(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】光音響気体センサデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20240902BHJP
G01N 29/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/02
(21)【出願番号】P 2022508539
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071510
(87)【国際公開番号】W WO2021028231
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-07
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509225328
【氏名又は名称】ゼンジリオン・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ブルジ、ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ユーリンガー、トマス
(72)【発明者】
【氏名】フンツィカー、ベルナー
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-127066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0055232(US,A1)
【文献】特開2011-252906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350810(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスであって、前記光音響気体センサデバイスは、
-測定体積部(3)を取り囲む測定セル(2)と、
-気体が前記測定体積部(3)に入るための前記測定セル(2)
中の気体透過エリア(4)と、
電磁放射線(8)を前記測定体積部(3)中に放射するように構成された電磁放射線源(7)と、
-前記測定体積部(3)中の前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した音波(9)を測定するように構成された圧力トランスデューサ(6)と、を備え、
前記気体透過エリア(4)は、多孔質気体透過膜(5)によって表され、
前記多孔質気体透過膜(5)の平均細孔径は、10nm~1μ
mであり、
前記多孔質気体透過膜(5)は、セラミック又は重合体のうちの1つを備えるか又はそれらのうちの1つから成る、光音響気体センサデバイス。
【請求項2】
気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスであって、前記光音響気体センサデバイスは、
-測定体積部(3)を取り囲む測定セル(2)と、
-気体が前記測定体積部(3)に入るための前記測定セル(2)中の気体透過エリア(4)と、
電磁放射線(8)を前記測定体積部(3)中に放射するように構成された電磁放射線源(7)と、
-前記測定体積部(3)中の前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した音波(9)を測定するように構成された圧力トランスデューサ(6)と、を備え、
前記気体透過エリア(4)は、多孔質気体透過膜(5)によって表され、
前記多孔質気体透過膜(5)の平均細孔径は、10nm~1μmであり、
前記多孔質気体透過膜(5)の多孔率は
、20%~50%である
、光音響気体センサデバイス。
【請求項3】
前記測定体積部(3)の寸法は、0.03cm
3~8c
m
3
であり、
前記気体透過エリア(4)の直径は、0.2mm~4m
mである、請求項1又は2に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項4】
前記多孔質気体透過膜(5)の厚さは、50μm~400μ
mである、請求項1~3のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項5】
-基板(1)と、
-測定セル本体(21)と、ここで、前記基板(1)及び前記測定セル本体(21)は、前記測定体積部(3)を画定するものであり、
を備え、前記測定セル本体(21)、前記基板(1)、及びもし前記測定体積部(3)を画定する他の構成要素があれば、前記他の構成要素は、気密材料から作られ、気密の形で組み立てられ、
前記測定セル本体(21)は、開口部(41)を備え、
前記開口部(41)は、前記多孔質気体透過膜(5)によって覆われ、
前記多孔質気体透過膜(5)は、特に接着、注入、鋳造、半田付け、及び溶接のうちに1つによって前記測定セル本体(21)に取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項6】
-基板(1)と、
-測定セル本体(21)と、ここで、前記基板(1)及び前記測定セル本体(21)は、前記測定体積部(3)を画定するものであり、
を備え、前記測定セル本体(21)、前記基板(1)、及びもし前記測定体積部(3)を画定する他の構成要素があれば、前記他の構成要素は、気密材料から作られ、気密の形で組み立てられ、
前記基板(1)は、開口部(41)を備え、
前記開口部(41)は、前記多孔質気体透過膜(5)によって覆われ、
前記多孔質気体透過膜(5)は、前記基板(1)に取り付けられ、
特に、前記多孔質気体透過膜(5)は、前記基板(1)に半田付けされた金属膜を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項7】
-基板(1)と、
-測定セル本体(21)と、ここで、前記基板(1)及び前記測定セル本体(21)は、前記測定体積部(3)を画定するものであり、
を備え、前記測定セル本体(21)、前記基板(1)、及びもし前記測定体積部(3)を画定する他の構成要素があれば前記他の構成要素は、前記測定セル本体(21)と前記基板(1)との間の開口部(41)を除き、気密材料から作られ、気密の形で組み立てられ、
前記開口部(41)は、前記多孔質気体透過膜(5)によって覆われ、
前記多孔質気体透過膜(5)は、特に接着、注入、鋳造、半田付け、又は溶接のうちに1つによって前記測定セル本体(21)及び前記基板(1)のうちの1つ以上に取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項8】
前記多孔質気体透過膜(5)に取り付けられた支持層(51)を備え、
前記支持層(51)は、接着剤層であり、前記多孔質気体透過膜(5)は、前記接着剤層によって前記測定セル(2)に取り付けられ、
前記支持層(51)は、気密であり、前記多孔質気体透過膜(5)を通過するときに気体が前記測定体積部(3)に入ることを可能にするように構成された1つ以上の孔(511)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項9】
前記多孔質気体透過膜(5)の第1の側に取り付けられた格子構造(54)
を備え、前記多孔質気体透過膜(5)は、前記第1の側とは反対側の前記多孔質気体透過膜(5)の第2の側上に配置された接着剤(53)によって前記測定セル(2)に取り付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項10】
前記開口部(41)は、前記測定セル本体(21)及び前記基板(1)のうちの1つ以上中の複数のボア(411)によって表され、
前記多孔質気体透過膜(5)は、前記複数のボア(411)を覆うために前記測定セル本体(21)又は前記基板(1)にそれぞれ取り付けられている、
請求項5又は6に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項11】
反射器(28)がない場合は前記多孔質気体透過膜(5)によって吸収されるか又はそれを通って伝達される電磁放射線を、前記測定体積部(3)中に反射し返すための反射器(28)であって、前記測定セル(2)の内側に配置され、前記開口部(41)から離間された反射器(28)を備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【請求項12】
気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスであって、前記光音響気体センサデバイスは、
-測定体積部(3)を取り囲む測定セル(2)と、
-気体が前記測定体積部(3)に入るための前記測定セル(2)中の気体透過エリア(4)と、
電磁放射線(8)を前記測定体積部(3)中に放射するように構成された電磁放射線源(7)と、
-前記測定体積部(3)中の前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した音波(9)を測定するように構成された圧力トランスデューサ(6)と、を備え、
前記気体透過エリア(4)は、前記測定セル(2)の
孔(211)以外では気密
である材料を
気体が通
る前記孔(211)を含む前記測定セル(2)のエリアによって表され、
前記孔(211)の直径は、100nm~10μmであ
り、
前記孔(211)の数は、50個~200’000個である、光音響気体センサデバイス。
【請求項13】
気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスであって、前記光音響気体センサデバイスは、
-測定体積部(3)を取り囲む測定セル(2)と、
-気体が前記測定体積部(3)に入るための前記測定セル(2)中の気体透過エリア(4)と、
電磁放射線(8)を前記測定体積部(3)中に放射するように構成された電磁放射線源(7)と、
-前記測定体積部(3)中の前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した音波(9)を測定するように構成された圧力トランスデューサ(6)と、を備え、
前記気体透過エリア(4)は、前記測定セル(2)の孔(211)以外では気密である材料を気体が通る前記孔(211)を含む前記測定セル(2)のエリアによって表され、
前記孔(211)の直径は、100nm~10μmであり、
前記気体透過エリア(4)を画定する前記測定セル(2)の前記材料の厚さは、1μm~1mmであり、
前記孔径に対する孔長のアスペクト比は、20未満である、光音響気体センサデバイス。
【請求項14】
前記測定体積部(3)を第1の体積部(31)と第2の体積部(32)とに分割する反射シールド(17)を備え、前記第2の体積部(32)に面する前記反射シールド(17)の表面(171)の少なくとも一部分は、電磁放射線(8)を反射する材料から作られ、
前記電磁放射線源(7)は、電磁放射線(8)を前記反射シールド(17)中のアパーチャ(18)を通って前記第2の体積部(32)中に放射するために前記第1の体積部(31)中に配置され、
前記圧力トランスデューサ(6)は、前記第1の体積部(31)中に配置され、前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した前記音波(9)を測定するために前記第2の体積部(32)に連通可能に結合され、
前記電磁放射線源(7)及び前記圧力トランスデューサ(6)は、前記測定体積部(3)に面する基板(1)の前側(11)上に配置され、
前記第1の体積部(31)に対する前記第2の体積部(32)の比率は、少なくとも1.
5であり、
前記反射シールド(17)の厚さは、30μm~1m
mであり、
前記気体透過エリア(4)は、前記第1の体積部(31)を画定する前記測定セル(2)の一部分中に設けられている、請求項
1~1
3のいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の成分、特にCO2の存在又は濃度を示す値を決定するように構成された光音響気体センサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光音響気体センサは、例えば赤外線放射線が気体中の関心のある成分の分子、例えばCO2によって吸収され、それによって分子を励起状態に移行させるという物理的効果に依拠する。その後、例えば分子の衝突による励起状態の非放射減衰(nonradiative decay)に起因して熱が発生し、それが圧力の上昇をもたらす。吸収される赤外線放射線を変調周波数で変調することにより、圧力は、変調周波数で変動する。そのような圧力変動は、圧力トランスデューサによって測定され得る。成分の濃度は、圧力変動の振幅に比例する。
【0003】
測定セルは、標的気体が測定セルに入るための気体透過エリアを必要とする。そのような気体透過エリアは、以下の異なる要求を満たすことが望まれる:気体透過エリアは、周囲である測定セルの外部と、測定体積部とも呼ばれる内部との間の標的気体の十分な交換を可能にすることが望ましい。他方では、光音響効果から生じ、且つ一時的な過剰圧力を表す測定セルの内側の圧力変動は、気体透過エリアを通って逃げないことが望ましく、そうでない場合は圧力トランスデューサによって検出されるより有意性の低い信号につながる。同時に、周囲雑音などの測定セルの外側の圧力変動が測定セル中に移行せず、それによって標的気体中の成分によって誘発される光音響効果を妨害及び歪曲しないことが望ましい。
【0004】
故に、本発明の目的は、これらの異なる(divergent)条件を最も良く満たす気体透過エリアを光音響気体センサデバイスに設けることである。
【発明の概要】
【0005】
この目的は、独立請求項1及び12に記載された本発明の第1の態様及び第2の態様による光音響気体センサデバイスによって達成される。
【0006】
気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスは、測定体積部を取り囲む測定セルを備える。デバイスは、電磁放射線を測定体積部中に放射するための電磁放射線源と、測定体積部中の成分による電磁放射線の吸収に応答して、成分によって発生した音波を測定するように構成された圧力トランスデューサとを更に備える。好ましくは、電磁放射線源及び圧力トランスデューサは、測定セル中に配置される。故に、測定セルの内側の光音響反応は、測定体積部中に存在する気体の照射によって誘発され、圧力トランスデューサによって測定される。
【0007】
光音響効果は、関心のある気体成分の分子、例えばCO2が電磁放射線、一例では赤外線放射線を吸収するメカニズムに基づく。吸収は、例えば気体成分の分子間の衝突による、及び/又は気体成分の分子と異なる分子との衝突による非放射減衰に起因する熱の発生をもたらし、それは次に測定体積部中の圧力の上昇をもたらす。変調周波数で電磁放射線の強度を変調することによって、圧力の変調が達成される。圧力変動、即ち音波によって表されるそのような圧力変調は、圧力トランスデューサによって測定され得る。成分の存在又は濃度を示す値、即ち、成分の濃度は、次いで、圧力変動の振幅に依存して決定され得る。振幅は、成分によって吸収される電磁放射線の量に比例する、故に、全ての他のファクタ、例えば測定体積部中の平均光路長が等しいままである場合、気体中の成分の濃度に比例すると想定され得る。
【0008】
調査される気体が測定セルに入ることを可能にするために、気体透過エリアが測定セル中に設けられ、その一方で、測定セルの他の部分は、好ましくは気密で具現化される。
【0009】
請求項1に記載の第1の態様によると、気体透過エリアは、多孔質気体透過膜によって表される。それ故に、気体透過膜は、膜材料の特性から生じるか又は製造プロセスから生じる細孔を備える。好ましくは、多孔質気体透過膜は、測定セルに取り付けられ、測定セル中の開口部を覆う。
【0010】
多孔質気体透過膜の平均細孔径は、10nm~1μm、好ましくは20nm~200nmである。好ましくは、多孔質気体透過膜の多孔率は、20%~90%、特に20%~50%である。要約すると、特に平均細孔径、多孔率、及び細孔構造から生じる透気性は、好ましくは低く、特に10mbarの差圧に対して0.03l/(hr cm2)~2l/(hr cm2)、好ましくは0.03l/(hr cm2)~0.4l/(hr cm2)である。小さい細孔径及び低い多孔率は、特に特定の細孔構造と関連して、そのような低い透気性及び所望の減衰特性をもたらす。また、低い多孔率は、機械的に安定した膜をもたらし、それは、膜の湾曲を回避する。
【0011】
異なる目的を満たすために、以下のパラメータの寸法決定(dimensioning)が多孔質気体透過膜の減衰特性を改善することが見出された:かなり大きい測定体積部、厚い膜、少数の細孔及び小さい細孔径。パラメータの正反対の寸法決定は、小さい拡散時間を支持する:かなり小さい測定体積部、薄い膜、多数の細孔及び大きい細孔径。しかしながら、多孔質気体透過膜の減衰特性は、膜の細孔径に対して強く非線形にスケーリングするのに対して、拡散時間は、膜の細孔径に対して線形にスケーリングすることも見出された。特に、細孔径が小さくなると、減衰は非線形に強く増大する。これは、より少ないがより大きいサイズの細孔を有する膜材料よりも、複数の小さいサイズの細孔を備える膜材料が好ましいという発見につながる。この手法は、外部からの雑音の十分な減衰を約束する。同時に、多孔質気体透過膜は、多孔質気体透過膜を通って移動することからの測定セルの内側の光音響圧変化を減衰させ、その一方で、気体の測定体積部への拡散の時定数-応答時間又はセンサとも呼ばれる-はかなり短い。故に、上記の平均細孔径を適用することによって、気体透過エリアの異なる要件における達成が最大化される。
【0012】
減衰特性は、光音響効果から生じる圧力変動がある特定の周波数範囲又は所与の周波数で生じるので、高周波数の圧力変動に主に影響を及ぼすことが望ましい。少なくとも、減衰特性は、この周波数範囲に適用されることが望ましい。減衰される周波数範囲は、測定体積部中の気体媒体の交換の原因となる圧力変動の周波数を少なくとも超える。前者はむしろHz及びkHzの範囲にあり、後者はむしろサブHzの範囲にある。この文脈では、示唆された平均細孔径を有する多孔質気体透過膜は、圧力変動用の低域通過フィルタとして機能する。測定セル中の気体の交換を誘発するゆっくりとした圧力変動は、特別に設計された平均細孔径を考慮して多孔質気体透過膜を通過することができ、その一方で、より高い周波数での圧力変動は、多孔質気体透過膜によって減衰又は阻止される。故に、光音響効果によって誘発されたより高い周波数の音は、減衰されるか、又は測定体積部から外側に多孔質気体透過膜を通って逃げることを阻止される。他方では、多孔質気体透過膜の低域通過フィルタ特性はまた、そのようなより高い周波数の圧力変動が外部から測定体積部へと通過するのを減衰又は阻止する。故に、そうでない場合に測定体積部の内側の測定に影響を与えるであろう周波数範囲の雑音も、多孔質気体透過膜によって減衰される。故に、圧力トランスデューサ信号は、関連する周波数スペクトル中にある場合であっても、そのような外部雑音によって大きく影響されないままである。一実施形態では、より高い周波数の圧力変動の強い減衰は、圧力トランスデューサによって供給される信号が好ましくは関連する周波数の周囲の狭帯域通過フィルタによっていずれにせよフィルタリングされるので、関連する周波数範囲に限定されるときに十分であり得る。
【0013】
要約すると、多孔質気体透過膜は、有利には、測定体積部と測定セルの周囲との間の分離要素として機能する。電磁放射線による標的気体成分の刺激の結果としての測定セルの内側の光音響放射の関連周波数範囲中の音波は、多孔質気体透過膜によって減衰又は阻止され、そのため、測定体積部から出ることを防止され、その一方で、周囲からの雑音は、多孔質気体透過膜によって減衰されるか、又は測定体積部に入ることを防止される。
【0014】
多孔質気体透過膜によって、弁などの測定セル中に配置される制御可能な通気口を回避することができ、それは、弁がかなりの空間及び能動的制御を必要とすることを考えると望ましい。
【0015】
好ましくは、多孔質気体透過膜は、焼結金属、セラミック、重合体のうちの1つを備えるか又はそれらのうちの1つから作られる。好ましくは、PTFEを備える又はそれから成る材料が膜に使用される。そのような材料は、所望中の範囲の細孔、特に所望の範囲中の多孔率を備える。そのような材料は、材料の薄いシートを膨張させることによって又は例えば元から粒状の材料の焼結若しくは成形プロセスによってのうちのいずれかで、又は多孔質材料を取得する任意の他の手段によって取得される。特にPTFEの場合、膜は、膜を測定セルにリフロー半田付けすること及び/又はデバイス全体をリフロー半田付けすることを可能にする高い耐熱性を有する。
【0016】
測定体積部の寸法は、好ましくは0.03cm3~8cm3、好ましくは0.08cm3~1cm3、及び好ましくは0.2cm3である。これらの寸法は、携帯用途にも適用可能な小型センサを提供するため、及び/又は測定デバイス中の空間を節約するために好ましい。
【0017】
円形気体透過エリアを有する実施形態では、気体透過エリアの直径は、好ましくは0.2mm~4mm、好ましくは0.5mm~2mmである。非円形気体透過エリアを有する異なる実施形態では、気体透過エリアのサイズは、好ましくは同じ範囲中である。この寸法は、測定結果に影響を与え得る膜の座屈又は湾曲を防止することと相まって、測定体積部全体に起因する。加えて、多孔質材料の十分なエリアが曝露されるという利点を有する。
【0018】
膜の厚さは、好ましくは50μm~400μm、好ましくは100μm~300μmである。ここでも、厚さは、拡散時間及び減衰の両方に影響を及ぼし、好ましい平均細孔径と組み合わせて選択される。
【0019】
好ましくは、拡散の目標時定数は100秒未満であり、好ましくは70秒未満である。減衰、特に音波の減衰を表す好ましい時定数は、好ましくは10-2秒超である。
【0020】
好ましくは、測定セルは、少なくとも、基板と、好ましくは平面基板に好ましくは取り付けられる、例えばキャップの形状の測定セル本体とを備える。少なくともこれらの構成要素は、測定体積部をその内部として画定する測定セルに寄与する。
【0021】
好ましくは、基板は、例えばFR4から作られたプリント回路基板(PCB)である。異なる実施形態では、基板は、より機械的な安定性を提供するセラミック材料から作られる。更なる実施形態では、基板は、システムインパッケージ(SiP)の一部であるか、又はSiP基板である。電磁放射線源及び圧力トランスデューサは、好ましくは、測定体積部に面する基板の前側上に配置され、故に測定セル中に配置される。
【0022】
測定セル本体に関しては、測定体積部に面するその内面の少なくとも大部分、即ち少なくとも50%が反射材料から作られることが好ましい。即ち、内面の一部分又は全体は、好ましくは、測定セル本体のコアに適用された反射コーティングによって、又は測定セル本体が反射材料から作られることによってのうちのいずれかで反射材料から作られる。後者の実施形態では、測定セル本体は、例えば深絞りによって板金から作られ得る。板金は、低い厚さであっても機械的に安定しており、且ついかなる更なるコーティングがなくても電磁放射線に対して高い反射率を示すという利点を有する。先の実施形態では、測定セル本体のコアは、非反射又は低反射材料、例えばプラスチックから、例えば射出成型によって作られ、反射コーティングが内面上に適用される。一般に、反射材料は、好ましくは、金属であるか、又は金属充填重合体であるか、又は金属膜ガラス若しくは鏡面ガラスであるか、又は特に放射された放射線の波長に対して高い反射率を有する別の材料である。反射材料は、例えば、金、アルミニウム、ニッケル、及び銅のうちの1つ以上であり得る。これらの材料は、特に、反射コーティングがコアに適用される場合に使用され得る。
【0023】
測定セル中又は測定セルにおける多孔質気体透過膜の位置に関して、3つの好ましい選択肢を以下に列挙する:
【0024】
第1の変形形態では、多孔質気体透過膜は、測定セル本体に対して配置される。測定セル本体は、気体透過エリアを画定する開口部を備える。開口部は、多孔質気体透過膜によって覆われる。多孔質気体透過膜は、好ましくは、特に接着、注入、鋳造、半田付け、及び溶接のうちに1つによって測定セル本体に取り付けられる。それ故に、多孔質気体透過膜によって覆われた開口部を除いて、測定セルに寄与する全ての他の構成要素、即ち基板及び測定セル本体の残りは、好ましくは気密であり、標的気体が気体透過エリアを通って測定体積部にのみ進入し得るように気密に組み立てられる。好ましくは、多孔質気体透過膜は、好ましくはその縁で測定セル本体に取り付けられることを考慮して、開口部のサイズを超えることに留意されたい。多孔質気体透過膜の幾何学的形状は、開口部が据え付けられたときに多孔質気体透過膜によって完全に覆われている限り、開口部の幾何学的形状とは異なり得る。多孔質気体透過膜は、内側から測定セル本体に取り付けられ得、即ち多孔質気体透過膜は、測定セル本体の内面に取り付けられる。異なる実施形態では、多孔質気体透過膜は、外側から測定セル本体に取り付けられ、即ち多孔質気体透過膜は、測定セル本体の外面に取り付けられる。
【0025】
全てのこれらの特徴及び説明はまた、第2の変形形態によると、開口部が基板中に設けられるときに適用可能である。電磁放射線源及び圧力トランスデューサなどの電子構成要素が好ましくは基板にリフロー半田付けされることを考慮すると、基板に取り付けられるときの多孔質気体透過膜もまた電子構成要素と共通の組み立てステップでリフロー半田付けされることが好ましい。この目的のために、多孔質気体透過膜は、例えばその縁に金属膜(metallization)を備え、それによって多孔質気体透過膜が基板に半田付けされることが好ましい。一実施形態では、開口部は、開口部と電子構成要素との間に十分な通気が与えられる場合、基板上に位置する電子構成要素の下にさえ配置され得、その通気は、好ましくは、それらの間の距離だけもたらされる。
【0026】
第3の変形形態では、開口部は、基板と測定セル本体との間に設けられる。ここでも、開口部は、多孔質気体透過膜によって覆われ、ここで、多孔質気体透過膜は、好ましくは、特に接着、注入、鋳造、半田付け、及び溶接のうちの1つによって測定セル本体及び基板の両方に取り付けられる。
【0027】
以下の好ましい実施形態は、多孔質気体透過膜が膨張又は湾曲することを防止することを目的とする。多孔質気体透過膜の膨張は、多孔質気体透過膜の内側又は外側の圧力変化によって誘発され得る。圧力変動が多孔質気体透過膜の外側で生じる場合、その湾曲は、膜を通る気体の拡散と必ずしも一致しない。これは、圧力トランスデューサによって検出される光音響信号の減少につながり得る。この欠点は、膜を堅い平面位置に保持する支持手段によって多孔質気体透過膜が支持されている場合に回避又は低減することができる。
【0028】
その第1の実施形態では、支持層が多孔質気体透過膜に取り付けられ、機械的支持体として機能する。一変形形態では、支持層は接着剤層であり、その接着剤層によって、多孔質気体透過膜は測定セルに取り付けられる。故に、接着剤支持層の機能は2倍である。それは、多孔質気体透過膜用の取り付け手段として、及び硬化又は焼き鈍しされた後のその機械的支持体としての役割を果たす。支持層が膜と測定セルとの間に配置され、膜の表面全体にわたって延在する場合、支持層は、多孔質気体透過膜を通過するときに気体が測定体積部に入ることを可能にするように配置された1つ以上の孔を備えることが好ましい。製造に関しては、第1に、支持層が多孔質気体透過膜に取り付けられることが好ましい。第2に、支持層は、例えば、多孔質気体透過膜中ではなく支持層中に1つ以上の孔を生成するために、多孔質気体透過膜上に存在しながら構造化される。第3に、膜-支持層の組み合わせは、開口部が覆われるように接着剤支持層によって測定セル本体に取り付けられる。最後に、接着剤支持層は、硬化又は焼き鈍しされ得る。結果として、この実施形態では、支持層は、多孔質気体透過膜と測定セル/開口部との間に配置される。
【0029】
異なる実施形態では、支持構造が膜上に配置され、据え付けられたときにセンサの周囲に面する。そのような支持構造は、一実施形態では、格子構造によって、例えば金属から作られ得る。それ故に、格子構造は、最初に多孔質気体透過膜の第1の側に取り付けられる。次いで、格子構造-膜の組み合わせは、第1の側とは反対側の多孔質気体透過膜の側に取り付けられた接着剤によって測定セルに取り付けられる。
【0030】
第3の実施形態では、測定セル中の開口部を、想定される単一の開口部よりも小さい直径の複数のボアに分割することによって、多孔質気体透過膜の座屈が防止される。多孔質気体透過膜は、複数のボアを有するエリア中で測定セルに取り付けられ、全てのボアを覆う。ここでも、多孔質気体透過膜は、例えば接着剤によって測定セルに取り付けられ得る。
【0031】
上記の実施形態の1つにおいて説明したように、測定セル本体の内面は、少なくとも部分的に、しかしより好ましくは完全に、反射材料又は反射コーティングである。多孔質気体透過膜によって覆われた開口部によって表される気体透過エリアは、多孔質気体透過膜の材料が反射性でないことを考慮すると、典型的には反射特性ではない。故に、気体透過エリアは、測定セルの全体的な反射率の減少をもたらす非反射エリアを構成し、それによって平均光路長を低減し、故に信号対雑音比(SNR)を低減する。
【0032】
この理由により、反射器は、気体透過エリアを少なくとも部分的に遮蔽するために提供され得、それは、次に、測定セル中の全体的な平均反射率を増大させる。そのような反射器は、好ましくは、膜を通って入る気体が測定体積部に到達することを考慮すると、測定セルの内側に配置され、開口部及び膜から離間される。反射器は、そうでない場合は多孔質気体透過膜によって吸収されるか又はそれを通って伝達される電磁放射線を測定体積部中に反射し返す。
【0033】
請求項12に記載の第2の態様によると、光音響気体センサデバイスの気体透過エリアは、開口部を覆う膜の代わりに、測定セルの壁を貫通する孔を包含する測定セルのエリアによって表される。孔の直径は、100nm~10μmである。故に、測定セル自体、即ちその壁は、上記の特定された直径を有する孔によって穿孔される。第2の態様の別の実施形態では、孔は小さいプレートに位置し、即ち、孔は小さいプレートを貫通する。小さいプレートは、測定セル中の開口部を覆う。開口部は、ここでも、第1の態様の文脈で説明したように、適切な場合には、測定セル本体、基板、又は測定セル本体と基板との間のうちの1つに位置し得る。また、第1の態様における開口部を覆う膜の更なる特徴、例えば開口部のサイズ又は膜の据え付けは、開口部を覆う小さいプレートに適用され得る。
【0034】
直径は、本発明の第1の態様において言及された膜の平均細孔径とは異なることに留意されたい。しかしながら、本発明の第2の態様の考察及び利点は、第1の態様と同一である。それ故に、第1の態様の文脈で行われた全ての記述は、膜が特定されない限り、第2の態様の文脈でも開示しているものと見なされるべきである。
【0035】
第2の態様では、上記で述べたように、孔の数がかなり多く、その一方で孔の直径がかなり小さいことが好ましい。孔の数は、50個~200’000個、好ましくは100個~10’000個の範囲にある。
【0036】
孔は、測定セル本体中及び/又は基板中に設けられ得ることに留意されたい。孔は、第1の態様の所与の直径の気体透過エリアに匹敵するエリア中に密に配置され得る。又は、孔は、測定セルにわたって任意に分布され得る。
【0037】
好ましくは、全ての孔は均一な長さと均一な直径であると想定される。そうでない場合は、平均値が適用され、上記範囲条件を満たすことを意味する。一実施形態では、気体透過エリアを画定する測定セルの厚さ、即ちその壁は、1μm~1mmであり、故に平均孔長を表す。
【0038】
高い減衰については、小さい直径を有するかなり長い孔が好ましい。孔についての減衰特性を特徴付ける時定数は、τ=k*V*l_c/r_c2によって決定され、kは定数であり、Vは測定体積であり、l_cは孔の長さであり、r_cは孔の半径である。孔を通る拡散については、時定数はτ=k*V*l_c/r_c4である。多孔質気体透過膜を通る気体の迅速な拡散については、大きい孔直径を有する短い孔が好ましい。ここでも、孔径のための選択された範囲は、拡散時間が減少するよりも速く減衰ファクタがより小さい直径で増大するという洞察に基づく。特に、減衰は、直径がより小さくなるにつれて非線形に上昇し、拡散は、線形に減少する。しかしながら、孔の長さ及びまたそれらの直径の決定は、拡散及び減衰の考慮に依存するだけでなく、製造上の制限にも依存する。好ましくは、製造性の理由により、孔長に対する孔径のアスペクト比は20未満である。
【0039】
好ましくは、孔は、毛細管である。好ましくは、孔は、例えば半導体材料へのエッチングによって製造されるか、又はレーザ若しくはイオン衝撃によって製造される。
【0040】
以下の実施形態は、本発明の両方の態様に明示的に適用可能である。
【0041】
具体的には、圧力トランスデューサは、マイクロフォン、特に、変調周波数の周囲の周波数のある特定の範囲にのみ感応するマイクロフォンであり得る。異なる実施形態では、圧力トランスデューサは、圧力センサである。
【0042】
好ましい実施形態では、電磁放射線は、赤外線放射線である。これは、電磁放射線源が、赤外線放射線を放射するように構成された赤外線放射線源であることを意味する。赤外線放射線は、好ましくは、700nm~1mmの範囲の波長を有する放射線として定義される。別の実施形態では、電磁放射線源は、100nm~700nmの範囲の波長の放射線を放射するための源である。電磁放射線源は、一実施形態ではヒータであり得、別の実施形態ではレーザであり得、更なる実施形態ではLEDであり得る。ヒータはまた、広帯域放射線源と見なされ得、その一方で、レーザ及びLEDは、狭帯域放射線源と見なされ得る。好ましくは、電磁放射線源によって放射される電磁放射線は、関心のある気体成分の吸収ピークに一致する帯域中でのみ放射される。帯域は、吸収ピーク値を表す波長の+/-15%の最大/最小帯域限界を有する、好ましくは吸収ピークを表す波長の周囲に対称的な電磁スペクトルのサブレンジと見なされる。
【0043】
実施形態では、光音響気体センサデバイスはCO2センサとして使用される。その場合、赤外線放射線の帯域は、4.3μmの波長を中心とする。好ましくは、帯域は、0.5μm未満の半値全幅を有し、それは、狭帯域として理解され得る。狭帯域源は、例えば、メタ表面共振器を備え得、例えばLEDとして具現化され得る。別の実施形態では、電磁放射線源は、帯域外の電磁放射線をフィルタ除去するように構成された波長選択帯域通過フィルタによって覆われた広帯域エミッタを備える。広帯域エミッタは、赤外線スペクトル全体などにわたる、又は例えば0.8μm~10μmの広いスペクトルの放射線を放射するものとして定義される。そのような広帯域エミッタは、具体的には、ヒータなどの赤外線エミッタであり得る。
【0044】
実施形態では、光音響センサデバイスは、チップとしても知られる集積回路、特にASICを更に備え、ASICは、好ましくは、電磁放射線源を制御するように構成された光音響感知用のコントローラの機能を含む。集積回路は、好ましくは、基板の前側上に配置される。集積回路は、好ましくは、電磁放射線の強度を制御して変調周波数で変調するように構成される。変調周波数は、1Hz~100kHz、好ましくは10Hz~200Hz、より好ましくは20Hz~60Hz、例えば40Hzであり、特に、電磁放射線源のヒータは、適用可能であれば、変調周波数で切り替えられる。100Hz未満の低い変調周波数は、大きい光音響信号を生成するのに有利である。
【0045】
好ましくは、集積回路は、圧力トランスデューサから測定信号を受信し、測定信号に依存して成分の存在又は濃度を示す値を決定するように構成され、好ましくは、線形化及び/又は補償などの信号処理を含む。特に、この値は、測定信号の振幅、例えば音波の場合の音量に依存して決定される。好ましくは、測定信号は、変調周波数の周囲で帯域通過フィルタリングされる。これは、他の周波数を有する音波が考慮されないので、決定のロバスト性を増大させる。
【0046】
実施形態では、光音響センサデバイスは、気体中の温度、湿度、圧力、及び異なる成分のうちの1つ以上を感知するための別のトランスデューサを更に備える。それ故に、他のトランスデューサは、圧力センサ、気圧センサ、別のマイクロフォン、例えば金属酸化物タイプ又は電気化学タイプの別の気体センサのうちの1つ以上として具現化され得る。他のトランスデューサは、基板の前側上に配置され得るか、又は基板の前側中に一体化され得る。好ましくは、他のトランスデューサは、測定セルの内側に位置する。他のトランスデューサが存在する場合には、集積回路は、好ましくは、他のトランスデューサの測定値に依存して成分の存在又は濃度を示す値を補償するように構成される。故に、成分の測定に対する周囲条件の影響を低減又は排除することができる。そのような補償は、結果として生じる濃度値をより正確且つ信頼できるものにし、言い換えれば、気体センサデバイスは、様々な環境条件において適用され得る。
【0047】
好ましくは、まとめて電気構成要素と呼ばれる、光音響センサデバイスの全ての電気構成要素及び電子構成要素は、基板の前側上に据え付けられ、好ましくは測定セル中に配置される。少なくとも圧力トランスデューサ、電磁放射線源、及び場合によっては測定セル本体は、基板の前側上に表面実装される。好ましくは、全ての電気構成要素は、光音響気体センサデバイスがSMD(表面実装デバイス)であるように、基板の前側上に表面実装される。
【0048】
好ましくは、基板の後側は、光音響気体センサデバイスをキャリアに電気的に接続するための接点のみを含む。実施形態では、接点は、SMD組み立て及び/又はリフロー半田付けのために配置されたランドグリッドアレイ(LGA)パッドを含む。これは、顧客による他の構成要素とのデバイスの組み立てを容易にする。接点の他の選択肢は、DFN、QFN、又は端面スルーホール(castellated holes)を含み得る。
【0049】
好ましい実施形態では、測定体積部を第1の体積部と第2の体積部とに分割する反射シールドが提供される。圧力トランスデューサ及び電磁放射線源は、好ましくは、基板の前側上の第1の体積部中に配置される。そのような配置では、実際の光音響変換は主に第2の体積部中で行われるが、測定実体としての圧力トランスデューサが第1の体積部中に位置することを考慮すると、第1及び第2の体積部の組み合わせを測定体積部と呼ぶことは依然として正当である。反射シールドは、好ましくは、電磁放射線源によって生成された電磁放射線がそれを通って第2の体積部中に伝達されるアパーチャを備え、そのアパーチャは、好ましくは、単一のアパーチャである。故に、測定体積部を第1及び第2の体積部に分割することは、2つの体積部が互いから密封されていることを暗示しない。対照的に、第2の体積部は、第1の体積部に、具体的にはその中に配置された圧力トランスデューサに連通可能に結合される。これは、圧力トランスデューサが第1の体積部中の関心のある成分による電磁放射線の吸収によって引き起こされる音変動を検出することを可能にする。故に、連通結合は、好ましくは音響結合であり、好ましくは第2の体積部中の圧力変化が第1の体積部中に配置された圧力トランスデューサによって検出可能であることを含む。音響結合は、一実施形態では、反射シールド中の単一のアパーチャによってもたらされ得る。
【0050】
第2の体積部に面する反射シールドの表面の少なくとも一部分は、電磁放射線を反射する材料、特に電磁放射線源によって放射される特定の波長又は波長帯域の電磁放射線を反射する材料から作られる。放射される放射線の波長又は波長帯域は、好ましくは、気体中の成分が吸収しやすい波長又は波長帯域と一致するか又はそれを含む。
【0051】
第2の体積部中で良好な反射率特性を提供する上記の目的のために、第2の体積部に面する反射シールドの表面の少なくとも主要部分、即ちこの表面の少なくとも50%が反射材料から作られることが好ましい。しかしながら、第2の体積部中の反射率を更に増大させることを意図して、第2の体積部に面する反射シールドの表面全体が反射材料から作られることが更により好ましい。好ましくは、反射材料で第2の体積部を画定する表面を最大化することが意図される。反射特性を提供する材料に関しては、測定セル本体の反射特性について列挙された材料が参照される。
【0052】
それ故に、第2の体積部は、放射された放射線の反射を最も良く可能にする特性を提供するように設計される。圧力トランスデューサ及び電磁放射線源を含む電気構成要素は、光音響変換を可能にするための空間としての役割を主に果たす第2の体積部から物理的に分離される。故に、電気構成要素の任意の非反射表面は、もはや放射線の経路に影響を及ぼさず、故に、光音響反応を妨害しないか、又は測定信号の感度を低下させない。更に、測定セルの内面の高い反射率は、例えば測定セル本体の表面上の固体物質において生じる光音響効果によって生成される圧力信号のオフセットを低減する。
【0053】
好ましくは、反射シールドの厚さは、30μm~1mm、特に50μm~200μmである。そのような厚さは、小さく保つことが望まれる光音響センサデバイスの寸法にあまり影響を与えない。
【0054】
好ましくは、第1の体積部に対する第2の体積部の比率は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5である。そのような比率は、第2の体積部のみが放射されることを考慮すると、光音響効果が主に第2の体積部中で生じるという点で好ましい。他方では、大きい第1の体積部は、圧力変動を低下させ、それは、圧力トランスデューサによって供給されるより有意性の低い信号をもたらすであろう。加えて、気体が対応する開口部を通って第1の体積部に入るならば、大きい第1の体積部は、実質的に第2の体積部への気体の拡散に影響を及ぼすであろう。
【0055】
好ましくは、気体透過エリアは、第1の体積部を画定する測定セルの一部分中に設けられる。気体透過エリアのこの配置は、電磁放射線の大部分が第1の体積部の代わりに第2の体積部内で反射されることを考慮すると、非反射面としての多孔質気体透過膜の電磁放射線へのより重要でない曝露を提供する。これは、測定セル中の平均反射率を改善し、それは、次に、CO2などの気体成分による反射された光/放射線の吸収を増大させる。
【0056】
一実施形態では、反射シールドの平面延在部及び基板の平面延在部は、互いに平行に位置合わせされる。反射シールド中のアパーチャは、好ましくは、基板上に配置された電磁放射線源と垂直に位置合わせされ、特にその活性エリアと垂直に位置合わせされる。電磁放射線源及び圧力トランスデューサは、反射シールドに面する。
【0057】
実施形態では、圧力トランスデューサ及び電磁放射線源に加えて、集積回路及び/又はもしあれば他のトランスデューサもまた、第1の体積部中の基板の前側上に配置され、好ましくは反射シールドに面する。別の実施形態では、全ての電気構成要素が第1の体積部中に配置され、好ましくは反射シールドに面する。
【0058】
好ましくは、測定セル本体及び基板は、例えば接着又は半田付けによって気密の形で接続される。有利には、測定セルは、もしあれば気体が入るための気体透過エリアを除いて音響的に密である。好ましい実施形態では、測定セル本体は、スナップフィットによって基板に据え付けられる。好ましくは、測定セル本体は、1つ以上のスナップアームを備え、基板は、1つ以上のスナップアームが貫通するための1つ以上の対応する孔を備える。好ましくは、スナップフィットは、測定セル本体を基板に音響的に密に据え付けるように設計される。
【0059】
第1の態様の全ての実施形態は、適用可能な場合、本発明の第2及び第3の態様と組み合わせても開示されるべきであることが理解される。
【0060】
本発明の実施形態、態様及び利点は、その以下の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。発明を実施するための形態は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による光音響気体センサデバイス中で使用される膜構成であり、図a)では上面図、図b)では断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による光音響気体センサデバイス中で使用される膜構成であり、図a)では上面図、図b)では断面図である。
【
図6】本発明の実施形態による光音響気体センサデバイス中で使用される膜構成であり、図a)では上面図、図b)では断面図である。
【
図7】本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図8】本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図9】本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図10】本発明の実施形態による、孔を備える光音響気体センサデバイスの断面図である。
【
図11】例えば
図10の実施形態において適用されるような、孔ソリューションの様々な異なるパラメータの影響を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
同じ要素は、全ての図面にわたって同じ参照番号によって参照される。
【0063】
図1は、本発明の実施形態による光音響気体センサデバイスの概略断面図を示す。
【0064】
デバイスは、前側11と、前側11とは反対側の後側12とを有する基板1、例えばプリント回路基板(PCB)を備える。測定セル本体21が、基板1の前側11上に据え付けられ、その基板1及び測定セル本体21は、測定体積部3を取り囲む測定セル2を共に形成する。測定セル2は、測定体積部3中の気体中の関心のある成分の濃度が周囲と同様であるように、測定体積部3とデバイスの周囲との間の気体の交換を可能にし、特に、測定される気体が測定体積部3に入ることを可能にするために、多孔質気体透過膜5によって覆われた測定セル本体21中に開口部41を備える気体透過エリア4を備える。
【0065】
MEMSマイクロフォン又は圧力センサなどの圧力トランスデューサ6と、この例では赤外線源である電磁放射線源7とは、両方とも、測定セル2の内側の基板1の前側11上に位置する。電磁放射線源7は、矢印8によって示す電磁放射線、即ちこの例では赤外線放射線を放射する活性エリア71を含む。赤外線源は、帯域の赤外線放射線を放射し、赤外線放射線の強度は、上記で説明したように変調される。赤外線放射線は、関心のある気体成分の分子によって選択的に吸収される。
【0066】
本実施形態では、反射シールド17が、測定セル2中に設けられる。反射シールド17は、現在、基板1の平面延在部と平行な平面に延在する。反射シールド17は、測定セル本体21に取り付けられるか、それと一体的に形成される。反射シールド17は、測定体積部3を、基板1とシールド17との間の第1の体積部31と、シールド17と測定セル本体21との間の第2の体積部32とに分割する。反射シールド17は、赤外線放射線8が赤外線源7からアパーチャ18を通って第2の体積部32中に放射することができるように、赤外線源7と現在位置合わせされているアパーチャ18を備える。
【0067】
第2の体積部32に面するシールド17の表面171は、電磁放射線源7によって放射された電磁放射線を反射する材料から作られることが好ましい。これは、赤外線源7から放射された後に第2の体積部32中で反射される電磁放射線8を表す様々な矢印によって示す。測定体積部3内の赤外線放射線8の平均光路長を増大させることによって、赤外線放射線8の吸収率が増大される。これは、反射性であるように選択された測定セル本体21の少なくとも内面212の材料によって達成される。コーティングの場合、反射コーティングは、金、アルミニウム、ニッケル、銅などの金属から作られ得る。このようにして、第2の体積部32の内側の全体的な反射率が増大され、それは、成分の濃度のより正確な測定につながる。平均光路長の増大は、特に従来の光音響気体センサ中の線形光路とは対照的に、様々な図における赤外線放射線8の複数の反射によって例示する。ここで、光音響効果が作用する:関心のある気体成分の分子、例えばCO2は、第2の体積部32中の電磁放射線を吸収し、熱の発生、故に圧力の上昇をもたらす。赤外線源7中で変調周波数で電磁放射線の強度を変調することによって、圧力の変調が達成され得る。
【0068】
そのような圧力変調又は圧力変動、即ち音波は、圧力トランスデューサ6によって測定され得る。この例では、反射シールド17中のアパーチャ18は、第2の体積部32中で発生したそのような音波が第1の体積部31中に到達し、故に圧力トランスデューサ6に到達することを可能にする。この理由により、反射シールド17と電磁放射線源7との間に隙間が設けられる。音波は、
図1において参照番号9によって示す。それ故に、シールド17中のアパーチャ18によって、吸収及び音波発生が主に起こる第2の体積部32は、第1の体積部31及び圧力トランスデューサ6に連通可能に結合される。それ故に、本例では、電磁放射線がアパーチャ18を通って第2の体積部32に入るだけでなく、音波も第2の体積部32から第1の体積部31中に伝播して、圧力トランスデューサ6に至る。
【0069】
異なる実施形態では、反射シールドは基板1に据え付けられ得るが、更なる実施形態では、そのような反射シールド17は全く提供されず、測定体積部3は均一である。
【0070】
電磁放射線源7及び圧力トランスデューサ6に加えて、追加の構成要素が、測定セル2の内側の基板1の前側11上に配置される。これらの構成要素は、集積回路14、例えばASICを含み、それは好ましくは、例えば変調周波数で放射される赤外線放射線に例えば強度変調を課すことによって、電磁放射線源7を制御するように構成される。変調周波数は、可聴スペクトル内、例えば20Hz~20kHzであり得るか、又は100kHzまで上がり得るか、又は5Hzに下がりさえし得る。集積回路14は、圧力トランスデューサ6から測定値を受信するように、及び、例えば測定値を気体成分の濃度値にリンクする予め定義された又はリセット可能な較正機能を使用することによって、それらの測定値から気体成分濃度の値を決定するように更に構成される。気体成分濃度の値は、もしあれば1つ以上の他のトランスデューサの値であり得るように、デジタルインターフェース、例えばI2Cインターフェースを介して出力され得る。
【0071】
本例では、別のトランスデューサ13が、測定セル2の内側の基板1の前側11上に配置され、その別のトランスデューサ13は、有利には、温度センサ、湿度センサ、複合温度/湿度センサ、圧力センサ、特に気圧センサ、別のマイクロフォン、例えば酸化物タイプ又は電気化学タイプの別の気体センサのうちの1つ以上である。温度及び/若しくは湿度の測定値並び/又はそのような他のトランスデューサによって測定される他のパラメータのうちの任意のものを通して、気体濃度値が、例えば、温度及び/又は湿度の影響について、例えば、集積回路14によって補償され得る。故に、成分の測定に対する周囲条件の影響を低減又は排除することができる。
【0072】
更なる電気構成要素15が、測定セル2の内側の基板1の前側11上に配置され得、その更なる電気構成要素15は、必要に応じて、受動構成要素又は補助電子機器、例えばキャパシタ及び抵抗器を含み得る。
【0073】
基板1の後側12上には、ランドグリッドアレイ(LGA)パッド16が、顧客によるSMD組み立て及びリフロー半田付けのために配置される。DFN、QFN、又は端面スルーホールなどの他の接点が可能である。
【0074】
一例では、測定される成分はCO2である。CO2については、0~10’000ppm、又は0~40’000ppm、又は0~60’000ppmのCO2の範囲の測定が可能である。
【0075】
提案される光音響気体センサデバイスは、例えば
図1に示すように、測定セルが0.2cm
3の全体的なサイズを有するように、小さいフォームファクタで構築され得る。このことから、それは、従来の光音響又はNDIRベースの気体センサよりも著しく小さく、製造するのが安価でもある。
【0076】
図2は、本発明の実施形態による、膜5を備える別の光音響気体センサデバイスの断面図を例示する。
図1の参照符号のうちのいくつかは、例示の目的のために省略される。
図1の実施形態と比較して、多孔質気体透過膜5は、ここでは内側から少なくとも部分的に遮蔽されている。この目的のために、反射器28が、測定セル2の内側に配置される。反射器28の少なくとも一部分は、開口部41から離間される。反射器28は、そうでない場合に多孔質気体透過膜5によって吸収されるか、又はそれを通って伝達されるであろう電磁放射線を測定体積部3中に反射し戻すように配置及び構成される。この機能は、開口部41の領域中で反射器28によって反射される電磁放射線を表す矢印8によって示す。測定体積部3に面する反射器28の表面は、電磁放射線8に対して反射特性である。
【0077】
本例では、反射器28は、測定セル本体21と一体的に形成される。測定セル本体21の内側は、反射材料から作られるか、又は反射材料でコーティングされるかのうちのいずれかであると想定される。反射器28は、開口部41にとって望ましい位置において測定セル本体21中に舌部又はフラップを切り込むか又は打ち抜くことによって製造され得る。フラップ又は舌部は、測定セル本体21の残りの部分と接続されたままであり、測定セル2の内部に向かって押される。
【0078】
図3の実施形態は、測定セル2中の開口部41の位置が異なる点で
図1の実施形態とは異なる。気体透過エリア4、故に開口部41は、測定セル本体21中に依然として配置されている。しかしながら、
図1及び2におけるように測定セル本体21の頂部に配置される代わりに、ここでは側壁中に横方向に配置される。加えて、開口部41は、ここでは第2の体積部32の代わりに第1の体積部31へのアクセスを提供する。ここでも、開口部41は、多孔質気体透過膜5によって覆われる。
【0079】
この配置では、非反射面としての膜5は、電磁放射線8の大部分が第2の体積部32中に放射され、その中で反射されることを考慮すると、電磁放射線8にあまり曝露されない。これは、測定セル2中の平均反射率を改善し、それは、次に、CO
2などの気体成分による反射された光/放射の吸収を増大させる。
図2からの反射器28などの反射率を改善させるための手段は回避され得る。加えて、膜5の表面における望ましくない光音響反応も低減又は回避される。
【0080】
多孔質気体透過膜の湾曲又は座屈は、測定に悪影響を与えるので、望ましくないことがある。
図4~6の各々は、多孔質気体透過膜の機械的安定性を改善するための手段を例示し、図a)では、本発明の実施形態による光音響気体センサデバイス中で使用される膜構成の上面図であり、図b)では、線A-A’に沿った断面図である。
【0081】
図4は、好ましくは外側から、測定セル本体21又は基板1に取り付けられた多孔質気体透過膜5を例示する。測定セル本体21中の開口部41は、多孔質気体透過膜5によって覆われ、そのサイズは、多孔質気体透過膜5を測定セル本体21に取り付けるのに十分な材料を提供するために開口部41を拡張する。本例では、多孔質気体透過膜5の形状は正方形であり、その一方で、開口部41は円形である。取り付けは、同時に支持層51としての役割を果たす接着剤層によって達成される。支持層51は、好ましくは、孔511を備えるように構造化される。次いで、支持層51は、好ましくは、多孔質気体透過膜5に適用される。支持層51が好ましくは気密であることを考慮すると、孔511は、多孔質気体透過膜5を通過する気体が開口部41を通って測定体積部3に入ることを可能にする。それ故に、接着剤支持層51は、多孔質気体透過膜5を測定セル本体21又は基板1に取り付ける役割を果たすだけでなく、その機械的支持体としての役割も果たし、故に、湾曲及び座屈を防止する。接着剤支持層51は、好ましくは、十分な剛性及び接着性を提供するために硬化又は焼き鈍しされる。
【0082】
図5は、別の変形形態を例示する。ここでも、多孔質気体透過膜5は、好ましくは外側から、測定セル本体21又は基板1に取り付けられる。ここでも、測定セル本体21又は基板1中の開口部41は、多孔質気体透過膜5によって覆われ、そのサイズは、多孔質気体透過膜5を測定セル本体21又は基板1に取り付けるのに十分な材料を提供するために開口部41を拡張する。取り付けは、ここでも、ここでは53によって参照される接着剤によって達成される。しかしながら、今回は、接着剤53は、多孔質気体透過膜5用の支持体として追加的に機能せず、多孔質気体透過膜5の縁部にのみ適用され、それによって測定セル本体21又は基板1に取り付けられる。代わりに、格子構造54は、機械的安定性を提供し、デバイスの外側に面する多孔質気体透過膜5の第1の側に取り付けられる。この構成を製造するために、最初に格子構造54が多孔質気体透過膜5に取り付けられ、その一方で、この組み合わせが次いで接着剤53によって測定セル本体21又は基板1に取り付けられることが好ましい。例示の目的のために、図b)における格子周期は、図a)に示す格子周期と一致しないことに留意されたい。
【0083】
図6の実施形態では、今まで単一であった開口部41が、ここでは測定セル本体21又は基板1中の複数のボア411又は開口部によって置き換えられ、表されている。多孔質気体透過膜5は、例えば示していない接着剤によって測定セル本体21に取り付けられ、複数のボア411を覆う。この例では、複数のより小さいボアは、1つの大きいボア直径の代わりに複数のより小さいボア直径が架けられることを考慮して、多孔質気体透過膜5の座屈又は波打ち(flapping)を防止する。
【0084】
図7は、ここでも、本発明の実施形態による、膜を備える光音響気体センサデバイスの断面図を示す。この実施形態では、反射シールド17は、測定セル本体21と一体的に形成される。ここで、測定セル本体21は、フレーム221と、カバーとして機能する蓋222とを備える。開口部41は、ここでは蓋222中に設けられ、多孔質気体透過膜5は、周囲に面する蓋222の頂部側に取り付けられる。この実施形態では、フレーム221、蓋222、及び反射シールド17は、もしあれば、全て反射材料から、例えば金属から作られ得る。しかしながら、異なる実施形態では、フレーム221、蓋222、及び反射シールド17のうちの1つ以上は、もしあれば、プラスチックコアと、必要に応じて反射コーティングとを備え得る。
図1の実施形態から知られている集積回路14、1つ以上の他のトランスデューサ13、及び任意の更なる電気構成要素15は、例示の目的のために省略される。
【0085】
図8の実施形態は、気体透過エリア4がここでは基板1と測定セル本体21との間に設けられている点で
図1の実施形態とは異なる。測定セル本体21、特にそのフレーム221の構造に起因して、フレーム221を基板1にクリップ留めするとき、水平開口部41が基板1の前側11とフレーム221の底面との間に生成される。この開口部41は、好ましくは,測定体積部3の周囲で輪の形状を取り、例えば多孔質気体透過膜材料の輪によって充填される。それ故に、測定される気体は、測定セル本体21と基板1との間の開口部41を通って横方向に測定体積部3に入り、第1の体積部31からアパーチャ18を通って第2の体積部32中に拡散し、ここで電磁放射線8と出会う。このプロセスは、点線矢印によって
図8に示す。この実施形態では、蓋222は、測定体積部3を上部から密封するものと理解される。この実施形態では、基板1の設置面積(footprint)は、測定セル本体21を基板1に容易に取り付けるためにスナップフィット25を使用することができるように、測定セル本体21の設置面積と一致する。
【0086】
図9の実施形態は、
図1の実施形態に類似している。しかしながら、気体透過エリア4は、ここでは基板1中の貫通孔開口部41の形態で基板1中に位置する。それ故に、測定される気体は、基板1中の開口部41を通って測定体積部3に入り、第1の体積部31からアパーチャ18を通って第2の体積部32中に拡散し、ここで電磁放射線8と出会う。多孔質気体透過膜5は、ここでは基板1に取り付けられ、好ましくは、第1の体積部31に面する基板1の前側11に取り付けられる。異なる実施形態では、多孔質気体透過膜5は、基板1の後側12に取り付けられる。
【0087】
図10は、ここでは多孔質気体透過膜の代わりに孔211を備える、本発明の実施形態による光音響気体センサデバイスの断面図を例示する。それ故に、この実施形態における気体透過エリア4は、他の点では気密の材料から作られた測定セル本体21の壁を貫通する孔211を包含する測定セル2のエリア、ここでは具体的には測定セル本体21のエリアによって表される。孔211の直径d_cは、100nm~10μmである。孔211の長さl_cは、1μm~1000μmである。寸法l_hは、同時に、少なくとも気体透過エリア4中の測定セル本体21の厚さを表す。孔211の数は、50~15000である。拡大図は、気体透過エリア4の一部分をより詳細に例示する。
【0088】
図11の図では、例えば
図10に示す実施形態に適用可能であるような、孔に関連する異なるパラメータの影響を例示する。本例では、測定セル中2に存在し、気体透過エリアを表す100の数の孔が、減衰及び拡散に関して調査されるものとする。x軸は、孔の直径及び長さが全ての100個の孔にわたって均一であるという想定の下で、孔の様々な直径d_cをμmで表す。y軸は、低域通過フィルタ時定数を表す時定数τを秒単位で示す。グラフは各々、孔の所与の長さl_cに対する孔径d_cに対する時定数τを図示する。点線のグラフは、孔を通る拡散プロセスについての時定数τを示すが、直線のグラフは、減衰を指す低域通過フィルタの時定数を示す。孔の適用可能な寸法、即ち孔径d_c及び孔長l_cの選択は、以下のように達成され得る:最大60秒の拡散時間τは、許容可能であると見なされるのに対して、多くとも20の孔径d_cに対する孔長l_cのアスペクト比は、製造の観点から許容可能であると見なされる。直線に対する低域通過フィルタの時定数によって表される減衰の観点から、かなり低い時定数が、集合的な孔によってフィルタリングされるより高い周波数の圧力変動を有するのに望ましい。他方では、低域通過フィルタについての最小時定数は、破線の太い水平線によって表される0.1秒の範囲にあると見なされる。これらの選択は、直線の補強された太い部分において各孔長l_cについて示す孔径d_cの好ましい範囲をもたらす。楕円は、孔径d_c対孔長l_cの範囲を囲み、寸法のその組み合わせは、100の数の孔に対して、所望の拡散及び減衰特性の両方をもたらす。
【0089】
上記で本発明の実施形態を示し且つ説明したが、本発明はそれらに限定されず、以下の特許請求の範囲内で別様に様々に具現化及び実施され得ることが理解されるべきである。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま付記しておく。
[1] 気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスであって、前記光音響気体センサデバイスは、
-測定体積部(3)を取り囲む測定セル(2)と、
-気体が前記測定体積部(3)に入るための前記測定セル(2)における気体透過エリア(4)と、
電磁放射線(8)を前記測定体積部(3)中に放射するように構成された電磁放射線源(7)と、
-前記測定体積部(3)中の前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した音波(9)を測定するように構成された圧力トランスデューサ(6)と
を備え、前記気体透過エリア(4)は、多孔質気体透過膜(5)によって表され、
前記多孔質気体透過膜(5)の平均細孔径は、10nm~1μm、好ましくは20nm~200nmであり、
好ましくは、前記電磁放射線源(7)及び前記圧力トランスデューサ(6)は、前記測定セル(2)中に配置されている、光音響気体センサデバイス。
[2] 前記多孔質気体透過膜(5)の多孔率は、20%~90%、好ましくは20%~50%である、
[1]に記載の光音響気体センサデバイス。
[3] 前記測定体積部(3)の寸法は、0.03cm
3
~8cm
3
、好ましくは0.08cm
3
~1cm
3
、又は好ましくは0.2cm
3
であり、
前記気体透過エリア(4)の直径は、0.2mm~4mm、好ましくは0.5mm~2mmである、
[1]又は[2]に記載の光音響気体センサデバイス。
[4] 前記多孔質気体透過膜(5)は、焼結金属、セラミック、PTFEなどの重合体のうちの1つを備えるか又はそれらのうちの1つから成り、
前記多孔質気体透過膜(5)の厚さは、50μm~400μm、好ましくは100μm~300μmである、
[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[5] -基板(1)と、
-測定セル本体(21)と、ここで、前記基板(1)及び前記測定セル本体(21)は、前記測定体積部(3)を画定するものであり、
を備え、前記測定セル本体(21)、前記基板(1)、及びもし前記測定体積部(3)を画定する他の構成要素があれば、前記他の構成要素は、気密材料から作られ、気密の形で組み立てられ、
前記測定セル本体(21)は、開口部(41)を備え、
前記開口部(41)は、前記多孔質気体透過膜(5)によって覆われ、
前記多孔質気体透過膜(5)は、特に接着、注入、鋳造、半田付け、及び溶接のうちに1つによって前記測定セル本体(21)に取り付けられている、
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[6] -基板(1)と、
-測定セル本体(21)と、ここで、前記基板(1)及び前記測定セル本体(21)は、前記測定体積部(3)を画定するものであり、
を備え、前記測定セル本体(21)、前記基板(1)、及びもし前記測定体積部(3)を画定する他の構成要素があれば、前記他の構成要素は、気密材料から作られ、気密の形で組み立てられ、
前記基板(1)は、開口部(41)を備え、
前記開口部(41)は、前記多孔質気体透過膜(5)によって覆われ、
前記多孔質気体透過膜(5)は、前記基板(1)に取り付けられ、
特に、前記多孔質気体透過膜(5)は、前記基板(1)に半田付けされた金属膜を備える、
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[7] -基板(1)と、
-測定セル本体(21)と、ここで、前記基板(1)及び前記測定セル本体(21)は、前記測定体積部(3)を画定するものであり、
を備え、前記測定セル本体(21)、前記基板(1)、及びもし前記測定体積部(3)を画定する他の構成要素があれば前記他の構成要素は、前記測定セル本体(21)と前記基板(1)との間の開口部(41)を除き、気密材料から作られ、気密の形で組み立てられ、
前記開口部(41)は、前記多孔質気体透過膜(5)によって覆われ、
前記多孔質気体透過膜(5)は、特に接着、注入、鋳造、半田付け、又は溶接のうちに1つによって前記測定セル本体(21)及び前記基板(1)のうちの1つ以上に取り付けられている、
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[8] 前記多孔質気体透過膜(5)に取り付けられた支持層(51)を備え、
好ましくは、前記支持層(51)は、接着剤層であり、前記多孔質気体透過膜(5)は、前記接着剤層によって前記測定セル(2)に取り付けられ、
好ましくは、前記支持層(51)は、気密であり、前記多孔質気体透過膜(5)を通過するときに気体が前記測定体積部(3)に入ることを可能にするように構成された1つ以上の孔(511)を備える、
[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[9] 前記多孔質気体透過膜(5)の第1の側に取り付けられた格子構造(54)
を備え、前記多孔質気体透過膜(5)は、前記第1の側とは反対側の前記多孔質気体透過膜(5)の第2の側上に配置された接着剤(53)によって前記測定セル(2)に取り付けられる、
[1]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[10] 前記開口部(41)は、前記測定セル本体(21)及び前記基板(1)のうちの1つ以上中の複数のボア(411)によって表され、
前記多孔質気体透過膜(5)は、前記複数のボア(411)を覆うために前記測定セル本体(21)又は前記基板(1)にそれぞれ取り付けられている、
[5]又は[6]に記載の光音響気体センサデバイス。
[11] 反射器(28)がない場合は前記多孔質気体透過膜(5)によって吸収されるか又はそれを通って伝達される電磁放射線を、前記測定体積部(3)中に反射し返すための反射器(28)であって、前記測定セル(2)の内側に配置され、前記開口部(41)から離間された反射器(28)を備える、
[5]~[7]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。
[12] 気体中の成分の存在又は濃度を示す値を決定するための光音響気体センサデバイスであって、前記光音響気体センサデバイスは、
-測定体積部(3)を取り囲む測定セル(2)と、
-気体が前記測定体積部(3)に入るための前記測定セル(2)中の気体透過エリア(4)と、
電磁放射線(8)を前記測定体積部(3)中に放射するように構成された電磁放射線源(7)と、
-前記測定体積部(3)中の前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した音波(9)を測定するように構成された圧力トランスデューサ(6)と
を備え、前記気体透過エリア(4)は、前記測定セル(2)の他の点では気密の材料を貫通する孔(211)を包含する前記測定セル(2)のエリアによって表され、
前記孔(211)の直径は、100nm~10μmである、光音響気体センサデバイス。
[13] 前記気体透過エリア(4)を画定する前記測定セル(2)の前記材料の厚さは、1μm~1mmであり、
前記孔径に対する孔長のアスペクト比は、20未満であり、
好ましくは、前記孔(211)は、毛細管である、
[12]に記載の光音響気体センサデバイス。
[14] 前記孔(211)の数は、50個~200’000個、好ましくは100個~10’000個である、
[12]又は[13]に記載の光音響気体センサデバイス。
[15] 前記測定体積部(3)を第1の体積部(31)と第2の体積部(32)とに分割する反射シールド(17)を備え、前記第2の体積部(32)に面する前記反射シールド(17)の表面(171)の少なくとも一部分は、電磁放射線(8)を反射する材料から作られ、
前記電磁放射線源(7)は、電磁放射線(8)を前記反射シールド(17)中のアパーチャ(18)を通って前記第2の体積部(32)中に放射するために前記第1の体積部(31)中に配置され、
前記圧力トランスデューサ(6)は、前記第1の体積部(31)中に配置され、前記成分による電磁放射線(8)の吸収に応答して、前記成分によって発生した前記音波(9)を測定するために前記第2の体積部(32)に連通可能に結合され、
好ましくは、前記電磁放射線源(7)及び前記圧力トランスデューサ(6)は、前記測定体積部(3)に面する基板(1)の前側(11)上に配置され、
好ましくは、前記第1の体積部(31)に対する前記第2の体積部(32)の比率は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5であり、
特に、前記反射シールド(17)の厚さは、30μm~1mm、特に50μm~200μmであり、
好ましくは、前記気体透過エリア(4)は、前記第1の体積部(31)を画定する前記測定セル(2)の一部分中に設けられている、
[12]~[14]のうちのいずれか一項に記載の光音響気体センサデバイス。