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特許7547457補助機械駆動システムを備える航空機用ハイブリッド推進チェイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】補助機械駆動システムを備える航空機用ハイブリッド推進チェイン
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/33 20240101AFI20240902BHJP
   B64C 27/10 20230101ALI20240902BHJP
   B64D 27/10 20060101ALI20240902BHJP
   B64D 27/357 20240101ALI20240902BHJP
   B64D 35/024 20240101ALI20240902BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B64D27/33
B64C27/10
B64D27/10
B64D27/357
B64D35/024
H02J7/00 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022500763
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020069119
(87)【国際公開番号】W WO2021005057
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】1907646
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルギーヌ カメル
(72)【発明者】
【氏名】クロノウスキー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェ ルイ ピエール デニス
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038464(JP,A)
【文献】特開2010-137844(JP,A)
【文献】特開2018-154322(JP,A)
【文献】特開2019-047687(JP,A)
【文献】特表2010-510930(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060591(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0227950(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167799(US,A1)
【文献】中国実用新案第206125418(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64U 50/12
B64U 50/33
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用のハイブリッド推進チェイン(1)であり、複数通りの電気的接続(E1~E4)を介し電気分配モジュール(10)に接続された複数個の推進ロータ(R1~RX)を備えるハイブリッド推進チェイン(1)であり、前記電気分配モジュール(10)が、一方では発電システム(20)を介し非推進ターボマシン(T)に連結され、他方では電気バッテリ(BAT)に接続されており、各推進ロータ(R1~R4)が、ステータ部材(30)と、前記ステータ部材(30)が少なくとも一通りの電気的接続(E1~E4)によるパワー供給を受けているときにそのステータ部材(30)に対し回転駆動されるよう構成された少なくとも1本のロータシャフト(32)と、を備えるハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記非推進ターボマシン(T)に機械連結された補助機械駆動システム(30)を備え、その補助機械駆動システム(30)が、各推進ロータ(R1~R4)の少なくとも1本のロータシャフト(32)を機械的に回転駆動するための複数通りの機械的連結(M1~M4)を備え、各機械的連結(M1~M4)が、可制御結合器(4)により推進ロータ(R1~R4)のロータシャフト(32)に連結されることを特徴とするハイブリッド推進チェイン。
【請求項2】
請求項1に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記発電システム(20)が、前記非推進ターボマシン(T)に入力側が機械連結され且つ少なくとも1個の電流発生機(G1,G2,GN)に出力側が機械連結された機械分配モジュール(40)を備え、前記補助機械駆動システム(30)が前記機械分配モジュール(40)に連結されているハイブリッド推進チェイン。
【請求項3】
請求項2に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記補助機械駆動システム(30)の前記機械的連結(M1~M4)が前記機械分配モジュール(40)の出力側に連結されているハイブリッド推進チェイン。
【請求項4】
請求項1に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記非推進ターボマシン(T)に入力側が機械連結され且つ一方では前記発電システム(20)に、他方では前記補助機械駆動システム(30)に出力側が機械連結された、機械分配モジュール(40’)を備えるハイブリッド推進チェイン。
【請求項5】
請求項1~4のうち一項に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記可制御結合器(4)が、前記推進ロータ(R1~R4)が電気的接続(E1~E4)によるパワー供給を受けているとき推進ロータ(R1~R4)の前記ロータシャフト(32)の速度が自身の速度セットポイントに比し降下した場合に自動作動するよう、構成されているハイブリッド推進チェイン。
【請求項6】
請求項5に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記可制御結合器(4)が少なくとも1個のフリーホイールを備えるハイブリッド推進チェイン。
【請求項7】
請求項5に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、前記可制御結合器(4)が、少なくとも1個の第1摩擦部材(41)と、少なくとも1個の第2摩擦部材(42)と、を備えるハイブリッド推進チェイン。
【請求項8】
請求項1~7のうち一項に係るハイブリッド推進チェイン(1)であって、各推進ロータ(R1~R4)が少なくとも1個の推進ファン、好ましくは二重反転推進ファンを備えるハイブリッド推進チェイン。
【請求項9】
請求項1~8のうち一項に係るハイブリッド推進チェイン(1)を備える航空機。
【請求項10】
請求項9に係る航空機を使用する方法であって、
前記電気的接続(E1~E4)を介し複数個の推進ロータ(R1~RX)を駆動するステップと、
前記発電システム(20)が部分的又は全面的に利用不能な場合に、少なくとも一通りの機械的連結(M1~M4)を介し前記推進ロータ(R1~RX)のうち少なくとも1個を駆動するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非推進発電ターボマシンにより給電される数個の推進ロータを備える航空機の推進の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の通り、非推進発電ターボマシン、バッテリ及び複数個の電動ロータを備えるハイブリッド推進システムを航空機に装備することが提唱されている。そうしたハイブリッド推進システムであれば、騒音公害及び燃料消費を抑えつつ商品及び貨物の最適輸送を行うことができる。
【0003】
図1には、従来技術に係る航空機のハイブリッド推進チェイン100が示されている。本例のハイブリッド推進チェイン100は、分配モジュール110により給電される複数個の推進ロータR1~R4を備えており、その分配モジュール110自体が、一方では発電システム120を介し非推進ターボマシンTにより、他方では電気バッテリBATの働きによりパワー供給を受けている。各推進ロータR1~R4が、1本又は複数本の給電バスE1~E4を介しエネルギ分配モジュール110に接続されている。
【0004】
現実的には、バッテリBATのサイズを通常動作条件に係る要求に比し大きめにしないと、離陸フェーズ及び着陸等といった一時的入用時、或いは回避動作又はバイパスフェーズ等といった例外的入用時、或いはその推進チェインの構成要素の不調又は利用不能時に、付加的な電気エネルギを供給することができない。電気化学セルのパワー質量密度に関する本件技術分野の現状では、バッテリBATのサイズを大きめにすることはバッテリ質量の増加につながり、ひいては旅客や荷物を運ぶ航空機の負荷容量が制約されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2019/061924号明細書(A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/037333号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、例外的入用時や推進チェイン構成要素の不調又は利用不能時に付加的な機械エネルギを供給することができ、それでいて質量が小さく旅客や商品の輸送容量が削がれないハイブリッド推進チェインを、提供することにある。
【0007】
ちなみに、一方では機械駆動推進ロータ、他方では電気駆動推進ロータを備える航空機が知られている。
【0008】
特許文献1は、ターボマシンにより駆動されるプラネタリ型のギアボックスを介し機械駆動される数個の推進ロータからなる推進チェインを教示している。特許文献2は、電動モータにパワー供給する発電機を備えるハイブリッド推進チェインを教示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、航空機用のハイブリッド推進チェインであり、複数通りの電気的接続により電気分配モジュールに接続された複数個の推進ロータを備えるハイブリッド推進チェインであり、その電気分配モジュールが、一方では発電システムを介し非推進ターボマシンに連結され、他方では電気バッテリに接続されており、各推進ロータが、ステータ部材と、そのステータ部材が少なくとも一通りの電気的接続によりパワー供給を受けているときにそのステータ部材に対し回転駆動されるよう構成された少なくとも1本のロータシャフトと、を備えるハイブリッド推進チェインに関する。
【0010】
本発明は、そのハイブリッド推進チェインが非推進ターボマシンに機械連結された補助機械駆動システムを備えていて、その補助機械駆動システムが、各推進ロータの少なくとも1本のロータシャフトを機械的に回転駆動するための複数通りの機械的連結を備える点で、注目すべきものである。
【0011】
非推進ターボマシンとは、通常動作時にプロペラによる推進力を直に供給しないターボマシンのことである。これは、ファンを装備したターボマシンとは対照的なものである。補助システムとは必要時だけ作動するシステムのことである。定義上、補助手段なる語は、「いっときだけ又は二次的に他の何かに付加される」何かに相当する。
【0012】
本発明によれば、そのハイブリッド推進チェインに不調があり且つ前記非推進ターボマシンが利用不能でない場合に、有利なことに、その非推進ターボマシンから機械的パワーを引き出すこと、ひいては機械的連結を介し1個又は複数個の推進ロータを駆動することができる。バッテリを二重化又は冗長化した場合に生じるであろう顕著な質量増加無しで、推進チェインの信頼性が改善される。有利なことに、機械的連結と電気的接続とを併用することができ、それにより、例えば、離着陸中、回避動作実行時等に、推進ロータに付加的な推進パワーを供給することが可能となる。
【0013】
好ましくは、前記発電システムを、前記非推進ターボマシンに入力側が機械連結され且つ少なくとも1個の電流発生機に出力側が機械連結された機械分配モジュールを備えるものとする。その機械分配モジュールに前記補助機械駆動システムを連結する。即ち、その補助機械駆動システムをその発電システムと一体化させることで合計サイズ及び質量を制限する。
【0014】
更に好ましくは、前記補助機械駆動システムの前記機械的連結を前記機械分配モジュールの出力側に連結する。有利なことに機械分配モジュールが電流発生機向け出力及び機械的連結向け出力を有するものとなり、そのアーキテクチャがコンパクトになる。
【0015】
好ましくは、前記ハイブリッド推進チェインを、前記非推進ターボマシンに入力側が機械連結され且つ一方では前記発電システムに、他方では前記補助機械駆動システムに出力側が機械連結された、機械分配モジュールを備えるものとする。即ち、前記補助機械駆動システムを、前記非推進ターボマシンに間接的に機械連結する。有利なことに、機械分配モジュールの使用により、機械的及び電気的推進の使用を制御することが可能となる。
【0016】
ある態様によれば、各機械的連結が、可制御結合器により推進ロータのロータシャフトに連結される。これにより、有利なことに、必要時だけ機械駆動部を制御すればよくなり、好適にも冗長性を提供することができる。
【0017】
好ましくは、前記可制御結合器を、前記推進ロータが電気的接続によりパワー供給を受けているとき推進ロータのロータシャフトの速度が自身の速度セットポイントに比し降下した場合に自動作動するよう、構成する。即ち、この結合器により誤動作時における安全性が提供される。速度降下とは、1秒オーダの期間中の定格速度における5%~10%程度の低下、のことである。
【0018】
ある態様によれば、前記可制御結合器が少なくとも1個のフリーホイールを備える。有利なことに、そうしたフリーホイールにより、速度低下時に自動連結を実行することが可能である。
【0019】
別のある態様によれば、前記可制御結合器が、少なくとも1個の第1摩擦部材と、少なくとも1個の第2摩擦部材とを備える。
【0020】
ある態様によれば、各推進ロータが少なくとも1個の推進ファン、好ましくは二重反転推進ファンを備える。
【0021】
本発明は、先に説明したハイブリッド推進チェインを備える航空機にも関する。
【0022】
本発明は、更に、先に説明した航空機を使用する方法であって、
前記電気的接続を介し複数個の推進ロータを駆動するステップと、
前記発電システムが部分的又は全面的に利用不能な場合に、少なくとも一通りの機械的連結を介し前記推進ロータのうち少なくとも1個を駆動するステップと、
を有する方法に関する。
【0023】
専ら一例として与えられている後掲の記述を読むこと、並びに非限定的な例として与えられている別紙図面を参照することで、本発明をより良好に理解頂けよう;以下の図では、類似物には同様の参照符号を付与している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術に係る航空機のハイブリッド推進チェインの模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る航空機のハイブリッド推進チェインの模式図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る航空機のハイブリッド推進チェインの模式図である。
図4図3のハイブリッド推進チェインの発電システムの模式図である。
図5】第1例の可制御結合システムが装備された推進ロータの模式的断面図である。
図6】第2例の可制御結合システムが装備された推進ロータの模式的断面図である。
図7】二重反転推進ファンを備える推進ロータの模式的断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る航空機のハイブリッド推進チェインの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
注記すべきことに、これら図面は本発明を実施しうるよう本発明を詳細に説明するものであり、無論のこと、本発明をより良好に定義するため必要に応じそれら図面を用いることができる。
【0026】
図2には一実施形態に係る航空機用ハイブリッド推進チェイン1が示されている。本例のハイブリッド推進チェイン1は、複数通りの電気的接続E1~E4を介し電気分配モジュール10に接続された複数個の推進ロータR1~R4を備えており、その電気分配モジュール10が、一方では発電システム20を介し非推進ターボマシンTに連結され、他方では電気バッテリBATに接続されている。電気バッテリBATとは、単一の電気バッテリBATや、数個のバッテリBATからなるセットのことである。
【0027】
非推進ターボマシンTは様々な形態、具体的には固定タービンガスタービン、自由タービンガスタービン、ピストンエンジン等の形態を採りうる。有利なことに、非推進ターボマシンTは熱的なものである。
【0028】
本例では4個の推進ロータR1~R4が示されているが、いうまでもなくその個数は別の個数とすることができよう。図2に描かれている通り、付加的な推進ロータRXを設けることができよう。後に詳細に説明する図5及び図6に描かれている通り、各推進ロータR1~R4は、ステータ部材30と、そのステータ部材30が給電を受けているときにそのステータ部材30に対し軸XS周りで回転駆動されるよう構成されたロータシャフト32とを有している。各推進ロータR1~R4は、そのロータシャフト32に装着された推進ファン(図示せず)を備えている。本例では、各推進ロータR1~R4が、そのロータシャフト32に一体実装されたロータ部材31を備えている。このロータ部材31はステータ部材30に磁気結合されており、それにより例えば永久磁石式同期型、巻線ロータ部材付同期型、非同期型、リラクタンス型等の電動モータが形成されている。
【0029】
図7に示すように、本発明のある態様では各推進ロータRCが二重反転推進ファンを有するものとされる。一例としては、第2ファンが実装されている第2ロータシャフトをロータシャフト32により駆動する。更に、各ファンに覆いが付いていてもいなくてもよく、また各ファンが操縦可能であってもなくてもよい。付随的には、各推進ロータR1~R4を電気的コンバータ、例えばインバータを備えるものとすることができる。
【0030】
電気分配モジュール10自体は本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)にとり既知であり、それにより、推進ロータR1~R4の要求、バッテリBATの充電レベル、その航空機の運航条件等々に従いバッテリBAT及び発電システム20の電気的リソースを管理することが可能となる。電気分配モジュール10は、一通り又は複数通りの電気的接続E1~E4を介し各推進ロータR1~R4に接続されている。好ましくは、電気分配モジュール10を、発電システム20の出力たる電圧のレベル及び形態(AC/DC)を必要に応じ適合化する電力電子回路コンバータと、電流の供給及び配給を確実化する駆動又は非駆動部材(端子盤、リレー等々)と、商品及び人員の安全性を確保する駆動又は非駆動部材(サーキットブレーカ、フューズ等々)とを備えるものとする。
【0031】
本例では各電気的接続E1~E4が給電バスの形態であるが、いうまでもなく別の形態にすることができよう。好ましくは、各電気的接続E1~E4を、電気的保護手段、具体的にはフューズ、サーキットブレーカ、コンタクタ等を備えるものとする。
【0032】
図5及び図6によれば、各電気的接続E1~E4により推進ロータR1~R4のステータ部材30に給電することで、ロータ部材31を磁気的に回転駆動することができる。ロータ部材31がロータシャフト32及びファンと一体であるためそのファンも回転駆動され、それにより推進ロータR1~R4に推力が供給される。
【0033】
ある既知要領によれば、発電システム20は1個又は複数個の電流発生機と1個又は複数個のコンバータ、とりわけAC-DCタイプのそれを備えるものとされる。一例としては、電流発生機を、永久磁石型同期電機、巻線ロータ付同期電機、或いは非同期機の形態にすることができる。同様に、一例としては、そのコンバータを、受動ダイオード整流器、被駆動能動整流器等、或いは可逆インバータの形態にすることができる。
【0034】
本発明によれば、図2に示すように、ハイブリッド推進チェイン1が、非推進ターボマシンTに機械連結された補助機械駆動システム30を備えるものとされる。補助機械駆動システム30は、各推進ロータR1~R4のロータシャフト32を機械的に回転駆動するため、複数通りの機械的連結M1~M4を備えている。好ましくは、各機械的連結M1~M4を、非推進ターボマシンTにより回転駆動しうるよう適合化されたドライブシャフトなる形態にする。
【0035】
言い換えれば、本例では、各推進ロータR1~R4が、一方では、その推進ロータR1~R4の電気的推進を行えるよう電気的接続E1~E4に接続され、他方では、その推進ロータR1~R4の機械的推進を行えるよう機械的連結M1~M4に連結される。即ち、そのハイブリッド推進チェイン1の信頼性が改善されるよう各推進ロータR1~R4が冗長化されている。
【0036】
本発明の第1実施形態によれば、図2に示すように、補助機械駆動システム30が発電システム20とは別物とされる。
【0037】
好ましくは、図2に描かれている通り、発電システム20向けの第1機械トルクと機械的連結M1~M4を駆動するための第2機械トルクとを引き出しうるよう構成された補助機械駆動システム30に、発電システム20を連結する。こうした補助機械駆動システム30のことを「補助トランスミッション装置」とも呼ぶ。
【0038】
本発明の第2実施形態によれば、図3に示すように補助機械駆動システム30が発電システム20と統合される。こうした統合により、全体サイズ及び質量を抑えることが可能となる。言い換えれば、パワー引き出し装置が発電システム20と統合される。
【0039】
一例として、図4に示す発電システム20は、電気分配モジュール10に給電するため、複数個の電流発生機G1,G2,GN及び複数個のコンバータCONV1,CONV2,CONVNを備えている。発電システム20は更に機械分配モジュール40を備えており、これには、非推進ターボマシンTから入力機械トルクを受け取るべく適合化された入力Eと、要素機械トルクを電流発生機G1,G2,GNに供給しそれらにて電気エネルギを発生させる複数の第1出力S1とが、備わっている。
【0040】
本例では、機械分配モジュール40が更に、要素機械トルクを機械的連結M1~M4に供給することでそれらを回転駆動する複数の第2出力S2を備えている。言い換えれば、機械分配モジュール40により、一方では、機械エネルギを供給することで電気的接続E1~E4に間接的にパワー供給することができ、他方では、機械エネルギを供給することで機械的連結M1~M4に直接的にパワー供給することができる。即ち、補助機械駆動システム30が機械分配モジュール40に直結されている。
【0041】
本例の機械分配モジュール40は複数個のギアを備えており、好ましくはギアトレインの形態とされる。
【0042】
ある態様によれば、動作条件を踏まえ第2出力S2を作動/停止させるべく機械分配モジュール40を制御することができる。後に説明する通り、第2出力S2は、発電不調時や付加的推進パワー必要時に作動させるのが望ましい。付加的パワー必要時とは、定格電力の100%超、好ましくは定格電力の130%未満のパワーが必要なときのことである。
【0043】
制御可能とするため、機械分配モジュール40は可制御分離システム、例えばクラッチ型、流体伝動カプラ型、ドッグクラッチ型等のそれを備えている。
【0044】
別の実施形態によれば、図8に示すように、ハイブリッド推進チェイン1が、入力側が非推進ターボマシンTに機械連結された機械分配モジュール40’を備えるものとされ、その機械分配モジュール40’の出力側が一方では発電システム20に、他方では補助機械駆動システム30に機械連結される。即ち、補助機械駆動システム30が非推進ターボマシンTに、間接的に機械連結される。好ましくは、発電システム20と補助機械駆動システム30とを独立なままにしておく。そのアーキテクチャを並列にする。
【0045】
好ましくは、推進ロータR1~R4のロータシャフト32の駆動を機械的連結M1~M4により作動又は停止させうるよう、各機械的連結M1~M4を可制御結合器により推進ロータR1~R4のロータシャフト32に連結する。
【0046】
例えば図5及び図6に示されている推進ロータR1は、電気的接続E1に接続されたステータ部材30と、そのステータ部材30が給電を受けているときにそのステータ部材30に対し回転駆動されるよう構成されたロータシャフト32とを、備えている。ロータシャフト32は、機械的連結M1とロータシャフト32とを機械的に結合又は分離させる可制御結合器4を介し、機械的連結M1に連結されている。
【0047】
図5に示すように、第1実施形態に係る可制御結合器4はフリーホイール40を備えている。これにより、有利なことに、機械的連結M1及びロータシャフト32の相対速度を踏まえた結合が可能となる。一例としては、フリーホイール40により結合を実行せずに、電気的接続E1によりロータシャフト32を機械的連結M1のそれより高い速度で駆動する。電気的接続E1を止める際には、機械的連結M1の回転速度をロータシャフト32のそれより高くする。その上で、フリーホイール40により、機械的連結M1とロータシャフト32との機械的結合を実行する。
【0048】
有利なことに、可制御結合器4は、ロータシャフト32の速度が自身の速度セットポイントに比し降下した場合に作動する。好ましくは、ハイブリッド推進チェイン1を、推進ロータR1~R4の回転速度セットポイントにて各機械的連結M1~M4を駆動するよう構成する。即ち、機械的駆動時に最適となるようにする。好ましくは、ハイブリッド推進チェイン1を、機械的連結M1~M4の回転速度より高い回転速度、即ち推進ロータR1~R4の回転速度セットポイントより高い回転速度にて各推進ロータR1~R4を電気的に駆動するよう構成する。好ましくは、その回転速度を、回転速度セットポイントよりも数%、例えば3%程度高くする。
【0049】
有利なことに、この速度差は小さいので、電源不調時に機械的連結M1~M4への自動的な引継ぎが円滑な無揺動的(ジャークフリー)要領で行われることとなる。
【0050】
図6に示すように、第2実施形態に係る可制御結合器4は、機械的連結M1と一体な第1摩擦部材41と、ロータシャフト32と一体な第2摩擦部材42とを備えており、機械的連結M1とロータシャフト32とが機械的に結合されているときに第1摩擦部材41と連動するようその第2摩擦部材42が構成されている。機械的連結M1とロータシャフト32とが機械的に結合されていないときには、第1摩擦部材41が第2摩擦部材42から離されたままとなる。こうしたクラッチシステムは輸送機関分野で既知である。
【0051】
いうまでもなく、例えば角度可変トランスミッションやユニバーサルブロックを用いることで、機械的連結M1をロータシャフト32と直結状態にすることもできよう。
【0052】
ハイブリッドドライブトレイン1の一実現例について以下説明する。
【0053】
ハイブリッド推進チェイン1の通常動作中には、非推進ターボマシンTの許で電気エネルギを発生させ、それにより電気的接続E1~E4を介し推進ロータR1~R4にパワー供給する。この動作中には機械的連結M1~M4を作動させない。
【0054】
ハイブリッド推進チェイン1に不調があり且つ非推進ターボマシンTが利用不能でない場合(とりわけ発電不調時)には、有利なことに機械的パワーをその非推進ターボマシンTから引き出すことができ、ひいては作動させておいた機械的連結M1~M4を介し1個又は複数個の推進ロータR1~R4を駆動することができる。
【0055】
有利なことに、機械的連結M1~M4と電気的接続E1~E4とを併用することができ、ひいては、例えば離着陸中、回避動作実行時等々に、付加的な推進パワーを推進ロータR1~R4に供給することができる。
【0056】
本発明によれば、そうしたハイブリッド推進チェイン1の質量を抑え、新規電気バッテリBATの付加に比べて可用性及び信頼性を改善することができる。本質的に機械部材に基づくものであるという事実故に、そうした補助機械駆動システム30の信頼性は確かである。有利なことに、補助機械駆動システム30を利用することで電気バッテリBATの質量を減らせるので、様々な推進需要を充足することが可能となる。
図1
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