(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】制御装置および制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 7/02 20160101AFI20240902BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240902BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H02P7/02
H02J50/12
G03F9/00 H
(21)【出願番号】P 2022155990
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】庄司 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】阿内 悠人
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524327(JP,A)
【文献】特開2021-072671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/02
H02J 50/12
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御信号
に基づいて振幅および極性のうちの少なくとも一方が調整された電力を出力するドライバと、
前記ドライバの後段に接続され
て送電器と受電器と送電アンテナと受電アンテナとを有して構成され、モータに
電力を出力する無線電力伝送システムと、
前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償する補償部と
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記補償部は、前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差と、前記第1の制御信号の振幅と前記無線電力伝送システムの出力電流の振幅との差を補償することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記無線電力伝送システムの出力電流の位相は、前記無線電力伝送システムの出力電圧の位相より遅れており、
前記補償部は、前記ドライバと前記無線電力伝送システムとの間に設けられ、前記ドライバの出力電力を入力し、前記無線電力伝送システムの入力電圧の位相が前記ドライバの出力電圧の位相より進んでいるよう
な電力を前記無線電力伝送システムに出力することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記無線電力伝送システムの出力電流の位相は、前記無線電力伝送システムの出力電圧の位相より遅れており、
前記ドライバは、第2の制御信号を入力し、
前記補償部は、前記ドライバの前段に設けられ、前記第1の制御信号を入力し、前記第2の制御信号の電圧の位相が前記第1の制御信号の電圧の位相より進んでいるような前記第2の制御信号を前記ドライバに出力することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記補償部は、前記第1の制御信号の電圧の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記補償部は、アナログ回路によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記補償部は、デジタル演算により前記差を補償することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記補償部が有する伝達特性は、前記無線電力伝送システムの入力電流に対する出力電流の位相差を相殺する伝達特性であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記補償部が有する伝達特性は、前記無線電力伝送システムの入力電圧に対する出力電流の位相差を相殺する伝達特性であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記
送電器は、
第1のスイッチング信号を基に前記
送電器に入力された電力をスイッチングし、前記送電アンテナに電圧を印加するスイッチ回路
を有し、
前記受電器は、
第2のスイッチング信号を基に、前記受電アンテナから出力される電圧を整流し、前記整流された電圧を前記モータに印加する整流回
路を有し、
前記スイッチ回路と前記整流回路は、それぞれ、複数の双方向スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第1のスイッチング信号と前記第2のスイッチング信号は、相互に周期が同じであることを特徴とする請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記スイッチ回路の前記双方向スイッチは、前記双方向スイッチのソース端子の電位を基準とする前記第1のスイッチング信号により駆動され、
前記整流回路の前記双方向スイッチは、前記双方向スイッチのソース端子の電位を基準とする前記第2のスイッチング信号により駆動されることを特徴とする請求項10に記載の制御装置。
【請求項13】
前記モータは、リニアモータであり、物体を保持して駆動するステージ装置に推力を与えることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
前記リニアモータは、前記ステージ装置に少なくとも1つ以上構成されており、それぞれの前記リニアモータに対して前記無線電力伝送システムが接続されていることを特徴とする請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記無線電力伝送システムは、少なくとも1つ以上の前記リニアモータに対して電力を伝送することを特徴とする請求項13に記載の制御装置。
【請求項16】
ドライバが、第1の制御信号
に基づいて振幅および極性のうちの少なくとも一方が調整された電力を出力するステップと、
前記ドライバの後段に接続され
て送電器と受電器と送電アンテナと受電アンテナとを有して構成される無線電力伝送システムが
、モータに
電力を出力するステップと、
補償部が、前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償するステップと
を有することを特徴とする制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置および制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータに電力を供給して駆動させるシステムがある。例えば、半導体露光装置では、レチクルを露光位置に移動させるためのレチクルステージ上に、レチクルを微細移動させるモータが搭載されている。そのモータを駆動するための電力を供給する給電ケーブルがステージ上に接続されている。このケーブルは、ステージの移動に併せて動くため、ケーブルの張力がステージの位置決め精度や位置決め完了までに要する時間に影響を与える。そこで、半導体露光装置の性能向上のために、モータを駆動するための電力を無線伝送することが考えられている。
【0003】
特許文献1には、モータドライバと無線電力伝送の受電器を粗動ステージ上に配置し、粗動ステージ上の受電部に直流電圧を無線伝送し、粗動ステージ上のモータドライバに直流電圧を与える方法が開示されている。特許文献1では、粗動ステージ上に搭載されたモータに印加する交流電流を生成し、モータを駆動する。この時、モータドライバが出力する交流電流の強度や正負を制御するための指令値信号は、Bluetooth(登録商標)等の一般的な無線通信で伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Bluetooth等の一般的な無線通信で指令値を送るためには、数msecのデータ伝送遅延が生じる。このデータ伝送遅延は、粗動ステージの制御速度や制御精度を低下させる。
【0006】
本開示の目的は、モータの制御速度や制御精度を向上させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
制御装置は、第1の制御信号に基づいて振幅および極性のうちの少なくとも一方が調整された電力を出力するドライバと、前記ドライバの後段に接続されて送電器と受電器と送電アンテナと受電アンテナとを有して構成され、モータに電力を出力する無線電力伝送システムと、前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償する補償部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、モータの制御速度や制御精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】有線接続状態でモータを駆動する電圧制御電流源の例を示す図である。
【
図2】出力電流と流入電流の位相関係を示す図である。
【
図3】無線電力伝送システムの構成例を示す図である。
【
図4】無線電力伝送システムの具体的な構成例を示す図である。
【
図5】無線電力伝送システムの入力電圧と出力電圧の関係を示す図である。
【
図6】電圧制御電流源の出力電力を無線電力伝送する構成例を示す図である。
【
図7】出力電流と流入電流の位相関係を示す図である。
【
図9】位相補償器による位相補償の効果を説明するベクトル図である。
【
図10】モータ制御装置に位相補償器300を接続した構成例を示す図である。
【
図11】電圧と電流の位相関係を示すベクトル図である。
【
図12】位相補償器を挿入したモータ制御装置の構成例を示す図である。
【
図13】位相補償器による位相補償の効果を説明するベクトル図である。
【
図14】アナログ回路で構成した位相補償器の構成例を示す図である。
【
図16】デジタルフィルタを用いた位相補償器の構成例を示す図である。
【
図17】位置決めステージの構成例を示す上面図である。
【
図19】フィードバック制御系の開ループ位相特性を示す図である。
【
図20】微動ステージをX軸方向に駆動させたステージ位置を示す図である。
【
図21】微動ステージを駆動させたときのステージ偏差を示す図である。
【
図22】位相補償器を挿入した場合の制御装置の構成例を示す図である。
【
図23】位相特性の遅れを補償するための位相補償器の位相特性を示す図である。
【
図24】フィードバック制御系の開ループ位相特性を示す図である。
【
図25】微動ステージを駆動させたときのステージ偏差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、有線接続状態でモータ104を駆動する電圧制御電流源100の例を示す図である。電圧制御電流源100は、制御電圧入力線105aおよび105b間に入力される制御電圧Vcに一次比例した任意の電流Iinを出力する。モータ104は、等価回路として、抵抗102とインダクタ103の直列回路として表現できる。ここでは、説明を簡単にするため、モータ104の実機で発生する寄生容量の影響は無視する。電圧制御電流源100は、導線101aおよび101bを介して、モータ104に接続される。
【0011】
電圧Vcは、制御電圧入力線105aおよび105b間に入力される制御電圧である。電流Iinは、電圧制御電流源100の出力電流である。電圧Vinは、電圧制御電流源100の出力電圧である。電圧Vaは、抵抗102の両端電圧である。電圧Vbは、インダクタ103の両端電圧である。電流Ioutは、モータ104に流入する電流である。電圧Voutは、モータ104の両端電圧である。
【0012】
図2(a)は、
図1の電圧Vc,Vin,Vout,Va,Vbと電流Iin,Ioutの位相関係を示すベクトル図である。
図2(a)において、縦軸の上方向は、位相進みの向きを意味し、縦軸の下方向は、位相遅れの向きを意味する。
【0013】
図1の構成によれば、電圧制御電流源100は、導線101aおよび101bを介して、モータ104に接続されている。そのため、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutは、相互に同一である。よって、
図2(a)に示す通り、電流Iinのベクトルと電流Ioutのベクトルは、同じ方向となる。すなわち、電流Iinと電流Ioutとの位相差は、ゼロである。
【0014】
ここで、各部の電圧の位相差について注目する。電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、電圧Vaのベクトルは、抵抗102に生じる電圧降下を示すため、電流Ioutのベクトルの方向と同一の方向を向く。すなわち、電圧Vaは、電流Ioutに対して遅れも進みも生じない。一方、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、電圧Vbのベクトルは、インダクタ103のリアクタンスの作用によって90°進む。電圧Vaと電圧Vbのベクトルの合成として表現される電圧Voutのベクトルは、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、進んでいることが分かる。電圧と電流の基準の考え方を逆にして表現をするならば、電圧Voutのベクトルを基準として考えたとき、電流Ioutのベクトルは遅れている。
【0015】
図2(b)は、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Iout間の位相差を周波数領域で示す図である。電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutは、相互に同一であるから、位相差が生じない。したがって、
図2(b)に示す通り、全ての周波数において、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Iout間の位相差はゼロである。
【0016】
よって、
図1の構成によれば、制御電圧Vcの振幅や位相を変化させることで、電圧制御電流源100の出力電流Iinを可変し、モータ104に流入する電流Ioutを制御可能である。この時、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Iout間の位相差は常に(周波数領域で見ても)ゼロとなることが示された。ここから、無線電力伝送システムの出力電流によってモータを駆動する制御装置の説明に移る。
【0017】
図3は、第1の実施形態による無線電力伝送システム200の構成例を示す図である。無線電力伝送システム200は、送電器202と、送電アンテナ203と、受電アンテナ204と、受電器205を有する。導線201aおよび201bは、無線電力伝送システム200に電力を供給する経路である。導線206aおよび206bは、無線電力伝送システム200の出力電力をモータに供給するための経路である。送電器202は、導線201aおよび201bから供給された電力をスイッチングし、送電アンテナ203に送り出す。送電アンテナ203と受電アンテナ204は、相互に、電磁界によって有意な結合が得られる距離で離隔して配置される。受電アンテナ204は、送電アンテナ203が発生させた電磁界エネルギーの一部を受電器205に供給する。受電器205は、受電アンテナ204から供給される電力を整流する。本実施形態の説明においては、無線電力伝送システム200の電力伝送効率については議論しないこととする。本実施形態による効果は、電力伝送効率を問わずに発現する。なお、無線電力伝送システム200は、線形動作する前提に立つ。すなわち、導線201aおよび201bに供給された電力と、導線206aおよび206bから出力される電力は、相互に、比例関係となる。
【0018】
図4は、無線電力伝送システム200の具体的な構成例を示す図である。無線電力伝送システム200は、正負電源207から正または負の電圧を入力し、モータ104に正または負の電圧を出力する。モータ104は、負荷の一例である。無線電力伝送システム200は、送電器202と、送電アンテナ203と、受電アンテナ204と、受電器205と、ゲート駆動回路208と、整合回路209と、整合回路210と、ゲート駆動回路211を有する。
【0019】
送電器202は、4個の双方向スイッチ213を有する。双方向スイッチ213は、2個の電界効果トランジスタ(FET)のソース同士とゲート同士を互いに接続し、ソース電位基準で動作する同一のゲート駆動信号で駆動する。ゲート駆動回路208は、4個の双方向スイッチ213の各々にゲート駆動信号を出力する。
【0020】
受電器205は、4個の双方向スイッチ214を有する。双方向スイッチ214は、2個の電界効果トランジスタ(FET)のソース同士とゲート同士を互いに接続し、ソース電位基準で動作する同一のゲート駆動信号で駆動する。ゲート駆動回路211は、4個の双方向スイッチ214の各々にゲート駆動信号を出力する。
【0021】
正負電源207は、正または負の直流電圧を出力する。正負電源207が出力する電圧の振幅は、モータ104の推力を決める。正負電源207が出力する電圧の正負符号は、モータ104が動く向きを決める。
【0022】
ゲート駆動回路208は、所定の周波数のゲート駆動信号を4個の双方向スイッチ213に出力する。4個の双方向スイッチ213は、ゲート駆動信号に同期して、正負電源207が出力する直流電圧をスイッチングすることにより、正負電源207が出力する直流電圧を交流電圧に変換する。4個の双方向スイッチ213は、整合回路209を介して、送電アンテナ203に交流電圧を印加する。送電アンテナ203は、電磁界エネルギーを発生させ、受電アンテナ204に電力を無線送電する。例えば、整合回路209はキャパシタであり、送電アンテナ203はコイルである。整合回路209および送電アンテナ203は、双方向スイッチ213の周波数と同じ周波数で共振する共振回路になっている。
【0023】
受電アンテナ204は、送電アンテナ203が発生させた電磁界エネルギーの一部を、整合回路210を介して受電器205に供給する。例えば、受電アンテナ204はコイルであり、整合回路210はキャパシタである。受電アンテナ204および整合回路210は、双方向スイッチ213の周波数と同じ周波数で共振する共振回路になっている。
【0024】
受電器205は、双方向スイッチ213の周波数と同じ周波数でスイッチングする双方向スイッチ214によるフルブリッジ同期整流器であり、受電効率が最もよくなる位相でスイッチングするように調整されている。受電器205は、受電アンテナ204から供給された交流電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧をモータ104に出力する。
【0025】
図5は、
図4の無線電力伝送システム200の入力電圧と出力電圧の関係を示す図である。無線電力伝送システム200の入力電圧は、正負電源207の出力電圧と同じである。無線電力伝送システム200の入力電圧は、モータ104の入力電圧と同じである。無線電力伝送システム200の入力電圧と出力電圧は、正の一次比例関係にあることが分かる。
図5のような入出力関係となるのは、ゲート駆動回路208および211が出力するゲート駆動信号が相互に同期状態にあり、ゲート駆動回路208および211が出力するゲート駆動信号の位相差が適切に調整されている場合である。
【0026】
図4の無線電力伝送システム200によれば、負の電圧を無線電力伝送することが可能であることが分かる。双方向スイッチ213および214を用いない、一般的な無線電力伝送システムでは、負の電圧を無線電力伝送することはできない。なぜなら、負電圧が入力されると、FETのボディーダイオード(あるいはボディーダイオードに相当する寄生素子)が導通し、ゲート駆動信号の状態にかかわらず、FETが導通状態となり、制御不能となるからである。
【0027】
図4の無線電力伝送システム200によれば、負の電圧を無線電力伝送可能であるから、例えば、モータ104の駆動電力を直接的に無線電力伝送することが可能となる。すなわち、
図1において、モータ104の正転・反転動作時に、モータ104に流れるべき電流値を電圧制御電流源100から出力し、
図4の無線電力伝送システム200によって、電圧制御電流源100の出力電力を無線電力伝送することができる。すなわち、
図4の正負電源207が、
図1の電圧制御電流源100に相当する。この時、制御電圧Vcとして、モータ104に流れるべき電流値に相当する制御電圧が電圧制御電流源100に入力される。
【0028】
図6は、
図4の無線電力伝送システム200が
図1の電圧制御電流源100の出力電力を無線電力伝送する構成例を示す図である。
図6は、
図1に対して、
図4の無線電力伝送システム200が、電圧制御電流源100とモータ104との間に挿入されている。無線電力伝送システム200は、電圧制御電流源100の出力電力を無線伝送し、モータ104に出力する。
【0029】
電圧制御電流源100は、導線201aおよび201bを介して、無線電力伝送システム200に接続される。無線電力伝送システム200は、導線206aおよび206bを介して、モータ104に接続される。
【0030】
電流Iinは、電圧制御電流源100の出力電流である。電圧Vinは、導線201aおよび201b間に入力される電圧である。電圧Voutは、導線206aおよび206b間の電圧である。電流Ioutは、モータ104に流入する電流である。
【0031】
実際の無線電力伝送システムにおいては、電圧Vinと電圧Voutとの間には、送電器202のスイッチング周波数の数十周期に相当する時間遅延が発生しうる。ただし、モータ104の制御周波数に対して送電器202のスイッチング周波数は一般的に数10~1000倍程度高速である。例えば、モータ104の制御周波数が10kHz程度であるのに対し、送電器202のスイッチング周波数は100~15000kHzが選択される。以上の前提条件を鑑み、
図6の無線電力伝送システム200によって生じる、電圧Vinと電圧Voutとの間の遅延は、本実施形態中では無視することができる。なお、本実施形態による効果は、この仮定によって特異的に発現する現象ではない。この仮定は、本実施形態を論理的に説明する上で、極めて妥当な範囲のものである。また、電圧Vinと電圧Voutとの間に生じる時間遅延がモータ104の制御周波数に対して無視できないほど大きい場合がある。その場合には、後述する位相補償器300および400が有する位相補償量に、電圧Vinと電圧Voutとの間に生じる時間遅延(位相差)を含めた形態も可能である。
【0032】
図6の構成を用いたとき、電圧制御電流源100が出力する電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの関係性がどのようになるのかを検討する。
図1の有線接続状態でモータ104を駆動する電圧制御電流源100において、電圧制御電流源100が出力する電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの関係性は、
図2(a)で示した通り、位相差がゼロとなっていた。モータ104を制御しようとするとき、電圧制御電流源100が出力する電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの位相差がゼロである状態は、最も適した状態であると考えられる。
【0033】
図7(a)および(b)を用いて、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの位相関係について説明する。
図7(a)は、
図6の電圧Vc,Vin,Vout,Va,Vbと電流Iin,Ioutの位相関係を示すベクトル図である。
図7(a)において、縦軸の上方向は、位相進みの向きを意味し、縦軸の下方向は、位相遅れの向きを意味する。
【0034】
電圧制御電流源100に入力される制御電圧Vcと電圧制御電流源100の出力電流Iinの位相は、一致することは先に述べたとおりである。したがって、制御電圧Vcのベクトルと電流Iinのベクトルの向きは一致する。電圧制御電流源100の出力端子から見た、無線電力伝送システム200の入力インピーダンスは実抵抗とみなせる。なぜなら、モータ104の制御周波数に対して送電器202のスイッチング周波数は一般的に数10~1000倍程度高速であり、かつ、送電器202の電源入力端子に接続されているデカップリングコンデンサの平滑作用があるからである。これにより、電圧制御電流源100の出力端子に対して送電器202のスイッチングの影響はほとんど発生しない。なお、デカップリングコンデンサは、一般的な設計法ならば必ず接続されている。
【0035】
したがって、以降、無線電力伝送システム200の入力インピーダンスは実抵抗とみなせることとして扱う。その場合、無線電力伝送システム200の入力電圧(電圧制御電流源100の出力電圧)Vinは、電圧制御電流源100の出力電流Iinに比例する。すなわち、電圧Vinのベクトルと電流Iinのベクトルの方向は一致する。先に仮定した通り、無線電力伝送システム200は、導線201aおよび201b間に入力される電圧Vinを、導線206aおよび206b間の電圧Voutとして即座に出力するから、電圧Vinのベクトルと電圧Voutのベクトルの方向は一致する。電圧Voutのベクトルと電流Ioutのベクトル間の位相の関係は、
図2(a)で説明した関係と同一であるから、省略する。結論のみを述べると、電圧Vout(≒Vin)のベクトルを基準として考えたとき、電流Ioutは遅れている。電圧Vinのベクトルと電流Iinのベクトルの方向は一致することから、言い換えると、電流Iinのベクトルを基準として考えたとき、電流Ioutのベクトルは遅れている。
【0036】
図7(a)において、位相差θは、電流Iinに対する電流Ioutの位相差(遅れ量)である。位相差θは、式(1)で表される。ここで、ωは制御電圧Vcの角振動数である。Lはインダクタ103のインダクタンスである。Rは抵抗102の抵抗値である。
【0037】
【0038】
図7(b)は、位相差θを周波数領域で表現した図である。
図2(b)においては、出力電流Iinとモータ104に流入する電流Iout間の位相差はどの周波数についてもゼロであった。一方で、
図7(b)によると、周波数の増加に伴って、位相差(遅れ量)θの絶対値が単調に増加する。
図6の構成の場合、
図7(b)のように、周波数の増加に伴って、位相差θの絶対値が単調に増加する性質は好ましくない。例えば、時刻0に角周波数ωでモータ104の駆動を開始したい場合、時刻0に角周波数ωの制御電圧Vcを電圧制御電流源100に入力したとする。そうした場合、式(1)で示した位相差θの分だけ遅れた時刻dにモータ104が動作を開始することになる。時刻dは、式(2)で表される。
【0039】
【0040】
理想的には、
図2(b)のように、出力電流Iinとモータ104に流入する電流Iout間の位相差は、どの周波数についてもゼロとなることである。しかし、
図6の構成によって、無線電力伝送システム200が出力する電力でモータ104を駆動すると、制御電圧Vcに対してモータ104が動作するタイミング(位相)が遅れることになる。さらに、周波数の増加に伴って、この遅れ量が単調に増加する。
【0041】
これが、本実施形態が解決すべき課題である。すなわち、本実施形態の課題は、無線電力伝送システム200の電気的性質に起因して、無線電力伝送システム200の入力電流Iinの位相と、無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相との間に差が生じることである。上記課題を解決するために、位相補償器を導入する。
【0042】
図8は、本実施形態による位相補償器300を示す図である。位相補償器300の入力部には、導線301aおよび301bが接続される。位相補償器300の出力部には、導線302aおよび302bが接続される。電流Iinは、位相補償器300が導線301aおよび301bから入力する電流である。電圧Vinは、導線301aおよび301b間に入力される電圧である。電圧V2outは、位相補償器300が導線302aおよび302b間に出力する電圧である。電流I2outは、位相補償器300が導線302aおよび302bに出力する電流である。ここでは、位相補償器300は、電気回路的に動作することとして説明する。なお、位相補償器300は、デジタル演算としてソフトウェア的に実装することができる。同様に、位相補償器300は、FPGAを用いて、論理回路として実装することができる。
【0043】
図9は、
図8の位相補償器300による位相補償の効果を説明するためのベクトル図である。
図9において、縦軸の上方向は、位相進みの向きを意味する。逆に、縦軸の下方向は、位相遅れの向きを意味する。位相補償器300は、入力電圧Vinを基準にして、出力電圧V2outを、位相補償量φだけ“進める”ように機能する。電気回路的な言い方をするならば、位相補償器300は、位相補償量φだけ力率を変更する。すなわち、
図9において、出力電圧V2outのベクトルは、入力電圧Vinのベクトルを基準にして、角度φだけ進んだ向きを向いている。一方で、出力電流I2outのベクトルは、入力電圧Vinのベクトルと同じ向きを向く。以下、
図8および
図9で説明した位相補償器300を活用することで、上記の課題を解決可能であることを説明する。
【0044】
図10は、第1の実施形態による制御装置310の構成例を示す図である。制御装置310は、電圧制御電流源100と、位相補償器300と、無線電力伝送システム200と、モータ104を有する。以下、制御装置310の制御方法を説明する。
【0045】
電圧制御電流源100は、制御電圧入力線105aおよび105b間に入力される制御電圧Vcに一次比例した任意の電流Iinを出力する。電圧制御電流源100は、導線301aおよび301bを介して、位相補償器300に接続される。電流Iinは、電圧制御電流源100の出力電流である。電圧Vinは、導線301aおよび301b間に入力される電圧である。電流Iinの位相は、
図9のように、電圧Vinの位相と同じである。
【0046】
位相補償器300は、電圧Vinの位相を補償した電圧V2outを出力する。
図9のように、電圧V2outは、電圧Vinに対して位相補償量φだけ位相を進めた電圧である。位相補償器300は、導線302aおよび302bを介して、無線電力伝送システム200に接続される。電圧V2outは、位相補償器300が導線302aおよび302b間に出力する電圧である。電流I2outは、位相補償器300の出力電流である。電流I2outの位相は、
図9のように、電流Iinの位相と同じである。
【0047】
無線電力伝送システム200は、電圧V2outの電力を入力し、電力を無線伝送し、電圧Voutの電力を出力する。無線電力伝送システム200は、導線206aおよび206bを介して、モータ104に接続される。電圧Voutは、無線電力伝送システム200が導線206aおよび206b間に出力する電圧である。電流Ioutは、無線電力伝送システム200がモータ104に出力する電流である。モータ104は、抵抗102とインダクタ103の直列回路で表現可能である。電圧Vaは、抵抗102の両端電圧である。電圧Vbは、インダクタ103の両端電圧である。
【0048】
図11を用いて、
図10の電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの位相関係について説明する。
図11は、
図10の電圧Vc,Vin,V2out,Vout,Va,Vbと電流Iin,I2out,Ioutの位相関係を示すベクトル図である。
図11において、縦軸の上方向は、位相進みの向きを意味し、縦軸の下方向は、位相遅れの向きを意味する。
【0049】
電圧制御電流源100に入力される制御電圧Vcの位相と電圧制御電流源100の出力電圧Vinの位相と電圧制御電流源100の出力電流Iinの位相は、相互に一致することは先に述べたとおりである。したがって、電圧Vcのベクトルと電圧Vinのベクトルと電流Iinのベクトルの向きは、相互に一致する。
【0050】
ここで、
図9を参照する。位相補償器300に入力される入力電圧Vinと、位相補償器300の出力電圧V2outの間には、進み方向の位相差φが生じる。したがって、
図11において、電圧V2outのベクトルは、電圧Vinのベクトルを基準にして、角度φだけ進んだ向きを向く。
【0051】
位相補償器300の入力電流Iinおよび出力電流I2outは、相互に、位相が同じであり、比例関係にある。したがって、電流Iinのベクトルと電流I2outのベクトルの方向は、相互に一致する。
【0052】
無線電力伝送システム200の入力電圧V2outと出力電圧Voutは、相互に比例関係にある。すなわち、電圧V2outのベクトルと電圧Voutのベクトルの方向は、相互に一致する。上記の通り、無線電力伝送システム200は、導線302aおよび302b間に入力される電圧V2outを、導線206aおよび206b間の電圧Voutとして即座に出力するから、電圧V2outのベクトルと電圧Voutのベクトルの方向は相互に一致する。
【0053】
電圧Vout,Va,Vbと電流Ioutの位相の関係は、
図7(a)で説明した関係と同一である。すなわち、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、電圧Vaのベクトルは、抵抗102に生じる電圧降下を示すため、電流Ioutのベクトルの方向と同一の方向を向く。すなわち、電圧Vaは、電流Ioutに対して遅れも進みも生じない。一方、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、電圧Vbのベクトルは、インダクタ103のリアクタンスの作用によって90°進む。電圧Vaと電圧Vbのベクトルの合成として表現される電圧Voutのベクトルは、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、位相差θだけ進んでいる。電圧と電流の基準の考え方を逆にして表現をするならば、電圧Voutのベクトルを基準として考えたとき、電流Ioutのベクトルは、位相差θだけ遅れている。位相差θは、上記の式(1)で表される。
図11においては、式(3)の関係が成り立っている場合のベクトル図を示す。
【0054】
【0055】
この場合、式(4)で示される通り、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの間に位相差(遅れ量)δが生じる。
【0056】
【0057】
ここで、この電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの間の位相差δを最小にすることを考える。式(4)から明確な通り、位相差θと位相補償量φを略等量となるように調整すればよい。すなわち、式(5)が成り立つように、位相補償器300の位相補償量φを調整することで、電圧制御電流源100の出力電流Iinとモータ104に流入する電流Ioutの間の位相差δを最小にすることができる。
【0058】
【0059】
このとき、式(6)が成り立ち、位相差δが略0になる。
【0060】
【0061】
ここまでの説明をまとめると、
図10の構成によって、無線電力伝送システム200が出力する電力でモータ104を駆動するとき、式(5)を満足するように、位相補償器300の位相補償量φを調整する。これにより、制御電圧Vcとモータ104に流入する電流Ioutの間の位相差δを最小にすることができ、制御電圧Vcに対してモータ104が動作するタイミング(位相)の遅れを抑制することができる。
【0062】
上記のように、本実施形態の課題は、制御電圧Vcの位相と、モータ104の駆動電流Ioutの位相との間に差が生じることである。本実施形態によれば、制御装置310は、式(5)を満たすように、適切な位相補償量φを有する位相補償器300を導入することにより、上記の課題を解決することができる。
【0063】
以上のように、電圧制御電流源100は、
図22(a)および(b)のリニアモータドライバ506の一例であり、制御電圧Vcを基に、電力を出力する。制御電圧Vcは、制御信号の一例である。無線電力伝送システム200は、電圧制御電流源100の後段に接続され、第1の電力を入力し、無線電力伝送により、第2の電力をモータ104に出力する。位相補償器300は、補償部であり、制御電圧Vcの位相と無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相との差を補償する。
【0064】
図11のように、無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相は、無線電力伝送システム200の出力電圧Voutの位相より遅れている。位相補償器300は、電圧制御電流源100と無線電力伝送システム200との間に設けられる。位相補償器300は、電圧制御電流源100の出力電力を入力し、無線電力伝送システム200の入力電圧V2outの位相が電圧制御電流源100の出力電圧Vinの位相より進んでいるような上記の第1の電力を無線電力伝送システム200に出力する。
【0065】
図4のように、無線電力伝送システム200は、送電アンテナ203と、受電アンテナ204と、送電器202と、受電器205を有する。送電アンテナ203は、無線送電するためのアンテナである。受電アンテナ204は、送電アンテナ203の電力を無線受電する。送電器202は、スイッチ回路であり、ゲート駆動回路208の第1のスイッチング信号を基に入力電力をスイッチングし、送電アンテナ203に電圧を印加する。受電器205は、整流回路であり、ゲート駆動回路211の第2のスイッチング信号を基に、受電アンテナ204から出力される電圧を整流し、その整流された電圧をモータ104に印加する。送電器202は、複数の双方向スイッチ213を有する。受電器205は、複数の双方向スイッチ214を有する。
【0066】
上記の第1のスイッチング信号と上記の第2のスイッチング信号は、相互に周期が同じである。送電器202の双方向スイッチ213は、双方向スイッチ213のソース端子の電位を基準とする上記の第1のスイッチング信号により駆動される。受電器205の双方向スイッチ214は、双方向スイッチ214のソース端子の電位を基準とする上記の第2のスイッチング信号により駆動される。
【0067】
以上、本実施形態によれば、制御装置310は、無線電力伝送システム200の出力電流Ioutによってモータ104を駆動する。位相補償器300は、無線電力伝送システム200の電気的性質に起因して、制御装置310に入力した制御電圧Vcの位相と、無線電力伝送システム200が出力するモータ駆動電流Ioutの位相との間に生じる差を補償する。位相補償器300がその差を低減することで、モータ104の制御速度や制御精度を向上させることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態による制御装置410の構成例を示す図である。制御装置410は、位相補償器400と、電圧制御電流源100と、無線電力伝送システム200と、モータ104を有する。位相補償器400は、電圧制御電流源100の前段に設けられ、第1の実施形態の位相補償器300と同様の機能を有する。
【0069】
位相補償器400の入力部には、導線401aおよび401bが接続される。位相補償器400は、導線402aおよび402bを介して、電圧制御電流源100に接続される。位相補償器400は、導線401aおよび401b間の制御電圧Vc1を入力し、位相補償量φの位相補償を行い、導線402aおよび402b間の制御電圧Vc2を出力する。制御電圧Vc2は、制御電圧Vc1の位相を位相補償量φだけ進めた電圧である。
【0070】
電圧制御電流源100は、導線402aおよび402b間に入力される制御電圧Vc2に一次比例した任意の電流Iinを出力する。電圧制御電流源100は、導線201aおよび201bを介して、無線電力伝送システム200に接続される。電流Iinは、電圧制御電流源100の出力電流である。電圧Vinは、電圧制御電流源100が導線201aおよび201b間に出力する電圧である。
【0071】
無線電力伝送システム200は、電圧Vinの電力を入力し、電力を無線伝送し、電圧Voutの電力を出力する。無線電力伝送システム200は、導線206aおよび206bを介して、モータ104に接続される。電圧Voutは、無線電力伝送システム200が導線206aおよび206b間に出力する電圧である。電流Ioutは、無線電力伝送システム200がモータ104に出力する電流である。モータ104は、抵抗102とインダクタ103の直列回路で表現可能である。電圧Vaは、抵抗102の両端電圧である。電圧Vbは、インダクタ103の両端電圧である。
【0072】
図13(a)は、位相補償器400による位相補償の効果を説明するためのベクトル図である。位相補償器400は、制御電圧Vc1を基準にして、制御電圧Vc2が位相補償量φだけ進むように機能する。したがって、制御電圧Vc1のベクトルに対して、制御電圧Vc2のベクトルは、位相補償量φだけ位相が進んだ方向を向く。なお、本実施形態においては、位相補償量φは、上記の式(5)を満たすものとする。
【0073】
図13(b)を用いて、制御電圧Vc1とモータ104に流入する電流Ioutの位相関係について説明する。
図13(b)は、
図12の電圧Vc1,Vc2,Vin,Vout,Va,Vbと電流Iin,Ioutの位相関係を示すベクトル図である。
図13(a)および(b)において、縦軸の上方向は、位相進みの向きを意味し、縦軸の下方向は、位相遅れの向きを意味する。
【0074】
図13(a)で説明した通り、制御電圧Vc1と制御電圧Vc2の間には、位相補償量φの位相差がある。よって、制御電圧Vc1のベクトルに対して、制御電圧Vc2のベクトルは、位相補償量φだけ位相が進んだ方向を向く。
【0075】
電圧制御電流源100に入力される制御電圧Vc2の位相と電圧制御電流源100の出力電圧Vinの位相と電圧制御電流源100の出力電流Iinの位相は、相互に一致することは先に述べたとおりである。したがって、電圧Vc2のベクトルと電圧Vinのベクトルと電流Iinのベクトルの向きは、相互に一致する。
【0076】
無線電力伝送システム200の入力電圧Vinと出力電圧Voutは、相互に比例関係にある。すなわち、電圧Vinのベクトルと電圧Voutのベクトルの方向は、相互に一致する。先に仮定した通り、無線電力伝送システム200は、導線201aおよび201b間に入力される電圧Vinを、導線206aおよび206b間の電圧Voutとして即座に出力するから、電圧Vinのベクトルと電圧Voutのベクトルの方向は相互に一致する。
【0077】
電圧Vout,Va,Vbと電流Ioutの位相の関係は、
図7(a)で説明した関係と同一である。すなわち、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、電圧Vaのベクトルは、抵抗102に生じる電圧降下を示すため、電流Ioutのベクトルの方向と同一の方向を向く。すなわち、電圧Vaは、電流Ioutに対して遅れも進みも生じない。一方、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、電圧Vbのベクトルは、インダクタ103のリアクタンスの作用によって90°進む。電圧Vaと電圧Vbのベクトルの合成として表現される電圧Voutのベクトルは、電流Ioutのベクトルを基準として考えたとき、位相差θだけ進んでいる。電圧と電流の基準の考え方を逆にして表現をするならば、電圧Voutのベクトルを基準として考えたとき、電流Ioutのベクトルは、位相差θだけ遅れている。位相差θは、上記の式(1)で表される。ここで、位相補償量φは、上記の式(5)を満たすため、結果的に、制御電圧Vc1とモータ104に流入する電流Ioutの間に生じる位相差は略ゼロとなる。
【0078】
以上、本実施形態によれば、制御装置410は、第1の実施形態と同様に、制御電圧Vc1の位相と、モータ104の駆動電流Ioutの位相との間の位相差を低減できる効果を有する。以下、位相補償器400の具体的な構成例として、2種類の構成例を説明する。
【0079】
図14は、オペアンプU1を用いたアナログ回路で構成した位相補償器400の構成例例を示す図である。位相補償器400は、オペアンプU1と、抵抗R1~R4と、キャパシタC1,C2を有し、非反転増幅回路をベースとした構成である。例えば、抵抗R1は300Ωであり、抵抗R2は10kΩであり、抵抗R3は400Ωであり、抵抗R4は1.2kΩである。キャパシタC1は0.2μFであり、キャパシタC2は0.3μFである。位相補償器400は、グランド電位を基準として、制御電圧Vc1を入力し、グランド電位を基準として制御電圧Vc2を得る。
【0080】
図15(a)および(b)は、
図14の位相補償器400の伝達特性を示す図である。
図15(a)では、横軸は周波数を示し、縦軸は制御電圧Vc1に対する制御電圧Vc2の振幅(電力)の比を[dB]で示している。
図15(b)では、横軸は周波数を示し、縦軸は制御電圧Vc1に対する制御電圧Vc2の位相差を度(deg)で示している。
【0081】
これまでの説明では、主に、制御電圧Vc1とモータ104に流入する電流Ioutの位相関係について注目してきた。一方で、制御電圧Vc1とモータ104に流入する電流Ioutの振幅関係についてはあまり議論していない。一般に、制御電圧Vc1とモータ104に流入する電流Ioutの位相関係の方が性能に与える影響度が大きいため、本実施形態においては位相関係を改善することに重きを置いている。
【0082】
しかしながら、無線電力伝送システム200を用いる場合、少なからず振幅関係に対しても無線電力伝送システム200を適用したことによる影響が出る。よって、本実施形態において、
図15(a)で示した振幅特性のように、各周波数における、制御電圧Vc1とモータ104に流入する電流Ioutの振幅関係を、位相補償器300や位相補償器400によって変化させることは否定していない。むしろ、位相補償器300や位相補償器400による、無線電力伝送システム200を適用した制御装置310または410の改善効果を強化することができる優れた手段となる。
【0083】
図16は、IIR(Infinite Impulse Response)型デジタルフィルタを用いた位相補償器400の構成例を示す図である。位相補償器400は、制御電圧Vc1を入力し、制御電圧Vc2を出力する。このデジタルフィルタは、デジタル演算としてソフトウェア的実装することができる。同様に、このデジタルフィルタは、FPGAを用いて論理回路として実装することができる。
【0084】
図16の重み付け係数a1,a2,b0,b1,b2は、IIR型デジタルフィルタの重み付け係数である。例えば、a1=-1.001815、a2=0.198548、b0=1.908796、b1=-2.090536、b2=0.401394である。この重み付け係数a1,a2,b0,b1,b2の値は、
図14で示したオペアンプU1を用いたアナログ回路で構成した位相補償器400について、双1次変換を用いてZ変換し、導出した係数である。したがって、
図16に示したIIR型デジタルフィルタに上記の重み付け係数a1,a2,b0,b1,b2の値を用いた場合、
図16に示したIIR型デジタルフィルタの伝達特性は、
図15(a)および
図15(b)と略等価となる。
【0085】
上記では、位相補償器400の具体的な構成例を2種類示した。これらの例から分かるように、第1の実施形態および第2の実施形態で導入した位相補償器300および位相補償器400は、現実的に実現かつ実装可能な手段である。これから説明する第3の実施形態において、無線電力伝送システム200を適用した制御装置の実機において、位相補償器300および位相補償器400による効果を測定した結果を示す。
【0086】
以上のように、電圧制御電流源100は、制御電圧Vc1およびVc2を基に、電力を出力する。制御電圧Vc1およびVc2は、それぞれ、制御信号の一例である。無線電力伝送システム200は、電圧制御電流源100の後段に接続され、第1の電力を入力し、無線電力伝送により、第2の電力をモータ104に出力する。位相補償器400は、補償部であり、制御電圧Vc1の位相と無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相との差を補償する。
【0087】
図13(b)のように、無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相は、無線電力伝送システム200の出力電圧Voutの位相より遅れている。電圧制御電流源100は、制御電圧Vc2を入力する。位相補償器400は、電圧制御電流源100の前段に設けられ、制御電圧Vc1を入力し、制御電圧Vc2の位相が制御電圧Vc1の位相より進んでいるような制御電圧Vc2を電圧制御電流源100に出力する。
【0088】
なお、位相補償器400は、制御電圧Vc1の位相と無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相との差と、制御電圧Vc1の振幅と無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの振幅との差を補償してもよい。
【0089】
同様に、
図10の位相補償器300は、制御電圧Vcの位相と無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの位相との差と、制御電圧Vcの振幅と無線電力伝送システム200の出力電流Ioutの振幅との差を補償してもよい。
【0090】
位相補償器300および400は、
図14のようなアナログ回路によって構成されることができる。また、位相補償器300および400は、
図16のようなデジタル演算により、上記の位相の差を補償してもよい。ここで、デジタル演算は、DSP(Digital Signal Processor)やパーソナルコンピュータによるプログラムの演算処理と、FPGAによるデジタル回路による並列演算処理の両方を含む。
【0091】
位相補償器300および400が有する伝達特性は、無線電力伝送システム200の入力電流に対する出力電流の位相差を相殺する伝達特性である。また、位相補償器300および400が有する伝達特性は、無線電力伝送システム200の入力電圧に対する出力電流の位相差を相殺する伝達特性でもよい。
【0092】
以上、本実施形態によれば、制御装置410は、無線電力伝送システム200の出力電流Ioutによってモータ104を駆動する。位相補償器400は、無線電力伝送システム200の電気的性質に起因して、制御装置310に入力した制御電圧Vc1の位相と、無線電力伝送システム200が出力するモータ駆動電流Ioutの位相との間に生じる差を補償する。位相補償器400がその差を低減することで、モータ104の制御速度や制御精度を向上させることができる。
【0093】
(第3の実施形態)
次に、無線電力伝送システム200を搭載した位置決めステージに位相補償器300または400を適用したときの効果を説明する。
【0094】
図17は、リニアモータへの電力供給に無線電力伝送システム507を使用した位置決めステージの構成例を示す上面図である。本実施形態では、例えば半導体露光装置のレチクルを搭載したステージを例として説明する。本実施形態における位置決めステージは、大ストロークの粗動ステージ501と、位置決め精度が高い微動ステージ503を有する。
【0095】
粗動ステージ501には、駆動方向(Y軸方向)の左右両側に一対の可動子502aが設けられている。これらの一対の可動子502aは、対応する一対の固定子502bと協働してY軸方向に駆動する。粗動ステージ501には、不図示の反射鏡が設けられており、不図示のレーザ干渉計(計測部)からの計測光を反射することにより、ステージのY軸方向への変位量または位置が計測される。
【0096】
微動ステージ503は、微動リニアモータ504により、粗動ステージ501と非接触で連結され、粗動ステージ501とともにY軸方向に駆動される。また、微動ステージ503は、微動リニアモータ504により粗動ステージ501とX軸方向にも非接触で連結され、X軸方向に駆動される。微動ステージ503には、不図示の反射鏡が設けられており、不図示のレーザ干渉計(計測部)からの計測光を反射することにより、ステージのX軸方向とY軸方向への変位量または位置が計測される。微動リニアモータ504を駆動するために必要な電力は、リニアモータドライバ506から供給される。リニアモータドライバ506から供給された電力は、無線電力伝送システム507の送電部507bと受電部507aと微動リニアモータケーブル505を介して、微動リニアモータ504に伝送される。
【0097】
無線電力伝送システム507の送電部507bは、リニアモータドライバ506の出力電流を検出し、送電アンテナにて受電部507aへ電力を送電する。受電部507aは、送電部507bから送電された電力を受電アンテナにて受電し、整流回路を経て微動リニアモータ504へ出力する。
【0098】
次に、
図18を参照し、微動リニアモータ504による微動ステージ503の位置フィードバック制御系の制御装置600について説明する。
図18は、位相補償器を挿入していない場合の制御装置600の構成例を示す図である。制御装置600は、減算器605と、補償器604と、リニアモータドライバ506と、無線電力伝送システム507と、微動リニアモータ504と、微動ステージ503と、位置計測部603を有する。リニアモータドライバ506は、
図10または
図12の電圧制御電流源100に対応する。無線電力伝送システム507は、
図10または
図12の無線電力伝送システム200に対応する。微動リニアモータ504は、
図10または
図12のモータ104に対応する。
【0099】
微動ステージ503の位置は、レーザ干渉計等の位置計測部603によって計測され、計測された微動ステージ503の位置が減算器605に入力される。減算器605は、位置計測部603で計測された微動ステージ503の位置と位置指令値(目標位置)との差(偏差)を補償器604に供給する。補償器604は、例えばPID制御器601を含み、減算器605から供給された偏差に基づいて、リニアモータドライバ506に対するドライバ指令値を生成する。リニアモータドライバ506は、補償器604からのドライバ指令値に基づいて、モータ駆動電流を出力する。リニアモータドライバ506から出力されたモータ駆動電流は、無線電力伝送システム507で受電して、無線アンテナと整流回路を介して微動リニアモータ504へ供給される。微動リニアモータ504は、供給されたモータ駆動電流に従い、微動ステージ503に推力を与える。
【0100】
図19は、無線電力伝送システム507により電力伝送した場合と、有線(例えばケーブル)により電力伝送した場合の、微動ステージ503のX軸方向に対する位置フィードバック制御系の開ループ位相特性を示す図でる。実線は、有線による電力伝送の場合の開ループ位相特性を示し、破線は、無線電力伝送システム507による電力伝送の場合の開ループ位相特性を示す。実線の有線の場合と破線の無線の場合の位相特性を比較したとき、例えば、100Hzの正弦波を入力した場合、実線の有線の場合よりも破線の無線の場合の方が9°遅れて応答することを示している。このように、実線の有線の場合よりも破線の無線の場合の方が、位相が遅れている状態で、
図20のように、ステージ位置P0からステージ位置P1へ微動ステージ503をX軸方向に駆動させた。
図21は、そのときのステージ偏差を示す。実線は、有線の場合のステージ偏差を示し、破線は、無線の場合のステージ偏差を示す。破線の無線の場合は実線の有線の場合よりも応答が遅れているため、微動ステージ503の制御性能が悪化し、ステージ偏差が大きく発生する。
【0101】
図22(a)は、位相補償器602を挿入した制御装置610の構成例を示す図である。
図22(a)の制御装置610は、
図18の制御装置600に対して、位相補償器602を追加したものである。位相補償器602は、PID制御器601とリニアモータドライバ506との間に設けられ、PID制御器601の出力値を入力し、位相補償し、ドライバ指令値をリニアモータドライバ506に出力する。位相補償器602は、
図12の位相補償器400に対応する。
【0102】
次に、
図22(a)の位相補償器602を挿入することによる効果を説明する。上述の通り、無線電力伝送システム507による電力伝送を行った場合は、有線の場合よりも位相特性に遅れが生じる。この位相特性の遅れを相殺するように、位相を進める特性を持つ位相補償器602伝達関数H(z)を式(7)に示す。
【0103】
【0104】
なお、式(7)の係数a1,a2,b0,b1,b2は、
図16の重み付け係数a1,a2,b0,b1,b2に対応する。また、式(7)は、位相補償器602をデジタル回路で実装したときの式であるが、位相補償器602をアナログ回路で実装してもよい。位相補償器602の重み付け係数a1,a2,b0,b1,b2は、無線電力伝送システム507による電力伝送時と有線による電力伝送時の位相特性の差を補償するように調整する。例えば、
図19の位相特性の遅れを補償するための重み付け係数は、a1=-1.001815、a2=0.198548、b0=1.908796、b1=-2.090536、b2=0.401394である。この重み付け係数を用いることで、
図23の特性を持つ位相補償器602を実装することができる。
【0105】
図22(b)は、位相補償器602を挿入した他の制御装置620の構成例を示す図である。
図22(b)の制御装置620は、
図18の制御装置600に対して、位相補償器602を追加したものである。位相補償器602は、リニアモータドライバ506と無線電力伝送システム507の間に設けられ、リニアモータドライバ506が出力するモータ駆動電流を入力し、位相補償し、モータ駆動電流を無線電力伝送システム507に出力する。位相補償器602は、
図10の位相補償器300に対応する。
【0106】
図24は、
図22(b)の位相補償器602を挿入して無線電力伝送システム507により電力伝送した場合と、有線により電力伝送した場合の、微動ステージ503のX軸方向に対するフィードバック制御系の開ループ位相特性を示す図である。実線は、有線による電力伝送の場合の開ループ位相特性を示し、破線は、無線電力伝送システム507による電力伝送の場合の開ループ位相特性を示す。実線の有線の場合と破線の無線の場合の位相特性を比較したとき、例えば、100Hzの正弦波を入力した場合、実線の有線の場合と破線の無線の場合との応答の遅れは0.1°であり、ほとんど遅れが生じていないことが分かる。実線の有線の場合と破線の無線の場合の開ループ位相特性がほぼ一致している状態で、
図20と同様の動きで微動ステージ503を駆動させた。
図25は、そのときのステージ偏差を示す。実線は、有線の場合のステージ偏差を示し、破線は、無線の場合のステージ偏差を示す。破線の無線の場合と実線の有線の場合の微動ステージ503の位相特性が同等になったことで、両者の微動ステージ503の制御性能も同等になり、無線の場合のステージ偏差は有線の場合のステージ偏差と同等になった。
【0107】
以上のように、微動リニアモータ504は、第1および第2の実施形態のモータ104に対応し、物体を保持して駆動する微動ステージ503に推力を与える。微動ステージ503は、ステージ装置である。
【0108】
微動リニアモータ504は、微動ステージ503に少なくとも1つ以上構成されていてもよい。その場合、それぞれの微動リニアモータ504に対して無線電力伝送システム507が接続されている。無線電力伝送システム507は、少なくとも1つ以上の微動リニアモータ504に対して電力を伝送する。
【0109】
なお、上述の実施形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本開示はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0110】
本実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
(構成1)
第1の制御信号を基に、電力を出力するドライバと、
前記ドライバの後段に接続され、第1の電力を入力し、無線電力伝送により、第2の電力をモータに出力する無線電力伝送システムと、
前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償する補償部と
を有することを特徴とする制御装置。
(構成2)
前記補償部は、前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差と、前記第1の制御信号の振幅と前記無線電力伝送システムの出力電流の振幅との差を補償することを特徴とする構成1に記載の制御装置。
(構成3)
前記無線電力伝送システムの出力電流の位相は、前記無線電力伝送システムの出力電圧の位相より遅れており、
前記補償部は、前記ドライバと前記無線電力伝送システムとの間に設けられ、前記ドライバの出力電力を入力し、前記無線電力伝送システムの入力電圧の位相が前記ドライバの出力電圧の位相より進んでいるような前記第1の電力を前記無線電力伝送システムに出力することを特徴とする構成1または2に記載の制御装置。
(構成4)
前記無線電力伝送システムの出力電流の位相は、前記無線電力伝送システムの出力電圧の位相より遅れており、
前記ドライバは、第2の制御信号を入力し、
前記補償部は、前記ドライバの前段に設けられ、前記第1の制御信号を入力し、前記第2の制御信号の電圧の位相が前記第1の制御信号の電圧の位相より進んでいるような前記第2の制御信号を前記ドライバに出力することを特徴とする構成1または2に記載の制御装置。
(構成5)
前記補償部は、前記第1の制御信号の電圧の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償することを特徴とする構成1~4のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成6)
前記補償部は、アナログ回路によって構成されることを特徴とする構成1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成7)
前記補償部は、デジタル演算により前記差を補償することを特徴とする構成1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成8)
前記補償部が有する伝達特性は、前記無線電力伝送システムの入力電流に対する出力電流の位相差を相殺する伝達特性であることを特徴とする構成1~7のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成9)
前記補償部が有する伝達特性は、前記無線電力伝送システムの入力電圧に対する出力電流の位相差を相殺する伝達特性であることを特徴とする構成1~7のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成10)
前記無線電力伝送システムは、
無線送電する送電アンテナと、
前記送電アンテナの電力を無線受電する受電アンテナと、
第1のスイッチング信号を基に前記第1の電力をスイッチングし、前記送電アンテナに電圧を印加するスイッチ回路と、
第2のスイッチング信号を基に、前記受電アンテナから出力される電圧を整流し、前記整流された電圧を前記モータに印加する整流回路とを有し、
前記スイッチ回路と前記整流回路は、それぞれ、複数の双方向スイッチを有することを特徴とする構成1~9のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成11)
前記第1のスイッチング信号と前記第2のスイッチング信号は、相互に周期が同じであることを特徴とする構成10に記載の制御装置。
(構成12)
前記スイッチ回路の前記双方向スイッチは、前記双方向スイッチのソース端子の電位を基準とする前記第1のスイッチング信号により駆動され、
前記整流回路の前記双方向スイッチは、前記双方向スイッチのソース端子の電位を基準とする前記第2のスイッチング信号により駆動されることを特徴とする構成10または11に記載の制御装置。
(構成13)
前記モータは、リニアモータであり、物体を保持して駆動するステージ装置に推力を与えることを特徴とする構成1~12のいずれか1項に記載の制御装置。
(構成14)
前記リニアモータは、前記ステージ装置に少なくとも1つ以上構成されており、それぞれの前記リニアモータに対して前記無線電力伝送システムが接続されていることを特徴とする構成13に記載の制御装置。
(構成15)
前記無線電力伝送システムは、少なくとも1つ以上の前記リニアモータに対して電力を伝送することを特徴とする構成13または14に記載の制御装置。
(方法1)
ドライバが、第1の制御信号を基に、電力を出力するステップと、
前記ドライバの後段に接続される無線電力伝送システムが、第1の電力を入力し、無線電力伝送により、第2の電力をモータに出力するステップと、
補償部が、前記第1の制御信号の位相と前記無線電力伝送システムの出力電流の位相との差を補償するステップと
を有することを特徴とする制御装置の制御方法。
【符号の説明】
【0111】
100 電圧制御電流源、102 抵抗、103 インダクタ、104 モータ、200 無線電力伝送システム、202 送電器、203 送電アンテナ、204 受電アンテナ、205 受電器、300 位相補償器、400 位相補償器