IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エシロール アテルナジオナールの特許一覧

特許7547412紫外領域及び可視領域の両方において低い反射性を持つ反射防止膜を有する光学部品
<>
  • 特許-紫外領域及び可視領域の両方において低い反射性を持つ反射防止膜を有する光学部品 図1
  • 特許-紫外領域及び可視領域の両方において低い反射性を持つ反射防止膜を有する光学部品 図2
  • 特許-紫外領域及び可視領域の両方において低い反射性を持つ反射防止膜を有する光学部品 図3
  • 特許-紫外領域及び可視領域の両方において低い反射性を持つ反射防止膜を有する光学部品 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】紫外領域及び可視領域の両方において低い反射性を持つ反射防止膜を有する光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/113 20150101AFI20240902BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20240902BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240902BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G02B1/113
G02B1/16
G02B1/14
G02C7/10
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022077895
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2019200519の分割
【原出願日】2011-12-09
(65)【公開番号】P2022106954
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】1060394
(32)【優先日】2010-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518182542
【氏名又は名称】エシロール アテルナジオナール
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】カド エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ エガビーブ フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ポフィラ オリビエ
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-215038(JP,A)
【文献】特開2002-031701(JP,A)
【文献】特表2009-541810(JP,A)
【文献】特許第6740118(JP,B2)
【文献】特開2007-279203(JP,A)
【文献】特開平07-253501(JP,A)
【文献】特許第7266510(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/113
G02B 1/16
G02B 1/14
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前主面及び後主面を備える基材を有し、前記後主面が、1.6より高い屈折率を持つ少なくとも1つの層と1.5より低い屈折率を持つ少なくとも1つの層との積層体を有する多層反射防止膜で被覆されている眼鏡レンズであって、
前記屈折率は、波長550nmにおける屈折率を表し、
前記後主面の平均反射率Rは、1.15%以下であり、
前記後主面の平均光反射率Rは、1%以下であり、
ISO 13666:1998 規格において定義される関数W(λ)によって重み付けされた、280nmと380nmとの間の前記後主面の平均反射率RUVは、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%未満であり、
前記多層反射防止膜は、少なくとも3層からなり、
前記多層反射防止膜は、酸化インジウムをベースとする厚さ15nmより厚い、いかなる層をも有しておらず、
前記多層反射防止膜の外層は、シリカをベースとする層であり、
重み付されていない平均反射率は、前記後主面について、280nm~295nmの波長範囲の少なくとも70%に亘って、15°の入射角に対して、10%超であり、
前記平均反射率Rは、ISO 13666:1998 規格において定義されるものであって、400nmと700nmとの間の重み付されていないスペクトル反射率平均であり、
前記平均光反射率Rは、ISO 13666:1998 規格において定義されるようなものであって、380nmと780nmとの間の重み付されたスペクトル反射率平均である眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記重み付されていない平均反射率は、前記後主面について、280nm~295nmの少なくとも1つの波長範囲に亘って、30°の入射角及び45°の入射角に対して、6%超である請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記多層反射防止膜は、1.5より低い屈折率、10~100nmの厚さを持つ少なくとも1層を含み、1.6より高い屈折率、8~120nmの厚さを持つ少なくとも1層を含み、全体の厚さが1μmより薄い請求項2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記多層反射防止被膜は、前記基材から遠ざかる方向において、8~25nmの厚さを持つ1.6より高い屈折率の層と、10~35nmの厚さを持つ1.5より低い屈折率の層と、75~105nmの厚さを持つ1.6より高い屈折率の層、及び、70~95nmの厚さを持つ1.5より低い屈折率の層を有するか、または、
前記多層反射防止被膜は、前記基材から遠ざかる方向において、20~65nmの厚さを持つ1.6より高い屈折率の層と、10~30nmの厚さを持つ1.5より低い屈折率の層と、5~75nmの厚さを持つ1.6より高い屈折率の層と、20~75nmの厚さを持つ1.6より高い屈折率の層、及び、60~85nmの厚さを持つ1.5より低い屈折率の層を有する請求項1~3のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項5】
前記重み付されていない平均反射率は、前記後主面について、280nm~295nmの波長範囲の少なくとも20%に亘って、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%超である請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項6】
前記多層反射防止膜の外層は、10~100nmの厚さを持つシリカをベースとする層である請求項1~5のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項7】
前記重み付されていない平均反射率は、前記後主面について、280nm~290nmの波長範囲の少なくとも70%に亘って、15°の入射角に対して、15%超である請求項1~6いずれか1項に記載のレンズ。
【請求項8】
前記多層反射防止膜は、SiOベース層を有する副層に堆積され、前記SiOベース層は、少なくとも80重量%のシリカを含んでいる請求項1~7のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項9】
前記SiOベース層は、100~300nmの厚さを有する請求項8に記載のレンズ。
【請求項10】
前記副層は、摩耗防止被膜上に堆積される請求項8または9に記載のレンズ。
【請求項11】
前記副層は、前記SiOベース層に加えて、多くとも3層を有する請求項8~10のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項12】
前記摩耗防止被膜は、少なくとも1つのアルコキシシラン、及び/又は、それらの加水分解物を有する組成物により調製される請求項10に記載のレンズ。
【請求項13】
前記多層反射防止膜は、少なくとも1つの導電層を有する請求項1~12のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項14】
290nmと330nmとの間の前記後主面の重み付されていない平均反射率Rm-UV1は、15°の入射角に対して、15%未満である請求項1~13のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項15】
300nmと320nmとの間の前記後主面の重み付されていない平均反射率Rm-UV2は、15°及び/又は30°及び/又は45°の入射角に対して、4%未満である請求項1~14のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項16】
300nmと380nmとの間の前記後主面の重み付されていない平均反射率Rm-UV3は、15°の入射角に対して、5%未満である請求項1~15のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項17】
可視領域における前記後主面の平均反射率Rmは、1%以下である請求項1~16のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項18】
可視領域における前記後主面の重み付された平均光反射率Rは、0.90%以下である請求項1~17のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項19】
ISO 13666:1998 規格において定義される関数W(λ)によって重み付けされた、280nmと380nmとの間の前記後主面の平均反射率RUVが、30°の入射角及び45°の入射角に対して、4%以下である請求項1~18のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項20】
前記多層反射防止膜は、いかなるMgF層を有していない請求項1~19のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項21】
前記副層は、2~10μmの厚さを有する摩耗防止被膜上に堆積される請求項11に記載のレンズ。
【請求項22】
可視領域における前記後主面の重み付されていない平均反射率Rは、0.75%以下である請求項17に記載のレンズ。
【請求項23】
前記多層反射防止膜は、1.6超の屈折率を持つ少なくとも2つの層と、1.5以下の屈折率を持つ少なくとも2つの層との積層体とを有する請求項1~22のいずれかに記載のレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その後面、及び必要に応じてその前面に、UVA及びUVB発光領域と、可視領域とにおいて、反射を強力に減少させる反射防止膜を有する光学部品に関する。この光学部品は、とりわけ、眼鏡レンズ、特に、着色ソーラーレンズである。
【背景技術】
【0002】
太陽スペクトルは、様々な波長をもつ電磁放射線、特に、紫外線(UV)を有する。このUVスペクトルは、多くの帯域、特に、UVA、UVB及びUVC帯域を持つ。地表に到達するこれらのUV帯域の中で、UVA帯域、315nm~380nmの範囲、及びUVB帯域、280nm~315nmの範囲が、特に、網膜に有害である。
【0003】
従来の反射防止膜は、可視領域、典型的には380nm~780nmのスペクトル領域内においてレンズ表面の反射を減少させるように設計され、最適化されている。一般に、紫外領域(280~380nm)における反射は、最適化されておらず、しばしば、従来の反射防止膜それ自体によって強調されている。論文「反射防止膜が紫外線を反射する」"Anti-reflectivecoatings reflect ultraviolet radiation", Citek, K. Optometry 2008, 79, 143-148は、この現象を強調している。
【0004】
UVA及びUVB領域における平均反射は、こうして、従来の反射防止レンズに対して、高いレベル(60%まで)に達しているかもしれない。例えば、これらの近年の間に、ほとんどの製造業者によって上市されている非ソーラー反射防止部品に関しては、UV平均反射は、30°~45°の入射角に対して、10~25%の範囲にある。装着者の全面から来て、装着者の目(垂直入射、0~15°)に到達する紫外線の大部分は、眼鏡レンズ基材によって吸収されるので、レンズの前面においては問題が無い。
紫外線透過に対するより良い保護を、ソーラー眼鏡レンズを通して得ることができる。そして、ソーラー眼鏡レンズは、可視スペクトル光度を減少させ、UVBを全面的に吸収し、UVAを全面的に又は部分的に吸収するように研究され、設計されている。
【0005】
他方、装着者の後に置かれている光源に起因する紫外線は、もし、レンズに紫外線に有効である反射防止膜が設けられていないならば、レンズ後面で反射し、装着者の目に達し、その結果、装着者の健康に影響を与える可能性がある。そのような現象は、眼に入る迷走反射のリスクを増加させる大径のファッションサングラスのトレンドによってより強くなる。
レンズ後面で反射され、装着者の目に達する光線は、狭い入射角範囲、30~45°(斜め入射)の範囲を持つことが認められている。
現在は、後面からの紫外線反射に関する基準はない。
【0006】
紫外領域に有効であり、紫外線を反射するよりはむしろ透過及び/又は吸収する反射防止膜を製作する方法を取り扱う多くの特許がある。しかしながら、全紫外領域に亘る反射防止性能を最適化することは、一般的に、可視領域における反射防止性能に有害であることが明らかとなっている。逆に、可視領域における反射防止性能を最適化することが、満足できる反射防止性能を紫外領域において得ることができることは確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP 1174734
【文献】WO 97/28467
【文献】US 4852974
【文献】WO 2010/125667
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
EP出願EP1174734は、反射防止膜表面の反射が280~700nmの波長領域内において、生のままの光学部品表面の反射に比較してより低いように設計された多層反射防止膜をその後面に有する眼鏡レンズを開示している。この反射防止膜の機能は、装着者の目に紫外線が達することを防止するために、装着者の後から入ってくる、又は装着者の顔によって反射される紫外線の反射を、レンズの後面において最小化することにある。
このEP出願に記載されている反射防止膜は、紫外領域において極めて有効である。しかしながら、可視領域におけるそれらの平均反射率を改善することが賢明であろう。また、考案された積層体は、時々、比較的に複雑であり、10層までを持つ。
層の数が多くなればなるほど、広い波長領域内において有効な反射防止膜の製品はより易しくなる。しかしながら、そのような複雑な反射防止膜を作製することは、より大量の材料が必要となり、製造工程が最後までより長くなるので、経済的な観点からはそれ程興味あることではない。
【0009】
PCT出願WO 97/28467は、4層反射防止積層体HI/LI/HI/LIで被覆されたフォトクロミック基材を有する透明なフォトクロミック部品を開示しており、ここで、HIは、高屈折率層を意味し、LIは、低屈折率層を意味する。このような被膜は、フォトクロミック化合物の活動を可能にする波長領域である350°と400°との間の反射を最小化することによって、フォトクロミック基材内又は基材上に存在するフォトクロミック化合物の挙動を邪魔しないように設計されている。こうして用意された反射防止膜は、UVA領域において有効であるが、この特性は、可視領域における反射防止性能の重要な低下を伴う。
【0010】
米国特許第4852974号は、フォトクロミック基材と、伝達されていない入射角に対し、290nmと330nmとの間の平均反射率が15%より高く、かつ、330nmと380nmとの間の平均反射率が4%より低い多層反射防止膜とを有する光学部品を開示している。このような反射防止膜は、フォトクロミック基材に含まれるフォトクロミック化合物の寿命を延ばすことができるが、紫外線相対効率が最も高い範囲(290~300nm)内において比較的効率が悪い。さらに、可視領域の反射防止膜の性能の改善が望まれるであろう。
【0011】
PCT出願WO 2010/125667は、装着者の後から入ってくる紫外線のレンズ後面の反射を減少させることを可能にし、その結果、紫外線が装着者の目に到達できない反射防止膜をその後面に備える眼鏡レンズを開示している。
【0012】
そのため、本発明の目的は、その後面に、可視領域において極めて良好な反射防止性能を持ち、同時に、生のままの基材又は従来の反射防止膜を有する基材と比較して、紫外線、特に紫外-A光線及び紫外-B光線の反射を著しく減少させることでき、その製造が工業的規模で容易である紫外線防止、反射防止膜を有する無機又は有機ガラスの基材を備える透明な光学部品、特に現況レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数の薄層からなり、それらの厚さ及び材料が可視領域及び紫外領域の両方において満足できる反射防止性能を得るように選択された積層体を有する、改善された概念を持つ反射防止膜を提供するものである。
紫外太陽放射線分布は、UV太陽放射線の相対スペクトル効率によって調整され、そして、それは、(紫外-B光線の領域に属する)280nm~295nmの範囲において0又はほとんど0である。本発明は、この波長領域内の低い反射防止性能を持つ反射防止膜を提供することにあり、こうして、可視領域、及びそのような放射線の相対スペクトル効率によって調整された太陽放射線分布が装着者の対して高い(300~320nm)紫外領域において、極めて効率の良い反射防止膜を得ることができる。こうして、本発明に係る反射防止膜は、装着者に影響を与えることなく、280~295nmの領域においてより高い分光反射率を許容する。
【0014】
それゆえ、本発明は、前主面及び後主面を備える基材を有し、後主面は、1.6より高い屈折率を持つ少なくとも1つの層と、1.5より低い屈折率を持つ少なくとも1つの層との積層体を有する多層反射防止膜で被覆されている光学部品、好ましくは、眼鏡レンズであって、
可視領域における前記後主面の平均反射率Rが、1.15%以下であり、
可視領域における前記後主面の平均光反射率Rが、1%以下であり、
ISO 13666:1998 規格において定義される関数W(λ)によって重み付けされた、280nmと380nmとの間の前記後主面の平均反射率RUVが、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%未満であり、
多層反射防止膜が、3以上、かつ7以下、好ましくは6以下、より好ましくは5以下の数の層を有し、
多層反射防止膜が、酸化インジウムをベースとする厚さ20nm以上のいかなる導電層をも有しておらず、
多層反射防止膜の外層が、シリカをベースとする層である光学部品、好ましくは、眼鏡レンズに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、15°、30°及び45°の入射角に対して、本願の実施例において準備されたいくつかのレンズの後面の表面の反射率の変動を波長の関数として示す。
図2図2は、15°、30°及び45°の入射角に対して、本願の実施例において準備されたいくつかのレンズの後面の表面の反射率の変動を波長の関数として示す。
図3図3は、15°、30°及び45°の入射角に対して、本願の実施例において準備されたいくつかのレンズの後面の表面の反射率の変動を波長の関数として示す。
図4図4は、15°、30°及び45°の入射角に対して、本願の実施例において準備されたいくつかのレンズの後面の表面の反射率の変動を波長の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、添付の図面を参照してより詳細に説明されるであろう。
本願において、光学部品が、その表面上に1以上の被膜を有する時、「部品上に1つの層又は1つの被膜を堆積すること」という表現は、1つの層又は1つの被膜が、部品の外側被膜の外側の(露出した)表面上に堆積されること、即ち、その被膜は、基材から最も遠く離れていることを意味するようにされている。
【0017】
基材「上に」あると言われる、又は基材「上に」堆積される被膜は、(i)前記基材の上に位置している被膜、(ii)必ずしも前記基材と接触しているわけではない被膜、即ち、1以上の中間被膜が前記基材と問題となっている被膜との間に配置され得ること、(iii)必ずしも前記基材を完全に覆っているわけではない被膜として定義される。
好ましい実施形態においては、基材上の被膜、又は基材上に堆積された被膜は、この基材に直接接触している。
【0018】
「層1が層2の下に横たわっている」時、層2が層1より基材からより遠くに離れていることを意味するようにされている。
ここで、用いられているように、基材の後(又は内)面は、部品が使用される時、装着者の目から最も近い面を意味するようにされている。それは、通常、凹面である。これに対して、基材の前面は、部品が使用される時、装着者の目から最も遠く離れた面である。それは、通常、凸面である。
【0019】
概して、本発明に係る光学部品の反射防止膜は、「紫外線防止、反射防止被膜」と呼ばれるが、これを、如何なる基材上にも、好ましくは、有機レンズ基材、例えば、熱可塑性又は熱硬化性樹脂材料上にも、堆積することができる。
基材に適切に使用されるべき熱可塑性樹脂材料としては、(メタ)アクリル酸(コ)ポリマ、特に、メチルポリ(メタクリレート)(PMMA)、チオ(メタ)アクリル酸(コ)ポリマ、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、(ポリ)チオウレタン、ポリオールアリルカーボネート(コ)ポリマ、エチレン/ビニルアセテート熱可塑性コポリマ、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリエピスルフィド、ポリエポキシド、ポリカーボネート/ポリエステルコポリマ、エチレン/ノルボルネンコポリマ、又は、エチレン/シクロペンタジエンコポリマのようなシクロオレフィンコポリマ、及びそれらからなる化合物が含まれる。
【0020】
ここで用いられているように、(コ)ポリマは、コポリマ又はポリマを意味するようにされている。ここで用いられているように、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味するようにされている。ここで用いられているように、ポリカーボネート(PC)は、ホモポリカーボネート又はコポリカーボネートのどちらか、及びブロックコポリカーボネートを意味するようにされている。
特に推奨される基材としては、ジエチレングリコールとビス-アリル-カーボネートの共重合から得られる、例えば、PPGインダストリーズ社製、商品名CR-39Rで販売される基材(ORMARレンズ、ESSILOR)、又は、フランス特許FR 2734827の明細書中に記載されるような、チオ(メタ)アクリレートモノマの共重合から得られるような基材が含まれる。前記基材は、上記モノマ化合物の重合から得られても良いし、又は、さらに、そのようなポリマ及び(コ)ポリマの混合物からなっていてもよい。
【0021】
必要に応じて被覆された基材、例えば、耐摩耗性層及び/又は耐引っ掻き性被膜又は副層を持つ基材上に反射防止膜を堆積するに先立って、この必要に応じて被覆された基材の表面は、反射防止膜の密着性を強化するために、通常、物理的又は化学的表面活性化処理を受ける。このような前処理は、一般に真空下で行われる。それは、活性の高い、及び/又は反応性の高い種を用いた、例えば、イオンビーム(「イオンプレクリーニング」又は「IPC」)を用いた、又は、電子ビーム、コロナ放電処理、イオンスパレーション(spallation)処理、紫外線処理、又は、真空下での、一般に、酸素又はアルゴンプラズマを用いたプラズマ媒介処理(plasma-mediated treatment)を用いたボンバードメント(bombardment)であっても良い。また、それは、酸性又は塩基性処理、及び/又は、溶剤性(solvent-based)処理(水、過酸化水素、又は任意の有機溶剤)であっても良い。
【0022】
本願においては、Rで表される「平均反射率」は、ISO 13666:1998 規格において定義され、ISO 8980-4 規格に従って(17°未満、典型的には、15°の入射角に対して)測定されるようなもので、即ち、これは、400nmと700nmとの間の全可視スペクトルに亘る(重み付けされていない)スペクトル反射率平均である。
【0023】
で表される「平均光反射率」は、ISO 13666:1998 規格において定義され、ISO 8980-4 規格に従って(17°未満、典型的には、15°の入射角に対して)測定されるようなもので、即ち、これは、380nmと780nmとの間の全可視スペクトルに亘る、重み付けされたスペクトル反射率平均である。
【0024】
m-UVA1で表される290nmと330nmとの間の平均反射率は、類推によって定義されることができ、290nmと330nmとの間の平均スペクトル反射率に相当する。本発明によれば、この反射率を、30°~45°の範囲の入射角において測定することができる。Rm-UVA及びRm-UVBで表されるUVA及びUVBの範囲における平均反射率は、同様に定義され、それらの和は、Rm-UVで表される紫外領域(280nm~380nm)における平均反射率に相当する。
【0025】
最後に、ISO 13666:1998 規格において定義される関数W(λ)によって重み付けされ、かつ、Rm-UVで表される280nmと380nmとの間の平均反射率を、以下の関係式で定義することができる。
【0026】
【数1】

ここで、R(λ)は、所定の波長におけるレンズスペクトル反射率を表し、W(λ)は、太陽放射照度Es(λ)と効率相対スペクトル関数S(λ)との積に等しい重み関数を表す。
【0027】
スペクトル関数W(λ)は、紫外線透過率を計算するのを可能にするが、ISO 13666:1998 規格に従って定義される。それは、UVA-光線に比べて、UVA-光線より有害であるUVB-光線を全体的に少なく放出する太陽スペクトルエネルギEs(λ)とスペクトル効率S(λ)との両方を同時に考慮に入れるので、装着者に対するそのような放射線の相対スペクトル効率によって調整される紫外太陽放射線分布を表すことは可能である。紫外領域におけるこれらの3つの関数に対する値が、以下の表に与えられている。
【0028】
【表1】
【0029】
重み関数W(λ)は、280nmと295nmとの間では0、又はほとんど0であり、重み付けされた平均反射率もまた、この波長範囲で0であることを意味することに注目すべきである。これは、たとえ、反射レベルが、このスペクトル範囲に亘って高いとしても、280nmと380nmとの間で計算された重み付けされた平均反射率の値RUVにとっては重要ではないことを意味する。
【0030】
本発明によれば、基材の後面上に堆積された反射防止膜は、以下の通りである。
-ISO 13666:1998 規格に従って定義された関数W(λ)によって重み付けされた、280nmと380nmとの間の前記後面における平均反射率RUVは、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%未満である。これは、これらの入射角に対して、以下の4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%の値の1つの値以下であることが好ましい。
-光学部品の前記後面の可視領域における平均反射率Rは、1.15%以下であり、好ましくは、1%以下であり、より好ましくは、0.75%以下であり、
-光学部品の前記後面の可視領域における平均光反射率Rは、1%以下であり、好ましくは、0.90%以下であり、より好ましくは、0.85%以下である。
【0031】
本発明に係る紫外線防止、反射防止膜は、特に、30°~45°の範囲のレンズへの入射角を持つ紫外線の眼に向かう反射を最小化するように設計されており、その好ましい特徴は、以下に説明される。
290nmと330nmとの間の前記後面の平均反射率Rm-UV1は、15°の入射角に対して、15%未満であることが好ましく、より好ましくは10%未満である。
本発明の好ましい実施形態では、平均反射率は、280nm~295nmの波長範囲の少なくとも20%に亘って、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%超であり、より好ましくは6%超であり、さらにより好ましくは8%超である。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態では、15°の入射角に対して、280nm~295nmの波長範囲の少なくとも70%に亘る、より好ましくは少なくとも80%に亘る、さらにより好ましくは100%に亘る平均反射率は、10%超であり、より好ましくは15%超である。
本発明のもう1つ他の実施形態では、15°の入射角に対して、280nm~290nmの波長範囲の少なくとも70%に亘る、より好ましくは少なくとも80%に亘る、さらにより好ましくは100%に亘る平均反射率は、10%超であり、より好ましくは15%超である。
【0033】
そのような波長範囲内において、重み関数W(λ)は、0又はほとんど0である。もう1つ他の実施形態では、平均反射率は、280nm~295nmの範囲の少なくとも1つの波長に対し、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%超であり、より好ましくは6%超であり、さらにより好ましくは10%超である。
平均反射率は、280nm~295nmの波長範囲、又は280nm~290nmの波長範囲において高いので、反射防止特性をスペクトル範囲のもう1つ他の部分、即ち、可視領域において改善することができる。
【0034】
好ましくは、300nmと320nmとの間の前記後面における平均反射率Rm-UV2は、15°及び/又は30°及び/又は45°の入射角に対して、4%未満であり、より好ましくは3%未満である。これは、レンズ装着者にとっては、特に、興味深い。と言うのは、ISO 13666:1998 規格に従って定義された重み関数W(λ)は、そのような紫外線波長範囲内では極めて高く、310nmで最大レベルに達するからである。
好ましくは、300nmと380nmとの間の前記後面における平均反射率Rm-UV3は、15°の入射角に対して、5%未満であり、より好ましくは4.5%未満である。
その分野の一般的な知識を持つ当業者であれば、異なる所望のパラメータRm-UV1、Rm-UV2、Rm-UV3、RUV、R、及びRを持つように、反射防止膜の種々の層のための適した材料や厚さを十分に選択することができる。
【0035】
本発明の多層反射防止膜は、高い屈折率を持つ少なくとも1つの層と低い屈折率を持つ少なくとも1つの層との積層体を有する。より好ましくは、これは、高い屈折率(HI)を持つ少なくとも2つの層と低い屈折率(LI)を持つ少なくとも2つの層との積層体を有する。ここで、これは、反射防止膜における全層数が、3以上であり、好ましくは、4以上、かつ、7以下、より好ましくは、6以下、さらにより好ましくは、5以下、最も好ましくは、5層であるので、単一の積層体である。
【0036】
ここで使用されているように、反射防止膜の1つの層は、1nm以上の厚さを持つように定義される。こうして、1nm未満の厚さを持ついかなる層も、反射防止膜における層の数をカウントする際に、考慮されないであろう。どちらの副層も、反射防止膜における層の数をカウントする際に、考慮されない。
他に特に記述されない限り、本願に開示される全ての厚さは、物理的厚さに関する。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、HI層及びBI層は、積層体中で交互に積層していてもよいが、交互に積層していなくてもよい。二つ(又はそれ以上)のHI層は、互いに堆積されていてもよく、同様に、二つ(又はそれ以上)のLI層も互いに堆積されていてもよい。
本願において、反射防止膜の層は、屈折率が1.6超、好ましくは、1.65以上、より好ましくは、1.7以上、さらに好ましくは、1.8以上、最も好ましくは、1.9以上の場合、高屈折率(HI)層という。前記HI層は、屈折率が2.1未満であることが好ましい。反射防止膜の層は、屈折率が1.5以下、好ましくは、1.48以下、より好ましくは、1.47以下の場合、低屈折率(LI)層という。前記LI層は、屈折率が1.1超であることが好ましい。
特段の定めのない限り、本願で言及される屈折率は、波長550nm、25℃における屈折率を表わす。
【0038】
HI層は、当該技術においては周知の、従来の高屈折率層である。一般に、HI層は、それらに限定されないが、ジルコニア(ZrO)、二酸化チタン(TiO)、アルミナ(Al)、五酸化タンタル(Ta)、酸化ネオジウム(Nd)、プラセオジム酸化物(Pr)、プラセオジムチタネート(PrTiO)、La、Nb、Yのような一以上の金属酸化物からなる。必要に応じて、HI層は、上で示したように、1.6超の屈折率を持つのであれば、さらに、シリカ、又は、低屈折率を有するその他材料を含んでいてもよい。好ましい材料としては、TiO、PrTiO、ZrO、Al、Y、及び、それらからなる混合物が含まれる。
【0039】
LI層もまた、周知であり、それらに限定されないが、SiO、又は、シリカ及びアルミナの混合物、特にアルミナをドープしたシリカからなっていてもよく、後者は、反射防止膜の耐熱性を向上させるのに寄与する。LI層は、該層の総重量に対して、好ましくは、シリカ含有量80重量%以上、より好ましくは、シリカ含有量90重量%以上からなる層、さらに好ましくは、シリカ層である。好ましくは、反射防止膜のLI層は、MgF層ではない。
必要に応じて、LI層は、それにより得られる層の屈折率が1.5以下であれば、さらに、高屈折率を有する材料を含んでいてもよい。
【0040】
SiO及びAlの混合物からなるLI層が用いられる場合、層中のSiO及びAlを足した総重量に対して、Alの含有量は、好ましくは、1~10重量%、より好ましくは、1~8重量%、さらに好ましくは、1~5重量%である。
例えば、Alが、4重量%以下ドープされたSiO、又は、Alが、8重量%添加されたSiOを用いてもよい。Umicore Materials AG社製、LIMAR(550nmにおける屈折率n=1.48~1.50)、又は、Merck KGaA社製、L5R(500nmにおける屈折率n=1.48)のような、上市されているSiO/Al混合物を用いてもよい。
【0041】
反射防止膜の外層は、シリカベース層である必要があり、該層の総重量に対して、好ましくは、シリカ含有量80重量%以上、より好ましくは、シリカ含有量90重量%以上からなる層(例えば、アルミナがドープされたシリカ層)、さらに好ましくは、シリカ層である。
一般に、HI層は、10~120nmの範囲の物理的厚さを有し、LI層は、10~100nmの範囲の物理的厚さを有する。
一般に、反射防止膜の総厚さは、1マイクロメートル未満であり、好ましくは、800nm以下、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、250nm以下である。反射防止膜の総厚さは、一般に、100nm超、好ましくは、150nm超である。
【0042】
好ましくは、反射防止膜は、90nm超、より好ましくは、70nm超の厚さを持つチタン酸化物からなる如何なる層も含まない。反射防止膜中に、チタン酸化物からなる幾つかの層が存在する場合、該層の総厚さは、好ましくは、90nm未満、より好ましくは、70nm未満である。最も好ましくは、反射防止膜は、如何なるチタン酸化物含有層も含まない。チタン酸化物含有層は、光分解に対して実に敏感である。ここで用いられるような、チタン酸化物とは、二酸化チタン、又は、準化学量論的チタン酸化物(TiO、x<2)を意味する。
【0043】
本発明の一実施形態において、反射防止膜は、副層上に堆積される。そのような反射防止膜副層は、反射防止膜には属さないということに留意すべきである。
ここに用いられているように、反射防止膜副層又は接着層は、前記被膜の耐摩耗性及び/又は耐引っ掻き性のような機械的特性を改善するために、かつ/又は基材若しくはその下側の被膜とのその接着性を強化するように使用される比較的厚い被膜を意味するようにされる。
その比較的厚い厚さのために、副層は、特に、それが、(一般に摩耗防止及び引っ掻き防止被膜である)下側の被膜の屈折率に、又は、もし副層が基材上に直接堆積されているならば、基材の屈折率に近い屈折率を持つ時、一般に、反射防止光学活性の一部を担うことはない。
【0044】
副層は、反射防止膜の耐摩耗性を増進するのに十分な厚さを持つべきであるが、好ましくは、光吸収が、生じ得ると言うほどまでではなく、副層の性質に依存して、相対透過率τを著しく減少させることができるであろう。その厚さは、一般に、300nm未満であり、より好ましくは、200nm未満であり、かつ、一般に、90nm超であり、より好ましくは、100nm超である。
【0045】
副層は、SiOベース層であるのが好ましく、この層は、該層の総重量に対して、シリカの含有量が少なくとも80重量%、より好ましくは、シリカ含有量が90重量%以上からなり、さらに好ましくは、シリカ層からなる。そのようなシリカベース層の厚さは、一般に、300nm未満、より好ましくは、200nm未満であり、かつ、一般に、90nm超であり、より好ましくは、100nm超である。
もう1つ他の実施形態では、SiOベース層は、上記で定義された量でアルミナが添加されたシリカ層であり、アルミナが添加されたシリカ層よりなるのが好ましい。
特別な実施形態では、副層は、SiO層よりなる。
【0046】
単一層タイプの副層が用いられるのが好ましい。しかしながら、副層は、特に、副層、と下側の層(又は、もし、副層が基材上に直接堆積されているならば、基材)とが、実質的に異なる屈折率を持つ時に、積層(多層化)されていても良い。これは、特に、下側の層が、一般に、摩耗防止及び/又は引っ掻き防止被膜、又は、基材であるが、それが、高い屈折率、即ち、1.55以上の屈折率、好ましくは、1.57以上の屈折率を持つ時に当てはまる。
このケースでは、副層は、主層と呼ばれる90~300nmの厚さの層に加えて、必要に応じて被覆された基材と、一般に、シリカベース層であるそのような90~300nmの厚さの層との間で交互に配置される、好ましくは、多くとも3つの追加層、より好ましくは、多くとも2つの追加層を有する。これらの追加層は、好ましくは薄い層であり、その機能は、適切な方法で、副層/下側の層の境界面、又は副層/基材の境界面における反射を制限する狙うものである。
【0047】
多層化副層は、好ましくは、主層に加えて、高い屈折率、及び、80nm以下の厚さ、より好ましくは、50nm以下の厚さ、最も好ましくは、30nm以下の厚さを持つ層を有する。高い屈折率を持つそのような層は、適切な方法で、高い屈折率を持つ基材、又は高い屈折率を持つ下側の層と直接接触している。勿論、この実施形態は、たとえ、基材(又は下側の層)が、1.55未満の屈折率を持つとしても、用いられても良い。
もう1つの代案として、副層は、主層及び高い屈折率を持つ上述の層に加えて、1.55以下の屈折率、好ましくは、1.52以下の屈折率、より好ましくは、1.50以下の屈折率を持ち、かつ、80nm以下の厚さ、好ましくは、50nm以下の厚さより好ましくは、30nm以下の厚さを持つSiOベース材料(即ち、好ましくはシリカの含有量が少なくとも80重量%からなる)製の層を有し、そしてその上に、高い屈折率を持つ前記層が堆積されている。典型的に、この例では、副層は、必要に応じて被覆された基材上にこの順序で堆積された、25nm厚さのSiO層、10nm厚さのZrO又はTa層、及びその後の副層の主層を有する。
【0048】
本発明の光学部品は、帯電防止がなされていても良く、即ち、その部品の表面に存在する積層体に少なくとも1つの導電層を組み入れることによって、実質的な静電荷を保持及び/又は発達させないように作られていても良い。
1枚の布で擦った後、又は静電荷(コロナ等によって印加される電荷)を発生させる他の手順を使用した後に得られる静電荷をガラスが取り去る能力は、前記電荷を消散させるための時間を測定することによって定量化されても良い。こうして、帯電防止ガラスは、約数百ミリ秒、500ms未満の放電時間を持つのに反して、帯電ガラスでは、約数十秒である。本願では、放電時間は、フランス出願FR2943798に開示された方法に従って測定された。
【0049】
ここで用いられているように、「導電層」、又は「帯電防止層」は、(即ち、500nm超の放電時間を持つ)非帯電防止基材の表面上のその存在により、静電荷がその表面上に印加された後、500nm以下の放電時間を持つことを可能にする層を意味するとされている。
導電層は、その反射防止特性が影響を与えない限り、積層体の種々の場所に、一般に、反射防止膜内に、又は反射防止膜に接触して配置されても良い。導電層は、反射防止膜の2つの層の間に配置されるのが好ましく、かつ/又は、そのような反射防止膜の高い屈折率を持つ層に隣接しているのが好ましい。好ましくは、導電層は、反射防止膜の低い屈折率を持つ層の直下に配置され、より好ましくは、反射防止膜のシリカベース外層の直下に配置されることによる、反射防止膜の最後から2番目の層である。
【0050】
導電層は、反射防止膜の透明性を変えることの無いほど十分に薄いべきである。導電層は、導電性、かつ高度に透明な材料、一般に、必要に応じて不純物がドープされた金属酸化物から作製されているのが好ましい。この場合には、導電層の厚さは、好ましくは、1~15nmで、より好ましくは、1~10nmで変化する。好ましくは、導電層は、インジウム、スズ及び亜鉛の酸化物、並びにそれらの混合物から選択された、必要に応じて不純物がドープされた金属酸化物を有する。スズ-インジウム酸化物(In:Sn、スズドープ酸化インジウム)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、酸化インジウム(In)、及び酸化スズ(SnO)が好ましい。最も好ましい実施形態では、導電性、かつ必要に応じて透明性の層は、スズ-インジウム酸化物層、著名なITO層、又は、酸化スズ層である。
一般に、導電層は、積層体内において、限定的ではあるが、その薄い厚みのために、反射防止特性を得るのに寄与しており、反射防止膜内の高い屈折率を持つ層を表す。これは、ITO層のような導電性かつ高度に透明な材料から作成されたそれらの層のケースである。
【0051】
反射防止膜は、20nm以上の厚さ、好ましくは15nm超の厚さを持ち、酸化インジウムをベースとするいかなる層も有していない。複数の酸化インジウムベース層が反射防止膜中に存在する時、それらの全厚みは、好ましくは20nm未満であり、より好ましくは15nm未満である。ここで用いられているように、酸化インジウムベース層は、該槽の全重量に対して、酸化インジウムの含有量が、少なくとも50重量%からなる層であることを意味するようにされている。
好ましい実施形態によれば、反射防止膜は、20nm以上の厚さ、好ましくは15nm超の厚さを持ち、酸化インジウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛を有するいかなる層も有していない。酸化インジウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛を有する複数の層が反射防止膜中に存在する時、それらの全厚みは、好ましくは20nm未満であり、より好ましくは15nm未満である。
【0052】
反射防止膜の色々な層及び必要に応じた副層は、真空下で、以下の方法:i)必要に応じたイオンビームアシスト蒸着によって、ii)イオンビームスパッタリングによって、iii)カソードスパッタリングによって、iv)プラズマアシスト化学蒸着によって、のいずれかに従って、化学蒸着によって堆積されるのが好ましい。これらの色々な方法は、次の参照文献「薄膜プロセス」及び「薄膜プロセスII」ボッセン(Vossen)及びケルン(Kern)著、アカデミック出版(Academic Press)、1978年及び1991年発行に、それぞれ記載されている。特に推奨される方法は、真空蒸着である。
好ましくは、反射防止膜の複数層及び必要に応じた副層の各々の層の堆積は、真空蒸着によって行われる。
【0053】
好ましくは、本発明の反射防止膜は、1.6超の屈折率を持つ1、2又は3層よりなる第1層又は複数層の重ね合わせを有し、この第1層又は複数層の重ね合わせは、1.5未満の屈折率を持つ1又は2層よりなる第2層又は複数層の重ね合わせで被覆されている。必要に応じて、第2層又は複数層の重ね合わせは、1.6超の屈折率を持つ1又は2層よりなる第3層又は複数層の重ね合わせで被覆されており、第3層又は複数層の重ね合わせ自身は、1.5未満の屈折率を持つ1又は2層よりなる第4層又は複数層の重ね合わせで被覆されている。
【0054】
特に好ましい実施形態によれば、紫外線防止、反射防止被膜は、必要に応じて1つ以上の機能膜で被覆され、かつ、好ましくは100~200nm厚さの副層、好ましくはシリカの副層で被覆された基材の表面から始めて、8~25nm、好ましくは8~20nmの厚さを持ち、高い屈折率を持つ層、好ましくはジルコニアの層と、10~35nm、好ましくは15~25nmの厚さを持ち、低い屈折率を持つ層、好ましくはシリカの層と、75~105nm、好ましくは75~100nm、より好ましくは85~100nm、さらにより好ましくは90~100nmの厚さを持ち、高い屈折率を持つ層、好ましくはジルコニアの層と、必要に応じて、3~10nm、好ましくは4~8nmの厚さを持つ導電層と、60~95nm、好ましくは65~90nm、より好ましくは70~95nmの厚さを持ち、低い屈折率を持つ層、好ましくはシリカの層と、を有する。
【0055】
もう1つ他の実施形態では、紫外線防止、反射防止被膜は、必要に応じて1つ以上の機能膜で被覆され、かつ、好ましくは100~200nm厚さの副層、好ましくはシリカの副層で被覆された基材の表面から始めて、20~65nmの厚さを持ち、高い屈折率を持つ層、好ましくはジルコニアの層と、10~30nmの厚さを持ち、低い屈折率を持つ層、好ましくはシリカの層と、5~75nmの厚さを持ち、高い屈折率を持つ層、好ましくはジルコニアの層と、20~75nmの厚さを持ち、高い屈折率を持つ層、好ましくはチタニウムの層と、必要に応じて、3~10nm、好ましくは4~8nmの厚さを持つ導電層と、60~85nmの厚さを持ち、低い屈折率を持つ層、好ましくはシリカの層と、を有する。
【0056】
本発明の好適実施形態では、本発明の光学部品の前面は、また、その後面に設けられているものとは異なる、従来型の反射防止膜で被覆されている。
このケースでは、光学部品の前面を、基材の後面のものより、可視領域において、より有効な反射防止膜で被覆することを可能にする。こうして、好適実施形態では、光学部品の前面は、反射防止膜で被覆され、その結果、この前面の可視領域の平均反射率Rは、0.8%未満であり、より好ましくは、0.8%未満である。好ましくは、この前面の平均光反射率Rは、0.8%未満であり、より好ましくは、0.8%未満である。さらに好ましくは、ISO 13666:1998 規格に従って定義された重み関数W(λ)によって重み付けされた、280nmと380nmとの間の平均光反射率RUVは、光学部品の後面においてより、前面において高い(好ましくは、5%より大きい)。
【0057】
好適実施形態では、光学部品の前面(凸)に対する、ISO 13666:1998 規格に従って定義された重み関数W(λ)によって重み付けされた、45°の入射角に対しての280nmと380nmとの間の平均反射率RUVは、7%超であり、より好ましくは8%超であり、さらにより好ましくは10%超であり、最も好ましくは12%超である。
ISO 13666:1998 規格に従って定義された重み関数W(λ)によって重み付けされた、光学部品の前面(凸)に対する、45°の入射角に対しての280nmと380nmとの間の平均反射率RUVは、好ましくは、15%超の値、より好ましくは20%超の値、さらにより好ましくは30%超の値を持っても良い。
【0058】
被膜が使用され、その皮膜が、前面について、ISO 13666:1998 規格に従って定義された重み関数W(λ)によって重み付けされた、45°の入射角に対する280nmと380nmとの間の平均反射率RUVを持ち、それが5%超であり、かつ、ここで上述された好適範囲内である時に、それと共に、後面について、それに加えて、以下の好適な特徴を持つ、(追記された請求項に限定されているような)本発明の反射防止膜を組み合わせることは好適である。
前記後面の平均反射率は、280nm~295nmの波長範囲の少なくとも20%に亘って、30°の入射角及び45°の入射角に対して、5%超であり、より好ましくは6%超であり、さらにより好ましくは8%超である。
【0059】
もう1つ他の好適実施形態では、後面について、280nm~295nmの波長範囲の少なくとも70%に亘って、好ましくは少なくとも80%に亘って、さらにより好ましくは100%に亘って、15°の入射角に対して、10%超であり、好ましくは15%超である。
さらにもう1つ他の好適実施形態では、後面について、280nm~290nmの波長範囲の少なくとも70%に亘って、好ましくは少なくとも80%に亘って、さらにより好ましくは100%に亘って、15°の入射角に対して、10%超であり、好ましくは15%超である。
【0060】
前面の反射防止膜は、高屈折率を持つ少なくとも1つの層と低屈折率を持つ少なくとも1つの層との積層体を有することが好ましい。
しかしながら、光学部品の前面について、本願において述べられたような紫外線防止、反射防止膜を適用することは可能である。その際、光学部品の前面及び後面の紫外線防止、反射防止膜は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
本発明の一実施形態では、光学部品の前面は、本発明に係る紫外線防止、反射防止膜で被覆されない。
【0061】
紫外線防止、反射防止膜は、直接、生のまま基材上に堆積されても良い。いくつかの応用では、基材の主面が、本発明の反射防止膜を堆積するのに先立って、1以上の機能膜で堆積されているのが好ましい。光学の分野で従来より用いられているこれらの機能膜は、限定が無く、耐衝撃性プライマ層、耐摩耗性被膜及び/又は耐引っ掻き性被膜、偏光被膜、フォトクロミック被膜、又は、着色被膜であっても良い。
好ましくは、眼鏡レンズは、如何なるフォトクロミック被膜も有していない、かつ/又は、フォトクロミック基材を有していない。
【0062】
その上に反射防止膜が堆積されるであろう、基材の前主面及び/又は後主面は、一般に、耐衝撃性プライマ層、摩耗防止及び/又は引っ掻き防止被膜、又は、摩耗防止及び/又は引っ掻き防止被膜で被覆された耐衝撃性プライマ層で被覆されている。
本発明の紫外線防止、反射防止膜は、摩耗防止及び/又は引っ掻き防止被膜上に堆積されるのが好ましい。摩耗防止及び/又は耐引っ掻き性被膜は、眼鏡レンズの分野において摩耗防止及び/又は引っ掻き防止被膜として従来より用いられているいかなる層であっても良い。
【0063】
摩耗防止及び/又は耐引っ掻き性被膜は、好ましくは、ポリ(メタ)アクリレート又はシランをベースとし、一般に、一度硬化した被膜の硬さ、及び/又は、屈折率を向上させる目的で、1以上の無機フィラーを有する硬質被膜である。
硬質摩耗防止及び/又は耐引っ掻き性被膜は、例えば、塩酸溶液、及び、必要に応じて、縮合及び/又は硬化触媒による加水分解から得られる、少なくとも1つのアルコキシシラン、及び/又は、それらを加水分解物を有する組成物により調製されるのが好ましい。
本発明において推奨される適切な被膜としては、フランス特許FR 2702486(EP 0614957)、米国特許US 4211823及びUS 5015523の中に記載されるもののような、エポキシシラン加水分解物をベースとする被膜が含まれる。
【0064】
好適な摩耗防止及び/又は耐引っ掻き性被膜組成物は、本出願人の名前のフランス特許FR 2702486中に開示された組成物である。該組成物は、エポキシトリアルコキシシラン及びジアルキルジアルコキシシラン加水分解物、コロイダルシリカ、及び必要触媒量のアルミニウムアセチルアセトネートのようなアルミニウムベースの硬化触媒を有し、残部は、基本的に、該組成物を形成するのに従来用いられる溶媒から構成される。用いられる加水分解物は、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及びジメチルジエトキシシラン(DMDES)が好ましい。
【0065】
摩耗防止及び/又は耐引っ掻き性被膜組成物は、ディップ又はスピンコーティングにより、基材の主面上に堆積してもよい。次に、それは、適した方法で(好ましくは、熱、又は、UV照射を用いて)硬化される。
摩耗防止及び/又は耐引っ掻き性被膜の厚さは、一般に、2~10μm、好ましくは、3~5μmに変化する。
【0066】
耐摩耗性及び/又は耐引っ掻き性被膜を堆積する前に、最終製品において、耐衝撃性及び/又はそれに続く層との接着性を向上させるために、基材上にプライマ被膜を塗布することもできる。この被膜は、眼鏡レンズのような透明高分子材料の部品に従来より用いられているいかなる耐衝撃性プライマ層であってもよい。
好適なプライマ組成物としては、日本特許出願公開JP 63-141001及びJP 63-87223に記載されているような、熱可塑性ポリウレタンをベースとする組成物、米国特許US 5,015,523に記載されているような、ポリ(メタ)アクリル酸のプライマ組成物、EP特許EP 0404111に記載されているような、熱硬化性ポリウレタンをベースとする組成物、米国特許US 5,316,791及びEP特許EP 0680492に記載されているような、ポリ(メタ)アクリル酸ラテックス又はポリウレタン型ラテックスをベースとした組成物が含まれる。
【0067】
好適なプライマ組成物は、ポリウレタンをベースとする組成物、及びラテックス、特に、必要に応じてポリエステル単位を含む、ポリウレタン型ラテックスをベースとする組成物である。
本発明において適切に使用される商業的に利用可能なプライマ組成物としては、WitcobondR 232、WitcobondR 234、WitcobondR 240、WitcobondR 242、NeorezR R-962、NeorezR R-972、NeorezR R-986及びNeorezR R-9603のような組成物が含まれる。
また、そのようなラテックスを組み合わせを、特に、ポリウレタン型ラテックス及びポリ(メタ)アクリル酸ラテックスを組み合わせを、プライマにおいて用いても良い。
【0068】
そのようなプライマ組成物は、ディップ又はスピンコーティングにより部品の主面上に堆積されてもよく、その後、硬化後の厚さが0.2~2.5μm、好ましくは、0.5~1.5μmとなるようなプライマ層を形成するために、少なくとも70℃、かつ100℃まで、好ましくは、約90℃の温度で、2分~2時間の時間範囲、一般には約15分で乾燥される。
本発明に係る光学部品は、また、反射防止膜上に形成された被膜を有していてもよく、疎水性及び/又は疎油性被膜(防汚トップコート)のように、その表面性能を改変可能であってもよい。これらの被膜は、反射防止膜の外層上に堆積されるのが好ましい。概して、それらの被膜の厚さは、10nm以下であり、好ましくは、1~10nmの範囲、より好ましくは、1~5nmの範囲である。
【0069】
一般に、フルオロシラン又はフルオロシラザーネ型被膜がある。それらは、好ましくは、単位分子あたりに少なくとも2つの加水分解基を含む、フルオロシラン又はフルオロシラザーネ前駆体を堆積することによって形成されても良い。フルオロシラン前駆体は、好ましくは、フルオロポリエーテル半部を有し、より好ましくは、ペルフルオロポリエーテル半部を有する。これらのフルオロシランは、他者の間に、周知であり、米国特許US 5,081,192、US 5,763,061、US 6,183, 872、US 5,739, 639、US 5,922,787、US 6,337,235、US 6,277,485及びEP特許EP 0933377内に、記載されている。
【0070】
好ましい疎水性及び/又は疎油性被膜組成物は、商品名KP 801MRの下に、信越化学工業株式会社から販売されている。もう1つ他の好適な疎水性及び/又は疎油性被膜組成物は、商品名OPTOOL DSXRの下に、ダイキン工業株式会社から販売されている。それは、ペルフルオロプロピレン基を有するフッ素化樹脂である。
疎水性被膜の代わりに、かぶり防止性を与える親水性被膜、又は、界面活性剤と関連する際に、かぶり防止性を与える、かぶり防止前駆体被膜を用いてもよい。そのような、かぶり防止前駆体被膜の例は、特許出願公開WO 2011/80472に記載されている。
【0071】
典型的に、本発明に係る眼鏡レンズは、後面上に、本発明に係る耐衝撃プライマ層、摩耗防止及び耐引っ掻き性層、紫外線防止、反射防止膜で、疎水性及び/又は疎油性被膜で、又は、かぶり防止性を与える親水性被膜又はかぶり防止前駆体被膜で、連続して被覆された基材を有する。本発明に係る眼鏡レンズは、眼鏡用眼科レンズ(眼鏡レンズ)、又は眼鏡レンズ用ブランクであるのが好ましい。このレンズは、偏光レンズ、フォトクロミックレンズ、又はソーラーレンズでもよく、着色されていてもよく、矯正されていても、されていなくてもよい。
光学部品の基材の前面は、耐衝撃プライマ層、耐摩耗性層及び/又は耐引っ掻き性層、本発明に係る紫外線防止、反射防止被膜であっても良く、又は、で無くても良い反射防止膜で、かつ、疎水性及び/又は疎油性被膜で、連続して被覆されていてもよい。
【0072】
一実施形態では、本発明に係る光学部品は、可視光を吸収しない、又は、あまり吸収しない、そして、それは、本願の明細書中においては、可視領域の透過率τ、また、可視領域の相対透過率とも呼ばれるが、それは、90%超、より好ましくは、95%超、さらに好ましくは、96%超、最も好ましくは、97%超であることを意味する。
透過率τは、国際標準定義(ISO 13666:1998 規格)により定義されていると理解されるべきであり、ISO 8980-3 規格に従って測定される。それは、波長380~780nmの範囲において定義されている。
本発明に従って被覆された部品の光吸収率は、1%以下であるのが好ましい。
【0073】
国際表色系CIE Lにおける、本発明の光学部品の測色係数は、標準光源D65及び観察者(入射角15°)を考慮に入れて、380nmと780nmとの間で計算される。色相角に関しては、限定なく反射防止膜を用意することができる。しかしながら、色相角hは、120~150の間で変化させるのが好ましく、こうして、緑反射を持つ被膜となり、そして、彩度Cは、15未満が好ましく、より好ましくは、10未満である。色相角が、235°~265°の範囲(青)に対して、120°~150°の範囲(緑)内にある時に、可視領域及び紫外領域において、その性能が最適化された反射防止膜を得ることは、実に難しい。
一実施形態において、彩度Cは、9超である。この場合に、本発明者は、眼鏡レンズが大きな測色信頼性を持つことを観測した、即ち、色相角h及び彩度Cが、時間がたっても極めて安定していた。
【実施例
【0074】
以下に、本発明の詳細な実施例を説明するが、この様式に限定されるものではない。
実施例
1.一般的な手順
本実施例において使用された光学部品は、エシロール(ESSILOR)社のORMARレンズ基材を有し、このレンズ基材は、直径65mm、屈折率1.50、倍率-2.00ジオプトリ、及び厚さ1.2mmであり、その後面上に、EP特許第0614957号の実施例3(屈折率1.47、厚さ3.5μm)に開示され、GLYMO及びDMDES、コロイダルシリカ及びアルミニウムアセチルアセトネートの加水分解化合物に基づいた耐摩擦性、耐引っ掻き性被膜(ハードコート)が被覆され、その後、本発明に係る反射防止膜が被覆されたものである。
【0075】
前記耐摩擦性、耐引っ掻き性被膜は、重量で、GLYMO 224部、0.1NHCl 80.5部、DMDES 120部、メタノール中の30重量%のコロイダルシリカ 718部、アルミニウムアセチルアセトネート 15部、及びエチルセロソルブ 44部を有する組成物を堆積し、かつ、硬化することによって得られた。この組成物は、また、3M社製の界面活性剤FLUORADTM FC-430Rを、組成物全重量に対して重量で0.1%含有していた。
反射防止膜の複数の層は、基材を加熱することなく、真空下での蒸着(蒸着源:電子銃)によって堆積された。
【0076】
堆積フレームは、レイボルド(Leybold)1104マシンであり、酸化物を蒸発させるための電子銃(ESV14 (8kV))を装備し、アルゴンイオン(IPC)を用いた基材の表面を準備するために予備フェーズ用イオン銃(コモンウェルス マーク ツー(Commonwealth Mark II))を備えている。
複数の層の厚さは、水晶微量天秤を用いて制御された。スペクトル測定は、URA アクセサリ(Universal Reflectance Accessory)を持つ可変入射スペクトロメータ パーキン-エルマラムダ(Perkin-Elmer Lambda) 850によって行われた。
【0077】
2.試験手順
光学部品を作製する方法は、その後面上に耐摩擦性、耐引っ掻き性被膜で被覆された基材を真空蒸着室に導入する工程と、高真空が得られるまで真空引きする工程と、アルゴンイオンビームを使って基材の表面を活性化し、イオン放射を停止し、耐摩擦性、耐引っ掻き性被膜上に副層を、その後、続いて、連続的な蒸着によって反射防止膜の種々の層を形成する工程と、最後に、換気工程とを有する。
【0078】
3.結果
実施例1~26において得られた眼鏡レンズの構造的特徴及び光学的性能は、以下に詳細に説明される。副層は、グレイの色である。用意されたいくつかの光学部品の280nmと780nmとの間の反射率のグラフが、種々の入射角で図1図4に示されている。
平均反射率の値は、後面の値である。反射率R及びRは、15°の入射角に対して与えられている。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
本発明の光学部品は、紫外領域における反射防止性能に有害な影響を与えることなく(30°の入射角に対してRUV≦4.26%、及び45°の入射角に対してRUV≦4.71%)、可視領域において極めて良好な反射防止特性を持つことが観察され得る。本発明の眼鏡レンズの紫外領域における反射レベルは、30°又は45°の入射角に対して、生のままのORMAR基材のそれよりより低いままである(以下の比較例参照)。
【0083】
さらに、実施例1~26において得られた眼鏡レンズは、卓越した透明特性、摩擦及び引っ掻きに対する良好な耐性、及び表面への機械的なストレスが続く、熱水滴下処理に対する良好な耐性を持つ。基材に対する被膜の接着も、また、極めて満足できるものである。
本発明に係るもう1つ他の実施例は、ZrO(18.9nm)/L5 物質(22.5nm)/ZrO2(94.7nm)/ITO(6.5 nm)/L5 物質(77.4nm)積層体である(R=0.77%;R =0.80%、RUV(45°)=3.5%)。
【0084】
比較例
昨今、市場において非常に広まっている反射防止膜を備えた4つのレンズの後面における反射防止性能が、決定され、以下の表に与えられている。
【0085】
【表5】
【0086】
商業的に利用可能な反射防止レンズは、極めて高い値に達する、紫外領域の反射率について関心が払われておらず、可視領域における反射率を最小化する設計が成されていることが観察され得るであろう。さらに、故意の全反射防止膜は、如何なる反射防止膜も欠如している生のままのレンズと比較して、装着者の後ろから来るUV放射線をより強く反射する。
図1
図2
図3
図4