性有機リン配位子が非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まないヒドロホルミル化プロセスからの任意の使用済み触媒流体で実践することができる。
【0058】
ヒドロホルミル化プロセスを連続式手法で行うことが一般に好ましい。連続式ヒドロホルミル化プロセスはその技術分野において周知である。連続プロセスは、単一パスモードで行うことができ、すなわち、蒸気混合物は、未反応オレフィン系出発物質を含み、気化したアルデヒド生成物を、液体反応混合物から除去し、そこからアルデヒド生成物を回収しそしてオレフィン系出発物質(複数可)を補給し、未反応オレフィン系出発物質(複数可)をリサイクルさせることなく、次の単一パススルーのために一酸化炭素および水素を、液体反応媒体に供給する。そのようなタイプのリサイクル手順は、当技術分野で周知であり、例えばUS4,148,830に開示されているような所望のアルデヒド反応生成物(複数可)から分離された金属-有機リン錯体触媒流体の液体リサイクル、または、例えば、US4,247,486に開示されているようなガスリサイクル手順、ならびに必要に応じて、液体およびガスリサイクル手順の両方の組み合わせを伴い得る。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒リサイクルプロセスを含む。好適な液体触媒リサイクル手順の例は、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、および同第5,110,990号に開示される。
【0059】
上記のように、所望のアルデヒドは、反応混合物から回収することができる。例えば、米国特許第4,148,830号および同第4,247,486号に開示されている回収技術を使用できる。例えば、連続液体触媒再循環プロセスでは、反応ゾーンから除去された液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒などを含有する)、すなわち、反応流体の一部は、分離ゾーン、例えば気化器/分離器に送ることができ、所望のアルデヒド生成物は、1つ以上の段階で、常圧、減圧、または高圧下で液体反応流体から蒸留により分離され、凝縮され、生成物受け器に集めることができ、所望であれば、さらに精製することができる。残りの液体反応混合物含有非揮発性触媒は、次いで、所望により任意の他の揮発性物質、例えば未反応オレフィンを、例えば従来の方式での蒸留により凝縮アルデヒド生成物から分離した後に液体反応に溶解した水素および一酸化炭素とともに反応器に戻してもよい。一般に、有機リン配位子および反応生成物の起こり得る分解を避けるために、減圧下および低温で、触媒含有反応混合物から所望のアルデヒドを分離することが好ましい。
【0060】
例示的な非光学活性アルデヒド生成物としては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-メチル1-ブチルアルデヒド、ヘキサナール、ヒドロキシヘキサナール、2-メチル1-ヘプタナール、ノナナール、2-メチル-1-オクタナール、デカナール、アジパアルデヒド、2-メチルグルタルアルデヒド、2-メチルジアルデヒド、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、6-ヒドロキシヘキサナール、アルケナール、例えば2-、3-、および4-ペンテナール、アルキル5-ホルミルバレレート、2-メチル-1-ノナナール、2-メチル1-デカナール、3-プロピル-1-ウンデカナール、ペンタデカナール、3-プロピル-1-ヘキサデカナール、エイコサナル、2-メチル-1-トリコサナール、ペンタコサナール、2-メチル-1-テトラコサナール、ノナコサナール、2-メチル-1-オクタコサナール、ヘントリアコンタナール、2-メチル-1-トリアコンタナールなどが挙げられる。
【0061】
例示的な光学活性アルデヒド生成物としては、本発明の非対称的なヒドロホルミル化プロセスによって調製される(エナンチオマー)アルデヒド化合物、例えば、S-2-(p-イソブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(6-メトキシ-2-ナフチル)プロピオンアルデヒド、S-2-(3-ベンゾイルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(3-フルオロ-4-フェニル)フェニルプロピオンアルデヒド、およびS-2-(2-メチルアセトアルデヒド)-5-ベンゾイルチオフェンが挙げられる。
【0062】
触媒活性は、温度、ロジウム濃度、原材料濃度(例えば、合成ガスおよびオレフィン)などのいくつかのプロセス変数の関数である。しかしながら、これらの変数を使用して、商業的に実行可能な一定の反応速度を維持できる範囲に限界がある。例えば、高温は、より高い重質物の形成をもたらし、より高い圧力は、高価な機器のアップグレードを必要とする場合がある。追加のロジウムを追加して、触媒濃度を上げることができるが、これは、貴金属の大部分が不活性である場合、費用が高くなり得るため、無駄な資本を構成する。さらに、不活性化された金属が存在すると、コロイド状金属がさらなるコロイド成長のための「種」として機能するかのように、触媒不活性化の速度が増加するように思われる。したがって、ある時点で、触媒溶液の活性は、経済的な生成には不十分になり、その結果、パージ流または使用済み触媒流体全体が貴金属回収のために送られる必要がある。
【0063】
反応速度を使用して定量化されるヒドロホルミル化触媒の活性は、典型的には、例えば、アルデヒド/L/hr/ppm Rhのgmolの単位により、単位時間当たりの触媒溶液の体積当たりの生成物(アルデヒド)のモル数(一般に活性金属の濃度によって計る)として測定される。他の従来の測定値は、「ターンオーバー数」またはTONの単位(hr-1の単位)であり、これは、活性触媒のモル当たりに生成されるアルデヒドのモル数である。活性触媒のモル数は、典型的には、原子吸光または誘導結合プラズマ分析)を使用してロジウムの量をppmで測定し、「活性%」値を計算するための、新しい触媒溶液の活性(反応速度)との比較によって決定される。
【0064】
ヒドロホルミル化触媒の活性が不十分になると、使用済み触媒流体の一部または全部がヒドロホルミル化システムから除去され、オンサイトの貴金属回収プロセス、またはより一般的にはオフサイトの専門の貴金属回収会社のいずれかに送られる。使用済みの触媒液は、可能な限り多くのアルデヒド生成物を回収するために、生成物/触媒分離プロセスの後に除去されることが好ましい。次に、残りの使用済み触媒流体は、いくつかの実施形態では、貴金属回収施設への経済的な輸送のために十分な量が得られるまで、タンクまたは容器に貯蔵することができる。
【0065】
驚くべきことに、使用済み触媒液がヒドロホルミル化システムから除去された後、追加の非加水分解性三有機リン化合物をそれに添加することにより、溶液からの貴金属の沈殿を防ぐことができることが見出されている。場合によっては、非加水分解性三有機リン化合物の添加により、使用済み触媒液に低レベルでも沈殿した物質を再溶解させることが見出されている。これらの非加水分解性三有機リン化合物は、従来の貴金属回収プロセスに干渉しないであろう、理想的には安価な危険性のない材料である。いくつかの実施形態において、トリアリールホスフィンは、使用済み触媒流体中の触媒金属を安定化するのに特に有用であることが見出されている(例えば、触媒金属および関連化合物を溶液中に保持する)。
【0066】
いくつかの実施形態において、非加水分解性有機リン配位子は、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、およびアリールジアルキルホスホスフィンを含み、アルキル部分は、C1~C20炭化水素および/またはC6~C20環状炭化水素、ならびにそれらの混合物である。
【0067】
いくつかの実施形態において、使用される非加水分解性三有機リン化合物は、トリアリールホスフィンである。本発明のいくつかの実施形態で使用することができるトリアリールホスフィンは、3つのアリールもしくはアリールアルキルラジカル、またはそれらの組み合わせに共有結合した1つのリン(III)原子を含む任意の有機化合物を含む。トリアリールホスフィン配位子の混合物もまた、いくつかの実施形態で使用され得る。代表的な非加水分解性有機モノホスフィンには、次式(式IX)を有するものが含まれ、
【化9】
式中、各R29、R30、およびR31は、同じかまたは異なっていてもよく、4~40個以上の炭素原子を含有する置換または非置換アリールラジカルを表す。そのようなトリアリールホスフィンは、例えば、米国特許第3,527,809号に見られ、より詳細に記載され得、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的なトリアリールホスフィン配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリナフチルフィン、トリトリルホスフィン、トリ(p-ビフェニル)ホスフィン、トリ(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m-クロロフェニル)-ホスフィン、p-N、N-ジメチルアミノフェニルビス-フェニルホスフィンなどが挙げられる。トリフェニルホスフィン、すなわち、各R29、R30、およびR31がフェニルである式IXの上記の化合物は、本発明の実施形態において非加水分解性三有機リン化合物として使用することができる1つの特に好適な有機モノホスフィン配位子である。
【0068】
本発明のプロセスは、第8族遷移金属および加水分解性有機リン配位子を含むが、非加水分解性三有機リン化合物を実質的に含まないヒドロホルミル化反応触媒を含む。このプロセスは、第8族遷移金属の貴金属回収のための触媒を含む使用済み触媒流体を調製することができる。使用済みの触媒液(例えば、反応液)は、ヒドロホルミル化プロセスから除去される。いくつかの実施形態では、使用済みの触媒流体を濃縮して、貴重なアルデヒド(例えば、販売される)を回収する。
【0069】
次に、非加水分解性三有機リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン)は、流体を貯蔵する前に、または貴金属回収のために輸送する前に、使用済み触媒流体に添加される。
【0070】
一実施形態において、添加される非加水分解性三有機リン化合物は、使用済みホスフィンベースのヒドロホルミル化プロセスの一部である。別の実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物は、ヒドロホルミル化反応プロセスの外部の蒸留システムで使用済み触媒流体を濃縮する前に添加される。別の実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物は、最初に容器に添加され、次に、使用済み触媒流体の添加前に容器が不活性化される。別の実施形態において、システム全体の触媒チャージが貴金属回収に送られるとき、ヒドロホルミル化プロセスが完了すると(例えば、オレフィン供給が終了し、この触媒チャージで再開しない)、非加水分解性三有機リン化合物は、ヒドロホルミル化反応器に添加される。次に、既存の生成物/触媒分離ゾーン(例えば、気化器)を使用して、必要に応じて、貯蔵への排出および/または貴金属回収操作への輸送の前に、溶液をさらに濃縮することができる。
【0071】
非加水分解性三有機リン化合物の量は、使用済み触媒液の総重量に基づいて、使用済み触媒液の0.1~20重量パーセントの範囲である。いくつかの実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物の量は、使用済み触媒流体の総重量に基づいて、使用済み触媒流体の1~10重量パーセントの範囲である。いくつかの実施形態において、非加水分解性三有機リン化合物の量は、使用済み触媒流体の総重量に基づいて、使用済み触媒流体の2~6重量パーセントの範囲である。非加水分解性三有機リン配位子の量は、ロジウム濃度および事前の不活性化の程度を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存する可能性がある。非加水分解性三有機リン化合物を完全に溶解および分散させることを保証するために、三有機リン配位子の添加後の適度な加熱が望ましい場合があるが、いくつかの実施形態では必要ではない。貴金属回収施設は、20重量パーセントをはるかに超えるホスフィンを含有するホスフィンベースのヒドロホルミル化触媒(例えば、トリフェニルホスフィンがヒドロホルミル化反応触媒内の配位子として使用されるプロセスから)に慣れているため、本発明の実施形態に従って添加される非加水分解性三有機リン化合物の量は、彼らが慣れているものと顕著に異ならないであろう。
【0072】
加水分解性有機リン配位子ベースの貴金属触媒と非加水分解性三有機リン化合物との得られた混合物は、必要に応じて、貯蔵および/または貴金属回収施設に輸送することができる。貴金属の堆積量は、大幅に削減または排除されるため、貴金属の回収プロセスが大幅に容易になるであろう。
【0073】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例に詳細に説明する。
【実施例
【0074】
以下の実施例におけるすべての部および百分率は、他に示されていない限り重量による。他に示されていない限り、圧力は絶対圧力として示されている。
【0075】
実施例1
ロジウムおよびニッケル金属を含むビスホスファイト配位子を用いるブテンヒドロホルミル化システムからの使用済み触媒流体は、特に気化器テール流での何ヶ月もの操作後に、かなりの金属配位子沈殿物を呈した。そのような使用済み触媒液試料中の沈殿物を可溶化しようと努力して、様々な高分子量添加剤がテストされている。触媒液を表1に示される量の添加剤と混合し、50℃に加熱する。結果を表1に示す。トリフェニルホスフィン(tiphenylphosphine、TPP)は、最低レベルで最高の性能を呈する。驚くべきことに、同様のホスファイトは、効果がなく、フェニル部分を有する他の添加剤は、同じ効果を達成するためにはるかに高いレベルを必要とした。
【表1】
【0076】
実施例2
実施例1からのTPPおよびベンジルエーテル試料を、さらなる濃度についてさらに評価する。使用済み触媒液中の残留バレルアルデヒドを50℃の真空下(40mm Hg)で除去して、アルデヒド生成物を回収するための追加濃度をモデル化する。得られた材料は、沈殿に対して評価する。周囲温度に冷却した後、両方の試料は、透明に見えるが、周囲温度で48時間後、ベンジルエーテル材料(2a)は、静置時に沈殿を呈するが、TPP含有溶液(2b)については、沈殿は、観察されない。得られた材料の組成を表2に示す。良好な溶媒であるアルデヒドがない場合、沈殿の傾向は、より大きいが、TPPは、依然として可溶性組成を維持できる。TPP溶液の31P NMR分析は、いかなる新しい金属-TPP錯体をも示さなかった。
【表2】