IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7547480タングステン金属粉末の製造プロセス及びそれを実行するための装置
<>
  • 特許-タングステン金属粉末の製造プロセス及びそれを実行するための装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】タングステン金属粉末の製造プロセス及びそれを実行するための装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/22 20060101AFI20240902BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240902BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20240902BHJP
【FI】
B22F9/22 H
B22F1/00 P
B22F1/054
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022528640
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020085987
(87)【国際公開番号】W WO2021136644
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】102019135890.6
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】318010867
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Nymphenburger Strase 84, 80335 Munchen GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】セウベルリッヒ, ティーノ
(72)【発明者】
【氏名】メーゼ-マルクトシエフエル, ユリアネ
(72)【発明者】
【氏名】ワルネッケ, ナット
(72)【発明者】
【氏名】ホーゼ, ベアーテ
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0223175(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1766510(CN,A)
【文献】特表2005-531405(JP,A)
【文献】米国特許第04915733(US,A)
【文献】特開2007-211333(JP,A)
【文献】国際公開第2010/131653(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159644(WO,A1)
【文献】特開2019-173179(JP,A)
【文献】特開2012-197473(JP,A)
【文献】特開2005-324312(JP,A)
【文献】特表2019-534832(JP,A)
【文献】国際公開第2019/103037(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102603007(CN,A)
【文献】N E FOUAD; ET AL,THERMOGRAVIMETRY OF WO3 REDUCTION IN HYDROGEN: KINETIC CHARACTERIZATION OF AUTOCATALYTIC EFFECTS,POWDER TECHNOLOGY,スイス,1993年,VOL:74, NO:1,PAGE(S):31-37,https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/003259109380005U?via%3Dihub
【文献】A BIASIN; ET AL,INVESTIGATION OF CAO-CO2 REACTION KINETICS BY IN-SITU XRD USING SYNCHROTRON RADIATION,CHEMICAL ENGINEERING SCIENCE,英国,2015年01月12日,VOL:127,PAGE(S):13-24,https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0009250914007854?via%3Dihub
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化タングステンを還元してタングステン金属粉末を製造するプロセスであって、
前記プロセスは、
a)酸化タングステン粒子を含む反応流Iを提供し、
b)反応流Iを還元剤で処理し、酸化タングステンおよびタングステン金属粉末を含む反応流IIを得て、
c)反応流II中の酸化タングステン(IV)(WO)の含有量を測定し、
d)反応流II中のタングステン金属粉末の結晶子サイズを測定し、
e)ステップc)およびd)で得られた値を、予め定められた目標値と比較し、
f)前記ステップc)およびd)で得られた値と前記予め定められた目標値とが適合しない場合、プロセスパラメータを調整する、ステップを含み、
プロセス中の前記酸化タングステン(IV)(WO)の含有量および前記タングステン金属粉末の結晶子サイズの測定は、少なくとも1つの分析装置を通過する反応流を導くことによって行われることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、得られた前記タングステン金属粉末は、BETによる粉末の比表面積の決定方法(DIN ISO 9277)によって決定される0.05m/g~10 /gの比表面積を有することを特徴とする、プロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスであって、得られた前記タングステン金属粉末は、BETによる粉末の比表面積の決定方法(DIN ISO 9277)によって決定される0.15m /g~6m /gの比表面積を有することを特徴とする、プロセス。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプロセスであって、前記少なくとも1つの分析装置がX線回折装置であることを特徴とする、プロセス。
【請求項5】
前記請求項1から3までのいずれか一項に記載のプロセスであって、前記反応流II中の前記酸化タングステンの含有量が、反応進行の指標となることを特徴とする、プロセス。
【請求項6】
前記請求項1から4までのいずれか一項に記載のプロセスであって、前記ステップc)およびd)における前記酸化タングステンの含有量および結晶子サイズの決定が同時に、X線回折図またはX線回折図の断面で実施されることを特徴とする、プロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスであって、前記ステップc)およびd)における前記酸化タングステンの含有量および結晶子サイズの決定が1回の測定で、X線回折図またはX線回折図の断面で実施されることを特徴とする、プロセス。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスであって、前記ステップc)およびd)における前記酸化タングステンの含有量および結晶子サイズの決定が1回の記録で、X線回折図またはX線回折図の断面で実施されることを特徴とする、プロセス。
【請求項9】
前記請求項1から5までのいずれか一項に記載のプロセスであって、前記プロセスパラメータの調整は、前記酸化タングステンの含有量および結晶子サイズが予め設定された目標値に対応するように行われることを特徴とする、プロセス。
【請求項10】
請求項5、6、および9のいずれか一項に記載のプロセスであって、
前記酸化タングステンは、WO である、プロセス。
【請求項11】
前記請求項1から10までのいずれか一項に記載のプロセスであって、前記プロセスパラメータが、圧力、温度、温度分布、体積および質量流量、回転速度、濃度、充填量、サイクル時間、および流量を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項12】
前記請求項1から11までのいずれか一項に記載のプロセスであって、前記プロセスの範囲内で生成される、1時間当たりの測定値の数は、1~120であることを特徴とする、プロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスであって、前記プロセスの範囲内で生成される、1時間当たりの測定値の数は、5~12であることを特徴とする、プロセス。
【請求項14】
前記請求項1から13までのいずれか一項に記載のプロセスであって、前記ステップc)およびd)における測定は、50~500kJの放射エネルギーで行われることを特徴とする、プロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスであって、前記ステップc)およびd)における測定は、80~250kJの放射エネルギーで行われることを特徴とする、プロセス。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項に記載のプロセスを実行するための装置であって、前記装置は、反応流中の前記酸化タングステンの含有量および前記タングステン金属粉末の結晶子サイズを測定するための少なくとも1つの分析ユニットを含むことを特徴とする、装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、
前記酸化タングステンは、WO である、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化タングステンを還元してタングステン金属粉末を製造するプロセスに関し、得られた金属粉末の特性を進行中のプロセスも継続的にモニターすることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
金属タングステンは、その高い融点と沸点を特徴とし、例えば、超硬工具の調製に用いられる炭化タングステンのプレカーサーとして、多くの科学、技術および医療分野で使用されている。用途や使用分野によって、金属タングステンに関する要求や仕様は異なり、主に粉末の形で使用されいる。しかしながら、すべての仕様に共通しているのは、粉末は、狭いまたは定義された一次粒度分布で常に高品質で確実に提供されなければならないことである。
【0003】
US2006/0051256には、スクリュー押出機と同様に構成され、様々な加熱エレメントと冷却エレメントによって温度を制御することができる粉末製造装置が記載されている。この装置で使用されているスクリューユニットは、生成された粒子の成長を必要に応じて制御することができるようになっている。
【0004】
DE3802811は、モリブデン、レニウムまたはタングステン元素の1種以上の金属と、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、白金、ロジウム、クロムおよびレニウムからなる群の結合金属から70重量%以上からなる個々の粒子の金属粉末凝集の調製プロセスに関するものであり、それら金属および結合金属の化合物をイオン性または非イオン性の液体に溶解および/または均一に懸濁し、そのような溶液および/または懸濁液を乾燥させ、このようにして得られた残留物を600℃以下で焙焼し、その後600~1200℃の温度で還元条件下にて反応させ金属粉末を形成する。
【0005】
WO2017/162048は、金属酸化物の還元方法を開示しており、この方法では、バッチプロセスで580℃以下の温度での強酸化剤または金属ハロゲン化物と還元剤との反応が、金属酸化物の還元に使用されている。
【0006】
金属のタングステンの回収には、不純物を除去するために、タングステン含有鉱石を酸化雰囲気中で500~600℃の温度で焼成することができる。水酸化ナトリウム水溶液と反応させてNaWOを生成し、連続して再沈殿により精製し、イオン交換またはアンモニアによる溶媒抽出でパラタングステン酸アンモニウムに結晶化させる。得られたタングステン酸を濾過して乾燥し、500℃以上で焼成して純粋な酸化タングステン(VI)に変換する。実際の金属粉末は、その後、還元剤として水素を使用して、650℃以上の温度で連続稼働する炉プラントの酸化物から得られる。酸化物から金属への変換は、以下の式で表すことができる。
【0007】
【化1】
【0008】
金属タングステンを調製するための多くの方法が従来技術で知られているが、いずれも、形成された金属粉末の継続的な品質管理の機会を提供するものではない。製造されたタングステン金属粉末の品質を確認するために、サンプルは、通常、反応のフローから採取され、分析される。特に、反応の変換と得られたタングステン金属粉末の粒径が特性として使用される。特に、金属のタングステンをさらに炭化タングステンに加工するような場合、金属のタングステン粉末の粒径は重要な品質特性である。炭化タングステンの粒径は、使用するタングステン金属粉末の粒径に大きく依存するため、後者は非常に精密に制御と調整をされなければならない。タングステン金属粉末の品質を制御するための先行技術で採用されている従来のプロセスは、サンプリングと分析結果の利用可能な間に常にタイムラグがあるという欠点があり、そのため、製造プロセスでプロセスパラメータの即時適応が不可能である。このタイムラグは、通常、複雑な試料の処理と分析が必要であることと、場合によっては輸送距離がかかることに起因している。したがって、既存のインフラの関数として数時間から数日のオーダーであるかもしれない必要な時間内に、タングステン金属粉末が所望の品質で製造されず、したがって、副産物または利用できない粉末グレードの在庫が、プロセスパラメータの対応する調製を実行することができないまま形成されることが発生する。そのような望ましくない製品は、高い資本の固定を引き起こし、最悪の場合、原料や資源の高い損失を引き起こす。したがって、品質管理の時間遅延の問題とそれに伴う欠点を克服するためには、進行中の製造プロセスですでに適時に介入可能な方法で品質管理を実行できることが望ましい。
【0009】
タングステン金属粉末の製造では、酸素含有量、平均粒径、比表面積が、得られた粉末の品質を評価できるように、通常採用される。これらの材料特性は、それぞれ異なる方法で測定されるため、進行中のプロセスで測定することは不可能であるか、別の装置で行わなければならない。むしろ、先行技術で採用されている分析方法では、一部、前述の材料特性を測定できるように、複雑で時間のかかる試料調製が必要であり、進行中のプロセスで発生した品質低下に即時に対応することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、製造された粉末の品質保証を適時かつ継続的に行うことができるタングステン金属粉末の製造プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、金属のタングステンの調製中に発生する中間体酸化タングステン(IV)(WO)の含有量を、反応の進行の指標として、したがってタングステン金属粉末の品質の指標として採用できることが見いだされた。さらに、驚くべきことに、タングステン金属粉末の品質は、得られたタングステン金属粉末の結晶子サイズによって決定することができることが判明した。本発明の範囲内で、両パラメータは、操作の進行中にオンラインで決定することができるので、複雑なサンプリングとサンプル処理が省略され、必要に応じてプロセスに直ちに介入することができるタイムリーな測定結果が得られることも見出された。
【0012】
したがって、本発明は、まず、酸化タングステンを還元してタングステン金属粉末を製造するプロセスであって、以下のステップを含む。
a)酸化タングステン粒子を含む反応流Iを提供する。
b)反応流Iを還元剤で処理し、酸化タングステンおよびタングステン金属粉末を含む反応流IIを得る。
c)反応流II中の酸化タングステン(IV)(WO)の含有量を測定する。
d)反応流II中のタングステン金属粉末の結晶子サイズを測定する。
e)ステップc)およびd)で得られた値を、予め定められた目標値と比較する。
f)任意に、プロセスパラメータを調整する。
プロセス中の前記酸化タングステン(IV)(WO)の含有量およびタングステン金属粉末の結晶子サイズの測定は、少なくとも1つの分析ユニットを通過する反応流を導くことによって行われることを特徴とする。
【0013】
本発明は、特に、得られたタングステン金属粉末の結晶子サイズがプロセス中に連続的に決定され、したがって、品質特性として採用することができることを特徴とする。タングステン金属粉末は、一次粒子からなり、この一次粒子は凝集体を形成していてもよい。個々の一次粒子は、その大きさに応じて、単結晶または多結晶である可能性があります。単位格子の規則的な配列が観察される粒子のドメインは、結晶子(文献では「グレイン」)と呼ばれます。このドメインは、粒子の体積全体に広がっていることがある。しかしながら、ユニットセルが規則的に配置された2つ以上のドメインが1つの粒子中に存在する可能性もあり、その場合、主軸の配向はそのようなドメイン間で異なる可能性がある。このような場合、ドメイン間に粒界が観察されることがある。結晶粒が小さいほど、入射したX線は広く散乱し、回折により発生するX線ピークの検出器での幅が広くなる。
【0014】
本発明によるプロセスを使用することにより、反応の進行と生成物の結晶子サイズの連続的かつ即時的な監視が、進行中のプロセスに可能となる。これは、従来行われていたランダムなサンプリングと必要な時間のかかるラボ検査では達成できなかったことである。さらに、本発明によるプロセスは、閉ループでプロセスを制御するために必要な、フィードバックの可能性を提供する。従って、粉末を材料損失なく所望の品質で効率的に製造することができる。
【0015】
本発明によるプロセスは、特に、ナノスケールで微細なタングステン金属粉末の製造における品質保証に適している。したがって、本発明によるプロセスの実施形態は、得られたタングステン金属粉末が、ASTM B330に準拠するFisher Sub Sieve Sizer FSSS l.m.によって決定される20nm~5μm、好ましくは50nm~3.5μmの平均粒径を有していることが好ましい。さらに、本発明によるプロセスの実施形態は、得られたタングステン金属粉末が、BETによる粉末の比表面積の決定方法(DIN ISO 9277)により決定した0.05m/g~10m/g、好ましくは0.15m/g~6m/gの比表面積を有していることが好ましい。
【0016】
本発明は、驚くべきことに、比表面積(DIN ISO 9277に準拠するBET測定)と粉末の平均粒径との間の既知の相関関係が、結晶子にも移行することができることが見出された事実に基づいている。
【0017】
従来技術で優勢であった偏見とは対照的に、粉末の粒径または粒子径とそのBET表面積との間の既知の関係が、本発明の範囲内にあることが見出され、以下の式で表すことができる。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、dは粒子径、ρは材料の物理的密度、そしてBET値はDIN ISO 9277に準拠して決定された比表面積である。
【0020】
完全に反応したタングステン金属粉末の酸素含有量は、粉末の比表面積に比例し、したがって、タングステン金属粉末の特性評価にも採用でき、同時に反応の変換の完全性の指標として機能する。結晶子サイズとWOの割合で表される酸素含有量の両方の値は、X線回折を使用して決定することができる。したがって、好ましい実施形態では、本発明によるプロセスで使用される分析装置はX線回折装置であり、タングステン金属粉末の結晶子サイズおよび酸化タングステンの含有量の決定は、X線回折によって行われることが好ましい。品質保証のためのパラメータとしての結晶子サイズおよび反応流中のWOの含有量の本発明による選択を通じて、本発明によるプロセスはさらに、両方の材料特性が同じ測定方法によって決定することができる利点を有する。すなわち、品質保証が1つのステップで複合的に作用することができるので、それぞれ別々の測定における材料特性の別々の決定が省略することができる。
【0021】
本発明によれば、タングステン金属粉末の製造は、酸化タングステンを還元することによって行われるが、ここで、酸化タングステン、特にWO、の含有量を観察することによって、反応の進行状況を追跡できることが意外にも見出された。反応流中の酸化タングステンの含有率が低いほど、反応はさらに進行している。したがって、反応流II中の酸化タングステン、特にWO、の含有量が反応進行の指標となる実施形態が好ましい。
【0022】
本発明によるプロセスのステップc)およびd)で決定された値は、反応の進行および得られたタングステン金属粉末の品質を確認するために、予め設定された目標値と比較される。採用する目標値は、要求や個別の仕様に応じて選択することができる。信頼性の高い比較を得るために、本発明によるプロセスのステップe)における比較は、短い時間間隔で繰り返し行われ、好ましくは評価モジュール用い、特にコンピュータ支援法を用いる。
【0023】
本発明によるプロセスは、タングステン金属粉末の製造に使用される一般的な還元剤に適合している。酸化タングステンの変換に関連する最良の結果は、還元剤として水素を使用する場合に観察された。したがって、還元剤として水素を使用する実施形態が好ましい。
【0024】
包括的な品質管理の可能性に加えて、本発明によるプロセスは、その簡単な実施と、反応の進行および生成物の制御を即時かつ継続的に分析できることがさらに特徴づけられ、それが特に、酸化タングステン含有量およびタングステン金属粉末の結晶子サイズの決定が同じ分析ユニットによって実行されるという事実によって達成される。したがって、本発明によるプロセスのステップc)およびd)における酸化タングステン、特にWOの含有量およびタングステン金属粉末の結晶子サイズの測定が同時に、または直ちに連続して実施される実施形態が好ましい。本発明の範囲内において、「直ちに」とは、3分以下のタイムラグを意味し、好ましくは1分以下、特に30秒以下である。より好ましくは、2つのパラメータは、1回の測定で、さらに好ましくは1回の記録で、特にX線回折図またはX線回折図の断面で決定される。このような実施形態は、1つの測定のみを実行すればよく、分析ユニットにおいて1つのセンサのみが必要であるという利点を有する。測定で得られたデータの評価は、その後、公知の方法によって別途行うことができる。代替的に好ましい実施形態では、本発明によるプロセスのステップc)およびd)における酸化タングステン、特にWOの含有量の決定、およびタングステン金属粉末の結晶子サイズの決定は、それぞれ別々の測定で行われ、これらはしかし、同じ分析ユニットによって実行される。
【0025】
本発明によるプロセスは、測定結果からシステムパラメータへの即時フィードバックを可能にし、それによってプロセスパラメータをプロセス中に常に最適化することができる。したがって、本発明によるプロセスの実施形態は、ステップc)およびd)において決定されたデータが、本発明によるプロセスのステップf)において実施されなければならないかもしれないプロセスおよびシステムパラメータの適合のための基礎として機能することが好ましい。好ましくは、システムおよびプロセスパラメータの調製は、酸化タングステンの含有量およびタングステン金属粉末の結晶子サイズが予め設定された目標値に対応するような方法で行われる。ステップc)およびd)で決定された値に基づいて適合できるプロセスおよびシステムパラメータは、好ましくは、圧力、温度、温度分布、体積および質量流量、回転速度、濃度、充填量、サイクルタイム、および流量である。
【0026】
本発明によるプロセス制御では、単位時間当たりの測定回数が多いため、製品の品質のばらつきに即座に対応することが可能である。好ましくは、本発明によるプロセスの範囲内で生成される、1時間当たりの測定値の数は、1~120であり、より好ましくは5~12である。測定は、好ましくは、連続稼動する製造プラントの反応流において及び/又は反応流で行われ、それによって、測定シグナルの時間的経過及び反応の時間的に正確なイメージを得ることができる。従って、製品流からのサンプリングは、好ましくは省略することができる。この関連で、進行中の反応への影響を避けるために、測定時間と測定分解能、例えば回折計の放射電力として表される、測定ごとに適用されるエネルギー量が高すぎないように選択されるとさらに有利であることが証明されている。したがって、測定が50~500kJ、好ましくは80~250kJの放射エネルギーで行われる実施形態が好ましい。このエネルギーは、加速電圧U[ボルト]、管電流I[アンペア]、放射時間t[秒]の積から、以下の式に従って算出される。
【0027】
【数2】
【0028】
本発明によるプロセスでは、プロセス全体を通して、タングステン金属粉末の品質を即座に制御し、総合的に評価することができる。したがって、例えば、異なる段階での反応およびプロセスを監視できるように、プロセスコースに沿った様々な場所に配置される異なる分析ユニットを通過して分析される反応流を導くことが可能である。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの分析ユニットは、プロセスからの生成物がプロセスから排出される場所、例えば、連続稼働する工業炉の生成物排出口である。
【0030】
したがって、本発明によるプロセスの一実施形態は、反応流IIが2つ以上の分析ユニットを通過して導かれることが好ましい。好ましい実施形態では、プロセス全体の間、連続的なモニタリングを可能にするために、複数の分析ユニットが反応流に沿って分布している。また、複数の分析ユニットが互いのすぐ下流に配置される実施形態も好ましい。さらに好ましいのは、これら2つの実施形態の組み合わせである。異なる分析ユニットは、好ましくは、それらが相互通信され、制御ユニットによって集中的に制御され、得られたデータを読み出すことができるような設計を有している。
【0031】
本発明はさらに、本発明に係わるプロセスを実行するための装置に関し、この装置は、反応流中の酸化タングステン、特にWOの含有量およびタングステン金属粉末の結晶子サイズを測定するための少なくとも1つの分析ユニットを含み、前記分析ユニットは、X線回折計であることが好ましい。
【0032】
特に、本発明は、タングステン金属粉末の製造における品質保証に好適である。したがって、本発明はさらに、タングステン金属粉末の製造における品質保証のためのプロセスに関し、このプロセスでは、タングステン金属粉末の品質保証は、タングステン金属粉末の結晶子サイズおよび製造の流れでタングステン(IV)酸化物(WO)のパラメータを監視することによって達成され、これらの材料特性の決定は、好ましくは、X線回折法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明によるプロセスによって製造された、樹脂に埋め込まれ、部分的に粉砕されたタングステン金属粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、粒子および単結晶および多結晶ドメインが見られる。
図1