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特許7547416イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法
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  • 特許-イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/18 20060101AFI20240902BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08J11/18 CFD
C08G63/183
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022111076
(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公開番号】P2023033124
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】110131575
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】莊 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】鄭 維昇
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 章鑑
(72)【発明者】
【氏名】曾 郁迪
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-088096(JP,A)
【文献】特開2000-053802(JP,A)
【文献】特表2016-536291(JP,A)
【文献】特表2018-502977(JP,A)
【文献】特表2020-507644(JP,A)
【文献】特表2015-535738(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049113(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する準備工程と、
化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、
前記解重合物と水とを混合することで、水相液体を形成することと、その後、固体のイオン液体不純物吸着材料を前記水相液体に分散させることで、前記イオン液体不純物吸着材料で前記再生すべきポリエステル織物に存在した不純物を吸着することと、を含む精製工程と、
遠心分離法及び/又はろ過法で前記水相液体に分散する固体の前記イオン液体不純物吸着材料を回収する分離工程と、を備え、
前記精製工程において、前記イオン液体不純物吸着材料は基材と前記基材にグラフトするイオン液体(ionic liquid)とを含み、前記基材にグラフトするイオン液体のグラフト数は、グラムあたりの前記基材に対して10本~1020本であり、前記水相液体の重量は、前記イオン液体不純物吸着材料の10倍~100倍であり、
前記精製工程において、前記水相液体が85℃~150℃の液体温度に加熱されることで、前記イオン液体不純物吸着材料が前記液体温度で前記不純物を吸着し、
前記イオン液体不純物吸着材料において、前記イオン液体と前記基材との架橋として、シランカップリング剤を用い、架橋の方法は、まず前記シランカップリング剤を酸水分解した上で、前記基材にグラフトし、次に、アルカリ性環境で前記イオン液体を前記シランカップリング剤にグラフトすることで、固体のイオン液体触媒を製造することを特徴とする、イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【請求項2】
前記解重合工程において、前記化学解重合液はエチレングリコール(EG)であると共に、前記化学解重合液が180℃~260℃の解重合温度に加熱されることで、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う、請求項1に記載のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【請求項3】
前記イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,BMI-PF )、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorozincate,BMIZnCl)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachloroferrate,BMIFeCl)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロコバルト(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorocobaltate,BMICoCl)、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate,BMI-BF )の中の少なくとも1つである、請求項1に記載のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【請求項4】
前記イオン液体不純物吸着材料の回収率は、95%以上である、請求項1に記載のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【請求項5】
前記分離工程を行った後に、前記水相液体を85℃~150℃の前記液体温度から、5℃~25℃の結晶温度に冷却させることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、水相液体から結晶として析出されて、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程を更に含む、請求項1に記載のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【請求項6】
前記結晶工程を行った後に、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを再重合して、再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する造粒工程を行うことを含む、請求項5に記載のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【請求項7】
前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、85以上のL値、-1.5~1.5のa値、-3.5~3.5のb値を有すると共に、180℃-1hrの耐熱性テストを行った前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、80以上のL値、-3~3のa値、-7~7のb値を有する、請求項6に記載のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートのL値を上昇させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル材料を回収する方法に関し、特に、イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、ポリエステル織物(PET fabric)の化学的再生法では、主に化学解重合液(例えば、エチレングリコール)を用いてポリエステル織物を化学解重合することで、解重合物を形成する。また、当該解重合物は主に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl)terephthalate,BHET)を含む。しかし、前記化学的再生法の過程において、複雑な精製工程を行う必要がある。即ち、ポリエステル織物に元々存在した染料などの不純物を除去した後に、BHETを再重合して、高品質の再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する。
【0003】
上述したBHETの精製プロセスにおいて、従来の精製方法では、活性炭材料又はイオン交換樹脂を用いて、エチレングリコール(EG)を含むBHET粗生成物における染料などの不純物を吸着するか、若しくは、蒸留法によってBHETを分離する。しかしながら、前記2つの精製方法はいずれも、BHET回収品質(例えば、耐熱性不良)が不良である問題及び回収のコストが高いとの欠点を有する。
【0004】
米国特許公告第9,255,194号には、ポリエステル織物の解重合法が開示されているが、前記解重合法において、染料などの不純物を除去すると共に、触媒を回収することができるが、BHETを精製する際に複雑な精製工程を行う必要があり、BHETの回収率が低くなると共に、BHETの回収品質が不良である。
【0005】
中国特許公告第100,344,604号には、ポリエステル織物の解重合法が開示されているが、前記解重合法において、複雑な精製工程を行う必要があるため、材料の回収のコストが高すぎると共に、BHETの回収品質が不良である。
【0006】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許公告第9,255,194号公報
【文献】中国特許公告第100,344,604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法を提供する。イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する準備工程と、化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、前記解重合物と水とを混合することで、水相液体を形成することと、その後、固体のイオン液体不純物吸着材料を前記水相液体に分散させることで、前記イオン液体不純物吸着材料で前記再生すべきポリエステル織物に存在した不純物を吸着することと、を含む精製工程と、遠心分離法及び/又はろ過法で前記水相液体に分散する固体の前記イオン液体不純物吸着材料を回収する分離工程と、を備える。
【0010】
好ましくは、前記解重合工程において、前記化学解重合液はエチレングリコール(EG)であると共に、前記化学解重合液が180℃~260℃の解重合温度に加熱されることで、再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。
【0011】
好ましくは、前記精製工程において、前記イオン液体不純物吸着材料は、基材と前記基材にグラフトするイオン液体(ionic liquid)とを含む。グラフトする際に、架橋としてシランカップリング剤(例えば、クロロプロピルトリメトキシシラン)を用いる必要がある。架橋の方法は、まずシランカップリング剤を酸化水分解した上で、基材(例えば、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルト材料)にグラフトし、次に、アルカリ性環境でイオン液体をシランカップリング剤にグラフトすることで、固体のイオン液体不純物吸着材料を製造する。
【0012】
好ましくは、前記基材の粒子状材料の平均粒子径は、0.8μm~800μmである。
【0013】
好ましくは、前記イオン液体不純物吸着材料において、前記イオン液体が前記基材にグラフトするグラフトの数については、グラムあたりの基材に10 本~10 20 本の前記イオン液体をグラフトする。
【0014】
好ましくは、前記イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,BMI-PF6)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorozincate,BMI ZnCl )、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachloroferrate,BMI FeCl )、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロコバルト(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorocobaltate,BMI CoCl )、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate,BMI-BF4)の中の少なくとも1つである。
【0015】
好ましくは、前記イオン液体不純物吸着材料の回収率は、95%以上である。
【0016】
好ましくは、前記精製工程において、前記水相液体が85℃~150℃の液体温度に加熱されることで、前記イオン液体不純物吸着材料が前記液体温度で前記不純物を吸着する。
【0017】
好ましくは、前記分離工程を行った後に、前記水相液体を85℃~150℃の前記液体温度から、5℃~25℃の結晶温度に冷却させることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、前記水相液体から結晶として析出されて、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程を更に含む。
【0018】
好ましくは、結晶工程を行った後に、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを再重合して、前記再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する造粒工程を行うこと更にを含む。
【0019】
好ましくは、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、85以上のL値、-1.5~1.5のa値、-3.5~3.5のb値を有すると共に、180℃-1hrの耐熱性テストを行った前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、80以上のL値、-3~3のa値、-7~7のb値を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有利な効果として、本発明のイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、「再生すべきポリエステル織物を提供することと、化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、解重合物を形成することと、前記解重合物と水とを混合することで、水相液体を形成することと、イオン液体不純物吸着材料を前記水相液体に分散させることで、前記再生すべきポリエステル織物に存在した不純物を吸着することと、遠心分離法及び/又はろ過法で前記水相液体に分散する固体の前記イオン液体不純物吸着材料を回収する分離工程と、を備える」といった技術特徴により、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収品質及び耐熱性を向上する。なお、本発明の実施形態に係る方法は、コストが低いとの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0023】
以下、所定の具体的な実施態様を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0024】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0025】
[イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法]
通常、ポリエステル織物には、染料などの不純物が付いている。ポリエステル織物を回収するために、従来の技術において、主に化学解重合液(例えば、エチレングリコール)を用いてポリエステル織物を化学解重合することで、解重合物を形成する。また、当該解重合物は主に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl)terephthalate,BHET)を含む。
【0026】
なお、BHETを精製するために、従来の精製方法では、活性炭材料又はイオン交換樹脂を用いて、エチレングリコール(EG)を含むBHET粗生成物における染料などの不純物を吸着した後に、水を入れることで、BHET結晶を析出させる。しかしながら、このような精製方法で得たBHETの色合い及び品質(例えば、耐熱性)が不良である問題を有する。
【0027】
もう1つの従来の精製方法は、3回の蒸留法によってBHETを分離する。しかしながら、このような精製方法は、3つの薄膜蒸発器を増加する必要となるため、投資設備のコストが高すぎると共に、BHETの回収率がそれほど高くないので、経済的な利益を有しない。
【0028】
上記の技術的課題を解決するために、図1に示すように、本発明の実施形態において、イオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法を提供する。当該方法は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収品質を効果的に向上すると共に、コストが低いとの利点を有する。
【0029】
なお、前記方法は、工程S110、工程S120、工程S130、工程S140及び工程S150を含む。説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式はニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。
【0030】
工程S110は、準備工程(preparation operation)を行うことを含む。前記準備工程は、再生すべきポリエステル織物を提供する。なかでも、前記再生すべきポリエステル織物に不純物(impurities)を付けていると共に、前記不純物は、例えば染料(dye)及び/又は撥水剤(water repellent)を含むが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0031】
例えば、前記再生すべきポリエステル織物は例えば、染料で染色されて色が付けられてもよい。なお、前記再生すべきポリエステル織物は例えば、撥水剤の処理によって撥水性を備える。なかでも、前記染料は例えば、天然染料及び合成染料の少なくとも1つであってもよく、若しくは、前記染料は例えば、物理染料及び化学染料の少なくとも1つであってもよい。前記撥水剤は例えば、ケイ素(Si)を含む撥水剤、フッ素(F)を含む撥水剤、フッ素とケイ素を含む撥水剤、又は水性ポリウレタン(PU)撥水剤であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、前記再生すべきポリエステル織物は、染色によって、0超え30未満のL値を有する。即ち、前記再生すべきポリエステル織物は、比較的に深い色を有するが、本発明はこれに制限されるものではない。説明すべきことは、前記L値は、Lab色空間(Lab color space)における明度を示すパラメータである。
【0033】
前記工程120は、解重合工程(de-polymerization operation)を行うことを含む。前記解重合工程は、化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、解重合物を形成することを含む。なかでも、前記解重合物は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis-2-hydroxylethyl terephthalate,BHET)、オリゴマー(oligomer)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む。
【0034】
より具体的に説明すると、前記化学解重合液は例えば、エチレングリコール(ethylene glycol,EG)であってもよい。また、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う方法として、例えば、前記再生すべきポリエステル織物がビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を主に含む解重合物に解重合される、エチレングリコールの解重合法が挙げられる。なお、前記解重合物は、ポリエステル織物の解重合で形成されたオリゴマー(oligomer)、前記解重合に用いる化学解重合液(例えば、エチレングリコール)及び元々再生すべきポリエステル織物に存在する不純物を更に含む。
【0035】
特筆すべきことは、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)は、テレフタル酸(PTA)及びエチレングリコール(EG)の中間体である。なお、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、ポリエステル(PET)を合成するための原料として用いられる。また、他のモノマーと共に、ポリエステル共重合体を形成することができる。
【0036】
本発明の一つの実施形態において、前記化学解重合液は、解重合触媒(de-polymerization catalyst)の存在で、再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。なかでも、前記解重合触媒として、例えば、金属触媒(metal catalyst)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。特筆すべきことは、前記解重合触媒は、化学解重合液でポリエステル織物に化学解重合を行う活性化エネルギーを低減させるという役割を果たせる。
【0037】
本発明の一つの実施形態において、前記金属触媒は例えば、酢酸亜鉛(zinc acetate)、酢酸鉛(lead acetate)、酢酸カドミウム(cadmium acetate)、酢酸カルシウム(calcium acetate)、酢酸バリウム(barium acetate)、酢酸ナトリウム(sodium acetate)、水酸化リチウム(lithium hydroxide)、酢酸水銀(mercury acetate)、酢酸銅(copper acetate)、および酢酸鉄(iron acetate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。若しくは、本発明の一つの実施形態において、前記金属触媒は例えば、有機チタン系金属触媒(organo titanium metal catalyst)であってもよい。若しくは、本発明の一つの実施形態において、前記金属触媒は例えば、イオン液体触媒(ionic liquid catalyst)であってもよい。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、前記化学解重合液が解重合温度に加熱されることで、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。なかでも、前記解重合温度は、180℃~260℃であることが好ましく、210℃~240℃であることが特に好ましい。
【0039】
前記工程S130は、前記解重合物から精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(purified BHET)を得る精製工程(purification operation)を行うことを含む。
【0040】
前記精製工程は、前記解重合物と水とを混合することで、水相液体を形成することと、次に固態のイオン液体不純物吸着材料を前記水相液体に分散させることで、前記イオン液体不純物吸着材料で前記再生すべきポリエステル織物に存在した不純物を吸着することとを、この順に含む。
【0041】
前記水相液体が85℃~150℃の液体温度に加熱されることで、前記イオン液体不純物吸着材料が前記液体温度前記不純物を吸着するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
本発明の1つの実施形態において、前記イオン液体不純物吸着材料は例えば、基材(nano magnetic material)と前記基材にグラフトするイオン液体(ionic liquid)とを含む。前記イオン液体不純物吸着材料の製造方法は、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルトで形成された基材の表面に酸化を行うことで、前記表面にOH官能基を形成することと、シラン(Silane)化合物と前記OH官能基とをグラフトし、イオン液体とシラン端とを更にグラフトすることとを含むことである。前記イオン液体不純物吸着材料は、有機染料などの不純物を吸着することができる。
【0043】
本発明の一つの実施形態において、前記基材は、ナノグレードからマイクロングレードまでの粒子サイズを有する粒子状材料である。なかでも、前記基材の平均粒子径は、0.8μm~800μmであることは好ましく、1μm~500μmであることは特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0044】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体不純物吸着材料におけるイオン液体が前記基材にグラフトするグラフトの数(number of grafts)については、グラムあたりの基材に10 本~10 20 本のイオン液体をグラフトすることが好ましく、10 本~10 18 本のイオン液体をグラフトすることは特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体不純物吸着材料と水相液体との比は、好ましくは、1:10~1:100である。即ち、前記水相液体の重量は、イオン液体不純物吸着材料の重量の10~100倍であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
本発明の一つの実施液体において、前記イオン液体不純物吸着材料におけるイオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,BMI-PF6)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorozincate,BMI ZnCl )、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachloroferrate,BMI FeCl )、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロコバルト(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorocobaltate,BMI CoCl )、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate,BMI-BF4)からなる群の少なくとも1つから選択されるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0047】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体不純物吸着材料における基材は、鉄微粒子(iron microparticle)、ニッケル微粒子(nickel microparticle)、カーボン微粒子(carbon microparticle)、ケイ素微粒子(silicon microparticle)、及びコバルト微粒子(cobalt microparticle)からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0048】
工程S140は、遠心沈降法及び/又はろ過法で水相液体に分散する固体の前記イオン液体不純物吸着材料を回収する分離工程とを含む。より具体的に説明すると、前記分離工程は、300rpmの遠心分離条件でイオン液体不純物吸着材料を分離すること、及び/又は1μmのろ過装置で前記水相液体に分散した前記イオン液体不純物吸着材料を回収することを含む。
【0049】
より具体的に説明すると、前記分離工程において、前記イオン液体不純物吸着材料は、遠心沈降法及びろ過法によって、前記水相液体から分離されることができる。なかでも、前記イオン液体不純物吸着材料の回収率(recovery rate)は、95%以上であることは好ましく、99%以上であることは特に好ましい。
【0050】
本発明の一つの実施例において、前記水相液体及びイオン液体不純物吸着材料は、容器に詰め込まれると共に、300rpmの回転装置でイオン液体不純物吸着材料を分離した後に、1μmのろ過装置で前記水相液体からイオン液体不純物吸着材料を分離するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0051】
例えば、本発明のもう一つの実施形態において、前記分離工程では、超重力分離を用いて、不純物を吸着したイオン液体不純物吸着材料を、前記水相液体から分離されてもよい。
【0052】
前記工程S150は、結晶工程(crystallization operation)を行うことである。前記結晶工程は、前記水相液体を85℃~150℃の前記液体温度から、5℃~25℃の結晶温度に冷却させることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、前記水相液体から結晶として析出されて、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(recycled BHET)を得る結晶工程を更に含む。
【0053】
本発明の一つの実施形態において、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、85以上のL値、-1.5~1.5のa値、-3.5~3.5のb値を有すると共に、180℃-1hrの耐熱性テストを行った前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、80以上のL値、-3~3のa値、-7~7のb値を有する。
【0054】
工程S160は、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを再重合して、再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する造粒工程(granulation operation)を行うことを含む。なかでも、前記再生ポリエステル粒子は例えば、一軸造粒機または二軸造粒機を用いて、再重合されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートで造粒を行うことで形成される。
【0055】
[実験データ及び測定結果]
本発明に係るイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、良好な回収効果及び色合いを改良する効果を有することを証明するために、以下の実施例1~3及び比較例1~2で説明する。
【0056】
実施例1:
解重合触媒及び脱色キャリアとして、活性炭(平均粒度57.4μm、粒子径の範囲4μm~275μm)、クロロプロピルトリメトキシシラン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートで合成された固体イオン液体(以下、SDC-1とも呼ばれる)を用いた。
【0057】
10Lの三つ口フラスコに、1kgのPET織物、6kgのエチレングリコール及び20gのイオン液体触媒(SDC-1)を入れた後に、190℃に加熱し、撹拌で4時間反応した。その後、反応液を120℃に冷却して1時間撹拌することによって、SDC-1触媒で染料などの不純物を吸着した。300rpmで遠心分離法で反応液から固体イオン液体触媒(SDC-1)を分離した後に、1μmのろ過で固体イオン液体触媒を回収した。絶対圧力5torr、温度150℃の環境で、過剰のEGなどの物質を反応液から蒸留させた後に、反応液を90℃に冷却した後に7kgの水を添加して、90℃に加熱することでBHETを水に溶解させた。次に、90℃のBHETを含有する水溶液を、冷却水を用いて8℃/minの冷却速度で50℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。その後、水溶液に対して第二段階の冷却結晶を行った。
【0058】
第二段階の冷却結晶において、50℃のBHETを含有する水溶液を、冷凍水を用いて0.2℃/minの冷却速度で5℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。
【0059】
第1段階及び第2段階で得たBHETを混合・乾燥を行った後に、BHETの品質について、L=90%、a=0.4、b=1.5であった。また、180℃のオーブンに入れて1時間を保持した後に、BHETの品質について、L=86%、a=0.7、b=5.6であり、イオン液体不純物吸着材料の回収率は、98.4%であった。
【0060】
実施例2:
実施例1において、解重合触媒としてケイ素(平均粒子径65.3μm、粒子径の範囲3μm~270μm)、クロロプロピルトリメトキシシラン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートで合成された固体イオン液体触媒(以下、SDC-2とも呼ばれる)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0061】
BHETの品質について、L=89%、a=0.6、b=2.5である。また、180℃のオーブンに入れて1時間を保持した後に、BHETの品質について、L=84%、a=1.1、b=6.3であり、イオン液体不純物吸着材料の回収率は、98.8%であった。
【0062】
実施例3:
実施例1において、解重合触媒として金属ニッケル(平均粒子径71.0μm、粒子径の範囲8μm~300μm)、クロロプロピルトリメトキシシラン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートで合成された固体イオン液体触媒(以下、SDC-3とも呼ばれる)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0063】
BHETの品質について、L=92%、a=0.1、b=1.1であった。また、180℃のオーブンに入れて1時間を保持した後に、BHETの品質について、L=85%、a=0.9、b=5.9であり、イオン液体不純物吸着材料の回収率は、99.3%であった。
【0064】
比較例1:
10Lの三つ口フラスコに、1kgのPET織物、6kgのエチレングリコール及び20gの酢酸亜鉛触媒を入れた後に、190℃に加熱し、撹拌で6時間反応を行った。
【0065】
絶対圧力5torr、温度150℃の環境で、過剰のEGなどの物質を反応液から蒸留させた後に、反応液を90℃に冷却した後に7kgの水を添加して、90℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、90℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着した後に、ろ過で活性炭を除去した。
【0066】
90℃のBHETを含有する水溶液を、冷却水を用いて8℃/minの冷却速度で50℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。その後、水溶液に対して第二段階の冷却結晶を行った。
【0067】
第二段階の冷却結晶において、50℃のBHETを含有する水溶液を、冷凍水を用いて0.2℃/minの冷却速度で5℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。
【0068】
第1段階及び第2段階で得たBHETを混合・乾燥を行った。
【0069】
BHETの品質について、L=84%、a=2.2、b=4.4であった。また、180℃のオーブンに入れて1時間を保持した後に、BHETの品質について、L=76%、a=3.4、b=20であった。イオン液体不純物吸着材料の回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収し難かった。
【0070】
比較例2:
比較例1において、脱色として30gの活性炭の代わりに、50gの活性炭を用いた以外は、比較例1と同様にした。
【0071】
BHETの品質について、L=90%、a=0.8、b=3.1であった。また、180℃のオーブンに入れて1時間を保持した後に、BHETの品質について、L=77%、a=2.7、b=15であった。イオン液体不純物吸着材料の回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収し難かった。
【0072】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明の実施形態に係るイオン液体で再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、「再生すべきポリエステル織物を提供することと、化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、解重合物を形成することと、前記解重合物と水とを混合することで、水相液体を形成することと、イオン液体不純物吸着材料を前記水相液体に分散させることで、前記再生すべきポリエステル織物に存在した不純物を吸着することと、遠心分離法及び/又はろ過法で前記水相液体に分散する固体の前記イオン液体不純物吸着材料を回収する分離工程と、を備える」といった技術特徴により、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収品質及び回収率を向上する。本実施形態に係る方法は、コストが低いとの利点を有する。
【0073】
なお、本発明の実施形態に係る方法は、コストが低いとの利点を有する。以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
図1